(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】音響システムを有する室内構造
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20240910BHJP
H04R 3/12 20060101ALN20240910BHJP
H04R 7/04 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
H04R1/00 310F
H04R3/12 Z
H04R7/04
(21)【出願番号】P 2019175260
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-07-26
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-05
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】上條 明日香
(72)【発明者】
【氏名】庄司 藤男
(72)【発明者】
【氏名】飯島 浩子
(72)【発明者】
【氏名】関本 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】金藤 晶彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 謙治
【合議体】
【審判長】高橋 宣博
【審判官】樫本 剛
【審判官】圓道 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-35959(JP,A)
【文献】特開2013-231931(JP,A)
【文献】特開2006-80820(JP,A)
【文献】特開2007-68074(JP,A)
【文献】特開2008-271427(JP,A)
【文献】登録実用新案第3151525(JP,U)
【文献】特許第3762202(JP,B2)
【文献】特許第4148147(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00 - 1/02
H04R 3/00 - 3/14
H04R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部、床部、及び天井部により囲まれた室内空間を構成する室内構造であって、
前記室内構造には音響システムが配置されており、
前記音響システムは、
前記壁部に、
振動して音を出力する面材及び前記面材の一方の面に配置された振動器から構成されたスピーカーを複数個有し、
前記面材の他方の面は前記室内空間に露出して前記室内空間の内面を形成しており、
前記面材は、表装材を具備し、かつ、前記面材の前記表装材の面は、前記面材の前記他方の面を構成し、
前記スピーカーの前記室内空間側の面の全面は、前記面材の前記他方の面を構成する前記表装材の面であり、
前記複数のスピーカーのそれぞれに対して、又は、前記複数のスピーカーのうちから選ばれる前記スピーカーからなる一群を1つのグループとしたとき複数の前記グループのそれぞれに対して、出力すべき音のための信号を伝送し、
前記室内構造の前記壁部は、前記音響システムが有する前記複数のスピーカーが配置されていない部位に、スピーカーとして機能しない壁面材を有し、
前記壁面材は、前記スピーカーの前記面材の前記表装材とは異なる表装材を具備し、かつ、前記壁面材の前記表装材の面は、前記室内空間に露出して前記室内空間の内面を形成しており、
前記室内空間内で、前記スピーカーと前記壁面材とが外観上区別されていない、
室内構造。
【請求項2】
前記面材はハニカムコア及び前記表装材が積層されてなる請求項1に記載の室内構造。
【請求項3】
高さ方向で異なる位置に複数の前記スピーカーが配置されている、請求項1又は2に記載の室内構造。
【請求項4】
前記複数のスピーカーのうちの少なくとも2つのスピーカーに対して、又は、前記複数のスピーカーのグループのうちの少なくとも2つのグループに対して、前記出力すべき音のために伝送する信号が別個の信号とされる請求項1~3のいずれか一項に記載の室内構造。
【請求項5】
さらに前記複数のスピーカーに対して前記出力すべき音のための信号を発信する演算装置を有し、
前記演算裝置は、前記複数のスピーカーに対して、又は、前記複数のスピーカーのグループに対して、前記出力すべき音のための信号を伝送する請求項1~4のいずれか一項に記載の室内構造。
