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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】患者インターフェース安定化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A61M16/06 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020570454
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066524
(87)【国際公開番号】W WO2019243600
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】62/688,605
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】グラショー,ジョナサン セイヤー
(72)【発明者】
【氏名】チョドコウスキー,ローレン パトリシア
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0038619(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0196511(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067441(US,A1)
【文献】特開2011-016007(JP,A)
【文献】特表2017-534393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0190432(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0271354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部材と、前記フレーム部材に連結される、患者の気道に呼吸ガスの流れを届けるためのクッションとを有する患者インターフェース装置で用いるためのヘッドギアアセンブリであって、該フレーム部材内に第1の耐回転連結部及び第2の耐回転連結部が画定され、当該ヘッドギアアセンブリは、
第1のアーム部材及び第2のアーム部材であって、それぞれのアーム部材は第1の端部と、該第1の端部の反対側に配置される第2の端部とを含み、該第1のアーム部材の第1の端部は、該第1のアーム部材が配置される第1の平面において前記フレーム部材に対する該第1のアーム部材の回転が防止されるように前記第1の耐回転連結部と選択的に係合するような寸法及び構成を有する構造を有し、該第2のアーム部材の第1の端部は、該第2のアーム部材が配置される第2の平面において前記フレーム部材に対する該第2のアーム部材の回転が防止されるように前記第2の耐回転連結部と選択的に係合するような寸法及び構成を有する構造を有する、第1のアーム部材及び第2のアーム部材と、
前記第1のアーム部材及び前記第2のアーム部材に連結されて、前記第1のアーム部材の第2の端部と前記第2のアーム部材の第2の端部との間を2つの前記第2の端部と同じ高さで延在するストラップ部材と、
を含み、
前記第1のアーム部材及び前記第2のアーム部材の各々は、前記第1の端部と前記第2の端部との間で湾曲した形で延在する本体部を含み、
前記第1のアーム部材及び前記第2のアーム部材の各々は、
前記第2の端部が耳の下部と同じ高さ又は大体同じ高さにあり、
患者の耳の後ろに位置するように構成される、患者の対応する耳に面する凹状である、ヘッドギアアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の耐回転連結部及び前記第2の耐回転連結部のそれぞれは細長いスロットであり、各アーム部材の第1の端部の構造はフック状部を含む、請求項1に記載のヘッドギアアセンブリ。
【請求項3】
前記ストラップ部材は、前記第1のアーム部材及び前記第2のアーム部材のうちの少なくとも一方に連結され、前記ストラップ部材の長さは調節可能である、請求項1に記載のヘッドギアアセンブリ。
【請求項4】
前記第1のアーム部材及び前記第2のアーム部材のそれぞれのヤング率は0.1ギガパスカルよりも大きい、請求項1に記載のヘッドギアアセンブリ。
【請求項5】
記第1のアーム部材及び前記第2のアーム部材のうちの少なくとも一方の本体部は、少なくとも1つのリビングヒンジを含む、請求項1に記載のヘッドギアアセンブリ。
【請求項6】
気道圧補助システムのための患者インターフェース装置であって、該気道圧補助システムはホースと、呼吸ガスの流れを生成するように構成されたガス流生成器とを含み、当該患者インターフェース装置は、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のヘッドギアアセンブリと、
