(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】缶バッジ等の金属材の鑑定装置、鑑定方法、プログラム、及び、収納器
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20240910BHJP
G01N 23/223 20060101ALI20240910BHJP
G01N 33/2028 20190101ALI20240910BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
G01N23/223
G01N33/2028
(21)【出願番号】P 2024074336
(22)【出願日】2024-05-01
【審査請求日】2024-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524167337
【氏名又は名称】范 言
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】范 言
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-183947(JP,A)
【文献】特開2024-009437(JP,A)
【文献】特開2024-058794(JP,A)
【文献】特開2022-058147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 33/00-G01N 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶バッジを鑑定する鑑定装置であって、
前記
缶バッジの第1面に対して、第1光軸である第1光を当てる第1光源部と、
前記第1面に対して垂直である垂直軸に対して第2光軸が所定角となる角度で第2光を当てる第2光源部と、
第3光軸であって、前記第1面を撮影する撮影部と、
前記
缶バッジの第2面に接触して、前記
缶バッジを支持、かつ、前記
缶バッジを前記垂直軸を回転軸にして回転させる支持部と、
前記第2面にX線を当てて、前記
缶バッジの材質を分析する分析部と、
前記第1光を当てて前記撮影部が前記第1面を撮影した第1画像、前記第2光を当てて前記撮影部が前記第1面を撮影した第2画像、及び、前記X線を当てて前記分析部が分析した分析結果に基づき、前記
缶バッジの鑑定結果を出力する出力部と
を備え
、
前記分析部は、
前記缶バッジに含まれる前記材質を特定し、
前記出力部は、
前記缶バッジに含まれる前記材質の種類、又は、成分比に基づく前記缶バッジの真偽を出力し、
前記缶バッジを収納する収納部と、
前記鑑定結果を示す表示部と
を備える収納器に鑑定した前記缶バッジを収納して封止し、
前記鑑定結果は、
錆の有無、及び、前記第2面の評価結果した結果を更に含み、
前記第2光源部と前記撮影部は、
前記第1面に対して垂直となる垂直平面において、前記第2光軸と前記第3光軸が前記垂直軸を中心に線対称となる位置に配置される
鑑定装置。
【請求項2】
前記第1光軸は、
前記垂直軸と一致し、
前記所定角は、
前記垂直軸に対して10°乃至80°である
請求項1に記載の鑑定装置。
【請求項3】
前記第1光源部が消灯し、かつ、前記第2光源部が点灯した第1状態において、
前記支持部は、
前記
缶バッジを回転させて回転角を変化させ、
前記撮影部は、
前記回転角が異なる状態で複数の前記第2画像を撮影し、
前記第1光源部が点灯し、かつ、前記第2光源部が消灯した第2状態において、
前記撮影部は、
前記第1画像を撮影する
請求項1に記載の鑑定装置。
【請求項4】
前記出力部は、
前記第1画像、又は、前記第2画像を複数のブロックに分割して、傷がある前記ブロックの数をカウントしたブロック数を評価した結果を含む前記鑑定結果を出力する
請求項1に記載の鑑定装置。
【請求項5】
缶バッジの第2面に接触して、前記
缶バッジを支持する支持部を備え、
前記
缶バッジを鑑定する鑑定装置が行う鑑定方法であって、
前記
缶バッジの第1面に対して、第1光軸である第1光を当てる第1光源手順と、
前記第1面に対して垂直である垂直軸に対して第2光軸が所定角となる角度で第2光を当てる第2光源手順と、
第3光軸であって、前記第1面を撮影する撮影手順と、
前記支持部を前記垂直軸を回転軸にして回転させる回転手順と、
前記第2面にX線を当てて、前記
缶バッジの材質を分析する分析手順と、
前記第1光を当てて前記撮影手順で前記第1面を撮影した第1画像、前記第2光を当てて前記撮影手順で前記第1面を撮影した第2画像、及び、前記X線を当てて前記分析手順で分析した分析結果に基づき、前記
缶バッジの鑑定結果を出力する出力手順と
を含み
、
前記分析手順では、
前記缶バッジに含まれる前記材質を特定し、
前記出力手順では、
前記缶バッジに含まれる前記材質の種類、又は、成分比に基づく前記缶バッジの真偽を出力し、
前記缶バッジを収納する収納部と、
前記鑑定結果を示す表示部と
を備える収納器に鑑定した前記缶バッジを収納して封止し、
前記鑑定結果は、
錆の有無、及び、前記第2面の評価結果した結果を更に含み、
前記第2光源手順に用いる第2光源部と前記撮影手順で用いる撮影部は、
前記第1面に対して垂直となる垂直平面において、前記第2光軸と前記第3光軸が前記垂直軸を中心に線対称となる位置に配置される
鑑定方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の鑑定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項7】
缶バッジの第1面に対して、第1光軸である第1光を当てる第1光源部と、
前記第1面に対して垂直である垂直軸に対して第2光軸が所定角となる角度で第2光を当てる第2光源部と、
第3光軸であって、前記第1面を撮影する撮影部と、
前記
缶バッジの第2面に接触して、前記
缶バッジを支持、かつ、前記
缶バッジを前記垂直軸を回転軸にして回転させる支持部と、
前記第2面にX線を当てて、前記
缶バッジの材質を分析する分析部と、
前記第1光を当てて前記撮影部が前記第1面を撮影した第1画像、前記第2光を当てて前記撮影部が前記第1面を撮影した第2画像、及び、前記X線を当てて前記分析部が分析した分析結果に基づき、前記
缶バッジの鑑定結果を出力する出力部と
