(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ポリマー組成物、その製造方法、その使用、及び前記ポリマー組成物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/06 20060101AFI20240910BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240910BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L33/06
C08K3/013
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2018563541
(86)(22)【出願日】2017-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2017063844
(87)【国際公開番号】W WO2017211889
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-25
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハッジ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ピリ, ホザンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルモゲン, アレクサンドル
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】藤井 勲
【審判官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0305862(US,A1)
【文献】特表2009-526886(JP,A)
【文献】特表2017-511422(JP,A)
【文献】国際公開第2015/160579(WO,A1)
【文献】特開2001-270052(JP,A)
【文献】特開2002-146197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00- 33/26
C08K 3/013
C08L101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)29重量%以上及び60重量%以下の無機鉱物系コンパウンド(F)であって、無機充填材(F1)及び流動化助剤(F2)から成り、(F1)/(F2)の重量比が少なくとも5/1である、無機鉱物系コンパウンド(F)、
b)40重量%以上及び71重量%以下のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)であって、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(L1)を含む少なくとも1つの層(IM1L1)と、45℃超のガラス転移温度を有するポリマー(L2)を含む少なくとも別の層(IM1L2)とを含む多層構造を有するポリマー粒子である、ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、
2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になること、多段ポリマーにおける層(IM1L1)/層(IM1L2)の重量比が
88/
12超及び97/3未満であること、並びに1μm超及び500μm未満の体積メジアン粒径D50を有する粉末形態であることを特徴とする、ポリマー組成物P1。
【請求項2】
a)31重量%超及び59重量%未満の無機コンパウンド(F)、
b)41重量%超及び69重量%未満のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a)42重量%超及び47重量%未満の無機コンパウンド(F)、
b)53重量%超及び58重量%未満のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
より多量のポリマー組成物P1から採取した0.1重量%の少量の試料が、2種の各成分a)及びb)の重量比について、組成物P1全体に対して30%未満の差異を有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
多段ポリマーにおける層(IM1L1)/層(IM1L2)の重量比が、89/11超及び96/4未満の範囲にある、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
多段ポリマーにおける層(IM1L1)/層(IM1L2)の重量比が、少なくと
も89/11である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(L1)が、アルキルアクリレートからのモノマーを少なくとも50重量%含む(メタ)アクリルポリマーである、請求項1から
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
無機鉱物系充填材(F)の少なくとも一部が、炭酸カルシウム、か焼された粘土、シリカ(フュームドシリカ若しくは沈降シリカ)、粘土、モンモリロナイト(ナノクレイ)、ゼオライト又はパーライト、二酸化チタンから選択される鉱物系充填材である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の
、ポリマー組成物P1を含むポリマー組成物P2の製造方法であって、
ポリマー組成物P2が、
d)熱可塑性ポリマーTP1
も含み、
組成物P1と熱可塑性ポリマーTP1とをブレンドする工程
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
熱可塑性ポリマーTP1のコーナー溶着強度を向上させるための、請求項1から
8のいずれか一項に記載
の組成物の使用。
【請求項11】
ポリマー組成物P1及び熱可塑性ポリマーTP1を含むポリマー組成物P2を加工するための、請求項1から
8のいずれか一項に記載
の組成物の使用。
【請求項12】
異形材、管、サイディング、発泡体、フィルム、シート、床材用のフィルム又はシートであることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリマー組成物P1を含むポリマー組成物P2を含む物品
であって、
前記ポリマー組成物P2が熱可塑性ポリマーTP1も含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性改良剤及び無機充填材を含むポリマー組成物、並びにその製造方法及び使用に関する。
【0002】
本発明は具体的には、耐衝撃性改良剤及び無機充填材を含むポリマー組成物、並びに熱可塑性ポリマーのための、その使用に関する。
【0003】
本発明はより具体的には、耐衝撃性改良剤及び無機充填材を含むポリマー組成物の製造方法、並びに熱可塑性ポリマーの耐衝撃性を変えるための、その使用に関する。
【0004】
熱可塑性ポリマー組成物全般、特にハロゲン化されたポリマー組成物においては、多くの種類の添加剤及び充填材が、とりわけ様々な理由で用いられる。これらは、組成物を増量し、剛性及び強度を向上させ、サイクル時間を短縮することができる。これらはダイでの障害を防止し、生成物の分解を緩和する。充填材は、色、不透明度及び伝導性を加えるためにも使用でき、あるいは充填材は、調製物のその他の成分よりも安価なため、組成物のコストを低下させる低コスト材料としても使用できる。
