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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】前部車体補強構造物
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240910BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20240910BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20240910BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20240910BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B62D25/20 C
B62D25/08 C
B60R19/18 M
B60R19/24 N
B60R19/34
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020084076
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021095114
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0166896
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 丞 ミン
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-180334(JP,A)
【文献】特開2016-112957(JP,A)
【文献】特開2014-196008(JP,A)
【文献】特開2015-030375(JP,A)
【文献】特開2014-012488(JP,A)
【文献】特開2013-159223(JP,A)
【文献】特開2013-169812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/00
B60R 19/00
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の左右両側に車体の前後方向に延びるように配置されるフロントサイドメンバと、
前記左右両側のフロントサイドメンバの間を連結するように設けられ、弓(bow)状に湾曲された形状を有するクロスバーと、
前記クロスバーの左右両側部分と前記各フロントサイドメンバとの間を連結するように設けられ、前記各フロントサイドメンバで前記クロスバーを支持するようになっている支持ブラケットと、が含まれており、
前記クロスバーは、前記フロントサイドメンバに結合されている左右両端から各々決められた長手区間に該当する左右両側の二つの部分が、中間の残りの部分から前記フロントサイドメンバまで、前記車体の前後方向を基準として前方または後方に湾曲されて延伸された形状を有し、
前記各支持ブラケットの一端部が、前記フロントサイドメンバに結合され、前記各支持ブラケットの他端部が、前記クロスバーのうち前記中間の残りの部分から前方または後方に湾曲された部分に結合され、
前記各支持ブラケットは、前記一端部がフロントサイドメンバに結合された片持ち形態に設けられ、前記他端部が前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分の下側に配置され、前記クロスバーの湾曲された部分の下側を支持し、前記クロスバーの湾曲された部分を載せた状態で一体に結合されることを特徴とする前部車体補強構造物。
【請求項2】
前記クロスバーは、閉断面形状を有することを特徴とする請求項1に記載の前部車体補強構造物。
【請求項3】
前記各支持ブラケットは、閉断面形状を有することを特徴とする請求項2に記載の前部車体補強構造物。
【請求項4】
前記クロスバーは、前記車体の前後方向を基準として前方または後方に湾曲された形状を有することを特徴とする請求項1に記載の前部車体補強構造物。
【請求項5】
前記中間の残りの部分である中間部が、前記車体の左右方向に沿って配置され、前記左右両側の二つの部分である傾斜部が、前記中間部から湾曲されて前記車体前方または車体後方の傾斜方向に延びるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の前部車体補強構造物。
【請求項6】
前記各支持ブラケットは、前記車体の前方と後方のうち前記クロスバーの傾斜部とは反対方向の傾斜方向に延びるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の前部車体補強構造物。
