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  • 特許-トナー及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】トナー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240910BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G03G9/097 346
G03G9/08 381
G03G9/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020153596
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047682
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 孝信
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-075307(JP,A)
【文献】特開2017-049597(JP,A)
【文献】特開2009-093088(JP,A)
【文献】特開平10-020560(JP,A)
【文献】特開2015-184329(JP,A)
【文献】特表2013-539054(JP,A)
【文献】特開2007-249088(JP,A)
【文献】特開平08-240982(JP,A)
【文献】特開2018-084601(JP,A)
【文献】特開2002-372810(JP,A)
【文献】特開2009-199052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤、及び荷電制御剤を含むトナー粒子を有するトナーであって、
前記トナー粒子は、粉砕トナー粒子であり、
前記トナー粒子の体積平均粒径をDt、前記トナー粒子中における前記荷電制御剤の数平均分散粒径をDcとすると、Dc/Dtが0.13以上0.14以下であり、
前記トナー粒子中における前記荷電制御剤の粒度分布において、小粒径側からの累積個数%が90%になる粒子の分散粒径をDc90、小粒径側からの累積個数%が10%になる粒子の分散粒径をDc10とすると、Dc90/Dc10が2.3以上2.7以下であり、
前記トナー中における前記荷電制御剤の付着強度が50%以上65%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーであって、
前記トナー粒子の体積平均粒径が4μm以上9μm以下であることを特徴とするトナー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記トナー中における個数平均粒径4μm以下のトナー粒子の含有率が30%未満であることを特徴とするトナー。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1つに記載のトナーの製造方法であって、
前記結着樹脂、前記着色剤及び前記荷電制御剤を含む原料を混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を溶融混練する溶融混練工程と、
前記溶融混練工程で得られた混練物を冷却固化してから粉砕する冷却粉砕工程と、
前記冷却粉砕工程で得られた粉砕物を、第1粉砕粒子と、第1粉砕粒子より小さい体積平均粒径を有する第2粉砕粒子と、第1粉砕粒子より大きい体積平均粒径を有する第3粉砕粒子とに分級して、第1粉砕粒子をトナー粒子として回収する分級工程とを含み、
前記第2粉砕粒子中に含まれる前記荷電制御剤の量をA、前記第1粉砕粒子中に含まれる前記荷電制御剤の量をBとすると、A/B×100で規定される前記荷電制御剤の偏析率が、102%以上130%以下であることを特徴とするトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、複合機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に使用されるトナー(静電荷像現像用のトナー)は、通常、トナー粒子中に、結着樹脂、離型剤、着色剤、及び荷電制御剤等を含み、これらの成分はまとめて内添剤とも呼ばれる。
【0003】
小粒径のトナーにおいては、内添剤の分散状態が悪いと、トナー粒子一つ一つの間に組成ずれが発生しやすい。内添剤の中でも、荷電制御剤の分散状態が悪いと、トナー帯電量分布がブロードになり、トナー粒子の飛散やカブリ等の画像不良が発生するという問題がある。一方、荷電制御剤が過分散状態になると、荷電制御剤がトナー粒子表面に露出しなくなり、荷電制御剤としての機能が著しく低下し、リーク効果が期待できなくなるという問題がある。
【0004】
特許文献1には、非磁性一成分現像方式におけるトナーにおいて、長期に亘ってトナーの帯電及び搬送を安定化する目的で、トナーに特定の荷電制御剤を使用するとともに、その荷電制御剤の分散状態として、トナー粒子の体積平均粒径と使用する荷電制御剤の平均分散径との間に特定の関係を有するトナーを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-20560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、トナー粒子の飛散やカブリ等の画像不良の発生を抑制することができるトナー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研鑽した結果、結着樹脂、着色剤、及び荷電制御剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいては、トナー粒子の体積平均粒径、荷電制御剤の数平均分散粒径、及び荷電制御剤の粒度分布を次のように制御することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によるトナーは、結着樹脂、着色剤、及び荷電制御剤を含むトナー粒子を有するトナーであって、当該トナー粒子の体積平均粒径をDt、当該荷電制御剤の数平均分散粒径をDcとすると、Dc/Dtが0.1以上0.2以下であり、当該荷電制御剤の粒度分布において、小粒径側からの累積個数%が90%になる粒子の粒径をDc90、小粒径側からの累積個数%が10%になる粒子の粒径をDc10とすると、Dc90/Dc10が3.0以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明によるトナーの製造方法は、上記トナーの製造方法であって、結着樹脂、着色剤及び荷電制御剤を含む原料を混合する混合工程と、当該混合工程で得られた混合物を溶融混練する溶融混練工程と、当該溶融混練工程で得られた混練物を冷却固化してから粉砕する冷却粉砕工程と、当該粉砕物を、第1粉砕粒子と、第1粉砕粒子より小さい体積平均粒径を有する第2粉砕粒子と、第1粉砕粒子より大きい体積平均粒径を有する第3粉砕粒子とに分級して、第1粉砕粒子をトナー粒子として回収する分級工程とを含み、上記第2粉砕粒子中に含まれる上記荷電制御剤の量をA、上記第1粉砕粒子中に含まれる上記荷電制御剤の量をBとすると、A/B×100で規定される上記荷電制御剤の偏析率が、102%以上130%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、トナー粒子の飛散やカブリ等の画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のトナーの製造方法の第1の実施形態を示す工程図である。
