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▶ 梅 正新の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】渦流動力推進構造
(51)【国際特許分類】
   B63H 1/30 20060101AFI20240910BHJP
   B63H 11/04 20060101ALI20240910BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20240910BHJP
   B63H 11/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B63H1/30
B63H11/04
B63H25/42 A
B63H11/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023145619
(22)【出願日】2023-09-07
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504387425
【氏名又は名称】梅 正新
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】梅正新
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107794(JP,A)
【文献】韓国登録特許第2028320(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第102101526(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 1/30
B63H 11/04
B63H 25/42
B63H 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒と導流管を備えた渦流動力推進構造であって
前記円筒は、一端に流体入口を有し、他端に流体出口を有し、
前記流体出口の寸法は、前記流体入口の寸法より大きいか、前記流体入口の寸法と同じであり
前記導流管は、導流を前記円筒の側方から前記円筒内に導入するように設けられていて、
当該導流管が導流を前記円筒内に導入する部分において、当該円筒の軸に沿う方向から見たとき、当該導流管は、当該円筒の接線に重なっているか、または、当該円筒の接線方向に平行であり、
導流が前記導流管を介して前記円筒に導入さるとき、導流は前記円筒の内縁に沿って当該円筒の内部に導入され、これにより導流は渦流に形成され、前記渦流が前記円筒の内縁に沿って前進し、前記円筒内の流体が押動されて主流に形成されて加速され、前記渦流が前記主流と合流されて前記流体出口に向かって流れ、前記流体入口から外部流体が吸入され
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項2】
請求項1に記載の渦流動力推進構造において、
前記円筒の両端に設けられた前記流体入口の寸法が、前記流体出口の寸法と異なるとき、前記導流管が前記円筒に対して垂直となり、寸法が小さめの端部が前記流体入口であり、寸法が大きめの端部が前記流体出口である
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項3】
請求項1に記載の渦流動力推進構造において、
前記円筒の両端に設けられた前記流体入口の寸法と前記流体出口の寸法とが同じであるとき、前記導流管と前記円筒とにより形成された傾斜角度により、注入された導流が前記円筒内で偏向の前記渦流を発生させる
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項4】
請求項1に記載の渦流動力推進構造において、
当該導流管が導流を前記円筒内に導入する部分において、前記円筒の外周には加速リングが取り付けられ、前記導流管を介して注入された導流が前記加速リングの内縁に沿って当該加速リングの内部に導入され、これにより導流は渦流に形成され、さらに、前記渦流が前記円筒の内縁に沿って進む
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項5】
請求項1に記載の渦流動力推進構造において、
2つの前記渦流動力推進構造の前記円筒が互いに反対方向で接続されて前記流体入口が互いに突き合わされ、渦流動力推進構造アセンブリを構成し、
2つの異なる前記導流管に導流がそれぞれ注入されると、前記円筒内の流体の方向及び速度が変化す
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項6】
請求項5に記載の渦流動力推進構造において、
前記渦流動力推進構造アセンブリは、乗り物に取り付けられ、前記円筒の内部の前記主流の反作用力により乗り物を推進させる
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項7】
請求項6に記載の渦流動力推進構造において、
前記円筒の前記流体出口には、乗り物が排出する流体の方向を制御する舵が取付けられる
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項8】
請求項6に記載の渦流動力推進構造において、
前記円筒上には、前記円筒に対して垂直な回転軸が取り付けられ
前記回転軸は、前記渦流動力推進構造又は前記渦流動力推進構造アセンブリを回転させて乗り物の方向を制御す
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項9】
請求項5に記載の渦流動力推進構造において、
前記渦流動力推進構造アセンブリの2つの前記導流管には、ポンプが接続され
前記ポンプは、前端の前記導流管から吸入された導流を後端の前記導流管内に注入し、全体の効率を高め
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【請求項10】