【請求項7】
前記各支持ブラケットは、閉断面形状を有することを特徴とする請求項1に記載の前部車体補強構造物。
【請求項8】
前記各支持ブラケットの他端部の上側に前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分が載せられた状態で、前記各支持ブラケットの他端部と、前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分とは、これらの両部分を上下に貫通するボルト及び該ボルトに締結されるナットによって固定されることを特徴とする請求項7に記載の前部車体補強構造物。
【請求項9】
前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分の内部に補強部材が設けられ、前記ボルトが前記各支持ブラケットの他端部及び前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分と、前記補強部材と、を共に貫通するように設けられることを特徴とする請求項8に記載の前部車体補強構造物。
【請求項10】
前記クロスバーと前記支持ブラケットとの上側にフランクが設けられ、前記フランクが下側の前記クロスバー及び前記支持ブラケットによって支持されるように備えられることを特徴とする請求項1に記載の前部車体補強構造物。
【請求項11】
前記左右両側の各フロントサイドメンバの前端部に結合されるクラッシュボックスと、車体の左右方向に延びるように配置され、前記左右両側のクラッシュボックスの前端部に結合されるバンパービームと、
後端部がダッシュパネルとフロントピラーとに結合され、前端部が前記フロントサイドメンバと前記クラッシュボックスとに結合されるフェンダーエプロンアッパーメンバと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の前方前部車体補強構造物。
【請求項12】
車体前部の左右両側に車体の前後方向に延びるように配置されるフロントサイドメンバと、
前記左右両側のフロントサイドメンバの間を連結するように設けられ、弓(bow)状に湾曲された形状を有するクロスバーと、
前記クロスバーの左右両側部分と前記各フロントサイドメンバとの間を連結するように設けられ、前記各フロントサイドメンバで前記クロスバーを支持するようになっている支持ブラケットと、が含まれており、
前記クロスバーの傾斜部の長手方向と前記支持ブラケットの長手方向とは、車体の左右横方向に長く配置される前記クロスバーの中間部を基準として前後反対の傾斜方向となって、前記中間部を挟んで左右両側の前記傾斜部と左右両側の前記支持ブラケットとが上下方向及び前後方向の荷重を支持するX字形態の補強構造物を形成し、
前記各支持ブラケットは、前記各支持ブラケットの一端部がフロントサイドメンバに結合された片持ち形態に設けられ、前記各支持ブラケットの他端部が前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分の下側に配置され、前記クロスバーの湾曲された部分の下側を支持し、前記クロスバーの湾曲された部分を載せた状態で一体に結合されることを特徴とする前部車体補強構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前部車体補強構造物に関し、より詳しくは、車両の前方衝突対応性能を効果的に向上させることができる前部車体補強構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の前部車体は、車両の前方に位置し、エンジンルームを形成する骨格構造であって、エンジンルームの前方を形成し、クーリングモジュール及びヘッドランプなどが取り付けられるフロントエンドモジュール、エンジンルームの左右両側部を形成し、車輪が取り付けられる空間が設けられるフェンダーエプロンメンバ、及びエンジンルームの後方に位置し、乗室とエンジンルームとを区切るダッシュパネルなどを含む。
【0003】
また、エンジンルームの下部には、左右両側にフロントサイドメンバが車両の前後の長手方向に沿って長く延伸するように配置されて車体前方の構造的な剛性を強化し、フロントサイドメンバの下部には、エンジンルームに設けられるエンジン及び変速機、並びに懸架装置などを取付及び支持するためのサブフレームが配置される。
【0004】
フロントサイドメンバの前方先端部には、車両の前方衝突対応性能を向上させるために、車体の幅方向(すなわち、車体の左右両側方向)に沿って長く延伸すように配置されるバンパービームが取り付けられるが、このとき、バンパービームは、クラッシュボックスを介在させた状態でフロントサイドメンバの前方先端部と連結される。