を備え
、
前記分析部は、
前記缶バッジに含まれる前記材質を特定し、
前記出力部は、
前記缶バッジに含まれる前記材質の種類、又は、成分比に基づく前記缶バッジの真偽を出力し、
収納器に鑑定した前記缶バッジを収納して封止し、
前記鑑定結果は、
錆の有無、及び、前記第2面の評価結果を更に含み、
前記第2光源部と前記撮影部は、
前記第1面に対して垂直となる垂直平面において、前記第2光軸と前記第3光軸が前記垂直軸を中心に線対称となる位置に配置される
鑑定装置が出力する前記鑑定結果を示す
前記収納器であって、
前記
缶バッジを収納する収納部と、
前記鑑定結果を示す表示部と
を備える収納器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶バッジ等の金属材の鑑定装置、鑑定方法、プログラム、及び、収納器に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類、バッグ、又は、帽子等に取り付けるアクセサリとして、缶バッジが広く知られている。例えば、缶バッジは、平面状のおもて側に、画像、色彩、模様、図形、又は、文字等が描かれる。このような缶バッジ等の金属材を製造する技術が広く知られている。
【0003】
具体的には、缶バッジは、透明樹脂シート、デザインシート、及び、樹脂シート等で構成するデザインシート重畳体を有する構造である。さらに、缶バッジは、表側缶構造体等を有する構造である。このような構造として、内部に水分が浸透して紙、及び、描かれたデザインを損傷するおそれがない構造を有する缶バッジが知られている(例えば、特許文献1等である)。
【0004】
ほかに、基部と印刷部で構成される缶バッジとする。そして、印刷部を表面に配置した缶バッジ本体、かつ、缶バッジ本体と嵌合する缶バッジ裏本体を有する缶バッジにおいて、基部をアルミ蒸着転写紙とする。このような構造とし、模様等を印刷することで単価を低減させ、かつ、金属の質感を維持し、さらに色彩の再現性に劣ることのない缶バッジが知られている(例えば、特許文献2等である)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6546636号公報
【文献】実用新案登録第3210146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等の技術は、缶バッジ等の金属材がどのような品質等であるかを調べることができない。
【0007】
そこで、本発明は、缶バッジ等の金属材がどのような品質等であるかを調べることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、金属材を鑑定する鑑定装置は、
前記金属材の第1面に対して、第1光軸である第1光を当てる第1光源部と、
前記第1面に対して垂直である垂直軸に対して第2光軸が所定角となる角度で第2光を当てる第2光源部と、
第3光軸であって、前記第1面を撮影する撮影部と、
前記金属材の第2面に接触して、前記金属材を支持、かつ、前記金属材を前記垂直軸を回転軸にして回転させる支持部と、
前記第2面にX線を当てて、前記金属材の材質を分析する分析部と、
前記第1光を当てて前記撮影部が前記第1面を撮影した第1画像、前記第2光を当てて前記撮影部が前記第1面を撮影した第2画像、及び、前記X線を当てて前記分析部が分析した分析結果に基づき、前記金属材の鑑定結果を出力する出力部と
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、缶バッジ等の金属材がどのような品質等であるかを調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】第1画像と第2画像の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付する図面を参照して、具体例を説明する。なお、以下の説明において、図面に記載する符号は、同一の要素を指す。また、実施形態は、下記の具体例に限られず、実施形態には、下記に説明する以外の要素があってもよい。
【0012】
以下、重力方向(垂直方向ともいう。)を「Z軸」(すなわち、垂直軸となる。)とする。つぎに、Z軸に対して直交し、かつ、奥行方向を「Y軸」とする。そして、Y軸に対して直交し、右手方向を「X軸」とする。したがって、「X‐Y平面」は、垂直軸に対して垂直となる垂直平面となる。なお、以下の説明では、直交は、厳密に直交する場合に限られず、略直交を含む。また、垂直、平行、及び、その他の角度も同様とする。
【0013】
[全体構成例]
図1は、鑑定装置100の全体構成例を示す図である。例えば、鑑定装置100は、Personal Computer(以下「PC10」という。)、第1光源装置11、第2光源装置12、カメラ13、X線センサ14、及び、ステージ15等を備える。なお、鑑定装置100は、データベース16等の周辺装置があってもよい。
【0014】
ステージ15は、例えば、支持台20等を備える構成である。ただし、ステージ15には、支持台20以外に歯車等の機構があってもよい。ほかにも、ステージ15には、第1光源装置11、第2光源装置12、カメラ13、及び、X線センサ14を支持、かつ、位置を変更する機構があってもよい。
【0015】
鑑定は、支持台20上に、鑑定する対象物となる缶バッジ21を設置して行う。
【0016】
以下、第1光源装置11、第2光源装置12、カメラ13、X線センサ14、及び、ステージ15は、PC10による制御で動作する例とする。ただし、各装置は、PC10による制御で動作するに限られず、他の制御装置、又は、スイッチ等の入力装置で入力するユーザによる操作に基づいて動作してもよい。
【0017】
したがって、以下の例では、カメラ13が撮影して生成する画像は、PC10が取得する。ただし、鑑定装置100は、生成された画像に対して画像処理を行う画像処理装置があってもよい。同様に、X線センサ14等のセンサによる分析結果を示すセンサデータは、PC10が取得する。ただし、センサデータに基づき、PC10等の情報処理装置による分析処理があって分析結果が生成されてもよい。
【0018】
[ハードウェア構成例]
