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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】撮像光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/06 20060101AFI20240910BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G02B13/06
G02B13/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020183122
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073252
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】509315700
【氏名又は名称】清水 創太
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 創太
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109557637(CN,A)
【文献】特開2014-164287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0050846(US,A1)
【文献】特開2018-087938(JP,A)
【文献】特開2013-195587(JP,A)
【文献】特開2021-156923(JP,A)
【文献】特開2021-152594(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121550(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から、前群と、絞りと、結像光学系である後群とが配された広角中心窩レンズである撮像光学系において、
前記前群は、屈折力がレンズ中心から周辺に向かって減少する非球面レンズである最も物体側の第1レンズを含み、
前記後群は、両凸形状、または中央部が両凸形状であり周辺部が平凸ないし凸メニスカス形状の結像用非球面レンズを含み、
物体側から順に、
負の屈折力を有する第4レンズと、
正の屈折力を有し、前記第4レンズと接合された第5レンズと、
正の屈折力を有する第6レンズと、
前記結像用非球面レンズとなる正の屈折力を有する第7レンズと、
から実質的になる、
像光学系。
【請求項2】
前記第1レンズは、光軸近傍において物体側が凸面の正の屈折力を有するメニスカス形状であり、レンズ周辺部において両凹形状である
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項3】
前記前群は、前記第1レンズの像側に配され、屈折力がレンズ中心から周辺に向かって増大する非球面レンズである第2レンズを備える
請求項1または2に記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記第2レンズは、光軸近傍において物体側が凸面の負の屈折力を有するメニスカス形状であり、レンズ周辺部において像側が凸面のメニスカス形状である
請求項3に記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記前群は、
前記第1レンズ及び前記第2レンズと、
前記第2レンズの像側に配され、負の屈折力を有する第3レンズと、
から実質的になる請求項3または4に記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記前群は、前記第1レンズの光軸近傍に小さな角度で入射する平行光線束の径を小さくし、前記第1レンズのレンズ周辺部に大きな角度で入射する平行光線束の角度を光軸に近づけるとともにその平行光線束の径を大きくする、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項7】
最大半画角における歪曲収差Daが「-95%<Da<-10%」を満たす、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の撮像光学系と、
前記撮像光学系で結像される光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像光学系及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人の眼をモデルにして、視野が広く、しかも中心部では高い解像度が得られる広角中心窩レンズと称される光学系が知られている。このような光学系では、視野の中央部の光学倍率を周辺よりも高くすることにより、中央部から注目する物体に関する多くの画像情報を得、周辺部から広範囲な情報が得られるようにしている。
