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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】回転繰出筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/14 20060101AFI20240910BHJP
   B43K 27/12 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B43K24/14 110
B43K27/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020119696
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016772
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】岡部 哲
(72)【発明者】
【氏名】小泉 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅也
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-135389(JP,U)
【文献】特開平09-066695(JP,A)
【文献】特開2012-061605(JP,A)
【文献】特開2015-013426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/08
24/14
27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に3本以上の筆記体が収容されて、各筆記体がガイド筒によって軸筒の軸方向に移動可能に支持されると共に、軸筒に対する前記ガイド筒の相対回転操作を受けて、軸筒内に固定された円筒カムによって、一つの前記筆記体の先端筆記部が前記軸筒の口先部材に設けた開口孔から選択的に突出される回転繰出筆記具であって、
前記口先部材の開口孔を、前記軸筒の軸中心線から偏心した位置に形成することで、前記開口孔から先端筆記部が突出された状態の前記筆記体が、直線状態を維持し、
前記軸筒は前軸および後軸により構成され、前記口先部材は、前記前軸の前端部に取り付けられると共に、前記前軸に対して後軸が軸継手を介して連結されることで前記軸筒が構成され、
前記口先部材と軸継手のいずれか一方には、軸方向に沿って位置合わせ開口が形成されると共に、前記口先部材と軸継手のいずれか他方には、前記位置合わせ開口に対して軸方向に挿入される凸状部が形成され、
前記前軸内において、前記位置合わせ開口に対して凸状部が挿入されることで、前記口先部材と軸継手との間で、互いに軸回転方向の位置合わせ機構を形成したことを特徴とする回転繰出筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸筒内に複数の筆記体を収容し、筆記体の先端部を選択的に軸先から突出させる回転繰出筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
軸筒内に複数の筆記体(リフィル)を収容し、所定の繰出し操作により、軸筒の先端部から選択的に先端筆記部を突出させる構造の筆記具が提供されている。
軸筒に収容された複数の筆記体のうちの一つを繰り出す機構として、回転繰出式と呼ばれるものがあり、この回転繰出式の筆記具の多くは、前軸に対して後軸を相対回転させることにより、前軸先端部に形成された開口孔から、筆記体の先端筆記部を選択的に出没させるものである。
【0003】
この種の回転繰出筆記具については、従来から種々の改良ならびに提案がなされており、本出願人においても、前記した回転繰出筆記具について幾つかの提案をしており、その一例が特許文献1に開示されている。
この特許文献1に示された回転繰出筆記具によると、軸筒内に収容される各筆記体の後端部に、カムに摺接する摺動コマが配置される。そして、前軸に対して後軸内に取り付けられた円筒カムを後軸と共に回転させることで、円筒カムによって前記摺動コマを前後に移動させて、選択的に一つの筆記体の先端筆記部を、前軸先端部に形成された開口孔から突出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-61605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された回転繰出筆記具によると、軸筒内に収容される例えば3本の筆記体(リフィル)は、それぞれガイド筒によって軸方向に移動可能に支持される。そして、前記した3本の筆記体は軸筒の軸中心線を避けて、軸中心線の回りに沿って互いに平行状態に配置される。