図2は、ハードウェア構成例を示す図である。例えば、PC10は、Central Processing Unit(以下「CPU10H1」という。)、メモリ10H2、Solid State Drive(以下「SSD10H3」という。)、通信装置10H4、入力装置10H5、及び、出力装置10H6等を備える情報処理装置である。
【0019】
ステージ15は、例えば、支持台20、及び、駆動装置22等を備える。
【0020】
CPU10H1は、演算装置、及び、制御装置の例である。したがって、CPU10H1は、プログラム、及び、ユーザによる操作等に基づき、メモリ10H2等と協働して各種の処理、及び、制御を実行する。
【0021】
メモリ10H2は、主記憶装置の例である。
【0022】
SSD10H3は、補助記憶装置の例である。
【0023】
通信装置10H4は、外部装置とデータを送受信する装置である。
【0024】
入力装置10H5は、ユーザによる操作を入力する装置である。例えば、入力装置10H5は、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0025】
出力装置10H6は、ユーザに対して処理結果を出力する装置である。例えば、出力装置10H6は、ディスプレイ、外部装置への出力端子、又は、プリンタ等である。
【0026】
支持台20は、缶バッジ21を支持する機構である。
【0027】
駆動装置22は、支持台20を駆動させるアクチュエータ、制御装置、及び、機構部品等である。
【0028】
駆動装置22は、PC10等から指示を受け付けると、指示に基づき、支持台20を缶バッジ21ごと駆動させる。
【0029】
なお、各装置は、上記のハードウェア構成に限られない。例えば、各装置は、演算装置、制御装置、記憶装置、入力装置、出力装置、通信装置、センサ、及び、補助装置等を外部、又は、内部に更に備えてもよい。
【0030】
[構造例]
図3は、ステージ15等の構造例を示す図である。以下、缶バッジ21のおもて面211を「第1面」という。一方で、缶バッジ21の裏面212を「第2面」という。
【0031】
第1光源装置11、第2光源装置12、及び、カメラ13は、おもて面211側に設置される。一方で、X線センサ14は、裏面212側に設置される。
【0032】
缶バッジ21は、おもて面211を上向き(Z軸方向と一致する。)にして支持台20に設置される。したがって、支持台20とは、裏面212が接する。
【0033】
おもて面211は、キャラクタ、又は、文字等のデザインが形成されている面である。なお、おもて面211は、コーティング等がされてもよい。一方で、裏面212は、塗料、又は、コーティング等がなく、安全ピン等が配置される面である。そして、裏面212には、X線センサ14が発するX線が照射される面である。
【0034】
以上の通り、第1面は、おもて面211に限られず、デザインが形成されている箇所であればよい。また、第2面は、裏面212に限られず、缶バッジ21の材質を分析するのに適した箇所であればよい。
【0035】
なお、第1面、及び、第2面の位置に合わせて、第1光源装置11、第2光源装置12、及び、カメラ13の位置等が異なる。
【0036】
[第1光源装置11の例]
第1光源装置11は、おもて面211に対して光(以下「第1光L1」という。)を当てる光源となる装置である。また、第1光L1の光軸を「第1光軸AX1」という。
【0037】
第1光源装置11は、第1光L1がおもて面211に対して垂直に当たるように設置される。すなわち、おもて面211がX-Y平面であるとすると、第1光L1が第1光軸AX1と一致する位置、及び、角度となるように第1光源装置11が設置される。
【0038】
したがって、第1光源装置11は、缶バッジ21に対して、Z軸において真上に位置するのが望ましい。
【0039】
また、第1光源装置11は、平行光源であるのが望ましい。具体的には、缶バッジ21全体に対して均等に第1光L1を当てることができる光源であるのが望ましい。例えば、第1光源装置11は、Z軸の円周方向に直径がある丸形の光源等である。
【0040】
第1光源装置11は、例えば、φ(直径)25cm(センチメートル)の形状、200lm(ルーメン)程度の光源の明るさ、及び、6500K(ケルビン)程度の色温度となる第1光L1を発する装置である。ただし、光源の明るさ、色温度、及び、光源の形状等は、缶バッジ21、又は、缶バッジ21との位置関係等に合わせて上記の仕様と異なってもよい。
【0041】
以上のように、第1光L1がおもて面211に対して垂直に近い角度で当たる、すなわち、第1光軸AX1とZ軸が成す角度が0°に近いと、第1光L1を当てた場合に影ができるのを少なくできる。また、第1光源装置11の発光面とおもて面211が平行に近いと、第1光L1を当てた場合に影ができるのを少なくできる。すなわち、第1光源装置11は、いわゆる無影灯であるのが望ましい。
【0042】
したがって、第1光源装置11は、缶バッジ21の形状、缶バッジ21に形成されているデザイン、又は、カメラ13との位置関係等に応じて影が少なくなるような光源の種類、位置、角度、又は、光源の数であるのが望ましい。
【0043】
このような第1光源装置11を光源にしてカメラ13で撮影すると、影が少ない画像を撮影できる。
【0044】
[第2光源装置12の例]
第2光源装置12は、おもて面211に対して光(以下「第2光L2」という。)を当てる光源となる装置である。また、第2光L2の光軸を「第2光軸AX2」という。
【0045】
第2光源装置12は、おもて面211に対して第2光軸AX2が所定角θ(垂直軸を基準とし、所定角θはZ-X平面での角度とする。)の角度となるように設置される。例えば、所定角θは45°等である。ただし、所定角θは、おもて面211に対して第2光軸AX2が垂直(すなわち、所定角θが0°である。)、又は、平行(すなわち、所定角θが90°である。)となる程度でなければよく、10°乃至80°の角度であればよい。
【0046】
また、第2光源装置12は、設置位置、及び、所定角θをユーザの操作に基づいて変更できる調整機構を備えるのが望ましい。
【0047】
第2光源装置12は、例えば、Light Emitting Diode(LED、発光ダイオード)等の指向性が高い光源が望ましい。したがって、第2光L2は、第1光L1よりおもて面211に集中するスポット光であるのが望ましい。
【0048】