【0005】
前記のような構造の前部車体を備えた車両が走行中に、障害物や他の車両などの衝突物体とスモールオーバーラップで前方衝突する場合、すなわちスモールオーバーラップバリアのような衝突物体が、車両の幅方向に沿って一方に偏って車体外郭に衝突する場合は、衝突物体はフロントサイドメンバを避けて相対的に剛性が脆弱な車体外郭部位と衝突することがある。
【0006】
この結果、車両の前方スモールオーバーラップ衝突に効果的に対応できなくなり、乗客を安全に保護できないだけでなく、過度の車両の衝突破損が生じることがある。このような問題を解消するために、車体外郭部分を補強してスモールオーバーラップ衝突に対応するための技術が提案されている。
【0007】
例えば、フロントフェンダーエプロンメンバの前方先端部をフロントサイドメンバの前方先端部まで延長して連結部材で互いに連結する構造や、あるいはフロントサイドメンバの外側に衝突物体の侵入を阻む補強部材を取り付ける構造などが提案されているが、前方スモールオーバーラップ衝突対応性能が効果的ではない。
【0008】
また、スモールオーバーラップ衝突に対して、フロントピラーインナーパネルとサイドシール部を過度に補強して乗客室を保護する構造が知られている。
このような構造の場合は、重量面で過度ではあるが、現在のようなIIHS(Insurance Institute for Highway Safety、道路安全保険協会)の衝突評価基準からすると、衝突時の目標性能を達成することは可能である。
【0009】
しかし、車体重量を過度に増加させずに乗客をより安全に保護することができる、改善された車体補強構造が必要な実情である。
さらに、電気自動車の場合は、大容量高電圧バッテリーの採用によって車体重量の増加が不可避であり、従来の対応方式では回避方向挙動を誘導することが難しいため、車体補強構造を改善する必要がある。
【0010】
一般的な車両の前部分には、エンジンルームが設けられており、該エンジンルームには、エンジン及び変速機などのパワートレインが搭載される。
最近は、エンジンルームにエンジン、変速機などの従来のパワートレインを搭載した内燃機関自動車の代わりに、車体フロアなどにバッテリーを搭載して車体前方に積載空間を設けた電気自動車の利用が広がっている。
【0011】
長距離電気自動車などにおいてパワートレインが搭載された従来のエンジンルームやPEルームを、荷物を積載できる空間として活用しているのであり、このような車体前方にある積載空間を前方トランク(front trunk)といい、フランク(frunk)と称している。
そこで、車体の前方にフランクを備えた車両に適用できる車体補強構造の改善も切実に望まれているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2014-196008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであって、車両の前方衝突対応性能を効果的に向上させることができる前部車体補強構造物を提供することにその目的がある。
特に、フランクを備えた電気自動車において、前方衝突対応性能を向上させることができる前部車体補強構造物を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、長距離電気自動車において、スモールオーバーラップ衝突時に乗客の傷害の軽減と車両及びバッテリーの破損の軽減のための車両の回避挙動を誘導できる前方車体補強構造物を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するために、本発明の実施例によれば、車体の前部の左右両側に車体の前後方向に延びるように配置されるフロントサイドメンバと、前記左右両側のフロントサイドメンバの間を連結するように設けられ、弓(bow)状に湾曲された形状を有するクロスバーと、前記クロスバーの左右両側部分と前記各フロントサイドメンバとの間を連結するように設けられ、前記各フロントサイドメンバで前記クロスバーを支持するようになっている支持ブラケットと、を含む前部車体補強構造物を提供する。
【0016】
ここで、前記クロスバーは、閉断面形状を有するものであってもよい。
また、前記各支持ブラケットは、閉断面形状を有するものであってもよい。
また、前記クロスバーは、車両の前後方向を基準として前方または後方に湾曲された形状を有するものであってもよい。
【0017】
また、前記クロスバーは、フロントサイドメンバに結合されている左右両端から各々決められた長手区間に該当する左右両側の二つの部分が、中間の残りの部分からフロントサイドメンバまで、車体の前後方向を基準として前方または後方に湾曲されて延伸された形状を有することができる。