【請求項6】
さらに前記演算装置に対して信号を伝達するセンサを備え、
前記演算装置は前記センサから伝達される前記信号に基づいて前記演算を行う請求項5に記載の室内構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響システムを有する室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び特許文献2には平面状のパネルを振動板とし、振動板に振動器(エキサイター)を取り付けて振動させることでスピーカーとして機能させる技術が開示されている。これによれば化粧材をスピーカーとして用いることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3762202号公報
【文献】特許第4148147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、壁部、床部、天井部等の室内空間を構成する板材の裏面乃至内部に振動器を内裝した平面的なスピーカーを用いることで、スピーカーとして視認されることなく室内空間を構成することができるため、空間の有効利用や外観を向上することが可能となる。
しかしながらこの技術では、会議室、店舗、職場等のような複数の人が集まる空間、及び、自宅の寝室や居室等のような個人的な空間(合わせて「室内空間」と記載することがある。)において、利便性、快適性、機能性、及び嗜好性等の観点から、室内空間の全体を構成することに関して必ずしも十分なものとは言えなかった。
【0005】
そこで本発明は、室内空間の機能を向上させやすい、音響システムを有する室内構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、壁部、床部、及び天井部により囲まれた室内空間を構成する室内構造であって、室内構造には音響システムが配置されており、音響システムは、壁部、床部、及び天井部の少なくとも一つに、面材及び面材の一方の面に配置された振動器から構成されたスピーカーを複数個有し、複数のスピーカーのそれぞれに対して、又は、複数のスピーカーのうちから選ばれる前記スピーカーからなる一群を1つのグループとしたとき複数の前記グループのそれぞれに対して、前記出力すべき音のための信号を伝送する室内構造である。
【0007】
複数のスピーカーのうちの少なくとも2つのスピーカーに対して、又は、複数のスピーカーのグループのうちの少なくとも2つのグループに対して、出力すべき音のために伝送する信号が別個の信号とされるように構成してもよい。
【0008】
さらに複数のスピーカーに対して出力すべき音のための信号を発信する演算装置を有してもよく、演算装置は、複数のスピーカーに対して、又は、複数のスピーカーのグループに対して、出力すべき音のための信号を伝送するように構成できる。
【0009】
演算装置に対して信号を伝達するセンサを備え、演算装置はセンサから伝達される信号に基づいて演算を行うように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は音響システムを有する室内構造10の外観を模式的に表す図である。
【
図2】
図2は音響システムを有する室内構造10に備えられる壁部11を正面視した図である。
【
図3】
図3はスピーカー16を説明する斜視図である。
【
図4】
図4は音響システム15を模式的に表した図である。
【
図5】
図5は他の例の音響システム15を模式的に表した図である。
【
図6】
図6は音響システムを有する室内構造10の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき各形態について説明する。本発明はこれら形態に限定されるものではない。なお、図面に表れる各部材は理解し易さの観点から大きさや形状を誇張、変形して表すことがある。また、見易さのため、繰り返しとなる符号の記載を省略することもある。
【0012】
図1は1つの形態を説明する図で、音響システムを有する室内構造10(以下、「室内構造10」と表示することがある。)の外観を模式的に表す図であり、
図2は
図1に図示する室内構造10に備えられる壁部11を正面視した図、
図3は
図1及び
図2に図示する室内構造10に含まれるスピーカー16を説明する斜視図で裏面側表装材17b一部を破断して心材17aが見えるように表し、
