(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】温度調整方法及び圧力オーブン
(51)【国際特許分類】
F27D 7/06 20060101AFI20240910BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20240910BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20240910BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20240910BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F27D7/06 C
F27D9/00
F27D7/02 Z
F27D19/00 D
F27B17/00 B
(21)【出願番号】P 2022206959
(22)【出願日】2022-12-23
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】202111596738.5
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522500044
【氏名又は名称】南京屹立芯創半導体科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Elead Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 2580, Hueying Building, No. 99, Tuanjie Road, Yanchuangyuan, Nanjing District, China (Jiangsu) Pilot Free Trade Zone, Nanjing City, Jiangsu Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 景南
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-508671(JP,A)
【文献】特開平08-000977(JP,A)
【文献】特開昭62-250103(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103885475(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと、前記キャビティ内に設けられた冷却器と、前記キャビティに連通される吸気ユニットと、を備える圧力オーブンを提供するステップと、
前記キャビティ内の空気圧が標準大気圧より大きくなるように前記キャビティをガス充填するために前記吸気ユニットを稼働させ、前記キャビティ内のガス分子の数を標準大気圧状態での前記キャビティのガス分子の数より多くするステップと、
前記キャビティ内の前記ガス分子の数が標準大気圧状態での前記キャビティのガス分子の数より多い場合、前記キャビティ内の前記冷却器を稼働して、前記キャビティ内の温度を低下させるために前記キャビティに対して
前記キャビティ内のガスの循環に依存して降温工程を実行するステップと、を含
み、
前記キャビティ内の前記ガス分子の数を標準大気圧状態での前記キャビティのガス分子の数より多くするステップにおいて、前記キャビティ内のガス分子の数は第1ガス分子の数であり、前記降温工程において、前記キャビティ内のガス分子の数が前記第1ガス分子の数のままであり、
前記降温工程が終了した後、前記キャビティ内の空気圧は標準大気圧よりも大きいか又は等しい
ことを特徴とする温度調整方法。
【請求項2】
前記圧力オーブンが前記キャビティ内に配置された第1加熱器をさらに備える場合、前記キャビティ内のガス分子の数を標準大気圧状態での前記キャビティのガス分子の数より多くするステップの後、かつ、前記降温工程の前に、前記キャビティ内の温度が第1温度から第2温度に上昇し、前記降温工程の後に、前記キャビティ内の温度が前記第2温度から第3温度に低下するように前記第1加熱器を稼働することを特徴とする請求項1に記載の温度調整方法。
【請求項3】
前記圧力オーブンが前記キャビティ外に配置された第2加熱器をさらに備える場合、前記第2加熱器が前記キャビティに入る前のガスを加熱し、加熱されたガスが前記キャビティに充填された後、前記キャビティ内のガス分子の数が標準大気圧状態での前記キャビティのガス分子の数より多くなり、前記キャビティ内の温度が第1温度から第2温度に上昇し、前記降温工程の後に、前記キャビティ内の温度が前記第2温度から第3温度に低下することを特徴とする請求項1に記載の温度調整方法。
【請求項4】
前記キャビティ内のガス分子の数を標準大気圧状態での前記キャビティのガス分子の数より多くするステップにおいて、前記キャビティ内のガス分子の数は第1ガス分子の数であり、前記キャビティ内のガス分子の数が第1ガス分子の数である場合、かつ、前記降温工程の前に、
