(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ブロック共重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
C08F293/00
(21)【出願番号】P 2020181389
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2020-10-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-25
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】595064050
【氏名又は名称】國立清華大學
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL TSING HUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.101, Sec.2, Guangfu Rd., East Dist., Hsinchu City, TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】彭之皓
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】小出 直也
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-269718(JP,A)
【文献】特開昭48-75686(JP,A)
【文献】特開平11-60624(JP,A)
【文献】特表2003-513117(JP,A)
【文献】特開平8-283318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示され、
【化1】
下記式(2)で表す化学構造を有し、
【化2】
上記式(1)、と上記式(2)のmediatorは調整剤であり、共役7員環の構造を含み、炭素、水素、酸素及び/又は窒素を含む構成要素を含むが、硫黄及び/又は重金属を含まず、P
1は第1の重合体であり、R
1は前記P
1の官能基であり、nは前記P
1の単量体の数であり、P
2は第2の重合体であり、R
2は前記P
2の官能基であり、前記P
1および前記P
2の単量体は、
、Rは炭素数1~10のアルキル基、
、Rは炭素数1~10のアルキル基、
または
であり、前記P
1と前記P
2の前記単量体は異なり、mは前記P
2の単量体の数であり、nとmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい、10~1500の整数であり、Xは末端官能基で、(X-1)~(X-6)のいずれかで表される構造であり、
【化3】
前記調整剤は、式(3)、式(4)、式(5)または式(6)で表される構造であ
り、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
式(3)と式(4)中、Yはハロゲン化合物、水素原子、OR基、NR-2基、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表し、式(6)中、Y1、Y2、とY3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい、ハロゲン化合物、水素原子、OR基、NR-2基、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表し、Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表すことを特徴とする、ブロック共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体合成技術の分野に関し、特に金属含有触媒なしでブロック共重合体を製造するための合成方法の分野に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年7月2日に出願された中華民国特許出願第109122419に対する、中華民国特許法第28条に基く優先権の利益を主張するものであり、上述した仮出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
ポリ酢酸ビニル(Poly(vinyl acetate),PVAc)は、工業用重合体のカテゴリーに属し、接着剤、塗装、および建築材料などの分野で広く活用されている。しかしながら、市販の製品では、PVAc材料の性能は、より高い重合体分散指数(polydispersity,PDI)に繋がる幅広い分子量分布に制限される。重要な可逆的失活ラジカル重合(RDRP)の1つである、可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動(RAFT)は過去20年で素晴らしい成果を上げてきた。穏やかな条件が合う動作環境と単量体を適用する範囲の幅広さなどにより、RAFTはブロック、グラフト、ハイパーブランチ、スターライク重合体などの合成に使用される多目的な技術になった。活性化基と不活性化基の両方が重合反応の動力学に大きく関与しているRAFT技術において、連鎖移動剤(CTA)と名付けられた調整剤が重要な役割を果たしていることに注意されたい。クミルジチオベンゾアト(CTB)および1-フェニルエチルジチオベンゾアト(PEDB)は、RAFT重合のために一般的に使用されるCTAであり、これは、スチレンおよびメチルアクリレートの重合においてより良好な制御を表すが、酢酸ビニルのような他の一般的な単量体のカテゴリーに限定される。
【0004】
ポリビニルアルコール(PVA)は、塗装、コンタクトレンズ、偏光板、ハイドロゲルなどに使用されている工業用重合体であり、高い必要なものを示し、付加価値の高い製品に使用されている。しかしながら、PVAブロック共重合体の合成を容易にするために使用される硫黄や重金属を含む調整剤は、生物毒性を表すだけでなく、環境汚染の危険性もある。さらには、比較的高い価格がPVAブロック共重合体の応用を妨げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ブロック共重合体生成時に毒性や環境汚染の問題を発生する問題を解決するために適用されるブロック共重合体を提供する。
【0006】
