IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエスアー エッピンガー ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7553277可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ
<>
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図1
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図2
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図3
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図4
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図5
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図6
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図7
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図8
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図9
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図10
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図11
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図12
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図13
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図14
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図15
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図16
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図17
  • 特許-可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】可動工具キャリアを有する工作機械、ならびに、その工具キャリアおよび工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/24 20060101AFI20240910BHJP
   B23B 31/20 20060101ALI20240910BHJP
   B23B 31/107 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B23B29/24 A
B23B31/20 F
B23B31/107 A
【請求項の数】 31
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020127174
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2021041523
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】10 2019 120 522.0
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】20175642
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515356384
【氏名又は名称】エーエスアー エッピンガー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ヨエル・ユーダス
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・リーデッケ
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123063(JP,A)
【文献】特開2010-240765(JP,A)
【文献】特開昭62-157703(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017007905(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02910325(EP,A1)
【文献】特開平06-091469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/24
B23B 31/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具ホルダが設けられ、前記複数の工具ホルダ(9)用の複数のレセプタクル(8)を含む可動な工具キャリア(7)を備える工作機械であって、
各工具ホルダ(9)および工具キャリア(7)は、互いに割り当てられた支持面(10、18)と、前記工具ホルダ(9)を前記工具キャリア(7)に取り付けるための装置とを含み、対応するレセプタクルに対して前記工具ホルダを正確に位置決めするための調整手段(12、13)が設けられ、
前記工具ホルダ(9)を取り付けるための前記装置は、前記工具ホルダまたは前記工具キャリアの前記支持面に直交して延びる少なくとも1つのタイロッド(19)を含み、前記工具ホルダおよび/または前記工具キャリアには、それぞれの前記タイロッドと係合し、前記工具ホルダが前記レセプタクルに挿入されているクランプ工程中に前記タイロッドに軸方向のクランプ力を加えるクランプ装置が割り当てられ、前記クランプ力により、前記工具ホルダの前記支持面と前記工具キャリアの前記支持面とが押圧し合い、
前記クランプ装置は、クランプ位置と解除位置との間で前記タイロッドに対して横方向に調整可能に支持され、かつ第1クランプ面(24)を設けるクランプ要素(22)を含み、
