IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タイカの特許一覧

特許7553098身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置
<>
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図1
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図2
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図3
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図4
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図5
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図6
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図7
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図8
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図9
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図10
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図11
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図12
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図13
  • 特許-身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】身体保持用具の接触圧測定方法及び接触圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20240910BHJP
   A47C 31/12 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
A47C31/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020214582
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100549
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306026980
【氏名又は名称】株式会社タイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】豊島 直和
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-265542(JP,A)
【文献】特開2008-002924(JP,A)
【文献】特開2016-21017(JP,A)
【文献】特開平10-232601(JP,A)
【文献】中国実用新案第207095877(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
G01L 1/00
A47C 31/12
G09B 23/00-25/08
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体保持用具を被測定物とする、身体の局所的部位モデルの接触圧測定方法であって、
身体の局所的部位周辺の形態を模した当接部を有すると共に該当接部の身体の局所的部位に対応する部分にガイド孔部を有する第1加圧子で、前記被測定物の表面を予め設定した荷重で押圧し、該被測定物を圧縮変形させる第1の圧縮変形ステップと、
前記第1の圧縮変形ステップにおいて、前記被測定物を圧縮変形させた際の前記第1加圧子の押圧方向の位置を第1の押圧位置とし、該第1の押圧位置で前記第1加圧子を保持する第1加圧子保持ステップと、
身体の局所的部位の形態を模した当接部を有すると共に前記第1加圧子の前記ガイド孔部に挿通自在に形成された第2加圧子を、前記第1加圧子の前記ガイド孔部を介して、該第2加圧子の当接部先端が、前記第1の押圧位置における前記第1加圧子の当接部先端と少なくとも同一面に位置する又はそれよりも突出する位置となる第2の押圧位置まで移動させ、該第2加圧子で前記被測定物の表面を押圧し、該被測定物を圧縮変形させる第2の圧縮変形ステップと、
前記第2の圧縮変形ステップにて、前記第2加圧子が前記被測定物から受ける力を、荷重測定器により測定する測定ステップと、を有することを特徴とする接触圧測定方法。
【請求項2】
前記第1加圧子保持ステップにおいて、前記第1の押圧位置で前記第1加圧子を保持した後、所定時間放置することを特徴とする請求項1に記載の接触圧測定方法。
【請求項3】
前記第2の圧縮変形ステップにおいて、前記第2の押圧位置まで前記第2加圧子を移動させた後、前記第2加圧子を前記第2の押圧位置で所定時間放置することを特徴とする請求項1又は2に記載の接触圧測定方法。
【請求項4】
前記被測定物の表面を押圧する前記第1加圧子の当接部又は前記第2加圧子の当接部の温度が30~40℃であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の接触圧測定方法。
【請求項5】
前記身体の局所的部位モデルが身体の突出部位モデルであって、
前記第1加圧子は、身体の突出部位周辺の形態を模した当接部を有すると共に該当接部の身体の突出部位に対応する部分に前記ガイド孔部を有しており、
前記第2加圧子は、身体の突出部位の形態を模した当接部を有しており、
前記第2の圧縮変形ステップにおいて、前記第2の押圧位置が、前記第1の押圧位置における前記第1加圧子の当接部先端から前記第2加圧子の当接部先端が突出する位置であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の接触圧測定方法。
【請求項6】
前記第1加圧子の当接部は臀部を模した形態を有しており、前記第2加圧子の当接部は仙骨部又は仙骨部の一部を模した形態を有していることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の接触圧測定装置。
【請求項7】
身体保持用具を被測定物とする、身体の局所的部位モデルの接触圧測定装置であって、
身体の局所的部位周辺の形態を模した第1の当接部を有し、前記被測定物の表面を押圧する方向に該第1の当接部が配置される第1加圧子と、
前記第1加圧子を支持すると共に、予め設定した荷重で前記被測定物の表面を押圧するための荷重負荷手段と、
身体の局所的部位の形態を模した第2の当接部を有し、前記被測定物の表面を押圧する方向に該第2の当接部が配置される第2加圧子と、
前記第2加圧子に連結され、前記第2加圧子が受ける力を測定する荷重測定手段と、
前記第2加圧子を押圧方向に移動自在とする第2加圧子移動手段と、
前記第2加圧子移動手段に接続され、前記第2加圧子の押圧位置を設定するための位置設定手段と、を備え、
前記第1加圧子には、前記第1の当接部の身体の局所的部位に対応する部分に、前記第2加圧子を挿通自在とするガイド孔部が設けられており、
前記第2加圧子は、前記第1加圧子の前記ガイド孔部を介して前記被測定物の表面を押圧するように構成されていることを特徴とする接触圧測定装置。
【請求項8】
前記第1加圧子の第1の当接部または前記第2加圧子の第2の当接部は、ゴム又は粘弾性を有する材料で被覆されていることを特徴とする請求項7に記載の接触圧測定装置。
【請求項9】
前記第1加圧子の第1の当接部又は前記第2加圧子の第2の当接部には、30~40℃の温度を呈する温度調節手段が接続されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の接触圧測定装置。
【請求項10】
前記身体の局所的部位モデルが身体の突出部位モデルであって、
前記第1加圧子は、身体の突出部位周辺の形態を模した第1の当接部を有すると共に該第1の当接部の身体の突出部位に対応する部分に前記ガイド孔部を有しており、
前記第2加圧子は、身体の突出部位の形態を模した第2の当接部を有していることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の接触圧測定装置。
【請求項11】
前記第1加圧子の第1の当接部は臀部を模した形態を有しており、前記第2加圧子の第2の当接部は仙骨部又は仙骨部の一部を模した形態を有していることを特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載の接触圧測定装置。
【請求項12】