請求項1に記載の渦流動力推進構造において、
前記円筒の前記流体出口は、多角形であり、前記渦流を縦向きの流体に形成して流体全体の流速を高める
ことを特徴とする渦流動力推進構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒及び導流管が結合されて方向性を備えた渦流発生装置であり、円筒内の流体を駆動させるか、その反作用力により渦流推進装置を形成する、渦流動力推進構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶推進装置には、スクリュープロペラ(screw propeller)が利用されているが、このような装置には、以下(1)~(6)のような問題があった。
(1)羽根の前縁が大きな圧抵抗を受け、羽根の羽根面が大きな摩擦抵抗を受けるため、運動エネルギーにロスが生じた。
(2)スクリュープロペラが水に遠心力を発生させ、回転軸の後方に低圧領域が形成されるため、運動エネルギーにロスが生じた。
(3)スクリュープロペラの羽根先端のキャビテーションにより運動エネルギーにロスが生じ、騒音及び腐蝕の問題が発生することがあった。
(4)スクリュープロペラが露出されているため、漂流物により損傷するかロープが絡まり易くなるか、或いは水生動物を傷つけてしまうことがあった。
(5)スクリュープロペラに大きな振動及び騒音が発生することがあった。
(6)スクリュープロペラの製造・メンテナンスには高い技術が必要であり、コストが多くかかった。
【0003】
こうした現状に鑑み、本発明者は、関連分野の長年にわたる経験により、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る渦流動力推進構造を完成したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、円筒内部の流体を駆動させるか、流体の反作用力により乗り物を推進することができる全く新しい装置であり、安価で、構造が簡素で、組立てが容易で、壊れにくく、メンテナンスが容易で、環境に優しく、省エネかつ高性能のニーズを満たすことができる、渦流動力推進構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る渦流動力推進構造は、以下の技術手段を含む。
本発明に係る渦流動力推進構造は、1つの導流管を含み、それを接線方式で円筒に挿入し、流体が導流管を介して円筒に注入された後、渦流に形成されて特定の端部に向かって流動する。
【0006】
円筒内の流体を特定の端部に向かって前進させるために、2種類の方式を利用する。そのうち一方の方式は、両端の開口に寸法が異なる円筒をそれぞれ設け、他方の方式は、両端に設けられた開口の寸法がそれぞれ異なる円筒に、傾いた導流管を使用する。
【0007】
上述した渦流動力推進構造において、導流が導流管を介して接線方式で円筒に注入された後、円筒の内縁に沿って回転して渦流となり、両端に設けられた開口の寸法がそれぞれ異なる円筒に対し、大きめの開口に向かって渦流が流れる。開口は流体出口であり、両端に設けられた開口の寸法が等しい円筒に対し、傾いた導流管を使用して傾いた渦流を発生させて円筒の一端に向けて流し、開口を流体出口として用いる。
【0008】
上述した渦流動力推進構造において、渦流が円筒内の静態のコア流体を押動して主流に形成し、渦流が主流を案内して加速し続ける。
【0009】
上述した渦流動力推進構造において、主流が導流と合流して円筒の出口に向かって流れると、空になったコア領域の低圧が外部流体を吸引し、反対側の端部開口から進入する。開口は流体入口として用いられ、流体入口と流体出口との間には、一方向の主流が形成される。
【0010】
上述した渦流動力推進構造において、加速された主流が垂直方向の渦流に合流すると、主流と渦流とが互いにフィードバックして加速する。
【0011】
上述した渦流動力推進構造において、方向性を有する主流が流体出口で推進力を発生させ、流体入口に吸引力を発生させ、導流の流速を調整して主流の流速を制御することができる。
【0012】
上述した渦流動力推進構造において、2つの渦流動力推進構造を互いに接続して流体入口が互いに突き合わされ、渦流動力推進構造アセンブリを構成し、一方の導流管に導流を注入すると、一方向の主流が発生し、他方の導流管に導流を注入すると、反対方向の主流が発生する。
【0013】
上述した渦流動力推進構造アセンブリにおいて、各導流管それぞれが主流の方向及び流速を独自に制御することができるため、渦流動力推進構造アセンブリを乗り物に取り付け、乗り物を前進、後進、加速又は減速させることができる。そのため、構造が簡素で堅牢であり、組立て及びメンテナンスが容易で、省エネかつ高性能のニーズを満たすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の渦流動力推進構造は、円筒内部の流体を駆動させるか、流体の反作用力により乗り物を推進することができる全く新しい装置であり、安価で、構造が簡素で、組立てが容易で、壊れにくく、メンテナンスが容易で、環境に優しく、省エネかつ高性能のニーズを満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a】本発明の一実施形態に係る導流管を接線方式で両端の開口の寸法が異なる円筒に挿入する状態を示す流線図である。
図1b】本発明の一実施形態に係る導流管を接線方式で両端の開口の寸法が異なる円筒に斜めに挿入する状態を示す流線図である。
図2a】本発明の一実施形態に係る渦流動力推進構造の円錐形筒上に1つの加速リングを周設して渦流の外径を増大させ、導流管が接線方式で加速リング内に挿入される状態を示す断面図である。
図2b】本発明の図2aの側面図である。
図3a】本発明の他の実施形態に係る渦流動力推進構造アセンブリを前進させる状態を示す流線図である。
