(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】隠蔽型シリンダー錠
(51)【国際特許分類】
E05B 17/18 20060101AFI20240910BHJP
E05B 17/16 20060101ALI20240910BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
E05B17/18 H
E05B17/16
E05B49/00 J
(21)【出願番号】P 2022016594
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000130433
【氏名又は名称】株式会社ゴール
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100221718
【氏名又は名称】藤原 誠悟
(74)【代理人】
【識別番号】100224915
【氏名又は名称】西村 茉友
(72)【発明者】
【氏名】武居 竜夫
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-196272(JP,A)
【文献】実開平5-64370(JP,U)
【文献】特開2020-56200(JP,A)
【文献】実開昭62-144365(JP,U)
【文献】特開平9-78904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のアンテナと、
前記アンテナが無線通信を介して読み取った識別データにより解錠操作が可能な制御装置と、
前記アンテナを備えると共に、前記アンテナが形成する環の内側から後方に延出してなる延出部を有するシリンダー部と、
前記シリンダー部の前面に設けられた鍵穴と、
前記シリンダー部が取り付けられる扉の前面から突設されてなる盤状部を、前記アンテナ及び前記鍵穴と共に覆うカバーと、を備え
、
前記カバーの内側に発光部が設けられ、前記カバーの前記発光部に対応するカバー部分が透光性である
ことを特徴とする隠蔽型シリンダー錠。
【請求項2】
環状のアンテナと、
前記アンテナが無線通信を介して読み取った識別データにより解錠操作が可能な制御装置と、
前記アンテナを備えると共に、前記アンテナが形成する環の内側から後方に延出してなる延出部を有するシリンダー部と、
前記シリンダー部の前面に設けられた鍵穴と、
前記鍵穴の周辺部を露出させる開口を有し、前記シリンダー部が取り付けられる扉の前面から突設されてなる盤状部を、前記アンテナと共に覆うカバーと、
前記鍵穴に抜き挿し可能に挿し入れられたダミーキーと、を備え、
前記ダミーキーの末端部が前記カバーの一部として前記カバーの開口を塞いでなる
ことを特徴とする隠蔽型シリンダー錠。
【請求項3】
前記カバーが円筒形である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の隠蔽型シリンダー錠。
【請求項4】
さらに発光部を備える
ことを特徴とする
請求項2に記載の隠蔽型シリンダー錠。
【請求項5】
前記発光部が前記カバーの内側に設けられ、前記カバーの前記発光部に対応するカバー部分が透光性である
ことを特徴とする請求項4に記載の隠蔽型シリンダー錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉の施錠及び解錠に用いられる隠蔽型シリンダー錠に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、扉の施錠および解錠に用いられるシリンダー錠であって、電気的に制御するための電子錠を備えた錠の利用が増えている。
電子錠において、鍵の開閉は基本的に電気制御により行われるが、ICカードなどの電子鍵を紛失して扉が開けられなくなった場合等に対応するべく、併せて電子鍵ではない鍵でも開閉可能な鍵穴も備えていることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電子鍵ではない鍵のための鍵穴は電子鍵が紛失した場合にのみ積極的に使用され、普段は使用されない場合も多い。この場合、防犯上の観点から、電子鍵ではない鍵のための鍵穴は、露出していないことが望まれる。
