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特許7553261圧力センサ用筐体およびこれを備える圧力センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】圧力センサ用筐体およびこれを備える圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G01L19/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020065784
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021162502
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】川津 孝圭
(72)【発明者】
【氏名】森 雷太
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-133838(JP,A)
【文献】特表2008-541049(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0070447(US,A1)
【文献】米国特許第04238964(US,A)
【文献】特開2018-205233(JP,A)
【文献】特開平02-256174(JP,A)
【文献】特開昭62-267635(JP,A)
【文献】実開昭60-021945(JP,U)
【文献】特開2015-068738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32,27/00-27/02
G01D 1/00-21/02
H05B 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータブロックと、
所定の軸心に沿って延在する筒状の側面とこの側面に連接する上面および下面とから形
成された中空部材からなり、
前記中空部材は、内側に流体の圧力を検出する圧力センサ素子を収容した状態で前記ヒータブロックの内周側壁面によって画成される円筒状の空間に配置され、
前記中空部材が前記空間に配置されたときに前記ヒータブロックの内周側壁面と対向する前記側面は、前記中空部材が前記空間の軸心と前記所定の軸心とが一致する第1の姿勢にあるとき全周が空気層に囲まれ、前記中空部材が前記空間の軸心に対して前記所定の軸心が偏心した姿勢のうちの少なくとも1つである第2の姿勢にあるとき前記ヒータブロックの内周側壁面と複数の箇所で同時に接触するように形成されている圧力センサ用筐体と、
を少なくとも含む圧力センサアセンブリ
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサアセンブリにおいて、
前記圧力センサ用筐体における前記側面の少なくとも一部分は、自身と前記所定の軸心に垂直な平面との交線によって形作られる形状が多角形となるように形成されている圧力センサアセンブリ
【請求項3】
請求項2に記載の圧力センサアセンブリにおいて、
前記圧力センサ用筐体における前記側面は、前記所定の軸心に平行な3以上の平面が連接することで形成されている圧力センサアセンブリ
【請求項4】
請求項2または3に記載の圧力センサアセンブリにおいて、
前記多角形八角形である前記圧力センサ用筐体を含む圧力センサアセンブリ
【請求項5】
請求項1に記載の圧力センサアセンブリにおいて、
前記圧力センサ用筐体における前記側面の少なくとも1部は、自身と前記所定の軸心に垂直な平面との交線によって形作られる形状が3以上の異なる曲線が連接する形状として形成され、
前記異なる曲線は、曲率および曲率中心の少なくとも1つが互いに異なる曲線である圧力センサアセンブリ
【請求項6】
請求項5に記載の圧力センサアセンブリにおいて、
前記圧力センサ用筐体における前記側面は、前記所定の軸心に平行に延在しかつ前記所定の軸心に向けて窪んだ円筒面の一部として形成されている圧力センサアセンブリ
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の圧力センサアセンブリにおいて、
前記側面に凸状部が設けられている前記圧力センサ用筐体を含む圧力センサアセンブリ
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の圧力センサアセンブリにおいて、
前記圧力センサ用筐体を備える圧力センサを含む圧力センサアセンブリ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体等の圧力を検出する圧力センサに用いられる筐体およびこの筐体を備える圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の圧力を測定するためのセンサとして、ダイアフラムを備えた圧力センサが広く用いられている。当該圧力センサにおいては、測定対象となっている流体(以下、「被測定流体」と称する。)の圧力変化を、ダイアフラムを通じて機械的変位の形で捉え、さらにこの機械的変位を電気信号として検出することで被測定流体の圧力を測定するように構成されている。例えば、静電容量式の圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサにおいては、ダイアフラムの変形を一対の電極間の静電容量の変化として検出し、この静電容量の変化に基づいて、被測定流体の圧力を測定するように構成されている。ここで、上記ダイアフラムは、互いに非連通の状態で隔離され2つの空間に面するように配設されており、これら2つの空間の一方に被測定流体が流出入することで生じる圧力差によって、上記変位がもたらされる構造となっている。
【0003】