前記第1加圧子の前記ガイド孔部は、前記第1加圧子を貫通する貫通孔、前記第1加圧子の外周縁に設けられた貫通溝又は前記第1加圧子の外周縁に設けられた枠部からなることを特徴とする請求項7~11のいずれか1項に記載の接触圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、一般マットレス、床ずれ防止用マットレス、座位保持用クッション、ソファ又は座席等の身体保持用具の使用時の身体との接触圧を評価するために使用され、特に褥瘡が発生しやすい仙骨部、尾骨部や踵骨部等の身体の突出部位が身体保持用具に接触した際の接触圧を測定するための測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マットレスや座位保持用クッション、ソファ又は座席などの、身体と接して身体の姿勢や体勢を保持する身体保持用具は、生活のあらゆる場面で日常的に使用されている。それら製品の使い心地や機能性の評価又は設計を行う際には、身体と身体保持用具とが接触する部分の接触圧について定量的な解析が重要となる。例えば、医療機関、介護・福祉施設又は在宅介護等において、長時間同じ体勢で身体に圧力が継続的に負荷された状態にある者の褥瘡の発生を予防するため、使用者の状態に合った体圧分散マットレス製品を選定する必要があるところ、この種のマットレス製品の体圧低減性能を評価するために、仙骨部等の突出部位における接触圧(体圧)が有効な指標として周知されている。このように、身体保持用具に対する身体の接触圧をどのような手段で測定し、評価するかが重要となる。
【0003】
このような身体保持用具の接触圧の評価方法として、体圧分散マットレスなどの床ずれ防止用具の体圧低減性能の評価方法、すなわち、接触圧の測定方法にはJIS規格(JIS T9256)によるものがある(非特許文献1)。この方法では、直径300mm、厚さ14mmの円盤状の基板から突出する凸球面(高さ28mm、R200mm)を有する加圧子(図14参照)が接触圧の測定のために使用されている。より具体的には、JIS T 9256では、この加圧子の凸球面中心に空気袋タイプの圧力センサを貼り付けし、測定対象のマットレスの上に置いた後、加圧子の基板の上に加圧子を含めた重量が23kgとなるようにおもりを載せた際の圧力値が測定されている。
【0004】
また、他の方法として、特許文献1には、測定対象のマットレスに被験者が横たわった状態での接触圧を測定するための接触圧測定センサ及びこれを備えた接触圧測定装置が記載されている。この接触圧測定センサは、2枚のエア不透過性シートの間に押圧を解除すると元の形状に復帰する発泡プラスチックを押圧しない状態で挟むとともに、発泡プラスチックの近傍からエア不透過性シートの外側まで延びるチューブを配置して、これら発泡プラスチック及びチューブの周囲のエア不透過性シートを互いに接着させて構成されている。この装置では、接触圧測定センサ自身が自己吸気機能を有しているため、センサ内部に所定量のエアを注入する必要がなく、簡単に被験者とマットレスとの接触圧を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-111420号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】日本工業規格、JIS T9256「在宅用床ずれ防止用具」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に示された測定方法では、加圧子の形状が所定の凸球面であるために加圧子の受圧面積が大きく、仙骨部、尾骨部や踵骨部等の身体の突出した圧力集中部位の接触圧とは異なること、及び、マットレスによる差異が出難い、という問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載された測定装置は、接触圧測定センサを被験者の体とマットレスとの間に敷いて接触圧を測定する装置であるため、特に、仙骨部等の身体の突出した圧力集中部位や接触部の形状が複雑な場合の接触圧を確実に測定すること、及び再現性のあるデータを取得することが難しい、という問題があった。
【0009】
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、身体が身体保持用具に接触した際の局所的部位の接触圧を、被験者を用いずに、実際の接触状態に近い条件下で再現性よく、かつ精度よく得ることができ、特に褥瘡が発生しやすい仙骨部、尾骨部、踵骨部や骨盤等の身体の突出部位の接触圧の測定に有用な測定方法及び測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、身体保持用具から仙骨部等の身体の突出部位が受ける圧力は、臀部等の身体の突出部位「周辺」の荷重と、仙骨部等の身体の突出部位の「突出状態」により変化することを見出し、この知見に基づき、本発明を完成させた。上記課題を解決するため、本発明の接触圧測定方法は、身体保持用具を被測定物とする、身体の局所的部位モデルの接触圧測定方法であって、身体の局所的部位周辺の形態を模した当接部を有すると共にこの当接部の身体の局所的部位に対応する部分にガイド孔部を有する第1加圧子で、被測定物の表面を予め設定した荷重で押圧し、被測定物を圧縮変形させる第1の圧縮変形ステップと、第1の圧縮変形ステップにおいて、被測定物を圧縮変形させた際の第1加圧子の押圧方向の位置を第1の押圧位置とし、第1の押圧位置で第1加圧子を保持する第1加圧子保持ステップと、身体の局所的部位の形態を模した当接部を有すると共に第1加圧子のガイド孔部に挿通自在に形成された第2加圧子を、第1加圧子のガイド孔部を介して、第2加圧子の当接部先端が、第1の押圧位置における第1加圧子の当接部先端と少なくとも同一面に位置する又はそれよりも突出する位置となる第2の押圧位置まで移動させ、第2加圧子で被測定物の表面を押圧し、被測定物を圧縮変形させる第2の圧縮変形ステップと、第2の圧縮変形ステップにて、第2加圧子が被測定物から受ける力を、荷重測定器により測定する測定ステップと、を有する。
【0011】
本発明に係る接触圧測定方法においては、身体の局所的部位周辺に対応する第1加圧子の荷重と、身体の局所的部位に対応する第2加圧子と身体保持用具との接触状態と、を夫々制御することにより、身体の局所的部位モデルの接触圧を測定している。本発明における第1加圧子は、例えば臀部等の身体の局所的部位周辺に対応しており、身体の局所的部位周辺の形態を模した当接部を有している。第1の圧縮変形ステップでは、この第1加圧子の当接部で、身体保持用具の表面を予め設定した荷重、すなわち、身体の局所的部位周辺に対応する荷重で押圧し、身体保持用具を圧縮変形させる。次に、第1加圧子保持ステップでは、上述した第1の圧縮変形ステップにおいて、身体保持用具を圧縮変形させた際の第1加圧子の押圧方向の位置(第1の押圧位置)で第1加圧子を保持する。ここで第1加圧子の位置を保持するのは、後述するステップにおいて、仙骨部等の身体の局所的部位に対応する第2加圧子と身体保持用具との「接触状態」を調整するためである。そこで、本発明における第2加圧子は、仙骨部等の身体の局所的部位に対応しており、身体の局所的部位の形態を模した当接部を有している。第2の圧縮変形ステップでは、この第2加圧子の当接部で、既に第1加圧子で押圧されていた身体保持用具の表面を押圧する。ここで、身体保持用具の表面は既に第1加圧子で押圧されているところ、第1加圧子には、第1加圧子の当接部の身体の局所的部位に対応する部分にガイド孔部が設けられており、このガイド孔部は第2加圧子を身体保持用具の表面に案内するように構成されている。他方、第2加圧子はこの第1加圧子のガイド孔部に挿通自在に形成されている。それゆえ、第2加圧子は、この第1加圧子のガイド孔部を介して、その当接部で身体保持用具の表面を押圧することができる。そして、第2加圧子で身体保持用具の表面を押圧するにあたっては、身体の局所的部位に対応する第2加圧子と身体保持用具との接触状態が重要であるところ、第2加圧子を、第1の押圧位置における第1加圧子の当接部先端と少なくとも同一面に第2加圧子の当接部先端が位置する、又は、第1の押圧位置における第1加圧子の当接部先端から第2加圧子の当接部先端が突出する位置となる、第2の押圧位置まで移動させて押圧する。この第2の押圧位置は、身体の局所的部位として選択される部位とその部位周辺の形状や凹凸状態、測定対象として想定されるモデルの体形や体格、リスクレベル等によって決定され得る。この第2の押圧変形ステップにおいて、第2加圧子が身体保持用具から受けた力を荷重測定器により測定することにより、身体の局所的部位モデルの接触圧が測定される。このように、第1加圧子によって、身体保持用具が設定荷重で押圧されて圧縮変形された状態で、第2加圧子が身体保持用具から受けた力のみを測定することができるため、身体の局所的部位モデルの接触圧のデータを再現性よく、かつ精度よく取得することができる。
【0012】