【0004】
一方、鍵穴は、電子錠の電気制御が不測の事態により動作できなくなった際に、緊急に物理的手段で解錠するため使用する必要がある。そのため、鍵穴がどこに存在するか予想がつかないほど隠蔽されていては緊急時の迅速な対応に遅れが生じるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、前記課題を解決する本発明に係る隠蔽型シリンダー錠は、環状のアンテナと、前記アンテナが無線通信を介して読み取った識別データにより解錠操作が可能な制御装置と、前記アンテナを備えると共に、前記アンテナが形成する環の内側から後方に延出してなる延出部を有するシリンダー部と、前記シリンダー部の前面に設けられた鍵穴と、前記シリンダー部が取り付けられる扉の前面から突設されてなる盤状部を、前記アンテナ及び前記鍵穴と共に覆うカバーと、を備えることを特徴とすることを特徴する。
【0006】
また、本発明に係る隠蔽型シリンダー錠は、環状のアンテナと、前記アンテナが無線通信を介して読み取った識別データにより解錠操作が可能な制御装置と、前記アンテナを備えると共に、前記アンテナが形成する環の内側から後方に延出してなる延出部を有するシリンダー部と、前記シリンダー部の前面に設けられた鍵穴と、前記鍵穴の周辺部を露出させる開口を有し、前記シリンダー部が取り付けられる扉の前面から突設されてなる盤状部を、前記アンテナと共に覆うカバーと、前記鍵穴に抜き挿し可能に挿し入れられたダミーキーと、を備え、前記ダミーキーの末端部が前記カバーの一部として前記カバーの開口を塞いでなることを特徴とすることとしても好ましい。
【0007】
さらに、前記カバーが円筒形であることが好ましい。カバーが円筒形であり、シリンダー部を覆った状態が扉の外面に突設された円盤形状であれば、電子鍵を使用する通常時においても、使用者は隠蔽型シリンダー錠が鍵穴を備えるシリンダー部であることを自然と想定しつつ使用することができる。そのため、緊急時においては、使用者は前記カバーを取り外せば鍵穴を発見できること迅速に判断することができ、迅速に鍵穴を露出させ、物理的鍵を用いて解錠操作を行うことができる。
【0008】
さらに、前記隠蔽型シリンダー錠は、発光部を備えることとしても好ましい。また、前記発光部が前記カバーの内側に設けられ、前記カバーの前記発光部に対応するカバー部分が透光性であっても好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子鍵を解錠のためにかざす位置と、鍵穴位置との認識を一致させることができる。そのため、電子鍵を使用する通常時、及び鍵穴を使用する緊急時のいずれの場合であっても、解錠操作の対象の位置を迷うことなく認知することができる。
【0010】
また、シリンダー部をカバーが覆うことにより緊急時においてもカバー自体、若しくはカバーの一部を取り外せば迅速に鍵穴を露出させることができ、鍵穴の場所について迷うことなく解錠操作を行うことができる。
【0011】
さらに、シリンダー部を覆うカバーが円筒形であることによって、鍵穴が見えない通常時であっても、カバーに覆われている部分が鍵穴を備えるシリンダーであることを容易に想定させることができる。そのため、緊急時においても鍵穴を露出させるための操作対象の前記円筒形のカバーであることを操作者に対して容易に認知させることができ、迅速な操作を促すことができる。
【0012】
電子鍵ではない鍵のための鍵穴は、鍵穴の外側にある環状のアンテナを含めた全体がカバーで覆われているか、あるいは、環状のアンテナを覆うカバーとダミーキー末端部で一体となったカバーで覆われており、鍵穴は外側から全く見えない、隠蔽された状態となっている。鍵穴を使って扉を開くには、カバーを外すか、ダミーキーが押し込まれている場合はダミーキーを抜く必要があるため、鍵穴へのいたずら等を防止することができ、また、一見して鍵穴を視認できなくする構造であることにより防犯性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る隠蔽型シリンダー錠1が取り付けられた扉30を、室外側から見た図である。
