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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】病変の検出方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240910BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240910BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61B1/045 618
A61B1/00 511
A61B3/10 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522783
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2020020721
(87)【国際公開番号】W WO2020241633
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019098860
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 明
(72)【発明者】
【氏名】田中 光司
(72)【発明者】
【氏名】木村 一志
(72)【発明者】
【氏名】野阪 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 匡介
(72)【発明者】
【氏名】王 淑杰
(72)【発明者】
【氏名】垣内 愛加
(72)【発明者】
【氏名】問山 裕二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英仁
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼本 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 有平
(72)【発明者】
【氏名】ガバザ エステバン
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/146184(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157703(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168955(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞の検出方法に用いる細胞染色剤であって、該細胞染色剤が、スルフレチン、クルクミン、赤色3号(エリスロシン)および赤色106号からなる群より選ばれる1種類以上の細胞染色剤であり、該検出方法が、がんの存在が疑われる臓器において、クルクミンまたはスルフレチンにより臓器組織の染色を行った後、多光子レーザー顕微内視鏡、共焦点レーザー顕微内視鏡またはレーザー蛍光顕微内視鏡を用いて漿膜側または管腔内から当該臓器組織に対してレーザー照射し、当該臓器組織内に存在するマイスナー神経叢またはアウエルバッハ神経叢を可視化することを含むことを特徴とする、細胞染色剤
【請求項2】
がんの原発巣が粘膜上皮である場合において、がん細胞がマイスナー神経叢に浸潤または到達している場合、当該がんが進行がんと判定されることを特徴とする、請求項1に記載の細胞染色剤
【請求項3】
がんの原発巣が粘膜上皮である場合において、がん細胞がマイスナー神経叢および平滑筋層に浸潤または到達している場合、当該がんが進行がんと判定されることを特徴とする、請求項1に記載の細胞染色剤
【請求項4】
がんの原発巣が粘膜上皮である場合において、がん細胞がマイスナー神経叢に浸潤または到達していない場合、当該がんが早期がんと判定されることを特徴とする、請求項1に記載の細胞染色剤
【請求項5】
扁桃腺炎の原因を診断する方法に用いる細胞染色剤であって、該細胞染色剤が、スルフレチン、クルクミン、赤色3号(エリスロシン)および赤色106号からなる群より選ばれる1種類以上の細胞染色剤であり、該方法が、レーザー照射により扁桃腺観察を可能にする細胞染色剤を扁桃腺に投与した後、当該扁桃腺に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、扁桃腺の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位との境界面(interface)を確定することを特徴とする、細胞染色剤。
【請求項6】
3種類以上の可食性色素による多重染色により、多核白血球、リンパ球および好酸球を染め分けることを特徴とする、請求項5に記載の細胞染色剤
【請求項7】
扁桃腺に浸潤している白血球について、多核白血球が多く浸潤する場合は細菌感染性扁桃腺炎、好酸球が多く浸潤する場合はアレルギー性扁桃腺炎、およびリンパ球が多く浸潤する場合はウイルス感染性扁桃腺炎と判断する工程を含む、請求項6に記載の細胞染色剤
【請求項8】
骨格筋の可視化方法に用いる細胞染色剤であって、該細胞染色剤が、スルフレチン、クルクミン、赤色3号(エリスロシン)および赤色106号からなる群より選ばれる1種類以上の細胞染色剤であり、該方法が、レーザー照射により骨格筋観察を可能にする細胞染色剤を骨格筋に投与した後、当該骨格筋に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、骨格筋の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位との境界面(interface)を確定することを特徴とする、細胞染色剤。
【請求項9】
骨格筋の形態を解析し、老化による筋力低下の原因を判定する方法に用いる細胞染色剤であって、該細胞染色剤が、スルフレチン、クルクミン、赤色3号(エリスロシン)および赤色106号からなる群より選ばれる1種類以上の細胞染色剤であり、該方法が、レーザー照射により骨格筋観察を可能にする細胞染色剤を骨格筋に投与した後、当該骨格筋に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、骨格筋の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位との境界面(interface)を確定することを特徴とする、細胞染色剤。
【請求項10】
骨格筋の形態を解析し、サルコペニアおよび/または重症筋無力症の病変を診断する方法に用いる細胞染色剤であって、該細胞染色剤が、スルフレチン、クルクミン、赤色3号(エリスロシン)および赤色106号からなる群より選ばれる1種類以上の細胞染色剤であり、該方法が、レーザー照射により骨格筋観察を可能にする細胞染色剤を骨格筋に投与した後、当該骨格筋に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、骨格筋の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位との境界面(interface)を確定することを特徴とする、細胞染色剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性色素染色剤による臓器組織生体染色後、レーザー照射により、臓器において病変部位と正常部位とを識別する生体染色検査方法および組織可視化方法並びに臓器における病変の視覚化のための細胞染色剤の使用および細胞染色剤を含む、臓器における病変の検査用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、現在、わが国において、死亡原因の一位であり、国民のうち2人に1人ががんに罹患し、4人に1人ががんで死亡しているのが現状である。しかも、がんによる死亡者数は、現在、なお増加しており、がんによる死亡者を減少させることは、国民の悲願となっている。がん死亡を減少させる基本的な方策は、がんの早期発見であると考えられているが、現行の内視鏡検査では、がんが直径10~20ミリ程度に成長したものでなければ発見困難であるという限界がある。従って、現在、大部分のがん患者は、外科的ながんの切除により治療されることが主流になっており、術前・術中の迅速判断支援技術の開発が急務となっている。
【0003】
外科的がん切除手術のゴールは、がん細胞の可及的完全な除去と病巣除去後の臓器機能の最大限の温存という、両立が極めて困難な目標の同時達成である。この非常に困難な目標達成のために、多くの外科技術的な改善・努力がなされている。外科手術的ながん治療の成績向上の鍵の一つとして、従来から迅速病理診断がある。術前・術中に執刀医が、がんを発生した臓器とその周辺の臓器やリンパ節および血管において、どの範囲までがん細胞が浸潤・転移しているかを病理診断レベルで正確に把握できることは、極めて大きな支援となる。
【0004】
クルクミン、スルフレチン、赤色3号、赤色106号等の可食性色素染色によりin vivoで消化管等の内腔面から染色し、内腔面よりレーザー顕微内視鏡などファイバーによりがん細胞と通常細胞を識別する方法が報告されている(特許文献1)。一方、術前・術中に消化管等の漿膜面または管腔内からがん細胞と通常細胞を識別する有効な方法はほとんどなく、そのような方法の開発が強く求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/157703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
胸腔ないし腹腔の内視鏡下手術用ロボットの導入により、開腹をせずに侵襲性の小さい手術が実施され、患者への負担は大幅に軽減されている。一方、がんの場合には、微細浸潤による再発を避けるために、胸腔ないし腹腔の内視鏡下手術用ロボットを用いた場合でも、摘出部位は広範囲とならざるをえず、患者への負担軽減を図るためには、摘出範囲を小さくすることが求められる。当該手術は基本的に臓器の漿膜側より実施するため、漿膜側からがん細胞の浸潤範囲を術前・術中において、患部の切除前に予測できれば、摘出範囲を小さくすることが可能であり、胸腔ないし腹腔の内視鏡下手術用ロボットの利点と相まって、がん患者への負担が極めて小さくなる。そのためには、漿膜側からがん組織断端を明確にする技術が必要となる。また、例えばカプセル内視鏡を内服する場合には、消化管の内腔からのがん組織観察が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、がん細胞特異的生体染色とレーザー顕微鏡を用いた術中の迅速病理診断システムの開発を行っており、クルクミンなどの特定の可食性色素を消化管粘膜表面に塗布後、レーザー顕微鏡で生体染色した細胞を観察すると、がん細胞が正常細胞より濃く染色されることを見いだした。当該染色により、がん細胞を迅速に検出し、さらに、細胞の核の形態を含めた細胞形態の明瞭な可視化が可能となった。その結果、病理診断において、細胞異型および構造異型の確実な判別が可能となり、微小がんを検出・治療できる方法の開発に成功した。当該方法は、クルクミンや赤色3号などのヒト経口摂取認可済み可食性色素を1 mg/mL程度の無菌溶液として、in vivoの消化管内腔面、リンパ節やex vivoの切除断端に塗布し、約1~5分間静置し、レーザー顕微鏡によって数秒以内に画像化できるので、術中迅速病理診断に、大きく寄与できる技術である。
【0008】
胸腔ないし腹腔の内視鏡下手術用ロボット技術等は、基本的に臓器の漿膜側より実施するため、漿膜側からがん細胞の浸潤範囲を術前に予測し、術後のがん細胞の取り残しの有無を判断することができれば、がんの根治的切除を可能としつつ、摘出範囲は少なくて済み、患者負担は大幅に軽減される。
【0009】