また、本発明の接触圧測定方法は、第1加圧子保持ステップにおいて、第1の押圧位置で第1加圧子を保持した後、所定時間放置することも好ましい。第1加圧子保持ステップにおいて所定時間放置することにより、第1加圧子で押圧された被測定物の圧縮変形に係る変化を完了させ、圧縮変形状態を安定させることができるため、測定データの再現性及び精度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の接触圧測定方法は、第2の圧縮変形ステップにおいて、第2の押圧位置まで第2加圧子を移動させた後、第2加圧子を第2の押圧位置で所定時間放置することも好ましい。第2の圧縮変形ステップにおいて所定時間放置することにより、第2加圧子で押圧された被測定物の圧縮変形に係る変化を完了させ、被測定物の圧縮変形状態及び第2加圧子が圧縮変形した被測定物から受ける力を安定させることができるため、第2加圧子による押圧に係る接触圧データの再現性及び精度を高めることができる。
【0014】
また、本発明の接触圧測定方法は、被測定物の表面を押圧する第1加圧子の当接部又は第2加圧子の当接部の温度が30~40℃であることも好ましい。これにより、体温に近い温度で被測定物の表面を押圧することができるため、身体保持用具が使用されたときの実際の接触状態に近い条件下となり、測定データの精度をより高めることができる。
【0015】
また、本発明の接触圧測定方法は、身体の局所的部位モデルが身体の突出部位モデルであり、第1加圧子は、身体の突出部位周辺の形態を模した当接部を有すると共にこの当接部の身体の突出部位に対応する部分にガイド孔部を有しており、第2加圧子は、身体の突出部位の形態を模した当接部を有しており、第2の圧縮変形ステップにおいて、第2の押圧位置が、第1の押圧位置における第1加圧子の当接部先端から第2加圧子の当接部先端が突出する位置であることも好ましい。これにより、身体保持用具との接触圧が特に高く、接触部位の形状も複雑な場合も多い身体の突出部位の所望部位における接触圧を、被験者によらずに客観的に、かつ、再現性良く高い精度で測定することができる。
【0016】
また、本発明の接触圧測定方法は、第1加圧子の当接部は臀部を模した形態を有しており、第2加圧子の当接部は仙骨部又は仙骨部の一部を模した形態を有していることも好ましい。これにより、最も褥瘡が発生し易いとされる部位のひとつである「仙骨部」の所望部位における接触圧を、被験者によらずに客観的に、かつ、再現性良く高い精度で測定することができる。
【0017】
また、本発明の接触圧測定装置は、身体保持用具を被測定物とする、身体の局所的部位モデルの接触圧測定装置であって、身体の局所的部位周辺の形態を模した第1の当接部を有し、被測定物の表面を押圧する方向に第1の当接部が配置される第1加圧子と、第1加圧子を支持すると共に、予め設定した荷重で被測定物の表面を押圧するための荷重負荷手段と、身体の局所的部位の形態を模した第2の当接部を有し、被測定物の表面を押圧する方向に第2の当接部が配置される第2加圧子と、第2加圧子に連結され、第2加圧子が受ける力を測定する荷重測定手段と、第2加圧子を押圧方向に移動自在とする第2加圧子移動手段と、第2加圧子移動手段に接続され、第2加圧子の押圧位置を設定するための位置設定手段と、を備え、第1加圧子には、第1の当接部の身体の局所的部位に対応する部分に、第2加圧子を挿通自在とするガイド孔部が設けられており、第2加圧子は、第1加圧子のガイド孔部を介して被測定物の表面を押圧するように構成されている。
【0018】
本発明に係る接触圧測定装置においては、身体の局所的部位周辺に対応する第1加圧子の荷重と、身体の局所的部位に対応する第2加圧子と身体保持用具との接触状態と、を夫々制御することにより、身体の局所的部位モデルの接触圧を測定することを実現している。本発明における第1加圧子は、例えば臀部等の身体の局所的部位周辺に対応しており、身体の局所的部位周辺の形態を模した第1の当接部を有している。この第1加圧子の第1の当接部は、被測定物である身体保持用具の表面を押圧する方向に配置されており、第1加圧子はこれを支持すると共に身体保持用具の表面を予め設定した荷重、すなわち、身体の局所的部位周辺に対応する荷重で押圧するための荷重負荷手段によって身体保持用具を押圧し、圧縮変形させる。他方、本発明における第2加圧子は、仙骨部等の身体の局所的部位に対応しており、身体の局所的部位の形態を模した第2の当接部を有している。この第2加圧子の第2の当接部は、被測定物である身体保持用具の表面を押圧する方向に配置されているが、身体保持用具の表面は第1加圧子でも押圧されているところ、第1加圧子には、第1加圧子の第1の当接部の身体の局所的部位に対応する部分にガイド孔部が設けられており、このガイド孔部は第2加圧子を身体保持用具の表面に案内するように構成されている。他方、第2加圧子はこの第1加圧子のガイド孔部に挿通自在に形成されている。それゆえ、この第1加圧子のガイド孔部に第2加圧子を挿入し、第2加圧子の第2当接部で身体保持用具の表面を押圧することができる。そして、第2加圧子で身体保持用具の表面を押圧するにあたっては、身体の局所的部位に対応する第2加圧子と身体保持用具との接触状態が重要であるところ、第2加圧子を押圧方向に移動自在とする第2加圧子移動手段と、第2加圧子の押圧位置を設定するための位置設定手段により、第1加圧子の第1の当接部先端と少なくとも同一面に第2加圧子の第2の当接部先端が配置される位置、又は、第1加圧子の第1の当接部から第2加圧子の第2の当接部先端が突出する位置まで第2加圧子を移動させて身体保持用具の表面を押圧する。この第2加圧子による押圧位置は、身体の局所的部位として選択される部位とその部位周辺の形状や凹凸状態、測定対象として想定されるモデルの体形や体格、リスクレベル等によって決定され得る。この第2加圧子の押圧により、第2加圧子が身体保持用具から受けた力は第2加圧子に連結された荷重測定手段により測定され、これによって、身体の局所的部位モデルの接触圧が得られる。このように、第1加圧子が身体の局所的部位周辺に対応する荷重で身体保持用具を押圧して圧縮変形させた状態で、第2加圧子が身体保持用具から受けた力を測定することができるため、身体の局所的部位モデルの接触圧のデータを再現性よく、かつ精度よく取得できる測定装置が得られる。
【0019】
また、本発明の接触圧測定装置は、第1加圧子の第1の当接部または第2加圧子の第2の当接部は、ゴム又は粘弾性を有する材料で被覆されていることも好ましい。これにより、人体により近い構造を備えた当接部で被測定物の表面を押圧することができるため、身体保持用具が使用されたときの実際の接触状態に近い条件下となり、より高い精度での測定データを得ることができる装置が得られる。
【0020】
また、本発明の接触圧測定装置は、第1加圧子の第1の当接部又は第2加圧子の第2の当接部には、30~40℃の温度を呈する温度調節手段が接続されていることも好ましい。これにより、体温に近い温度で被測定物の表面を押圧することができるため、身体保持用具が使用されたときの実際の接触状態に近い条件下となり、より高い精度での測定データを得ることができる装置が得られる。
【0021】
また、本発明の接触圧測定装置は、身体の局所的部位モデルが身体の突出部位モデルであり、第1加圧子は、身体の突出部位周辺の形態を模した第1の当接部を有すると共にこの第1の当接部の身体の突出部位に対応する部分にガイド孔部を有しており、第2加圧子は、身体の突出部位の形態を模した第2の当接部を有していることも好ましい。これにより、身体保持用具との接触圧が特に高く、接触部位の形状も複雑な場合も多い身体の突出部位の所望部位における接触圧を、被験者によらずに客観的に、かつ、再現性良く高い精度で測定できる装置が得られる。
【0022】
また、本発明の接触圧測定装置は、第1加圧子の第1の当接部は臀部を模した形態を有しており、第2加圧子の第2の当接部は仙骨部又は仙骨部の一部を模した形態を有していることも好ましい。これにより、最も褥瘡が発生し易いとされる部位のひとつである「仙骨部」の所望部位における接触圧を、被験者によらずに客観的に、かつ、再現性良く高い精度で測定できる装置が得られる。
【0023】
また、本発明の接触圧測定装置は、第1加圧子のガイド孔部は、第1加圧子を貫通する貫通孔、第1加圧子の外周縁に設けられた貫通溝又は第1加圧子の外周縁に設けられた枠部からなることも好ましい。これにより、第1加圧子のガイド孔部として、身体の局所的部位に合わせた構成が選択される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する測定方法及び測定装置を提供することができる。
(1)褥瘡が発生しやすい仙骨部、尾骨部や踵骨部等の身体の突出部位や接触部位の形状が複雑な部位をはじめとする局所的部位のモデルが身体保持用具に接触した際の接触圧を、実際の接触状態に近い条件下で再現性よく、かつ精度よく得ることができる。
(2)被験者によらずに測定することができるため、客観的なデータを得ることができる。また、第1加圧子で押圧する荷重や第2加圧子で押圧する際の第2の押圧位置を適宜設定することにより、使用者の体形(体格)や身体保持用具上での姿勢状況を想定したデータを得ることができる。
