(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】繊維機械の作業ユニットにおいて糸継ぎ結合部を形成するための方法ならびに繊維機械の作業ユニット
(51)【国際特許分類】
B65H 67/08 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
B65H67/08 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020052013
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】10 2019 107 712.5
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523378985
【氏名又は名称】リーター オートマティック ワインダー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Rieter Automatic Winder GmbH
【住所又は居所原語表記】Karl-Arnold-Strasse 34, 52525 Heinsberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル イーディング
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ムント
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-128436(JP,A)
【文献】特開2013-068485(JP,A)
【文献】特開2012-101908(JP,A)
【文献】特開昭55-026177(JP,A)
【文献】特開平10-029768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 67/00-67/08
D01H 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械の作業ユニット(1)において上糸(2)と下糸(3)との糸継ぎ結合部を形成するための方法であって、以下のステップ、すなわち
-スプライシングユニット(4)へ少なくとも前記上糸(2)を供給するステップと、
-糸張力センサ(5)によって、少なくとも前記結合すべき上糸(2)の糸張力を糸継ぎ前に測定するステップと、
-測定された前記糸張力と予め設定された限界値とを比較するステップであって、前記限界値が上回られている場合に、前記上糸張力を減少させる、ステップと、
-測定された前記糸張力が前記限界値よりも小さい場合に、前記スプライシングユニット(4)において前記下糸(3)と前記上糸(2)とを結合させるステップと、
を有していることを特徴とする、糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項2】
前記スプライシングユニット(4)への前記上糸(2)の供給を、負圧が供給されたサクションノズル(6)により行い、該サクションノズル(6)が、自由な上糸端部を吸い込むための吸込み位置(A)と、前記スプライシングユニット(4)への前記自由な上糸端部の供給のための供給位置(Z)との間で旋回可能である、請求項1記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項3】
前記スプライシングユニット(4)へ前記上糸(2)を供給するための前記サクションノズル(6)が、前記糸を巻き取るための綾巻きパッケージ(7)の領域の前記吸込み位置(A)において、前記自由な上糸端部を捕捉し、前記サクションノズル(6)が、繰出し方向に回転する前記綾巻きパッケージ(7)から前記上糸(2)を引き出す、請求項
2記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項4】
前記スプライシングユニット(4)への前記上糸(2)の供給時に
、自由な上糸端部を