【0003】
広角中心窩光学レンズとしての撮像光学系が特許文献1により知られている。この特許文献1の撮像光学系は、絞りを挟んで前群と後群とが配されている。特許文献1の撮像光学系では、前群は、物体側から順に、像倍率を制御する第1レンズ群と、絞りに入射する光線束の径を調整する第2レンズ群とからなり、後群は、各レンズ面が球面形状である複数のレンズからなり、前群からの光を撮像素子の受光面に結像させる結像光学系を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-56849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の撮像光学系は、最も物体側のレンズ面が物体側に突出した凸形状であり、そのレンズ面の周辺部に光軸に対して大きな角度を有する光線が入射するため、レンズが鏡胴から大きく飛び出す構成であった。このため、飛び出したレンズ面が傷つきやすいという問題があったことから、最も物体側にある第1レンズの飛び出し量を抑えることが望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、最も物体側にある第1レンズの飛び出し量を小さく抑えることができる広角中心窩レンズである撮像光学系及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像光学系は、物体側から、前群と、絞りと、結像光学系である後群とが配された広角中心窩レンズである撮像光学系において、前記前群は、屈折力がレンズ中心から周辺に向かって減少する非球面レンズである最も物体側の第1レンズを含み、前記後群は、両凸形状、または中央部が両凸形状であり周辺部が平凸ないし凸メニスカス形状の結像用非球面レンズを含むものである。
【0008】
本発明の撮像装置は、上記撮像光学系と、前記撮像光学系で結像される光学像を電気的な信号に変換する撮像素子とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、最も物体側にある第1レンズを、その屈折力がレンズ中心から周辺に向かって減少する非球面レンズとし、結像光学系である後群に両凸形状、または中央部が両凸形状であり周辺部が平凸ないし凸メニスカス形状の結像用非球面レンズを含むようにしたので、広角中心窩レンズとして構成しつつ、撮像光学系の最も物体側のレンズ面である、第1レンズの物体側のレンズ面の飛び出し量を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る撮像光学系の第1の構成例を示す断面図である。
図2】実施形態に係る撮像光学系の第2の構成例を示す断面図である。
図3】第1の構成例の撮像光学系の収差を示す収差図である。
図4】第2の構成例の撮像光学系の収差を示す収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る撮像光学系の第1の構成例を図1に、第2の構成例を図2にそれぞれ示す。第1の構成例及び第2の構成例の撮像光学系10は、いずれも飛び出し量を抑えた形状の広角中心窩レンズである。第1の構成例及び第2の構成例の撮像光学系10は、後述する数値実施例1、2にそれぞれ対応している。第2の構成例の撮像光学系10は、第1の構成例のものに比べてより広い画角である。図1では、軸上光線束(入射角0°)、入射角16.76°の光線束、最大画角の光線束(入射角47°)の各光路を、また図2では、軸上光線束(入射角0°)、入射角18.60°の光線束、最大画角の光線束(入射角50°)の各光路をそれぞれ描いてある。
【0012】
以下では、撮像光学系の構成を図1に示される第1の構成例を基に説明しつつ、第1の構成例及び第2の構成例の具体的な構成について説明する。また、以下の説明において「実質的になる」とは、パワーをほとんど有しないレンズないしレンズ群、絞りやマスクやカバーガラスやフィルタ等のレンズ以外の光学要素、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、手ぶれ補正機構等の機構部分等、光学的性能に原理的に影響を及ぼさない他の光学要素を付加してもよいことを意味する。
【0013】
