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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240910BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240910BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240910BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240910BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J7/34 B
H02J13/00 311A
H02J13/00 301A
H01M10/44 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022551473
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035844
(87)【国際公開番号】W WO2022064572
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】工藤 耕治
(72)【発明者】
【氏名】西岡 英祥
(72)【発明者】
【氏名】梅原 真宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 諒
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-089087(JP,A)
【文献】特開2012-070562(JP,A)
【文献】特開2017-046507(JP,A)
【文献】特開2017-163835(JP,A)
【文献】特開2014-073053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電システムを含む蓄電システム群の充放電における誤差想定値と、サービス実施要求における充放電要求量に対する許容誤差割合上限値とに基づいて、複数の前記蓄電システム群のうち充放電を行わせる蓄電システム群を決定し、決定した蓄電システム群の充放電制御の精度に基づいて、その蓄電システム群に対する充放電指令値を算出する指令値算出手段と、
前記充放電指令値を送信する指令値送信手段と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記指令値算出手段は、前記蓄電システム群に対する充放電指令を算出し、かつ、何れの前記蓄電システム群にも含まれない蓄電システムに対して、その蓄電システムの充放電制御の精度に基づいて、その蓄電システムに対する充放電指令値を算出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記指令値算出手段は、前記蓄電システム群の充放電における誤差想定値と、前記充放電制御に対する要求精度をサービス実施要求における充放電要求量に対する許容誤差の最大値の割合で示す許容誤差割合上限値とに基づいて、前記蓄電システム群の充放電量に対する前記誤差想定値の割合が前記許容誤差割合上限値となるための充放電量下限値を算出し、前記充放電量下限値以上の前記充放電指令値を算出する、
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記指令値算出手段は、前記誤差想定値と、前記充放電要求量に対して設定される誤差割合下限値とに基づいて、前記蓄電システム群の充放電量に対する前記誤差想定値の割合が前記誤差割合下限値となるための充放電量上限値最小値を算出し、前記充放電指令値の上限値を充放電量上限値最小値以上の値に設定する。
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記指令値算出手段は、前記誤差想定値を前記許容誤差割合上限値で除算して、前記充放電量下限値を算出する、
請求項3または請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記指令値算出手段は、前記蓄電システム群毎の、充放電実施時間の履歴、充放電電力量の履歴、または、充放電の実施によるサービスへの参加回数の履歴の少なくとも何れか1つに基づいて、複数の前記蓄電システム群のうち充放電を行わせる蓄電システム群を決定する、
請求項1から5の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記指令値算出手段は、1つの前記蓄電システム群に含まれる複数の前記蓄電システムのうち、充放電を行わせる蓄電システムの個数を決定し、
前記指令値送信手段は、前記充放電指令値に加えて、前記個数を示す情報を送信する、
請求項1からの何れか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記指令値算出手段は、前記蓄電システム群に行わせる充放電の量を、その蓄電システム群で確保されている充放電量に基づいて、前記充放電指令値として算出する、
請求項1からの何れか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電システムの充放電に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、蓄電システム群を構成する複数の蓄電システムに対して、充電時には、充電率が小さい蓄電システムから順に分配充電電力を決定し、放電時には、充電率が大きい蓄電システムから順に分配放電電力を決定する制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2016/152006号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電システムによる充放電を利用する場合に、充放電制御の精度が要求されることが考えられる。
【0005】
本発明の目的の一例は、上記の問題を解決することができる制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の1つによれば、制御装置は、複数の蓄電システムを含む蓄電システム群の充放電における誤差想定値と、サービス実施要求における充放電要求量に対する許容誤差割合上限値とに基づいて、複数の前記蓄電システム群のうち充放電を行わせる蓄電システム群を決定し、決定した蓄電システム群の充放電制御の精度に基づいて、その蓄電システム群に対する充放電指令値を算出する指令値算出手段と、前記充放電指令値を送信する指令値送信手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記した制御装置によれば、蓄電システムの充放電制御の精度の要求に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電力システムの装置構成の例を示す概略ブロック図である。
図2】実施形態に係る上位制御装置の機能構成の例を示す概略ブロック図である。
図3】実施形態に係る中位制御装置の機能構成の例を示す概略ブロック図である。
図4】実施形態に係る蓄電システム群の構成例を示す図である。
図5】実施形態に係る蓄電システムの例を示す図である。
図6】実施形態に係る蓄電システムの充放電の制御の第1例を示す図である。
図7】実施形態に係る蓄電システムの充放電の制御の第2例を示す図である。
図8】実施形態に係る蓄電システムの充放電の制御の第3例を示す図である。
図9】実施形態に係る蓄電システムの充放電の制御の第4例を示す図である。
図10】実施形態に係る上位制御装置が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
図11】実施形態に係る中位制御装置が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
図12】実施形態に係る制御装置の構成例を示す図である。
図13】実施形態に係る制御方法における処理手順の例を示す図である。
図14】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、実施形態に係る電力システムの装置構成の例を示す概略ブロック図である。図1に示す構成で、電力システム1は、上位制御システム10と、中位制御システム20と、需要家設置システム30-1と、大型充放電システム30-2とを備える。
【0011】
上位制御システム10は、上位制御装置11と、ゲートウェイ装置91とを備える。中位制御システム20は、中位制御装置21と、ゲートウェイ装置91とを備える。需要家設置システム30-1は、需要家用下位制御装置31-1と、需要家用蓄電システム32-1と、分電盤41と、需要家内電力配線43と、需要家負荷44と、太陽光発電設備47と、ゲートウェイ装置91とを備える。大型充放電システム30-2は、大型設備用下位制御装置31-2と、大型蓄電システム32-2と、ゲートウェイ装置91とを備える。
【0012】
上位制御システム10、中位制御システム20、需要家設置システム30-1、大型充放電システム30-2それぞれのゲートウェイ装置91は、通信ネットワーク910に通信接続する。需要家設置システム30-1の分電盤41、および、大型充放電システム30-2の大型蓄電システム32-2は、何れも電力系統920に接続されており、電力系統920との間で電力のやり取りを行う。図1では、電力の経路を実線で示し、信号の経路を破線で示している。
【0013】
需要家用蓄電システム32-1と大型蓄電システム32-2とは、中位制御システム20からの要求に応じて充放電を実行する蓄電システムの例に該当する。中位制御システム20からの要求に応じて充放電を実行する蓄電システムを、蓄電システム32とも称する。
【0014】
蓄電システム32は、蓄電池(セル)とパワーコンディショニングシステム(Power Conditioning System;PCS)とを含んで構成される。充電時には、パワーコンディショニングシステムが、蓄電システム32の外部から供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電池に出力し、蓄電池が蓄電する。放電時には、蓄電池が放電する直流電力をパワーコンディショニングシステムが交流電力に変換して蓄電システム32の外部へ出力する。
また、パワーコンディショニングシステムは充放電の制御を行う。具体的には、パワーコンディショニングシステムは、充電、放電または停止(充電も放電も行わない)の切替を行い、充放電時には充放電量を制御する。
【0015】