、旋回可能なサクションノズル(6)によって前記スプライシングユニット(4)のスプライシング角柱内に直接に導入する、請求項1から3までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項5】
前記上糸(2)の前記糸張力の測定を、前記スプライシングユニット(4)内への前記上糸(2)の導入工程時に行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項6】
前記上糸(2)を、前記糸張力を測定するために、前記糸張力センサ(5)の測定環上に置く、請求項1から5までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項7】
前記スプライシングユニット(4)における前記下糸(3)および前記上糸(2)
の糸端部の結合中にも、少なくとも前記結合すべき上糸(2)の前記糸張力の測定を行い、前記結合中においても、前記限界値を上回る場合には、前記上糸張力を減少させる、請求項1から6までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項8】
前記上糸(2)の供給および/または前記下糸(3)と前記上糸(2)との結合を中断
することによって、前記上糸張力を減少させる、請求項1から7までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項9】
前記上糸(2)の前記供給および/または前記下糸(3)と前記上糸(2)との結合の中断時に、前記上糸張力を減少させるために、前記上糸(2)を切断し、該上糸(2)の、その際に形成された自由な端部を新たに吸い込む、請求項1から8までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項10】
前記上糸張力が十分に減少するまで、前記上糸(2)を有す
る綾巻きパッケージ(7)を繰出し方向に回転させることによって、前記上糸張力を減少させる、請求項1から9までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項11】
グリッパ管(17)
の糸走路内への進入時の速度を減少させ、かつ/または前記グリッパ管(17)が前記糸継ぎ工程の開始前に前記糸走路からの短い後退運動を実施することによって、前記上糸張力を減少させる、請求項1から10までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項12】
サクションノズル(6)による前記上糸(2)の供給を、前記サクションノズル(6)の領域に配置された上糸センサによって上糸(2)が検出された場合にのみ、行う、請求項1から11までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項13】
前記上糸張力の限界値を、入力手段を介して設定するか、または先行するサイクルの平均値に基づいて算出することができる、請求項1から12までのいずれか1項記載の糸継ぎ結合部を形成するための方法。
【請求項14】
繊維機械の作業ユニット(1)であって、
-下糸(3)と上糸(2)とを結合するためのスプライシングユニット(4)と、
-前記スプライシングユニット(4)への下糸供給部(8)および上糸供給部(9)とを備え、
-前記上糸供給部(9)において、結合すべき上糸(2)の糸張力が糸継ぎ前に測定されるように、糸張力センサ(5)が配置されていて、
-前記測定された糸張力と予め設定された限界値とを比較するための制御ユニット(18)をさらに備え、前記限界値を上回る場合に、前記制御ユニット(18)により前記上糸張力が減少させられることを特徴とする、繊維機械の作業ユニット。
【請求項15】
請求項14記載の少なくとも1つの作業ユニット(1)を備えた巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械の作業ユニットにおいて上糸と下糸との糸継ぎ結合部を形成するための方法と、繊維機械の対応する作業ユニットと、少なくとも1つの対応する作業ユニットを備えた巻取り機とに関する。
【0002】