前記キャビティ内のガスの一部を放出して、前記キャビティ内のガス分子の数を第2ガス分子の数に低下させ、前記第2ガス分子の数を標準大気圧状態での前記キャビティのガス分子の数より多いか又は等しいようにするステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の温度調整方法。
【請求項5】
前記第2ガス分子の数が標準大気圧状態での前記キャビティのガス分子の数よりも多く、前記降温工程では、前記キャビティ内のガス分子の数が前記第2ガス分子の数のままであることを特徴とする請求項
4に記載の温度調整方法。
【請求項6】
前記キャビティ内のガス分子の数が前記第2ガス分子の数に低下された後、前記降温工程の前に、
前記キャビティに外部ガスを充填して、前記キャビティ内のガス分子の数を第3ガス分子の数に増加させるステップをさらに含み、前記外部ガスの温度は第2温度よりも低いことを特徴とする請求項
4に記載の温度調整方法。
【請求項7】
キャビティと、
前記キャビティ内に配置され、前記キャビティを降温させる冷却器と、
前記キャビティ内に配置されるファンと、
前記キャビティに連通され、前記キャビティをガス充填して加圧する吸気ユニットと、
前記キャビティ内に充填されるガスを制御する圧力コントローラーと、
を備え、
前記吸気ユニットは、前記キャビティをガス充填し、前記キャビティ内の空気圧を標準大気圧よりも大きくし、前記冷却器は、前記キャビティ内の温度を下げるために前記キャビティに対して降温工程を実行
し、
前記圧力コントローラーは、前記降温工程が終了した後、標準大気圧よりも大きいか又は等しいように前記キャビティ内の空気圧を制御し、
前記降温工程は前記キャビティ内のガスの循環に依存して実行される
ことを特徴とする圧力オーブン。
【請求項8】
前記キャビティ内のガスを排出して圧力を下げるために前記キャビティに配置される減圧弁をさらに備えることを特徴とする請求項
7に記載の圧力オーブン。
【請求項9】
前記キャビティ内に配置されて前記キャビティを昇温させる加熱器をさらに備えることを特徴とする請求項
7に記載の圧力オーブン。
【請求項10】
前記キャビティ外に配置されて前記キャビティに入る前のガスを加熱する加熱器をさらに備えることを特徴とする請求項
7に記載の圧力オーブン。
【請求項11】
前記キャビティ内のガスを前記キャビティ外に導き出し、前記キャビティ内に戻すための冷却回流パイプラインを備えないことを特徴とする請求項
7に記載の圧力オーブン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブンに関し、特に、温度調整方法及び圧力オーブンに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、多くの場合、異なる温度環境で作業する必要があり、加熱及び/又は冷却速度が速いほど、製造工程効率が高くなる。圧力室の既知の冷却方法は、キャビティ内の高温ガスを外部パイプラインに流し、外部パイプラインに冷却装置を配置してガスを冷却した後、外部パイプラインを介して冷却されたガスを再びキャビティ内に流すことでキャビティを冷却する。ガスを外部のパイプラインに案内して冷却する必要があるため、冷却用のパイプライン及び冷却装置を収容するために追加のスペースが必要になり、機器本体の体積を増加させる。キャビティの冷却効率をいかに向上させるかは、この分野で解決すべき喫緊の問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、圧力オーブンのキャビティ内のガス分子の数が標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数よりも多い場合、キャビティ内の冷却器によってキャビティ内の温度を急速に低下させ、キャビティの急速降温の目標を達成する温度調整方法を提供する。
【0004】
また、本発明は、キャビティ内に冷却器を備え、キャビティ内の空気圧が標準大気圧よりも大きい場合、キャビティ内の冷却器によって高圧環境下で降温する機能を備え、キャビティの降温に必要な時間が短縮される圧力オーブンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧力オーブンの温度調整方法は、
キャビティと、キャビティ内に設けられた冷却器と、キャビティに連通される吸気ユニットと、を備える圧力オーブンを提供するステップと、
キャビティ内の空気圧が標準大気圧より大きくなるようにキャビティをガス充填するために吸気ユニットを稼働させ、キャビティ内のガス分子の数を標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数より多くするステップと、
キャビティ内のガス分子の数が標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数より多い場合、キャビティ内に位置する冷却器を稼働して、キャビティ内の温度を低下させるためにキャビティに対して降温工程を実行するステップと、を含む。