【0005】
しかしながら、添加剤及び充填材を熱可塑性ポリマーに添加すると、特に複数のものを同時に、又は添加剤の混合物を添加する場合、熱可塑性ポリマー組成物の特性を悪い方向に変えてしまうこと、つまり、特定の特徴又は性質が失われるか、又は著しく低下することがある。
【0006】
特定の特徴を有するポリマーを含むポリマー組成物(例えば幾つかの特徴を例示するとすれば、ポリマー組成、ガラス転移温度又は構造)も、熱可塑性ポリマー組成物一般のための添加剤として、またハロゲン化ポリマー組成物において、組成物の耐衝撃性、又はこれらの様々なポリマー若しくはプラスチック樹脂から作製された物体の耐衝撃性を改善するために、使用される。よってこれらの添加剤は、耐衝撃性改良剤とも呼ばれる。
【0007】
添加剤のポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー組成物全般、特にハロゲン化ポリマー組成物と、相溶性である。
【0008】
その後、添加剤を含む熱可塑性ポリマー全般、特にハロゲン化ポリマー組成物は、加工及び/又は変形される。
【0009】
加工され、変形された組成物は、ポリマー物品で作製されるか、又は物品におけるポリマー部分として使用される。
【0010】
本発明の目的は、熱可塑性ポリマーに添加剤として添加可能なポリマー組成物を提案することである。
【0011】
本発明の目的はまた、熱可塑性ポリマーの耐衝撃性を向上させるために使用可能なポリマー組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的はまた、押出成形された熱可塑性ポリマーの性能を向上させるために使用可能なポリマー組成物を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、低コストの成分を添加することにより、熱可塑性ポリマー組成物の性能に否定的な影響を与えることなく、熱可塑性ポリマー組成物にとって耐衝撃性改良剤として作用するポリマー組成物の価格を下げることである。
【0014】
米国特許出願第2009/0111915号は、高度に充填された組成物で使用するためのアクリルコポリマーを開示している。この文献は特に、70重量%~95重量%までの充填材、1重量%~15重量%までのPVC、0.5重量%~4重量%までのアクリルコポリマーを含有する、床材用の組成物としての充填ポリビニルクロリド(PVC)材料、又は15重量%~35重量%までの充填剤、50重量%~95重量%までのPVC、及び0.25重量%~6重量%までのアクリルコポリマーを含有する、サイディング用若しくはパイプ用の組成物を開示している。
【0015】
国際公開第2010/099160号は、複合型のポリマー改良剤を開示している。この文献は、99重量%~1重量%までの無機充填材、及び1重量%~99重量%までのポリマー加工助剤、及び0重量%~80重量%までの耐衝撃性改良剤から成る複合型ポリマー改良剤を開示している。この耐衝撃性改良剤は任意だが、幾つかの実施例で使用されている。この文献は、特定の耐衝撃性改良剤について、何ら特定の利点を開示していない。
【0016】
国際公開第2007/093565号は、耐衝撃性改良剤と無機充填材とを含有するハイブリッド型耐衝撃性改良剤を開示している。この文献は、粉末組成物にわたって異なる成分の分離を解決しようと試みており、3~20重量%の無機充填材を開示及び特許請求している。
【0017】
従来技術文献のいずれも、本発明のような特定の組成を開示していない。
【0018】
意外なことに、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計で100重量%になるポリマー組成物P1は、熱可塑性ポリマーの耐衝撃性を向上させるとともに、なおも許容可能な融解時間を有し、高速加工の冷却の間に、より良好に熱を消失させることが判明した。
【0019】
また意外なことに、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になるポリマー組成物P1の製造方法であって、
2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、成分b)、及びコンパウンドa)の少なくとも83.33重量%は、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程
を含むことを特徴とする製造方法は、
熱可塑性ポリマーの耐衝撃性を向上させるとともに、なおも許容可能な融解時間を有し、高速加工の冷却の間に、より良好に熱を消失させることが判明した。
【0020】
また意外なことに、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になるポリマー組成物P1の製造方法であって、
i)2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、成分b)、及びコンパウンドa)の少なくとも83.33重量%は、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程、
ii)工程i)で得られたブレンドを乾燥させる工程
を含むことを特徴とする製造方法は、
熱可塑性ポリマーの耐衝撃性を向上させるとともに、なおも許容可能な融解時間を有し、高速加工の冷却の間に、より良好に熱を消失させることが判明した。
【0021】
また意外なことに、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になるポリマー組成物P1は、熱可塑性ポリマーの耐衝撃性及びコーナー溶着強度を向上させるために使用することができることが判明した。
【0022】
第一の態様によれば、本発明は
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、
2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になることを特徴とする、ポリマー組成物P1に関する。
【0023】
第二の態様によれば、本発明は
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
前記無機コンパウンド(F)が、無機充填材(F1)及び流動化助剤(F2)から成り、(F1)/(F2)の重量比が少なくとも5/1であり、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、
2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になることを特徴とする、ポリマー組成物P1に関する。
【0024】
第三の態様において本発明は、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になるポリマー組成物P1の製造方法であって、
2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、成分b)、及びコンパウンドa)の少なくとも83.33重量%は、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程
を含むことを特徴とする製造方法に関する。
【0025】
