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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】保持システム、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023189689
(22)【出願日】2023-11-06
【審査請求日】2023-12-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和5年3月22日に、経済産業省&日本機械工業連合会 2022年度成果報告会にて公開 (2)令和5年6月6日に、FOOMA JAPAN 2023にて公開 (3)令和5年3月23日に、日刊工業新聞にて公開 (4)令和5年3月23日に、日本食糧新聞にて公開 (5)令和5年3月24日に、Impress Watchにて公開 (6)令和5年3月28日に、日刊工業新聞にて公開 (7)令和5年3月28日に、MONOistにて公開 (8)令和5年3月30日に、食品新聞にて公開 (9)令和5年3月28日に、https://www.youtube.com/watch?v=GZjYx9GFS4cにて公開 (10)令和5年3月29日に、https://www.youtube.com/watch?v=9y9iCfa5WC0にて公開 (11)令和5年6月8日に、https://www.youtube.com/watch?v=xdnywSp4FKgにて公開 (12)令和5年6月26日に、https://www.youtube.com/watch?v=oWb5pRHxWz0にて公開 (13)令和5年6月26日に、https://www.sbbit.jp/article/st/116633にて公開 (14)令和5年7月5日に、https://www.youtube.com/watch?v=v2gASx30Fw0にて公開 (15)令和5年9月20日に、惣菜・デリカJAPAN(SDJ)2023にて公開 (16)令和5年9月25日に、https://www.youtube.com/watch?v=Fy0IMKm72v8にて公開 (17)令和5年9月25日に、https://www.youtube.com/watch?v=SARPG1vHipIにて公開 (18)令和5年9月25日に、https://www.youtube.com/watch?v=Y38tp9Z1tJMにて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖也
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-013236(JP,A)
【文献】特許第7364283(JP,B1)
【文献】特開2021-024026(JP,A)
【文献】特許第7364282(JP,B1)
【文献】特許第7364284(JP,B1)
【文献】特開2023-118017(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190399(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/156622(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06-15/08
B65G 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に開閉する保持部材を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた保持システムであって、
前記制御装置は、
収容容器に収容されている対象物に対する、前記保持部材による保持に関する動作として、
動作の実行に伴い前記保持部材から前記対象物が飛び散る可能性が第1の可能性である第1の動作と、
動作の実行に伴い前記保持部材から前記対象物が飛び散る可能性が前記第1の可能性よりも高い第2の可能性である第2の動作と、を前記ロボットに実行させると共に、
把持動作、把持量調整動作、除去動作、旋回や高速な移動を伴う移送動作、回転動作、及び解放動作を前記第2の動作として扱い、
前記第2の動作を実行する際の前記保持部材の位置を、前記第1の動作を実行する際の前記保持部材の位置よりも低い位置であって、前記収容容器の開口面の高さよりも低い、前記収容容器の収容空間内の位置になるように前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする保持システム。
【請求項2】
保持部材を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた保持システムであって、
前記制御装置は、
収容容器に収容されている対象物に対する、前記保持部材による保持に関する動作として、
動作の実行に伴い前記保持部材から前記対象物が飛び散る可能性が第1の可能性である第1の動作と、
動作の実行に伴い前記保持部材から前記対象物が飛び散る可能性が前記第1の可能性よりも高い第2の可能性である第2の動作と、を前記ロボットに実行させると共に、
除去動作、旋回や高速な移動を伴う移送動作、及び回転動作を前記第2の動作として扱い、
前記第2の動作を実行する際の前記保持部材の位置を、前記第1の動作を実行する際の前記保持部材の位置よりも低い位置であって、前記収容容器の開口面の高さよりも低い、前記収容容器の収容空間内の位置になるように前記ロボットを制御する、
ことを特徴とする保持システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記収容容器の開口面の高さに変更があった場合には、前記第2の動作を実行する際の前記保持部材の位置も変更する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保持システム。
【請求項4】
前記保持部材の位置とは、前記対象物が前記保持部材から前記収容容器の外側に飛び散る起点となる位置である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保持システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記収容容器の水平面を複数の領域に区分した場合に、前記第2の動作が何れの領域で実行されるかに基づいて、前記第2の動作を実行する際の前記保持部材の位置の高さを異ならせる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保持システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記収容容器において、前記対象物の収容されている状態に基づいて、前記第2の動作を実行する際の前記保持部材の移動速度を異ならせる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保持システム。
【請求項7】
保持部材を有するロボットを備えた、保持システムの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、
収容容器に収容されている対象物に対する、前記保持部材による保持に関する動作として、
動作の実行に伴い前記保持部材から前記対象物が飛び散る可能性が第1の可能性である第1の動作と、
動作の実行に伴い前記保持部材から前記対象物が飛び散る可能性が前記第1の可能性よりも高い第2の可能性である第2の動作と、を前記ロボットに実行させると共に、
除去動作、旋回や高速な移動を伴う移送動作、及び回転動作を前記第2の動作として扱い、
前記第2の動作を実行する際の前記保持部材の位置を、前記第1の動作を実行する際の前記保持部材の位置よりも低い位置であって、前記収容容器の開口面の高さよりも低い、前記収容容器の収容空間内の位置になるように前記保持システムの構成部材を制御する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項8】
前記構成部材は、
前記保持部材を備えたロボット、又は、前記収容容器を上昇及び下降する昇降機構、の何れかである、
ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持システム、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、ロボットの導入が進められている。従来からロボットが用いられている工業製品の製造分野はもちろんのことながら、例えば、食品の盛り付けを行う分野等でもロボットの導入が進められている。
このような盛り付けを行うロボットに関する技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の技術では、把持部材の駆動を制御するモードとして、把持部材に対象物を把持させる第1制御モードと、把持部材に付着した対象物を除去する第2制御モードとを使い分ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-24026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されているような一般的な技術では、対象物が収容された収容容器の開口面の鉛直上方において把持等の動作を行う。また、例えば、特許文献1の第2制御モードでは、未だ把持していない対象物の鉛直上方で把持部材を上下動させることで、把持部材に付着していた対象物を落下させる動作を行う。
このような動作を行う場合、その過程において、十分に把持できていなかった対象物や、把持部材に付着していた対象物が、制御不能となって収容容器の外側にまで飛び散るおそれがある。そして、このように対象物が外側まで飛び散った場合、作業員がこの対象物を回収したり、その後に清掃をしたりするという作業が発生する。また、この作業中はロボットの動作を停止しておく必要があるため、結果として、生産性が低下してしまう。
【0005】
このような問題は、ロボットが対象物を把持することで対象物の保持をする場面に限られるものではない。例えば、ロボットが対象物を吸着して対象物の保持を行う場面や、ロボットが対象物を掬うことにより対象物の保持を行う場面や、ロボットが対象物を挟むことにより対象物の保持を行う場面といった、ロボットが何らかの手段で保持を行う場面全般に共通するものである。
さらに、このような問題はロボットが保持する対象物が食品である場合に限られるものではなく、工業製品の製造等のロボットによって様々な対象物を保持する場面全般に共通するものである。
以上のように、従来の技術では、ロボットによって保持を行う場合に、保持の対象物を収容容器の外側に飛び散らせないことについて、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は、ロボットによって保持を行う場合に、保持の対象物が収容容器の外側に飛び散ることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る保持システムは、
保持部材を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた保持システムであって、