本発明の目的は、ブロック共重合体を制御するための調整剤を開発することである。調整剤は、炭素、水素、酸素、窒素などの原子のみを含むため、ブロック共重合体生成時に毒性や環境汚染の問題を発生させない。
【0007】
本発明の別の目的は、共役7員環有機化合物によって制御することで、分子量分布の狭いブロック共重合体を合成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的によれば、本発明は、式(1)で表され、式(2)で表す化学構造を有するブロック共重合体を明らかにする。
【0009】
【0010】
【化2】
式(1)中、P
1は第1の重合体であり、P
2は第2の重合体であり、R
1は第1の重合体の官能基であり、R
2は第2の重合体の官能基であり、Xはブロック共重合体の末端官能基であり、(X-1)~(X-6)で表される構構造を含む。nとmは正の整数であり、それぞれ独立に第1の重合体と第2の重合体の重合度(DP)であり、10から1500の間で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0011】
【0012】
本発明によれば、共役7員環有機化合物を調整剤として用いることで、より優れた重合を制御することが示されており、調整剤は式(3)、式(4)、または式(5)で表される構造である。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
(式(3)と式(4)中、Yはハロゲン化合物、水素原子、OR基、NR-2基、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。)
さらに、調整剤は式(6)で表される構造でもよい。
【0017】
【化7】
(式(6)中、Y
1、Y
2、とY
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい、ハロゲン化合物、水素原子、OR基、NR-
2基、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。)
【0018】
本発明によれば、第1の重合体および第2の重合体は、共役または非共役のアルケン単量体である。
【0019】
本発明によれば、第1の重合体の単量体および第2の重合体の単量体としては、例えば、(P-1)~(P-10)で表される構造等が挙げられる。
【0020】
【化8】
(P-8)、(P-9)中、Rは炭素数1~10のアルキル基を表す。(P-10)中、R
2はメチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基を表す。
【0021】
上記の目的によれば、本発明は、ブロック共重合体の調製方法を明らかにする。合成工程は、第1の重合体(P1’)の加水分解前の単量体、ラジカル開始剤、及び調整剤を1000:20:1の割合で混合して第1の中間体を形成し、第1の中間体は式(7)で表す構造を含む工程と、
【0022】
【化9】
第1の中間体と第2の重合体(P
2’)の加水分解前の単量体を混合して第2の中間体を形成し、第2の中間体は式(8)で表す構造を含む工程と、
【0023】
【化10】
第2の離散性ポリマーは、加水分解されていてもいなくてもよい。式(7)と式(8)中、Xは第1の中間体または第2の中間体の末端官能基であり、第2の中間体を加水分解することでブロック共重合体を生成する工程とを有する。ブロック共重合体は式(1)または式(9)で表す、式(2)で表す構造を含む。
【0024】
【0025】
【化12】
式(1)のP
2は、未加水分解の第2の重合体(P
2’)を加水分解した第2の重合体(P
2)であり、式(9)のP
2’は、未加水分解の第2重合体(P2’)を加水分解した第2重合体(P
2’)は加水分解されていない生成物である。
【0026】
【化13】
式(1)、式(2)、式(7)~式(9)中、mediatorは調整剤である。式(2)中、R
1は第1の重合体(P
1)の官能基であり、R
2は第2の重合体(P
2)の官能基であり、nは第1の重合体(P
1)の単量体の数であり、mは第2の重合体(P
2)の単量体の数であり、nとmはそれぞれ同一でも異なっていてもよい、10~1500の範囲内での整数であり、Xはブロック共重合体の末端官能基で、(X-1)~(X-6)で表される構造である。式(7)で表される由来の第1の中間体と、式(8)で表される由来の第2の中間体と、式(1)、式(2)、または式(9)で表される由来のブロック共重合体との末端官能基は同一であり。ブロック共重合体の重量平均分子量は2000~120000の範囲内であり、1000~200000の範囲内であることがより好ましい。
【0027】
【0028】
本発明によれば、ブロック共重合体の調製方法は、第1の中間体と第2の重合体の単量体とを混合する場合に、ラジカル開始剤の追加の有無に関わらず実施できることが示されている。
【0029】
本発明の調製方法によれば、水性開始剤または有機開始剤がブロック共重合体を調製するためのラジカル開始剤であり得る。
【0030】
本発明の調製方法によれば、ブロック共重合体を調製するためのより好ましい水性開始剤は、(I-1)2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリドと、(I-2)4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸))とが挙げられる。
【0031】
【0032】
本発明の調製方法によれば、ブロック共重合体を調製するためのより好ましい有機開始剤は、2,2′-アゾビズ(2-メチルプロピオンニトリル)(AIBN)、1,1‘-アゾビズ(シアノシクロヘキサン(ABCN)、過酸化ベンゾイル無水物(BPO)、またはジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)であり得る。
【0033】
【0034】
本発明の調製方法によれば、ブロック共重合体を調製するため、ラジカル開始剤と、調整剤とのモル比(ラジカル開始剤/調整剤)は、0.5~50の好ましい範囲内である。
【0035】
本発明の調製方法によれば、第1の重合体および第2の重合体は、共役または非共役のアルケン単量体であり得る。
【0036】
本発明の調製方法によれば、第1の重合体の単量体および第2の重合体の単量体としては、例えば、(P-1)~(P-9)または(P-11)で表される構造等が挙げられる。
【0037】
【化17】
(P-8)、(P-9)中、Rは炭素数1~10のアルキル基を表す。(P-10)中、R
2はメチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基を表す。
【0038】
本発明の調製方法によれば、共役7員環有機化合物を調整剤として使用することが好ましい、調整剤は式(3)、式(4)、または式(5)で表される構造である。
【0039】
【0040】
【0041】
【化20】
(式(3)と式(4)中、Yはハロゲン化合物、水素原子、OR基、NR-
2基、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表し。Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。)
【0042】
本発明の調製方法によれば、さらに、調整剤は下記式(6)で表される構造でもよい。
【0043】
【化21】
(式(6)中、Y
1、Y
2、とY
3はハロゲン化合物、水素原子、OR基、NR-
2基、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。)
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明のブロック共重合体の調製方法を模式的に表す図である。
【
図2A】本発明に従って、Tralenを調整剤として第1の中間体を形成した場合、単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図2B】本発明に従って、Tralenを調整剤として第1の中間体を形成した場合、重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図2C】本発明に従って、ラジカル開始剤の当量が異なる条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)が時間に対する関係を表す図である。
【
図3A】本発明に従って、Tralenを調整剤として第1の中間体を形成し、第1の重合体の単量体が酢酸ビニル(VAc)であり、単量体の当量が異なる条件で、単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図3B】本発明に従って、Tralenを調整剤として第1の中間体を形成し、第1の重合体の単量体が酢酸ビニル(VAc)であり、単量体の当量が異なる条件で、重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図3C】本発明に従って、第1の重合体の単量体の当量が異なる条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)が時間に対する関係を表す図である。
【
図4A】本発明に従って、Tralenを調整剤として、第1の重合体の単量体はアクリロニトリル(AN)である条件で、第1の中間体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図4B】本発明に従って、Tralenを調整剤として、第1の重合体の単量体はアクリロニトリル(AN)である条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図5A】本発明に従って、Tralenを調整剤として、第1の重合体の単量体はN-ビニルピロリドン(NVP)である条件で、単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図5B】本発明に従って、Tralenを調整剤として、第1の重合体の単量体はN-ビニルピロリドン(NVP)である条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図6A】本発明に従って、Troponeを調整剤として、単量体はVAcであり、ラジカル開始剤の当量が異なる条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図6B】本発明に従って、Troponeを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcである条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図6C】本発明に従って、Troponeを調整剤として、ラジカル開始剤の当量が異なる条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図7A】本発明に従って、Troponeを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcであり、第1の重合体の単量体が異なる当量を有する条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図7B】本発明に従って、Troponeを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcであり、第1の重合体の単量体が異なる当量を有する条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図7C】本発明に従って、第1の重合体の単量体はVAcであり、単量体の当量が異なる条件で、第1の中間体の重量平均分子量が時間に対する関係を表す図である。
【
図8A】本発明に従って、Troponeを調整剤として、第1の重合体の単量体はメチルアクリレート(MA)である条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図8B】本発明に従って、Troponeを調整剤として、第1の重合体の単量体はメチルアクリレート(MA)である条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図8C】本発明に従って、第1の重合体の単量体はメチルアクリレート(MA)である条件で、第1の中間体の重量平均分子量が時間に対する関係を表す図である。
【
