(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】無線給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/05 20160101AFI20240910BHJP
B60L 5/00 20060101ALN20240910BHJP
B60L 53/122 20190101ALN20240910BHJP
B60M 7/00 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
H02J50/05
B60L5/00 B
B60L53/122
B60M7/00 X
(21)【出願番号】P 2020216853
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋士
(72)【発明者】
【氏名】仲 泰正
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-195993(JP,A)
【文献】特開2017-034919(JP,A)
【文献】特開2017-184605(JP,A)
【文献】特開2019-068580(JP,A)
【文献】特開2020-048339(JP,A)
【文献】国際公開第2012/020475(WO,A1)
【文献】宮本康平,服部励治,電界結合型無線電力伝送における電極形状と回路考察,2014年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会通信講演論文集1,日本,電子情報通信学会,2014年09月23日,p.448,B-21-13
【文献】水谷陽太,笹谷拓也,成末義哲,川原圭博,浅見徹,受電器アレイとシート型送電器を用いた電界結合無線電力伝送における極板形状に関する一検討,電子情報通信学会 信学技報,日本,電子情報通信学会,2016年11月,WPT2016-38,pages.7-11
【文献】熊谷耕輔,中原海司,坂井尚貴,大平孝,矢田祐之,早川浩二朗,相京秀幸,電界結合型2次元WPTに向けた受電電極の最適構造,電子情報通信学会 信学技報,日本,電子情報通信学会,2018年10月,vol.118, no.227,pages.79-83,WPT2018-43
【文献】中原海司,熊谷耕輔,坂井尚貴,大平孝,電界結合型2次元WPTにおける送電部の設計法,信学技報,日本,電子情報通信学会,2018年11月,Vol.118, No.309,pages.1-6,WPT2018-51
【文献】鈴木良輝,崎原孫周,坂井尚貴,大平孝,遠藤哲夫,藤岡友美,バッテリーレス電動カート連続給電走行のための右手左手複合系電化道路,電子情報通信学会論文誌C,日本,電子情報通信学会,2016年03月,Vol.J99-C, No.4,pages.133-141
【文献】Sonshu SAKIHARA, Satoshi KITABAYASHI, Naoki SAKAI, Takashi OHIRA,Far-end reactor matching to a traveling load along an RF power transmission line,IECIE Trans. Electron,日本,IECIE,2018年02月,Vol.E101-A, No.2,pages.396-401
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/00
B60L 53/122
B60M 7/00
H02J 50/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電電極部から、前記送電電極部に対して相対的に移動する受電電極部へ電界結合を用いた非接触で電力を供給する無線給電装置であって、
前記送電電極部へ高周波の電力を供給する高周波生成部と、
前記送電電極部の終端条件を変更する終端条件変更部と、
前記終端条件変更部で変更される前記終端条件に応じて、送電側のインピーダンスの整合を図るための送電側整合回路部と、
前記高周波生成部から供給された高周波が前記送電電極部において反射する反射電力を検出する反射電力検出部と、
前記反射電力検出部で検出した前記反射電力に基づいて、前記終端条件変更部による前記終端条件、および前記送電側整合回路部における送電側のインピーダンスを変更する送電側変更部と、
を備える無線給電装置。
【請求項2】
前記送電側変更部は、前記反射電力検出部で検出した反射電力が予め設定した上限値よりも大きいとき、前記終端条件および前記送電側のインピーダンスを変更する請求項1記載の無線給電装置。
【請求項3】
前記送電側変更部は、前記反射電力検出部で検出した前記反射電力に基づいて、前記送電電極部に印加する直流の電圧を変更する直流電圧変更部と、
前記送電電極部に接続され、前記直流電圧変更部から印加された直流の電圧によって容量が変化する可変容量ダイオードと、を有し、
