(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】殺菌消毒用エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/06 20060101AFI20240910BHJP
A01N 31/04 20060101ALI20240910BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240910BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240910BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240910BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240910BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20240910BHJP
A61P 31/02 20060101ALI20240910BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N31/04
A01P3/00
A61K47/44
A61K47/10
A61K8/34
A61K8/02
A61Q17/00
A61P31/02
A61K9/12
(21)【出願番号】P 2020124538
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】松井 和弘
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-321760(JP,A)
【文献】特開2003-226616(JP,A)
【文献】特開2009-173613(JP,A)
【文献】特開2014-009201(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00604848(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/
A61K 47/
A61K 8/
A61Q 17/
A61P 31/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と噴射剤とからなり、
前記原液は、ジェル基材と、前記ジェル基材に分散した乳化油滴とを含み、
前記乳化油滴は、油剤と、水と、界面活性剤とを含み、
前記ジェル基材は、殺菌消毒剤と、アルコールと、水溶性高分子と、水とを含
み、
前記水溶性高分子は、会合型増粘剤を含む、殺菌消毒用エアゾール組成物。
【請求項2】
前記乳化油滴の含有量は、原液中、3~35質量%である、請求項1記載の殺菌消毒用エアゾール組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤またはアミノ酸型アニオン性界面活性剤を含む、請求項1または2記載の殺菌消毒用エアゾール組成物。
【請求項4】
前記油剤は、脂肪酸または高級アルコールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の殺菌消毒用エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌消毒用エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、塗り伸ばしやすく、手揉みにより使用感が変化して滑らかな肌触りになることにより、殺菌消毒できたことを使用者が把握しやすい殺菌消毒用エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手指等を殺菌するための殺菌消毒製品が知られている。使用者は、手指等に殺菌消毒剤を吐出し、塗り広げて使用する。特許文献1~2には、殺菌成分を含むエアゾール組成物およびエアゾール製品が開示されている。これらのエアゾール組成物は、殺菌成分と、水溶性高分子と、界面活性剤と、噴射剤とを含む。特許文献1~2のエアゾール組成物は、泡状に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-279268号公報
【文献】特開2005-15365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~2のエアゾール組成物は、泡の安定性や、適用部分への付着性を高めるために、水溶性高分子を必須とする。しかしながら、吐出物は、水溶性高分子によりヌメリやべたつきが強く、使用感が悪い。また、吐出物は、使用時にヌメリやべたつきが長く生じるため、使用者は、手指等が充分に殺菌消毒されたかどうか、判別しにくい。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、水溶性高分子を含んでいるにもかかわらず、塗り伸ばしやすく、手揉みにより使用感が変化して滑らかな肌触りになることにより、殺菌消毒できたことを使用者が把握しやすい殺菌消毒用エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)原液と噴射剤とからなり、前記原液は、ジェル基材と、前記ジェル基材に分散した乳化油滴とを含み、前記乳化油滴は、油剤と、水と、界面活性剤とを含み、前記ジェル基材は、殺菌消毒剤と、アルコールと、水溶性高分子と、水とを含む、殺菌消毒用エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、殺菌消毒用エアゾール組成物は、手指等に、スプレーや泡の形態で塗布することができる。殺菌消毒用エアゾール組成物は、水溶性高分子による粘性により、手揉みなどで塗り伸ばしやすい。また、殺菌消毒用エアゾール組成物は、吐出物の乾燥が進行すると、乳化油滴によるクリームのような滑らかな肌触りに変化する。さらに、使用者は、使用感が変化したことを目安にすることによって、殺菌消毒できたことを把握しやすい。
【0009】
(2)前記乳化油滴の含有量は、原液中、3~35質量%である、(1)記載の殺菌消毒用エアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、殺菌消毒用エアゾール組成物は、均一な組成で塗布しやすい。その結果、殺菌消毒用エアゾール組成物は、滑らかな肌触りへの変化が安定して得られやすい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水溶性高分子を含んでいるにもかかわらず、塗り伸ばしやすく、手揉みにより使用感が変化して滑らかな肌触りになることにより、殺菌消毒できたことを使用者が把握しやすい殺菌消毒用エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<殺菌消毒用エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の殺菌消毒用エアゾール組成物(以下、エアゾール組成物ともいう)は、原液と噴射剤とからなる。原液は、ジェル基材と、ジェル基材に分散した乳化油滴とを含む。乳化油滴は、油剤と、水と、界面活性剤とを含む。ジェル基材は、殺菌消毒剤と、アルコールと、水溶性高分子と、水とを含む。以下、それぞれについて説明する。
【0013】
(原液)
原液は、ジェル基材と、ジェル基材に分散した乳化油滴とを含む。原液は、手指に塗り伸ばされることにより、適用箇所を殺菌消毒するとともに、クリームのような滑らかな肌触りを適用箇所に付与する。
【0014】
・ジェル基材