そこで本発明は、レーザー照射により生体組織観察を可能にする細胞染色剤を臓器に投与した後、当該臓器に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、臓器の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位との境界面(interface)を確定することを特徴とする、病変の検査方法を提供する。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)
レーザー照射により生体組織観察を可能にする細胞染色剤を臓器に投与した後、当該臓器に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、臓器の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位との境界面(interface)を確定することを特徴とする、病変の検査方法。
(2)
病変内部が、直径5~500μm程度の微細な病変である、(1)に記載の方法。
(3)
臓器の漿膜側または臓器の管腔内から当該臓器に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射する、(1)または(2)に記載の方法。
(4)
前記細胞染色剤が、スルフレチン、クルクミン、赤色3号(エリスロシン)および赤色106号からなる群より選ばれる1種類以上の染色剤である、(1)~(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)
細胞染色剤の投与が、臓器の漿膜側からの塗布、滴下または噴霧により行われる、請求項(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)
細胞染色剤の投与が、臓器の管腔内からの塗布、滴下または噴霧により行われる、(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(7)
細胞染色剤の投与が、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下注射投与、筋肉内注射投与、臓器内注射投与、胸腔内投与またはくも膜下投与である、(1)~(4)のいずれか1項に記載の方法。
(8)
レーザー照射が、多光子レーザー顕微内視鏡、共焦点レーザー顕微内視鏡またはレーザー蛍光顕微内視鏡を用いて行われる、(1)~(7)のいずれか1項に記載の方法。
(9)
(8)に記載の方法を使用し、がん細胞を可視化することを特徴とする、がん細胞の検出方法。
(10)
がんの存在が疑われる臓器において、がんが存在する場合に、所属リンパ節組織へのがんの浸潤を判定するための方法であって、リンパ節組織を覆う表面被膜の上から滴下、または、リンパ節内部に注射する方法でレーザー照射により生体組織観察を可能にする細胞染色剤を当該リンパ節組織に投与し、次に、当該リンパ節組織に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射することを含む、(9)に記載の方法。
(11)
がんの存在が疑われる臓器において、クルクミンまたはスルフレチンにより臓器組織の染色を行った後、多光子レーザー顕微内視鏡、共焦点レーザー顕微内視鏡またはレーザー蛍光顕微内視鏡を用いて漿膜側または管腔内から当該臓器組織に対してレーザー照射し、当該臓器組織内に存在する細胞の細胞質および核の形態について得られた可視化画像に基づいて正常細胞またはがん細胞を同定することを特徴とする、(9)に記載の方法。
(12)
前記臓器が、呼吸器、消化器または泌尿生殖器である、(11)に記載の方法。
(13)
がんの存在が疑われる臓器において、クルクミン染色により臓器組織の染色を行った後、多光子レーザー顕微内視鏡、共焦点レーザー顕微内視鏡またはレーザー蛍光顕微内視鏡を用いて漿膜側または管腔内から当該臓器組織に対してレーザー照射し、可視化された当該臓器組織内に存在するがん組織および正常組織の隠窩構造を比較し、がん組織では、正常組織で見られる規則的な隠窩構造が消失していること、および、隠窩構造を持たないがん細胞の無秩序な細胞増殖の集合が認められることによって、当該病変部位ががんと判定できることを特徴とする、(9)に記載の方法。
(14)
がんの存在が疑われる臓器において、赤色106号染色により臓器組織の染色を行った後、多光子レーザー顕微内視鏡、共焦点レーザー顕微内視鏡またはレーザー蛍光顕微内視鏡を用いて漿膜側または管腔内から当該臓器組織に対してレーザー照射し、可視化された当該臓器組織内に存在するがん細胞および正常細胞周囲の毛細血管の走行パターンを比較し、がん組織においては、正常組織で見られる規則的な隠窩構造を反映した毛細血管の消失および/または変形が認められることに基づき、がん細胞を検出することを特徴とする、(9)に記載の方法。
(15)
がんの存在が疑われる臓器において、クルクミンで上皮細胞・がん細胞を生体染色し、赤色106号で結合組織・毛細血管を生体染色した後、多光子レーザー顕微内視鏡、共焦点レーザー顕微内視鏡またはレーザー蛍光顕微内視鏡を用いて漿膜側または管腔内から当該臓器組織に対してレーザー照射し、可視化された当該臓器組織内に存在するがん細胞と結合組織の境目を確定し、がん細胞の浸潤性を判定することを特徴とする、(9)に記載の方法。
(16)
がんの存在が疑われる臓器において、クルクミンまたはスルフレチンにより臓器組織の染色を行った後、多光子レーザー顕微内視鏡、共焦点レーザー顕微内視鏡またはレーザー蛍光顕微内視鏡を用いて漿膜側または管腔内から当該臓器組織に対してレーザー照射し、当該臓器組織内に存在するマイスナー神経叢またはアウエルバッハ神経叢を可視化することを含む、(9)に記載の方法。
(17)
がんの原発巣が粘膜上皮である場合において、がん細胞がマイスナー神経叢に浸潤または到達している場合、当該がんが進行がんと判定されることを特徴とする、(16)に記載の方法。
(18)
がんの原発巣が粘膜上皮である場合において、がん細胞がマイスナー神経叢および平滑筋層に浸潤または到達している場合、当該がんが進行がんと判定されることを特徴とする、(16)に記載の方法。
(19)
がんの原発巣が粘膜上皮である場合において、がん細胞がマイスナー神経叢に浸潤または到達していない場合、当該がんが早期がんと判定されることを特徴とする、(16)に記載の方法。
(20)
一個の超早期がん組織において、がん組織と正常組織との境界面(インターフェイス・interface)を網羅的に観察し、該境界面観察像から、がんが浸潤転移しているか否かを判断することを特徴とする、(16)に記載の方法。
(21)
さらに、がん細胞が検出されたことを音または光により通知することを含む、(9)~(20)のいずれか1項に記載の方法。
(22)
(9)~(21)のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、漿膜側または管腔内からがん細胞を一個単位で除去し、がん患者を治療する方法。
(23)
(9)~(21)のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、術後に漿膜側または管腔内から生体に残存するがん細胞を確認し、がん細胞を一個単位で除去する方法。
(24)
(9)~(21)のいずれか1項に記載の方法を用いることを特徴とする、肺がんの組織型の診断方法。
(25)
(24)に記載の方法を用いることを特徴とする、肺がん患者を治療する方法。
(26)
レーザー光を用いて肺がん細胞をレーザー蒸散により破壊する、(25)に記載の方法。
(27)
(8)に記載の方法を使用し、脳組織の神経細胞を染色剤で蛍光標識し、該神経細胞の形態を確定することを特徴とする、脳組織の可視化方法。
(28)
前記脳組織が大脳皮質、海馬、扁桃体、視床下部または小脳である、(27)に記載の方法。
(29)
(27)または(28)に記載の方法により得られた可視化画像を用いる、脳疾患または脳症状の判定方法。
(30)
前記脳疾患または脳症状が、アルツハイマー病、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、多発性硬化症および脊髄小脳変性症を含む、(29)に記載の方法。
(31)
(8)に記載の方法を使用し、眼組織の神経細胞を染色剤で蛍光標識し、該神経細胞の形態を確定することを特徴とする、眼組織の可視化方法。
(32)
前記眼組織が網膜である、(31)に記載の方法。
(33)
(31)または(32)に記載の方法により得られた可視化画像を用いる、眼疾患または眼症状の判定方法。
(34)
前記眼疾患または眼症状が、黄斑変性、網膜変性、糖尿病性網膜症、網膜芽細胞腫、増殖性硝子体網膜症、緑内障、網膜剥離および網膜浮腫を含む、(33)に記載の方法。
(35)
(10)に記載の方法を用いることを特徴とする、腹腔鏡外科手術中に、当該リンパ節にがん細胞が存在するか否かを、リンパ節切除前に判定する方法。
(36)
リンパ節に転移したがん細胞を(9)に記載の方法により可視化し、がん細胞だけを一個単位でレーザー蒸散により破壊して、がん細胞の死骸をリンパ球に認識させて、活性化されたリンパ球に、がん原発巣のがん細胞を攻撃させることを特徴とする、がん免疫療法。
(37)
クルクミンの経口投与または腹腔内投与により、消化管、脳と網膜の神経細胞の細胞体、味および匂いの感覚細胞、内分泌細胞、リンパ節、骨格筋、肺、膵臓ならびに肝臓の細胞構造を可視化し、可視化した細胞構造をレーザー顕微内視鏡および蛍光顕微鏡を用いて画像化することにより、細胞の位置、数、形、大きさおよび配列に異常をきたす疾患を診断する方法。
(38)
(37)に記載の方法を用いて診断された疾患において、レーザー照射により異常のある細胞を、一個単位で破壊および除去する方法。
(39)
移植したiPS細胞が未分化細胞またはがん細胞に変化したときに、変化した細胞を(9)に記載の方法により可視化し、前記変化した細胞のみをレーザー蒸散により破壊する細胞除去方法。
(40)
(8)に記載の方法を用いることを特徴とする、扁桃腺炎の原因を診断する方法。
(41)
3種類以上の可食性色素による多重染色により、多核白血球、リンパ球および好酸球を染め分けることを特徴とする、(40)に記載の方法。
(42)
扁桃腺に浸潤している白血球について、多核白血球が多く浸潤する場合は細菌感染性扁桃腺炎、好酸球が多く浸潤する場合はアレルギー性扁桃腺炎、およびリンパ球が多く浸潤する場合はウイルス感染性扁桃腺炎と判断する工程を含む、(41)に記載の方法。
(43)
(8)に記載の方法を用いることを特徴とする、骨格筋の可視化方法。
(44)
(43)に記載の可視化方法を用いて、骨格筋の形態を解析し、老化による筋力低下の原因を判定する方法。
(45)
(43)に記載の可視化方法を用いて骨格筋の形態を解析し、サルコペニアおよび/または重症筋無力症の病変を診断する方法。
(46)
臓器における病変の視覚化を可能にするために十分な期間および量で、染色剤を臓器に投与する工程、当該臓器に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射する工程、および臓器の病変を画像化する工程を含む、病変の検査方法。
(47)
臓器における病変の視覚化のための細胞染色剤の使用であって、該細胞染色剤を臓器に投与した後、当該臓器に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、臓器の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位の境界面(interface)を確定することを特徴とする、細胞染色剤の使用。
(48)
細胞染色剤を含む、臓器における病変の検査用組成物であって、該組成物を臓器に投与した後、当該臓器に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、臓器の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位の境界(interface)を確定することを特徴とする、検査用組成物。
(49)
