(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】磁性体異物分別回収ユニット
(51)【国際特許分類】
B03C 1/14 20060101AFI20240910BHJP
B22C 5/06 20060101ALI20240910BHJP
B03C 1/10 20060101ALI20240910BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240910BHJP
B07C 5/344 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B03C1/14 101
B22C5/06
B03C1/10 A
B03C1/00 B
B03C1/00 F
B07C5/344
(21)【出願番号】P 2020116386
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2022-12-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145448
【氏名又は名称】住友重機械ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】安山 寛
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204208667(CN,U)
【文献】特開2019-024548(JP,A)
【文献】特開2013-202474(JP,A)
【文献】中国実用新案第209735802(CN,U)
【文献】中国実用新案第203695210(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/14
B22C 5/06
B03C 1/10
B03C 1/00
B07C 5/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方を向く投入口から投入された粉体が、下方を向く排出口まで移動する通路を画定する支持構造物と、
前記支持構造物に支持され、前記通路を移動する粉体に含まれる磁性体異物を磁力で表面に吸着して前記通路から排除する回転ドラムと
を有する磁性体異物分別回収ユニットであって、
前記支持構造物は、
2つの前記支持構造物を下側の前記支持構造物に対して上側の前記支持構造物が横方向にずれない状態で
、
平面視における前記通路と前記回転ドラムとの位置関係が、上側の前記支持構造物と下側の前記支持構造物との間で反転する姿勢で、かつ
上側に位置する前記支持構造物の前記排出口から排出される粉体が、下側に位置する前記支持構造物の前記投入口から投入される位置関係で上下に積み重ね可能な形状を有する磁性体異物分別回収ユニット。
【請求項2】
前記支持構造物を上下に積み重ねたとき、前記支持構造物は、上側に位置する前記支持構造物を下側に位置する前記支持構造物に固定する上下固定部を含む請求項
1に記載の磁性体異物分別回収ユニット。
【請求項3】
前記支持構造物は、前記回転ドラムの回転軸に対して直交する水平方向に並べて配置した状態で、隣り合う前記支持構造物の一方を他方に固定する第1横方向固定部を含む請求項
1または2に記載の磁性体異物分別回収ユニット。
【請求項4】
前記支持構造物は、前記回転ドラムの回転軸に平行な水平方向に並べて配置した状態で、隣り合う前記支持構造物の一方を他方に固定する第2横方向固定部を含む請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の磁性体異物分別回収ユニット。
【請求項5】
さらに、前記回転ドラムによって前記通路から排除した磁性体異物を蓄積する回収容器を、前記支持構造物の中に有する請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の磁性体異物分別回収ユニット。
【請求項6】
さらに、前記支持構造物は、前記回転ドラムによって前記通路から排除した磁性体異物を側方から排出する異物排出口を有する請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の磁性体異物分別回収ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体異物分別回収ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
粉体から磁性体異物を回収する装置として、マグネットバーを使用した方式を採用する装置、及びマグネットドラムを使用した方式を採用する装置が知られている。マグネットバーを使用した方式では、マグネットバーを単体でまたは組み合わせて使用して粉体中の磁性体異物を回収する。回収した磁性体異物を装置の外に排出するために、粉体の供給を停止する必要があり、連続処理を行うことができない。
