IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中井機械工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】食材の加熱撹拌機
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20240910BHJP
   A47J 37/04 20060101ALI20240910BHJP
   B01F 29/83 20220101ALI20240910BHJP
   B01F 35/12 20220101ALI20240910BHJP
   B01F 35/92 20220101ALI20240910BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20240910BHJP
   B01F 29/90 20220101ALI20240910BHJP
   B01F 101/06 20220101ALN20240910BHJP
【FI】
A47J27/14 Q
A47J27/14 D
A47J37/04 A
B01F29/83
B01F35/12
B01F35/92
B01F35/222
B01F29/90
B01F101:06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023094903
(22)【出願日】2023-06-08
【審査請求日】2023-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年6月6日~9日東京ビックサイト第1~8ホールにおいて開催されたFOOMA JAPAN 2023で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】391026209
【氏名又は名称】中井機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【弁護士】
【氏名又は名称】山下 あや理
(72)【発明者】
【氏名】中井 節
(72)【発明者】
【氏名】平木 大太
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-102763(JP,A)
【文献】特開2019-24729(JP,A)
【文献】特開2009-17992(JP,A)
【文献】特開2013-43068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
A47J 37/04
B01F 27/11
B01F 29/83
B01F 35/12
B01F 35/92
B01F 35/222
B01F 29/90
B01F 101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理釜と、その調理釜の上面へ垂直軸線周りの水平回転可能に設置された食材収容鍋と、その食材収容鍋のフラットな底面を加熱すべく、上記調理釜に内蔵されたIH加熱器と、上記食材収容鍋に収容された食材の撹拌羽根と、その撹拌羽根の回転軸とを備えた食材の加熱撹拌機であって、
上記撹拌羽根の回転軸が食材収容鍋のフラットな底面と鋭角の一定な交叉角度を保つ傾斜回転軸として、その食材収容鍋の内部に差し込み設置されていると共に、
上記撹拌羽根は食材の掬い上げ羽根同士の対をなす第1組と、掬い上げ羽根と押し潰し羽根との対をなす第2組との2種として、その第1組が上記傾斜回転軸における基端側の上段位置へ、第2組が同じく傾斜回転軸における途中の中段位置と先端側の下段位置へ、各々一体回転し得るよう取り付けられており、
上記第1組と第2組の撹拌羽根が全体として、その傾斜回転軸の上段位置から下段位置へ行く程徐々に先細りとなる円錐形の運動軌跡を描くように回転して、
その第1組の掬い上げ羽根によって食材収容鍋の周縁側から中心側へ移動案内した食材を、第2組の中段位置と下段位置にある掬い上げ羽根により上記食材収容鍋の底面から順次掬い上げて落下させ、その落下した食材を食材収容鍋の底面に対する同じく中段位置と下段位置の押し潰し羽根により順次ほぐし分解するように設定したことを特徴とする食材の加熱撹拌機。
【請求項2】
各掬い上げ羽根の食材掬い上げ面をその回転進行方向の前側から後側へ行く程、徐々に上向き弯曲する円弧状に造形する一方、
各押し潰し羽根の食材押圧面をその中央部から回転進行方向の前側へ行く程、徐々に上向き傾斜するフラット面として造形すると共に、
上記食材押圧面と食材収容鍋における内底面との相互間隙を、上記食材掬い上げ面と同じく食材収容鍋における内底面との相互間隙よりも広大に設定したことを特徴とする請求項1記載の食材の加熱撹拌機。
【請求項3】
第1組の対をなす掬い上げ羽根同士並びに第2組の中段位置と下段位置にある各々対をなす掬い上げ羽根と押し潰し羽根とは、その互いにほぼ同じ張り出し長さの支持アームを介して傾斜回転軸に各々取り付けられていると共に、
その各支持アームの張り出し長さを伸縮することによって、上記第1、2組における掬い上げ羽根の食材掬い上げ面と食材収容鍋の内底面との相互間隙又は/及び第2組における押し潰し羽根の食材押圧面と同じく食材収容鍋の内底面との相互間隙を、各々広狭調整できるように定めたことを特徴とする請求項1記載の食材の加熱撹拌機。
【請求項4】
食材収容鍋の上方から見た回転方向と、撹拌羽根の傾斜回転軸をその先端側の下方から見た回転方向とは、互いに同じ反時計方向又は時計方向として、
食材を食材収容鍋の回転方向に沿って、その掬い上げ羽根により掬い上げると共に押し潰し羽根によりほぐし分解した上、食材収容鍋の周縁側へ移動させるように設定したことを特徴とする請求項1記載の食材の加熱攪拌機。
【請求項5】
第1組の対をなす掬い上げ羽根同士並びに第2組の中段位置と下段位置にある各々対をなす掬い上げ羽根と押し潰し羽根とは、何れも傾斜回転軸の先端側から見て、その支持アーム同士の一直線上において向かい合う位置関係にあり、
しかも、その支持アームを介して傾斜回転軸の上段位置に取り付けられた第1組と、同じく支持アームを介して傾斜回転軸の中段位置と下段位置に各々取り付けられた第2組とが、その隣り合う支持アーム同士のほぼ等しい一定な交叉角度を保つ関係状態に配列されていることを特徴とする請求項1記載の食材の加熱撹拌機。
【請求項6】
傾斜回転軸の上段位置に取り付けられた第1組の掬い上げ羽根と、同じく傾斜回転軸の中段位置と下段位置に各々取り付けられた第2組の掬い上げ羽根とが、その隣り合う同士の互いに一定量だけオーバーラップする関係状態を保つように配列されていると共に、
上記傾斜回転軸の中段位置と下段位置に各々取り付けられた第2組の押し潰し羽根も、その隣り合う同士の互いに一定量だけオーバーラップする関係状態を保つように配列されていることを特徴とする請求項1記載の食材の加熱撹拌機。
【請求項7】
傾斜回転軸の先端部を食材収容鍋の内部に向かって、その食材収容鍋のフラットな底面と30~35度の交叉角度を保つ傾斜状態に差し込み設置することにより、
その傾斜回転軸に取り付けられた攪拌羽根の回転による食材の全体的な撹拌作用領域を、上記食材収容鍋における内底面の約半分を占める偏心部に限定したことを特徴とする請求項1記載の食材の加熱撹拌機。
【請求項8】
傾斜回転軸の中段位置と下段位置に各々取り付けられた第2組の掬い上げ羽根同士と押し潰し羽根同士を、各々互いにほぼ同じ大きさに造形すると共に、
同じく傾斜回転軸の上段位置に取り付けられた第1組の掬い上げ羽根同士を、その上記第2組の掬い上げ羽根よりも広大に造形したことを特徴とする請求項1記載の食材の加熱撹拌機。