上記構成の圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサにおいては、被測定流体の圧力を受けるダイアフラムの受圧面と被測定流体とが接触することになる。このため、上記圧力センサ素子およびこれを用いた圧力センサが、例えば、半導体デバイス等を製造する装置の成膜・エッチングプロセスにおける真空計として使用される場合、被測定流体に含まれる成膜物質がダイアフラムの受圧面に付着することが想定される。この成膜物質は、連続的な化学反応をともないながら膜を形成するとともに、比較的強い力でダイアフラムの受圧面に凝着する。このような化学反応をともなう成膜過程においては、分子間または結晶格子間で作用する力、いわゆる膜の内部応力が発生する。この内部応力は、強い力で凝着したダイアフラムに作用することでダイアフラムを変形させ、センサ出力のゼロ点をシフトさせることで測定精度を低下させる要因となる。このため、成膜物質がダイアフラムに堆積するのを防止するために、筐体の外周面を取り囲むようにヒータを設けて筐体内を加熱し、これによって、ダイアフラムの周辺の温度を成膜物質が析出することのない高温度に保持するように構成されている(例えば、特許文献1参照) 。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-205259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の圧力センサをはじめとする従来の圧力センサにおいては、円筒状の内部空間を有するヒータブロックに、圧力センサを挿入するように構成されている。このとき、ヒータブロックの内周側壁面と圧力センサとの間、より具体的には、ヒータブロックの内周側壁面と圧力センサの筐体の側壁面との間には空気層が形成され(すなわち、筐体の周りを取り囲むように空気層が形成され)、当該空気層内の空気をヒータによって加熱することで、筐体内が均一の温度で加熱されるように構成されている。しかしながら、ヒータブロックの設計、製造または施工が適切でなない場合、例えば、ヒータブロックの内部空間が内側に配置される圧力センサの大きさに適合しないものとして寸法等が設計された場合、または、ヒータブロックの加工精度が適切でないことで歪んだ内部空間が形成された場合、もしくは、ヒータブロックの設置が適切でないことで内側に配置される圧力センサが内部空間の中央に配置されていない場合にあっては、ヒータブロックの内周面と圧力センサの筐体とが一部接触するといった事態が起こり得る。
【0006】
このような事態においては、筐体の一部分に空気層を介さずに熱が伝えられ(固体間の熱伝導によりに圧力センサへ熱が伝えられ)、さらに、局所的に空気層が薄くなることで熱流束に乱れ(ムラ)が生じる。当該事象は、圧力センサの内部、すなわち、筐体内部およびこれに収容されている圧力センサ素子に温度分布(各所における温度のバラツキ)を生じさせる。特に、図12に示す円筒状の筐体をもつ従来の圧力センサ1000においては、図13に示すように、ヒータブロックの内周側壁との接触部近傍において空気層が薄くなる領域(図13中の接触位置P1000近傍のS1000で示された領域)が広範囲にわたって形成されることになるため、熱流束の乱れ(ムラ)が顕著に表れて上記温度分布が生じ易い構造となっている。
ここで、真空計として用いられる圧力センサにおいては、規定の測定精度を保証するために、製品全体を均熱化した状態でキャリブレーションをとった後に出荷される。このため、上記温度分布は、当該キャリブレーションに基づいた入力値(すなわち、被測定流体の圧力値)と出力値(圧力センサ素子から出力される電気信号の値)との相関関係にズレを生じさせ(例えばゼロ点シフトを生じさせ)、測定誤差をもたらす。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み創作された発明であって、その目的とするところは、圧力センサをヒータブロックの内側に配置して使用する際に、圧力センサ内部に温度分布が生じ難い筐体を提供し、また、当該筐体を備えることで、測定誤差が抑制された圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る圧力センサ用筐体(100)は、 所定の軸心(CL1)に沿って延在する筒状の側面(100SW)とこの側面(100SW)に連接する上面(102)および下面(101)とから形成された中空部材からなり、前記中空部材の内側には流体の圧力を検出する圧力センサ素子(11)が収容され、前記中空部材は、円筒状の空間(500V)に自身が配置されたとき、前記空間の軸心(CL500)と前記所定の軸心とが一致する第1の姿勢においては前記側面の全周が空気層(A)によって覆われ、前記空間の軸心に対して前記所定の軸心が偏心した姿勢のうちの少なくとも1つである第2の姿勢においては前記側面と前記空間を画成する壁面(500W)とが複数の箇所(P1、P2)で同時に接触するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記圧力センサ用筐体において、前記側面の少なくとも一部分を、自身と前記所定の軸心に垂直な平面との交線によって形作られる形状が多角形となるように形成してもよい。
【0010】
さらに、前記圧力センサ用筐体において、前記側面が、前記所定の軸心に平行な3以上の平面が連接することで形成されてもよい。
【0011】
また、前記圧力センサ用筐体において、前記多角形が八角形であってもよい。
【0012】
さらに、前記圧力センサ用筐体において、前記側面の少なくとも1部が、自身と前記所定の軸心に垂直な平面との交線によって形作られる形状が3以上の異なる曲線が連接する形状として形成され、前記異なる曲線は、曲率および曲率中心の少なくとも1つが互いに異なる曲線であるさように構成してもよい。
【0013】
また、前記圧力センサ用筐体において、前記側面が、前記所定の軸心に平行に延在しかつ前記所定の軸心に向けて窪んだ円筒面の一部として形成されてもよい。
【0014】
さらに、前記圧力センサ用筐体において、前記側面に凸状部が設けられていてもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するための本発明に係る圧力センサは、上記圧力センサ用筐体を備えることを特徴とする。
【0016】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記している。
【発明の効果】
【0017】
圧力センサに係る本発明によれば、 圧力センサをヒータブロックの内側に配置して使用する際に、圧力センサ内部に温度分布が生じ難い筐体を提供することができ、また、当該筐体を備えることで、測定誤差が抑制された圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、本発明の実施の形態に係る筐体を備える圧力センサを斜め上方から視認したときの斜視図であり、図1(b)は、本発明の実施の形態に係る筐体を備える圧力センサを斜め下方から視認したときの斜視図である。
図2図2(a)は、本発明の実施の形態に係る筐体を備える圧力センサを斜め上方から視認したときの分解斜視図であり、図2(b)は、本発明の実施の形態に係る筐体を備える圧力センサを斜め下方から視認したときの分解斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る圧力センサが備えるセンサユニットの断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る筐体を備える圧力センサがヒータブロックの内側に配設された時の様子を表わす概念図(斜視図)である。
