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特許7553165プログラム、情報処理方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/00 20180101AFI20240910BHJP
【FI】
G16H30/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024027792
(22)【出願日】2024-02-27
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517446072
【氏名又は名称】株式会社クオトミー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大谷 隼一
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第117076655(CN,A)
【文献】国際公開第2015/072165(WO,A1)
【文献】特表2022-536621(JP,A)
【文献】特開2018-206405(JP,A)
【文献】特表2023-553401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の患部を撮像した医用画像を取得し、
前記医用画像を含むプロンプトを言語モデルに入力することで、外科手術の手術計画を表す手術計画情報を前記言語モデルから取得し、
前記手術計画情報を表示部に表示する
処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記医用画像を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記医用画像をベクトル値に変換し、
ベクトル値と対応付けて外科手術の各術式に関する情報を格納するデータベースから、前記変換したベクトル値に基づいて術式に関する情報を取得し、
取得した情報を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
医師が診断した前記患者のカルテデータを取得し、
前記医用画像と、前記カルテデータとを含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
患部の画像を携帯端末で撮像した画像と、電子カルテの表示画面を前記携帯端末で撮像した画像とを前記医用画像及びカルテデータとして取得し、
前記電子カルテの表示画面を撮像した画像からテキストを読み取り、
読み取ったテキストと、前記医用画像とを含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
患部を複数方向から撮像した複数のX線画像を前記医用画像として取得し、
前記複数のX線画像を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記医用画像から個人情報の記載箇所を認識し、
前記記載箇所をマスクした前記医用画像を生成し、
生成した前記医用画像を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記手術計画情報から外科手術の術式名及び部位名を表す単語を抽出し、
抽出した単語を表示する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
抽出した前記術式名を表す単語を正式名称から慣用名称に変換し、
変換した単語を表示する
請求項に記載のプログラム。
【請求項8】
患者の患部を撮像した医用画像を取得し、
前記医用画像を含むプロンプトを言語モデルに入力することで、外科手術の手術計画を表す手術計画情報を前記言語モデルから取得し、
前記手術計画情報を表示部に表示する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法であって、
前記医用画像を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記医用画像をベクトル値に変換し、
ベクトル値と対応付けて外科手術の各術式に関する情報を格納するデータベースから、前記変換したベクトル値に基づいて術式に関する情報を取得し、
取得した情報を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項9】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部が、
患者の患部を撮像した医用画像を取得し、
前記医用画像を含むプロンプトを言語モデルに入力することで、外科手術の手術計画を表す手術計画情報を前記言語モデルから取得し、
前記手術計画情報を表示部に表示する
情報処理装置であって、
前記制御部が、
前記医用画像を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記医用画像をベクトル値に変換し、
ベクトル値と対応付けて外科手術の各術式に関する情報を格納するデータベースから、前記変換したベクトル値に基づいて術式に関する情報を取得し、
