(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】乗員検知装置、および、乗員検知システム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20240910BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240910BHJP
G01S 13/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01V3/12 A
B60N2/90
G01S13/08
(21)【出願番号】P 2020148937
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松井 研輔
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-194922(JP,A)
【文献】特開2019-086354(JP,A)
【文献】特開平08-169289(JP,A)
【文献】特表2002-512147(JP,A)
【文献】特開2012-225825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0092023(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
G01S 13/00 - 13/95
G01V 3/00 - 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に配置され、前記移動体の座席に乗員が着座しているか否かを電波によって検知する乗員検知装置であって、前記乗員検知装置の動作モードには、初期動作モード、検知動作モード
、及び更新動作モードが含まれ、
前記電波を送信する送信部と、
前記座席に着座する乗員、または前記座席に具備もしくは隣接する電波反射体から反射される反射波を受信する受信部と、
前記初期動作モードにおいて、前記送信部から送信された
前記電波の送信時から、
前記反射波が受信されるまでの反射時間によって
前記乗員が
前記座席に着座しているか否かを決定するための反射時間判定値を決定する比較解析部と、
前記検知動作モードにおいて、前記反射時間が前記反射時間判定値よりも小さい場合には、
前記乗員が前記座席に着座していると判定し、
前記反射時間が前記反射時間判定値よりも大きい場合には、
前記乗員が前記座席に着座していないと判定する検知判定部
と、
前記初期動作モード又は前記更新動作モードにおいて、前記座席と前記乗員検知装置との間の前記電波の伝搬経路に電波障害物がない状態で、前記座席に具備または隣接する電波反射体からの前記反射波が受信されるビーム方向を、前記電波の送受信方向を決定するための送受信指向性情報として決定する指向性制御部と、を備え、
前記比較解析部は、前記送受信指向性情報にしたがって、前記座席と前記乗員検知装置との間の前記電波の伝搬経路に電波障害物がない状態で、前記電波反射体に送信した前記電波の送信時から前記電波反射体からの前記反射波の受信までの時間を示す基準反射時間を決定し、前記送受信指向性情報にしたがって前記電波反射体と前記乗員検知装置との間の、前記座席に着座した前記乗員に送信した前記電波の前記反射波の受信までの時間を示す被検反射時間を決定し、前記基準反射時間と前記被検反射時間との間の時間から前記反射時間判定値を決定する、
乗員検知装置。
【請求項2】
前記乗員検知装置が前記更新動作モードで動作する場合には、
前記指向性制御部は、前記座席と前記乗員検知装置との間の
前記電波の伝搬経路に
前記電波障害物がない状態で、前記座席に具備または隣接する
前記電波反射体からの前記反射波が受信されるビーム方向をあらたな送受信指向性情報として決定し、
前記比較解析部は、前記あらたな送受信指向性情報にしたがって、前記基準反射時間を再計測し、前記あらたな送受信指向性情報にしたがって、前記被検反射時間を再計測し、再計測された前記基準反射時間と前記被検反射時間との間の時間をあらたな反射基準判定値として更新する請求項
1に記載の乗員検知装置。
【請求項3】
前記送受信指向性情報は、前記反射波の振幅が最も大きいビーム方向を示す情報、または、前記反射波が測定可能な領域の中央部に前記電波を送信させるように向けるビーム方向を示す情報である請求項2に記載の乗員検知装置。
【請求項4】
前記乗員検知装置が前記検知動作モードで動作する場合に、
前記比較解析部において、
前記反射波を判定できない、または、
前記反射波の振幅のピーク値があらかじめ定められた値よりも小さい場合には、前記指向性制御部によってビーム方向を変化させ、前記反射波が測定可能な領域を探索し、前記比較解析部によって前記反射波が測定可能な領域の形状から、前記領域の形状が、乗員が着座している形状であるか否かを解析し、前記検知判定部によって前記領域の形状から乗員が前記座席に着座しているか否かを判定するように制御させる異常値制御部を含む請求項
1~
3のいずれか一項に記載の乗員検知装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の乗員検知装置と、
前記移動体に配置された前記座席と、
前記電波の指向性アンテナを含み、
前記乗員検知装置は、前記座席の前方であって、前記座席と前記乗員検知装置との間の
前記電波の伝搬経路に電波障害物がない前記移動体の内部に配置され、
前記
電波反射体は前記座席の背もたれ部分に具備される乗員検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員検知装置、および、乗員検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を含む移動体の乗員を検知する方法には、従来から電波を送信波として送信し、物体で反射した電波を反射波として受信してセンサ信号を生成する等の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の乗員状態検知システムは、電波センサと、信号処理装置と、離席検知部と、報知部と、を備える。電波センサは、複数の座席のいずれかの上方に取り付けられ、電波を送信波として送信し、物体で反射した電波を反射波として受信してセンサ信号を生成する。信号処理装置は、センサ信号に基づいて検知エリア内の物体の動きから物体が人であるか否かを判定して、判定結果を出力する判定処理を実行する。そのために、乗員の微細な動きによる変化を検知するために、サンプリングが複数回必要であり、十分な検知時間を要する。離席検知部は、人が前方座席から離れる離席状態が発生したか否かを検知する。報知部は、離席検知部が離席状態の発生を検知したときに、信号処理装置が検知エリア内の物体が人であると判定すれば警報を出力する。なお、信号処理装置は、センサ信号に基づいて人の呼吸の特徴の有無を検知することで、検知エリア内に人が存在するか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の乗員状態検知システムでは、周波数解析等の演算処理が必要となるので乗員の状態の検出に時間を要する。また、周波数解析等の演算処理が不要となるシステムと比べて、上記の乗員状態検知システムは構成が複雑となりコストが増大することが懸念される。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、車両等の移動体において、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置および乗員検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る、移動体に配置され、前記移動体の座席に乗員が着座しているか否かを電波によって検知する乗員検知装置であって、前記乗員検知装置の動作モードには、初期動作モード、検知動作モードが含まれ、前記乗員検知装置が検知動作モードで動作する場合には、送信された電波の送信時から、反射体からの反射波が受信されるまでの反射時間によって乗員が座席に着座しているか否かを決定するための反射時間判定値を決定する比較解析部であって、前記反射体は前記座席に着座する乗員または前記座席に設置される被検反射体である場合と、前記座席に具備または隣接する反射体である場合がある前記比較解析部と、送信された電波の送信時から前記反射体からの反射波が受信されるまでの反射時間が前記反射時間判定値よりも小さい場合には、乗員が前記座席に着座していると判定し、送信された電波の送信時から前記反射体からの反射波が受信されるまでの反射時間が前記反射時間判定値よりも大きい場合には、乗員が前記座席に着座していないと判定する検知判定部を含むことが好ましい。
【0008】
前記乗員検知装置が初期動作モードで動作する場合には、電波の送受信方向を決定するための送受信指向性情報を決定する指向性制御部であって、前記座席と前記乗員検知装置との間の電波の伝搬経路に電波障害物がない状態で、前記座席に具備または隣接する反射体からの反射波が受信されるビーム方向を送受信指向性情報として決定する前記指向性制御部をさらに含み、前記比較解析部は、前記送受信指向性情報にしたがって、前記座席と前記乗員検知装置との間の電波の伝搬経路に電波障害物がない状態で、前記座席に具備または隣接する反射体に送信した電波の送信時から前記反射体からの反射波の受信までの時間を示す基準反射時間を決定し、前記送受信指向性情報にしたがって前記反射体と前記乗員検知装置との間の、前記座席に着座した乗員または前記座席に設置された被検反射体に送信した電波の反射波の受信までの時間を示す被検反射時間を決定し、前記基準反射時間と前記被検反射時間との間の時間から前記反射時間判定値を決定することが好ましい。
【0009】
さらに更新動作モードを含み、前記乗員検知装置が前記更新動作モードで動作する場合には、前記指向性制御部は、前記座席と前記乗員検知装置との間の電波の伝搬経路に電波障害物がない状態で、前記座席に具備または隣接する反射体からの反射波が受信されるビーム方向をあらたな送受信指向性情報として決定し、前記比較解析部は、前記あらたな送受信指向性情報にしたがって、前記基準反射時間を再計測し、前記あらたな送受信指向性情報にしたがって、前記被検反射時間を再計測し、再計測された前記基準反射時間と前記被検反射時間との間の時間をあらたな反射基準判定値として更新することが好ましい。
【0010】
前記送受信指向性情報は、前記反射波の振幅が最も大きいビーム方向を示す情報、または、前記反射波が測定可能な領域の中央部に前記電波を送信させるように向けるビーム方向を示す情報であることが好ましい。
【0011】