【0003】
マグネットドラムを使用した方式では、内部に磁石を配置した回転ドラムを回転させ、回転中のドラムの表面に粉体を供給する。磁性体異物をドラムの表面に磁力で吸着させることにより、磁性体異物を分別回収する。一般的に、マグネットドラムを使用する方式は、マグネットバーを使用する方式に比べて磁性体異物の回収性能が低い。回収性能を高めるために2つのマグネットドラムを使用する方式の装置が知られている(例えば、下記の特許文献1、2参照。)。
【0004】
これらの装置では、1つ目のマグネットドラムで磁性体異物が分離された粉体を2つ目のマグネットドラムに供給し、2つ目のマグネットドラムで、粉体中に残存する磁性体異物をさらに分別回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-334559号公報
【文献】特開2017-74604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁性体異物を分別回収する粉体の用途や磁性体異物の含有量によっては、高い回収性能が必要とされない場合がある。この場合、2個のマグネットドラムを使用する方式は過剰品質となり、磁性体異物の分別回収コストの上昇をもたらすこととなる。逆に、2つのマグネットドラムを用いた方式でも、回収性能が不十分な場合もある。従来の装置では、種々の回収性能の要求に対して柔軟に対応することが困難である。1つのマグネットドラム(回転ドラム)を持つ装置を複数個設置し、1つの装置で処理された粉体を、さらに他の装置で処理することにより、回収性能を高めることができる。また、処理すべき粉体の量が多くなった場合、複数の装置を設置することにより、複数の装置からなるシステム全体としての処理能力を高めることができる。ところが、複数の装置を設置するために広い設置スペースが必要になる。
【0007】
本発明の目的は、複数の回転ドラムを配置しても設置スペースの増大を抑制することが可能な磁性体異物分別回収ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によると、
上方を向く投入口から投入された粉体が、下方を向く排出口まで移動する通路を画定する支持構造物と、
前記支持構造物に支持され、前記通路を移動する粉体に含まれる磁性体異物を磁力で表面に吸着して前記通路から排除する回転ドラムと
を有する磁性体異物分別回収ユニットであって、
前記支持構造物は、
2つの前記支持構造物を下側の前記支持構造物に対して上側の前記支持構造物が横方向にずれない状態で、
平面視における前記通路と前記回転ドラムとの位置関係が、上側の前記支持構造物と下側の前記支持構造物との間で反転する姿勢で、かつ
上側に位置する前記支持構造物の前記排出口から排出される粉体が、下側に位置する前記支持構造物の前記投入口から投入される位置関係で上下に積み重ね可能な形状を有する磁性体異物分別回収ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0009】
複数の磁性体異物分別回収ユニットを、横方向にずらすことなく上下に積み重ねることにより、複数の磁性体異物分別回収ユニットの設置スペースの増大を抑制することができる。また、上側の磁性体異物分別回収ユニットで処理された粉体を、さらに下側の磁性体異物分別回収ユニットで処理すれば、磁性体異物の回収性能を高めることができる。積み重ねる磁性体異物分別回収ユニットの個数を調整することにより、種々の粉体に対して適切な回収性能を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施例による磁性体異物分別回収ユニットの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、2つの磁性体異物分別回収ユニットを上下に積み重ねた状態の断面図である。
【
図3】
図3は、2つの磁性体異物分別回収ユニットを上下に積み重ねた状態の断面図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、2つの磁性体異物分別回収ユニットを回転軸に対して垂直な水平方向に並べた状態の断面図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、2つの磁性体異物分別回収ユニットを回転軸に平行な方向に並べた状態の断面図である。
【
図6】
図6は、8個の磁性体異物分別回収ユニットを縦横高さ方向に並べた状態の斜視図である。
【
図7】
図7は、他の実施例による磁性体異物分別回収ユニットを上下に積み重ねた状態の断面図である。
【