【請求項9】
撹拌羽根の回転軸として、食材収容鍋の内部へ差し込み設置される傾斜回転軸のほかに、その傾斜回転軸との択一的に使用される食材収容鍋内の偏心部を目指して垂下する垂直回転軸も備え、
その垂直回転軸の先端部へ上記傾斜回転軸に取り付けられる第1撹拌羽根とは別異の第2撹拌羽根を取り付け使用するように定めたことを特徴とする請求項1記載の食材の加熱撹拌機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に焼き飯やピラフ、野菜炒め、焼きそばなどの炒め調理用としてふさわしく有効な食材の加熱撹拌機に関する。
【背景技術】
【0002】
食材収容鍋の回転駆動手段とその底面加熱手段並びに撹拌羽根の回転駆動手段を備え、その撹拌羽根の回転軸を食材収容鍋の内部へ、外方から傾斜設置状態に差し込んで、食材(被撹拌物)を加熱しながら撹拌する加熱撹拌機が、特許文献1~3に開示されている。
【0003】
そのうち、特に特許文献1に記載された撹拌機では、板状をなす複数の羽根体(110)(120)(130)によって、その回転中に焼き飯(被撹拌物)をすくい取り、持ち上げ、落下させるという一連の作用を繰り返すようになっている点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-102763号公報
【文献】特許第6751984号公報
【文献】特許第5981781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1の撹拌機(300)に用いられている撹拌羽根(100)は、図1のようなほぼU字形をなす一体品として、その第1~3羽根体(110)(120)(130)を第1、2連結部材(20a)(20b)により組み付け立体化しているため、その撹拌に必要な構成が著しく特殊となり、焼き飯(被撹拌物)の炒め調理に専用の機械としては、所謂費用対効果に劣ると言わざるを得ない。
【0006】
また、上記第1~3羽根体(110)(120)(130)の各個における刃先部(110a)(120a)(130a)がすくい上げ作用を行い、同じく煽り面(表面)(110b)(120b)(130b)が持ち上げ作用と滑り落し作用を果すようになっているとしても、焼き飯の米粒同士が接着し合った団塊(ダマ)を、自ずと積極的又は能動的に押し潰して、その米粒群にほぐし分解する作用を営むようになっていない。
【0007】
そのため、第1、2羽根体(110)(120)の交叉角度や第2、3羽根体(120)(130)の交叉角度、回転軸(10)に対する第1~3羽根体(110)(120)(130)の取付高さ位置などを変更・調整できない構成であることとも相俟って、撹拌羽根(100)の回転速度や食材収容鍋(容器)(200)の回転速度などとの関係次第によっては、焼き飯の上記団魂をすばやく確実にほぐし分解して、その米粒群のパラパラ感に富む撹拌仕上がり状態を得ることが困難である。
【0008】
更に、円錐形をなす食材収容鍋(容器)(200)の最も深い中心部に、焼き飯の上記団魂が集中しやすく、しかもその中心部には回転遠心力が働かない関係上、その焼き飯の団塊を米粒群にほぐし分解し難く、その米粒群に対する均一な加熱状態を短時間での効率良く得られない問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題の解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では調理釜と、その調理釜の上面へ垂直軸線周りの水平回転可能に設置された食材収容鍋と、その食材収容鍋のフラットな底面を加熱すべく、上記調理釜に内蔵されたIH加熱器と、上記食材収容鍋に収容された食材の撹拌羽根と、その撹拌羽根の回転軸とを備えた食材の加熱撹拌機であって、
【0010】
上記撹拌羽根の回転軸が食材収容鍋のフラットな底面と鋭角の一定な交叉角度を保つ傾斜回転軸として、その食材収容鍋の内部に差し込み設置されていると共に、
【0011】
上記撹拌羽根は食材の掬い上げ羽根同士の対をなす第1組と、掬い上げ羽根と押し潰し羽根との対をなす第2組との2種として、その第1組が上記傾斜回転軸における基端側の上段位置へ、第2組が同じく傾斜回転軸における途中の中段位置と先端側の下段位置へ、各々一体回転し得るよう取り付けられており、
【0012】
上記第1組と第2組の撹拌羽根が全体として、その傾斜回転軸の上段位置から下段位置へ行く程徐々に先細りとなる円錐形の運動軌跡を描くように回転して、
【0013】
その第1組の掬い上げ羽根によって食材収容鍋の周縁側から中心側へ移動案内した食材を、第2組の中段位置と下段位置にある掬い上げ羽根により上記食材収容鍋の底面から順次掬い上げて落下させ、その落下した食材を食材収容鍋の底面に対する同じく中段位置と下段位置の押し潰し羽根により順次ほぐし分解するように設定したことを特徴とする。
【0014】
請求項2では各掬い上げ羽根の食材掬い上げ面をその回転進行方向の前側から後側へ行く程、徐々に上向き弯曲する円弧状に造形する一方、
【0015】
各押し潰し羽根の食材押圧面をその中央部から回転進行方向の前側へ行く程、徐々に上向き傾斜するフラット面として造形すると共に、
【0016】
上記食材押圧面と食材収容鍋における内底面との相互間隙を、上記食材掬い上げ面と同じく食材収容鍋における内底面との相互間隙よりも広大に設定したことを特徴とする。
【0017】
請求項3では第1組の対をなす掬い上げ羽根同士並びに第2組の中段位置と下段位置にある各々対をなす掬い上げ羽根と押し潰し羽根とは、その互いにほぼ同じ張り出し長さの支持アームを介して傾斜回転軸に各々取り付けられていると共に、
【0018】
その各支持アームの張り出し長さを伸縮することによって、上記第1、2組における掬い上げ羽根の食材掬い上げ面と食材収容鍋の内底面との相互間隙又は/及び第2組における押し潰し羽根の食材押圧面と同じく食材収容鍋の内底面との相互間隙を、各々広狭調整できるように定めたことを特徴とする。
【0019】
請求項4では食材収容鍋の上方から見た回転方向と、撹拌羽根の傾斜回転軸をその先端側の下方から見た回転方向とは、互いに同じ反時計方向又は時計方向として、
【0020】
食材を食材収容鍋の回転方向に沿って、その掬い上げ羽根により掬い上げると共に押し潰し羽根によりほぐし分解した上、食材収容鍋の周縁側へ移動させるように設定したことを特徴とする。
【0021】
請求項5では第1組の対をなす掬い上げ羽根同士並びに第2組の中段位置と下段位置にある各々対をなす掬い上げ羽根と押し潰し羽根とは、何れも傾斜回転軸の先端側から見て、その支持アーム同士の一直線上において向かい合う位置関係にあり、
【0022】
しかも、その支持アームを介して傾斜回転軸の上段位置に取り付けられた第1組と、同じく支持アームを介して傾斜回転軸の中段位置と下段位置に各々取り付けられた第2組とが、その隣り合う支持アーム同士のほぼ等しい一定な交叉角度を保つ関係状態に配列されていることを特徴とする。
【0023】
請求項6では傾斜回転軸の上段位置に取り付けられた第1組の掬い上げ羽根と、同じく傾斜回転軸の中段位置と下段位置に各々取り付けられた第2組の掬い上げ羽根とが、その隣り合う同士の互いに一定量だけオーバーラップする関係状態を保つように配列されていると共に、
【0024】
上記傾斜回転軸の中段位置と下段位置に各々取り付けられた第2組の押し潰し羽根も、その隣り合う同士の互いに一定量だけオーバーラップする関係状態を保つように配列されていることを特徴とする。
【0025】
請求項7では傾斜回転軸の先端部を食材収容鍋の内部に向かって、その食材収容鍋のフラットな底面と30~35度の交叉角度を保つ傾斜状態に差し込み設置することにより、