図4は室内構造10に含まれる音響システム15の構成を模式的に表した図である。
【0013】
図1乃至
図4からわかるように、本形態の室内構造10は、室内空間1を区画するようにして、側面を構成する壁部11、上部を構成する天井部12、下部を構成する床部13を有しており、これらに囲まれる内側により室内空間1が区画されている。なお、
図1においては、図示及び説明の簡素化のため、同図の手前側(紙面の表側)に存在する壁部及び、通常多くの場合に、室内構造10において1箇所以上設けられる窓、扉等の開口部、家具、照明器具、什器等は図示を省略している。
そして、本形態ではそのうちの壁部11に音響システム15が適用されている。従ってここでは壁部11に適用された音響システム15を前提に説明するが、これに限らず代わりに、又は、これに合わせて、天井部及び/又は床部に音響システムが適用されてもよい。
【0014】
本発明において、音響システム15は、少なくともスピーカー16及びこれにスピーカー16を駆動して音波を発生させる構成を有している。本形態では、
図4に図示の如く、スピーカー16に加えて、センサ20、入力装置21、音源装置22、演算装置25、及び増幅装置30を備えている。以下、各構成について説明する。
【0015】
スピーカー16は、室内空間1に向けて音を出力する装置であり、本形態では平面式のスピーカーである。スピーカー16としては公知の平面式のスピーカーを用いることができる。一例としてスピーカー16は、
図3に示したように、面材17及び振動器18を備えている。
図3に図示の如く、面材17は心材17aを有しており、この心材17aの一方の面側には裏面側表装材17b、心材17aの他方の面側には表面側表装材17cが配置されている。
【0016】
心材17aは、例えば、いわゆるハニカムコアと呼ばれる構造の板材を用いることができる。代表的な構成では、複数の六角柱の筒が該六角柱の側面を互いに隣接させて、且つ該側面と直交する方向に平面状に配列されて板状をなす部材である。このようなハニカムコアの材料は公知の通りであるが、アルミニウム或いはジュラルミン等のアルミニウム合金、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フェノールエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のオレフィン樹脂、各種ナイロン、アラミド樹脂(芳香族ポリアミド)等のポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、上質紙、和紙、水酸化アルミニウム混抄紙等の紙、ガラス繊維、炭素繊維、ポリエステル樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維等から成る織布又は不織布、前記の紙、織布、又は不織布に前記熱硬化性樹脂を含侵して硬化させた物等を挙げることができる。
また、ハニカムコア以外の材料としては、杉、檜、松、樫、楢、栗、ラワン、チーク等の各種樹木からなる単板、合板、繊維板、パーチクルボード、集成材等の木質材料を使用する事もできる。
【0017】
裏面側表装材17bは、スピーカー16を壁部11に配置したときに室内空間1とは反対側となる面側に配置される板状の表装材である。そして裏面側表装材17bには振動器18が配置される。かかる観点から裏面側表装材17bは比較的強度が高く、曲げ剛性が高いものであることが好ましい。そのため裏面表装材17bを構成する材料としては特に限定されることはないが、心材と同様に考えることができる。ただし、必ずしも心材と同じである必要はなく異なる材料であってもよい。
【0018】
表面側表装材17cは、スピーカー16を壁部11に配置したときに室内空間1に面するように配置される板状の表装材である。従って表面側表装材17cの表面は意匠面とされている。
表面側表装材17cは、例えば、上記した裏面側表装材17bと同様の材料による板材と、その表面に貼付された意匠面を構成する壁紙と、からなる形態を挙げることができる。
【0019】
振動器18は、面材17のうち裏面側表装材17bに取り付けられ、受信した信号に基づいて振動し、これを面材17に伝えて音として出力させる機器である。このような振動器はエキサイターと呼ばれることもあり、公知のものを適用することができる。
振動器18が裏面側表装材17bに配置される位置は特に限定されることはなく適宜設定することができる。1つの面材17に複数の振動器18を配置してもよい。