第四の態様において本発明は、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
前記無機コンパウンド(F)が、無機充填材(F1)及び流動化助剤(F2)から成り、(F1)/(F2)の重量比が少なくとも5/1であり、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、
2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になる、ポリマー組成物P1の製造方法に関し、本方法は、
2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、成分b)、及び無機充填材(F1)が、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程
を含むことを特徴とする。
【0026】
第五の態様において本発明は、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になる、ポリマー組成物P1の製造方法に関し、本方法は、
i)2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、成分b)、及びコンパウンドa)の少なくとも83.33重量%は、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程、
ii)工程i)で得られたブレンドを乾燥させる工程
を含むことを特徴とする。
【0027】
第六の態様において本発明は、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
前記無機コンパウンド(F)が、無機充填材(F1)及び流動化助剤(F2)から成り、(F1)/(F2)の重量比が少なくとも5/1であり、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になる、ポリマー組成物P1の製造方法に関し、本方法は、
i)成分a)及びb)をブレンドする工程であって、成分b)、及び無機充填材(F1)が、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である、工程
ii)工程i)で得られたブレンドを乾燥させる工程
を含むことを特徴とする。
【0028】
第七の態様において本発明は、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、
2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になるポリマー組成物P1を含む、ポリマー組成物P2の製造方法に関し、ポリマー組成物P2は、
d)熱可塑性ポリマーTP1
も含み、
本方法は、
組成物P1と熱可塑性ポリマーTP1とをブレンドする工程
を含むことを特徴とする。
【0029】
第八の態様において本発明は、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、
2種の成分a)及びb)が合計で100重量%になるポリマー組成物P1の使用であって、ポリマー組成物P1を含む熱可塑性ポリマーTP1のコーナー溶着強度を向上させるための、使用に関する。
【0030】
ここで使用する「ポリマー組成物」という用語は、組成物が、少なくとも40重量%のポリマーから構成されることを言う。
【0031】
ここで使用する「コポリマー」という用語は、ポリマーが、少なくとも2種の異なるモノマーから構成されることを言う。
【0032】
モノマーとの組み合わせで使用する「(メタ)アクリル」という用語は、あらゆる種類のアクリルモノマー及びメタクリルモノマーを言う。
【0033】
ここで使用する「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、(メタ)アクリルポリマーが、(メタ)アクリルポリマーの50重量%以上を占める(メタ)アクリルモノマーを必須で含むポリマーを言う。
【0034】
ここで使用する「ポリマー粉末」という用語は、ナノメータ範囲にある粒子を含む一次ポリマーのアグロメレート化によって得られる、少なくとも1マイクロメータ(μm)の範囲にある粉末顆粒を有するポリマーを言う。
【0035】
ここで使用する「一次粒径」という用語は、ナノメータ範囲にある粒子を含む球形状ポリマーを言う。一次粒子は好ましくは、20nm~500nmの重量平均粒径を有する。
【0036】
ここで使用する「多段ポリマー」とは、多段階重合法によって連続的に形成されたポリマーを言う。好ましいのは、多段階エマルション重合法であり、この方法では、第一のポリマーが第一段階ポリマーであり、第二のポリマーが第二段階ポリマーである。すなわち第二のポリマーは、第一のエマルションポリマーの存在下でのエマルション重合によって形成される。
【0037】
ここで使用する「分散体」という用語は、連続的な液相と、この連続相にわたって分布した非連続的な固相とを有する、コロイド系を言う。
【0038】
ここで使用する「エマルション」という用語は、液状の非連続相を液状の連続相に入れた液/液混合物を言う。
【0039】
ここで使用する「PVC」という用語は、塩化ビニルを少なくとも50重量%含むホモポリマー又はコポリマーの形態にある、ポリビニルクロリドと理解される。
【0040】
ここで使用する「充填材」という用語は、特性を強化する、かつ/又はコストを削減するために、ポリマーに添加される固体の増量剤と理解される。
【0041】
ここで使用する「流動化助剤」という用語は、ケーキング防止剤と理解され、これによって粉末の良好な流動性が可能になり、ケーキングが回避できる。
【0042】
「phr」という略語は、樹脂100部あたりの部を意味する。例えば、PVC調製物において充填材15phrとは、PVC100kgに対して充填材が15kg添加されたことを意味する。
【0043】
ここで使用する「2種の成分a)及びb)が、合計して100重量%になる」ということは、2種の成分a)及びb)の比率が、これら2種の成分の合計のみから計算されることを意味する。a)及びb)以外にさらに別の成分がある場合、この別の成分は、これら2種間の重量比の計算については、考慮しない。
【0044】
本発明においてxからyまでの範囲とは、この範囲の上限及び下限が含まれることを意味し、少なくともxからyまでということである。
【0045】
本発明においてx~yとは、この範囲の上限及び下限が含まれないことを意味し、x超からy未満ということである。
【0046】
本発明のポリマー組成物P1
本発明のポリマー組成物P1は、少なくとも2種の成分:a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤を含む。
【0047】
成分b)は、幾つかのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)~(IMx)の混合物であってもよい。この場合、ポリマー組成物におけるポリマーの耐衝撃性改良剤それぞれの合計は、40重量%から71重量%までである。ポリマーの耐衝撃性改良剤はそれぞれ、固有の異なる特性、例えば組成又は形状を有する。
【0048】
無機コンパウンド(F)は、無機充填材(F1)及び流動化助剤(F2)から成り、(F1)/(F2)の重量比は、少なくとも5/1である。
【0049】