需要家用下位制御装置31-1と大型設備用下位制御装置31-2とは、中位制御システム20からの要求に応じて、需要家用蓄電システム32-1または大型蓄電システム32-2などの蓄電システム32の充放電を制御する装置の例に該当する。中位制御システム20からの要求に応じて蓄電システム32の充放電を制御する装置を、下位制御装置31とも称する。
【0016】
需要家設置システム30-1または大型充放電システム30-2は、需要家用蓄電システム32-1または大型蓄電システム32-2などの蓄電システム32と、需要家用下位制御装置31-1または大型設備用下位制御装置31-2などの下位制御装置31とを備えるシステムの例に該当する。蓄電システム32と下位制御装置31とを備えるシステムを、充放電システム30とも称する。
【0017】
電力システム1は、複数の蓄電システム32の充放電を統合的に制御して、送配電事業者に対してアンシラリー(Ancillary)サービス(調整力サービス)を提供する。ここでいうアンシラリーサービスは、電力品質を維持するためのサービスである。
電力システム1が提供するアンシラリーサービスは、特定のサービスに限定されない。例えば、電力システム1が、LFC(Load Frequency Control、負荷周波数制御)またはΔf制御など、電力系統920に対する周波数調整サービスを提供するようにしてもよい。あるいは、電力システム1が、デマンドレスポンス(Demand Response)などの負荷調整サービスを提供するようにしてもよい。
また、電力システム1が、複数のサービスを提供するようにしてもよい。
【0018】
LFCとΔf制御とは、いずれも、系統周波数を基準周波数に合わせるための制御である。LFCとΔf制御とでは、例えばLFCでは数秒程度の周期で充放電を行い、Δf制御では秒程度以下の周期で充放電を行うなど、LFCのほうが比較的周期が長く、応答速度も比較的遅くてよい。デマンドレスポンスでは、電力の需要量を要求量だけ増加または減少させるように電気機器の電力消費量(=電力の需要量)の調整が行われる。
ここでいう充放電は、充電または放電の何れかであってもよいし、充電と放電とを交互に行うことであってもよい。
【0019】
上位制御システム10は、サービス実施要求に応じて蓄電システム群毎の充放電量(充放電指令値)を決定し、中位制御システム20に対して蓄電システム群毎の充放電の実施を指示する。特に、上位制御システム10は、充放電要求量の情報と要求精度の情報とを含むサービス実施要求を取得し、または上位制御システム10自ら充放電要求量および要求精度を決定し、要求精度を満たすように蓄電システム群毎の充放電量を決定する。
【0020】
ここでの充放電量の単位は、電力の単位(例えば、ワット(W)またはキロワット(kW))であってもよいし、電力量の単位(例えば、ワット時(Wh)またはキロワット時(kWh))であってもよい。また、上位制御システム10または中位制御システム20など電力システム1内で、充放電量の単位を換算するようにしてもよい。
【0021】
電力の単位で示される充放電量に、予め定められている単位時間を乗算することで、充放電量の単位を電力量の単位に換算できる。また、電力量の単位で示される充放電量を、予め定められている単位時間で除算することで、充放電量の単位を電力の単位に換算できる。
【0022】
ここでいう蓄電システム群は、蓄電システム32を充放電量の定格値および充放電制御の精度に応じてグループ分けした各グループである。ここでいう充放電制御の精度は、蓄電システムの出力が制御指令値に対してどれだけずれているかの指標である。充放電制御の精度として、制御指令値に対する出力の誤差の大きさを制御指令値の大きさで除算した割合(|出力-制御指令値|/|制御指令値|)を用いるようにしてもよい。制御指令値に対する出力の誤差の大きさを制御指令値の大きさで除算した割合を誤差割合とも称する。
【0023】
蓄電システム32を蓄電システム群にグループ化することで、上位制御システム10は、蓄電システム群毎の充放電量を決定すればよく、蓄電システム32毎の充放電量を直接決定する場合よりも処理を簡単にすることができる。
【0024】
以下では、同一の蓄電システム群に含まれる全ての蓄電システム32について、充放電量の定格値が同じであり、充放電制御の精度も同じである場合を例に説明する。
ただし、同一の蓄電システム群に含まれる全ての蓄電システム32について、充放電量の定格値の差異、および、充放電制御の精度の差異の何れも無視できる程度に類似していればよく、まったく同じである必要は無い。
【0025】
上位制御システム10が、全ての蓄電システム群にサービス実施のための充放電を行わせるように、蓄電システム32毎の充放電量を決定するようにしてもよい。あるいは、上位制御システム10が、一部の蓄電システム群のみに対してサービス実施のための充放電を行わせるように、蓄電システム32毎の充放電量を決定するようにしてもよい。
【0026】
上位制御装置11は、蓄電システム群毎の充放電量を、演算によって決定する。上位制御装置11は、決定した充放電量を中位制御装置21に通知して充放電を指示するための指令を、中位制御装置21に送信する。また、上位制御装置11は、決定した充放電量を、直接、所定の充放電システム30に通知して充放電を指示するための指令を、下位制御装置31に送信してもよい。上位制御装置11が、例えばワークステーション(Workstation)またはパソコン(Personal Computer;PC)等のコンピュータを用いて構成されていてもよい。
上位制御装置11は、制御装置の例に該当する。
【0027】
ゲートウェイ装置91は、上位制御装置11、中位制御装置21、下位制御装置31の各々と通信ネットワーク910との通信を仲介する。ゲートウェイ装置91として、接続される機器の仕様に応じて異なる仕様のゲートウェイ装置が用いられていてもよい。
【0028】
中位制御システム20は、蓄電システム群毎の充放電指令値を取得して、蓄電システム群に含まれる蓄電システム32の各々に対する充放電指令値を決定し、該当する充放電システム30の各々に対して充放電の実施を指示する。中位制御システム20が、上位制御システム10から通知される蓄電システム群毎の充放電指令値を満たすように、蓄電システム32の各々に対する充放電指令値を決定することで、サービス実施要求で通知される要求精度を満たすように、個々の蓄電システム32に充放電を行わせることができる。
【0029】
例えば、中位制御システム20が、上位制御システム10から通知される蓄電システム群毎の充放電指令値を、蓄電システム群に含まれる蓄電システム32の個数で除算して、蓄電システム32の各々に均等に充放電指令値を割り当てるようにしてもよい。
あるいは、蓄電システム32毎(すなわち、充放電システム30毎)にアンシラリーサービスに利用可能な充放電可能量が設定されており、中位制御システム20が、充放電可能量の範囲内で、蓄電システム群毎の充放電指令値を個々の蓄電システム32に割り当てるようにしてもよい。例えば、電力需要家が使用する蓄電システム32の充放電量の定格値が、アンシラリーサービス用の充放電可能量と、エネルギーマネジメントサービス(Energy Management Service)用の充放電可能量とに分割されていてもよい。そして、蓄電システム32が、アンシラリーサービスのための充放電と、エネルギーマネジメントサービスのための充放電とを同時に実施するようにしてもよい。
【0030】
充放電システム30が行うエネルギーマネジメントサービスは、特定のサービスに限定されない。例えば、充放電システム30が、ピークシフト(Peak Shift)、ピークカット(Peak Shaving)または売電、あるいはこれらの組み合わせを実施するようにしてもよい。
【0031】
ピークシフトは、電気料金が比較的安い時間帯に蓄電システムを充電し、電気料金が比較的高い時間帯の機器消費電力を賄う(蓄電システムを放電する)ことで電気料金を抑制するサービスである。
ピークカットは、閾値電力を設定し、その閾値電力以上の消費電力が発生する場合、蓄電システムを放電させてピーク需要をカットするサービスである。例えば、電気料金が最大電力に応じた段階制で定められている場合、ピークカットにより最大電力を小さくすることで、電気料金を抑制することができる。
売電は、電力需要家側から商用電力系統へ電力を提供する(逆潮流させる)サービスである。電力需要家は、提供した電力量に応じた対価を得る。
【0032】
中位制御装置21は、蓄電システム32毎の充放電指令値を、演算によって決定する。中位制御装置21は、決定した充放電指令値を下位制御装置31に通知して充放電を指示するための指令を、下位制御装置31に送信する。中位制御装置21が、例えばワークステーションまたはパソコン等のコンピュータを用いて構成されていてもよい。
中位制御装置21は、制御装置の例に該当する。
【0033】
電力システム1でサービス実施要求に応じて蓄電システム32の各々に対する充放電指令値を決定して充放電を指示するための構成は、特定の構成に限定されず、要求精度を考慮して蓄電システム32の各々に対する充放電指令値を決定できるいろいろな構成とすることができる。
【0034】
図1の例では、電力システム1でサービス実施要求に応じて蓄電システム32の各々に対する充放電指令値を決定して充放電を指示するための構成は、上位制御装置11と中位制御装置21とを用いた構成となっている。この構成は、上位制御装置11の階層と中位制御装置21の階層との2階層の構成として把握することができる。
【0035】
図1の例のように、上位制御装置11および中位制御装置21が用いられる場合、上位制御装置11が、アグリゲーションコーディネータ(Aggregation Coordinator;AC)が使用する機器として構成され、中位制御装置21が、リソースアグリゲータ(Resource Aggregator;RA)が使用する機器として構成されていてもよい。
【0036】
この場合、リソースアグリゲータが、中位制御装置21を用いて蓄電システム32を統合制御して、エネルギーサービスをアグリゲーションコーディネータに提供するようにしてもよい。そして、アグリゲーションコーディネータが、リソースアグリゲータが提供するエネルギーサービスを、上位制御装置11を用いてさらに統合して、送配電事業者からのサービス実施要求に応じたアンシラリーサービスを提供するようにしてもよい。
1つの上位制御装置11に対して複数の中位制御装置21が設けられていてもよい。例えば、蓄電システム群と中位制御装置21とが一対一に対応付けられるように、蓄電システム群毎に中位制御装置21が設けられていてもよい。
【0037】
また、上位制御装置11が、送配電事業者の中央給電指令所に設置されていてもよい。この場合、送配電事業者が、上位制御装置11を用いて蓄電システム群毎の充放電要求量を決定し、蓄電システム群毎の充放電要求量を通知して充放電の実施を要求するための指令を、サービス実施要求として送信するようにしてもよい。
【0038】