ジェル基材は、後述する乳化油滴を分散させるための基材である。ジェル基材は、殺菌消毒剤と、アルコールと、水溶性高分子と、水とを含む。
【0015】
殺菌消毒剤は、手指等を殺菌消毒するための有効成分として作用する。殺菌消毒剤は特に限定されない。一例を挙げると、殺菌消毒剤は、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾール等である。殺菌消毒剤は、併用されてもよい。
【0016】
殺菌消毒剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、殺菌消毒剤は、原液中、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。また、殺菌消毒剤の含有量は、原液中、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。殺菌消毒剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、手揉みの間に充分な殺菌消毒効果が得られやすい。
【0017】
アルコールは、手揉みなどで塗り拡げるときの乾燥時間を調整し、水溶性高分子によるヌメリを軽減して、クリームのような滑らかな肌触りへの変化を使用者に感じさせやすくする等の目的で用いられる。
【0018】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール等である。アルコールは、併用されてもよい。
【0019】
アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、手揉みなどで塗り拡げたときの乾燥時間を調整しやすく、水溶性高分子によるヌメリを軽減して、クリームのような滑らかな肌触りへの変化を使用者に感じさせやすい。
【0020】
水溶性高分子は、原液に粘性を付与して塗り拡げやすくする、手揉みの間に垂れ落ちにくくする等の目的で用いられる。
【0021】
水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーなどの会合型増粘剤、セルロースナノファーバー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等である。水溶性高分子は、手揉みなどで塗り拡げやすく、べたつきが感じられにくい点から、会合型増粘剤であることが好ましい。水溶性高分子として会合型増粘剤を含む場合、エアゾール組成物は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤で原液のpHを6~9に調整し、増粘させることが好ましい。水溶性高分子は、併用されてもよい。
【0022】
水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、手揉みの間に垂れ落ちにくく、充分な殺菌消毒効果が得られやすい。
【0023】
水は、一部が水溶性高分子を溶解してジェル基材を形成する溶媒として用いられ、残る一部が後述する乳化油滴を形成して、手揉みによりジェル基材が乾燥した後にクリームのような滑らかな肌触りが得られやすくする等の目的で用いられる。
【0024】
水は、特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。水の含有量は、原液中、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、原液中、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、手揉みによりジェル基材が乾燥する間に充分な殺菌消毒の効果が得られやすく、ジェル基材が乾燥した後で乳化油滴が適用箇所に残り、クリームのような滑らかな肌触りが得られやすい。
【0025】
ジェル基材の含有量は、原液中、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、ジェル基材の含有量は、原液中、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。ジェル基材の含有量が上記範囲内であることにより、手揉みなどで塗り伸ばしている間に、手指等を殺菌消毒しやすい。
【0026】
・乳化油滴
乳化油滴は、ジェル基材中に分散された乳化物であり、油剤と、水と、界面活性剤とを含む。乳化油滴は、ジェル基材が乾燥した後で適用箇所に残り、クリームのような滑らかな肌触りを付与するために配合される。
【0027】
油剤は、乳化油滴を形成し、手揉みによりジェル基材が乾燥した後でも乳化油滴が残りやすくする、クリームのような滑らかな肌触りが得られやすくする等の目的で用いられる。
【0028】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール、ホホバ油、アボカド油、ツバキ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、シア脂、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、胚芽油、ヤシ油、バーム油、メドウフォーム油などの油脂、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ケロシン、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、軽質イソパラフィンなどの炭化水素油、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジオクチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシルなどのエステル油、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ワセリン、パラフィンワックス、ミツロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウなどのロウ類などである。油剤は、併用されてもよい。
【0029】
油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、原液中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、手揉みによりジェル基材が乾燥した後で乳化油滴が残りやすく、クリームのような滑らかな肌触りが得られやすい。
【0030】
水は、油剤と乳化され、乳化油滴を形成する等の目的で用いられる。水の種類や含有量は、ジェル基材に関連して上記したとおりである。
【0031】
界面活性剤は、水と油剤とを乳化して乳化油滴を形成する等の目的で用いられる。
【0032】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;アルカリのケン化物、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などのアニオン性界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩;アミノ酸型アニオン性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;アルキルベタイン;ベタイン型;アルキルイミダゾール型;アミノ酸型;アミンオキシド型などの両性界面活性剤等である。界面活性剤は、併用されてもよい。
【0033】
界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、手揉みによりジェル基材が乾燥した後でも乳化油滴を保持しやすい。
