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特許7553247走査型プローブ顕微鏡に適したプローブの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】走査型プローブ顕微鏡に適したプローブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01Q 70/16 20100101AFI20240910BHJP
【FI】
G01Q70/16
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020031411
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2020144120
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】19160202
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(73)【特許権者】
【識別番号】599098493
【氏名又は名称】カトリーケ・ユニフェルシテイト・ルーヴァン
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ハンチェル
(72)【発明者】
【氏名】テイス・ベーメ
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102010035931(DE,A1)
【文献】特開平08-285872(JP,A)
【文献】特開2003-240700(JP,A)
【文献】特開平02-075902(JP,A)
【文献】国際公開第2009/012180(WO,A1)
【文献】国際公開第1998/005920(WO,A1)
【文献】特開平09-178763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00~90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)に形成した型(2)に種粒子(3)を堆積させた後に、前記型内にプローブ材を堆積させることで、少なくとも1つのプローブ材からなる外層(21)を成長させることによって、プローブ先端本体(10)を製造する工程であって、前記外層(21)が成長する際に隣接する種粒子(3)間のスペースにおいて厚くなることで不規則な厚みを有する層(16)が自然形成され、該層(16)がマスク層としての機能を得る工程と、
前記プローブ先端本体(10)にプラズマエッチング処理を施す工程であって、前記マスク層が前記プローブ材のエッチングのエッチングマスクとして作用し、前記プラズマエッチング処理および前記エッチングマスクは前記プローブ材で形成される1つ以上の先端部(15)を製造するように構成されており、前記1つ以上の先端部は前記プラズマエッチング処理前の前記プローブ先端本体(10)よりも著しく小さく尖っている工程と
を含む、走査型プローブ顕微鏡に適したプローブ先端の製造方法。
【請求項2】
前記不規則な厚みを有する層(16)は、前記プローブ先端本体の前記製造工程の後かつ前記プラズマエッチング処理の前に、前記プローブ先端本体上に故意に堆積された粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不規則な厚みを有する層(16)は、前記型(2)の表面に自然に形成された混合物(12)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基板(1)に形成した型(2)に種粒子(3)を堆積させた後に、前記型内にプローブ材を堆積させることで、少なくとも1つのプローブ材からなる外層(21)を成長させることによって、プローブ先端本体(10)を製造する工程であって、前記外層(21)が成長する際に隣接する種粒子(3)間のスペースにおいてシリコンオキシカーバイド層(12)が厚くなることで、前記種粒子(3)と前記シリコンオキシカーバイド層(12)とを含む不規則な厚みを有する層(16)が自然形成され、該層(16)がマスク層としての機能を得る工程と、
前記プローブ先端本体(10)にプラズマエッチング処理を施す工程であって、前記マスク層が前記プローブ材のエッチングのエッチングマスクとして作用し、前記プラズマエッチング処理および前記エッチングマスクは前記プローブ材で形成される1つ以上の先端部(15)を製造するように構成されており、前記1つ以上の先端部は前記プラズマエッチング処理前の前記プローブ先端本体(10)よりも著しく小さく尖っている工程と
を含み
前記プラズマエッチング処理は、
第1の短エッチング時間実行され、前記不規則な厚みを有する層(16)にクレータ(17)を生成するように構成されている第1エッチング工程と、
前記第1の短エッチング時間よりも著しく長い第2のエッチング時間実行され、前記1つ以上の先端部(15)を生成するように構成されている第2エッチング工程と
を含む、走査型プローブ顕微鏡に適したプローブ先端の製造方法。
【請求項5】
前記プラズマエッチング処理の終わりには、前記先端部(15)は、前記プローブ先端本体(10)の全体にわたって分布している、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記プローブ材は、ダイヤモンドである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマエッチング処理の後に実行される以下の工程
前記1つ以上の先端部(15)上にキャップ層を堆積させ、それによって前記1つ以上の先端部を完全に被覆する工程
前記先端部にプラズマエッチング処理を施し、前記1つ以上の先端部の先端領域から前記キャップ層を除去するように構成されている工程であって、前記先端領域は前記1つ以上の先端部の頂点を含みつつ前記1つ以上の先端部(15)の側面の周囲に前記キャップ層を実質的に維持する工程
をさらに含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子間力顕微鏡法(AFM)または走査拡散抵抗顕微鏡法(SSRM)などの走査型プローブ顕微鏡(SPM)技術に適したプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