あるいは、上位制御装置11と中位制御装置21とが、1つの装置として構成されていてもよい。この場合の構成は、上位制御装置11と中位制御装置21とを統合した1つの装置による1階層の構成として把握することができる。
あるいは、電力システム1でサービス実施要求に応じて蓄電システム32の各々に対する充放電指令値を決定して充放電を指示するための構成が、3層以上の階層の構成となっていてもよい。例えば、蓄電システム32が複数の下位グループに纏められ、下位グループがさらに複数の上位グループに纏められるなど、蓄電システム群が2階層以上の階層を有する構成となっていてもよい。そして、蓄電システム群の階層毎に上位制御装置11が設けられていてもよい。
【0039】
需要家設置システム30-1は、電力需要家が使用するシステムである。図1では、アンシラリーサービスのための充放電を実行する充放電システム30の例として、需要家設置システム30-1と、大型充放電システム30-2とを示している。ただし、充放電システム30の構成は、特定の構成に限定されない。充放電システム30の構成は、蓄電システム32を備え、中位制御システム20からの充放電の指示に従ってアンシラリーサービス提供のための充放電を実施可能ないろいろな構成とすることができる。充放電システム30毎に構成が異なっていてもよい。
需要家設置システム30-1は、特定の用途のシステムに限定されない。例えば、需要家設置システム30-1は、家庭(個人宅)のシステム、会社の事務所(ビルディング)のシステム、工場のシステム、または、店舗のシステムであってもよい。
【0040】
需要家用下位制御装置31-1は、需要家設置システム30-1の機器を制御して、需要家設置システム30-1における電力の需給を調整する。特に、需要家用下位制御装置31-1は、中位制御システム20からの要求に応じて需要家用蓄電システム32-1を制御して、充放電指令値の充放電を行わせる。上記のように、需要家用下位制御装置31-1は、下位制御装置31の例に該当する。また、上記のように、需要家用下位制御装置31-1が、中位制御装置21から要求されるアンシラリーサービス提供のための充放電に加えて、エネルギーマネジメントサービスのための充放電を需要家用蓄電システム32-1に行わせるようにしてもよい。
需要家用下位制御装置31-1または大型設備用下位制御装置31-2などの下位制御装置31が、例えばワークステーションまたはパソコン等のコンピュータを用いて構成されていてもよい。
【0041】
需要家用蓄電システム32-1は、需要家用下位制御装置31-1の制御に従って充放電を行う。これにより、需要家用蓄電システム32-1は、中位制御装置21から要求されるアンシラリーサービス提供のための充放電を実行する。上記のように、需要家用蓄電システム32-1が、需要家用下位制御装置31-1の制御に従って、アンシラリーサービス提供のための充放電に加えて、エネルギーマネジメントサービスのための充放電を行うようにしてもよい。
【0042】
分電盤41は、電力系統920と需要家設置システム30-1との連系点に設けられた分電盤である。
需要家内電力配線43は、需要家設置システム30-1内に配線された電力線を用いて構成される、需要家設置システム30-1内における電力系統である。
【0043】
需要家負荷44は、需要家設置システム30-1に設けられた電力消費機器である。需要家負荷44は、特定の種類の機器に限定されず、電力を消費するいろいろな機器とすることができる。需要家負荷44が、1つの機器を含んで構成されていてもよいし、複数の機器を含んで構成されていてもよい。
太陽光発電設備47は、例えば太陽電池とパワーコンディショニングシステムとを含んで構成される。太陽電池が、太陽光を受けて発電し、パワーコンディショニングシステムが、太陽電池による直流の発電電力を交流電力に変換して出力する。
【0044】
大型充放電システム30-2は、大型蓄電システム32-2を用いて電力系統920との間で充放電を行う。大型充放電システム30-2が、電力系統920の電力品質維持専用に設けられたシステムであってもよい。あるいは、大型充放電システム30-2が工場設備の一部であるなど、電力系統920の電力品質維持以外の目的にも用いられてもよい。
【0045】
大型設備用下位制御装置31-2は、中位制御装置21からの指令に従って、大型蓄電システム32-2の充放電を制御する。
大型蓄電システム32-2は、大型設備用下位制御装置31-2の制御に従って、充放電を実行する。大型蓄電システム32-2は、電力システム1が異なる仕様の蓄電システム32を備える例として示されている。大型蓄電システム32-2の充放電量の定格は、需要家用蓄電システム32-1の充放電量の定格よりも大きい。
【0046】
図2は、上位制御装置11の機能構成の例を示す概略ブロック図である。図2に示す構成で、上位制御装置11は、第一通信部110と、第一記憶部180と、第一制御部190とを備える。第一制御部190は、要求量情報取得部191と、群指令値算出部192と、群指令値送信処理部193とを備える。
【0047】
第一通信部110は、ゲートウェイ装置91および通信ネットワーク910を介して他の装置と通信を行う。例えば、第一通信部110が、送配電事業者からのサービス実施要求を受信するようにしてもよい。また、第一通信部110は、蓄電システム群に対する充放電指令を中位制御装置21へ送信する。
第一通信部110が送信する充放電指令は、蓄電システム群に対する充放電指令値を示す。上位制御装置11が、蓄電システム群の一部の蓄電システム32のみに充放電を行わせるように決定する場合、第一通信部110が送信する充放電指令が、充放電指令値に加えて、充放電を行わせる蓄電システム32の個数を示すようにしてもよい。
第一通信部110は、指令値送信手段の例に該当する。
【0048】
第一記憶部180は、上位制御装置11が備える記憶デバイスを用いて構成され、各種情報を記憶する。
第一制御部190は、上位制御装置11の各部を制御して、各種処理を行う。第一制御部190の機能は、上位制御装置11が備えるCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が第一記憶部180からプログラムを読み出して実行することで実行されてもよい。
【0049】
要求量情報取得部191は、サービス実施要求を取得する。例えば、要求量情報取得部191が、第一通信部110の受信信号から、充放電要求量の情報と許容精度の情報とを含むサービス実施要求情報を読み出すようにしてもよい。あるいは、上位制御装置11が、送配電事業者の中央給電指令所に設置されている場合など、上位制御装置11が備えるキーボードおよびマウス等の入力デバイスを用いたユーザ操作によるサービス実施要求の入力を受け付けるようにしてもよい。
【0050】
群指令値算出部192は、蓄電システムの充放電制御の精度に基づいて充放電指令値を算出する。特に、群指令値算出部192は、蓄電システム群の充放電制御の精度に基づいて、蓄電システム群に対する充放電指令値を算出する。
具体的には、群指令値算出部192は、蓄電システム群の充放電における誤差想定値と、サービス実施要求における充放電要求量に対する許容誤差割合上限値とに基づいて、蓄電システム群の充放電量に対する誤差想定値の割合が許容誤差割合上限値となるための充放電量下限値を算出する。
【0051】
ここでいう許容誤差割合上限値は、サービス実施要求における充放電要求量について許容される誤差の最大値(上限値)を誤差割合の形式で示すものである。
サービス実施要求における充放電要求量を、サービス要求量とも称する。許容誤差割合上限値は、充放電制御に対する要求精度をサービス実施要求における充放電要求量に対する許容誤差の最大値の割合で示す。
【0052】
蓄電システム群の充放電における誤差想定値は、その蓄電システム群に含まれる蓄電システム32の充放電における誤差想定値の合計として算出される。
ここで、蓄電システムの充放電制御に含まれる誤差、すなわち、蓄電システムの充放量の誤差は、その蓄電システムのパワーコンディショニングシステムの定格出力に依存していることが多い。蓄電システムのパワーコンディショニングシステムの定格出力を、その蓄電システムの充放電量の定格値とも称する。
また、蓄電システムの充放電制御の精度は、蓄電システムの規模が大きくなるほど高精度化され、例えば、充放電量の定格値に対して5%から1%までの程度の誤差が想定される。
【0053】
そこで、蓄電システム32の充放電における誤差想定値が、電力または電力量の定数値として、蓄電システム32の種類毎に予め取得されていてもよい。この誤差想定値は、例えばその蓄電システム32の充放電量の定格値に依存して、定格値が大きいほどその定格値に対する割合が小さくなる。すなわち、定格値が大きい蓄電システム32ほど充放電制御の精度が高い。
【0054】
群指令値算出部192は、蓄電システム群の充放電量がその蓄電システム群の充放電量下限値以上になるか、あるいは、0になるように、充放電指令値を蓄電システム群に割り当てる。蓄電システム群に対して充放電指令値0を割り当てることは、その蓄電システム群にアンシラリーサービスのための充放電を行わせないことを意味する。
群指令値算出部192は、指令値算出手段の例に該当する。
【0055】
群指令値送信処理部193は、第一通信部110を制御して、蓄電システム群に対する充放電指令を中位制御装置21へ送信させる。または、直接、所定の下位制御装置31に送信させる。この充放電指令は、群指令値算出部192が算出した充放電指令値を示す情報を含む。
【0056】
図3は、中位制御装置21の機能構成の例を示す概略ブロック図である。図3に示す構成で、中位制御装置21は、第二通信部210と、第二記憶部280と、第二制御部290とを備える。第二制御部290は、群指令値取得部291と、個別指令値算出部292と、個別指令値送信処理部293とを備える。
【0057】
第二通信部210は、ゲートウェイ装置91および通信ネットワーク910を介して他の装置と通信を行う。例えば、第二通信部210は、蓄電システム群に対する充放電指令を上位制御装置11から受信する。また、第二通信部210は、蓄電システム32に対する充放電指令を、その蓄電システム32を制御する下位制御装置31へ送信する。すなわち、第二通信部210は、蓄電システム32に対する充放電指令を、その蓄電システム32を備える充放電システム30の下位制御装置31へ送信する。
第二通信部210が送信する充放電指令は、個々の蓄電システム32に対する充放電指令値を示す。
第二通信部210は、指令値送信手段の例に該当する。
【0058】
第二記憶部280は、中位制御装置21が備える記憶デバイスを用いて構成され、各種情報を記憶する。
第二制御部290は、中位制御装置21の各部を制御して、各種処理を行う。第二制御部290の機能は、中位制御装置21が備えるCPUが第二記憶部280からプログラムを読み出して実行することで実行されてもよい。