前記フレーム部材に連結されるとともに、前記ガス流生成器から前記フレーム部材に呼吸ガスの流れを伝達するために前記ホースに連結されるような構造を有する連結部材であって、該連結部材は前記クッションと流体連結されるとともに、前記クッションが前記フレーム部材に連結される側の反対側且つ遠位に配置される、連結部材と、
を含み、
前記ヘッドギアアセンブリの第1のアーム部材及び第2のアーム部材のそれぞれの第1の端部は、前記ヘッドギアアセンブリのそれぞれの第2の端部及びストラップ部材よりも前記連結部材の近くに配置されている、患者インターフェース装置。
【請求項7】
前記第1のアーム部材の第2の端部は前記クッションから第1の距離離間され、前記連結部材から第2の距離離間され、前記第2のアーム部材の第2の端部は前記クッションから第3の距離離間され、前記連結部材から第4の距離離間され、該第1の距離は該第3の距離と同じであり、該第2の距離は該第4の距離と同じである、請求項に記載の患者インターフェース装置。
【請求項8】
前記第1の端部のそれぞれは前記フレーム部材に取り外し可能に連結されている、請求項に記載の患者インターフェース装置。
【請求項9】
前記第1の端部のそれぞれは前記フレーム部材に固定連結されている、請求項に記載の患者インターフェース装置。
【請求項10】
前記第1のアーム部材及び前記第2のアーム部材のそれぞれは、前記フレーム部材に概ね固定されている、請求項に記載の患者インターフェース装置。
【請求項11】
前記クッションは第1の端部と、該第1の端部の反対側且つ遠位に配置される第2の端部とを有し、前記クッションの第1の端部及び第2の端部と、前記第1のアーム部材及び前記第2のアーム部材の第2の端部とは平面内に実質的に配置される、請求項に記載の患者インターフェース装置。
【請求項12】
前記ストラップ部材は、前記患者の頭部の後頭骨の下に位置するような構造を有する、請求項に記載の患者インターフェース装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2018年6月22日に出願された米国仮出願第62/688605号について、米国特許法第119条(e)に基づき優先権の利益を主張する。該仮出願の内容は参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、患者の気道に加湿ガスの流れを届けるのに用いられる気道圧補助(pressure support)システムに関する。本発明は、気道圧補助システムのための患者インターフェース装置及びそのヘッドギアアセンブリにも関する。
【背景技術】
【0003】
多くの人々が睡眠の間に呼吸障害に悩まされている。睡眠時無呼吸は、世界中で何百万もの人が苦しんでいる睡眠時呼吸障害の一般的な例である。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は睡眠時無呼吸の1種であり、気道、通常、上気道又は咽頭領域の閉塞による呼吸困難によって睡眠が繰り返し中断される状態である。気道の閉塞は、上気道部分を安定させることにより組織が気道を虚脱させる筋肉の全般的な弛緩に少なくとも部分的によるとものと一般的に考えられている。睡眠時無呼吸症候群の別の種類としては中枢性無呼吸が挙げられ、脳の呼吸中枢からの呼吸信号が欠如することにより呼吸が止まるものである。無呼吸状態は、それが閉塞性であれ、中枢性であれ、閉塞性と中枢性の組み合わせである混合型であれ、呼吸の完全な又はほぼ完全な停止、例えば、最大呼吸気流が90%以上減少することと定義される。
【0004】
睡眠時無呼吸に苦しむものは睡眠断片化及び睡眠中の間欠的な完全又はほぼ完全な換気の停止を経験し、重度のオキシヘモグロビン飽和度低下を来す可能性がある。これらの症状は日中の極度の眠気、不整脈、肺動脈高血圧、うっ血性心不全及び/又は認知機能障害へと臨床的に転換し得る。睡眠時無呼吸の他の結果としては、右室機能不全、覚醒時及び睡眠時の二酸化炭素貯留、持続的な動脈血酸素分圧低下が挙げられる。睡眠時無呼吸患者はこれらの要因による過剰死亡のリスクがあるのに加えて、運転中及び/又は潜在的に危険な機器の操作中の事故のリスクが高く成り得る。
【0005】
たとえ患者が気道の完全な又はほぼ完全な閉塞に苦しんでいなくても、気道が部分的に閉塞しているだけの場合には睡眠からの覚醒等の悪影響が生じることも知られている。気道の部分的な閉塞により、低呼吸と通常呼ばれる浅い呼吸が通常引き起こされる。呼吸低下は最大呼吸気流が50%以上減少することと通常定義される。睡眠時呼吸障害の他の種類としては、限定されないが、上気道抵抗症候群(UARS)及び咽頭壁の振動等の一般にいびきと呼ばれる気道の振動が挙げられる。
【0006】