【0034】
乳化油滴の含有量は、原液中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、乳化油滴の含有量は、原液中、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。乳化油滴の含有量が上記範囲内であることにより、乳化油滴は、ジェル基材が乾燥した後で、手指に残りやすく、クリームのような滑らかな肌触りが得られやすい。また、エアゾール組成物は、均一な組成で塗布しやすい。その結果、エアゾール組成物は、滑らかな肌触りへの変化が安定して得られやすい。
【0035】
原液全体の説明に戻り、原液は、殺菌消毒剤、アルコール、水溶性高分子、油剤、水、界面活性剤のほかに、適宜、有効成分、パウダー等の任意成分を含んでもよい。なお、有効成分や任意成分は、ジェル基材中に添加されてもよく、乳化油滴中に添加されてもよい。
【0036】
有効成分は、目的などに応じて適宜選択することができる。一例を挙げると、有効成分は、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、コラーゲン、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミン類、酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤、l-メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸、ローヤルゼリーエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノールなどの防腐剤、天然香料、合成香料などの香料等である。有効成分は、併用されてもよい。
【0037】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、有効成分を配合することによる効果が得られやすい。
【0038】
パウダーは、サラサラ感を付与するなど、使用感を向上させるために好適に配合される。
【0039】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。
【0040】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、パウダーを配合することによる効果が得られやすく、かつ、エアゾール組成物は、吐出される際に、吐出通路において詰まりを生じにくい。
【0041】
原液の含有量は、エアゾール組成物中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、適用箇所において塗り伸ばしやすく、殺菌消毒効果を発揮し得るとともに、クリームのような滑らかな肌触りを付与しやすい。
【0042】
原液の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、殺菌消毒剤と水溶性高分子とを、アルコールと水の一部とからなる溶媒に溶解してジェル基材を調製する。また、残りの水または油剤に、界面活性剤を添加して乳化油滴を形成するための乳化物を調製する。なお、有効成分は、ジェル基材に添加されてもよく、乳化物に添加されてもよい。次いで、乳化物をジェル基材に添加することで、乳化油滴を形成し、ジェル基材中に分散させる。
【0043】
(噴射剤)
噴射剤は、原液を加圧して、スプレー状や泡状に吐出するために配合される。
【0044】
噴射剤は特に限定されない。一例を挙げると、噴射剤は、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンなどのハイドロフルオロオレフィンおよびこれらの混合物等である。
【0045】
噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。噴射剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、原液をスプレー状や泡状に吐出しやすい。
【0046】
エアゾール組成物全体の説明に戻り、エアゾール組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール組成物は、原液を耐圧容器に充填し、耐圧容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブから噴射剤を充填し、原液と噴射剤を混合することにより調製することができる。
【0047】
以上、本実施形態のエアゾール組成物は、手指等に、スプレーや泡の形態で塗布することができる。エアゾール組成物は、水溶性高分子による粘性により、手揉みなどで塗り伸ばしやすい。また、エアゾール組成物は、吐出物の乾燥が進行すると、噴射剤やアルコールが揮発して、適用箇所に乳化油滴が残る。乳化油滴によれば、クリームのような滑らかな肌触りが得られる。このように、エアゾール組成物は、水溶性高分子の粘性による触感から、乳化油滴による滑らかな肌触りに変化する。これにより、使用者は、使用感が変化したことを目安にすることによって、殺菌消毒できたことを把握しやすい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0049】
(実施例1)
下記の乳化物とジェル基材とをそれぞれ調製し、乳化物をジェル基材に分散させることにより、乳化油滴がジェル基材中に分散した原液を調製した。原液35g(70質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル15g(30質量%)を充填し、スプレータイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
<乳化物>
ステアリン酸 0.70
セタノール 0.20
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.10
N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム 0.10
ソルビトール 0.30
グリセリン 0.30
メチルパラベン 0.10
水酸化ナトリウム 0.01
精製水 8.19
合計 10.00(質量%)
<ジェル基材>
カルボマー(*1) 0.45
95%エタノール 36.00
トリイソプロパノールアミン 0.34
塩化ベンゼトニウム 0.05
精製水 53.16
合計 90.00(質量%)
*1:CARBOPOL981 NF POLYMER(商品名)、Lubrizol社製、
【0050】
(実施例2)
下記の乳化物とジェル基材とをそれぞれ調製し、乳化物をジェル基材に分散させることにより、乳化油滴がジェル基材中に分散した原液を調製した。原液35g(70質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル15g(30質量%)を充填し、スプレータイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
<乳化物>
ステアリン酸 0.70
セタノール 0.20
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.10
N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム 0.10
ソルビトール 0.30
グリセリン 0.30
メチルパラベン 0.10
水酸化ナトリウム 0.01
精製水 3.19
合計 5.00(質量%)
<ジェル基材>
カルボマー(*1) 0.45
95%エタノール 30.00
トリイソプロパノールアミン 0.34