また、振動器18は、
図3に図示の如く、面材17の裏面側表裝材17b上に設置する以外に、図示は略すが、面材17内にその一部又は全部を埋設した状態で設置することもできる。
【0020】
センサ20は、所望の状態を検知する機器である。センサの種類は必要に応じた種類のセンサであればよく特に限定されることはない。例えば人の存在の有無を検知する人感センサ、光センサ、画像情報を基に所定のアルゴリズムでの解析により人の表情を検知するセンサ、超低周波音、可聴周波数帯域の音、超音波等の各種周波数の音を検知する音響センサ、音響センサの検地した音声情報を基に所定のアルゴリズムでの解析により人の音声を検知するセンサ、温度センサ、湿度センサ、人、動物、又は無生物等の物体の位置、速度、角速度、加速度又は角加速度等の運動状態を検知するジャイロセンサ等の体動センサ、体温、血圧、呼吸数、心電位、脳波等の所定の各種物理量を検知し必要に応じ所定のアルゴリズムで解析することにより人の肉体又は精神の状態や睡眠の状態を測定したり可視化したりするバイタル感知センサ、磁気センサ、赤外線センサ等の各種センサ等を挙げることができる。
【0021】
入力装置21は、演算装置25に対する命令を入力する装置である。演算装置25に対する命令を入力することができれば特に限定されることはないが、例えばキーボード、マウス等を挙げることができる。
【0022】
音源装置22は、演算装置25に対して音に対応する信号を入力する装置である。特に限定されることはないが、例えば、マイクロフォン等の直接、実時間的に電気等の音声信号に変換する裝置の他、録音盤、光ディスク、磁気テープ、各種半導体記憶裝置等の音声を溝形状、磁気、電気、光反射率等の光学的性質等の各種物理量に変換して記録し適宜音声信号として再生する各種形態の音声記録再生装置等を挙げることができる。なお、
図4においては、音源装置22を1個のみ図示しているが、音源装置22を複数用意し、個々の音源装置22で各々別個の音声信号を記録、再生してもよい。
【0023】
演算装置25は、スピーカー16から出力すべき音をプログラムに基づいて演算して決定し、その結果としての制御信号(指示)に基づき音声信号を増幅装置30に送信する。その演算の内容等の具体的な態様は後で説明する。
このような演算装置25は例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータにより構成することができる。すなわち、中央演算処理装置としてのCPU、記憶装置としてのRAM、ROM、HDD等を備えるコンピュータにおいて、CPUが、ROMやHDDに記憶されているコンピュータプログラムをRAMを使用して実行するように構成することができる。
また、この演算装置25による演算は、複数配置されるスピーカー16に対して、個別に行われる、又は、複数のスピーカー16が含まれる一群を1グループとしたとき、複数のグループに対して1グループごとに行うことができることが好ましい。これにより、必要に応じた音の出力をより適切に柔軟に実現することができる。
【0024】
増幅装置30は、演算装置25からの制御信号を受信し、これを基に所定の音源装置22からの音声信号を増幅して所定のスピーカー16に送信する装置であり、いわゆるアンプ(amplifier)といわれる装置である。このような増幅装置30は特に限定されるものでなく公知のものを用いることができる。
【0025】
以上のような各構成が例えば次のように組み合わされることで室内構造10とされている。
室内構造10により室内空間1を構成するため、本形態では天井部12には公知の天井材、床部13には公知の床材13が配置される。そして、壁部11に少なくとも1つ、好ましくは複数のスピーカー16が配置される。このとき、スピーカー16の面材17のうち表面側表装材17cが室内空間1に面するように配置される。
また、
図1、
図2からわかるように、本形態ではスピーカー16は縦横方向のいずれについても通常の壁面材11aと交互に1つ置きに配置されている。このように、複数のスピーカー16は、壁部11の全てを覆うように配置される必要はなく、スピーカー16が配置されない部位については、通常(スピーカーでない)の壁面材11aが配置されればよい。
スピーカー16の配置は本形態のように1つ置きである必要はなく、必要に応じたパターンで配置することができる。
【0026】