前記可変容量ダイオードの容量を変更することにより、前記終端条件を変更する請求項2記載の無線給電装置。
【請求項4】
前記送電側変更部は、前記反射電力検出部で検出した前記反射電力に基づいて、前記送電電極部に印加する直流の電圧を変更する直流電圧変更部と、
前記送電電極部において、前記直流電圧変更部から印加された直流の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で検出した直流の電圧に基づいて、前記送電電極部への容量素子の接続を断続する開閉部と、を有し、
前記送電電極部への前記容量素子の接続を断続することにより、前記終端条件を変更する請求項2記載の無線給電装置。
【請求項5】
前記送電側変更部は、前記反射電力検出部で検出した前記反射電力に基づいて、前記送電電極部に印加する直流の電圧を変更する直流電圧変更部と、
前記送電電極部において、前記直流電圧変更部から印加された直流の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で検出した直流の電圧に基づいて、前記送電電極部へのリアクタンス素子の接続を断続する開閉部と、を有し、
前記送電電極部への前記リアクタンス素子の接続を断続することにより、前記終端条件を変更する請求項2記載の無線給電装置。
【請求項6】
前記受電電極部で受け取った電力の電圧を、入力電圧として検出する入力検出部と、
前記入力検出部で検出した前記入力電圧に基づいて、受電側のインピーダンスの整合を図るための受電側整合回路部と、
前記入力検出部で検出した前記入力電圧が予め設定した下限値よりも小さいとき、前記受電側のインピーダンスを変更する受電側変更部と、
を備える請求項1または5のいずれか一項記載の無線給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、無線給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電動化された車両などの移動体へ電力を供給する方法として、非接触で電力を供給する無線給電装置が知られている。車両用の無線給電装置は、主として地上に設けられている送電電極部と、車両に設けられこの送電電極部から電力の供給を受ける受電電極部とから構成されている。そして、この無線給電の方式として、電界結合を用いることが提案されている(特許文献1など参照)。
【0003】
しかしながら、高周波を用いる電界結合の場合、送電電極部は、二次元方向へ大きくなるほど、つまり設置面積が大きくなるほど、定在波が生じるという問題がある。定在波が生じると、定在波の節となる部分では発生する電界が小さく、送電電極部と受電電極部とが対向しても電界結合による電力の伝達が困難であるという問題がある。そして、送電電極部が大きくなるほど、定在波の節も増加する。非特許文献4~6は、定在波の影響を考慮した無線給電について開示している。しかし、これらは、いずれも送電電極部が大きくなること、および定在波の節の数が増加することについての考慮がされておらず、構造も複雑化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】宮本康平、他1名、「電界結合型無線電力伝送における電極形状と回路考察」、2014年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会通信講演論文集1、p.448、2014年3月
【文献】水谷陽太、他4名、「受電器アレイとシート型送電器を用いた電界結合無線電力伝送における極板形状に関する一検討」、電子情報通信学会 信学技報 WPT2016-38、pp.7-11、2016年11月
【文献】熊谷耕輔、他6名、「電界結合型2次元WPTに向けた受電電極の最適構造」、電子情報通信学会 信学技報 WPT2018-43、vol.118、no.227、pp.79-83、2018年10月
【文献】中原海司、他6名、「電界結合型2次元WPTにおける送電部の設計法」、電子情報通信学会 信学技報 WPT2018-51、vol.118、no.309、pp.1-6、2018年11月
【文献】鈴木良輝、他5名、「バッテリーレス電動カート連続給電走行のための右手左手複合系電化道路」、電子情報通信学会論文誌C、vol.J99-C、no.4、pp.133-141、Mar.2016