第2光源装置12は、例えば、200lm乃至600lm程度の光源の明るさ、及び、6500K(ケルビン)程度の色温度となる第2光L2を発する装置である。ただし、光源の明るさ、色温度、及び、光源の形状等は、缶バッジ21、又は、缶バッジ21との位置関係等に合わせて上記の仕様と異なってもよい。
【0049】
[カメラ13の例]
カメラ13は、おもて面211を撮影して画像を生成する装置である。以下、カメラ13の光軸を「第3光軸AX3」という。また、カメラ13は、第3光軸AX3において第3光L3を用いて撮影する。
【0050】
カメラ13は、おもて面211に対して第3光軸AX3が一定の角度(以下、垂直軸を基準とする。)となるように設置される。
【0051】
なお、第3光軸AX3と垂直軸とが成す角度は、所定角θであるのが望ましい。したがって、第2光源装置12とカメラ13は、Z-X平面において、どちらも所定角θの角度となる位置関係となるように設置されるのが望ましい。具体的には、図示するように、第2光源装置12とカメラ13は、Z-X平面において、垂直軸を中心に線対称となる位置に設置される。
【0052】
カメラ13は、カラー画像を生成できるのが望ましい。例えば、カメラ13は、12MPix(メガピクセル)程度の解像度となる光センサを備える。
【0053】
このように左右対称の位置関係になると、カメラ13は、おもて面211で反射した第2光L2を多く集光できる。すなわち、左右対称の位置関係であると、カメラ13は、第2光L2によって、おもて面211をより明るくした状態で撮影できる。
【0054】
図4は、第1画像と第2画像の比較例を示す図である。
図4(A)は、第2光源装置12によって第2光L2を当てた状態で撮影した例、すなわち、第2画像の例を示す図である。
図4(A)に示す第2光L2のように、特定の箇所に絞って光を集中させると、光が照射した箇所は、明るくなり、表面上に傷があると、浮かび上がる状態となる。したがって、このように缶バッジ21を回転させ、色々な角度、及び、位置に第2光L2を当ていくと、缶バッジ21に生じている傷を見つけることができる。
【0055】
図4(B)は、第1光源装置11によって第1光L1を当てた状態で撮影した例、すなわち、第1画像の例を示す図である。
【0056】
図4(A)と
図4(B)を比較すると、第2光L2は、局所的に光が集中するのに対し、第1光L1は、おもて面211全体を照らす。このような第1光L1と第2光L2を使い分けて撮影した第1画像、及び、第2画像を用いると、精度良く画像で評価ができる。
【0057】
[支持台20の例]
図5は、支持台20の例を示す図である。
図5は、ステージ15の下面を下から見上げた視点の図である。
【0058】
ステージ15が固定であるのに対し、支持台20は、回転する構成である。そして、支持台20は、支持台20の上に缶バッジ21を置いた後、PC10上でユーザの開始指示等があると回転する。支持台20は、例えば、ステージ15のX軸方向、及び、Y軸方向の中央に設置する。そして、支持台20は、ステージ15の中央に形成される穴を通して、ステージ15を貫通してZ軸方向に延びるように設置される。
【0059】
支持台20は、例えば、Z軸方向に空洞が形成される中空の円筒である。具体的には、支持台20は、Z軸方向が長手方向となり、X-Y平面が円周となる形状である。ただし、支持台20の形状は、缶バッジ21を支持でき、かつ、回転させることができるのであれば円筒以外の形状でもよい。
【0060】
以下、支持台20の上面が缶バッジ21と接する面とする。そして、上面と対向する面が支持台20の底面であるとする。したがって、中空の穴は、上面から下面に貫通するように形成される。また、支持台20の円周が側面となる。
【0061】
底面側にX線センサ14が設置される。そして、X線センサ14は、発するX線が支持台20の中空を介して、裏面212に当たる位置に設置される。
【0062】
このように、おもて面211の撮影と、裏面212の分析が一緒に行える構成であると、鑑定にかかる時間を短縮できる。ただし、第1光源装置11、第2光源装置12、カメラ13、及び、X線センサ14は、いずれも位置、及び、角度は固定でなくともよく、複数の位置等へ移動できる構成でもよい。
【0063】
支持台20は、例えば、Z軸を回転中心にして時計回りに回転する。以下、支持台20が回転する方向を「回転方向30」とする。回転方向30への回転は、いわゆるYaw回転である。具体的には、「0°」の位置を回転始点とすると、支持台20は、回転方向30に、「90°」、「180°」、「270°」の順に回転して再度「0°」の位置まで回転すると1回転となる。
【0064】
なお、回転方向30は、反時計回り、又は、他の軸を回転中心にしてもよい。また、支持台20は、回転方向30以外の自由度が更にあってもよい。
【0065】
ステージ15は、支持台20を回転させる機構部品、アクチュエータ、制御装置、及び、電源装置等を備える。
【0066】
具体的には、機構部品は、例えば、歯車、ベルト、又は、プーリー等である。すなわち、機構部品は、支持台20を回転させる力を伝達させる部品であれば種類を問わない。また、支持台20を含むステージ15は、例えば、金属、樹脂、又は、これらの組み合わせ等の材質である。
【0067】
アクチュエータは、例えば、モータ等である。そして、制御装置、及び、電源装置は、アクチュエータを制御し、制御に応じてエネルギーを供給する装置である。ただし、支持台20は、手動で回転する構成でもよい。
【0068】
例えば、PC10においてユーザが回転速度、及び、回転量等を事前に設定する。そして、PC10においてユーザが回転開始を指示する操作を行うと、支持台20は回転する。また、回転に連動して、第1光源装置11、第2光源装置12、及び、カメラ13等が動作する。
【0069】
[全体処理例]
図6は、全体処理例を示す図である。例えば、鑑定装置100は、以下の手順で全体処理を実行する。なお、以下の例では、各手順は、鑑定装置100におけるPC10が処理の主な主体となるが、各手順は、処理を実行する主体がPC10ではなく、例えば、外部装置等が行ってもよい。
【0070】
ステップS01では、鑑定装置100は、第1光源装置11を点灯、かつ、第2光源装置12を消灯するように制御する。そして、鑑定装置100は、第1光源装置11を照明にした環境下でステップS02を実行する。
