(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】アルツハイマー型認知症の予防又は治療用ペプチド組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20240910BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240910BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20240910BHJP
【FI】
A61K38/08 ZNA
A61P25/28
A23L33/18
(21)【出願番号】P 2023513622
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 KR2021011386
(87)【国際公開番号】W WO2022045775
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0108861
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519191835
【氏名又は名称】エイチエルビー サイエンス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HLB SCIENCE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ワン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、インドク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミ スク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒ ジョ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、スジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チェ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、コン ホ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A23L 33/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の配列一般式で表示されるポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含むことを特徴とする、アルツハイマー型認知症の予防又は治療用薬学的組成物:
(一般式)
Ln-X1-L-X2-V-X3-X4-X5-R-X6-L-X7
前記一般式で、
nは、0;
X1は、リシン(lysine:K)
X2は、アルギニン(arginine:R);
X3は、リシン(lysine:K);
X4は、ロイシン(leucine:L);
X5は、アルギニン(arginine:R);
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、及び
X7は、アルギニン(arginine:R)である、ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドは、L型、D型、ペプトイド(peptoid)を含むペプチド模倣体又は非天然アミノ酸であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドの末端をアルキレーション(Alkylation)、ペギレーション(PEGylation)又はアミデーション(Amidation)したことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、C末端にアミン基(NH
2)が追加されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドの塩置換物は、アセテート塩置換物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチド又はその塩置換物は、下記特徴のうち一つ以上の特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物:
リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)媒介サイトカイン生成の抑制;
神経炎症の抑制;
認知機能障害改善;
ベータアミロイド又はタウタンパク質凝集抑制;及び
ニューロン損失抑制。
【請求項7】
前記ポリペプチド又はその塩置換物は、血管脳障壁を透過することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
下記の配列一般式で表示されるポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含むことを特徴とする、アルツハイマー型認知症の予防又は改善用食品組成物。
(一般式)
Ln-X1-L-X2-V-X3-X4-X5-R-X6-L-X7
前記一般式で、
nは、0;
X1は、リシン(lysine:K)
X2は、アルギニン(arginine:R);
X3は、リシン(lysine:K);
X4は、ロイシン(leucine:L);
X5は、アルギニン(arginine:R);
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、及び
X7は、アルギニン(arginine:R)である、ポリペプチド。
【請求項9】
アルツハイマー型認知症の治療用薬剤の製造のための請求書1に記載のポリペプチド又はその塩置換物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー型認知症の予防又は治療用ペプチド組成物に関する。
【0002】
本出願は、2020年08月27日に出願された大韓民国特許出願第10-2020-0108861号に基づく優先権の利益を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
認知症(dementia)は、正常的な老化とは区分しなければならない病的な現象であり、その原因によってアルツハイマー型認知症(Alzheimer‘s disease)、脳血管性認知症(vascular dementia)、その他アルコール中毒、外傷、パーキンソン病の後遺症による発生する認知症に区別される。
【0004】
このうち、アルツハイマー型認知症の発病機構は明確に知られていないが、神経毒性タンパク質であるベータ-アミロイド(β-amyloid)の毒性が重要な原因として提示されている。この物質は、アミロイド前駆体タンパク質(APP:amyloid precursor protein)の誤った代謝により生成されることが知られており、APPの正常代謝物は、神経細胞保護作用があることが報告されている。最近、遺伝工学的方法を用いた研究結果では、ベータアミルロイド(β-amyloid)などの毒性タンパク質が細胞と血管に積もって神経細胞に毒性を及ぼすことによって結果的に脳機能に障害を招来するという事実が明かされた。
【0005】
高齢化によるアルツハイマー型認知症患者は、大きく増加しており、社会的な解決課題として急浮上しているが、これを効果的に予防するか治療し得る食品原料や医薬品はほとんど存在していないのが実情である。認知症は、65歳の老人人口の10%以上が苦痛を受ける神経系疾患であって、認知症のうち50%以上がアルツハイマー型認知症であると報告されており、2017年現在年老人人口の割合は、全人口の14%である700万人を超え、2060年度には、41.0%に急増すると予想されている。また、認知症患者の数は、2017年度を基準として724千人に達しており、高齢化が進行することによって、2040年度には168万人、2050年度には212.7万人以上に増加すると予測されている。
【0006】
しかし、現在認知症の治療方法は、根本原因の解決ではなく症状緩和目的の処置であって、発病の抑制、遅延又は治療のための物質の開発が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、アルツハイマー型認知症の予防又は治療剤の開発のために研究した結果、リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)媒介サイトカイン生成抑制、神経炎症抑制、認知機能障害改善、ベータアミロイド又はタウタンパク質凝集抑制及びニューロン損失抑制などの効果を示すペプチドを開発したところ、それに基づいて本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、アルツハイマー型認知症の予防、治療又は改善用ペプチド組成物を提供することである。
【0009】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、上記で言及した課題に制限されず、言及しなかったまた他の課題は、以下の記載から本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような目的を達成するために、本発明は、下記の配列一般式で表示されるポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含むアルツハイマー型認知症の予防又は治療用薬学的組成物を提供する:
【0011】
(一般式)
【0012】
Ln-X1-L-X2-V-X3-X4-X5-R-X6-L-X7
【0013】
前記一般式で、
【0014】
nは、0又は1;
【0015】
Lは、ロイシン(leucine);
【0016】
Vは、バリン(valine);
【0017】
Rは、アルギニン(arginine);
【0018】
X1は、リシン(lysine:K)又はアルギニン(arginine:R);
【0019】
X2は、グリシン(glycine:G)又はアルギニン(arginine:R);
【0020】
X3は、グルタミン酸(glutamic acid:E)又はリシン(lysine:K);
【0021】
X4は、アラニン(alanine:A)又はロイシン(leucine:L);
【0022】