図5図5の(a)、(b)は、発明の実施の形態に係る筐体を備える圧力センサがヒータブロックの内側に配設された時の平面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る筐体(変形例1)を備える圧力センサを斜め上方から視認したときの斜視図である。
図7図7の(a)、(b)は、発明の実施の形態に係る筐体(変形例1)を備える圧力センサがヒータブロックの内側に配設された時の平面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る筐体(変形例2)を備える圧力センサを斜め上方から視認したときの斜視図である。
図9図9の(a)、(b)は、発明の実施の形態に係る筐体(変形例2)を備える圧力センサがヒータブロックの内側に配設された時の平面図である。
図10図10は、本発明の実施の形態に係る筐体(変形例3)を備える圧力センサを斜め上方から視認したときの斜視図である。
図11図11の(a)、(b)は、発明の実施の形態に係る筐体(変形例3)を備える圧力センサがヒータブロックの内側に配設された時の平面図である。
図12図12は、従来の圧力センサを斜め上方から視認したときの斜視図である。
図13図13の(a)、(b)は、従来の圧力センサがヒータブロックの内側に配設された時の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態である筐体100およびこれを備えた圧力センサ1を、図1ないし図11に基づいて説明する。ここで、圧力センサ1は、静電容量式の圧力センサ素子を備えた真空計として用いられ、また、圧力センサ素子からの電気信号を増幅するアンプが自身の外部に配設された、いわゆる分離型の圧力センサ(分離型の真空計)として構成されている。
なお、説明文中の前後、左右および上下は、各図に示された座標軸の±X(+X方向が後方向、-X方向が前方向)、±Y(+Y方向が左方向、-Y方向が右方向)および±Z(+Z方向が上方向、-Z方向が下方向)としてそれぞれ定義する。また、各図は概念図であって、それぞれに示された内容は、実際の筐体およびこれを備える圧力センサと必ずしも一致するものではない。
【0020】
圧力センサ1は、図1(a)、(b)の斜視図、および図2(a)、(b)の分解斜視図に示すように、センサユニット10と、このセンサユニット10を内部に収容する筐体100と、被測定流体が流出入する配管と接続する機械要素である継手200と、センサユニット10から出力される電気信号を外部に送信するケーブル300とから主に構成されている。
【0021】
〔センサユニット10〕
センサユニット10は、図3に示すように、圧力センサ素子11と、ケーシング20と、ケーシング20内に収容された台座プレート30と、この台座プレート30に接合しかつケーシング20に橋架された支持ダイアフラム40と、ケーシング20内外を導通接続する電極リード部50とから主に構成されている。
【0022】
[圧力センサ素子11]
圧力センサ素子11は、被測定流体の圧力変化を機械的変位の形で捉え、さらにこの機械的変位を電気信号(例えば、電圧信号)として検出する要素であって、上述したように、例えば、静電容量式の圧力センサ素子として構成されている。この圧力センサ素子11は、例えば、平面視において1cm角の略正方形を呈した薄板形状を有し、薄板状のダイアフラム12と、このダイアフラム12と連接して容量室C1を形成する円板状の台座13と、容量室C1の内部に収容された一対のセンサ電極部14、14と、後述する電極リードピン51との間で電気的に接続するコンタクトパッド15とを備える。
【0023】
ダイアフラム12は、その一表面(受圧面)に導入部20Vに流入した被測定流体が接触することで、例えば図3の上方(+Z方向)に向けて中央部が凸となるように変形する。このダイアフラム12の変形は、容量室C1内に配設された一対のセンサ電極部14、14の距離を変化させ、結果としてこれら電極間の静電容量を上記変形量に応じて変化させる。このようにして、圧力センサ素子11は、被測定流体の圧力の変化を静電容量の変化として検出する。
【0024】
[ケーシング20]
ケーシング20は、センサユニット10の外枠を構成するとともに、後述する台座プレート30および支持ダイアフラム40を介して圧力センサ素子11を支持し、また、被測定流体が流出入する導入部20Vを画成し、さらに、継手200と連結する部位を形成する。ケーシング20は、ロアハウジング21、アッパーハウジング22およびカバー23から構成され、これらケーシング要素は、例えば、耐食性の金属であるインコネルからそれぞれ形成されている。ロアハウジング21、アッパーハウジング22およびカバー23は、例えば後述する継手200の軸心CL(被測定流体が流出入する配管の軸心)に沿って当該順序で下から上に積み上げられるようにして構成されており、それぞれの合わせ面は、例えば、後述する継手200の軸心CL(被測定流体が流出入する配管の軸心と同一であってZ軸に相当する)に垂直な平面(XY平面)上に形成され、対向する部位同士が、例えば溶接により接合されている。
【0025】
ロアハウジング21は、径の大きな大径円筒部21aと径の小さな小径円筒部21bとから形成され、かつこれら2つの部分が同軸となるように連結する円筒状の部位である。大径円筒部21aの上部開口端には、支持ダイアフラム40を介してアッパーハウジング22の下部開口端が接続している。また、小径円筒部21bの内周壁は、被測定流体が流入する導入部20Vを画成している。小径円筒部21bは、後述する継手200の継手接合部220と例えば溶接によって接合される部位を形成する。
【0026】
アッパーハウジング22 は、ロアハウジング21とカバー23との間に介在する略円筒体形状を呈した部位であり、その下部開口端は、上述したように、支持ダイアフラム40を介してロアハウジング21の上部開口端と接続し、その上部開口端は、カバー23と接続している。アッパーハウジング22の径(内径および外径)および軸心は、ロアハウジング21の大径円筒部21aの径(内径および外径)および軸心と略同値および同一である。また、アッパーハウジング22は、カバー23、支持ダイアフラム40、台座プレート30及び圧力センサ素子11とともにケーシング20内に独立した真空の基準真空室20Wを画成している。なお、基準真空室20Wには、所望の真空度を維持するために、いわゆるゲッター( 図示せず) と呼ばれる気体吸着物質が充填されている。また、下部開口端近傍における内周側壁面の適所には、ストッパ22aが突設されている。ストッパ22aが設けられていることで、被測定流体の急激な圧力上昇により台座プレート30 が過度に変移することが規制されている。