【0006】
本発明の一実施例において、圧力オーブンは、キャビティ内に配置された第1加熱器をさらに備える。キャビティ内のガス分子の数を標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数より多くするステップの後、かつ、降温工程の前に、キャビティ内の温度が第1温度から第2温度に上昇し、降温工程の後に、キャビティ内の温度が第2温度から第3温度に低下するように第1加熱器を稼働する。
【0007】
本発明の一実施例において、圧力オーブンは、キャビティ外に配置された第2加熱器をさらに備える。第2加熱器がキャビティに入る前のガスを加熱し、加熱されたガスがキャビティに充填された後、キャビティ内のガス分子の数が標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数より多くなり、キャビティ内の温度が第1温度から第2温度に上昇し、降温工程の後に、キャビティ内の温度が第2温度から第3温度に低下する。
【0008】
本発明の一実施例において、キャビティ内のガス分子の数を標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数より多くするステップにおいて、キャビティ内のガス分子の数は第1ガス分子の数であり、降温工程において、キャビティ内のガス分子の数が第1ガス分子の数のままである。
【0009】
本発明の一実施例において、キャビティ内のガス分子の数を標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数より多くするステップにおいて、キャビティ内のガス分子の数は第1ガス分子の数である。キャビティ内のガス分子の数が第1ガス分子の数である場合、かつ、降温工程の前に、キャビティ内のガスの一部を放出して、キャビティ内のガス分子の数を第2ガス分子の数に低下させ、第2ガス分子の数を標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数より多いか又は等しいようにするステップをさらに含む。
【0010】
本発明の一実施例において、第2ガス分子の数が標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数よりも多く、降温工程では、キャビティ内のガス分子の数が第2ガス分子の数のままである。
【0011】
本発明の一実施例において、キャビティ内のガス分子の数が第2ガス分子の数に低下された後、降温工程の前に、キャビティに外部ガスを充填して、キャビティ内のガス分子の数を第3ガス分子の数に増加させるステップをさらに含む。外部ガスの温度は第2温度よりも低い。
【0012】
本発明の圧力オーブンは、キャビティと、冷却器と、ファンと、吸気ユニットと、を備える。冷却器は、キャビティ内に配置され、キャビティを降温させる。ファンは、キャビティ内に配置される。吸気ユニットは、キャビティに連通され、キャビティをガス充填して加圧する。吸気ユニットは、キャビティ内の空気圧が標準大気圧より大きくなるようにキャビティをガス充填する。冷却器は、キャビティ内の温度を下げるためにキャビティに対して降温工程を実行する。
【0013】
本発明の一実施例において、圧力オーブンは、キャビティ内のガスを排出して圧力を下げるためにキャビティに配置される減圧弁をさらに備える。
【0014】
本発明の一実施例において、圧力オーブンは、キャビティ内に配置されてキャビティを昇温させる加熱器をさらに備える。
【0015】
本発明の一実施例において、圧力オーブンは、キャビティ外に配置されてキャビティに入る前のガスを加熱する加熱器をさらに備える。
【0016】
本発明の一実施例において、圧力オーブンは、キャビティ内のガスをキャビティ外に導き出し、キャビティ内に戻すための冷却回流パイプラインをさらに備えない。
【発明の効果】
【0017】
以上より、本発明の圧力オーブンの温度調整方法によれば、キャビティ内のガス分子の数が標準大気圧のガス分子の数よりも多いか又は等しいように維持されるため、キャビティ内の空気圧が標準大気圧よりも大きいか又は等しいように維持され、キャビティはキャビティ内の冷却器によって降温工程を直接実行することで、キャビティ内の温度が第2温度から第3温度に急速に低下し、キャビティの急速降温の目標を達成する。また、本発明の圧力オーブンにおいて、吸気ユニットによってキャビティを加圧し、キャビティ内の空気圧が標準大気圧よりも大きい場合、キャビティ内の加熱器によってキャビティに対して昇温工程を実行し、かつ、キャビティ内の冷却器によってキャビティに対して降温工程を実行するため、圧力オーブンは高圧環境下で降温する機能を有し、昇温及び降温工程に必要な時間を短縮する。
【0018】
本発明の上記特徴及び利点をより明瞭できるようにするために、以下の特定の実施例を図面と併せて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