ポリマー組成物P1は好ましくは、a)29重量%~60重量%の無機コンパウンド(F)、及びb)40重量%~71重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含む。
【0050】
本発明のポリマー組成物P1はより好ましくは、a)31重量%~59重量%の無機コンパウンド(F)、及びb)41重量%~69重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含む。本発明の組成物P1はさらにより好ましくは、a)33重量%~58重量%の無機コンパウンド(F)、及びb)42重量%~67重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含み、本発明の組成物はさらになお好ましくは、a)35重量%~55重量%の無機コンパウンド(F)、及びb)45重量%~65重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含む。
【0051】
本発明の組成物P1は有利には、a)40重量%~55重量%の無機コンパウンド(F)、及びb)45重量%~60重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含み、より有利には、a)40重量%~54重量%の無機コンパウンド(F)、及びb)46重量%~60重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含み、最も有利には、a)40重量%~52重量%の無機コンパウンド(F)、及びb)48重量%~60重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含む。
【0052】
1つの特定の実施態様において、本発明のポリマー組成物P1は、a)42重量%~47重量%の無機コンパウンド(F)、及びb)53重量%~58重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含む。
【0053】
本発明によるポリマー組成物P1は好ましくは、2種の成分を含む粉末の形態である。この粉末は、2種の成分がアグリゲート化した粒子の顆粒から構成される。これらの粒子は、一次粒子である。
【0054】
本発明のポリマー粉末
本発明のポリマー粉末は、体積メジアン粒径D50が、1μm~500μmである。ポリマー粉末の体積メジアン粒径は好ましくは、10μm~450μmであり、より好ましくは15μm~400μm、有利には20μm~350μmである。
【0055】
体積での粒径分布D10は、少なくとも7μm、好ましくは10μmである。
【0056】
体積での粒径分布D90は、最大800μm、好ましくは最大500μmである。
【0057】
本発明による粉末は、2種の成分に関する組成物という観点で均質である。
【0058】
本発明において均質とは、組成物全体にわたって著しい差異が無いことを意味する。比較的多量(1kg)の組成物から1つの、又は幾つかの少量の試料(1g又はそれ未満)を採取した場合、その他の少量の試料及び組成物P1全体と比較しても、少量の試料における2種の成分それぞれの重量比について、組成物に著しい差異は無い。少量の試料とは、ポリマー組成物の0.1重量%、又はそれ未満を意味する。著しい差異が無いとは、その差異が、組成物全体に対して30%未満であることを意味する。一例として、組成物P1全体が40重量%の無機コンパウンド(F)、及び60重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含む場合、組成物全体から採取した少量の第一の試料は、35重量%の無機コンパウンド(F)、及び65重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含むか、又は組成物全体から採取した少量の第二の試料は、42重量%の無機コンパウンド(F)、及び58重量%のポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を含み、均質な組成物を表す。それと言うのも、少量の試料にわたる各成分の比率の差異は、試料の組成物全体について、30%以内にあるからである。
【0059】
組成物における成分の差異は、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満である。
【0060】
理想的な場合、粉末粒子又は顆粒はそれぞれ、2種の成分a)及びb)を全て含み、これら2種の成分がアグリゲート化した粒子から構成される。単独の粉末粒子又は顆粒における2種の成分の重量比の差異は、先に記載した少量の試料における差異よりも、より大きいことがあり得る。
【0061】
本発明によるポリマー組成物P1は、粉末形態であるのが好ましく、より好ましくは、乾燥粉末である。乾燥とは、粉末が特定の最大湿潤レベルを有することを意味する。
【0062】
本発明による粉末形態の乾燥ポリマー組成物P1は、湿潤度が3重量%未満、好ましくは湿潤度が1.5重量%未満、より好ましくは湿潤度が1.2重量%未満である。ポリマー組成物の湿潤度は、熱天秤によって測定できる。
【0063】
本発明による粉末形態の乾燥したポリマー組成物P1はさらに、流動化助剤(F2)を含むことができる。流動化助剤(F2)は好ましくは、無機化合物である。よって流動化助剤(F2)は、組成物(P1)の無機コンパウンド(F)の一部である。無機コンパウンド(F)は、流動化助剤(F2)及び無機充填材(F1)から成る:(F)=(F1)+(F2)。流動化助剤(F2)の量は、ポリマー組成物P1において、無機充填材(F1)よりもずっと少ない。(F1)の量は、(F2)の量よりも少なくとも5倍多い。
【0064】
ポリマー組成物P1の密度は、少なくとも1.25g/cm3、好ましくは少なくとも1.3g/cm3、より好ましくは少なくとも1.33g/cm3である。
【0065】
ポリマー組成物P1の密度は、最大1.75g/cm3、好ましくは最大1.7g/cm3、より好ましくは最大1.67g/cm3である。
【0066】
ポリマー組成物P1の密度は有利には、1.25g/cm3~1.75g/cm3、より有利には1.3g/cm3~1.7g/cm3である。
【0067】
無機コンパウンド(F)
無機コンパウンド(F)は、無機充填材若しくは鉱物系充填材(F1)であるか、又は無機充填材若しくは鉱物系充填材(F1)と流動化助剤(F2)の双方を含む。
【0068】
無機コンパウンド(F)は好ましくは、鉱物系充填材(F1)及び流動化助剤(F2)を含む。より好ましくは、(F1)/(F2)の重量比は、少なくとも5/1である。
【0069】
鉱物系充填材(F1)
鉱物系充填材(F1)については、ガラス繊維、中空ガラスマイクロビーズ、無機化合物、例えば鉱物及び塩を挙げることができ、これには炭酸カルシウム(CaCO3)、シリカ、ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウム若しくはメタケイ酸カルシウム、粘土、例えばベントナイト、マイカ、タルク、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、金属酸化物、又はこれら2種以上の組み合わせが含まれる。
【0070】
鉱物系充填材(F1)は、炭酸カルシウム、二酸化チタン若しくはか焼された粘土、シリカ(フュームドシリカ若しくは沈降シリカ)、粘土、モンモリロナイト(ナノクレイ)、ゼオライト、パーライト、又はスラリーとして得ることができるあらゆるその他の種類の無機材料から選択することができる。
