(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】官能化された酸化グラフェン硬化性配合物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/02 20060101AFI20240910BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08G59/02
C08F292/00
(21)【出願番号】P 2018223062
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-11-22
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジュンフア・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・イフタイム
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・マシュー・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ルイス・ベイカー・リベスト
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0349440(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1378352(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第106366983(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108795107(CN,A)
【文献】特開2015-040211(JP,A)
【文献】特表2017-532409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0017955(US,A1)
【文献】Grafting of epoxy chains onto graphene oxide for epoxy composites with improved mechanical and thermal properties,Carbon,2013年,Vol.69,p.467-480
【文献】Synthesis and characterrization of Reinforced Acrylate Photosensitive Resin by 2-hydroxyethyl Methacrtlate-Functionalized Graphene Nanosheets for 3D printing,JORNAL OF MATERIALS SCIENCE,2017年,Vol.53,p.1874-1886
【文献】JIN, Fei et al.,Preparation and Characterization of Functionalized Graphene with Glycidyl Methacrylate,Gaodeng xuexiao Huaxue Xuebao,2015年,Vol.36, No.9,p.1713-1718
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 - 59/72
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 246/00
C08F 301/00
C01B 32/00 - 32/991
C08F 251/00 - 283/00
C08F 283/02 - 289/00
C08F 291/00 - 297/08
C09C 1/00 - 3/12
C09D 15/00 - 17/00
B29C 64/00 - 64/40
B29C 67/00 - 67/08
B29C 67/24 - 69/02
B29C 73/00 - 73/34
B29D 1/00 - 29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化された酸化グラフェンを使用して硬化したポリマー樹脂を製造する方法であって、
官能化された酸化グラフェンをポリマー前駆体材料および任意の溶媒と混合して、官能化されたグラフェン溶液を生成することと、
硬化開始剤を前記グラフェン溶液に添加し、混合して、樹脂溶液を生成することと、
