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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】廃水から油を除去するための処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/56 20230101AFI20240910BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C02F1/56 F
B01D21/01 108
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020031566
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021133307
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】510338248
【氏名又は名称】エスエヌエフ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・バトニエ
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-014800(JP,A)
【文献】特開2007-038177(JP,A)
【文献】特開平07-163999(JP,A)
【文献】特開平05-345102(JP,A)
【文献】特開2004-230363(JP,A)
【文献】特開昭59-230699(JP,A)
【文献】特開2006-007208(JP,A)
【文献】特開2004-033833(JP,A)
【文献】特開2005-296772(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108975577(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
C02F 1/52-1/56
C02F 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油含有廃水を処理する方法であって、油含有廃水に、式(I)
【化1】
式(I)
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに独立して、水素、-(C1~8)-アルキル、-CH2-O-C1~8アルキル、-C(-O)-O-C1~4アルキル、-C(-O)-NH-C1~8アルキル、-C1~8OH、スルホネートSO3 -、スルホン酸SO3H、及びハロゲンからなる群から選択され;
R1、R2、R3及びR4の1つ又は複数は、アニオン基、又はアニオン基をもたらす後加水分解反応を生じる基であり;
nは、2から100の間に含まれる自然数である]
の水溶性ポリナフタレン誘導体及び水溶性カチオン性(コ)ポリマーを添加する工程を含み、
前記式(I)の水溶性ポリナフタレン誘導体が、2-ポリナフタレンスルホン酸のアルカリ土類金属塩である、方法。
【請求項2】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーが、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、四級化ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種のカチオン性モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーが、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)及びアクリルアミドからなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水溶性ポリナフタレン誘導体が、400g/molから30000g/molの間に含まれる重量平均分子量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水溶性ポリナフタレン誘導体の量が、処理される油含有廃水の重量を基準として10ppmから10,000ppmの間に含まれる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水溶性ポリナフタレン誘導体と水溶性カチオン性(コ)ポリマーとの間の重量比率が、0.5から5の間に含まれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーが、水溶性ポリナフタレン誘導体の前に処理する油含有廃水に添加される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
油含有廃水が、食品工場に由来する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強固な大型フロックを形成し、油含有廃水から油を効率的に除去し得る凝集処理方法に関する。この処理方法は、特定の式を有する少なくとも1種のポリナフタレン誘導体、及び水溶性カチオン性(コ)ポリマーを添加する工程を含む。
【背景技術】
【0002】
多くの産業において、含まれる油を除去するために廃水を処理することが必要とされる(食品工場、自動車工場、印刷工場、油田廃水等)。一般に、生成される廃水は、大量の油に起因して処理が困難である。