臓器における病変の視覚化のための多光子レーザー顕微内視鏡、共焦点レーザー顕微内視鏡またはレーザー蛍光顕微内視鏡の使用であって、細胞染色剤を該臓器に投与した後、当該臓器に対して多光子レーザーまたは共焦点レーザーを照射し、臓器の病変内部を画像化し、正常部位と病変部位の境界面(interface)を確定することを特徴とする、使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、臓器の病変内部を画像化することにより直径5~500μm程度の微細な病変を検査することが可能となる。すなわち、直径5μm程度の毛細血管および上皮内がんなどの直径500μm程度の超早期がんなどに関する微細な病変を検査することが可能となる。
【0011】
本発明によれば、臓器表面から0.05~1.0mmまでの深さの細胞形態を可視化することが可能となり、例えば、大腸の超早期がんの場合では、漿膜面からは、漿膜表面から約500μm内部まで観察することが可能であり、また、粘膜面からであっても、粘膜表面から約500μm内部まで観察することが可能である。したがって、全層の厚さが約1000μmの組織であれば、漿膜面および粘膜面の両側から観察することにより、組織の全層を観察することができるため、大腸の超早期がんの全体像の観察が可能となる。
【0012】
本発明の検査方法を用いて、病気の早期診断および治療を行うことが可能となる。本発明によれば、組織を染色する色素が組織内部まで浸透するため、直径0.1ミリ程度の超早期がんの全体を完全に画像化することができる。したがって、本発明により、超早期がんの診断と治療が可能となる。また、一個の超早期がんにおいて、視覚化された超早期がんの全体像に基づき、がん組織と正常組織との境界面(インターフェイス・interface)を網羅的に観察し、その境界面の観察結果から、がんが浸潤転移しているか否かを検査することが可能となる。
【0013】
本発明によれば、組織を染色する色素が、組織内部まで浸透するため、網膜または脳の病変であっても、直径1ミリ程度の病変の全体を、完全に画像化することができる。したがって、本発明により、網膜または脳の病変の範囲を正確に確定することが可能となる。
【0014】
本発明によれば、複数の可食性色素による多重染色により、複数の細胞および組織構造を同時に識別することが可能となる。本発明によれば、例えば、3種類以上の可食性色素による多重染色により、例えば、がん細胞、リンパ球および血管などの3種類以上の細胞および組織の構造を同時に識別することが可能となる。
【0015】
本発明の方法により、ヒト経口摂取認可済み可食性色素であるスルフレチン、クルクミン、赤色3号または赤色106号溶液を、内腔側または漿膜側組織から噴霧し約1~5分間静置後、またはクルクミン溶液を経口投与後、多光子レーザー顕微鏡または共焦点レーザーによって、漿膜側から細胞形態を画像化し識別することができる。なおクルクミンおよび赤色3号は、それぞれがん関連遺伝子産物のSTAT3およびRASを高発現した細胞を染色することができる。当該方法に従って色素を噴霧塗布した場合、画像取得までの時間は5分以内であり、外科医が注目する組織部位を複数箇所連続的に検索することができる。すなわち、本発明は、外科医が術中に即座に病理診断するために必要な、組織および細胞の識別方法を提供する。当該方法で得られる多光子レーザー顕微鏡または共焦点レーザー顕微鏡画像は極めて鮮明であり、個々の細胞の核の形態が明瞭に可視化されるため、がんの細胞異型と構造異型を確実に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】消化管内壁面における生体細胞群の段階的ながん化遺伝子の変異および活性化と、がんの発達、浸潤および転移の過程を示した模式図である。
図2】ヒトのがん細胞の増殖曲線の一例を示す図である。
図3】マウス摘出大腸(正常粘膜組織およびがん腫瘍部)を、管腔側からクルクミン染色し、管腔側から多光子レーザー顕微鏡により撮影した写真である。(A) 正常大腸粘膜(B)大腸がん腫瘍部
図4】マウス摘出大腸(正常粘膜組織)を、管腔側からクルクミンおよび赤色106号で生体染色し、管腔側から多光子レーザー顕微鏡により撮影した写真である。
図5a】正常大腸の組織構造について説明する図であり、食物が通過するルーメン(管腔)に面する表面から深部に向けて、(1)上皮と腺の層、(2)粘膜筋板、(3)粘膜下層、(4)筋層、(5)漿膜の5層を示す。
図5b】マウス摘出大腸(正常粘膜組織)を、管腔側からクルクミンで染色し、漿膜側から焦点距離を変えながら多光子レーザー顕微鏡により撮影した写真である。写真内の数値は、漿膜側からの焦点距離を示す。
図5c】マウス摘出大腸(正常粘膜組織)を、クルクミンによる漿膜側からの生体染色により、筋層内アウエルバッハ神経叢が陽性に染色された共焦点レーザー顕微鏡画像の弱拡大図である。本図は、(4)の筋層(図5aを参照)に焦点を当てて撮影したものである。
図5d】マウス摘出大腸(正常粘膜組織)について、クルクミンによる漿膜側からの生体染色による筋層内アウエルバッハ神経叢の共焦点レーザー顕微鏡による可視化の例を強拡大し、神経細胞体が識別できることを示す図である。
図5e】マウス摘出大腸(正常粘膜組織)について、クルクミンによる漿膜側からの生体染色により、筋層内アウエルバッハ神経叢を可視化した、多光子レーザー顕微鏡画像を示す。
図5f】マウス摘出大腸(正常粘膜組織)について、赤色106号による生体染色および多光子レーザー顕微鏡による漿膜側からの画像化による、太い血管および平滑筋を可視化した図である。本図は、(4)筋層(図5aを参照)に焦点を当てて撮影したものであり、赤色106号により、平滑筋と血管壁が染色されていることを示す。
図5g】マウス摘出大腸(正常粘膜組織)について、赤色106号による生体染色および多光子レーザー顕微鏡による漿膜側からの画像化による、腺構造および陰窩構造を可視化した図である。
図6A】マウス腹部を切開した後、大腸(正常組織)の漿膜側から大腸組織をクルクミンおよび赤色106号で二重生体染色し、共焦点レーザー顕微鏡により、漿膜側から、(1)上皮と腺の層(図5aを参照)に焦点を当てて、撮影した写真である。本図により、クルクミンは、腺細胞を陽性に染色することから腺構造が可視化され、赤色106号は、結合組織および毛細血管を円周状構造として陽性に染色することから、陰窩構造が識別できることが示される。
図6B】マウス腹部を切開した後、大腸(正常組織)の漿膜側から大腸組織をクルクミンおよび赤色106号で二重生体染色し、共焦点レーザー顕微鏡により、漿膜側から、(1)上皮と腺の層および(2)粘膜筋板(図5aを参照)に焦点を当てて撮影した写真である。本図により、クルクミンによって腺が染色され、赤色106号により結合組織および毛細血管が染色されることに加え、クルクミンにより平滑筋(粘膜筋板)が染色されることが示される。
図7】マウス腹部を切開した後、大腸(正常組織)の管腔側から大腸組織をクルクミンおよび赤色106号で染色し、共焦点レーザー顕微鏡により漿膜側から、(1)上皮と腺の層および(2)粘膜筋板(図5aを参照)に焦点を当てて撮影した写真である。本図により、管腔側から染色した場合であっても、クルクミンにより平滑筋(粘膜筋板)が染色され、赤色106号により結合組織および毛細血管が染色されていることが示される。
図8】がんの局所浸潤および転移による進行度判定ならびに治療方針を示す概略図である。
図9】本図は、がんの細胞構築および進行がんの局所浸潤を図解する。
図10A】大腸がんマウス腹部を切開した後、大腸(がん腫瘍部)の漿膜側から大腸組織をクルクミンで染色し、共焦点レーザー顕微鏡により漿膜側から撮影した写真である。図中の2本の矢印は、それぞれ平滑筋層およびがん細胞を示す。
図10B】大腸がんマウス腹部を切開した後、大腸(がん腫瘍部)の漿膜側から大腸組織をクルクミンで染色し、共焦点レーザー顕微鏡により漿膜側から撮影した写真である。図中の3本の矢印は、それぞれ血管、平滑筋層およびがん細胞を示す。
図11A】大腸がんマウス腹部を切開した後、大腸(がん腫瘍部)の管腔側から大腸組織をクルクミンで染色し、多光子レーザー顕微鏡により管腔側から撮影した写真である。
図11B】大腸がんマウス腹部を切開した後、大腸(がん腫瘍部)の管腔側から大腸組織をクルクミンで染色し、多光子レーザー顕微鏡により管腔側から撮影した写真である。
図12】大腸がんマウス腹部を切開した後、大腸(がん腫瘍部)の漿膜側から大腸組織を赤色106号で染色し、多光子レーザー顕微鏡により漿膜側から撮影した写真である。
図13】マウス胸部を切開した後、胸膜臓側表面側から正常肺組織をクルクミン(A)または赤色106号(B)により染色し、マウス胸部に挿入した共焦点レーザー顕微鏡により胸膜臓側表面側から撮影し、肺胞構造が明瞭に観察されることを示す写真である。
図14】本実施の形態に係るがん検査装置201を示す図である。
図15】本図は、がん検査を図解する。
図16】マウスにおいて、クルクミンによる漿膜側からの生体染色を行った後、筋層内アウエルバッハ神経叢をレーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図17】マウス大腸を、クルクミンにより漿膜側から生体染色を行った後、筋層内自律神経叢(マイスナー神経叢)をレーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大することにより、神経細胞体を識別できることを示す図である。
図18】がん細胞の浸潤の経過とがんのステージ分類を模式的に示す図である。
図19】クルクミンをマウス腹腔内に投与することにより生体染色を行った後、膵臓の外分泌細胞およびランゲルハンス島をレーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。さらに、膵臓組織のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色像を示す図である。
図20】クルクミンをマウスの舌粘膜上に塗布することにより生体染色を行った後、味覚の感覚装置である味蕾を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図21】クルクミンをマウスの舌粘膜上に塗布することにより生体染色を行った後、味覚の感覚装置である味蕾を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図22】クルクミンをマウスの舌粘膜上に塗布することにより生体染色を行った後、味覚の感覚装置である味蕾の感覚神経細胞を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図23】クルクミンをマウス腹腔内に投与することにより生体染色を行った後、により、網膜神経細胞群をレーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図24】クルクミンをマウスの硝子体内に注射することにより生体染色を行った後、網膜神経細胞群を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図25】クルクミンをマウス腹腔内に投与することにより生体染色を行った後、嗅神経線維を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。本図により、クルクミンがミエリン髄鞘を染色することが示される。
図26】クルクミンをマウス鼻粘膜上に塗布することにより生体染色を行った後、匂いの感覚細胞である嗅覚受容神経細胞を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図27】クルクミンをマウス腹腔内に投与することにより生体染色を行った後、甲状腺を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。さらに、甲状腺組織のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色像を示す図である。