配合物を所望の形状に堆積させることであって、射出成形を含む、配合物を所望の形状に堆積させることと、
前記配合物を硬化させて、ベースポリマー材料中に官能化された酸化グラフェン基を有するポリマーを形成することと、を含み、
前記酸化グラフェンの官能基が、エポキシ基を含み、前記ポリマー前駆体材料が、エポキシ材料を含むか、又は、
前記酸化グラフェンの官能基が、ビニル基、アクリレートもしくはメタクリレート基のいずれか1つを含み、
前記酸化グラフェンの官能基がビニル基を含む場合、前記ポリマー前駆体材料はビニル反応性モノマーを含み、
前記酸化グラフェンの官能基がアクリレートまたはメタクリレート基を含む場合、前記ポリマー前駆体材料はアクリレートまたはメタクリレート反応性モノマーを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グラフェンおよび酸化グラフェン粒子は、最大で130,000MPaの引張強度および最大で1000GPaの弾性係数などの優れた機械的特性を有する。この理由から、それらは、ベースポリマー材料をはるかに超える機械的特性を有するポリマー複合体を生成するであろうことを期待して、ポリマー複合体中の充填剤としてかなりの注目を集めている。しかしながら、巨視的に組み立てられた構造へのこれらの特性の転換はまだ実証されていない。分散したグラフェン補強エポキシ複合体構造の典型的な値は、それぞれ、グラフェンのものよりも数桁低い適度の<70MPaの引張強度及び2.5~3.5GPaの弾性係数である[M.A.Rafiee et al.ACS NANO,(2009),3884]。
【0002】
特に、従来のグラフェン充填ポリマー複合体における際立った課題の1つは、同時に増加した弾性率および強度を有する複合体を達成することの困難性である。典型的には、グラフェン粒子の添加は、弾性率によって測定される材料の剛性の増加を容易に達成するが、ベースポリマー材料と比較した場合に複合体の強度を低下させる代償を払う。その結果、そのような複合体は脆い。我々の理解は、2つの主なメカニズムによって強度喪失が起こることである。第1に、粒子凝集、すなわち分散不良、および粒子ポリマー界面の不良は、機械的機能不全が生じる領域を生成する。第2に、硬化中のポリマー鎖の成長は、補強粒子との界面で中断される。より短いポリマー鎖は、一般に、強度が低下したポリマー構造を生成する。この課題に対処するため、2017年8月1日付けの米国特許第9,718,914号は、官能化された反応性グラフェン粒子が、硬化した複合材料に「モノマー」として組み込まれる構造化されたハイブリッド化学連結グラフェン/ポリマーネットワークを開示した。官能化されたグラフェンの誘導化学連結は、無作為に分散した非結合グラフェン粒子複合体と比較した場合に強化された機械的強度を有する織り炭素繊維に類似する組織化構造の現場構築を可能にする。
【0003】
しかしながら、更に増加した機械的特性を有するグラフェン/ポリマー複合体の作製を防止する際立った課題は、ポリマーベース材料への官能化されたグラフェンの不十分な分散性に留まっている。これは、制限された達成可能な機械的特性の正味の結果で配合物へのグラフェン粒子の濃度を制限する。GOは、有機ポリマー配合物中に分散させることが難しいことで有名である。GOの化学的特質はポリマー前駆体とは異なるので、GO粒子はポリマーマトリックス中に凝集し、不良品質の複合体を生成する。この問題に対する現在の解決策は、GOおよびポリマー前駆体の両方を可溶化する溶媒を使用することにある。しかしながら、溶媒の選択は非常に限定されており、そのプロセスはエネルギーを大量に消費し、時間がかかり、多量の溶媒を使用する。
【0004】
ポリマー中に高濃度のGOを分散させることは非常に困難になる。典型的なGO配合物は、最大で5%のGOを組み込む。より高い濃度のGOを充填すると典型的には、向上した機械的特性をもたらさず、いくつかの場合では、GO粒子の凝集のために特性が低下する。顕著に高い機械的特性を有するグラフェン/ポリマー複合体は、高含有量で分散した剥離されたグラファイトポリマー複合体を用いて達成され得る。
【0005】
そのため、高含有量のグラフェン/ポリマー複合体を可能にするためにポリマーベース材料に容易に分散され、それと高い相溶性を有する剥離された官能化されたGO粒子を生成する方法の必要性が存在する。
【0006】