2つの糸端部を特に糸継ぎすることにより結合させる方法は、先行技術から多様な構成で既に知られている。したがって、たとえば巻取り機において、糸は比較的小さな複数の給糸ボビンから大容量の1つのパッケージに巻き返され、その際に既に巻き取られた糸、つまり上糸と、新しい給糸ボビンから来る糸、つまり下糸との複数回の結合が必要となる。しかし、先行技術によるこの方法は、全ての場合において両糸端部の確実かつエラーを有しない結合をもたらすわけではなく、このことはしばしば、結合された糸の即座の破断と、糸端部を改めて探し出して、結合しなければならないこととにつながる。さらに、巻取り中の糸の即座の破断ではなく、後続の加工プロセス、たとえば布の製織時または糸による縫製時にはじめて糸の破断につながる低品質な糸結合部が生じる。
【0003】
独国特許出願公開第102009024037号明細書からは、繰出しボビンから巻取りパッケージへと糸を巻き返すための巻取り機の作業ユニットにおいて糸破断を排除する方法が既に公知である。巻取り機は、通常の糸走路外に配置された、巻取りパッケージの上糸と繰出しボビンの下糸とを結合するための糸結合装置、好適にはスプライシング装置と、通常の糸走路内に配置された、下糸を保持するための装置と、上糸を捕捉して、この上糸の糸端部を糸結合装置の下側にまで搬送するための、負圧を供給された旋回可能なサクションノズルとを有している。下糸を保持するための装置は、下糸を、糸破断時に糸結合装置の上側で固持し、サクションノズルおよび挿入レバーは、サクションノズルの下方への旋回時に、上糸および下糸を糸結合装置内へと導入する。しかし、このような方法では、通常、両糸端部のエラーを有する結合が生じ、対応して結合箇所における糸の即座の破断または後の破断が生じる。
【0004】
したがって、本発明の根底を成す課題は、不変の高い糸継ぎ品質と、糸継ぎ結合部の確実な再現性とを確保し、特に糸継ぎ結合中の張力破断が阻止される、繊維機械の作業ユニットにおいて上糸と下糸との糸継ぎ結合部を形成するための方法ならびに繊維機械の対応する作業ユニットを提供することにある。
【0005】
この課題は、本発明によれば請求項1記載の方法により、請求項14記載の繊維機械の作業ユニットにより、かつ請求項15記載の巻取り機により解決される。本発明の有利な変化形は、従属請求項に記載されている。
【0006】
繊維機械の作業ユニットにおいて上糸と下糸との糸継ぎ結合部を形成するための本発明に係る方法は、方法ステップとして、まず少なくとも上糸と、場合によっては下糸とをスプライシングユニットへと供給するステップと、少なくとも結合すべき上糸の糸張力を糸継ぎ前に糸張力センサにより測定するステップとを含んでいる。次いで、測定された糸張力と、予め設定された限界値とが比較させられ、限界値が上回られた場合に、上糸張力が減少させられ、特に上糸張力を減じるための少なくとも1つの措置が実施される。最終的に、測定された糸張力が予め設定された限界値の下にある場合に、スプライシングユニットにおける下糸および上糸の糸端部の結合が行われる。
【0007】
繊維機械、特に巻取り機の本発明に係る作業ユニットは、下糸と上糸とを結合するためのスプライシングユニットと、スプライシングユニットへの下糸供給部および上糸供給部とを有している。上糸供給部には、結合すべき上糸の糸張力を糸継ぎ前に測定することができるように、もしくは測定するために、糸張力センサが配置されている。最終的に、作業ユニットは、測定された糸張力と予め設定された限界値とを比較させるための制御ユニットを含んでいる。限界値が上回られた場合に、制御ユニットにより、上糸張力が減少させられるか、または上糸張力を減じるための少なくとも1つの措置が開始される。
【0008】
本発明に係る巻取り機は、本発明に係る少なくとも1つの作業ユニットを有していて、好適には本発明に係る複数の作業ユニットを有している。特に好適には、本発明に係る全ての作業ユニットは互いに同一に形成されている。
【0009】