図8】
図8は、さらに他の実施例による複数の磁性体異物分別回収ユニットの断面図である。
【
図9】
図9は、さらに他の実施例による複数の磁性体異物分別回収ユニットの断面図である。
【
図10】
図10は、さらに他の実施例による磁性体異物分別回収ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、一実施例による磁性体異物分別回収ユニットについて説明する。
図1は、本実施例による磁性体異物分別回収ユニット10の概略斜視図である。ほぼ直方体形状の支持構造物11内に回転ドラム20が支持されている。支持構造物11は、投入口12から投入された粉体が排出口13まで移動する通路14を画定している。磁性体異物分別回収ユニット10は、投入口12が上方を向き、排出口13が下方を向く姿勢で使用される。回転ドラム20の回転中心20Aは水平である。上向きをz軸の正の向き、回転ドラム20の回転中心20Aに平行な方向をx方向とするxyz直交座標系を定義する。平面視において回転ドラム20から通路14を向く方向をy軸の正の向きと定義する。回転ドラム20は、通路14を移動する粉体に含まれる磁性体異物を磁力で表面に吸着し、通路14から排除する。
【0012】
支持構造物11は、複数の磁性体異物分別回収ユニット10を上下に積み重ねて使用することができる形状を有する。支持構造物11を、平面視において下側の支持構造物11に対して上側の支持構造物11が横方向にずれない状態で積み重ねたとき、上側に位置する支持構造物11の排出口13から排出される粉体が、下側に位置する支持構造物11の投入口12から投入されるように、投入口12及び排出口13の位置関係が決定されている。
【0013】
支持構造物11は、上下に積み重ねたとき上側の支持構造物11を下側の支持構造物11に固定するための上下固定部30を備えている。上下固定部30は、支持構造物11の上面及び下面の縁から水平方向(x軸の正の向き及び負の向き)に向かって張り出した複数の張り出し部を含む。上側の支持構造物11の張り出し部と、下側の支持構造物11の張り出し部とを重ねてボルトで固定することにより、上側の支持構造物11が下側の支持構造物11に固定される。
【0014】
支持構造物11は、さらに、複数の磁性体異物分別回収ユニット10を水平方向に並べて使用することができる形状を有する。支持構造物11は、2つの支持構造物11を、回転ドラム20の回転軸に対して直交する水平方向(y方向)に並べて配置した状態で、隣り合う支持構造物11の一方を他方に固定するための第1横方向固定部31を備えている。支持構造物11は、さらに、2つの支持構造物11を、回転ドラム20の回転軸に対して平行な方向(x方向)に並べて配置した状態で、隣り合う支持構造物11の一方を他方に固定するための第2横方向固定部32を備えている。
【0015】
支持構造物11は、y軸に直交する2つの側面と、x軸に直交する2つの側面とを有する。第1横方向固定部31は、y軸に直交する2つの側面の、z軸に平行な両側の縁のそれぞれから、x軸の正の向き及び負の向きに張り出した複数の張り出し部を含む。2つの支持構造物11をy方向に並べ、この張り出し部同士を重ねてボルトで固定することにより、y方向に並ぶ2つの支持構造物11を相互に固定することができる。
【0016】
第2横方向固定部32は、x軸に対して垂直な側面からx方向に立ち上がり、立ち上がり部分の先端からy方向に延びる複数の板材を含む。2つの支持構造物11をx方向に並べ、この板材同士を重ねてボルトで固定することにより、x方向に並ぶ2つの支持構造物11を相互に固定することができる。
【0017】
次に、
図1に示した実施例の優れた効果について説明する。
複数の磁性体異物分別回収ユニット10を上下に積み重ねると、上側の磁性体異物分別回収ユニット10で回収できなかった磁性体異物が、下側の磁性体異物分別回収ユニット10で回収される。このため、回収性能を高めることができる。また、積み重ねる個数に応じて回収性能が変わるため、所望の回収性能を持つ磁性体異物分別装置を容易に実現することができる。
【0018】
複数の磁性体異物分別回収ユニット10を水平方向(x方向またはy方向)に並べ、処理対象の粉体を複数の磁性体異物分別回収ユニット10に分けて投入する構成とすることができる。この構成を採用と、単位時間当たりの粉体の処理量、すなわち処理能力が向上する。必要とされる処理能力に応じて磁性体異物分別回収ユニット10を並べる個数を調整することができるため、必要とされる処理能力を持つ磁性体異物分別装置を容易に実現することができる。必要とされる処理能力の増減に応じて、磁性体異物分別回収ユニット10を増設したり、一部の磁性体異物分別回収ユニット10を撤去したりすることが可能である。
【0019】