一実施形態は、官能化された酸化グラフェンを使用して硬化したポリマー樹脂を製造する方法であって、官能化された酸化グラフェンを樹脂前駆体および任意の溶媒と混合して、官能化されたグラフェン溶液を生成することであって、粒子が、ポリマー前駆体材料とほぼ同一、または同一の官能基を含有する、生成することと、硬化開始剤を樹脂溶液に添加し、混合して、樹脂溶液を生成することと、配合物を所望の形状に堆積させることと、配合物を硬化させて、ベースポリマー材料中に官能化された酸化グラフェン基を有するポリマーを形成することと、を含む、方法である。
【0007】
一実施形態は、官能化された酸化グラフェンを生成する方法であって、酸化グラフェンを溶媒に分散させて、分散した酸化グラフェンを生成させることと、分散した酸化グラフェンを、少なくとも1つのエポキシ官能基と、ビニル、アクリレート、メタクリレート、およびエポキシから選択される第2の官能基とを含有する反応性分子と混合して、溶液を形成することと、活性化剤を添加することと、溶液を加熱および撹拌することと、溶液を冷却することと、溶液から粒子を分離することと、粒子を乾燥させて、官能化された酸化グラフェンを生成することとを、含む、方法である。
【0008】
一実施形態は、剥離され、官能化された酸化グラフェン粒子と、硬化開始剤と、ポリマー前駆体材料とを含む物質の組成物であって、粒子が、ポリマー前駆体材料とほぼ同一、または同一の官能基を含有する、組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エポキシカップリング官能性分子を使用して官能化された酸化グラフェンを合成する方法の実施形態の図を示している。
【
図2】ポリマー前駆体のための官能性分子の実施形態の図を示している。図中の円で囲まれた領域は、官能化された酸化グラフェン粒子の化学結合に利用可能な官能基を表している。
【
図3】官能化された酸化グラフェンを生成する方法の実施形態のフローチャートを示している。
【
図4】エポキシ官能化された酸化グラフェンのFT-IRスペクトル特性化のグラフを示している。
【
図5】エポキシ官能化された酸化グラフェンの熱重量分析のグラフを示している。
【
図6】官能化された酸化グラフェン配合物を使用して硬化されたエポキシ独立型フィルムを生成する方法の実施形態のフローチャートを示している。
【
図7】エポキシ官能化された酸化グラフェンのレオロジー結果のグラフを示している。
【
図8】ポキシ酸化グラフェンの示差走査熱量分析のグラフを示している。
【
図9】ポキシ官能化された酸化グラフェンと官能化されていない原料グラフェンとの間の、エポキシ/グラフェン配合物の機械的特性のグラフ比較を示している。
【0010】
本明細書の実施形態は、剥離され、官能化された酸化グラフェン粒子と、硬化開始剤と、ポリマー前駆体と、を有する新規な硬化性配合物を提供し、その酸化グラフェン粒子は、前駆体ポリマー材料と高度に同一の官能基を含有する。酸化グラフェン粒子上に結合した官能基の同一の化学的特質のため、官能化された酸化グラフェン粒子は、ポリマー前駆体中に高濃度で容易に分散し、高度に分散した高グラフェン含有量の硬化した構造を生成する。典型的には、官能化された酸化グラフェン粒子は、酸化グラフェン上に存在するカルボキシルおよびヒドロキシル基を、グラフェン/ポリマー複合体配合物に使用されるポリマーマトリックス前駆体と化学的特質が同様の官能基を含有するエポキシ試薬と反応させることに起因する。
【0011】
図1は、官能化された酸化グラフェン粒子の作製のためのプロセスのグラフ表示を示している。酸化グラフェン10は、エポキシ試薬を使用して12などのエポキシ基の間の結合を受ける。次いで、官能化された酸化グラフェン粒子が使用されて、高濃度で高度に分散した酸化グラフェンを、適用および硬化が容易なポリマー前駆体配合物に作製する。エポキシ官能化された酸化グラフェン14は、Xとして図に示される官能基を有する。X基は、ポリマー前駆体中に高濃度で高度に分散した酸化グラフェンを含有する配合物の作製を可能にする。官能化された酸化グラフェン粒子を0.1%~約80%の範囲で含まれる濃度で有する配合物が達成され得る。特に、20%よりも高い濃度が達成可能である。
【0012】
官能化されていないGOと比較した場合の官能化された酸化グラフェン(FGO)の別の利点は、より高い硬化度および硬化のためのより低い活性化エネルギーである。FGO上に存在する官能基は、ベース材料中の反応性前駆体のものと同一であり、それらはポリマー前駆体と同時に硬化する。これは、ポリマー前駆体リンカーによって結合した化学結合したGOネットワークのネットワークの迅速な作製を可能にする。
【0013】