ここでの図面は明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成し、本出願の実施例に該当し、本出願の不適切な限定を構成せず、明細書と共に本出願の原理を解釈するために使用される。
【
図1】本発明の一実施例による圧力オーブンの模式図である。
【
図2】本発明の一実施例による加熱器及び冷却器の設置の正面模式図である。
【
図3】本発明の一実施例による圧力オーブンの温度調整方法のフローチャートである。
【
図4A】昇温工程中の
図1の圧力オーブンのキャビティ内のガスフローパターンの模式図である。
【
図4B】本発明の他の実施例による圧力オーブンの模式図である。
【
図5】降温工程期間の
図4Aの圧力オーブンのキャビティ内のガスフローパターンの模式図である。
【
図6】減圧工程期間の
図4Aの圧力オーブンのパイプライン内のガスフローパターンの模式図である。
【
図7】降温工程期間の
図6の圧力オーブンのキャビティ内のガスフローパターンの模式図である。
【
図8A】加圧工程期間の
図6の圧力オーブンのパイプライン内のガスフローパターンの模式図である。
【
図8B】降温工程期間の
図8Aの圧力オーブンのキャビティ内のガスフローパターンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の上記の目的、特徴及び利点をより明確に理解できるために、本発明の特定の実施形態について図面を参照しながら以下で詳細に説明する。以下の説明では、本発明の完全な理解を容易にするために、多くの特定の詳細が示される。しかし、本発明は、ここで説明したものとは異なる多くの他の形態で実施することができ、当業者であれば、本発明の構想から逸脱することなく、同様の改良を行うことができるので、本発明は以下に開示される特定の実施例によって限制されない。
【0021】
なお、構成要素が別の構成要素に「固定されている」と言われる場合、別の構成要素上に直接存在してもよいし、又は介在する構成要素が存在してもよい。1つの構成要素が別の構成要素に「接続される」と認識される場合、別の構成要素に直接接続されてもよいし、又は同時に介在する構成要素が存在してもよい。本明細書で使用される「垂直」、「水平」、「左」、「右」などのような用語は、単に説明の目的のためである。
【0022】
特に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は本発明の技術分野に属する技術者が一般的に理解しているのと同じ意味である。本明細書において、本発明の明細書で使用される用語は、単に特定の実施例を説明する目的でのみ使用され、本発明を限定するものではない。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、関連するリスト項目の1つ又は複数の任意及び全ての組み合わせを含む。
【0023】
本実施例の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、本明細書に記載された実施例に限定されるものではなく、様々な形態で実現することができる。同一又は類似の符号は、同一又は類似の構成要素を示しており、以下の段落ではさらに繰り返さない。
【0024】
図1は、本発明の一実施例による圧力オーブンの模式図である。圧力オーブン200aの構成要素の配置関係を明確に示すために、
図1の圧力オーブン200aの各部材は一定の縮尺で描かれておらず、一部の構成要素は省略されている。
【0025】
図1を参照すると、本実施例の圧力オーブン200aは、キャビティ210と、第1加熱器220aと、冷却器230と、ファン240と、吸気ユニット250aと、を備える。第1加熱器220a、冷却器230、及びファン240は、キャビティ210内に配置されるが、第1加熱器220aの位置は本実施例に限定されない。例えば、他の実施例において、第1加熱器220aはキャビティ210の外側に配置されてもよい。第1加熱器220aは、キャビティ210を昇温させることに適合し、冷却器230は、キャビティ210を降温させることに適合する。吸気ユニット250aはキャビティ210に連通され、吸気ユニット250aは、キャビティ210にガス310を充填してキャビティ210内の空気圧を高めることに適合する。
【0026】
図2は、本発明の一実施例による加熱器及び冷却器の設置の正面模式図である。
図1及び
図2を参照すると、
図1の第1加熱器220a及び冷却器230を
図2の第1加熱器220a及び冷却器230と見なすことができる側面模式図である。第1加熱器220aは、例えば、抵抗型加熱器であるが、本発明はこれに限定されるものではない。第1加熱器220aは、本体224aと、複数のコイル226aと、本体224aを貫通する開口部222aと、を含み、第1加熱器220aはO字型を呈する。コイル226aは本体224aに巻き付けられ、昇温工程期間に、外部装置(不図示)がコイル226aに電流を印加して熱を発生させることにより、キャビティ210の温度を上昇させる。