前記乗員検知装置が前記検知動作モードで動作する場合に、前記比較解析部において、反射波を判定できない、または、反射波の振幅のピーク値があらかじめ定められた値よりも小さい場合には、前記指向性制御部によってビーム方向を変化させ、前記反射波が測定可能な領域を探索し、前記比較解析部によって前記反射波が測定可能な領域の形状から、前記領域の形状が、乗員が着座している形状であるか否かを解析し、前記検知判定部によって前記領域の形状から乗員が前記座席に着座しているか否かを判定するように制御させる異常値制御部を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の他の態様に係る乗員検知システムは、乗員検知装置と、前記移動体に配置された前記座席と、前記電波の指向性アンテナを含み、前記乗員検知装置は、前記座席の前方であって、前記座席と前記乗員検知装置との間の電波の伝搬経路に電波障害物がない前記移動体の内部に配置され、前記反射体は前記座席の背もたれ部分に具備されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両等の移動体において、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置および乗員検知システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る乗員検知システムの一例を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る車両の座席の一例を示す模式図である。
【
図3】本実施形態に係る乗員検知装置において受信される反射波の一例を示す測定結果である。
【
図4】本実施形態に係る乗員検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5A】本実施形態に係る乗員検知装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5B】本実施形態に係る乗員検知装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5C】本実施形態に係る乗員検知装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る乗員検知装置の構成のその他の一例を示すブロック図である。
【
図7】本実施形態に係る乗員検知システムのその他の一例を示す模式図である。
【
図8】本実施形態に係る
図7の乗員検知システムにおける車両の座席に関連する構成の一例を示す模式図である。
【
図9】比較例に係るドップラー効果の原理の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に係わる乗員検知装置および乗員検知システムの一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0016】
なお、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0017】
(乗員検知システムの概要)
本実施形態に係わる乗員検知システムは、少なくとも1つの電波送信部、少なくとも1つの電波反射部、及び、少なくとも1つの電波受信部を含む。電波送信部と電波反射部との間のシート等の座席に乗員が着座しない場合には、電波送信部から送信された電波は、電波反射部で反射され、当該反射された電波を電波受信部で受信する。電波送信部と電波反射部との間のシート等の座席に乗員が着座する場合には、電波送信部から送信された電波は、乗員で反射され、当該反射された電波を電波受信部で受信する。電波反射部で反射された電波と乗員で反射された電波との電波伝搬経路は異なるために、電波が送信されてから電波受信部で受信されるまでの時間は異なる。本実施形態に係わる乗員検知システムは、電波が送信されてから電波が受信されるまでの時間の相違によって、乗員が着座しているか否かを検知することを可能とする。なお、電波送信部と電波受信部は電波送受信部として構成されることも可能である。
【0018】
(乗員検知システムの一例)
乗員検知システムの一例の一部を
図1に模式図として示す。
図1は本実施形態を移動体としての車両の助手席に適用した場合の一例である。乗員検知装置100と乗員J1との間に電波の障害物がないように、乗員J1の前方に乗員検知装置100は配置される。一例として、
図1に示すように、乗員検知装置100は車両のインストルメントパネルIPの表面に取り付けられてもよい。乗員J1が着座するシートS1の背もたれ部分SS1の背面にはマガジンラックM1が配置され、マガジンラックM1は主要な電波反射体として機能する場合がある。また、乗員検知装置100は無線通信端末として機能することが可能であってもよい。また、乗員検知装置100はレーダとして機能することも可能である。なお、乗員検知装置100から送信される電波は電磁波であってもよい。また、本実施形態を移動体としての車両の図示しない運転席および後部座席に適用することも可能である。
【0019】
図1においては、乗員検知装置100から電波が送信されると、乗員J1が着座していない場合には、電波の主要成分がマガジンラックM1によって反射され、反射波が乗員検知装置100によって受信される。この場合には、電波は距離x1を往復することになる。また、乗員J1が着座している場合には、電波が乗員J1の体の表面によって反射され、反射波が乗員検知装置100によって受信される。この場合には、電波は距離x2を往復することになる。したがって、乗員J1が着座している場合と、乗員J1が着座していない場合とでは、電波の伝播距離が異なるために、乗員検知装置100から電波が送信されてから受信されるまでの時間が異なる。乗員検知装置100は、この異なる送受信時間差によって、乗員J1が着座しているか否かを判定することが可能になる。なお、マガジンラックM1は樹脂製であることが好ましいが、マガジンラックM1が電波反射体、または、マガジンラックM1の構成物に電波反射体が含まれていてもよい。例えば、マガジンラックM1の内部に電波反射体シートが含まれていてもよい。また、電波反射体の一例には、金属が挙げられる。
【0020】
また、乗員検知装置100から送信される電波は、乗員J1を検知するための精度を高めるために、指向性を有することが好ましい場合がある。例えば、乗員検知装置100から送信される電波の放射範囲は、乗員J1の胴体幅と同一、同程度、または、胴体幅以下であることが好ましい場合がある。乗員検知装置100から送信される電波の放射範囲が広すぎると、乗員J1が着座している場合に、乗員J1からの反射波を乗員検知装置100が充分な強度で受信できない可能性があり、これを防ぐことが必要になる場合があるからである。また、乗員検知装置100から送信される電波の放射範囲が広すぎると、シートS1や乗員J1の体の表面以外の物体からの反射波を乗員検知装置100が受信し、S/N比が低下する可能性があり、これを防ぐことも必要になる場合がある。また、乗員検知装置100から送信される電波の放射範囲の垂直方向は、マガジンラックM1の垂直方向の長さと同一、同程度、または、垂直方向の長さ以下であることが好ましい場合がある。
【0021】
図2は、シートS1の背もたれ部分SS1の背面にマガジンラックM1が配置され、マガジンラックM1にはマガジンポケットMP1が備わっている模式図である。マガジンポケットMP1は樹脂製であるが、シートS1における反射は特にこのマガジンポケットMP1で最も強く反射する。
【0022】
(反射時間判定値の決定)
図3は、本実施形態が適用された
図1の状況において、乗員検知装置100において測定された反射波の伝播損失と送受信時間間隔との関係を示した測定結果である。実線は乗員J1がシートS1に着座していない場合の反射波の測定結果である。また、破線は乗員J1がシートS1に着座している場合の反射波の測定結果である。
図1におけるx1の位置におけるマガジンポケットMP1からの反射波が
図4における実線のピークを示すtmax1に相当する。すなわち、実験結果からも反射波はシートS1よりもマガジンポケットMP1において強く反射されることが示されている。また、
図1におけるx2の位置における乗員J1からの反射波が
図4における破線のピークを示すtmax2に相当する。したがって、tmax1とtmax2の時間差から、乗員J1がシートS1に着座しているか否かを判定することも可能になる。
【0023】
なお、乗員J1がシートS1に着座していない場合の反射波のピークであるtmax1は、車両の製造時において、あらかじめ複数回測定された既知の手法による平均値であってもよい。また、車両の整備時において、再度tmax1が複数回測定され、複数回測定された既知の手法による平均値によって、tmax1が更新されてもよい。例えば、車両の使用による経時変化によって、車両内の電波環境が変化する可能性があるために、車両の整備時において、tmax1を更新することによって、乗員J1を検知する精度の向上が見込まれる場合がある。
【0024】
また、乗員J1は老若男女などのさまざまな体型の人間である場合があるので、tmax2を初期測定する場合には、乗員J1として想定される乗員は胴体厚みが最小の被験者であることが好ましい。このように、あらかじめtmax2を決定することによって、検知を想定した胴体厚みの最小値以上の胴体厚みを有する乗員J1を検知することが可能になるのである。一例として、胴体厚みの最小値は成人よりも胴体厚みの小さい未成年者の胴体厚みを使用することも可能である。また、tmax2の測定時には、被験者の代わりに、人間の胴体と同程度の電波反射率を有する、胴体厚みの最小値と同一の厚みを有する被検物体を使用することが可能な場合もある。また、tmax2の測定時には、
図1の乗員J1において、x2が最も大きくなるように、被験者がシートS1に深く着座して、主反射体であるマガジンポケットMP1に最も近づいた状態で、tmax2の測定が実行されることが好ましい。このような測定によって、tmax2の最大値を決定しておくことが好ましい。当該tmax2の最大値によれば、乗員J1がシートS1に浅く着座した場合、乗員J1がシートS1上で体勢を変化させた場合等には、x2の値が小さくなるので、乗員J1の検知精度を向上させることが可能になる場合がある。
【0025】
以上のように測定されたtmax1およびtmax2を用いて、
図3に示す反射時間判定値TH1が以下のように決定されることも可能である。一例として、|tmax1+tmax2|/2を反射時間判定値TH1として決定することが可能である。なお、上述したようにtmax1は複数回測定されたピーク値の平均値であってもよく、また、tmax2も複数回測定されたピーク値の平均値であってもよい。また、反射時間判定値は複数の異なる乗員から、正確に乗員の有無を検出可能なように微調整が施されてもよい。また、tmax1とtmax2との間の|(乗員無し時の反射信号の振幅)-(乗員有り時の反射信号の振幅)|の最小値に対応する時間を反射時間判定値TH1として決定することも可能である。なお、上述のようにして決定された反射時間判定値TH1は、記憶部160のあらかじめ定められた領域に記憶されることが可能である。