患者の気道に持続的気道陽圧(CPAP)を適用することにより睡眠時呼吸障害を治療することがよく知られている。この気道陽圧は気道を効果的に「支え(splints)」、それにより肺への開いた気道を維持する。患者に届けられるガスの圧力を患者の呼吸周期に応じて変化させるか又は患者の呼吸努力に応じて変化させることで患者の快適性を高める気道陽圧療法を提供することも知られている。この圧補助法は、患者に届けられる吸気気道陽圧(IPAP)が呼気気道陽圧(EPAP)よりも高い二相性圧補助(bi-level pressure support)と呼ばれる。患者が無呼吸及び/又は低呼吸を経験しているかどうか等患者の検出された状態に基づいて圧力が自動的に調節される陽圧療法を提供することがさらに知られている。この圧補助法は、自動滴定型の圧補助と呼ばれる。なぜなら、圧補助装置は、呼吸障害を治療するために必要なほど高い圧力を患者に提供しようとするからである。米国特許出願第2009/0038619号公報には一体的な鼻インターフェースを含む口鼻マスクを提供することによりユーザーの顔を密封する患者インターフェースが開示されている。米国特許出願第2004/0226566号公報には呼吸可能なガスを患者に届けるための鼻アセンブリが開示されている。米国特許出願第2017/0281894号公報には、第1及び第2のバックルにより互いに接続されるように構成された第1及び第2のストラップを有する呼吸マスクのためのヘッドギアが開示されている。
【0007】
上述した圧補助療法は、柔らかく可撓性のシールクッションを有するマスク部品を含む患者インターフェース装置を患者の顔に取り付けることを伴う。マスク部品は、限定されないが、患者の鼻を覆う鼻マスク、患者の鼻及び口を覆う鼻/口マスク又は患者の顔を覆うフルフェイスマスクであり得る。そのような患者インターフェース装置は、前額部サポート、頬パッド及び顎パッド等の他の患者接触部品も用いり得る。患者インターフェース装置は、ヘッドギア部品により患者の頭部に通常固定される。患者インターフェース装置は、ガス供給管又は導管に接続され、圧力支持装置と患者の気道とを仲立ちすることにより、呼吸ガスの流れを圧力/流れ生成装置から患者の気道に届けることができる。
【0008】
患者インターフェース装置を患者の頭部に固定するために、多くの既知の患者インターフェース装置はヘッドギアアセンブリを含む。一部のヘッドギアアセンブリは、患者インターフェース装置のフレーム部材の両側に連結される単一のストラップ部材を含む。通常、ストラップ部材はクッションが患者に対して患者の気道又はその周囲に引っ張られることを確実にするために、患者の頭部の後の周りに延びている。既存のヘッドギアアセンブリの1つの既知の問題は、ストラップ部材がしばしば患者の頭部で維持された状態で留まらないことである。具体的には、患者が寝ている間等の使用の際中にストラップ部材が患者の頭部の後ろを滑り上がることがよくある。この状況では、クッションと患者との間の係合を以前維持していた力が著しく低下しているため、圧補助療法の完全性が損なわれる。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は、改良された気道圧補助システム並びにそのための患者インターフェース装置及びヘッドギアアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示される概念の一態様によれば、フレーム部材と、患者の気道に呼吸ガスの流れを届けるためのクッションとを有する患者インターフェース装置で用いるためのヘッドギアアセンブリを提供され、フレーム部材内には第1の耐回転連結部(rotation-resistant coupling)及び第2の耐回転連結部が画定される。ヘッドギアアセンブリは、第1のアーム部材及び第2のアーム部材であって、それぞれのアーム部材は第1の端部と、該第1の端部の反対側に位置する第2の端部とを有し、該第1のアーム部材の第1の端部は、該第1のアーム部材が位置する第1の平面において前記フレーム部材に対する該第1のアーム部材の回転が防止されるように第1の耐回転連結部と選択的に係合するような寸法及び構成を有する構造を有し、該第2のアーム部材の第1の端部は、該第2のアーム部材が位置する第2の平面においてフレーム部材に対する該第2のアーム部材の回転が防止されるように第2の耐回転連結部と選択的に係合するような寸法及び構成を有する構造を有する、第1のアーム部材及び第2のアーム部材と、第1のアーム部材及び第2のアーム部材に連結されて、第1のアーム部材の第2の端部と第2のアーム部材の第2の端部との間で延在するストラップ部材と、を含む。
【0011】