前記タイロッドには、前記クランプ要素(22)の前記第1クランプ面(24)が前記クランプ位置でセルフロック係合する第2クランプ面(35)が設けられ、
前記タイロッドは、軸方向に限定的に弾性歪み可能であり、前記クランプ要素(22)の前記クランプ位置で互いに係合している前記クランプ面(24、35)によって、必要な軸方向のクランプ力を生成する程度まで歪み、
前記クランプ要素(22)は、前記工具キャリア(7)の動きに応じて制御可能な結合部(29、30)によって、前記工具キャリア(7)に割り当てられた作動装置(32)に結合することができ、前記クランプ要素(22)は、前記作動装置(32)によって前記クランプ位置と前記解除位置との間で調整可能であり、
前記第1クランプ面(24)および前記第2クランプ面(35)は、セルフロック方式で協働するくさび面である
工作機械。
【請求項2】
前記タイロッドは、前記工具ホルダ(9)のシャンク(19)として構成され、前記工具キャリア(7)は、前記支持面(10)に直交して延びる受け孔(11)をそれぞれの前記レセプタクル(8)の領域に有する
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記タイロッドは、歪み要素(33)を含む
請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記クランプ要素は、スライダ(22)を含み、前記工具キャリア(7)には、前記スライダ(22)を収容する縦ガイド(23)がそれぞれの前記レセプタクル(8)の領域に設けられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記スライダ(22)は、割り当てられた前記タイロッドを部分的に取り囲むフォーク幅を有して、一端部がフォーク形状に構成されており、前記第1クランプ面(24)は、フォーク形状の前記一端部の領域に配置される
請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第1クランプ面(24)および前記第2クランプ面(35)は、互いに平行に配置された面であり、前記クランプ面(24、35)の少なくとも一方には、前記第1クランプ面(24)および前記第2クランプ面(35)の少なくとも一方の外縁に設けられ、当該第1クランプ面(24)および前記第2クランプ面(35)の少なくとも一方から面外に向けて傾斜する走行斜面(330、340)が設けられる
請求項1~5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記工具キャリア(7)は、前記複数のレセプタクルのうちの1つに配置された1つの工具ホルダの機械加工位置と、工具ホルダ交換位置とで少なくとも可動であり、前記クランプ要素(22)を作動する作動装置(32)は、前記工具ホルダ交換位置の領域に配置され、前記作動装置(32)は、解除可能な結合部(29、30)を介して前記クランプ要素(22)に結合される
請求項1~6のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項8】
複数の工具ホルダが設けられ、前記複数の工具ホルダ(9)用の複数のレセプタクル(8)を含む可動な工具キャリア(7)を備える工作機械であって、
各工具ホルダ(9)および工具キャリア(7)は、互いに割り当てられた支持面(10、18)と、前記工具ホルダ(9)を前記工具キャリア(7)に取り付けるための装置とを含み、対応するレセプタクルに対して前記工具ホルダを正確に位置決めするための調整手段(12、13)が設けられ、
前記工具ホルダ(9)を取り付けるための前記装置は、前記工具ホルダまたは前記工具キャリアの前記支持面に直交して延びる少なくとも1つのタイロッド(19)を含み、前記工具ホルダおよび/または前記工具キャリアには、それぞれの前記タイロッドと係合し、前記工具ホルダが前記レセプタクルに挿入されているクランプ工程中に前記タイロッドに軸方向のクランプ力を加えるクランプ装置が割り当てられ、前記クランプ力により、前記工具ホルダの前記支持面と前記工具キャリアの前記支持面とが押圧し合い、
前記クランプ装置は、クランプ位置と解除位置との間で前記タイロッドに対して横方向に調整可能に支持され、かつ第1クランプ面(24)を設けるクランプ要素(22)を含み、
前記タイロッドには、前記クランプ要素(22)の前記第1クランプ面(24)が前記クランプ位置でセルフロック係合する第2クランプ面(35)が設けられ、
前記タイロッドは、軸方向に限定的に弾性歪み可能であり、前記クランプ要素(22)の前記クランプ位置で互いに係合している前記クランプ面(24、35)によって、必要な軸方向のクランプ力を生成する程度まで歪み、
前記クランプ要素(22)は、前記工具キャリア(7)の動きに応じて制御可能な結合部(29、30)によって、前記工具キャリア(7)に割り当てられた作動装置(32)に結合することができ、前記クランプ要素(22)は、前記作動装置(32)によって前記クランプ位置と前記解除位置との間で調整可能であり、
前記工具キャリア(7)は、前記複数のレセプタクルのうちの1つに配置された1つの工具ホルダの機械加工位置と、工具ホルダ交換位置とで少なくとも可動であり、前記クランプ要素(22)を作動する作動装置(32)は、前記工具ホルダ交換位置の領域に配置され、前記作動装置(32)は、解除可能な結合部(29、30)を介して前記クランプ要素(22)に結合され、
前記結合部は、前記クランプ要素(22)に連結された第1結合要素(29)を含み、前記第1結合要素(29)は、前記工具キャリア(7)の動きに応じて、前記作動装置(32)の相補的な第2結合要素(30)と自動的に結合または分離する
作機械。
【請求項9】
前記結合要素(29、30)の少なくとも一方は、フック状構成を有する
請求項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記工具キャリア(7)は、前記複数のレセプタクルのうちの1つに配置された1つの工具ホルダの機械加工位置と、工具ホルダ交換位置とで少なくとも可動であり、
前記工具キャリア(7)に複数の前記クランプ要素(22)用のロック手段が割り当てられ、前記ロック手段によって、前記機械加工位置にある前記工具ホルダ(9)用の少なくとも前記クランプ要素(22)を形状嵌合させ位置を維持するようにロックすることができる