【
図3】本発明に係る隠蔽型シリンダー錠1が取り付けられた扉30を、室内側から見た図である。
【
図4】本発明に係る隠蔽型シリンダー錠1のカバー10を取り外した状態を示す図である。
【
図6】ダミーキー3を有する本発明に係る隠蔽型シリンダー錠1の外観図である。
【
図7】ダミーキー3を抜く状態の本発明に係る隠蔽型シリンダー錠1の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態を、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明に係る隠蔽型シリンダー錠1が部屋の扉に付された場合の、部屋の外側から見た外観図であり、下に説明するカバー10が設けられた場合の例を示す。なお、下に説明する
図7の構造の場合であっても
図1のカバー10を、カバー10の開口10bにダミーキーの末端部15をカバー10の一部として合わせて有する構造に置き換えたものとして説明できる。なお、カバー10は、扉30の外表面から突設されてなる盤状部12aを覆う筒形に形成されてなる。具体的には
図5に示すように、カバー10は表面側を閉塞する閉塞板の周縁から裏面側に延出してなる周壁を有し、裏面側が解放されて凹状に形成されてなる筒形であることが好ましい。本実施の形態においては、カバー10は円筒形に形成される。カバー10が円筒形であることにより、シリンダー部12のうち、特に扉30から露出してシリンダーとして容易に認知される盤状部12aの形状に似た形状を維持することができる。そのため、緊急時において鍵穴を露出させて鍵で解錠しようとする使用者に対してもカバー10が取り付けられた状態でシリンダーがどの位置にあるかの予想をつきやすくすることができる。
図2は、
図1に示した扉30が取り付けられる枠体31の図である。
【0016】
本実施の形態に係る隠蔽型シリンダー錠1は、扉正面に対して部屋の外側方向に突出して取り付けられている。
デッドボルト21とラッチボルト22は、
図2に示した扉30の枠体31に設けられた凹部であるストライク24と対応した位置に取り付けられている。
施錠状態にある扉30は、ラッチボルト22の錠本体B内への後退が規制されているため、レバーハンドル23を回すことはできず、開扉できない。解錠状態にある扉30は、ラッチボルト22に対する規制が外れることにより、扉のレバーハンドル23を回すと、ラッチボルト22は錠本体B内に没入してストライク24から離脱することで、開扉することができる。
【0017】
図3は、本発明に係る隠蔽型シリンダー錠1が部屋の扉30に付された場合の、部屋の内側から見た外観図である。部屋の内側方向には、手動での施錠・解錠操作に用いられるサムターン25が取り付けられている。また、扉の室内側にもレバーハンドル26が取り付けられている。
【0018】
扉30内に設置された錠本体Bは、錠本体B内部に設けられた電動アクチュエータ、及び動力伝達機構、並びに制御装置が連携してラッチボルト22へ後退規制を解除することにより、錠本体Bを解錠することができる。
制御装置は、隠蔽型シリンダー錠1との間で環状のアンテナ14を介して無線通信を行う演算部、及び記憶部等からなる電子回路であることが好ましく、電動アクチュエータの駆動を制御する。
電動アクチュエータは、錠本体Bの施錠・解錠操作における電気的な駆動源として機能し、例えば電動モーターやソレノイドによって構成することができる。
動力伝達機構は、電動アクチュエータの動作に応じて、ラッチボルト22の規制を解除する。
【0019】
図1に示すように、部屋の外側からICカードなどからなる電子鍵Cを隠蔽型シリンダー錠1の正面から2点鎖線の矢印のようにアンテナ14に向かってかざすと、錠に設けられた制御装置が電子鍵Cを識別する識別データを判別し、その部屋の鍵であると認識すれば、ラッチボルト22の規制が外れてレバーハンドル23が動かせるようになる。ラッチボルト22の規制が外れている状態でレバーハンドル23を回すと、ラッチボルト22は扉30の側面内側方向に没入して扉を開くことができる。解錠操作されて扉が開かれた後、扉が閉じられたらラッチボルト22が規制状態に戻り、扉30は自動的に施錠される。制御装置は、アンテナ14と共に盤状部12a内に収納されてもよく、また、錠本体Bの内部に収納されてなるものであってもよい。