X5は、リシン(lysine:K)、アルギニン(arginine:R)又はロイシン(leucine:L);
【0023】
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、アラニン(alanine:A)、トリプトファン(tryptophan:W)、リシン(lysine:K)又はアスパルト酸(aspartic acid:D);及び
【0024】
X7は、アスパルト酸(aspartic acid:D)又はアルギニン(arginine:R);
【0025】
ただし、前記一般式で、K-L-G-V-E-A-K-R-Y-L-Dの配列で表示されるポリペプチドは除外する。
【0026】
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、アラニン(alanine:A)、トリプトファン(tryptophan:W)、リシン(lysine:K)又はアスパラギン酸(aspartic acid:D);及び
【0027】
X7は、アスパラギン酸(aspartic acid:D)又はアルギニン(arginine:R);
【0028】
Ln-X1-L-X2-V-X3-X4-X5-R-X6-L-X7
【0029】
前記一般式で、
【0030】
nは、0又は1;
【0031】
Lは、ロイシン(leucine);
【0032】
Vは、バリン(valine);
【0033】
Rは、アルギニン(arginine);
【0034】
X1は、リシン(lysine:K)又はアルギニン(arginine:R);
【0035】
X2は、グリシン(glycine:G)又はアルギニン(arginine:R);
【0036】
X3は、グルタミン酸(glutamic acid:E)又はリシン(lysine:K);
【0037】
X4は、アラニン(alanine:A)又はロイシン(leucine:L);
【0038】
X5は、リシン(lysine:K)、アルギニン(arginine:R)又はロイシン(leucine:L);
【0039】
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、アラニン(alanine:A)、トリプトファン(tryptophan:W)、リシン(lysine:K)又はアスパルト酸(aspartic acid:D);及び
【0040】
X7は、アスパルト酸(aspartic acid:D)又はアルギニン(arginine:R);
【0041】
ただし、前記一般式で、K-L-G-V-E-A-K-R-Y-L-Dの配列で表示されるポリペプチドは除外する。
【0042】
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、アラニン(alanine:A)、トリプトファン(tryptophan:W)、リシン(lysine:K)又はアスパラギン酸(aspartic acid:D);及び
【0043】
X7は、アスパラギン酸(aspartic acid:D)又はアルギニン(arginine:R);
【0044】
一般式で、
【0045】
nは、0;
【0046】
X1は、リシン(lysine:K)
【0047】
X2は、アルギニン(arginine:R);
【0048】
X3は、リシン(lysine:K);
【0049】
X4は、ロイシン(leucine:L);
【0050】
X5は、アルギニン(arginine:R);
【0051】
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、及び
【0052】
X7は、アルギニン(arginine:R)である、ポリペプチド。
【0053】
本発明の他の具現例として、前記ポリペプチドは、L型、D型、ペプトイド(peptoid)を含むペプチド模倣体又は非天然アミノ酸であってもよいが、これに制限されない。
【0054】
本発明のまた他の具現例として、前記ポリペプチドの末端をアルキレーション(Alkylation)、ペギレーション(PEGylation)又はアミデーション(Amidation)することができるが、これに制限されない。
【0055】
本発明のまた他の具現例として、前記ポリペプチドは、C末端にアミン基(NH2)が追加されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0056】
本発明の他の具現例として、前記ポリペプチドの塩置換物は、アセテート塩置換物であってもよいが、これに制限されない。
【0057】
本発明のまた他の具現例として、前記ポリペプチド又はその塩置換物は、下記特徴のうち一つ以上の特徴を有することができるが、これに制限されない:
【0058】
リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)媒介サイトカイン生成の抑制;
【0059】
神経炎症の抑制;
【0060】
認知機能障害改善;
【0061】
ベータアミロイド又はタウタンパク質凝集抑制;及び
【0062】
ニューロン損失抑制。
【0063】
本発明のまた他の具現例として、前記ポリペプチド又はその塩置換物は、血管脳障壁を透過することができるが、これに制限されない。
【0064】
また、本発明は、前記ポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、アルツハイマー型認知症の予防又は治療方法を提供する。
【0065】
また、本発明は、前記ポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含む組成物のアルツハイマー型認知症の予防又は治療用途を提供する。
【0066】
また、本発明は、アルツハイマー型認知症の治療用薬剤の製造のための前記ポリペプチド又はその塩置換物の用途を提供する。
【発明の効果】
【0067】
本発明によるポリペプチド又はその塩置換物は、LPS媒介サイトカイン生成の抑制、LPSにより誘導された神経炎症の抑制、認知機能障害改善、ベータアミロイド又はタウタンパク質凝集抑制及びニューロン損失抑制などの効果を示し、前記ポリペプチド又はその塩置換物は、血管脳障壁を透過するところ、アルツハイマー型認知症の予防又は治療に有用に用いられることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1(a)】
図1の(a)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスの大脳半球でLPS(+)領域を免疫組織化学染色で確認した結果を示した図である。
【0069】
【
図1(b)】
図1の(b)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウス脳の二次運動皮質(M2)でLPSの発現を免疫組織化学染色で確認した結果を示した図である。
【0070】
【
図1(c)】
図1の(c)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスの海馬(hippocampus)でLPSの発現を免疫組織化学染色で確認した結果を示した図である。
【0071】
【
図2】
図2は、本発明の一具現例による臨床段階別アルツハイマー型認知症患者の血液及び脳脊髄液(CSF)サンプルでのLPSレベルを確認した図である。
【0072】
【
図3】
図3は、本発明の一具現例によるDD-S052ペプチド投与によるIL-1β及びTNF-αのmRNA発現を確認した図である。
【0073】
【
図4(a)】
図4の(a)は、本発明の一具現例による野生型マウスの脳でLPSに誘導された神経炎症に対するDD-S052ペプチドの効果を確認するための実験過程を示した図である。
【0074】
【
図4(b)】
図4の(b)は、本発明の一具現例による野生型マウスの海馬で小膠細胞を確認するためにIba-1に対する免疫組織化学染色を実施した結果を示した図である。
【0075】
【
図4(c)】
図4の(c)は、本発明の一具現例による野生型マウスの海馬でIba-1陽性細胞数を定量化して示した図である。
【0076】
【
図4(d)】
図4の(d)は、本発明の一具現例による野生型マウス脳の黒質緻密部で小膠細胞を確認するためにIba-1に対する免疫組織化学染色を実施した結果を示した図である。
【0077】
【
図5(a)】
図5の(a)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスの脳でLPSに誘導された神経炎症に対するDD-S052ペプチドの効果を確認するための実験過程を示した図である。
【0078】
【
図5(b)】
図5の(b)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスの脳で小膠細胞を確認するためにIba-1に対する免疫組織化学染色を実施した結果を示した図である。
【0079】
【
図6(a)】
図6の(a)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスの認知障害及びアルツハイマー型認知症関連病理に対するDD-S052ペプチドの効果を確認するための実験過程を示した図である。
【0080】
【
図6(b)】
図6の(b)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスでDD-S052ペプチドの投与による自発的交代割合(Spontaneous alternation)(左側図面)及び総アームエントリー(total arm entry)(右側図面)を確認した図である。
【0081】
【
図6(c)】
図6の(c)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスでDD-S052ペプチドの投与によるベータアミロイド蓄積抑制効果を確認した図である。
【0082】
【
図6(d)】
図6の(d)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスでDD-S052ペプチドの投与による小膠細胞症(microgliosis)の抑制効果を確認した図である。
【0083】
【
図6(e)】
図6の(e)は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスでDD-S052ペプチドの投与によるニューロン損失(neuronal loss)抑制効果を確認した図である。
【0084】
【
図7】