開示される概念の別の態様によれば、気道圧補助システムのための患者インターフェース装置が提供される。気道圧補助システムはホースと、呼吸ガスの流れを生成するように構成されたガス流生成器とを有する。患者インターフェース装置は呼吸ガスの流れを受け取り、該呼吸ガスの流れを患者の気道に届けるように構成されたクッションと、クッションに連結されるフレーム部材と、フレーム部材に連結されるとともに、ガス流生成器からフレーム部材に呼吸ガスの流れを伝達するためにホースに連結されるような構造を有する連結部材であって、該連結部材はクッションと流体連結されるとともに、クッションの反対側且つ遠位に位置する、連結部材と、ヘッドギアアセンブリであって、第1のアーム部材及び第2のアーム部材であって、それぞれ第1の端部と、該第1の端部の反対側に位置する第2の端部とを含み、各第1の端部はフレーム部材に直接連結される、第1のアーム部材及び第2のアーム部材と、第1のアーム部材及び第2のアーム部材に連結され、それらの間で延在するストラップ部材とを含むヘッドギアアセンブリとを含む。第1の端部のそれぞれは第2の端部のそれぞれ及びストラップ部材よりも連結部材の近くに配置される。
【0012】
開示される概念の別の態様によれば、気道圧補助システムは、ホースと、呼吸ガスの流れを生成するように構成されたガス流生成器と、前述の患者インターフェース装置とを含む。
【0013】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴及び特性に加えて、構造の関連する要素の動作方法及び機能及びパーツの組み合わせ及び製造の経済性は、添付の図面を参照して、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮することによってより明らかになるであろう。添付の図面は本明細書の一部を形成し、同様の参照番号は様々な図面における対応する部品を示す。しかしながら、図面は例示及び説明のみを目的としており、本発明の範囲の定義として意図したものでないことを明確に理解すべきである。本明細書及び特許請求の範囲で用いられる「a」、「an」及び「the」の単数形は、別段記載がない限り複数への言及も含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、開示される概念の1つの非限定の実施形態に係る、患者に用いられた気道圧補助システム及びそのための患者インターフェース装置の部分的に簡略化された側面図である。
図2図2は、図1の患者インターフェース装置の背面図である。
図3図3は、連結部材なしで図2の患者インターフェース装置を示す後方等角図である。
図4図4は、第1及び第2のアーム部材並びにストラップ部材が分離された図3の患者インターフェース装置を示す背面等角図である;
図5図5は、開示される概念の別の非限定の実施形態に係る、別の患者インターフェース装置の一部の側面図である。
図6図6は、開示される概念の別の非限定の実施形態に係る、別の患者インターフェース装置の側面等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
要求事項として、本発明の詳細な実施形態が開示される。しかしながら、開示される実施形態は本発明の例示に過ぎず、本発明は様々な形態で実施され得ることが分かる。したがって、本明細書で開示する特定の構造及び機能の詳細は限定的としてではなく、特許請求の範囲の基礎として及び事実上任意の適切な詳細構造で本発明を様々な形で用いることを当業者に教えるための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0016】
本明細書で用いられる「a」、「an」及び「the」の単数形は、別段記載がない限り複数への言及も含む。本明細書で用いられる2つ以上のパーツ又は構成要素が「連結されている」という表現は、リンクが発生する限り、パーツが直接的又は間接的に、すなわち1つ以上の中間パーツ又は構成要素を介して互いに連結又は動作することを意味する。本明細書で用いる「直接連結されている」とは、2つの要素が直接結合又は連結され、互いに接触していることを意味する。本明細書で用いる「固定連結されている」又は「固定されている(fixed)」とは、2つの構成要素がお互いに対して一定の方向を維持しながら1つのものとして動くように連結されていることを意味する。
【0017】
本明細書で用いる「単一の(unitary)」という用語は、構成要素が一体又は単一のユニットとして作られていることを意味する。すなわち、別々に作られてその後に1つのユニットとして互いに連結される部品を含む構成要素は「単一の」構成要素又は単一体ではない。本明細書で用いる2つ以上のパーツ又は構成要素が互いに「係合」するという表現は、パーツが直接的に又は1つ以上の中間パーツ又は構成要素を介して互いに力を及ぼし合うことを意味する。本明細書で用いる「数」という用語は1又は1より大きい(すなわち、複数)整数を意味する。
【0018】