【0026】
その傾斜回転軸に取り付けられた攪拌羽根の回転による食材の全体的な撹拌作用領域を、上記食材収容鍋における内底面の約半分を占める偏心部に限定したことを特徴とする。
【0027】
請求項8では傾斜回転軸の中段位置と下段位置に各々取り付けられた第2組の掬い上げ羽根同士と押し潰し羽根同士を、各々互いにほぼ同じ大きさに造形すると共に、
【0028】
同じく傾斜回転軸の上段位置に取り付けられた第1組の掬い上げ羽根同士を、その上記第2組の掬い上げ羽根よりも広大に造形したことを特徴とする。
【0029】
更に、請求項9では撹拌羽根の回転軸として、食材収容鍋の内部へ差し込み設置される傾斜回転軸のほかに、その傾斜回転軸との択一的に使用される食材収容鍋内の偏心部を目指して垂下する垂直回転軸も備え、
【0030】
その垂直回転軸の先端部へ上記傾斜回転軸に取り付けられる第1撹拌羽根とは別異の第2撹拌羽根を取り付け使用するように定めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
請求項1の構成によれば、食材収容鍋のフラットな底面と鋭角の交叉角度を保つ傾斜設置状態に差し込まれた傾斜回転軸の上段位置に、食材掬い上げ羽根同士の対をなす第1組と、中段位置と下段位置に各々食材掬い上げ羽根と食材押し潰し羽根との対をなす第2組とが、何れも一体回転し得るように取り付けられている。
【0032】
しかも、上記撹拌羽根の全体として、その傾斜回転軸の上段位置から下段位置へ行く程、徐々に先細りとなる円錐形の回転運動軌跡を描くように配列されているため、その食材である焼き飯の炒め調理に適用した場合でも、その炊飯米の粒子同士が接着し合った団塊(ダマ)を、上記押し潰し羽根により積極的・能動的に押し潰して、効率良くほぐし分解することができ、その内部まで加熱・乾燥作用を万遍なく行き届かせて、パラパラ感に富む好適な焼き飯の炒め調理状態を得られる効果がある。
【0033】
その場合、請求項2の構成を採用するならば、各掬い上げ羽根の食材掬い上げ面(表面/上面)により、上記焼き飯の米粒でも、食材収容鍋のフラットな内底面から確実に掬い上げることができる一方、各押し潰し羽根の食材押圧面(裏面/下面)により上記焼き飯の米粒をいたずらに摺り潰すおそれなく、その米粒同士の接着し合った団塊(ダマ)を確実にほぐし分解できるのである。
【0034】
請求項3の構成を採用するならば、第1組の対をなす掬い上げ羽根同士や第2組の下2段にある各々対をなす掬い上げ羽根と押し潰し羽根について、その回転半径となる互いにほぼ同じ長さの支持アームを採用しつつも、その各支持アームの長さを伸縮することにより、上記食材掬い上げ面と食材収容鍋におけるフラットな内底面との相互間隙又は/及び上記食材押圧面と同じく食材収容鍋における内底面との相互間隙を、食材の種類やその調理目的などに応じて広く又は狭く調整することができ、利便性と用途の拡大に役立つ。
【0035】
また、請求項4の構成を採用するならば、食材収容鍋の上方から見た回転方向と、撹拌羽根用傾斜回転軸をその先端側の下方から見た回転方向とが、互いに同じ反時計方向又は時計方向として設定されているため、上記食材を食材収容鍋の回転方向に沿って、その掬い上げ羽根により安定良く掬い上げ落下させ、その落下した食材の押し潰し羽根によるほぐし分解も確実に行った上、食材収容鍋の周縁側(遠心側)へ自ずと円滑に移動させ得る効果がある。
【0036】
請求項5の構成を採用するならば、第1組の対をなす掬い上げ羽根と、第2組の各々対をなす掬い上げ羽根並びに押し潰し羽根との隣り合う支持アーム同士が、ほぼ等しい一定の交叉角度を保つ関係状態に配列されているため、その第1組と第2組の撹拌羽根が全体として、上記円錐形の運動軌跡を描くように回転することとも相俟ち、その言わば一定間隔を保って放射対称分布型に点在する羽根群により、上記食材を短時間での効率良く撹拌することができる。
【0037】
請求項6の構成を採用するならば、第1組の掬い上げ羽根と第2組の掬い上げ羽根とが、その隣り合う同士の一定量だけオーバーラップする関係状態にあり、第2組の押し潰し羽根もその隣り合う同士の互いに一定量だけオーバーラップする関係状態に配列されているため、食材の掬い上げ作用と押し潰し作用を洩れなく確実に営ませることができる。
【0038】
請求項7の構成を採用するならば、食材収容鍋における内底面の約半分を占める偏心部を撹拌作用領域として、上記掬い上げ羽根と押し潰し羽根による食材の撹拌作用を営みながら、残余の約半分を非撹拌作用領域(空白領域)として、食材の加熱作用だけを行うことにより、その食材の米粒や野菜の切断片、その他の固形物をムラなく、表面全体の均一に加熱・乾燥できる効果がある。
【0039】
更に、請求項8の構成を採用するならば、傾斜回転軸の上段位置にある第1組の掬い上げ羽根は、その回転半径となる支持アームが長く、周速が遅くなるため、その他の下2段にある掬い上げ羽根よりも広大に造形された食材掬い上げ面により、食材収容鍋の周縁側に位置する食材の比較的多量を、ゆっくりと高い位置まで持ち上げて落下させることができ、その掬い上げ羽根の大きな動きも食材のほぐし分解に役立つのである。
【0040】
請求項9の構成を採用するならば、第1撹拌羽根の傾斜回転軸と第2撹拌羽根の垂直回転軸とを取捨選択して、例えば焼き飯の炒め調理に適した第1撹拌羽根とは別異の野菜炒めや焼きそばなどにふさわしい第2撹拌羽根が取り付けられた垂直回転軸を使用して、その第2撹拌羽根による野菜炒めや焼きそばなどの炒め調理に供することもでき、加熱撹拌機としての利便性や汎用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施形態に係る食材の炒め調理にふさわしい加熱撹拌機を示す斜面図である。
図2図1の調理釜を転倒させた状態の斜面図である。
図3図1の加熱撹拌機を拡大して示す正面図である。
図4図3の平面図である。
図5】調理釜の支持状態を示す図3に対応する断面正面図である。
図6図5の平面図である。
図7図5の右側面図である。
図8】IH加熱器におけるIH加熱コイルの点在分布する配列状態を示す平面図である。
図9】撹拌機駆動ボックスの起こし上げ作動機構を抽出して示す断面正面図である。
図10図9の水平設置状態から撹拌機駆動ボックスを起こし上げた状態の断面正面図である。
図11】上記起こし上げ機構の要部を抽出して示す斜面図である。
図12図11の拡大正面図である。
図13図11の拡大側面図である。
図14図9の撹拌機駆動ボックスを破断して示す拡大正面図である。
図15図14の平面図である。
図16図14の外観斜面図である。
図17図16の斜め下方から見上げた斜面図である。
図18】撹拌機駆動ボックスに付属設置された掻取り羽根(スクレーパー)の正面図である。
図19図18の平面図である。
図20図18から掻取り羽根の取付状態を抽出して示す斜面図である。
図21】調理釜の転倒状態と掻取り羽根の起こし上げ状態を示す正面図である。
図22】傾斜回転軸に対する第1撹拌羽根の全体的な取付状態を下方から見た斜面図である。
図23図22の側面図である。
図24】第1撹拌羽根における掬い上げ羽根の単品を示す斜面図である。
図25図24の平面図である。
図26図24の正面図である。
図27】同じく押し潰し羽根の単品を示す斜面図である。
図28図27の平面図である。
図29図27の正面図である。
図30】第1撹拌羽根における掬い上げ羽根と押し潰し羽根との全体的な配列分布状態を模式化して示す正面図である。
図31(a)】傾斜回転軸の上段位置に取り付けられた掬い上げ羽根の作用を説明するための側面図である。