このとき、スピーカー16の表面側表装材17cの意匠面と、通常の壁面材11aの意匠面と、の態様が同じであれば外見上はスピーカー16と通常の壁面材11aとの区別ができないため、スピーカー16を認識することのない空間とすることができる。
ただしこれに限られず、スピーカー16の表面側表装材17cの意匠面を通常の壁面材11aの意匠面とは異なるようにしてもよく、その他、表面側表装材17cの意匠面を絵画、写真などのインテリアのアクセントとなるようにしてもよい。
【0027】
センサ20は、検知すべき対象を検知しやすい部位に配置される。入力装置21は演算装置25に情報を直接入力する手段であるため、入力することが可能であればいずれの位置に配置してもよい。音源装置22も同様に必要な位置に設置されればよい。
なお、センサ20、入力装置21、演算装置25、及び増幅装置30は、必ずしも具備されなくてもよく、若しくは、いずれか1つ又は2つ以上が配置されてもよい。
【0028】
演算装置25は、
図4に示したように、センサ20、及び入力装置21のいずれかを備える場合には、ここからの信号を受信し、取り込むことができるように構成され、演算の結果として出力された制御信号を基に選択された音源装置22から発生する音声信号を増幅装置30に伝送できるように構成される。これら取り込みや伝送は有線であること及び無線であることを問わない。従って、演算装置25が配置される位置は特に限定されることはなく、室内空間1の内外、別室、別の建物等、いずれでもよい。
【0029】
増幅装置30は、
図4からわかるように、上記のように演算装置25からの信号を受信するために該演算装置25に接続され、増幅後の信号をスピーカー16の振動器18に伝送するために該振動器18に接続されている。
なお、
図4に示したように、複数のスピーカー16の出力を個別に制御する場合には複数のスピーカー16のそれぞれに増幅装置30が配置されている。一方、
図5に示したように、複数のスピーカー16を含む一群を1つのグループとし、グループごとに出力する音を制御するときにはグループごとに1つの増幅装置30を設置してもよい。
図5の例は、同じ高さ位置に属する複数のスピーカーを一群として1つのグループとし、合計4つのグループを構成した例である。
【0030】
以上のような室内構造10により、例えば次のように作動させることができる。
図6にその流れを示した。
センサ20、入力装置21の少なくとも1つが具備されている場合にはこれらからの音声信号を演算装置25が受信する(S11)。センサ20による信号は、センサ20により検知した情報の信号である。入力装置21による信号は、例えば演算装置25に対して所望する音の選択をする信号であり、キーボードから直接所望する音を選択することが想定される。音源装置22からの信号は、例えばマイクロフォン、CD等の音声信号記録再生器、通信回線経由で伝送された音声信号、コンピュータの演算装置や記憶装置から発生した音声信号等の音の再生器からの信号を挙げることができる。
次に、演算装置25は受信した信号に基づいて、プログラムによりスピーカーごと又はグループごとに、出力すべき音を演算して決定する(S12)。ここでセンサ20、入力装置21、音源装置22が具備されていない音響システムである場合には、予め決められたプログラムに基づいて出力すべき音のための信号を演算して決定する。
演算装置25は、決定した信号を増幅装置30に出力し(S13)、受信した増幅装置30は信号を増幅してスピーカー16の振動器18に出力する(S14)。これによりスピーカー16の面材17が振動して音を出力する(S15)。
以上のS11乃至S15が繰り返され、所望の音が適宜提供される。
【0031】
以上のような室内構造10によれば、空間デザインと音環境の両立を図ることができる。すなわち、視覚的には、空間を構成する壁装材とスピーカーとを一体化させ、すっきりとした美しい空間デザインを実現し、聴覚的には空間の部位によって異なる音を出力することができ、音環境の演出の多様性を確保することが可能となる。
【0032】
音環境について、例えば、スピーカー16乃至スピーカーのグループの高さ位置により出力する音を変え、高い位置のスピーカー16乃至スピーカーのグループから鳥の鳴き声、人の頭の位置のスピーカー16乃至スピーカーのグループからは松風等の樹木の枝葉が風で奏でられる音或いはバックグラウンドミュージック等の環境音楽、低い位置のスピーカー16乃至スピーカーのグループから水が流れる音、例えば、海岸の波の音、小川の潺(せせらぎ)、鈴虫等の虫の声等の音を流すことにより、音の発生する位置に対応して適合する種類の音を発生する事ができる。
