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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】筒状体
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/04 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
F16L11/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020150302
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022044914
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹志
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-059790(JP,A)
【文献】実開昭58-056289(JP,U)
【文献】特開2006-200586(JP,A)
【文献】実開昭60-079071(JP,U)
【文献】実開昭58-196497(JP,U)
【文献】実開昭57-075288(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する筒状体であり、
前記筒状体の内周面に、前記筒状体の長手方向に沿って延びた突条部が設けられており、
前記筒状体は、発泡体であり、
前記内周面に、突合わせ面なく全周に亘って連続する内周側スキン層が形成され、
前記筒状体の外周面は、凹凸形状を有しておらず、前記外周面に、突合わせ面なく全周に亘って連続する外周側スキン層が形成され、
前記内周側スキン層と前記外周側スキン層との間に、突合わせ面なく全周に亘って連続する発泡層が形成されている、筒状体。
【請求項2】
以下の算出方法によって算出された前記筒状体の製品伸びが、180%以上500%以下である、請求項1に記載の筒状体。
(算出方法)
前記筒状体から全長20mmの試料片を裁断する。試験片を径方向両側から前記内周面が密着するまで押さえて、前記内周面の最大径L1を測定する。次に、試験片に2本のパイプを挿入し、引張試験機にてパイプを互いに離れる方向に移動させる。この際、引っ張り速度は500mm/minとする。試験片が破断するまでパイプを移動させて、破断時の前記内周面の最大径L2を測定する。次式を用いて製品伸びを算出する。
【数1】

A :製品伸び
L1:前記内周面が密着するまで押さえた際の前記内周面の最大径(mm)
L2:破断時の前記内周面の最大径(mm)
【請求項3】
下記の式で算出された前記筒状体の見掛比重が、0.10以上0.50以下である、請求項1または請求項2に記載の筒状体。
【数2】


B :見掛比重
W1:試験片の空気中での質量(g)
W2:試験片の水中での質量(g)
【請求項4】
伸縮性を有する筒状体であり、
前記筒状体の内周面に、前記筒状体の長手方向に沿って延びた突条部が設けられており、
前記突条部の外周面には、前記突条部に対して外周側に重なる位置に、前記筒状体の長手方向に沿って延びる凹条部が設けられており、
前記筒状体は、発泡体であり、
前記内周面に、突合わせ面なく全周に亘って連続する内周側スキン層が形成され、
前記筒状体の外周面に、突合わせ面なく全周に亘って連続する外周側スキン層が形成され、
前記内周側スキン層と前記外周側スキン層との間に、突合わせ面なく全周に亘って連続する発泡層が形成されており、
前記突条部以外の部位における前記筒状体の厚みは、前記突条部の高さよりも大きい、筒状体。
【請求項5】
前記筒状体は円筒状であり、前記突条部の数が3以上5以下である、請求項4に記載の筒状体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筒状体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低摩擦係数シート筒状体付き弾性自己収縮チューブが開示されている。この弾性自己収縮チューブは、弾性チューブを拡径状態で拡径保持筒体の外周に支持させた構造である。弾性自己収縮チューブは、弾性チューブを拡径して拡径保持筒体に挿入する際に、拡径すべき弾性チューブと拡径保持筒体との間に低摩擦係数シートを介在させ滑らせることにより圧入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-156939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の弾性自己収縮チューブは、弾性チューブと拡径保持筒体との間に低摩擦係数シートを介在させる必要がある。低摩擦係数シートに係る部品点数を削減し、低摩擦係数シートを設ける手間を省くために、低摩擦係数シートを介在させることなく、弾性チューブのような筒状体に被挿入部材を容易に挿入する技術が求められている。筒状体に被挿入部材を容易に挿入するために、筒状体の内径を大きくすることが考えられる。しかし、筒状体の内径を大きくした場合、筒状体が被挿入部材に十分に保持されない懸念がある。
【0005】