請求項1~9のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記ロック手段は、前記工具キャリア(7)の一連のレセプタクル(8)に沿って延び、かつ前記工具ホルダ(9)の前記工具ホルダ交換位置の領域で無効である、複数の前記クランプ要素(22)をロックする少なくとも1つのロック要素(37)を含む
請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記ロック要素は、少なくとも前記工具ホルダ交換位置の領域に中断部(38)を有する不動的に支持されたリング(37)を含む。
請求項11に記載の工作機械。
【請求項13】
複数の工具ホルダ(9)用の複数のレセプタクル(8)を備える、特に請求項1~12のいずれか1項に記載の工作機械のための工具キャリア(7)であって、
各工具ホルダは、支持面(16)と、前記工具ホルダを取り付けるための装置と、対応するレセプタクルに対して前記工具ホルダを正確に位置決めするための調整手段(13)とを含み、前記工具キャリア(7)は、少なくとも1つの受け孔(11)をそれぞれの前記レセプタクル(8)の領域に有し、前記少なくとも1つの受け孔(11)は、前記支持面(10)に直交して延び、配置された工具ホルダのタイロッドを受け、前記工具キャリアには、前記レセプタクルに配置された工具ホルダ用のクランプ装置が割り当てられており、前記工具キャリア(7)は、前記複数のレセプタクル(8)の各々に対して縦ガイド(23)を含み、前記縦ガイド(23)内において、スライダとして構成された前記クランプ装置のクランプ要素(22)が、前記支持面に配置された工具ホルダのクランプ位置と解除位置との間で可動的に支持され、前記クランプ要素(22)には、前記クランプ位置で前記少なくとも1つの受け孔(11)内に延びる端部に第1クランプ面(24)が設けられ、前記第1クランプ面(24)は、配置された前記工具ホルダ上の割り当てられた第2クランプ面(35)とセルフロック方式で協働してくさび面として作用し、前記クランプ要素(22)は、工具ホルダ交換位置に配置され、かつ前記工具キャリアの動きに応じて自動的に結合および分離することができる結合部によって前記工具キャリアに割り当てられた作動装置(32)に、結合することができる
工具キャリア。
【請求項14】
回転軸(16)を中心に回転可能に支持されるタレットディスク(7)を備える
請求項13に記載の工具キャリア。
【請求項15】
前記結合部は、フック形状で係合する2つの結合要素(29、30)を含み、前記結合要素(29、30)は、複数の前記クランプ要素(22)が前記クランプ位置にある時に前記工具キャリア(7)が妨げられずに動くことを可能にする
請求項13または14に記載の工具キャリア。
【請求項16】
前記工具キャリア(7)に複数の前記クランプ要素(22)用のロック手段が割り当てられ、前記ロック手段によって、前記クランプ位置にある複数のクランプ要素(22)を形状嵌合させ位置を安定化するように前記位置にロックすることができる
請求項13~15のいずれか1項に記載の工具キャリア
【請求項17】
ロック手段は、複数の前記クランプ要素(22)をロックする少なくとも1つのロック要素(37)を含み、前記ロック要素(37)は、前記工具キャリア(7)の一連のレセプタクル(8)に沿って延び、前記工具キャリア(7)の前記工具ホルダ交換位置の領域で無効である
請求項16に記載の工具キャリア。
【請求項18】
前記クランプ要素は、矩形断面形状を有するスライダとして構成される
請求項13~17のいずれか1項に記載の工具キャリア
【請求項19】
スライダ(22)は、前記第1クランプ面(24)を有する一端部がフォーク形状に構成される
請求項18に記載の工具キャリア。
【請求項20】
特に請求項1に記載の工作機械および/または特に請求項13に記載の工具キャリアのための工具ホルダであって、工具キャリア(7)の前記支持面に当接する支持面(18)と、前記工具キャリアに取り付けるための装置と、前記工具ホルダを収容する前記工具キャリアの前記レセプタクルに対して前記工具ホルダを正確に位置決めするための調整手段(13)とを備え、前記工具ホルダを取り付けるための前記装置は、前記工具キャリアに割り当てられたクランプ装置と協働する、前記工具ホルダの前記支持面に直交して延びる少なくとも1つのタイロッドを含み、前記タイロッド(19)は、少なくとも、限定的に軸方向に弾性変形可能な長さの一部であり、前記工具キャリア(7)内に可動的に支持されるクランプ要素(22)の割り当てられたクランプ面(24)とセルフロック協働することでくさび面として作用する少なくとも1つのクランプ面(35)が設けられる
工具ホルダ。
【請求項21】
前記タイロッドは、前記クランプ面(35)が隣接する一方側にある軸方向に歪み可能な領域(33)を有する
請求項20に記載の工具ホルダ。
【請求項22】
前記クランプ面(35)は、前記タイロッドのリングショルダ部(34)に構成される
請求項21に記載の工具ホルダ。
【請求項23】
前記タイロッドは、前記工具ホルダ(9)の前記支持面(10)に対して中央に配置されたシャンク(19)であり、前記工具ホルダに挿入された工具用駆動シャフトが、必要に応じて前記シャンク(19)内に延びる
請求項20~22のいずれか1項に記載の工具ホルダ。
【請求項24】
前記クランプ面(35)には、前記クランプ面(35)の外縁に設けられ、当該クランプ面(35)から面外に向けて傾斜する走行斜面(340)が設けられる
請求項20~23のいずれか1項に記載の工具ホルダ。
【請求項25】
前記クランプ面(351)は、前記タイロッド(19)に配置される別個のクランプ部(40)に形成される
請求項20~24のいずれか1項に記載の工具ホルダ。
【請求項26】
前記クランプ部(40)は、前記タイロッド(19)と解除可能に連結される
請求項25に記載の工具ホルダ。
【請求項27】
前記クランプ部(40)は、リング、または前記タイロッド(19)を少なくとも部分的に取り囲むリングセグメントとして構成される
請求項25または26に記載の工具ホルダ。
【請求項28】
前記クランプ部(40)は、前記タイロッド(19)のショルダ部(34)または当該ショルダ部(34)に連結された部分(43)に支持される
請求項25~27のいずれか1項に記載の工具ホルダ。