図9A】本発明に従って、Tropoloneを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcであり、ラジカル開始剤の当量が異なる条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図9B】本発明に従って、Tropoloneを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcである条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図9C】本発明に従って、Tropoloneを調整剤として、ラジカル開始剤の当量が異なる条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図10A】本発明に従って、Tropoloneを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcであり、単量体が異なる当量を有する条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図10B】本発明に従って、Tropoloneを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcであり、単量体が異なる当量を有する条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図10C】本発明に従って、Tropoloneを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcであり、単量体が異なる当量を有する条件で、第1の中間体の重量平均分子量が時間に対する関係を表す図である。
【
図11A】本発明に従って、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-044として知られる)をイニシエーターとして、Tropoloneを調整剤として、第1の重合体の単量体はN-ビニルピロリドン(NVP)である条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図11B】本発明に従って、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-044として知られる)をイニシエーターとして、Tropoloneを調整剤として、第1の重合体の単量体はN-ビニルピロリドン(NVP)である条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す図である。
【
図11C】本発明に従って、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-044として知られる)をイニシエーターとして、Tropoloneを調整剤として、第1の重合体の単量体はN-ビニルピロリドン(NVP)である条件で、第1の中間体の重量平均分子量が時間に対する関係を表す図である。
【
図12A】本発明に従って、Binam-Tralenを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcであり、ラジカル開始剤の当量が異なる条件で、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す図である。
【
図12B】本発明に従って、Binam-Tralenを調整剤として、第1の重合体の単量体はVAcであり、ララジカル開始剤の当量が異なる条件で、第1の中間体対単量体の転化率の重量平均分子量(Mn)と重合体分散指数(PDI)の関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書に組み込まれ一部を構成する添付の内容は、開示された様々な実施形態を示し、その説明とともに、開示された実施形態の原理を説明する。本明細書で用いるところでは、「含む(comprise)」といった用語やそれらの任意の他の変化は、非排他的な包含をカバーすることを意図される。
【0046】
本発明では、オレフィン単量体の重合し、炭素、水素、酸素、窒素を含む共役7員環化合物を調整剤として用いることにより、特にポリビニルアルコール系におけるブロック重合体を形成する。本発明のブロック重合体は下記式(1)で表され、下記式(2)で表す化学構造を有するブロック共重合体を明らかにする。
【0047】
【0048】
【化23】
式(1)中、P
1は第1の重合体であり、P
2は第2の重合体であり、Xはブロック共重合体の末端官能基であり、(X-1)~(X-6)で表される構造を含み、上記の構造を含むがそれに限定されない。R
1は第1の重合体(P
1)の官能基であり、nは整数で、第1の重合体(P
1)の重合度(DP)である。R
2は第2の重合体(P
2)の官能基であり、mは整数で、第2の重合体(P
2)の重合度(DP)である。好ましい実施態様では、第1の重合体(P
1)と第2の重合体(P
2)は同じであっても異なっていてもよい。
【0049】
【0050】
実施態様では、上述したブロック共重合体の末端官能基(X)は、熱、光、音波等によりラジカル開始剤から生成される。ラジカル開始剤の誘導方法は表1に示されている。
【0051】
【0052】
好ましい実施態様では、調整剤は共役の7員環構造を持ち、下記式(3)、下記式(4)、下記式(5)、または下記式(6)で表される構造である。
【0053】
【0054】
【化26】
(式(3)と式(4)中、Yはハロゲン化合物、水素原子、OR基、NR-
2基、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表し。Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。)
【0055】
【0056】
【化28】
(式(6)中、Y
1、Y
2、とY
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい、ハロゲン化合物、水素原子、OR基、NR-
2基、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルカン基、芳香環基、またはアレーン基を表す。)上述したように、調整剤は、炭素、水素、酸素、窒素などの原子のみを含有しているため、重合過程で毒性や環境汚染の問題が発生しない。
【0057】
本発明において、第1の重合体の単量体および第2の重合体の単量体としては、例えば、(P-1)~(P-9)または(P-11)で表される構造等が挙げられる。
【0058】
【化29】