【0059】
群指令値取得部291は、蓄電システム群に対する充放電指令を取得する。具体的には、群指令値取得部291は、第二通信部210の受信信号から、蓄電システム群に対する充放電指令値の情報を含む充放電指令情報を読み出す。
個別指令値算出部292は、蓄電システム群に対する充放電指令値を、その蓄電システム群に含まれる蓄電システム32に割り当てて、蓄電システム32の各々に対する充放電指令値を決定する。
【0060】
中位制御システム20について上述したように、個別指令値算出部292が、蓄電システム群に対する充放電指令値を、その蓄電システム群に含まれる蓄電システム32の個数で除算して、蓄電システム32の各々に均等に充放電量を割り当てるようにしてもよい。あるいは、個別指令値算出部292が、蓄電システム32毎に設定されている充放電可能量の範囲内で、蓄電システム群毎の充放電量を個々の蓄電システム32に割り当てるようにしてもよい。
個別指令値算出部292は、指令値算出手段の例に該当する。
【0061】
個別指令値送信処理部293は、第二通信部210を制御して、蓄電システム32に対する充放電指令を下位制御装置31へ送信させる。この充放電指令は、個別指令値算出部292が算出した充放電指令値を示す情報を含む。
【0062】
図4は、蓄電システム群の構成例を示す図である。図4の例では、充放電システム30の例として、Aタイプ充放電システム30Aと、Bタイプ充放電システム30Bと、Cタイプ充放電システム30Cとが示されている。
Aタイプ充放電システム30Aは、Aタイプ下位制御装置31Aと、Aタイプ蓄電システム32Aとを備える。Bタイプ充放電システム30Bは、Bタイプ下位制御装置31Bと、Bタイプ蓄電システム32Bとを備える。Cタイプ充放電システム30Cは、Cタイプ下位制御装置31Cと、Cタイプ蓄電システム32Cとを備える。
【0063】
Aタイプ下位制御装置31A、Bタイプ下位制御装置31BおよびCタイプ下位制御装置31Cは、いずれも下位制御装置31の例に該当する。Aタイプ蓄電システム32A、Bタイプ蓄電システム32BおよびCタイプ蓄電システム32Cは、いずれも蓄電システム32の例に該当する。
【0064】
Aタイプ充放電システム30Aは、Aタイプ蓄電システム群50Aに含まれる。これにより、Aタイプ蓄電システム32Aは、Aタイプ蓄電システム群50Aに含まれる。Bタイプ充放電システム30Bは、Bタイプ蓄電システム群50Bに含まれる。これにより、Bタイプ蓄電システム32Bは、Bタイプ蓄電システム群50Bに含まれる。Cタイプ充放電システム30Cは、Cタイプ蓄電システム群50Cに含まれる。これにより、Cタイプ蓄電システム32Cは、Cタイプ蓄電システム群50Cに含まれる。
蓄電システム群を蓄電システム群50とも表記する。Aタイプ蓄電システム群50A、Bタイプ蓄電システム群50B、Cタイプ蓄電システム群50Cは、何れも蓄電システム群50の例に該当する。
【0065】
図5は、図4に示される蓄電システム32の例を示す図である。図5では、図4に示されるAタイプ蓄電システム32A、Bタイプ蓄電システム32B、Cタイプ蓄電システム32Cの各々について、充放電量の定格値と、充放電における誤差(想定値)と、充放電量の定格値における誤差の割合と、蓄電システム群に含まれる蓄電システム32の台数(個数)と、蓄電システム群の充放電量の定格値と、電池群の充放電における誤差(想定値)と、誤差を50%とするための充放電量と、誤差を10%とするための充放電量とが示されている。
充放電量の定格値は、PCS定格で示されている。PCS定格は、蓄電システムのパワーコンディショニングシステムの定格出力である。PCS定格は、蓄電システム32としての定格出力といえる。
【0066】
Aタイプ蓄電システム32Aの充放電量の定格値は、5000ワットである。Bタイプ蓄電システム32Bの充放電量の定格値は、10000ワットである。Cタイプ蓄電システム32Cの充放電量の定格値は、250000ワットである。
Aタイプ蓄電システム32Aの充放電における誤差(想定値)は、250ワットである。Bタイプ蓄電システム32Bの充放電における誤差(想定値)は、250ワットである。Cタイプ蓄電システム32Cの充放電における誤差(想定値)は、2500ワットである。
【0067】
このように、図5の例では、蓄電システム32の出力にかかわらず一定の誤差が見込まれる場合の例が示されている。ただし、蓄電システム32の出力に応じて誤差が変動してもよい。蓄電システム32の出力が定まれば誤差が定まり、かつ、蓄電システム32の出力が大きいほど出力に対する誤差の割合が小さくなればよい。
【0068】
充放電量の定格値における誤差の割合は、誤差(想定値)を充放電量の定格値で除算した値である。例えば、Aタイプ蓄電システム32Aの場合、誤差250ワットを定格5000ワットで除算して、5%と算出される。同様に計算して、Bタイプ蓄電システム32B、Cタイプ蓄電システム32Cそれぞれの、充放電量の定格値における誤差の割合は、2.5%、1%である。
【0069】
図5の例で、Aタイプ蓄電システム群50Aは、1000台のAタイプ蓄電システム32Aを含む。Bタイプ蓄電システム群50Bは、100台のBタイプ蓄電システム32Bを含む。Cタイプ蓄電システム群50Cは、10台のCタイプ蓄電システム32Cを含む。
蓄電システム群の充放電量の定格値は、蓄電システム群に含まれる蓄電システム32の定格値の合計として算出される。例えば、Aタイプ蓄電システム群50Aの充放電量の定格値は、Aタイプ蓄電システム32Aの充放電量の定格値5000ワットに、Aタイプ蓄電システム32Aの台数1000台を乗算して、5000キロワットと算出される。同様に計算して、Bタイプ蓄電システム群50B、Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電量の定格値は、それぞれ1000キロワット、2500キロワットと算出される。
【0070】
蓄電システム群の充放電の誤差は、蓄電システム群に含まれる蓄電システム32の充放電の誤差の合計として算出される。例えば、Aタイプ蓄電システム群50Aの充放電の誤差は、Aタイプ蓄電システム32Aの充放電時の誤差250ワットに、Aタイプ蓄電システム32Aの台数1000台を乗算して、250キロワットと算出される。同様に計算して、Bタイプ蓄電システム群50B、Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電の誤差は、それぞれ25キロワット、25キロワットと算出される。
【0071】
誤差が50%となるための充放電量は、誤差を50%で除算することで求まる。すなわち、誤差が50%となるための充放電量は、誤差を2倍することで求まる。
例えば、Aタイプ蓄電システム32Aの充放電の誤差が50%となるためには、Aタイプ蓄電システム32Aは、誤差250ワットの2倍の500ワットの充放電を行う。Aタイプ蓄電システム32Aの充放電量が500ワット以上であれば、誤差は50%以下になる。
【0072】
同様に計算して、Aタイプ蓄電システム群50Aの充放電の誤差が50%となるためには、Aタイプ蓄電システム群50Aは、誤差250キロワットの2倍の500キロワットの充放電を行う。Aタイプ蓄電システム群50Aの充放電量が500キロワット以上であれば、誤差は50%以下になる。
【0073】
Bタイプ蓄電システム32Bの充放電の誤差が50%となるためには、Bタイプ蓄電システム32Bは、誤差250ワットの2倍の500ワットの充放電を行う。Bタイプ蓄電システム32Bの充放電量が500ワット以上であれば、誤差は50%以下になる。
Bタイプ蓄電システム群50Bの充放電の誤差が50%となるためには、Bタイプ蓄電システム群50Bは、誤差25キロワットの2倍の50キロワットの充放電を行う。Bタイプ蓄電システム群50Bの充放電量が50キロワット以上であれば、誤差は50%以下になる。
【0074】
Cタイプ蓄電システム32Cの充放電の誤差が50%となるためには、Cタイプ蓄電システム32Cは、誤差2500ワットの2倍の5000ワットの充放電を行う。Cタイプ蓄電システム32Cの充放電量が5000ワット以上であれば、誤差は50%以下になる。
Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電の誤差が50%となるためには、Cタイプ蓄電システム群50Cは、誤差25キロワットの2倍の50キロワットの充放電を行う。Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電量が50キロワット以上であれば、誤差は50%以下になる。
誤差が50%となるための充放電量は、許容誤差割合上限値が50%に設定されている場合の、充放電量下限値の例に該当する。充放電量下限値は、誤差を許容誤差割合上限値以下にするために必要な充放電量の下限値(最小値)である。充放電量下限値は、誤差想定値(想定される誤差)を許容誤差割合上限値で除算して算出される。
【0075】
誤差が10%となるための充放電量は、誤差を10%で除算することで求まる。すなわち、誤差が10%となるための充放電量は、誤差を10倍することで求まる。
例えば、Aタイプ蓄電システム32Aの充放電の誤差が10%となるためには、Aタイプ蓄電システム32Aは、誤差250ワットの10倍の2500ワットの充放電を行う。Aタイプ蓄電システム32Aの充放電量が2500ワット以上であれば、誤差は10%以下になる。
【0076】
同様に計算して、Aタイプ蓄電システム群50Aの充放電の誤差が10%となるためには、Aタイプ蓄電システム群50Aは、誤差250キロワットの10倍の2500キロワットの充放電を行う。Aタイプ蓄電システム群50Aの充放電量が2500キロワット以上であれば、誤差は10%以下になる。
【0077】
Bタイプ蓄電システム32Bの充放電の誤差が10%となるためには、Bタイプ蓄電システム32Bは、誤差250ワットの10倍の2500ワットの充放電を行う。Bタイプ蓄電システム32Bの充放電量が2500ワット以上であれば、誤差は10%以下になる。
Bタイプ蓄電システム群50Bの充放電の誤差が10%となるためには、Bタイプ蓄電システム群50Bは、誤差25キロワットの10倍の250キロワットの充放電を行う。Bタイプ蓄電システム群50Bの充放電量が250キロワット以上であれば、誤差は10%以下になる。
【0078】
Cタイプ蓄電システム32Cの充放電の誤差が10%となるためには、Cタイプ蓄電システム32Cは、誤差2500ワットの10倍の25000ワットの充放電を行う。Cタイプ蓄電システム32Cの充放電量が25000ワット以上であれば、誤差は10%以下になる。
Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電の誤差が10%となるためには、Cタイプ蓄電システム群50Cは、誤差25キロワットの10倍の250キロワットの充放電を行う。Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電量が250キロワット以上であれば、誤差は10%以下になる。
誤差が10%となるための充放電量は、許容誤差割合上限値が10%に設定されている場合の、充放電量下限値の例に該当する。
【0079】
図6は、蓄電システム32の充放電の制御の第1例を示す図である。図6は、図4および図5を参照して説明した電力システム1の構成例で、電力システム1がLFCを行う場合の第1例を示している。
図6の例で、Aタイプ蓄電システム群50A、Bタイプ蓄電システム群50B、および、Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電量の定格値の合計は、5000+1000+2500=8500キロワットである。図6の例ではエネルギーマネジメントサービスは行われず、8500キロワットの充放電量を全てLFCに使用できる場合を考える。電力システム1は、0から8500キロワットまでの範囲内でLFCのための充放電を行う。
この8500キロワットを最大値100%として規格化して「1」で表すことにし、制御の最小刻みを1%の85キロワットとする。規格化された値では、1%は「0.01」と表される。
【0080】
例えば、中央給電指令所からのLFC信号が0.01である場合、このLFC信号は、8500×0.01=85キロワットの充放電の要求を示している。また、充放電の要求精度は、サービス要求量に対する誤差50%以内である。
上位制御装置11は、図5に示される、誤差が50%の場合の蓄電システム群50への配分量以上の充放電量を蓄電システム群50に割り当てるように、蓄電システム群50の各々への充放電指令値の割当を決定する。図6の例では、上位制御装置11は、85キロワットの充放電量を全てBタイプ蓄電システム群50Bに割り当てている。
【0081】
上位制御装置11は、Bタイプ蓄電システム群50Bの充放電量の定格値1000キロワットを「1」として規格化したときの85キロワットを示す値「0.085」を算出し、Bタイプ蓄電システム群50Bに対する変換信号として0.085を中位制御装置21へ送信する。ここでいう変換信号は、LFC信号を変換した信号である。変換信号は、充放電指令値の例に該当する。
【0082】
中位制御装置21は、上位制御装置11からの変換信号を、Bタイプ蓄電システム群50Bに含まれるBタイプ充放電システム30Bの各々に送信(転送)する。一方、中位制御装置21は、Aタイプ蓄電システム群50Aに含まれるAタイプ充放電システム30A、および、Cタイプ蓄電システム群50Cに含まれるCタイプ充放電システム30Cの各々に対しては、充放電指令値を送信しない。
【0083】
中位制御装置21がBタイプ充放電システム30Bに送信する変換信号0.085は、Bタイプ蓄電システム32Bの充放電量の定格値10000ワットを「1」として規格化した場合の850ワットを示す。100台のBタイプ蓄電システム32Bが何れも850ワットの充放電を行うことで、Bタイプ蓄電システム群50B全体として85キロワットの充放電を行う。
【0084】
このように、変換信号として充放電量の定格値に対する割合を示す信号を用いることで、中位制御装置21は、上位制御装置11からの変換信号をそのままBタイプ充放電システム30Bの各々に送信(転送)することができる。
Bタイプ充放電システム30Bの各々は、変換信号に従って850ワットの充放電を行う。
図6の例では、LFCのための充放電電力が85キロワットであるのに対し、誤差は25キロワットである。充放電電力に対する誤差の割合は、25/85≒29%であり、50%以内との条件を満たしている。
【0085】
図7は、蓄電システム32の充放電の制御の第2例を示す図である。図7は、図4および図5を参照して説明した電力システム1の構成例で、電力システム1がLFCを行う場合の第2例を示している。
図7の例でもエネルギーマネジメントサービスは行われず、8500キロワットの充放電量を全てLFCに使用できる。電力システム1は、0から8500キロワットまでの範囲内でLFCのための充放電を行う。
この8500キロワットを最大値100%として規格化して「1」で表すことにし、制御の最小刻みを1%の85キロワットとする。規格化された値では、1%は「0.01」と表される。
【0086】
図7の例では、中央給電指令所からのLFC信号は0.16であり、このLFC信号は、8500×0.16=1360キロワットの充放電の要求を示している。また、充放電の要求精度は、サービス要求量に対する誤差50%以内である。
図7の例では、充放電要求量が、Aタイプ蓄電システム群50Aで誤差を50%以内にするために必要な500キロワット以上になっている。したがって、Aタイプ蓄電システム群50Aへの充放電指令値の割当が可能である。
【0087】
そこで、図7の例で上位制御装置11は、1000キロワットの充放電をAタイプ蓄電システム群50Aに割り当て、180キロワットの充放電をBタイプ蓄電システム群50Bに割り当て、180キロワットの充放電をCタイプ蓄電システム群50Cに割り当てる。
【0088】
図6の例では、上位制御装置11が、Bタイプ蓄電システム群50Bにのみ充放電指令値を割り当てているのに対し、図7の例では、上位制御装置11が、Aタイプ蓄電システム群50A、Bタイプ蓄電システム群50BおよびCタイプ蓄電システム群50Cの何れにも充放電指令値を割り当てている。図7の例では、この点で、Bタイプ蓄電システム群50Bに含まれるBタイプ充放電システム30Bの負担の軽減を図ることができる。また、図7の例では、Aタイプ蓄電システム群50Aに含まれるAタイプ充放電システム30A、および、Cタイプ蓄電システム群50Cに含まれるCタイプ充放電システム30Cの、アンシラリーサービスへの参加機会の均等化を図ることができる。
【0089】
上位制御装置11は、Aタイプ蓄電システム群50Aの充放電量の定格値5000キロワットを「1」として規格化したときの1000キロワットを示す値「0.2」を算出し、Aタイプ蓄電システム群50Aに対する変換信号として0.2を中位制御装置21へ送信する。
【0090】
また、上位制御装置11は、Bタイプ蓄電システム群50Bの充放電量の定格値1000キロワットを「1」として規格化したときの180キロワットを示す値「0.18」を算出し、Bタイプ蓄電システム群50Bに対する変換信号として0.18を中位制御装置21へ送信する。
【0091】
また、上位制御装置11は、Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電量の定格値2500キロワットを「1」として規格化したときの180キロワットを示す値「0.072」を算出し、Cタイプ蓄電システム群50Cに対する変換信号として0.072を中位制御装置21へ送信する。
【0092】
中位制御装置21は、上位制御装置11からのAタイプ蓄電システム群50Aに対する変換信号を、Aタイプ蓄電システム群50Aに含まれるAタイプ充放電システム30Aの各々に送信(転送)する。中位制御装置21がAタイプ充放電システム30Aに送信する変換信号0.2は、Aタイプ蓄電システム32Aの充放電量の定格値5000ワットを「1」として規格化した場合の1000ワットを示す。1000台のAタイプ蓄電システム32Aが何れも1000ワットの充放電を行うことで、Aタイプ蓄電システム群50A全体として1000の充放電を行う。
【0093】
また、中位制御装置21は、上位制御装置11からの変換信号を、Bタイプ蓄電システム群50Bに含まれるBタイプ充放電システム30Bの各々に送信(転送)する。中位制御装置21がBタイプ充放電システム30Bに送信する変換信号0.18は、Bタイプ蓄電システム32Bの充放電量の定格値10000ワットを「1」として規格化した場合の1800ワットを示す。100台のBタイプ蓄電システム32Bが何れも1800ワットの充放電を行うことで、Bタイプ蓄電システム群50B全体として180キロワットの充放電を行う。
【0094】
また、中位制御装置21は、上位制御装置11からの変換信号を、Cタイプ蓄電システム群50Cに含まれるCタイプ充放電システム30Cの各々に送信(転送)する。中位制御装置21がCタイプ充放電システム30Cに送信する変換信号0.072は、Cタイプ蓄電システム32Cの充放電量の定格値250000ワットを「1」として規格化した場合の18000ワットを示す。10台のCタイプ蓄電システム32Cが何れも18000ワットの充放電を行うことで、Cタイプ蓄電システム群50C全体として180キロワットの充放電を行う。
【0095】
Aタイプ充放電システム30Aの各々は、変換信号に従って1000ワットの充放電を行う。Bタイプ充放電システム30Bの各々は、変換信号に従って1800ワットの充放電を行う。Cタイプ充放電システム30Cの各々は、変換信号に従って18000ワットの充放電を行う。
図7の例では、LFCのための充放電電力が1360キロワットであるのに対し、誤差は250+25+25=300キロワットである。充放電電力に対する誤差の割合は、300/1360≒22%であり、50%以内との条件を満たしている。
【0096】
図8は、蓄電システム32の充放電の制御の第3例を示す図である。図8は、図4および図5を参照して説明した電力システム1の構成例で、電力システム1がLFCを行う場合の第3例を示している。
図8の例でもエネルギーマネジメントサービスは行われず、8500キロワットの充放電量を全てLFCに使用できる。電力システム1は、0から8500キロワットまでの範囲内でLFCを行う。
この8500キロワットを最大値100%として規格化して「1」で表すことにし、制御の最小刻みを1%の85キロワットとする。規格化された値では、1%は「0.01」と表される。
【0097】
図8の例でも、中央給電指令所からのLFC信号は0.16であり、このLFC信号は、8500×0.16=1360キロワットの充放電の要求を示している。また、充放電の要求精度は、サービス要求量に対する誤差50%以内である。
一方、図8の例では、蓄電システム群50への充放電量の割当が、図7の例の場合と異なる。図8では、上位制御装置11は、660kWの充放電をBタイプ蓄電システム群50Bに割り当て、700キロワットの充放電をCタイプ蓄電システム群50Cに割り当てる。
【0098】
上位制御装置11は、Bタイプ蓄電システム群50Bの充放電量の定格値1000キロワットを「1」として規格化したときの660キロワットを示す値「0.66」を算出し、Bタイプ蓄電システム群50Bに対する変換信号として0.66を中位制御装置21へ送信する。
【0099】
また、上位制御装置11は、Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電量の定格値2500キロワットを「1」として規格化したときの700キロワットを示す値「0.28」を算出し、Cタイプ蓄電システム群50Cに対する変換信号として0.28を中位制御装置21へ送信する。