図28】クルクミンをマウスの筋膜上に塗布することにより生体染色を行った後、骨格筋のアクチン・ミオシン横紋、核および筋線維を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図29】クルクミンをマウスのリンパ節上に塗布することにより生体染色を行った後、リンパ節の二次小節の明中心と暗殻の構造を、レーザー顕微鏡により可視化した例を強拡大で示す図である。
図30】クルクミンをマウス腹腔内に投与し、海馬の神経細胞の細胞体をレーザー顕微鏡により可視化した図である。
図31】クルクミンをマウス腹腔内に投与し、大脳皮質をレーザー顕微鏡により可視化した図である。
図32】クルクミンをマウス腹腔内に投与し、小脳の神経細胞の細胞体および血管を、レーザー顕微鏡により可視化した図である。
図33A】スルホローダミン101をマウス腹腔内に投与し、網膜の毛細血管をレーザー顕微鏡によりin vivoで可視化した図である。(A)本図により、網膜における太い血管および毛細血管が可視化されることが示される。また毛細血管内において、赤血球が、黒い円盤状の陰影として可視化されることが示される。
図33B】スルホローダミン101をマウス腹腔内に投与し、網膜の毛細血管をレーザー顕微鏡によりin vivoで可視化した図である。(B)毛細血管を強拡大した図である(左図)。網膜の毛細血管は、ループ状に吻合していることが示される(右図における線部で示される)。
図33C】スルホローダミン101をマウス腹腔内に投与し、網膜の毛細血管をレーザー顕微鏡によりin vivoで可視化した図である。(C)毛細血管を強拡大し、毛細血管中を、赤血球が黒い円盤状の陰影(矢印で指示される)として可視化されることを示す図である(左図)。右図は、左図の撮影後、同一部位を約30ミリ秒後に再度撮影した図を示す。本図により、毛細血管内を移動する赤血球の個数および赤血球の移動速度を計測することができる。赤血球である黒い円盤状の陰影は、矢印で指示される。
図34】スルホローダミン101をマウス腹腔内に投与し、網膜の毛細血管をレーザー顕微鏡によりin vivoで可視化することにより、赤血球の流速を計測したことを示す図である。毛細血管内を移動する赤血球を、0.06秒後に再度撮影した。矢印で指示する黒い円盤状の陰影は、赤血球である。図中に示した距離スケールより、0.06秒間における赤血球の移動距離は11.0μmであり、移動速度は、秒速183μm/秒と算出される。模式図は、毛細血管内を移動する赤血球が可視化される状態を示す。
図35】スルホローダミン101を、正常マウスおよび糖尿病モデルマウスに腹腔内投与し、網膜血管をレーザー顕微鏡によりin vivoで可視化した図である。(A)正常マウスの網膜血管を示す。毛細血管の管径はほぼ均一であり、造影剤であるスルホローダミン101の血管外漏出は認められない。(B)糖尿病モデルマウスの網膜血管を示す。毛細血管の管径が末梢で細くなり、血管周囲のモヤ状シグナルの存在によって、スルホローダミン101の血管外漏出が認められる。
図36】マウス網膜毛細血管をレーザーにより凝固させたことを示す図である。(A)スルホローダミン101をマウス腹腔内に投与し、網膜の毛細血管を、レーザー出力10%でレーザー顕微鏡によりin vivoで可視化し、レーザーを照射する標的血管を選択した(左図の破線楕円で示す)。次に、レーザー出力100%とし、30秒間レーザーを照射した(右図)。右図において、レーザー照射を受けた毛細毛管の選択的な凝固が観察される。(B)レーザー照射を受けた毛細毛管の拡大撮影像を示す図である。(左図:レーザー照射前、右図:レーザー照射後)
図37】クルクミンをマウス腹腔内に投与することにより生体染色を行った後、網膜の神経細胞層をin vivoで可視化した図である。
図38】スルホローダミン101およびSTK833131をマウス腹腔内に投与することにより生体染色を行った後、網膜の視神経および視神経節細胞をin vivoで可視化した図である。(A)スルホローダミン101によって蛍光標識された血管走行およびSTK833131で蛍光標識された視神経の束が可視化された図である。(B)クルクミンをマウス腹腔内に投与することにより生体染色を行った後、視神経並びに小型および大型視神経節細胞の核が陰性シグナル(黒い丸い陰影)として、それらの細胞質が陽性のシグナルとして可視化された図である。
図39】クルクミン生体染色と多光子レーザー顕微鏡によるアウエルバッハ神経叢からマイスナー神経叢、腸腺底部までの連続断層画像(代表3焦点面)を示す図である。
図40】クルクミンをヒルシュスプルング類似疾患の患者のどこに投与することにより生体染色を行った後、多光子レーザー顕微鏡による該患者の大腸のアウエルバッハ神経叢の部位依存性の形成不全で可視化した図である。
図41】大腸上皮の正常組織とがんの形態的特徴とがんと正常の境界面を示す図である。
図42】がん細胞と正常組織の境界面の状態とがんの浸潤を示す図である。
図43】がん細胞と周囲結合組織の境界面の状態とがんの浸潤を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明する。しかしながら本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。
【0018】
本発明でいう「正常部位と病変部位との境界面(interface)」とは、細胞染色剤を用いた場合、正常部位の細胞の形態と配列に対し、病変部位の個々の細胞の形態異常(細胞異型)と配列の異常(構造異型)が可視化できる境界面を意味する。
【0019】
がん病理診断は、個々の細胞の形態異常(細胞異型)と配列の異常( 構造異型)から行う。例えば、正常では、腺の陰窩が均一に分布し、横断像では壺状の構造、水平断では円周状の構造が規則正しく配列している。がんでは、陰窩構造が消失している。均一な分布の陰窩構造を持つ正常組織と、大小不同のがん細胞の集団が接する面(破線)を、境界面と定義することができる(図41)。また、がん細胞は腺の陰窩の幹細胞付近から発生し、徐々に増殖するが、がん細胞が粘膜筋板を超えていないときは早期がん、粘膜筋板を超えているときは、進行がんと定義される(図41)。
【0020】
また、図42は、クルクミンの単独染色を用いた場合、がん細胞と正常組織の境界面を示す。可視化された当該臓器組織内に存在するがん組織および正常組織の隠窩構造を比較し、がん組織では、正常組織で見られる規則的な隠窩構造が消失していること、および、隠窩構造を持たないがん細胞の無秩序な細胞増殖の集合が認められることによって、当該病変部位ががんと判定できる(図42)。
【0021】
なお、がん細胞は腺の陰窩の幹細胞付近から発生し、徐々に増殖するが、がん細胞が粘膜筋板を超えていないときは早期がん、粘膜筋板を超えているときは、進行がんと定義することができる。
【0022】
組織は、クルクミンで上皮細胞・がん細胞を生体染色し、赤色106号で結合組織・毛細血管を生体染色している場合、境界面は上皮系のがん細胞(緑)と結合組織(赤)の境目を境界面と定義することができる。この場合において境界面(破線)が明瞭分離(clearly separated )の部位は、がん細胞が周囲に高度には浸潤していないので、がん周囲にこの部位が多い腫瘍は、浸潤性が低いと判断される。一方、境界面(破線)が入り組んでいる(intermingled)の部位は、がん細胞が周囲の結合組織に高度に侵入しているので、がん周囲で、この部位が多い腫瘍は、浸潤性が高いと判断される(図43)。
【0023】
マウス正常大腸粘膜正常大腸粘膜では、上皮系の腺の構造が、隠窩構造として周囲の結合組織と接するので、両者の境界面はスムーズな円周状となる。隠窩構造は、均一に分布する。境界面(破線)が明瞭分離(clearly separated )の部位では、がん細胞が周囲に高度には浸潤していないので、がん周囲にこの部位が多い腫瘍は、浸潤性が低いと判断され、境界面(破線)が入り組んでいる(intermingled)の部位は、がん細胞が周囲の結合組織に高度に侵入しているので、がん周囲で、この部位が多い腫瘍は、浸潤性が高いと判断される(図43)。
【0024】
以上のように細胞染色剤を用いた場合、正常部位と病変部位のとの境界面(interface)を確定することにより、病変部位の確定および進行状況を把握することができ、病気の早期発見および病気の進行状況に応じて適切な治療方法と手術方法を提供することができる。
【0025】
本発明で用いられる細胞染色剤としては、可食性の1種類以上の色素化合物を含んで成る生体染色剤が挙げられる。色素化合物は、タール系色素(赤色3号(エリスロシン)、赤色104号(フロキシン)、赤色105号、赤色106号、緑色3号(ファストグリーンFCF)、赤色2号、赤色102号、青色2号(インジゴカルミン)、黄色4号(タートラジン)、黄色5号(サンセットイエローFCF)等)、イリドイド系色素(ハイメロンP-2(クチナシ青:ゲニポシド)、ハイブルーAT(クチナシ青色素:ゲニポシド)等)、カロテノイド系色素(ハイメロンP-2(黄色素:クロシン)、アナトール(アンナットーN2R25、紅の木の実:ビキシン、ノルビキシン)、ハイメロンP-2(クチナシ青:ゲニポシド)、クロシンG150(クチナシ黄色素)、クロシンL(クチナシ黄色素)、βカロテン、アンナットーWA-20(アナトール色素、べにの木の種子:ノルビキシン)等)、フラボノイド系色素(ハイレッドG150(ブドウ果皮色素、アントシアニン)、ハイレッドRA200(赤大根色素:ペラルゴニジンアシルグリコシド)、ハイレッドV80(紫芋色素:シアニジンアシルグルコシドおよびペオニジンアシルグルコシド)、アピゲニニジン(コウリャン色素)、シアニジン、デルフィニジン(ナス色素)、フィセチニジン(モリシマアカシア色素)、マルビジン(青いスイートピー色素)、ペラルゴニジン、ロビネチニジン(ニセアカシアの木色素)、トリセチニジン(紅茶色素)、ペツニジン(レッドベリー色素)、カプサンチン(トウガラシ色素)、エピガロカテキンガレート、緑茶、サフラワーY1500(ベニバナ色素、サフロミンA+B)、クルクミン、スルフレチン、ミリセチン(ブドウ、玉ねぎ色素)またはクェルセチン(玉ねぎ、柑橘類色素))、キノイド系色素(コチニール(コチニールレッドAL、カルミン酸)、ハイレッドS(ラック色素・ラッカイン酸)等)、ベタライン系色素(ハイレッドBL(赤ビート色素:ベタニン、イソベタニン)等)、インドシアニングリーンおよびジンゲロール(ショウガ辛み成分)血管造影色素スルホローダミン101(シグマ社、5 mg/kg)、血管造影色素フルオレッセイン(東京化成、5 mg/kg)、神経細胞を染色する色素STK833131(Vitas-M社製、1~25 mg/kg)を含む蛍光色素群から選択される。
【0026】
本発明で用いられる細胞染色剤の好ましい例示としては、クルクミン、スルホローダミン101、血管造影色素フルオレッセイン、STK833131、スルフレチン、クルクミン、赤色3号(エリスロシン)および赤色106号からなる群より選ばれる1種類以上の染色剤が挙げられる。
【0027】
細胞染色剤の投与方法は特に限定されない。例えば、本発明の細胞染色剤を臓器の管腔内に直接投与または粘膜下投与してもよく、臓器の漿膜側から投与してもよい。これらの投与方法としては、塗布、滴下または噴霧による投与が採用できる。さらには、細胞染色剤の投与方法として、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、胸腔内投与またはくも膜下投与することもできる。投与方法は、染色の対象となる臓器または臓器の部位によって選択することができる。染色剤の染色性が弱い場合、粘膜表面をプロナーゼで処理することにより粘液を除去し、細胞構造の視認性を向上させることができる。管腔内壁に直接染色剤を投与する場合(例えば塗布または噴霧)、染色剤の剤形は液体であることが好ましいが、顆粒、錠剤等の形態でも使用することができる。また、剤形等に応じて適宜必要な追加成分、例えば等張化剤、pH調節剤、安定化剤、増粘剤、防腐剤、香料または粘着剤等の添加物を染色剤に配合することができる。例えば、本発明の染色剤に予めプロナーゼを配合してもよい。