【0027】
冷却器230は、例えば、水冷型冷却器であるが、本発明はこれに限定されるものではない。冷却器230は、複数のフィン232と、少なくとも1つの水冷却パイプ234と、を含み、水冷却パイプ234はそれらのフィン232間に貫設されている。水冷却パイプ234は、外部循環装置(不図示)と連通する水入口235及び水出口236をさらに含む。液体(不図示)は外部循環装置を介して水入口235から水冷却パイプ234に流入し、液体がフィン232を介してキャビティ210と熱交換した後、高い熱エネルギーを有する液体は水出口236からキャビティ210の外側に排出される。
【0028】
昇温工程期間で、水冷却パイプ234内の液体はキャビティ210の外側に排出され、その時、冷却器230は冷却機能を有さず、第1加熱器220aの熱放散に影響を与えない。降温工程期間で、低温の液体は、外部循環装置を介して冷却器230の水冷却パイプ234に流入し、降温工程を実行する。
【0029】
なお、他の実施例では、第1加熱器220a及び冷却器230の位置は互いに交換することができる。即ち、冷却器230は第1加熱器220aの外側にある。言い換えれば、本発明の第1加熱器220a及び冷却器230の配置形態は、本実施例に限定されず、キャビティ210を昇温及び降温させる任意の配置形態であってもよい。
【0030】
図1に戻ると、本実施例のファン240は、回転軸246及び駆動モーター248をさらに含む。回転軸246は、中央部242及び駆動モーター248に連結されてファン240が回動するように駆動する。ファン240は、キャビティ210内のガス310を吹き付けることに適合する。ガス310は、キャビティ210内の温度が均一に分布するようにキャビティ210内を流れる。
【0031】
本実施例の第1加熱器220aと冷却器230は、ファン240の前に交互に配置され、ファン240のサイズは、第1加熱器220aのサイズより小さいか又は等しい。もちろん、第1加熱器220a、冷却器230及びファン240の形状、サイズ及び配置形態は、本実施例に限定されない。本実施例では、ファン240が存在する平面上の第1加熱器220aと冷却器230の投影は、少なくとも部分的にファン240と重なる。
【0032】
図1に示すように、圧力オーブン200aは、減圧弁260、圧力感知装置270、温度コントローラー280、及び圧力コントローラー290を選択的に含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。減圧弁260は、キャビティ210内のガス310を排出して圧力を下げるようにキャビティ210に配置される。圧力感知装置270は、キャビティ210内の空気圧を感知するのに適している。温度コントローラー280は、キャビティ210内の温度を確認してキャビティ210の降温速度をモニタリングするのに適している。圧力コントローラー290は、キャビティ210内に充填されるガス310を制御するのに適している。
【0033】
本実施例の圧力オーブン200aは、脱泡工程などの急速な昇温及び降温を必要とする工程に適用することができる。圧力オーブン200aによって、キャビティ210内の構成要素(不図示)のダイアタッチ(die attached)、ポッティング(potting)、アンダーフィル(underfill)、プリンティング(printing)、及び光学膜ラミネーション(OCA lamination)等の製造工程で発生した気泡(void)を高温で除去し、プロセス効率を向上させるために、温度調整方法によって圧力オーブン200aのキャビティ210を急速に降温させる。
【0034】
図3は、本発明の一実施例による圧力オーブンの温度調整方法のフローチャートである。
図1及び
図3を同時に参照すると、
図1は
図3のステップS110に対応する。吸気ユニット250aは、パイプライン252aを介してキャビティ210にガス310を充填し、キャビティ210内のガス分子の数を第1ガス分子の数N1とし、キャビティ210内の温度を第1温度T1とする(ステップS110)。ここで、第1ガス分子の数N1は、標準大気圧状態でのキャビティ210のガス分子の数よりも多く、キャビティ210内の空気圧は第1圧力P1となる。第1圧力P1は標準大気圧よりも大きい。本実施例の第1圧力P1は、例えば、9気圧であるが、本発明はこれに限定されない。
【0035】
図4Aは、昇温工程中の
図1の圧力オーブンのキャビティ内のガスフローパターンの模式図である。
図3及び
図4Aを同時に参照すると、
図4は
図3のステップS122に対応する。キャビティ210内のガス分子の数が第1ガス分子の数N1である場合、第1加熱器220a及びファン240を稼働させてキャビティ210に対して昇温工程を実行し、キャビティ210内の温度を第1温度T1から第2温度T2に上昇させる(ステップS122)。昇温工程中、キャビティ210内のガス310はファン240によって送風され、矢印の方向に沿って流れ、第1加熱器220aによって加熱し、高い熱エネルギーを有するガス310をキャビティ210内に均一に分配させてキャビティ210内の温度分布を均一にする。この段階で、キャビティ210内にある被加熱部品を急速に加熱することができる。