一方、筆記体の先端筆記部が選択的に出没する先端開口孔は、軸筒先端部に配置された例えば円錐形状に形成された口金先端部に形成されている。したがって先端筆記部が出没する先端開口孔は、軸筒の軸中心線上に形成された構成が採用されている。
【0006】
これによると、筆記のために選択された筆記体は、軸筒の軸中心線を避けた位置から、その先端筆記部のみが、軸筒の軸中心線に向かって曲げられて、非直線状に変形した状態になされる。したがって、先端開口孔から突出する先端筆記部は、軸筒の軸中心線に対していずれも僅かに曲がった姿勢となり、これが見た目において違和感を感ずることは、誰しもが経験しているところである。
【0007】
この発明は、前記した従来の回転繰出筆記具に着目してなされたものであり、先端開口孔から突出する先端筆記部が、真っ直ぐな状態(直線状態)で軸筒の軸中心線と平行した状態を保つことができるように構成することで、見た目において前記したような違和感を感ずることのないバランスのとれた回転繰出筆記具を提供することを主要な目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る回転繰出筆記具は、軸筒内に3本以上の筆記体が収容されて、各筆記体がガイド筒によって軸筒の軸方向に移動可能に支持されると共に、軸筒に対する前記ガイド筒の相対回転操作を受けて、軸筒内に固定された円筒カムによって、一つの前記筆記体の先端筆記部が前記軸筒の口先部材に設けた開口孔から選択的に突出される回転繰出筆記具であって、前記口先部材の開口孔を、前記軸筒の軸中心線から偏心した位置に形成することで、前記開口孔から先端筆記部が突出された状態の前記筆記体が、直線状態を維持し、前記軸筒は前軸および後軸により構成され、前記口先部材は、前記前軸の前端部に取り付けられると共に、前記前軸に対して後軸が軸継手を介して連結されることで前記軸筒が構成され、前記口先部材と軸継手のいずれか一方には、軸方向に沿って位置合わせ開口が形成されると共に、前記口先部材と軸継手のいずれか他方には、前記位置合わせ開口に対して軸方向に挿入される凸状部が形成され、前記前軸内において、前記位置合わせ開口に対して凸状部が挿入されることで、前記口先部材と軸継手との間で、互いに軸回転方向の位置合わせ機構を形成したことを特徴とする。
【0009】
この場合、好ましい実施の形態においては、前記各筆記体の後端部には前記円筒カムに摺接して、筆記体を軸筒の軸方向に移動させる摺動コマが連結され、前記軸筒内に固定された円筒カムは、周方向に沿って円弧状に形成されたカム平坦部と、前記カム平坦部の両端側から前方に尖形するように形成された左右一対のカム斜面と、前記一対のカム斜面の先端が繋がる所定幅のカム頂部を有し、前記筆記体に連結された摺動コマが、前記カム頂部に当接することにより、前記筆記体の先端筆記部が前記口先部材の開口孔から突出され、この状態において、他の筆記体に連結された摺動コマは、前記カム平坦部に位置する構成が採用される。
【0010】
そして、前記口先部材における軸筒の軸方向に直交する断面形状は、非正円形状を構成していることが望ましい。
【0012】
加えて、一つの好ましい形態においては、前記先端筆記部としてボールペンチップが用いられ、当該ボールペンチップには、その最大外径部分から先端部に向かって、外径が凹曲面状に漸減する縮径部が設けられる。
【発明の効果】
【0013】
前記したこの発明に係る回転繰出筆記具によると、軸筒内に収容された複数本の筆記体は、手動により回転操作を受けるガイド筒によって、それぞれ軸方向に移動可能に支持される。そして、ガイド筒が回転運動を受けることで、軸筒内に固定された円筒カムとの相互作用により、一つの筆記体の先端筆記部が、軸筒の口先部材に設けた開口孔から順次選択的に突出される。
【0014】
この場合、口先部材の開口孔は軸筒の軸中心線から偏心した位置に形成されており、これにより、開口孔から先端筆記部が突出される前記筆記体は、軸筒内でほぼ直線状態(真っ直ぐな状態)を維持することができる。したがって、先端筆記部が軸筒の軸心に対して曲がった姿勢で突出する従来の回転繰出筆記具の問題点を解消することができる。
【0015】
加えて、筆記体の先端筆記部を突出させる円筒カムには、前方に尖形するように形成された左右一対のカム斜面が施されているので、ガイド筒の回転操作が左右いずれの方向であっても、先端筆記部の交換操作を行うことができる。
