(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ドハティ増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
H03F1/02 188
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020178800
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-05-22
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ウォン
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-167300(JP,A)
【文献】特開2019-176282(JP,A)
【文献】特開平10-335575(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力高周波(RF)信号を増幅するドハティ増幅装置であって、その出力において飽和出力から既定量よりも小さいバックオフレベルを有するドハティ増幅装置であり、
基板と、
前記基板上に底板及び出力板を有する複合パッケージ増幅器と、
前記入力RF信号を増幅するためのキャリア増幅器で、その出力電力を前記バックオフレベルで飽和させる、前記底板上に設けられたキャリア増幅器と、
前記入力RF信号を増幅するためのピーク増幅器で、前記バックオフレベルでオンになり、その出力を前記飽和出力で飽和させる、前記底板上に設けられたピーク増幅器と、
前記キャリア増幅器の出力と前記ピーク増幅器の出力とを合成する合成ノードと、
第1の伝送線路及び第2の伝送線路を有する出力整合回路と、
前記基板上に設けられ、一方の伝送線路及び他方の伝送線路を有する第3の伝送線路と、
を備え、
前記第1の伝送線路が前記キャリア増幅器と前記合成ノードとの間に設けられ、
前記第2の伝送線路が前記合成ノードと前記ピーク増幅器との間に設けられ、
前記出力板が、前記合成ノードに接続された一方の端子と、前記他方の伝送線路を介して外部ポートに接続する終端端子と、を有し、前記一方の伝送線路に接続され、
前記出力板及び前記他方の伝送線路が、
それぞれ、ドハティ増幅装置の対象となる信号に対してπ/4ラジアン以下の電気長を有する、
ドハティ増幅装置。
【請求項2】
前記出力板の一方の端子が複数の配線によって前記合成ノードに接続されている、
請求項1に記載のドハティ増幅装置。
【請求項3】
前記出力板の前記一方の端子が、前記他方の伝送線路に接続する点の反対側にある、
請求項2に記載のドハティ増幅装置。
【請求項4】
前記キャリア増幅器及びピーク増幅器がそれぞれ、独立して入力整合回路に接続されている、
請求項1に記載のドハティ増幅装置。
【請求項5】
前記基板上に設けられ、容量を介して前記他方の伝送線路に接続されている端子、
をさらに備える、請求項1に記載のドハティ増幅装置。
【請求項6】
入力高周波(RF)信号を増幅する増幅装置であって、
基板と、
前記基板上に底板及び出力板を有する複合パッケージ増幅器と、
前記底板上に設けられた、前記入力RF信号を増幅するための第1の増幅器及び第2の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力と前記第2の増幅器の出力とを合成する合成ノードと、
前記第1の増幅器と前記合成ノードとの間に設けられた第1の伝送線路、及び前記合成ノードと前記第2の増幅器との間に設けられた第2の伝送線路を有する、前記底板上に設けられた出力整合回路と、
前記出力板が接続された一方の伝送線路、及び前記一方の伝送線路を外部ポートに接続する他方の伝送線路を有する、前記基板上に設けられた第3の伝送線路と、
前記出力板の前記合成ノード側の一方の端子と前記合成ノードとを接続する複数の配線と、
を備え、
前記出力板及び前記他方の伝送線路が、
それぞれ、前記増幅装置の対象となる信号に対してπ/4ラジアン以下の電気長を有する、
増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002]本出願は、ドハティ増幅装置に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、2019年10月28日に出願された米国特許仮出願第62/926,720号の米国特許法第119条に基づく優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
[0003]例として、同じサイズの能動デバイスを有する標準的なドハティ増幅器、特に