【0028】
図1は、消化管内壁面における生体細胞群の段階的がん化過程を示した模式図である。図1では、生体細胞群のがん化の過程が、第1段階、第2段階、第3段階および第4段階に順に分けて示されている。
【0029】
第1段階は、生体細胞群の一部においてがん化が開始される段階である。第1段階は、APC/β-catenin系のがん関連遺伝子の活性が弱まり、細胞の増殖を抑制する機能が低下することにより起こると考えられる。この段階では、細胞の増殖はやや亢進し、少なくとも、将来的にがん細胞となり得る前がん状態が発現していることを示している。
【0030】
第2段階は、第1段階よりもがん化が進んだ前がん状態である。第2段階は、ras系のがん関連遺伝子の活性が強まり、細胞の増殖が亢進していると考えられる。また、STAT3系のがん関連遺伝子もこの段階で活性化される可能性があると考えられる。がん細胞集団の大きさは小さく、その直径は、例えば0.1 mm以上0.4 mm以下である。がん細胞集団の直径とは、がん細胞集団を、がん細胞集団の面積と同じ面積を有する円とみなした場合の直径である。この段階は、患者の生命をすぐに脅かす段階ではないが、今後に備えて治療計画等を立てておくことが望ましい。
【0031】
第3段階は、生体細胞群の一部が浸潤状態となり、がん細胞が顕在化した段階である。第3段階は、p53系のがん関連遺伝子の活性が弱まり、細胞の増殖を抑制する機能が低下することにより起こると考えられる。この段階は、p53系およびAPC/β-catenin系の両方のがん抑制遺伝子産物の活性が弱まり、細胞の増殖を抑制する機能が大きく低下した状態にある。このため、がん細胞の増殖が加速的に進み、がん細胞は周囲組織に浸潤する。第3段階まで進むと、がん細胞集団の直径は0.5 mm以上に達し、そのまま放置すると個体の死を誘発するがんが完成する。
【0032】
第4段階は、第3段階で完成したがん細胞が、がんになった後、さらなる遺伝子変異を生じ、さらに細胞増殖、浸潤および転移が起こりやすい悪性のがんに進展した段階である。この段階は、消化管以外の他の遠隔臓器へのがん転移が始まる段階であり、患者の生命を脅かす危険な段階である。これら第1段階から第4段階への進行スピードは、がん関連遺伝子の活性状態により左右されると考えられる。
【0033】
図2は、人のがん細胞の増殖曲線の一例を示す図である。図2に示されるように、一般的に、がん細胞の数は所定の増殖曲線に従って増加する。例えば、がん化が始まろうとしている段階の3年間(がん細胞集団の直径が0.2 mm未満の時期)は増殖曲線の傾きが小さいが、4年以降(がん細胞集団の直径が0.5 mm以上の時期)では増殖曲線の傾きが大きくなる。そして、7年半以降になると増殖曲線の傾きはやや小さくなる。なお、一般的にがんが臨床的に発見され、治療が行われるのは7年以降の時期である。これは、がん細胞集団の直径が10 mm以上とならなければ検出できないからである。現在のがんの治療は、一般的に、がんが直径20mmを超えてから発見されることが多いため、外科的な切除によるがん細胞の除去が主流である。
【0034】
図2において注目すべきは、図2の増殖曲線の破線Aで示される範囲では、がん細胞集団の大きさが指数関数的に増加している点である。この指数関数的な増加は、がん細胞集団のがん細胞で、起こるべき第1段階から第3段階までのがん性遺伝子変異が完了し、がん細胞が一定の均一な速度で分裂を繰り返していることを意味している。この指数関数的な増加の初期の段階、すなわち、がん関連遺伝子発現パターンは異常を生じているが、がん細胞集団自体は直径1 mm以下と小型である段階で、これらのがん細胞集団(超早期がん)を検出することができれば、これらの超早期がんは十分に小さいため、完全摘出が容易であるので、がんを根治できる。このように、超早期の段階で、がん化の悪性度レベルをがん関連遺伝子発現パターンの異常として把握することができれば、危険な段階となる前に、がんを根本治療することが可能となる。
【0035】
発明者らは、超早期がんの検出のため、生体細胞群のがん関連遺伝子発現パターンを多光子レーザー顕微鏡または共焦点レーザー顕微鏡で撮像し、がん関連遺伝子の活性状態を視覚化することで、がん化の悪性度レベルを把握することを試みた。
【0036】
発明者らは、生体細胞のがん関連遺伝子発現パターンを視覚化するにあたり、可食性の色素を含む染色剤を用いてがん関連遺伝子産物を有彩色に染色して撮像を行った。なお、可食性の色素とは、自然色素または人工合成色素のうち、ヒトへの投与が許可されている色素(例えば食品着色用の色素やサプリメントで服用可能な色素)である。
【0037】
具体的には、STAT3系のがん関連遺伝子産物を選択的に染色する染色剤として、クルクミン類(Curcumin、C2120)を含む染色剤を用いることができる。また、ras系のがん関連遺伝子発現パターンを選択的に染色する染色剤として、赤色3号(エリスロシン)を含む染色剤を用いることができる。
【0038】
より具体的には、クルクミン類を含む染色剤として、クルクミンを1重量%含むクルクミン含有溶液を準備し、赤色3号を含む染色剤として、フロキシンを1重量%含む赤色3号含有溶液を準備した。なお、クルクミン類を含む染色剤としては、クルクミン溶液(例えば、原液は、クルクミンを5%、45%グリセロール、50%エタノールを含む液体)を生理食塩水で1/5~1/100希釈したものでもよい。1%赤色3号を含む染色剤としては、フロキシン溶液(原液 10 mg/mL)をそのままの濃度~1/10希釈したものでもよい。
(i)0.45%グリセリン、0.5%エタノールの溶液に、化学合成クルクミンを1mg/ml程度まで希釈したものを用いる。
(ii)沖縄クルクミン粉末1gを10mlのPBSで溶かして、1mg/ml程度までに希釈したものを用いる。
(i)、(ii)ともに、使用直前に、滅菌フィルターで無菌化したものを、生体に投与する。
【0039】
クルクミン類を含む染色剤を用いる場合、生体細胞内のSTAT3系のがん関連遺伝子産物の発現を染色により視覚化することができる。また、赤色3号を含む染色剤を用いる場合、生体細胞内のras系のがん関連遺伝子発現を染色により視覚化することができる。染色後、過剰な染色剤は洗浄することにより除去することができる。生理食塩水、りん酸緩衝生理食塩水などの細胞または生体組織に損傷を与えない生理的溶液で約10秒間の洗浄を3回行うことにより、過剰な染色液を除去することができる。異なる染色剤により二重染色を行った場合、STAT3系およびras系のがん関連遺伝子産物の発現量の解析が、同時に可能となる。なお、各染色剤の染色時間はそれぞれ1~5分間でよい。上記した濃度においては、染色開始後から10分以内であれば細胞質に浸透しても細胞内の核に浸透しないため、細胞質に囲まれている核を鮮明に視覚化できることにより、分析がより明瞭にできるようになる。
観察までの染色時間は、粘膜表面または臓器表面に直接塗布する場合は例えば、投与後1~5時間、経口投与する場合は投与後1時間~5時間、静脈内投与する場合は投与後3分~1時間、腹腔内投与する場合は投与後3分~5時間、皮下注射投与する場合は投与後3分~1時間、筋肉内注射投与する場合は投与後3分~2時間、臓器内注射投与する場合は投与後5分~30分間、胸腔内投与またはくも膜下投与する場合は投与後3分~5時間とするが、これらに限定するものではない。臓器における病変の視覚化を可能にするためには目的に応じて十分な期間および量で、染色剤を臓器に投与すればよい。例えば、細胞染色剤のクルクミンまたは赤色106号で大腸粘膜を生体染色する場合、3分間の染色時間で、染色剤は粘膜表面から50μm程度内部まで浸透するが、染色時間を60分間程度まで延ばすとで、細胞染色剤が直径1ミリ程度の組織内部まで浸透し、組織を染色することができる。さらに深部にある組織を染色するために、染色時間を5時間まで延長してもよい。
【0040】
上記の細胞染色剤によるがん細胞の染色は、直接臓器に対して行うことができる。臓器はヒトまたは動物に由来するものを用いることができる。染色の対象とする臓器は摘出したものでも、生体内にあるものでもよい。臓器としては、大腸、肺、前立腺、胃、食道、膀胱、リンパ節などが挙げられるが、これらに限定されない。リンパ節を染色する場合、染色液の浸透性を上げるため、リンパ節組織を覆う表面組織を剥離した後、染色液を適用することが好ましい。細胞染色剤により染色された細胞は、多光子レーザー顕微鏡または共焦点レーザー顕微鏡を用いて画像化することができる。多光子レーザーを用いる場合は、臓器表面からの十分な撮像可能深度および解像度を得るため、レーザー波長は600 nm~1600 nmが好ましい。共焦点レーザーを用いる場合は、400 nm~700 nmのレーザー波長が好ましい。
【0041】
臓器に対する染色液の適用は、臓器表面を覆う漿膜側から行うことができる。大腸、胃、食道などの管状の臓器では、管腔側から行うこともできる。適用とは、細胞染色液溶液を臓器に対して塗布、滴下または噴霧することを意味する。手術後に切除した臓器に対する病理診断を目的とする場合は、摘出臓器が管状である場合、管腔側から組織染色を行うことができる。しかしながら、手術中に切除部位またはがんの浸潤部位を特定するためには、臓器の漿膜側から組織染色を行うことが望ましい。これは、例えば腹腔等の内視鏡下手術用ロボット技術等は、基本的に臓器の漿膜側より手術を行うため、漿膜側の組織染色が必要となるためである。漿膜側から染色液を適用する場合、手術野にある臓器漿膜に無菌化した染色液を塗布、滴下または噴霧し、染色液の適用後10分以内、好ましくは1~5分、さらに好ましくは1~3分で、臓器を生理食塩水等で洗浄し、染色液を除去する。この後、直ちに、多光子レーザー顕微鏡または共焦点レーザー顕微鏡で染色像を観察することができる。また、手術前に染色剤を全身に投与し、手術中にレーザー顕微鏡で組織を観察することもできる。投与方法としては、経口投与でもよく、静脈内投与でもよい。
【0042】
臓器組織の染色において、使用する染色剤により可視化される臓器内の対象物が異なる。例えば、クルクミンまたは赤色3号は、上皮および腺の細胞およびそれらからがん化したがん細胞の染色に適している。一方、赤色106号は、結合組織および毛細血管の染色に適している。レーザー照射により、クルクミンは緑色の蛍光色を与えるが、赤色3号および赤色106号は赤色の蛍光色を与える。したがって、クルクミンおよび赤色106号により二重染色を行うと、染色像を重ね合わせることにより、組織細胞構造の識別が容易となり、その結果、直径1 mm程度の微細ながん組織や浸潤しているがん細胞集団の検出が可能となる。
【0043】
図4は、マウスの摘出大腸(正常粘膜組織)を、管腔側からクルクミンおよび赤色106号で生体染色し、管腔側から多光子レーザー顕微鏡により撮影した結果を示す。ぞの結果、クルクミンは上皮細胞および腺細胞の細胞質を染色し、赤色106号は結合組織、毛細血管ならびに上皮細胞および腺細胞の細胞膜を染色することから、二重染色により組織細胞構造が明瞭に識別できることが示される。
【0044】
組織染色において、がん細胞が存在しない正常組織と、がん細胞の存在する腫瘍組織では、レーザー顕微鏡による観察像が異なることが分かった。例えば大腸粘膜をクルクミンにより染色した場合(図3参照)、正常な大腸の粘膜組織では、上皮細胞や腺細胞の細胞質が染色され、核は染色されない。このため、個々の細胞および核の形態が明瞭に視認される。一方、大腸がん腫瘍部の組織では、個々の細胞の大きさが不同であり、また核が大きく、細胞の配置または配列が不均一である。さらに細胞接着の解離が認められ、細胞異型と判断される。さらに、がん組織では、細胞集団が基底膜上に整列して配列されておらず、また腺構造を形成していないため、構造異型と判断される。本発明の方法によれば、正常組織とがん組織との上記の相違を示す画像に基づき、がん細胞の検出、すなわちがんの病理診断が可能となる。
【0045】