【0071】
鉱物系充填材(F1)はより好ましくは、炭酸カルシウム、か焼された粘土、シリカ(フュームドシリカ若しくは沈降シリカ)、粘土、モンモリロナイト(ナノクレイ)、ゼオライト、又はパーライトである。
【0072】
無機コンパウンド(F)の鉱物系充填材(F1)は、幾つかの鉱物系充填材(F1a)~(F1x)の混合物であってもよい。
【0073】
さらにより好ましい実施態様において、鉱物系充填材(F1)は、炭酸カルシウム(CaCO3)である。
【0074】
炭酸カルシウムは有利には、沈降炭酸カルシウム(PCC)、粉砕天然炭酸カルシウム(GCC)、又は沈降炭酸カルシウムのナノサイズ粒子(NPCC)から選択される。
【0075】
鉱物系充填材(F1)、又は鉱物系充填材(F1)の少なくとも一部は、ポリマー組成物P1の製造方法のために、スラリーの形態であってもよい。
【0076】
充填材(F1)又は鉱物系充填材(F1)の少なくとも一部(これをポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)とブレンドする)は、スラリーの形態であるのが好ましい。
【0077】
鉱物系充填材のスラリー
鉱物系充填材のスラリーは、好ましくは5~90重量%、有利には50~80重量%の固形分を有する鉱物系充填材の水性分散体である。この水性分散体は、任意の特定の界面活性剤、分散剤、スラリーの品質(安定性、粘度、又はホストポリマーマトリックスとの相溶性)を有利に改善可能な添加剤又は充填材表面処理剤を含むことができる。
【0078】
流動化助剤(F2)
流動化助剤(F2)は、無機粉末である。
【0079】
流動化助剤(F2)は、幾つかの流動化助剤(F2a)~(F2x)の混合物であってもよい。
【0080】
流動化助剤(F2)は有利には、炭酸カルシウム(CaCO3)から選択される。
【0081】
ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)は好ましくは、多段構造を有するポリマー粒子である。
【0082】
多段構造を有するポリマー粒子は、多かれ少なかれ球形状である。ポリマー粒子は、20nm~500nmの重量平均粒径(直径)を有する。ポリマー粒子の重量平均粒径は好ましくは、50nm~400nm、より好ましくは75nm~350nm、有利には80nm~300nmである。
【0083】
本発明によるポリマー粒子は、多段階法(例えば二段階若しくは三段階、又はそれより多い段階)によって得られ、各段階により層が得られ、このプロセス全体により、多層構造を有する粒子が得られる。
【0084】
多層構造を有するポリマー粒子の形態にあるポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)は、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(L1)を含む少なくとも1つの層(IM1L1)と、45℃超のガラス転移温度を有するポリマー(L2)を含む少なくとも1つの別の層(IM1L2)とを含む。
【0085】
より好ましくは、ポリマー(L1)のガラス転移温度Tgは、-100~0℃、さらにより好ましくは-80~0℃、有利には-80~-20℃、より有利には-70~20℃である。
【0086】
ポリマー(L2)のガラス転移温度Tgは好ましくは、60~150℃である。ポリマー(L2)のガラス転移温度Tgはより好ましくは80~140℃、有利には90~135℃、より有利には90~130℃である。
【0087】
各段階の各ポリマーそれぞれについてのガラス転移温度Tgをより容易に評価及び測定するために、ポリマー(L1)及び(L2)のそれぞれの試料を得るため、これらを多段階法ではなく、単独で製造することができる。
【0088】
多段ポリマーにおける層(IM1L1)/層(IM1L2)の重量比は、好ましくは少なくとも70/30、より好ましくは少なくとも80/20、さらにより好ましくは少なくとも85/15、有利には少なくとも86/14、より有利には87/13、さらにより有利には88/12、最も有利には89/11である。
【0089】
多段ポリマーにおける層(IM1L1)/層(IM1L2)の重量比は好ましくは、重量で好ましくは70/30~99/1、より好ましくは80/20~98/2、さらにより好ましくは85/15~97/3、有利には86/14~97/3、より有利には87/13~97/2、さらにより有利には88/11~96/4、最も有利には89/11~96/4の範囲にある。
【0090】
ポリマーL1は好ましくは、ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)の85重量%より多く、より好ましくは86重量%より多く存在する。
【0091】
IM1の多層構造は、様々な構造を有することができる。0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(L1)を含む層(IM1L1)は、ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)のコアであるか、又は中間層であってよいが、最も外側の層ではない。45℃超のガラス転移温度を有するポリマー(L2)を含む層(IM1L2)は、最も外側の層であり得る。
【0092】
ポリマー(L2)を含む層(IM1L2)は好ましくは、メチルメタクリレート由来の重合単位を少なくとも50重量%含む(メタ)アクリルポリマーである。
【0093】
(IM1)の第一の好ましい実施態様において、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(L1)は、アルキルアクリレートからのモノマーを少なくとも50重量%含む(メタ)アクリルポリマーである。層(IM1L2)のポリマー(L2)又はポリマー(L2)の大部分は好ましくは、下方に位置する層上にグラフトされている。
【0094】
ポリマー(L1)はより好ましくは、ポリマー(A1)が0℃未満のガラス転移温度を有する限りにおいて、アルキルアクリレートと共重合可能な1種又は複数種のコモノマーを含む。
【0095】
ポリマー(L1)における1種又は複数種のコモノマーは好ましくは、(メタ)アクリルモノマー及び/又はビニルモノマーから選択される。
【0096】
ポリマー(L1)における(メタ)アクリルコモノマーは、C1-C12アルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーを含む。さらにより好ましくは、ポリマー(L1)における(メタ)アクリルコモノマーは、C1-C4アルキルメタクリレートのモノマー、及び/又はC1-C8アルキルアクリレートのモノマーを含む。
【0097】
最も好ましくは、ポリマー(L1)のアクリル若しくはメタクリルコモノマーは、ポリマー(L1)が、0℃未満のガラス転移温度を有する限りにおいて、メチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0098】
ポリマー(A1)は好ましくは、架橋されている。これは、その他の一種若しくは複数種のモノマーに対して、架橋剤が添加されていることを意味する。架橋剤は、重合可能な少なくとも2個の基を有する。
【0099】
1つの特定の実施態様において、ポリマー(L1)は、ブチルアクリレートのホモポリマーである。
【0100】