【文献】Sonshu Sakihara、他3名、「Far-end reactor matching to a traveling load along an RF power transmission line」、IECIE Trans. Electron. vol.E101-A、no.2、pp.396-401、Feb.2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、簡単な構造で受電電極部と定在波の節との位置関係を検出し、定在波の節を移動することで送電電極部の大きさにかかわらず送電効率を向上する無線給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態による無線給電装置は、反射電力検出部を備えている。反射電力検出部は、高周波生成部から送電電極部へ供給された高周波が送電電極部において反射する反射電力を検出する。高周波生成部から送電電極部へ供給される電力は、送電電極部と受電電極部との間で非接触による電力の伝達が不完全になるほど反射が大きくなる。そのため、送電電極部から電力を受け取る受電電極部が定在波の節にあたる位置にあるとき、反射電力は大きくなる。反射電力検出部は、この反射電力を検出する。これにより、受電側と送電側との間で通信したり、受電側の位置を検出したりすることなく、送電側における反射電力の検出によって、受電電極部と定在波の節との位置関係が検出される。そして、一実施形態では、送電側変更部を備えている。送電側変更部は、反射電力検出部で検出した反射電力に基づいて、終端条件変更部によって送電電極部の終端条件を変更するとともに、送電側整合回路における送電インピーダンスを変更する。これにより、送電電極部は、終端条件および送電インピーダンスが変更され、定在波の腹や節の位置が移動する。すなわち、定在波の節は、受電電極部と重ならない位置に移動する。そのため、送電電極部と受電電極部との間は、送電電極部の大きさにかかわらず、無線による安定した電力の伝達が図られる。したがって、簡単な構造で受電電極部と定在波の節との位置関係を検出することができるとともに、送電電極部の大きさにかかわらず送電効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による無線給電装置を適用した電力供給システムを示す模式的な斜視図
【
図2】一実施形態による無線給電装置を適用した電力供給システムの地上部および移動体を示す模式的な側面図
【
図3】一実施形態による無線給電装置の送電電極部を示す模式的な平面図であり、終端条件変更部としてバラクタを有する例を示す図
【
図4】一実施形態による無線給電装置の構成を示すブロック図
【
図5】一実施形態による無線給電装置の送電電極部を示す模式的な平面図であり、終端条件変更部としてコンデンサを有する例を示す図
【
図6】一実施形態による無線給電装置の送電電極部において生じる定在波の腹および節の領域の示す模式図
【
図7】一実施形態による無線給電装置の送電電極部において生じる定在波の腹および節の領域の示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態による無線給電装置を適用した電力供給システムについて説明する。
図1および
図2に示すように、電力供給システム10は、移動体11および地上部12を備えている。地上部12は、例えば道路、駐車場、工場など、移動体11を用いる電力供給システムを提供する設備に設けられている。移動体11は、例えば電動の車両などである。移動体11は、例えば人や貨物を搭載可能であり、地上部12から供給された電力を利用して走行する。移動体11は、無人での走行または有人での走行のいずれであってもよい。
【0010】
無線給電装置20は、高周波生成部21、送電電極部22および受電電極部23を備えている。高周波生成部21は、図示しないインバータなどの高周波を生成する回路を有している。高周波生成部21は、電源24から供給された電力を用いて高周波を生成し、送電電極部22へ供給する。高周波生成部21で生成した高周波は、送電電極部22から出力される。受電電極部23は、送電電極部22との間の電界結合を用いて、送電電極部22から出力された電力を非接触、つまり無線で受け取る。
【0011】
送電電極部22は、例えば地上部12の床面や壁面などの設置面25に設けられている。設置面25は、平面や曲面など設備に応じた任意の面である。送電電極部22は、一対の第一電極31および第二電極32を有している。第一電極31および第二電極32は、櫛形に形成されている。具体的には、
図3に示すように第一電極31は、幹部311と、この幹部311から分岐する平行な複数の枝部312とを有している。同様に、第二電極32は、幹部321と、この幹部321から分岐する平行な複数の枝部322とを有している。第一電極31は、高周波生成部21の一方の端子に接続され、第二電極32は、高周波生成部21の他方の端子に接続されている。第一電極31の枝部312は、第二電極32の枝部322の間に設けられている。これにより、櫛形の第一電極31と第二電極32とは、
図3に示すように幹部311および幹部321が伸びる方向において、互いに離間しつつ、枝部312と枝部322とが櫛歯状に噛み合った形で交互に配置される。なお、送電電極部22として櫛形の第一電極31および第二電極32は一例であり、定在波が生じる送電電極部22であれば形状は櫛形に限られない。また、本実施形態では、枝部312の全長、つまり幹部311から幹部321側への枝部312の長さは、高周波生成部21で生成する周波数λとの間に、全長=λ/8の関係に設定している。同様に、枝部322の全長も、全長=λ/8に設定している。幹部311および幹部321の長さは任意に設定することができる。