それ故、軸筒内に3本以上の筆記体が収容されたこの種の回転繰出筆記具において、必要とする筆記体の選択を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明に係る回転繰出筆記具の外観構成を示した斜視図である。
図2】同じく回転繰出筆記具の全体構成を示し、(A)は正面図、(B)は中央断面図である。
図3図2におけるa-a線より矢印方向に見た拡大断面図である。
図4】前軸を取り外して筆記体(リフィル)が交換可能な状態を示した斜視図である。
図5】軸筒を取り除き先端筆記部を繰り出した状態を示し、(A)は表面側から見た斜視図、(B)は裏面側から見た斜視図である。
図6】軸筒を取り除き先端筆記部を収納した状態を示し、(A)は表面側から見た斜視図、(B)は裏面側から見た斜視図である。
図7図1に示す回転繰出筆記具を部品単位に分解した展開図であり、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
図8】前軸の単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は中央断面図である。
図9A】口先部材の単品構成を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は、中央断面図である。
図9B】口先部材の単品構成を示し、(E)は先端部側から見た斜視図、(F)は天地を反転して後端部側から見た斜視図、(G)は左側面図、(H)は右側面図である。
図10】後軸の単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は中央断面図、(D)は右側面図である。
図11A】円筒カムの単品構成を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は中央断面図、(D)は底面図である。
図11B】円筒カムの単品構成を示し、(E)は斜視図、(F)は左側面図、(G)は右側面図である。
図12】後軸に円筒カムを装着しようとする状態を示し、(A)は正面図、(B)は中央断面図、(C)は斜視図、(D)軸方向から見た拡大した側面図である。
図13】ガイド筒の単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は上面図、(C)は正面図、(D)は中央断面図である。
図14】軸継手の単品構成を示し、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は中央断面図、(D)は斜視図である。
図15】ダイヤルつまみの単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る回転繰出筆記具について、筆記体としてボールペンリフィルを用いた実施の形態に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示しているが、一部の図面においては紙面の都合で代表的な部分に符号を付けて、その詳細については、各部品単位で示したそれぞれの図面に付けた符号を引用して説明する場合もある。
【0018】
この回転繰出筆記具1は、図1および図2に全体構成で示したとおり、外郭を構成する軸筒2は、前軸3および後軸4により構成され、前軸3と後軸4とは軸継手5を介して直線状に連結されている。そして、前軸3の前端部には口先部材6が装着されて、この口先部材6から筆記体としてのボールペンリフィル9の先端筆記部(ボールペンチップ)9aが、突出するように構成されている。
また、後軸4の後端部にはダイヤルつまみ7が、後軸4に対して回動可能に取り付けられており、このダイヤルつまみ7を回動操作することにより、口先部材6から突出されるボールペンチップ9aが選択可能になされる。そして、後軸4とダイヤルつまみ7の境界部分において、ワイヤークリップ8の基端部が後軸4の後端部に取り付けられている。
【0019】
前記軸筒2内には、図4にも示されているように筆記体として、3本のボールペンリフィル9が軸筒2の軸線に平行となるように収容されている。これら3本のボールペンリフィル9は、後軸4の後端側に軸回転が可能に配置されたガイド筒11において、それぞれ軸方向に移動可能に保持されている。
すなわちガイド筒11には、前記した3本のボールペンリフィル9の後端部がそれぞれ挿入される後述するガイド孔11aが形成されて、このガイド孔11a内には図5図7にも示されているように摺動コマ12が収容されている。