(P-8)、(P-9)中、Rは炭素数1~10のアルキル基を表す。本発明において、第1の重合体と第2の重合体の単量体は、同一であっても異なっていてもよい。一般に、第1の重合体としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールでもよい、第2の重合体としては、ポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリビニリデンフルオリド、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリエピクロロヒドリン、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、ポリ(N,N‐ジメチルアクリルアミド)、ポリアクリレート等が挙げられ、上述のこれら種類に限定されない。
【0059】
上述した情報によれば、ブロック共重合体の調製方法が
図1のように示されている。
図1において、工程S1は、加水分解前の第1の重合体(P
1’)の単量体と、ラジカル開始剤と、調整剤とを混合して第1の中間体を形成し、第1の中間体は式(7)で表す構造を含む。
【0060】
【化30】
式(7)中、Xは第1の重合体の末端官能基である。この工程では、第1の重合体の単量体と、ラジカル開始剤と、調整剤との比率は1:20:1,000である。ラジカル開始剤と、調整剤の割合が0.5~50の範囲内である場合はより好ましい。第1重合体の単量体と、調整剤の割合は10~3000の範囲内である。また、ラジカル開始剤は、水性開始剤であっても有機開始剤であってもよく、水性開始剤としては、(I-1)2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリドと、(I-2)4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸))とが挙げられる。
【0061】
【化31】
有機開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ABCN)と、過酸化ベンゾイル無水物(BPO)と、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)とが挙げられる。
【0062】
【0063】
AIBNがオレフィン単量体の重合反応や他のラジカル反応に広く利用されていることから、AIBNを開始剤とする場合はより好ましい。オレフィン単量体としては、酢酸ビニル、アクリレート、アクリロニトリル、塩化ビニルが挙げられる。AIBNをラジカル開始剤として使用する利点は、分解温度が65℃~85℃の範囲内にあるため、ほとんどの重合反応に適用することである。また、AIBNが様々な溶媒の中での解離速度はかなり穏やかである。
【0064】
次に工程S2は、式(7)で表す第1の中間体と、加水分解前の第2重合体(P2’)の単量体とを混合して第2の中間体を形成し、第2の中間体は式(8)で表す構造を含む。
【0065】
【化33】
式(8)中、Xは第2重合体の末端官能基である。この工程では、ラジカル開始剤を添加してもしなくてもよい。最後に工程S3は、式(8)で表す第2の中間体の加水分解によりブロック共重合体を得ることができる。しかし、第2の重合体(P
2’)は加水分解することができない可能性がある。もし、第2の重合体(P
2’)が加水分解できない場合、第2の中間体は加水分解後、式(9)で表す構造に変化する。
【0066】
【化34】
もし、第2の重合体(P
2’)が加水分解可能である場合、第2の中間体は加水分解後、式(1)で表す構造に変化する。
【0067】
【化35】
式(1)中、P
2は第2の重合体を加水分解した産物を意味する。最終ブロック共重合体の一般的構造は、加水分解に関係なく、式(2)で表される。
【0068】
【化36】
式(7)で表す第1の中間体と、式(8)で表す第2の中間体と、式(1)、式(2)、および式(9)で表すブロック共重合体との末端官能基(X)は同一で、(X-1)~(X-6)で表される構造でもよく、上記のこれら構造に限定されない。末端官能基(X)の生成方法は先に既に記述されている。式(1)、式(2)、式(7)~式(9)中、mediatorは調整剤である。式(2)中、R
1は第1の重合体(P
1)の官能基であり、R
2は第2の重合体(P
2またはP
2
‘)の官能基であり、nは第1の重合体(P
1)の単量体の数であり、mは第2の重合体(P
2)の単量体の数であり、nとmは整数である。本発明において、第1の重合体(P
1)と第2の重合体(P
2)は、同じであっても異なっていてもよい。
【0069】
【実施例】
【0070】
以下の説明は、上記の方法に従ってブロック共重合体を製造するためのものである。以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(VAc)
調整剤はTralenであり、ラジカル開始剤(X)はAIBNであり、第1の重合体はVAcである。
【0072】
【化38】
調整剤(Tralen)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(VAc)の単量体との比率が1:X:1000であり、溶媒がなく、反応温度は60℃でこれらを混合して、PVAcを生成することができる(工程S1で記載した第1の中間体)。反応は式(10)のように表される。
【0073】
【0074】
本実施例では、ラジカル開始剤(AIBN)の当量が別にする(それぞれ50、30、20、10の当量)条件で反応を行い、調整剤(Tralen)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(VAc)との比率は1:X:1000にする。第1の中間体の単量体が時間に対する関係は
図2Aに表す。
図2Aにおいて、単量体の転化は時間とともに直線的な相関を表す。AIBNの濃度を高くすることで誘導の期間を短くなり、重合速度が高まった。逆に言えば、AIBNの濃度を低くすることで誘導の期間が長くなり、重合速度が減った。第1の中間体の重量平均分子量(Mn)と重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係は
図2Bに表す。
図2Bにおいて、重量平均分子量は単量体の転化率に応じて直線的な相関があり、重合反応では理論分子量に従っていた。
図2Cでは、重量平均分子量(Mn)が大きいほど、溶出時間が短くなり、それゆえ、ラジカル開始剤の割合が異なる条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)は時間が増えるとともに高い値に転じった。
【0075】
(実施例2)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(VAc)