前記制御装置は、
収容容器に収容されている対象物に対する、前記保持部材による保持に関する動作として、
動作の実行に伴い前記保持部材から前記対象物が飛び散る可能性が第1の可能性である第1の動作と、
動作の実行に伴い前記保持部材から前記対象物が飛び散る可能性が前記第1の可能性よりも高い第2の可能性である第2の動作と、を前記ロボットに実行させると共に、
前記第2の動作を実行する際の前記保持部材の位置を、前記第1の動作を実行する際の前記保持部材の位置よりも低い位置になるように前記ロボットを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットによって保持を行う場合に、保持の対象物が収容容器の外側に飛び散ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る把持システム1の構成を模式的に示す模式図である。
図2】制御装置10のハードウェア構成を示す模式図である。
図3】制御装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図4】ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
図5】把持動作等の動作を実行する場合の、収容容器20の収容空間、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。
図6】一対の把持部材31aの開閉について示す図である。
図7】検出部40の近傍を拡大して示す斜視図である。
図8】移送位置P1及び解放位置P2の近傍を示す模式図である。
図9】移送位置P1及び解放位置P2の近傍を鉛直上方から俯瞰した図である。
図10】高さ制御処理を実行する場合に用いる、基準位置について示す模式図である。
図11】高さ制御処理を実行する場合の、収容容器20の収容空間、収容された具材、ハンド31、把持部材31a、及びロボットアーム32の位置関係について示す模式図である。
図12】把持システム1が実行する具材盛り付け処理の流れを示すフローチャートである。
図13】把持システム1が実行する具材盛り付け処理の流れを示すフローチャートである。
図14】変形例1における、高さ制御処理を実行する場合の、収容容器20の収容空間、収容された具材、ハンド31、把持部材31a、及びロボットアーム32の位置関係について示す模式図である。
図15】変形例2における、収容容器20に拡張部材60を取り付けた状態を示す模式図である。
図16】変形例4により高さ制御処理を実行する場合の、収容容器20の収容空間、収容された具材、ハンド31、把持部材31a、及びロボットアーム32の位置関係について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[実施形態]
[全体構成]
図1は、本発明に係る把持システム1の構成を模式的に示す模式図である。
ここで、把持システム1は、食材を盛り付けるシステムに本発明を適用することを想定したものである。そのため、以下の説明においては、把持システム1が、惣菜等の具材を把持し、この把持した具材を、惣菜の容器に盛り付ける場合を例に挙げて説明する。
【0011】
ただし、これは説明のための一例に過ぎず、本発明の適用範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、ロボットによって保持を行う様々なシステム全般に対して適用可能である。好適な一例として示す本実施形態は、一対の把持部材を閉状態とすることで、容器形状を形成し、この容器形状を用いて把持を行うことで保持を実現するシステムである。ただし、これ以外にも、例えば、密着した対象物との間の空間を真空に近づけることで、対象物を吸着する吸着パッドにより保持を実現するシステムに、本発明を適用してもよい。あるいは、例えば、スプーン形状やレードル形状の把持部材にて対象物を掬うことにより保持を実現するシステムに、本発明を適用してもよい。他にも、例えば、トング形状や爪形状の把持部材にて対象物を挟むことにより保持を実現するシステムに、本発明を適用してもよい。
また、保持の対象物も食材や容器には限定されず、例えば、電子機器等の工業製品の部品等を対象物として保持をするシステムに適用することも可能である。
すなわち、本発明は、保持を実現するシステム全般に適用することが可能な発明である。
【0012】
また、以下の説明において、盛り付けられる具材の量として、重量を例に挙げて説明するが、本発明は、重量以外であっても、体積、かさ、質量等、各種呼称の物理量を対象に適用することが可能である。
【0013】
図1に示すように、把持システム1は、制御装置10と、収容容器20と、多関節ロボット30と、検出部40と、移送機構50と、を備えている。この内、制御装置10、多関節ロボット30、検出部40、及び移送機構50は、有線又は無線によって通信接続されており、相互に通信可能となっている。
【0014】
また、把持システム1に隣接して、総菜の容器を上流から下流に向かって自動的に運搬するベルトコンベア2が設置されている。ベルトコンベア2は、容器を運搬するための搬送面を有しており、容器はこの搬送面に載置された状態で搬送される。図1では、破線の矢印で図示するように、紙面の左側がベルトコンベア2における搬送の上流であり、紙面の右側がベルトコンベア2における搬送の下流となる。
なお、把持システム1のさらなる上流にて容器をベルトコンベア2の搬送面に供給する作業は、人手によって行われてもよいし、容器の供給装置によって行われてもよい。
【0015】
また、図1では、収容容器20、多関節ロボット30、検出部40、及び移送機構50、からなる組を一組のみ示しているが、これに限られない。本実施形態では、一台のベルトコンベア2の搬送方向に沿って、これらの組が複数組設置されており、複数の多関節ロボット30が協働して作業することを想定する。
【0016】
制御装置10は、PC(Personal Computer)又はプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、把持システム1全体を制御する。例えば、制御装置10は、多関節ロボット30が収容容器20から具材を把持して、惣菜の容器に解放することで具材を盛り付ける動作等を制御する。より詳細には、制御装置10は、多関節ロボット30の駆動を制御することで、多関節ロボット30のハンド31を予め設定された所定位置に所定ルート及び所定速度で移動させる動作や、ハンド31のアクチェータの駆動を制御することで、ハンド31による具材の把持や解放をする動作を実現する。他にも、例えば、制御装置10は、検出部40の検出結果に基づいて、移送機構50の動作を制御する。
【0017】
収容容器20は、把持システム1において盛り付けられる惣菜等の具材を収容する収容空間を備えている。収容容器20は、例えば、大型のバットやトレイ等の汎用の収容容器により実現される。そして、収容容器20の収容空間には、例えば、例えば、ポテトサラダ等の練りサラダ(粘性や粘着性を有する具材を含むサラダ)、卯の花(おから)、切り干し大根、なます、ひじき、煮豆、バターコーン等の惣菜が収容される。本実施形態において、この収容空間には、1種類の具材が複数食分(例えば、数十食分~数百食分)収容されているものとする。そして、複数の把持システム1が何れかの惣菜等の具材を、対応する惣菜の容器に盛り付けることで、惣菜の盛り付け作業を完了させることができる。収容容器20は、作業者が手作業によって、又は、多関節ロボット30が自動的に交換することが可能である。
【0018】
多関節ロボット30は、例えば、水平多関節ロボットあるいは垂直多関節ロボット等によって構成され、盛り付けられる具材を把持可能なハンド31と、可動範囲において任意の位置にハンド31を移動させるロボットアーム32と、を備えている。
また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が把持した具材の物理量を取得する手段の一例として、把持した具材の重量を計測する重量センサ30Aが設置されている。また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が具材に接触したことを検出する手段の一例として、接触した具材からの反力(表面に接触されることで得られる力覚を含む)を計測する力センサ30Bが設置されている。重量センサ30Aによって計測された具材の重量(すなわち、把持された具材の重量)のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータは、制御装置10に出力される。
【0019】
さらに、ハンド31を保持する関節は、ロボットアーム32に対してハンド31を捻り方向に回転させる軸を備えている。そのため、ハンド31が具材を把持する際に、ハンド31の向きを変化させることで、ハンド31が開閉する方向を調整することができる。これにより、ハンド31が容器の内壁面近傍に達した際に、収容容器20の収容空間の内壁面と平行な方向にハンド31が開閉するようにハンド31の向きを変更することが可能となり、容器内壁面近傍の具材を把持し易くなる。
【0020】
検出部40は、ベルトコンベア2にて搬送中の容器に関する検出を行う複数の光センサを備える。例えば、検出部40は、ベルトコンベア2にて運搬中の容器の位置を検出するセンサと、容器に盛り付けられている具材を検出するセンサを備える。これらのセンサによって検出された容器の位置のデータや、具材が盛り付けられているか否かのデータは、制御装置10に出力される。
制御装置10は、検出部40に含まれるこれらのセンサの検出結果に基づいて、移送機構50の動作を制御する。検出部40に含まれるこれらのセンサの位置関係や、検出結果に基づいた制御装置10による移送機構50の動作制御の詳細については、後述する。
【0021】
移送機構50は、対象物(ここでは、容器)を移送する機構である。移送機構50は、ベルトコンベア2により移送位置P1まで搬送された容器を、具材が解放される位置である解放位置P2に移送する。その後、解放位置P2で具材の容器への盛り付けが完了すると、移送機構50は、容器を解放位置P2から再度移送位置P1に移送する。
その後、この具材が盛り付けられた容器はベルトコンベア2により更に下流に搬送され、後処理(例えば、容器への蓋閉め)が行われることとなる。
このように、移送機構50が移送を行うことにより、ベルトコンベア2の搬送面にある移送位置P1等ではなく、多関節ロボット30の近傍に設けられた解放位置P2にて具材を解放して盛り付けを行うことができる。これにより、解放した具材がベルトコンベア2の搬送面に落下してしまうことを防止できる。
【0022】
以上、把持システム1の全体構成について説明した。なお、図示を省略しているが、把持システム1の各構成要素を外部から遮蔽するために、各構成要素が設置された領域の周囲を囲う板状部材からなる遮蔽部を設置するようにしてもよい。また、把持システム1の各構成要素に加えて、さらにベルトコンベア2についても、遮蔽部により遮蔽されるようにしてもよい。このように遮蔽部により遮蔽することで、把持システム1の動作に伴い飛散した具材が外部を汚してしまうことや、外部からの異物が具材に混入してしまうことを防止できる。