図7は、本発明の一具現例によるアルツハイマー型認知症マウスでDD-S052及びPEG化された(PEGylated)DD-S052ペプチドの投与によるタウタンパク質凝集抑制効果を確認した図である。
【0085】
【
図8(a)】
図8の(a)は、本発明の一具現例によるDD-S052ペプチドを液体-クロマトグラフィー質量分析法で分析した結果を示した図である。
【0086】
【
図8(b)】
図8の(b)は、本発明の一具現例によるDD-S052ペプチドを用いた人工膜透過試験を液体-クロマトグラフィー質量分析法で分析した結果を示した図である。
【0087】
【
図8(c)】
図8の(c)は、本発明の一具現例によるDD-S052の血管脳障壁透過程度を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
本発明は、下記の配列一般式で表示されるポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含むアルツハイマー型認知症の予防又は治療用薬学的組成物を提供する:
【0089】
(一般式)
【0090】
Ln-X1-L-X2-V-X3-X4-X5-R-X6-L-X7
【0091】
前記一般式で、
【0092】
nは、0又は1;
【0093】
Lは、ロイシン(leucine);
【0094】
Vは、バリン(valine);
【0095】
Rは、アルギニン(arginine);
【0096】
X1は、リシン(lysine:K)又はアルギニン(arginine:R);
【0097】
X2は、グリシン(glycine:G)又はアルギニン(arginine:R);
【0098】
X3は、グルタミン酸(glutamic acid:E)又はリシン(lysine:K);
【0099】
X4は、アラニン(alanine:A)又はロイシン(leucine:L);
【0100】
X5は、リシン(lysine:K)、アルギニン(arginine:R)又はロイシン(leucine:L);
【0101】
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、アラニン(alanine:A)、トリプトファン(tryptophan:W)、リシン(lysine:K)又はアスパルト酸(aspartic acid:D);及び
【0102】
X7は、アスパルト酸(aspartic acid:D)又はアルギニン(arginine:R);
【0103】
ただし、前記一般式で、K-L-G-V-E-A-K-R-Y-L-Dの配列で表示されるポリペプチドは除外する。
【0104】
また、本発明は、前記の配列一般式で表示されるポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含むアルツハイマー型認知症の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0105】
また、本発明は、前記ポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、アルツハイマー型認知症の予防又は治療方法を提供する。
【0106】
また、本発明は、前記ポリペプチド又はその塩置換物を有効成分として含む組成物のアルツハイマー型認知症の予防又は治療用途を提供する。
【0107】
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、アラニン(alanine:A)、トリプトファン(tryptophan:W)、リシン(lysine:K)又はアスパラギン酸(aspartic acid:D);及び
【0108】
X7は、アスパラギン酸(aspartic acid:D)又はアルギニン(arginine:R);
【0109】
一般式で、
【0110】
nは、0;
【0111】
X1は、リシン(lysine:K)
【0112】
X2は、アルギニン(arginine:R);
【0113】
X3は、リシン(lysine:K);
【0114】
X4は、ロイシン(leucine:L);
【0115】
X5は、アルギニン(arginine:R);
【0116】
X6は、チロシン(tyrosine:Y)、及び
【0117】
X7は、アルギニン(arginine:R)である、ポリペプチド。
【0118】
本発明において、「ポリペプチド」は、ペプチド結合によりアミノ酸残基が互いに結合して形成された線形(linear)の分子を意味する。本発明のポリペプチドは、分子生物学的な方法と共に、当業界における公知の化学的合成方法(例えば、固相合成技術(solid-phase synthesis techniques))によって製造され得る(Merrifield、J. Amer.Chem.Soc.85:2149-54(1963);Stewart、et al.、Solid Phase Peptide Synthesis、2nd.ed.、Pierce Chem.Co.:Rockford、111(1984))。
【0119】
また、本発明のポリペプチドの範囲には、本発明のポリペプチドと均等な生物学的活性を発揮するアミノ酸配列の変異を有する生物学的機能均等物が含まれ得る。このようなアミノ酸配列の変異は、アミノ酸の側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷及びサイズなどに基づいてなされる。アミノ酸の側鎖置換体のサイズ、形態及び種類に対する分析によって、アルギニン、リシンとヒスチジンは、全て正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンとセリンは、類似したサイズを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは、類似した形態を有することが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リシンとヒスチジン;アラニン、グリシンとセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは、生物学的に機能均等物と言える。
【0120】
変異を導入するにおいて、アミノ酸の疎水性インデックスが考慮され得る。それぞれのアミノ酸は、疎水性と電荷によって疎水性インデックスが付与されている。また、類似した親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸間の置換が均等な生物学的活性を有するペプチドを招くことも知られている。
【0121】
分子の活性を全体的に変更させないペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野において公知されている(H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979)。最も通常的に行われる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Glyの間の交換である。
【0122】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本発明のポリペプチドは、配列リストに記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解釈される。前記の実質的な同一性は、本発明の配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインし、当業界において通常的に用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、最小80%の相同性、90%の相同性又は95%の相同性を示す配列を意味し得る。配列の比較のためのアラインメント方法は、当業界において公知されている(Huang et al.、Comp.Appl.BioSci.8:155-65(1992);Pearson et al.、Meth.Mol.Biol.24:307-31(1994))。
【0123】
本発明の一具現例において、前記ポリペプチドは、L型、D型、ペプトイド(peptoid)を含むペプチド模倣体又は非天然アミノ酸であってもよい。
【0124】
前記D型ポリペプチドは、L型ポリペプチドとアミノ酸配列が同じ鏡像異性体であって、allomeric typeのポリペプチドを意味する。
【0125】
本発明の一具現例で、本発明による配列一般式で表示されるポリペプチドは、C末端にアミン基(NH2)が追加されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0126】
ポリペプチドのC末端にアミン基(NH2)を追加することは当業界における公知の様々な方法に従うことができる。
【0127】
また、本発明のポリペプチドの範囲には、その塩(又は塩置換物)も含まれ得る。
【0128】
前記塩は、例えば、遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩及び薬学的に許容可能な金属塩を含む。
【0129】
好適な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、グルコン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。酸付加塩は、通常の方法、例えば、化合物を過量の酸水溶液に溶解させ、この塩をメタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルのような水混和性有機溶媒を使用して沈殿させて製造することができる。また、同モル量の化合物及び水中の酸又はアルコールを加熱し、引き続いて、前記混合物を蒸発させて乾燥させたり、又は析出された塩を吸引濾過させて製造することができる。
【0130】
好適な塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属及びアンモニウムなどを含むことができるが、これに制限されるものではない。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩を濾過した後、ろ液を蒸発、乾燥させて得ることができる。このとき、金属塩としては、特にナトリウム、カリウム又はカルシウム塩を製造することが製薬上好ましく、また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例、硝酸銀)と反応させて得ることができる。
【0131】