調整剤はTralenであり、ラジカル開始剤はAIBNである。調整剤(Tralen)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(VAc)の単量体との比率を1:20:yにし、第1の重合体(VAc)の単量体を、濃度が10.85Mとするように、溶媒がなく、反応温度は60℃で重合反応を行うことにより、PVAc(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。反応は上記式(10)と同じである。実施態様2と実施態様1との相違点は、第1重合体(VAc)の単量体が当量をそれぞれ500、1000、2500、4000にする。第1中間体の単量体の転化率が時間に対する関係は
図3Aに示されている。単量体の転化率に対する第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)は
図3Bに示される。
図3Aにおいて、単量体の転化は、誘導の期間が一貫して、時間とともに直線的な相関を有していた。
図3Cは、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)が大きな値に転じたことを示している。第一中間体の重量平均分子量(Mn)は、単量体の割合が異なる条件で、時間とともに直線的に増加した。
【0076】
(実施例3)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(AN)
調整剤はTralenであり、ラジカル開始剤はAIBNである。本実施例では、調整剤(Tralen)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(AN)の単量体との比率を1:10:1000にし、ANの濃度は5.08Mとするように、DMF(ジメチルホルムアミド)中で60℃で重合反応を行うことにより、PAN(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。反応は式(11)のように表される。
【0077】
【0078】
図4Aは第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す。
図4Bは第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す。
図4Aにおいて、第1の中間体の単量体の転化率は時間とともに直線的な相関が観察された。第一中間体の重量平均分子量は、単量体の転化率に応じて直線的な相関を示しており、提示の調整剤(Tralen)の理論分子量と一致していることが
図4Bに示される。
【0079】
(実施例4)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(NVP)
調整剤はTralenであり、ラジカル開始剤(X)はAIBNである。本実施例では、調整剤(Tralen)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体の単量体(NVP)との比率は1:10:1000にし、NVPの濃度は9.36Mとするように、溶媒がなく60℃で重合反応を行うことにより、PNVP(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。反応は式(12)のように表される。
【0080】
【0081】
図5Aは、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す。第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を
図5Bに示されている。
図5Aは、明らかな誘導の期間であって、単量体の転化率がゼロに近くなることが観察された。誘導の期間を経て、単量体の転化率が時間とともに直線的にして急激に上昇することがある。
図5Bにおいて、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)が単量体の転化率に応じて直線的に成長することがある。さらに、重量平均分子量(Mn)は理論値と一致している。
【0082】
(実施例5)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(VAc)
調整剤は(Tropone)であり、ラジカル開始剤(X)はAIBNである。
【0083】
【化42】
調整剤(Tropone)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(VAc)との比率を1:X:1000にし、溶媒がなく、60℃で反応を行い、PVAc(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。反応は式(13)のように表される。
【0084】
【0085】
調整剤と、ラジカル開始剤と、第1の重合体(VAc)の単量体との比率が1:X:1,000で、ここでXはラジカル開始剤(AIBN)の当量(それぞれが40、20、10とを指す)であり、調整剤(Tropone)と、第1の重合体(VAc)の単量体との濃度が一定で、反応が実行される。その結果は
図6Aに示されており、第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表している。
図6Aにおいて、単量体の転化率は時間とともに直線的に成長し、AIBNの濃度が高いと誘導の期間が短く、重合速度が速くなる。AIBNの濃度が低いと誘導の期間が長く、重合速度が遅くなる。
図6Bは第1の中間体の重量平均分子量(Mn)と重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を示している。
図6Bにおいて、重合反応で重量平均分子量は理論分子量から乖離しているが、それでも単量体の転化率に応じて直線的に成長している。
図6Cは分子量の時間に対する増加を示している。溶出時間が短いということは、重量平均分子量が大きくなることを表している。従って、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)は、時間とともに成長し、ラジカル開始剤の異なる割合の条件で、信号のピークは高分子量の場所へ転じる。
【0086】
(実施例6)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(VAc)