【0003】
様々な種類の処理が存在する。例えば、文献JP2014-158993は、油含有廃水を処理するためのカチオン性ポリマー凝集剤の使用を説明している。しかしながら、カチオン性ポリマー凝集剤は、強固なフロックを生成せず、固体-液体分離が困難となる。
【0004】
文献JP6-296977は、油含有廃水を処理するための、ポリアルミニウムクロリド等の無機凝集剤とアニオン性ポリマー凝集剤との組合せを説明している。しかしながら、無機凝集剤の凝集強度は弱い。アニオン性ポリマー凝集剤と組み合わせた場合であっても、凝集強度はまだフロックを効率的に除去するのに十分ではない。更に、無機凝集剤に起因して、処理工程に多くの取り扱い上の制約がある。
【0005】
文献JP2011-131164は、油含有廃水を処理するための、水溶性カチオン性ポリマーの使用に続く第2のポリマー凝集剤の添加を説明しているが、この方法は、強固な大型フロックを生成しない。更に、この方法は、廃水の粘度を低減するために酸性添加剤の添加を必要とし、処理されるスラッジの油含量に関して制限される。
【0006】
上記を鑑み、油含有廃水を処理する産業においてより効果的な処理が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】JP2014-158993
【文献】JP6-296977
【文献】JP2011-131164
【非特許文献】
【0008】
【文献】P. J. Flory、「Principles of Polymer Chemistry」、Cornell University Press (1953)、第VII章、266~315頁
【文献】「Macromolecules, an Introduction to Polymer Science」、F. A. Bovey及びF. H. Winslow編、Academic Press(1979)、296~312頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、強固な大型フロック(凝集塊)を形成し得る、油含有廃水を処理するための及び前記油含有廃水の油の大部分を除去するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、一般式(I)
【0011】
【化1】
【0012】
式(I)
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに独立して、水素、(C1~8)-アルキル、CH2-O-C1~8アルキル、-C(-O)-O-C1~4アルキル、-C(-O)-NH-C1~8アルキル、C1~8OH(1つのOH基を有するC1~8アルキル基)、スルホネート(SO3 -)、スルホン酸(SO3H)及びハロゲンからなる群から選択され;
R1、R2、R3及びR4の1つ又は複数は、アニオン基、又はアニオン基をもたらす後加水分解反応を生じる基であり;
nは、2から100の間、好ましくは2から50の間、より好ましくは2から30の間、更により好ましくは2から10の間に含まれる自然数である]
を有する水溶性ポリナフタレン誘導体及び水溶性カチオン性(コ)ポリマーを油含有廃水に添加する工程を含む。
【0013】
したがって、水溶性ポリナフタレンは、ナフタレンのポリマー、好ましくは同じナフタレンモノマー(同じR1~R4置換基)のポリマーである。しかしながら、R1~R4のいずれかの任意選択の後加水分解に起因して、水溶性ポリナフタレンは、異なるR1~R4基を有するモノマー単位を有し得る。実際には、後加水分解は部分的であってもよい。これは、ナフタレンモノマーが重合した後に行われるため、後加水分解と呼ばれる。後加水分解反応は、水溶性ポリナフタレン誘導体の油含有廃水への添加前又は添加後に行われてもよい。
【0014】
ここで、及び以降において、アルキル基は、直鎖又は分岐状CxH2x+1基であり、例えばC3-アルキルの場合CH2CH2CH3又はCH(CH3)2である。
【0015】
上記の「R1、R2、R3及びR4の1つ又は複数は、アニオン基である」という特徴は、R1~R4の任意の1つ又は複数がスルホネート又はスルホン酸基である場合に対応し得る。
【0016】
疎水性である油は水溶性ポリナフタレン誘導体のナフタレン部分と相互作用することが判明している。この相互作用は、水溶性ポリナフタレン誘導体のアニオン基に起因して油のアニオン性コーティングを形成する。この油のアニオン性コーティングによって、水溶性カチオン性(コ)ポリマーはより容易に油と相互作用し、強固な大型フロックの形成をもたらす。
【0017】
(1)油、(2)水溶性ポリナフタレン誘導体及び(3)水溶性カチオン性(コ)ポリマーの間のこの相互作用により、高い油含量を有する困難なスラッジを処理することが可能となる。
【0018】
本方法の別の利点として、水溶性ポリナフタレン誘導体は、処理するスラッジの粘度を低減する。実際には、食品、自動車又は印刷等の産業に由来する廃水は、それに含まれる大量の油に起因して粘稠性である。水溶性ポリナフタレン誘導体の添加により、粘度が低減され、廃水はより容易に処理されるようになり、消費エネルギーがより少なくなる。
【0019】
水溶性ポリナフタレン誘導体は、低い投入量で添加され、スラッジの処理に必要な水溶性カチオン性(コ)ポリマーの量を低減する。
【0020】