例えば、限定されないが、上部、下部、左、右、上側、下側、前、後ろ及びそれらの派生的な表現等の本明細書で用いる方向を示す表現は、図面に示す要素の向きに関連し、明示的に記載されていない限り特許請求の範囲に限定を加えない。
【0019】
図1は、開示される概念の1つの非限定の実施形態に係る、気道圧補助システム2及びそのための患者インターフェース装置10の側面図である。圧補助システム2は、(簡略化された形で示す)ホース4及び(簡略化された形で示す)ガス流生成器6をさらに含む。動作中、ガス流生成器6は、ホース4を介して患者インターフェース装置10に送られる呼吸ガスの流れを生成するように構成されている。
【0020】
患者インターフェース装置10は、クッション12、クッション12に連結されるフレーム部材14及びフレーム部材14に連結される連結部材(例えば、限定されないが、エルボ16)を含む。エルボ16は、ガス流生成器6からフレーム部材14に呼吸ガスの流れを伝達するためにホース4に連結されていることが分かる。フレーム部材14は、患者50の頭部の両側に配置されるように構成された流体経路を好ましくは定義するため、フレーム部材14はエルボ16をクッション12に流体連結することになる。言い換えると、エルボ16は、クッション12と流体連結される(fluidly coupled)とともに、クッション12の反対側且つ遠位に位置する。このように、クッション12は呼吸ガスの流れを患者50の気道に届けることができる。
【0021】
開示される概念によれば、患者インターフェース装置10は、治療が行われている間にストラップが患者50の頭部から滑り落ちる可能性を最小限に抑える及び/又は無くすように構成された新規なヘッドギアアセンブリ100をさらに含む。図2を参照して、ヘッドギアアセンブリ100は第1のアーム部材110、第1のアーム部材110の反対側に位置する第2のアーム部材130及びストラップ部材150を含む。アーム部材110、130のそれぞれは、第1の端部112、132、第1の端部112、132の反対側に位置する第2の端部114、134及び第1の端部112、132と第2の114、134との間で湾曲した形で延在する本体部116、136を含む。
【0022】
具体的には、第1のアーム部材110の第2の端部114は、クッション12及びエルボ16からそれぞれ第1の距離及び第2の距離離間されている。第2のアーム部材130の第2の端部134は、クッション12及びエルボ16からそれぞれ第3の距離及び第4の距離離間されている。第1の距離と第3の距離とは同じであり、第2の距離と第4の距離とは同じである。1つの例示の実施形態では、図1に示すように、アーム部材110(すなわち、及び第2のアーム部材130(図1には示されていないが、図2図4を参照))は患者50の対応する耳に面する凹状になっており、第2の端部114、134は患者50の耳の基部と同じ高さ又は大体同じ高さにあり且つ耳の後ろに位置するように構成されている。このように、第1の端部112、132のそれぞれは、第2の端部114、134及びストラップ部材150よりもエルボ16の近くに位置することが好ましい。この利点は以下でより明らかになる。引き続き図2を参照して、クッション12は、第1の端部26及び第1の端部26の反対側且つ遠位に位置する第2の端部28を有する。図示のように、第1及び第2端部26、28並びに第1及び第2端部114、134は平面27内に実質的に位置する。さらに、エルボ16は平面27の反対側且つ遠位に位置する。
【0023】
アーム部材110、130の第1の端部112、132はフレーム部材14に直接連結されていることが好ましい。図1図4は、アーム部材110、130がフレーム部材14に取り外し可能に連結された、開示される概念の1つの例示の実施形態を示す。例えば、図3及び図4に示すように、フレーム部材14は第1及び第2の耐回転性連結部(例えば、限定されないが、細長いスロット20、22)を有する。第1の端部112は、第1のアーム部材110が位置する第1の平面においてフレーム部材14に対して第1のアーム部材110が回転するのが防止されるように、第1の細長いスロット20と選択的に係合するような寸法及び構成を有する構造(例えば、限定されないが、フック状部118を含む構造)を有することが分かる。同様に、第2のアーム部材130の第1の端部132は、第2のアーム部材130が位置する第2の平面においてフレーム部材14に対して第2のアーム部材130が回転するのが防止されるように、第2の細長いスロット22と選択的に係合するような寸法及び構成を有する構造(例えば、限定されないが、フック状部138を含む構造)を有することが分かる。
【0024】