SPMプローブは、一端がホルダーに取り付けられ、他端が先端を担持する細長いストリップを備える。ストリップはプローブのカンチレバーと称されるが、先端は例えば米国特許第5221415号に示されているようにカンチレバーの平面上に配置されたピラミッド体であってもよく、それによってカンチレバーに対して基本的に垂直な方向に尖る。あるいは、例えば米国特許第8484761号に示されているように、先端はカンチレバーの平面内で延びていてもよいし、または、先端はカンチレバーから0度から90度の間の角度で延びていてもよい。SPM捕捉中、先端は表面に接触または近接して配置され、プローブは所定の軌道(通常は一連の平行線)に沿って走査される。先端と表面との間の相互作用は、先端の特性に応じて、表面の地形的、電気的、もしくは磁気的データに変換されるか、またはサンプルの組成に関連する信号に変換される。プローブは調査する表面と連続的に接触してもよいし、または断続的な接触モードが適用されてもよい。表面特性は、プローブ表面の接続の(電気的またはその他の)インピーダンスの変化を検出することによって測定される。非接触モードは、プローブと表面との間の相互作用がファンデルワールス力などの非接触力によって支配的な場合に同様に適用できる。
【0003】
先端とカンチレバーの製造のために様々な材料が提案されている。全体がダイヤモンドの先端およびダイヤモンドでコーティングされた先端は、ダイヤモンドプローブ材の機械的および電気的特性により、有利であることが確認されている。先端の頂点領域の寸法により、捕捉の分解能が決まる。ピラミッド状の先端および平面内の先端が用意されており、ナノスケールの表面形状のイメージングと特性評価が可能である。ただし、新規の10nm未満の技術ノードでは、現在利用可能な先端のアスペクト比が低くなりすぎる。例えば、米国特許第6328902号から、「先端上の先端(tip-on-tip)」構造を製造し、それにより先端のアスペクト比を増加させることが公知であるが、そのような構造を製造するために利用可能な方法は技術的に複雑である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、アスペクト比が増加したプローブ先端を製造するための技術的に簡単な方法を提供することを目的とする。本発明は、添付の特許請求の範囲に開示される方法と、これらの方法によって製造されるプローブ先端とに関する。
【0005】
本発明によれば、1つ以上の比較的小さな先端部が、プローブ先端本体自体の製造後に、SPMに適したプローブの比較的大きな先端本体上に製造される。比較的小さな先端部はナノサイズの先端であるが、先端本体の寸法はマイクロメートルのオーダーである。プローブ先端本体は、当該技術分野で公知の任意の技術によって、例えばダイヤモンドなどのプローブ材で型を充填することによって製造できる。比較的小さな先端部の製造は、プローブ先端本体の外面にあるマスク層を使用して、自己整合プラズマエッチング処理によって実現される。マスク層は、酸化物もしくはオキシカーバイドなどのナノサイズの粒子および/または混合物を含んでもよく、それらはプローブ先端本体の外面または型の外面上に自然に形成される。ナノサイズの粒子は、型内にプローブ材が堆積される前に型内に堆積された種粒子であるか、および/または、カンチレバーもしくはエッチングが実行される反応チャンバからスパッタリングされた粒子などのようにエッチング処理自体の間に生成された粒子であり得る。これに代えてまたはこれに加えて、マスキング粒子はエッチング処理の前にプローブ先端本体に故意に堆積されてもよい。
【0006】
本発明は、特に走査型プローブ顕微鏡法(SPM)に適したプローブ先端を製造する方法に関し、
前記方法は、
少なくとも1つのプローブ材からなる外層を備えるプローブ先端本体を製造する工程と、
前記プローブ先端本体の前記製造工程の間および/または前記製造工程の後に前記プローブ材からなる前記外層の上にマスク層を形成する工程と、
前記プローブ先端本体にプラズマエッチング処理を施す工程であって、前記マスク層が前記プローブ材のエッチングのエッチングマスクとして作用し、前記プラズマエッチング処理および前記エッチングマスクは前記プローブ材で形成される1つ以上の先端部を製造するように構成されており、前記1つ以上の先端部は前記プラズマエッチング処理前の前記プローブ先端本体よりも著しく小さく尖っている工程とを含む。
【0007】
一実施形態によれば、前記マスク層は、前記プラズマエッチング処理の前に形成される不規則な厚みを有する層を含み、前記不規則な厚みを有する層は、前記プローブ材のエッチングのエッチングマスクとして作用する。
【0008】
前記不規則な厚みを有する層は、前記プローブ先端本体の前記製造工程の後かつ前記プラズマエッチング処理の前に、前記プローブ先端本体の表面に、例えば酸化によって自然に形成される混合物を含んでもよい。
【0009】
前記不規則な厚みを有する層は、前記プローブ先端本体の前記製造工程の後かつ前記プラズマエッチング処理の前に、前記プローブ先端本体上に故意に堆積された粒子を含んでもよい。
【0010】
一実施形態によれば、前記プローブ先端本体は、基板に型を形成することによって、かつ前記型内に前記プローブ材を堆積させることによって製造され、種粒子は前記プローブ材を堆積させる前に前記型に堆積されており、前記不規則な厚みを有する層は前記種粒子を含む。
【0011】
一実施形態によれば、前記不規則な厚みを有する層は、前記型の表面に自然に形成された混合物をさらに含む。
【0012】
一実施形態によれば、前記不規則な厚みを有する層のエッチングレートは、前記プローブ材のエッチングレートよりも著しく小さい。
【0013】
一実施形態によれば、前記プラズマエッチング処理は、
第1の短エッチング時間実行され、前記不規則な厚みを有する層にクレータを生成するように構成されている第1エッチング工程と、
前記第1の短エッチング時間よりも著しく長い第2のエッチング時間実行され、前記1つ以上の先端部を生成するように構成されている第2エッチング工程と
を含む。
【0014】
一実施形態によれば、前記プローブ先端本体はカンチレバーに取り付けられ、前記カンチレバーの材料の粒子は前記プラズマエッチング処理中にスパッタリングされて前記プローブ先端本体上に堆積され、前記カンチレバーからの前記スパッタリングされた粒子は前記プラズマエッチング処理の残り時間に前記マスク層の形成に寄与する。
【0015】
一実施形態によれば、プラズマエッチング処理はエッチングチャンバで実行され、前記チャンバ内の材料からの粒子はエッチング処理中にスパッタリングされて前記プローブ先端本体上に堆積され、前記チャンバ内の材料からのスパッタリングされた粒子は前記エッチング処理の残りの時間に前記マスク層の形成に寄与する。