別の特定の実施態様において、ポリマー(L1)は、ブチルアクリレートと、少なくとも1種の架橋剤とのコポリマーである。架橋剤は、このコポリマーの5重量%未満、存在する。
【0101】
より好ましくは、ポリマー(L1)のガラス転移温度Tgは、-100~0℃、さらにより好ましくは-100~-5℃、有利には-90~-15℃、より有利には-90~25℃である。
【0102】
第二の好ましい実施態様において、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(L1)は、イソプレン又はブタジエン由来の重合単位を少なくとも50重量%含み、層(IML1)の段階構造は、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である。言い換えると、ポリマー(L1)を含む層(IM1L1)を作製する段階構造が、ポリマー粒子のコアである。
【0103】
例えば、第二の実施態様のコアのポリマー(L1)についてその例を挙げると、イソプレンホモポリマー又はブタジエンホモポリマー、イソプレン-ブタジエンコポリマー、イソプレンと最大98重量%のビニルモノマーとのコポリマー、及びブタジエンと最大98重量%のビニルモノマーとのコポリマーである。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート、又はブタジエン若しくはイソプレンである。1つの実施態様において、コアはブタジエンホモポリマーである。
【0104】
より好ましくは、イソプレン又はブタジエン由来の重合単位を少なくとも50重量%含む第二の実施態様のポリマー(L1)のガラス転移温度Tgは、-100~0℃、さらにより好ましくは-100~-5℃、有利には-90~-15℃、さらにより有利には-90~25℃である。
【0105】
熱可塑性ポリマーTP1
熱可塑性ポリマーTP1は、ハロゲン含有ポリマーから選択され、それは例えば、ポリビニルクロリド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、及びポリオレフィンである。
【0106】
第一の好ましい実施態様において、熱可塑性ポリマーTP1は、ハロゲン含有ポリマーである。
【0107】
ハロゲン含有ポリマー
ハロゲン含有ポリマーについては、例えば以下のものが挙げられる:
【0108】
塩化ビニルのホモポリマー及びコポリマー(PVC)、並びに塩化ビニリデンのホモポリマー及びコポリマー(PVDC)、自身の構造内に塩化ビニル単位を有するビニル樹脂、例えば塩化ビニルのコポリマー、脂肪酸のビニルエステル、特に酢酸ビニル、塩化ビニルと、アクリル酸及びメタクリル酸とアクリロニトリルのエステルとのコポリマー、塩化ビニルと、ジエン化合物と、不飽和ジカルボン酸若しくはその無水物とのコポリマー、例えば塩化ビニルと、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート若しくは無水マレイン酸とのコポリマー、事後的に塩素化されたポリマー、及び塩化ビニルのコポリマー、塩化ビニル及び塩化ビニリデンと、不飽和アルデヒド、ケトン類(例えばアクロレイン、クロトンアルデヒド、ビニルメチルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなど)とのコポリマー、塩化ビニリデンのポリマー、及び塩化ビニリデンと、塩化ビニル及びその他の重合性化合物とのポリマー;
【0109】
ビニルクロロアセテートと、ジクロロジビニルエーテルとのポリマー、ビニルカルボキシレート(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート)の塩素化ポリマー、アクリル酸の塩素化ポリマーエステル、及びα置換されたアクリル酸(例えばメタクリル酸)の塩素化ポリマーエステル、ニトリル、アミド、アルキルエステル(例えばアクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート)の塩素化ポリマーエステル;
【0110】
ビニル芳香族誘導体(例えばスチレン、ジクロロスチレン)のポリマー;塩素化ゴム;
【0111】
オレフィン(例えばエチレン、プロペン、1-ブテン、(2.2.1)ビシクロヘプテン-2、(2.2.1)ビシクロヘプタジエン-2,5)の塩素化ポリマー;
【0112】
クロロブタジエンのポリマー、及び事後的に塩素化されたクロロブタジエンのポリマー、並びにクロロブタジエンと、塩化ビニルとのコポリマー、塩素化された天然ゴム及び合成ゴム、並びにこれらのポリマー同士の混合物、又はこれらのポリマーと、その他の重合性化合物との混合物。
【0113】
グラフトされたハロゲン含有コポリマー、ここでハロゲン含有ポリマー部分は、(メタ)アクリル酸のホモポリマー又はコポリマーに粒子の形態でグラフトされており、これは架橋されていても、架橋されていなくてもよい。
【0114】
ハロゲン含有ポリマーは好ましくは、熱可塑性ポリマーであり、弾性ポリマーではない。熱可塑性ポリマーのガラス転移温度は、少なくとも40℃、好ましくは50℃である。
【0115】
ハロゲン含有ポリマーにおけるハロゲンは好ましくは、フッ素又は塩素から選択され、ハロゲンは有利には、塩素である。
【0116】
塩素含有ポリマーは、以下のものから選択されるポリマー、又はポリマーの混合物から選択される:塩化ビニルのホモポリマー、例えばポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、塩素化されたポリビニルクロリド、事後的に塩素化されたポリビニルクロリド、及び塩化ビニルモノマーと、最大40重量%のコモノマー(例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、塩化ビニリデン、プロピレン、メチルメタクリレートなど)との重合によって形成されたコポリマー、またその他のポリマーを含む塩素含有ポリマー、例えば塩素化されたポリエチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンのターポリマー、メチルメタクリレート、ブタジエン、スチレンのターポリマー;ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、及びアルキルアクリレート、メチルメタクリレート、ブタジエンのターポリマー。塩素含有ポリマーは好ましくは、ポリビニルクロリド、又は事後的に塩素化されたポリビニルクロリドである。
【0117】
塩素含有ポリマーは好ましくは、VC単位を少なくとも50重量%、好ましくはVC単位を少なくとも70重量%、より好ましくはVC単位を少なくとも80重量%、有利にはVC単位を少なくとも85重量%含む、塩化ビニル(VC)のホモポリマー及びコポリマー、又はこれらの混合物から選択される。
【0118】
本発明によるポリマー組成物P1を製造する方法
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になる、ポリマー組成物P1の製造方法は、
2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、成分b)、及びコンパウンドa)の少なくとも83.33重量%は、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程
を含むことを特徴とする。
【0119】
本発明によるポリマー組成物P1を製造する、第一の好ましい方法:
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になる、ポリマー組成物P1の製造方法は、
i)2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、成分b)、及びコンパウンドa)の少なくとも83.33重量%は、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程、
ii)工程i)で得られたブレンドを乾燥させる工程
を含むことを特徴とする。
【0120】
本発明によるポリマー組成物P1を製造する、第二の好ましい方法:
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
前記無機コンパウンド(F)が、無機充填材(F1)及び流動化助剤(F2)から成り、(F1)/(F2)の重量比が少なくとも5/1であり、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になる、ポリマー組成物P1の製造方法は、
2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、2種の成分b)及び(F1)が、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程
を含むことを特徴とする。
【0121】
より好ましくは、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
前記無機コンパウンド(F)が、無機充填材(F1)及び流動化助剤(F2)から成り、(F1)/(F2)の重量比が少なくとも5/1であり、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になる、ポリマー組成物P1の製造方法は、
i)2種の成分a)及びb)をブレンドする工程であって、2種の成分b)及び(F1)が、ブレンド工程の間に水相における分散体の形態である工程
ii)工程i)で得られたブレンドを乾燥させる工程
を含むことを特徴とする。
【0122】
本方法が含み得るさらなる工程
本方法はさらに、先の工程で得られたブレンドを回収して、ポリマー粉末を形成するか、又は先の工程で得られたブレンドをポリマー粉末として回収する工程を含むことができる。
【0123】
2種の成分a)及びb)、又は(F1)の水性分散体の量は、分散体それぞれの固形分に基づき選択され、固体部分に基づく各ポリマー組成物P1の組成物が得られる。
【0124】
本発明によるポリマー組成物を作製する方法の回収工程は好ましくは、凝固によって、又は噴霧乾燥によって行う。噴霧乾燥が、1つのプロセス工程において回収及び乾燥を統合することは明らかである。
【0125】
噴霧乾燥の場合、成分a)及びb)の各分散体をブレンド又は混合して、それから液状混合物を噴霧乾燥装置に加えることができる。また、回収工程の間に噴霧乾燥装置内部で、分散体をブレンド又は混合することもできる。
【0126】
噴霧乾燥は、ポリマー組成物P1の製造方法のために回収及び/又は乾燥するための好ましい方法である。
【0127】
乾燥後のポリマー組成物P1は、湿潤度が3重量%未満、好ましくは湿潤度が1.5重量%未満、より好ましくは湿潤度が1.2重量%未満である。
【0128】
本発明はまた、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になるポリマー組成物P1を含む、ポリマー組成物P2の製造方法に関し、ポリマー組成物P2は、
d)熱可塑性ポリマーTP1
も含み、
本方法は、
組成物P1を、熱可塑性ポリマーTP1とブレンドする工程
を含むことを特徴とする。
【0129】
ポリマー組成物P2の製造方法において好ましくは、ポリマー組成物P1は、先に記載した方法に従って製造する。
【0130】
無機コンパウンド(F)、ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)、ポリマー組成物P1、及び熱可塑性ポリマーTP1は、先に規定したものと同じである。
【0131】
組成物P1と熱可塑性ポリマーTP1とのブレンドは好ましくは、ドライブレンドとして、又は成分のコンパウンド化として当業者に知られた、ポリマー組成物ブレンド手段によって行い、それから溶融加工する。
【0132】
ポリマー組成物P2におけるポリマー組成物P1の比率は、1~20phr、好ましくは2~15phr、より好ましくは3~12phr、有利には3~10phrである。
【0133】
本発明は、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計で100重量%になるポリマー組成物P1の使用であって、熱可塑性ポリマーTP1の耐衝撃性を向上させるとともに、高速加工の冷却の間に熱を消失させるための使用に関する。
【0134】
この使用後に熱可塑性ポリマーTP1は、ポリマー組成物P1を含み、ポリマー組成物P2が得られる。
【0135】
ポリマー組成物P2の製造方法において好ましくは、ポリマー組成物P1は、先に記載した方法に従って製造する。
【0136】
無機コンパウンド(F)、ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)、ポリマー組成物P1、及び熱可塑性ポリマーTP1は、先に規定したものと同じである。
【0137】
本発明は、
a)29重量%から60重量%までの無機コンパウンド(F)、
b)40重量%から71重量%までのポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)
を含み、2種の成分a)及びb)が合計して100重量%になるポリマー組成物P1の使用であって、ポリマー組成物P1及び熱可塑性ポリマーTP1を含むポリマー組成物P2のコーナー溶着強度を向上させるための使用に関する。
【0138】
ポリマー組成物P2の製造方法において好ましくは、ポリマー組成物P1は、先に記載した方法に従って製造する。
【0139】
無機充填材(F)、ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)、ポリマー組成物P1、及び熱可塑性ポリマーTP1は、先に規定したものと同じである。
【0140】
ポリマー組成物P1及び熱可塑性ポリマーP2を含むポリマー組成物P2の変形は好ましくは、押出成形によって行う。
【0141】
ポリマー組成物P1は、ポリマー組成物P2において1~20phr、好ましくは2~15phr、より好ましくは3~12phr、有利には3~10phrの比率で使用する。
【0142】
ポリマー組成物P2は、加工及び変形して、物品にすることができる。
【0143】
本発明はまた、前述のポリマー組成物P2を含む物品に関する。この物品は、異形材、管、サイディング、発泡体、フィルム、シート、床材用フィルム又はシートであり得る。
【0144】
第一の好ましい実施態様において、本発明による物品は、異形材である。1つの第一の有利な実施態様において、本発明による物品は、サイディング又は窓用異形材である。
【0145】
評価方法
ガラス転移温度
ポリマー又はポリマー混合物のガラス転移温度(Tg)は、熱機械分析が可能な装置によって測定する。Rheometrics Company社製のRDAII “RHEOMETRICS DYNAMIC ANALYSER”を使用した。熱機械分析によって、温度との関数で試料の粘弾性変化、適用されるひずみ又は変形が、正確に測定される。使用する周波数は、1Hzである。この装置は、ひずみを一定に保ちながら、温度変化について制御されたプログラムの間、試料の変形を連続的に記録する。