【0018】
また、前記中間の残りの部分である中間部が、車体の左右方向に沿って配置され、左右両側の二つの部分である傾斜部が、前記中間部から湾曲されて車体前方または車体後方の傾斜方向に延びるように配置されることができる。
また、前記各支持ブラケットの一端部がフロントサイドメンバに結合され、前記各支持ブラケットの他端部がクロスバーのうち前記中間の残りの部分から前方または後方に湾曲された部分に結合されることができる。
【0019】
また、前記各支持ブラケットは、車体の前方と後方のうちクロスバーの傾斜部とは反対方向の傾斜方向に延びるように配置されることができる。
また、前記各支持ブラケットは、前記一端部がフロントサイドメンバに結合された片持ち形態に設けられ、前記他端部が前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分の下側に配置され、前記クロスバーの湾曲された部分を下側で支持するように結合されることができる。
【0020】
ここで、前記各支持ブラケットは、閉断面形状を有するものであってよい。
また、ここで、前記各支持ブラケットの他端部の上側に前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分が載せられた状態で、前記各支持ブラケットの他端部と、前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分とは、これらの両側を上下に貫通するボルト及び該ボルトに締結されるナットによって固定されることができる。
【0021】
また、前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分の内部に補強部材が設けられ、前記ボルトが前記各支持ブラケットの他端部及び前記クロスバーの湾曲された形状を有する部分と、前記補強部材と、を共に貫通するように設けられる。
【0022】
また、前記クロスバーと支持ブラケットの上側にフランクが設けられ、前記フランクが下側のクロスバー及び支持ブラケットによって支持されるように備えられることができる。
【0023】
また、本発明の実施例に係る前部車体補強構造物は、前記左右両側の各フロントサイドメンバの前端部に結合されるクラッシュボックスと、車体の左右方向に延びるように配置され、前記左右両側のクラッシュボックスの前端部に結合されるバンパービームと、後端部がダッシュパネルとフロントピラーに結合され、前端部がフロントサイドメンバとクラッシュボックスとに結合されるフェンダーエプロンアッパーメンバをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
これにより、本発明に係る前部車体補強構造物によれば、車両の前部衝突対応性能を効果的に向上させることができ、フランクを備えた電気自動車で前部衝突対応性能を向上させることができ、長距離電気自動車でスモールオーバーラップ衝突時に乗客の傷害低減と車両及びバッテリーの破損軽減のための車両の回避挙動を誘導できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一直線形状のクロスバーを設けた前部車体構造の問題点を説明するための図である。
図2】本発明の一実施例に係る前部車体補強構造物を示す斜視図である。
図3】本発明の他の実施例に係る前部車体補強構造物を示す斜視図である。
図4図2の線「A-A」に沿った断面図である。
図5】本発明に係る前部車体補強構造物が設けられた車両においてフランクの位置を示す図である。
図6】本発明に係る前部車体補強構造物のうちボウ型クロスバーによってフランクが支持される状態を示す図である。
図7】本発明に係る前部車体補強構造物が設けられた車両において荷重経路分散がなされる状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、添付した図を参照して、本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態に具体化することもできる。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と記載したときは、特に反対する記載のない限り他の構成要素を除くものでなく、他の構成要素をさらに含むことができるものを意味する。
【0027】
本発明は、車両の前方衝突対応性能を効果的に向上することができる前部車体補強構造物に関するものである。より詳細には、本発明は、電気自動車に適用できるものであって、車両進行方向前方の積載空間であるフランクが備えられた電気自動車に適用できる前部車体補強構造物に関するものである。