図3b】本発明の他の実施形態に係る渦流動力推進構造アセンブリを後進させる状態を示す流線図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る渦流動力推進構造は、円筒の流体出口に舵を取り付け、排出流の方向を制御する状態を示す説明図である。
図5a】本発明のさらに他の実施形態に係る渦流動力推進構造に1つの回転軸を取り付け、渦流動力推進構造の方向を制御する状態を示す斜視図である。
図5b】本発明のさらに他の実施形態に係る渦流動力推進構造アセンブリに1つの回転軸を取り付け、渦流動力推進構造アセンブリの方向を制御する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1aを参照する。図1aに示すように、導流管2を介して錐形円筒1内に導流21を注入し、導流21は、円筒1内で渦流22に形成されるとともに、大きめの開口に向かって流れる。開口は、流体出口12に形成される。図1bを参照する。図1bに示すように、円筒1の流体出口12の寸法が流体入口11の寸法と同じである場合、傾いた導流管2が接線方式で円筒1に挿入され、導流21が円筒1内で斜めの渦流22に形成され、特定の開口に向かって流れる。開口は、流体出口12に形成される。上述した円筒1の流体出口12は、渦流を縦向きの流体に変化させる多角形に形成され、流体全体の流速を高めてもよい。
【0017】
図1a及び図1bを参照する。図1a及び図1bに示すように、渦流22が円筒1の内縁に沿って流動するとき、円筒1内で静態のコア流体を押動して主流14に形成し、渦流22が主流14を案内して加速させる。渦流22は、主流14と合流して流体出口12に向かって流れるとともに、流体入口11から外部流体13を吸入する。渦流動力推進構造を乗り物(例えば船舶)に取り付けると、円筒1内部の主流14の反作用力を利用して乗り物を推進させることができる。
【0018】
図2a及び図2bを参照する。図2a及び図2bに示すように、渦流動力推進構造の円筒1の外周に加速リング3を増設すると、渦流22の外径が増大し、導流21が接線方式で加速リング3内に進入される。
【0019】
図3a及び図3bを参照する。図3a及び図3bに示すように、本発明の他の実施形態に係る渦流動力推進構造は、船舶の前進、後進に利用する場合、2つの渦流動力推進構造を互いに反対方向で接続させる。2つの渦流動力推進構造の円筒1,1'の流体入口11を突き合わせて渦流動力推進構造アセンブリを形成する。図3aに示すように、導流管2に導流21を注入すると、渦流22が発生する。図3bに示すように、導流管2'に導流21'を注入すると、反対方向の渦流22'が発生し、導流管2,2'中の導流21,21'を制御することにより、渦流動力推進構造アセンブリ内の主流14,14'の方向及び速度を制御し、船舶を前進、後進、加速又は減速させることができる。
【0020】
上述したように、本発明に係る渦流動力推進構造アセンブリを乗り物(例えば船舶)に取り付けると、渦流動力推進構造アセンブリの2つの導流管2,2'にポンプが接続され、導流管2から吸入された導流21が導流管2'に注入されるか、これとは反対に、導流管2'から吸入された導流21'が導流管2に注入されてもよいが、これら2種類の方式はともに全体の効率を高めることができる。
【0021】
図4を参照する。図4に示すように、本発明の他の実施形態に係る渦流動力推進構造を、乗り物(例えば船舶)の方向転換に利用する場合、図1a及び図1bに示す渦流動力推進構造又は図3a及び図3bに示す渦流動力推進構造アセンブリは、流体出口12に舵4を取付けると、排出する流体の方向を調整することができる上、乗り物(例えば船舶)の方向転換を制御することもできる。
【0022】
図5a及び図5bを参照する。図5a及び図5bに示すように、本発明のさらに他の実施形態に係る渦流動力推進構造を乗り物(例えば各種船舶)の方向転換に利用する場合、図1a及び図1bに示す渦流動力推進構造又は図3a及び図3bに示す渦流動力推進構造アセンブリは、円筒1に対して垂直に円筒1に取り付けられた回転軸5が、渦流動力推進構造又は渦流動力推進構造アセンブリを自由に回転させて方向を調整すると、乗り物の方向を制御することができる。
【0023】
上述したことから分かるように、本発明に係る渦流動力推進構造は、従来の推進装置の欠点が無い全く新しい推進装置である。本発明に係る渦流動力推進構造は、円筒及び導流管を含む。円筒は、流体入口及び流体出口を有する。流体出口は、円筒の大きめの面積を有する開口に設けられる。流体入口は、流体出口の反対側の端部に設けられる。導流が導流管を介して接線方式で円筒に注入された後に渦流に形成され、コア流体を流体出口に向かって流すと、外部流体が流体入口に吸入され、渦流と合流して流体出口に向かって流れる。そのため、本発明は、構造が簡素で堅牢であり、組立て及びメンテナンスが容易で、省エネかつ高性能のニーズを満たすことができる。また本発明は実用的で、新規性、進歩性など、特許の基本的な要件を備えている。
【符号の説明】
【0024】
1 円筒
1' 円筒
2 導流管
2' 導流管
3 加速リング
4 舵
5 回転軸
11 流体入口
12 流体出口
13 外部流体
14 主流
14' 主流
21 導流
21' 導流
22 渦流
22' 渦流
【要約】
【課題】安価で、構造が簡素で、組立てが容易で、壊れにくく、メンテナンスが容易で、環境に優しく、省エネかつ高性能のニーズを満たすことができる、渦流動力推進構造を提供する。
【解決手段】渦流動力推進構造は、円筒1及び導流管2を備える。円筒は、一端に流体入口11が設けられ、他端に流体出口12が設けられる。流体出口の寸法は、流体入口の寸法より大きいか、流体入口の寸法と同じである。導流管は、接線方式で円筒内に挿入され、導流21が導流管を介して円筒に注入された後に渦流22に形成され、渦流が円筒の内縁に沿って前進し、円筒内の流体が押動されて主流14に形成されて加速され、渦流が主流と合流されて流体出口に向かって流れ、流体入口から外部流体13が吸入される。
【選択図】図1a
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b