【0100】
中位制御装置21は、上位制御装置11からの変換信号を、Bタイプ蓄電システム群50Bに含まれるBタイプ充放電システム30Bの各々に送信(転送)する。中位制御装置21がBタイプ充放電システム30Bに送信する変換信号0.66は、Bタイプ蓄電システム32Bの充放電量の定格値10000ワットを「1」として規格化した場合の6600ワットを示す。100台のBタイプ蓄電システム32Bが何れも6600ワットの充放電を行うことで、Bタイプ蓄電システム群50B全体として660キロワットの充放電を行う。
【0101】
また、中位制御装置21は、上位制御装置11からの変換信号を、Cタイプ蓄電システム群50Cに含まれるCタイプ充放電システム30Cの各々に送信(転送)する。中位制御装置21がCタイプ充放電システム30Cに送信する変換信号0.28は、Cタイプ蓄電システム32Cの充放電量の定格値250000ワットを「1」として規格化した場合の70000ワットを示す。10台のCタイプ蓄電システム32Cが何れも70000ワットの充放電を行うことで、Cタイプ蓄電システム群50C全体として700キロワットの充放電を行う。
一方、中位制御装置21は、Aタイプ蓄電システム群50Aに含まれるAタイプ充放電システム30Aの各々に対しては、充放電指令値を送信しない。
【0102】
Bタイプ充放電システム30Bの各々は、変換信号に従って6600ワットの充放電を行う。Cタイプ充放電システム30Cの各々は、変換信号に従って70000ワットの充放電を行う。
【0103】
図8の例では、LFCのための充放電電力が1360キロワットであるのに対し、誤差は25+25=50キロワットである。充放電電力に対する誤差の割合は、50/1360≒4%であり、50%以内との条件を満たしている。
また、図7の例と図8の例とで、LFCのための充放電電力は何れも1360キロワットである。一方、図7の例では誤差が約22%であるのに対し、図8の例では誤差が約4%と、誤差が小さくなっている。
【0104】
このように、上位制御装置11が充放電指令値を割り当てる蓄電システム群50を選択することで、誤差を小さくできる場合がある。
例えば、要求される充放電制御の精度が、誤差50%以内から誤差10%以内までの範囲で変動する場合に、上位制御装置11が、許容される誤差に応じて充放電指令値を割り当てる蓄電システム群50を切り替えるようにしてもよい。例えば、許容される誤差が小さいときは、上位制御装置11が、誤差が小さくなるように蓄電システム群50を選択して充放電指令値を割り当てるようにしてもよい。一方、許容される誤差が大きいときは、上位制御装置11が、サービス参加の機会が均等化されるように蓄電システム群50を選択して充放電指令値を割り当てるようにしてもよい。
上位制御装置11が、サービス参加の機会の指標値として、蓄電システム群50毎の、充放電実施時間の履歴、充放電電力量の履歴、または、充放電の実施によるサービスへの参加回数の履歴の少なくとも何れか1つを用いるようにしてもよい。
【0105】
図9は、蓄電システム32の充放電の制御の第4例を示す図である。図9は、図4および図5を参照して説明した電力システム1の構成例で、電力システム1がLFCを行う場合の第4例を示している。
図9は、Aタイプ充放電システム30Aが、LFCとエネルギーマネジメントサービスとを同時に行う場合の例を示している。
【0106】
ここで、誤差の最小値の目標が、充放電量の10%に設定されているものとする。充放電量に対する割合で示される誤差の最小値の目標を、誤差割合下限値とも称する。
図5に示すように、誤差10%を達成するためには、Aタイプ蓄電システム群50Aでは2500キロワット以上の充放電量を行う必要がある。また、Bタイプ蓄電システム群50Bでは250キロワット以上の充放電量を行う必要がある。Cタイプ蓄電システム群50Cでも250キロワット以上の充放電量を行う必要がある。
【0107】
これらの充放電量を確保するために、誤差の最小値の目標以上の充放電量を、LFCのための充放電量として割り当てておく。図9の例では、Aタイプ蓄電システム群50Aの充放電量の定格値5000キロワットのうち3500キロワットがLFCに割り当てられ、1500キロワットがエネルギーマネジメントサービスに割り当てられているものとする。また、Bタイプ蓄電システム群50Bの充放電量の定格値1000キロワットのうち500キロワットがLFCに割り当てられ、500キロワットがエネルギーマネジメントサービスに割り当てられているものとする。Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電量の定格値2500キロワットのうち2000キロワットがLFCに割り当てられ、500キロワットがエネルギーマネジメントサービスに割り当てられているものとする。
【0108】
LFCに割り当てられた充放電量の合計値3500+500+2000=6000キロワットをLFCに使用できる。電力システム1は、0から6000キロワットまでの範囲内でLFCのための充放電を行う。
この6000キロワットを最大値100%として規格化して「1」で表すことにし、制御の最小刻みを1%の60キロワットとする。規格化された値では、1%は「0.01」と表される。
【0109】
図9の例では、中央給電指令所からのLFC信号は0.01であり、このLFC信号は、6000×0.01=60キロワットの充放電の要求を示している。また、充放電の要求精度は、サービス要求量に対する誤差50%以内である。
図9の例では、上位制御装置11は、60キロワットの充放電量を全てCタイプ蓄電システム群50Cに割り当てている。
【0110】
上位制御装置11は、Cタイプ蓄電システム群50Cの充放電量の定格値2500キロワットを「1」として規格化したときの60キロワットを示す値「0.03」を算出し、Cタイプ蓄電システム群50Cに対する変換信号として0.03を中位制御装置21へ送信する。
【0111】
中位制御装置21は、上位制御装置11からの変換信号を、Cタイプ蓄電システム群50Cに含まれるCタイプ充放電システム30Cの各々に送信(転送)する。一方、中位制御装置21は、Aタイプ蓄電システム群50Aに含まれるAタイプ充放電システム30A、および、Bタイプ蓄電システム群50Bに含まれるBタイプ充放電システム30Bの各々に対しては、充放電指令値を送信しない。
【0112】
中位制御装置21がCタイプ充放電システム30Cに送信する変換信号0.03は、Cタイプ蓄電システム32Cの充放電量の定格値250000ワットを「1」として規格化した場合の6000ワットを示す。10台のCタイプ蓄電システム32Cが何れも6000ワットの充放電を行うことで、Cタイプ蓄電システム群50C全体として60キロワットの充放電を行う。
Cタイプ充放電システム30Cの各々は、変換信号に従って6000ワットの充放電を行う。
【0113】
図9の例では、LFCのための充放電電力が60キロワットであるのに対し、誤差は25キロワットである。充放電電力に対する誤差の割合は、25/60≒42%であり、50%以内との条件を満たしている。
サービス実施要求における充放電要求量が大きくなれば、充放電電力に対する誤差の割合がより小さくなり、また、蓄電システム群50に対する充放電指令値の割当方法を選択できるようになる。
【0114】
例えば、LFC信号が0.16の場合、充放電要求量は、6000×0.16=960キロワットである。この場合、上位制御装置11が、Bタイプ蓄電システム群50Bのみに充放電指令値を割り当てれば、充放電電力に対する誤差の割合は、25/960≒3%となる。従って、放電電力に対する誤差の割合を一時的に10%以下にするといった要求にも対応することができる。
【0115】
一方、許容誤差が50%のままであるときは、上位制御装置11が、Bタイプ蓄電システム群50Bに加えて、あるいは代えて、Aタイプ蓄電システム群50A、または、Cタイプ蓄電システム群50C、あるいはこれら両方に充放電指令値を割り当てるようにしてもよい。これにより、上位制御装置11は、Bタイプ蓄電システム群50Bに含まれるBタイプ充放電システム30Bの負担の軽減を図ることができる。また、上位制御装置11は、Aタイプ蓄電システム群50Aに含まれるAタイプ充放電システム30A、および、Cタイプ蓄電システム群50Cに含まれるCタイプ充放電システム30Cの、アンシラリーサービスへの参加機会の均等化を図ることができる。
【0116】
また、誤差の最小値の目標を設定しておくことで、充放電電力に対する誤差の割合の要求値を変更可能であり、柔軟な運用が可能である。例えば、上述したように、許容される誤差が小さいときは、上位制御装置11が、誤差が小さくなるように蓄電システム群50を選択して充放電指令値を割り当てるようにしてもよい。一方、許容される誤差が大きいときは、上位制御装置11が、サービス参加の機会が均等化されるように蓄電システム群50を選択して充放電指令値を割り当てるようにしてもよい。
【0117】
なお、エネルギーマネジメントサービスのための充放電に制御精度が求められる場合、下位制御装置31が、充放電電力の下限値を設定することで、充放電電力に対する誤差の割合が許容値以下になるようにしてもよい。
【0118】
上述したように、上位制御装置11が、充放電システム30のアンシラリーサービスへの参加機会の均等化を図るように、蓄電システム群50に対する充放電指令値の割当を決定するようにしてもよい。
例えば、上位制御装置11が、サービス参加の機会の指標値として、蓄電システム群50毎の、充放電実施時間の履歴、充放電電力量の履歴、または、充放電の実施によるサービスへの参加回数の履歴の少なくとも何れか1つを用いるようにしてもよい。そして、上位制御装置11が、サービス参加の機会が少ないと評価した蓄電システム群50に対して、優先的に充放電指令値を割り当ててサービスに参加させるようにしてもよい。
【0119】
一方、周波数調整サービスなど制御精度が重要なサービスでは、制御精度が高い蓄電システム32に対する評価を高くしてもよい。例えば、制御精度が高い蓄電システム32に対するインセンティブ(Incentive)を比較的高くし、制御精度が低い蓄電システム32に対するインセンティブを比較的低くするようにしてもよい。または、制御精度が高い蓄電システム32に対するサービス参加回数を多くしてもよい。
【0120】
なお、同一の蓄電システム群50に含まれる蓄電システム32であっても、例えば、エネルギーマネジメントサービスの実施状況に応じて、アンシラリーサービスのために割り当てられる充放電量が異なる場合があり得る。これにより、蓄電システム群50に含まれる一部の蓄電システム32について、アンシラリーサービスのために割り当てられる充放電量が、上位制御装置11が求める充放電量よりも少ない場合があり得る。この場合でも、蓄電システム群50全体として上位制御装置11が求める充放電量を確保できれば、上述したような運用が可能である。