撮像光学系10は、大きな画角を有しかつ撮像画面の画面中央部で画面周辺部よりも高い光学倍率(横倍率)を有する広角中心窩レンズである。すなわち、撮像光学系10は、画面中央部の像高を大きく拡大し、周辺部の像高を圧縮しており、広角の撮像画面の画面周辺部で一定の解像度を維持しつつ画面中央部において高い解像度を得ることができる。撮像光学系10は、広角中心窩レンズとして最大半画角における歪曲収差Daが「-95%<Da<-10%」を満たすことが好ましい。
【0014】
撮像光学系10は、例えば前方の物体の認識及び測距を高い精度で行いながら、周囲では広範囲の物体の認識及び測距を一定レベルで行うシステム等に好適であり、運転支援システム、自動運転用の車載カメラとして有用である。撮像光学系10は、例えば、光学系で結像される光学像を電気的な信号に変換する撮像素子を備える撮像装置(図示省略)に装着あるいは一体に組み付けられる。
【0015】
撮像光学系10は、物体側(図中左側)から順に、前群Gf、絞りST、後群Grが配されており、絞りSTを挟んで前群Gfと後群Grとが配置される構成である。撮像光学系10の像面IMには、例えば結像される光学像を電気的な信号に変換する撮像素子(図示省略)の受光面が配される。また、この例では、絞りSTと後群Grとの間には、平板形状の赤外線カットフィルタP1が、後群Grと像面IMとの間には、撮像素子の受光面を保護するカバープレートP2が配されている。赤外線カットフィルタP1、カバープレートP2は、省略することができる。
【0016】
以下の説明では、レンズ面の曲率半径ないし曲率半径の逆数である曲率については、曲率中心がレンズ面より像側(図中右側)にある場合に正の値とし、曲率中心が当該レンズ面より物体側にある場合を負の値とする。曲率半径の増大は曲率の減少を意味し、曲率半径の減少は、曲率の増大を意味する。したがって、例えば、正の曲率半径が増大した後に符号が反転して負の曲率半径となる場合は、正の曲率が減少して曲率が負に転じることと同義である。
【0017】
前群Gfは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2とが配されている。第1レンズ群G1は、物体側から順に、第1レンズL1と、第2レンズL2とから実質的になる。広角中心窩レンズとしての像倍率の制御が第1レンズ群G1によりなされる。
【0018】
広角中心窩レンズとしての像倍率の制御を担う第1レンズ群G1の第1レンズL1は、レンズ中心(光軸上)から周辺に向かって、屈折力が減少する非球面レンズとして構成される。この第1レンズL1については、レンズ中心の屈折力が正の値でも、負の値でもよく、レンズ中心の屈折力が正の値から減少していき、レンズ周辺部において屈折力が負の値となるように構成されてもよい。また、第1レンズL1の像側に配される第2レンズL2は、第1レンズL1と対になって、屈折力がレンズ中心から増大する非球面レンズとして構成される。この第2レンズL2については、レンズ中心の屈折力が負の値でも、正の値でもよく、レンズ中心の屈折力が負の値から増大していき、レンズ周辺部において屈折力が正の値となるように構成されてもよい。このような第1レンズ群G1と、詳細を後述する後群Gr中の結像用非球面レンズとの組合せにより、第1レンズL1の物体側への飛び出し量が小さく抑えられる。
【0019】
第1の構成例及び第2の構成例では、第1レンズL1の物体側のレンズ面S1aは、そのレンズ中心から周辺に向かって、正の曲率半径が増大した後に符号が反転して負の曲率半径となる非球面形状である。すなわち、第1レンズL1の物体側のレンズ面S1aは、光軸近傍から周辺部までの間に凸面から凹面に面形状が変化する変曲点を有する非球面形状である。このため、レンズ面S1aは、光軸近傍が正の屈折力を有し、その屈折力が周辺に向かって減少していき符号が正から負に反転し、周辺部において負の屈折力を有する。なお、レンズ面の屈折力は、当該レンズ面の物体側の媒質の屈折力をni、像側の媒質の屈折力をni+1、レンズ面の曲率半径をrとしたときに、値「(ni+1-ni)/r」で表される。なお、曲率半径の符号(正負)は、上述の通りである。
【0020】
上記レンズ面S1aは、撮像光学系10の最も物体側のレンズ面であって、このレンズ面S1aを上記のように正の曲率半径が増大した後に符号が反転して負の曲率半径となる非球面形状とすることは、広角中心窩レンズとしての光学性能を実現しながら、鏡胴からの飛び出し量を小さくするうえで好ましい。また、レンズ面S1aの曲率が負である場合、その曲率半径の絶対値が大きい、例えば曲率半径の絶対値がレンズ面S1aの最大有効径の1/8以上であることが好ましい。
【0021】
第1レンズL1の像側のレンズ面S1bは、凹面形状、すなわち曲率半径が正であり、レンズ中心から周辺に向かって曲率半径が小さくなる非球面形状である。このレンズ面S1bは、光軸近傍から周辺部にわたって負の屈折力を有し、レンズ中心から周辺に向かって屈折力の絶対値が大きくなる。