上述したポリペプチド塩の一環として、本発明は、ポリペプチドのアセテート塩を提供する。
【0132】
より具体的に、本発明によるポリペプチドのトリフルオロ酢酸(Trifluoroacetic acid:TFA)のアセテート塩置換物を提供する。
【0133】
本発明の一実施例によると、FP1(配列番号3)から点突然変異(pointmutation)となったFP3(配列番号4)ペプチドの残基配列でLPSとの相互作用を高めるために、FP3とLPS結合モデルに基づいて設計したFP13-NH2(配列番号5)ペプチドとアミノ酸配列が同じallomeric typeのポリペプチドとして、本発明のペプチド(KLRVKLRRYLR-NH2(AcOH)、配列番号1、以下、DD-S052と称する)を提供し、本発明のペプチドDD-S052で(AcOH)は、ペプチドのN-末端から9番目のアミノ酸の末端のTrifluoroacetic acid(TFA)をアセテート(acetate)塩に置換したものを意味する(実施例2参照)。
【0134】
本発明において、本発明による配列一般式で表示されるポリペプチドの末端をアルキレーション(Alkylation)、ペギレーション(PEGylation)又はアミデーション(Amidation)することができるが、これに制限されない。
【0135】
本発明の一実施例で、本発明によるポリペプチドのうちDD-S052(配列番号1)のN末端をペギレーションしてDD-S052P(配列番号2)を提供する。これに制限されないが、前記ペギレーションのために、本発明によるポリペプチドとFmoc-NH-PEG2-CH2COOHを反応させ得、このとき、polyethylene glycolのMw(分子量)は、385.4Daである。
【0136】
選択されるポリペプチドによって通常の技術者がペギレーションのための条件を調節することができ、ペギレーションする方法は、当業界における公知の様々な方法に従うことができる。
【0137】
アルキレーション又はアミデーションも選択されるポリペプチドによって通常の技術者がアルキレーション又はアミデーションのための条件を調節することができ、アルキレーション又はアミデーションする方法は、当業界における公知の様々な方法に従うことができる。
【0138】
上述したように、本発明は、前記配列一般式で表示されるポリペプチド;L型、D型、ペプトイド(peptoid)を含むペプチド模倣体又は非天然アミノ酸であるポリペプチド;C末端にアミン基(NH2)が追加されたポリペプチドのアセテート塩;又は末端がアルキレーション(Alkylation)、ペギレーション(PEGylation)又はアミデーション(Amidation)されたポリペプチドを提供する。
【0139】
本発明において、前記ポリペプチド又はその塩置換物は、下記特徴のうち一つ以上の特徴を有することができるが、これに制限されない:
【0140】
リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)媒介サイトカイン生成の抑制;
【0141】
神経炎症の抑制;
【0142】
認知機能障害改善;
【0143】
ベータアミロイド又はタウタンパク質凝集抑制;及び
【0144】
ニューロン損失抑制。
【0145】
本発明の一実施例では、アルツハイマー型認知症マウスモデルの脳でリポ多糖(LPS)陽性細胞が年齢の増加に従って増加することを確認し、3ヶ月及び5.5ヶ月齢のマウスでは、小膠細胞でLPSが発現され、11ヶ月齢のマウスでは、ニューロンでLPSが発現されることを確認した。また、LPS(+)細胞は、脳の二次運動皮質(secondary motor cortex)で多く発現され、海馬(hippocampus)では、歯状回(dentate gyrus)の多形層(polymorph layer)に主に分布することを確認した(実施例1参照)。
【0146】
本発明の一実施例では、臨床段階別アルツハイマー型認知症患者の血液及び脳脊髄液(CSF)サンプルでのLPSレベルを確認した結果、アルツハイマー型認知症が進行するほどLPSレベルが高く測定されることを確認した(実施例2参照)。
【0147】
本発明の一実施例では、本発明によるポリペプチドの後述するような特徴を確認したが、これらの特徴に制限されるものではない。
【0148】
本発明の一実施例では、本発明によるポリペプチドがリポ多糖(LPS)により誘導されたサイトカインIL-1β及びTNF-αのmRNAの発現を抑制することを確認した(実施例4参照)。
【0149】
本発明の一実施例では、本発明によるポリペプチドが野生型マウス脳の海馬及黒質緻密部でLPSに誘導された小膠細胞症(microgliosis)を抑制して神経炎症抑制効果を示すことを免疫組織化学法で確認した(実施例5参照)。
【0150】
本発明の一実施例では、本発明によるポリペプチドがアルツハイマー型認知症マウスの脳でLPSに誘導された神経炎症抑制効果を示すことを免疫組織化学法で確認した(実施例6参照)。
【0151】
本発明の一実施例では、本発明によるポリペプチドが認知機能障害を改善し、ベータアミロイドの蓄積、小膠細胞症及びニューロン損失などアルツハイマー型認知症関連病理を抑制することを細胞免疫蛍光染色を通じて確認した(実施例7参照)。
【0152】
本発明の一実施例では、本発明によるポリペプチド及びPEG化された(PEGylated)ポリペプチドがタ(tau)タンパク質凝集抑制効果を示すことを確認した(実施例8参照)。
【0153】
本発明の一実施例では、本発明によるポリペプチドが血管脳障壁を透過することを確認し、このときの透過度は、中間値に該当した(実施例9参照)。
【0154】
本発明において、「アルツハイマー型認知症」は、主に65歳以上の老年層で漸進的な記憶力の減少と認知機能の損傷を特徴とする退行性脳疾患である。病理レベルでは、ベータ-アミロイドタンパク質の沈殿物と神経繊維タウタンパク質のねじれ現象が代表的な病因と認定されている。アルツハイマー型認知症は、その進行過程で認知機能の低下だけではなく、性格変化、焦燥行動、鬱病、妄想、幻覚、攻撃性増加、睡眠障害などの精神行動症状がよく同伴され、末期に至ると、硬直、歩行異常などの神経学的障害又は大小便失禁、感染、褥瘡など身体的な余病まで現われるようになる。顕微鏡でアルツハイマー型認知症患者の脳組織を検査したとき、特徴的な神経班(neuritic plaque)と神経繊維束(neurofibrillary tangle)などが観察され、肉眼観察時には、神経細胞消失によって全般的脳萎縮所見が見える。このような脳病理所見は、疾病の初期には、主に記憶力を担当する主要脳部位である海馬と内嗅覚脳皮質部位に限って現われるが、徐徐に頭頂葉、前頭葉などを経て脳全体に広がって行く。このような脳病理侵犯部位の進行によって初期には記憶力の低下が主に現われ、進行するにしたがって漸進的な経過を示しながら臨床症状が多様になってますますさらにひどくなる。
【0155】
本発明において、「小膠細胞(microglia)」は、中枢神経系で一次的な免疫機能を行う細胞であって、細長い枝と薄い細胞体の形態を維持しており、外部から流入するか内部で発生する毒素が存在すると、これら毒素から神経細胞を保護するために太くて短い枝と太った細胞体を有する活性化された形状に変化することになる。活性化された小膠細胞は、正常状態の小膠細胞とは異なり捕食作用を活発に行い、細胞増殖をし、TNF-α、IL-1β及びIL-6などのようなサイトカイン、ケモカイン、iNOS(inducible nitric oxide synthase)、COX-2(cyclooxygenase-2)などの遺伝子を発現させて炎症媒介物質を生成する。小膠細胞の活性化は、損傷された細胞を除去して外部から侵入するバクテリアやウイルスから神経細胞を保護する一面があるが、iNOSにより生成される一酸化窒素とCOX-2により生成されるプロスタグランジン、TNF-αなどは、神経細胞にも毒性を示すので、結果的に小膠細胞の活性化は、神経細胞の損傷を悪化させることになる。
【0156】
本発明において、「神経炎症」は、小膠細胞及び星状細胞の活性化及びサイトカイン、ケモカイン、補体タンパク質、急性期タンパク質、酸化的損傷及び関連された分子過程を含む広範囲で複雑な細胞反応を含み、前記事件は、神経機能に有害な影響を及ぼして神経損傷、追加的な膠細胞活性化及び最終的に神経退行を引き起こすこともできる。
【0157】
本発明において、「リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)」は、リピドA(lipid A)、コア多糖(core polysaccharide)、O-特異的多糖鎖(Ospecific polysaccharide side chain)で構成される。リポ多糖は、熱に安定して強い抗原性を示す。その分子量は、10kDaの基本単位で多数個の複合体を成し、そのサイズは、10,000kDaまで多様であり、化学構造上両親和性複合物である。リポ多糖は、動物で炎症反応を起こし、大部分は、SalmonellaとE.coliのようなグラム陰性菌の細胞壁の外膜(outermembrane)に存在する。リポ多糖のうちこのような炎症反応の原因である毒性を有する部分は、脂質部分であって、これをエンドトキシンと呼ぶ。このようなエンドトキシンが人体に流入されると、発熱、白血球数の変化、血管凝固、腫瘍怪死、低血圧、ショックなどが起き、また、エンドトキシンは、IL-1、IL-6、IL-8、TNFなどの各種cytokineの生産、免疫系補体活性化、血液凝固活性化などを起こし、B細胞にマイトジェン(mitogen)としてポリクローナル(ployclonal)分化とB細胞増殖、IgM、IgG抗体の生成を増加させる。
【0158】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常的に使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルム-コーティング物質及び制御放出添加剤からなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0159】
本発明による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エルシリック剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟稠エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液、又はエアロゾルなどの外用剤などの形態で剤形化して使用されてもよく、前記外用剤は、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤又はカタプラズマ剤などの剤形を有してもよい。