【0121】
なお、蓄電システム群50に含まれる蓄電システム32のうち一部の蓄電システム32にのみに充放電を行わせることで、蓄電システム32の1台当たりの充放電量を大きくすることができ、充放電量に対する誤差の割合を小さくすることができる。
例えば、サービス実施要求における充放電要求量が80キロワットである場合、100台のBタイプ蓄電システム32Bがそれぞれ800ワットの充放電を行うことで、80キロワットの充放電を実施できる。この場合の充放電量に対する誤差の割合は、25/80≒31パーセントとなる。
【0122】
ここで、100台のBタイプ蓄電システム32Bのうち10台のみがそれぞれ8000ワットの充放電を行うようにしても、80キロワットの充放電を実施できる。この場合、10台のBタイプ蓄電システム32Bによる誤差は、250×10=2500ワット=2.5キロワットとなる。充放電量に対する誤差の割合は、2.5/80≒3パーセントとなる。
【0123】
このように、蓄電システム群50に含まれる一部の蓄電システム32のみに充放電を行わせる場合、上位制御装置11、その蓄電システム群50に対する充放電指令値に加えて、充放電を行わせる蓄電システム32の台数を中位制御装置21に通知するようにしてもよい。そして、中位制御装置21が、蓄電システム群50に含まれる蓄電システム32のうち、通知された台数の蓄電システム32を選択して充放電を行わせるようにしてもよい。
このとき、中位制御装置21が、選択する蓄電システム32を時分割で切り替えて、サービス参加機会の均等化を図るようにしてもよい。
【0124】
図10は、上位制御装置11が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
図10の処理で、要求量情報取得部191は、アンシラリーサービスにおける充放電要求量を示す情報と、許容誤差を示す情報とを取得する(ステップS111)。充放電要求量を示す情報、および、許容誤差を示す情報を、要求量情報とも称する。
誤差の目標最小割合が設定される場合は、要求量情報取得部191は、さらに、誤差の目標最小割合を示す情報を取得する。
【0125】
次に、群指令値算出部192は、蓄電システム群50毎に、許容誤差を達成するための充放電電力下限値を算出する(ステップS112)。
誤差の目標最小割合が設定されている場合、群指令値算出部192は、さらに、誤差の目標最小割合を達成するために必要な充放電量を、蓄電システム群50毎に算出する。この充放電量を確保するように、アンシラリーサービスのための充放電量とエネルギーマネジメントサービスのための充放電量との割り当てが行われる。上位制御装置11が、アンシラリーサービスのための充放電量とエネルギーマネジメントサービスのための充放電量との割り当てを行い、割り当てられた充放電量を下位制御装置31に通知するようにしてもよい。
【0126】
そして、群指令値算出部192は、充放電を行わせる蓄電システム群50、および、それら蓄電システム群50の充放電量を決定する(ステップS113)。
具体的には、群指令値算出部192は、蓄電システム群50の各々の充放電量が、充放電電力下限値以上、かつ、アンシラリーサービスに割り当てられている充放電量以下の範囲内、または0になるように、充放電指令値を蓄電システム群50に割り当てる。充放電指令値0を蓄電システム群50に割り当てることは、その蓄電システム群にアンシラリーサービスのための充放電を行わせないことを意味する。
【0127】
次に、第一通信部110は、群指令値送信処理部193の制御に従って、蓄電システム群50毎の充放電指令値を示す充放電指令を、中位制御装置21に送信する(ステップS114)。
ステップS114の後、上位制御装置11は図10の処理を終了する。
【0128】
図11は、中位制御装置21が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
図11の処理で、群指令値取得部291は、上位制御装置11からの充放電指令に示される、蓄電システム群50に対する充放電指令値の情報を取得する(ステップS121)。
【0129】
次に、個別指令値算出部292は、充放電システム30毎に対する充放電指令値を決定する(ステップS122)。蓄電システム群50に対する充放電指令値が、アンシラリーサービスに割り当てられた充放電量に対する割合で示される場合、個別指令値算出部292が、その割合をそのまま、充放電システム30毎に対する充放電指令値を示す情報として用いるようにしてもよい。
【0130】
次に、第二通信部210は、個別指令値送信処理部293の制御に従って、充放電システム30毎の充放電指令値を示す充放電指令を、充放電システム30に送信する(ステップS123)。
ステップS123の後、中位制御装置21は、図11の処理を終了する。
【0131】
以上のように、群指令値算出部192は、複数の蓄電システム32を含む蓄電システム群50の充放電制御の精度に基づいて、蓄電システム群50、または、蓄電システム群50に含まれる蓄電システム32の少なくとも何れかに対する充放電指令値を算出する。第一通信部110は、群指令値算出部192が算出した充放電指令値を送信する。
これにより、群指令値算出部192は、蓄電システム32の充放電制御の精度を考慮して充放電指令値を決定することができ、この点で、充放電制御の精度の要求に対応することができる。
【0132】
また、上位制御装置11によれば、蓄電システム群毎に充放電の精度を考慮することで、求められる誤差が異なる様々な目的(サービス)に対して、パワーコンディショニングシステムの定格出力が異なり充放電制御の精度が異なる蓄電システムを複数組み合わせて統合制御する場合でも、電力システム1全体のトータル誤差を一定範囲内(求められる誤差内)に収めることが可能となる。
【0133】
上位制御装置11によれば、充放電量の定格値が大きな蓄電システム32に対する仕様要求として、低出力帯での誤差を過剰に小さくすること、および、充放電量の定格値の小さな蓄電システム32に対する仕様要求として、定格値が大きな蓄電システム32と同等の精度を要求することの何れも回避することができ、この点で、蓄電システム32の単価を低コストに抑えられる。蓄電システム32のコストがネックになる点を回避できる点で、電力システム1をいろいろな目的に活用でき、蓄電システム32の普及拡大に寄与することができる。
【0134】
上位制御装置11によれば、複数の蓄電システム32を統合制御し、周波数調整サービスに活用する場合においても、充放電量の定格値の大きな蓄電システム32から小さな蓄電システム32まで幅広く活用することが可能となり、この点で、周波数制御に活用可能な蓄電システム32の確保が容易になる。
【0135】
また、蓄電システム32を蓄電システム群50にグループ化することで、群指令値算出部192は、蓄電システム群50毎の充放電量を決定すればよく、蓄電システム32毎の充放電量を直接決定する場合よりも処理を簡単にすることができる。
【0136】
また、群指令値算出部192は、蓄電システム群50の充放電における誤差想定値と、充放電制御に対する要求精度をサービス実施要求における充放電要求量に対する許容誤差割合上限値とに基づいて、蓄電システム群50の充放電量に対する許容誤差の最大値の割合で示す誤差想定値の割合が許容誤差割合上限値となるための充放電量下限値を算出する。そして、群指令値算出部192は、充放電量下限値以上の充放電指令値を算出する。
群指令値算出部192は、個々の蓄電システム群50について許容誤差割合上限値を満たすように、蓄電システム群50に対する充放電指令値を決定すればよく、他の蓄電システム群50の充放電指令値との関係で許容誤差割合上限値を満たすか否かを判定する必要は無い。この点で、群指令値算出部192が行う処理を簡単にすることができる。
【0137】
また、群指令値算出部192は、誤差想定値と、サービス実施要求における充放電要求量に対して設定される誤差割合下限値とに基づいて、蓄電システム群50の充放電量に対する誤差想定値の割合が誤差割合下限値となるための充放電量上限値最小値を算出する。そして、群指令値算出部192は、充放電指令値の上限値を、充放電量上限値最小値以上の値に設定する。
【0138】
これにより、群指令値算出部192は、誤差割合下限値を達成するように、蓄電システム群50に対する充放電指令値を決定することができる。
また、充放電システム30は、充放電電力量上限値分の充放電量をアンシラリーサービス用に確保した残りの充放電量を、エネルギーマネジメントサービスに用いることができる。これにより、充放電システム30は、アンシラリーサービスのための充放電と、エネルギーマネジメントサービスのための充放電とを同時に実施できる。
【0139】
また、群指令値算出部192は、誤差想定値を前記許容誤差割合上限値で除算して、前記充放電量下限値を算出する。
このように、群指令値算出部192は、簡単な計算で充放電量下限値を算出することができる。
【0140】
また、群指令値算出部192は、蓄電システム群50毎の、充放電実施時間の履歴、充放電電力量の履歴、または、充放電の実施によるサービスへの参加回数の履歴の少なくとも何れか1つに基づいて、複数の蓄電システム群50のうち充放電を行わせる蓄電システム群50を決定する。
これにより、群指令値算出部192は、充放電システム30のサービス(アンシラリーサービス)への参加機会の公平化を図ることができる。
【0141】
また、群指令値算出部192は、蓄電システム群50の充放電における誤差想定値と、サービス実施要求における充放電要求量に対する許容誤差割合上限値とに基づいて、複数の蓄電システム群のうち充放電を行わせる蓄電システム群50を決定する。
群指令値算出部192は、充放電を行わせる蓄電システム群50を決定することで、許容誤差割合上限値を達成することができる。
【0142】
また、群指令値算出部192は、1つの蓄電システム群50に含まれる複数の蓄電システム32のうち、充放電を行わせる蓄電システム32の個数を決定する。第一通信部110は、充放電指令値に加えて、充放電を行わせる蓄電システム32の個数を示す情報を送信する。
上位制御装置11によれば、蓄電システム32の1台あたりの充放電量を大きくすることができ、この点で、充放電制御の精度を高くすることができる。
【0143】
また、群指令値算出部192は、蓄電システム群50に行わせる充放電の量を、その蓄電システム群で確保されている充放電量に基づいて、充放電指令値として算出する。
群指令値算出部192が、蓄電システム群50で確保されている充放電量に基づいて充放電指令値を算出することで、中位制御装置21が、個々の蓄電システム32で確保されている充放電量に基づいて、蓄電システムに対する充放電量を容易に算出できると期待される。