【0012】
受電電極部23は、
図2に示すように送電電極部22との間に空間を形成して対向している。送電電極部22と受電電極部23との間には、誘電体である空気が存在する。受電電極部23は、上述のように送電電極部22との間の電界結合を用いて、送電電極部22から出力された電力を非接触で受け取る。本実施形態の場合、受電電極部23は、移動体11の底面に設けられている。例えば送電電極部22を設備の壁面に設ける場合、受電電極部23は移動体11の側面に設けてもよい。
【0013】
移動体11は、受電電極部23に加え、
図2に示すように本体41、制御部42および負荷43を有している。本体41は、移動体11を構成する制御部42および負荷43に加え、運搬する人や物などを搭載可能である。制御部42は、受電電極部23で送電電極部22から電界結合で受け取った高周波を直流に整流する整流回路44を有している。負荷43は、例えばバッテリ45や駆動部46など、受電電極部23で受け取った電力を消費する。バッテリ45は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池やキャパシタなどで構成され、整流された電力を蓄える。駆動部46は、モータ47および車輪48などを有しており、モータ47によって車輪48を駆動する。制御部42は、バッテリ45への充電および駆動部46の駆動を含め、移動体11の全体を制御する。負荷43は、例示したバッテリ45およびモータ47などに限らず、例えば移動体11の照明や空調機器など電力を消費するものが含まれる。
【0014】
図4に示すように無線給電装置20は、上記に加え、終端条件変更部51、送電側整合回路部52、反射電力検出部53および送電側変更部54を備えている。終端条件変更部51は、
図3に示すように送電電極部22の終端、つまり高周波生成部21とは反対側の端部に設けられている。
図3に示す場合、終端条件変更部51は、可変容量ダイオード、いわゆるバラクタ61を有している。バラクタ61は、印加される直流の電圧によってダイオードの容量が変化する。この場合、終端条件変更部51は、バラクタ61の容量が変化することにより、送電電極部22の終端条件を変更する。また、終端条件変更部51は、
図5に示すように回路を切り替える構成であってもよい。
図5に示す場合、終端条件変更部51は、電圧検出部62、開閉部としてのスイッチ63およびスイッチ64を有している。終端条件変更部51は、電圧検出部62で検出した直流の電圧に基づいて、スイッチ63およびスイッチ64を駆動する。これにより、終端条件変更部51は、送電電極部22の終端を、開放端とするか、容量素子としてのコンデンサ65を接続するかのいずれか一方を選択し、送電電極部22の終端条件を変更する。
【0015】
図4に示す送電側整合回路部52は、終端条件変更部51によって変更される終端条件に応じて、送電側のインピーダンスである送電インピーダンスの整合を図る。具体的には、送電側整合回路部52は、インピーダンスの異なる図示しない複数の整合回路を有している。終端条件変更部51によって終端条件が変更されることにより、送電電極部22はインピーダンスが変化する。送電側整合回路部52は、この終端条件の変更によって変化するインピーダンスにあわせて整合回路を切り替え、送電電極部22の終端条件にあわせた送電インピーダンスを設定する。
【0016】
反射電力検出部53は、高周波生成部21と送電電極部22との間に設けられている。反射電力検出部53は、高周波生成部21から送電電極部22へ供給され、送電電極部22において反射する高周波の電力を反射電力Wrとして検出する。高周波生成部21から送電電極部22へ供給された高周波は、電界結合によって送電電極部22から受電電極部23へ非接触で伝達される。この場合、送電電極部22から受電電極部23への電力の伝達が十分でないとき、高周波生成部21から送電電極部22へ供給された電力の一部は反射電力Wrとして反射する。反射電力検出部53は、この送電電極部22において反射した電力を反射電力Wrとして検出する。
【0017】
送電側変更部54は、反射電力検出部53で検出した反射電力Wrに基づいて、送電電極部22の終端条件および送電インピーダンスを変更する。具体的には、送電側変更部54は、直流電圧変更部66を有している。直流電圧変更部66は、送電電極部22に対し、高周波生成部21で生成した高周波に重畳して直流電源67から直流の電圧を印加する。送電側変更部54は、反射電力検出部53で検出した反射電力Wrが、予め設定した上限値W1よりも大きくなると、直流電圧変更部66を通して送電電極部22に印加する直流の電圧を変更する。
【0018】