【0027】
カバー23は、略円盤状のプレートからなり、所定の位置に電極リード挿通孔23aが形成されている。この電極リード挿通孔23aに、ハーメチックシール60を介して電極リード部50が埋め込まれることで、所定の電気的シール性が確保されている。
【0028】
このように、ケーシング20は、軸心CLに沿ってロアハウジング21、アッパーハウジング22およびカバー23が積層され、当該軸心CLをもつ直径の異なる2つの円柱が連接した外形を呈している。
【0029】
[台座プレート30]
台座プレート30は、圧力センサ素子11を支持する構成要素であって、第1の台座プレート31と第2の台座プレート32とから構成されている。台座プレート30は、後述する支持ダイアフラム40を通じてケーシング20 に橋架されるように支持されている。
【0030】
第1の台座プレート31および第2の台座プレート32は、例えば、酸化アルミニウムの単結晶体であるサファイアからなる。第1の台座プレート31および第2の台座プレート32は、いずれもケーシング20の内面から離間した位置にあって、前者は支持ダイアフラム40の上面に接合され、後者は支持ダイアフラム40の下面に接合されている。ここで、第1および第2の台座プレート31、32は、支持ダイアフラム40の厚さに対して十分に厚くなっており、これにより、台座プレート30の熱膨張率と支持ダイアフラム40の熱膨張率との相違に起因した熱応力によって、台座プレート30が反るのを防止している。
【0031】
第1の台座プレート31および第2の台座プレート32は、その略中央に、圧力センサ素子11が備えるダイアフラム12の受圧面が対向する空間C2と被測定流体Lが流入する導入部20Vとを連通させるための導入孔31aおよび導入孔32aが開口している。また、第2の台座プレート32の下面には、導入孔32aと空間C2とが連通するように、酸化アルミニウムベースの接合材を介して圧力センサ素子11が接合されている。なお、第2の台座プレート32と圧力センサ素子11との接合は、周知の方法によって行われる。
【0032】
[支持ダイアフラム40]
支持ダイアフラム40は、上述したように、ケーシング20を通じて台座プレート30を橋架するために設けられた構成要素であって、インコネルの薄板からなり、その形状は、ケーシング20の外周縁形状、具体的には、アッパーハウジング22の下部開口端およびロアハウジング21の上部開口端の外周縁形状と整合した形状を有する。支持ダイアフラム40は、上面に第1の台座プレート31が接合され下面に第2の台座プレート32が接合された状態で、その外周部(周囲縁部)がアッパーハウジング22の下部開口端およびロアハウジング21の上部開口端に挟まれながら溶接等により接合されている。なお、支持ダイアフラム40の厚さは、例えば本実施形態の場合数十ミクロンであって、第1および第2の台座プレート31、32より十分に薄い厚さとなっている。また、支持ダイアフラム40の中央部には、導入孔31aおよび導入孔32aとともに、ダイアフラム12の受圧面が対向する空間C2と被測定流体Lが流入する導入部20Vとを連通させるための導入孔40aが開口している。
【0033】
[電極リード部50]
電極リード部50は、電極リードピン51と金属製のシールド52とを備え、電極リードピン51は金属製のシールド52にガラスなどの絶縁性材料からなるハーメチックシール53によってその中央部分が埋設され、電極リードピン51の両端部間で気密状態を保っている。電極リードピン51およびシールド52の一端は、カバー23の上面から軸心CLに沿って外部へ突出し、後述するケーブル300が備えるコネクタ部320と接続するように構成され、これにより、圧力センサ1の出力を、外部に配設された増幅器(アンプ)および信号処理部に伝達するように構成されている。なお、シールド52とカバー23との間にも上述の通りハーメチックシール53が介在している。また、電極リードピン51の他方の端部には導電性を有するコンタクトバネ55、56が接続されている。
【0034】
コンタクトバネ55、56は、導入部20V から被測定流体Lが急に流れ込むことで生じる急激な圧力上昇に起因して圧力センサ素子11が変移した場合(より具体的には、上記圧力上昇により支持ダイアフラム40を通じてケーシング20に橋架されている台座プレート30が変移し、これに支持された圧力センサ素子11が変移した場合)、この変移を吸収して圧力センサ素子11の測定精度に影響が及ばないように設けられた弾性要素である。
【0035】
〔筐体100〕
筐体100は、センサユニット10を収容する空間が内側に形成されたケーシング要素であって、例えば、ステンレス製の薄板材を折り曲げまたは接合等することで、図1(a)、(b)に示すように、その外形が八角柱体を呈するように形成されている。具体的には、長方形の薄板からなる8つの側面部(これら8つの側面部が連接することで筐体100の側面100SWが形成される)と、略正八角形の薄板からなる略同一形態の下面部101(特許請求の範囲に記載の「下面」に相当。)および上面部102(特許請求の範囲に記載の「上面」に相当。)とから構成された10面体として形成されている。筐体100の軸心CL1は、例えば、小径円筒部21bの軸心または継手200の軸心CL(被測定流体が流出入する配管の軸心)に一致するように構成されており、これにより、上記8つの側面部は、軸心CL1に対して平行な側面をもつ部位として形成され、上面部102および下面部101は、軸心CL1に対して垂直な面(XY平面に平行な面)をもつ部位として形成されている。
【0036】
筐体100の下面部101および上面部102には、それぞれ貫通孔が形成されている。例えば、下面部101には、図1(b)に示すように、センサユニット10と継手200との接合部CP(小径円筒部21bと後述する継手接合部220とが接合してなる部分)が貫通する第1の貫通孔103が形成されており、また、上面部102には、図1(a)に示すように、ケーブル300が貫通する第2の貫通孔104が形成されている。これら2つの貫通孔は、いずれも軸心CL1を内側に含む位置(軸心CL1が貫通する位置)に形成されている。
【0037】