また、がん細胞の浸潤は、正常大腸の5層構造との関連で検出できる。正常大腸の組織構造は図5aに示され、5層構造は(1)~(5)として示される。すなわち、共焦点レーザーおよび多光子レーザー顕微内視鏡によって画像化すると、正常大腸は、食物が通過するルーメン(管腔)に面する表面から深部に向けて、(1)上皮と腺の層、(2)粘膜筋板、(3)粘膜下層、(4)筋層、および(5)漿膜の5層の構造からなる、極めて規則的な層状の構造を持つことが示される。
【0046】
ルーメンに面する表面は、(1)上皮と腺の層が上皮細胞によってくまなく覆われ、また、上皮細胞は蛸壺状に表面から垂直に陥没した腺の構造(この垂直に陥没した構造を陰窩構造とも呼ぶ。)を一定間隔ごとに形成している。上皮は、図5aの焦点面Pで示すように、上皮細胞が隙間なく集合した細胞のシート状に見える。一方、腺の構造は、図5aの焦点面Cで示すように、約10個程度の腺細胞が中心の開口部に向かって同心円状に配列し、その外側を直径10μm程度の毛細血管が円周状に取り囲んだ形状をしている。腺の高さは約0.5~1.0 mmで、その深部側三分の一の部分は腺底部と呼ばれ、この部分の細胞が、細胞分裂し、腺細胞と上皮細胞を更新している。この腺底部の細胞の細胞分裂が異常に亢進することに起因して、がんが発生すると考えられている。(2)粘膜筋板は、腺構造の深部に存在する薄い平滑筋の層で、がんがこの粘膜筋板を超えて発達していない段階のものを早期がんという。(3)粘膜下層は、疎な結合組織の層である。(4)筋層は、厚い平滑筋の層であり、腸の蠕動運動を司る(焦点面Bで示すように、この層では、細長い平滑筋細胞の集団が認められる。)。この平滑筋層の内部には、この平滑筋の運動を制御する自律神経のネットワークが分布しており、これは、アウエルバッハの神経叢と呼ばれる。また、この筋層の内部には、上皮や腺の周囲の毛細血管に血液を供給する太い血管も存在する(焦点面Aで示すように、この層には、直径20μm以上の太い血管が認められる。)。(5)漿膜は、扁平な一層の細胞からなる層である。
【0047】
上記の5層構造において、クルクミンは、(1)上皮と腺の層の腺細胞を強く陽性に、(2)粘膜筋板の平滑筋を強く陽性に、(4)筋層の平滑筋を弱く陽性に、また筋層内部のアウエルバッハ神経叢を強く陽性に染色することが判明し、赤色106号は、(1)上皮と腺の層の腺構造を取り囲む毛細血管の網の目構造を強く陽性に、(2)粘膜筋板の平滑筋を弱く陽性に、(4)筋層の平滑筋を弱く陽性に、また筋層内部の太い血管の壁を強く陽性に染色することが判明した。これらの生体染色剤による正常大腸の5層構造および主な細胞構築の可視化は、がんの浸潤範囲の判定において極めて有用な手がかりとなる。すなわち、上記の正常構造が、正常の分布パターンを持って正常の位置に存在しないという所見(がん部位において、赤色106号による腺底部における陰窩構造の規則的な分布の消失、図12)と、正常の場合は存在するはずのない場所に、存在するはずのない細胞が存在するという所見(平滑筋層の内部に、クルクミン染色陽性の大型の細胞がび慢性に多数散在する。図10AおよびBを参照)の組み合わせによって、がんの浸潤の有無を正確に判断できる。
【0048】
臓器組織の染色からレーザー顕微鏡による観察まで短時間で行うことができるため、がんの病理診断を手術中の体内迅速断探病理診断にも応用することができる。一般に、がんの病理組織診断は、細胞の大小不同や形の乱れ(細胞異型)と組織の構造の乱れ(構造異型)によって行われる。異型の強いものががん(悪性)であり、異型の弱いものが良性と判断される。
【0049】
レーザー顕微鏡による組織観察では、レーザー顕微鏡の対物レンズの位置を操作することにより、臓器に対する焦点面を変動させることができる。この操作により、臓器表面から0.05~1.0 mmの深さまでの細胞形態を断層画像として明瞭に観察することができる。例えば、大腸組織を漿膜側から観察する場合、漿膜から管腔方向に順次焦点深度を変動させた場合、漿膜に近い比較的太い血管、平滑筋層およびその内部に存在し、平滑筋の運動を制御しているアウエルバッハ神経叢、次に毛細血管を含む腺構造を観察することができる。平滑筋層が観察できることにより、平滑筋層の内部に浸潤したがん細胞であっても検出することができる。図5bは、マウスの摘出大腸(正常粘膜組織)を、管腔側からクルクミンで染色し、漿膜側から焦点距離を変えながら多光子レーザー顕微鏡により撮影した結果を示す。上記した大腸の組織構造において、焦点距離0μmでは(5)漿膜表面が、焦点距離50μm付近では(4)筋層の平滑筋が、焦点距離80~160μmでは(1)上皮と腺の層の腺構造(陰窩構造)が明瞭に認められる。
【0050】
一実施態様において、本発明の方法を用いることにより、神経叢を可視化することができる。図5cは、マウスの摘出大腸(正常粘膜組織)を、クルクミンにより漿膜側から生体染色し、共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより得られた画像である。この図より、筋層内アウエルバッハ神経叢が陽性に染色されることが示される。すなわち、クルクミンは、神経細胞体を濃く、また神経線維を薄く染色することから、ネットワーク状構造としてアウエルバッハ神経叢を可視化していることが理解される。アウエルバッハ神経叢は自律神経系に属し、神経細胞体とそれらを結合する神経線維から成り立っている。
【0051】
上記した筋層内アウエルバッハ神経叢の共焦点レーザー顕微鏡観察画像を強拡大したものが図5dである。この図により、神経細胞体をも識別できることが示される。神経細胞体について、クルクミンは細胞質のみを染色し、核は染色しないため、細胞質は陽性画像として、核は陰性画像として認識される。このことにより、神経細胞体の形態を正確に判定することができる。がん細胞は、(1)上皮と腺の層(図5a参照)で発生した後、それ以外の層に拡大し、移動する(この現象をがん細胞の浸潤という。)。浸潤するがん細胞は、血管や末梢神経に沿って移動する傾向があることが知られているが、クルクミンの生体染色により筋層内アウエルバッハ神経叢を可視化できるということは、がんの浸潤経路を可視化できるという結果を導き、がんの浸潤範囲の判断において有用である。
【0052】
本発明の一実施態様において、筋層内アウエルバッハ神経叢を多光子レーザー顕微鏡で観察することができる。図5eは、クルクミンにより染色して、筋層内アウエルバッハ神経叢を可視化した図である。多光子レーザー顕微鏡画像では、多くの断層画像を重ね合わせできるため、アウエルバッハ神経叢のネットワーク構造をより広い範囲で可視化することができる。
【0053】
本発明の一実施態様において、クルクミンをヒルシュスプルング類似疾患の患者のどこに投与することにより生体染色を行った後、多光子レーザー顕微内視鏡を用いて、患者の大腸のアウエルバッハ神経叢の正常な神経叢および形成不全の神経叢の可視化(図39)を実証しており、ヒルシュスプルング類似疾患の患者の新鮮切除大腸への多光子レーザー顕微内視鏡による術中迅速診断が可能となり、適切な手術部位を提案することができる。
【0054】
本発明の一実施態様において、赤色106号により生体染色することにより、太い血管および平滑筋を可視化することができる。染色したマウスの摘出大腸(正常粘膜組織)を、多光子レーザー顕微鏡により漿膜側から(4)筋層(図5a参照)に焦点を当てて撮影した場合、平滑筋および血管壁が染色されていることが示される。
【0055】
本発明の一実施態様において、赤色106号により染色した組織について、多光子レーザー顕微鏡により漿膜側から画像化し、腺構造および陰窩構造を可視化することができる。図5gは、(1)上皮と腺の層(図5a参照)に焦点を当てて撮影したものである。得られた画像より、結合組織および毛細血管が腺細胞の周囲を円周状に取り巻いて網の目状に走行していることから、規則的な腺構造および陰窩構造の分布パターンが可視化されている。この規則的な腺構造および陰窩構造の分布パターンは、正常な大腸の組織構造の大きな特徴であり、がんが発生すると、がんが存在する部位で、この腺構造および陰窩構造の形態における規則性が失われる。
【0056】
上記のように、本発明の方法によってマウス大腸の正常粘膜組織を共焦点レーザーおよび多光子レーザー顕微内視鏡によって画像化すると、正常大腸の(1)上皮と腺の層、(2)粘膜筋板、(3)粘膜下層、(4)筋層、(5)漿膜の5層の構造について、クルクミンは、(1)上皮と腺の層の腺細胞を強く陽性に染色し、(2)粘膜筋板の平滑筋を強く陽性に染色し、(4)筋層の平滑筋を弱く陽性に染色し、また筋層内部のアウエルバッハ神経叢を強く陽性に染色することが判明した。一方、赤色106号は、(1)上皮と腺の層の腺構造を取り囲む毛細血管の網の目構造を強く陽性に染色し、(2)粘膜筋板の平滑筋を弱く陽性に染色し、(4)筋層の平滑筋を弱く陽性に染色し、また筋層内部の太い血管の壁を強く陽性に染色することが判明した。これらの生体染色剤による正常大腸の5層構造および主な細胞構築の可視化は、以下に述べるがんの浸潤範囲の判定において極めて有用な手がかりを与える。すなわち、上記の正常構造が正常の部位に存在しないという所見および正常構造の場合には存在しない細胞が存在するという所見の組み合わせによって、がんの存在を判定することができる。
【0057】
図8を参照しながら、がんの局所浸潤および転移による進行度判定ならびに治療方針を説明する。がんは、一般的に、腺底部に存在する細胞で、正常であっても細胞分裂および増殖を行なう未分化な細胞が、図1に示される段階的な遺伝子変異を起こし、細胞分裂および増殖が異常に亢進することが原因で発生すると考えられている。がん細胞が上皮細胞の外に出ない段階は、上皮内がん0期、または超早期がんと定義される。がん細胞は、発生した局所において、上皮細胞が本来存する領域を超えて増殖するが、がん細胞が粘膜筋板を超えていない段階は、1期または早期がんと定義される。がん細胞が、粘膜筋板を超えて、粘膜下層および筋層に浸潤した段階は、2~3期と定義される。がん細胞が、発生した局所の組織や臓器を超えて、他の臓器に転移した段階は、4期と定義される。一般的に、治療法は、0~1期においては内視鏡によるがん組織の除去が、また2~3期においては外科手術によるがん組織の除去が、また4期では化学療法および放射線療法ならびに免疫療法が主体となる。ここで本発明の有用性は、2~3期のがんについて、外科手術によるがん組織の除去または切除を行なう場合、生体染色およびレーザー内視鏡を用いることにより、漿膜側から、がん細胞の浸潤範囲およびがん組織を除去または切除すべき領域を判定するための支援画像データを提示することにある。
【0058】
進行がんの局所浸潤において、がん細胞は、平滑筋層の内部または粘膜下層の結合組織において、血管や神経に沿って、び慢性に拡散する(図9を参照)。この現象を、がん細胞の局所浸潤という。この局所浸潤の範囲を正確に判定することは、現行の肉眼による精査や触診による組織の硬さの変化などの方法では、極めて困難である。
【0059】
しかしながら、大腸がんマウスのがん腫瘍部を、漿膜側からクルクミンで染色し、共焦点レーザー顕微鏡により漿膜側から観察することにより、がん細胞の存在を明瞭に視認することができる。図10Aを参照すると、平滑筋層の内部に、クルクミン染色陽性の大型の細胞が、び慢性に多数散在している。これらの細胞は、浸潤したがん細胞であると判断される。また、クルクミン染色により、これらの細胞の細胞質は周辺組織より濃く染色されて陽性画像として認識されるため、これらの細胞はがん細胞であると判断される。すなわち、正常の場合には存在するはずのない細胞が、存在するはずがない場所に存在するという所見によって、これらの細胞ががん細胞であると判断される。図10Bを参照すると、血管ならびに平滑筋層およびその内部に浸潤したがん細胞が観察される。血管の周囲に一部のがん細胞が集合していることから、がん細胞は、血管に沿って移動し、浸潤する性質を持つことが示唆される。
【0060】