図31(b)】図31(a)の正面図である。
図32(a)】同じく傾斜回転軸の中段位置に取り付けられた掬い上げ羽根の作用を説明するための側面図である。
図32(b)】図32(a)の正面図である。
図33(a)】傾斜回転軸の下段位置に取り付けられた掬い上げ羽根の作用を説明するための側面図である。
図33(b)】図33(a)の正面図である。
図34(a)】傾斜回転軸の中段位置に取り付けられた押し潰し羽根の作用を説明するための側面図である。
図34(b)】図34(a)の正面図である。
図35(a)】同じく傾斜回転軸の下段位置に取り付けられた押し潰し羽根の作用を説明するための側面図である。
図35(b)】図35(a)の正面図である。
図36図30の掬い上げ羽根がすべて下死点に到達したものとして合成した勢揃い状態の模式的な側面図である。
図37】同じく図30の押し潰し羽根がすべて下死点に到達したものとして合成した勢揃い状態の模式的な側面図である。
図38】垂直回転軸(撹拌副軸)に対する別な第2撹拌羽根の取り付け使用状態を示す正面図である。
図39図38の側面図である。
図40図39の第2撹拌羽根を抽出して示す斜面図である。
図41図38の水平設置状態から撹拌機駆動ボックスを起こし上げた状態の断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を詳述する。図1~21は主として焼き飯や野菜などの炒め調理にふさわしく有効な食材加熱撹拌機を示しており、(1L)(1R)はこれを作業床に固定する左右一対の据付け機筐であって、その何れか一方(図1~6の左側)の据付け機筐(1L)には撹拌機駆動ボックス(2)が搭載されていると共に、残る他方(同図の右側)の据付け機筐(1R)には後述の釜転倒作動機構(B)が内蔵されている。
【0043】
しかも、上記撹拌機駆動ボックス(2)はその支持台をなす据付け機筐(1L)から一体的に起立する前後一対の軸受マスト(3)へ、これを貫通する水平の回動支点軸(4)によって、一定角度(α)(好ましくは60度)だけ起こし上げることができる起伏的な回動自在に枢着されており、その撹拌機駆動ボックス(2)の後述する起こし上げ作動機構(C)が、上記した左側の据付け機筐(1L)に内蔵されている。
【0044】
(T)は上記据付け機筐(1L)(1R)の左右相互間に介在する調理釜であり、円形の大型食材収容鍋(5)を保持することになる。その食材収容鍋(5)は図5、6のような一定の直径(例えば1100mm)と深さ(例えば294mm)の断面ほぼU字形として、フェライト系ステンレス(SUS430)のフラットな底面(5a)と、これに溶接されたオーステナイト系ステンレス(SUS304)の胴面(5b)とを備えており、その底面(5a)が導電性を有し、厚肉な蓄熱層を形成している。
【0045】
(6)は上記調理釜(T)における食材収容鍋(5)の底面(5a)に臨む平面視の矩形なIH(電磁誘導加熱)フレームであって、ステンレス(SUS304)から断面ほぼ倒立U字形に造形されており、その内部に食材収容鍋(5)の加熱源となるIH加熱器(電磁誘導加熱器)(H)が格納設置されている。
【0046】
そのIH加熱器(H)は図8に抽出して示すように、食材収容鍋(5)の底面中央区域を加熱する1個の中央IH加熱コイル(7)と、同じく底面周辺区域の加熱を分担する2個ずつの第1、2周辺IH加熱コイル(8a)(8b)との合計5個から成り、その2個ずつの第1、2周辺IH加熱コイル(8a)(8b)が中央IH加熱コイル(7)を中心とする全体的な放射配置型に点在分布されている。
【0047】
(9)は上記IHフレーム(6)の下部に固定横架された剛性な梁状の鍋支持フレームであり、その両端部から左右一対の釜転倒アーム(10L)(10R)が一体的に起立されている。(11L)(11R)はその釜転倒アーム(10L)(10R)の上端部から各々外向き一体的に張り出された水平な釜転倒軸であり、上記した左右一対の据付け機筐(1L)(1R)へ軸受メタルなどを介して、何れも回動自在に枢着されている。(12)は上記鍋支持フレーム(9)に下方から取り付け固定された釜底カバー、(13)はその釜底カバー(12)の底面に据え立て固定された非接触式の温度センサーであり、食材収容鍋(5)の底面周辺区域を指向して、その鍋底の加熱温度を検知する。
【0048】
先に一言した釜転倒作動機構(B)は図5~7から明白なように、右側据付け機筐(1R)内の固定された駆動モーター(14)と、その前側に並列設置された減速機(15)とを備え、その減速機(15)の径小な等速スプロケット(16)と駆動モーター(14)の出力スプロケット(17)との前後相互間には、第1伝動チェン(18)が巻き掛けられている。
【0049】
また、その駆動モーター(14)と対応位置する右側(駆動側)釜転倒軸(11R)上の伝動スプロケット(19)と、上記減速機(15)の径大な減速スプロケット(20)との上下相互間には、第2伝動チェン(21)が巻き掛けられている。
【0050】
上記釜転倒作動機構(B)の駆動モーター(14)によって釜転倒軸(11L)(11R)を回転させれば、鍋支持フレーム(9)の釜転倒アーム(10L)(10R)を介して吊持された状態にある調理釜(T)が、その両釜転倒軸(11L)(11R)の水平軸線を中心として起伏的に回動するため、図1から図2のように、その鍋支持フレーム(9)により支持された食材収容鍋(5)がIHフレーム(6)と一緒に、前後方向に各々一定角度(β)(好ましくは90度)ずつ転倒し得るのであり、その食材収容鍋(5)の内部から炒め調理された焼き飯などの食材を容易に便利良く取り出すことができる。
【0051】
(22)は上記食材収容鍋(5)におけるフラットな底面(5a)の中心部に溶接された軸受ボスであって、ステンレス(SUS304)の筒型ナットから成り、これに対して下方から食材収容鍋(5)のステンレス鋼棒(SUS304)から成る回転支軸(23)がねじ込み一体化されている。その食材収容鍋(5)の回転支軸(23)は図5から明白なように、上記調理釜(T)のIHフレーム(6)と鍋支持フレーム(9)を貫通して、釜底カバー(12)の内部に到達するまで垂下している。
【0052】
(D)は上記食材収容鍋(5)の水平回転駆動機構であって、その食材収容鍋(5)における回転支軸(23)の駆動モーター(24)が図5のように、上記鍋支持フレーム(9)の下面に取り付け固定されており、その食材収容鍋(5)の回転支軸(23)と平行に垂立する出力軸(25)の上端部には、駆動スプロケット(26)が嵌め付け一体化されている。その駆動スプロケット(26)と対応する従動スプロケット(27)は上記回転支軸(23)の中途高さ位置に嵌め付け一体化されており、その並列する両スプロケット(26)(27)の左右相互間に伝動チェン(28)が巻き掛けられている。
【0053】
そのため、上記駆動モーター(24)によって食材収容鍋(5)を、その回転支軸(23)の垂直軸線周りに水平回転させることができる。その回転速度は一例として2.9~11.6rpm、好ましくは7.3rpmである。
【0054】
先に一言した撹拌機駆動ボックス(2)の起こし上げ作動機構(C)は図9~13に抽出して示すように、左側据付け機筐(1L)内の下部に取り付け固定された駆動モーター(29)と、同じく中途高さ位置に対応設置された減速機(30)とを備え、その減速機(30)の減速スプロケット(31)と駆動モーター(29)の出力スプロケット(32)との上下相互間には、伝動チェン(33)が巻き掛けられている。
【0055】