【0026】
なお、乗員J1がシートS1上で体勢を変化させた場合の一例には、乗員J1がドアウインドウ側に上体を回した場合、乗員J1が前傾姿勢をとった場合などが挙げられる。このように、設定した胴体厚みの最小値以上の厚みを有する乗員J1を、当該乗員J1の姿勢によらず検知することが可能になる場合がある。何故なら、設定した胴体厚みの最小値以上の胴体厚みを有する乗員J1による反射波の送受信時間は反射時間判定値TH1よりも理論的に小さくなるからである。なお、上述したように、tmax1およびtmax2の測定は、車両の開発時に実行され、設定され、製造時、整備時に更新されることが好ましい。または、tmax1およびtmax2の測定は、車両の製造時に実行され、設定され、整備時に更新されることが好ましい。
【0027】
(乗員検知装置の構成例)
図4は乗員検知装置100の構成の一例を示すブロック図である。乗員検知装置100は、
図4に示すように、送信信号処理部110、送信部120.受信部130、受信信号処理部140、制御部150、記憶部160、および、外部I/F部170を含む。以下、本実施形態における特徴に関連する部分についてのみ説明するが、乗員検知装置100は、本実施形態における特徴に直接関係しない他の機能ブロックを備える場合もある。なお、乗員検知装置100には、送信アレーアンテナ部SAA及び受信アレーアンテナ部RAAが含まれる場合と含まれない場合がある。また、送信アレーアンテナ部SAA及び受信アレーアンテナ部RAAは、乗員検知装置100の外部に配置される場合と、乗員検知装置100の内部に配置される場合とがある。
【0028】
また、
図4には図示しないが、乗員検知装置100の送信アレーアンテナ部SAA及び受信アレーアンテナ部RAAを1つのアレーアンテナ部AAとして、送受信切り替え部を含む構成とする場合もある。この場合には、送信部120と受信部130は1つの送受信部として構成され、図示しない送受信切り替え部によって、送信信号処理部110および受信信号処理部140と図示しない送受信部との接続が切り替えられる。
【0029】
送信信号処理部110は、送信部120および送信アレーアンテナ部SAAを介して送信される送信信号を生成する機能を有する。例えば、送信信号処理部110には可変周波数発信器が含まれてもよい。また、送信信号は単一の周波数によって生成されるサインウェーブ波形、パルス波形、または、任意の変調処理された波形であってもよい。また、送信信号の主周波数成分には、移動体内、移動体間、移動体と移動体外部の電子装置との間の通信に使用される周波数成分が含まれないことが好ましい。
【0030】
送信部120は、送信信号処理部110において生成された送信信号を、送信アレーアンテナ部SAAに出力する機能を有する。また、送信部120には、送信信号を増幅するための図示しない増幅器が含まれていてもよい。
図4に示すように、送信部120に送信アレーアンテナ部SAAが接続される場合には、送信アレーアンテナ部SAAから放射される電波の指向性を制御するために、送信部120は図示しない位相器を含むことが可能である。送信アレーアンテナ部SAAの各アンテナエレメントに異なる位相を与えるように、当該位相器はアンテナエレメントの個数だけ配置されることが可能である。各位相器の位相情報は指向性制御部152で生成され、送信部120に入力される。また、送信部120から送信信号が送信アレーアンテナ部SAAの各アンテナエレメントに送信されると同時に、送信部120から計時部151に送信トリガー信号が送信され、計時部151が計時を開始する。また、
図4においては、送信アレーアンテナ部SAAのアンテナエレメントは、アンテナエレメントSAA1、アンテナエレメントSAA2、アンテナエレメントSAA3の3個が示されているが、アンテナエレメントは任意の個数であってもよい。
【0031】
受信部130は、受信アレーアンテナ部RAAにおいて受信された受信信号を、受信信号処理部140に出力する機能を有する。受信アレーアンテナ部RAAにおいて受信される受信信号は、上記送信信号の反射波であることが好ましい。また、受信部130には、受信信号を増幅するための図示しない増幅器が含まれていてもよい。また、受信アレーアンテナ部RAAの各アンテナエレメントで受信された受信信号の位相を整合させるために、受信部130は図示しない位相器を含むことが可能である。当該位相器はアンテナエレメントの個数だけ配置されることが可能である。各位相器の位相情報は指向性制御部152で生成され、受信部130に入力される。また、図示しない位相器を通過した、各アンテナエレメントの受信信号は、図示しない加算器によって加算され、
図3等に示される受信信号が形成される。また、受信部130において受信信号が受信されると、計時部151に受信トリガー信号が送信され、計時部151は送受信時間を計時することが可能になる。
【0032】
受信信号処理部140は、受信アレーアンテナ部RAAおよび受信部130を介して送信される受信信号の受信処理をする機能を有する。例えば、受信信号処理部140には図示しないA/D変換器(Analog-to-digital converter)が含まれ、受信信号をデジタル信号に変換することが可能である。また、受信信号が変調処理されている場合には、受信信号処理部140は、変調処理された受信信号を復調処理することも可能である。また、受信信号処理部140は、受信信号を平滑処理することが可能な場合もある。平滑処理が実行される場合は、アナログ信号としての受信信号、または、デジタル化された受信信号のいずれか、若しくは、アナログ信号としての受信信号、及び、デジタル化された受信信号の両方の信号に対して平滑処理を実行することが可能である。
【0033】
受信信号がデジタル化された場合には、デジタル化された受信信号は記憶部160に記憶されることが可能である。例えば、
図3に示されるように、実線で示されるシートS1のマガジンポケットMP1によって反射された受信信号波形を再現するための振幅情報と時間情報が一対の情報として記憶部160に記憶されることが可能である。また、同様に、
図3の破線で示される乗員J1によって反射された受信信号波形を再現するための振幅情報と時間情報が一対の情報として記憶部160に記憶されることが可能である。なお、時間情報は隣接するデジタル信号間の時間間隔を示す。また、時間情報の代わりに、計時部151によって示される時刻情報が使用されてもよい。この場合には、電波を送信した時刻情報も記憶部160に記憶され、各受信信号の時刻情報との差分が反射時間として使用されることが可能になる。
【0034】
なお、受信信号処理部140は、デジタル化されていない受信信号を、後述する比較解析部153に出力することが可能である場合がある。例えば、比較解析部153にピークホールド回路が含まれる場合があってもよい。デジタル化されていないアナログ信号としての受信信号が受信信号処理部140から比較解析部153のピークホールド回路に入力され、
図4に示されるような、tmax1やtmax2が検知されることが可能になる場合がある。この場合には、乗員検知装置100は、記憶部160にデジタル化されたデータを記憶し、記憶されたデータからピーク値を抽出する動作が必要ないので、高速処理が可能になる場合がある。なお、この場合の時間検知手法については、後述する比較解析部153において詳述する。
【0035】
制御部150は、
図4に示すように、計時部151、指向性制御部152、比較解析部153、異常値制御部154、検知判定部155、及び、モード判定制御部156を含むことが可能である。
【0036】
計時部151は、送信信号と受信信号との同期を確保し、送信信号の送信時点からマガジンポケットMP1や乗員J1等の反射体からの反射信号の受信時点までの時間を計時する機能を有する。例えば、送信信号の送信時刻を時刻0とし、時刻0から受信部130において受信される受信信号の振幅値の変化を時間情報と対応付けることが可能である。例えば、A/D変換器に入力される受信信号のサンプリング開始時刻、サンプリング時間間隔、および、出力されるデジタル信号の順番から、出力されるデジタル信号に時間情報を付与することが可能になる。例えば、サンプリング開始時刻を時刻0とすることによって、
図3に示すような受信信号のピークにおける時間情報を特定することが可能になる。
【0037】
指向性制御部152は、送信アレーアンテナ部SAAおよび受信アレーアンテナ部RAAのビーム方向である指向性を制御する機能を有する。指向性は、送信部120および受信部130に含まれる図示しない位相器によって制御されることが可能である。ビーム方向は、電波の反射体が配置されている方向に向くように調節され、各位相器に入力されるべき調節された位相情報は記憶部160に記憶されることが可能である。
【0038】
例えば、乗員検知装置100が、初期動作モードまたは更新動作モードで動作する場合には、指向性制御部152は、ビーム方向を上下左右に走査し、反射波が最大となるビーム方向を更新ビーム方向情報として記憶部160に記憶する。または、指向性制御部152は、反射波が得られるビーム方向の中心方向を更新ビーム方向情報として記憶部160に記憶する場合があってもよい。
【0039】
比較解析部153は、一例として、記憶部160に記憶された、受信信号である反射信号の振幅値を順番に比較する機能を有する場合がある。比較の対象となる反射信号は、1つの送信信号に対する受信時刻が異なる一連の反射信号である。例えば、
図3の実線で示されるシートS1のマガジンポケットMP1によって反射された反射信号の振幅値を順番に比較し、ピーク値を抽出する。ピーク値の一例には、tmax1が挙げられる。また、同様に、
図3の破線で示される乗員J1によって反射された反射信号の振幅値を順番に比較し、ピーク値を抽出する。ピーク値の一例には、tmax2が挙げられる。また、振幅値には時間情報が対応付けられているので、比較解析部153は、ピーク値に対する時間情報を記憶部160から抽出することが可能である。
【0040】