【0016】
一実施形態によれば、前記エッチング処理中に生成されたポリマーのエッチング残留物は、プローブ先端本体上に堆積され、前記エッチング残留物は前記エッチング処理の残りの時間に前記マスク層の形成に寄与する。
【0017】
一実施形態によれば、前記エッチング処理は、異なるプラズマ条件で異なるエッチング時間実行される複数のエッチング工程を含む。
【0018】
前記プラズマエッチング処理の終わりには、前記先端部は、前記プローブ先端本体の全体にわたって分布していてもよい。他の実施形態によれば、前記プローブ先端本体はピラミッド状であり、前記プラズマエッチング処理の終わりには前記1つ以上の先端部は前記プローブ先端本体の頂点領域に存在し、前記プローブ先端本体の側面には先端部が存在せず、
これらは以下の作用
前記プラズマエッチング処理中に前記側面よりも前記頂点領域に高濃度のマスキング粒子が堆積される
前記プローブ先端本体はコアを含み、前記コア上での前記プローブ材の層の厚みは前記側面よりも前記頂点領域で大きいため、前記プラズマエッチング処理の終わりには前記プローブ材を前記側面から除去される
の1つまたは組み合わせを通じてなされる。
【0019】
一実施形態によれば、前記エッチング工程は、処理を通じて同じプラズマガスまたは同じプラズマガス混合物を使用する単一のエッチング工程からなる。
【0020】
前記プローブ材は、ダイヤモンドであってもよい。他の実施形態によれば、前記プローブ材は、窒化チタン(TiN)である。
【0021】
本発明の方法は、前記プラズマエッチング処理の後に実行される以下の工程
前記1つ以上の先端部上にキャップ層を堆積させ、それによって前記1つ以上の先端部を完全に被覆する工程
前記先端部にプラズマエッチング処理を施し、前記1つ以上の先端部の先端領域から前記キャップ層を除去するように構成されている工程であって、前記先端領域は前記1つ以上の先端部の頂点を含みつつ前記1つ以上の先端部の側面の周囲に前記キャップ層を実質的に維持する工程
をさらに含んでもよい。
【0022】
本発明は、プローブ材からなる少なくとも1つの外層を含むプローブ先端本体を備え、前記プローブ材で形成された複数の先端部は前記プロ-ブ先端本体の全体にわたって分布し、前記先端部は前記プローブ先端本体よりも著しく小さく尖っている、走査型プローブ顕微鏡に適したプローブ先端にも同様に関連する。
【0023】
一実施形態によれば、前記先端部は、前記先端部の先端領域を除く外面にキャップ層を備え、前記先端領域は前記先端部の頂点を含む。
【0024】
本発明は、頂点領域を有するプローブ先端本体を備えるとともに、前記プローブ先端本体の頂点領域に1つ以上の先端部を備え、前記プローブ先端本体の残りの部分には先端部は設けられておらず、前記先端部は前記プローブ先端本体よりも著しく小さく尖っており、前記先端部は前記先端部の先端領域を除く外面にキャップ層を備え、前記先端領域は前記先端部の頂点を含む、走査型プローブ顕微鏡(SPM)に適したプローブ先端にも関連する。
【0025】
本発明は、カンチレバーと、前記カンチレバーに取り付けられるホルダーと、前記カンチレバーの末端に取り付けられるプローブ先端とを備え、前記プローブ先端は、本発明に係るプローブ先端であるプローブにも関連する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a図1aは、プローブが成形技術によって製造される場合の一実施形態に係る本発明の方法を示す。
図1b図1bは、プローブが成形技術によって製造される場合の一実施形態に係る本発明の方法を示す。
図1c図1cは、プローブが成形技術によって製造される場合の一実施形態に係る本発明の方法を示す。
図1d図1dは、プローブが成形技術によって製造される場合の一実施形態に係る本発明の方法を示す。
図1e図1eは、プローブが成形技術によって製造される場合の一実施形態に係る本発明の方法を示す。
図2a図2aは、シリコン型でのダイヤモンド成長初期に形成されるSiOxCy層の外観を示す。
図2b図2bは、シリコン型でのダイヤモンド成長初期に形成されるSiOxCy層の外観を示す。
図2c図2cは、シリコン型でのダイヤモンド成長初期に形成されるSiOxCy層の外観を示す。
図3a図3aは、先端本体がピラミッド状の場合にナノサイズの先端部が先端本体の全体にわたって分布するときの方法の結果を示す。
図3b図3bは、先端本体の頂点領域における少数または単一のナノサイズの先端部を備えるピラミッド状の先端を示す。
図3c図3cは、先端本体の頂点領域における少数または単一のナノサイズの先端部を備えるピラミッド状の先端を示す。
図4図4は、先端本体の側面よりも頂点領域により厚いダイヤモンド層を有するピラミッド状の先端本体を示す。
図5a図5aは、いかに本発明の方法が面内プローブに適用され得るかを示す。
図5b図5bは、いかに本発明の方法が面内プローブに適用され得るかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
成形技術によって製造されるダイヤモンドのプローブ先端の場合について本発明の方法を詳細に説明する。しかしながら、この方法は、他の材料で形成され、他の技術によって製造された先端にも適用可能である。図1aは、ピラミッド状の型2が形成されているシリコン基板1を示している。これは、通常、基板の結晶面に沿った異方性ウェットエッチングによって行われる。これは、例えば、基板1が(100)配向のシリコン基板である場合、正方形の開口部で基板をウェットエッチングする一方、基板の残部をマスクで保護することによって達成可能である。型の寸法はマイクロメートルのオーダーであり、例えば、型の側面は約5~10マイクロメートルの長さであってもよく、型の深さは同じオーダーの大きさであってもよい。図1aに含まれる型の平面視を示す詳細図に概略を示すように、ナノサイズのダイヤモンドの種粒子3が型に堆積される。種粒子によって、型内でのダイヤモンド層のその後の成長が可能となる。当該技術分野で公知であるように、種粒子の堆積は浸漬シーディング(immersion seeding)によって行われてもよく、型2を含む基板1は粒子をエタノールまたはHOなどの溶媒に溶解したコロイド溶液に浸漬される。これらのダイヤモンドナノ粒子のポテンシャルは、シリコン基板の電位と反対になるように調整され、これにより、これらのダイヤモンドナノ粒子が引き寄せられて最終的にシリコン基板の表面に堆積する。詳細図は粒子が直線的な配列で均等に分布しているものを示しているが、実際には粒子はよりランダムに分布する。