本発明の方法はまた、酸性条件下でも機能する。食品スラッジに由来する廃水のpHは、夏場はスラッジの酸性発酵に起因して酸性(7未満のpH)である。この種のスラッジは、低いpHに起因して、通常の凝集剤を使用して凝集させることが困難である。したがって、本発明は、任意のpHで行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において使用される場合、「水溶性ポリマー」という用語は、水と適切に混合された後に不溶性粒子のない水溶液(25℃で10g/l)を生成するポリマーを指す。
【0022】
本明細書において使用される場合、「A及び/又はB」という用語は、「A」又は「B」又は「A及びB」を意味する。
【0023】
後加水分解反応は、モノマーの重合により形成した後のポリマーに対する化学反応である。この工程は、モノマー、好ましくは非イオン性モノマー、より好ましくは加水分解性官能基を含むモノマー(好ましくはアミド又はエステル)の加水分解性官能基を、加水分解剤と反応させることにある。この加水分解剤は、酵素、イオン交換樹脂、又はアルカリ金属であってもよい。好ましくは、加水分解剤は、ブレンステッド塩基、例えばNaOH又はKOHである。ポリマーのこの後加水分解工程の間、カルボン酸官能基(COOH)及び/又はカルボキシレート官能基(COO-)の数が増加する。実際には、加水分解剤(例えばブレンステッド塩基)とポリマー中に存在する加水分解性官能基(例えばアミド又はエステル官能基)との間の反応は、カルボキシレート基を生成する。加水分解は、部分的又は完全であってもよい。
【0024】
ナフタレン誘導体ポリマー
水溶性ナフタレン誘導体ポリマーは、少なくとも1つのアニオン電荷を有する任意の水溶性ナフタレン誘導体ポリマーであってもよい。換言すれば、そのモノマー単位の少なくとも1つは、少なくとも1つのアニオン基を有する。これは、一般式(I)
【0025】
【化2】
【0026】
式(I)
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに独立して、水素、(C1~8)-アルキル、CH2-O-C1~8アルキル、-C(-O)-O-C1~4アルキル、-C(-O)-NH-C1~8アルキル、C1~8OH(1つのOH基を有するC1~8アルキル基)、スルホネート(SO3 -)、スルホン酸(SO3H)及びハロゲンからなる群から選択され;
R1、R2、R3又はR4の1つ又は複数は、アニオン基、又はアニオン基をもたらす後加水分解反応を生じる基であり;
nは、2から100の間、好ましくは2から50の間、より好ましくは2から30の間、更により好ましくは2から10の間に含まれる自然数である]
に対応する。
【0027】
好ましくは、水溶性ポリナフタレン誘導体は、処理する廃水への添加前に、アニオン基であるR1、R2、R3又はR4の1つ又は複数を有する。
【0028】
好ましくは、式(I)の水溶性ポリナフタレン誘導体は、スルホン酸基又はスルホネート基を有する。換言すれば、R1、R2、R3又はR4の1つ又は複数は、好ましくはスルホン酸又はスルホネートである。更により好ましくは、式(I)の水溶性ポリナフタレン誘導体は、2-ポリナフタレンスルホン酸又はその塩である。
【0029】
一般に、塩は、アルカリ金属(Li、Na、K、・・・)、アルカリ土類金属(Ca、Mg、・・・)又はアンモニウム塩、特に四級アンモニウム塩である。好ましい塩は、Caである。
【0030】
二価対イオンが使用される場合、二価対イオンは、式(I)の水溶性ポリナフタレン誘導体のアニオン電荷とイオン結合を形成する。実際には、二価対イオンは、2つのアニオン基により共有される。これは、スルホネートSO3 -基及びCa2+対イオンを有するモノマー単位を有するポリマーの特定の場合についての図1の1つとして、水溶性ポリナフタレン誘導体ネットワークをもたらす。
【0031】
好ましい実施形態において、式(I)の水溶性ポリナフタレン誘導体は、カルシウム2-ポリナフタレンスルホネートである。その場合、R1、R2、R3及びR4のうちの3つが水素原子であり、R1、R2、R3及びR4のうちの1つがスルホネート基である。より好ましくは、R1がSO3であり、R2、R3及びR4が水素原子であるか、又はR4がSO3であり、R1、R2及びR3が水素原子である。
【0032】
構造化ネットワークが形成される場合、水溶性ポリナフタレン誘導体ネットワークは、一般に、30単位から500単位の間、好ましくは20単位から100単位の間、より好ましくは10単位から50単位の間、更により好ましくは5単位から30単位の間の式(I)の誘導体を含む。
【0033】
本発明による式(I)の水溶性ポリナフタレン誘導体は、好ましくは、400g/molから30000g/molの間に含まれる、より好ましくは400g/molから15000g/molの間に含まれる、更により好ましくは400g/molから5000g/molの間に含まれる重量平均分子量(Mw)を有する。
【0034】
重量平均分子量は、ポリスチレン標準を使用したGPC分析等の公知の方法を使用して決定されている。ポリマーの分子量を決定するための方法は周知である。方法は、例えば、(i)P. J. Flory、「Principles of Polymer Chemistry」、Cornell University Press (1953)、第VII章、266~315頁、又は(ii)「Macromolecules, an Introduction to Polymer Science」、F. A. Bovey及びF. H. Winslow編、Academic Press(1979)、296~312頁に記載されている。本明細書において使用される場合、本発明のポリマーの重量平均及び数平均分子量は、本発明のポリマーに対応するピークの下の面積を積分することにより得られ、このピークは通常、希釈剤、不純物、未結合ポリマー鎖及び他の添加剤に関連するピークを除く主要な高分子量ピークである。