【請求項29】
前記タイロッド(19)に対する前記クランプ部(40)の回転を阻止する平坦化部(440)を含む回転ロック手段が、前記クランプ部(40)に割り当てられる
請求項26~28のいずれか1項に記載の工具ホルダ。
【請求項30】
前記クランプ部(40)を前記タイロッド(19)に分離不能に保持させるロックねじ(47)を含む固定手段が、前記クランプ部(40)に割り当てられる
請求項26~29のいずれか1項に記載の工具ホルダ。
【請求項31】
前記クランプ部(40)は、少なくとも前記クランプ面(351)の領域において、耐摩耗材料からなる、または、そのような材料でコーティングされる
請求項25~30のいずれか1項に記載の工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の工具ホルダが設けられ、かついずれの場合も1つの工具ホルダ用の複数の受け装置またはレセプタクルを有する可動工具キャリアを備える工作機械に関する。各工具ホルダおよび工具キャリアは、互いに割り当てられた支持面と、工具ホルダを工具キャリアに取り付けるための装置とを含む。工具ホルダをそのレセプタクルに対して高い位置精度で位置決めする位置決め手段または調整手段が設けられる。
【背景技術】
【0002】
例えば、CNC回転旋盤またはCNCフライス盤および複合工作機械は、しばしば、それぞれの機械加工に必要な工具を保持する異なる工具ホルダを備えたタレットの形態の可動工具キャリアで動作する。その際、個々の工具ホルダを、タレットにおける対応する支持部のそれぞれの支持面に複数の固定ねじで固定することが知られている。この例が、特許文献1および特許文献2に記載されている。自動工具交換で動作する自動運転工作機械では、工具ホルダの固定ねじを緩めたり、締め直したりすることが厄介である。いずれの場合も工具ホルダが中央クランプ装置で動作すれば、自動工具ホルダ交換のための構造条件がより単純になる。中央クランプ部を備えた最もよく知られているクランプシステムのうちの1つは、DIN ISO 10889の対象となっている。工具の応力が高いが、高精度で実行しなければならない機械加工では、これらのクランプシステムで達成可能なクランプ力は、例えば星形タレットの支持面の十分正確な位置にそれぞれの工具ホルダを保持するには不十分である。
【0003】
位置決め精度に関して最も高い要件を満たす工具ホルダクイックチェンジシステムを備える工具クランプ装置が、特許文献3から知られている。工具ホルダを工具キャリアに取り付けるための装置は、互いに距離をとって配置された工具ホルダの支持面と、少なくとも1つの位置決め要素または調整要素とに直交して延びる少なくとも2つのタイロッドを含む。タイロッドは、工具ホルダまたは工具キャリアに別々に配置される。工具キャリアまたは工具ホルダに設けられたクランプ装置は、クランプ工程中にタイロッドに係合し、工具ホルダが工具キャリアのレセプタクルに挿入されると、タイロッドに軸方向のクランプ力を加える。クランプ装置は、工具キャリアまたは工具ホルダ内に可動的に案内され、かつウェッジギアを用いてタイロッドにより結合されるクランプロッドの形態のクランプ要素を含む。クランプ要素は、作動手段を介して工具キャリアおよび/または工具ホルダの外側からアクセス可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第19940330号明細書
【文献】独国特許出願公開第102008048206号明細書
【文献】独国特許出願公開第102014119482号明細書
【発明の概要】
【0005】
先行技術を起点として、本発明の目的は、自動工具交換のために構成され、工具キャリアへの工具ホルダの高い位置決め精度を提供しつつ、工具キャリアへの工具ホルダの単純かつ非常に有効なクランプ機能を特徴とする、工作機械と、工具キャリア、特にタレットと、それぞれ割り当てられた工具ホルダとを提供することである。
【0006】
この目的を解決するために、本発明による工作機械は請求項1の特徴を有し、本発明の工具キャリアは請求項14の主題であり、本発明の工具ホルダは請求項21の主題である。
【0007】
冒頭に述べた特徴を有する新たな工作機械では、工具ホルダを工具キャリアに取り付けるための装置は、工具ホルダまたは工具キャリアの支持面に直交して延びるように配置される少なくとも1つのタイロッドを含む。工具ホルダおよび/または工具キャリアには、それぞれのタイロッドと係合し、工具ホルダが工具キャリアに挿入されているクランプ工程中にタイロッドに軸方向のクランプ力を加えるクランプ装置が割り当てられる。軸方向のクランプ力により、工具ホルダの支持面と工具キャリアの支持面とが押圧し合う。
【0008】
クランプ装置は、クランプ位置と解除位置との間で調整可能に支持され、かつタイロッドに対して横方向に工具キャリアに配置される、少なくとも1つのクランプ要素を含む。クランプ要素は第1クランプ面を有し、一方、タイロッドには第2クランプ面が設けられる。クランプ位置において、クランプ要素の第1クランプ面は、第2クランプ面とセルフロック方式で係合する。タイロッドは、軸方向に限定的に弾性変形可能であり、クランプ要素がクランプ位置にある場合、互いに係合しているクランプ面を介して必要な軸方向のクランプ力を生成する分だけ歪む、または伸びる。クランプ要素は、工具キャリアの動きに応じて制御可能な結合部によって、工具キャリアに割り当てられた作動装置に結合することができる。クランプ要素は、制御可能な結合部によってクランプ位置と解除位置との間で調整することができる。
【0009】
クランプ要素に設けられたクランプ面と、割り当てられたタイロッドに設けられたクランプ面とはクランプ位置でセルフロック係合しているため、作動装置、またはクランプ要素をクランプ位置に保持するための他の保持装置によってクランプ要素に連続的な保持力を加えねばならないという必要性はなく、各クランプ要素は、工具キャリア、例えばタレットの動きおよびそれぞれの位置とは無関係にクランプ位置に留まる。例えば、工具ホルダの工具が、工具がワークピースに作用するタレットの動作位置にある場合、タレットの周囲の工具ホルダ交換位置は、工作機械およびそのカバーの空間要件に応じて任意かつ適切に選択することができる。軸方向に限定的に弾性変形可能なタイロッドは、単純な構造手段によって、それぞれの要件に応じた広範囲の高いクランプ力を実現することを可能にする。