【0022】
上記第1レンズL1は、光軸近傍では、物体側のレンズ面S1aの曲率半径よりも像側のレンズ面S1bの曲率半径が大きくなるように構成され、物体側に凸面を向けたメニスカス形状である。また、第1レンズL1は、光軸から離れたレンズ周辺部では両凹形状であり、負の屈折力を有する。
【0023】
上記第1レンズL1は、その光軸近傍に撮像画面中央からの光線が小さな入射角で入射し、その入射角の小さな入射光に対しては、正の屈折力により、その入射する光線束の径を小さくする。また、第1レンズL1は、レンズ周辺部に向かうほど撮像画面の周辺からの光線が入射してその入射角が大きくなり、その入射光に対して屈折力が小さくなっていき、撮像画面の周辺部からレンズ周辺部に入射する入射角の大きな光線に対しては、負の屈折力により光線束の径を大きくする。
【0024】
第1の構成例及び第2の構成例では、第2レンズL2の物体側のレンズ面S2aは、レンズ中心から周辺に向かって、正の曲率半径が増大した後に符号が反転して負の曲率半径となる非球面形状である。すなわち、レンズ面S2aは、光軸近傍から周辺部までの間に凸面から凹面に面形状が変化する変曲点を有する非球面形状である。このため、レンズ面S2aは、光軸近傍が正の屈折力を有し、その屈折力が周辺に向かって減少していき符号が正から負に反転し、レンズ周辺部において負の屈折力を有する。
【0025】
第2レンズL2の像側のレンズ面S2bは、レンズ中心から周辺に向かって、正の曲率半径が増大した後に符号が反転して負の曲率半径となる非球面形状である。すなわち、レンズ面S2bは、光軸近傍から周辺部までの間に凹面から凸面に面形状が変化する変曲点を有する非球面形状である。このため、レンズ面S2bは、光軸近傍が負の屈折力を有し、その屈折力が周辺に向かって増大していき符号が負から正に反転し、周辺部において正の屈折力を有する。
【0026】
上記第2レンズL2は、光軸近傍では、物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、負の屈折力を有する。また、第2レンズL2は、光軸から離れたレンズ周辺部では凹面を物体側に向けたメニスカス形状であり、正の屈折力を有する。
【0027】
上記第1レンズL1と第2レンズL2で構成される第1レンズ群G1は、それ全体として、第1レンズL1の光軸近傍に入射する入射角の小さな入射光に対しては正の屈折力を示し、その平行光線束の径を入射前よりも小さくする。一方、第1レンズL1のレンズ周辺部に入射する入射角の大きな入射光に対しては、負の屈折力を示し、その平行光線束の径を入射前よりも大きくする。
【0028】
第1レンズ群G1を上記第1レンズL1と第2レンズL2とで構成することにより、第1レンズL1、第2レンズL2の非球面次数の高次数化の抑制と、レンズ枚数の増加を抑えて全長のコンパクト化等に有利にしながら、広角中心窩レンズとしての所望と良好な光学性能を得ている。
【0029】
第1レンズ群G1は、全体として略アフォーカル系の光学系として構成するのがよい。すなわち、第1レンズ群G1は、第1レンズL1の光軸近傍に入射する入射角の小さな平行光束線、レンズ周辺部に入射する入射角の大きな平行光束線を略平行な光束線として射出するのがよい。なお、第1の構成例及び第2の構成例の第1レンズ群G1では、第1レンズL1の光軸近傍に入射する入射角の小さな入射光に対しては、弱い正の屈折力を示し、レンズ周辺部に入射する入射角の大きな入射光に対しては、弱い負の屈折力を示す。
【0030】
第2レンズ群G2は、負の屈折力を有するように構成される。第1の構成例及び第2構成例では、1枚の第3レンズL3から実質的になる。第1の構成例では、第3レンズL3は、物体側が平面、像側が凹面になった平凹形状であり、その凹面は球面形状である。第2の構成例では、第3レンズL3は、両凹形状であり、物体側及び像側のいずれもが球面形状である。第2レンズ群G2(第3レンズL3)は、第1レンズL1に入射する光線が絞りSTの最大径を通過して、最終的に像面IMで結像したとき、撮影画面全体で光量が一様になるような入射光線の広がりとなる屈折力にすればよい。この第3レンズL3は、撮像光学系10の明るさの向上に寄与する。これは、全ての入射角の光線を絞り径を最大に使えるような構成となっているためである。なお、第2レンズ群G2は、複数枚のレンズで構成してもよい。
【0031】