筐体100は、センサユニット10の全方位(上下方向、左右方向および前後方向)を覆うべく、図2(a)、(b)に示すように、2つの分割筐体から構成されている。この2つの分割筐体は、例えば、軸心CL1に平行な面(例えばXZ平面に平行な面)に沿って筐体100を分割するようにして形成された第1の分割筐体110および第2の分割筐体120からなる。当該第1の分割筐体110および第2の分割筐体120においては、互いの合わせ面が軸心CL1に沿って形成され、当該合わせ面(後述する端面110a、120a)によって囲まれた開口が、軸心CL1に平行な面内に形成されている。
【0038】
[第1の分割筐体110]
第1の分割筐体110は、筐体100が備える8つの側面部のうちの5つの側面部と、同下面部101の一部をなす第1の分割下面部111と、同上面部102の一部をなす第1の分割上面部112とを含むように形成されている(図1(a)、(b)および図2(a)、(b)を参照)。
【0039】
上記5つの側面部は、いずれも側面視が長方形の薄板部材からなり、隣接する部位同士が互いに連結し、端部に位置する側面部が備える端面110aによって第2の分割筐体120との合わせ面の一部が形成されている。当該合わせ面は、軸心CL1に平行な面(XZ平面に平行な面)として形成され、これにより、第1の分割筐体110の開口部が、軸心CL1に平行な面(XZ平面に平行な面)内に大きな口を開けるようにして形成されることになる。
【0040】
第1の分割下面部111は、図2(b)に示すように、底面視が略正八角形の薄板にU字状の切欠き凹部(以下、この切欠き凹部を「第1の分割下面切欠部113」と称する。)が設けられた部位として形成されている。この第1の分割下面切欠部113は、その開口端が八辺のうちの一辺、具体的には、後述する第2の分割筐体120を構成する第2の分割下面部121と対向する一辺を含む位置にあって、当該一辺から第1の分割下面部111の中心に向けて延在する(例えば+Y方向へ延在する)空間として形成されている。また、この第1の分割下面切欠部113は、接合部CPが貫通する第1の貫通孔103の一部を形成している。すなわち、第1の分割下面切欠部113を画成する周縁側壁面113aは、第1の貫通孔103の壁面103aの一部を形成している(図1(b)を参照)。このため、第1の分割下面切欠部113の開口端の幅は、接合部CPの最大幅(最大径)よりも大きくなるように設定されている。
【0041】
第1の分割上面部112は、図2(a)に示すように、その平面視が正八角形を画成する8辺のうちの5辺と2端点を結んだ対角線とによって囲まれた6角状の薄板部材からなり、さらに、U字状の切欠き凹部(以下、この切欠き凹部を「第1の分割上面切欠部114」と称する。)が設けられている。この第1の分割上面切欠部114は、上記対角線の略中央に開口端をもち、当該開口端から中心部に向かって延在する(例えば+Y方向へ延在する)空間として形成されている。第1の分割上面切欠部114は、ケーブル300が貫通する第2の貫通孔104の一部を形成している。すなわち、第1の分割上面切欠部114を画成する周縁側壁面114aは、第2の貫通孔104の壁面104aの一部を形成している(図1(a)を参照)。第1の分割上面切欠部114の開口端の幅は、例えば、ケーブル300(より具体的には、後述するケーブル本体部310)の最大幅(最大径)よりも大きくなるように設定されている。
【0042】
[第2の分割筐体120]
第2の分割筐体120は、筐体100が備える8つの側面部のうちの3つの側面部と、同下面部101の一部をなす第2の分割下面部121と、同上面部102の一部をなす第2の分割上面部122とを含むように形成されている(図1(a)、(b)および図2(a)、(b)を参照)。
【0043】
上記3つの側面部は、いずれも側面視が長方形の薄板部材からなり、隣接する部位同士が互いに連結し、端部に位置する側面部が備える端面120aによって第1の分割筐体110との合わせ面の一部が形成されている。当該合わせ面は、軸心CL1に平行な面(例えばXZ平面)に沿って形成され、これにより、第2の分割筐体120の開口部が、軸心CL1に平行な面(XZ平面に平行な面)内に大きな口を開けるようにして形成されることになる。
【0044】
第2の分割下面部121は、図2(b)に示すように、底面視が正八角形の一辺と略同じ長さの4辺によって形成された略矩形状の薄板からなる。より具体的には、上記3つの側面部のうちの中央に位置する側面部の下端から筐体100の中心部に向けて延在する(例えば+Y方向へ延在する)底面視略矩形状の凸状部(以下、この凸状部を「第2の分割下面凸部123」と称することがある。本実施の形態では、この第2の分割下面凸部123と第2の分割下面部121とが実質的に同一部位を表すことになる)として形成されている。第2の分割下面凸部123(第2の分割下面部121)の周縁を画成する周縁側壁面のうち、第1の分割下面部111に形成された第1の分割下面切欠部113と対向する周縁側壁面123aは、接合部CPが貫通する第1の貫通孔103の壁面103aの一部を形成している(図1(b)を参照)。このため、周縁側壁面123aの幅(X軸に沿った方向の長さ)は、接合部CPの最大幅(最大径)よりも大きくなるように設定されている。
【0045】
第2の分割上面部122は、図2(a)に示すように、平面視略正八角形状の薄板部材から4等分した部分(具体的には、正八角形状を形成する8辺のうちの互いが直交する2組の辺にそれぞれ平行な2つの分割線によって4等分した部分)を取除いた形態にU字状の切欠き凹部(以下、「第2の分割上面切欠部124」と称する。)が形成された薄板部材からなる。第2の分割上面切欠部124は、上記2つの分割線が交差する位置に設けられた空間であって、ケーブル300が貫通する第2の貫通孔104の一部を形成する(図1(a)を参照)。すなわち、第2の分割上面切欠部124を画成する周縁側壁面124aは、第2の貫通孔104の壁面104aの一部を形成する。このため、第2の分割上面切欠部124の開口端の幅は、ケーブル300(より具体的には、後述するケーブル本体部310)の最大幅(最大径)よりも大きくなるように設定されている。
【0046】
〔継手200〕
継手200は、被測定流体が流出入する配管と圧力センサ1とが連接するための接続要素であって、例えば、互いが一体となって連結する継手本体部210と継手接合部220とから構成されている。
継手本体部210は、上記配管と同一の軸心をもつステンレス製の六角筒状部材から構成され、上記配管と螺合するためのネジ山(雌ネジ)が内側壁面に形成されている。また、平面視形状(横断面形状)が略正六角形を呈している継手本体部210の外周側壁には、例えばスパナが係合するように構成されている。