【0020】
この摺動コマ12は、ガイド筒11の前端部に装着されたスプリング受け14との間に配置されたそれぞれのコイルスプリング13によって、前記ガイド孔11aの内底部に向かって付勢されている。そして、摺動コマ12の前端部に突出するようにして形成された小突起12a(図2参照)がボールペンリフィル9のインク収用管の後端部に嵌合されることで、ボールペンリフィル9が摺動コマ12によって保持されている。
【0021】
したがって、ボールペンリフィル9を交換しようとする時には、図4に示すように前軸3を軸継手5から引き抜いて、前軸ユニットU1を後軸ユニットU2から分離し、この状態で、交換しようとするボールペンリフィル9を手前に引く操作を行う。これにより、摺動コマ12はガイド筒11内を前進し、コイルスプリング13が最も圧縮された状態で、ボールペンリフィル9の後端部が、摺動コマ12の小突起12aから外れる。そこで、新たなボールペンリフィル9を挿入することで、ボールペンリフィル9の後端部が摺動コマ12の小突起12aに嵌合し、これにより新たなボールペンリフィル9は、摺動コマ12によって再び保持される。
【0022】
この実施の形態においては、ボールペンリフィル9を交換しようとする時には、図4に基づいて説明したように、後軸ユニットU2から前軸ユニットU1を、軸方向に沿って引き抜くことで行われる。また、前軸ユニットU1を後軸ユニットU2に装着する場合には、前軸ユニットU1を後軸ユニットU2に向かって、軸方向押し込むことで、前軸ユニットU1は後軸ユニットU2側の軸継手5に対して、軸方向に嵌合(いわゆるグズ嵌合)されて取り付けられる。
【0023】
図2に示すようにガイド筒11の後端部側には、後述する軸体11cが形成されており、この軸体11cの端部に、前記したダイヤルつまみ7が装着される。したがってダイヤルつまみ7を回動操作することで、前記ガイド筒11は3本のボールペンリフィル9を装着したまま、軸回転されるように構成されている。
【0024】
図2図5図6に示すように、前記したガイド筒11の後半部を取り囲むようにして、円筒カム15が後軸4内に取り付けられている。
円筒カム15の詳細な構成については、円筒カム15を単品構成で示した図11Aおよび図11Bに基づいて後で説明するが、前記したダイヤルつまみ7を回動操作することで、ガイド筒11が回動し、これに伴い摺動コマ12に形成された凸部12b(図2図5図6参照)が、円筒カム15の後述するカム斜面15bに沿ってせり上がり、これにより、摺動コマ12は前進する。
前進する摺動コマ12が取り付けられたボールペンリフィル9の先端筆記部(ボールペンチップ)9aは、図1および図2に示すように口先部材6の開口孔6aより突出され、筆記が可能な状態となる。
【0025】
以下、前記した回転繰出筆記具1を構成する各部材について、部品単位で示した図面に基づいて個々に説明する。
図8は、前軸3の単品構成を示している。この前軸3は好ましくはアルミニウムなどの金属素材により円筒状に形成され、前端部は斜めにカットされて斜めカット部3aを形成し、後端部は軸に直交した状態でカット仕上げされている。そして、前軸3の外側の円筒面には軸方向に沿った浅い切り込み溝3bが、軸回りの数か所において、それぞれ集中するようにして施されている。この前軸3は回転繰出筆記具1を把持したときに、グリップとして機能するものとなる。
【0026】
また、前軸3の後端部内周は、図8(C)に示すように、僅かに肉厚状に形成されて肉厚部3cを構成している。この肉厚部3cは、前軸3の内周面に沿って配置される例えば真鍮などにより形成される薄肉状のパイプ部材21(図7参照)のストッパとして機能するものとなる。すなわち、パイプ部材21は前軸3の前端部側の斜めカット部3a側から挿入されて前軸3内に配置され、ストッパとして機能する肉厚部3cによって位置決めされる。
【0027】
図9Aおよび図9Bは、口先部材6の単品構成を示している。この口先部材6は、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)などの樹脂素材により形成されて、前軸3の前端部に取り付けられる。
口先部材6の前端部にはすでに説明したとおり、ボールペンチップ9aが突出する開口孔6aが形成されている。また、口先部材6の後端部側には円筒部6bが形成されて、この円筒部6bが前記した前軸3内に配置されたパイプ部材21に嵌合した状態で、前軸3に取り付けられる。
また、口先部材6には前軸3の斜めカット部3aに沿って当接する当接部6cが、斜めに形成されており、この斜めの当接部6cを境にした口先部材6の後半部が、前軸3内に収容されて取り付けられることになる。