また、撹拌機駆動ボックス(2)を貫通している水平な上記回動支点軸(4)と、据付け機筐(1L)内にある上記減速機(30)の水平な動力取出し軸(34)との上下相互間が、揺動リンクアーム(35)を介して枢支連結されており、その揺動リンクアーム(35)を上記駆動モーター(29)によって図10のように押し上げ(上昇)作動させれば、上記撹拌機駆動ボックス(2)をその回動支点軸(4)の水平軸線周りに、一定角度(α)(先に例示した60度)だけ起こし上げることになるため、後述の第1、2撹拌羽根や掻取り羽根(スクレーパー)などを食材収容鍋(5)の内部から抜き出し退避させることができる。
【0056】
上記駆動モーター(29)によって揺動リンクアーム(35)を引き下げ(下降)作動させれば、撹拌機駆動ボックス(2)がその回動支点軸(4)の水平軸線周りに逆方向へ、同じ一定角度(α)だけ回動復帰し、図9のような水平の設置状態に固定維持されることになる。(36)は図外のセンサーにおける上記一定角度(α)の検出板、(37)はセンサーブラケット、(38)は撹拌機駆動ボックス(2)の受け止めストッパーである。
【0057】
上記回動支点軸(4)の水平軸線周りに起こし上げ可能な撹拌機駆動ボックス(2)内の下部には第1撹拌羽根用駆動モーター(39)と、同じボックス(2)内の上部には別な第2撹拌羽根用駆動モーター(40)とが各々取り付け固定されており、その上下一対の駆動モーター(39)(40)を食材やその調理目的などに応じて、択一的に使用することができるようになっている。
【0058】
しかも、図14~17に抽出して示す如く、その第1撹拌羽根用駆動モーター(39)は傾斜した支持ベース(41)によって、上記食材収容鍋(5)のフラットな底面(5a)と鋭角の一定な交叉角度(γ)(例えば30~35度、好ましくは32度)(食材収容鍋の垂直軸線と交叉する角度が好ましくは58度)を保つ傾斜状態に設置されており、その駆動軸(42)の先端部が撹拌機駆動ボックス(2)から食材収容鍋(5)の内部を指向して張り出している。
【0059】
これに比し、第2撹拌羽根用駆動モーター(40)は水平の支持ベース(43)によって、水平の設置状態に保たれており、その水平な駆動軸(44)の先端部へ傘歯車機構(45)を介して伝動連結された垂直の撹拌主軸(46)と、その主軸(46)の周囲を自転し乍ら公転する垂直の撹拌副軸(47)とが、上記撹拌機駆動ボックス(2)から食材収容鍋(5)内の就中偏心部を目指して張り出している。
【0060】
また、(48)は撹拌機駆動ボックス(2)における前壁の下部に取り付け固定されたアングルステー、(49)は掻取り羽根(スクレーパー)(50)の保持アームであり、その基端部がアングルステー(48)へ調整ボルト(51)を介して、張り出し長さと角度の調整自在に取り付けられている一方、先端部から垂下する支持ロッド(52)に合成樹脂製の掻取り羽根(スクレーパー)(50)が、設置高さの調整自在に取り付けられている。
【0061】
その掻取り羽根(スクレーパー)(50)は図19~21に示す如く、回転中にある食材収容鍋(5)の胴面(内周面)(5b)と接触して、食材の掻き取り作用を行うと共に、その食材を食材収容鍋(5)の周縁側から中心側へ寄せるように移動案内するが、上記撹拌機駆動ボックス(2)の前壁に付属している関係上、その撹拌機駆動ボックス(2)が上記した一定角度(α)だけ起こし上げられると、食材の掻取り羽根(スクレーパー)(50)も一緒に追従して、食材収容鍋(5)の内部から抜き出し退避されることになる。
【0062】
その場合、図14~17に例示するように、掻取り羽根(スクレーパー)(50)の支持ロッド(52)からスライドプレート(53)を張り出し延長すると共に、そのスライドプレート(53)の先端部へブラケット(54)を介して、接触式のワイヤレス温度計(55)を取り付け、その温度計(55)により食材収容鍋(5)内にある食材の加熱温度(品温)を、検知(測定)することも可能である。
【0063】
上記第1、2撹拌羽根用駆動モーター(39)(40)のうち、先ずその第1撹拌羽根用駆動モーター(39)における撹拌機駆動ボックス(2)から傾斜状態に張り出す上記駆動軸(42)の先端部には、第1撹拌羽根用の傾斜回転軸(56)が連結ソケットや連結スリーブ、その他の適当な連結子(57)を介して一体回転し得るように、且つ抜き差し自在に差し込み一本化されている。(58)(59)はそのために傾斜回転軸(56)側の基端部から突出するキーピンと、連結子(57)側に対応形成されたキー溝であり、互いに係止し合うことになる。
【0064】
第1撹拌羽根は図3、4や図22、23に示すような食材(焼き飯)の炒め調理用に好適なステンレス(SUS304)の撹拌羽根(A1)として、その食材の掬い上げ羽根(60a)同士が対をなす第1組と、同じく食材の掬い上げ羽根(60b)(60c)と押し潰し羽根(61b)(61c)とが対をなす第2組との2種から成り、その第1組の対をなす掬い上げ羽根(60a)が上記傾斜回転軸(56)における基端側の上段位置(h1)へ、一体回転し得るように取り付けられていると共に、第2組の対をなす掬い上げ羽根(60b)(60c)と押し潰し羽根(61b)(61c)とが、同じく傾斜回転軸(56)における途中の中段位置(h2)と先端側の下段位置(h3)へ各々一体回転し得るように取り付けられている。
【0065】
その場合、上記撹拌羽根(A1)における掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)の各個は図24~26のように、その回転進行方向の前端側から後端側へ行く程、徐々に上向き弯曲する滑らかな円弧状の食材掬い上げ面(表面/上面)(62)を有し、その掬い上げ面(62)の前端部から回転半径となる所要長さの支持アーム(63a)(63b)(63c)が一体的に張り出されており、その張り出し先端部に設置された2つ割型の取付ボス(64)が、複数の止めネジ(65)によって上記傾斜回転軸(56)へ挟み付け固定されるようになっている。
【0066】
他方、同じく押し潰し羽根(61b)(61c)の各個は図27~29のように、その中央部から回転進行方向の前端側へ行く程、徐々に上向き傾斜するフラットな食材押圧面(裏面/下面)(66)と、回転進行方向の逆な後端側から上向きのほぼ直角に起立する食材解放面(67)とを備え、その中央部からやはり回転半径となる所要長さの支持アーム(63a)(63b)(63c)が一体的に張り出されており、その張り出し先端部に設けられた2つ割型の取付ボス(64)が、複数の止めネジ(65)によって同じく傾斜回転軸(56)へ挟み付け固定されるようになっている。
【0067】
しかも、その各掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)の支持アーム(63a)(63b)(63c)と各押し潰し羽根(61b)(61c)の支持アーム(63b)(63c)には、その回転半径として機能する所要長さを調整できるようにスライドガイド長孔(68)と、その長さの調整状態を固定するためのボルト(69)とが設けられている。(70)は上記傾斜回転軸(56)に対する取付ボス(64)の位置決め固定リングである。
【0068】
この点、上記傾斜回転軸(56)に対する支持アーム(63a)(63b)(63c)の挟み付け固定構造やその支持アーム(63a)(63b)(63c)の長さ調整構造は、各掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)と各押し潰し羽根(61b)(61c)に悉く共通するため、同じ図示符号を記入する。
【0069】