X基は、ポリマー前駆体ベース材料と同様の化学的特質を有する任意の基からなり得る。例えば、ポリマー前駆体がエポキシ材料からなる場合、それはエポキシ基からなり得る。前駆体がビニルモノマーである場合、それはまた、ビニル基などのラジカル重合性材料からなり得る。硬化したアクリルまたはメタクリル複合体を作製する場合、それはまた、アクリレートまたはメタクリレートからなり得る。
図2は、可能なX基のいくつかの例を示している。エポキシモノマー前駆体の好適な例には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび類似体などの2官能性エポキシが含まれる。
図2中の記載によれば、エポキシ基のうちの1つは、酸化グラフェンに結合するために使用され、2番目のものは、X=エポキシ基である。エポキシ系は、1成分エポキシ系としてまたは2部分(エポキシ+硬化剤)系としてのいずれかで使用され得る。
【0014】
エポキシ官能化された粒子(X=エポキシ)が、エポキシ前駆体、1-エチル-3-メチルイミダゾリニウムジシアナミドを含むイオン液体などの架橋触媒、および必要に応じて意図される用途のための任意の他の添加剤を含有する1成分エポキシ系。慣用の2部分エポキシ接着剤は、部分A、エポキシ前駆体材料、および部分B、硬化剤からなる。硬化剤は概して多官能性有機アミンである。ビニルモノマーの好適な例には、スチレン、ジビニルベンゼン、および類似体が含まれる。好適なアクリレートおよびメタクリレートの例には、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、および類似体が含まれる。
【0015】
好適なエポキシ-X試薬12は、1つ以上のX基を含有し得る。例えば、X=エポキシの場合、3官能性エポキシ試薬は、1つの結合しているエポキシ基と、エポキシ(同様の構造)前駆体材料中に分散されたときに架橋のために次の段階で使用される2つのX=エポキシ基を有する。
【0016】
図3は、官能化された酸化グラフェンを生成するプロセスの一般化された例を示している。20では、官能化されていない酸化グラフェンは溶媒中に分散される。酸化グラフェンの分散性は、高せん断ホモジナイザー、ボールミル、および超音波処理機を含む高せん断混合装置の使用によって増加する。次いで、エポキシ官能性分子が22で混合物に添加される。活性化剤または他の試薬が同様に添加され得る。次いで、溶液は、撹拌にとってより好適な容器に移され、24で撹拌および加熱を受ける。次いで、26で溶液は室温に冷却され、次いで、それは28で溶媒での洗浄および濾過を受けて、粒子を溶媒から分離する。分離された粒子が29で乾燥されると、エポキシ官能化された酸化グラフェン(エポキシFGO)が得られる。好適な活性化剤は、例えば、Ca(OH)
2、NaOH、KOHなどの有機塩基、ピリジン、イソキノリン、第4級アンモニウムなどの有機塩基、または酸化バリウム、オクタン酸コバルト、ナフテン酸マンガンなどの金属塩中にある。
【0017】
硬化開始剤の選択は、酸化グラフェン粒子上に存在するポリマー前駆体および官能基の種類によって決定される。
【0018】
重合または硬化性基がエポキシ基である一実施形態では、硬化開始剤は、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジカンジアミド、有機-酸ヒドラジドなどのような熱、光、圧力などによって引き起こされる硬化が開始する潜在性硬化剤、ジエチレントリアミン、N-アミノエチルピペラジン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ポリアミド樹脂、ピペリジンなどのようなアミン、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのようなイミダゾール、または1-エチル-3-メチルイミダゾリニウムジシアナミド(イオン液体)などのようなそれらの誘導体であり得る。
【0019】
別の実施形態では、重合性基がビニル、アクリレート、およびメタクリレートモノマーを含む場合、硬化開始剤はラジカル開始剤である。ラジカル開始剤は、加熱すると反応性ラジカルを生成する熱ラジカル開始剤のいずれかであり得る。好適な例には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および類似体などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド(BPO)などの有機ペルオキシドが含まれる。
【0020】
図6は、ドクターブレードアプローチによって、官能化された酸化グラフェンを使用して独立型の硬化したポリマー樹脂を生成するプロセスの一般化された例を示している。