【0028】
さらにこの口先部材6は、図9Aの(D)に示すように、口先部材6の先端部に形成された開口孔6aが、軸筒2の軸中心線から偏心した位置に形成されている。
すなわち、軸筒2の軸中心線L1は、口先部材6に形成した円筒部6bの軸線に相当し、口先部材6の開口孔6aの軸線は符号L2で示したものとなる。
これは、口先部材6の開口孔6aから先端筆記部(ボールペンチップ)9aが突出されるボールペンリフィル9は、軸筒2の軸中心線L1から若干離れた位置に存在するために、これに合わせて開口孔6aの位置を敢えて偏心させたものとなる。
【0029】
これにより、先端筆記部9aが開口孔6aから突出されるボールペンリフィル9を、軸筒2内において、真っ直ぐな状態(直線状態)にすることができる。
したがって、この実施の形態における口先部材6は、前記した構成を備えるために、一般的に用いられる円錐型の口先部材は採用せずに、口先部材6における軸筒2の軸方向に直交する断面形状は、非正円形状を構成するものとなる。
【0030】
前記口先部材6には、前記した円筒部6bからさらに後端側に向かって、円弧状に湾曲した凸状部6dが、円筒部6bと一体に形成されている。そして、凸状部6dの円弧状の内周面には、軸方向に沿って、3本のリブ6eが形成されている。
前記凸状部6dは、後述する軸継手5に形成した位置合わせ開口5bとの間で、軸回転方向の位置合わせ機構を形成するものである。
また、前記3本のリブ6eは、軸回転方向の位置合わせがなされていないまま、口先部材6に軸継手5を当接させた場合に、軸継手5の一部が、口先部材6に形成した凸状部6dの円弧状内周面に乗り上げた状態で組み付けられるのを阻止する作用を果たすものとなる。
【0031】
なお、この実施の形態においては、口先部材6の開口孔6aを、軸筒2の軸中心線から偏心した位置に形成することで、先端筆記部が開口孔6aから突出されるボールペンリフィル9を、軸筒2内において真っ直ぐな状態(直線状態)を保つように構成しているが、これに加えて、この実施の形態において用いられるボールペンリフィル9は、先端筆記部(ボールペンチップ)9aの形状においても工夫が施されている。
【0032】
すなわち図4に、ボールペンリフィル9の先端筆記部(ボールペンチップ)9aを拡大して示したとおり、このボールペンリフィル9に用いられるボールペンチップ9aには、ボールペンチップ9aの最大外径部分から先端部に向かって、外径が凹曲面状に漸減する縮径部9bが施されている。すなわち、この縮径部9bは側面が凹曲面となっており、このボールペンチップ9aの細径の先端部に筆記ボール9cが、カシメ加工によって取り付けられている。
【0033】
このボールペンチップ9aを用いることで、ペン先が円錐状のテーパー部を有する従来のボールペンリフィルに比べて、ペン先を細く見せる意匠効果をもたらすことができるだけでなく、筆記中における先端の描線部分を見易くすることができる実用的な効果も得ることができる。
特に、前記したように筆記可能状態にされるボールペンリフィル9は、軸筒2内において真っ直ぐな状態(直線状態)を保つように配置されると共に、その先端のボールペンチップ9aが、凹曲面状の縮径部9bを有するものを用いることで、これらの構成が相乗的に作用して、この種の回転繰出筆記具1において、独自の美観を持たせることに寄与できるものとなる。
【0034】
図10は、後軸4の単品構成を示している。この後軸4は、例えばアルミニウムを素材として、プレス成形により正六角筒状に成形されている。その前端部は開口され、後端部には折り曲げ加工により、端面4aが形成されている。そして、前記端面4aから軸方向に沿って一対の切欠き部4bが形成されており、この一対の切欠き部4bが前記したワイヤークリップ8の一対の基端部の挿通孔として利用される。
また、前記端面4aの中央部は開口されて、後述する尾栓継手16に施された雄ねじ16aなどの挿通孔4cを構成している。
この後軸4の前端部開口側からは、次に説明する円筒カム15、ガイド筒11、軸継手5が順次挿入されることで、図4に示した後軸ユニットU2が構成される。以下、これらの各部材について、順に説明する。
【0035】
図11Aおよび図11Bは、円筒カム15の単品構成を示している。この円筒カム15は、POM(ポリアセタール)などの樹脂素材により構成されており、図11Aの(A)に示すように、前半部15Aは円筒状に形成されてカム形成部を構成し、後半部15Bは小径に形成されて円筒カムの取り付けおよび軸受け孔等を構成している。