【0028】
また、本発明は、長距離電気自動車においてスモールオーバーラップ衝突時に客の傷害低減と車両及びバッテリーの破損を軽減するための車両の回避挙動を誘導できる前部車体補強構造物に関するものである。従来のスモールオーバーラップ衝突対応構造であって、フロントピラーインナーパネルとサイドシール部とを過度に補強して乗客室を保護する構造は、乗客の首及び胸部に対する傷害を増大させることがある。
【0029】
したがって、車両の前方で両側の二つのフロントサイドメンバの間を左右に横切るフランククロスバーを設ける方案を考慮することができる。
【0030】
しかし、一直線形状の単純なフランククロスバーを両側の二つのフロントサイドメンバの間にそのまま直角に設けると、フランククロスバーは、一部分は衝突補完機能をすることはできるが、荷重方向とジョイント剛性においては依然として脆弱で十分な衝突対応性能を発揮し難い。
【0031】
図1は、比較例の図であり、フランククロスバーがフロントサイドメンバに対しておおよそ直角に配置されており、特に直線形状のフランククロスバーが両側の二つのフロントサイドメンバの間を左右に横切る前部車体補強構造物の例を示している。
【0032】
図1に示すように、直線形状のフランククロスバー2がフロントサイドメンバ1に直交するように結合していると、フランククロスバー2が前方衝突時の荷重方向(車体の前後方向である)と直角に配置され(左図を参照)、適切な荷重経路(load path)を分散することができない(右図を参照)。
【0033】
特に、スモールオーバーラップ衝突時に前後方向の荷重が車体前面に加えられると、フランククロスバー2が早期に屈曲され、荷重分散の効果が減少して目標とする衝突対応効果を奏することができないことがある。
【0034】
仮に、前記のような理由でフロントサイドメンバ1の間に最適化していない大型のクロスバーを設けた場合には、車体重量が増加するのを避けることができず、材料費などによる原価上昇及び燃費低下の問題が生じるようになる。
このため、本発明では、荷重経路分散及び荷重分散の効果を最大化することができる形状のクロスバーを採用する。
【0035】
図2は、本発明の一実施例に係る車両前方の車体補強構造物を示す斜視図であり、図3は、本発明の他の実施例に係る車両前方の車体補強構造物を示す斜視図である。
図2に示す実施例と図3に示す実施例とは、クロスバー21及び支持ブラケット26を除く残りの構成要素等においては互に相違がない。
【0036】
すなわち、車両において、前方の車体補強構造物の構成要素等のうち、クロスバー21及び支持ブラケット26が相違しているだけであり、フロントサイドメンバ11、クラッシュボックス15、バンパービーム16、サブフレーム18、及びフェンダーエプロンアッパーメンバ19などの構成要素においては、二つの実施例の間に相違がない。
【0037】
図示したように、フロントサイドメンバ11は、前方車体の左右両側に車体の前後方向に沿って長く延伸するように配置され、横断面が「口」形状の閉断面を有することができる。
【0038】
前記左右両側の各フロントサイドメンバ11は、車体の幅方向(すなわち、車体の左右横方向)を基準として内側に位置するフロントサイドインナーメンバ(図4の符号12)と、外側に位置されるフロントサイドアウターメンバ(図4の符号13)とを含むことができ、フロントサイドインナーメンバ12とフロントサイドアウターメンバ13とが相互に結合して「口」形状の閉断面を形成することができる。
【0039】
前記左右両側の各フロントサイドメンバ11の前端部は、車体の下部を形成するサブフレーム18の前端部と結合され、共に各フロントサイドメンバ11の前端部に車体の幅方向に延びる延長部材(図示せず)が設けられる。
前記延長部材もサブフレーム18の前端部と結合され、各フロントサイドメンバ11の前端部及び該延長部材にわたって「口」形状の断面を有するクラッシュボックス15が結合される。
【0040】
また、前記左右両側の各クラッシュボックス15の前端面には、車体の幅方向(車体の左右両側方向)に沿って長く延伸するように配置されるバンパービーム16の各端部が結合される。
【0041】
そこで、バンパービーム16は、車体の前端で左右両側の二つのクラッシュボックス15の間を横切る配置構造となっており、このようなバンパービーム16がクラッシュボックス15が介在した状態でフロントサイドメンバ11に支持される。
【0042】
また、ダッシュパネル(図示せず)にフロントピラー17が結合され、車体の左右両側で各フェンダーエプロンアッパーメンバ19の後端部がダッシュパネルとフロントピラー17とに結合され、各フェンダーエプロンアッパーメンバ19の前端部は、フロントサイドメンバ11の延長部材及びクラッシュボックス15と結合される。