【0071】
ステップS02では、鑑定装置100は、第1画像を撮影する。以下、第1光源装置11を照明にした環境下において、カメラ13が撮影して生成する画像を「第1画像」という。以下、第1画像の撮影用に、第1光源装置11を点灯、かつ、第2光源装置12を消灯した状態を「第2状態」という。
【0072】
このように、ステップS01、及び、ステップS02によって、第1画像が生成される。なお、第1画像は、1枚に限られず、ステップS02を複数回行って、複数枚の第1画像が生成されてもよい。
【0073】
ステップS03では、鑑定装置100は、第2光源装置12を点灯、かつ、第1光源装置11を消灯するように制御する。そして、鑑定装置100は、第2光源装置12を照明にした環境下でステップS04を実行する。
【0074】
ステップS04では、鑑定装置100は、第2画像を撮影する。以下、第2光源装置12を照明にした環境下において、カメラ13が撮影して生成する画像を「第2画像」という。以下、第2画像の撮影用に、第1光源装置11を消灯、かつ、第2光源装置12を点灯した状態を「第1状態」という。
【0075】
ステップS05では、鑑定装置100は、全角度で撮影が完了したか否かを判断する。なお、全角度、すなわち、第2画像を何度ごとに撮影するか等の撮影条件は、ユーザが事前に設定する。
【0076】
図5に示す例は、1回転において、90°ごとに第2画像を撮影する設定条件の例である。したがって、第2画像は、合計4枚撮影される。ただし、第2画像は、他の撮影条件で撮影されてもよい。例えば、第2画像は、120°ごと、合計3枚、又は、10°ごと、合計36枚等でもよい。
【0077】
このように様々な角度で撮影される第2画像を用いて評価すると、回転角によって撮影されない傷等を見落とすのを少なくできる。また、様々な回転角で撮影される第2画像を用いると、回転角によっては光の反射で隠れる傷等を見落とすのを少なくできる。
【0078】
次に、全角度で撮影が完了していると判断すると(ステップS05でYES)、鑑定装置100は、ステップS07に進む。一方で、全角度で撮影が完了していないと判断すると(ステップS05でNO)、鑑定装置100は、ステップS06に進む。
【0079】
ステップS06では、鑑定装置100は、支持台20を回転させる。なお、カメラ13が様々な角度で撮影できればよいため、支持台20が回転するのでなく、支持台20を回転中心にして、第2光源装置12、及び、カメラ13が支持台20に対して円周方向に回転して位置を変更してもよい。
【0080】
図5に示す例では、回転、すなわち、ステップS06ごとに、鑑定装置100は、支持台20を90°回転させる。
【0081】
このようにして、事前に設定する全角度で撮影が完了するまで、鑑定装置100は、ステップS03乃至ステップS06を繰り返し行う。
【0082】
ステップS07では、鑑定装置100は、X線による分析を行う。具体的には、鑑定装置100は、蛍光X線分析(XRF、X―ray Fluorescence)を行う。そして、照射されるX線によって発生する蛍光X線を分析することで、鑑定装置100は、缶バッジ21の材質を分析した分析結果を生成する。
【0083】
缶バッジ21の材質は、缶バッジ21が正規品であれば、事前に定められた材質の種類で構成され、かつ、特定の成分比となる。以下、正規品の缶バッジ21を構成する材質の種類、及び、成分比を示すデータを「正規品データ」という。ただし、正規品データは、材質の種類、及び、成分比以外を示してもよい。例えば、正規品データは、正規品の画像等でもよい。例えば、正規品データとなる画像は、正規品を販売する販売サイトの画像等である。すなわち、正規品データは、正規品のデザインを示す画像等でもよい。
【0084】
そして、正規品データを基準にして、正規品と同じ材質の種類、及び、成分比であると判断できる分析結果であれば、鑑定装置100は、缶バッジ21が正規品、すなわち、缶バッジ21の真偽が「真」であると判断する。一方で、正規品データを基準にして、正規品と同じ材質の種類で構成されていない、又は、正規品と異なる成分比であると判断できる分析結果であれば、鑑定装置100は、缶バッジ21が正規品でない、すなわち、缶バッジ21の真偽が「偽」であると判断する。
【0085】
正規品データは、例えば、事前にサンプルを計測して取得、又は、正規品の参照データを取得してデータベース16等に保存される。なお、正規品データは、定期的に更新されるのが望ましい。
【0086】
ステップS08では、鑑定装置100は、第1画像、及び、第2画像に基づく傷の評価を行う。
【0087】
図7は、エッジ処理例を示す図ある。例えば、第1画像、又は、第2画像は、フィルタ処理等によってエッジを抽出する処理が行われる。このように画像処理によってエッジ成分を抽出したデータを生成すると、傷等を精度良く検出できる。
【0088】
図8は、ブロックの分割例を示す例である。以下、
図8に示すようなデザインの缶バッジ21を例に説明する。
【0089】
図8に示すような第1画像、又は、第2画像は、画像内を少なくとも缶バッジ21があると認識できる範囲を複数のブロック40に分割する。具体的には、各々のブロック40は、同一の形状であって、正方形が望ましい。また、ブロック40は、缶バッジ21の大きさに関わらず、一辺が1mm(ミリメートル)程度に設定されるのが望ましい。したがって、大きい缶バッジ21は、ブロック40が一定の大きさで固定のため、全ブロック数が多くなる。このようなブロック40が設定されると、傷を精度良く認識できる。
【0090】
図9は、傷のある例を示す図である。例えば、
図8に示す缶バッジ21に傷41がある場合を例にする。
【0091】
傷41は、例えば、画像認識等のアルゴリズムで検出される。また、傷41は、例えば、第1画像と第2画像を比較して検出される。
【0092】
第1画像は、無影状態で撮影されるため、傷41が見えにくい状態(例えば、
図8のような状態である。)を示す。
【0093】
第2画像は、一部にスポット光が当たるため、光が当たっている部分の傷41が見えやすい状態となる。
【0094】
したがって、第1画像と第2画像を比較すると、傷41を検出できる。ただし、傷41の検出は、第1画像と第2画像の比較以外の方法でもよい。例えば、デザインの元絵(すなわち、無傷のデザインを示すデータである。)がある場合には、第2画像と元絵を比較する等でもよい。