本発明の発明者は、両方の糸端部の低い糸継ぎ品質および確実でない結合は、スプライシングユニット内への導入時の上糸および下糸の糸張力が常に同一ではないことによって生じることを認識した。特に、スプライシングユニット内に、特に好適にはサクションノズルによってスプライシングユニットのスプライシング角柱内に置かれる上糸の張力は極めて強く変動し、したがって不十分な糸継ぎ結果をもたらす。高過ぎる上糸張力のための詳細な理由は多様であり、たとえば糸はサクション通路内で別の糸、特に解けた糸片と撚られたり、または綾巻きパッケージ上での糸の引っかかりが生じたりすることがある。この種々異なる糸張力は、次いで糸継ぎ結合部における品質の変動をもたらす。このような糸継ぎ結合部は最終的に糸継ぎ工程時の張力破断をもたらしてしまう。張力下にある上糸は、しばしば、上糸の端部が綾巻きパッケージの側面に到達するように綾巻きパッケージに返され、上糸エラーをもたらす。なぜならば、糸端部は、側面では特にサクションノズルによる自動的な糸探索によって発見することができないからである。
【0010】
本発明は、簡単な形式でこの欠点を克服する。上糸の糸張力の測定により、高過ぎる上糸張力下での結合を基本的に阻止することができるので、減じられた品質を備えた弱められた糸継ぎ結合部は形成されることすらなく、対応して後の、特に巻取り工程および/または後続の糸の処理時における問題も生じない。
【0011】
本発明に係る方法は、特に糸継ぎにより2つの糸端部の結合部を形成するために、もしくは糸中断または糸破断を克服するために規定されている。このためには、本発明に係る作業ユニットは、スプライシングユニットを有している。スプライシングユニットは、基本的には任意に構成されていてよく、任意の別の機能を有していてよい。
【0012】
互いに結合すべき両糸端部は、上糸および下糸の端部である。下糸は、糸走行方向でスプライシングユニットに至るまでの作業ユニットの上流側に延びる糸または糸区分である。対応して上糸は、作業ユニットの糸走行方向でスプライシングユニットの下流側に特に綾巻きパッケージに至るまで、または綾巻きパッケージ上へと延びている糸または糸区分である。下糸と上糸との結合により単独の一本の糸として形成された結合された糸では、糸全体を場合によっては糸走行方向でスプライシングユニットの上流側の下糸区分と、糸走行分でスプライシングユニットの下流側の上糸区分とに分けることができ、糸が糸走行方向で運動している場合に、下糸はスプライシングユニットにおいて上糸になる。
【0013】
繊維機械とは基本的に、少なくとも一本の、好適には同時に複数本の糸を製造し、かつ/または加工するための任意の機械であってよい。好適には、繊維機械の少なくとも一部、特に好適には繊維機械全体が、特に1つまたは複数の給糸ボビンまたは紡績コップから単独の大容量の1つの綾巻きパッケージに糸を巻き返すために設けられている。特に好適には、各作業ユニットは、巻取り装置を有していて、特に極めて好適には繊維機械、特に巻取り機の各作業ユニットは、巻取り装置である。
【0014】
巻取り装置は、基本的には、個別の糸から糸パッケージを製造するために設けられている装置である。巻取り装置は、別個の構成部材であり、特に個別の機械であってよい。好適には、巻取り装置は、繊維機械もしくは紡績機、特にロータスピニング紡績機の部分である。同様に好適には、巻取り装置は、パッケージ、特に綾巻きパッケージを製造する繊維機械の多数の作業ユニット、特に同一の多数の作業ユニットの1つである。特に好適には、巻取り装置は、自動巻取り機、特にオートコーナの作業ユニットである。このような巻取り装置またはそれぞれ1つの巻取り装置を有するこのような作業ユニットは、好適にはさらにそれぞれ下糸センサ、糸テンショナ、糸切断装置を備えた糸クリヤラ、糸張力センサ、糸捕捉ノズルおよび/またはパラフィン供給装置を備えている。
【0015】
繊維機械では、スプライシングユニットが好適には通常の糸走路外に配置されているので、中断されていない糸はスプライシングユニットに接触せず、かつ/または結合すべき糸端部は、結合を可能にするためにスプライシングユニットに供給されなければならない。少なくとも上糸の供給、好適には下糸の供給も、まず任意の形式で行うことができる。好適には、供給は空気流または負圧により支援され、特に好適には空気流および特に負圧により行われる。このためには、供給が、対応する糸供給部によって、つまり上糸のためには上糸供給部によって、かつ/または下糸のためには下糸供給部によって行われる。下糸供給部もしくは上糸供給部は、1つの構成部材または1つの構成群として構成されていてよく、下糸もしくは上糸を、単に区分的にまたは完全にガイドすることができる。しかしまた代替的には、糸供給部は、完全にまたは少なくとも区分的に、単に1つの機能的なユニットであってよく、つまりそれぞれの糸区分が走行する作業ユニットの区分であってよい。したがって、糸は区分的にも、自由な空間を通って、かつ/または繊維機械の別の構成部材により取り囲まれずに延びていてよい。