より高い回収性能が必要になった場合には、水平方向に並べて配置していた複数の磁性体異物分別回収ユニット10を分離して上下方向に積み重ねればよい。このように、新たな設備を導入することなく、必要とされる回収性能に対応することができる。
【0020】
複数の磁性体異物分別回収ユニット10を縦横高さ方向(x方向、y方向、z方向)にほぼ密着させてまたは狭い隙間を介して配置することができるため、省スペース化を図ることが可能になる。また、複数の磁性体異物分別回収ユニット10を水平面内で直交する二方向(x方向及びy方向)に並べることができるため、設置スペースの平面形状に合わせて、複数の磁性体異物分別回収ユニット10を柔軟に配置することができる。
【0021】
処理対象の粉体の性質、除去すべき磁性体異物の混入量等に応じて、磁力の異なる複数の磁性体異物分別回収ユニット10を組み合わせて使用してもよい。また、回転ドラム20の回転速度を複数の磁性体異物分別回収ユニット10の間で異ならせてもよい。回転ドラム20の回転速度の調性は、例えばモータ自体の回転速度を制御することにより行ってもよいし、モータと回転ドラム20との間に減速機を配置して、減速機の減速比を変更することにより行ってもよい。
【0022】
次に、
図2及び
図3を参照して、複数の磁性体異物分別回収ユニットを上下に積み重ねた実施例について説明する。
【0023】
図2及び
図3は、2つの磁性体異物分別回収ユニット10を上下に積み重ねた状態の断面図である。
図2は、回転ドラム20の回転中心20Aに対して垂直な断面図であり、
図3は、回転ドラム20の回転中心20Aに平行で、水平面に対して直交する断面図である。
【0024】
まず、磁性体異物分別回収ユニット10の各々の構造について説明する。
支持構造物11内に、投入口12から排出口13に至る通路14が画定されている。通路14内を上から下に向かって粉体が移動する。
図2において、粉体を中空の円で表し、粉体に混入している磁性体異物を黒色の中実の円で表している。
【0025】
回転ドラム20の周方向に関して一部の表面が通路14内に配置されている。回転ドラム20の内部に、磁石21が配置されている。磁石21は、回転ドラム20の表面の周方向の、中心角にして約270°の範囲に配置されており、磁石21のS極とN極とが周方向に交互に現れている。磁石21は支持構造物11に固定されており、回転しない。回転ドラム20の表面のうち通路14内に位置する周方向の範囲に、磁石21が配置されている。回転ドラム20の表面のうち通路14の外側に位置する範囲には、磁石21が配置されていない領域が設けられている。
【0026】
回転ドラム20は、通路14内の表面が上から下に移動する向きに回転する。回転ドラム20の表面は通路14の壁面に接触しておらず、両者の間に隙間55、56が設けられている。粉体に混入した磁性体異物は、回転ドラム20の表面に磁力によって吸着され、回転ドラム20の回転に伴って通路14から排除される。吸着された磁性体異物が、磁石21が配置されていない領域まで移動すると、吸着力が弱まり回転ドラム20の表面から脱離する。脱離しない磁性体異物は、スクレイパ22でこそげ取られる。回転ドラム20の表面から脱離し、またはスクレイパ22でこそげ取られた磁性体異物は、回収容器25に蓄積される。回収容器25は、支持構造物11からx方向またはy方向に取り出すことができる。
【0027】
支持構造物11の各々の側面にモータ23(
図3)が取り付けられている。モータ23は、スプロケットとチェーンとを介して回転ドラム20を回転させる。上側に位置する支持構造物11の投入口12に円筒状の投入口ガイド17が取り付けられている。投入口ガイド17を通して投入口12に粉体が投入される。なお、通路14の、粉体の移動方向に直交する断面は円形ではなく、例えば長方形である。
【0028】
次に、
図3を参照して2つの磁性体異物分別回収ユニット10を積み重ねて固定する構造について説明する。
図3に示した断面において、支持構造物11の上面及び下面の縁から上下固定部30がx方向に張り出している。上側に配置された支持構造物11の下側の上下固定部30の張り出し部分と、下側に配置された支持構造物11の上側の上下固定部30の張り出し部分とが重ね合わされて、ボルト35で固定されている。これにより、上側の支持構造物11が下側の支持構造物11に対して固定される。
【0029】
次に、積み重ねられた2つの磁性体異物分別回収ユニット10の位置関係について説明する。
【0030】