【0036】
図4Bは、本発明の他の実施例による圧力オーブンの模式図である。
図4A及び
図4Bを同時に参照すると、本実施例の圧力オーブン200bは上記実施例の圧力オーブン200aと類似しており、両者の相違点は、本実施例の第2加熱器220bがキャビティ210の外側に配置され、第2加熱器220bが吸気ユニット250bのパイプライン252bと連結される点である。第2加熱器220bは、ガス310がパイプライン252b内を流れるとき、かつ、ガス310がキャビティ210に入る前に、ガス310を加熱することに適している。本実施例の第2加熱器220bの配置は、一例に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、他の実施例では、第2加熱器220bはパイプライン252bを取り囲んでもよい。また、本実施例の圧力オーブン200bの配置形態は本実施例に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、キャビティ210の昇温効率を向上させるために、追加の第2加熱器220bをキャビティ210内に設けてもよい。
【0037】
図3及び
図4Bを同時に参照すると、
図4Bは
図3のステップS110及びステップS124に対応する。
図4Bは、圧力オーブン200bの別の昇温工程を示す。本実施例の圧力オーブン200bの昇温工程は、キャビティ210の外側の第2加熱器220bによってキャビティ210の外側でガス310を加熱する。
【0038】
図4Bに示すように、圧力オーブン200bは、吸気ユニット250bによってキャビティ210にガス310を充填し(ステップS110)、ガス310がキャビティ210に充填される前に、パイプライン252bと連結される第2加熱器220bによってパイプライン252b内でガス310を加熱する。加熱後、高い熱エネルギーを有するガス310がパイプライン252bを介してキャビティ210内に充填され、キャビティ210内の温度を第2温度T2まで上昇させ、キャビティ210内のガス分子の数が第1ガス分子の数N1になる。このとき、キャビティ210内の圧力は標準大気圧よりも大きい。
【0039】
要するに、
図3を参照すると、ステップS122及びステップS124の相違点はキャビティ210の昇温方法にある。ステップS122は、キャビティ210内に設けられた第1加熱器220a(
図4A)によってキャビティ210を昇温させる。ステップS124は、キャビティ210の外側に設けられた第2加熱器220b(
図4B)によってキャビティ210の外側でガス310を昇温させた後、ガス310をキャビティ210内に通過させてキャビティ210を昇温させる。
【0040】
ステップS122又はステップS124は、いずれもキャビティ210内の温度を第2温度T2まで上昇させ、キャビティ210内のガス分子の数が第1ガス分子の数N1になる。なお、ステップS122は、キャビティ210内のガス分子の数が第1ガス分子の数N1である場合、第1加熱器220aをオンにして昇温工程を実行するため(
図4A)、ステップS122は、ガス310がキャビティ210内に充填されるまでの待ち時間を待ち、操作者は、要件に応じて必要な操作を選択するステップをさらに含む。
【0041】
以下、
図4Aの圧力オーブン200aを例として、昇温工程(S122)後の圧力オーブン200aの後続工程(例えば、加圧工程、減圧工程及び降温工程)の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態は、
図4Bの圧力オーブン200bにも適用可能であり、圧力オーブン200bのキャビティ210内の温度を第2温度T2から第3温度T3に低下させることに留意されたい。
【0042】
図5は、降温工程中の
図4Aの圧力オーブンのキャビティ内のガスフローパターンの模式図である。
図3及び
図5を同時に参照すると、
図5は
図3のステップS130、S140に対応する。昇温工程(ステップS122)終了後、降温する必要がある場合、キャビティ210内のガス分子の数が第1ガス分子の数N1を維持していると、第1加熱器220aをオフにし、キャビティ210に対して降温工程を実行するために、冷却器230を稼働させる(ステップS130)。
【0043】
降温工程中、ファン240が継続的に作動し、キャビティ210内のガス300は矢印の方向に沿って流れ、冷却器230と熱交換する。従って、キャビティ210内の温度は、キャビティ210内の温度が第2温度T2から第3温度T3に低下するまで急速に低下する(ステップS140)。このとき、キャビティ210内の空気圧は標準大気圧よりも大きい。
【0044】