継手接合部220は、センサユニット10が備える小径円筒部21bと、例えば溶接により接合される部位であって、内側に導入部20Vと連通する通路が内側に形成された管状部材から構成されている。小径円筒部21bと接合された当該継手接合部220は、上述したように、接合部CPを形成している。
【0047】
〔ケーブル300〕
ケーブル300は、例えば、センサユニット10から出力される電気信号(例えば電圧値を含む電気信号)を増幅するために圧力センサ1の外部に配置されたアンプと電気的に接続するための部位あって、ケーブル本体部310とコネクタ部320とから構成されている。
ケーブル本体部310は、導電性材料からなる複数の導線310aと、これら複数の導線310aを覆う導電材料からなるシールド部材310bおよび非導電性材料からなる被覆材310cとから構成されている。また、ケーブル本体部310の先端部には、アンプと接続するコネクタが取付けられている。
コネクタ部320は、センサユニット10に設けられた電極リード部50と接続する部位であって、電極リード部50(より具体的には、電極リードピン51)と着脱自在に係合する端子が設けられている。これによりケーブル300は、軸心CL1に沿った方向へ伸長する形でセンサユニット10に取付けられる。
【0048】
<ヒータブロック500およびその設置>
つづいて、筐体100を備える圧力センサ1を加熱するために設置されるヒータブロック500について説明する。このヒータブロック500は、例えば、熱伝導率の大きな材料(アルミニウム合金等)からなり、電熱線を通じて所定の温度に加熱されるように構成されている。ヒータブロック500の内側には、圧力センサ1を収容するための空間500Vが開口している。この空間500Vは、圧力センサ1を覆う筐体100の側面100SWの全周に空気層Aが形成されるのに十分な容積を有し、その開口径および高さは、筐体100の平面視における最大外形寸法および高さよりも大きく設定されている。
【0049】
ヒータブロック500は、図4および図5(a)に示すように、圧力センサ1(筐体100)の軸心CL1と自身の軸心CL500とが一致するように、圧力センサ1(筐体100)の周囲に配置される。ここで、図4は、ヒータブロック500のみをXZ平面で切断したときの斜視図であり、図5(a)は、平面図である。
【0050】
図5(a)に示すように、圧力センサ1が、自身の軸心CL1とヒータブロック500の軸心CL500とが一致する位置に正しく配置されたとき(特許請求の範囲に記載の「第1の姿勢」に相当。)には、空気層Aが、圧力センサ1とヒータブロック500との間、より具体的には、圧力センサ1における筐体100の側面100SWとヒータブロック500における内周側壁面500Wとの間に略均等に介在することになる。このため、当該状態においては、圧力センサ1(筐体100)の内部が略均一に加熱されることになる。
【0051】
これに対し、圧力センサ1が、例えば、ヒータブロックの設計、製造および施工が適切でないことが原因で、自身の軸心CL1とヒータブロック500の軸心CL500とが一致しない位置(軸心CL1が軸心CL500に対して偏心した位置)に配置されたとき(特許請求の範囲に記載の「第2の姿勢」に相当。)は、図5(b)に示すように、圧力センサ1とヒータブロック500とが2箇所で線接触することが起こり得る。より具体的には、圧力センサ1における筐体100の側面100SWとヒータブロック500における内周側壁面500Wとが接触位置P1および接触位置P2の2箇所で線接触することが起こり得る(以下、このような状態を「接触状態」と称する。)。このような接触状態にある圧力センサおいては、空気層Aが薄くなる領域、例えば、本実施の形態においては、第1接触部P1と第2接触部P2との間に空気層Aが薄くなる領域S1が形成され、図12および図13に示す円筒状の筐体を備える従来型圧力センサ1000においては、接触部P1000の近傍に空気層Aが薄くなる領域S1000が形成される。
【0052】
ここで、本実施の形態に係る圧力センサ1における領域S1は、後述するように、従来型圧力センサ1000における領域S1000と比較して広く形成されることになり、結果として当該領域の空気層Aの体積が大きくなる(図5(b)と図13(b)とを参照)。
すなわち、円筒面からなる内周側壁面(ヒータブロック500の内周側壁面500W)と複数の位置(第1接触位置P1および第2接触位置P2)で接触することになる圧力センサ1においては、平面視において、隣接する第1接触位置P1と第2接触位置P2を結んだ線分と第1接触位置P1または第2接触位置P2と軸心CL1とを結んだ線分がなす角度θは、幾何学的に必ず90度未満となる(図5(b)参照)。これに対し、曲率半径の大きな円筒面からなる内周側壁面500Wに曲率半径の小さな円筒面からなる筐体の側面が内接する従来型圧力センサ1000においては、接触位置は1個所のみ(接触位置P1000のみ)となり、かつ平面視において、接触位置P1000と軸心CL1000とを結んだ線分と接触位置P1000における接線とがなす角度は90度となる(図13(b)参照)。このため、接触位置(接触部)近傍では、第1接触位置P1と第2接触位置P2とを結ぶ線分に沿って形成された筐体100の側面100SWの外周縁は、内周側壁面500Wに内接する円筒面、すなわち、従来型圧力センサ1000が備える筐体の側面の外周縁よりも必ず内側(軸心側)に位置することになる。このため、圧力センサ1の領域S1は、従来型圧力センサ1000の領域S1000よりも広く形成されることになる。(図5(b)と図13(b)とを参照)。
【0053】
<効果>
上記構成の筐体100および筐体100を備える圧力センサ1によれば、以下の効果がもたらされる。
[効果1] 上述したように、接触状態にある本実施の形態に係る圧力センサ1は、同状態にある従来型圧力センサ1000と比較して、接触部分近傍の空気層Aが形成される空間、すなわち、筐体100の側面100SWとヒータブロック500の内周側壁面500Wとの間に形成される空間を広く確保することができる。これにより、熱流束の乱れ(ムラ)、およびこれに起因した圧力センサ1の内部空間の温度分布、すなわち、筐体100の内部およびこれに収容されている圧力センサ素子11(センサユニット10)の温度分布を小さく抑えることができ、結果として測定誤差を小さくすることができる。
[効果2] 筐体100を八角柱としたことで、圧力センサ素子11(センサユニット10)を収容する内部空間が適切に確保されるとともに、接触状態にあるときの接触部分近傍の空気層Aを適度に確保することができる。これにより、スペースユーティリティと上記効果(効果1)とを高い次元で両立することができる。