本開示は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、被挿入部材を挿入しやすく、被挿入部材に対する保持力が確保された筒状体を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕伸縮性を有する筒状体であり、
前記筒状体の内周面に、前記筒状体の長手方向に沿って延びた突条部が設けられている、筒状体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被挿入部材を挿入しやすく、被挿入部材に対する保持力が確保された筒状体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るインシュレーターの装着状態を示す図である。
図2】インシュレーターの側面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】インシュレーターの挿入荷重を測定する方法を説明するための図である。
図5】インシュレーターの製品伸びを測定する方法を説明するための図である。
図6】インシュレーターの製品伸びを測定する方法を説明するための図である。
図7】第2の実施形態に係るインシュレーターの断面図である。
図8】第3の実施形態に係るインシュレーターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記突条部は、前記筒状体の内周面において略全長に亘って延びている、〔1〕に記載の筒状体。
【0010】
〔3〕前記突条部は、前記筒状体の周方向に間隔を空けて3つ以上設けられている、〔1〕または〔2〕に記載の筒状体。
【0011】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0012】
第1の本実施形態では、筒状体として、インシュレーター10を例示する。インシュレーター10は、図1に示されるように、車両空調用の冷凍サイクル装置における配管5に装着されている。配管5はインシュレーター10に挿入される被挿入部材の一例である。冷凍サイクル装置は、少なくとも圧縮機、コンデンサ、膨張弁2、エバポレータ3を含む複数の冷凍サイクル機能品と、冷凍サイクル機能品同士を接続する配管によって構成されている。配管5は、膨張弁2の出口側に接続されて、膨張弁2を通過した低圧かつ低温の冷媒が流通する。配管5は、冷凍サイクル機能品のレイアウトに応じて曲がった形状をなしている。インシュレーター10は、配管5の表面における結露を抑制している。インシュレーター10は、外部の衝撃から配管5を保護している。配管5は、冷媒が配管5の内壁を打つ振動や、膨張弁2の作動時における膨張弁2の振動によって、振動音を発生する場合がある。インシュレーター10は、配管5の振動音を低減している。
【0013】
インシュレーター10は、図2及び図3に示されるように、断面略円形の円筒状に形成されている。インシュレーター10は、自然状態において中心軸線Xが略直線状に延びた形状である。インシュレーター10は、配管5に装着された状態において、配管5の形状に応じて曲げられている。
【0014】
インシュレーター10は、伸縮性を有する筒状体である。インシュレーター10の材料は、種々のエラストマー材料から選択することができる。インシュレーター10の材料は、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、およびNBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、耐候性及び耐熱性の観点から、EPDMであることがより好ましい。
【0015】
インシュレーター10は、断熱性及び軽量化の観点から、発泡体であることが好ましい。インシュレーター10は、内周面11にインシュレーター10の内部よりも発泡倍率が小さいスキン層14を有していてもよい。内周面11にスキン層14が形成された構成によれば、例えば内周面が発泡層の切断面である構成に比して、配管5を挿入する際の摩擦抵抗を低減できる。また、内周面11にスキン層14が形成された構成によれば、突条部20が変形しにくく、インシュレーター10の配管5に対する保持力を確保しやすい。インシュレーター10は、外周面12にもインシュレーター10の内部よりも発泡倍率が小さいスキン層14を有していてもよい。なお、図3図7及び図8では、説明の便宜のためにスキン層14を実際よりも厚く描いている。
【0016】
インシュレーター10の内周面11には、図3に示すように、インシュレーター10の長手方向に沿って延びた突条部20が設けられている。突条部20は、インシュレーター10の略全長に亘って延びていることが好ましい。突条部20は、例えば、インシュレーター10を径方向に切断した断面視にて山型をなしている。突条部20は、頂面21と、頂面21の両側に位置する斜面22,23とを有している。頂面21は、径方向内側に向けて盛り上がった凸面状をなしている。インシュレーター10の外周面12は、凹凸形状を有しない、中心軸線Xを中心とする円周面である。
【0017】