塩化ベンゼトニウム 0.05
精製水 64.16
合計 95.00(質量%)
【0051】
(実施例3)
下記の乳化物とジェル基材とをそれぞれ調製し、乳化物をジェル基材に分散させることにより、乳化油滴がジェル基材中に分散した原液を調製した。原液35g(70質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル15g(30質量%)を充填し、スプレータイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
<乳化物>
ステアリン酸 1.40
セタノール 0.40
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.20
N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム 0.20
ソルビトール 0.60
グリセリン 0.60
メチルパラベン 0.10
水酸化ナトリウム 0.02
精製水 16.48
合計 20.00(質量%)
<ジェル基材>
カルボマー(*1) 0.40
95%エタノール 32.00
トリイソプロパノールアミン 0.31
塩化ベンゼトニウム 0.05
精製水 47.24
合計 80.00(質量%)
【0052】
(実施例4)
下記の乳化物とジェル基材とをそれぞれ調製し、乳化物をジェル基材に分散させることにより、乳化油滴がジェル基材中に分散した原液を調製した。原液35g(70質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル15g(30質量%)を充填し、スプレータイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
<乳化物>
ステアリン酸 2.10
セタノール 0.60
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.30
N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム 0.30
ソルビトール 0.90
グリセリン 0.90
メチルパラベン 0.10
水酸化ナトリウム 0.03
精製水 24.77
合計 30.00(質量%)
<ジェル基材>
カルボマー(*1) 0.35
95%エタノール 28.00
トリイソプロパノールアミン 0.27
塩化ベンゼトニウム 0.05
精製水 41.33
合計 70.00(質量%)
【0053】
(実施例5)
実施例1において調製した原液32.5g(65質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル17.5g(35質量%)を充填し、スプレータイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
【0054】
(実施例6)
実施例1において調製した原液42.5g(85質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル7.5g(15質量%)を充填し、フォームタイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
【0055】
(実施例7)
実施例2において調製した原液42.5g(85質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル7.5g(15質量%)を充填し、フォームタイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
【0056】
(実施例8)
実施例3において調製した原液42.5g(85質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル7.5g(15質量%)を充填し、フォームタイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
【0057】
(実施例9)
実施例4において調製した原液42.5g(85質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル7.5g(15質量%)を充填し、フォームタイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
【0058】
(実施例10)
実施例1において調製した原液45g(90質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル5g(10質量%)を充填し、フォームタイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
【0059】
(比較例1)
実施例1において調製したジェル基材のみを原液とし、原液35g(70質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル15g(30質量%)を充填し、スプレータイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
【0060】
(比較例2)
実施例1において調製したジェル基材のみを原液とし、原液42.5g(85質量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填した。容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、バルブのステムからジメチルエーテル7.5g(15質量%)を充填し、フォームタイプの殺菌消毒用エアゾール組成物を製造した。
【0061】
実施例1~10および比較例1~2において調製した殺菌消毒用エアゾール組成物を用いて、以下の評価方法により、使用感を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
<使用感の変化>
殺菌消毒用エアゾール組成物を充填した容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬し、エアゾール組成物を25℃に調整した。このエアゾール組成物1gを手のひらに吐出して、両手で揉み込んだときの使用感の変化を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:エアゾール組成物は、両手に容易に塗り伸ばすことができ、途中でクリームのような滑らかな肌触りに変化したことが明確に感じ取れた。
○:エアゾール組成物は、両手に容易に塗り伸ばすことができ、途中でクリームのような滑らかな肌触りに変化したことが弱いながらも感じ取れた。
×:エアゾール組成物は、両手に塗り伸ばすことができたが、変化はなかった。
<べたつき>
殺菌消毒用エアゾール組成物を充填した容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬し、エアゾール組成物を25℃に調整した。このエアゾール組成物1gを手のひらに吐出して、両手で揉み込んだ後のべたつきの有無を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:べたつきはなく、さらさらしていた。
○:ややべたつきがあったが、さらさらしていた。
×:べたつきがあった。
【0063】
【0064】
表1に示されるように、実施例1~10のエアゾール組成物は、両手に容易に塗り伸ばすことができ、途中でクリームのような滑らかな肌触りに変化した。一方、乳化油滴を含まない比較例1~2のエアゾール組成物は、両手に塗り伸ばすことができたが、使用感の変化はなく、乾燥後にべたつきがあった。