【0035】
式(I)の水溶性ポリナフタレン誘導体は、水溶液、粉末、油中水エマルジョン、又はブライン中のポリマー分散液等の当業者に公知の任意の形態で使用され得る。好ましくは、式(I)の水溶性ポリナフタレン誘導体は、水溶液として使用される。
【0036】
水溶性カチオン性(コ)ポリマー
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、キサンタンガム、グアーガム若しくはポリサッカリド化合物等の天然(コ)ポリマー、又は合成若しくは半合成(コ)ポリマーであってもよい。好ましくは、水溶性(コ)ポリマーは、合成(コ)ポリマーである。
【0037】
半合成(コ)ポリマーは、様々な合成置換基をグラフト化することにより化学反応を生じる天然(コ)ポリマーを指す。当業者には、天然(コ)ポリマーに適用される古典的化学反応であるこの種の反応が分かる。
【0038】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、少なくとも1種の水溶性カチオン性モノマーを含み、これは1種若しくは複数種の水溶性カチオン性モノマー及び/又は1種若しくは複数種の水溶性非イオン性モノマー及び/又は1種若しくは複数種の水溶性アニオン性モノマー及び/又は1種若しくは複数種の水溶性双性イオン性モノマー及び/又は1種若しくは複数種の疎水性モノマーの組合せから合成され得る。好ましくは、水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、少なくとも1種の水溶性カチオン性モノマー及び1種の水溶性非イオン性モノマーを含む。
【0039】
本発明において使用され得る水溶性カチオン性モノマーは、好ましくは、水溶性ビニルモノマーから、より具体的には四級アンモニウム基を有するアクリルアミド、アクリル、アリル又はマレイン酸型から選択される。特に、限定されることなく、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、四級化ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)及びそれらの混合物である。好ましくは、少なくとも1種のカチオン性モノマーは、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)である。
【0040】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、好ましくは、100mol%までの水溶性カチオン性モノマーを含む。水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、好ましくは、30mol%超、好ましくは50mol%超、より好ましくは70mol%超、更により好ましくは90mol%超の水溶性カチオン性モノマーを含む。
【0041】
本発明において使用され得る水溶性非イオン性モノマーは、好ましくは、水溶性ビニルモノマーから選択される。このファミリーに属する好ましいモノマーは、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン(ACMO)、ジアセトンアクリルアミド、及びそれらの混合物である。好ましくは、非イオン性モノマーは、アクリルアミドである。
【0042】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、好ましくは、70mol%まで、好ましくは50mol%まで、より好ましくは30mol%まで、更により好ましくは10mol%までの水溶性非イオン性モノマーを含む。
【0043】
好ましくは、水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)及びアクリルアミドからなるコポリマーである。
【0044】
本発明において使用され得る水溶性アニオン性モノマーは、好ましくは、水溶性ビニルモノマー、より具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸のスルホン化誘導体、例えば2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びそれらの混合物(前記アニオン性モノマーは、塩化されていない、部分的に塩化されている、又は完全に塩化されている)、並びに3-スルホプロピルメタクリレートの塩から選択される。
【0045】
塩化された形態は、有利には、アルカリ金属(Li、Na、K、・・・)、アルカリ土類金属(Ca、Mg、・・・)又はアンモニウム塩、特に四級アンモニウムに対応する。好ましい塩は、ナトリウム塩である。塩化されていない形態は、アニオン性モノマーの酸形態、例えばアクリル酸の場合CH2=CH-C(=O)OHに対応する。
【0046】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーのアニオン性部分は、後加水分解により得ることができる。