【0028】
本発明のこの特定の実施形態によれば、これらの粒子の少なくとも一部は、ドープされていない(non-doped)ダイヤモンド粒子である。型に堆積されたときの粒子の密度は、既存の方法に従ってもよく、例えば1E10/cmから5E10/cmの間であってもよい。ただし、密度は、シーディング分散化学と、粒子および基板の電位と、シーディング時間とを調整することにより、1E9/cmから1E11/cmのより広い範囲内で制御されてもよい。適用される密度は、型内で閉じた(つまり完全に合体した)ダイヤモンド層の成長を可能にするものである必要がある。一実施形態によれば、粒子は、上記の密度のいずれかで堆積された、ドープされていないダイヤモンド粒子とドープされたダイヤモンド粒子との混合物からなる。ドープされた粒子およびドープされていない粒子の両方によって閉じたダイヤモンド層の成長が可能となるが、ドープされていない粒子のみが本発明によるナノサイズの先端を形成するためのマスクとして後に作用する。個々の粒子の直径は通常3~5nmであるが、多くの場合、密集して集合し、通常5~25nmのサイズの分布となる。
【0029】
次に、ドープされたダイヤモンド層が、例えば化学気相蒸着(CVD)によって堆積される。ドーパント(dopant)は、ホウ素であってもよい。図1bに示すように、ダイヤモンド層は、型2内で基板1の表面に堆積され、パターン化されて型の内部と周囲にダイヤモンド層のパッチ4が形成される。従って、ダイヤモンドは型のキャビティには完全に充填されないが、ダイヤモンド層は型の逆ピラミッド型の表面に堆積する。ダイヤモンド層の厚さは、必要なプローブ特性によって異なる。約1マイクロメートルの厚さのダイヤモンド層がよく使用されるが、より薄い層、例えば約100nmも可能である。また、型全体にダイヤモンドを充填することにより、完全なダイヤモンドの先端を製造することも可能である。
【0030】
図1cに示すように、ダイヤモンドの堆積後には、金属層スタック5の堆積とパターン形成が続く。これは、例えば、接着層および剥離層として機能するTaN(約50nm)と、Ni電気めっき用のシード層としてのCu(約50nm)と、カンチレバー材料としてのNi(約5μm)との複合物であってもよい。金属が型キャビティの残部を充填するため、このキャビティは最終的にダイヤモンド層の上に金属コアが形成された中実の先端で満たされる。金属のパターン形成は、基部6が形成されるとともにカンチレバー7が基部6から外向きに延びるように行われる。プローブの解放を容易にするために、基部6の両側で外向きに延びる側方アーム8が設けられてもよい。続いて、カンチレバー7および型内部の先端がアンダーエッチングされ、基部6が剥離層の接着力を克服して基板からわずかに剥離される。次に、図1dに示すように、シリコンホルダー先端9が基部6に取り付けられ、アセンブリが基板から取り外され、図1eに示す完成したプローブになる。カンチレバー7の末端には、ピラミッド状の先端本体10が設けられている。ピラミッド状の先端本体10は、ピラミッドの外側かつ先端にNiコアとダイヤモンド層とを有している。また、基面11も、ダイヤモンドで形成され、先端本体10の周囲に延在している。基面11は、カンチレバー7の材料に埋め込まれている。上述の方法の工程のパラメータは、当業者には既知であり、ここでは詳細に説明しないものとする。上記の工程を実現するための当該技術分野で既知の任意の技法が、本発明の方法に適用可能である。アンダーエッチングおよび剥離処理の詳細は、例えば、米国特許第6756584号に記載されている。
【0031】
本発明の方法の本実施形態を特徴付ける方法工程は、上述の製造に追加される工程である。図1eに示すプローブには、プラズマエッチング処理が施される。これは、反応性イオンエッチング(RIE)または誘導結合プラズマ(ICP)エッチングであってもよく、ドープされてないダイヤモンドのナノ粒子3が、先端本体10のドープされたダイヤモンドよりも低いエッチングレートを有するように構成されてもよい。これは、粒子がドープされたダイヤモンド層よりも遅くエッチングされることを意味し、即ち、粒子はドープされたダイヤモンドをエッチングするためのエッチングマスクとして機能する。この作用を有する適切なエッチング工程は、プラズマガスとしてOを使用するプラズマエッチングであり、これ以降はOプラズマと称され、当該技術分野で周知である(適切なパラメータの例は、後述する)。さらに、シリコン型でダイヤモンドを成長させる処理の初めに、薄い(通常1~5nmの厚さの)シリコンオキシカーバイド層が不均一な厚みで自然に形成される。シリコンオキシカーバイドは、x<2およびy>0のSiOxCy混合物である。ドープされていない粒子3と同様に、SiOxCy層は、Oプラズマエッチングによって、ドープされたダイヤモンドよりも遅くエッチングされる。即ち、SiOxCyもエッチングマスクとして機能する。
【0032】
図2aに示すように、SiOxCy層12は隣接する種粒子3の間のスペースにおいて型表面13に形成され、成長するドープされたダイヤモンドの島状構造14の間のスペースが閉じて完全に合体したダイヤモンド膜4が形成されるまで厚く成長する。図2bは、型から外した後のプローブの外面を示している。図2bにおいて太線で示されているように、SiOxCy層12がナノ粒子3とともに不規則な厚みを有する層16を形成している。この先端がOプラズマエッチングを施されると、ドープされたダイヤモンド層4の一部が露出するまで、SiOxCy層12およびナノ粒子3がゆっくりとエッチング除去される。これは、層16の厚さが不規則であるために局所的に起こる。これらの箇所では、ドープされたダイヤモンドは、SiOxCy層12および種粒子3よりも高速でエッチングされる。Oエッチング処理が続くと、鋭いナノサイズのドープされたダイヤモンド先端部15(以降、ナノ先端ともいう。)がダイヤモンド層4に形成され、図3aに示す「ハリネズミ」先端構造となる。ナノ先端15は、ピラミッド状の先端本体10の全体と、先端本体の周囲のダイヤモンドの基面11上に分布している。
【0033】
図3aに示す構造を実現できる他のエッチング処理によれば、先端は、最初にSFまたはSFとOの混合物をプラズマガスとして使用し、例えば約20秒間の短いプラズマエッチングを施される。この短い「フラッシュ(flash)」エッチングにより、図2cに示すようにSiOxCy層12にクレータ17が作成される。この工程後に引き続いて、上記のOプラズマエッチングが行われる。SiOxCy層の一部を予め除去すると、ドープされたダイヤモンド層4がより速く露出するため、図3aの「ハリネズミ」構造が全体として短い時間で実現される。