本実施例の昇温工程及び降温工程の間(ステップS110、S122、S130、S140)、圧力オーブン200aのキャビティ210内のガス分子の数は、第1ガス分子の数N1に維持されている。言い換えれば、キャビティ210内の空気圧が標準大気圧よりも大きい(正圧状態)場合、昇温工程及び降温工程が実行される。圧力オーブン200aのキャビティ210内のガス分子の数が標準大気圧のガス分子の数よりも多いので、昇温及び降温の速度及び効率を高めることができる。
【0045】
また、本実施例の降温工程中のガス310が排出されないため、次の昇温工程の準備時間を短縮することができる。例えば、再びガス310を充填する必要がなく直接昇温工程を実行することができるので、圧力オーブン200aのプロセス効率を向上させる。
【0046】
また、本実施例の圧力オーブン200aは、キャビティ210内のガス310をキャビティ210の外側に導き出し、再びキャビティ210内に戻すための冷却回流パイプラインを備えていない。従って、キャビティ210内の降温速度は、冷却のためにパイプライン全体に亘って流れる必要性によって影響を受けることはなく、より急速に降温することができる。例えば、既知の冷却回流パイプラインを有する圧力オーブンのキャビティの温度が200℃から80℃に低下するには約15分かかる。本実施例の圧力オーブン200aのキャビティ210の温度が200℃から80℃に低下するには約7分かかる。
【0047】
図6は、減圧工程中の
図4Aの圧力オーブンのパイプライン内のガスフローパターンの模式図である。
図3及び
図6を同時に参照すると、
図6は
図3のステップS150に対応する。本実施例の圧力オーブン200aの温度調整方法は、減圧工程をさらに含む。昇温工程(ステップS122)が終了し、加熱器をオフにした後、降温工程(ステップS130)の前に、ガス310(
図4)の一部を放出するために減圧弁260をオンにする。
【0048】
図6に示すように、ガス310の一部が矢印の方向に沿ってパイプライン262内を流れ、減圧弁260によってガス310の一部をキャビティ210から放出させて、キャビティ210内のガス分子の数を第1ガス分子の数N1から第2ガス分子の数N2に低下させ(ステップS150)、第2ガス分子の数N2は標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数よりも多いか又は等しい。このとき、キャビティ210内の空気圧は第2圧力P2であり、第2圧力P2は標準大気圧よりも大きいか又は等しい。本実施例の第2圧力P2は、例えば、6気圧であるが、本発明はこれに限定されない。
【0049】
ガス310の一部を放出すると同時に、キャビティ210内の熱エネルギーの一部がガス310の一部と共に放出されるので、キャビティ210内の熱エネルギーは僅かに低下する。キャビティ210内には高い熱エネルギーを有する構成要素(不図示)があるので、キャビティ210内の温度をさらに低下させるために、降温工程(ステップS130)が依然として必要である。
【0050】
図7は、降温工程中の
図6の圧力オーブンのキャビティ内のガスフローパターンの模式図である。
図3及び
図7を同時に参照すると、
図7は
図3のステップS130、140に対応する。このとき、キャビティ210内のガス320は、減圧弁260によって放出された後のガス310(
図4)の残りの部分であり、キャビティ210内のガス分子の数は第2ガス分子の数N2である。
【0051】
ファン240及び冷却器230を稼働させて降温工程を実行する(ステップS130)。
図7に示すように、キャビティ210内のガス320が矢印の方向に沿って流れ、キャビティ210内の温度を第3温度T3に低下させ(ステップS140)、このとき、キャビティ210内の圧力は標準大気圧よりも大きいか又は等しい。
【0052】
なお、
図3に戻ると、本実施例では、降温工程の前に減圧工程(ステップS150)をさらに含み、ステップS150のキャビティ210(
図6)内の熱エネルギーの一部はガス310の一部と共にキャビティ210の外側に排出されるため、先の実施例で説明したステップS122から直接ステップS130までの降温方法と比較して、本実施例では、降温工程(ステップS130)を実行する前に、減圧工程(ステップS150)を実行して、第2ガス分子の数N2を有するキャビティ210(
図6)内の熱エネルギーはステップS122で述べた第1ガス分子の数N1を有するキャビティ210(
図5)内の熱エネルギーよりも小さくなる。従って、降温工程の前に、ステップS150が実行されてキャビティ210内の熱エネルギーが少なくなり、その後の降温が容易になる。
【0053】
もちろん、降温工程はキャビティ210内のガス310、320の循環に依存するので、ガス310、320の分子の数はキャビティ210の降温性能に影響を与える。即ち、第1ガス分子の数N1が第2ガス分子の数N2よりも多いため、降温工程中、キャビティ210内に第1ガス分子の数N1が第2ガス分子の数N2よりも多いガス分子が存在すると、冷却器230と熱交換することができ、より良い降温性能を有することができる。従って、ステップS122から直接ステップS130へ、又はステップS122、S150からステップS130へのいずれの場合でも、降温に役立つという利点があり、操作者は要件に応じて必要な操作ステップを選択することができる。