【0047】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、好ましくは、70mol%まで、好ましくは50mol%まで、より好ましくは30mol%まで、更により好ましくは10mol%までの水溶性アニオン性モノマーを含む。
【0048】
本発明において使用され得る水溶性双性イオン性モノマーは、アクリルアミド、アクリル、ビニル、アリル又はマレイン酸単位の誘導体(このモノマーは、アミン又は四級アンモニウム基を有する)、及びカルボン酸(若しくはカルボキシレート)、スルホン酸(若しくはスルホネート)又はリン酸(若しくはホスフェート若しくはホスホネート)であってもよい。特に、限定されない様式で、ジメチルアミノエチルアクリレート誘導体、例えば2-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホネート、3-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル](ジメチルアンモニオ)アセテート、ジメチルアミノエチルのメタクリレート誘導体、例えば2-((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホネート、3-((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](ジメチルアンモニオ)アセテート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド誘導体、例えば2-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホネート、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート、[3-(アクリロイル)オキシ)プロピル](ジメチルアンモニオ)アセテート、ジメチルアミノプロピルメチルアクリルアミド誘導体、例えば2-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホネート、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート及び[3-(メタクリロイルオキシ)プロピル](ジメチルアンモニオ)アセテートを挙げることができる。
【0049】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、好ましくは、70mol%まで、好ましくは50mol%まで、より好ましくは30mol%まで、更により好ましくは10mol%までの水溶性両性イオン性モノマーを含む。
【0050】
本発明において使用され得る疎水性モノマーは、好ましくは、より具体的にはペンダント疎水性基を有するアクリルアミド、アクリル、アリル又はマレイン酸型のビニルモノマーから選択される。これらの疎水性モノマーは、アクリルアミド誘導体、例えばN-アルキルアクリルアミド、例えばジアセトンアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、オクチルアクリルアミド;N,N-ジアルキルアクリルアミド、例えばN,N-ジヘキシルアクリルアミド;並びにアクリル酸誘導体、例えばアルキルアクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの混合物から優先的に選択される。好ましくは、それらは、アルキル、アリールアルキル、プロポキシ化、エトキシ化、又はエトキシ化及びプロポキシ化鎖を有する(メタ)アクリル酸のエステル;アルキル、アリールアルキル、プロポキシ化、エトキシ化、エトキシ化及びプロポキシ化、又はジアルキル鎖を有する(メタ)アクリルアミド誘導体;アルキルアリールスルホネート;カチオン性アリル誘導体;アニオン性又はカチオン性疎水性(メタ)アクリロイル誘導体;並びに疎水性鎖を有する(メタ)アクリルアミドのアニオン性又はカチオン性モノマー誘導体から選択される。
【0051】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、好ましくは、5mol%未満の疎水性モノマーを含む。疎水性モノマーが使用される場合、それらは、(コ)ポリマーが水溶性を維持するような量で使用される。
【0052】
当業者には、本発明による水溶性(コ)ポリマーを調製する場合、ポリマー組成物が100質量%を超えるモノマーを有し得ないことが分かり、当業者は、100%を超えないようにモノマーの量を調節する。
【0053】
本発明による水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、好ましくは、3000000g/molから20000000g/molの間、より好ましくは10000000g/mol超、より好ましくは12000000g/mol超、更により好ましくは15000000g/mol超の重量平均分子量を有する。
【0054】
本発明によれば、水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、直線構造、分岐状、星形、櫛型、ブロック、微細ブロック構造、又は分子量の制御された多分散性を有してもよい。これらの特性は、開始剤、移動剤、重合技術、例えば鋳型重合、RAFTとして知られる制御ラジカル重合(付加-開裂による可逆的連鎖移動)、NMP(ニトロキシド媒介重合)又はATRP(原子移動ラジカル重合)、構造モノマーの組み込み、濃度の選択肢の選択により得ることができる。当業者の一般的知識により、当業者は、これらの構造の種類の1つを有する水溶性(コ)ポリマーを調製することができる。本発明の水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、特定の形態を有する場合、水溶性を維持する。