[効果3] 円筒状の筐体を備える圧力センサの場合、転がり易いことから取付作業中に誤って床等に落とすことが往々にして起こり得る。これに対し、本実施の形態に係る圧力センサ1によれば、八角柱の筐体100を備えることで転がりによる落下を防止することができる。これにより、取付作業等を容易かつ安全・確実に行うことが出来るようになるなど、扱いやすく実用性の高い圧力センサを提供することができる。
【0054】
また、筐体100が、複数の筐体に分割されている場合には、以下に示すような効果がもたらされる。
[効果4] 筐体100を軸心CL1に沿って合わせ面が形成されるように分割することで、筐体100の側面100SW(側面部)の形態を部分的に異ならせる等、筐体100の側面形状のバリエーションを容易に増やすことができる。これにより、上記効果1をもたらす上で好適な筐体形状を設計する上での自由度が広がる。
【0055】
さらに、筐体100が、上記形態で分割されたたことで、温度分布の抑止効果に加え、以下のような付随的効果がもたらされる。
[効果5] センサユニット10(圧力センサ素子11)に種々のサイズの配管に対応すべく異なるサイズ(呼び径)の継手200が接合された複数の仕様のサブアセンブリ400に対し、共通の筐体(形態が同一の筐体)を組み付けることができる。すなわち、異なる仕様のサブアセンブリ400ごとに異なる形態(サイズ)の筐体を用意する必要がなくなるため生産コストを抑えることができる。
[効果6] 筐体の形態(サイズ)が継手のサイズ(呼び径)に左右されないことから、必要最小限の大きさ、例えば、センサユニット10が収容できる必要最小限の大きさに抑えることができるため、小型の圧力センサを提供することができる。
[効果7] 上記サブアセンブリ400を中間工程で予め作り溜めしておき、これを部品在庫として仕様別に保管・管理することで、製品製造の最終工程を筐体の組立とケーブルの取付けのみからなる工程(溶接等の機械加工を伴わない工程)によって構成することができる。これになり、製品製造のリードタイムを短縮することができる。
[効果8] 筐体100を構成する第1の分割筐体110および第2の分割筐体120においては、上述したように、互いの合わせ面が、軸心CL1(軸心CL)に沿って形成されることで、当該軸心CL1に平行な面(XZ平面に平行な面)内に大きな口を開けるようにして開口部が形成されることになる。このため、軸心CL1(軸心CL)に沿って伸長するケーブル300の取回し作業(取付け作業)が容易になり、組立性が向上する。また、ケーブル300の取回し作業が容易になることで、異なる数種の組立工順、例えば、サブアセンブリ400にケーブル300を取付けた後に分割筐体(第1の分割筐体110および第2の分割筐体))を組み付ける工順の他に、サブアセンブリ400に分割筐体の一部(例えば第1の分割筐体110)を組み付けた後にケーブル300を取付けるといった工順をとることが可能になる。後者によれば、例えばケーブル300の重量が大きい場合に、第2の貫通孔104の壁面を形成する第1の分割上面切欠部114の周縁側壁面114aを支持面として活用して取付けることができるため、センサユニット10側の接続端子に過度な負荷がかかることを防止できる。このように、本実施の形態によれば、組立工順の自由度が広がり、状況に応じて効率的な組立工順を適宜とることができるようになる。さらに、ケーブル300の先端部に配設された増幅器(アンプ)と接続するためのコネクタが、例えばその外形寸法が第2の貫通孔104の開口寸法より大きく、かつケーブル本体部310と一体となって接合している場合であっても、筐体の形態を変更し、および/または工順を変更することなく容易に取付けることができるようになる。
【0056】
<変形例>
上記実施の形態の変形例として、筐体100の側面100SWを、平面ではなく曲面で形成してもよい。例えば、上記実施の形態では、8つの平面が平面視正八角形をなすように連接することで側面100SWが形成されているが、これを8つの曲面によって側面が形成されるように構成してもよい。具体的には、図6に示すように、8つの曲面が、それぞれ軸心CL1に平行かつ当該軸心CL1に向けて窪んだ円筒面の一部(曲率中心が筐体100の外側にある円筒面の一部)として形成され、これらが連接して筐体100-2の側面100SW-2をなすように構成してもよい。この筐体100-2は、例えば、対称形を呈する一対の分割筐体(第1の分割筐体110-2および第2の分割筐体120-2)から構成されている。
【0057】
図7は、筐体100-2およびこれを備える圧力センサ1-2の周囲にヒータブロック500が配置されたときの状態を示した平面図である。図7(a)は、圧力センサ1-2が、自身の軸心CL1-2とヒータブロック500の軸心CL500とが一致する位置に正しく配置されたときの平面図であり、図7(b)は、圧力センサ1-2が接触状態にあるときの平面図である。
【0058】
この変形例1に係る筐体100-2およびこれを備える圧力センサ1-2によれば、接触状態における空気層Aが形成される領域S1-2(第1接触位置P1-2と第2接触位置P2-2との間の領域)を、上記実施の形態に係る筐体100およびこれを備える圧力センサ1の領域S1と比較してより広く確保することができる(図5(b)および図7(b)参照)。このため、温度分布の発生を抑止する効果(効果1)が、より顕著にもたらされる。
【0059】
また、別の変形例(変形例2)として、例えば図8および図9に示すように、円筒形状を基本形態とする筐体100-3の側面100SW-3に複数の凸状部150を設けるように構成してもよい。この変形例2では、円筒状の側面100SW-3に平面視略90度間隔で4つの凸状部150が突設されている。凸状部150が設けられる位置や具体的形態は、特定のものに限定されず、また、各所で異なる形態としてもよい。さらに、凸状部150の成形方法も、特定のもの限定されない。例えば、筐体100-3の側面100SW-3に、所定の形状を呈した突片を溶接や接着剤で接合してもよいし、筐体100-3(側面100SW-3)を形成する部材に対してプレス等の機械加工を施すことで凸状部150を一体成形してもよい。筐体100-3が複数の分割筐体(第1の分割筐体110-3および第2の分割筐体120-3)からなる場合、各分割筐体の端縁に沿って凸状部150を形成してもよい。さらに凸状部150を熱伝導率の小さな材料から形成してもよいし、ヒータブロック500の内周側壁面500Wと接する凸状部150の表面部分にのみ熱伝導率の小さな材料を貼設等により設けてもよい。
【0060】