【0095】
図10は、傷の評価例である。例えば、評価は、傷41があるブロック40の数をカウントしたブロック数で評価する。具体的には、
図10に示す例では、傷41があると判断されたブロック40は、黒色としている。各々の傷41は、「11ブロック+2ブロック+10ブロック=合計23ブロック」であると評価される。
【0096】
ブロック数が少ないほど、缶バッジ21は、傷41が少ない良品という評価結果になる。
【0097】
ステップS09では、鑑定装置100は、缶バッジ21の真偽を判断する。例えば、真偽は、ステップS07の分析結果等に基づいて判断される。そして、正規品であると判断されると(ステップS09で「真」)、鑑定装置100は、ステップS10に進む。一方で、正規品でないと判断されると(ステップS09で「偽」)、鑑定装置100は、全体処理を終了する。つまり、缶バッジ21が偽物であれば、鑑定装置100は、以降の収納器へ缶バッジ21を収納する等の処理を行わない。
【0098】
ステップS10では、鑑定装置100は、鑑定結果を出力する。鑑定結果の出力形式、及び、出力先は事前に設定する。
【0099】
鑑定結果は、例えば、傷41の評価結果をスコアにして出力する出力形式である。なお、傷41の評価結果以外に、錆の有無等といった他の評価項目を評価した場合には、他の評価項目についても、スコア化して鑑定結果に含んでもよい。具体的には、鑑定結果は、例えば、傷41の評価結果判定結果を10段階(「1」が最も低い評価であって、「10」が最高の評価である。)のスコアに換算して出力される。ほかにも、鑑定結果は、金銭評価等でもよい。
【0100】
ただし、鑑定結果は、「総合点」だけでなく、傷41の評価結果等を個別に出力する(例えば、各スコアを出力する等である。)出力形式でもよい。又は、鑑定結果は、スコア等の定量的な出力形式に限られず、「良品」又は「悪品」等のような言葉で品質を示す等でもよい。また、真偽の判定結果も出力されてもよい。ほかにも、出力形式は、
図10に示すような傷41の分布図、又は、X線による缶バッジ21に含まれる材質の成分表等を示すでもよい。
【0101】
出力先は、例えば、PC10が備える出力装置10H6等である。具体的には、鑑定結果は、ディスプレイ上に「総合点」、又は、真偽の判定結果等の出力形式で出力される。ただし、出力先は、例えば、プリンタ等でもよい。
【0102】
缶バッジ21を鑑定した後、収納器に収納する場合、鑑定結果は、例えば、収納器のケース上にシール等で記載される。このような場合には、鑑定結果は、収納器のケース上に貼るシールにプリンタによって記載される。
【0103】
したがって、出力形式、及び、出力先は、以降に収納器に記載するか否か等の設定によって変更、又は、追加されてもよい。
【0104】
以上のように、鑑定結果が出力されると、ユーザは、缶バッジ21がどのような品質等であるかを調べた結果を知ることができる。
【0105】
鑑定結果が出力された後、鑑定の対象となった缶バッジ21は、収納器に収納されて封止されるのが望ましい。収納器の詳細は後述する。
【0106】
ステップS11では、鑑定装置100は、缶バッジ21を収納した収納器を封止する。
【0107】
図11は、収納器の製造例を示す図である。例えば、ステップS11は、
図11に示す処理である。
【0108】
ステップS12では、鑑定装置100は、シールの印刷を行う。すなわち、ステップS10で出力される鑑定結果を収納器のケース上に貼るシールに印刷する。ただし、鑑定結果は、シールに限られず、データで記録媒体等に記憶、鑑定書等の紙媒体に印刷して収納器内に缶バッジ21と同封、又は、これらの組み合わせ等でもよい。以下、シールの例で説明する。
【0109】
ステップS13では、缶バッジ21が収納器に収納される。なお、収納は、手動でもよいし、ロボット等の収納を行う装置が行ってもよい。また、収納器には、缶バッジ21以外の物体が一緒に収納されてもよい。
【0110】
ステップS14では、収納器に対して封止処理が行われるのが望ましい。例えば、封止処理は、収納器の開閉部分を超音波で溶着する処理等である。このように、封止処理によって缶バッジ21が収納器から取り出しにくい状態にされるのが望ましい。
【0111】
ただし、封止処理は、超音波による溶着に限られない。例えば、封止処理は、収納後に缶バッジ21を取り出すために開閉されたのが判定できる封止シール、又は、封止をした印をする等でもよい。ほかにも、収納後、缶バッジ21を取り出すために開閉されると、収納器が破損する等の封止機構で封止してもよい。
【0112】
収納器は、樹脂製以外の材質でもよい。したがって、封止処理は、収納器の材質、又は、構造等によって異なる処理でもよい。
【0113】
なお、ステップS07、及び、ステップS08は、全体処理において、上記以外の順序で実行されてもよい。例えば、ステップS07、及び、ステップS08は、ステップS08の次にステップS07を実行する順序でもよい。また、ステップS07、及び、ステップS08は、並列に実行されてもよい。
【0114】
[収納器の例]
図12は、収納器の例を示す図である。例えば、収納器は、図示するように、透明なプラスチックケース(以下単に「ケース101」という。)である。ただし、ケース101は、材質、外観、形状、及び、大きさを問わない。
【0115】
まずケース101には、鑑定の対象となった缶バッジ21が収納される。なお、缶バッジ21は、持ち運び、又は、落下等に備えてケース101に固定されるのが望ましい。
【0116】
ケース101には、例えば、説明項目110、及び、スコア111等の鑑定結果を示すシールが貼られる。
【0117】
説明項目110は、例えば、「2024.XX.XX」のように缶バッジ21が発売された日時、「キャラクタ名」のように缶バッジ21に描かれているデザインの説明、及び、「φ〇〇cm」のように缶バッジ21のサイズ等の情報を示す。なお、説明項目110は、ユーザが事前に項目を設定できてもよい。したがって、説明項目110は、上記の項目に限られず、他の項目があってもよい。また、シリアルナンバー114等があってもよい。
【0118】
スコア111は、例えば、「総合点」等の鑑定結果を示す情報である。なお、スコア111は、ユーザが事前に出力形式等を設定できてもよい。
【0119】