絞りSTより像側にある後群Grは、前群Gfからの光を結像させる結像光学系であり、全体として正の屈折力を有するものとして構成される。この後群Grは、両凸形状、または中央部が両凸形状であり周辺部が平凸ないし凸メニスカス形状の結像用非球面レンズを含んで構成される。周辺部の平凸形状及び凸メニスカス形状は、物体側、像側のどちらが凸面となっていてもよい。上記第1レンズ群G1に対して、結像光学系である後群Gr中の結像用非球面レンズを組み合わせることによって、広角中心窩レンズとして広角かつ高い像倍率変化を実現しながら、最も物体側の第1レンズL1の飛び出し量を小さい形状にする。
【0032】
第1の構成例及び第2の構成例では、後群Grは、物体側から順に、第3レンズ群G3~第5レンズ群G5から実質的になる。第3レンズ群G3は、物体側から順に、凸面を像側に向けたメニスカス形状の第4レンズL4と両凸タイプの第5レンズL5との接合レンズで構成され、主として色収差を補正する。第4レンズ群G4は、1枚の両凸タイプの第6レンズL6からなる。第5レンズ群G5は、1枚の第7レンズL7からなる。第1の構成例及び第2の構成例では、この第7レンズL7が上述の結像用非球面レンズである。
【0033】
第1の構成例及び第2の構成例の第7レンズL7は、全体が正の屈折力を有し、その両面が非球面である。第7レンズL7の物体側のレンズ面S7aは、光軸近傍を含む中央部における曲率半径が正であり、周辺部の曲率半径が中央部よりも大きい非球面形状である。このように、レンズ面S7aの周辺部において曲率半径が中央部よりも大きい場合すなわち曲率が小さい場合は、曲率半径、曲率が負になってもよい。すなわち、レンズ面S7aは、光軸近傍を含む中央部が正の屈折力を有し、周辺部の屈折力が中央部よりも小さい非球面形状であり、その周辺部の面形状は、平面であってもよく、凹面となっていてもよい。レンズ面S7aは、その周辺部が凹面となる場合は、光軸近傍から周辺部までの間に凸面から凹面に面形状が変化する変曲点を有する。第7レンズL7の像側のレンズ面S7bは、曲率半径が負であり、その曲率半径がレンズ中心から周辺に向かって曲率半径が増大する(曲率半径の絶対値が小さくなる)。すなわち、レンズ面S7bは、正の屈折力を有し、レンズ中心から周辺に向かって屈折力が大きくなり、周辺部の屈折力が光軸近傍よりも大きい非球面形状である。
【0034】
第1の構成例の第7レンズL7では、レンズ面S7aの周辺部の曲率半径が負であり、中心部は両凸形状、周辺部はメニスカス形状である。また、第2の構成例の第7レンズL7では、レンズ面S7aの周辺部は曲率半径が無限大(曲率が0)であり、周辺部において物体側が平面の平凸形状である。
【0035】
第1の構成例及び第2の構成例では、上記前群Gfと、非球面レンズである第5レンズ群G5(第7レンズL7)との組み合せにより、第1レンズL1の物体側のレンズ面S1aの形状を、鏡胴からの飛び出し量を小さい形状にしつつ、広角中心窩レンズとして広角かつ高い像倍率変化が実現されている。この撮像光学系10は、良好に撮像画面全体の収差を抑制され、結果として高画素撮像素子への適用に十分に見合う光学結像性能をもつ光学結像性能が達成される。
【0036】
なお、第1レンズL1のレンズ面S1b、第2レンズL2のレンズ面S2a、S2bのいずれか1面または2面を球面形状としてもよい。レンズ面S1b、第2レンズL2のレンズ面S2a、S2bのいずれか1面または2面を球面形状としても、第1レンズL1、第2レンズL2の非球面次数の高次数化を抑制でき、実現可能な程度の非球面形状とすることができる。第1レンズL1及び第2レンズL2の4面のうちのいずれかの1面または2面を球面形状とすることは、製造コストの抑制、レンズの生産性の観点から好ましい。
【0037】
第1の構成例及び第2の構成例における前群Gfの第1レンズL1、第2レンズL2及び第3レンズL3と同等の光学性能を有するように、第1レンズL1、第2レンズL2及び第3レンズL3のそれぞれを、またはそれらの一部を複数枚のレンズで構成してもよい。また、後群Grのうちの最も像側の第7レンズL7のレンズ面S7a、S7bをそれぞれ非球面形状としたが、これに代えて、後群Grの他のレンズ面を非球面形状としてもよい。また、後群Grを6枚のレンズで構成しているが、これに限定されない。
【0038】
次に、上記実施形態に係る撮像光学系の数値実施例1、2について説明する。
【0039】
[数値実施例1]
図1に示される第1の構成例の撮像光学系10のレンズデータを表1に示す。表1中の「面番号」は、物体側から順に構成要素の面に付した番号である。面番号に付した「*」は、その面が非球面形状であることを示す。「曲率半径」の欄には、各レンズ面の曲率半径を、「面間隔」の欄には、光軸上における構成要素の面と次の面との間のレンズ厚みあるいは空気間隔をそれぞれ示す。曲率半径及び面間隔の単位は「mm」である。「nd」の欄には、各光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、「νd」の欄には、各光学要素のd線に対するアッベ数を示す。