この場合、遮蔽部を構成する板状部材は、例えば、ガラス又は樹脂等の透明な材料によって構成され、外部から把持システム1の稼動状況を視認することが可能とするとよい。また、遮蔽部が構成する側壁の一部には、開閉可能な扉を設置するとよい。そうすることで、収容容器20の収容空間の交換、あるいは把持システム1のメンテナンス等が行われる場合、作業者は遮蔽部の扉を開けることで各構成要素に対して接近し、これらの各種作業を行うことができる。
【0023】
[制御装置10のハードウェア構成]
図2は、制御装置10のハードウェア構成を示す模式図である。
図2に示すように、制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)711と、ROM(Read Only Memory)712と、RAM(Random Access Memory)713と、バス714と、入力部715と、出力部716と、記憶部717と、通信部718と、ドライブ719と、を備えている。
【0024】
CPU711は、ROM712に記録されているプログラム、又は、記憶部717からRAM713にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM713には、CPU711が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0025】
CPU711、ROM712及びRAM713は、バス714を介して相互に接続されている。バス714には、入力部715、出力部716、記憶部717、通信部718及びドライブ719が接続されている。
【0026】
入力部715は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置10に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部715としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部716は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部717は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部718は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0027】
ドライブ719には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア731が適宜装着される。ドライブ719によってリムーバブルメディア731から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部717にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置10の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0028】
[機能的構成]
次に、制御装置10の機能的構成について説明する。
図3は、制御装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、把持システム1の動作を制御するためのプログラムを実行することにより、制御装置10のCPU711においては、センサ情報取得部151と、具材状態判定部152と、具材量判定部153と、多関節ロボット制御部154と、移送機構制御部155と、記録制御部156と、が機能する。また、記憶部717には、パラメータ記憶部171と、履歴データベース(履歴DB)172と、が形成される。
【0029】
パラメータ記憶部171には、把持システム1が動作する際に用いられる各種パラメータが記憶されている。例えば、パラメータ記憶部171には、収容容器20の収容空間の位置、惣菜の容器内における具材を盛り付ける領域の位置、具材を把持する際のハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係(関数あるいはテーブル形式のデータ等)、多関節ロボット30の動作パターンを定義するパラメータ等が記憶される。本実施形態において、ハンド31の具材への差し込み量は、具材の重量(物理量)を推定する指標となっている。すなわち、ハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係から、把持された具材の実際の重量(目標とする把持重量)は、ハンド31の具材への差し込み量に基づいて推定される。
【0030】
履歴DB172には、把持システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータ、あるいは把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データが履歴として記憶される。また、履歴DB172には、収容容器20の収容空間における具材の状態を示す具材状態マップも記憶される。この具材状態マップの詳細については、具材状態マップを作成及び更新する記録制御部156の説明と共に後述する。
【0031】
センサ情報取得部151は、把持システム1や検出部40に設置された各種センサによって検出された情報であるセンサ情報を取得する。例えば、センサ情報取得部151は、多関節ロボット30の関節に設置された重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータや、検出部40に含まれるセンサによって検出された容器の位置のデータや、具材が盛り付けられているか否かのデータをセンサ情報として取得する。これらセンサ情報は、制御装置10の各機能ブロックにより適宜利用される。
【0032】
具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態を認識する。例えば、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータから、収容容器20の収容空間内の具材の深さ(収容容器20の収容空間内の具材表面から収容容器20の収容空間底面までの深さ)、表面の平坦度合(表面がどの程度荒れているか)を認識する。本実施形態では、カメラを用いた画像解析で具材の状態を判定するといった手法ではなく、力センサ30Bを用いた反力に基づいて具材の状態を測定するといった手法を用いる。そのため、例えば、カメラの導入コストや管理コストを削減できると共に、カメラの死角等を考慮する必要がないので、多関節ロボット30と収容容器20の収容空間の位置等の配置をより柔軟に選択することができる。また、カメラを用いないことから、具材から生じる湯気や照明による撮影への影響を考慮する必要もない。
【0033】
また、具材状態判定部152は、具材の深さ及び表面の平坦度合を認識すると、これらが具材を把持するための条件に適合しているか否か(例えば、具材の深さ及び平坦度合が設定された閾値以上であるか否か)を判定する。なお、具材の表面の平坦度合は、例えば、表面が有する凹凸の大きさの絶対値等に基づいて定義することができ、具材の表面が平坦であるほど大きい値となるように定義することができる。また、具材の表面の部分毎に平坦度合を判定することとしてもよい。また、具材状態判定部152は、収容容器20の収容空間内の具材の状態が、一度の把持動作で規定量の具材を把持可能であるか否かを判定する。
【0034】
具材量判定部153は、多関節ロボット30の重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータに基づいて、規定量の具材が把持されたか否かを判定する。
【0035】
多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の動作を制御し、把持システム1において定義されている動作パターンに従って、具材を盛り付けるための一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。例えば、多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30を制御することにより、把持部材31aによって具材を把持する把持動作や、把持した具材が規定量でない場合にその場で具材を解放して再把持する把持量調整動作や、把持部材31aに付着した具材を除去する除去動作や、具材を把持した把持部材31aを惣菜の容器上に移送する移送動作や、移送の途中に鉛直方向を回転軸として把持部材31aを回転させる回転動作や、把持部材31aが把持している具材を容器上で解放する解放動作や、盛り付け後の解放具材の表面を整形する整形動作等を多関節ロボット30に実行させる。
【0036】
移送機構制御部155は、検出部40に含まれるセンサによって検出された容器の位置のデータや、具材が盛り付けられているか否かのデータに基づいて、移送機構50による容器を移送する動作(容器移送動作)を制御する。
【0037】
記録制御部156は、把持システム1が把持動作した際に取得された制御に関するパラメータ及び把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データを履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、収容容器20の収容空間における具材の状態を示す具材状態マップを作成及び更新すると共に、この具材状態マップについても履歴DB172に記憶する。より詳細には、記録制御部156は、把持システム1が把持動作をした際に取得された具材の重量及び具材の反力の計測データや、後述の具材状態判定部152による判定結果や、把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データに基づいて、収容容器20の収容空間の水平面において区分された複数の領域の具材の状態を検出し、各領域を識別する識別情報(例えば、多関節ロボット30を制御するための座標の値)に紐づけて記憶することで、具材状態マップを生成する。
【0038】
この場合、具材の状態とは、各領域における具材の残量や、後述の具材状態判定部152が判定した具材の深さや平坦度合である。また、収容容器20の収容空間内の具材が盛り付けられた後に、収容容器20の収容空間が新たに交換された場合には、予め定められた所定量の具材(例えば、収容容器20の収容空間に対して充分な量の具材)が、所定の状態(例えば、表面が平坦な状態)で収容されているものとして具材状態マップが更新される。
【0039】
[ハンド31の構成]
次に、ハンド31、及びハンド31に設置される把持部材31aの構成の詳細について説明をする。
図4は、ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
なお、図4においては、一対で用いられる把持部材31aの一方のみが示されている。
図4に示すように、本実施形態における把持部材31aは、天板部と、主板部と、第1側板部と、第2側板部と、により構成されている。天板部は、長方形状の平面を有している。また、主板部は、天板部の有する平面を水平な状態とした場合に、この平面の長手方向の一端から、この平面の長手方向の他端の鉛直下方の離間した位置に向かって傾斜して延在している。さらに、第1側板部と第2側板部は、天板部の有する平面を水平な状態とした場合に、この平面の両端それぞれから鉛直下方に向かって延在している。