【0160】
本発明による薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギナート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0161】
製剤化する場合には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調製される。
【0162】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤として、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、小麦澱粉、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、ジ-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、尿素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1928、HPMC2208、HPMC2906、HPMC2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモーゼルなどの賦形剤;ゼラチン、アラビアゴム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック、澱粉糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が用いられ得、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシ澱粉、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、1-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、ポリ酢酸ビニル、ホルムアルデヒド処理カゼイン及びゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアールゴム(Guar gum)、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化澱粉、アラビアゴム、アミロペクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ジ-ソルビトール液、硬質無水ケイ酸などの崩解剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)4000、PEG 6000、流動パラフィン、水添大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、澱粉、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、dl-ロイシン、硬質無水ケイ酸などの滑沢剤;が用いられ得る。
【0163】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類、ラノリンエーテル類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロルアミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが用いられ得る。
【0164】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類あるいは甘味剤などが用いられ得、必要に応じて、芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが用いられ得る。
【0165】
本発明による乳剤には、精製水が用いられ得、必要に応じて、乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが用いられ得る。
【0166】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカンタ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1828、HPMC2906、HPMC2910など懸濁化剤が用いられ得、必要に応じて、界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が用いられ得る。
【0167】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、ピイジー(PEG)、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、非揮発性油-ごま油、綿実油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、尿素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジ、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸及びその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基及びその塩(アンモニア及び酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張化剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、窒素ガス(N2)、エチレンジアミン四酢酸のような安定剤;ソジウムビスルファイド0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム、アセトンソジウムビサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムのような無痛化剤;シーエムシーナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含むことができる。
【0168】
発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウィテプソル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツイン又はスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブーテュールムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスパーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コートマ(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロホスタール(Idropostal)、マサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マサ-MF、マスポール、マスポール-15、ネオスポスタール-エン、パラマウンド-B、スポシロ(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スフォスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゼスタトリセライド基剤(TG-95、MA、57)のような基剤が用いられ得る。
【0169】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)又はラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調剤される。また、単純な賦形剤の他にマグネシウムスチレートタルクのような潤滑剤なども使用される。
【0170】
経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが用いられ得る。
【0171】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定され得る。
【0172】
本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次又は同時に投与されてもよく、単一又は多重投与されてもよい。前記要素をすべて考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは本発明の属する技術分野において通常の技術者により容易に決定され得る。
【0173】
発明の薬学的組成物は、個体に様々な経路で投与され得る。投与の全ての方式は、予想されるが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口又は鼻による噴霧、皮膚投与、経皮投与などによって投与され得る。
【0174】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び疾患の重症度などの様々な関連因子とともに活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0175】
本発明のポリペプチド又はその塩置換物を食品添加物で使用する場合、前記ポリペプチドをそのまま添加したり、他の食品又は食品成分とともに使用してもよく、通常の方法により適切に使用してもよい。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康又は治療的処置)に応じて適切に決定され得る。一般的に、食品又は飲料の製造時に、本発明のポリペプチドは、原料に対して15重量%以下、又は10重量%以下の量で添加され得る。しかし、健康及び衛生を目的とするか、又は健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安定性の側面で問題がないので、有効成分は前記範囲以上の量でも使用され得る。
【0176】
前記食品の種類には、特に制限はない。前記物質を添加し得る食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常的な意味での健康機能食品を全て含む。