前半部15Aには、周方向に沿って円弧状に形成されたカム平坦部15aが形成されている。また、カム平坦部15aの両端側から前方に尖形するように形成された左右一対のカム斜面15bを有する。この一対のカム斜面15bは、それぞれ軸方向に沿って左右が対称となる円弧状に形成されており、その先端は、所定幅を有するカム頂部15cの両端にそれぞれ繋がっている。
【0036】
なお、カム頂部15cは、選択された筆記体(ボールペンリフィル)9に連結された摺動コマ12の凸部12b(図5図6参照)が当接する部位であるため、図に示すように、安定性向上のために緩やかな凹状に形成されている。
また、この実施の形態においては、カム平坦部15aとカム斜面15bとの境界部分には、一対の凹み部15dが形成されており、この凹み部15dには、選択されない他の2本の筆記体に連結された摺動コマ12の凸部12bが、それぞれ位置するように構成される。したがって、前記一対の凹み部15dに、それぞれ摺動コマ12の凸部12bが嵌る際に、程よいクリック感を得ることができるものとなる。
【0037】
円筒カム15の後半部15Bは、小径部15eを構成しており、この小径部15eには、上下に向かって一対の係止凸部15fが形成されている。この小径部15eと係止凸部15fを利用して、円環状に形成された金属製の尾栓継手16(図7図12参照)が取り付けられる。この尾栓継手16は円筒カム15およびワイヤークリップ8の基端部を、後軸4の後部内に機械的に取り付けるために利用される。
そして、図11Aの(C)に示されているように、小径部15e内には軸孔15gが形成されており、この軸孔15gにはガイド筒11の軸体11cが挿通されて、ガイド筒11を回動可能に支持する機能を果たす。
【0038】
さらに、カム平坦部15aと小径部15eとの間の円筒面には、軸方向に沿って4本のリブ15hが平行状態に形成されている。これら各リブ15hは、円筒カム15を後軸4内に挿入固定するに際して、正六角筒状に形成された後軸4の内角部の4か所にそれぞれ接することで、後軸4に対する円筒カム15の軸回転方向の動き(遊び)を規制するものとなる。
【0039】
図12は、円筒カム15を後軸4内に挿入固定する状態を示している。円筒カム15を後軸4内に挿入するにあたっては、円筒カム15の小径部15eに、尾栓継手16が挿入される。前記したとおり円筒カム15の小径部15eには、一対の係止凸部15fが形成されている。尾栓継手16は、一対の係止凸部15fによって回り止めされた状態で、小径部15eに装着される。
そして、正六角筒状に形成された後軸4に形成された一対の切欠き部4bに挟まれた面4d〔(図12(C)参照〕の裏面側に、円筒カム15のカム頂部15cが内接するようにして、後軸4内に円筒カム15を挿入する。
なお、図12(B)に示すように尾栓継手16には、雄ねじ16aが施されている。
【0040】
図12に示した状態で、後軸4に形成された一対の切欠き部4bに対して、U字状に成形されたワイヤークリップ8の左右の基端部を挿入し、そのまま円筒カム15を後軸4内の後部に向かって押し込むと、円筒カム15の小径部15e、尾栓継手16の雄ねじ16aが、後軸4の雄ねじ挿通孔4cから突出される。
この状態で、後軸4の後部に突出した尾栓継手16の雄ねじ16aに対して、端面に鍔が付いたリング状の尾栓17(図7参照)をねじ込むことで、円筒カム15とワイヤークリップ8が、後軸4の後部に取り付けられる。
なお、図3は後軸4の後部に取り付けられた円筒カム15とワイヤークリップ8を含む主要部について、その取り付け状態を断面図で示している。
【0041】
図13は、ガイド筒11の単品構成を示している。このガイド筒11については、先にその一部について説明をしているが、このガイド筒11は全体がPC(ポリカーボネート)などの透明樹脂素材により構成されている。そして、前半部には3本のボールペンリフィル9のそれぞれの後端部が挿入されるガイド孔11aが、軸回りに等間隔にかつ互いに平行に形成されている。
そして、各ガイド孔11aの長手方向に沿って、ガイド筒11の側面に連通するようにスリット11bが、ガイド孔11aごとに形成されている。このスリット11bには、ガイド孔11a内に収容された摺動コマ12の凸部12b(図2図5図6参照)が外側に向かって位置している。そして、摺動コマ12の凸部12bは、前記した円筒カム15のカム斜面15b等に接して、ガイド孔11a内を移動できるように構成されている。これにより、前記ボールペンリフィル9を前進移動させるように作用する。
【0042】