図4に示すような出力λ/4変換器を有するものを使用する。表1は、様々な変換器プロファイルに必要な関連付けられたインピーダンス整合のリストを示す。
【表1】
[0004]したがって、設計上の制約に基づいて、表1を相互に関連付けて、複合パッケージドハティ増幅器を設計するのに必要な最適な基板及びインピーダンスを決定することができる。
【0004】
[0005]コンパクトな増幅器設計及び送信ソリューションに対する要求は、より洗練されているが統合されたソリューションを必要とする。
【0005】
[0006]
図5の従来の増幅器の設計では、パッケージ化されたトランジスタが、受動部品を形成する関連付けられた入力及び出力整合ネットワークとともに能動デバイスを形成する。しかしながら、設計実装面積の縮小に加えて、送信電力の需要が高まるにつれて、これらの要素を分離して、単一のエンティティに統合する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0007]本実施形態は、入力高周波(RF)信号を増幅するドハティ増幅装置を提供する。その出力において飽和出力からプリセット量よりも小さいバックオフレベルを有するドハティ増幅装置は、基板と、基板上に底板及び出力板を有する複合パッケージ増幅器と、バックオフレベルでその出力電力を飽和させる、底板上に設けられた、入力RF信号を増幅するためのキャリア増幅器と、ドハティ増幅器がその出力においてバックオフレベルよりも小さい場合に実質的なリークを示し、バックオフレベルでオンになり、その出力を飽和出力で飽和させるように構成された、底板上に設けられたピーク増幅器と、キャリア増幅器の出力とピーク増幅器とを合成する合成ノードと、第1の伝送線路及び第2の伝送線路を有する出力整合回路と、基板上に設けられ、一方の伝送線路及び他方の伝送線路を有する第3の伝送線路と、を有する。第1の伝送線路は、キャリア増幅器と合成ノードとの間に設けられている。第2の伝送線路は、合成ノードとピーク増幅器との間に設けられ、出力板は、一方の端子と、他方の伝送線路を介して外部ポートに接続する終端端子と、を有し、一方の伝送線路上に実装されている。出力板及び第3の伝送線路は、ドハティ増幅装置の対象となる信号に対してπ/4ラジアン未満の電気長を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
[0008]前述及び他の目的、態様、並びに利点は、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
【
図1A】本発明の複合パッケージ増幅装置の構成を示す図である。
【
図1B】本発明の複合パッケージ増幅装置の基板を示す図である。
【
図2A】複合パッケージ増幅装置の一実施形態の構成を示す図である。
【
図2B】複合パッケージ増幅装置の別の実施形態の構成を示す図である。
【
図3】複合パッケージ増幅装置の一実施形態の断面の構成を示す図である。
【
図5】複合パッケージ化された従来の増幅装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0009]次に、本出願によるドハティ増幅装置の一部の実施形態を詳細に説明する。図面の説明では、互いに同一若しくは同様の数字又は記号は、説明を重複することなく、互いに同一又は同様の要素を指す。
【0009】
[0010]ドハティ増幅装置の実際の実施態様は、
図1Aに示す複合パッケージ増幅器である。図示する寸法は、30mmx25mmである。
【0010】
[0011]厚さ0.508mmのプリント回路板(PCB)基板と共に代替のアプローチ#2(表1に示す)がこの絶縁材料において使用されている。その場合、例えば、PCB基板30は、複合エポキシなどの材料で作られており、その誘電率は3.0以上である。
【0011】
[0012]複合パッケージ増幅装置は、PCB基板30と、複合パッケージ増幅器20と、入力RF電力分割器1と、メイン経路入力整合ネットワーク2と、ピーク経路入力整合ネットワーク3と、を有する。
【0012】
[0013]複合パッケージ増幅器20、入力RF電力分割器1、メイン経路入力整合ネットワーク2、及びピーク経路入力整合ネットワークは、PCB基板30上に設けられている。
【0013】
[0014]PCB基板30は、PCB基板30の主面に設けられた、入力メイン経路5、入力ピーク経路6、出力メイン・ピーク経路7、最終変換器8、出力RF経路9、入力RF経路19、及び、接地パターン60と、PCB基板30の背面に設けられた接地金属65と、を有する。
【0014】
[0015]最終変換器8は、マイクロストリップラインなどである。PCB基板30上に設けられたマイクロストリップラインは、PCB基板30の背面に接地金属を有する。