そのため、音の室内空間に於ける3次元的分布、即ち音場(sound field)を立体的に構成して、室内空間1内に居る人に対して、現実の音の発生源や発生環境の音場を忠実に臨場感をもって再現したり、更に発展させて音響面での仮想現実(virtual reality)の実現手段としたり、或いは集中力を高めたり、リラックス効果を高めたり、会議の進行を活性化又は沈静化することが期待できる。
または、室内空間1の奥行き方向により出力する音を変えると、音に奥行がでて空間をより広く感じさせ、解放感を付加することもできる。
このように、部位により出力する音を適宜変えることができるので、音環境を所望の環境にすることが可能で、かつ、そのための方法が容易である。その際にはスピーカーが意識されないため、音を自然に受け入れやすいという利点もある。
【0033】
以下に、音環境の演出の多様性にかかる具体例を挙げる。
【0034】
各種ホテルの客室、ロビー、浴室、客室等、理容乃至美容室やサロン、各種リラクゼーション施設、商業施設、店舗、病院、医院等の医療施設、学校、自習室、事務所、会議室、遊戯施設(ゲームセンター等)、自宅等では、上記のようにリラックス効果、集中力向上、忠実且つ臨場感のある音場の再現、音響面での仮想現実の再現を期待することができる。例えば、気温センサ、湿度センサ、体動センサ、バイタル感知センサ等に基づいて出力させる音や音量を演算装置により演算して変更することにより、これらの効果をさらに高めることも可能である。
会議室については、上記の他、発言者の音声を聞き手の近くのスピーカーで出力して聞き取りやすくしたり、音場再現や仮想現実効果を利用してTV会議参加者の存在感及び発言の説得力を極めて高い臨場感で強調したりすることができる。また、会議の音声が外部に漏れないようにマスキングする音を出力したり、会議の活性度に応じて人の心理を活性化したり、沈静化したりすることができる。その際には例えば人感センサや音量センサからの信号に基づいて、演算装置が所定のアルゴリズムに従って会議の活性度を評価し、その活性度に基づき会議を活性化や沈静化する心理的効果を奏するように、出力される音の種類、質、音量、周波数帯域、フォルマント(formant)、音の発生位置等が演算装置により調整されてもよい。
学校、自習室、事務所等のワーキングスペースでは、上記の他、電話等の音声やキーボードのタイピングの音が外部に漏れないようにマスキングする音を出力することもできる。その際には音量センサからの出力信号に基づいて出力される音の質や音量が演算装置により演算されて調整されてもよい。
店舗では、上記の他、商品が陳列されている部位ごとに、その商品を説明する音を流すこともできる。その際には人感センサにより人が商品を見ていることを検知し、これを演算装置で演算し、音声を出力してもよい。これによれば客は初めから説明を聞くことができる。
自宅の寝室では、起床や就寝のタイミングで目覚め、睡眠を効果的に行うことができる音を出力することが可能である。このときには、アラームの他、例えば睡眠計測機からの信号に基づいて演算装置が演算し、音の種類が決められてもよい。乳幼児がいる場合には、乳幼児がリラックスしたり睡眠を促したりする音を出力することができる。その際には顔認証、マイクロフォンからの信号に基づいて演算装置により演算して出力する音の種類や音量が決められる。
防犯・防災の観点からは侵入者の報知や警告音、防災情報を出力することができる。この際には人感センサにより人の存在を検知し、演算装置による演算で適切な場所が決められて音を出力することができる。
医療施設や調剤薬局などでは、医療情報や個人情報に関する会話の音声が外部に漏れないようにマスキングする音を出力したりすることができる。その際には例えば人感センサや音量センサからの信号に基づいて出力される音の種類、質、音量、音の発生位置等が演算装置により調整されてもよい。
犬や猫などのペット(愛玩動物)の居る住宅等の室内では、室内にいる犬、猫等のペットの鳴声や動きを検知して、興奮状態の場合は沈静化させてリラックスを促したりする音を出力することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 室内空間
10 音響システムを有する室内構造
11 壁部
12 天井部
13 床部
15 音響システム
16 スピーカー
17 面材
18 振動器
20 センサ
21 入力装置
22 音源装置
25 演算装置
30 増幅装置