(3)さらに、測定の際に被験者を使用しないため、測定の際にマットレス等の身体保持用具そのものを準備する必要がなく、部分サンプル等の身体保持用具の一部についても、有効な測定を行うことができる。
(4)測定に係る操作がシンプルであり、短時間で測定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施形態に係る接触圧測定装置の概略構成図である。
図2図1に示す接触圧測定装置における第1加圧子及び第2加圧子を示す部分拡大図である。
図3図1に示す第1加圧子の(a)平面図、(b)図3(a)のA-A´線断面図及び(c)底面図である。
図4図1に示す第2加圧子の(a)平面図、(b)図4(a)のB-B´線断面図及び(c)底面図である。
図5】第1加圧子のガイド孔の他の構成の例を示す平面図及び側面図である。
図6】第1加圧子及び第2加圧子の組み合わせの他の構成の例を示す、(a)第1加圧子200の底面図、正面図及び側面図、(b)第2加圧子300の底面図、正面図及び側面図、(c)第1加圧子200及び第2加圧子300の斜視図、(d)第1加圧子200のガイド孔240に第2加圧子300を挿通させた説明図である。
図7】第1加圧子及び第2加圧子の組み合わせの他の構成の例を示す、(a)第1加圧子201の底面図、正面図及び側面図、(b)第2加圧子301の底面図及び正面図、(c)第1加圧子201及び第2加圧子301の斜視図、(d)第1加圧子201のガイド孔241に第2加圧子301を挿通させた説明図である。
図8】第1加圧子及び第2加圧子の組み合わせの他の構成の例を示す、(a)第1加圧子202の底面図、正面図及び両側面図、(b)第2加圧子302の底面図、正面図及び側面図、(c)第1加圧子202及び第2加圧子302の斜視図、(d)第1加圧子202のガイド孔242に第2加圧子302を挿通させた説明図である。
図9】第1加圧子及び第2加圧子の組み合わせの他の構成の例を示す、(a)第1加圧子203の底面図、正面図及び側面図、(b)第2加圧子303の底面図、正面図及び側面図、(c)第1加圧子203及び第2加圧子303の斜視図、(d)第1加圧子203のガイド孔243に第2加圧子303を挿通させた説明図である。
図10】本発明に係る接触圧測定方法の説明図である。
図11】第2の実施形態に係る接触圧測定装置の概略構成図である。
図12】(a)実施例1及び比較例1における接触圧測定結果、(b)実施例2及び比較例2における接触圧測定結果並びに(c)実施例3及び比較例3における接触圧測定結果、を示すグラフである。
図13】実施例4における(a)シミュレーションモデルを示す図、(b)本発明に係る接触圧測定値とシミュレーションによる数値を示すグラフである。
図14】JIS T9256で用いられる加圧子を示す平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図9に示す、本発明の第1の実施形態に係る接触圧測定装置1について説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る接触圧測定装置1は、身体保持用具の表面を押圧する第1加圧子2と、この第1加圧子2を支持すると共に身体保持用具に所定荷重を負荷する荷重負荷手段4と、身体保持用具の表面を押圧する第2加圧子3と、この第2加圧子3が身体保持用具から受ける力を測定する荷重測定手段5と、第2加圧子3を押圧方向に移動自在とする第2加圧子移動手段6と、第2加圧子3の押圧位置を設定する位置設定手段7とから概略構成されており、身体保持用具を載置するためのステージ9が第1加圧子2及び第2加圧子3の押圧方向に設けられている。なお、本明細書において上下とは、身体保持用具を押圧する方向における上下方向、すなわち、図1における上下方向をいうものとする。
【0028】
まず、図1~3を参照し、本実施形態に係る接触圧測定装置1を構成する第1加圧子2について説明する。第1加圧子2は、身体の突出部位周辺の形態を模した第1の当接部23を備えており、被測定物の表面を押圧する方向、図1、2では下向きに第1の当接部23が配置されている。図3に示すように、本実施形態に係る第1加圧子2は、円盤状のベース部21と押圧方向に突出する略円錐台状の凸部22とから構成されており、両者が組み合わされて形成されている。ベース部21及び凸部22の軸中心には、後述する第2加圧子3を挿通可能とするための貫通孔が設けられており、それゆえ、第1加圧子2の軸中心部分にガイド孔部24が形成されている。また、ベース部21には後述する荷重負荷手段4のシャフト42を接続するための取付孔25が4か所備えられている。
【0029】
本実施形態においては、接触圧の測定部位である身体の局所的部位として、仰臥位における突出部位である仙骨部が選択されており、第1加圧子2は、身体における仙骨部を中心とした周辺、すなわち、臀部を模した形態に形成されており、第1の当接部23は褥瘡が発生しやすくなる体型における仙骨部周辺の突出状態を模した形態に形成されている。具体的には、この第1加圧子2のベース部21の形状は、直径300mm、厚さ15mmであって、押圧方向の角部が丸く面取りされた円盤状とされており、上述した非特許文献1のJIS T0256で用いられている加圧子のうち、円盤状の基板の形状(直径300mm、厚さ14mm)に基づいて設計されている。また、第1加圧子2の凸部22の形状は、突出高さが20mmの略円錐台状であって、上面側が直径160mmの円形状、下面側は長軸直径が32mm、短軸直径が22mmの長円形状とされており、褥瘡発生の危険要因を判定するOHスケールにおける仙骨部の病的骨突出の判定基準及び骨突出判定器に基づいて設計されている。なお、OHスケールの「病的骨突出」は仙骨中央部より80mm外側において臀部がどのくらい仙骨部より低くなっているかによって判定され、仙骨部よりも臀部が0~20mm未満低くなっている場合は危険要因が軽度・中等度、仙骨部よりも臀部が20mm以上低くなっている場合には危険要因が高度として判定されている。本実施形態においては、第1加圧子の凸部22の突出高さをOHスケールの軽度・中等度と高度との境界値である20mmに設定しているが、所望の身体の突出部位モデルに応じて設定すればよく、さらに、他のリスク評価スケール等に基づいて設定してもよい。
【0030】
また、図1~3に示すように、第1加圧子2には、後述する第2加圧子3を挿通させるためのガイド孔24が貫通孔として設けられている。ガイド孔24は第2加圧子3を挿通できる大きさで形成されており、第2加圧子3の移動及び押圧の際の中心軸がずれないよう、第1加圧子2のガイド孔24の内壁に沿って第2加圧子3が摺動可能な大きさで形成されることが好ましい。
【0031】
また、本実施形態における第1加圧子2のガイド孔24は、第1加圧子2の略中央に垂直に設けられた孔として示されているが、測定対象となる身体の突出部位と身体保持用具Aとの接触状態に応じて、図5(a)~(c)に示すような構成とすることも可能である。具体的には、図5(a)には、第1加圧子2の厚さ方向に斜めに設けられた孔としてガイド孔24が形成された例が示されており、図5(b)には、第1加圧子2の外周縁に設けられた貫通溝としてガイド孔24が形成された例が示され、図5(c)には、第1加圧子2の外周縁に設けられた枠部からガイド孔24が形成された例が示されている。第2加圧子3による身体保持用具Aの押圧にあたり、仰臥位や座位等の各種姿勢における身体の突出部位の身体保持用具Aへの接触状態に近づけるべく、上述したようなガイド孔24の構成が選択される。
【0032】
なお、本実施形態における第1加圧子2は、ベース部21と凸部22とで構成されており、所望の身体の突出部位モデルに応じて凸部22を取替できるように形成されているが、ベース部21と凸部22とが一体となって第1加圧子2が形成されていてもよい。
【0033】
次に、図1図2及び図4を参照し、本実施形態に係る第2加圧子3について説明する。第2加圧子3は、身体の突出部位の形態を模した第2の当接部31を備えており、被測定物の表面を押圧する方向、図1、2では下向きに第2の当接部31が配置されている。図4に示すように、本実施形態に係る第2加圧子3は、軸断面が長円形の略円柱状に形成されており、上側には荷重測定手段5の軸部53を接続するための取付穴32が備えられている。
【0034】
また、本実施形態においては、接触圧の測定対象である身体の局所的部位として仰臥位における突出部位である仙骨部が選択されており、第2加圧子3の第2の当接部31は、身体における仙骨部のうちの最突出部を模した形態に形成されている。具体的には、この第2加圧子3は押圧方向の角部が丸く面取りされて半球状となった略円柱状とされており、軸断面の形状は長軸直径が30mm、短軸直径が20mmの長円形状として形成されている。また、図1、2に示すように、第2加圧子3は第1加圧子2に設けられているガイド孔24に挿通可能に形成されており、第2加圧子3の移動及び押圧の際の中心軸がずれないよう、第1加圧子2のガイド孔24の内壁に沿って摺動可能に形成されることが好ましい。