取得した情報を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術の最適な計画(術式等)を提案するシステムがある。例えば特許文献1では、患者の関節部が写った放射線画像を取得し、術前の放射線画像と、関節に行った手術の術式と、手術を行った後の関節部の状態とを入力とし、行うべき手術の術式を出力とする機械学習モデルを用いて、取得した放射線画像に写った関節部に対して行うべき手術の術式を選択して出力する術式提案装置等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-115188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの側面では、患者の患部を撮像した医用画像から適切な手術計画を提示することができるプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの側面では、プログラムは、患者の患部を撮像した医用画像を取得し、前記医用画像を含むプロンプトを言語モデルに入力することで、外科手術の手術計画を表す手術計画情報を前記言語モデルから取得し、前記手術計画情報を表示部に表示する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記医用画像を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記医用画像をベクトル値に変換し、ベクトル値と対応付けて外科手術の各術式に関する情報を格納するデータベースから、前記変換したベクトル値に基づいて術式に関する情報を取得し、取得した情報を含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0006】
一つの側面では、患者の患部を撮像した医用画像から適切な手術計画を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】診療支援システムの構成例を示す説明図である。
図2】サーバの構成例を示すブロック図である。
図3】診療報酬DB、変換テーブル、手術履歴DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図4】端末の構成例を示すブロック図である。
図5】実施の形態の概要を示す説明図である。
図6】個人情報のマスク処理に関する説明図である。
図7】手術計画作成画面を示す図である。
図8】予実管理画面を示す図である。
図9】診療支援システムが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、診療支援システムの構成例を示す説明図である。本実施の形態では、LLM50(Large Language Model;大規模言語モデル)を用いて、患者に対して行うべき外科手術の手術計画を表す手術計画情報を生成して提示する診療支援システム(情報処理システム)について説明する。診療支援システムは、情報処理装置1、端末2、2、2…、及び生成サーバ3を含む。各装置は、インターネット等のネットワークNを介して通信接続されている。
【0009】
情報処理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能な情報処理装置であり、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ等である。本実施の形態では情報処理装置1がサーバコンピュータであるものとし、以下では簡潔のためサーバ1と読み替える。サーバ1は、患者の患部を撮像した医用画像と、医師が診断した患者のカルテデータとを含むプロンプトをLLM50に入力することで、LLM50から手術計画情報を取得する。サーバ1は、取得した手術計画情報を端末2に表示させ、ユーザ(医療従事者)に提示する。
【0010】
端末2は、各ユーザが使用する携帯端末であり、例えばスマートフォン、タブレット端末等である。端末2は、ユーザによる操作に従って、患部の画像(例えばX線画像)と、電子カルテの表示画面とを撮像する。サーバ1は、撮像された各画像を医用画像及びカルテデータとして取得し、LLM50に入力することで手術計画情報を取得する。後述するように、端末2は、LLM50によって生成された複数の手術計画情報(タグ)を候補として表示し、当該候補から手術計画情報を選択する入力を受け付けることで、手術計画を作成する。
【0011】
生成サーバ3は、画像、テキスト等の入力データからLLM50を用いて応答文を生成するサーバコンピュータである。LLM50は、例えばGPT(Generative Pre-trained Transformer)、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformer)等の大規模言語モデルであるが、そのモデルは特に限定されない。サーバ1は、端末2から医用画像及びカルテデータを取得した場合、医用画像及びカルテデータを含むプロンプトを作成して生成サーバ3に送信することで、生成サーバ3に手術計画情報を生成させる。
【0012】
図2は、サーバ1の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、主記憶部12、通信部13、及び補助記憶部14を備える。
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有し、補助記憶部14に記憶されたプログラムP1を読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の一時記憶領域であり、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部13は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。
【0013】
補助記憶部14は、大容量メモリ、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部11が処理を実行するために必要なプログラムP1(プログラム製品)、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部14は、診療報酬DB141、変換テーブル142、及び手術履歴DB143を記憶している。診療報酬DB141は、外科手術の各術式の診療報酬情報(術式に関する情報)を記憶するデータベースである。変換テーブル142は、手術計画情報としてLLM50から出力される術式名を、診療報酬上の正式名称から、診療実務上の慣用名称に変換する際に参照するテーブルである。手術履歴DB143は、手術計画に沿って各患者に対し行った手術履歴を記憶するデータベースである。