ガイド筒11の各ガイド孔11a内において、前記摺動コマ12の前側には、コイルスプリング13が収容されて、ガイド筒11の前端部に装着されたスプリング受け14によって、各コイルスプリング13の前端部が係止される。
これにより、すでに説明したとおり、摺動コマ12の前端部に突出するようにして形成された小突起12a(図2参照)が、ボールペンリフィル9のインク収用管の後端部に嵌合されることで、ボールペンリフィル9が摺動コマ12によって保持され、各ボールペンリフィル9をコイルスプリング13によって後退する方向に付勢している。
【0043】
前記ガイド筒11の後半部には、円柱状を構成する小径の軸体11cが形成されており、軸体11cの後端部には軸方向に沿って短小な溝部11dが形成されている。加えて、前記溝部11dに沿うようにして、外径が軸方向に沿って凹凸状態にされた嵌合部11eが形成されている。
前記軸体11cは、後軸4の後端部内に取り付けられた円筒カム15の軸孔15gに内接して、ガイド筒11を軸回転可能に支持するものであり、また、前記溝部11dと嵌合部11eは、回転繰出筆記具1を組み上げた状態において、後軸4から突出してダイヤルつまみ7を取り付けるために用いられる。
【0044】
図14は、軸継手5の単品構成を示している。この軸継手5も前記した口先部材6と同様にABSなどの樹脂素材により形成されて、後軸4の前端部に取り付けられる。
すなわち、前記した円筒カム15、ガイド筒11を後軸4内に挿入した後に、最後に軸継手5が後軸4の前端部に取り付けられる。
【0045】
この軸継手5は、全体が円筒形を構成し、その長手方向のほぼ中央部には、大径部5aが形成されている。この大径部5aの前半部(図14の左側)が、前記した前軸3の後端部に挿入されて、前軸3の前端部に挿入された口先部材6との間で、軸回転方向の位置合わせが行われる。
このために、軸継手5の前端部には、円筒体の側面の一部を切り欠いた形態の比較的幅の広い位置合わせ開口5bが形成されている。この位置合わせ開口5bに対して、前軸3の前端部に装着された口先部材6の凸状部6dが入り込むようにして、互いに位置合わせすることで、口先部材6と軸継手5との間の軸回転方向の位置合わせがなされる。
【0046】
軸継手5における幅の広い位置合わせ開口5bと、前記した大径部5aとの間には円筒部5cが形成されており、円筒部5cの一部には幅の広い位置合わせ開口5bに連続して幅の狭いスリット5dが形成されている。
前記円筒部5cには、薄肉状の金属素材により円筒状に形成された嵌合スリーブ22(図4図7参照)が取り付けられ、この嵌合スリーブ22を介して図4に示すように、前軸ユニットU1を構成する前軸3の後端部が、グズ嵌合される。
このために、嵌合スリーブ22は損傷し易く、交換が必要となる場合が生ずる。そこで、円筒部5cに形成されたスリット5dは、嵌合スリーブ22の交換時に、円筒部5cの外径を縮小し易くするために設けられている。
【0047】
軸継手5における後半部側は、後軸4への嵌合部5eが形成されており、これは外面が正六角柱状に構成されている。この嵌合部5eは正六角筒状に形成された前記した後軸4の前端開口内に挿入嵌合されることで、後軸4の前端部に軸継手5が取り付けられる。
後軸4への軸継手5の嵌合の際には、軸継手5に形成された位置合わせ開口5bの位置が、後軸4に先に取り付けたワイヤークリップ8の反対側になるように位置合わせした上で、嵌合させることが必要である。
【0048】
前記した位置合わせをして、後軸4に軸継手5を取り付けることで、軸継手5に形成された位置合わせ開口5bに対して、前軸3の前端部に装着された口先部材6の凸状部6dが入り込み、これにより、口先部材6と軸継手5との間の軸回転方向の位置合わせを行うことができる。
この位置合わせは、図4に示したように前軸ユニットU1を後軸ユニットU2に装着する際にも行なわれ、これにより、筆記部として選択されたボールペンリフィル9のボールペンチップ9aは、軸筒の軸中心線から偏心した位置に形成された口先部材6の開口孔6aから、真っ直ぐな状態を維持した状態で突出させることができる。
【0049】
前記したように、後軸4に軸継手5を取り付けると、後軸4内に収容されたガイド筒11は軸継手5に押されて、軸体11cに形成された溝部11dと、嵌合部11eが、後軸4の後部に突出する。この軸体11cに形成された溝部11dと嵌合部11eを利用して、ダイヤルつまみ7が、後軸4の後端部に取り付けられる。
【0050】
図15は、ダイヤルつまみ7の単品構成を示している。このダイヤルつまみ7には、後端部側に向かって外径を小さくするつまみ部7aが形成され、その後端部には、周に沿った3か所に塗色が施された凹部、すなわちマーカー凹部7bが施されている。このマーカー凹部7bには、好ましくは回転繰出筆記具1に装着されるボールペンリフィル9の各インク色(例えば、赤、緑、黒)に対応した塗色が施される。