【0015】
[0016]3dBハイブリッドカプラ部品などの入力RF電力分割器1は、入力RF経路19に接続されている。メイン経路入力整合ネットワーク2は、入力RF電力分割器1と複合パッケージ増幅器20との間に配置されている。メイン経路入力整合ネットワーク2は、第1のコンデンサC1を介して入力RF電力分割器1に接続され、パターン31bを介して複合パッケージ増幅器20に接続され、第1の抵抗器R1を介して入力メイン経路5に並列に接続されている。その場合、例えば、第1のコンデンサC1の容量値は、約6pfであり、第1の抵抗器R1の抵抗値は、約10オームである。
【0016】
[0017]ピーク経路入力整合ネットワーク構成要素3は、入力RF電力分割器1と複合パッケージ増幅器20との間に配置されている。ピーク経路入力整合ネットワーク構成要素3は、第2のコンデンサC2を介して入力RF電力分割器1に接続され、パターン32bを介して複合パッケージ増幅器20に接続され、第2の抵抗器R2を介して入力ピーク経路6に並列に接続されている。その場合、例えば、第2のコンデンサC2の容量値は、約12nfであり、第2の抵抗器R2の抵抗値は、約50オームである。
【0017】
[0018]最終変換器8は、第3のコンデンサC3を介して出力RF経路9と複合パッケージ増幅器20との間に接続され、出力メイン・ピーク経路7に並列に接続されている。その場合、例えば、第3のコンデンサC3の容量値は、約6pfである。
【0018】
[0019]複合パッケージ増幅器20は、底板25、内蔵半導体ダイ40a、40b、内部入力整合構成要素10a、10b、内部出力整合回路4、入力金属板11a、11b、出力金属板12のためのパッケージを有する。内蔵半導体ダイ40a、40b、内部入力整合回路10a、10b、内部出力整合回路4は、底板25上に設けられている。その場合、例えば、入力金属板11a、11b、出力金属板12、及び底板は、銅などの材料で作られている。
【0019】
[0020]内蔵半導体ダイ40a、40bはそれぞれ、配線51a、51bによって内部入力整合回路10a、10bに接続されている。内蔵半導体ダイ40a、40bはそれぞれ、配線52a、52bによって内部出力整合回路4に接続されている。出力金属板12は、配線55によって内部出力整合回路4に接続されている。複合パッケージ増幅器20の底板25及び金属板11a、11b、12は、樹脂によって成形されている。その場合、例えば、樹脂は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの材料で作られている。
【0020】
[0021]最終変換器8は、第3の伝送線路8a及び第4の伝送線路8bを有する。出力金属板12は、最終変換器8の第3の伝送線路8aに接続されている。入力金属板11b、11aはそれぞれ、第1及び第2の変換器31b、32bに接続されている。
【0021】
[0022]
図1Bは、
図1Aの複合パッケージ増幅器を据え付けていない
図1AのPCB基板30を示す。パターン31、32は、PCB基板30上に設けられたパターン31a、32a、及びパターン31b、32bを有する。その場合、パターン31、32のパターン31a、32aは、それぞれ、複合パッケージ増幅器20の入力金属板11b、11aに接続されている。
【0022】
[0023]最終変換器8の第3の伝送線路8aは、複合パッケージ増幅器20の出力金属板12に接続されている。
【0023】
[0024]接地パターン60は、PCB基板30上に設けられたパターン31a、32a、及びパターン31a、32bを有する。その場合、接地パターン60は、複合パッケージ増幅器20の底板25に接続されている。
【0024】
[0025]本発明の主な目的は、低コストであるが大量生産可能な表面実装パッケージの複合増幅器ソリューションを提供することである。
【0025】
[0026]従来の「ドロップイン」セラミックパッケージを制して選択される表面実装パッケージは、主に大量生産中のピックアンドプレース配置の精度によるものである。
【0026】
[0027]しかしながら、特定の表面実装パッケージでは、この特定の例では、電気端子は、1.525mmの幅を提供するように設計されている。式1a及び式1bは、知られている誘電体材料情報に基づいてマイクロストリップの特性インピーダンスを決定するための実験式を示す。
[式1a]
【数1】
[式1b]
【数2】
ここで、Wは誘電体基板の幅、Hは誘電体基板の厚さ、ε
effは基板の実効誘電率を示しており、前述の式を使用して、マイクロストリップの特性インピーダンスを概算することができる。
【0027】