【0021】
異なる実施形態では、官能化された酸化グラフェンを含有する硬化したポリマー樹脂は、配合物を所望の形状に堆積させ、成形された配合物を硬化して、ベースポリマー材料中に官能化された酸化グラフェン基を有する複合体を形成することによって作製される。この堆積を達成するのに好適なプロセスは射出成形である。
【0022】
更に異なる実施形態では、官能化された酸化グラフェンを含有する硬化したポリマー樹脂は、3D印刷された物品を生成するために、ノズルを介した押出、多層押出ラインの製作によって作製される。
【0023】
実施例1
特定の例では、0.5gのGOを浴超音波処理により150mlのジメチルホルムアミド(DMF)中に分散させる。次いで、30gのEPON(商標)826(低粘度、淡色の液体ビスフェノールA系エポキシ樹脂)、および150mgの水酸化カルシウムCa(OH)2を溶液中に撹拌した。次いで、溶液を還流凝縮器を備えた丸底フラスコに移し、125℃で12時間加熱および撹拌した。溶液の色は褐色から黒色に変わる。溶液が冷めた後、溶液は、DMFおよびアセトンで3回の洗浄および濾過を受ける。次いで、得られた粉末を真空下で125℃で一晩乾燥させる。
【0024】
エポキシFGOのエポキシ官能基の組み込みは、フーリエ変換赤外スペクトル(FT-IR)スペクトルによって実証された。エポキシFGOは、カルボキシルおよびヒドロキシル基とエポキシ基との間の反応を介してGOおよびEPON(商標)826から合成されたので、1650および3000~3500 1/cm(-OH)および1387 1/cm(O-C=OまたはC-O-H)における減少したピーク強度および1184 1/cm(C-O-C)における増加するピーク強度は、エポキシ官能基の取り込みを実証している。これは
図4に示されている。
【0025】
エポキシFGOの組成は、
図5に示される熱重量分析(TGA)によって調べた。GOは、約300℃まで加熱されると酸素基を喪失することによって分解する。エポキシFGOの場合、未反応の酸素基によっておよそ10重量%が構成されている。EPON(商標)826は、300℃~750℃が含まれる温度範囲で重量を喪失する。
図5に見られるように、エポキシFGOは、エポキシFGOのおよそ30重量%がこの温度範囲で重量を喪失する。このことは、エポキシFGOが、およそ30重量%の官能性分子を含有することを示している。
【0026】
エポキシFGOが生成されると、それを使用して硬化した樹脂フィルムまたはコーティング生成物を生成し得る。
図6は、プロセスの一実施形態を示している。40において、エポキシFGOは、樹脂前駆体および任意の溶媒と混合される。Xがエポキシ基である場合のアニオン性液体などの硬化開始剤が42で添加される。次いでこの溶液を混合し、任意に真空下に置き、気泡を除去する。次いでプロセスは、44においてドクターブレードなどを用いて基材をコーティングする。次いで、46においてこのコーティングされた基材を硬化させ、48においてコーティングされた材料を基材から剥離した。
【0027】
実施例2
EPON(商標)826を、エポキシ官能化されたGO(FGO)と、15重量%のナノクレイおよび5重量%のジメチルメチルホスホネート(DMMP)と異なる濃度で混合した。次に、硬化開始剤、この場合は1-エチル-3-メチルイミダゾリニウムジシアナミドを5重量%添加し、真空下でプラネタリーミキサーで混合した。次いで、この溶液をTeflon(登録商標)でコーティングされたアルミナ基材からなる基材上にドクターブレードした。次いで、コーティングされた基材を100℃で15時間および220℃で2時間硬化させた。硬化した材料を基材から剥離し、引張強度試験のために切断した。
【0028】
比較例3
非官能性グラフェンナノプレートレット(GNP)を用いて同様の硬化配合物を作製した。
【0029】
デジタル製造などの多くの用途の場合、印刷された材料は、それが硬化するまで、堆積直後にその形状を維持しなければならない。これは、配合物が形状を保持するのに十分に高い粘度である一方で、チキソトロピー性を有するか、またはずり減粘(shear thinning)であることで、印刷プロセス中に押出することが可能であることを必要とする。
図7におけるレオロジー試験の結果から、15重量%のナノクレイおよび5重量%のDMMPに加えて、およそ15重量%の充填剤を含有する全ての樹脂は、チキソトロピープ挙動を示す。
【0030】