調整剤はTroponeであり、ラジカル開始剤はAIBNである。調整剤(Tropone)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1重合体(VAc)の単量体との比率を1:20:yにして、第1の重合体(VAc)の単量体の濃度を10.85Mとするように、溶媒がなく、反応温度は60℃で重合反応を行うことにより、PVAc(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。反応は上記式(13)と同じである。違いは、第1の重合体(VAc)の単量体の当量が変わられ、それはそれぞれ300、1000、3000である。第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係は
図7Aに示される。第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が転化率に対する関係は
図7Bに示されている。
【0087】
図7Aでは、単量体の転化率は時間と共に直線的に成長し、誘導の期間は前回の結果と同様ということが観察された。
図7Bにおいて、重量平均分子量は理論分子量から乖離しているが、それでも単量体の転化率に従って直線的に成長する。単量体の割合が高くなると、分子量は100000近くに達する。単量体の割合が低くなると、単量体の転化率は65%に達する。
図7Cは時間に対する分子量の増加を表す。溶出時間が短いということは、重量平均分子量(Mn)が大きくなることを示している。従って、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)は、時間とともに成長し、単量体の当量の異なる割合の条件で、信号のピークは高分子量の場所へ転じる。
【0088】
(実施例7)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(MA)
調整剤はTroponeであり、ラジカル開始剤(X)はAIBNである。本実施例では調整剤(Tropone)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(MA)の単量体との比率を1:20:1000にし、MAの濃度を5.42Mにするように、ベンゼン中で、50℃で重合反応を行うことにより、PMA(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。反応は式(14)のように表される。
【0089】
【0090】
図8Aは第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す。
図8Bは第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す。
図8Aにおいて、第1の中間体の単量体の転化率は時間とともに直線的に増加する。
図8Bにおいて、調整剤(Tropone)の存在で、第1の中間体の重量平均分子量は理論分子量から乖離しているが、それでも単量体の転化率に応じて直線的に増加している。
図8Cは分子量の増加を表す。溶出時間が短いということは、重量平均分子量(Mn)が大きくなることを表している。従って、単量体の当量の異なる割合の条件で、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)は、時間とともに成長し、信号のピークは高分子量の場所へ転じる。
【0091】
(実施例8)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(VAc)
調整剤はTropoloneであり、ラジカル開始剤(X)はAIBNである。
【0092】
【化45】
調整剤(Tropolone)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(VAc)の単量体との比率を1:X:1000にして、溶媒がなく、60℃で重合反応を行うことにより、PVAc(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。反応は式(15)のように表される
【0093】
【0094】
調整剤(Tropolone)と第1の重合体(VAc)の濃度が固定されている条件で、調整剤と、ラジカル開始剤と、第1の重合体の単量体(VAc)とが1:X:1000における比率と等しくことで、当量が異なる(それぞれが40、20、10とを指す)ラジカル開始剤(AIBN)と重合反応を行うことにより、第1の重合体を生成することができる。第1の中間体の単量体の転化率時間に対する関係が
図9Aに示されている。
図9Aにおいて、単量体の転化率は時間とともに直線的に成長し、AIBNの濃度が高いと誘導の期間が短く、重合速度が速くなる。AIBNの濃度が低いと誘導の期間が長く、重合速度が遅くなる。
図9Bは第1の中間体の重量平均分子量(Mn)と重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を示している。
図9Bにおいて、重合反応で重量平均分子量は理論分子量から乖離しているが、それでも単量体の転化率に応じて直線的に成長している。
図9Cは分子量の時間に対する増加を示している。溶出時間が短いということは、重量平均分子量(Mn)が大きくなることを示している。従って、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)は、時間とともに成長し、単量体の当量の異なる割合の条件で、信号のピークは高分子量の場所へ転じる。
【0095】
(実施例9)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(VAc)
調整剤はTropoloneでありラジカル開始剤はAIBNである。調整剤(Tropolone)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(VAc)の単量体との比率を1:20:yにして、第1の重合体(VAc)の単量体が10.85Mの濃度にするように、溶媒がなく、60℃で重合反応を行うことにより、PVAc(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。反応の式は実施例8と同様であるが、実施例9では第1の重合体の単量体(VAc)の当量がそれぞれ300、1000、3000に変更されている。