[0028]1.525mmの固定幅値を使用して、表2は、様々な厚さを有する標準的な誘電体基板に関連付けられたRF電気インピーダンスの例を示す。
【表2】
[0029]λ/4変換器の長さは、周波数によって異なる(周波数が低いほど長さが長くなる)。ドハティを同じ図として使用して、
図2A及び
図2Bは、このパッケージが異なる周波数に対してどのようにさらに使用され得るかを示す。
【0028】
[0030]
図2Aに示す一実施形態では、誘電体基板(アイテム#4)と最終変換器(アイテム#8)との間を相互接続するワイヤボンドの位置が丸で囲まれている。この位置は、RF信号の励起を変換器の縁部に可能な限り近づけるように選択されている。
【0029】
[0031]
図2Bに示す別の実施形態では、相互接続する(丸で囲まれた)ワイヤボンドの位置は、パッケージリードフレーム/マイクロストリップ変換器TX1の上側縁部に位置する。繰り返しになるが、これは、RFの励起がTX1の縁部に可能な限り近くなるのを確実にするためである。
【0030】
[0032]
図2Aは、内部出力整合回路4が、それぞれが配線52a、52bによって内蔵半導体ダイ40a、40bに接続された伝送線路27、28(第1及び第2の伝送線路)を有することを示す。内部出力整合回路4の伝送線路27、28間に接続された第1の領域は、配線55によって出力金属板12に接続されている。第1の領域は、伝送線路28側に配置されている。配線55は、伝送線路27及び28の第1の領域に集中して接合されている。出力金属板12及び第4の伝送線路8bは、増幅器の対象となる信号に対してπ/4ラジアン未満の電気長を有する。例えば、
2GHzの周波数に相当する出力金属板12の長さは、5mmである。その場合、出力金属板12及び第4の伝送線路8bの長さは、20mmである。最終変換器8は、出力金属板12をマイクロストリップラインとして使用することによって短絡し、第3の伝送線路8a及び第4の伝送線路8bを有する。複合パッケージ増幅装置100は、小型の装置を構成する。各伝送線路及び各パターンの例は、銅で作られ、各配線は、金などで作られている。
【0031】
[0033]
図2Bは、それぞれが配線52a、52bによって内蔵半導体ダイ40a、40bに接続された伝送線路27、28を有する内部出力整合回路4を示す。内部出力整合回路4の伝送線路27と28との間に接続された第2の領域は、配線56によって出力金属板12の代わりに出力金属板13に接続されている。第2の領域は、伝送線路27側に配置されている。配線56は、伝送線路27、28の第2の領域に集中して接合されている。出力金属板13及び第4の伝送線路8bは、増幅器の対象となる信号に対してπ/4ラジアン未満の電気長を有する。例えば、
1GHzの周波数に相当する出力金属板13の長さは、
図2Aの出力金属板12の長さよりも長く、20mmである。その場合、出力金属板13及び第4の伝送線路8bの長さは、40mmである。最終変換器8は、出力金属板13をマイクロストリップラインとして使用することによって短絡し、第3の伝送線路8a及び第4の伝送線路8bを有する。複合パッケージ増幅装置100は、小型の装置を構成する。各伝送線路及び各パターンの例は、銅で作られ、各配線は、金などで作られている。
【0032】
[0034]
図3は、
図2Aに示した複合パッケージ増幅器の断面でのドハティ増幅装置の実際の実施態様を示す。複合パッケージ増幅器20は、PCB基板30上に設けられている。PCB基板30の接地パターン60は、ビアホール90によってPCB基板30の接地金属65に電気的及び熱的に接続されている。出力金属板12は、配線55によって、内部出力整合要素4の第1の伝送線路28に接続されている。出力金属板12は、はんだ付けによって最終変換器8の第3の伝送線路8aに接合されている。底板25は、はんだ付けによってPCB基板30の接地パターン60に接合されている。各伝送線路及び各パターンの例は、銅で作られ、各はんだは、金とスズの複合材料で作られ、各配線は、金などで作られている。複合パッケージ増幅器20の底板25と入力金属板11aと出力金属板12とは、樹脂で成形されている。
【0033】
[0035]しかしながら、本発明による半導体装置は、これに限定されるものではなく、様々な半導体装置を含むことができる。例えば、別の実施形態は、前述の実施形態のドハティ増幅装置ではなく、従来の増幅装置である。
【0034】
[0036]本明細書では例示のために本発明の特定の実施形態について説明したが、多くの変更形態又は変形形態が当業者には明らかになるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲内に入るようなそのような変更形態及び変形形態をすべて包含することが意図されている。