平面視において下側の支持構造物11に対して上側の支持構造物11が水平な二方向(x方向及びy方向)にずれない状態で積み重ねられている。例えば、上側の支持構造物11の側面と、下側の支持構造物11の側面とが、面一の状態になっている。平面視において、通路14と回転ドラム20との位置関係が、上側の磁性体異物分別回収ユニットと下側の磁性体異物分別回収ユニットとの間で反転している。例えば、回転ドラム20が通路14に対してy軸の負の側に配置されていると定義しているため、上側の磁性体異物分別回収ユニット10と下側の磁性体異物分別回収ユニット10とでは、y軸が反平行である。すなわち、上側の支持構造物11は、下側の支持構造物11を、鉛直方向に延びる直線(z軸に平行な直線)を回転中心として180°回転させた姿勢で下側の支持構造物11の上に固定される。
【0031】
支持構造物11は、
図3に示した断面において、右側及び左側の2つの側面(x軸に対して垂直な2つの側面)のいずれにも、モータ23を取り付けることができる構造を有している。このため、上側の支持構造物11を下側の支持構造物11に対して180°回転させた状態でも、2つの支持構造物11の同じ側の側面にモータを取り付けることができる。
【0032】
上側の支持構造物11の排出口13から排出される粉体が、下側の支持構造物11の投入口12から通路14内に投入される。例えば、平面視において、上側の支持構造物11の排出口13が、下側の支持構造物11の投入口12に包含される。
【0033】
次に、
図2及び
図3に示した実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、2つの磁性体異物分別回収ユニット10を上下に積み重ねて、上側の磁性体異物分別回収ユニット10から排出された粉体を、さらに下側の磁性体異物分別回収ユニット10で処理するため、磁性体異物の回収性能を高めることができる。より高い回収性能を実現するためには、上下に積み重ねる磁性体異物分別回収ユニット10の個数を増やせばよい。
【0034】
また、平面視において、回転ドラム20と通路14との位置関係が、上側の磁性体異物分別回収ユニット10と下側の磁性体異物分別回収ユニット10との間で反転している。このため、通路14の断面内の位置による回収性能の偏りを軽減することができる。
【0035】
また、
図2及び
図3に示した積み重ね構造を平面視したとき、上側の支持構造物11が下側の支持構造物11に対して横方向にずれていないため、水平な面内方向への設置スペースの拡大を抑制することができるという優れた効果が得られる。
【0036】
次に、
図4A及び
図4Bを参照して、2つの磁性体異物分別回収ユニット10をy方向に並べた実施例について説明する。
【0037】
図4A及び
図4Bは、2つの磁性体異物分別回収ユニット10をy方向に並べた状態の断面図である。
図4Aは、回転ドラム20の回転中心20Aに対して垂直な断面図(x軸に対して垂直な断面図)であり、
図4Bは、回転ドラム20の回転中心20Aに平行な水平方向の断面図(z軸に対して垂直な断面図)である。2つの磁性体異物分別回収ユニット10が、それぞれのy軸の正の向きが向かい合う姿勢で並べられている。すなわち、一方の磁性体異物分別回収ユニット10は、他方の磁性体異物分別回収ユニット10をz軸に平行な直線を回転中心として180°回転させた姿勢で配置されている。
【0038】
2つの支持構造物11は、上下方向にずれることなく、かつx方向にもずれることなくy方向に並べて配置されている。すなわち、2つの支持構造物11の上面同士及び下面同士(
図4A)が面一になり、x軸に対して直交する側面同士(
図4B)が面一になっている。
【0039】
y方向に並ぶ2つの支持構造物11の第1横方向固定部31(
図4B)の張り出し部分同士が重ね合わされてボルト36で固定されている。いずれの磁性体異物分別回収ユニット10においても、x軸の負側の側面にモータ23が取り付けられている。
【0040】
次に、
図4A及び
図4Bに示した実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、2つの磁性体異物分別回収ユニット10が並列に接続されるため、処理能力を約2倍に高めることができる。さらに処理能力を高める必要がある場合には、3個以上の磁性体異物分別回収ユニット10をy方向に並べて配置するとよい。また、複数の磁性体異物分別回収ユニット10が、y軸に対して垂直な側面同士をほぼ接触させて並べることができるため、省スペース化を図ることが可能である。
【0041】
次に、
図4A及び
図4Bに示した実施例の変形例について説明する。
図4A及び
図4Bに示した実施例では、2つの磁性体異物分別回収ユニット10のy軸の正の向きが相互に向かい合う姿勢で並べて配置しているが、y軸が同じ向きを向く姿勢で2つの磁性体異物分別回収ユニット10を並べて配置してもよい。また、
図4A及び
図4Bに示した実施例では、一方の磁性体異物分別回収ユニット10のy軸の正の側に他方の磁性体異物分別回収ユニット10を配置しているが、一方の磁性体異物分別回収ユニット10のy軸の負の側に他方の磁性体異物分別回収ユニット10を配置してもよい。