突条部20の高さは、特に限定されない。突条部20の高さは、インシュレーター10の内径を100%とした場合に、0%より大きく、4%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。上記の突条部20の高さは、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。インシュレーター10の内径は、インシュレーター10に内接する仮想的な円の直径であり、例えば、図3に示す複数の突条部20に内接する仮想的な円C1の直径である。
突条部20の高さが下限以上であると、配管5と内周面11の接触面積を小さくして、配管5を挿入する際の摩擦抵抗を低減できる。また、突条部20の高さの分だけ、突条部20を除いた部位の厚みを小さくすることによって、インシュレーター10の伸張性(製品伸び)が向上して、インシュレーター10に配管5を挿入しやすくなる。さらに、突条部20の高さの分だけ、突条部20を除いた部位の厚みを小さくすることによって、インシュレーター10に用いられる材料を削減することができる。突条部20の高さが上限以下であると、突条部20を除いた部位の厚みを十分に確保して、インシュレーター10の配管5に対する保持力を確保できる。
これらの観点から、上記の突条部20の高さは、0%より大きく20%以下であることが好ましく、4%以上15%以下であることがより好ましく、6%以上10%以下であることがさらに好ましい。具体的には、インシュレーター10の内径が13mmである場合に、突条部20の高さは、0.0mmより大きく2.6mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以上1.3mm以下であることがさらに好ましい。
【0018】
突条部20の数は特に限定されない。突条部20は、1つであっても、複数であってもよい。突条部20は、インシュレーター10の周方向に間隔を空けて3つ以上設けられていることが好ましい。インシュレーター10を径方向に切断した断面視にて、インシュレーター10が配管5に3カ所以上において接触する場合には、インシュレーター10が配管5に対して四方にがたつきにくく、インシュレーター10が安定的に保持される。突条部20は、製造コストの面から、8つ以下であることが好ましい。突条部20は、安定的な保持と製造コストのバランスを考慮して、3つ以上5つ以下であることが好ましく、4つであることが特に好ましい。3つ以上の突条部20は、インシュレーター10の安定的な保持の観点から、周方向について等間隔に配列されていることがより好ましい。
【0019】
複数の突条部20に内接する仮想的な円C1は、インシュレーター10の中心軸線Xを中心とする円である。複数の突条部20に内接する仮想的な円C1の直径は、配管5の外径と同じか、配管5の外径よりも小さいことが好ましい。インシュレーター10が配管5に装着された状態において、突条部20の頂面21は配管5の外周面に接触する。例えば、複数の突条部20に内接する仮想的な円C1の直径が配管5の外径と同じ場合には、突条部20の頂面21が配管5の外周面に線接触する。複数の突条部20に内接する仮想的な円C1の直径は、5mm以上40mm以下とすることができる。
【0020】
インシュレーター10の内周面11には、隣り合う突条部20,20の間において、インシュレーター10の長手方向に沿って延びた溝部30が形成されている。溝部30は、底面31と、隣り合う突条部20における互いに対向する斜面22,23とによって形成されている。底面31は、インシュレーター10を径方向に切断した断面視にて、中心軸線Xを中心とする円の円弧状に延びている。
【0021】
複数の底面31を繋いだ仮想的な円C2は、インシュレーター10の中心軸線Xを中心とする円である。複数の底面31を繋いだ仮想的な円C2の直径は、配管5の外径よりも大きい。配管5の外周面と底面31との間には隙間が形成される。この隙間には、インシュレーター10が配管5に装着された状態において、空気が存在することが好ましい。この構成によれば、配管5と外周面12との間に空気層を介在させることによって、インシュレーター10の断面積が小さくなった場合であってもインシュレーター10の断熱性能を確保できる。インシュレーター10と配管5の間に潤滑油を注して配管5をインシュレーター10に挿入する場合には、上記の隙間の少なくとも一部に潤滑油が貯留されてもよい。
【0022】
突条部20におけるインシュレーター10の厚みT1は、1.0mm以上65mm以下であることが好ましく、1.5mm以上45mm以下であることがより好ましく、2.0mm以上35mm以下であることがさらに好ましい。厚みT1は、図3に示す頂面21と外周面12の間の寸法である。
突条部20以外の部位(溝部30)におけるインシュレーター10の厚みT2は、0.5mm以上60mm以下であることが好ましく、1.0mm以上40mm以下であることがより好ましく、1.5mm以上30mm以下であることがさらに好ましい。厚みT2は、図3に示す底面31と外周面12の間の寸法である。
インシュレーター10の厚みT1,T2が下限以上であると、インシュレーター10の剛性が向上して、配管5に対する保持力を大きくできる。インシュレーター10の厚みT1,T2が上限以下であると、インシュレーター10の伸張性が向上し、インシュレーター10に配管5を挿入しやすくなる。
【0023】