シリアルナンバー114は、例えば、「真」と評価された缶バッジ21に付与される。なお、シリアルナンバー114は、固有値であって、同じ種類の缶バッジ21であっても、異なる番号が付与される。なお、収納、かつ、封止後、ケース101にシールが貼られた状態を撮影し(すなわち、
図12のような状態を示す画像である。)、Webページ等にアップロードされるのが望ましい。
【0120】
Webページにアップロードすると、鑑定が終了した缶バッジ21は、Web上で検索が可能な状態となる。例えば、缶バッジ21を検索すると、缶バッジ21を収納した写真、及び、スコア111等の鑑定結果が表示される。このように、鑑定結果等を公開すると、サービスの公正性をアピールできる。
【0121】
筐体113は、例えば、樹脂等の材質で形成される。例えば、筐体113は、直方体の形状である。そして、筐体113は、内部が空洞となっており、缶バッジ21等を内部に収納する空間を備える。このように、筐体113は、缶バッジ21を収納できる程度の内部空間を確保できる大きさである。
【0122】
また、筐体113は、例えば、2つに分割する構成である。したがって、缶バッジ21等を収納後、2つの部品を封止処理によって封止した後は、缶バッジ21を筐体113内に保存し、簡単には取り出せない機構等である。ただし、筐体113は、缶バッジ21を内部に収納でき、かつ、収納後は、内部から缶バッジ21が滑り出てこないような機構、及び、形状でもよい。したがって、筐体113の有する機構は、扉状の開閉機構等でもよいし、取付、及び、取り外し可能な蓋状等でもよい。ほかにも、開閉機構は、スライド状等でもよい。
【0123】
ケース101内には、缶バッジ21と一緒に脱酸素剤112等が収納されるのが望ましい。脱酸素剤112が一緒に収納されると、酸化を防ぎ、錆、又は、カビ等が増殖するのを防いで缶バッジ21を高品質に保つことができる。
【0124】
ケース101は、鑑定、及び、缶バッジ21の収納が完了した後、封止処理等によって封止されるのが望ましい。封止によって、缶バッジ21の取り出しが容易にできない状態、又は、ケース101の開閉があったのを把握できると、すり替え等の不正を防ぐことができる。
【0125】
[機能ブロック図]
図13は、機能構成例を示す図である。例えば、鑑定装置100は、第1光源部100F1、第2光源部100F2、撮影部100F3、支持部100F4、分析部100F5、及び、出力部100F6等を備える構成である。
【0126】
第1光源部100F1は、第1面に対して、第1光軸AX1である第1光L1を当てる第1光源手順を行う。例えば、第1光源部100F1は、第1光源装置11等で実現する。
【0127】
第2光源部100F2は、垂直軸に対して第2光軸AX2が所定角θとなる角度で第2光L2を当てる第2光源手順を行う。例えば、第2光源部100F2は、第2光源装置12等で実現する。
【0128】
撮影部100F3は、第1面を撮影する撮影手順を行う。また、撮影部100F3は、第3光軸AX3の光軸で撮影する。例えば、撮影部100F3は、カメラ13等で実現する。
【0129】
支持部100F4は、第2面に接触して、金属材を支持する。また、支持部100F4は、垂直軸を回転軸にして、金属材を回転させる回転手順を行う。例えば、支持部100F4は、支持台20等で実現する。
【0130】
分析部100F5は、第2面にX線を当てて、金属材の材質を分析する分析手順を行う。例えば、分析部100F5は、X線センサ14等で実現する。
【0131】
図14は、分析結果の例を示す図である。以下、X線による分析結果の例を分析表で示す。分析表は、例えば、「材質(種類)」、「成分比(%)」、及び、「+/-3σ」の項目で構成される。ただし、分析結果は、この項目に限られず、他の項目を含んでもよい。
【0132】
「材質(種類)」は、缶バッジ21に含まれる材質の種類を示す。
【0133】
「成分比」は、缶バッジ21に含まれる材質の含有量の割合を示す。
【0134】
「+/-3σ」は、統計における「3σ」、すなわち、標準偏差「σ」に基づき、約99.7%の範囲を示す値である。ゆえに、真偽を評価する上で、含有量にバラつきがあってもよい。
【0135】
基準データ200は、正規品の分析表である。すなわち、基準データ200は、正規品データの例である。したがって、缶バッジ21が基準データ200の示す材質を含み、かつ、成分比の通りであれば、缶バッジ21は「真」と判断される。
【0136】
第1分析表201、及び、第2分析表202は、模造品を分析した分析結果の例である。第1分析表201、及び、第2分析表202の分析結果と、基準データ200を比較すると、正規品は、正規品成分203が示す通り、「モリブデン(Mo)」を含むのに対し、第1分析表201、及び、第2分析表202は「モリブデン」を含まない結果を示す。
【0137】
この例では、正規品成分203の相違に基づき、「モリブデン」を含まない第1分析表201、及び、第2分析表202の分析対象である缶バッジ21は「偽」と評価される。
【0138】
なお、分析は、「モリブデン」等のレアメタルを含有するか否かに限られず、様々な種類の材質で真偽を判断してもよい。
【0139】
また、材質の有無でなく、「成分比(%)」に基づいて真偽が評価されてもよい。例えば、分析を行った結果、缶バッジ21を構成する材質が正規品と全く同様であっても、正規品と成分比が異なる(例えば、「鉄(Fe)」が極端に少ない、又は、極端に多い等である。)等も「偽」と評価されてよい。
【0140】
出力部100F6は、第1画像、第2画像、及び、分析部100F5による分析結果に基づき、金属材の鑑定結果を出力する出力手順を行う。例えば、出力部100F6は、出力装置10H6等で実現する。
【0141】
以上のような機能構成であると、鑑定装置100は、X線、第1画像、及び、第2画像を用いて、傷41の評価等を行った鑑定結果を出力できる。このように、鑑定装置100は、缶バッジ等の金属材がどのような品質等であるかを調べた鑑定結果をユーザ等に出力することができる。
【0142】
収納器は、表示部101F1、及び、収納部101F2等を備える。
【0143】
表示部101F1は、鑑定装置100による鑑定結果を表示する。例えば、表示部101F1は、鑑定結果を印刷したシール等で実現する。
【0144】