先には、第1撹拌羽根(A1)における第1組の掬い上げ羽根(60a)同士が対をなす旨として、また第2組の掬い上げ羽根(60b)(60c)と押し潰し羽根(61b)(61c)とが各々対をなす旨として説明したが、茲に「対をなす」とは図22、30から明白なように、傾斜回転軸(56)の先端側(下方)から見て、何れの羽根もその支持アーム(63a)(63b)(63c)同士の一直線上において向かい合う位置関係にあることを意味する。
【0070】
その場合、図30の模式的な正面図から併せて示唆されるように、上記支持アーム(63a)を介して傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)に取り付けられた第1組と、同じく支持アーム(63b)(63c)を介して傾斜回転軸(56)の中段位置(h2)と下段位置(h3)に各々取り付けられた第2組とは、その隣り合う支持アーム(63a)(63b)(63c)同士のほぼ等しい一定な交叉角度(θ)(例えば120度)を保つ関係状態に配列されている。
【0071】
また、上記傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)に取り付けられた第1組の対をなす掬い上げ羽根(60a)と、同じく傾斜回転軸(56)の中段位置(h2)と下段位置(h3)に各々取り付けられた第2組の対をなす掬い上げ羽根(60b)(60c)と押し潰し羽根(61b)(61c)は、これら羽根の全体として図36、37の合成した模式的な側面図から明白なように、その傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)から中段位置(h2)を経て下段位置(h3)へ行く程、徐々に先細りとなる円錐形の運動軌跡を描くように回転するようになっている。
【0072】
つまり、その傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)に取り付けられた対をなす掬い上げ羽根(60a)の回転半径となる支持アーム(63a)が最も長く、同じく下段位置(h3)に取り付けられた対をなす掬い上げ羽根(60c)と押し潰し羽根(61c)との回転半径になる支持アーム(63c)が最も短く、更に中段位置(h2)に取り付けられた対をなす掬い上げ羽根(60b)と押し潰し羽根(61b)との回転半径になる支持アーム(63b)が、その中間の長さに寸法化されている。
【0073】
この点、図36、37の合成した模式的な側面図では円錐形の回転運動軌跡を説明するための便宜上、上中下3段の位置にある掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)が食材収容鍋(5)の内底面へ言わば一挙同時に最接近した勢揃いの状態を示しているが、その掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)と押し潰し羽根(61b)(61c)との全体は図22、30に基づいて説示したとおり、これらの隣り合う支持アーム(63a)(63b)(63c)同士がほぼ等しい交叉角度(θ)を保つ関係状態に配列されているため、必ず順次に食材収容鍋(5)の内底面へ最接近することとなる。
【0074】
その最接近する位置を下死点(P)と称すると共に、今図22、30のように上記傾斜回転軸(56)がその先端側(下方)から見て反時計方向(R2)へ回転し、その上段位置(h1)にある掬い上げ羽根(60a)の一方が最初に下死点(P)の位置に到達していると仮定して、その後次々と下死点(P)に到達する羽根の順序を図22、23、30に記入した「No.1~No.6」の番号で示す。
【0075】
更に言えば、上記傾斜回転軸(56)の中段位置(h2)と下段位置(h3)にある押し潰し羽根(61b)(61c)の支持アーム(63b)(63c)は、これらとの対をなす掬い上げ羽根(60b)(60c)の支持アーム(63b)(63c)よりも若干短く、上記下死点(P)の位置における押し潰し羽根(61b)(61c)の就中食材押圧面(裏面/下面)(66)と、食材収容鍋(5)の内底面との相互間隙(S1)が、同じく下死点(P)の位置における掬い上げ羽根(上段位置の掬い上げ羽根も含む)(60a)(60b)(60c)の就中食材掬い上げ面(表面/上面)(62)と、食材収容鍋(5)の内底面との相互間隙(S2)よりも広く関係設定されている。
【0076】
焼き飯の米粒を目安として言うならば、掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)の掬い上げ面(62)はこれを食材収容鍋(5)のフラットな内底面から掬い上げる作用上、その内底面との相互間隙(S2)が広くとも米粒の大きさと同等寸法、例えば1mmに設定されており、これに比し押し潰し羽根(61b)(61c)は米粒を押し潰さず、米粒同士の接着し合った団塊(ダマ)を押し潰し作用するものとして、その押圧面(66)と食材収容鍋(5)の内底面との相互間隙(S1)が、逆に狭くとも米粒の大きさと同等寸法、例えば15mmに設定されている。但し、特に掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)に限ってはその裏面(下面)にフッ素樹脂板を固定ビスや接着剤などによって取り付けたり、フッ素樹脂加工を施したりして、食材収容鍋(5)のフラットな底面(5a)へ滑りやすく接触させても良い。食材収容鍋(5)の回転に大きな抵抗を与えないならば、撹拌羽根を必ずしも鍋底との非接触に保たなくてもさしつかえない。
【0077】
何れにしても、第1撹拌羽根(A1)における掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)と押し潰し羽根(61b)(61c)の支持アーム(63a)(63b)(63c)は上記したとおり、その回転半径となる所要長さを伸縮する如く、スライド操作し得るようになっているため、その長さの伸縮によって上記相互間隙(S1)(S2)を食材やその調理目的などに応じて、各々広く又は狭く調整することができる。
【0078】
また、図36、37から併せて示唆されるように、上記傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)に取り付けられた第1組の掬い上げ羽根(60a)と、同じく中段位置(h2)と下段位置(h3)に各々取り付けられた第2組の掬い上げ羽根(60b)(60c)とは、その隣り合う同士の互いに一定量(X1)(例えば26~28mm)だけオーバーラップする作用関係状態に配列されているほか、上記傾斜回転軸(56)の中段位置(h2)と下段位置(h3)に各々取り付けられた第2組の押し潰し羽根(61b)(61c)も、その隣り合う同士の互いに一定量(X2)(例えば26~28mm)だけオーバーラップする作用関係状態に保たれている。
【0079】
その場合、中段位置(h2)と下段位置(h3)の押し潰し羽根(61b)(61c)同士は互いにほぼ同じ大きさ・形状を備え、同じく中段位置(h2)と下段位置(h3)の掬い上げ羽根(60b)(60c)同士も互いにほぼ同じ大きさ・形状を備えているに比して、上段位置(h1)の掬い上げ羽根(60a)がその他の掬い上げ羽根(60b)(60c)や押し潰し羽根(61b)(61c)よりも広大に造形されている。
【0080】
図31~37の符号(W1)はその押し潰し羽根(61b)(61c)の食材押し潰し作用幅(例えば136~150mm)、(W2)は下2段の掬い上げ羽根(60b)(60c)の食材掬い上げ作用幅(例えば136~150mm)であり、その食材掬い上げ作用幅(W2)と食材押し潰し作用幅(W1)とはほぼ同一寸法になっている。(W3)はこれらよりも広大な上段掬い上げ羽根(60a)の食材掬い上げ作用幅(例えば241.5mm)を示している。但し、これらの分担する作用幅(W1)(W2)(W3)を含む上記羽根(60a)(60b)(60c)(61b)(61c)の大きさについては、その上段位置(h1)から中段位置(h2)を経て下段位置(h3)へ行く程、徐々に(段階的に)小さく造形しても良い。