【0016】
本発明によれば、少なくとも結合すべき上糸の糸張力の測定が、少なくとも糸継ぎ前に、好適には糸継ぎ中に少なくとも1回、特に好適には周期的に、かつ特に極めて好適には連続的に行われる。付加的には、下糸の糸張力の測定も可能であり、この測定は特に好適には上糸の糸張力の測定に対応して行われる。上糸張力の測定は、糸張力センサにより行われる。糸張力センサは、上糸供給部に、または上糸供給部の領域に、かつ/またはスプライシングユニット内に挿入された、または挿入すべき上糸の糸張力を測定することができるように、配置されている一方で、好適には結合された糸は糸張力センサに接触しない。糸張力センサは、同様に好適には、特に巻き取るべき糸の糸走路に沿って、スプライシングユニットの上側もしくは下流側に配置されているので、糸張力センサにより、上糸を検出することができる。糸張力センサは、基本的には、糸の引張力を糸走路に沿って直接的または間接的に検出することができる任意のセンサであってよい。
【0017】
糸張力の少なくとも1回の測定に次いで、本発明によれば予め設定された限界値と測定された糸張力とが比較させられる。限界値は、種々異なる糸、特に種々異なる材料、糸強度および/または糸の製造種類のために種々異なっていてよく、かつ/または適合されていてよい。比較は、好適には、限界値が上回られた場合に上糸張力を減少させるか、もしくはそのための措置を開始する制御ユニット内で行われる。上糸張力の減少は、任意の形式で行うことができ、それどころか、スプライシングユニットに供給された上糸端部が解放または分離され、新たな上糸端部の新たな供給が行われることで生じる。次いで特に好適には再び糸張力が測定される。
【0018】
スプライシングユニットにおける下糸および上糸の糸端部の結合は、本発明によれば、測定された糸張力が限界値の下にある場合にのみ行われる。このことは、測定された糸張力が少なくとも糸継ぎ工程の開始時にまたは糸継ぎ工程の開始前に予め設定された限界値の下になければならないことを意味し、好適には、糸継ぎ工程中にも、上糸の測定された糸張力が引き続き予め設定された限界値の下になければならない。
【0019】
糸継ぎ結合部を形成するための本発明に係る方法の有利な構成では、スプライシングユニットへの上糸の供給が、負圧を供給されたサクションノズルにより行われる。このサクションノズルは、好適には、自由な上糸端部を吸い込むための吸込み位置と、スプライシングユニットに自由な上糸端部を供給するための供給位置との間で旋回可能である。これにより、スプライシングユニットへの糸端部の確実な供給が可能であり、さらに少なくとも部分的に負圧により供給された上糸の糸張力を特に容易に制御もしくは調節することができる。吸込み位置は、好適には糸走行方向で供給位置の上側に位置している。さらに好適には、サクションノズルは、スプライシングユニットに上糸端部を供給するために専ら唯1つの軸線を中心として旋回させられる。
【0020】
糸継ぎ結合部を形成するための本発明に係る方法の特に有利な構成は、スプライシングユニットへ上糸を供給するためのサクションノズルが、糸を巻き取るための綾巻きパッケージの領域の吸込み位置において、自由な上糸端部を捕捉することを規定している。サクションノズルは、好適には繰出し方向に回転する綾巻きパッケージから上糸を引き出し、これにより、さらに上糸の糸張力のさらなる減少を特に簡単な形式で可能にする。繰出し方向での綾巻きパッケージの回転は、サクションノズルの、上糸に作用する負圧の力に基づいても、綾巻きパッケージの能動的な駆動によっても行うことができる。さらに好適には、サクションノズルは、綾巻きパッケージの全幅にわたって延びていて、かつ/または付加的に綾巻きパッケージの幅に沿って旋回可能であるので、簡単な形式で上糸を綾巻きパッケージ上の任意の位置から確実に捕捉し、吸い込むことができる。
