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特許7553116流れ場プレートおよびそのようなプレートを備えた圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】流れ場プレートおよびそのようなプレートを備えた圧縮機
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/02 20060101AFI20240910BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20240910BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20240910BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240910BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240910BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C25B13/02 302
C01B3/00 Z
C25B1/02
C25B9/00 Z
C25B9/23
C25B15/08 302
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021538195
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 NL2019050772
(87)【国際公開番号】W WO2020145815
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】2022354
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】521220699
【氏名又は名称】エイチワイイーティー ホールディング ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】HYET HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】Westervoortsedijk 71 K,6827 AV ARNHEM,the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】コニン,ヨンネ
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179780(JP,A)
【文献】特開2007-149358(JP,A)
【文献】特表2008-513336(JP,A)
【文献】特表2008-518387(JP,A)
【文献】特表2008-518396(JP,A)
【文献】特表2008-525987(JP,A)
【文献】特表2017-525094(JP,A)
【文献】特開2018-059181(JP,A)
【文献】特開2018-062707(JP,A)
【文献】特開2018-104770(JP,A)
【文献】特表2018-529184(JP,A)
【文献】国際公開第2015/020065(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/029353(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/210683(WO,A1)
【文献】米国特許第04769297(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350024(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101306302(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00
C25B 1/00 - 15/08
H01M 8/0247
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な本体を備える固体圧縮機セル用の流れ場プレートであって、
前記平坦な本体は、
■2つの反対側に位置する表面およびその周囲に位置する周囲縁部を有し、
■前記周囲縁部の複数の位置から前記表面の複数の位置まで延伸するガス分配用の流路構造を有し、
前記平坦な本体は、前記2つの反対側に位置する表面に前記流路構造を形成する凹部状のレーンを備えており、前記2つの反対側に位置する表面の各々において、前記凹部状のレーンは、第1の平行に延びる複数の凹部状のレーンのセットと、この第1のセットのレーンを横切って形成された第2の平行に延びる複数の凹部状のレーンのセットを有し、
前記固体圧縮機は流体を、1000バールを越える圧力まで圧縮可能であり、
前記流れ場プレートは少なくとも部分的に弾性を有することを特徴とする流れ場プレート。
【請求項2】
前記平坦な本体は、前記両面の一方の面から他方の面まで延びる貫通孔を備えていることを特徴とする請求項1に記載の流れ場プレート。
【請求項3】
前記平坦な本体は、前記両面の一方の面から他方の面までの直線の長さとして定義される最大厚さを有し、前記平坦な本体の50%未満が前記最大厚さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の流れ場プレート。
【請求項4】
複数の部品から形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の流れ場プレート。
【請求項5】
前記貫通孔は1~200ミクロンの直径を有することを特徴とする請求項2に記載の流れ場プレート。
【請求項6】
平面方向に10~240ミクロンの直径を有する穴を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の流れ場プレート。
【請求項7】
2つのセルプレートと、請求項1~6のいずれかに記載の少なくとも2つの流れ場プレートと、プロトン交換膜とを備える固体圧縮機セルであって、
前記2つのセルプレートは流路構造を取り囲んでおり、前記流路構造は前記2つのセルプレートのそれぞれの一方の面に設けられた多数の凹部によって形成され、冷却材の輸送のために使用されてそれぞれの一端で流体供給部に接続し、それぞれの他端で流体排出部に接続しており、前記多数の凹部は前記2つのセルプレートの互いに反対側を向く外側面に設けられており、
前記少なくとも2つの流れ場プレートは、前記2つのセルプレートの前記外側面に設けられた前記凹部上に配置され、前記プロトン交換膜に作動流体を供給し、前記プロトン交換膜から作動流体を迂回させる流路構造を形成するようにそれぞれ構成されていることを特徴とする固体圧縮機セル。
【請求項8】
前記流れ場プレートは、前記セルプレートと拡散接合させていることを特徴とする請求項7に記載の固体圧縮機セル。