なお、以下の説明において、これら一対の把持部材31aのそれぞれを区別することなく説明する際は、単に「把持部材31a」と称する。
【0040】
図5は、把持動作等の動作を実行する場合の、収容容器20の収容空間、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。図5では、鉛直方向をZ方向と称し、このZ方向と直交する第1の水平方向(紙面と直交する方向)をY方向と称し、これらZ方向及びY方向のそれぞれと直交する第2水平方向をX方向と称する。すなわち、Z方向、Y方向、及びX方向はそれぞれ互いに直行する方向である。
【0041】
ハンド31は、ロボットアーム32の先端に配置される。また、把持部材31aは、結合部材により、このハンド31に結合されることで、ハンド31に支持される。そして、このハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、制御装置10の制御するロボットアーム32の動作に従って、X方向、Y方向、及びZ方向の各方向における、可動範囲内に移動することが可能である。また、ハンド31は、不図示のアクチュエータによって、一対の把持部材31aをY方向に開閉することで、把持動作を実現する。
また、ハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、Z方向を回転軸として回転することが可能である。
このような構成により、本実施形態では、ハンド31及び把持部材31aの、位置や向きを任意に変化させることができ、これにより様々な動きで把持動作や解放動作等の動作を適切に実行することが可能となる。
【0042】
図6は、一対の把持部材31aの開閉について示す図である。図4に示す把持部材31aは、結合部材により、それぞれの開口部が対向するようにハンド31に結合される。また、図6におけるX方向、Y方向、及びZ方向の各方向は、図5において定義した各方向と同一である。一対の把持部材31aは、図6(a)に示すように開閉方向(Y方向)に沿って、開く動作を行うことで、開状態となる。また、一対の把持部材31aは、把持動作を行うにあたって、図6(b)に示すように開閉方向(Y方向)に沿って、閉じる動作を行うことで、閉状態となる。
【0043】
そして、一対の把持部材31aが閉状態となり、把持部材31a同士が当接することで、少なくとも先端及び側板部が閉じた内面が具材を把持するための容器形状となる。このような把持部材31aの形状の場合、練りサラダ等の具材に対して、把持部材31aの先端を表面から垂直に差し込み、所定の深さで一対の把持部材31aを閉じて具材を持ち上げることで、ほぼ一定量の具材を把持して収容容器20の収容空間から取り出すことができる。
また、把持をした一対の把持部材31aを解放位置P2の惣菜の容器の上に移送した後に、一対の把持部材31aが開状態となり、容器形状の開口部が露出することで、把持により取り出した具材が解放され、惣菜の容器にほぼ一定量の具材を盛り付けることができる。
【0044】
[検出部40の構成]
次に、検出部40の構成の詳細について説明をする。
図7は、検出部40の近傍を拡大して示す斜視図である。図7では、図1と同様に、紙面の左側がベルトコンベア2における搬送の上流であり、紙面の右側がベルトコンベア2における搬送の下流となる。
【0045】
図7に示すように、検出部40は、容器検出センサ41,42と、リフレクタ配置部43と、具材検出センサ44と、を含む。
容器検出センサ41,42は、ベルトコンベア2にて運搬中の容器の位置を検出するセンサである。容器検出センサ41,42は、例えば、光センサにより構成される。容器検出センサ41は、ベルトコンベア2にて搬送中の容器が、移送位置P1に運搬される直前であることを検出する。また、容器検出センサ42は、ベルトコンベア2にて搬送中の容器が、移送位置P1に運搬されたことを検出する。
また、リフレクタ配置部43は、容器検出センサ41,42が検出を行うために投光する光を反射するリフレクタが、容器検出センサ41,42と対向する面に配置された部材である。
【0046】
図示するように、検出部40はベルトコンベア2の搬送面上を跨ぐようにして、リフレクタ配置部43を所定位置に設置する。そして、容器検出センサ41,42が投光する光は、リフレクタ配置部43に配置されたリフレクタにより反射して、容器検出センサ41,42により受光される。これにより、容器検出センサ41,42は、容器の位置を検出することができる。図中では、これら投光及び受光される光の経路を、それぞれ光路L1及び光路L2として図示する。
【0047】
また本実施形態では、リフレクタ配置部43を検出部40の本体の開口部分に挿抜可能な構造となっており、搬送面の幅方向において長さを調整することができる。これにより、ベルトコンベア2の機種によって異なる搬送面の幅方向の長さの違いを吸収して、リフレクタ配置部43を所定位置に設置することができる。ここで、一般的にベルトコンベア2の搬送面は、その機構上、搬送に伴い上下方向等にうねりが生じる。そのため、この影響を避けるべく、所定位置として搬送面の外側の枠部分(すなわち、搬送面ではない部分)にリフレクタ配置部43を設置するとよい。これによりリフレクタ配置部43は、搬送面における上下方向のうねりの影響を受けることなく、具材を盛り付ける容器を検出するために適切な高さに常に固定された状態となる。
【0048】
ここで、容器の高さ(ここでは、搬送面を基準とした相対的な高さ)は、一般的にそれほど高いものではないため、センサ及びリフレクタを数センチないし数ミリ単位の範囲で適切な位置に配置することが望まれる。この点、本実施形態では、このようにリフレクタ配置部43によりリフレクタの位置を所定の位置に固定することで、容器の高さに応じた適切な高さを検出対象範囲として、搬送されている容器の位置を適切に検出することができる。
【0049】
なお、惣菜等の容器としては、色を有している容器が利用されることもあるが、透明な容器も一般的に利用されている。容器検出センサ41,42は、このように色を有している容器や透明の容器の何れについても検出することが可能である。
このような構成で、容器検出センサ41,42は、ベルトコンベア2にて搬送中の容器の位置を精度高く検出する。また、容器検出センサ41,42によって検出された容器の位置のデータは、制御装置10に出力される。
【0050】
具材検出センサ44は、容器に盛り付けられている具材を検出するセンサである。具材検出センサ44は、容器検出センサ41,42と同様に、例えば、光センサにより構成される。具材検出センサ44は、容器検出センサ41,42が位置を検出した容器に具材が盛り付けられているか否かを検出する。そして、具材検出センサ44が投光する光は、鉛直下方に投光され、ベルトコンベア2の搬送面、容器に盛り付けられた具材の天面、あるいは、具材が盛り付けられていない容器の底面の何れかに反射して、具材検出センサ44により受光される。これにより、具材検出センサ44は、容器に具材が盛り付けられているか否かを検出することができる。図中では、これら投光及び受光される光の経路を、光路L3として図示する。
【0051】
上述したように、検出部40はベルトコンベア2の搬送面上を跨ぐようにして設置されることから、ベルトコンベア2の鉛直上方の具材を検出するのに適切な高さ(例えば、搬送面から15[cm]程度の高さ)に具材検出センサ44を配置することができる。すなわち、具材検出センサ44についても、所定位置(ここでは、検出部40と容器及び具材の高さと相対的な位置)に固定されることにより、容器に具材が盛り付けられているか否かを、精度高く検出することができる。具材検出センサ44によって検出された具材が盛り付けられているか否かのデータは、制御装置10に出力される。
【0052】
このように、検出部40は、特徴的な構造を有していると共に、ベルトコンベア2の搬送面上を跨ぐように設置されることで、各種センサやリフレクタを、検出のために最適な位置に配置することができる。
【0053】
なお、容器検出センサ41,42や、具材検出センサ44を、投受光器と、これに対向する位置に配置されたリフレクタにより実現される光センサとして説明をしたが、これに限られない。例えば、これらのセンサを、投光器と、これに対向する位置に配置された受光器により実現される光センサにより実現してもよい。
【0054】
[移送機構50の構成]
次に、移送機構50の構成の詳細について説明をする。
図8は、本実施形態における移送位置P1及び解放位置P2の近傍を示す模式図である。この図8では、ベルトコンベア2における搬送の下流方向を紙面の下側として、ベルトコンベア2、多関節ロボット30、及び移送機構50を示す。
【0055】
図8に示すように、移送機構50は、アクチュエータ51と、スライド部材52と、連結部53と、第1移送部材531と、第2移送部材532と、容器載置部材54と、を含む。また、図1に示したのと同様に、移送位置P1はベルトコンベア2の搬送面であり、解放位置P2は多関節ロボット30の側面部分に設けられた作業台の上となる。
【0056】
アクチュエータ51は、ベルトコンベア2の鉛直上方に配置され、ベルトコンベア2の進行方向と直交する方向(紙面における左右方向)に直線運動をするアクチュエータである。アクチュエータ51は、例えば、電気式のシリンダ(ロボシリンダ)や、エアシリンダにより実現される。
【0057】
スライド部材52、及び連結部53は、アクチュエータ51の駆動部と連結されており、アクチュエータ51の直線運動に伴って、ベルトコンベア2の搬送方向と直交する方向(紙面における左右方向)に直線運動をする。
連結部53は、さらに、第1移送部材531や第2移送部材532にも連結されており、アクチュエータ51の直線運動は、結果として第1移送部材531や第2移送部材532にも伝達されることから、第1移送部材531や第2移送部材532もアクチュエータ51と同様の直線運動をする。このように、本実施形態の移送機構50は、比較的簡単な構成で駆動機構を実現することができる。
【0058】
図9は、本実施形態における移送位置P1及び解放位置P2の近傍を鉛直上方から俯瞰した図である。図9には、ベルトコンベア2、収容容器20、多関節ロボット30、連結部53、第1移送部材531、第2移送部材532、及び容器載置部材54を図示する。
【0059】
容器載置部材54は、一端がベルトコンベア2の搬送面に設置され、他端が解放位置P2の存在する作業台の天面に設置される。これにより、容器載置部材54を介して、ベルトコンベア2の搬送面と作業台の天面とが接続される。そして、移送機構50は、アクチュエータ51の水平方向への直線運動を利用して、搬送面の移送位置P1から作業台の天面の解放位置P2まで容器をスライドさせることで容器を移送する。また、逆方向に容器をスライドさせることで、解放位置P2から移送位置P1まで容器を移送する。
【0060】