【0021】
糸継ぎ結合部を形成するための本発明に係る方法の好適な変化形によれば、自由な上糸端部を、スプライシングユニットへの上糸の供給時に、旋回可能なサクションノズルによってスプライシングユニット内に直接に挿入する。同様に好適には、スプライシングユニットはスプライシング角柱を有している。このスプライシング角柱内に上糸端部がサクションノズルにより挿入される。これにより糸の特に簡単かつ迅速な供給を達成することができると同時に、自由な上糸端部の分離もしくは切断による糸張力の減少時に特に簡単な形式で発生する上糸片を吸い込みかつ取り除くことができる。
【0022】
特に極めて好適には、上糸の糸張力の測定を、特に旋回可能なサクションノズルによるスプライシングユニット内への上糸の挿入工程時に、かつ/またはサクションノズルの供給位置において行う。これにより、特に迅速に、かつ同時に上糸端部の検出および供給の直後に、かつ対応して糸継ぎ工程の直前に、高すぎる糸張力の検出を行うことができ、これによりあらゆる場合にこれに基づくエラーを有する糸継ぎ結合部が阻止される。
【0023】
糸継ぎ結合部を形成するための本発明に係る方法のさらに特に極めて好適な構成は、上糸を、糸張力を測定するために、特に旋回可能なサクションノズルによって、かつ/またはサクションノズルの供給位置において、糸張力センサの測定環上に置くか、もしくは導入する。これにより、強制的に、かつ簡単な形式で糸張力の測定を行うことができる。好適には、上糸が、スプライシングユニットのスプライシング角柱内への挿入の直前にまたは挿入時に旋回可能なサクションノズルにより測定環に導入される。測定環は、好適にはスプライシングユニットと綾巻きパッケージとの間の糸走路内に直接に配置されている。しかし同時に測定環は特に好適には、分離されていない糸の糸走路外となるように作業ユニットに配置されていて、これにより綾巻きパッケージへの障害のない巻取りを可能にすることができる。
【0024】
さらに、糸継ぎ結合部を形成するための本発明に係る方法の特に極めて好適な構成によれば、スプライシングユニットにおける下糸および上糸の糸端部の結合中にも、少なくとも結合すべき上糸の糸張力の測定を行い、好適には、結合中にも限界値が上回られた場合には、上糸張力を減少させることが規定されていて、これにより簡単な形式で、糸継ぎ工程中に発生する高すぎる糸張力に基づく糸端部のエラーを有する結合を特に効果的に阻止することができる。結合中の測定は、好適には連続的に行われ、基本的には糸継ぎ工程の予め設定された時点のみにおける測定および/または周期的な測定も可能である。特に極めて好適には、下糸の糸張力の対応する監視も同時に行われる。
【0025】
基本的には、糸張力の減少を任意の形式で、かつ1つまたは複数の任意の措置により行うことができる。特に複数の措置を相前後して、または同時に使用することができる。特に、糸の長さを変更し、スプライシングユニットの位置もしくは綾巻きパッケージに対するスプライシングユニットの間隔を変更し、かつ/または実施される方法または個別の方法ステップの速度を対応して適合させる措置が可能である。
【0026】
可能な措置の1つでは、上糸張力の減少を、特にサクションノズルによる上糸の供給および/または下糸と上糸との結合を中断し、好適には後に繰り返すことによって行う。結合の中断後に、下糸および/または上糸の好適には少なくとも部分的に結合された部分が破棄され、特に好適にはまず切断される。極めて特に好適には、上糸を、特にサクションノズルと綾巻きパッケージとの間で切断し、上糸の、その際に形成された自由な端部を改めて吸い込む。切断は、好適には、糸走行方向でスプライシングユニットに後置され、かつ/またはスプライシングユニットと綾巻きパッケージとの間に配置された切断もしくは糸分離ユニットにより行われる。特に好適には、切断もしくは糸分離ユニットは、サクションノズルに設けられたサクションノズルカバーの領域に配置されている。糸の一部が切断されると、糸の切断された部分は好適には破棄されるか、吸い出される。
【0027】