アーム部材110、130とフレーム部材14とが上記のように連結されている結果、患者インターフェース装置10が患者50によって装着されると、第2の端部114、134は、患者50の耳の基部の後ろにあり且つ耳の基部と同じ高さにあることが維持されるような構造を有する。再び図2を参照して、ストラップ部材150は、アーム部材110、130の第2の端部114、134に連結、好ましくは調節可能に連結され、それらの間で延在する。好適な代替ストラップ部材(図示せず)が、例えば、限定されないが、ストラップ部材がアーム部材110、130の第2の端部114、134に縫い付けられる接続を介してアーム部材110、130に調節不能に連結されてもよいことが分かる。
【0025】
さらに、アーム部材110、130は、ストラップ部材150よりも剛性があり且つ異なる材料(例えば、限定されないが、熱可塑性材料)で作られていることが好ましい。ストラップ部材150を作るための材料の非限定例としては、ファブリック、ファブリック/フォームラミネート、シリコーンや熱可塑性エラストマー等のエラストマー、弾性エラストマー及び/又はファブリック被覆エラストマーが挙げられる。1つの例示の実施形態では、アーム部材110、130のそれぞれはヤング率が0.1ギガパスカルよりも大きく、デュロメータが80ショアA~100ショアDである。したがって、患者インターフェース装置10が患者50により装着されると、比較的剛性のアーム部材110、130も、図1図3に示す位置でストラップ部材150を維持するようにも機能する。このように、(図1の観点から)ストラップ部材150が潜在的に上方に動くことが、アーム部材110、130により、具体的にはアーム部材110、130とフレーム部材14との間の接続により即座に抗されることが分かる。そのため、ヘッドギアアセンブリ100は、圧補助療法が行われているときに、患者インターフェース装置10が患者50の頭部から滑り落ちる可能性を実質的に最小限に抑える及び/又は無くす。
【0026】
加えて、図1に示すように、アーム部材110、130の配置は、患者インターフェース装置10が患者50により装着されているときに、ストラップ部材が(患者の頭部が図1に示すように直立した状態から見た場合に)患者50の後頭骨52の下に位置するようにすることで、患者インターフェース装置10が患者50の頭部から滑り落ちる可能性を最小限に抑える及び/又は無くすための別の機構を提供する。具体的には、ストラップ部材150が患者50の頭部からかなり外方に突出する後頭骨52を通過するのに比較的大きな距離屈曲しなければならないように、ストラップ部材150が患者50の頭部の基部に位置することが好ましい。加えて、図2に示すように、第1のアーム部材110の第2の端部114は、第2のアーム部材130の第2の端部134から距離D離間し、ストラップ部材150は長さLを有する。患者インターフェース装置10が患者50により装着された場合、ストラップ部材150は少しだけ曲がり得るが、長さLは、好ましくは概して距離Dと同じであり得ることが分かる。例えば、図1も参照すると、ストラップ部材150は、異なるストラップ部材が後頭骨の上方で患者の頭部の周囲に延び得る構成に比べて、著しく撓むような構造を有していないことが分かる。これらの構成では、ストラップ部材は比較的長く、その結果として滑りやすい。
【0027】
続けて図1を参照して、患者50の頭部に対する第2の端部114、134の位置に起因して、ストラップ部材150は患者50の頭部に力Fを加えるように構成されていることが分かる。抵抗力は、一般に、患者50の頭部に垂直な垂直抗力成分Fと、患者50の頭部の表面と平行な摩擦力成分Fとを含む。図1を参照して分かるように、力Fは垂直抗力成分Fに対して垂直であるか又は下にある(例えば、患者50の頸部により近い)。その結果、患者インターフェース装置10は、患者の頭部50に維持されるために、ストラップ部材150と患者50との間の摩擦力に概して依存しないことが好ましい。具体的には、ヘッドギアアセンブリ100は、ストラップ部材50を(図1の方向に関して)頭頂に向けて上方にではなく、患者50の頸部に向けて下方に引っ張るように位置合わせされていることが分かる。
【0028】
上述したように、第1及び第2のアーム部材110、130は、フレーム部材14のスロット20、22と係合するような寸法を有するフック状部118、138を有することが好ましい。フック状部118、138のそれぞれは、本体部116、136から延び且つ本体部116、136に対してほぼ垂直に位置する中間部119、139と、中間部119、139から延び且つ中間部119、139に対して垂直に位置する保持部120、140とを含む。フック状部118、138は、第1の端部112、132をフレーム部材14に取り外し可能に連結できるようにするための機構を提供するとともに、アーム部材110、130の望ましくない回転を抗するための機構を提供する。具体的には、図1を参照して、アーム部材110(及び例えば130(図1に図示せず))が反時計回りに回転を始めた場合、フック状部118、138とフレーム部材14との接続はそのような回転を有利に抗する。1つの例示の実施形態では、中間部119、139はスロット20、22に埋まる及び/又はスロット20、22を定義するフレーム部材14の縁部と係合するような寸法を有する。