その結果は、温度との関数で、弾性モジュール(G’)、弾性モジュール損失、及びtanδを描くことによって得られる。Tgは、tanδから導かれる値がゼロに等しい場合、tanδの曲線で読み取られる温度の値よりも高い。
【0146】
体積平均粉末粒径、粒径分布、及び微粒子の比率を評価するためには、300mmのレンズ付きのMalvern Mastersizer 300装置を使用する(0.5~880μmの範囲を測定)。D(v、0.5)は、試料の50%がそれより小さいサイズを有し、かつ試料の50%がそれより大きいサイズを有する粒径であり、言い換えれば、50%の累積体積での体積直径と同じである。このサイズは、体積中央直径(D50と略される)としても知られており、これは、粒子について大きさとは無関係の密度を想定した粒子密度による質量又は重量中央直径と相関関係にある。
【0147】
融解効率
【0148】
ポリマー組成物の融解効率は、ASTM D2538-02(2010年改訂)に基づくトルクレオメータを用いた融解時間を測定することによって評価する。融解時間が短ければ、融解効率がその分だけ良好であることを示し、より効率的なプロセスと解釈される。
【0149】
耐衝撃性
【0150】
英国規格BSI 2783法を使用して、シングルVノッチ耐衝撃性を評価した。半径0.1mmのノッチを使用した。耐衝撃性試験は、制御された室温で評価した。振り子のエネルギーは、1Jであった。10個の試料を使用して、標準偏差を有する平均衝撃エネルギーを評価した。
【0151】
DIN 53753法を使用して、ダブルVノッチ耐衝撃性を評価した。半径0.1mmのノッチを使用した。耐衝撃性試験は、制御された室温で評価した。振り子のエネルギーは、1Jであった。10個の試料を使用して、標準偏差を有する平均衝撃エネルギーを評価した。破壊の種類(延性又は脆性)に関する情報も、記載されている。
【0152】
コーナー溶着強度(CWS)
【0153】
コーナー溶着強度耐性は、内部の手法を用いて評価した。押出成形後に、試料を圧力下、240℃で溶着した。それから試験体を、制御された室温にて25℃で溶着耐性試験にかけた。5個の試験体が破断した平均強度を評価した。
【0154】
顕微鏡検査
【0155】
粉末についての顕微鏡検査は、操作型電子顕微鏡(SEM)を用いて行う。後方散乱電子の検知については、無機充填材(例えば炭酸カルシウム)が、各粉末顆粒において容易に検知され得る。
【実施例】
【0156】
以下の材料を使用又は製造する:
【0157】
ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)を、標準的なエマルション重合技術を用いる米国特許第4,278,576号に記載された技術に従って製造する。
【0158】
ポリマーの耐衝撃性改良剤(IM1)としてコア/シェル型アクリルポリマーの耐衝撃性改良剤を、ブチルアクリレート89.2部、ブチレングリコールジアクリレート0.4部、及びジアリルマレエート0.4部を用いてエラストマーコアとして製造し、その後、メチルメタクリレート10部を重合させる。固形分は、(IM1a)の水性分散体の40%である。
【0159】
無機鉱物系充填剤(F1)は、炭酸カルシウム(CaCO3)である。CaCO3のスラリー又は分散体は、日本国特許第59057913号に記載された技術に従って製造する。つまり、水270部、ポリアクリル酸ナトリウム0.72部、及び直径が0.2-0.6μmであり水分が0.6%であるCaCO3729.3部を混合し、20分間にわたり102/秒の剪断速度で5回、撹拌することによってスラリーを得る。得られた固形分は、73重量%である。
【0160】
熱可塑性ポリマーTP1としては、Kemone社のポリビニルクロリドPVC S110Pを使用する。
【0161】
流動化助剤(F2)としては、炭酸カルシウム(PCC、0.07ミクロン)を使用する。
【0162】
表1に記載の試料組成物は、ポリマー組成物P1として、又は比較例のための組成物として、粉末形態で製造する。
【0163】
比較例1:
(IM1)の分散体及び鉱物系充填材(F1)のスラリーを、次の比率:分散体9.11kg(9110部)、及びスラリー0.705kg(705部)で混合し、ラテックス分散体単独について従来使用される条件で噴霧乾燥させる。得られた粉末は、粒径が約150μmである。炭酸カルシウム(PCC、0.07ミクロン)3重量%を、回収された粉末に流動性助剤(F2)として添加する。こうして生成する粉末は、アクリル系耐衝撃性改良剤(IM1)/無機コンパウンド(F)CaCO3の比率が、85/15である。
【0164】
比較例2:
(IM1)の分散体及び鉱物系充填材(F1)のスラリーを、次の比率:分散体2.679kg(2679部)、及びスラリー3.968kg(3968部)で混合し、ラテックス分散体単独について従来使用される条件で噴霧乾燥させる。得られた粉末は、粒径が約150μmである。炭酸カルシウム(PCC、0.07ミクロン)5重量%を、回収された粉末に流動性助剤(F2)として添加する。こうして生成する粉末は、耐衝撃性改良剤(IM1)/無機コンパウンド(F)CaCO3の比率が、25/75である。
【0165】
実施例1:
2種のアクリル系分散体と無機スラリーとを次の比率:耐衝撃性改良剤分散体(IM1a)5.305kg(5305部)、加工助剤の(メタ)アクリルコポリマー(A1a)0.617kg(617部)、及び無機鉱物系充填材(F1)のスラリー2.469kg(2469部)で混合し、分散体単独について従来使用される条件で噴霧乾燥する。得られた粉末は、粒径が約150μmである。炭酸カルシウム(PCC、0.07ミクロン)3重量%を、回収された粉末に流動性助剤(F2)として添加する。こうして生成する粉末は、ポリマー/無機コンパウンドCaCO3の比率が、55/45である。
【0166】
実施例2:
(IM1)の分散体及び鉱物系充填材(F1)のスラリーを、次の比率:分散体7.902kg(7902部)、及びスラリー1.587kg(1587部)で混合し、ラテックス分散体単独について従来使用される条件で噴霧乾燥させる。得られた粉末は、粒径が約150μmである。炭酸カルシウム(PCC、0.07ミクロン)3重量%を、回収された粉末に流動性助剤(F2)として添加する。こうして生成する粉末は、耐衝撃性改良剤(IM1)/無機コンパウンド(F)CaCO3の比率が、70/30である。
【0167】
【0168】
表1の比較例及び実施例として製造した粉末試料は、熱可塑性ポリマーTP1としてのPVCにより、PVC組成物中で5.5phrで調製する。この組成物について、温度を上昇させながら、Papenmeyer装置でドライブレンドする。PVC組成物は、表2に記載した量に従って製造する。
【0169】
【0170】
表2の異なる組成について、Haake Polylab押出成形機で押出成形加工した。各組成物の融解時間も測定した。
【0171】
融解時間の結果が、表3にまとめられている。
【0172】
【0173】
実施例1及び2は、これは比較例1に対してなおも許容可能な融解時間を示し、比較例2よりもずっと良好である。
【0174】
【0175】
実施例1及び2は、耐衝撃性において同等のレベルを示し、またコーナー溶着強度において著しい向上を示す。
【0176】
比較例1は、コーナー溶着強度がかなり低い。
【0177】
比較例2は耐衝撃性が、実施例1及び2よりも悪い。