【0042】
また、
図4A及び
図4Bに示した実施例では、2つの磁性体異物分別回収ユニット10の間で、モータ23が相互に反対側の側面に取り付けられているが、同じ側の側面に取り付けてもよい。どちらの構成を採用するかは、設置スペースの広さや形状に応じて決定するとよい。モータ23を同じ側の側面に取り付けた場合は、作業者が、モータ23の取り付け作業やメンテナンス作業を行いやすいという優れた効果が得られる。
【0043】
次に、
図5A及び
図5Bを参照して、2つの磁性体異物分別回収ユニット10をx方向に並べた実施例について説明する。
【0044】
図5A及び
図5Bは、2つの磁性体異物分別回収ユニット10をx方向に並べた状態の断面図である。
図5Aは、回転ドラム20の回転中心20Aと平行な鉛直方向の断面図(y軸に対して垂直な断面図)であり、
図5Bは回転ドラム20の回転中心20Aと平行な水平方向の断面図(z軸に対して垂直な断面図)である。2つの磁性体異物分別回収ユニット10が、それぞれのx軸が同一の向きを向く姿勢で並べられている。すなわち、一方の磁性体異物分別回収ユニット10は、他方の磁性体異物分別回収ユニット10と同じ姿勢で配置されている。
【0045】
2つの支持構造物11は、上下方向にずれることなく、かつy方向にもずれることなく並べて配置されている。すなわち、2つの支持構造物11の上面同士及び下面同士(
図5A)が面一になっており、y軸に対して直交する側面同士(
図5B)が面一になっている。
【0046】
2つの磁性体異物分別回収ユニット10の第2横方向固定部32(
図5B)のyz面に平行な板材同士が重ね合わされてボルト37で固定されている。2つの磁性体異物分別回収ユニット10をx方向に並べると、
図5Aに示すように、一方の磁性体異物分別回収ユニット10の上下固定部30と他方の磁性体異物分別回収ユニット10の上下固定部30とが干渉し合うため、両者の側面同士を接触させることができない。このため、x方向に並んだ2つの支持構造物11の間に隙間34が形成される。
【0047】
2つの支持構造物11の相互に向かい合う側面とは反対側の側面に、それぞれモータ23が取り付けられている。
【0048】
次に、
図5A及び
図5Bに示した実施例の優れた効果について説明する。本実施例においても、
図4A及び
図4Bに示した実施例と同様に2つの磁性体異物分別回収ユニット10が並列に接続されるため、処理能力を約2倍に高めることができる。
図4A及び
図4Bに示した実施例では、支持構造物11が並ぶ方向とは直交する方向にモータ23が突出している。これに対して本実施例では、支持構造物11が並ぶ方向と平行な方向にモータ23が突出している。このため、本実施例では、支持構造物11が並ぶ方向に対して直交する方向の寸法の増大を抑制することができる。
図4A及び
図4Bに示した実施例の構成を採用するか、
図5A及び
図5Bに示した実施例の構成を採用するかは、設置スペースの大きさや形状に応じて決定すればよい。
【0049】
次に、
図5A及び
図5Bに示した実施例の変形例について説明する。
図5A及び
図5Bに示した実施例では、上下固定部30(
図5A)が空間的に干渉するため、2つの支持構造物11の間に隙間34が形成される。複数の支持構造物11を上下に積み重ねない場合には、上下固定部30を支持構造物11から取り外し、x方向に対して直交する側面の縁から第1横方向固定部31(
図4B)と同様の張り出し部分をy方向に張り出させてもよい。この構造により、2つの支持構造物11をx方向に接触させた状態で並べて固定することができる。
【0050】
次に、
図6を参照して、8個の磁性体異物分別回収ユニット10を縦横高さ方向に並べた実施例について説明する。
【0051】
図6は、8個の磁性体異物分別回収ユニット10を縦横高さ方向に並べた状態の斜視図である。8個の磁性体異物分別回収ユニット10が、x方向、y方向、及びz方向に2つずつ並べられて、合計8個の支持構造物11が相互に接続されている。x方向に並ぶ2つの支持構造物11の間には、
図5A及び
図5Bに示したように隙間34が形成されている。8個の支持構造物11のそれぞれのx軸に垂直な側面のうち、外側に位置する側面にモータ23が取り付けられている。
【0052】
8個の磁性体異物分別回収ユニット10は、4個の投入口12及び4個の排出口13を備えている。なお、
図6に示した斜視図には、排出口13は現れていない。複数の支持構造物11が、上面同士、下面同士、及び側面同士が面一になるように配置されている。
【0053】
次に、
図6に示した実施例の優れた効果について説明する。
2つの磁性体異物分別回収ユニット10を上下方向に積み重ねることにより、磁性体異物の回収性能を高めることができる。また、複数の磁性体異物分別回収ユニット10をx方向及びy方向に並べて配置することにより、処理能力を高めることができる。