図3に示す例の場合、送電電極部22に印加する直流の電圧が変化すると、送電電極部22の終端に接続している終端条件変更部51のバラクタ61の容量は変化する。これにより、送電電極部22の終端条件は変更される。すなわち、送電側変更部54は、直流電圧変更部66により送電電極部22に印加する直流の電圧を変更し、バラクタ61の容量を変更する。その結果、送電電極部22は、バラクタ61の容量の変化にともなって終端条件が変化する。
【0019】
また、
図5に示す例の場合、送電電極部22に印加する直流の電圧が変化すると、終端条件変更部51の電圧検出部62は変化した電圧を検出する。これにより、終端条件変更部51のスイッチ63およびスイッチ63は、電圧検出部62で検出した電圧に基づいて駆動される。すなわち、送電側変更部54は、直流電圧変更部66により送電電極部22に印加する直流の電圧を変更し、送電電極部22とコンデンサ65とを断続する。その結果、送電電極部22は、コンデンサ65の接続の有無にともなって終端条件が変化する。
【0020】
送電側変更部54は、終端条件変更部51における送電電極部22の終端条件だけでなく、送電側整合回路部52において送電インピーダンスを変更する。すなわち、送電側変更部54は、終端条件変更部51において送電電極部22の終端条件を変更すると、変更した終端条件にあわせて送電側整合回路部52において送電インピーダンスを変更する。
【0021】
送電側変更部54は、反射電力検出部53で検出した反射電力Wrが予め設定した上限値W1よりも大きくなると、送電電極部22の終端条件および送電インピーダンスを変更する。ここで、上限値W1は、無線給電装置20における送電電極部22の面積や移動体11の性能などに応じて、任意に設定することができる。例えば上限値W1を10%と設定した場合、送電側変更部54は、高周波生成部21から供給される電力を100%として、反射電力Wrが10%を超えると、終端条件および送電インピーダンスを変更する。
【0022】
これら終端条件変更部51、反射電力検出部53および送電側変更部54は、マイクロコンピュータ、IC、またはFETやトランジスタなどを組み合わせた電気的な回路など、ハードウェアによって実現されている。また、これら終端条件変更部51、反射電力検出部53および送電側変更部54は、マイクロコンピュータでコンピュータプログラムを実行することによりソフトウェア的に実現したり、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現したり、任意の手段で構成することができる。
【0023】
図4に示すように無線給電装置20は、受電側に、受電電極部23に加え、入力検出部71、受電側整合回路部72、および受電側変更部73を備えている。入力検出部71は、受電電極部23と負荷43との間に設けられている。入力検出部71は、受電電極部23において送電電極部22から受け取った電力の電圧を、入力電圧Viとして検出する。受電側整合回路部72は、インピーダンスの異なる図示しない複数の整合回路を有している。受電側変更部73は、入力検出部71で検出した入力電圧Viが予め設定した下限値V1よりも小さいとき、インピーダンスの異なる整合回路を切り替えて、受電側のインピーダンスである受電インピーダンスを変更する。
【0024】
上述のように、送電側である送電電極部22において反射電力Wrに基づいて送電インピーダンスが変更されることにより、受電側においても送電インピーダンスに合わせて受電インピーダンスを整合させる必要がある。そこで、受電側整合回路部72は、入力検出部71で検出した入力電圧Viに基づいて、整合回路を切り替え、受電インピーダンスを送電インピーダンスに整合させる。入力電圧Viの下限値V1は、無線給電装置20の性能などに応じて、任意に設定することができる。
【0025】
受電側の入力検出部71および受電側変更部73は、マイクロコンピュータ、IC、またはFETやトランジスタなどを組み合わせた電気的な回路など、ハードウェアによって実現されている。また、これら入力検出部71および受電側変更部73は、マイクロコンピュータでコンピュータプログラムを実行することによりソフトウェア的に実現したり、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現したり、任意の手段で構成することができる。
【0026】
次に、上記の構成による無線給電装置20の作用について説明する。
送電電極部22は、高周波を出力するというその性質上、その面積が大きくなると定在波が生じる。そのため、送電電極部22には、定在波の影響によって、十分な出力が得られる定在波の腹にあたる部分と、十分な出力が得られない定在波の節の部分とが生じる。例えば、
図6に示すような送電電極部22の場合、第一電極31の幹部311および第二電極32の幹部321が伸びる方向へ、定在波の節にあたる領域A1、腹にあたる領域A2、および節にあたる領域A3が交互に生じる。このように送電電極部22に定在波によって節にあたる領域A1および領域A3が生じると、移動体11に設けられている受電電極部23が領域A1または領域A3に位置するとき、送電電極部22から受電電極部23への電力の伝達効率が低下する。