収納部101F2は、金属材等を収納する。例えば、収納部101F2は、筐体113等で実現する。
【0145】
以上のような収納部であると、鑑定装置100で鑑定した金属材を鑑定結果と合わせて保管できる。
【0146】
また、収納部101F2は、封止処理によって封止されるのが望ましい。封止された収納器に保管されると、すり替え等の不正を防ぐことができる。
【0147】
[鑑定の変形例]
鑑定する項目は、上記以外の項目が含まれてもよい。例えば、缶バッジ21の形状が項目にあってもよい。具体的には、缶バッジ21に生じている歪み、又は、凹み等が評価されてもよい。
【0148】
他にも、鑑定する項目は、錆の有無等があってもよい。例えば、裏面212は、おもて面211より錆が生じやすい。したがって、裏面212に錆があるか否かを色等で評価してもよい。
【0149】
以上のような項目も鑑定されると、缶バッジ21の品質がより精度良く調べられる。
【0150】
[金属材の変形例]
金属材は、缶バッジ21に限られない。すなわち、金属材は、金属を主な材質(金属以外の材質がある程度含まれてもよい。)とし、外観、及び、材質が鑑定の対象となる物体であればよい。具体的には、金属材は、コイン、宝飾品、又は、カード(主な材質を金属とする。)等でもよい。
【0151】
[Artificial Intelligence(AI、人工知能)を用いる例]
実施形態には、AIが用いられてもよい。例えば、傷41の画像認識は、AI等で実現してもよい。具体的には、傷41のパターン等をAIに事前に学習データとして入力して学習モデルを学習させる。学習後、学習済みモデルに対して、画像を入力データとして入力し、傷41の有無等を評価した評価結果をAIに出力させる。このようにディープラーニング(deep learning、深層学習)のAIを用いると、画像認識等の精度をより高くできる。
【0152】
[SDGsへの貢献]
持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という。)の推進に向けた取り組みが行われている。具体的には、産業と技術革新の基盤となる技術が求められている。
【0153】
本発明は、缶バッジ等の金属材がどのような品質等であるかを調べる鑑定を行う技術の基板となる。その結果、SDGsにおける「目標 9.産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献する。
【0154】
[その他の変形例]
本発明は、上記に例示する鑑定方法を実現するための処理、又は、上記に示す処理と等価な処理を実行するプログラム(ファームウェア、及び、プログラムに準ずるものを含む。以下単に「プログラム」という。)で実現されてもよい。
【0155】
すなわち、本発明は、コンピュータに対して指令を行って所定の結果が得られるように、プログラミング言語等で記載されたプログラム等で実現されてもよい。なお、プログラムは、処理の一部をIC(集積回路、Integrated Circuit)等のハードウェア等で実行する構成であってもよい。
【0156】
プログラムは、コンピュータが有する演算装置、制御装置、及び、記憶装置等を協働させて上記に示す処理等をコンピュータに実行させる。すなわち、プログラムは、主記憶装置等にロードされて、演算装置に命令を発して演算を行わせてコンピュータを動作させる。
【0157】
また、プログラムは、コンピュータが読み込み可能な記録媒体、又は、ネットワーク等の電気通信回線を介して提供されてもよい。
【0158】
本発明は、複数の装置で構成される情報処理システムで実現されてもよい。すなわち、複数のコンピュータによる情報処理システムは、上記に示す処理を冗長、並列、分散、又は、これらの組み合わせとなるように実行してもよい。したがって、本発明は、上記に示すハードウェア構成以外の装置、及び、上記に示す装置以外のシステムで実現されてもよい。
【0159】
本発明は、上記に説明した以外の装置を更に備える構成であってもよい。すなわち、各装置は、1つの装置でなくともよく、各装置は、複数の装置でもよい。
【0160】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。したがって、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。また、上記の実施形態は、好適な一例であって、本明細書に開示の内容から、各種の変形例、又は、他の装置への追加例を実現することができ、これらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
10H1 :CPU
10H2 :メモリ
10H4 :通信装置
10H5 :入力装置
10H6 :出力装置
11 :第1光源装置
12 :第2光源装置
13 :カメラ
14 :X線センサ
15 :ステージ
16 :データベース
20 :支持台
21 :缶バッジ
22 :駆動装置
30 :回転方向
40 :ブロック
41 :傷
100 :鑑定装置
100F1 :第1光源部
100F2 :第2光源部
100F3 :撮影部
100F4 :支持部
100F5 :分析部
100F6 :出力部
101 :ケース
101F1 :表示部
101F2 :収納部
110 :説明項目
111 :スコア
112 :脱酸素剤
113 :筐体
211 :おもて面
212 :裏面
AX1 :第1光軸
AX2 :第2光軸
AX3 :第3光軸
L1 :第1光
L2 :第2光
θ :所定角
【要約】
【課題】缶バッジ等の金属材がどのような品質等であるかを調べる。
【解決手段】金属材を鑑定する鑑定装置が、前記金属材の第1面に対して、第1光軸である第1光を当てる第1光源部と、前記第1面に対して垂直である垂直軸に対して第2光軸が所定角となる角度で第2光を当てる第2光源部と、第3光軸であって、前記第1面を撮影する撮影部と、前記金属材の第2面に接触して、前記金属材を支持、かつ、前記金属材を前記垂直軸を回転軸にして回転させる支持部と、前記第2面にX線を当てて、前記金属材の材質を分析する分析部と、前記第1光を当てて前記撮影部が前記第1面を撮影した第1画像、前記第2光を当てて前記撮影部が前記第1面を撮影した第2画像、及び、前記X線を当てて前記分析部が分析した分析結果に基づき、前記金属材の鑑定結果を出力する出力部を備える。
【選択図】
図13