具体的には、図9(a)に示すように、移送機構制御部155は、移送位置P1に空の容器が搬送されると、移送機構50を移動させ、第1移送部材531の端(紙面における右側の端)で容器に当接しながら、容器を移送位置P1から解放位置P2に移送する。また、移送機構制御部155は、多関節ロボット30により具材が解放されると、第2移送部材532の端(紙面における左側の端)で容器に当接しながら、容器を解放位置P2から移送位置P1に移送する。
【0061】
このように、移送機構50が移送を行うことにより、ベルトコンベア2の搬送面にある移送位置P1等ではなく、多関節ロボット30の近傍に設けられた解放位置P2にて具材を解放して盛り付けを行うことができる。これにより、解放した具材がベルトコンベア2の搬送面に落下してしまうことを防止できる。
また、収容容器20で把持した後に、近傍の解放位置P2にて盛り付けができるので、多関節ロボット30の移動距離を短縮し、処理時間を短縮することや、移動に伴う具材の飛散を抑制することもできる。さらに、近傍の解放位置P2にて盛り付けができるので、ロボットアーム32を伸ばして遠方で盛り付けを行う場合と比べて、より精度の高い動きが実現でき、適切な盛り付けを実現できる。
【0062】
加えて、移送機構50が移送を行うことから、容器を上流から搬送して供給すればよく、多関節ロボット30の近傍に容器供給装置や容器のストックを配置する必要はない。そのため、省スペース化できるのみならず、収容容器20や、多関節ロボット30の配置位置の自由度を高めることができる。さらに、具材が解放された容器を同じベルトコンベア2の搬送面に再度移送することから、例えば、盛り付け前の容器を搬送する第1ベルトコンベアと、盛り付け後の容器を搬送する第2ベルトコンベアと、のように複数のベルトコンベアを用意する必要もない。
【0063】
[把持に関する動作における高さ制御]
上述したように、多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の動作を制御し、把持システム1において定義されている動作パターンに従って、具材を盛り付けるための一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。
【0064】
例えば、多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30を制御することにより、把持部材31aによって具材を把持する把持動作や、把持した具材が規定量でない場合にその場で具材を解放して再把持する把持量調整動作や、把持部材31aに付着した具材を除去する除去動作や、具材を把持した把持部材31aを惣菜の容器上に移送する移送動作や、移送の途中に鉛直方向を回転軸として把持部材31aを回転させる回転動作や、把持部材31aが把持している具材を容器上で解放する解放動作等を多関節ロボット30に実行させる。
【0065】
このような様々な動作を、その動作の実行に伴い把持部材31aから具材が飛び散る可能性に基づいて分類すると、以下のように分類できる。
まず、その動作の実行に伴い把持部材31aから具材が飛び散る可能性が低い動作(以下、「第1の動作」と称する。)として、比較的緩やかな移送動作(例えば、旋回や高速な移動を伴わない移送動作)や、他の動作を行うまでの間静止して待機している待機動作が分類できる。
【0066】
これに対して、把持部材31aから具材が飛び散る可能性が第1の可能性よりも高い第2の可能性である第2の動作として、例えば、把持動作や、把持量調整動作や、除去動作や、比較的激しい移送動作(例えば、旋回や高速な移動を伴う移送動作)や、回転動作や、解放動作が分類できる。
そして、多関節ロボット制御部154は、これらの第1の動作、及び第2の動作を把持部材31aに実行させると共に、「高さ制御処理」を行う。
【0067】
この高さ制御処理において、多関節ロボット30は、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置が、第1の動作を実行する際の把持部材31aの位置よりも低い位置になるように高さを制御する。例えば、多関節ロボット制御部154は、第1の動作を実行する際の把持部材31aの位置について、収容容器20の開口面の高さよりも高い位置とする。一方で、多関節ロボット制御部154は、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置は、収容容器20の開口面の高さよりも低い、収容容器20の収容空間内の位置とする。
このように第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置を、収容容器20の収容空間内の位置とすることで、飛び散った具材が確実に収容容器20内に落下することになり、具材が収容容器20の外側に飛び散ることを、抑制することができる。これが、高さ制御処理の基本的な考え方である。
【0068】
この高さ制御処理について、図10及び図11を参照してさら詳細に説明する。
図10は、高さ制御処理を実行する場合に用いる、基準位置について示す模式図である。また、図11は、高さ制御処理を実行する場合の、収容容器20の収容空間、収容された具材、ハンド31、把持部材31a、及びロボットアーム32の位置関係について示す模式図である。図10及び図11は、これらの構成要素を図5におけるX方向から観察した状態を示す。
【0069】
上述したような高さ制御処理を実現するためには、把持部材31aの高さを把握する基準となる位置(以下、「把持側基準位置」と称する。)と、収容容器20の開口面の高さを把握する基準となる位置(以下、「容器側基準位置」と称する。)の双方を定義する必要がある。
ここで、高さ制御処理におけるこれら「基準位置」とは、鉛直方向における高さを示す位置(すなわち、図5におけるZ方向での位置)である。つまり、高さ制御処理における「基準位置」は、水平方向(すなわち、図5におけるX-Y方向での位置)の位置を指すものではない。
【0070】
図10(a)に、ハンド31、把持部材31a、及びロボットアーム32と、把持側基準位置を示す。
前提として、把持部材31aが各動作を行うことによって、把持部材31a外面の上端部分まで具材が付着する可能性がある。そして、第2の動作の実行に伴い、この付着した具材が飛び散る場合、この把持部材31aの外面の上端部分が、具材が飛び散る起点の最も高い位置となる。そのため、高さ制御処理では、この把持部材31aの外面の上端部分の位置を把持側基準位置とする。
なお、把持部材31aが閉状態のときよりも開状態のときの方が、具材が飛び散る範囲は広くなる。そこで、図示するように、開状態の把持側基準位置から、所定の範囲(例えば、下方の周囲45度の範囲)に具材が飛び散ると想定して高さ制御を行う。
【0071】
一方で、図10(b)に、収容容器20を示す。高さ制御処理では、収容容器20の収容空間の最も高いところに相当する、開口面の位置(開口面の縁の位置)を、容器側基準位置とする。
第2の動作の実行に伴い具材が飛び散った場合、容器側基準位置よりも低い位置に具材が飛び散るのであれば、その具材は収容容器20内部の収容空間に落下する。すなわち、収容容器20の外側には具材は飛び散らない。
【0072】
このようにして、把持側基準位置と、容器側基準位置とは定義される。
また、高さ制御処理を実行するに際して、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aの動作制御を行っていることから、把持側基準位置をリアルタイムで把握している。
さらに、容器側基準位置については、容器基準位置となる収容容器20の開口面の位置を予め設定しておくことや、センサにより収容容器20の開口面の位置を検出することで、多関節ロボット制御部154が把握することができる。
そして、多関節ロボット制御部154は、これらの把持側基準位置と、容器側基準位置とに基づいて、多関節ロボット30の動作を制御し、以下に説明するようにして、高さ制御処理を実現する。
【0073】
図11(a)に、第1の動作を実行する際の高さ制御処理について示す。第1の動作を実行する場合、上述したように把持部材31aから具材が飛び散る可能性は低い。そのため、第1の動作を実行する際は、あえて低い位置まで把持部材31aを移動させる必要はない。
そこで、多関節ロボット制御部154は、第1の動作を実行する際は、低い位置までの移動を行うことなく、ある程度高い位置で、把持部材31aに第1の動作を実行させる。例えば、多関節ロボット制御部154は、把持側基準位置が、容器側基準位置よりも高い位置となるようにして、把持部材31aに第1の動作を実行させる。これにより、待機動作時や、収容容器20の壁面を跨いで容器に移送する際に、高さを変えるための上下動を行う必要がなくなり、効率的な経路で動作を実行することができる。
【0074】
一方、図11(b)に、第2の動作を実行する際の高さ制御処理について示す。第2の動作を実行する場合、上述したように把持部材31aから具材が飛び散る可能性は高い。そのため、第2の動作を実行する際は、低い位置まで移動して、低い位置で動作を実行する。
そこで、多関節ロボット制御部154は、把持側基準位置が、容器側基準位置よりも低い位置となるようにして、把持部材31aに第2の動作を実行させる。これにより、第2の動作時に、具材の飛び散りが発生したとしても、具材は容器側基準位置より鉛直下方の内壁面に落下し、収容容器20の外側には具材は飛び散らない。そのため、収容容器20の外側への具材の飛び散りを抑制することができる。
【0075】
以上説明したように、高さ制御処理では、具材が飛び散る可能性が高い第2の動作を、第1の動作を実行する位置よりも低い位置において実行させる。そのため、仮に第2の動作において、具材が飛び散ったとしても、その飛び散る範囲を狭めることが可能となる。また、これに伴い収容容器20の内側の収容空間内に具材が飛び散る可能性が高くなり、具材が収容容器20の外側まで飛び散ることを抑制することができる。
特に、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置である把持側基準位置を、収容容器20の開口面の高さである容器側基準位置よりも低い、収容容器20の収容空間内の位置とすることで、飛び散った具材が収容容器20の収容空間内に確実に落下することになる。これにより、具材が収容容器20の外側に飛び散ることを、より一層抑制することができる。
【0076】
[全体動作]
次に、把持システム1の全体動作を説明する。
図12及び図13は、把持システム1が実行する具材盛り付け処理の流れを示すフローチャートである。具材盛り付け処理は、例えば、作業者によって具材盛り付け処理を開始させる操作が行われたことを契機として開始される。
【0077】
具材盛り付け処理が開始されると、図12のステップS11において、多関節ロボット制御部154は、具材盛り付け処理における一連の動作を実行するための動作用のデータ(動作パターンのデータ及びハンド31の差し込み量のデータ等)をパラメータ記憶部171から読み込むことで、具材を把持するための準備を行う。
【0078】
ステップS12において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、収容容器20の収容空間へ、ハンド31を移送する。
【0079】