インシュレーター10は、例えば、次のようにして配管5に装着することができる。作業者は、まず、インシュレーター10の内周面11又は配管5の外周面に潤滑油を塗布する。次に、インシュレーター10における一端側の開口に配管5の端部を差し込む。配管5に対してインシュレーター10を挿入方向に移動させて、インシュレーター10に配管5を押し込む。配管5の挿入量が大きくなる程、配管5とインシュレーター10の内周面11の接触面積が大きくなり、インシュレーター10に配管5を挿入する際の摩擦抵抗が増大する。インシュレーター10への配管5の挿入は、圧力を加えて押し込む、いわゆる圧入である。
配管5に対してインシュレーター10を挿入する過程で、配管5の曲がり形状に応じて、インシュレーター10が伸縮変形する。この配管5の曲がり形状は、インシュレーター10に配管5を圧入する際に摩擦抵抗が増大する一因となる。
インシュレーター10が所定の位置まで移動されて、配管5の端部がインシュレーター10の他端側の開口から外部に出ると、インシュレーター10の装着が完了する。この状態では、インシュレーター10の突条部20が配管5の外周面に接触して、インシュレーター10が配管5に保持される。
【0024】
インシュレーター10の挿入荷重は、図4に示す試験治具40が装着されたオートグラフを用いて測定できる。試験治具40としては、金属製のインシュレーター挿入荷重測定用治具を用いることができる。試験治具40は、円柱状の小径部41と、小径部41より径の大きい円柱状の大径部42とを有し、小径部41と大径部42の外周面がテーパ面で繋がれた形状である。小径部41の直径は、複数の突条部20に内接する仮想的な円C1の直径と同じである。大径部42の直径は、小径部41の直径の2倍である。測定に際し、試験治具40の表面に潤滑油(ND-OIL)を1ml塗布する。インシュレーター10の一端側の開口に、試験治具40を小径部41側から手で挿入する。そして、インシュレーター10の一端が大径部42に達して、大径部42がインシュレーター10に挿入されるときの荷重の最大値をインシュレーター10の挿入荷重とする。
インシュレーター10の挿入荷重は、挿入性を向上する観点から、45N以下であることが好ましく、35N以下であることがより好ましく、25N以下であることがさらに好ましい。インシュレーター10の挿入荷重は、0Nより大きく、インシュレーター10の配管5に対する保持力を考慮して、10N以上とすることができる。
【0025】
インシュレーター10の製品伸びは、配管5の挿入性の観点から、180%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、220%以上であることがさらに好ましい。インシュレーター10の製品伸びは、通常、500%以下である。
インシュレーター10の製品伸びは、例えば、次のようにして算出できる。インシュレーター10から全長20mmの試料片を裁断する。図5に示すように、試験片を径方向両側から内周面11が密着するまで押さえて、内周面11の最大径L1を測定する。次に、試験片に2本のパイプを挿入し、図6に示すように、引張試験機にてパイプを互いに離れる方向に移動させる。この際、引っ張り速度は500mm/minとする。試験片が破断するまでパイプを移動させて、破断時の内周面11の最大径L2を測定する。次式を用いて製品伸びを算出する。
【0026】
【数1】

A :製品伸び
L1:内周面11が密着するまで押さえた際の内周面11の最大径(mm)
L2:破断時の内周面11の最大径(mm)
【0027】
インシュレーター10の見掛比重は、生産性の観点から、0.10以上であることが好ましく、0.12以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。インシュレーター10の見掛比重は、断熱性及び生産コストの観点から、0.50以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましい。これらの観点から、インシュレーター10の見掛比重は、0.10以上0.50以下であることが好ましく、0.12以上0.40以下であることがより好ましく、0.15以上0.35以下であることがさらに好ましい。
インシュレーター10の見掛比重は、例えば、次のようにして算出できる。インシュレーター10から約2cm~3cm角の試験片を切り取る。試験片の空気中での質量W1を測定する。その後、試験片の水中での質量W2を測定する。次式を用いて見掛比重を算出する。
【0028】
【数2】

B :見掛比重
W1:試験片の空気中での質量(g)
W2:試験片の水中での質量(g)
【0029】
インシュレーター10は、例えば、公知の押出成形方法によって製造することができる。インシュレーター10がゴム発泡体である場合には、押出成形の直後に加硫する連続加硫を行って製造することができる。
【0030】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
本開示のインシュレーター10は、伸縮性を有する筒状体であり、インシュレーター10の内周面11に、インシュレーター10の長手方向に沿って延びた突条部20が設けられている。インシュレーター10は、突条部20が設けられているから、配管5と内周面11の接触面積を小さくして、配管5を挿入する際の摩擦抵抗を低減できる。また、インシュレーター10は、突条部20が配管5に接触することによって、単に内径を大きくした構成に比して、配管5に対する保持力を向上できる。したがって、配管5を挿入しやすく、配管5に対する保持力が確保されたインシュレーター10を提供できる。