【0029】
図5は、開示される概念の別の非限定の実施形態に係る別の患者インターフェース装置210の一部の右側面図を示す。患者インターフェース装置210は、患者インターフェース装置10と同じ利点を全て有し、同様の参照番号は同様の要素を表す。加えて、図5に示すように、第1のアーム部材310は、第1の端部312と第2の端部314との間の本体部316内に位置する多数のリビングヒンジ(例えば3つのリビングヒンジ320、321、322)を有する。ヒンジ320、321、322は、本体部316の薄くされたか又は弱くされた領域であってもよく、有利には、第1のアーム部材310が、フレーム部材14とストラップ部材(図5には示していないが、上述の患者インターフェース装置10のストラップ部材150を参照)との間の曲げモーメントに抗しながら、患者の頭部の周りで曲がるようにすることが有利である。患者の頭部の周りで有利に曲げることができるようにヒンジ320、321、322を有する第1のアーム部材310に関連して開示される概念を本明細書で説明してきたが、好適な代替アーム部材(図示せず)は、開示される概念の範囲から逸脱することなくヒンジに加えて及び/又はヒンジに代えて本体部にスロットを有し得ることが分かる。第1のアーム部材310に対向する第2のアーム部材(図示せず)は、開示される概念の範囲から逸脱することなく、より小さな剛性を提供するヒンジ及び/又はスロット又は任意の適切な構成/構造を第1のアーム部材310と同様の形で有し得ることが分かる。
【0030】
図6は、開示される概念の別の非限定の実施形態に係る、別の患者インターフェース装置410の一部の側面等角図を示す。患者インターフェース装置410は、患者インターフェース装置10、210と同じ利点を全て有し、同様の参照番号は同様の要素を表す。加えて、患者インターフェース装置410は、患者インターフェース装置10、210と異なる構造を有する。具体的には、アーム部材510、530の第1の端部512、532はフレーム部材414に固定連結されるように構成されている。第1の端部512、532は、オーバーモールド工程、共射出工程及び/又は接着剤を介してフレーム部材414に連結され得る。
【0031】
したがって、患者インターフェース装置10、210、410のそれぞれが組み立てられた場合、第1のアーム部材110、310、510及び第2のアーム部材130、530のそれぞれは対応するフレーム部材14、414に対して概して固定されることが分かる。その結果、上述したように、アーム部材110、130、310、510、530の対応するフレーム部材14、514に対する望ましくない回転の可能性が大幅に最小化される。
【0032】
開示される概念は、ストラップ部材150が有利には患者50の頭部の基部に維持される、改良された(例えば、限定されないが、滑り(例えば、ストラップ部材の意図しない滑り)から良好に保護された)気道圧補助システム2及びそのための患者インターフェース装置10,210,410並びにヘッドギアアセンブリ100を提供することが分かる。
【0033】
特許請求の範囲において、括弧の間に入れられた引用符号は、請求項を限定するものと解釈してはならない。「含む」という語は、請求項に記載されているもの以外の要素又はステップの存在を除外しない。いくつかの手段を列挙する装置クレームにおいて、これらの手段のうちのいくつかは、全く同一のハードウェアにより実施され得る。要素の前にある「a」又は「an」という用語は、これらの要素が複数存在することを除外しない。いくつかの手段を列挙する何れの装置クレームにおいても、これらの手段のうちのいくつかは、全く同一のハードウェアにより実施され得る。特定の要素が相互に異なる従属請求項に記載されていることは、これらの要素が組み合わせて用いることができないことを示すものではない。
【0034】
本発明を、最も実用的で且つ好ましいと現在考えられる実施形態に基づいて説明を目的に詳述してきたが、そのような詳細は、専らその目的のためのものであり、本発明は、開示された実施形態に限定されず、むしろ、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある変更されたもの及び同等な構成をカバーすることを意図していることを理解すべきである。例えば、本発明は、可能な範囲で任意の実施形態の1つ以上の特徴を任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせることができることを考えていることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6