【0034】
SiOxCy層12およびエッチングマスクとして作用する種粒子3とは別に、プラズマエッチング処理自体の間に第3のマスキング作用が生じてもよい。プラズマのエネルギは、スパッタリングによって、エッチングチャンバ内の材料から粒子を放出させてもよく、および/または、カンチレバーから粒子を放出させてもよい。上記粒子は先端に堆積され、所定のエッチングレシピのエッチングマスクとしても機能し得る。また、エッチング処理中に先端に堆積したポリマーのエッチング残留物がマスキング作用を発揮してもよい。Niカンチレバー上で上記の成形技術により形成されたダイヤモンドの先端の特定の場合において、カンチレバーからのNi粒子のスパッタリングは、ナノ先端15の形成に大きく寄与し得る。Ni粒子は、O、SF、またはSF/Oプラズマによって生成されるイオン照射の影響下で、スパッタリングによってカンチレバーから放出される。また、プラズマからのイオン照射により、ピラミッドは静電荷を獲得し、結果として電界が発生し、Ni粒子を引き付ける。これにより、Ni粒子がピラミッドに堆積するが、NiはSFでもOプラズマでも本質的にエッチングされないため、Ni粒子も種粒子3およびSiOxCy層12と同じようにエッチングマスクとして機能する。表面がより鋭い箇所、つまりピラミッド平面の縁および主には頂点で電界がより強くなるため、Ni粒子の濃度がこれらの領域で濃くなり、これは特定の先端構造の生成に利用され得る(詳細は後述する)。ドライエッチングが、十分早く、つまりナノ先端15自体をエッチングで除去する前に終了したとき、上記の3つのマスキング作用、SiOxCy層12、種粒子3、およびNi粒子は、図3aに示す「ハリネズミ」構造を生成する複合作用を有している。SiOxCy層およびシード粒子の作用は、エッチング処理の開始時により重要であり、例えば約100nmの薄いダイヤモンド層の場合には支配的な処理であり得る。例えば1マイクロメートルのより厚いダイヤモンド層または完全なダイヤモンド先端の場合、3つの作用すべてがナノ先端15の形成に寄与し、SiOxCy層と種粒子がエッチングされた後にNiスパッタリングの作用が支配的になる。
【0035】
前述のように、3つのマスキング作用(種粒子3、SiOxCy層12、および、スパッタリング粒子ないしエッチング残留物)はすべて、Niカンチレバー上のシリコン型で生成されたダイヤモンド先端の場合には、「ハリネズミ」構造の形成に寄与し得る。他の材料および/または他の材料の型で、あるいは成形技術以外の製造技術によって製造された先端については、上記のすべての作用が必ずしも同時に生じるとは限らない。本発明の方法では、上記のマスキング作用のいずれか1つが単独または他との組み合わせで生じ得る。カンチレバー材料が適切なエッチングマスクとならない場合、スパッタリングの作用はそれほど重要ではない。また、SiOxCy層と同様の層は、形成されない場合もあるし、マスキング作用を有していない場合もある。TiNプローブ先端の場合のように、型内の種粒子の存在は常に必要なものではないが、これについては後述する。一方、エッチング工程においてマスクとして機能することになる粒子は、プローブ製造工程後かつエッチング工程前に先端本体10上に堆積されてもよい。例えば、ドープされていないダイヤモンド粒子は、コロイド堆積によってダイヤモンドの先端に堆積されてもよい。これは、上記のマスキング作用の1つ以上に加えて、または、これらの作用が適用できない場合、例えば種粒子が特定のエッチングの化学マスクとして適切でない場合やプローブが成形技術によって製造されない場合に実行されてもよい。また、マスキング作用は、カンチレバーまたはエッチングチャンバからのスパッタリングされた粒子など、エッチング処理中に先端に堆積した粒子のみに起因することもあり得る。これは、種粒子がなく、自然に形成された酸化物などの混合物がマスキング作用を発揮しない場合に該当し得る。
【0036】
上記の説明から、添付の請求項1で言及する「マスク層」が様々な構成部分から構成され得ることは明らかである。マスク層は、図2bの層16のような、エッチング処理前に形成された不規則な厚みを有する層を含んでもよい。また、マスク層は、エッチング処理自体の間にこの層の形成に寄与する粒子からなってもよいし、当該粒子を含んでもよい。また、特許請求の範囲に記載された「不規則な厚みを有する層」は、プローブ先端の材料および製造工程に応じて様々な組成を有し得る。この層は、種粒子のみで構成されてもよいし、またはプローブ製造工程後に先端本体に堆積した粒子のみで構成されてもよいし、TiNプローブ先端で形成される酸化物などの先端本体で自然に形成される混合物のみで構成されてもよいが、これについては後述する。この層は閉じることができるので、プローブ材料のいずれも最初はプラズマに曝されないが、このプローブ材料はマスク層が局所的にエッチング除去されたときにのみ露出されることとなる。これは、層の不規則な厚みに起因して必然的に局所的に発生する。不規則な厚みを有する層は、エッチング処理の最初から下側にあるプローブ材料を局所的に露出する層であってもよく、例えば種粒子の間において厚さが0となる種粒子のみからなる層であってもよい。
【0037】
上述のエッチング処理は、ナノ先端15が所定の形状およびアスペクト比となったときに終了する。ダイヤモンド先端の上記Oプラズマエッチングの場合、Oエッチング時間によってナノ先端の形状が決まる。図3aに示すように、最初はナノ先端は円錐状の柱である。エッチング処理が長く適用されると、ドライエッチング処理のわずかな等方性により、ナノ先端はより針状になる。従って、エッチング時間を制御して所定の形状を得ることができる。エッチング処理が終了しても、種粒子および/またはSiOxCy層および/またはスパッタリングされた粒子の一部がナノ先端上に残存する場合もある。用途によっては、これらのエッチングマスクの残存は問題とならず、エッチングマスクは残存してもよい。そうでない場合、わずかな酸素のオーバーエッチングによりこれらの残存物を焼失させてもよいし、または、電気的なSPM測定で先端を使用する場合には高バイアス電圧または高スキャン力を短時間加えることで残存物を除去してもよい。
【0038】