【0144】
例えば、群指令値算出部192は、蓄電システム群50に行わせる充放電の量を、その蓄電システム群で確保されている充放電量で除算した割合を、充放電指令値として算出する。
中位制御装置21が、この蓄電システム群50に含まれる蓄電システム32に均等に充放電を行わせる場合、群指令値算出部192が算出した充放電指令値を、そのまま、蓄電システム32に対する充放電指令値として用いることができる。
【0145】
上述したように、上位制御装置11と中位制御装置21とが、1つの装置として構成されていてもよい。例えば、図1の例で、中位制御装置21が、上位制御装置11の機能と中位制御装置21の機能とを併せ持つ制御装置として構成されていてもよい。
【0146】
この場合、上位制御装置11から中位制御装置21へ、電力システム1に対するサービス実施要求を送信するようにしてもよい。すなわち、上位制御装置11から中位制御装置21へ、電力システム1に含まれる蓄電システム群50全体に対するサービス実施要求を送信するようにしてもよい。
【0147】
上位制御装置11から中位制御装置21へのサービス実施要求にて、充放電要求量に加えて、許容誤差割合上限値など充放電の要求精度の情報を通知するようにしてもよいし、さらに、誤差割合下限値など充放電の目標精度の情報も通知するようにしてもよい。あるいは、許容誤差割合上限値が予め定められている場合など、上位制御装置11から中位制御装置21へのサービス実施要求にて、充放電要求量のみを通知するようにしてもよい。
上位制御装置11が、充放電要求量を、上記のように規格化した値で通知するようにしてもよい。
【0148】
また、上位制御装置11が、中位制御装置21へのサービス実施要求に加えて、あるいは代えて、中位制御装置21による制御対象となっていない充放電システム30に対して、中位制御装置21を介さずに直接、充放電要求量を示して充放電を行わせるようにしてもよい。
【0149】
例えば、蓄電システム群50に含まれる蓄電システム32と、何れの蓄電システム群50にも含まれない蓄電システム32とがある場合について考える。
この場合、上位制御装置11の群指令値算出部192は、上述したように、蓄電システム群50の各々の充放電量下限値を算出する。さらに、群指令値算出部192は、何れの蓄電システム群50にも含まれない蓄電システム32の充放電量下限値を算出する。
【0150】
蓄電システム群50の場合と同様、蓄電システム32単体の場合も、群指令値算出部192は、誤差想定値を許容誤差割合上限値で除算して充放電量下限値を算出する。群指令値算出部192は、この場合の誤差想定値として、蓄電システム32単体の誤差想定値をそのまま用いる。
【0151】
そして、群指令値算出部192は、蓄電システム群50の充放電量がその蓄電システム群50の充放電量下限値以上になるか、あるいは、0になり、かつ、何れの蓄電システム群50にも含まれない蓄電システム32の充放電量がその蓄電システム32の充放電量下限値以上になるか、あるいは、0になるように、充放電指令値を蓄電システム群50および蓄電システム32に割り当てる。
群指令値算出部192が、何れの蓄電システム群50にも含まれない蓄電システム32を、蓄電システム32の個数が1つの蓄電システム群50として扱って、上記の充放電量下限値の計算および充放電量の割当を行うようにしてもよい。
【0152】
上位制御装置11の群指令値送信処理部193は、第一通信部110を制御して、蓄電システム群50に対する充放電指令を中位制御装置21へ送信させる。また、群指令値送信処理部193は、第一通信部110を制御して、何れの蓄電システム群50にも含まれない蓄電システム32に対する充放電指令を、その蓄電システム32を制御する下位制御装置31へ送信させる。
【0153】
このように、群指令値算出部192は、蓄電システム群50に対する充放電指令を算出し、かつ、何れの蓄電システム群50にも含まれない蓄電システム32に対して、その蓄電システム32の充放電制御の精度に基づいて、その蓄電システム32に対する充放電指令値を算出する。
これにより、群指令値算出部192は、何れの蓄電システム群50にも含まれない蓄電システム32がある場合に対応して、誤差の許容範囲内になるように、充放電指令値を算出することができる。
【0154】
中位制御装置21が、上位制御装置11の機能と中位制御装置21の機能とを併せ持つ制御装置として構成される場合、中位制御装置21は、許容誤差割合上限値の条件を満たすように充放電要求量を蓄電システム群50に割り当てて、蓄電システム群50に対する充放電要求量を決定する。中位制御装置21が、蓄電システム群に対する充放電要求量を、上記のように規格化した値で算出するようにしてもよい。
かかる処理は、上記の例で上位制御装置11の処理として説明した処理に相当する。
【0155】
そして、中位制御装置21は、蓄電システム群に対する充放電要求量を、その蓄電システム群に含まれる充放電システム30割り当てて、充放電システム30に対する充放電要求量を決定する。蓄電システム群に対する充放電要求量が規格化された値で示され、かつ、何れの充放電システム30についても充放電量の定格値を全てアンシラリーサービスに用いることができる場合、上述したように、蓄電システム群50に対する充放電要求量を規格化した値を、そのまま、充放電システム30に対する充放電要求量を規格化した値として用いることができる。
【0156】
かかる処理は、上記の例で中位制御装置21の処理として説明した処理に相当する。
このように、中位制御装置21が、上記で上位制御装置11の機能として説明した機能と、中位制御装置21の機能として説明した機能との両方を実行するようにしてもよい。
【0157】
図12は、実施形態に係る制御装置の構成例を示す図である。図12に示す構成で、制御装置610は、指令値算出部611と、指令値送信部612とを備える。
かかる構成で、指令値算出部611は、蓄電システムの充放電制御の精度に基づいて充放電指令値を算出する。指令値送信部612は、指令値算出部611が算出する充放電指令値を送信する。指令値算出部611は、指令値算出手段の例に該当する。指令値送信部612は、指令値送信手段の例に該当する。
これにより、指令値算出部611は、蓄電システムの充放電制御の精度を考慮して充放電指令値を決定することができ、この点で、充放電制御の精度の要求に対応することができる。
【0158】
図13は、実施形態に係る制御方法における処理手順の例を示す図である。
図13に示す制御方法は、充放電指令値を算出する工程(ステップS611)と、充放電指令値を送信する工程(ステップS612)とを含む。
充放電指令値を算出する工程(ステップS611)では、蓄電システムの充放電制御の精度に基づいて充放電指令値を算出する。充放電指令値を送信する工程(ステップS612)では、ステップS611で算出した充放電指令値を送信する。
図13に示す制御方法によれば、蓄電システムの充放電制御の精度を考慮して充放電指令値を決定することができ、この点で、充放電制御の精度の要求に対応することができる。
【0159】
図14は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。図14に示す構成で、コンピュータ700は、CPU710と、主記憶装置720と、補助記憶装置730と、インタフェース740とを備える。
【0160】
上記の上位制御装置11、中位制御装置21および制御装置610のうち何れか1つ以上が、コンピュータ700に実装されてもよい。その場合、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU710は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。各装置と他の装置との通信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って通信を行うことで実行される。
【0161】
上位制御装置11がコンピュータ700に実装される場合、第一制御部190およびその各部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
また、CPU710は、プログラムに従って、第一記憶部180に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。
第一通信部110による通信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って通信を行うことで実行される。
【0162】
中位制御装置21がコンピュータ700に実装される場合、第二制御部290およびその各部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
また、CPU710は、プログラムに従って、第二記憶部280に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。
第二通信部210による通信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って通信を行うことで実行される。
【0163】
制御装置610がコンピュータ700に実装される場合、指令値算出部611の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
指令値送信部612による充放電指令値の送信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って通信を行うことで実行される。
【0164】
なお、上位制御装置11、中位制御装置21、および、制御装置610が行う処理の全部または一部を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0165】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の実施形態は、制御装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0167】
1 電力システム
10 上位制御システム
11 上位制御装置
110 第一通信部
180 第一記憶部
190 第一制御部
191 要求量情報取得部
192 群指令値算出部
193 群指令値送信処理部
91 ゲートウェイ装置
20 中位制御システム
21 中位制御装置
210 第二通信部
280 第二記憶部
290 第二制御部
291 群指令値取得部
292 個別指令値算出部
293 個別指令値送信処理部
30 充放電システム
31 下位制御装置
32 蓄電システム
610 制御装置
611 指令値算出部
612指令値送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14