なお、比較解析部153に図示しないピークホールド回路が含まれる場合には、受信信号である反射信号のアナログ波形からアナログ波形のピーク値をホールドすることが可能である。また、ピーク値のホールドタイミングは、ピークホールド回路に含まれるコンパレータ回路の出力のレベル変化によって検知することが可能になる。例えば、コンパレータ回路の一端に、ホールドされたピーク値を入力し、コンパレータ回路の他端に反射信号のアナログ波形を入力し、ピーク値よりも振幅値が低い反射信号が入力された場合にコンパレータ回路の出力レベルが反転するように構成する。コンパレータ回路の出力レベルが反転された信号を反転信号と称すると、反転信号が計時部151に入力されることで、ピーク値のホールドタイミングを検知することも可能になる。上述したように、この場合には、乗員検知装置100は、記憶部160にデジタル化されたデータを記憶し、記憶されたデータからピーク値を抽出する動作が必要ないので、高速処理が可能になる場合がある。
【0041】
また、比較解析部153は、モード判定制御部156において判定された動作モードによって異なる動作を実行する。例えば、モード判定制御部156において判定された動作モードが初期動作モードである場合には、記憶部160には、移動体の開発時、または、製造時における反射信号の情報が記憶される。反射信号の情報は乗員検知装置100が実測し、記憶部160に記憶される場合と、あらかじめ定められた値が外部I/F部170等を介して記憶部160に記憶される場合があってもよい。
【0042】
例えば、乗員検知装置100が実測し、記憶部160に記憶される場合の反射信号の情報には、上述したような、反射信号の振幅情報と、送信信号が送信されてから反射信号が受信されるまでの時間情報が含まれる場合がある。この場合には、記憶部160に含まれる反射信号には、
図3の実線で示されるシートS1のマガジンポケットMP1によって反射される反射信号と、
図3の破線で示される乗員J1によって反射される反射信号が含まれる。比較解析部153が初期動作モードである場合には、記憶部160に記憶されたシートS1のマガジンポケットMP1によって反射される反射信号のピーク値に対応する乗員無し反射時間を比較解析部153は抽出する。例えば、当該乗員無し反射時間は、tmax1である場合がある。また、比較解析部153が初期動作モードである場合には、記憶部160に記憶された乗員J1によって反射される反射信号のピーク値に対応する乗員有り反射時間を比較解析部153は抽出する。例えば、当該乗員有り反射時間は、tmax2である場合がある。そして、比較解析部153は、一例として、|(乗員無し反射時間)+(乗員有り反射時間)|/2を反射時間判定値として決定することが可能である。なお、乗員無し反射時間は複数回測定されたピーク値の平均値であってもよく、また、乗員有り反射時間も複数回測定されたピーク値の平均値であってもよい。また、反射時間判定値は複数の異なる乗員から、正確に乗員の有無を検出可能なように微調整が施されてもよい。また、(乗員無し反射時間)と(乗員有り反射時間)の間の|(乗員無し時の反射信号の振幅)-(乗員有り時の反射信号の振幅)|の最小値に対応する時間を反射時間判定値として決定することも可能である。なお、上述のようにして決定された反射時間判定値は、比較解析部153が記憶部160のあらかじめ定められた領域に記憶することが可能である。
【0043】
また、例えば、設計時または開発時において想定された記憶部160に記憶されるべき反射信号の情報には、乗員無し反射時間、乗員有り反射時間、反射時間判定値が含まれる場合がある。この場合には、反射時間判定値等の情報値はあらかじめ設定され、記憶部160に記憶されてもよい。また、この場合には、乗員検知装置100の取り付け位置やシート等の座席位置が決定されている場合がある。
【0044】
モード判定制御部156において検知動作モードが判定された場合には、比較解析部153は、上述した反射時間判定値に基づいて、シートS1に乗員が着座しているか否かを解析するために、反射信号のピーク値に対応するピーク値受信時間を解析する。ピーク値受信時間は、上述したように、比較解析部153が記憶部160から抽出した反射信号情報によって抽出することが可能である。また、比較解析部153に含まれるピークホールド回路によって、ピーク値受信時間を上述したように決定することも可能である。
【0045】
モード判定制御部156において更新動作モードが判定された場合には、乗員検知装置100は、シートに乗員が着座していない状態で、指向性制御部152によって決定されたあらたなビーム方向に電波を送信する。そして、比較解析部153は、シートのマガジンポケットMP1からの反射波の受信時間を測定し、乗員検知装置100とマガジンポケットMP1との間の反射波の反射時間をあらたなtmax1として記憶部160に記憶する。
【0046】
次に、乗員検知装置100は、シートに乗員が着座している状態で、指向性制御部152によって決定されたあらたなビーム方向に電波を送信する。そして、比較解析部153は、シートに着座している乗員の表面までの反射時間を測定し、反射時間をあらたなtmax2として記憶部160に記憶する。
【0047】
比較解析部153は、記憶部160に記憶されたあらたなtmax1およびあらたなtmax2からあらたな反射時間判定値を決定し、決定されたあらたな反射時間判定値を記憶部160に記憶する。
【0048】
異常値制御部154は、反射時間が適切な範囲の値ではないと判断される場合には、以下のように異常値処理を実行する機能を有する。反射時間が適切な範囲の値ではないと判断される場合には、最初に、異常値制御部154は、送信部120から電波を再送信させ、比較解析部153に、再度、反射時間の測定を試みさせる場合がある。例えば、反射時間の測定値がtmax1より大きい場合、反射時間の測定値がtmax1と反射時間判定値の間にある場合には、乗員検知装置100は再度、反射時間の測定を試みる。しかし、所定の回数を再測定しても、反射時間の測定値が適切な範囲ではないと判断される場合には、以下の処理を実行する場合もある。なお、所定の回数は乗員検知システム1000において任意の値を設定することが可能である。
【0049】
例えば、図示しないシート位置センサ、および、シートの背もたれ部分の図示しない角度センサがある場合には、それらの情報からマガジンポケットMP1の位置を推定し、反射時間判定値を推定する場合がある。また、反射波が検知できない、または、反射波のピーク値が非常に小さい場合にも、シート位置センサや背もたれ部分の角度センサがある場合には、マガジンポケットMP1の位置を推定し、反射時間判定値を推定する場合がある。例えば、シートの位置が後方にスライドされた場合、シートの背もたれ部分が傾斜された場合などには、上記の処理が必要になる場合がある。これらの場合には、推定されたマガジンポケットMP1配置方向にビーム方向を調節し、反射時間の測定を試みる。
【0050】
また、例えば、図示しないシート位置センサ、および、図示しないシート角度センサが配置されていない場合もある。この場合には、指向性制御部152が、ビーム方向を走査し、比較解析部153が、反射波が測定される走査範囲の形状から、反射体がマガジンポケットMP1であるか乗員であるかを推定することも可能な場合がある。反射波がマガジンポケットMP1からの反射波であると推定される場合には、反射波のビーム方向を最適化し、反射時間判定値を推定可能な場合がある。この場合の詳細な説明は
図5(c)において記載する。
【0051】
検知判定部155は、移動体のシートに乗員が着座しているか否かを判定する機能を有する。検知判定部155は、比較解析部153において解析された反射時間が適切な範囲にある値であって、反射時間が反射時間判定値よりも小さい値である場合には、移動体のシートに乗員が着座していると判定する。また、検知判定部155は、比較解析部153において解析された反射時間が適切な範囲にある値であって、反射時間が反射時間判定値よりも大きい値である場合には、移動体のシートに乗員が着座していないと判定する。
【0052】
なお、検知判定部155が反射時間の測定値が適切な範囲ではないと判断する場合には、反射時間の測定を単純に繰り返し、連続して、反射時間の測定値が適切な範囲ではないと判断される場合に、上記動作を実行するように構成されてもよい。
【0053】
モード判定制御部156は乗員検知装置100の動作モードを決定する機能を有する。動作モードには、一例として、初期動作モード、検知動作モード、更新動作モード等の動作モードが挙げられるが、これらの動作モードに限定されわけではない。例えば、動作モードには、乗員検知装置100が、無線送受信端末として動作することを可能にするモードが含まれてもよい。
【0054】
動作モードを示す動作モード情報は、外部I/F部170に接続される外部電子装置から入力されることが可能である。外部電子装置は、CPU(Central Processing Unit)を含む電子装置であってもよい。一例として、外部電子装置に任意の入力デバイスが接続され、入力デバイスから入力された情報によっていずれかの動作モード情報が識別されるように構成されてもよい。また、モード判定制御部156にユーザインターフェースが配置され、ユーザインターフェースを介して入力される情報によって、動作モード情報が識別されるように構成されてもよい。いずれにしても、動作モード情報は任意の既知の方法によって入力されることが可能である。
【0055】
モード判定制御部156によって、乗員検知装置100が初期動作モードに設定された場合には、乗員が着座しているか否かを示す反射時間判定値が、外部I/F部170を介して、記憶部160のあらかじめ定められた領域に記憶されることが可能である。また、モード判定制御部156に含まれるユーザインターフェースを介して、乗員が着座しているか否かを示す反射時間判定値が、外部I/F部170を介して、記憶部160のあらかじめ定められた領域に記憶されることが可能である。また、乗員検知装置100が初期動作モードに設定された場合には、被験者としての乗員の有無を示す乗員有無情報が入力され、乗員が着座していない場合の反射時間および乗員が着座している場合の反射時間が、乗員検知装置100が測定する場合があってもよい。この場合には、乗員検知装置100は乗員が着座しているか否かを示す反射時間判定値を上述した方法によって決定することが可能である。なお、どのようにして、反射時間判定値を記憶部160に記憶するかは、図示しない外部電子装置またはモード判定制御部156に含まれるユーザインターフェース等のデバイスによって入力される情報によって決定されることが可能である。すなわち、反射時間判定値が設計によって決定される値である場合には、乗員検知装置100が実装される移動体で反射時間を実測することなく、設計によって決定された反射時間判定値が記憶部160に記憶される場合がある。また、乗員検知装置100が実装される移動体で乗員が着座している場合と、着座していない場合の反射時間を実測し、反射時間判定値が比較解析部153において決定され、記憶部160に記憶されてもよい。なお、乗員検知装置100の動作モードが初期動作モードに設定されるのは、移動体の開発時または製造時であることが好ましい。