対照試料は、15重量%のナノクレイおよび5重量%のDMMPを除き、充填剤を有しない同じ配合物から作製された。比較のために、GOおよびGNPも充填剤として使用して、官能化の利点を実証する。最も顕著なことに、試験された他の充填剤の全てと比較した場合、エポキシFGOを有する配合物は、高いおよび低いせん断速度で最も大きな粘度差を有する。この性能は、同様の化学的特質のために、エポキシFGOとエポキシモノマーとの間の良好な相互作用によって説明され得る。この機能は、ここで試験した他の充填剤では入手可能ではない。
【0031】
示差走査熱量測定(DSC)は樹脂の硬化動態を調査した。硬化の熱は、エポキシの硬化の程度に直接関係する。硬化熱が高いほど、活性化エネルギーが低くなり、硬化の程度度が高くなり、硬化したエポキシが強くなる。この実験は、5℃/分の加熱速度で硬化熱を得た。各試料の活性化エネルギーは、Kissingerモデル[Wei,J.,Zhang,X.,Qiu,J.and Weeks,B.L.(2015)、Thermal kinetics and thermo-mechanical properties of graphene integrated fluoroelastomer.J.Polym.Sci.Part B:Polym.Phys.,53:1691-1700.doi:10.1002/polb.23890]に従って、5℃/分~20℃/分の異なる加熱速度で4つのDSC加熱スイープからのピーク温度によって計算した。15重量%エポキシFGO、15重量%GNPおよび15重量%GOの対照のための硬化および活性化エネルギーの熱の概要を表1に示す。この実施例は、官能性配合物が活性化エネルギーを低下させることによって硬化を加速させる一方で、官能化されていないか、またはランダムに官能化されたグラフェンは、FGO粒子を含有しない対照粒子と比較して増加した活性化エネルギーのため、重合プロセスを遅延させることを実証した。結果として、より多くの熱が硬化を終了させるのに必要であり、これはより高い程度の硬化および架橋を示している。
【0032】
【0033】
このプロセスは、官能基の従来のグラフェン分散エポキシ材料と比較した場合、高重量濃度の分散性粒子を有する配合物を可能にする。この配合物は樹脂押出可能であり、機械的に補強されたポリマー複合体をもたらし、引張強度を犠牲にすることなくヤング率を増加させ、高濃度の粒子で高い柔軟性を有する。
【0034】
引張試験は、硬化した粒子-樹脂配合物の機械的特性を得た。非官能性グラフェンとしてエポキシFGOおよびGNPを異なる濃度で有する硬化した樹脂を試験し、比較した。
図9は、左にヤング率および右に引張強度を示している。要約すると、結果は以下の通りである。
【0035】
予想されたように、粒子フィルターの添加は、左に示されるように、全ての場合でベースエポキシ材料のヤング率を増加させた。しかしながら、エポキシFGOで得られた強化は、官能化されていないグラフェン(GNP)によって生成されたもののおよそ2倍高い。この結果は、エポキシFGOのより良好な剥離、化学的に結合した酸化グラフェンネットワークの形成、およびGNP充填剤と比較してより高い硬化度に起因し得る。
【0036】
エポキシFGOの増加した濃度は、ベースエポキシ材料(粒子が全くない)と比較した場合に約30%の増加した引張強度をもたらした。著しく対照的に、官能化されていないグラフェン(GNP)を有する配合物は、粒子充填ポリマー複合体で一般に見出される典型的な傾向、すなわち、
図9の右で見られるように、充填剤の濃度が増加するにつれて、引張強度の険しい減少(GNP濃度が0%から25%に上昇した場合におよそ5倍の減少)を示した。
【0037】
引張強度は、殆ど単独で充填剤粒子とエポキシ材料との間の相互作用に依存する。相互作用が弱いと、GNPの場合と同様に、粒子の凝集のために、より高い濃度の分散を達成することができない。凝集した粒子は核として作用し、成長して、応力下で破砕する。エポキシFGOの場合、化学結合による充填剤強化相互作用は引張強度を増加させる。エポキシFGOとエポキシモノマーとの良好な相互作用からの結果の1つとして、硬化した複合体は、硬化したエポキシの柔軟性を受け継ぐが、
図9に示されるように、ヤング率の3倍を超える増加を伴う。
【0038】
上記で開示された変形物および他の特徴および機能、またはその代替物は、多くの他の異なるシステムまたは用途に組み合わされ得ることが理解されよう。現在不測の、または予期されていない様々な代替物、変更、変形、または改良が、当業者によってその後なされ得、以下の特許請求の範囲に包含されることも意図される。