【0043】
図2及び図3において、図面符号20は、フェンダーエプロンアッパーメンバ19とフロントサイドメンバ11との間を連結するように設けられる連結ブラケットである。
また、本発明の実施例に係る前部車体補強構造物は、左右両側の二つのフロントサイドメンバ11の間に、車体の左右方向に長く延びるように配置されたボウ(bow:弓)形クロスバー21を含む。
【0044】
本発明の実施例に係る前部車体補強構造物において、ボウ形クロスバー21は、車両の進行方向を基準として前方または後方に弓状に湾曲された形状を有し、左右が対称である形状を有する。
【0045】
また、クロスバー21は、フロントサイドメンバ11と結合されている左右両端から各々決められた長手区間に該当する左右両側の二つの部分が、中間の残りの部分から車体の前方と後方とのうちいずれか一つの同じ方向に湾曲されてフロントサイドメンバまで延伸される形状を有し、これにより、全体としての形状は前方または後方に弓状に湾曲された形状を有する。
【0046】
図2に示す一実施例は、クロスバー21の両端部が前方に湾曲された実施例を示し、図3の他の実施例は、クロスバー21の両端部が後方に湾曲された実施例を示す。
図示したように、本発明の実施例でクロスバー21は、車体の幅方向、すなわち車体の左右両側に長く延びるように配置される中間部22と、この中間部22から車体の前方または後方に湾曲されて前方または後方の傾斜方向に長く延びるように配置される左右両側の傾斜部24と、を含んで構成される。
【0047】
このとき、クロスバー21の中間部22は、車体の左右両側の二つのフロントサイドメンバ11の間で車体の前後方向に対して直角方向に長く配置されることができ、このとき、前記中間部22から前方または後方に湾曲されて長く延びる部分が、前記左右両側の傾斜部24となり、この傾斜部24の端部がフロントサイドメンバ11に固定される。
【0048】
そして、本発明の実施例に係る前部車体補強構造物は、前記クロスバー21の左右両側部分と、左右両側の各フロントサイドメンバ11との間を各々連結するように設けられる支持ブラケット26と、をさらに含む。前記支持ブラケット(26)は、一端部がフロントサイドメンバ(11)に一体に結合された片持ち形態に設けられる。
【0049】
図4は、図2の線「A-A」に沿った断面図であって、支持ブラケット(26)が片持ち形態に設けられることを示している。図4に示すように、支持ブラケット(26)は、フロントサイドメンバ(11)が内側に配置されるフロントサイドインナーメンバ(12)と、外側に配置されるフロントサイドアウターメンバ(13)とから構成される。
【0050】
図示したように、フロントサイドインナーメンバ12とフロントサイドアウターメンバ13とが相互に結合して閉断面形状を有するフロントサイドメンバ11が構成され、支持ブラケット26の一端部がフロントサイドメンバ11の内側面、より具体的には、フロントサイドインナーメンバ12の内側面に溶接などの方法で結合される。
【0051】
これにより、支持ブラケット26は、一端部がフロントサイドメンバ11の内側面に結合されている片持ち形態の構成部となるが、このとき、支持ブラケット26の反対側の他端部がクロスバー21の下側に位置するように結合されることができる。
【0052】
すなわち、図4に示すように、前記支持ブラケット26の反対側の他端部上にクロスバー21の中間部22と傾斜部24との間の湾曲された部分23が載せられて支持されるのであり、支持ブラケット26の端部上にクロスバー21の湾曲された部分23が載せられた状態で上下に積層された両側がこれらを上下に貫通するボルト27及びナット28によって一体に結合されることができる。
【0053】
このとき、ボルト及びナットの代わりに、上側のクロスバー21と下側の支持ブラケット26とが互いに溶接などによって一体に結合することもできる。
図4を参照すると、クロスバー21が四角形の閉断面形状を有する部材、すなわち四角断面の管からなり得ることを例示している。
【0054】
また、図4に示すように、クロスバー21において少なくとも支持ブラケット26の端部と締結される部分、すなわちクロスバー21の左右両側の各湾曲された部分23の内部に補強部材29が設けられ、このとき、前記ボルト27が補強部材29を共に貫通するように設けることができる。
前記補強部材29は、ボルト締結によるクロスバー21の歪みを防止するようになる。
【0055】
図2及び図3に示すように、前記支持ブラケット26がクロスバー21の左右両側の各湾曲された部分23と、左右両側の各フロントサイドメンバ11と、の間に一つずつ計2個が設けられ、このとき、クロスバー21だけでなく支持ブラケット26までいずれも車体において左右対称の構造で設けられる。