図9は、筐体100-3およびこれを備える圧力センサ1-3の周囲にヒータブロック500が配置されたときの状態を示した平面図である。図9(a)は、圧力センサ1-3が、自身の軸心CL1-3とヒータブロック500の軸心CL500とが一致する位置に正しく配置されたときの平面図であり、図9(b)は、圧力センサ1-3が接触状態にあるときの平面図である。
【0061】
この変形例2に係る筐体100-3およびこれを備える圧力センサ1-3によれば、接触状態における空気層Aが形成される領域S1-3を、上記実施の形態に係る筐体100およびこれを備える圧力センサ1の領域S1と比較してより広く確保することができる(図5(b)および図9(b)参照)。このため、温度分布の発生を抑止する効果(効果1)が、より顕著にもたらされる。
【0062】
また、凸状部150を熱伝導率の小さな材料から形成し、またその表面に熱伝導率の小さな材料を貼設等した仕様においては、ヒータブロック500の内周側壁面500Wとの第1接触位置P1-3および第2接触位置P2-3を通じて局所的に熱が伝わることを抑制することができる。当該観点からも温度分布の発生を抑止する効果(効果1)がもたらされる。
【0063】
さらに、別の変形例(変形例3)として、例えば図10および図11に示すように、円筒状の筐体100-4にリング状部材160を被せるようにして、筐体100-4の側面100SW-4に凸状部を形成するように構成してもよい。この変形例3では、円筒状の側面100SW-4に平面視形状が八角形の薄板状の凸状部160aが形成されることになる。リング状部材160が設けられる位置や具体的形態は、特定のものに限定されず、また、複数のリング状部材160を配設してもよい。さらにリング状部材160の材料を熱伝導率の小さな材料から形成してもよいし、ヒータブロック500の内周側壁面500Wと接する表面部分にのみ熱伝導率の小さな材料を貼設等してもよい。また、筐体100-3が複数の分割筐体(第1の分割筐体110-4および第2の分割筐体120-4)からなる場合、リング状部材160をこれら2つの分割筐体を連結する機能部材として構成してもよい。
【0064】
図11は、筐体100-4およびこれを備える圧力センサ1-4の周囲にヒータブロック500が配置されたときの状態を示した平面図である。図11(a)は、圧力センサ1-4が、自身の軸心CL1-4とヒータブロック500の軸心CL500とが一致する位置に正しく配置されたときの平面図であり、図11(b)は、圧力センサ1-3が接触状態にあるときの平面図である。
【0065】
この変形例3に係る筐体100-3およびこれを備える圧力センサ1-3によれば、接触状態における空気層Aが形成される空間を、上記実施の形態に係る筐体100およびこれを備える圧力センサ1の領域S1と比較してより広く確保することができる。すなわち、リング状部材160は、筐体100-4の軸心CL-4に沿った上下方向(Z軸方向)の一部に配設されているに過ぎないため、リング状部材160が配設されていない箇所の平面視における外形寸法(XY平面に投影した外形の寸法)は、リング状部材160のそれに比べて小さい。このため、接触状態にあるときの空気層Aが形成される空間を広く確保することができる。これにより、温度分布の発生を抑止する効果(効果1)が、より顕著にもたらされる。
【0066】
また、リング状部材160を熱伝導率の小さな材料から形成し、またその表面に熱伝導率の小さな材料を貼設等した仕様においては、ヒータブロック500の内周側壁面500Wとの第1接触位置P1-4および第2接触位置P2-4を通じて局所的に熱が伝わることを抑制することができる。当該観点からも温度分布の発生を抑止する効果(効果1)がもたらされる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施の形態に関して説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、明細書および図面に直接記載のない構成であっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。さらに、上記記載および各図に示した実施の形態は、その目的および構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることも可能である。
【0068】
例えば、上記実施の形態に係る圧力センサ1(およびその変形例1ないし3)においては、筐体100(100-2、100-3、100-4)が、側面は軸心CL1(CL1-2、CL1-3、CL1-4)に沿って延在する柱体を基本形態としているが、基本形態が角錐台等であってもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、筐体100を備える圧力センサ1は、静電容量式の圧力センサ素子11(センサユニット10)として説明したが、本発明は、当該仕様に限定されるわけではない。例えば、抵抗ゲージを貼り付け又はスパッタ等により成膜した歪ゲージ式や半導体ピエゾ抵抗式等、ダイアフラムの変形を電気信号として検出するセンシング方式を備えた全ての圧力センサ素子及びこれを備える圧力センサに対して適用され得る。
【符号の説明】
【0070】
1、1-2、1-3、1-4…圧力センサ、10…センサユニット、11…圧力センサ素子、21b…小径円筒部、50…電極リード部、100、100-2、100-3、100-4…筐体、100SW、100SW-2、100SW-3、100SW-4…側面、101…下面部、102…上面部、103…第1の貫通孔、103a…壁面、104…第2の貫通孔、104a…壁面、110…第1の分割筐体、110a…端面、120a…端面、111…第1の分割下面部、112…第1の分割上面部、113…第1の分割下面切欠部、113a…周縁側壁面、114…第1の分割上面切欠部、114a…周縁側壁面、120…第2の分割筐体、121…第2の分割下面部、122…第2の分割上面部、123…第2の分割下面凸部、123a…周縁側壁面、124…第2の分割上面切欠部、124a…周縁側壁面、150…凸状部、160…リング状部材、200…継手、210…継手本体部、220…継手接合部、300…ケーブル、310…ケーブル本体部、320…コネクタ部、400…サブアセンブリ、500…ヒータブロック、CP…接合部、A…空気層、CL、CL1、CL1-2、CL1-3、CL1-4…軸心、S1、S1-2、S1-3、S1-4…領域、P1、P1-2、P1-3、P1-4…第1接触位置、P2、P2-2、P2-3、P2-4…第2接触位置。
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