【0035】
本実施形態においては、接触圧の測定対象である身体の局所的部位として仰臥位における突出部位である仙骨部が選択されているが、これに限定されず、あらゆる身体の接触部位における局所的部位を選択することができ、局所的部位が突出部位である場合には、下記表1及び図6~9に示すようなさまざまな身体の突出部位を選択することができる。
【0036】
【表1】
【0037】
図6~9には、接触圧の測定対象である身体の突出部位として各種部位を選択した第1加圧子及び第2加圧子の構成の具体例が示されている。図6では、身体の突出部位として座位姿勢における座骨が選択されており、第2加圧子300の第2の当接部310は座位姿勢における座骨の形態を模して形成されている。他方、これと組み合わされる第1加圧子200は座位姿勢における座骨周辺、すなわち、座位姿勢の臀部の形態を模した第1の当接部230を有している。図6(a)~(c)では第1の当接部230及び第2の当接部310の形状を図示するために、両当接部を上向きに示しているが、図6(d)では第1の当接部230及び第2の当接部310が下向きになるように配置され、押圧方向が矢印方向であるときの両加圧子を組合わせた状態を示している。なお、一例として、第1加圧子200は、幅372mm、長さ493mm、最大高さ83mmに形成されており、第2加圧子300は、軸断面の形状が長軸51mm、短軸25mmの長円形状の柱状に形成されているが、測定対象として想定されるモデルの体形や体格などに応じてサイズは適宜変更され得る。また、図7では、身体の突出部位として仰臥位における後頭部突出部が選択されており、第2加圧子301の第2の当接部311は仰臥位における後頭部突出部の形態を模して形成されている。他方、これと組み合わされる第1加圧子201は仰臥位における後頭部突出部周辺の後頭部の形態を模した第1の当接部231を有している。この形態は、日本人の頭部寸法のデータベース情報(日本人頭部寸法データベース2001:https://www.airc.aist.go.jp/dhrt/head/index.html、人工知能研究センターのウェブサイト)に掲載されたデータに基づいて設計されている。図7(a)~(c)では第1の当接部231及び第2の当接部311の形状を図示するために、両当接部を上向きに示しているが、図7(d)では第1の当接部231及び第2の当接部311が下向きになるように配置され、押圧方向が矢印方向であるときの両加圧子を組合わせた状態を示している。また、図8では、身体の突出部位として側臥位における大腿骨転子部が選択されており、第2加圧子302の第2の当接部312は側臥位における大腿骨転子部の形態を模して形成されている。他方、これと組み合わされる第1加圧子202は側臥位における大腿骨転子部周辺、すなわち、横向きにおける臀部~太ももの形態を模した第1の当接部232を有している。図8(a)~(c)では第1の当接部232及び第2の当接部312の形状を図示するために、両当接部を上向きに示しており、図8(c)の第1加圧子202の第1の当接部232の表面に表された細線は立体形状を特定するために示された線である。図8(d)では第1の当接部232及び第2の当接部312が下向きになるように配置され、押圧方向が矢印方向であるときの両加圧子を組合わせた状態を示している。さらに、図9では、身体の突出部位として仰臥位における肩甲骨突出部が選択されており、第2加圧子303の第2の当接部313は仰臥位における肩甲骨突出部の形態を模して形成されている。他方、これと組み合わされる第1加圧子203は仰臥位における肩甲骨突出部周辺、すなわち、背中上部の形態を模した第1の当接部233を有している。図9(a)~(c)では第1の当接部233及び第2の当接部313の形状を図示するために、両当接部を上向きに示しており、図9(c)の第1加圧子203の第1の当接部233の表面に表された細線は立体形状を特定するために示された線である。図9(d)では第1の当接部233及び第2の当接部313が下向きになるように配置され、押圧方向が矢印方向であるときの両加圧子を組合わせた状態を示している。このように、選択した突出部位の形態を模した第2の当接部31を有する第2加圧子3と、その突出部位周辺の形態を模した第1の当接部23を有する第1加圧子2により、選択した突出部位モデルの接触圧測定装置が構成される。
【0038】
本実施形態においては、第1加圧子2及び第2加圧子3は身体保持用具Aを確実に押圧できるよう、金属や硬質樹脂等の剛性を有する材料で形成されているが、人体により近い構造での接触圧データを得るべく、第1加圧子2の第1の当接部23及び/又は第2加圧子3の第2の当接部31を、ゴム又は粘弾性を有する材料で被覆した構成とすることも可能である。これにより、各当接部が人体を模した構造となるため、身体保持用具が使用されたときの実際の接触状態に近い条件下となり、より高い精度での測定データが得られる。
【0039】
また、人体により近い構造での接触圧データを得るべく、第1加圧子2の第1の当接部23及び/又は第2加圧子3の第2の当接部31には、30~40℃の温度を呈する温度調節手段を接続し、これらの当接部23,31を体温に近い温度とすることも可能である。これにより、体温に近い温度で身体保持用具Aの表面を押圧することができるため、身体保持用具が使用されたときの実際の接触状態に近い条件下となり、より高い精度での測定データが得られる。
【0040】
次に、図1を参照し、本実施形態に係る荷重負荷手段4について説明する。荷重負荷手段4は、第1加圧子2を支持すると共に、予め設定した荷重で被測定物である身体保持用具Aの表面を第1加圧子2で押圧可能なように構成されている。本実施形態に係る荷重負荷手段4は、第1加圧子2に接続されたシャフト42と、このシャフト42の他端に接続された押し板41と、この押し板41に連結され、押し板41による荷重を測定及び設定するための荷重設定手段43と、この荷重設定手段43を支持する昇降台44と、この昇降台44を押圧方向に移動させるための昇降ユニット45とそのハンドル46、このハンドル46に接続されて昇降ユニット45の移動量を計測する位置計測器47とから概略構成されている。
【0041】
本実施形態において、シャフト42は4本備えられており、支柱8に軸受部材を介して押圧方向に移動自在に支持されている。また、シャフト42は、その各々の一端が略正方形状の金属板からなる押し板41の各角部近傍に、各々の他端が第1加圧子2のベース部材21に、それぞれ固定されている。これにより、押し板41を下方に押すことによって、シャフト42を介して第1加圧子2が下方に押され、身体保持用具Aが押圧される。ここで、本実施形態では、押し板41に荷重設定手段43が連結されている。この荷重設定手段43は、荷重を計測する荷重計43aとその検圧子43b、検圧子43bと押し板41との間を接続する軸部43cとから構成され、これらは押圧方向と同一の方向に直列的に接続されている。本実施形態では、荷重計43aとしてフォースゲージが選択されており、押し板41等を介して第1の加圧子2が身体保持用具Aを押し込みする際の荷重が荷重計43aで計測される。また、本実施形態では、この荷重設定手段43の荷重計43aが、昇降台44に取り付けられて支持されると共に、昇降台44は支柱8に固定された昇降ユニット45に取り付けられている。昇降台44は、昇降ユニット45のハンドル46を操作することによって上下に移動するように構成されており、その移動量は位置計測器47によって計測される。
【0042】
ハンドル46を回して昇降ユニット45の昇降台44を押圧方向に移動させることにより、昇降台44に取り付けられた荷重設定手段43を介して押し板41が押圧方向に移動するため、シャフト42に接続された第1加圧子2が身体保持用具Aの表面を押圧する。第1加圧子2による押圧に係る荷重は押し板41に連結された荷重設定手段43で計測されるため、設定荷重になるまで昇降ユニット45で昇降台44を押圧方向に移動させることにより、所定の荷重で身体保持用具Aの表面を第1加圧子2で押圧することができる。
【0043】
なお、本実施形態では昇降台44に取り付けられた荷重設定手段43を介して押し板41が押圧方向に移動する構成となっているが、昇降台44に押し板41が直接的又は間接的に取り付けられて、荷重設定手段43を介さずに押し板41が押圧方向に移動する構成とすることも可能である。また、昇降ユニット45はハンドル46による手動タイプとするほか、電動タイプの昇降ユニットとすることも可能である。
【0044】
次に、図1及び図2を参照し、本実施形態に係る荷重測定手段5について説明する。荷重測定手段5は、第2加圧子3の上側に連結され、第2加圧子3が第1加圧子2のガイド孔24を介して身体保持用具Aの表面を押圧したときの接触圧を測定できるように構成されている。この荷重測定手段5は、第2加圧子3の第2の当接部31で受けた力を計測する荷重計51とその検圧子52、検圧子52と第2加圧子3との間を接続する軸部53とから構成され、これらは押圧方向と同一の方向に直列的に接続されている。軸部53は、第2加圧子3の上側に設けられた取付穴32にその一端が埋設されて取付されている。本実施形態では、荷重計51としてフォースゲージが選択されており、この荷重測定手段5の荷重計51が、後述する第2加圧子移動手段6の昇降台62に取り付けられて支持されている。