【0056】
また、図2および図3に示すように、クロスバー21の傾斜部24が中間部22から左右両側の各フロントサイドメンバ11に向かうにつれて前方または後方の外側方向に斜めに傾斜するように配置される。
【0057】
このとき、支持ブラケット26の長手方向も、クロスバー21の傾斜部24と同様に、フロントサイドメンバ11から内側に向かうにつれて前後に斜めな傾斜方向となり、左右両側の各支持ブラケット26がクロスバー21からフロントサイドメンバ11に向かうにつれて前方または後方の外側方向に斜めに傾斜するように配置される。
【0058】
但し、クロスバー21の傾斜部24の長手方向と支持ブラケット26の長手方向とは、車体の左右横方向に長く配置されるクロスバー21の中間部22を基準として前後反対の傾斜方向となり、このため、中間部22を挟んで左右両側の傾斜部24と左右両側の支持ブラケット26とが上下方向及び前後方向の荷重を支持するX字形態の補強構造物を形成するようになる。また、クロスバー21の両端部と、左右両側の各フロントサイドメンバ11と、の間の結合部が、衝突エネルギー吸収用クラッシュボックス15に対して後方に位置される。
【0059】
図5は、本発明の実施例に係る前部車体補強構造物が設けられた車両においてフランクの位置を示す図であり、図6は、本発明に係る前部車体補強構造物のうち、ボウ型のクロスバーによってフランクが支持される状態を示す図である。
図5および図6に示すようにクロスバー21の上側にフランク30が位置される。
【0060】
すなわち、クロスバー21が車体前方の積載空間であるフランク30の下側に位置されるものであり、クロスバー21が両側のフロントサイドメンバ11の間の左右を連結し、かつ上側のフランク30を支持する役目をするようになる。
【0061】
図7に示すように、このようにして、本発明に係る前部車体補強構造物によれば、車両の正面衝突時に加えられる荷重がクラッシュボックス15からフロントサイドメンバ11、上側のフェンダーエプロンアッパーメンバ19、クロスバー21、支持ブラケット26、車体の下部であるサブフレーム18など多数の荷重経路(load path)に分散して伝わるようになる。
【0062】
また、クロスバー21に沿って伝わる荷重が支持ブラケット26を含んで周辺構造物に伝わり、衝突エネルギーが分散吸収され、これにより、乗客の傷害を効果的に低減できるようになる。
【0063】
また、スモールオーバーラップ/オフセット衝突時の場合、入力された荷重がクロスバー21を経由して反対側のフロントサイドメンバ11に伝わり、荷重分散がなされ、これにより、乗客室の歪みを最小化するだけでなく、車体の前後方向に比べ、左右方向である横方向の荷重を相対的に増加させて車両の横挙動を誘導できる。
【0064】
また、クロスバー21と支持ブラケット26とが左右両側の二つのフロントサイドメンバ11をX字形態で固く結合しているので、耐久性及び剛性の面において、車体の横剛性及びねじり剛性を増大できることはもちろん、クロスバー21を前輪のサブフレーム18のマウンティング部と前後方向で同じ位置ないし近接した位置に配置した場合には、サブフレーム18の入力点剛性及び耐久性能の増大を達成できるようになる。
【0065】
また、フランク30を補強構造物であるクロスバー21の上側に配置して支持させることでフランクの支持剛性を補完することができ、フランクの耐久性能を増大できるようになる。
これに加えて、組み立て性の面で、クロスバー21を支持ブラケット26上に載せて直接に締結する方式を適用することで、クロスバーの締結個所を最小化することができ、締結作業を容易にすることができる。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲がこれに限定されるものではなく、後述の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いる当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
11 フロントサイドメンバ
12 フロントサイドインナーメンバ
13 フロントサイドアウターメンバ
15 クラッシュボックス
16 バンパービーム
17 フロントピラー
18 サブフレーム
19 フェンダーエプロンアッパーメンバ
20 連結ブラケット
21 クロスバー
22 中間部
23 湾曲された部分
24 傾斜部
26 支持ブラケット
27 ボルト
28 ナット
29 補強部材
30 フランク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7