【0054】
次に、
図7を参照して他の実施例について説明する。以下、
図2及び
図3に示した実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0055】
図7は、本実施例による磁性体異物分別回収ユニット10を上下に積み重ねた状態の断面図である。
図2及び
図3に示した実施例では、回収された磁性体異物が回収容器25に蓄積される。これに対して本実施例では、支持構造物11の、y軸の負の方向を向く側面に異物排出口15が設けられている。回収された磁性体異物が、異物排出口15から外部に排出される。異物排出口15から排出された磁性体異物は、例えばダクト等を通って廃棄場所まで輸送される。
【0056】
次に、
図7に示した実施例の優れた効果について説明する。
図2に示した実施例では、複数の磁性体異物分別回収ユニット10のそれぞれから回収容器25を取り出して磁性体異物を廃棄場所に廃棄する必要がある。これに対して本実施例では、複数の磁性体異物分別回収ユニット10のそれぞれから回収容器25を取り出すことなく、回収された磁性体異物を廃棄場所まで輸送することができる。このため、回収された磁性体異物を廃棄場所に廃棄する作業を軽減することができる。
【0057】
次に、
図7に示した実施例の変型例について説明する。
図7に示した実施例では、2つの磁性体異物分別回収ユニット10を上下に積み重ねているが、3個以上の磁性体異物分別回収ユニット10を上下に積み重ねてもよい。積み重ねる磁性体異物分別回収ユニット10の個数を増やすことにより、磁性体異物の回収性能を高めることができる。
【0058】
次に、
図8を参照してさらに他の実施例について説明する。以下、
図7に示した実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0059】
図8は、本実施例による複数の磁性体異物分別回収ユニット10の断面図である。本実施例では、上下に2つの磁性体異物分別回収ユニット10を積み重ねて1つの処理系統を構成し、2つの処理系統をy方向に並べて配置している。すなわち、4個の磁性体異物分別回収ユニット10が組み合わされている。4個の磁性体異物分別回収ユニット10の各々は、
図7に示した磁性体異物分別回収ユニット10と同様に、側面に異物排出口15を備えている。
【0060】
上側の2つの磁性体異物分別回収ユニット10は、異物排出口15が相互に反対方向を向く姿勢で並べられている。下側の2つの磁性体異物分別回収ユニット10は、異物排出口15が相互に向かい合う姿勢で並べられている。y方向に並ぶ2つの磁性体異物分別回収ユニット10の間に、廃棄シュートユニット40が配置されている。廃棄シュートユニット40は、下端に排出口41を備えている。廃棄シュートユニット40は、第1横方向固定部31(
図1)と同様の張り出し部分を備えている。この張り出し部分と、磁性体異物分別回収ユニット10の第1横方向固定部31(
図1)の張り出し部分とが重ねられて、ボルト等で固定されている。下側の2つの磁性体異物分別回収ユニット10の異物排出口15からそれぞれ排出された磁性体異物は、廃棄シュートユニット40で合流し、廃棄シュートユニット40を通って落下し、排出口41から排出される。
【0061】
次に、
図8に示した実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、
図7に示した実施例による磁性体異物分別回収ユニット10の組み合わせと比べて、処理能力を約2倍に高めることができる。また、y方向に並ぶ2つの磁性体異物分別回収ユニット10の間に廃棄シュートユニット40を配置しているため、相互に向かい合う2つの異物排出口15から排出される磁性体異物を装置の外部まで排出することができる。
【0062】
次に、
図8に示した実施例の変型例について説明する。
図8に示した実施例では、2つの処理系統をy方向に並べているが、3個以上の処理系統を並べて配置してもよい。この場合、y方向に並ぶ2つの処理系統の間に廃棄シュートユニット40を配置するとよい。3個以上の処理系統を配置することにより、装置全体の処理能力を高めることができる。
【0063】
2つの処理系統を、
図5A及び
図5Bに示したように、x方向に並べて配置してもよい。この場合には、異物排出口15同士が向かい合うことがないため、廃棄シュートユニット40を配置する必要はない。
【0064】
次に、
図9を参照してさらに他の実施例について説明する。以下、
図7に示した実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0065】