【0014】
なお、補助記憶部14はサーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。また、サーバ1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであっても良く、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0015】
また、本実施の形態においてサーバ1は上記の構成に限られず、例えば操作入力を受け付ける入力部、画像を表示する表示部等を含んでもよい。また、サーバ1は、CD(Compact Disk)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の可搬型記憶媒体1aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体1aからプログラムP1を読み取って実行するようにしても良い。
【0016】
図3は、診療報酬DB141、変換テーブル142、手術履歴DB143のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【0017】
診療報酬DB141は、診療報酬コード列、術式名列、部位名列、ベクトル値列、診療報酬点数列を含む。診療報酬コード列は、診療報酬コード(例えばKコード)を記憶している。術式名列、部位名列、ベクトル値列、及び診療報酬点数列はそれぞれ、診療報酬コードと対応付けて、術式名、部位(患部)名、ベクトル値、及び診療報酬点数を記憶している。ベクトル値については後述する。
【0018】
変換テーブル142は、正式名称列、慣用名称列を含む。正式名称列は、診療報酬上の術式の正式名称を記憶している。慣用名称列は、正式名称と対応付けて、診療実務上の術式の慣用名称を記憶している。
【0019】
手術履歴DB143は、手術日列、患者名列、術式名列、部位名列、手術時間列を含む。手術日列は、手術日を記憶している。患者名列、術式名列、部位名列、及び手術時間列はそれぞれ、手術日と対応付けて、手術を受けた患者名、手術の術式名、手術を行った部位名、及び手術時間を記憶している。
【0020】
図4は、端末2の構成例を示すブロック図である。端末2は、制御部21、主記憶部22、通信部23、表示部24、入力部25、撮像部26、及び補助記憶部27を備える。
制御部21は、一又は複数のCPU等のプロセッサを有し、補助記憶部27に記憶されたプログラムP2を読み出して実行することにより、種々の情報処理を行う。主記憶部22は、RAM等の一時記憶領域であり、制御部21が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部23は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。表示部24は、液晶ディスプレイ等の表示画面であり、画像を表示する。入力部25は、タッチパネル等の操作インターフェイスであり、ユーザから操作入力を受け付ける。撮像部26は、CMOS(Complementary-MOS)等の撮像素子を備えるカメラであり、画像を撮像する。補助記憶部27は、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部21が処理を実行するために必要なプログラムP2(プログラム製品)、その他のデータを記憶している。
【0021】
なお、端末2は、CD-ROM等の可搬型記憶媒体2bを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体2bからプログラムP2を読み取って実行するようにしても良い。
【0022】
図5は、実施の形態の概要を示す説明図である。図5では、医用画像(例えばX線画像)と、電子カルテから読み取ったカルテデータとを含むプロンプトをLLM50に入力することで、手術計画情報を生成する様子を図示している。図5に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0023】
なお、本実施の形態では医用画像としてX線画像を扱うが、医用画像はX線画像以外のモダリティの画像(例えば超音波画像、CT(Computed Tomography)画像、MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像等)であってもよい。
【0024】
LLM50は、大量の訓練データを学習済みの機械学習モデルであり、入力データ(画像、テキスト等)の入力を受け付けた場合に応答文を生成するモデルである。上述の如く、LLM50は例えばGPT、BERT等の大規模言語モデルであるが、そのモデルは特に限定されない。
【0025】
本実施の形態においてサーバ1は、LLM50を外科手術の手術計画の立案に用いる。具体的には、サーバ1は、患者の患部を撮像した医用画像と、電子カルテから読み取ったカルテデータとを含むプロンプトをLLM50に入力することで、外科手術の手術計画を表す手術計画情報をLLM50から取得する。
【0026】
例えばユーザは、端末2(携帯端末)により、患部の画像(例えばX線画像)を撮像すると共に、電子カルテの表示画面を撮像する。好適には、図5に示すように、患部を複数方向(図5では2方向)から撮像した複数の画像を撮像する。各画像を撮像した場合、端末2は当該画像をサーバ1に送信(出力)し、手術計画情報の出力を要求する。
【0027】
ここで、X線画像等の医用画像には患者の氏名や年齢、患者ID等の個人情報が記載されている場合がある。この画像をそのままサーバ1に送信すると、個人情報がログとしてサーバ1内に残ったり、LLM50の学習に用いられたりする可能性がある。そこで端末2は、当該個人情報の記載箇所をマスクした画像を生成し、サーバ1に送信する。
【0028】