【0177】
本発明による健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖及び果糖のようなモノサッカライド、マルトース及びスクロースのようなジサッカライド、デキストリン及びシクロデキストリンのようなポリサッカライド及びキシリトール、ソルビトールエリスリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを用いることができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mL当たり一般的に約0.01-0.20g、又は約0.04-0.10gである。
【0178】
前記の外に、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有することができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立的に又は組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合は、大きく重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01-0.20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0179】
本発明で「個体」とは、アルツハイマー型認知症の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒト又は非-ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0180】
本発明で「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0181】
本発明で「予防」とは、アルツハイマー型認知症の発病を抑制するか遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与によりアルツハイマー型認知症が好転するかよく変更される全ての行為を意味し、「改善」とは、本発明による組成物の投与によりアルツハイマー型認知症と関連されたパラメータ、例えば、症状の程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0182】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0183】
実施例1.アルツハイマー型認知症マウスモデルで年齢によるLPSの発現確認
【0184】
1-1.実験動物モデル
【0185】
実験動物モデルとして3ヶ月、5.5カ月及び11ヶ月齢の5XFADアルツハイマー型認知症マウス(n=3~5)モデルを用い、対照群としては、11ヶ月齢の野生型(wild-type)マウスを用いた。
【0186】
5XFADアルツハイマー型認知症マウスは、雌の異形接合(heterozygous)5XFADトランスジェニック(transgenic)マウス(B6SJL/mice 背景;6ヶ月齢;大韓民国ジュンバイオテック(Jun biotech)から購入)を用いた。5XFADマウスは、遺伝型分析により確認され、5XFADマウスの野生型(WT)同腹子を対照群で用いた。
【0187】
1-2.免疫組織化学染色
【0188】
4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde、PFA)を用いて心臓灌流固定を通じてマウスの脳を摘出し、その後、摘出したマウスの脳を4% PFAを含有するリン酸緩衝溶液(100mM、pH7.4)に一晩固定した後、30% sucrose溶液を含有する50mM PBSに浸水させた。その後、マウスの脳を凍結して30μmの厚さで薄切し、4℃で保管溶液(30%エチレングリコール及び30%グリセロールを含有するDW)に保管した。
【0189】
免疫組織化学染色は、次のような方法で行われた。
【0190】
切片(section)を1% H2O2で15分間培養後、マウスの抗-E.coli LPS抗体(Abcam、ab35654)を1:400で希釈した溶液に入れて4℃で一晩培養した。ビオチン(biotin)化された2次抗体(1:200希釈、Vector Laboratories、Inc.、Burlingame、CA、アメリカ)と共に室温で1時間の間培養した後、avidin-biotin-peroxidase complex(1:100希釈、ベクター)と共に1時間の間培養した。その後、0.02% 3,3'-diaminobenzidine及び0.01% H2O2を約3分間反応させた。各培養段階後、切片をPBSで3回洗浄した。最後に、前記切片をゼラチンコーティングスライドにマウントした。これは、アルコール濃度が上がることで脱水されてキシレン(xylene)でクリアリングされた。
【0191】
1-3.マウスの脳でLPS(+)細胞の分布確認
【0192】
LPS(lipopolysaccharide)に対する免疫組織化学的(immunohistochemical)染色は、野生型(WT)マウスと3ヶ月、5.5ヶ月及び11ヶ月齢の5XFADマウスで行われた。
【0193】
5XFADマウスの大脳半球でLPS(+)領域のイメージを免疫化学組織染色を通じて確認した結果、
図1の(a)に示したように、LPS発現は、野生型(WT)マウスの脳で観察されず、LPS(+)細胞及び信号は、5XFADマウスの脳で年齢が高くなるほど増加する傾向を示し、5XFADマウスの脳でLPS(+)細胞の分布を確認した結果、LPS(+)細胞は、下記表1に示したように、二次運動皮質(secondary motor cortex、
図1の(a)の上段図面でM2に相当する)で多く分布し、海馬(hippocampus)では、歯状回(dentate gyrus)の多形層(polymorph layer)に主に分布することを確認した。
【0194】
【0195】
1-4.マウス脳の二次運動皮質(M2)でLPS(+)細胞確認
【0196】
11ヶ月齢の野生型マウスと3ヶ月、5.5ヶ月及び1ヶ月齢の5XFADマウス脳の二次運動皮質(M2)でLPSの発現を確認するために免疫組織化学染色を実施した結果、
図1の(b)に示したように、野生型マウスに比べて5XFADマウスでLPS(+)細胞が増加する傾向を確認し、5XFADマウスで年齢の増加に従ってLPS(+)細胞が増加する傾向を示すことを確認した。
【0197】
このとき、LPSは、核周囲に局所化(perinuclear localization)され、5XFADマウスの年齢によってLPSが発現される細胞が異なることを確認した。3ヶ月及び5.5ヶ月齢の5XFADマウスの場合、LPSは、主に小膠細胞(microglia)で発現すると推定され、11ヶ月齢の5XFADマウスの場合、ニューロン(neuron)でもLPSの発現を確認することができた。
【0198】
1-5.マウス脳の海馬でLPS(+)細胞確認
【0199】
3ヶ月、5.5ヶ月及び11ヶ月齢の5XFADマウスの海馬(hippocampus)でLPSの発現を確認するために免疫組織化学染色を実施した結果、
図1の(c)に示したように、野生型マウスに比べて5XFADマウスの海馬で年齢が増加するに従ってLPS(+)細胞が増加する傾向を示すことを観察し、海馬の歯状回(dentate gyrus)のうち多形層(polymorph layer)でLPS(+)細胞が主に発現することを確認した。
【0200】
実施例2.アルツハイマー型認知症患者サンプルでのLPSレベル確認
【0201】
臨床段階別アルツハイマー型認知症患者のサンプルでLPSレベルをLAL(litmulus amebocyte lysate)テストで確認した。
【0202】
具体的に、正常群(n=10)、無症状患者(n=10)、アルツハイマー病の前兆症状を有した患者(n=10)及びアルツハイマー型認知症(n=10)の4グループに分けた後、これらの血液及び脳脊髄液(CSF)サンプルでLPSレベルを測定した。
【0203】
LPSレベルは、LALテストを用いて測定し、まず、使用される試薬とplateは、常温であらかじめ準備し、heat blockを37℃で準備した後、サンプルを10μlずつ96ウェルプレートに入れた。その後、LAL reagent 10μlを追加し、プレートを平面に置いて揺らしよく混合されたかを確認し、37℃で10分間反応させた。その後、substrate 20μl各ウェルに入れて平面に置いて揺らし37℃で6分間反応させ、停止溶液20μl各ウェルに入れて軽く振った後、405nmで吸光度を測定した。
【0204】
その結果、それぞれのサンプルで示したLPSレベルは、下記表2(血液サンプル)、表3(脳脊髄液サンプル)及び
図2に示した通りであった。
【0205】
【0206】
【0207】
上記のようにアルツハイマー型認知症が進行するほど血液及び脳脊髄液(CSF)内のLPS濃度が高く測定されることから、LPSとアルツハイマー型認知症の間の高い連関性を確認することができた。したがって、アルツハイマー型認知症の治療において、LPSと結合力が良いペプチドが効果を示すと予想した。
【0208】
実施例3.ペプチドの製造
【0209】
FP1(KLGVEAKRYLD、配列番号3)をWT(wild type)と表記し、WTで点突然変異(point mutation)となったFP3(KLGVEAKRYLR、配列番号4)ペプチドを製作した。FP3の残基配列でLPSとの相互作用を高めるために、FP3とLPS結合モデルに基づいてFP13-NH2(KLRVKLRRYLR-NH2,配列番号5)ペプチドを設計し、非自然系アミノ酸とアミノ酸異性体(allomeric D型アミノ酸(all d-form))を追加導入して本発明のペプチド(KLRVKLRRYLR-NH2(AcOH)、配列番号1、以下、DD-S052と称する)を設計した。また、N-末端をPEG化(pegylation)されたペプチド(PEG-KLRVKLRRYLR-NH2(AcOH)、配列番号2、以下、DD-S052P)を追加設計して(株)エニゼンで合成した後に提供を受けた。
【0210】
本発明のペプチドDD-S052で(AcOH)は、ペプチドのN-末端から9番目のアミノ酸の末端のTrifluoroacetic acid(TFA)をacetate塩に置換したものを意味する。
【0211】
実施例4.LPS媒介サイトカイン生成に対するペプチドの効果