上糸張力を減少させるための可能な措置の別の1つは、上糸張力が十分に減少させられるまで、上糸を有する綾巻きパッケージを上糸の繰出し方向に回転させることを規定している。糸張力が、綾巻きパッケージからの上糸の繰出し時に、好適には連続的に測定され、これにより、特に制御ユニットにより、上糸の繰出し、ひいては糸張力を対応して制御し、もしくは調節することができる。このためには、特に好適には、綾巻きパッケージを収容するためのモータ駆動またはニューマチック式に駆動された装置が巻取り方向とは反対方向に、もしくは繰出し方向に制御されて回転させられる。
【0028】
上糸張力を減少させるための別の措置は、グリッパ管の糸走路内への進入時の速度を減少させ、かつ/またはグリッパ管を糸継ぎ工程の開始前に糸走路から後退するように運動させることであってよい。糸走路内への進入時のグリッパ管の速度の減少により、グリッパ管は糸により緩慢に張力を加え、特に対応する糸を有するパッケージは、繰出しのためにより長い時間を有していて、張力を減じながら糸を繰出して延長させる。糸走路からのグリッパ管の旋回により、同様に糸の張力も減少させられる。本発明の枠内では、両方の措置を個別にも互いに組み合わせても使用することができる。
【0029】
サクションノズルを、空の状態で、または少なくとも上糸端部が制御されずに収容された状態で、吸引位置から供給位置に旋回することを阻止し、これにより少なくとも上糸端部が制御されずに収容された状態においてエラーを有する糸継ぎ結合部をもたらすことを阻止するために、糸継ぎ結合部を形成する本発明に係る方法の好適な構成は、旋回可能なサクションノズルによる上糸の供給を、サクションノズルの領域に配置された上糸センサによって上糸もしくは上糸端部が検出された場合にのみ、行うことを規定している。上糸センサは、糸端部のための収容開口に隣接した領域に直接に配置されていてよく、または上糸供給部に沿った任意の箇所に配置されていてよい。特に好適には、上糸端部のサクションノズルによる糸探索は、上糸端部が発見され、かつ上糸センサにより検出されるまで行われる。
【0030】
糸張力、特に上糸張力の限界値は、基本的には任意に設定されるか、規定され得る。上糸張力の限界値は、入力手段を介して設定されるか、または先行するサイクルの平均値に基づいて計算され得る。
【0031】
本発明の作業ユニットの実施例ならびにその作業ユニットにおいて実施される、下糸端部と上糸端部とを結合するための方法を、以下に図面に関して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】巻取り機の作業ユニットの概略的な側面図である。
【0033】
巻取り機の
図1に概略的に図示された作業ユニット1は、糸を比較的小さな複数の給糸ボビン10から大容量の1つの綾巻きパッケージ7に巻き返すために設けられている。給糸ボビン10上にはそれぞれ、綾巻きパッケージ7のために必要であるよりもかなり短い糸しか巻き取られていないので、糸を複数回新たに結合することが必要である。糸の、給糸ボビン10から来る部分は下糸3と呼ばれ、糸の、既に綾巻きパッケージ7上に巻き上げられた糸の部分は上糸2と呼ばれる。
【0034】
巻取り機は、自動綾巻きワインダもしくはオートコーナ(Autoconer)として形成されている。巻取り機は、互いに同一の、相並んで配置された多数の作業ユニット1を有している。給糸ボビン10は、紡績機、特にリング精紡機または空気精紡機により製造された紡績コップであり、紡績コップは、巻取り機の個別の作業ユニット1に供給ユニット11によって自動的に供給される。
【0035】
上糸2および下糸3の両糸端部を結合することができるように、作業ユニット1には、スプライシングユニット4が配置されている。スプライシングユニット4は、糸継ぎ結合部を形成するためのスプライス角柱を備えたニューマチック式の糸スプライシング装置を含んでいる。さらに、スプライシングユニット4は、巻き取るべき、損傷がなく結合する必要のない糸の糸走路外に配置されている。
【0036】