図11Aおよび図11Bは、大腸がんマウスのがん腫瘍部を、管腔側からクルクミンで染色し、多光子レーザー顕微鏡により管腔側から撮影した写真である。これらの写真から、がん細胞は、細胞質が強く陽性に染色され、また核は陰性に染色されることが示された。この結果、がんの構造異型と細胞異型とを識別することができる。
【0061】
図12は、大腸がんマウスのがん腫瘍部を、漿膜側から赤色106号で染色し、多光子レーザー顕微鏡により漿膜側から撮影した写真および進行がん浸潤の模式図である。正常組織では、陰窩構造が規則的に分布していることが確認できる。一方、がん組織では、陰窩構造の規則的な分布が消失しており、がんであると判定することができる。すなわち、正常構造が正常の場所にないという理由から、この部位にがん細胞が存在すると判断される。
【0062】
本発明の一実施態様において、クルクミンによる生体染色後、レーザー顕微鏡により筋層内アウエルバッハ神経叢を可視化することができる。図16は、マウス大腸を漿膜側からクルクミンにより生体染色を行った後、筋層内アウエルバッハ神経叢をレーザー顕微鏡により可視化した例である。図16に基づけば、クルクミン染色により、神経細胞体を識別することができる。クルクミンは、神経細胞体において、細胞質のみを染色し、核は染色しないため、細胞質は陽性画像として、また核は陰性画像として視認され、神経細胞体の形態を正確に判定することができる。なお、がん細胞は、(1)上皮と腺の層(図5aを参照)で発生した後、それ以外の層に拡大し、移動するが(これをがん細胞の浸潤という。)、その場合、血管や末梢神経に沿って移動する傾向があることが知られている。このため、クルクミンの生体染色により筋層内アウエルバッハ神経叢を可視化できるということは、がんの浸潤経路を可視化できるということを示し、がんの浸潤範囲を判断する上で有用である。また、早期がんおよび進行がんの判定が可能となる。
【0063】
本発明の一実施態様において、クルクミンによる生体染色後、レーザー顕微鏡により筋層内自律神経叢(マイスナー神経叢)を可視化することができる。図17は、マウス大腸を漿膜側からクルクミンにより生体染色を行った後、マイスナー神経叢をレーザー顕微鏡により可視化した例である。図17に基づけば、クルクミン染色により、神経細胞体を識別することができる。マイスナー神経叢は粘膜下層に存在し、1個~数個の神経細胞が集団を形成する。クルクミンは、神経細胞体において、細胞質のみを染色し、核は染色しないため、細胞質は陽性画像として、また核は陰性画像として視認され、神経細胞体の形態を正確に判定することができる。
【0064】
図18を参照して説明する。がんは、一般的に、粘膜上皮細胞から生じるので、原発巣は必然的に粘膜上皮内部にとどまっている。がん組織が発育すると、粘膜上皮内部から深部に向かってがん細胞が浸潤する。がん細胞が、粘膜筋板およびマイスナー神経叢にまだ浸潤または到達していない場合、がんは、早期がんと判定される。一方、がん細胞がマイスナー神経叢および平滑筋層に浸潤または到達している場合、がんは進行がんと判定される。
【0065】
図39で纏めると、がん細胞が、粘膜筋板およびマイスナー神経叢にまだ浸潤または到達していない場合、がんは、早期がんと判定される。一方、がん細胞がマイスナー神経叢および平滑筋層に浸潤または到達している場合、がんは進行がんと判定される。また、がん細胞がアウエルバッハ神経叢に浸潤または到達している場合、該進行がんの浸潤範囲が確認される。このようにクルクミン生体染色と多光子レーザー顕微鏡によるアウエルバッハ神経叢からマイスナー神経叢、腸腺底部までの連続断層画像(代表3焦点面)を得ることにより、がんの進行状態および程度を確認することができ、がん患者の治療方法または手術方法を提案するができる。
【0066】
本発明に基づいて、様々な生体組織を可視化することができる。図19は、マウスにクルクミンを腹腔内投与することにより生体染色を行った後、膵臓の外分泌細胞およびランゲルハンス島をレーザー顕微鏡により可視化した図である。図19は、さらに、膵臓組織のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色像を示す。その結果、細胞の大きさおよび配列により、外分泌細胞およびランゲルハンス島(破線内)の内分泌細胞を区別することができる。内分泌細胞は小型で、数十個がクス玉状に集合し、その内部は毛細血管に富むことが分かる。外分泌細胞は、内分泌細胞より大型で、細胞内に多数の分泌顆粒を持ち、数個ずつが房状に集合している。無菌化クルクミン溶液の腹腔投与により、膵臓のランゲルハンス島が可視化できることから、内分泌領域において、糖尿病やインスリノーマの診断に用いることができる。
【0067】
図20~22は、マウス舌粘膜上にクルクミンを塗布することにより生体染色を行った後、味覚の感覚装置である味蕾をレーザー顕微鏡により可視化した図である。図20および21は、さらに、味蕾のヘマトキシリン・エオジン染色像を示す。感覚神経細胞の核はクルクミンで染色されないため、黒い陰性画像として認識される。クルクミンを口腔粘膜上に塗布することにより、味の感覚装置である味蕾の神経細胞を可視化することができることから、耳鼻科領域において、味覚障害の検査が可能になる。
【0068】
図23および24は、マウスにクルクミンを腹腔内投与することにより生体染色を行った後、網膜神経細胞群をレーザー顕微鏡により可視化した図である。これらの図には、網膜組織のヘマトキシリン・エオジン染色像が含まれる。図より、網膜神経細胞群およびシナプスを可視化できることが示された。クルクミンを、経口投与または硝子体内注射することによっても、膜神経細胞群およびシナプスの可視化が可能である。眼科領域において、例えば糖尿病性網膜症、黄斑変性、網膜変性、増殖性硝子体網膜症、緑内障および浮腫網膜芽細胞腫のステージ判断が可能になる。
【0069】
さらに、クルクミンにより、嗅神経線維(図25)および匂いの感覚細胞である嗅覚受容神経細胞(図26)の染色が可能であり、レーザー顕微鏡により可視化することができる。図26には、ヘマトキシリン・エオジン染色像が含まれる。クルクミンにより、嗅覚受容神経細胞の細胞質および匂い受容体を持つ繊毛が陽性に染色され、核は無染色であるため黒い陰性画像として視認される。クルクミンを鼻腔粘膜上に塗布することにより、匂いの感覚細胞である嗅覚受容神経細胞を可視化することができるため、嗅覚障害の検査が可能になる。
【0070】
本発明の一実施態様において、クルクミンによる生体染色後、レーザー顕微鏡により甲状腺を可視化することができる(図27)。甲状腺のクルクミン生体染色により、小胞の構造が染色される。甲状腺は種々の大きさの球形の小胞(follicles)によって形成されている。これらの小胞は、単層の扁平または立方上皮で縁取られ、ヘマトキシリン・エオジン染色により、内腔がエオジンにより均等に染まるコロイドで満たされている。小胞の周囲は密な毛細血管の網で取り囲まれていることが分かる。
【0071】
本発明の一実施態様において、クルクミンを筋膜上に塗布することにより生体染色を行った後、レーザー顕微鏡により、骨格筋のアクチン・ミオシン横紋、核および筋線維を可視化することができる(図28)。無菌化クルクミン溶液を筋膜上に塗布することにより、骨格筋の筋線維およびアクチン分子を可視化することができるため、筋力低下・フレイル症候群の形態学的な光バイオプシ診断に応用することができる可能性が示される。
【0072】
本発明の一実施態様において、クルクミンをリンパ節上に塗布することにより生体染色を行った後、レーザー顕微鏡により、リンパ節の二次小節の明中心と暗殻の構造を可視化することができる(図29)。明中心においては、大型の明るい核を持つ細胞が多数見られる。これらの細胞は、細網細胞および細胞分裂中の大型のリンパ球である。暗殻は、明中心で増殖した小リンパ球が明中心の周囲に集積した構造を持つ。無菌化クルクミン溶液の表面塗布により、リンパ節内部の細胞構造が可視化することができるため、泌尿器科領域および消化管外科領域において、腹腔鏡ロボット手術時に、がんのリンパ節転移の有無の判別が可能になる。
【0073】
本発明の一実施態様において、クルクミンを腹腔内投与した後、レーザー顕微鏡により、海馬CA3野において錐体細胞の細胞体を可視化することができる(図30)。大脳皮質においては、血管および錐体細胞の細胞体を可視化することができる(図31)。小脳においては、血管およびプルキン細胞の細胞体を可視化することができる(図32)。本発明を用いることにより、脳組織の変性を伴うアルツハイマー病、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脊髄小脳変性症などの検査が可能になる。
【0074】
本発明の一実施態様において、スルフォローダミン101を腹腔内投与した後、多光子レーザー顕微鏡により、網膜血管を可視化することができる(図33)。網膜の太い血管に加えて、個々の毛細血管が、in vivo で明瞭に可視化され(図33A)、さらに、網膜の毛細血管は、ループ状に吻合していることが示される(図33B)。したがって、網膜に発生した病変を、迅速かつ確実に把握することができる。また、網膜の毛細血管を可視化することにより、毛細血管の内腔を通過中の赤血球を黒い陰影として可視化することも可能である(図33C)。レーザー顕微鏡による可視化像は、リアルタイムで撮影できるため、撮影時間をずらして複数の顕微鏡撮影像を得ることにより、毛細血管内における赤血球の移動速度を計測することができる(図34)。さらに、一定時間内に毛細血管内を移動する赤血球の個数をも計測することができる(図33C)。正常マウスでは、毛細血管内のスルフォローダミン101の蛍光染色濃度はほぼ均一で、毛細血管の外には染色剤に由来する蛍光画像が認められないことから、染色剤の毛細血管外への漏出は認められない(図35A)。一方、糖尿病モデルマウスの網膜血管においては、スルフォローダミン101投与後のレーザー顕微鏡観察により、毛細血管の末梢側の管径は縮小しており、さらに、毛細血管周囲にモヤがかかったような蛍光画像が観察されることから、染色剤の血管外漏出が認められる(図35B)。糖尿病モデルマウスで見られるクルクミンの血管外漏出は、網膜の毛細血管におけるBlood-BrainBarrier(血液脳関門)の破綻を示す。すなわち、本発明により、網膜血管を可視化することにより、糖尿病性の早期変化を同定することができる。このように、本発明は、黄斑変性、網膜変性、糖尿病性網膜症、網膜芽細胞腫、増殖性硝子体網膜症、緑内障、網膜剥離および網膜浮腫などの眼疾患または眼症状の早期病変の判定において、重要な判定手段を提供することができる。
【0075】
図36AおよびBに基づけば、本発明により、レーザー顕微鏡下で網膜血管を可視化しながら、血管を一本単位でレーザー凝固することができる。すなわち、レーザー顕微鏡下で、低出力のレーザーで血管像を可視化することにより標的血管を選択し、標的部位を確認しながら、レーザー出力を上げて、リアルタイムで標的血管を凝固することができる。したがって、本発明は、網膜治療に対して極めて有用である。
【0076】
本発明の一実施態様において、クルクミンによる生体染色によって、網膜の神経細胞層を可視化することができる(図37)。図37に基づけば、網膜の層構造において、視神経節細胞層、内網状層、双極細胞層、外網状層および外顆粒層を識別することができることが分かる。血管染色色素(スルフォローダミン101)および神経細胞染色色素(STK833131)による二重重染色により、網膜における血管走行および視神経の束を同時に可視化することができることが分かる(図38A)。また、クルクミン生体染色では、視神経並びに小型および大型視神経節細胞の核を陰性シグナルとして、またそれらの細胞質を陽性シグナルとして可視化し、これらを明瞭に識別することができることが示される。したがって、本発明は、網膜疾患の判定において極めて有用である。
【0077】