ステップS13において、具材状態判定部152は、収容容器20の収容空間における具材の状態を示す具材状態マップを履歴DB172から読み込むことで、収容容器20の収容空間における具材の状態を認識する。具材状態判定部152は、その後も、センサ情報取得部151が取得した、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態の認識を継続する。
【0080】
ステップS14において、多関節ロボット制御部154は、ステップS11において読み込んだ動作パターンのデータと、ステップS13において認識した収容容器20の収容空間における具材の状態とに基づいて、具材に対して把持部材31aを差し込む深さを決定する。
【0081】
ステップS15において、多関節ロボット制御部154は、決定された差し込み深さまで、具材に対して把持部材31aを差し込む。この場合、例えば、多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の制御パラメータ(関節の回転角度等)から差し込み量を算出したり、ステップS12で具材の表面を検出して差し込みを開始してからの経過時間から差し込み量を算出したりすることが可能である。
ステップS16において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。
【0082】
ステップS17において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを上下動させることで、把持に伴い把持部材31aの外面に付着した具材を落下させる。これにより、次のステップS18において、把持具材の重量を計測する際に、外面に付着した具材の重量も合わせて計測してしまうことを防止でき、計測の精度を高めることができる。
【0083】
ステップS18において、具材量判定部153は、把持している把持具材の重量(物理量)を計測し、規定量の具材が把持されているか否かを判定する。規定量の具材が把持されているとは、例えば、目標とする重量に対して、把持した具材の重量が所定誤差以内(±15%以内等)にあることをいう。ただし、把持部材31aに具材が粘着して解放されないケースを考慮し、把持した重量が規定量よりも多い場合の誤差を少ない場合の誤差よりも大きく設定することとしてもよい。
【0084】
規定量の具材が把持されている場合は、ステップS18においてYesと判定され、処理はステップS19に進む。一方で、規定量の具材が把持されていない場合は、ステップS18においてNoと判定され、処理はステップS14から再度行われる。この場合、把持している把持具材が規定量より超過しているのであれば、再度行われるステップS14において、差し込み深さはより浅くなるように再決定される。一方で、把持している把持具材が規定量より不足しているのであれば、再度行われるステップS14において、差し込み深さはより深くなるように再決定される。
このステップS12からステップS18までの動作は、高さ制御動作における、第2の動作に相当する。
【0085】
なお、ステップS14~ステップS18を繰り返す過程で、前回よりも把持部材31aを具材に深く差し込んだとしても、規定量の具材を把持できない場合(規定量を取るために必要な差し込み深さよりも、把持予定位置における具材の深さが浅い場合)等には、具材表面の複数箇所から具材を把持することにより、複数回で把持した合計の具材の量が規定量となるように制御することも可能である。この場合、例えば、具材の表面における複数箇所に把持部材31aを差し込む深さの合計(差し込み量の合計)が、一度で規定量の具材を把持する場合に把持部材31aを具材に差し込む深さと同一となるように制御することができる。また、例えば、2箇所目以降の把持を行う場合に、把持済みの具材を次の把持予定位置に一旦解放し、解放した具材が存在する具材の表面に対して、一度で規定量の具材を把持する場合に差し込む深さまで把持部材31aを具材に差し込み、規定量の具材を改めて一度で把持するように制御することも可能である。
【0086】
ステップS19において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aに具材の把持を継続させた状態で、待機させる。
【0087】
ステップS20において、移送機構制御部155は、容器検出センサ41,42の検出結果に基づいて、移送位置P1において容器が検出されたか否かを判定する。容器が検出された場合は、ステップS20においてYesと判定され、処理はステップS21に進む。一方で、容器が検出されていない場合は、ステップS20においてNoと判定され、処理はステップS20の判定を繰り返す。
【0088】
ステップS21において、移送機構制御部155は、具材検出センサ44の検出結果に基づいて、すでに具材が盛り付けられている容器であるか否かを判定する。具体的には、移送機構制御部155は、具材がすでに盛り付けられている場合を想定した、搬送面からの具材の高さについて閾値を設定する。そして、移送機構制御部155は、具材検出センサ44の検出結果に基づいて、一定時間この閾値を超える高さが検出され続けた場合に、具材がすでに盛り付けられていると判定する。
【0089】
なお、例えば、空の容器のある程度の高さのある部分(例えば、容器の周縁部)が、仮にこの閾値を超えたとしても、それは、短時間に過ぎず一定時間未満となる。従って、この空の容器について、具材がすでに盛り付けられていると、誤って判定してしまうことを防止することができる。この場合、この一定時間の長さは、例えば、容器検出センサ41,42が容器を検出してから、この容器が搬送されて移送位置P1を通り過ぎてしまうまでの時間よりも短い時間の範囲で適宜設定することができる。
【0090】
すでに具材が盛り付けられている場合は、ステップS21においてYesと判定され、処理はステップS20に戻り、ステップS20の判定を再度行う。このようにステップS21においてYesと判定された場合、具材が盛り付けられている容器は、移送機構50第1移送部材531と第2移送部材532の間を通過して、そのままベルトコンベア2の下流に搬送される。一方で、具材が盛り付けられていない場合は、ステップS21においてNoと判定され、処理はステップS22に進む。
この判定を行う理由であるが、上述したように、1つのベルトコンベア2に対して、複数の多関節ロボット30が配置され、これら複数の多関節ロボット30が協働して作業しているような場合に、すでに上流の多関節ロボット30によって具材が盛り付けられている容器が搬送されてくる可能性があるからである。
【0091】
ステップS22において、移送機構制御部155は、移送機構50を駆動させ、容器を移送位置P1から解放位置P2に移送させる。
このステップS19からステップS22までの動作は、高さ制御動作における、第1の動作に相当する。
【0092】
図13に移り、ステップS23において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aに具材の把持を継続させた状態で、容器までの具材の移送を開始させる。
ステップS24において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aに具材の把持を継続させた状態で、移送の経路において、最終的に解放を行うために適した向きとなるように把持部材31aを回転させる。
ステップS25において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aに、解放位置P2において容器への具材の解放を実行させる。
【0093】
このステップS23からステップS25までの動作は、高さ制御動作における、第2の動作に相当する。ただし、ステップS25における解放動作は、解放位置P2において行われる動作である。そのため、厳密には、収容容器20の外側に具材が飛び散るのを抑制するための高さ制御処理の対象ではない。
【0094】
ステップS26において、移送機構制御部155は、解放により具材が盛り付けられた容器を、移送位置P1に移送可能なタイミングか否かを判定する。この判定を行う理由であるが、単に多関節ロボット30による解放が終了したことのみを条件として、容器を移送位置P1に移送してしまうと、移送位置P1に運搬された他の容器(他の空容器又は他の多関節ロボット30が具材を盛り付け済みの容器)と衝突してしまう可能性があるからである。そこで、移送機構制御部155は、容器検出センサ41,42の検出結果に基づいて、他の容器が、移送位置P1に運搬されていないことや、移送位置P1に運搬される直前ではないことを確認できたこと条件として、容器を移送位置P1に移送可能なタイミングであると判定する。これにより容器同士の衝突という事態の発生を防止することができる。
【0095】
容器を移送位置P1に移送可能なタイミングであると判定されない場合は、ステップS26においてNoと判定され、処理はステップS26の判定を繰り返す。一方で、容器を移送位置P1に移送可能なタイミングであると判定された場合は、ステップS26においてYesと判定され、処理はステップS27に進む。
【0096】
ステップS27において、移送機構制御部155は、移送機構50を駆動させ、容器を解放位置P2から移送位置P1に移送させる。容器(ここでは、具材を盛り付け済みの容器)は、移送位置P1に移送されると、ベルトコンベア2の搬送面に再度載置され、ベルトコンベア2の下流に向かって搬送される。
【0097】
ステップS28において、記録制御部156は、具材盛り付け処理において取得された制御に関するパラメータ及び盛り付けられた具材の重量の計測データ(履歴データ)を履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、収容容器20の収容空間における具材の状態を示す具材状態マップを更新し、この更新後の具材状態マップも履歴DB172に記憶する。なお、この場合に、盛り付けられた具材の重量に過不足がある場合には、作業者に対してアラートを出力する等してもよい。
【0098】
ステップS29において、多関節ロボット制御部154は、具材盛り付け処理を終了する条件に適合したか否かを判定する。この場合、具材盛り付け処理を終了する条件としては、予定された数の惣菜の容器に具材を盛り付けたこと、あるいは、作業者によって具材盛り付け処理を終了させる操作が行われたこと等を定義することができる。
具材盛り付け処理を終了する条件に適合していない場合は、ステップS29においてNoと判定されて、図12に戻り、処理はステップS12から再度行われる。一方で、具材盛り付け処理を終了する条件に適合している場合は、ステップS29においてYesと判定されて、具材盛り付け処理は終了する。
【0099】
以上のように、本実施形態に係る把持システム1は、上述した各処理と並行して、高さ制御処理を実行し、具材が飛び散る可能性が高い第2の動作を、第1の動作を実行する位置よりも低い位置において実行させる。そのため、仮に具材が飛び散ったとしても、その飛び散る範囲を狭めることが可能となる。また、これに伴い収容容器20の内側の収容空間内に具材が飛び散る可能性が高くなり、具材が収容容器20の外側まで飛び散ることを抑制することができる。
特に、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置である把持側基準位置を、収容容器20の開口面の高さである容器側基準位置よりも低い、収容容器20の収容空間内の位置とすることで、飛び散った具材が収容容器20の収容空間内に確実に落下することになり、具材が収容容器20の外側に飛び散ることを、より一層抑制することができる。