【0010】
好ましい実施形態では、タイロッドは工具ホルダのシャンクとして形成され、一方、工具キャリアは、その支持面に直交して延びる受け孔を有する。受け孔は、それぞれのレセプタクルの領域に配置される。その際、被駆動工具用の工具ホルダの場合に工具駆動シャフトが貫通して延びる中央シャンクを含む、一般的な構造タイプの工具ホルダを使用することができる。
【0011】
工具キャリアは、特に複雑な追加の構造手段を必要としない。クランプ要素を受けるのに必要な縦ガイドのタレットへの取付けは、容易に行うことができる。
【0012】
本発明のさらなる有利な実施形態および変形形態は、従属クレームの主題である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本発明の主題の実施形態を示す。
図1図1は、本発明による旋盤の形態の工作機械を示す、簡略化された概略斜視図である。
図2図2は、図1による工作機械の工具タレットのタレットを示す、裏側から見た平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿って部分的に切断される図2のタレットを示す側面図である。
図4図4は、2つの工具ホルダを備えた図2および図3のタレットを示す、裏側から見た斜視図である。
図5図5は、図4の構成を示す別の斜視図である。
図6図6は、割り当てられたクランプ要素を有する図4による構成の工具ホルダについて、工具ホルダに対するクランプ要素の位置を図示しながら示す斜視図である。
図7図7は、割り当てられたクランプ要素を有する図4による構成の工具ホルダについて、工具ホルダに対するクランプ要素の位置を図示しながら示す斜視図である。
図8図8は、割り当てられたクランプ要素を有する図4による構成の工具ホルダについて、工具ホルダに対するクランプ要素の位置を図示しながら示す斜視図である。
図9図9は、割り当てられたクランプ要素を有する図4による構成の工具ホルダについて、工具ホルダに対するクランプ要素の位置を図示しながら示す斜視図である。
図10図10は、図9による構成を示す平面図である。
図11図11は、図10によるタレットにおける追加のロックリングを有する変形形態を示す、図4に対応する斜視図である。
図12図12は、図11による構成を示す、図5に対応する別の斜視図である。
図13図13は、図4による構成の工具ホルダの変形形態を示す斜視図である。
図14図14は、環状クランプ部を取り外した状態の図13による工具ホルダを示す斜視図である。
図15図15は、図13による工具ホルダの環状クランプ部を示す、下から見た斜視図である。
図16図16は、図15による環状クランプ部を示す、上から見た斜視図である。
図17図17は、図13による工具ホルダを備えた図4または図5によるタレットが軸方向に切断された様子を示す部分斜視図である。
図18図18は、図17による構成の別の部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に例示的かつ概略的に示した回転旋盤は、主軸台2およびタレット3がそれぞれX方向およびZ方向に調整可能に支持されるベース1を有する機械フレームを備える。同様にZ方向に可動な主軸スリーブ4が、主軸台2に割り当てられる。主軸スリーブ4は、主軸台2に支持された主軸6のチャック5にクランプ可能な、さらには図示していないワークピースを支持する働きをする。工具タレット3は、図1に概略的に示すように、異なる機械加工用途のために構成される工具ホルダ9用レセプタクル8が周囲に設けられる工具キャリアを形成するタレットディスク7を含む。
【0015】
多角形が好ましいタレットディスク7のレセプタクル8の各々は、平坦な支持部10(図2図3)で構成され、その平坦な支持部10を、中央円筒受け孔11が工具ホルダ9のシャンク分だけ貫通して延びる。さらに、各支持面10には、横方向に配置され、かつ割り当てられた工具ホルダ9に設けられた位置決め要素または調整要素13(例えば図6を参照)のために設けられた受け溝12、12aが設けられる。調整要素13は、受け溝12、12aと共に、配置された工具ホルダ9の的確かつ正確な位置を確実にする。
【0016】
タレットディスク7は、裏側から突出するフランジ14によって、駆動装置を含む工具タレット3の筐体15内の軸16を中心に回転可能に支持される。知られているように、タレットディスク7は、工具ホルダ9の少なくとも1つが機械加工位置に配置され、その機械加工位置に設けられた工具がワークピースに作用し得るように、駆動装置によってクロック制御されて回転軸16を中心に回転することができる。
【0017】
異なる工具ホルダ9のうちの1つの構造タイプを、図6図10に例示的に示す。示した工具ホルダ9は、調整要素13が軸方向に突出する平坦な支持面18で構成される筐体17を含む。調整要素13は、中央に配置され、かつ工具ホルダ9がタレットディスク7上に配置された時にそれぞれのレセプタクル8の受け孔11に収容される円筒シャンク19を取り囲む。シャンク19を貫通して延びる駆動シャフトが、筐体17内に回転可能に支持され、かつ駆動される工具を受けるコレット装置20に対して設けられる。工具駆動シャフトは、シャンク19を越えて延びるその端部で、タレットディスク7の領域に配置された工具駆動装置用の結合片21を支持する。工具駆動装置は、機械加工工程のために機械加工位置にある工具ホルダ9の工具を駆動する。
【0018】
工具ホルダ9をタレットディスク7に取り付けるために、シャンク19は、支持面18に直交して延びるタイロッドとして構成される。タイロッドは、タレットディスク7に設けられたクランプ装置と協働する。このクランプ装置は、クランプ位置と解除位置との間で、シャンク19に対して横方向に調整可能に支持されるクランプ要素を含む。クランプ要素は、それぞれのレセプタクル8(図2)の縦ガイド23内に移動可能に案内されるスライダ22の形態を有することが好ましい。
【0019】