図3aは、模式図である。実際には、ナノ先端15の数はさらに多くてもよいし、ナノ先端はダイヤモンド表面にわたって一層ランダムに分布してもよい。ナノ先端の寸法は、ナノメートルのオーダーであり、例えば、高さが約50~100nmである。ナノ先端の頂点領域の半径は、1nm未満から数ナノメートルまでの範囲であり、標準的なピラミッド状の先端の半径と同等またはそれより良好であるが、ナノ先端はエッチング処理前の先端本体10よりも著しく小さく尖っている。換言すると、ナノ先端15のアスペクト比は、エッチング処理前の先端本体10の頂点領域のアスペクト比と比較して大幅に大きい。頂点領域のアスペクト比は、頂点領域を球面として近似してアスペクト比を表面の平均直径とその高さの比として定義することによって決定できる。ナノ先端のアスペクト比は、例えば先端の高さに対する円錐形の先端の平均幅の比として、ナノ先端の形状に応じて一般に確立された定義に従って計算してもよい。従って、本発明の方法は、複雑な微細加工または他の製造方法を要せず、実際に表面と接触している先端部のアスペクト比が増加したプローブを製造する方法を提供する。エッチング処理は自己整合であり、粒子、SiOxCy層、または添付の請求項1で言及されているマスク層への他の寄与因子以外のリソグラフィーマスクを必要としない。
【0039】
図3aに示されているプローブ先端をSPMによるサンプルのプロービングに使用する場合、サンプルに接触するナノ先端は、プローブの角度位置に応じて、ピラミッドの上部の最も外側のナノ先端であってもよいし、または、それに隣接するナノ先端のうちの1つであってもよい。従って、この種のプローブは、当該技術分野でそれ自体公知の傾斜可能なSPMヘッドと組み合わせて使用するのに非常に適している。複数のナノ先端15が存在することにより、これらの先端の少なくとも1つとサンプルとの接触が保証される。また、複数の鋭いナノ先端の存在によって、本発明のプローブ先端は、例えば公知の「外科用メスAFM」技術に応用されるような、表面を引っ掻いて表面から材料を取り除くのに適したものとなる。本発明によって製造される複数の鋭いナノ先端を含むプローブ先端の他用途としては、生体細胞などのナノ/マイクロ対象物を鋭いナノ先端に付着させることも可能である。これは、複数の近接したナノ先端が表面の濡れ性に影響を与え得るという既知の事実によって可能となるものである。
【0040】
本発明は、上記の「ハリネズミ」型の構造に限定されない。一実施形態によれば、ドライエッチング処理は、ピラミッドの側面のナノ先端15がエッチングにより除去されるまで継続される。ただしそれでも、図3bおよび図3cに模式的に示すように、1つ以上のナノ先端15が先端本体10の頂点領域に形成される。この先端構造は、以後「先端上の先端形態」とも称し、同時に生じ得る1つ以上の作用を利用することによって実現されてもよい。上記のダイヤモンドコーティングされた先端/シリコン型/Niカンチレバーのセットの場合、エッチング処理中のカンチレバーからのNi粒子のスパッタリングは、この種の先端構造に寄与する作用の1つである。上述のように、イオン照射によって生成された電界は、表面がより鋭利な場所、つまりピラミッド平面の縁部や主に頂点で強くなる。電界はNi粒子を引き寄せるので、側壁よりも頂点に多くのエッチマスク粒子が存在する。結果として、側壁のダイヤモンド層が完全にエッチングにより除去されるが、1つ以上の鋭利なダイヤモンド先端15が頂点領域に残存する。従って、エッチング工程後、先端本体は、頂点領域の鋭いダイヤモンド先端15を除いて、全体がNiで形成される。
【0041】
この「先端上の先端」形態への第2の寄与は、ダイヤモンド層がピラミッドの側面と比較して頂点領域の近くで厚くなり得ることである。これについては図4に示すが、図4はNiコア20とドープされたダイヤモンド層21とを備えた、ダイヤモンドでコーティングされたプローブ先端本体の断面を示している。また、図4は、ドープされていないダイヤモンドの種粒子3およびSiOxCy層12の存在を模式的に示している。ピラミッドの基面に垂直な方向において測定したダイヤモンド層の厚さは、ピラミッドの側面(厚さa2)よりも頂点領域(厚さa1)で大きくなっていることが確認できる。これは、ダイヤモンド層を形成するために適用される堆積工程の結果であり得る。ダイヤモンド層21がピラミッドの側面から除去されるまでドライエッチング処理が続けられると、厚みa1とa2との間の厚み差のために、十分な厚みのダイヤモンドが頂点領域に残存する。これにより、図3bおよび図3cに示すように、1つ以上の鋭い先端部15が頂点領域のみに現れる。現れる先端部の数は、頂点領域付近の粒子の正確な分布に依存する。従って、本実施形態は、複雑な微細加工などの方法を要することなく、「先端上の先端」プローブを製造する簡単な方法を提供する。厚みa1とa2との差は、必ずしも生じるとは限らず、上述の作用を得るために十分でない場合もある。これは、プローブ材料(ダイヤモンドまたはその他)の層21の平均厚さ、および/または、この層を生成するときに適用される特定のパラメータに依存し得る。
【0042】
本発明は、任意の公知技術によって製造され、任意の公知材料の例えばシリコンとシリコン混合物の先端または金属と金属合金の先端から形成される、SPM走査に適した任意の種類のプローブの製造に利用できる。本方法は、ホウ素でドープされたダイヤモンド先端以外のダイヤモンド先端、たとえばリンでドープされたダイヤモンド、ドープされていないダイヤモンド、NV(窒素空孔)ダイヤモンドにも同様に利用できる。本発明者らは、Niカンチレバー上にTiNで形成されたナノ先端15を含む「ハリネズミ」プローブ先端を製造した。プローブは、上記方法と同様の成形技術で製造した。ただし、ダイヤモンドCVD層の代わりに、約150nmの厚さのTiN層を、TiNのスパッタリングによってシリコン型に堆積させた。この型には、種粒子は堆積させなかった。TiN層上に形成された不規則な厚みを有する層は、型から取り出された後、最初はTiNピラミッドの外面に自然に形成される酸化物層である。酸化物は、SF/O混合気下で、上記の種粒子とSiOxCyの複合作用と同じ方法で、プラズマエッチング処理のエッチングマスクとして機能する。即ち、酸化物は低速でエッチングされるため、その下のTiN層が局所的に露出され、その後より高速レートでエッチングされる。エッチング処理が進むにつれて、スパッタリングされたNi粒子は、上記と同様にマスク層に寄与する。この環境下で先端をプラズマエッチングに曝露することにより、TiNナノ先端15を備えた「ハリネズミ」構造を製造した。適切なエッチングパラメータの詳細は、後述する。
【0043】