【0027】
送電電極部22に生じる定在波は、終端条件などのように送電電極部22における高周波や回路の特性を変更したり、整合回路を切り替えたりすることにより、腹および節の位置が移動する。そこで、本実施形態では、終端条件変更部51によって送電電極部22の終端条件を変更している。このように終端条件を変更することにより、送電電極部22に生じる定在波の腹および節の位置は移動する。例えば
図6に示す例において終端条件変更部51のバラクタ61の容量を変化させると、
図7に示すように定在波の腹にあたる領域B1、節にあたる領域B2および腹にあたる領域B3が生じる。すなわち、送電電極部22の定在波の腹および節の位置は、終端条件を変更することにより移動する。したがって、送電電極部22の終端条件を変更することにより、送電電極部22に対して相対的に移動する移動体11の受電電極部23の位置にあわせて送電電極部22に生じる定在波の腹の位置を移動させることができる。
【0028】
ところで、上述のように定在波の腹にあたる領域を移動体11にあわせて移動させる場合、移動体11の位置を検出する必要がある。このとき、移動体11の受電電極部23において受け取る電力から送電電極部22で生じる定在波の腹や節を検出する構成とすると、受電側の移動体11と送電側の地上部12との間で通信が必要となり、構造および処理の複雑化を招く。
【0029】
そこで、本実施形態では、送電側である地上部12において、送電電極部22に生じる定在波の腹および節にあたる位置を検出している。具体的には、反射電力検出部53は、送電電極部22で反射する反射電力Wrを検出している。反射電力Wrは、送電電極部22から受電電極部23へ伝達される電力の大きさに相関している。すなわち、送電電極部22と受電電極部23との間で十分な電力の伝達が行なわれているとき、反射電力Wrは減少する。そのため、反射電力Wrは、移動体11に設けられている受電電極部23が定在波の腹にあたる位置にあるとき、定在波の節にあたる位置にあるときと比較して小さくなる。つまり、受電電極部23が送電電極部22で生じる定在波の腹にあたる位置にあり、送電電極部22から受電電極部23へ高い効率で電力の伝達が行なわれているとき、反射電力Wrは減少する。一方、受電電極部23が送電電極部22で生じる定在波の節にあたる位置にあり、送電電極部22から受電電極部23へ十分な電力の伝達が行なわれていないとき、反射電力Wrは増大する。
【0030】
反射電力検出部53は、この送電電極部22から高周波生成部21へ反射する反射電力Wrを検出する。送電側変更部54は、反射電力検出部53で検出した反射電力Wrに基づいて、送電電極部22の終端条件を変更する。具体的には、送電側変更部54は、反射電力検出部53で検出した反射電力Wrが予め設定した上限値W1よりも大きいとき、終端条件を変更する。
図3に示す例の場合、送電側変更部54は、反射電力Wrが上限値W1よりも大きいとき、送電電極部22に印加する直流の電圧を変更し、バラクタ61の容量を変更する。これにより、送電電極部22は、バラクタ61の容量の変化にともなって終端条件が変更され、生じる定在波の腹および節の位置が移動する。また、
図5に示す例の場合、送電側変更部54は、反射電力Wrが上限値W1よりも大きいとき、送電電極部22に印加する電圧を変更し、電圧検出部62で検出した電圧にしたがってコンデンサ65の接続を断続する。これにより、送電電極部22は、コンデンサ65の接続の有無によって終端条件が変更され、生じる定在波の腹および節の位置が移動する。
【0031】
送電側変更部54は、バラクタ61の容量またはコンデンサ65の接続を、反射電力Wrに応じて変更することにより、移動体11の移動に追従して定在波の腹および節の位置を移動させる。つまり、移動体11が移動しても、送電電極部22における定在波の腹の位置は、移動体11に設けられている受電電極部23にあわせて移動する。その結果、移動体11の受電電極部23は、送電電極部22に生じる定在波の腹の位置または腹に近い位置で送電電極部22と対向する。したがって、送電電極部22から受電電極部23へ伝達する電力の伝達効率の向上が図られる。
【0032】
ここで、送電電極部22の終端条件が変更されると、送電電極部22の送電インピーダンスも変化する。送電側変更部54は、終端条件の変更にともなう送電インピーダンスの変化にあわせて、送電側整合回路部52の整合回路を切り替える。つまり、送電側変更部54は、送電インピーダンスに整合する整合回路を選択する。このように、送電側変更部54は、終端条件と送電側整合回路部52における整合回路の切り替えとを同期して行なう。
【0033】