【0045】
次に、図1を参照し、本実施形態に係る第2加圧子移動手段6及び位置設定手段7について説明する。第2加圧子3を押圧方向に移動自在とする第2加圧子移動手段6は、第2加圧子3に連結された荷重測定手段5を支持する昇降台62と、この昇降台62を押圧方向に移動させるための昇降ユニット61とそのハンドル63とから構成されている。昇降ユニット61は支柱8に固定されており、この昇降ユニット61に取り付けられた昇降台62はハンドル63を操作することによって上下に移動するように構成されている。この第2加圧子移動手段6のハンドル63には、昇降ユニット61の移動量を計測する位置設定手段7が接続されており、位置設定手段7としては、ハンドル63の回転量に応じて昇降ユニット61の位置を表示する位置計測器が選択されている。
【0046】
ハンドル63を回して昇降ユニット61の昇降台62を押圧方向に移動させることにより、昇降台62に取り付けられた荷重測定手段5を介して第2加圧子3が押圧方向に移動し、第1加圧子2のガイド孔24を介して身体保持用具Aの表面を押圧する。位置設定手段7により、第2加圧子3の第2の当接部先端31aの位置を設定することにより、所定の押圧位置で第2加圧子3が身体保持用具Aから受ける力が荷重測定手段5で計測される。
【0047】
なお、本実施形態における第2加圧子移動手段6では、昇降台62に取り付けられた荷重測定手段5を介して第2加圧子3が押圧方向に移動する構成となっているが、昇降台62に第2加圧子3が直接的又は間接的に取り付けられて、荷重測定手段5を介さずに第2加圧子3が押圧方向に移動する構成とすることも可能である。また、昇降ユニット61はハンドル63による手動タイプとするほか、電動タイプの昇降ユニットとすることも可能である。
【0048】
次に、本発明に係る身体の局所的部位モデルの接触圧測定方法について説明する。本実施形態に係る接触圧測定方法は、予め設定した荷重で身体保持用具の表面を第1加圧子で押圧して圧縮変形させる第1の圧縮変形ステップS1と、ステップS1において身体保持用具を圧縮変形させた際の第1加圧子の押圧位置を保持する第1加圧子保持ステップS2と、第1加圧子の当接部先端と第2加圧子の当接部先端とが同一面となる位置又は第1加圧子の当接部先端から第2加圧子の当接部先端が突出する位置まで第2加圧子を移動させ、第2加圧子で身体保持用具の表面を押圧して圧縮変形させる第2の圧縮変形ステップS3と、ステップS3にて、第2加圧子が身体保持用具から受ける力を、荷重測定器により測定する測定ステップS4と、から概略構成されている。以下、図10を参照し、上述した接触圧測定装置1を用いて接触圧を測定する方法について説明する。
【0049】
第1の圧縮変形ステップS1について説明する。まず、被測定物である身体保持用具Aを接触圧測定装置1のステージ9(図示省略)に載置する。次に、測定装置1の荷重負荷手段4のハンドル46を回して昇降ユニット45の昇降台44を押圧方向に移動させる。昇降台44を押圧方向に移動させると、昇降台44に取り付けられている荷重設定手段43を介して押し板41が押圧方向に移動し、図10(a)及び図10(b)に示すように、シャフト42に接続された第1加圧子2が身体保持用具Aの表面を押圧する。このとき、第1加圧子2による押圧に係る荷重は、押し板41に連結されたフォースゲージ43aからなる荷重設定手段43で計測される。そのため、フォースゲージ43aで計測された荷重が設定荷重になるまでハンドル46を回して昇降台44を押圧方向に移動させることにより、所定の設定荷重で身体保持用具Aの表面を第1加圧子2で押圧し、身体保持用具を圧縮変形させることができる。
【0050】
本ステップS1において、第1加圧子2による押圧に係る設定荷重は、第1加圧子2がその形態を模した身体の局所的部位周辺に対応する荷重である。例えば、本実施形態においては、身体の局所的部位として突出部位である仙骨部が選択されており、この突出部位の周辺部位として臀部が選択されているので、身体のうちの臀部に対応する重さが設定荷重となる。総体重に対する臀部の重量の比率は40~45%であるので、例えば、体重40kgの人の接触圧を測定する場合には、設定荷重を16~18kgとし、体重70kgの人の接触を測定する場合には、設定荷重を28~31.5kgとする。このように、測定対象として想定されるモデルの総体重と、総体重に対する身体各部位の比率によって、設定荷重が決定される。
【0051】
次に、第1加圧子保持ステップS2について説明する。本ステップS2では、先のステップS1において、身体保持用具Aを所定の設定荷重で圧縮変形させた際の第1加圧子2の押圧方向の位置(第1の押圧位置)で、第1加圧子2が保持される。図10(b)には第1の押圧位置として、第1加圧子2の第1の当接部先端23aの位置P1が示されている。ここで、第1の押圧位置P1で第1加圧子2を保持するのは、後述するステップS3において、仙骨部等の身体の局所的部位に対応する第2加圧子3と身体保持用具Aとの「接触状態」を調整するためである。測定装置1では、荷重負荷手段4によって第1加圧子2が支持されているので、荷重負荷手段4を先のステップS1の状態で保持することにより、第1の押圧位置P1で第1加圧子2が保持される。
【0052】
また、上述した第1加圧子保持ステップS2にて、第1加圧子2を第1の押圧位置P1で保持した後、直ちに後述するステップS3を引き続いて行ってもよいが、第1加圧子2を第1の押圧位置P1で所定時間放置するステップを設けてもよい。放置する時間としては、身体保持用具Aの素材や構成等にもよるが、例えば、身体保持用具Aが発泡プラスチックからなる場合には、5秒~1分程度が好ましく、10秒~30秒程度がより好ましい放置時間として設定される。第1の押圧位置P1で第1加圧子2を所定時間放置することにより、第1加圧子2で押圧された身体保持用具Aの圧縮変形に係る変化を完了させ、身体保持用具Aの圧縮変形状態を安定させることができるため、測定データの再現性及び精度を高めることができる。
【0053】
次に、第2の圧縮変形ステップS3について説明する。本ステップS3では、第1加圧子2のガイド孔24を介して第2加圧子3が身体保持用具Aの表面を押圧し、身体保持用具Aを圧縮変形させる。具体的には、測定装置1の第2加圧子移動手段6のハンドル63を回して昇降ユニット61の昇降台62を押圧方向に移動させる。昇降台62を押圧方向に移動させると、昇降台62に取り付けられている荷重測定手段5に連結された第2加圧子3が押圧方向に移動し、図10(c)に示すように、第1加圧子2のガイド孔24を通って第2加圧子3が身体保持用具Aの表面を押圧する。そして、第2加圧子3で身体保持用具Aの表面を押圧するにあたっては、身体の局所的部位に対応する第2加圧子3がどのような位置で身体保持用具Aの表面と接触し、押圧するのかが重要である。本実施形態においては、身体の局所的部位として突出部位である仙骨部が選択されているため、この仙骨部を模した第2加圧子3の突出レベルが重要であり、第2加圧子3を、第1の押圧位置P1における第1加圧子2の第1の当接部先端23aから第2加圧子3の第2の当接部先端31aが突出する第2の押圧位置P2まで移動させて押圧する。第2の押圧位置P2の調整は、測定装置1の第2加圧子移動手段6に接続された位置設定手段7によって行うことができる。
【0054】
本ステップS3において、第2加圧子3の第2の押圧位置における第2の当接部先端31aの位置P2は、身体の局所的部位として選択された部位と、測定対象として想定されるモデルの体形や体格、リスクレベル等によって決定される。例えば、本実施形態においては、身体の局所的部位として、突出部位である仙骨部が選択されているので、第1加圧子2の第1の当接部先端23aの位置P1から2.5mm突出した位置を、第2の押圧位置における第2の当接部先端31aの位置P2の基準位置としている。この位置P2は、測定対象として想定されるモデルの体形や褥瘡リスクレベル等に応じて、この基準位置よりも突出長さが小さい位置又は大きい位置とすることができる。
【0055】
また、身体の局所的部位として選択された部位の形状や、測定対象として想定されるモデルの体形や体格、リスクレベル等によっては、本ステップS3において、第1の押圧位置P1における第1加圧子2の第1の当接部先端23aと同一面上に第2加圧子3の第2の当接部先端31aが配置されるように第2加圧子3を移動させ、身体保持用具Aの表面を押圧してもよい(第1の押圧位置における第1の当接部先端23aの位置P1=第2の押圧位置における第2の当接部先端31aの位置P2)。このように、身体の局所的部位を模した第2加圧子3の身体保持用具Aへの接触状態が、第2加圧子3の第2の当接部先端31aの位置P2により制御されるので、選択された局所的部位モデルに即した接触圧のデータを取得することができる。