【0055】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、架橋されてもよい。架橋剤は、ポリエチレン性不飽和モノマー(少なくとも2つの不飽和官能基、例えばビニル、アリル、アクリル及びエポキシ官能基を有する)を含む群から選択され得る。好ましい架橋剤は、メチレンビスアクリルアミド(MBA)、エチレングリコールジアクリレート、テトラアリルアンモニウムクロリド、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジアクリルアミド、シアノメチルアクリレート、ビニルオキシエチルアクリレート、ビニルオキシメタクリレート、トリアリルアミン、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グリシジルエーテル、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びエポキシ、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド(TAAC)、並びにそれらの混合物から選択される。
【0056】
そのような架橋剤を使用する場合、使用される量は、水溶性カチオン性(コ)ポリマーがまだ水溶性であるような量である。
【0057】
一般に、水溶性カチオン性(コ)ポリマーの形成は、いかなる特定の重合プロセスも必要としない。これは、有利には粉末形態の(コ)ポリマーをもたらす当業者に周知の全ての重合技術により、例えばゲル重合に続く乾燥及び粉砕工程;沈殿重合;溶液重合に続く噴霧乾燥工程;有利にはマイクロビーズを得るための逆懸濁重合;沈殿工程を伴う、又は伴わないミセル重合;後加水分解又は共加水分解重合;いわゆる「鋳型」重合、ラジカル又は制御ラジカル、より具体的にはRAFT型(可逆付加開裂連鎖移動)により得ることができる。
【0058】
水溶性カチオン性モノマー重合は、一般にフリーラジカル重合である。フリーラジカル重合は、本発明に応じて、少なくとも1種のUV、アゾ、レドックス若しくは熱開始剤を使用したフリーラジカル重合、又は制御ラジカル重合技術(CRP)、又はマトリックス重合技術を意味する。
【0059】
水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、水溶液、粉末、油中水エマルジョン、又はブライン中の(コ)ポリマー分散液等の当業者に公知の任意の形態で使用され得る。好ましくは、水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、水溶液である。
【0060】
処理方法
水溶性ポリナフタレン誘導体及び水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、ブレンドとして若しくは別個に同時に添加されてもよく、又は、それらは順次、若しくは2つの添加の間に期間をおいて添加されてもよい。好ましくは、2つの添加の間に期間が設けられる。
【0061】
水溶性ポリナフタレン誘導体及び水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、処理するスラッジに任意の順番で添加され得る。水溶性ポリナフタレン誘導体が最初に添加され、その後に水溶性カチオン性(コ)ポリマーが添加されてもよいが、水溶性カチオン性(コ)ポリマーを水溶性ポリナフタレン誘導体の前に添加することも可能である。好ましくは、水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、最初に添加される。
【0062】
処理するスラッジに添加される水溶性ポリナフタレン誘導体の量は、多くのパラメータ(スラッジの組成、pH…)に依存する。好ましくは、本発明による方法において、水溶性ポリナフタレン誘導体は、処理される油含有廃水の量を基準として10~10,000ppmの範囲の質量で添加される。当業者には、慣例的な実験によって、必要な水溶性ポリナフタレン誘導体の量が分かる。
【0063】
処理するスラッジに添加される水溶性カチオン性(コ)ポリマーの量は、多くのパラメータ(スラッジの組成、pH…)に依存する。好ましくは、本発明による方法において、水溶性カチオン性(コ)ポリマーは、処理される油含有廃水の量を基準として10~10,000ppmの範囲の質量で添加される。当業者には、慣例的な実験によって、必要な水溶性カチオン性(コ)ポリマーの量が分かる。
【0064】
水溶性ポリナフタレン誘導体と水溶性カチオン性(コ)ポリマーとの間の質量比率は、好ましくは、0,5からの5の間、好ましくは1から2の間に含まれる。
【0065】
処理は、任意の廃水に、特に、限定されることなく、食品工場、自動車工場、印刷工場、クリーニング工場、油田廃水、及び油含有廃水を処理する必要がある任意の産業に由来する廃水に使用することができる。好ましくは、本発明の方法は、食品工場、及び油含量が10体積%まで高い産業に由来する廃水に特に効率的である。排水中の油含量が10%を超える場合、これは油/水分離機又は遠心分離デバイスによって容易に除去される。処理される廃水は、好ましくは食品工場に由来する。