【0056】
モード判定制御部156によって、乗員検知装置100の動作モードが検知動作モードに設定された場合には、乗員検知装置100は電波を送信し、送信された電波が反射体によって反射された反射波の反射時間に基づいて、乗員が着座しているか否かを判定する。乗員が着座しているか否かを判定する方法については、上述したので、記載の重複を避けるために省略する。
【0057】
モード判定制御部156が乗員検知装置100を更新動作モードに設定した場合には、移動体および移動体内の配置物の経時変化、配置物の配置変化、配置物の取り付けまたは取り外し等による電波環境の変化を想定して、反射時間判定値の更新を実行する。例えば、被験者としての乗員の有無を示す乗員有無情報が乗員検知装置100に入力され、乗員検知装置100は、乗員が着座していない場合の反射時間および乗員が着座している場合の反射時間を測定する場合がある。この場合には、乗員検知装置100は乗員が着座しているか否かを示す反射時間判定値を上述した方法によって決定することが可能である。そして、乗員検知装置100は、古い反射時間判定値を、決定された新たな反射時間判定値に書き換える。なお、乗員検知装置100の動作モードが更新動作モードに設定されるのは、移動体の点検時や検査時であることが好ましい。移動体が車両である場合には、乗員検知装置100の動作モードが更新動作モードに設定されるのは、車両の定期点検時や車検時であることが好ましい。
【0058】
モード判定制御部156が乗員検知装置100の動作モードを検知動作モードと無線送受信端末モードとの混合モードに設定することが可能な場合もある。この場合には、前述した検知動作モードの動作と、後述する無線送受信端末モードとしての動作を時分割で実行することが可能になる。
【0059】
外部I/F部170は、乗員検知装置100と接続される外部電子装置とのインターフェース機能を有する。外部電子装置とは有線または無線で接続されることが可能である。また、外部電子装置は移動体内のネットワークに接続されるノードであってもよい。外部電子装置には、車載機器としての車両制御機器、車両センシング機器、車両周辺情報取得機器、および、エンタテイメント機器等の電子機器が含まれてもよい。なお、車両制御機器にはナビゲーション機器や自動運転制御機器が含まれてもよい。また、外部電子装置の外部I/F部と接続し、情報を送受信することも可能である。また、外部I/F部170に接続されるデバイスによって、ECU(Electronic Control Unit)が構成されてもよい。
【0060】
以上の説明による本実施形態に係わる乗員検知システムは車両等の移動体に搭載されることができる。
【0061】
(乗員検知装置100の動作例)
図5A~
図5Cを参照して本実施形態に係る乗員検知装置100の動作例について説明する。
【0062】
乗員検知装置100の
図5A~
図5Cの処理手順は、乗員検知装置100が有するCPU(Central Processing Unit)が実行する。当該CPU(例えば、
図4の制御部150)は、ROM(Read Only Memory)(例えば、
図4の記憶部160の一部)に格納されたプログラムにしたがいCPUが実行する。
【0063】
なお、以下の処理手順の一部または全部は、例えば、DSPやASIC等のハードウェアにより実行させることもできる。但し本実施例では、ROMのプログラムにしたがってCPUが実行する形態とした場合について説明する。
【0064】
ステップS501において、モード判定制御部156は、乗員検知装置100が動作すべきモードを示す動作モード情報を、外部I/F部170、または、モード判定制御部156に含まれるユーザインターフェースを介して取得する。次に、乗員検知装置100は、ステップS502に進む。
【0065】
ステップS502において、モード判定制御部156はステップS501において取得された動作モード情報から乗員検知装置100が動作すべき動作モードが検知動作モードか否かを判定する。乗員検知装置100の動作モードが検知動作モードである場合(ステップS502:YES)には、乗員検知装置100はステップS503に進む。乗員検知装置100の動作モードが検知動作モードではない場合(ステップS502:NO)の場合には、乗員検知装置100はステップS511に進む。
【0066】
ステップS503において、送信部120は、指向性制御部152から入力された指向性情報にしたがってビーム方向を設定し、送信アレーアンテナ部SAAから電波を送信する。電波を送信した時点から計時部151において計時を開始する。次に、乗員検知装置100はステップS504に進む。
【0067】
ステップS504において、受信部130は、受信アレーアンテナ部RAAの各受信エレメントにおいて受信された情報を1つの受信信号に変換し、受信信号処理部140に出力する。なお、後述するようにあらかじめ定められたレベルを超える、反射波と認識され得る情報が取得されない場合があり得るが、各受信エレメントにおいて受信された情報に基づいて、上記処理を受信部130は実行する。次に、乗員検知装置100はステップS505に進む。
【0068】
ステップS505において、比較解析部153は、受信信号処理部140において受信処理された受信信号のピーク値から電波の送信から反射体による反射波が受信されるまでの時間を演算する。なお、マガジンポケットMP1の配置が変化するなどして、電波環境が変化した場合には、反射波のピーク値がない場合、反射波のピーク値が異常に小さい場合、または、反射波がなくピーク値の演算が不可能である場合等の場合がある。これらの場合には、ステップS506において、次の処理が判定される。乗員検知装置100はステップS506に進む。
【0069】
ステップS506において、比較解析部153は、受信信号のピーク値から電波の送信から反射波が受信されるまでの反射時間が異常値であるか否かを判定する。異常値には、上述した、反射波のピーク値がない場合、反射波のピーク値が異常に小さい値である場合、または、反射波がなくピーク値の演算が不可能である場合等の場合も含まれる。また、受信信号のピーク値によって演算される反射時間が、tmax1よりも大きい場合、および、反射時間判定値とtmax1との間の値である場合にも、反射時間が異常値であると判定される。電波の送信から反射波が受信されるまでの反射時間が異常値である場合(ステップS506:YES)には、乗員検知装置100はステップS526に進む。電波の送信から反射波が受信されるまでの時間が異常値ではない場合(ステップS506:NO)には、乗員検知装置100はステップS507に進む。
【0070】
ステップS507において、検知判定部155は、記憶部160に記憶されている反射時間判定値を抽出する。次に、乗員検知装置100はステップS508に進む。
【0071】
ステップS508において、検知判定部155は、演算された反射時間と、記憶部160から抽出された反射時間判定値とを比較する。演算された反射時間が反射時間判定値よりも小さい場合(ステップS508:YES)には、乗員検知装置100はステップS509に進む。演算された反射時間が反射時間判定値よりも大きい場合(ステップS508:NO)には、乗員検知装置100はステップS510に進む。
【0072】
ステップS509において、検知判定部155は、移動体のシートに乗員が着座していると判定し、乗員着座情報を、外部I/F部170を介して外部電子装置に送信する。次に、乗員検知装置100はステップS501に戻る。
【0073】
ステップS510において、検知判定部155は、移動体のシートに乗員が着座していないと判定し、乗員未着座情報を、外部I/F部170を介して外部電子装置に送信する。次に、乗員検知装置100はステップS501に戻る。
【0074】
ステップS511において、モード判定制御部156はステップS501において取得された動作モード情報から乗員検知装置100が動作すべき動作モードが初期動作モードか否かを判定する。乗員検知装置100に設定されている動作モードが初期動作モードである場合(ステップS511:YES)の場合には、乗員検知装置100はステップS512に進む。乗員検知装置100に設定されている動作モードが初期動作モードではない場合(ステップS511:NO)の場合には、乗員検知装置100はステップS517に進む。
【0075】
ステップS512において、指向性制御部152は、ビーム方向を上下左右に走査し、反射波が最大となるビーム方向を初期ビーム方向情報として記憶部160に記憶する。または、反射波が得られるビーム方向の中心方向を初期ビーム方向情報として記憶部160に記憶する場合があってもよい。さらに、乗員検知装置100が設計によって定められた位置に取り付けられた場合には、あらかじめ設計された初期ビーム方向情報が記憶部160に記憶される場合があってもよい。また、乗員検知装置100は、初期ビーム方向情報に対応するビーム方向の反射波から、反射体までの距離を演算し、演算された反射体までの距離を初期反射体距離情報として記憶部160に記憶する。次に、乗員検知装置100はステップS513に進む。
【0076】
ステップS513において、乗員検知装置100は、ステップS512において取得された初期ビーム方向情報、および、初期反射体距離情報を出力する。初期ビーム方向情報、および、初期反射体距離情報は、外部I/F部170を介して出力されてもよいし、モード判定制御部156のユーザインターフェースを介して出力されてもよい。そして、初期ビーム方向情報、および、初期反射体距離情報が適正な範囲であることを示す適正範囲情報が入力される(ステップS513:YES)と、乗員検知装置100はステップS514に進む。なお、適正範囲情報が検知されない場合(ステップS513:NO)には、乗員検知装置100はステップS512に戻る。
【0077】
ステップS514において、乗員検知装置100は、シートに乗員が着座していない状態で、ステップS512において決定された初期ビーム方向情報に対応するビーム方向に電波を送信する。そして、乗員検知装置100は、シートのマガジンポケットMP1からの反射波の受信時間を測定し、乗員検知装置100とマガジンポケットMP1との間の反射波の反射時間をtmax1として記憶部160に記憶する。tmax1は一回の測定値であっても、複数回測定された複数の測定値のさまざまな既知の方法によって演算される平均であってもよい。次に、乗員検知装置100はステップS515に進む。
【0078】