【0212】
小膠細胞株BV-2細胞を本発明によるペプチド(DD-S052)20μg/mlとLPS 2ng/mlで一緒に処理して6時間の間培養した。その後、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(quantitative real-time PCR)を利用して伝染症性サイトカインIL-1β及びTNF-αのmRNA発現レベルを測定した。
【0213】
具体的に、製造社のプロトコルによってRNA精製キット(Gene All、Seoul、大韓民国)を用いてBV-2細胞で総RNAを抽出した。Revert Aid First Strand cDNA合成キット(Thermo Scientific、Waltham、MA、アメリカ)を用いてcDNAを合成し、SYBR Green PCRマスターミックス(Thermo Scientific、Waltham、MA、アメリカ)を用いてqRT-PCR分析を行った。IL-1β及びTNF-αに対する遺伝子特異的プライマー配列は、下記表4に示し、前記IL-1β及びTNF-αのmRNAレベルは、対照群のサンプル量と比較して計算された。
【0214】
【0215】
その結果、
図3に示したように、DD-S052を処理することによってBV-2細胞でLPSにより誘導されたIL-1β及びTNF-αのmRNA発現が抑制されることを確認した。
【0216】
データは、平均±SEMで表示され、***表示は、対照群vs.LPS-処理されたBV-2細胞でp<0.001であることを意味し、##表示及び###表示は、LPS-処理されたBV-2細胞vs.LPS+DD-S052処理されたBV-2細胞でそれぞれp<0.01及びp<0.001であることを意味する。
【0217】
実施例5.野生型マウスの脳でLPSに誘導された神経炎症に対するペプチドの効果
【0218】
5-1.野生型マウス脳の海馬でLPSに誘導された小膠細胞症に対するペプチドの効果
【0219】
野生型マウスの脳で小膠細胞を確認するために、
図4の(a)に示したように実験をデザインし、小膠細胞に対するマーカーであるIba-1に対してヤギ-抗Iba-1抗体(Ab5076、1:500)を用いて免疫組織化学染色を行った。3ヶ月齢の野生型マウスは、LPS(30mg/kg/day)+ビヒクル(vehicle)(Hartmann dex)又はDD-S052(30mg/kg/day)+LPS(30mg/kg/day)を腹腔注射(i.p.)で処理し、LPSの最後の注射後、6時間後に犠牲にされた。このとき、LPSとDD-S052をそれぞれ異なる注射器にローディングしてそれぞれ右側腹部と左側腹部に別に注射し、LPSを投与した後に大略1分後にDD-S052を投与した。LPSのマウス血液内の半減期は、約2~4分であった。LPS及びDD-S052を投与してから6時間後、心臓灌流固定(4% PFA)を通じてマウスの脳を摘出した。その後、摘出したマウスの脳を20時間の間4% PFAで2次固定した後、30% sucrose溶液に浸水させた。その後、マウスの脳を凍結して30μmの厚さで薄切した。
【0220】
その後、マウスの海馬で小膠細胞を確認するために、前記実施例1-2に記載した方法でIba-1に対する免疫組織化学染色を実施した結果を
図4の(b)に示した。
図4の(b)に拡大したイメージは、活性化された小膠細胞が対照群マウス(ビヒクル(PBS)+ビヒクル(Hartmann dex))とLPS+ビヒクル(Hartmann dex)処理されたマウスでそれぞれ分枝形模様(ramified shape)からアメーバ模様(amoeboid shape)に変化したことを示した。対照的に、LPS+DD-S052処理されたマウスの小膠細胞の形態は、アメーバ模様(amoeboid shape)から分枝形模様(ramified shape)に変化する傾向を示した。
【0221】
また、
図4の(c)に示したようにIba-1陽性細胞の数を定量化したとき、対照群マウスよりLPS+ビヒクル(Hartmann dex)処理されたマウスの海馬で有意に増加した一方、Iba-1陽性細胞の数は、LPS+ビヒクル(Hartmann dex)処理されたマウスよりLPS+DD-S052処理されたマウスで著しく減少した。
【0222】
データは、平均±SEMを示し、***表示は、対照群に対して有意差を示すことを意味し(p<0.001)、###表示は、LPS+ビヒクルグループに対して有意差を示すことを意味する(p<0.001)。スケールバー(scale bar)=200μm(海馬)、100μm(歯状回)及び10μm(小膠細胞の拡大イメージ)。
【0223】
5-2.野生型マウス脳の黒質緻密部でLPSに誘導された小膠細胞症に対するペプチドの効果
【0224】
Iba-1に対する免疫組織化学染色を行って脳の黒質緻密部(substantia nigra pars compacta、SNc)で小膠細胞を確認した。野生型マウスへのLPS及びDD-S052の処理は、前記実施例5-1と同一に進行した。
【0225】
脳の黒質緻密部で小膠細胞を確認するために免疫組織化学染色を実施した結果を
図4の(d)に示した。
図4の(d)で拡大したイメージは、活性化された小膠細胞が対照群マウスとLPS+ビヒクル(Hartmann dex)処理されたマウスでそれぞれ分枝形模様からアメーバ模様に変化したことを示した。対照的に、LPS+DD-S052処理されたマウスの小膠細胞の形態は、アメーバ模様から分枝形模様に変化する傾向を示した。LPS+ビヒクル処理されたマウスのSNcで対照群マウスよりIba-1(+)小膠細胞が増加する傾向があったが、LPS+ビヒクル(Hartmann dex)処理マウスよりLPS+DD-S052処理マウスのSNcでIba-1(+)小膠細胞が減少する傾向を示すことを確認した。スケールバー=200μm、100μm(SNc)及び10μm(小膠細胞の拡大イメージ)。
【0226】
実施例6.アルツハイマー型認知症マウスの脳でLPSに誘導された神経炎症に対するペプチドの効果
【0227】
ベータアミロイド(Aβ)過発現アルツハイマー型認知症動物モデルである5XFADマウスでLPSとDD-S052による神経炎症及び細胞死滅の変化を確認するために、
図5の(a)に示したように実験をデザインし、神経炎症及び細胞死滅が現われる3ヶ月齢の5XFADマウス(n=5)にLPS及びDD-S052を投与して免疫組織化学染色法を通じて小膠細胞症(microgliosis)を分析した。
【0228】
LPSは、投与する動物のstrain、LPS originなどによって炎症反応の程度が異なるので、LPSのLD50(1-25mg/kg)に基づいて5XFADマウスにLPS 3mg/kgを処理して致死率を確認した文献(Barton、S.M.;Janve、V.A.;McClure、R.;Anderson、A.;Matsubara、J.A.;Gore、J.C.;Pham、W.、Lipopolysaccharide Induced Opening of the Blood Brain Barrier on Aging 5XFAD Mouse Model。J Alzheimers Dis 2019、67、(2)、503-513。)及びLPSの投与以後2日目から小膠細胞症が最大値に到逹することを確認した文献(Kondo、S.;Kohsaka、S.;Okabe、S.、Long-term changes of spine dynamics and microglia after transient peripheral immune response triggered by LPS in vivo。Mol Brain 2011、4、27)を参考して、LPS 3mg/kg及びDD-S052 10mg/kgを単回で同時に投与した後48時間後に犠牲にした。LPS及びDD-S052を投与して48時間後に心臓灌流固定(4% PFA)を通じてマウスの脳を摘出した。その後、摘出したマウスの脳を20時間の間4% PFAで2次固定した後、30% sucrose溶液に浸水させた。その後、マウスの脳を凍結して30μmmの厚さで薄切した。
【0229】
その後、5XFADマウスの脳で小膠細胞を確認するために免疫組織化学染色を実施した結果、
図5の(b)に示したように、大脳皮質及び海馬でLPS+ビヒクル(Hartmann dex)処理時にIba-1(+)小膠細胞が全て増加したが、LPS+DD-S052処理時にLPS+ビヒクル(Hartmann dex)処理群に比べてIba-1(+)小膠細胞が減少したことを確認した。濃い茶色で観察される細胞(positive cell)が小膠細胞が染色された形状であり、positive cellの数の増減又は模様の変化から小膠細胞の変化を確認することができる。
【0230】
実施例7.アルツハイマー型認知症マウスの認知障害及びアルツハイマー型認知症関連病理に対するペプチドの効果
【0231】
7-1.自発的交代割合及び総arm entryの確認
【0232】
アルツハイマー型認知症動物モデルである5XFADマウスでDD-S052処理による認知障害及びアルツハイマー型認知症関連病理に対する効果を確認するために、
図6の(a)に示したように実験をデザインし、5.5ヶ月齢の5XFADマウスにDD-S052を2mg/kgずつ隔日で4週間投与して総30mg/kgを腹腔注射した(n=5~8)。その後、各マウスに対する認知機能実験を実施し、その後、心臓灌流固定を通じてマウス脳を固定した。その後、摘出したマウスの脳を20時間の間4% PFA溶液で2次固定した後、30% sucrose溶液に浸水させた。その後、マウスの脳を凍結して30μmの厚さで薄切した。
【0233】
認知機能実験は、新しい環境探求意志を有した齧歯類の本能的行動を基盤とした実験であって、マウスが迷路で直前に選択した通路とは異なる道を選択する空間知覚能力を評価する実験であり、自発的交代割合(直前に選択した通路とは異なる道を選択する割合)を通路全体通過回数(total arm entry)で分けて点数を与える。実験時の全体通過回数は、空間知覚能力とは別個に全てのグループが類似した運動性を有するか、実験が正常的に行われているかを評価する指標となる。
【0234】
前記DD-S052処理された5XFADマウス、ビヒクル(Hartmann dex)処理された5XFADマウス(n=8)及びビヒクル(Hartmann dex)処理された野生型マウス(n=5)で認知障害を確認した結果、