図6は、個人情報のマスク処理に関する説明図である。図6左側に示すX線画像では、患者ID、患者の氏名、生年月日、年齢等が記載されている。端末2は当該画像から、個人情報の記載箇所を文字認識(OCR)により認識する。そして端末2は、図6右側に示すように、当該記載箇所をマスクした画像を医用画像として生成する。端末2は、生成した医用画像をサーバ1に送信する。
【0029】
なお、本実施の形態では端末2において画像のマスク処理を行うが、サーバ1が画像のマスク処理を行ってもよい。
【0030】
図5に戻って説明を続ける。サーバ1は端末2から、個人情報の記載箇所をマスクした医用画像と、電子カルテの表示画面を撮像した画像とを取得する。サーバ1は、電子カルテの表示画面を撮像した画像から、文字認識によりテキストをカルテデータとして読み取る。
【0031】
なお、本実施の形態ではサーバ1がカルテデータの読み取りを行うが、端末2がカルテデータの読み取りを行ってもよい。
【0032】
サーバ1は、上記の医用画像及びカルテデータを含むプロンプトを作成し、生成サーバ3にプロンプトを出力する。具体的には、サーバ1は、複数の手術計画情報の生成をLLM50に指示する定型文と、医用画像及びカルテデータとを含むプロンプトを作成する。サーバ1は当該プロンプトを生成サーバ3に出力することで、複数の手術計画情報をLLM50に生成させる。
【0033】
本実施の形態においてサーバ1は、RAG(Retrieval Augmented Generation)技術により、手術計画情報の生成に診療報酬DB141を用いる。診療報酬DB141は、術式名、部位名、診療報酬点数など、外科手術の各術式に関する情報(診療報酬情報)を記憶するデータベースである。診療報酬DB141には、医用画像及びカルテデータを変換したベクトル値と対応付けて、各術式に関する情報が格納されている。
【0034】
サーバ1は、医用画像及びカルテデータを含むプロンプトをLLM50に入力することで、医用画像及びカルテデータをベクトル値(特徴量)に変換する。そしてサーバ1は、変換したベクトル値を検索クエリとして、診療報酬DB141から術式に関する情報を検索する。例えばサーバ1は、各術式に対応する代表的な症例の医用画像及びカルテデータを所定の変換器(Embedding用のモデル)により事前に変換し、術式名、部位名等と対応付けて診療報酬DB141に格納してある。例えばサーバ1は、現在処理対象としている患者の医用画像及びカルテデータを変換したベクトル値と近似する上位数件の術式に関する情報を、診療報酬DB141から取得する。
【0035】
なお、本実施の形態では医用画像及びカルテデータをまとめて一つのベクトル値に変換するものとして説明するが、医用画像及びカルテデータをそれぞれベクトル値に変換し、各ベクトル値の少なくとも一つを用いて術式に関する情報を診療報酬DB141から取得するようにしてもよい。
【0036】
サーバ1は、取得した情報と、検索クエリとした医用画像及びカルテデータ(のベクトル値)とを含むプロンプトをLLM50に入力する。これにより、LLM50は、診療報酬DB141から取得した術式に関する情報を参照して、手術計画情報(応答文)を生成する。LLM50は、上位数件の各術式に関する情報を参照して、複数の手術計画情報を生成する。サーバ1は、LLM50が生成した手術計画情報を取得する。
【0037】
サーバ1は、LLM50が生成した手術計画情報(応答文)をそのまま端末2に出力して表示させてもよいが、本実施の形態では、LLM50が生成した手術計画情報から術式名及び部位名を表す単語を抽出し、抽出した単語を「タグ」として表示させる。
【0038】
図7は、手術計画作成画面を示す図である。当該画面は、手術計画入力欄71と、候補表示欄72とを含む。候補表示欄72は、LLM50が生成した複数の手術計画情報から抽出した各単語(各術式名及び部位名)をタグ73として表示する表示欄である。手術計画入力欄71は、候補表示欄72に表示されたタグ73から、患者に対して行う手術の術式名と、患部の部位名とを表すタグ73を選択して入力する入力欄である。
【0039】
上述の如く、サーバ1は、複数の手術計画情報の生成を指示するプロンプトをLLM50に入力することで、複数の手術計画情報をLLM50から取得する。サーバ1は、各手術計画情報から、術式名と、部位名とを抽出する。
【0040】
ところで、上述の如くLLM50は、診療報酬DB141に記憶されている術式に関する情報(診療報酬情報)を元に手術計画情報を生成する。しかしながら、診療報酬の計算の際に用いられる術式名は、例えば「観血的整復固定術」のような正式名称で用いられるが、当該名称は医療従事者が診療実務上用いる慣用名称ではない。例えば医療従事者は、「観血的整復固定術」ではなく「ORIF」と呼ぶことが一般的である。
【0041】
そのため、サーバ1は変換テーブル142を参照して、手術計画情報から抽出した術式名を慣用名称に変換する。サーバ1は、変換した術式名と、部位名とを示すタグ73を端末2に表示させる。
【0042】
端末2は、各手術計画情報から抽出された術式名及び部位名をタグ73、73、73…として候補表示欄72に表示する。ユーザは候補表示欄72に表示されたタグ73、すなわち術式名及び部位名を参考に、術式等を検討する。そしてユーザは、タグ73、73、73…のいずれかを選択して手術計画入力欄71に入力することで、手術計画を作成する。
【0043】
なお、ユーザはLLM50が生成した手術計画(タグ73)に従わず、自由に術式名等を入力して手術計画を作成してもよいことは勿論である。
【0044】
作成された手術計画は手術予定として本システムに登録される。手術後、ユーザは手術内容(例えば手術時間等)を本システムに登録する。登録された手術内容は、手術履歴として手術履歴DB143に保存される。
【0045】
サーバ1は、手術履歴DB143に記憶されている手術履歴に基づき、各種ダッシュボードを生成して端末2に表示する。例えばサーバ1は、病院の予実管理のための画面を生成して端末2に表示する。
【0046】