【0054】
図8Aは、加圧工程中の
図6の圧力オーブンのパイプライン内のガスフローパターンの模式図である。
図3及び
図8Aを同時に参照すると、
図8Aは
図3のステップS152に対応する。減圧工程(ステップS150)の後、かつ、降温工程(ステップS130)の前に、加圧工程(ステップS152)が実行される。
【0055】
吸気ユニット250aをオンにし、パイプライン252aを介してキャビティ210内に外部ガス330を充填し、キャビティ210内のガス分子の数を第2ガス分子の数N2から第3ガス分子の数N3に上昇させて(ステップS152)、キャビティ210内の空気圧を第3圧力P3に上昇させ、第3圧力P3は標準大気圧よりも大きい。本実施例の第3圧力P3は、例えば、9気圧であるが、本発明はこれに限定されない。外部ガス330の温度は第2温度T2よりも低いため、キャビティ210内の温度は若干低下する。
【0056】
図8Bは、降温工程中の
図8Aの圧力オーブンのキャビティ内のガスフローパターンの模式図である。このとき、キャビティ210内のガス340は、外部ガス330と、減圧弁260によって放出された後のガス310(
図4)の残りの部分であり、キャビティ210内のガス分子の数は第3ガス分子の数N3に維持されている。ファン240及び冷却器230を稼働させて降温工程を実行する(ステップS130)。
図7に示すように、キャビティ210内のガス340が矢印の方向に沿って流れ、キャビティ210内の温度を第3温度T3に低下させる(ステップS140)。このとき、キャビティ210内の空気圧は標準大気圧よりも大きい。
【0057】
なお、
図3に戻ると、本実施例では、減圧工程(ステップS150)の後、かつ、降温工程(S130)の前に、加圧工程(ステップS152)をさらに含む。ステップS152で外部ガス330をキャビティ210(
図8A)内に充填するため、先の実施例で説明したステップS150から直接ステップS130までの降温方法と比較して、ステップS152のキャビティ210内のガス分子の数(第3ガス分子の数N3)はステップS150で述べたキャビティ210内のガス分子の数(第2ガス分子の数N2)よりも多いので、ステップS152のキャビティ210は冷却器230と熱交換できるガス分子が多くなり、より良い降温性能を有することができる。ステップS122、S150から直接ステップS130へ、又はステップS122、S150、S152からステップS130へのいずれの場合でも、降温に役立つという利点があり、操作者は要件に応じて必要な操作ステップを選択することができる。
【0058】
以上より、本発明の圧力オーブンの温度調整方法によれば、降温工程中のキャビティのガス分子の数(例えば、第1ガス分子の数、第2ガス分子の数、及び第3ガス分子の数)は標準大気圧状態でのキャビティのガス分子の数よりも多いか又は等しいので、キャビティ内の圧力は標準大気圧よりも大きいか又は等しい。言い換えれば、キャビティは正圧状態下で降温工程を実行する。降温工程が終了した後、キャビティ内の空気圧は標準大気圧よりも大きいか又は等しいので、キャビティは再び昇温工程を迅速に実行でき、圧力オーブンのプロセス効率を向上させる。降温工程中、追加の冷却回流パイプラインを使用せずに、キャビティはキャビティ内のファンと冷却器のみを介して降温するため、本発明の圧力オーブンの降温プロセスの降温効率は外部パイプラインの影響を受けない。従って、キャビティをより急速に降温して降温プロセスに必要な時間を短縮できる。
【0059】
以上、本発明を実施例により開示してきたが、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変更および修正を行うことができる。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許出願の範囲によって定義されるべきである。
【符号の説明】
【0060】
N1 第1ガス分子の数、N2 第2ガス分子の数、N3 第3ガス分子の数、P1 第1圧力、P2 第2圧力、P3 第3圧力、S110、S122、S124、S130、S140、S150、S152 ステップ、T1 第1温度、T2 第2温度、T3 第3温度、200a、200b 圧力オーブン、210 キャビティ、220a 第1加熱器、220b 第2加熱器、222a 開口部、224a 本体、226a コイル、230 冷却器、232 フィン、234 水冷却パイプ、235 水入口、236 水出口、240 ファン、246 回転軸、248 駆動モーター、250a、252b 吸気ユニット、252a、252b、262 パイプライン、260 減圧弁、270 圧力感知装置、280 温度コントローラー、290 圧力コントローラー、310、320、340 ガス、330 外部ガス。