スライダ22の断面は矩形であり、スライダ22は、互いに平行に配置され、かつスライダ22の広い方の側面を形成する対向面24、25を備えた略板状である。これらの表面24、25のうちのタレットディスク7の回転軸16に面する下面24を、第1クランプ面と呼ぶ。縦ガイド23の各々には、平行面によって制限されるスリット状開口部26が設けられる。開口部26は、タレットディスク7の支持フランジ14に面する裏側から受け孔11内に延び、それぞれのスライダ22を摺動的に取り付ける方法で収容するように寸法付けられる。スリット状開口部26の上部制限壁230の位置は、割り当てられたレセプタクル8の支持面10に対して厳しい許容誤差で形成される。スライダ22には、全体として略フォーク状の形を有するように、半円形切欠部28が設けられる。スライダ22は、切欠部28の反対側のタレットディスク7の外部に配置された第1結合要素29と連結される。結合要素29は、例えば、図7および図9から明らかなように、タレットディスク7の周囲に向かって開口するフックの形状を有する。スライダ22の厚さ、すなわち、スライダ22の広い方の側面24と25との距離も、第1クランプ面24と支持面10との軸方向距離が厳しい許容誤差の定義された寸法に対応するように、厳しい許容誤差で形成される。
【0020】
第1結合要素29に第2結合要素30を係合させることができる。第2結合要素30は、作動ロッド31により作動装置32に結合され、作動装置32は、結合要素29、30を介してスライダ22を縦ガイド23内においてクランプ位置と解除位置との間で前後に調整する、または動かす。作動装置32は、例えば、油圧シリンダ、または選択的に、外部から制御可能であり、かつ上述のように作動ロッド31の直線前後運動の開始を可能にする別の機械もしくは電気機械駆動要素を含み得る。相補的結合要素29、30のフック形状は、図10に参照される2つの結合要素29、30が、妨げられない方法でスライダ22に対して横方向に移動し得るように構成される。この理由により、結合要素29、30は、回転軸16を中心とするタレットディスク7の回転運動によって、互いに係合させたり、係合解除させたりすることができる。
【0021】
工具ホルダ9のシャンク19は、軸方向に限定的に弾性歪み可能または伸縮可能に構成される。この目的のために、図示した実施形態では、シャンク19は、歪み要素33を形成する縮径部で構成される。代替方法として、シャンク19の弾性歪み性または伸縮性は、他の手段、例えば、それぞれ薄くした壁厚、または、要求される歪み性が結果的に生じる意図的なカットもしくは同等要素によっても実現することができる。
【0022】
歪み要素33は、工具ホルダ9から遠ざかる方を向いた側のリングショルダ部34によって制限される。リングショルダ部34は、シャンク19の軸に直交して延びる第2クランプ面35を形成する。この第2クランプ面35は、工具ホルダ9がレセプタクル8内に配置されている状態で、割り当てられたスライダ22の下側にある第1クランプ面24が、少しの所定量だけシャンクの第2クランプ面35より下に配置されるように、位置決めされる。その際、縦ガイド23内でタレットディスク7に対して径方向に支持されるスライダ22によってクランプ面24、35が互いに重なり合って移動する場合、シャンク19は、工具ホルダ9の支持面18をタレットディスク7の支持面10に確実に押圧するのに必要な所定のクランプ力が生じるような量だけ、歪み要素33の領域で軸方向に歪む、または伸びる。したがって、歪んだシャンク19は、工具ホルダ9の筐体17と中央で係合するタイロッドとして働く。
【0023】
スライダ22の第1クランプ面24および/またはシャンク19の第2クランプ面35の外縁にはそれぞれ、スライダ22がシャンク19の第2クランプ面35上を移動しやすくなる走行斜面330または340が設けられる。
【0024】
スライダ22の略半円形切欠部28は、スライダ22がクランプ位置にある状態で、その第1クランプ面24がシャンク19の第2クランプ面35に確実に全面接触するように、径方向の遊びを除けばシャンク19の歪み要素33の直径と一致するフォーク幅を有する。したがって、第1クランプ面24は、通常、円筒歪み要素33の中心軸を越えて径方向に延びる。
【0025】
記載したクランプ装置の機能は、以下のとおりである。
【0026】
スライダ22が、図6による後退した解除位置にある状態からスタートして、工具ホルダ9のシャンク19を、自動工具ホルダ交換装置またはオペレータによる手動によって、正確な向きにタレットディスク7の割り当てられたレセプタクル8の受け孔11に挿入した。
【0027】
続いて、作動装置32をそれぞれ制御することによって、スライダ22の第1クランプ面24が走行斜面330、340を介してシャンク19の第2クランプ面35上を摺動するように、シャンク19に対するスライダ22の前方向の移動が開始される。それにより、シャンク19は径方向内方に引っ張られ、その結果、歪み要素33によって、工具ホルダ9をタレットディスク7に押圧する必要な軸方向のクランプ力が生じる。スライダ22が第2クランプ面35上を走行している間の状況を図7に示す。
【0028】
第1クランプ面24がシャンク19の第2クランプ面35上を走行した後、スライダ22は、図8に示す位置に前方に移動する。この位置では、2つのクランプ面の確実な完全係合が保証される。記載したようなスライダ22の前方摺動を容易にするために、切欠部28は、図8に示すように、その前方端部に挿入斜面36を含み得る。
【0029】
2つのクランプ面24、35は平行面に配置されているため、スライダ22は、図8による挿入されたクランプ位置において、セルフロック方式でシャンク19と係合した状態で保持される。したがって、作動装置32が、割り当てられたスライダ22に保持力を加える必要はない。工具ホルダ9がクランプされている時、フック形状に構成された結合要素29、30はタレットディスク7の回転運動を妨げないため、タレットディスク7は、任意の角度位置において作動装置32の影響を受けることなく回転することができる。
【0030】
図示した実施形態では、第1クランプ面24および第2クランプ面35は、上述のように互いに平行に方向付けられている。また、例えば、摩耗または製造許容誤差の補償に適切であることから、それぞれのシャンク19に対してスライダ22を再調整することができるように、これらの面が互いに対して小さな角度をなす他の実施形態も考えられる。このために、フック形結合要素29、30は、それらのフック開口部に十分大きな遊びを有する。しかしながら、クランプ面のセルフロック係合は、いずれの場合も必ず保証される。
【0031】