【0056】
なお、図10では、本ステップS3において、第2加圧子3が第1加圧子2のガイド孔24に上方から挿入されて、ガイド孔24内を押圧方向に移動する構成が図示されているが、第2加圧子3の押圧方向の移動をスムーズかつ迅速に行うため、第1の圧縮変形ステップS1において、予め第1加圧子2のガイド孔24に第2加圧子3が幾分か挿入された状態としてセッティングされていてもよい。
【0057】
さらに、予め第1加圧子2のガイド孔24に第2加圧子3を挿入して、第1加圧子2の第1の当接部先端23aから第2加圧子3の第2の当接部先端31aが所定量突出する又は第1の当接部先端23aと第2の当接部先端31aとが面一となるように調整し、その状態で第1加圧子2と第2加圧子3とを一緒に押圧方向に移動させ、ステップS1~S3を略同時進行で行ってもよい。
【0058】
また、上述した第2の圧縮変形ステップS3にて、第2加圧子3を第2の押圧位置P2に移動させた後、直ちに後述するステップS4による測定を行ってもよいが、第2加圧子3を第2の押圧位置P2で所定時間放置するステップを設けてもよい。放置する時間としては、身体保持用具Aの素材や構成等にもよるが、例えば、身体保持用具Aが発泡プラスチックからなる場合には、5秒~1分程度が好ましく、10秒~30秒程度がより好ましい放置時間として設定される。第2の押圧位置P2で第2加圧子3を所定時間放置することにより、第2加圧子3で押圧された身体保持用具Aの圧縮変形に係る変化を完了させ、身体保持用具Aの圧縮変形状態を安定させることができるため、第2加圧子3による押圧に係る接触圧データの再現性及び精度を高めることができる。
【0059】
次に、測定ステップS4について説明する。本ステップS4では、先のステップS3において、第2加圧子3が身体保持用具Aを押圧変形させたことにより、身体保持用具Aから受けた力を荷重測定器により測定する。これにより、身体の局所的部位モデルの接触圧が測定される。具体的には、第2加圧子3を第2の押圧位置P2に移動させた際に、測定装置1において、第2加圧子3の上側に軸部53を介して連結されたフォースゲージ51からなる荷重測定手段5で測定が行われる。これにより、第1加圧子2によって身体保持用具Aが所定荷重で押圧されて圧縮変形された状態で、第2加圧子3が身体保持用具Aから受けた力のみを測定することができるため、身体の局所的部位モデルの接触圧のデータを再現性よく、かつ精度よく取得することができる。
【0060】
次に、図11に示す本発明の第2の実施形態に係る接触圧測定装置10について説明する。図11に示すように、本実施形態に係る接触圧測定装置10は、身体保持用具の表面を押圧する第1加圧子2と、この第1加圧子2を支持すると共に身体保持用具に所定荷重を負荷する荷重負荷手段40と、身体保持用具の表面を押圧する第2加圧子3と、この第2加圧子3が身体保持用具から受ける力を測定する荷重測定手段5と、第2加圧子3を押圧方向に移動自在とする第2加圧子移動手段6と、第2加圧子3の押圧位置を設定する位置設定手段7とから概略構成されており、身体保持用具を載置するためのステージ9が第1加圧子2及び第2加圧子3の押圧方向に設けられている。
【0061】
本実施形態では、前述した第1の実施形態と荷重負荷手段40に係る構成が異なっている。具体的には、本実施形態に係る荷重負荷手段40は、第1加圧子2に接続されたシャフト420と、このシャフト420の他端に接続された押し板410と、この押し板410に連結し、押し板410による荷重を設定すると共にこれらを支持するための支持手段48とから概略構成されている。
【0062】
本実施形態において、押し板410は2枚の細長帯状の金属板から構成されており、第1加圧子2の上方に配置されている。この第1加圧子2の取付孔25に取り付けられたシャフトを介して、押し板410と第1加圧子2とが連結されている。2枚の押し板410は、第2加圧子3の移動を妨げない位置に同一平面状に配置されており、図11に示すように、1枚の押し板410につき、2本のシャフト420が連結されている。これにより、押し板410を下方に移動させることによって、シャフト420を介して第1加圧子2が下方に移動し、身体保持用具Aが押圧される。ここで、本実施形態では、押し板410による荷重を設定すると共にこれらを支持するための支持手段48が備えられている。この支持手段48は、4つの寸切りボルト48a及びそれに螺合する4つの蝶ナット48bとから構成されている。各寸切りボルト48aはその一端がステージ9下方に固定されると共に他端が押し板410の端部近傍に設けられた貫通孔に挿通され、各蝶ナット48bは押し板410の上側からボルト48aに螺挿されている。これにより、各蝶ナット48bを所定距離だけ締め込みすることで、押し板410が所定距離だけ下方に移動するため、シャフト420を介して第1加圧子2が下方に押され、身体保持用具Aが押圧される。第1加圧子2による押圧荷重は、図11では図示されていないが、例えば、第1加圧子2に荷重計を連結することにより計測される。そのため、設定荷重となるまで各蝶ナット48bを締め込みして押し板410を押圧方向に移動させることにより、所定の荷重で身体保持用具Aの表面を第1加圧子2で押圧することができる。
【0063】
本実施形態における接触圧測定装置10を構成する第1加圧子2、第2加圧子3、荷重測定手段5、第2加圧子移動手段6及び位置設定手段7に関する構成に関する説明は、上述した第1の実施形態に係る測定装置1と同様であり、その作用効果並びに当該測定装置10を用いた接触圧の測定方法も同様である。
【0064】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例
【0065】
[実施例1]
1.本発明による身体の局所的部位モデルの接触圧測定(1)
図1に示した第1の実施形態に係る接触圧測定装置1を用いて、局所的部位として仰臥位における突出部位である仙骨部モデルの接触圧を測定した。なお、荷重計51,43aとしては、デジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製品)を用いた。被測定物である身体保持用具Aとして、OHスケールが3~8点と中等度・高度リスク者向けの体圧分散式マットレス製品(製品名:アルファプラF、株式会社タイカ製品)を選択した。なお、製品に付属されているカバーは取り外して用いた。第1加圧子2による押圧に係る設定荷重は、総体重に対する臀部の重量の比率を44%として算出した。60歳以上の者の体重平均値M=53.4kgであることから、ベースとなる設定荷重を23kg(JIS T9256における押圧荷重と同じである)とした。また、この体重平均値Mに係るデータの2σ区間(標準偏差σ=8.24)に相当する体重についても測定を行った。M-2σ=36.9kgについては、設定荷重を16kgとし、M+2σ=69.9kgについては設定荷重を30kgとした。
【0066】
身体保持用具Aをステージ9に載せ、第1加圧子2による押し込み荷重が23kgになるまで、測定装置1の荷重負荷手段4のハンドル46を回して昇降ユニット45の昇降台44を押圧方向に移動させ、第1加圧子2で身体保持用具Aを圧縮変形させた。この状態で10秒放置してから、第2加圧子移動手段6のハンドル63を回して昇降ユニット61の昇降台62を押圧方向に移動させ、第1加圧子2のガイド孔24を介して第2の加圧子3で身体保持用具Aを圧縮変形させた。このとき、第2加圧子3の第2の当接部先端31aが第1加圧子2の第1の当接部先端23aから2.5mm突出するように第2加圧子3の押圧位置を調整した。この状態で10秒放置してから、第2加圧子3の上側に連結されたフォースゲージ51で第2加圧子3が身体保持用具Aから受けた接触圧を測定した。また、第1加圧子2による押し込み荷重を16kg又は30kgに変更したときの接触圧についても同様にして測定を行った。
【0067】
[比較例1]
1.JIS T9256法における身体の局所的部位モデルの接触圧測定(1)
実施例1で測定を行った身体保持用具(OHスケールが3~8点と中等度・高度リスク者向けの体圧分散式マットレス製品[製品名:アルファプラF、株式会社タイカ製品])について、局所的部位として仰臥位における突出部位である仙骨部モデルの接触圧をJIS T9256-2「在宅用床ずれ防止用具」の静止形マットレスの体圧低減の性能試験における試料の圧力値の測定方法に準拠し、図14に示す加圧子を用いて荷重23kgでの圧力値として測定した。なお、実施例1と同様にマットレス製品に付属されているカバーは取り外して測定を行った。また、図14に示す加圧子による荷重を16kg又は30kgに変更したときの圧力値についても同様にして測定を行った。圧力測定器は、簡易体圧測定器(製品名セロ、型式CR-270、株式会社ケープ製品)を用いた。
【0068】
[実施例2]
2.本発明による身体の局所的部位モデルの接触圧測定(2)