【0066】
本発明の特定の様式において、方法は、一般式(I)
【0067】
【化3】
【0068】
式(I)
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、互いに独立して、水素、(C1~8)-アルキル、CH2-O-C1~8アルキル、-C(-O)-O-C1~4アルキル、-C(-O)-NH-C1~8アルキル、C1~8OH(1つのOH基を有するC1~8アルキル基)、スルホネート(SO3 -)、スルホン酸(SO3H)及びハロゲンからなる群から選択され;
R1、R2、R3又はR4の1つ又は複数は、アニオン基、又はアニオン基をもたらす後加水分解反応を生じる基であり;
nは、2から100の間、好ましくは2から50の間、より好ましくは2から30の間、更により好ましくは2から10の間に含まれる自然数である]
を有する水溶性ポリナフタレン誘導体及び水溶性カチオン性(コ)ポリマーを、処理する油含有廃水に添加する工程にある。
【0069】
本発明の特定の様式において、方法は、2-ポリナフタレンスルホン酸又はその塩、並びに四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)及びアクリルアミドからなる水溶性カチオン性コポリマーを添加する工程にある。
【0070】
以下の実施例を参照することにより、本発明を更に説明する。以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、限定することを意図しない。別段に指定されない限り、全てのパーセンテージは重量基準(w%)である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】2-ポリナフタレンスルホネートのカルシウム塩の構造化ネットワークを示す図である。
図2】pH制御下の水溶性カチオン性ポリマーのみを使用したスラッジの凝集を示す図である。
図3】pH制御下での本発明による方法を使用したスラッジの凝集を示す図である。
図4図2及び図3のpH値を示す図である。
【実施例
【0072】
使用される略語:
AM:アクリルアミド;
DMAEA:四級化ジメチルアミノエチルアクリレート;
DMAEMA:四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート;
AA:アクリル酸;
PNS:ポリナフタレンスルホネート
【0073】
1 従来のスラッジ
油含有廃水処理において通常使用される様々なポリマーを試験し、本発明による処理と比較した。
【0074】
スラッジの特性は、Table 1(表1)に詳しく示される。
【0075】
【表1】
【0076】
試験したポリマーは、Table 2(表2)に記載される。
【0077】
【表2】
【0078】
試験手順:
ジャーテスターに、250mLのスラッジを収集する。試験するポリマーを同じ量で添加し、試料を250rpmで1分間撹拌する。
【0079】
フロックサイズを視覚的に決定した。
【0080】
250rpmで30秒間の剪断の第2工程後に、フロックサイズの変化によって凝集強度を決定した。
【0081】
凝集後、250ミクロンの細孔度を有する篩を通してスラッジを濾過する。濾液の質量を測定することにより、濾液の量を決定する。
【0082】
結果をTable 3(表3)に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
これらの例は、水溶性ポリナフタレンスルホネートの添加が、フロック形成を改善することを示している。そのサイズ及び強度は、従来の凝集剤ポリマーと比較して増加する。これによって、フロックがより容易に除去されるため、廃水の処理がより容易及びより便利になる。
【0085】
2 油性酸性スラッジ:
本発明による方法の別の利点は、酸性スラッジに対して機能するという点である。
【0086】
水溶性カチオン性ポリマーを用いて様々なpHを有するスラッジを試験し、本発明による方法と比較する。フロックの直径を測定し、mmで示す(例えば、D1は直径1mmを意味し、D5は直径5mmを意味する)。
【0087】
結果をTable 4(表4)に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
水溶性カチオン性ポリマーだけでは、pH10であっても、小さく弱いフロックに起因してスラッジを脱水することは不可能である。
【0090】
水溶性カチオン性ポリマーを水溶性ポリナフタレンスルホネートと組み合わせることにより、pH5で著しいフロックが形成し始めることが確認され得る。
【0091】
3 性能比較
本発明の方法の改善を明確に実証するために、油含有廃水の2つの試料を比較する。第1の処理(A)は、水溶性カチオン性ポリマー(250ppm)を添加することにあり、第2の処理(B)は、本発明に対応し、水溶性ポリナフタレンスルホン酸(150ppm)に続いて水溶性カチオン性ポリマー(150ppm)を添加することにある。
【0092】
【表5】
【0093】
水溶性ポリナフタレンスルホネートの添加により、水溶性カチオン性ポリマーのみの添加により除去された量と比較してほぼ2倍超の油が除去される(これは、除去された油の量の200%の増加に対応する)。初期油含量に関して、油含有廃水から除去された油の合計は、41%増加する。
図1
図2
図3
図4