図示した実施形態では、スライダ22は、タレットディスク7の裏側から操作される。原則的には、操作のために、スライダがタレットディスクの表側からアクセス可能な実施形態が可能である。また、第2クランプ面35がシャンク19のリングショルダ部によって形成される必要はない。例えば、溝、段などの形状の他の構成も可能である。いずれの場合も、シャンク19は、工具ホルダと中央で係合するタイロッドとして働き、それによって、クランプ力の影響およびクランプ要素の作動によって工具ホルダが変形しないこと、そして、支持面10、18に直交するクランプ力は有効であることが保証される。
【0032】
記載した工具キャリアおよび工具ホルダを備えた新たな工作機械は、特に、自動工具交換のために構成される。このために、タレットディスク7の特定の工具交換位置は、機械のメーカによって定義される。タレットディスク7のこの工具ホルダ交換位置では、交換されるそれぞれの工具ホルダは、機械加工位置にある別の工具ホルダがその工具で機械加工工程を行っている間の支障のない工具ホルダ交換を保証するために上手くアクセス可能なものとする。工具ホルダ交換位置および機械加工位置は、直結していない。交換される工具ホルダのクランプ装置は、妨げられない方法で機械オペレータまたはそれぞれの処理システムによって確実に操作可能でなければならない。
【0033】
工具ホルダ9を交換するために、タレットディスク7は、作動装置32が配置される工具ホルダ交換位置に動く。その際、取り外される工具ホルダ9のスライダ22の結合要素29、30は、互いに係合する。ここで、工作機械の制御または機械オペレータによって、作動装置32は操作される。作動装置32は、スライダ22が図6による解除位置に達する程度まで、作動ロッド31および結合部29、30を介してタレットディスク7からスライダ22を抜き出す。したがって、工具ホルダ9はロック解除される。ここで、工具ホルダ9は、タレットディスク7から取り外すことができ、図6図10に関して既に記載した方法でクランプされる別の工具ホルダに取り替えることができる。このために、スライダ22は、タレットディスク7に挿入されるように前方に移動し、それによって(図6参照)、工具ホルダ9は挿入斜面330、340によって下方に引っ張られる。スライダ22は、シャンク19のクランプ面35を押圧し、工具ホルダ9がタレットディスク7の支持面10にクランプされるように工具ホルダのシャンクの歪み要素33を変形させる。これで、別の工具ホルダに交換することができる。すなわち、タレットディスク7により、代わりに付与された新たな工具ホルダが機械加工位置に動き、機械加工工程が開始される。
【0034】
既に述べたように、作動装置32の駆動の種類は、目的に応じて選択されなければならない。スライダ22への機械的に有効な連結だけが存在しなければならない。この連結は、図示したように、ロッドの配置によって直接確立することができる。しかし、その連結は、1以上の方向変換装置を介しても確立することができる。工具ホルダをクランプするためのスライダの直線運動だけが実現されなければならない。既に述べた油圧シリンダの代わりに、例えば、モータの回転運動を直線運動に変換するために、ねじ棒を使用することもできる。
【0035】
作動装置32は、工作機械に一体化される、例えば脱着不能に取り付けられるため、その制御は、工作機械自体によって行われることが好ましい。その際、確実に、不適当な時点で工具ホルダ交換が開始されないようにすることができる。工具ホルダ交換の開始は、機械オペレータが制御部にそれぞれのコマンドを入力するという点から、機械オペレータまたは機械制御によって実行することができる。工具ホルダ交換は、また、機械の処理システムによっても自動的に実行することができ、処理システムの制御部は、工具ホルダ交換を制御するために工作機械の制御部に結合される。
【0036】
工具ホルダ9をタレットディスク7にクランプするクランプ力は、シャンク19の弾性変形によって生じる。しかしながら、基本的に、割り当てられたクランプ要素と上述した方法で協働し、シャンク19に取って代わる、またはシャンク19に追加して設けられる軸方向に弾性変形可能な複数のタイロッドが、1つの工具ホルダに割り当てられる実施形態が基本的に可能である。
【0037】
シャンク19は、特定の径方向の遊びを有してタレットディスク7の受け孔11に収容される。その際、調整要素13が受け溝12と協働することで確実になるタレットディスク7のそれぞれの支持面10への工具ホルダ9の正確な位置決めが、ぴったりした受け孔に押し込まれたシャンクによって影響を受け得ることは回避される。特に、シャンクの直径が小さい場合、スライダ22が挿入される時に受け孔11内におけるスライダの反対側にシャンクが撓まないように、そちらの側にスライダ用カウンタ支持部を設けることは有利になり得る。そのようなカウンタ支持部は、例えば、図9に単に概略的に示すような別個のカウンタ孔要素350、例えば、受け孔11内でわずかに突出するねじ付きボルト、または受け孔11の内壁の少なくとも一部におけるそれぞれのわずかな横オフセット部によって形成することができる。
【0038】
既に説明したように、スライダ22は、この目的のために作動装置32を作動させる必要なく、クランプ位置に摩擦嵌合で保持される。例えば、強い振動が生じる機械加工工程中に、例えば、断続切削によるフライス作業中、クランプ位置にあるスライダ22の意図しない解除を回避する追加のロック手段を設けることは有利になり得る。そのようなロック手段を図11図12に例示的に示す。
【0039】
図11図12は、タレットディスク7の図4および図5の図に対応する斜視図を示す。したがって、同様の部品は、同じ参照番号で参照し、繰り返して説明しない。
【0040】
ロック手段は、例えば、工具タレット3(図1)の筐体15上のタレットディスク7の裏側に不動的に配置される、矩形断面を有するリング37を含む。リング37は、スライダ22が外方へ(図12を参照すると、右へ)、すなわち、タレットディスク7の裏側から遠ざかるように動くのを阻止するように、クランプ位置にあるスライダのフック形結合要素29に沿って短い軸方向距離だけ延びる。リング37は、1箇所に中断部38を有し、中断部38の幅は、図11から明らかなように、この位置に配置された作動装置32の結合要素30、29が通過できるように寸法付けられる。したがって、リング37は、タレットディスク7の周囲に沿った任意に選択可能な工具ホルダ交換位置での工具ホルダ交換を妨害しないように位置決めされる。
【0041】