【0081】
そして、上記撹拌機駆動ボックス(2)から食材収容鍋(5)の内部に向かって、鋭角の一定な交叉角度(γ)(先に例示した好ましくは32度)を保つ傾斜設置状態に差し込み使用された傾斜回転軸(56)の先端部(下端部)は、図3、4や図31~35のような食材収容鍋(5)内のほぼ中心部(垂直軸線上)まで到達し、その傾斜回転軸(56)上に取り付けられた第1撹拌羽根(A1)による全体的な食材の撹拌作用領域(Z1)が、食材収容鍋(5)における内底面の約半分を占める偏心部に限定されており、その撹拌羽根(A1)の存在しない残余の約半分が食材の加熱作用だけを受けるにとどまる言わば空白領域(非撹拌作用領域)(Z2)に設定されている。
【0082】
この点、上記食材収容鍋(5)のフラットな底面(5a)と鋭角に交叉する撹拌羽根用傾斜回転軸(56)の一定角度(γ)が、35度よりも大角度であると、食材収容鍋(5)の直径と深さを一定と仮定した場合、その傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)に取り付けられた撹拌羽根の第1組と、同じく下段位置(h3)に取り付けられた撹拌羽根の第2組との相互間における周速差が過大になり、食材の全体を短時間での均等に撹拌作用し難くなる一方、30度よりも小角度であると、上記傾斜回転軸(56)の先端部(下端部)が食材収容鍋(5)の中心部を越えて、その食材収容鍋(5)の直径線上に長く横架することになるため、上記食材の非撹拌作用領域(空白領域)(Z2)を確保することが困難となり、加熱撹拌機としてもいたずらに大型化する結果、好ましくない。
【0083】
更に、上記食材収容鍋(5)はその回転支軸(23)の駆動モーター(24)により、その上方から見て図31~35のような反時計方向(R1)へ水平回転されるようになっており、その内部へ上記した傾斜設置状態に差し込まれた第1撹拌羽根(A1)の傾斜回転軸(56)が、その撹拌機駆動ボックス(2)内の駆動モーター(29)により図30のような先端側の下方から見て、上記食材収容鍋(5)と同じ反時計方向(R2)へ回転されるようになっている。
【0084】
尚、その食材収容鍋(5)と第1撹拌羽根用傾斜回転軸(56)の回転方向(R1)(R2)は同じである限り、図示とは逆な時計方向であってもさしつかえない。その傾斜回転軸(56)の回転速度は食材収容鍋(5)の回転速度(先に例示した2.9~11.6rpm)よりも速く、例えば16.7~41.7rpm、好ましくは33.3rpmである。
【0085】
傾斜回転軸(56)上の第1撹拌羽根(A1)は上記したとおり、全体としてその傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)から下段位置(h3)へ行く程、徐々に先細りとなる円錐形の回転運動軌跡を描く関係上、その食材収容鍋(5)内の中心側にある下段位置(h3)の掬い上げ羽根(60c)と押し潰し羽根(61c)が、その周速の最も速く回転する一方、同じく食材収容鍋(5)内の周縁側にある上段位置(h1)の対をなす掬い上げ羽根(60a)が、その周速の最も遅く回転することになる。
【0086】
そのため、上中下3段の掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)がその隣り合う同士の互いに一定量(X1)だけオーバーラップする作用関係状態として、また下2段の押し潰し羽根(61b)(61c)がその隣り合う同士の互いに一定量(X2)だけオーバーラップする作用関係状態として、何れも食材へ掬い上げ作用と押し潰し作用を重複的に加えることができるようになっていることとも相俟って、食材収容鍋(5)内の中心側に位置しつつ最も動かない食材を、その下段位置(h3)の高周速な掬い上げ羽根(60c)と押し潰し羽根(61c)により、所要の作用をすばやく積極的に付与することができると共に、食材収容鍋(5)の回転遠心力が働く周縁側に位置する食材を、その上段位置(h1)の低周速な掬い上げ羽根(60a)により、ゆっくりと高い位置まで持ち上げ落下させて、ほぐし分解することに役立てることができるほか、そのほぐし分解した食材を洩れなく中心側へ寄せ集める如く移動案内することもでき、その移動案内には上記掻取り羽根(スクレーパー)(50)も有効に協働する。
【0087】
先には、撹拌機駆動ボックス(2)の上部から垂直の撹拌主軸(46)と撹拌副軸(47)とが食材収容鍋(5)の内部に向かって張り出している旨を説明したが、図38~41のように主軸(46)の先端部又はその周囲を自転し乍ら公転運動する副軸(47)の先端部には、上記傾斜回転軸(56)の連結子(57)と同じ連結子などを用いて、垂直回転軸(71)をやはり一体回転し得るように、且つ抜き差し自在に差し込み一本化することができる。
【0088】
そして、その垂直回転軸(71)の先端部(下端部)へ上記第1撹拌羽根(A1)とは別異な回転対称となる状態に並び立つステンレス(SUS304)の縦2枚羽根(72L)(72R)から成る第2撹拌羽根(A2)を取り付け、これを上記撹拌機駆動ボックス(2)に内蔵された第2撹拌羽根用駆動モーター(40)により回転駆動し、ホットプレート(所謂鉄板)として機能する食材収容鍋(5)のフラットな底面(5a)とも相俟って、焼きそばや野菜炒め、ピラフ、その他の上記焼き飯と異なる食材の炒め調理を効果的に行うことも可能である。
【0089】
その場合、図38から明白なように、その垂直回転軸(71)に取り付けられた第2撹拌羽根(A2)による食材の撹拌作用領域(Z1)も、上記傾斜回転軸(56)に取り付けられた第1撹拌羽根(A1)の撹拌作用領域(Z1)と同じく、食材収容鍋(5)における内底面の約半分を占める偏心部に限定され、残余の約半分がやはり食材の加熱作用だけを受ける空白領域(非撹拌作用領域)(Z2)になっている。
【0090】
また、撹拌機駆動ボックス(2)をその上記回動支点軸(4)の水平軸線周りに、一定角度(α)だけ起こし上げ作動すれば、第2撹拌羽根(A2)とその垂直回転軸(71)も図41のように、食材収容鍋(5)の内部から抜き出し退避されることは言うまでもない。
【0091】
図示実施形態の食材加熱撹拌機は上記の構成を備えており、焼き飯(食材/被撹拌物)の炒め調理を代表例に挙げて、その作用を説明すると次のとおりである。
【0092】
即ち、上記加熱撹拌機を用いて、焼き飯を炒め調理するに当たっては、食材収容鍋(5)を図4、6、19や図30~35のように反時計方向(R1)へ回転させる一方、その食材収容鍋(5)をIH加熱器(H)により加熱し、適当な温度(例えば190度)に達したならば、上記(第1)撹拌羽根(A1)の傾斜回転軸(56)を食材収容鍋(5)と同じ図30図31~35の反時計方向(R2)へ回転させると共に、食材(被撹拌物)の焼き飯(炊飯米や玉ネギ、液卵、調味液などの各種具材)を食材収容鍋(5)内へ投入する。
【0093】