図9は、本実施例による複数の磁性体異物分別回収ユニット10の断面図である。本実施例では、3個の磁性体異物分別回収ユニット10が組み合わされている。2つの磁性体異物分別回収ユニット10は上下に積み重ねられて1つの処理系統を構成しており、残りの1つの磁性体異物分別回収ユニット10は、1つの処理系統を構成する下側の磁性体異物分別回収ユニット10に対してy方向に並べて配置されている。上下に積み重ねられていない磁性体異物分別回収ユニット10を、再回収ユニット10Aということとする。再回収ユニット10Aの内部構造は、他の磁性体異物分別回収ユニット10の内部構造と同一である。
【0066】
再回収ユニット10Aは、その異物排出口15が、処理系統を構成する下側の磁性体異物分別回収ユニット10の異物排出口15と反対側を向く姿勢で配置されている。このため、再回収ユニット10Aと、処理系統を構成する下側の磁性体異物分別回収ユニット10とは、側面同士が接触するように配置されている。
【0067】
処理系統を構成する2つの磁性体異物分別回収ユニット10のうち上側の磁性体異物分別回収ユニット10の異物排出口15と、再回収ユニット10Aの投入口12とが、連結ユニット45で接続されている。異物排出口15から排出された異物が、連結ユニット45を通って再回収ユニット10Aに投入される。再回収ユニット10Aは、磁性体異物を分別回収して異物排出口15から排出する。再回収ユニット10Aに投入された処理対象物に粉体が混入している場合は、粉体は磁性体異物から分別されて排出口13から排出される。
【0068】
次に、
図9に示した実施例の優れた効果について説明する。
上側の磁性体異物分別回収ユニット10により磁性体異物が分別回収されるが、分別回収された磁性体異物に一部の粉体が混入する場合がある。磁性体異物に混入した粉体は、再回収ユニット10Aで磁性体異物から分別され、再回収することができる。再回収ユニット10Aの排出口13から排出される粉体は、処理系統を構成する下側の磁性体異物分別回収ユニット10の排出口13から排出される粉体に混ぜればよい。このため、磁性体異物と共に廃棄されてしまう粉体の量を少なくすることができる。
【0069】
次に、
図9に示した実施例の変形例について説明する。
図9に示した1つの処理系統を構成する下側の磁性体異物分別回収ユニット10の異物排出口15に、他の4個目の磁性体異物分別回収ユニット10を、再回収ユニットとして接続してもよい。これにより、磁性体異物と共に廃棄されてしまう粉体の量をより少なくすることができる。
【0070】
次に、
図10を参照して、さらに他の実施例による磁性体異物分別回収ユニット10について説明する。以下、
図2及び
図3に示した実施例による磁性体異物分別回収ユニット10と共通の構成については説明を省略する。
【0071】
図10は、本実施例による磁性体異物分別回収ユニット10の断面図である。
図2及び
図3に示した実施例では、回転ドラム20と通路14の壁面との間に隙間55、56が形成されている。本実施例では、この隙間55、56が塞がれる。
【0072】
回転ドラム20の上側の隙間55よりも、回転ドラム20の回転方向の上流側(通路14の外側)にローラ50が配置されている。ローラ50は、回転ドラム20の表面に接し、回転ドラム20の回転に合わせて回転する。ローラ50の表面と通路14の壁面の外側の表面との間に、ウレタン等の柔軟なシール部材51が配置されている。回転ドラム20の上側の隙間55は、ローラ50及びシール部材51によって塞がれる。
【0073】
回転ドラム20の下側の隙間56は、ウレタン等の柔軟性を有するシール部材52で塞がれる。シール部材52は、回転ドラム20の表面に吸着された磁性体異物が表面から除去されない程度の柔軟性を有する。このため、回転ドラム20の表面に吸着された磁性体異物は、シール部材52を変形させて通路14の外側まで移送される。
【0074】
次に、
図10に示した実施例の優れた効果について説明する。
図10に示した実施例では、通路14の壁面と回転ドラム20の表面との間に形成される隙間55、56が塞がれる。このため、通路14内を移動する粉体が通路14の外に漏れ出てしまうことを抑制することができる。
【0075】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0076】
10 磁性体異物分別回収ユニット
10A 再回収ユニット
11 支持構造物
12 投入口
13 排出口
14 通路
15 異物排出口
17 投入口ガイド
20 回転ドラム
21 磁石
22 スクレイパ
23 モータ
25 回収容器
30 上下固定部
31 第1横方向固定部
32 第2横方向固定部
34 隙間
35、36、37 ボルト
40 廃棄シュートユニット
41 排出口
45 連結ユニット
50 ローラ
51、52 シール部材
55、56 隙間