ステップS515において、乗員検知装置100は、シートに乗員が着座している状態で、ステップS512において決定された初期ビーム方向情報に対応するビーム方向に電波を送信する。そして、乗員検知装置100は、シートに着座している乗員の表面までの反射時間を測定し、反射時間をtmax2として記憶部160に記憶する。tmax2は一回の測定値であっても、複数回測定された複数の測定値のさまざまな既知の方法によって演算される平均であってもよい。なお、tmax2の測定方法は上述したので、詳細な説明を省略する。次に、乗員検知装置100はステップS516に進む。
【0079】
ステップS516において、乗員検知装置100は、記憶部160に記憶されたtmax1およびtmax2から反射時間判定値を決定し、決定された反射時間判定値を記憶部160に記憶する。なお、反射時間判定値の測定方法は上述したので、詳細な説明を省略する。次に、乗員検知装置100はステップS501に戻る。
【0080】
ステップS517において、モード判定制御部156はステップS501において取得された動作モード情報から乗員検知装置100が動作すべき動作モードが更新動作モードか否かを判定する。乗員検知装置100に設定されている動作モードが更新動作モードである場合(ステップS517:YES)の場合には、乗員検知装置100はステップS518に進む。乗員検知装置100に設定されている動作モードが更新動作モードではない場合(ステップS517:NO)の場合には、乗員検知装置100はステップS525に進む。
【0081】
ステップS518において、指向性制御部152は、ビーム方向を上下左右に走査し、反射波が最大となるビーム方向を更新ビーム方向情報として記憶部160に記憶する。または、反射波が得られるビーム方向の中心方向を更新ビーム方向情報として記憶部160に記憶する場合があってもよい。また、乗員検知装置100は、更新ビーム方向情報に対応するビーム方向の反射波から、反射体までの距離を演算し、演算された反射体までの距離を更新反射体距離情報として記憶部160に記憶する。次に、乗員検知装置100はステップS519に進む。
【0082】
ステップS519において、乗員検知装置100は、ステップS518において取得された更新ビーム方向情報、および、更新反射体距離情報を出力する。更新ビーム方向情報、および、更新反射体距離情報は、外部I/F部170を介して出力されてもよいし、モード判定制御部156のユーザインターフェースを介して出力されてもよい。そして、更新ビーム方向情報、および、更新反射体距離情報が適正な範囲であることを示す適正範囲情報が入力される場合(ステップS519:YES)には、乗員検知装置100はステップS520に進む。なお、適正範囲情報が検知されない場合(ステップS519:NO)には、乗員検知装置100はステップS518に戻る。
【0083】
ステップS520において、tmax1が更新されるべきか否かを示すtmax1更新情報が、外部I/F部170またはモード判定制御部156のユーザインターフェースを介して入力される。tmax1が更新されるべき場合(ステップS520:YES)には、乗員検知装置100はステップS521に進む。tmax1が更新されるべきではない場合(ステップS520:NO)には、乗員検知装置100はステップS522に進む。
【0084】
ステップS521において、乗員検知装置100は、シートに乗員が着座していない状態で、ステップS518において決定された更新ビーム方向情報に対応するビーム方向に電波を送信する。そして、乗員検知装置100は、シートのマガジンポケットMP1までの反射時間を測定し、乗員検知装置100とマガジンポケットMP1との間の反射時間を新たなtmax1として記憶部160に更新して記憶する。新たなtmax1は一回の測定値であっても、複数回測定された複数の測定値のさまざまな既知の方法によって演算される平均であってもよい。次に、乗員検知装置100はステップS522に進む。
【0085】
ステップS522において、tmax2が更新されるべきか否かを示すtmax2更新情報が、外部I/F部170またはモード判定制御部156のユーザインターフェースを介して入力される。tmax2が更新されるべき場合(ステップS522:YES)には、乗員検知装置100はステップS523に進む。tmax2が更新されるべきではない場合(ステップS522:NO)には、乗員検知装置100はステップS524に進む。
【0086】
ステップS523において、乗員検知装置100は、シートに乗員が着座している状態で、ステップS518において決定された更新ビーム方向情報に対応するビーム方向に電波を送信する。そして、乗員検知装置100は、シートに着座している乗員の表面までの反射時間を測定し、乗員検知装置100と乗員の表面との間の反射時間を新たなtmax2として記憶部160に更新して記憶する。新たなtmax2は一回の測定値であっても、複数回測定された複数の測定値のさまざまな既知の方法によって演算される平均であってもよい。なお、tmax2の測定方法は上述したので、詳細な説明を省略する。次に、乗員検知装置100はステップS524に進む。
【0087】
ステップS524において、乗員検知装置100は、記憶部160に記憶されたtmax1およびtmax2から反射時間判定値を決定し、決定された反射時間判定値を記憶部160に記憶する。なお、tmax1およびtmax2は初期値であっても。更新値でもあってもよい。反射時間判定値の測定方法は上述したので、詳細な説明を省略する。次に、乗員検知装置100はステップS501に戻る。
【0088】
ステップS525において、モード判定制御部156はステップS501において取得された動作モード情報から乗員検知装置100が動作すべき動作モードを判定し、乗員検知装置100は判定されたモードにしたがって動作する。例えば、動作モード情報が検知モードと無線送受信端末モードが混在する混合モードである場合がある。この場合には、乗員検知装置100は、送信要求または受信要求が発生した場合に送受信端末として機能し、それ以外の場合にステップS503からステップS510の動作を実行するように構成されることが可能である。または、ステップS503からステップS510の動作を実行している場合に、送信要求または受信要求が発生した場合に送受信端末として機能し、途中のステップから次のステップを実行するように構成されることも可能である。なお、動作モード情報が無線送受信端末モードである場合に、新たな動作モード情報が入力されるまで、乗員検知装置100は移動体のネットワークに含まれる送受信端末として機能することも可能である。
【0089】
ステップS526において、乗員検知装置100は反射時間が異常値である場合に、既定の回数、電波を再送したか否かを判定する。乗員検知装置100が既定の回数、電波を再送した場合(ステップS526:YES)には、乗員検知装置100はステップS527に進む。乗員検知装置100が既定の回数、電波を再送していない場合(ステップS526:NO)には、乗員検知装置100はステップS503に戻る。なお、既定の回数は乗員検知システム1000において任意の回数に設定することができる。例えば、乗員検知装置100の乗員検知速度を向上させるために、乗員検知システム1000は既定の再送回数を0回と設定することも可能である。
【0090】
ステップS527において、乗員検知装置100は、図示しないシート位置センサおよびシートの背もたれ部分の角度センサ等のシート関連センサが、乗員検知システム1000に配置されているか否かを判定する。シート関連センサが配置されている場合(ステップS527:YES)には、乗員検知装置100はステップS528に進む。シート関連センサが配置されていない場合(ステップS527:NO)には、乗員検知装置100はステップS531に進む。
【0091】
ステップS528において、乗員検知装置100は、図示しないシート位置センサからシート位置情報を取得し、図示しない背もたれ部分の角度センサから背もたれ部分の角度センサ情報を取得し、マガジンポケットMP1の位置を推定する。また、乗員検知装置100は、推定されたマガジンポケットMP1の位置から、送信されるべき電波のビーム方向情報を推定し、記憶部160のビーム方向情報の記憶領域に推定されたビーム方向情報を上書きする。次に、乗員検知装置100は、ステップS529に進む。
【0092】
ステップS529において、乗員検知装置100は、ステップS528において取得したシート位置情報および背もたれ部分の角度センサ情報から推定されたマガジンポケットMP1の位置から反射時間を推定する。乗員検知装置100は、推定された反射時間をtmax1として記憶部160に記憶する。次に、乗員検知装置100は、ステップS530に進む。
【0093】
ステップS530において、乗員検知装置100は、ステップS529において推定されたtmax1と、記憶部160に記憶されている初期のtmax1とtmax2との差分時間から、反射時間判定値を推定する。反射時間判定値の演算方法は上述したので、詳細な説明を省略する。なお、比較解析部153は、ステップS529において推定されたtmax1に、初期のtmax1とtmax2との差分時間を加算演算した値を新たな、反射時間判定値とすることも可能である。次に、乗員検知装置100はステップS503に戻る。
【0094】
ステップS531において、乗員検知装置100は、指向性制御部152において、送信されるべき電波のビーム方向を上下左右に走査し、反射波を受信できるビーム方向を検知する。次に、乗員検知装置100はステップS532に進む。
【0095】
ステップS532において、乗員検知装置100は、反射波を受信できるビーム方向から反射波の立体角を演算し、立体角から反射体の表面形状を推定する。そして、乗員検知装置100は、推定された反射体の表面形状から、反射体がマガジンポケットMP1であるか乗員であるかを判定する。反射体が乗員である場合には、シートの上下方向に長い表面形状が推定され、反射体がマガジンポケットMP1である場合には、四角形状の表面形状が推定されるものとする。反射体がマガジンポケットMP1であると推定される場合(ステップS532:YES)には、ステップS533に進む。反射体が乗員であると推定される場合(ステップS532:NO)には、ステップS509に進む。
【0096】
ステップS533において、指向性制御部152は、ステップS531において受信した反射波の振幅が最大値となるビーム方向をビーム方向情報として記憶部160に記憶する。または、反射波が得られるビーム方向の中心方向を初期ビーム方向情報として記憶部160に記憶する場合があってもよい。また、乗員検知装置100は、ビーム方向情報に対応するビーム方向の反射波から、反射体との反射時間を測定し、測定された反射時間をtmax1として記憶部160に記憶する。次に、乗員検知装置100はステップS534に進む。
【0097】