本発明により、すべての臓器において、組織における細胞の形態、相対的な位置および配列、ならびに組織内の細胞数が、正常組織との比較において、変化または変動する疾患を、判定または診断をすることができる。該疾患には、がん、糖尿病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、網膜変性、味覚障害、嗅覚障害、アルツハイマー病、脳梗塞など、上記に例示される疾患が含まれるが、それらに限定されない。一方、細胞の機能のみが変化または変動する疾患、例えば統合失調症は、本発明によって判定または診断をすることができない。
【0078】
本発明の方法は、がんの存在が疑われる臓器の漿膜側から組織染色およびレーザー照射を行うことにより、手術前または手術中における患部切除前に、がん組織を視覚化できることが特徴である。実際の外科手術では、がん細胞の存在位置または浸潤範囲を視覚化した上で、臓器の切除部位、すなわちがん組織辺縁をマーキングすることが術者に対する大きな支援となる。このためには、がん細胞の存在位置または浸潤範囲を漿膜上に着色することが好ましい。かかる着色には、周知の手術用生体マーキングとして、手術用糸やテープを用いてもよく、マーキング色素を使用することもできる。手術用生体マーキング色素としては、例えば、スルホブロモフタレインナトリウム、インドシアニングリーン、フルオロレセインナトリウム、メチレンブルー、インジゴカルミン、トルイジンブルー、ピオクタニンブルーなどが挙げられる。これらのマーキング色素は、増粘剤として、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアゴムなどと混合することにより、組織付着性を高めることができる。
【0079】
レーザー照射における先端プローブとしては、直径20 mm程度の通常の対物レンズに加えて、直径5 mm程度のスティック型対物レンズおよび直径0.3~2 mm程度のニードル型対物レンズを使用することができる。
【0080】
がん治療のための外科手術時において、がん細胞が検出されたことを術者に通知することは、術者に対してがん治療を成功に導く支援方法として有用である。かかる通知は、術者に対して音または光により行うことが可能である。特に、レーザー顕微鏡により撮像された画像を、予めデータベースに蓄えられたがん組織画像と照合することにより、がん組織の存在を通知するシステムは、がん組織の取り残しを防止する手段として好ましい。
【0081】
上記の試験における試験条件、すなわち、細胞染色液の調製、使用動物、大腸がんモデルマウス作製法およびレーザー照射の条件は、下記のとおりである。
〔細胞染色液の調製〕
クルクミン(東京化成、カタログ番号C2302、純度97.0%)100 mgをエタノール5 mLに懸濁し、さらにエタノールで10倍希釈した。これを同量のグリセリンと混合し、さらにグリセリンで10倍希釈した。この混合液を同量の精製水と混合し、クルクミン染色液とした。赤色106号については、その粉末を生理的食塩水で1mg/mLに溶解した溶液を、染色液とした。
〔動物〕
試験には、日本エスエルシー株式会社から購入したC57BL/6Nマウスを用いた。性別は雄、8週齢、体重20~25グラムのマウスを用いてすべての試験を行った。
〔大腸がんモデルマウスの作製〕
大腸がんモデルマウスは、C57BL/6Nマウスに、生理食塩水で溶解したアゾキシメタン(azoxymethane, AOM)10 mg/kgを週1回間隔で4回腹腔投与して作製した。
〔糖尿病モデルマウスの作製〕
糖尿病モデルマウスは、C57BL/6Nマウスに、生理食塩水で溶解したストレプトゾトシン60 mg/kg を腹腔内投与し、1週間後に血糖を測定し、300 mg/dl 以上になったものを糖尿病モデルマウスとして用いた。
〔レーザー照射の条件〕
多光子レーザー顕微鏡はオリンパス社製FVMPE-RSを用い、照射波長は800 nmとした。レーザー照射は、フルパワー出力の5.8~48.2%の出力で行った。共焦点レーザー顕微鏡はオリンパス社製FV1000を用い、照射波長は488nmおよび594nmとした。488nmのレーザー照射は、フルパワー出力の15~29.4%の出力で、また594nmのレーザー照射は、フルパワー出力の13~13.5%の出力で行った。照射の方向および漿膜側または内腔側からの染色については、図中に記載した。
【0082】
本発明の一実施態様において、がん検査装置201は、図14に示すように、レーザー発振器213と、ビーム径調節器215と、二次元走査器217と、ダイクロイックミラー219と、対物レンズ221と、集光深さ調節器223と、光検出器225と、蛍光画像生成部227と、モニター229と、制御部231とを備える。
【0083】
レーザー発振器213としては、パルス幅が数十~数百フェムト秒、パルスの繰り返し周波数が数十~数百MHzの範囲でパルスレーザー光の出力を調節できるものが用いられる。
【0084】
ビーム径調節器215は、制御部231からのビーム径調節信号に応じて、パルスレーザー光のビーム径を変化させるビームエクスパンダである。
【0085】
二次元走査器217は、例えば、2枚のガルバノミラーにより構成され、パルスレーザー光の集光位置を光軸に対して垂直な2軸方向に変化させる。
【0086】
ダイクロイックミラー219は、パルスレーザー光の照射により生体細胞のがん関連遺伝子産物において発生する蛍光を分離する。
【0087】
対物レンズ221は、レーザー発振器213から出射されたパルスレーザー光を生体細胞に集光させる一方、多光子吸収現象によりがん関連遺伝子産物において発生した蛍光を集光する。なお、対物レンズ221は、制御信号に基づいて集光深さ調節器223によって光軸方向へ移動可能となっており、集光位置を調節することができる。
【0088】
光検出器225は、がん関連遺伝子産物において発生した蛍光を検出し、蛍光強度に応じた電気信号に変換する。
【0089】
二次元走査器217の走査状態および集光深さ調節器223の調節位置(深さ方向の位置)は、集光位置の座標を表すパラメータとなり、蛍光画像生成部227は、これら座標を表すパラメータと光検出器225から送られた電気信号(すなわち蛍光強度)とを対応付けて記憶し、これらのデータを処理して、蛍光画像を生成する。生成された蛍光画像は、モニター229上に表示される。
【0090】
制御部231は、動作制御部233と、検査用パルス強度設定部235と、照射範囲設定部239と、照射時間設定部241とを含む。動作制御部233は、レーザー発振器213、ビーム径調節器215、二次元走査器217、集光深さ調節器223の動作を制御する。
【0091】
検査用パルス強度設定部235は、検査を行うために、がん関連遺伝子発現パターンの蛍光画像を取得するのに適した強度のパルスレーザー光強度を設定する。
【0092】
照射範囲設定部239は、生体細胞にパルスレーザー光を照射する範囲の設定を行う。そして、動作制御部233が、二次元走査器217や集光深さ調節器223の動作を制御することによって、設定された照射範囲および深さにパルスレーザー光を照射し、集光させる。照射時間設定部241は、生体細胞にパルスレーザー光を照射する時間の設定を行う。そして、動作制御部233がレーザー発振器213の出力を制御することによって、設定された時間だけ、パルスレーザー光を照射させる。
【0093】
一実施態様において、制御部231は、記憶部51および判定部52を有している。すなわち、がん検査装置201は、撮像で得られた画像の生体細胞群の染色状態に基づき、生体細胞群のがん化の悪性度レベルや予後をリアルタイムで判定する。
【0094】
このがん検査装置201では、生体細胞群のがん関連遺伝子発現パターンの染色状態に基づき、がん化の悪性度レベルを判定するので、生体細胞群のがん化を早い段階で把握することができる。また、がん化の悪性度レベルをがん関連遺伝子の発現状態で把握できるので、がん患者の予後を知ることができる。
【0095】
なお、このがん検査装置201は、治療用パルス強度設定部237を備え、治療を行うために生体細胞を破壊するに十分な強度のパルスレーザー光強度を設定することができる。これにより、発見したがん細胞集団に対して、早期にがん治療を行うことができる。
【0096】
その他、がん検査装置201は、様々な形態で使用することができる。
【0097】
例えば、図15に示されるように、レーザー光照射ヘッド243内に、ビーム径調節器215、二次元走査器217、ダイクロイックミラー219と対物レンズ221とその間の光路から構成される光学系、集光深さ調節器223とを設けるとともに、患者を載せるための患者固定台245と移動装置247とをさらに設け、がん検査を行うことができる。
【0098】
また、例えば、患者から生体細胞群の一部を削り取り、削り取った生体細胞群をトレー(試料台)に入れた状態で、がん検査装置201を用いて撮像を行い、がん化の悪性度レベルを判定してもよい。この場合、生体細胞群への染色剤45の塗布は、生体細胞群を削り取る前に行ってもよいし、生体細胞群を削り取った後、撮像する前に行ってもよい。さらに外科手術時にリアルタイムで正確にがん患部を切り取るため、または正確に切り取ったことを示す、切除後のがん検査装置としても活用することができる。外科手術用に用いる場合には、外科手術を行う部位を特定するために、予め通常の内視鏡、CT、X線撮像などでcm単位での正確な位置が把握されている。外科手術時に本発明のがん検査装置を併用することで、正確にがん組織と正常組織との境界線を把握することができ、がんの根治的切除を可能としながら組織の摘出範囲を最小限にすることができるため、がん摘出手術を受ける患者負担は大幅に軽減される。
【0099】
具体的には、図8図13の模式図および撮像画を用いて説明されるように、予めクルクミン等により染色し、モニター229で確認することができるが、さらに警報部よりブザーなどの音、フラッシュおよびカラーライトなどの光で通知することもできる。この場合の効果は、進行がんの中心部より、正常細胞と早期がん部分の境界を、画像により明確に確定できることである。蛍光強度、蛍光色、細胞(核や陰窩等)の形状から早期がん細胞であるか、正常細胞であるか、神経細胞であるか、血管であるか、またはノイズであるかを、瞬時に判断できるため、前述したように、がん組織辺縁をマーキングすることによって、術者に対して大きな支援を与えることができる。この場合に、手術用生体マーキングとして、手術用糸またはテープを用いてもよいし、マーキング色素を使用してもよいが、図14の221の対物レンズと連動したマーキング色素用ノズルを設けることは特に有用である。また、レーザー照射強度を上げて、がん組織周縁輪郭を部分的に焦がす、または破線状に蒸散させることも有効である。
【0100】
周縁部を決定するに際しては、がん検査装置201の対物レンズを含む可動部を、X-Y方向にがん中心部周縁部を含む距離を移動させ、最も蛍光密度の低くなる点をマーキングする。その後、可動部の角度を例えば5度程度回転させて同様な移動掃引を繰り返し行うことにより、進行がん含む切除されるべき最外周の周縁部をマーキングすることができる。
【0101】
上記した様に、本発明は、外科医が術中に即座に病理診断するために必要な、組織および細胞の識別方法を提供することにより、がんの根治的切除を可能としながら組織の摘出範囲を最小限にすることができる。その結果、がん摘出手術を受ける患者負担が大幅に軽減される。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】
【0102】
平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「橋渡し研究戦略的推進プログラム」「生体組織病変のリアルタイム光バイオプシを可能とする、生体染色と共焦点レーザー顕微内視鏡を用いた迅速画像病理診断技術の開発」委託研究開発、産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「老化メカニズムの解明・制御プロジェクト」「電子顕微鏡による微細構造解析支援」委託研究開発、産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願
図1
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