図8は、予実管理画面を示す図である。図8に示すように、サーバ1は、病院の売上の予算及び実績を計算し、各種グラフを生成して端末2に表示する。サーバ1は、診療報酬DB141に記憶されている各術式及び部位に応じた診療報酬点数と、手術履歴DB143に記憶されている各手術の術式名及び部位名とに基づいて売上の実績値を計算し、グラフを生成する。これにより、本システムを通じて病院の予実管理も行うことができる。
【0047】
図9は、診療支援システムが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。図9に基づき、診療支援システムが実行する処理内容について説明する。
端末2の制御部21は、ユーザによる操作入力に従い、患部の画像(例えばX線画像)と、電子カルテの表示画面とを撮像する(ステップS11)。例えば制御部21は、複数の方向から撮像された患部の複数の画像と、電子カルテの表示画面とを撮像する。
【0048】
制御部21は、患部の画像を撮像した画像から、個人情報の記載箇所(テキスト)を認識する(ステップS12)。制御部21は、認識した記載箇所をマスクした画像を、医用画像として生成する(ステップS13)。制御部21は、医用画像と、電子カルテの表示画面を撮像した画像とをサーバ1に出力する(ステップS14)。
【0049】
サーバ1の制御部11は、電子カルテの表示画面を撮像した画像からテキストをカルテデータとして読み取る(ステップS15)。制御部11は、医用画像及びカルテデータを含むプロンプトをLLM50に入力することで、医用画像及びカルテデータをベクトル値に変換する(ステップS16)。制御部11は、ベクトル値と対応付けて外科手術の各術式に関する情報(診療報酬情報)を格納する診療報酬DB141から、変換したベクトル値に基づいて術式に関する情報を取得(検索)する(ステップS17)。
【0050】
制御部11は、取得した情報と、検索クエリとした医用画像及びカルテデータ(のベクトル値)とを含むプロンプトをLLM50に入力することで、外科手術の手術計画を表す手術計画情報をLLM50から取得する(ステップS18)。具体的には、制御部11は、複数の手術計画情報の生成を指示するプロンプトをLLM50に入力することで、複数の手術計画情報(応答文)を取得する。制御部11は、取得した各手術計画情報から、術式名及び部位名を表す単語を抽出する(ステップS19)。制御部11は変換テーブル142を参照して、抽出した術式名を表す単語を、診療報酬上の正式名称から診療実務上の慣用名称に変換する(ステップS20)。制御部11は、術式名及び部位名を表す単語を端末2に出力する(ステップS21)。
【0051】
端末2の制御部21は、各術式名及び部位名を表す単語(タグ73)を、手術計画の候補として表示する(ステップS22)。制御部21は、表示された各単語からいずれかを選択する入力を受け付ける(ステップS23)。これにより制御部21は手術計画を作成する。制御部21は一連の処理を終了する。
【0052】
以上より、本実施の形態によれば、患者の患部を撮像した医用画像から適切な手術計画を提示することができる。
【0053】
(変形例)
上述の実施の形態ではLLM50に事前に医用画像等の学習を行わせずとも良いように、RAG技術を用いて診療報酬DB141から必要な情報を得るようにしたが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。サーバ1は、外部のデータベースを用いずとも手術計画情報を生成できるように、LLM50にトレーニングを行わせてもよい。
【0054】
すなわち、サーバ1は、訓練用の医用画像及びカルテデータに対し、正解の手術計画情報(術式名及び部位名)が対応付けられた訓練データを用いて、LLM50にファインチューニングを行ってもよい。サーバ1は、訓練用の医用画像及びカルテデータをLLM50に入力することで手術計画情報を生成し、生成された手術計画情報が正解の手術計画情報と近似するように、ニューロン間の重み等のパラメータを最適化する。これにより、医用画像及びカルテデータを含むプロンプトの入力を受け付けた場合に、手術計画情報を生成するようトレーニングされたLLM50が構築される。サーバ1は、構築されたLLM50に患者の医用画像及びカルテデータを含むプロンプトを入力することで、手術計画情報を取得して端末2に表示する。
【0055】
このように、RAG技術を用いてLLM50に手術計画情報を生成させる構成は必須ではなく、正しい手術計画情報を生成できるようにLLM50に事前に学習を行わせてもよい。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0057】
各実施の形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 サーバ(情報処理装置)
11 制御部
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
P1 プログラム
141 診療報酬DB
142 変換テーブル
143 手術履歴DB
2 端末(携帯端末)
21 制御部
22 主記憶部
23 通信部
24 表示部
25 入力部
26 撮像部
27 補助記憶部
P2 プログラム
3 生成サーバ
50 LLM(言語モデル)
【要約】
【課題】患者の患部を撮像した医用画像から適切な手術計画を提示することができるプログラム等を提供する。
【解決手段】プログラムは、患者の患部を撮像した医用画像を取得し、前記医用画像を含むプロンプトを言語モデルに入力することで、外科手術の手術計画を表す手術計画情報を前記言語モデルから取得し、前記手術計画情報を表示部に表示する処理をコンピュータに実行させる。好適には、医師が診断した前記患者のカルテデータを取得し、前記医用画像と、前記カルテデータとを含むプロンプトを前記言語モデルに入力することで、前記手術計画情報を前記言語モデルから取得する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9