ステップS534において、乗員検知装置100は、ステップS533において測定されたtmax1と、記憶部160に記憶されている初期のtmax1とtmax2との差分時間およびあらたなビーム方向から、反射時間判定値を推定する。反射時間判定値の測定方法は上述したので、詳細な説明を省略する。なお、比較解析部153は、ステップS533において測定されたtmax1に、初期のtmax1とtmax2との差分時間をあらたなビーム方向で補正した値を加算演算した値を新たな、反射時間判定値とすることも可能である。次に、乗員検知装置100はステップS503に戻る。
【0098】
以上の構成の乗員検知装置100によれば、車両等の移動体において、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置を提供することが可能となる。
【0099】
(変形例1)
以上の実施形態の説明では、乗員検知装置100の電波の送受信にアレーアンテナを使用する場合について説明したが、乗員検知装置100に使用されるアンテナはアレーアンテナに限定されるわけではない。乗員検知装置100に使用されるアンテナは指向性を有するアンテナであれば、任意のアンテナを使用することが可能である。例えば、
図6に示すように、アンテナのビーム方向を機械的に変更可能な送信アンテナSATと受信アンテナRATを、乗員検知装置100に使用することも可能である。
【0100】
送信アンテナSATと受信アンテナRATのビーム方向は、指向性制御部152が生成する指向性情報に基づいて、送信部120および受信部130が制御することが可能である。
【0101】
また、
図6には図示しないが、乗員検知装置100の送信アンテナSATと受信アンテナRATを1つのアンテナとして、送受信切り替え部を含む構成とする場合もある。この場合には、送信部120と受信部130は1つの送受信部として構成され、図示しない送受信切り替え部によって、送信信号処理部110および受信信号処理部140と図示しない送受信部との接続が切り替えられる。
【0102】
(変形例2)
上記実施形態における説明では、自動車内に設置された乗員検知装置100によって、乗員がシートに着座したか否かを一例として説明している。しかし、実施形態は自動車内に限定されるものではなく、バス、列車、飛行機、宇宙船、船舶、潜水艇等の移動体の内部空間などのように乗員が搭乗する移動体において、乗員の着座の有無を検知する用途の全般に適用することが可能である。
【0103】
(変形例3)
以上の実施形態の説明では、マガジンポケットMP1からの反射時間によって、乗員J1の着座の有無を判定しているので、マガジンポケットMP1から十分な強度の反射波が乗員検知装置100において受信される必要がある。
【0104】
そのために、マガジンポケットMP1から十分な強度の反射波が得られない場合には、電波反射率が高いフィルムシート等の反射体をマガジンポケットMP1の内部または外部に取り付けることが可能である。また、マガジンポケットMP1の表面と裏面の間に反射体を挿入することも可能である。また、シートS1にマガジンポケットMP1等の強い反射体がない場合にも、電波反射率が高いフィルムシート等の反射体をマガジンポケットMP1が設けられることが想定される領域に取り付けることが可能である。反射体の表面形状は、乗員J1の着座状態の表面形状と認識可能な形状であることが好ましい。
【0105】
(変形例4)
以上の実施形態の説明では、乗員検知装置100をインストルメントパネルに取り付けた場合を説明したが、乗員検知装置100が取り付けられる位置は、インストルメントパネルに限定されるわけではない。例えば、乗員検知装置100を、フロントガラス、バックミラーやルーフに取り付けることも可能である。ルーフに乗員検知装置100を取り付ける場合には、乗員の前方に取り付けてもよいし、乗員の上方に取り付けてもよい。
【0106】
図7(a)に、乗員検知装置100を乗員J1の上方のルーフC1に取り付けた場合の模式図を示す。ルーフC1に取り付けられた乗員検知装置100は、電波を下方に送信し、乗員J1がいない場合の反射時間をtmax1として記憶部160に記憶する。乗員検知装置100から送信された電波は、シートS1の下部に配置された金属シート等の反射体FR1によって反射されることが可能である。反射体FR1は金属シートに限定されるわけではなく、電波を反射する材質から構成される物体であれば、任意の物体を反射体FR1として使用することが可能である。また、反射体FR1の代わりに、移動体のフロアが反射体として機能することが可能であれば、反射体FR1を使用しない場合があってもよい。さらに、シートS1の金属製のフレームや、金属製のフレームに付随する金属部品によって、反射体が構成される場合にも、反射体FR1を使用しない場合があってもよい。
【0107】
図7(a)に示すように、反射体FR1が配置されている場合であって、乗員J1が着座していない場合には、乗員検知装置100から反射体FR1までの距離x1を往復する電波によって計測される時間をtmax1として記憶部160に記憶する。また、乗員J1が着座している場合には、電波は乗員J1の頭部や大腿部で反射され、反射時間がtmax1よりも小さい値となる。反射体FR1または移動体のフロアが反射体として機能する場合にはtmax1が変動することはほとんどないものと仮定して、反射時間判定値を決定することも可能である。例えば、シートS1が高さ調整できる場合の、シートS1の最低の高さ位置からの反射時間を演算してtmax2を算出して、記憶部160に記憶する。または、シートS1が高さ調整できない場合の、シートS1の高さ位置からの反射時間を演算してtmax2として計算し、記憶部160に記憶する。比較解析部153は、上述したtmax1およびtmax2から反射時間判定値を実施形態において説明した手法によって演算し、記憶部160に記憶する。乗員J1からの主反射波が乗員J1の大腿部からの反射波である場合であって、乗員J1が未成年者等であって大腿部が細い場合に、反射波の到達時間に誤差が生じ、精度が低下する場合も想定されるために、上述の方法で処理する場合があってもよい。このように演算された反射時間判定値を用いて以下のように乗員検知装置100が動作することが可能である。すなわち、乗員検知装置100が検知動作モードの場合に、反射時間が反射時間判定値よりも小さい場合には乗員J1が着座していると判定され、反射時間が反射時間判定値よりも大きい場合には乗員J1が着座していないと判定されることが可能である。
【0108】
図7(b)は、反射体FR1がシートS1の直下に配置されている様子を模式的に示す図である。詳細な説明については省略する。
【0109】
図8(a)は、乗員検知装置100が、乗員J1の上方のルーフC1等に取り付けられた場合に、指向性制御部152によって決定されるビーム方向の一例を示す模式図である。反射体FR1の中心部分にビーム方向がSD1のように決定されると、反射波の強度も大きくなることが想定される。θ1/2は半値全幅を示す。
【0110】
図8(a)は、乗員検知装置100が、乗員J1の前方のインストルメントパネルIP等に取り付けられた場合に、指向性制御部152によって決定されるビーム方向の一例を示す模式図である。マガジンポケットMP1の中心部分にビーム方向がSD2のように決定されると、反射波の強度も大きくなることが想定される。θ2/2は半値全幅を示す。
【0111】
(比較例1)
レーダ技術で車内の乗員検知を実行する場合に、乗員の呼吸および/または心拍による電波の人体表面反射波に生じるドップラー効果を検知する方法がある。
図9(a)および
図9(b)にドップラー効果を検知する方法を説明する模式図を示す。
図9(a)において、乗員J2の人体表面が速度vで変位すると、アンテナANTから送信された周波数fcを有する電波の反射波はfc+fdに変化する。送信電波の周波数fcが既知の値であるので受信された反射波のfc+fdから周波数fdを周波数解析して検出することが可能になる。これらの周波数fcおよびfdから人体表面の速度vが演算されるので、乗員の呼吸および/または心拍による変位速度であるか否かを判定可能になる。
【0112】
しかし、比較例1の手法によれば、周波数解析が必要になるので、装置の構成が複雑、高価になることが想定される。
【0113】
(比較例2)
周波数解析を使用しない構成として、送信された電波のエネルギーの一部と、反射体から反射してきた反射波を混合して、定在波を生成し、生成された定在波の振幅の大きさと変動から人体が着座した状態か否かを判定する手法が存在する。
【0114】
上記手法においては、周波数解析を必要としないが、乗員の体勢や向きによって反射波の振幅が変動することを考慮に入れた、乗員の着座の判定をする必要が発生し、判断アルゴリズムが複雑になる場合がある。また、車両の前席の乗員着座の判定に上記手法を採用した場合には、後席に乗員がいる場合には、後席の乗員からの反射波が存在するため、前席と後席の乗員の判別が困難になる場合がある。したがって、上記手法を採用した場合には、乗員検知精度に課題が発生する場合があり得る。
【0115】
(比較例3)
また、周波数解析を使用せず、定在波も使用しない構成として、反射体の経時的な移動量を演算し、移動量に基づいて、反射体が乗員であるか否かを判定する手法が存在する。
【0116】
しかし上記手法では、乗員の微細な動きを検知するために、複数のサンプリングが必要となるので、検知するまでに時間がかかることが想定される。将来的には、自動運転制御などの技術では、乗員の着座の有無をリアルタイムで検知することが好ましいので、検知するまでに時間が短いほど望ましい。
【0117】
すなわち、ビッグデータのサービス活用のためにコネクテッド・カーには乗員検知技術が求められるが、乗員検知のための装置構成は簡易化され、装置のコストが抑制され、乗員検知時間が短く、応答性が高く、精度が高い技術が要求される。しかし、上記従来の比較技術では、上記の将来的な要求を満たすことができないという課題がある。
【0118】
しかし、本実施形態に係わる構成によれば、車両等の移動体において、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置等を提供することが可能になる。
【0119】
以下に、本実施形態の乗員検知装置100および乗員検知システム1000の特徴について記載する。
【0120】
本発明の第1の態様に係る、移動体に配置され、移動体の座席に乗員が着座しているか否かを電波によって検知する乗員検知装置100には、初期動作モード、検知動作モード、更新動作モードの各動作モードが含まることが好ましい。乗員検知装置100が検知動作モードで動作する場合には、送信された電波の送信時から、反射体からの反射波が受信されるまでの反射時間によって乗員が座席に着座しているか否かを決定する反射時間判定値を決定する比較解析部153が含まれることが好ましい。反射体は座席に着座する乗員または座席に設置される被検反射体である場合と、座席に具備または隣接する反射体である場合がある。送信された電波の送信時から反射体からの反射波が受信されるまでの反射時間が反射時間判定値よりも小さい場合には、乗員が座席に着座していると判定する検知判定部155を含むことが好ましい。また、検知判定部155は、送信された電波の送信時から反射体からの反射波が受信されるまでの反射時間が反射時間判定値よりも大きい場合には、乗員が座席に着座していないと判定することが好ましい。