【請求項9】
前記流れ場プレート、前記セルプレートおよび前記プロトン交換膜は、液密状態でシールされていることを特徴とする請求項7または8に記載の固体圧縮機セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体圧縮機セル用の流れ場プレートに関する。本発明はさらに、そのようなプレートを備えて作動流体を電気化学的に圧縮するための固体圧縮機および圧縮機セルに関する。加えて、本発明はそのようなプレートアセンブリを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の機械式圧縮機は、流体を圧縮するためにピストンやロータなどの機械的手段を用いるが、固体圧縮機はイオン輸送機構を利用する膜を介して前記流体を電気化学的に輸送することに基づいている。電気化学的方法で作動流体を圧縮するために、固体圧縮機は、典型的には1または複数の積層された膜電極アセンブリ(MEAとも呼ばれる)で構成される圧縮機セルを備える。MEAの電極は、電極間の電位差を維持するために電源に接続される。この電位差は、膜をまたがって存在する圧力勾配に逆らって、イオン化された作動流体をプロトン交換膜(通称PEM)を通過して電気化学的に移動させるために必要である。電流の方向はここではイオン輸送の方向を決定し、低圧作動流体は正に帯電した陽極でイオン化され、分離された電子とMEAの高圧の陰極側で再結合する。
【0003】
一般的な固体圧縮機は電気化学的水素圧縮機であり、水素が膜電極アセンブリに供給されてプロトンと電子に酸化される。プロトンはその後、膜を通過し、電子は外部回路を介して転送されて、その後、プロトンと電子は水素分子に還元される。この過程で、水素は低圧領域から高圧領域へ圧力勾配に逆らって移動し、その結果、膜を通過する際に圧力が上昇する。水やアンモニアなどの他の作動流体の圧縮も可能である。
【0004】
固体圧縮機は、機械式圧縮機に対して幾つかの著しい利点を有する。すなわち、固体圧縮機は、可動部品がないので一般的にコンパクトな設計であり、膜は典型的にはイオン化された作動流体の輸送のみが可能であるので、作動流体を浄化することができる。
【0005】
さらに固体圧縮機は、機械式圧縮機を超える作動効率で1000バール以上の非常に大きな圧力まで流体を圧縮することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作動流体を圧縮する過程では、圧縮機の単位体積当たりで最大の利得を得ることが望まれる。そのためには、各々のMEAに高い効率が必要とされる。その効率を決定する要因の一つは、MEA内のガスの分布である。この分布は流れ場プレートによって重要な量が決定される。分布が良いほど効率は高くなる。しかしながら技術水準の流れ場プレートでは、最適なガス分配が得られないことが明らかになっている。従って本発明の目的は、改良された流れ場プレート、およびそのような改良された流れ場プレートを備える圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ここに固体圧縮機セル用の流れ場プレートを提案する。流れ場プレートは実質的に平坦な本体を備える。実質的に平坦な本体は2つの対向面および縁部を有し、ガス分配用の流路プランを有している。流路プランは流れ場プレートの境界の複数の位置から実質的に平坦な本体の表面の複数の位置まで延伸している。さらに実質的に平坦な本体は、両面に凹部を備えており、各々の面において凹部は第2の平行なレーンのセットを横切る第1の平行なレーンのセットを有する。
【0008】
そのような流路方式を有する流れ場プレートは、膜表面に向かうガス流および膜表面からのガス流の分布が増加しており、これにより、より大きな流量と膜表面の良好な使用につながっている。この構造により、流路方式はガスが受ける機械的抵抗をさらに減少させ、圧縮機の性能をさらに改善する。
【0009】
本発明による流れ場プレートの更なる実施形態では、平坦な本体は、両面の一方の面から他方の面に延びる貫通孔を備える。これにより、流れと分布がさらに改善されて、ガスが受ける機械的抵抗がさらに減少する。特に、平面の全方向とそれらに垂直な方向の双方の流れがこれにより許容される。
【0010】
また、更なる実施形態では、実質的に平坦な本体は、両面の一方の面から他方の面までの直線の長さとして定義される最大厚さを用いれば、実質的に平坦な本体の50%未満がこの最大厚さを有する。厚さが最大厚さよりも小さい場所では表面にガス流のためのスペースが設けられる。
【0011】
本発明による流れ場プレートは、複数の部品から形成されてもよい。これにより、凹部、チャネルおよび開口部を極端に小さいサイズで形成することを可能にする。これは、エッチング、あるいは3Dプリンティングのような技術水準では実現できない形状を形成することを可能にする。特に凹部以外の実質的に平坦な本体の2つの部分は別々の部品であってもよい。
【0012】
本発明は、また固体圧縮機セルにも関する。固体圧縮機セルは、2つのセルプレートと、前述の少なくとも2つの流れ場プレートを備える。
2つのセルプレートは流路構造を取り囲んでおり、流路構造は2つのセルプレートのそれぞれの一方の面に設けられた多数の凹部によって形成され、冷却材の輸送のために使用されてそれぞれの一端で流体供給部に接続し、それぞれの他端で流体排出部に接続している。多数の凹部は2つのセルプレートの互いに反対側を向く外側面に設けられている。
少なくとも2つの流れ場プレートは、2つのセルプレートの外側面に設けられた凹部上に配置され、プロトン交換膜に作動流体を供給し、プロトン交換膜から作動流体を迂回させる、更なる流路構造を形成するようにそれぞれ構成されている。
【0013】
これらの流れ場プレートは、プロトン交換膜と一緒にセルプレートの間にクランプされてもよく、セルプレートと拡散接合されてもよい。いずれの場合でもセルプレートとプロトン交換膜とが液密状態でシールされているのが好ましい。
【0014】
また、流路構造は、作動流体をプロトン交換膜に供給したり、またはプロトン交換膜から作動流体を迂回させたりするように構成することも可能である。流路構造は、典型的な場合では、両側の触媒層と任意に設けられるガス拡散層との間のプロトン交換膜から構成される膜アセンブリに直接的に接続してもよい。代替的に、流路構造は、更なるセルプレートまたは流れ場プレートに設けられた更なる流路構造に接続してもよく、あるいは、2つのセルプレートのうちの1つと前記さらなるセルプレートまたは流れ場プレートとの間で囲まれてもよい。平面方向では、穴の大きさは、好ましくは10~240ミクロンの間であり、垂直方向では、それは1~200ミクロンの間であってもよい。
【0015】
このように形成された流れ場プレートは、圧縮機内の力に耐える十分に強い機械的強度であると思われる。好ましくは、流れ場プレートは、セルプレートの膜の厚さの不規則性を補償するために、少なくとも局所的に弾性変形可能に作られている。