図6の(b)に示したように、ビヒクル処理された5XFADマウス(n=8)で自発的交代割合(Spontaneous alternation)が野生型に比べて減少した一方、DD-S052処理された5XFADマウスでは、ビヒクル処理された5XFADマウスに比べて増加したことを確認した。
【0235】
また、8分セッション(session)の間全体通過回数(total arm entry)は、ビヒクル処理された5XFADに比べてDD-S052処理された5XFADマウスで増加したことを確認した。
【0236】
上記から、ビヒクル及びDD-S052処理されたマウスで全体通過回数が増加する傾向は示すが、グループ間の有意性はないので、三つのグループの個体群が類似した運動性を有しており、行動実験が正常的に行われたことが分かった。
【0237】
7-2.アルツハイマー型認知症関連病理に対する効果
【0238】
細胞免疫蛍光染色(immunofluorescence)方法を利用してベータアミロイド蓄積、小膠細胞症及びニューロン損失に対するDD-S052の効果を確認した。
【0239】
具体的に、免疫蛍光ラベリングの場合、Paxinos及びFranklinの「The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates」に基づいて側脳室区域(ブレグマ(bregma)で1.18及び0.02mm)及び海馬形成(ブレグマで-1.58及び-3.80mm)レベルで4~5個の冠状切片(coronal section)を得た。脳組織は、Titramax 101軌道振とう器(Heidolph、Schwabach、ドイツ)で自由浮動(free-floating)方法を用いてPBSで洗浄し、切片は、0.3% Triton X-100、0.5mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)及び次のような1次抗体を含むPBSとともに4℃で一晩培養した:マウス抗-4G8抗体(1:2,000;Cat.#800701、BioLegend、アメリカ)、マウス抗-NeuN抗体(1:100;Cat.#MAB377、Merck KGaA、Darmstadt、ドイツ)、ヤギ抗-Iba-1抗体(1:500;Cat.#ab5076、Abcam、Cambridge、イギリス)。
【0240】
抗-4G8抗体とともに培養される前に、脳の切片を抗原検索のために70%ギ酸(formic acid)と共に20分間培養し、PBSで5分ずつ3回洗浄した後に2次抗体とともに常温で50分間培養して蛍光信号を観察した。前記2次抗体としては、次のような抗体が用いられた:ロバAlexa 488-結合された抗-マウスIgG(1:200;Cat.#A21202、Thermo Fisher Scientific Inc.)、ロバAlexa 488-結合された抗-塩素IgG(1:200;Cat.#A11055、Thermo Fisher Scientific Inc.)、及びロバAlexa 594-結合された抗-ラットIgG(1:200;Cat.#A21209、Thermo Fisher Scientific Inc.)。全ての抗体は、0.3% Triton X-100を含むPBSで希釈した。
【0241】
7-2-1.ベータアミロイド蓄積に対する効果
【0242】
アルツハイマー型認知症動物モデルである5XFADマウスでDD-S052を投与した後にベータアミロイド蓄積を確認した結果、
図6の(c)に示したように、DD-S052の投与によってベータアミロイド特異抗体である4G8(+)領域が減少したことを確認したところ、DD-S052がベータアミロイド蓄積抑制効果を示すことが分かった。
【0243】
7-2-2.小膠細胞症(microgliosis)に対する効果
【0244】
アルツハイマー型認知症動物モデルである5XFADマウスで小膠細胞症(microgliosis)に対するDD-S052の効果を確認した結果、
図6の(d)に示したように、5XFADマウスでDD-S052の投与によってIba-1(+)細胞の数が減少したことを確認したところ、DD-S052が小膠細胞症に対して抑制効果を示すことが分かった。
【0245】
7-2-3.ニューロン損失(neuronal loss)に対する効果
【0246】
アルツハイマー型認知症動物モデルである5XFADマウスでニューロン損失(neuronal loss)に対するDD-S052の効果を確認した結果、
図6の(e)に示したように、5XFADマウスでDD-S052の投与によってNeuN(+)細胞が増加したことを確認したところ、DD-S052がニューロン損失抑制効果を示すことが分かった。
【0247】
実施例8.DD-S052及びPEG化された(PEGylated)DD-S052のタウタンパク質凝集抑制効果
【0248】
チオフラビンT(thioflavin T、ThT)分析は、DD-S052及びPEG化された(PEGylated)DD-S052がタウ(tau)凝集に及ぼす影響を調査するために行われた。ThTは、βシートが豊かなタンパク質凝集体に結合して蛍光を生成することが知られている。タウ凝集を誘導するために合成タウK18をPBS(pH7.4)に溶解させた。タウタンパク質の重合は、PBS(pH7.4)、0.5mg/mL tau K18、0.1mg/mLヘパリン及び100μM DTTを含む溶液で準備して誘導した。多様な濃度のDD-S052(10、20、40、100、1000μg/mL)、メチレンブルー(methylene blue、MB)溶液(陽性対照群)100μM及びPEG化された(PEGylated)DD-S052を21時間の間凝集混合物とともに培養した。培養後に試料と凝集混合物が入っている96ウェルプレートにThT溶液(50mMグリシン緩衝液内15μM、pH8.9)を入れて3時間の間培養した。ThTの蛍光強度は、SpectraMax iD3 Multi-Mode Microplate Reader(Molecular Devices、San Jose、CA、アメリカ)を用いて440及び484nmの励起及び放出波長で測定し、これを定量した。
【0249】
タウK18に対するDD-S052及びPEG化された(PEGylated)DD-S052の効果を確認した結果、
図7に示したように、DD-S052(左図)及びPEG化されたDD-S052(DD-S052P)で蛍光染料であるチオフラビンT(thioflavin T、ThT)の蛍光強度が減少したことを確認した。統計的有意性は、一元分散分析(one-way analysis)に引き続きTukey's多重比較テストにより決定された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0250】
実施例9.DD-S052の血管脳障壁透過確認
【0251】
9-1.体外血管脳障壁透過試験
【0252】
本発明のペプチドDD-S052が血管脳障壁(Blood-BrainBarrier、BBB)を透過するか否かを確認するために、Parallel Artificial Membrane Permeability Assay Kit(PAMPA-096;BioAssay system)を用いて血管脳障壁を模倣した人工膜透過試験を実施した。
【0253】
分析条件は、下記表5に示し、液体-クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)で分析した。
【0254】
【0255】
9-2.定量分析
【0256】
定量分析は、電気噴霧イオン化質量分析器(electrospray ionization coupled to Fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometry、ESI-FT-ICR-MS)を用いて分析し、分析条件は、下記表6に示した。
【0257】
【0258】
9-3.分析基準
【0259】
既存文献(Evaluation of the reproducibilityof Parallel Artificial Membrane Permeation Assays PAMPA、Sigma Aldric)に表記されたLog Pe関数によって試験物質に該当するピークのintensity値を用い、Log Pe関数により計算された値は、既存文献(Brian.J et al.Predicting a Drug's Membrane Permeability:A Computational Model Validated With in Vitro Permeability Assay Data.J Phys Chem B.2017 May 25;121(20):5228-5237)を参考して透過程度を予測した。
【0260】
9-4.試験結果
【0261】
DD-S052ペプチドの分析結果で、分析感度と再現性を考慮して、
図8の(a)に示したように375.3と500.9m/zでのピークを選定して分析し、人工膜透過試験に100pg/mlのDD-S052ペプチドを用いた。
【0262】
人工膜透過試験結果を液体-クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)で分析した結果、
図8の(b)に示したように、DD-S052を処理した後に人工膜の上層液と下層液でピークが類似して現われ、質量分析で該当するピークのntensityを数値化させて分析した結果、375m/z及び512m/zでのintensity値は、それぞれ下記表7及び8の通りであった。
【0263】
【0264】
【0265】
上記のような結果に基づいて透過程度を範囲によって分けて
図8の(c)に示した。対照群としては、temozolomide(TMZ)とPteleifilisinCを用いた。
図8の(c)に示したように、DD-S052の血管脳障壁透過度は、中間値のlog Pe値を有することを確認した。
【0266】
前述した本発明の説明は例示のためのものに過ぎず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更が可能である。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0267】
本発明によるポリペプチド又はその塩置換物は、LPS媒介サイトカイン生成抑制、神経炎症抑制、認知機能障害改善、ベータアミロイド又はタウタンパク質凝集抑制及びニューロン損失抑制などの効果を示すところ、アルツハイマー型認知症の予防又は治療に有用に利用されることが期待される。
【配列表】