図10Aは第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す。
図10Bは第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す。
図10Aにおいて、単量体の転化率は時間とともに直線的な相関を示している。
図10Bにおいて、平均分子量は理論分子量から乖離が発生したが、単量体の転化率に応じて直線的な相関を示している。より高い単量体の割合を適用した場合、分子量は120000に達してもよい。単量体の割合を低く適用した場合、単量体の転化率は55%に達してもよい。
図10Cは分子量の時間に対する増加を示している。溶出時間が短いということは、重量平均分子量(Mn)が大きくなることを表している。従って、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)は、時間とともに成長し、単量体の当量の異なる割合の条件で、信号のピークは高分子量の場所へ転じる。
【0096】
(実施例10)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(NVP)
調整剤はTropoloneであり、ラジカル開始剤(X)はVA-044である。本実施例では、調整剤(Tropolone)と、ラジカル開始剤(VA-044)と、第1の重合体(NVP)の単量体との比率を1:20:1000にして、NVPの濃度を4.68Mにするように、蒸留水中で、40℃で重合反応を行うことにより、PNVP(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができた。反応は式(16)のように表される。
【0097】
【0098】
図11Aは第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す。
図11Bは第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す。第1の中間体の形成の前に、明らかな誘導の期間であって、単量体の転化率がかなり増加しないということである。誘導の期間の後、単量体の転化率が時間とともに直線的にして急速に成長することがある。
図11Bにおいて、第1の中間体の単量体の転化率が増加すると、その重量平均分子量も増加する。高い単量体の転化率では、平均分子量の理論分子量からの乖離が観察された。
図11Cは分子量の時間に対する増加を示している。溶出時間が短いことは、より大きな重量平均分子量(Mn)を表している。従って、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)は、時間とともに成長し、単量体の当量の異なる割合の条件で、信号のピークは高分子量の場所へ転じる。
【0099】
(実施例11)
調整剤、ラジカル開始剤、および第1の重合体の単量体(VAc)
調整剤はBinam‐Tralenであり、ラジカル開始剤(X)はAIBNである。
【0100】
【化48】
調整剤(Binam-Tralen)と、ラジカル開始剤(AIBN)と、第1の重合体(VAc)の単量体との比率を1:X:1000にして、第1の重合体(VAc)の単量体が10.85Mの濃度にするように、Xはそれぞれ40、20、10であり、溶媒がなく、60℃で重合反応を行うことにより、PVAc(工程S1で記載した第1の中間体)を生成することができる。
【0101】
図12Aは第1の中間体の単量体の転化率が時間に対する関係を表す。
図12Bは第1の中間体の重量平均分子量(Mn)および重合体分散指数(PDI)が単量体の転化率に対する関係を表す。
図12Aにおいて、単量体の転化率は時間とともに直線的な相関を示している。AIBNの濃度を上げると、誘導の期間が短く、重合速度が速くなる。
図12Bにおいて、ラジカル開始剤の割合に関わらず、第1の中間体の重量平均分子量(Mn)は、単量体の転化率に応じて直線的な相関を有し、理論値と一致する。
【0102】
本発明において、単量体の転化率というのは、重合反応により第1の中間体に転換される第1の重合体の単量体と、未反応の単量体との割合を意味し、それは
1H NMR分光法で測定された。重量平均分子量(Mn)はGPC法で測定された。ポリスチレンをGPCの基準として使用されている。理論分子量は下記式(I)で計算することができる。
式(I)中、M
n,thは理論分子量であり、[単量体]
0は第1の重合体の単量体の初期濃度であり、[調整剤]
0は 調整剤の初期濃度であり、分子量は単量体の重量平均分子量であり、転化率は第1の重合体の単量体の転化率である。
【0103】
次には、式(7)で表される第1の中間体と、工程S2に表す第2の重合体の単量体とを混合して、次いで加水分解され、式(1)または式(9)で表されるブロック共重合体が得られ。例えば、実施例1では、第1の中間体(実施例1から生成したPVAc)と、第2重合体の単量体(MA)とを混合して第2の中間体を形成することができる。第2の中間体はVAcとMAのブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mn)が28000になり、重合体分散指数が2.22になる。反応は式(17)のように表される。
【0104】
【0105】
第2中間体を加水分解の後に、PVAc-b-PAAのブロック共重合体を得ることができる。
【0106】
以上述べたように、本発明によれば、重合反応ための触媒および媒介剤は、金属を含まない(遷移金属や重金属を含まない)だけでなく、硫黄を含まない化合物である。従って、調整剤はより低い生物毒性を有し、環境への汚染が制限されている。また、特定の共役7員環を調整剤として用いることで、環境に優しい、所定の分子量を有するブロック共重合体を製造することができる。本実施態様では、ブロック共重合体の重量平均分子量は必要に応じて、2000~120000、または1000~2000000の範囲内で制御することができる。ブロック共重合体の特性は、界面活性剤、顔料分散剤、乳化剤、および薬物輸送などの生体材料の分野により適している。従って、本発明により開発されたブロック共重合体は、接着剤、安定剤、分散剤、乳化剤、写真乳剤、充填材などに応用することができる。
【0107】
上記の実施形態は、本発明の原理及び機能を実証するためだけに提供され、本発明の範囲を限定する意図はない。以下の特許請求の範囲によって規定される本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の種々の変更を当業者によって行うことができる。