工具ホルダ交換終了後、それぞれのスライダは、図9によるクランプ位置に完全に移動し、それによって、タレットディスク7は、別の工具ホルダの工具が機械加工位置に達するように自由にクロック制御することができ、工具ホルダ交換位置に達した工具ホルダは、既に説明したような方法で交換することができる。
【0042】
本発明は、星形タレット3の形態の工具キャリアに関して例示的に記載した。しかしながら、本発明は、異なるように設計された工具タレットにも適しており、それらの工具を、それぞれの機械加工位置または工具ホルダ交換位置に持っていくために直線運動を行う工具キャリアに使用することもできる。
【0043】
タレットディスク7および工具ホルダ9の開示した実施形態に基づいて説明したように、工具ホルダ9をクランプ動作中、割り当てられたスライダ22は、その第1クランプ面24で、工具ホルダ9のシャンク19によって形成されたタイロッドの第2クランプ面35上を摺動する。それによって、工具ホルダ9を正しい位置にクランプするのに必要なタイロッドとして働くシャンク19に比較的大きなクランプ力を伝達することができるように、スライダ22は、クランプ面24の反対に設けられた広い方の側面25を介して、縦ガイド23のスリット状開口部26の上部制限壁230に支持される。これは、互いに協働するクランプ面24、35および25、230が、ある方法で設計され、工作機械のより長い動作期間中もこれらの面の摩耗によって機能が影響を受けないような協働材料からなることを意味する。したがって、面24、25、35および230には、例えば、好ましくは硬質材料(例えば、TiC、TiNなど)からなる適切なコーティングを個々にまたは対で設けることができる。さらに、スライダ22、またはスライダ22を収容する縦ガイド23のスリット状開口部26に挿入部を設けることも可能であり、挿入部は、耐摩耗材料からなる、または、そのような材料でコーティングされ、面24、25、230および35を設ける。
【0044】
図13図14には、互いに係合しているスライダ22および工具ホルダ9の機能面同士の耐摩耗性に関するこれらの考慮事項を特定の手段によって検討する工具ホルダの実施形態を示す。
【0045】
工具ホルダ9は、基本的な構成において、図6図10を参照して説明した工具ホルダ9と一致し、一方、図17図18に示した工具ホルダ9用の割り当てられたクランプ装置を有するタレットディスク7は、図4および図5による実施形態と一致する。したがって、同一部品は同じ参照番号で明記し、繰り返して説明しない。
【0046】
第2クランプ面35は、図6図10による工具ホルダ9の実施形態ではシャンク19のリングショルダ部34に直接形成されているが、図13図14によるこの実施形態における参照番号351の第2クランプ面は、別個の環状クランプ部40に形成されている。特に、詳細については図15図16から明らかである。クランプ部40は、耐摩耗材料、例えば硬質材料からなる。また、クランプ部40は、既に上述したように、そのクランプ面351に耐摩耗コーティングを担持して、有利な表面協働をもたらすこともできる。クランプ部40は、リングセグメントとして構成される。すなわち、クランプ部40は略馬蹄形状を有し、その内径は、クランプ部40が横から歪み要素33上を摺動できるように、クランプ面351の領域において円筒歪み要素33の直径と一致する。クランプ部40が歪み要素33上を摺動する状態では、クランプ部40は、正確に仕上げられた第2クランプ面351の反対の下部支持面41が、シャンク19のリングショルダ部34のクランプ面35と全面接触している図13に示す位置にある。支持面41は、正確に仕上げられる。平行クランプ面351からのその軸方向距離は、取付状態で第2クランプ面351がスライダ22のクランプ面24と既に記載した方法で協働することができるように正確に定義される。
【0047】
回転がロックされる方法で環状クランプ部40をシャンク19に保持するために、シャンク19のリングショルダ部34上にリングフランジ43が形成される。リングフランジ43は、その周囲に、クランプ部40の環状ショルダ部45によって係合され得るリング溝44が設けられ、その結果、クランプ部40は、摺動によって取り付けられた状態で軸方向に不動的にシャンク上に保持されるようになっている。さらに、リングフランジ43の周囲面に少なくとも1つの平坦化部444が設けられ、その平坦化部444に、クランプ部40の内側の対応する平坦化部が割り当てられ、シャンク19上を摺動するクランプ部40の回転をロックする。タレットディスク7上のシャンクの複数の回転位置に工具ホルダ9を選択的にクランプすることができるように、リングフランジ43の周囲に分布したそのような平坦化部440を複数設けることもできるため、例えば、シャンクの直径方向反対側において、平坦化部440に第2の対応する平坦化部を割り当てることができる。
【0048】
平坦化部440の領域に、径方向のねじ孔45が設けられる。クランプ部40には、縁部に開口する開口部46が設けられる。取付状態では、ねじ孔45は開口部46と面一である。クランプ部40をシャンク19に分離不能に保持する図17に示すロックねじ47を、ねじ孔45にねじ込むことができる。
【0049】
図14に示す状態から開始して、タレットディスク7に工具ホルダ9を挿入する前に、馬蹄形クランプ部40にリングフランジ43上を摺動させて(図14を参照すると、右に約90°回転させる)、ロックねじ47によって図13によるこの状態で固定することができる。
【0050】
摩耗のために必要または有利であれば、環状または馬蹄形クランプ部40を簡単に取り替えることができる。さらに、クランプ工程中に生じるクランプ力は、それぞれの要件に適用させることができ、または、製造許容誤差は、それに応じて面41と351との距離を調整することによって、軸方向の厚さが異なるクランプ部で補償することができる。例えば図17図18から明らかなように、クランプ工程中にスライダ22によって環状クランプ部40がシャンク19から押し出されないように、環状クランプ部40の閉じた周領域は、スライダ22の反対に位置決めされる。
【0051】
クランプ部40は、多部品構成を有することができる。リングフランジ43が、省略される、または、例えばシャンク19の溝などによって置き換えられる、工具ホルダの実施形態が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18