身体保持用具Aとして、OHスケールが1~4点と軽度・中等度リスク者向けの体圧分散式マットレス製品(製品名:アルファプラL、株式会社タイカ製品)を用いたほかは、実施例1と同様にして第2加圧子3が身体保持用具Aから受けた接触圧を測定した。なお、実施例1と同様にマットレス製品に付属されているカバーは取り外して測定を行った。
【0069】
[比較例2]
2.JIS T9256法における身体の局所的部位モデルの接触圧測定(2)
身体保持用具Aとして、OHスケールが1~4点と軽度・中等度リスク者向けの体圧分散式マットレス製品(製品名:アルファプラL、株式会社タイカ製品)を用いたほかは、比較例1と同様にして圧力値を測定した。なお、マットレス製品に付属されているカバーは取り外して測定を行った。
【0070】
[実施例3]
3.本発明による身体の局所的部位モデルの接触圧測定(3)
身体保持用具Aとして、OHスケールが0~3点とリスクなし又は軽度リスク者向けの体圧分散式マットレス製品(製品名:アルファプラすくっとRe、株式会社タイカ製品)を用いたほかは、実施例1と同様にして第2加圧子3が身体保持用具Aから受けた接触圧を測定した。なお、実施例1と同様にマットレス製品に付属されているカバーは取り外して測定を行った。
【0071】
[比較例3]
3.JIS T9256法における身体の局所的部位モデルの接触圧測定(3)
身体保持用具Aとして、OHスケールが0~3点とリスクなし又は軽度リスク者向けの体圧分散式マットレス製品(製品名:アルファプラすくっとRe、株式会社タイカ製品)
を用いたほかは、比較例1と同様にして圧力値を測定した。なお、マットレス製品に付属されているカバーは取り外して測定を行った。
【0072】
実施例1及び比較例1の結果を下記表2及び図12(a)に示す。また、実施例2及び比較例2の結果を下記表3及び図12(b)に示す。実施例3及び比較例3の結果を下記表4及び図12(c)に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
実施例1~3及び比較例1~3の結果によれば、平均体重を想定した荷重23kgと、高体重(約70kg)を想定した荷重30kgでは本発明に係る測定値の方がJIS法に係る測定値よりも大きい値となった。一方で、低体重(約37kg)を想定した荷重16kgでは、本発明に係る測定値の方がJIS法に係る測定値よりも小さい値となった。このことは、JIS法ではマットレスの違いによる圧力値の差異が出難い、という課題を裏付けており、荷重を大きく又は小さくした場合においてもJIS法では圧力値の差異が出難く、実際の接触状態が反映され難いことが明らかとなった。それに対し、本発明の測定方法では、マットレスへの押し込み荷重に応じて接触圧が高くなり、その近似曲線の傾きもJIS法に比べて大きいものであった。これらのことから、本発明は、身体の局所的部位モデルの接触圧のデータを実際の接触状態に近い条件下で再現性よく、簡単かつ精度よく取得することができることが示された。
【0077】
[実施例4]
4.本発明による身体の局所的部位モデルの接触圧測定及びそのシミュレーションモデルによる測定
本実施例では、図11に示した第2の実施形態に係る接触圧測定装置10を用いて、第2加圧子3の第2の押圧位置P2を変化させた際の接触圧を測定した。なお、荷重計51,43aとしては、デジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製品)を用いた。また、本実施例に係る接触圧測定装置について、シミュレーションソフトウェア(製品名:MARC、エムエスシーソフトウェア株式会社製品)を用いて、図13(a)に示すような異なるウレタンフォームが積層された2層構造のシミュレーションモデルを作製し、第2加圧子3の第2の押圧位置P2を変化させた際の接触圧をシミュレーションした。ここで、接触圧は、シミュレーションソフトウェアにウレタンフォーム材の計算モデルとして設定されている式1に示した圧縮による超弾性体モデルに基づき、有限要素法を用いて算出した。下記式1に示すひずみエネルギー密度関数Wにおいて、μ、α、βは材料定数であり、μは被測定物を構成するウレタンフォームの弾性率、αは偏差指数、βは体積指数である。Jは変形前後の体積比に相当し、主伸びに係るλ1とλ2とλ3との積である。
【0078】
【数1】
【0079】
被測定物である身体保持用具Aとしては、50mm厚のウレタンフォームを2枚重ねて形成された100mm厚のマットレスパーツが準備された。上層は50mm厚のウレタンフォーム(製品名:TB-SKL、アキレス株式会社製品、JIS K 6400-2 A法における40%圧縮時の硬さが120±27N)であり、下層は50mm厚のウレタンフォーム(製品名:TB-QKQ、アキレス株式会社製品、JIS K 6400-2 A法における40%圧縮時の硬さが200±35N)である。
【0080】
身体保持用具Aをステージ9に載せ、蝶ナット48bを締め込みして押し板410を下方に移動させ、第1加圧子2を押圧方向に移動させた。このとき、第1加圧子2の第1の当接部先端23aに係る第1の押圧位置P1が、身体保持用具Aの表面から押圧方向に37.5mmとなるまで、第1加圧子2を身体保持用具Aに押し込んだ。なお、このときの第1加圧子2による荷重は33.5kgであった。次に、第2加圧子移動手段6のハンドル63を回して昇降ユニット61の昇降台62を押圧方向に移動させ、第1加圧子2のガイド孔24を介して第2の加圧子3を押圧方向に移動させ、身体保持用具Aを圧縮変形させた。このときの第2加圧子3の第2の当接部先端31aの各位置について、第2加圧子3の上側に連結されたフォースゲージ51で第2加圧子3が身体保持用具Aから受けた接触圧を測定した。結果を図13(b)に示す。
【0081】
他方、身体保持用具Aの接触圧のシミュレーションは、上層のウレタンフォーム及び下層のウレタンフォームについて、それぞれ圧縮変形時の荷重変位曲線の実測データをエネルギー密度関数Wとしてシミュレーションソフトに入力し、シミュレーションソフト上で式1のモデルに基づいて実測したWにフィットするλ、α、βを求め、得られた各ウレタンフォームのλ、α、βを用いて、図13(a)の構造における圧縮時の変形量と荷重を算出した。シミュレーションソフトウェアを用いて算出した接触圧のデータを図13(b)に合わせて示す。
【0082】
図13(b)では、横軸に第2加圧子3の先端の位置が示されているが、これは身体保持用具Aの表面からの位置を意味している。第1加圧子2の第1の当接部先端23aに係る第1の押圧位置P1が37.5mmであるので、第2加圧子の先端の位置が37.5mmになったときに、第1加圧子2の第1の当接部先端23aに係る第1の押圧位置P1と、第2加圧子3の第2の当接部先端31aに係る第2の押圧位置P2が同じ位置となる。そのため、第2加圧子の先端の位置として37.5mmを超えた位置が、第1加圧子2の当接部先端23aから第2加圧子3の当接部先端31aが突出する位置となる。シミュレーションのデータと、実測値のデータを比較すると、第2加圧子3の第2の当接部先端31aの位置が37.5mmとなるまでは数値に差があるが、37.5mm以降、すなわち、第1加圧子2の当接部先端23aから第2加圧子3の第2の当接部先端31aが突出した位置からは微差となり、第2加圧子3の第2の当接部先端31aの突出高さが2.5mm(第2加圧子の先端の位置が40mm)では略一致する値(本発明に係る実測値:4.6N、シミュレーション値:4.5N)となることがわかった。これらのことから、本発明は、身体の局所的部位モデルの接触圧のデータをシミュレーションモデル同様のデータとして、簡単に精度よく取得できることが明らかとなった。
【0083】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
【符号の説明】
【0084】
1、10 接触圧測定装置
2、200、201、202、203 第1加圧子
21 ベース部
22 凸部
23、230、231、232、233 第1の当接部
23a 第1の当接部先端
24、240、241、242、243 ガイド孔部
25 取付孔
3、300、301、302、303 第2加圧子
31、310、311、312、313 第2の当接部
31a 第2の当接部先端
32 取付穴
4、40 荷重負荷手段
41、410 押し板
42、420 シャフト
43 荷重設定手段
43a 荷重計(フォースゲージ)
43b 検圧子
43c 軸部
44 昇降台
45 昇降ユニット
46 ハンドル
47 位置計測器
48 支持手段
48a ボルト
48b 蝶ナット
5 荷重測定手段
51 荷重計(フォースゲージ)
52 検圧子
53 軸部
6 第2加圧子移動手段
61 昇降ユニット
62 昇降台
63 ハンドル
7 位置設定手段(位置計測器)
8 支柱
9 ステージ
A 身体保持用具(被測定物)
P1 第1の押圧位置における第1の当接部先端の位置
P2 第2の押圧位置における第2の当接部先端の位置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14