【0040】
表1の「Materials」の欄には、各光学要素の材料(ガラスまたは樹脂の種類)を示す。「Materials」の欄中の「E48R」は、「ZEONEX(登録商標)E48R」(日本ゼオン株式会社製)であってシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂である。「OKP-1」は、大阪ガスケミカル株式会社の製品名であり光学用ポリエステル樹脂である。また、「S-LAL18」、「S-TIH6」、「S-BSL7」は、株式会社オハラの製品名であり光学ガラスである。「B270(登録商標)」は、SCHOTT AG社製の硝材であり、これに薄膜を形成して赤外線カットフィルタP1とした。
【0041】
【表1】
【0042】
レンズの非球面形状は、表2に示される円錐係数k、非球面係数A、A、A・・・を用いて次の非球面式で表される。
【0043】
【数1】
【0044】
上記式中の各値は次の通りである。
Z:光軸方向のサグ量(mm)
s:光軸からの距離(mm)
C:曲率(近軸曲率半径の逆数)
k:円錐定数
、A、A・・・:4次、6次、8次・・・の非球面係数
【0045】
【表2】
【0046】
上記レンズデータに示される撮像光学系10は、レンズ全長(第1レンズL1の最前面から像面IMまでの距離)が44.37mm、F値が3.502、全系焦点距離が10.500mm、最大半画角が47°、最大半画角における歪曲収差Daが-80%であった。全系焦点距離は、光軸近傍のものである。第1レンズL1の飛び出し量は、約1.8mmであった。なお、第1レンズL1の飛び出し量は、第1レンズL1のレンズ面S1aの有効径の範囲の最外周の部分から第1レンズL1の最前面までの光軸方向の長さである。最大半画角からの焦点距離の換算値は0.9325mmであり、中央部と周辺部で11.3倍近い焦点距離の比となっている。すなわち、撮像光学系10では、撮像画面の中心部分は周辺部の15.25倍にも及ぶ光学倍率となるものであった。
【0047】
図3に撮像光学系10の像面湾曲と歪曲収差をそれぞれ示す。図3では、F線(波長486.1nm)、d線、C線(波長656.3nm)についての像面湾曲を示してあり、実線がタンジェンシャル像面の像面湾曲を、破線がサジタル像面における像面湾曲を示している。また、歪曲収差は、F線、d線、C線はほぼ同じであったため1本の収差曲線のみを描いてある。
【0048】
図3に示される像面湾曲と歪曲収差からわかるように、撮像光学系10は、最も物体側にある第1レンズL1の飛び出し量を小さく抑えながら、広角かつ意図的に大きな歪曲収差を作り出し、また像面歪曲収差が小さく抑えられており、高倍率の撮像画面の中央部のみならず画面全体に渡って高い結像性能を実現している。
【0049】
[数値実施例2]
図2に示される第2の構成例の撮像光学系10のレンズデータを次の表3に示す。また、レンズの非球面形状は、表4に示される円錐係数k、非球面係数A、A、A・・・を用いて上述の非球面式で表される。図4に第2の構成例の撮像光学系10の像面湾曲と歪曲収差を示す。表3、表4の項目、図4の像面湾曲と歪曲収差は、数値実施例1のものと同様に示してある。なお、表3の「Materials」の欄中の「F52R」は、「ZEONEX F52R」(日本ゼオン株式会社製)であってシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂である。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
上記レンズデータに示される撮像光学系10は、レンズ全長(第1レンズL1の最前面から像面IMまでの距離)が44.35mm、F値が3.511、全系焦点距離が10.4978mm、最大半画角が50°、最大半画角における歪曲収差Daが-80%であった。第1レンズL1の飛び出し量は、約1.5mmであった。全系焦点距離は、光軸近傍のものであり、最大半画角からの焦点距離の換算値は、0.8391mmであり、撮像画面の中心部と周辺部で17.5倍近い光学倍率の比であった。
【0053】
図4に示される像面湾曲と歪曲収差からわかるように、撮像光学系10は、最も物体側にある第1レンズL1の飛び出し量を小さく抑えながら、広角かつ意図的に大きな歪曲収差を作り出し、また像面歪曲収差が小さく抑えられており、高倍率の撮像画面の中央部のみならず画面全体に渡って高い結像性能を実現している。
【符号の説明】
【0054】
10 撮像光学系
Gf 前群
Gr 後群
G1~G5 第1~第5レンズ群
ST 絞り
L1~L7 レンズ

図1
図2
図3
図4