本発明は、ピラミッド形状の先端に限定されない。ナノ先端15は、他の先端形状で同様に製造されてもよい。図5aは、例えば米国特許第8484761号から公知の面内プローブを示している。この図は、カンチレバーから外側に延びるとともにカンチレバーの面内にあるダイヤモンドの先端本体10を備えたカンチレバー7を示している。図5bは、本発明によるエッチング処理を適用した後の同じプローブの側面図および先端領域の詳細を示している。ナノ先端15は、カンチレバー7および先端本体10の平面に垂直な方向に延びている。上記のマスク作用を有する粒子は、別の堆積工程で堆積されてもよい。および/または、カンチレバー材料が本目的に適している場合、エッチング工程自体の間にカンチレバー材料および/またはエッチングチャンバ内の材料のスパッタリングによって、および/またはエッチング残留物のマスキング作用によって、マスキング粒子は堆積されてもよい。
【0044】
上記実施形態のいずれかによる方法の完了後に、いくつかの追加的な方法の工程を実行してもよい。これらの追加的な方法の工程は、以下の工程を含む。
1つ以上のナノ先端15上にキャップ層を堆積させ、それによって1つ以上のナノ先端をキャップ層で完全に被覆する工程
キャップ層にプラズマエッチング処理を施し、ナノ先端の側面のキャップ層を維持しながらナノ先端の先端領域からキャップ層を除去する工程であって、先端領域は少なくとも1つのナノ先端の頂点を含んでいる工程
【0045】
換言すると、これらの追加的な工程後、キャップ層はナノ先端の頂点を露出したままナノ先端15の周囲にスリーブを形成するため、SPM装置または他の用途でのナノ先端の機能が阻害されない。キャップ層はナノ先端を補強する。つまり、ナノ先端の機械的抵抗を高める一方で、ナノ先端はその機能実行能力を維持する。本実施形態は、高負荷用途において特に有益であり、キャップ層がナノ先端の破損を防ぐのに役立つ。上記のダイヤモンドの先端またはダイヤモンドコーティングの先端の場合、キャップ層は、図3aに示すようなハリネズミ型プローブか、または、図3bおよび図3cに示すような「先端上の先端」に堆積したSiOx層(1<x<2)であってもよい。SiOx層は、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって堆積させてもよい。SiOx層の厚みは、数十ナノメートルのオーダー、例えば約50nmであってもよい。頂点領域からSiOx層を除去するためのエッチングプロセスは、SFとOの混合物を使用するプラズマエッチングであってもよい。エッチングプロセスは、少なくともナノ先端の頂点が露出すると終了する。適切なパラメータのより詳細な説明は、後述する。
【0046】
1つ以上のナノ先端15上にキャップ層を生成するための前段落で説明した追加の工程は、従来技術で説明した「先端上の先端」プローブ、すなわち先端本体の頂点領域にナノ先端を含むプローブ先端にも適用できるが、ナノ先端は自己整合エッチングプロセスによるこれらのナノ先端の製造を含む上記方法以外の方法によって製造される。例えば、キャップ層は、米国特許第6328902号に記載された方法により製造されたプローブ先端上で上記と同じ工程により製造されてもよい。従って、本発明は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)に適したプローブ先端を製造する方法にも同様に関連し、それは以下の工程を含む。
頂点領域を備えるとともに頂点領域に先端本体よりも著しく小さく尖った一つ以上の先端部を備え、プローブ先端本体の残りの部分には先端部が存在しないプローブ先端本体(10)を製造する工程
1つ以上の先端部(15)上にキャップ層を堆積させ、それによって1つ以上の先端部を完全に被覆する工程
先端部にプラズマエッチング処理を施し、1つ以上の先端部の先端領域からキャップ層を除去するように構成されている工程であって、先端領域は1つ以上の先端部の頂点を含みつつ1つ以上の先端部(15)の側面の周囲にキャップ層を実質的に維持する工程
【0047】
前述の観点から、本発明は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)に適したプローブ先端にも同様に関連し、それは頂点領域を有するプローブ先端本体を含むとともに、先端本体の頂点領域上に1つ以上の先端部を含み、先端本体の残りの部分には先端部が存在せず、先端部は先端本体よりも著しく小さく尖っている。先端部は、先端部の先端領域を除いて、外面にキャップ層を有している。先端領域は、先端部の頂点を含む。
【0048】
以下で説明するキャップ層を生成するための適切なパラメータの例は、自己整合エッチングプロセス法、米国特許第6328902号の方法、または当該技術分野で公知のその他の方法で製造される「先端上の先端」型のダイヤモンドプローブ先端に適用できる。
【0049】
(実施例)
本発明者らは、上記の成形技術により製造された先端本体を含むプローブ上にダイヤモンドの「フルハリネズミ」先端を製造した:シリコン型、型に堆積されたドープされてない種粒子(密度約1E10/cm2)、Niカンチレバー、Niコア上のダイヤモンド層(厚さ約800nm)。以下のエッチングパラメータを適用した。
【0050】
【表1】

※ガス流量は294Kかつ3気圧で供給した。この条件下では、1sccmは、およそ9.09E-9m/sに等しい。
※※1Torr=133,322Pa
【0051】
図3cに示すようなダイヤモンドの「先端上の先端」プローブは、同じ方法で製造しており、即ち同じICP反応器で、同じRF電力およびICP電力で、同じチャンバ圧力を適用して製造したが、以下の一連のエッチングステップによって製造した。
20秒のO/SF混合プラズマエッチング;ガス流量50scccm(O)および2.5sccm(SF
5分のOのプラズマエッチング;Oガス流量50sccm
【0052】
【表2】

※ガス流量は294Kかつ3気圧で供給した。
【0053】
表1のパラメータによって得られるダイヤモンド先端を有する「フルハリネズミ」先端上には、SiOx層をPECVDによって約50nmの厚さで堆積させた。その後、先端には表3に示すパラメータでSF/Oのプラズマエッチングを施した。
【0054】
【表3】

※ガス流量は294Kかつ3気圧で供給した。
【0055】
結果として、SiOx層がナノ先端の頂点から除去される一方で、ナノ先端の側面の周囲に補強キャップ層が形成された。
【0056】