糸破断時または給糸ボビン10が空になった場合に上糸2を提供するために、巻取り機の作業ユニット1には、サクションノズル6が、吸込み位置Aと供給位置Zとの間で旋回可能に配置されている。吸込み位置Aにおいて、サクションノズル6は、綾巻きパッケージ7上に巻き上げられている上糸2もしくは上糸端部を収容することができる。引き続き、特に、サクションノズル6の領域に配置された上糸センサによるサクションノズル6内への糸収容の検知後に、サクションノズル6が供給位置Zへと旋回させられ、上糸2がスプライシングユニット4内に導入される。好適には、サクションノズル6には、ばねエレメントにより吸込み位置Aに向かって予荷重が加えられているので、サクションノズル6は、自動的に吸込み位置Aに到達する。吸込み位置Aにおいて、サクションノズル6の吸込み開口は、自由な上糸端部を確実に吸い込むことができるように、綾巻きパッケージ7の表面の領域に位置している。
【0037】
綾巻きパッケージ7と、スプライシングユニット4との間で、上糸2が上糸供給部9内へ導入される。糸張力センサ5は、旋回可能なサクションノズル6によるスプライシングユニット4内への自由な上糸端部の供給時に、上糸2が同時に糸張力センサ5の測定環内に到達するように、作業ユニット1に配置されているので、これによってスプライシングユニット4による糸継ぎ工程前および糸継ぎ工程中に、上糸2の引張力もしくは張力を連続的に測定することができる。
【0038】
さらに、上糸供給部9の領域において、かつ特に結合された糸の糸走路内に、糸切断装置12、糸クリヤラ13およびパラフィン供給装置14が配置されている。
【0039】
給糸ボビン10とスプライシングユニット4との間で、下糸3は下糸供給部8内に導入される。この下糸供給部8は、結合された糸の糸走路内の糸テンショナ装置15、下糸センサ16ならびに糸走路内に進入するグリッパ管17を含む。グリッパ管17は、旋回可能に取り付けられていて、グリッパ管17には、下糸3の端部をスプライシングユニット4の領域に供給することができるように、負圧が供給可能である。さらに、スプライシングユニット4内での上糸2と下糸3との結合中に、糸張力はグリッパ管17により、特にグリッパ管17の旋回により変更することができる。
【0040】
さらに、巻取り機の作業ユニット1は、制御ユニット18を有している。制御ユニット18は、機械バスを介して中央制御装置にも、サービスユニットの制御装置にも接続されている。
【0041】
下糸3と上糸2とを結合するために、負圧が供給されていて、繰出し方向に回転する綾巻きパッケージ7から上糸2を解離して吸い込む旋回可能なサクションノズル6によって、まず綾巻きパッケージ7からの上糸2の捕捉が行われる。上糸センサによってサクションノズル6内で上糸2が検出された後に、サクションノズル6は吸込み位置Aから下方に向かって供給位置Zへと旋回し、上糸2をスプライシングユニット4のスプライシング角柱内に導く。上糸2は、同時に糸張力センサ5の測定環(Messoese)上に置かれる。糸張力センサ5は、スプライシングユニット4の上側で糸走路内に位置している。糸張力センサ5により、いまや上糸2の糸張力は挿入工程時に測定することができる。
【0042】
糸張力が予め設定された限界値を上回ったことが確認されると、糸張力が再び限度内に戻されるようにするための処置がすぐに開始させられる。代替的には、糸継ぎ工程が中断され、吸込み位置Aにおけるサクションノズル6による新たな糸捕捉が引き起こされる。
【0043】
たとえば、このような処置は、糸走路内への進入時のグリッパ管17の速度の減少、糸走路から出るグリッパ管の旋回または繰出し方向の綾巻きパッケージ7の僅かな後転であってよい。このためには、好適には、特に回転数制御可能な駆動装置(図示せず)を介した、綾巻きパッケージ7の能動的かつ制御された駆動が行われる。回転数制御可能な駆動装置は、電子的に通信可能な直流モータとして構成され、パッケージフレームにフランジ結合されるか、または直接にパッケージフレーム内に統合されていてよい。
【符号の説明】
【0044】
1 巻取り機の作業ユニット
2 上糸
3 下糸
4 スプライシングユニット
5 糸張力センサ
6 サクションノズル
7 綾巻きパッケージ
8 下糸供給部
9 上糸供給部
10 給糸ボビン
11 供給ユニット
12 糸切断装置
13 糸クリヤラ
14 パラフィン供給装置
15 糸テンショナ装置
16 下糸センサ
17 グリッパ管
18 制御ユニット
A 吸込み位置
Z 供給位置