【0121】
上記構成によれば、車両等の移動体において、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置を提供することが可能となる。
【0122】
本発明の第2の態様に係る乗員検知装置100が初期動作モードで動作する場合には、電波の送受信方向を決定するための送受信指向性情報を決定する指向性制御部152を含むことが好ましい。指向性制御部152は、座席と乗員検知装置との間の電波の伝搬経路に電波障害物がない状態で、座席に具備または隣接する反射体からの反射波が受信されるビーム方向を送受信指向性情報として決定することが好ましい。比較解析部153は、送受信指向性情報によって、座席と乗員検知装置との間の伝搬経路に電波障害物がない状態で、座席に具備または隣接する反射体に送信した電波の送信時から反射体からの反射波の受信までの時間を示す基準反射時間を決定することが好ましい。また、比較解析部153は、送受信指向性情報にしたがって反射体と乗員検知装置との間の、座席に着座した乗員または座席に設置された被検反射体に送信した電波の反射波の受信までの時間を示す被検反射時間を決定することが好ましい。さらに、比較解析部153は、基準反射時間と被検反射時間との間の時間から反射基準判定値を決定することが好ましい。
【0123】
上記構成によれば、車両等の移動体において、乗員または座席に関連する反射体の反射体からの反射波を受信できるビーム方向を適切に決定するので、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することも可能となる。また、基準反射時間と被検反射時間との間の時間から反射基準判定値を決定するので、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にすることも可能となる。
【0124】
本発明の第3の態様に係る乗員検知装置100が更新動作モードで動作する場合には、以下の処理を実行することが好ましい。すなわち、指向性制御部152は、座席と乗員検知装置との間の電波の伝搬経路に電波障害物がない状態で、座席に具備または隣接する反射体からの反射波が受信されるビーム方向をあらたな送受信指向性情報として決定することが好ましい。比較解析部153は、あらたな送受信指向性情報によって、基準反射時間を再計測し、あらたな送受信指向性情報によって、被検反射時間を再計測し、再計測された基準反射時間と被検反射時間との間の時間をあらたな反射基準判定値として更新することが好ましい。
【0125】
上記構成によれば、車両等の移動体の経時的な変化があった場合には、更新動作モードによって、あらたな反射基準判定値を決定・更新することが可能であるので、乗員検知精度を維持・確保することも可能となる。また、座席に関連する反射体の位置が変化した場合においても、あらたなビーム方向を適切に決定することが可能になるので、簡易な装置構成でありながらも、乗員検知精度を確保することが可能になる。
【0126】
本発明の第4の態様に係る乗員検知装置100の送受信指向性情報は、反射波の振幅が最も大きいビーム方向を示す情報、または、反射波が測定可能な領域の中央部に電波を送信させるように向けるビーム方向を示す情報であることが好ましい。
【0127】
上記構成によれば、車両等の移動体において、電波を送受信するためのビーム方向を、反射波を測定するために適切な方向に簡易に決定することが可能になる。したがって、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置を提供することが可能となる。
【0128】
本発明の第5の態様に係る乗員検知装置100が検知動作モードで動作する場合に、反射波を判定できない、または、反射波の振幅のピーク値があらかじめ定められた値よりも小さい場合には、異常値制御部154が以下の処理を実行することが好ましい。すなわち、指向性制御部152によってビーム方向を変化させ、反射波が測定可能な領域を探索し、比較解析部153によって反射波が測定可能な領域の形状から、領域の形状が、乗員が着座している形状であるか否かを解析させるように制御することが好ましい。そして、検知判定部155によって領域の形状から乗員が座席に着座しているか否かを判定するように制御させることが好ましい。
【0129】
上記構成によれば、車両等の移動体において、座席に関連する反射体の位置が変化するなどして、反射波に異常値が発生した場合であっても、ビーム方向を走査し、反射波が測定可能な領域の形状から、乗員検知可能な構成とすることも可能である。したがって、反射波に関する電波環境に変化が生じた場合であっても、乗員検知装置は、自動的に適切に乗員検知を続行することが可能になる。
【0130】
本発明の第6の態様に係る乗員検知システム1000は、第1の態様から第5の態様のいずれかの乗員検知装置100と、移動体に配置された座席と、電波の指向性アンテナを含むことが好ましい。また、乗員検知装置100は、座席の前方であって、座席と乗員検知装置との間の電波の伝搬経路に電波障害物がない移動体の内部に配置され、反射体は座席の背もたれ部分に具備されることが好ましい。
【0131】
上記構成によれば、車両等の移動体において、すべての座席に置いて、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置を提供することが可能となる。また、座席と座席から前方の空間の反射波を利用するので、他の座席との干渉を抑制でき、乗員検知精度を高めることも可能となる。
【0132】
本発明の第7の態様に係る乗員検知システム1000において、座席の背もたれ部分に具備される反射体は電波を反射するマガジンラック、または、マガジンラックに設けられる反射シートであることが好ましい。
【0133】
上記構成によれば、車両等の移動体において、座席に関連したあらたな構成を必要としない、または、高価な構成を必要としないので、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保することが可能になる。
【0134】
本発明の第8の態様に係る乗員検知システム1000は、第1の態様から第5の態様のいずれかの乗員検知装置100と、移動体に配置された座席と、電波の指向性アンテナを含むことが好ましい。また、乗員検知装置100は、座席の上方であって、座席と乗員検知装置との間の電波の伝搬経路に電波障害物がない移動体の内部に配置され、座席に隣接する反射体は、座席の下方に配置されることが好ましい。
【0135】
上記構成によれば、車両等の移動体において、すべての座席に置いて、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置を提供することが可能となる。また、座席と座席から上方の空間の反射波を利用するので、他の座席との干渉を抑制でき、乗員検知精度を高めることも可能となる。
【0136】
本発明の第9の態様に係る乗員検知システム1000において、座席に隣接する反射体は、電波を反射する、移動体を構成する、座席の直下に設けられる床部材、または、電波を反射する、座席の直下に設けられる反射シートであることが好ましい。
【0137】
上記構成によれば、車両等の移動体において、座席に関連したあらたな構成を必要としない、または、高価な構成を必要としないので、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保することが可能になる。
【0138】
本発明の第10の態様に係る乗員検知システム1000において、移動体は車両であって、乗員検知装置100は車両の座席ごとに設置されることが好ましい。
【0139】
上記構成によれば、車両において、座席ごとに、周波数解析等の演算処理が不要であり、装置構成を簡易にしながらも、乗員検知精度を確保し、短時間で乗員を検知することが可能な乗員検知装置を提供することが可能となる。また、座席間の電波干渉を抑制することが可能な構成であるので、演算が容易であっても、乗員検知精度を確保することが可能になる。
【0140】
上述した実施形態の説明に用いた
図4のブロック構成図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックを実現する方法は、特に限定されない。例えば、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的または間接的に接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、1つの装置または複数の装置に、ソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0141】
乗員検知装置100が、複数のハードウェア要素で構成される場合、各機能ブロックは、何れかのハードウェア要素、又は当該ハードウェア要素の組み合わせによって実現される。ハードウェア要素として、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信装置、入力装置、出力装置、バスなどが挙げられる。
【0142】
また、この場合、乗員検知装置100の各機能は、プロセッサ、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェアまたはプログラムを読み込ませることによって実現される。具体的には、各機能は、ハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、プロセッサが演算を行い、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みを制御することによって実現される。
【0143】
実施形態につき、図面を参照して詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0144】
100 乗員検知装置
110 送信信号処理部
120 送信部
130 受信部
140 受信信号処理部
150 制御部
151 計時部
152 指向性制御部
153 比較解析部
154 異常値制御部
155 検知判定部
156 モード判定制御部
160 記憶部
170 外部I/F部
1000 乗員検知システム