本発明を図面および前述の説明において詳細に図示および説明したが、そのような図示および説明は模式的ないし例示的であり、限定的なものではないとみなされるべきものである。本開示の実施形態に対する他の変形例は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲を参酌して、本願発明を実施する分野における当業者によって理解および達成され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という用語は他の要素または工程を除外せず、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外するものではない。特定の方法が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきものではない。
次の項目1~15は、本願の開示範囲内にある。
[項目1]
少なくとも1つのプローブ材からなる外層(21)を備えるプローブ先端本体(10)を製造する工程と、
前記プローブ先端本体の前記製造工程の間および/または前記製造工程の後に前記プローブ材からなる前記外層の上にマスク層を形成する工程と、
前記プローブ先端本体(10)にプラズマエッチング処理を施す工程であって、前記マスク層が前記プローブ材のエッチングのエッチングマスクとして作用し、前記プラズマエッチング処理および前記エッチングマスクは前記プローブ材で形成される1つ以上の先端部(15)を製造するように構成されており、前記1つ以上の先端部は前記プラズマエッチング処理前の前記プローブ先端本体(10)よりも著しく小さく尖っている工程と
を含む、走査型プローブ顕微鏡に適したプローブ先端の製造方法。
[項目2]
前記マスク層は、前記プラズマエッチング処理の前に形成される不規則な厚みを有する層(16)を含み、前記不規則な厚みを有する層は、前記プローブ材のエッチングのエッチングマスクとして作用する、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記不規則な厚みを有する層(16)は、前記プローブ先端本体の前記製造工程の後かつ前記プラズマエッチング処理の前に、前記プローブ先端本体(10)の表面に、例えば酸化によって自然に形成される混合物を含む、項目2に記載の方法。
[項目4]
前記不規則な厚みを有する層(16)は、前記プローブ先端本体の前記製造工程の後かつ前記プラズマエッチング処理の前に、前記プローブ先端本体上に故意に堆積された粒子を含む、項目2または項目3に記載の方法。
[項目5]
前記プローブ先端本体(10)は、基板(1)に型(2)を形成することによって、かつ前記型内に前記プローブ材を堆積させることによって製造され、種粒子(3)は前記プローブ材を堆積させる前に前記型(2)に堆積されており、前記不規則な厚みを有する層(16)は前記種粒子(3)を含む、項目2から項目4のいずれか1項に記載の方法。
[項目6]
前記不規則な厚みを有する層(16)は、前記型(2)の表面に自然に形成された混合物(12)をさらに含む、項目5に記載の方法。
[項目7]
前記プラズマエッチング処理は、
第1の短エッチング時間実行され、前記不規則な厚みを有する層(16)にクレータ(17)を生成するように構成されている第1エッチング工程と、
前記第1の短エッチング時間よりも著しく長い第2のエッチング時間実行され、前記1つ以上の先端部(15)を生成するように構成されている第2エッチング工程と
を含む、項目2から項目6のいずれか1項に記載の方法。
[項目8]
前記プローブ先端本体(10)はカンチレバー(7)に取り付けられ、前記カンチレバーの材料の粒子は前記プラズマエッチング処理中にスパッタリングされて前記プローブ先端本体(10)上に堆積され、前記カンチレバーからの前記スパッタリングされた粒子は前記プラズマエッチング処理の残り時間に前記マスク層の形成に寄与する、項目1から項目7のいずれか1項に記載の方法。
[項目9]
前記プラズマエッチング処理の終わりには、前記先端部(15)は、前記プローブ先端本体(10)の全体にわたって分布している、項目1から項目8のいずれか1項に記載の方法。
[項目10]
前記プローブ先端本体(10)はピラミッド状であり、前記プラズマエッチング処理の終わりには前記1つ以上の先端部(15)は前記プローブ先端本体の頂点領域に存在し、前記プローブ先端本体の側面には先端部が存在せず、
これらは以下の作用
前記プラズマエッチング処理中に前記側面よりも前記頂点領域に高濃度のマスキング粒子が堆積される
前記プローブ先端本体(10)はコア(20)を含み、前記コア上での前記プローブ材の層(21)の厚みは前記側面よりも前記頂点領域で大きいため、前記プラズマエッチング処理の終わりには前記プローブ材を前記側面から除去される
の1つまたは組み合わせを通じてなされる、項目1から項目8のいずれか1項に記載の方法。
[項目11]
前記プローブ材は、ダイヤモンドである、項目1から項目10のいずれか1項に記載の方法。
[項目12]
前記プラズマエッチング処理の後に実行される以下の工程
前記1つ以上の先端部(15)上にキャップ層を堆積させ、それによって前記1つ以上の先端部を完全に被覆する工程
前記先端部にプラズマエッチング処理を施し、前記1つ以上の先端部の先端領域から前記キャップ層を除去するように構成されている工程であって、前記先端領域は前記1つ以上の先端部の頂点を含みつつ前記1つ以上の先端部(15)の側面の周囲に前記キャップ層を実質的に維持する工程
をさらに含む、項目1から項目11のいずれか1項に記載の方法。
[項目13]
プローブ材からなる少なくとも1つの外層(21)を含むプローブ先端本体(10)を備え、
前記プローブ材で形成された複数の先端部(15)は前記プロ-ブ先端本体の全体にわたって分布し、前記先端部は前記プローブ先端本体よりも著しく小さく尖っている、走査型プローブ顕微鏡に適したプローブ先端。
[項目14]
前記先端部は、前記先端部の先端領域を除く外面にキャップ層を備え、前記先端領域は前記先端部の頂点を含む、項目13に記載のプローブ先端。
[項目15]
カンチレバー(7)と、
前記カンチレバーに取り付けられるホルダー(9)と、
前記カンチレバーの末端に取り付けられるプローブ先端と
を備え、
前記プローブ先端は、項目13または項目14に記載のプローブ先端である、プローブ。


【符号の説明】
【0057】
1 基板
2 型
3 種粒子(ナノ粒子)
4 パッチ(ダイヤモンド層、ダイヤモンド膜)
5 金属層スタック
6 基部
7 カンチレバー
8 側方アーム
9 ホルダー
10 プローブ先端本体(先端本体)
11 基面
12 SiOxCy層
13 型表面
14 ダイヤモンドの島状構造
15 先端部(ナノ先端、ダイヤモンド先端)
16 不規則な厚みを有する層
17 クレータ
20 コア
21 ダイヤモンド層(外層)
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b