【0031】
本実施形態の突条部20は、インシュレーター10の内周面11において略全長に亘って延びている。この構成によれば、配管5を突条部20に沿わせてインシュレーター10に挿入しやすい。
【0032】
本実施形態の突条部20は、インシュレーター10の周方向に間隔を空けて3つ以上設けられている。この構成によれば、インシュレーター10の挿入性と配管5に対する保持力の確保を好適に両立することができる。
【0033】
インシュレーター10は、突条部20の高さが大きい程、挿入性が向上するとともに材料コストが低減するものの、配管5に対する保持力が低下する傾向がある。また、インシュレーター10は、突条部20の数が多い程、配管5に対する保持力は確保されるものの、インシュレーター10の挿入性が悪化するとともに材料コストが高くなる傾向がある。本実施形態のインシュレーター10は、配管5の外径、長さ、形状等に応じて、突条部20の高さと突条部20の数を調整することで、挿入性及び材料コストと、配管5に対する保持力のバランスをコントロールすることができる。
【0034】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0035】
第2の実施形態のインシュレーター110の外周面12には、図7に示すように、突条部20に対して外周側に重なる位置に、インシュレーター110の長手方向に沿って延びた凹条部16が設けられている。この構成によれば、突条部20によってインシュレーター10の厚みT1を確保しつつ、凹条部16の容積に対応する分だけインシュレーター10に用いられる材料を削減できる。なお、上記の実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
第3の実施形態のインシュレーター210は、図8に示すように、突条部220の形状が上記の実施形態の突条部20の形状と相違する。突条部220の頂面21は、インシュレーター10を径方向に切断した断面視にて、中心軸線Xを中心とする円の円弧状に延びている。この構成によれば、突条部20の頂面21が配管5の外周面に接触し易く、配管5に対する保持力を確保できる。なお、上記の実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
上記実施形態以外にも、突条部の突出高さ、数、形状は適宜変更可能である。また、インシュレーターの内周面及び外周面の形状、インシュレーターの各部の厚みは適宜変更可能である。
本開示の筒状体はインシュレーターに限定されない。筒状体には、配管以外の被挿入部材が挿入されてもよい。被挿入部材の外径、長さ、形状、用途に応じて、筒状体の材料、材質、大きさ、形状は適宜変更可能である。
【実施例
【0038】
以下、実施例により本開示を更に具体的に説明する。
なお、実験例2,3は実施例であり、実験例1は比較例である。表において、「実験例1*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。
【0039】
1.実験例1~3
(1)インシュレーターの作製
EPDM発泡体で形成された、実験例1~3のインシュレーターを作製した。
実験例1は、突条部を有しない、円筒状とした。
実験例2は、図3に示すような4つの突条部を設けた。各突条部の突出高さは1.0mmであった。外周面は、凹凸形状を有しない、中心軸線Xを中心とする円周面とした。
実験例3は、図7に示すような4つの突条部を設けた。各突条部の突出高さは1.0mmであった。外周面には、突条部に対して外周側に重なる位置に、図7に示すような凹条部を設けた。凹条部の深さは1.64mmであった。
各実験例におけるインシュレーターの「内径(mm)」、「外径(mm)」、「肉厚(mm)」は表1に示す通りであった。なお、実施例2,3において、インシュレーターの内径は、複数の突条部20に内接する仮想的な円C1の直径である。実施例3において、インシュレーターの外径は、インシュレーターに外接する仮想的な円の直径である。厚みT1は突条部におけるインシュレーターの厚みである。厚みT2は突条部以外の部位におけるインシュレーターの厚みである。
【0040】
(2)見掛比重及び挿入荷重の測定
実験例1~3の見掛比重と挿入荷重を、実施形態に記載の方法で測定した。その結果を表1の「比重」と「挿入荷重(N)」の欄に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(3)結果
突条部が設けられた実験例2,3は、突条部が設けられていない実験例1よりも挿入荷重が小さいことが確認された。この結果から、突条部が設けられたインシュレーターは、被挿入部材に挿入しやすいことが示唆された。
【0043】
2.実施例の効果
以上の実施例によれば、被挿入部材を挿入しやすく、被挿入部材に対する保持力が確保されたインシュレーターを提供することができる。
【0044】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10,110,210…インシュレーター(筒状体)
11…内周面
20,220…突条部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8