【0020】
なお入室後、サムターン25を手動で施錠方向に回転させると、デッドボルト21が扉30の側面に対して突出し、扉30の枠体31に設けられたストライク24と係合し、扉30にかんぬきがかかった状態となる。デッドボルト21による規制は電子鍵Cでは解錠されないため、扉30を二重に施錠することができる。
【0021】
図4は、本発明に係る隠蔽型シリンダー錠1のカバー10を取り外した状態を示す図である。
カバー10は、電子鍵Cによる解錠操作に支障のない材料で構成される。例えば電子鍵Cが近距離無線通信を用いて解錠操作を行う場合、カバーは近距離無線通信を遮断しない材料、例えば近距離無線通信に影響しない厚さのプラスチック樹脂で構成される。
【0022】
シリンダー部12は全体として柱形をしており、盤状部12a前面に鍵穴11を備える。また盤状部12aの後端から環状形成されたアンテナ14の内側中央より後方に向かって延出部12bが設けられてなる。
ダミーキーがない場合、カバー10は
図4に示すように、環状のアンテナ14を収めた盤状部12aと鍵穴11とを覆うものである。アンテナ14と鍵穴11を覆うカバー10が取り付けられているとき、扉の室外側から電子鍵Cでない鍵で扉を開く際には、カバー10を完全に外して鍵穴11を露出させる。
【0023】
発光部13は、例えば錠が電子鍵Cを認識して解錠操作を行う時に錠の電子鍵Cの認識に合わせて発光することが好ましい。また、発光部13は、例えば施錠状態か解錠状態かが区別できるように、施錠時と解錠時で異なる光を発することが好ましい。さらに、発光部13は、例えば電子鍵Cの読み取り失敗、解錠失敗、電池消耗などのエラー状態を示すために、解錠時とは異なる光を発することが好ましい。これにより、緊急時に取り外すべきカバー10を迅速に認識することができる。発光部13は、解錠操作または施錠操作を行った後は、一定時間(例えば数秒間~数十秒間)が経過したら電力の消耗を防ぐために消光することが好ましい。
本発明の隠蔽型シリンダー錠1が発光部13を備えるとき、発光部を覆うカバー部分10aは、透光性であることが好ましい。
【0024】
ダミーキー3が鍵穴11に挿し込まれてなる場合、
図6で示したように、ダミーキー3の末端部15はカバー10の開口10bの内縁に沿って嵌め込まれてカバー10の一部を構成しつつ開口10bを塞いでいる。本実施の形態によれば、末端部15は他のカバー10の部分と前面が一致しており突出していない。そのため鍵穴11の存在が一見して外から見えず、隠蔽型シリンダー錠1を通常時において使用する場合において防犯効果を高めることができる。また、末端部15がカバー10と一連となって一面を形成されていれば、ICカードなどの電子鍵Cを隠蔽型シリンダー錠1にかざす動作をする際にも、カードが引掛かる等の解錠操作の邪魔になることがない。
【0025】
ダミーキー3は、錠本体Bの施錠・解錠操作に使用する鍵とは異なり持手部分がないため、鍵穴に挿し込まれたダミーキー3を抜く際は、
図7に示すようにダミーキーの末端部15に磁石(図示しない)を当接させて磁力で鍵穴から引き出すことが好ましい。この場合、ダミーキーの末端部15は、磁力で引き出せるように、その全体または一部または内部を磁力によって引き付けられる金属で構成することが好ましい。ダミーキー3を抜くと、ダミーキーの末端部15で隠蔽されていた錠の鍵穴11が露出する。
ダミーキーの形状は鍵穴に入る程度に平らで細い形であり、鍵穴に抵抗なく入る程度に凹凸があってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 隠蔽型シリンダー錠
3 ダミーキー
10 カバー
11 鍵穴
12 シリンダー部
13 発光部
14 アンテナ
15 ダミーキー末端部
21 デッドボルト
22 ラッチボルト
23 レバーハンドル(室外側)
24 ストライク
25 サムターン
26 レバーハンドル(室内側)
30 扉