一方、ダイヤルつまみ7の軸心には、内径を段状に狭くした装着穴7cが形成され、この装着穴7cの最奥には、軸方向に沿って内径が凹凸状にされた嵌合部7dと、軸方向に突出するリブ7eが施されている。
【0051】
前記したダイヤルつまみ7は、後軸4の後部に突出したガイド筒11の軸体11cに、その装着穴7cを押し込むことで取り付けられる。
この時、後軸4の後部に突出している円筒カム15の小径部15eには、好ましくはOリング18(図2図7参照)が装着され、ダイヤルつまみ7の装着穴7c内にはボール19(図2図7参照)が挿入される。
【0052】
そして、ガイド筒11の軸体11cに形成された溝部11dに、ダイヤルつまみ7の装着穴7cに施されたリブ7eを一致させて、この状態でダイヤルつまみ7を軸体11cに向かって押し込む操作を行う。この押し込み操作により、ダイヤルつまみ7の凹凸状の嵌合部7dが、軸体11c側の凹凸状の嵌合部11eに嵌合して結合される。
これにより、ダイヤルつまみ7の回動操作に伴い、後軸4内のガイド筒11に回動動作を与えることができる。
また、軸体11cの溝部11dに、ダイヤルつまみ7の装着穴7cに施されたリブ7eが一致するように装着されるので、ワイヤークリップ8側に位置するマーカー凹部7dに対応したインク色の先端筆記部9aが、口先部材6の開口孔6aから突出するように連係させることができる。
【0053】
以上のとおり構成された回転繰出筆記具によると、ダイヤルつまみ7の回動操作により、軸筒2内のガイド筒11が回動し、ガイド筒11の回動に伴って、軸筒2内に固定された円筒カム15のカム斜面15bに沿って、摺動コマ12が前進移動する。これにより、摺動コマ12に連結された筆記体9は前進して、先端筆記部9aが口先部材6の開口孔6aから突出して、筆記が可能な状態となる。
ダイヤルつまみ7のさらなる回動操作により、筆記体9はスプリング13の付勢力を受けて後退し、新たに選択された隣接する筆記体9が前記と同様に前進して、筆記が可能となる状態が繰り返される。
【0054】
この場合、口先部材6の開口孔6aは、軸筒の軸中心線から偏心した位置に形成されており、これにより、開口孔6aから先端筆記部9aが突出される筆記体9は、軸筒内でほぼ直線状態(真っ直ぐな状態)を維持することができる。したがって、先端筆記部9aが、軸筒の軸心に対して曲がった姿勢で突出する従来の回転繰出筆記具の見栄えの悪い問題点を解消することができる。
【0055】
加えて、筆記体9の先端筆記部9aを突出させる円筒カム15には、前方に尖形するように形成された左右一対のカム斜面15bが施されているので、ダイヤルつまみ7の回転操作が左右いずれの方向であっても、先端筆記部9aの出没操作を行うことができる。
それ故、軸筒内に3本以上の筆記体9が収容されたこの種の回転繰出筆記具において、必要とする筆記体の選択を迅速に行うことが可能となるなど、前記した発明の効果の欄に記載した作用効果を奏する回転繰出筆記具が提供される。
【0056】
なお、前記した実施の形態における軸継手5側と、口先部材6側との間で構成される軸回転方向の位置合わせ機構は、軸継手5側に位置合わせ開口5bを形成し、口先部材6側に前記位置合わせ開口5bに挿入される凸状部6dが形成されている。
しかし、位置合わせ開口5bと凸状部6dとを交互に入れ替えて、口先部材6側に位置合わせ開口5bに相当する機構を施し、軸継手5側に凸状部6dに相当する機構を施す構成としても、同様の作用効果を奏する位置合わせ機構を実現させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 回転繰出筆記具
2 軸筒
3 前軸
4 後軸
5 軸継手
5a 大径部
5b 位置合わせ開口
6 口先部材
6a 開口孔
6d 凸状部
7 ダイヤルつまみ
8 ワイヤークリップ
9 筆記体(ボールペンリフィル)
9a 先端筆記部(ボールペンチップ)
9b 縮径部
9c 筆記ボール
11 ガイド筒
11a ガイド孔
11c 軸体
12 摺動コマ
12a 小突起
12b 凸部
13 コイルスプリング
15 円筒カム
15a カム平坦部
15b カム斜面
15c カム頂部
16 尾栓継手
17 尾栓
L1 軸筒の軸中心線
L2 口先部材開口孔の軸線
U1 前軸ユニット
U2 後軸ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15