【0100】
[変形例1]
上述した本実施形態において、図11(a)及び(b)を参照して高さ制御処理について説明したが、これに限られない。例えば、第2の動作を実行する際の把持部材31a水平面の位置や、第2の動作を実行する際の具材の収容状態等に応じて、高さ制御処理の内容を適宜変形することができる。
図14は、本変形例における、高さ制御処理を実行する場合の、収容容器20の収容空間、収容された具材、ハンド31、把持部材31a、及びロボットアーム32の位置関係について示す模式図である。図14は、上述の図11と同様に、これらの構成要素を図5におけるX方向から観察した状態を示す。
【0101】
図14(a)に、収容容器20の収容空間の水平面の中央付近の領域において、第2の動作を実行する際の高さ制御処理について示す。
第2の動作を実行する場合、上述したように把持部材31aから具材が飛び散る可能性は高いと考えられる。そのため、上述の実施形態では、多関節ロボット制御部154は、把持側基準位置が、容器側基準位置よりも低い位置となるようにして、把持部材31aに第2の動作を実行させていた。このようにすれば、具材が飛び散りやすい収容空間の水平面の端側に近い領域で第2の動作を実行しても、収容容器20の外側には具材は飛び散らない。
【0102】
ただし、収容容器20の収容空間の水平面の中央付近の領域であれば、仮に具材が飛び散ったとしても、その飛び散る範囲が収容空間内に収まる可能性が高い。そこで、本変形では、このように収容空間の水平面の中央付近の領域で第2の動作を行う場合は、他の領域で第2の動作を行うほどは把持部材31aの位置を低くしない。例えば、多関節ロボット制御部154は、把持側基準位置が、容器側基準位置と同じ程度の位置になる程度だけ低くする。
これにより、把持部材31aを必要以上に低くい位置まで移動させることなく、収容容器20の外側への具材の飛び散りを抑制することができる。
【0103】
他の変形例として、図14(b)に、収容容器20の収容空間に具材が多量に収容されている状態において、第2の動作を実行する際の高さ制御処理について示す。
図示するように、容器側基準位置と同程度の高さまで多量の具材が収容されている場合、把持部材31aを容器側基準位置よりも低い位置まで移動させてしまうと、具材に接触してしまい、第2の動作を実行すること自体ができなくなる。しかしながら、高さ制御処理を行わずに、高い位置で第2の動作を実行すると収容容器20の外側に具材が飛び散る可能性がある。
【0104】
そこで、このように多量の具材が収容されている場合、多関節ロボット制御部154は、高さ制御処理に代えて、第2の動作での駆動速度を通常よりも遅くする。すなわち、第2の動作を緩やかに実行することにより、把持部材31aに付着した具材が飛び散ること自体を抑制する。
そして、多関節ロボット制御部154は、このようにして第2の動作を繰り返し、収容されている具材の残量が減少してきた後に、高さ制御処理を行いながら、通常通りの駆動速度で第2の動作を実行する。
【0105】
これにより、多量の具材が収容されており、把持部材31aを容器側基準位置よりも低い位置まで移動できない場合であっても、収容容器20の外側への具材の飛び散りを抑制することができる。
なお、収容容器20の収容空間の水平面の中央付近の領域の座標や、収容容器内の具材の残量については、上述したように記録制御部156が具材状態マップとして記憶している、そこで、多関節ロボット制御部154は、この具材状態マップを参照することで、収容容器内の具材の残量について把握することができる。
【0106】
[変形例2]
上述した本実施形態において、容器基準位置となる収容容器20の開口面の位置は変更されないことを想定していた。すなわち、収容されている具材の残量が少なくなった場合には、具材が収容された全く同じサイズの収容容器20に交換されて、作業が継続することを想定していた。これに限らず、容器基準位置となる収容容器20の開口面の位置が変更される場合にも、上述した把持システム1を適用するようにしてもよい。
【0107】
例えば、把持システム1を利用するにあたり、時間帯等により異なる具材を盛り付けることがある。また、この具材の変更に伴って、異なるサイズの収容容器20を利用するようなことも想定される。そこで、このような場合には、多関節ロボット制御部154に設定している容器側基準位置を、新しい収容容器20に対応する容器側基準位置に更新する。
上述したように、多関節ロボット制御部154は、把持側基準位置と、容器側基準位置との相対的な位置関係に基づいて、高さ制御処理を行っている。そこで、このように容器側基準位置の変更があった場合に、新たな容器側基準位置に更新することで、引き続き、適切な高さ制御処理を行うことができる。
【0108】
図15は、収容容器20に拡張部材60を取り付けた状態を示す模式図である。なお、図15(a)は、この状態を斜視図として示している。また、図16(b)は、この状態を図5におけるX方向から観察して示している。
拡張部材60は、収容容器20の開口面を鉛直上方と水平方向の双方について拡張する。これにより、具材が収容容器20の外側まで飛び散ることを抑制することを目的として取り付けられる。
ただし、拡張部材60が取り付けられた形状であると、作業者が収容容器20を運搬する際に、拡張部材60と作業者の腕とが干渉して、作業者の作業を妨げてしまう。そこで、このような運搬の際に拡張部材60を取り外し、運搬後の収容容器20に対して多関節ロボット30による一連の動作が行われる際に拡張部材60を取り付ける。このように、拡張部材60は、状況に応じて適宜着脱可能となっている部材である。
【0109】
この拡張部材60は、拡張部61と、挟持部62と、を備える。
拡張部61は、鉛直上方に延在する板状の部材であり、挟持部62によって収容容器20の開口面を構成する複数の辺(すなわち、開口面の縁)の、何れかの辺に取り付けられた際に、鉛直上方に延在する壁面を構成する。これにより、その開口面を構成する辺は鉛直方向にて上がることになる。すなわち、拡張部61は、開口面を鉛直方向に拡張することができる。
また、拡張部61は、鉛直上方に向かうにしたがって収容容器20の外側に傾斜する形状となっている。そのため、挟持部62によって収容容器20の開口面を構成する複数の辺の、何れかの辺に取り付けられた際に、拡張部61は、収容容器20の水平方向の外側に広がる壁面を構成する。これにより、その開口面を構成する辺は水平方向にて広がることになる。すなわち、拡張部61は、開口面を水平方向に拡張することができる。
【0110】
結論として、拡張部61は、このような鉛直上方に延在する板状の部材であって、且つ、鉛直上方に向かうにしたがって収容容器20の外側に傾斜する形状を有していることから、図15(a)に示すように、収容容器20に取り付けられた場合に、収容容器20の開口面を鉛直上方と水平方向の双方について拡張することができる。
挟持部62は、板バネにより実現されるクリップ状の部材であり、収容容器20の壁面を挟持することで、拡張部材60を収容容器20に取り付ける。
【0111】
図15(b)に示すように、拡張部材60が取り付けられた場合、拡張部61は、開口面を鉛直方向(及び水平方向)に拡張する。これに伴い、容器側基準位置は、拡張部材60の取り付け前よりも高い位置に変更される。そこで、このような場合には、多関節ロボット制御部154に設定している容器側基準位置を、拡張部材60を取り付け後の収容容器20に対応する容器側基準位置に更新する。これにより、異なるサイズの収容容器20を利用するような場合と同様に、引き続き、適切な高さ制御処理を行うことができる。
【0112】
[変形例3]
上述した実施形態において、多関節ロボット30は、把持部材31aを用いた把持を行うことにより、対象物の具材を保持していた。ただし、これは保持部材を用いた保持方法の一例に過ぎない。
これに限らず、多関節ロボット30は、他の保持部材により保持をするようにしてもよい。
例えば、多関節ロボット30は、密着した対象物との間の空間を真空に近づける吸着パッドを保持部材として、対象物を吸着することにより対象物を保持するようにしてもよい。あるいは、例えば、多関節ロボット30は、スプーン形状やレードル形状の部材を保持部材として、対象物を掬うことにより対象物を保持するようにしてもよい。他にも、例えば、多関節ロボット30は、トング形状や爪形状の部材を保持部材として、対象物を挟むことにより対象物を保持するようにしてもよい。
【0113】
また、高さ制御処理における把持側基準位置に相当する位置は、具材の性質や、保持部材の種類や、保持部材の形状等に応じて異なる。
上述した実施形態における把持部材であれば、把持側基準位置は、把持部材31aの外面の上端部分であった。しかし、例えば、具材の粘性あるいは粘着性が低い場合には、把持部材31aの外面には具材は付着しないので、この場合に具材の飛び散りと関連しない上端部分を把持側基準位置とするのは適切ではない。
この場合は、例えば、十分に把持できていない具材や解放された具材が飛び散る起点の位置である、把持部材31aの下端部分(すなわち、先端部分)を把持側基準位置とするようとする。さらにこの場合に、具材の水分量が多いと、解放された具材が把持部材31aの先端からのみならず、中心部分からも飛び散る可能性がある。そこで、この把持部材31aの中心部分を把持側基準位置とするようにしてもよい。
他にも、例えば、把持部材ではなく吸着パッドを保持部材とする場合、具材が飛び散る起点の位置は、具材を吸着している吸着パッドの先端となるので、この吸着パッドの先端部分を把持側基準位置とするようにしてもよい。
このように、具材の性質や、保持部材の種類や、保持部材の形状等に応じて、把持側基準位置に相当する位置を、適宜設定することが望ましい。
【0114】
また、多関節ロボット30は、具材以外を対象物として保持をするようにしてもよい。例えば、多関節ロボット30は、電子機器等の工業製品の部品等を対象物として保持をするようにしてもよい。
本変形例によれば、上述した実施形態における把持部材による保持に代えて、これらの保持部材によって対象物の保持が実現される。
【0115】
[変形例4]
上述した実施形態では、多関節ロボット制御部154は、把持側基準位置と、容器側基準位置との相対的な位置関係に基づいて、高さ制御処理を行っている。そして、この相対的な位置関係の制御は、把持部材31aが上下方向(すなわち、図5におけるZ軸方向)に移動することで実現されていた。これに限らず、例えば、収容容器20が上下方向に移動することで高さ制御処理が実現されてもよい。
【0116】
図16は、本変形例により高さ制御処理を実行する場合の、収容容器20の収容空間、収容された具材、ハンド31、把持部材31a、及びロボットアーム32の位置関係について示す模式図である。図16は、これらの構成要素を図5におけるX方向から観察した状態を示す。