そうすれば、上記撹拌羽根(A1)の回転中、その傾斜回転軸(56)に上中下の3段として取り付けられている掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)と同じく下2段に取り付けられている押し潰し羽根(61b)(61c)とが、図22、23、30に例示したNo.1からNo.6の順序で、食材収容鍋(5)の内底面と最接近した位置の下死点(P)へ、図30~35のように次々と到達し、その掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)の食材掬い上げ面(62)により食材収容鍋(5)の内底面から掬い上げられて落下する食材(焼き飯)が、押し潰し羽根(61b)(61c)の食材押圧面(66)によりほぐし分解され、その掬い上げ落下とほぐし分解の繰り返しにより、加熱・乾燥作用が食材に万遍なく浸透したパラパラ感に富む炒め調理状態を得られるのである。
【0094】
その場合、上記掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)と押し潰し羽根(61b)(61c)はその傾斜回転軸(56)の軸線方向(長手方向)と、360度の回転円周方向との両方向に沿って、言わば放射対称型の点在分布する状態に配列されており、その全体として図36、37のような円錐形の回転運動軌跡を描くようになっているため、上記食材を短時間での効率良く撹拌することができる。
【0095】
しかも、上記掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)の食材掬い上げ面(62)と食材収容鍋(5)の内底面との相互間隙(S2)は、広くとも米粒の大きさ程度(先に例示した1mm)として狭小化されているため、その掬い上げ面(62)により食材を確実に掬い上げてから落下させることができる一方、上記押し潰し羽根(61b)(61c)の食材押圧面(66)と同じく食材収容鍋(5)の内底面との相互間隙(S1)は、逆に狭くとも米粒の大きさ程度(先に例示した15mm)として広大に設定されているため、上記食材(焼き飯)の米粒をいたずらに摺り潰すことなく、その接着し合った団塊(ダマ)は押し潰し分解することができ、その内部まで加熱・乾燥作用を行き届かせることが可能となる。
【0096】
また、上記傾斜回転軸(56)に上中下の3段として取り付けられた掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)の隣り合う同士や、同じく下2段に取り付けられた押し潰し羽根(61b)(61c)の隣り合う同士は、何れも一定量(X1)(X2)だけオーバーラップする関係状態に配列されているため、上記食材の掬い上げ作用と押し潰し(ほぐし分解)作用との何れも洩らすことなく、確実に営ませることができる。
【0097】
更に、上記撹拌羽根(A1)の傾斜回転軸(56)は食材収容鍋(5)における鍋底の平面(フラットな底面)と鋭角(好ましくは32度)の一定交叉角度(γ)を保つ傾斜設置状態にあって、その先端部(下端部)が食材収容鍋(5)のほぼ中心部に位置することにより、撹拌羽根(A1)の全体的な食材撹拌作用領域(Z1)がその食材収容鍋(5)における内底面の約半分を占める偏心部に限定され、残余の約半分が加熱作用だけを受ける空白領域(非撹拌作用領域)(Z2)として設定されているため、上記食材(焼き飯)の米粒やその他の具材(固形物)を、その空白領域(Z2)において動かさず、常に同じ表面を食材収容鍋(5)の内底面と長時間接触させることにより、そのバラツキ無く均一に加熱・乾燥することができる。撹拌中に動く固形食材の表面は、食材収容鍋(5)の内底面(加熱面)からランダムに遊離するため、その表面全体の安定な加熱・乾燥状態を得られないのである。
【0098】
特に、上記傾斜回転軸(56)の中段位置(h2)と下段位置(h3)には、掬い上げ羽根(60b)(60c)と押し潰し羽根(61b)(61c)との対をなす第2組が取り付けられているに比して、同じく傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)には押し潰し羽根がなく、掬い上げ羽根(60a)同士の対をなす第1組が取り付けられているため、その周速の遅い掬い上げ羽根(60a)によって食材の多量をゆっくりと高い位置まで掬い上げて落下させ、その食材のほぐし分解作用に役立てることができ、その分解した食材を引き続き食材収容鍋(5)の回転方向に沿って、周縁側から中心側へ寄せ流すことも可能である。
【0099】
この点、傾斜回転軸(56)の上段位置(h1)に上記押し潰し羽根が取り付けられていると、その回転半径となる支持アームは長くなり、周速が遅いため、押し潰し羽根の押圧面が食材を食材収容鍋(5)の内底面へ押し付けることとも相俟って、その食材の移動を堰き止めるおそれがあり、延いては食材収容鍋(5)の回転を阻害してしまう。
【0100】
何れにしても、上記撹拌羽根(A1)の傾斜回転軸(56)とこれが鋭角の交叉角度(γ)に差し込み設置された食材収容鍋(5)とは、図30図31~35のような互いに同じ反時計方向(R1)(R2)へ回転駆動されるようになっているため、その掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)により掬い上げ落下させた上、押し潰し羽根(61b)(61c)によりほぐし分解した食材を、その食材収容鍋(5)の周縁側へ自ずと円滑に移動させることができる。
【符号の説明】
【0101】
(1L)(1R)・・・据付け機筐
(2)・・・・・撹拌機駆動ボックス
(4)・・・・・回動支点軸
(5)・・・・・食材収容鍋
(6)・・・・・IHフレーム
(9)・・・・・鍋支持フレーム
(22)・・・・軸受ボス
(23)・・・・回転支軸
(39)・・・・第1撹拌羽根用駆動モーター
(40)・・・・第2撹拌羽根用駆動モーター
(42)・・・・(傾斜)駆動軸
(44)・・・・(水平)駆動軸
(50)・・・・掻取り羽根(スクレーパー)
(56)・・・・傾斜回転軸
(60a)(60b)(60c)・・・掬い上げ羽根
(61b)(61c)・・・押し潰し羽根
(62)・・・・食材掬い上げ面
(63a)(63b)(63c)・・・支持アーム
(66)・・・・食材押圧面
(71)・・・・垂直回転軸
(A1)・・・・(第1)撹拌羽根
(A2)・・・・(第2)撹拌羽根
(B)・・・・・釜転倒作動機構
(C)・・・・・起こし上げ作動機構
(D)・・・・・鍋水平回転駆動機構
(P)・・・・・下死点
(H)・・・・・IH加熱器
(T)・・・・・調理釜
(S1)(S2)・・・相互間隙
(R1)・・・・食材収容鍋の回転方向
(R2)・・・・傾斜回転軸の回転方向
(W1)(W2)(W3)・・・羽根の作用幅
(X1)(X2)・・・オーバーラップ量
(Z1)・・・・撹拌作用領域
(Z2)・・・・空白領域
(α)(β)・・・一定角度
(γ)(θ)・・・交叉角度
(h1)・・・上段位置
(h2)・・・中段位置
(h3)・・・下段位置

【要約】
【課題】
主に焼き飯の炒め調理用としてふさわしく有効な食材の加熱撹拌機を提供する。
【解決手段】
底面(5a)がフラットな水平回転される食材収容鍋(5)と、そのIH加熱器(H)と、上記フラットな底面と鋭角(γ)に交叉して食材収容鍋の内部へ差し込み使用される撹拌羽根用傾斜回転軸(56)とを備え、その傾斜回転軸上へ上中下3段の食材掬い上げ羽根(60a)(60b)(60c)と下2段の食材押し潰し羽根(61b)(61c)とを各々取り付け、その羽根全体が円錐形の運動軌跡を描くように回転して、その掬い上げ羽根により順次掬い上げて落下した食材を、押し潰し羽根によりほぐし分解するように定めた。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31(a)】
図31(b)】
図32(a)】
図32(b)】
図33(a)】
図33(b)】
図34(a)】
図34(b)】
図35(a)】
図35(b)】
図36
図37
図38
図39
図40
図41