また、送電電極部22における送電インピーダンスが変化すると、受電側の受電インピーダンスも送電インピーダンスにあわせて整合させる必要がある。移動体11である受電側の入力検出部71では、受電電極部23で送電電極部22から受け取った電力の電圧を入力電圧Viとして検出する。受電側変更部73は、入力電圧Viに基づいて、受電側整合回路部72の整合回路を選択する。すなわち、受電側変更部73は、入力電圧Viを用いて、受電側整合回路部72の整合回路を選択して受電インピーダンスを変更する。入力電圧Viは、送電電極部22と受電電極部23との間の電力の伝達効率、つまり送電電極部22と受電電極部23との間のインピーダンスの整合によって変化する。送電電極部22と受電電極部23との間でインピーダンスが整合しているとき、電力の伝達効率が向上し、入力電圧Viも向上する。そこで、受電側変更部73は、入力電圧Viに基づいて、受電インピーダンスを変更する。これにより、受電側変更部73は、送電電極部22における送電インピーダンスにあわせて受電インピーダンスの整合を図る。
【0034】
以上のように一実施形態では、反射電力Wrに基づいて送電電極部22の終端条件を変更し、送電電極部22に生じる定在波の腹および節の位置を移動体11の移動にあわせて変更している。これにより、送電電極部22と移動体11に設けられている受電電極部23との位置関係にかかわらず、送電電極部22から受電電極部23への電力の伝達効率は向上する。仮に終端条件変更部51を備えない場合、送電電極部22における定在波の節の位置に受電電極部23があると、送電電極部22から受電電極部23への電力の伝達効率は数%となる。一方、受電電極部23の位置をそのままに、本実施形態のように終端条件変更部51で送電電極部22における定在波の節の位置を移動して受電電極部23に対応させたとき、送電電極部22から受電電極部23への電力の伝達効率は80%を超える。本実施形態の無線給電装置20は、反射電力Wrを用いて受電電極部23を有する移動体11の移動にあわせて送電電極部22の終端条件を変更し、送電電極部22における定在波の腹および節の位置を変更する。これにより、送電電極部22に対して受電電極部23の位置が変化しても、送電電極部22から受電電極部23へ伝達される電力は伝達効率が向上する。
【0035】
以上説明した一実施形態による無線給電装置20は、反射電力検出部53を備えている。反射電力検出部53は、送電電極部22において反射する反射電力Wrを検出する。これにより、受電側と送電側との間で通信したり、受電側の移動体11の位置を検出したりすることなく、送電側における反射電力Wrの検出によって、受電電極部23と定在波の腹または節との位置関係が検出される。そして、送電側変更部54は、反射電力検出部53で検出した反射電力Wrに基づいて、終端条件変更部51によって送電電極部22の終端条件を変更するとともに、送電側整合回路部52における送電インピーダンスを変更する。これにより、送電電極部22は、終端条件および送電インピーダンスが変更され、定在波の腹および節の位置が移動する。すなわち、定在波の節は、受電電極部23と重ならない位置に移動する。そのため、送電電極部22と受電電極部23との間は、送電電極部22の大きさにかかわらず、無線による安定した電力の伝達が図られる。したがって、簡単な構造で受電電極部23と定在波の腹や節との位置関係を検出することができるとともに、送電電極部22の大きさにかかわらず送電効率を向上することができる。
【0036】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
上記の実施形態では、枝部312および枝部322の全長を全長=λ/8に設定する例について説明した。しかし、これらの全長は、全長=λ/4やλ/16などに変更可能である。このように、枝部312および枝部322の全長と周波数λとの関係が変化すると、定在波の形状が変化、つまり節や腹の位置および数などが変化する。このように形状の異なる定在波が生じる場合でも、終端条件変更部51で終端条件を変更することにより、定在波の節や腹の位置は移動する。
また、上記の実施形態では、終端条件変更部51は、
図5に示すように容量素子としてのコンデンサ65を有する例について説明した。終端条件変更部51は、このコンデンサ65を断続し、送電電極部22を開放端とするか、接続するかのいずれか一方を選択して送電電極部22の終端条件を変更している。しかし、終端条件変更部51は、容量素子に代えてリアクタンス素子を有していてもよい。この場合、終端条件変更部51は、このリアクタンス素子を断続し、送電電極部22を開放端とするか、接続するかのいずれか一方を選択して送電電極部22の終端条件を変更する。リアクタンス素子は、例えばコンデンサなどの容量素子やコイルなどのインダクタを用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
図面中、20は無線給電装置、21は高周波生成部、22は送電電極部、23は受電電極部、51は終端条件変更部、52は送電側整合回路部、53は反射電力検出部、54は送電側変更部、61はバラクタ(可変容量ダイオード)、62は電圧検出部、63、64はスイッチ(開閉部)、65はコンデンサ(容量素子)、66は直流電圧変更部、71は入力検出部、72は受電側整合回路部、73は受電側変更部を示す。