図16(a)に示すように、本変形例においては収容容器20の下方に昇降機構が配置され、その昇降機構に収容容器20が載置されている。この昇降機構は、例えば、モータ等のアクチュエータと、ボールネジ等の部材により構成され、アクチュエータの回転運動を直線運動(ここでは、昇降するための上下運動)に変換する。本変形例においては、収容容器20は、この昇降機構の天面(いわゆる、ステージ)に、収容容器20が載置される。そして、多関節ロボット制御部154、あるいは制御装置10にて機能する他の機能ブロックの制御に基づいて、図16(b)に示すように、この昇降機構の天面が上昇又は下降する。これにより、載置されている収容容器20の容器側基準位置について、精度高く位置決めをすることができる。
【0117】
このような昇降機構の制御により、本変形例では、把持部材31aが上下方向に移動することなく、把持側基準位置と、容器側基準位置との相対的な位置関係を調整し、高さ制御処理を実現することができる。なお、この場合に、昇降機構の制御による収容容器20の上昇又は下降と、把持部材31aが上下方向に移動することとを並行して行うことで、より効率的に把持側基準位置と、容器側基準位置との相対的な位置関係を調整するようにしてもよい。また、例えば、把持部材31aが第1の動作や第2の動作を行うことと並行して、把持部材31aが上下方向に移動することで、各動作と高さ制御処理を、より効率的に行うようにしてもよい。
すなわち、本変形例によれば、制御装置10は、把持部材31aと昇降機構との何れか又は双方を制御することによって、高さ制御処理を実現することができる。
【0118】
[変形例5]
上述した本実施形態では、多関節ロボット30は、容器の近傍にて盛り付けを行うことから、ロボットアーム32を伸ばして遠方で盛り付けを行う場合と比べて、より精度の高い動きが実現でき、適切な盛り付けを実現できる。そこで、多関節ロボット30は、このより精度の高い動きを利用して、容器に具材を解放した後に、さらに解放した具材を整形する動作や、解放後に把持部材31aに付着した具材を、容器に残さず解放する動作を行うようにしてもよい。
【0119】
この場合に、解放した具材を整形する動作としては、例えば、一度解放した具材を、容器から再度把持して、さらに再度容器に解放することでより安定した形状に整形する動作が考えられる。他にも、例えば、容器に解放した状態から把持部材31aを閉じながら上昇することで山型の形状に整形する動作が考えられる。他にも、例えば、把持部材31aの先端で解放した具材を突っつくことで、具材同士を強固に結合させ、解放した具材が崩れることを防止する整形動作が考えられる。
【0120】
また、解放後に把持部材31aに付着した具材を、容器に残さず解放する動作としては、例えば、把持部材31aを振動させ、これにより把持部材31aに付着した具材を落下させる動作が考えられる。また、容器の鉛直上方から下降し、その際に急停止することで、慣性力で把持部材31aに付着した具材を落下させる動作が考えられる。
【0121】
一般的な技術のように、ベルトコンベアの搬送面で盛り付けを行う場合には、このような動作を行うことは困難である。しかしながら、上述した本実施形態では、多関節ロボット30は、容器の近傍にて、停止している容器に対して動作を行うので、これら例示したような複雑な動作をさらに行うことが可能となる。
【0122】
[変形例6]
上述の実施形態において、一対の把持部材31a(すなわち、2つの把持部材31a)を用いることを想定したが、これに限られない。例えば、3つ以上の複数の把持部材31aを用いるようにしてもよい。そして、各把持部材31aの開口部を近づけることで把持動作を行い、各把持部材31aの開口部を遠ざけることで解放動作を行うような構成としてもよい。
この場合、例えば、3つの把持部材31aを用いるのであれば、鉛直上方から俯瞰した場合に、それぞれの中心角が120°の3つの把持部材31aの先端を中央に近づけたり遠ざけたりするようにする。
このようにしても、上述した案内動作等の各動作を実行することができる。
【0123】
[構成例]
以上のように、本実施形態における把持システム1は、把持部材31aを備えた多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置10と、を備える。
制御装置10は、収容容器20に収容されている具材に対する、把持部材31aによる把持に関する動作として、動作の実行に伴い把持部材31aから具材が飛び散る可能性が第1の可能性である第1の動作と、動作の実行に伴い把持部材31aから具材が飛び散る可能性が第1の可能性よりも高い第2の可能性である第2の動作と、を多関節ロボット30に実行させる。
これと共に、制御装置10は、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置を、第1の動作を実行する際の把持部材31aの位置よりも低い位置になるように多関節ロボット30を制御する。
【0124】
これにより、多関節ロボット30によって把持に関する動作であって、具材が飛び散る可能性が高い第2の動作を、第1の動作を実行する位置よりも低い位置において実行させる。そのため、仮に具材が飛び散ったとしても、その飛び散る範囲を狭めることが可能となる。また、これに伴い収容容器20の内側の収容空間内に具材が飛び散る可能性が高くなり、具材が収容容器20の外側まで飛び散ることを抑制することができる。
すなわち、把持システム1によれば、多関節ロボット30によって把持を行う場合に、把持の具材が収容容器20の外側に飛び散ることを抑制することができる。
【0125】
制御装置10は、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置を、収容容器20の開口面の高さよりも低い、収容容器20の収容空間内の位置とする。
これにより、飛び散った具材が収容容器内に確実に落下することになり、具材が収容容器20の外側に飛び散ることを、より一層抑制することができる。
【0126】
制御装置10は、収容容器20の開口面の高さに変更があった場合には、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置も変更する。
これにより、収容容器20の変更や、拡張部材60の取り付けに対応した、適切な高さで動作を行うように、多関節ロボット30を制御することができる。すなわち、一律に決定されている高さではなく、収容容器20等の形状に応じて相対的に決定した、適切な高さで動作を行うように、多関節ロボット30を制御することができる。
【0127】
把持部材31aの位置とは、具材が把持部材31aから収容容器20の外側に飛び散る起点となる位置である。
これにより、具材が把持部材31aの何れの高さから飛び散るのかに応じて決定した、適切な高さで動作を行うように、多関節ロボット30を制御することができる。
【0128】
制御装置10は、収容容器20の水平面を複数の領域に区分した場合に、第2の動作が何れの領域で実行されるかに基づいて、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置の高さを異ならせる。
これにより、例えば、収容容器の開口面の中央付近のような、具材が飛び散ったとしても、その飛び散る範囲が収容容器内に収まるような場合には、把持部材31aを必要以上に低い位置に移動させないというような制御が実現できる。
【0129】
制御装置10は、収容容器20において、具材の収容されている状態に基づいて、第2の動作を実行する際の把持部材31aの移動速度を異ならせる。
これにより、例えば、収容容器に多量の具材が収容されており、意図している低い位置まで把持部材31aを移動できない状況で、把持部材31aの移動速度を遅くすることで、具材が収容容器20の外側に飛び散ることを抑制することができる。
【0130】
なお、上述の実施形態及び変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態及び変形例において、惣菜を盛り付ける把持システムに本発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、種々の対象物を把持するシステムに適用することができる。例えば、練ったモルタル、コンクリート、漆喰、粘土等、粘性あるいは粘着性が高い材料を把持するシステムに本発明を適用することができる。本発明は、作業温度又は室温において中粘度以上(5000mPa・s)以上の粘度を有する対象物を把持する際に好適である。
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が把持システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図3の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0131】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0132】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0133】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0134】
上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることのできる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0135】
1 把持システム、2 ベルトコンベア、10 制御装置、20 収容容器、30 多関節ロボット、30A 重量センサ、30B 力センサ、31 ハンド、31a 把持部材、32 ロボットアーム、40 検出部、41、42 容器検出センサ、43 リフレクタ配置部、44 具材検出センサ、50 移送機構、51 アクチュエータ、52 スライド部材、53 連結部、531 第1移送部材、532 第2移送部材、54 容器載置部材、60 拡張部材、61 拡張部、62 挟持部、151 センサ情報取得部、152 具材状態判定部、153 具材量判定部、154 多関節ロボット制御部、155 移送機構制御部、156 記録制御部、171 パラメータ記憶部、172 履歴データベース(履歴DB)、711 CPU、712 ROM、713 RAM、714 バス、715 入力部、716 出力部、717 記憶部、718 通信部、719 ドライブ、731 リムーバブルメディア、L1、L2 光路
【要約】
【課題】ロボットによって保持を行う場合に、保持の対象物が収容容器の外側に飛び散ることを抑制する。
【解決手段】把持システム1は、把持部材31aを備えた多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置10と、を備える。制御装置10は、収容容器20に収容されている具材に対する、把持部材31aによる把持に関する動作として、動作の実行に伴い把持部材31aから具材が飛び散る可能性が第1の可能性である第1の動作と、動作の実行に伴い把持部材31aから具材が飛び散る可能性が第1の可能性よりも高い第2の可能性である第2の動作と、を多関節ロボット30に実行させる。これと共に、制御装置10は、第2の動作を実行する際の把持部材31aの位置を、第1の動作を実行する際の把持部材31aの位置よりも低い位置になるように多関節ロボット30を制御する。
【選択図】図1
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