図2】本発明のトナーの製造方法の第2の実施形態を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るトナー及びその製造方法について、詳細に説明する。
【0013】
<トナー・トナー粒子>
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、及び荷電制御剤を含むトナー粒子を有する。さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。
【0014】
本発明のトナーは、トナー粒子の体積平均粒径をDt、荷電制御剤の数平均分散粒径をDcとすると、Dc/Dtが0.1以上0.2以下であり、当該荷電制御剤の粒度分布において、小粒径側からの累積個数%が90%になる粒子の粒径をDc90、小粒径側からの累積個数%が10%になる粒子の粒径をDc10とすると、Dc90/Dc10が3.0以下である。
【0015】
Dc/Dtが0.1未満の場合、トナーがチャージアップしてしまうおそれがある。Dc/Dtが0.2を超える場合、荷電制御剤の効果が小さくなりカブリが発生するおそれがある。
【0016】
Dc90/Dc10が3.0を超える場合、荷電制御剤の効果が小さくなりカブリが発生するおそれがある。また、Dc90/Dc10は1.0以上であることが好ましい。Dc90/Dc10が1.0未満の場合、微粉や粗粉の割合が生産上多くなり、生産性が悪化するおそれがある。
【0017】
Dc/DtとDc90/Dc10とが上記条件を満たすことにより、トナー粒子の体積平均粒径に合わせて、荷電制御剤の数平均分散粒径と、荷電制御剤の粒度分布とを制御したトナーとなる。これにより、トナー粒子の飛散やカブリ等の画像不良の発生を抑制することができる。
【0018】
トナー粒子の体積平均粒径は、特に限定されないが、3μm以上15μm以下であることが好ましく、4μm以上9μm以下であることがより好ましく、5μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。このような小さな粒径を有するトナー粒子は、適度な帯電量を有し、十分な流動性も確保することができる。このため、トナー粒子を感光体に安定して供給することができ、鮮明且つ高精細な画像を形成することができると共に、トナー粒子の飛散による機内汚染の発生も防止することができる。
【0019】
<結着樹脂>
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂のようなポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びエポキシ系樹脂等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
結着樹脂に用いられるポリエステル樹脂は、通常、2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上とを、公知の方法により、エステル化反応又はエステル交換反応を介して重縮合反応させることにより得られる。
【0021】
縮重合反応における条件は、モノマー成分の反応性により適宜設定すればよく、また重合体が好適な物性になった時点で反応を終了させればよい。例えば、反応温度は170~250℃程度、反応圧力は5mmHg~常圧程度である。
【0022】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA;ビスフェノールAのプロピレン付加物;ビスフェノールAのエチレン付加物;水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0023】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース(蔗糖)、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、上記の2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
2価のカルボン酸として、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0026】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、上記の2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ポリエステル樹脂は、3000~50000の重量平均分子量を有するのが好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が3000未満の場合、定着可能領域(非オフセット域)の高温側における剥離性が悪くなるおそれがある。一方、ポリエステル樹脂の重量平均分子量が50000を超える場合、低温定着性が悪くなるおそれがある。
【0029】
ポリエステル樹脂は、5~30mgKOH/gの酸価を有するのが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/g未満の場合、ポリエステル樹脂の帯電特性が低下し、また荷電制御剤がポリエステル樹脂中に分散し難くなり、帯電立ち上がり性や連続使用時の帯電安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、ポリエステル樹脂の酸価が30mgKOH/gを超える場合、吸湿性が高くなり帯電性が不安定になるおそれがある。
【0030】
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、正電荷制御用又は負電荷制御用の荷電制御剤を用いることができる。
【0031】
正電荷制御用の荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料及びその誘導体、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩等を挙げることができる。
【0032】
一方、負帯電用の荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸及びその誘導体の金属錯体及び金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウム等)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸等が挙げられる。
【0033】
本発明のトナー中における荷電制御剤の含有量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.1重量部~3重量部であることが好ましく、0.2重量部~2重量部であることが特に好ましい。
【0034】
本発明に係るトナー中における荷電制御剤の付着強度は、30%以上80%以下であることが好ましく、35%以上75%以下であることがより好ましく、50%以上65%以下であることがさらに好ましい。荷電制御剤の付着強度が上記下限未満の場合、荷電制御剤の効果が小さくなり、チャージアップの原因となるおそれがある。一方、荷電制御剤の付着強度が上記上限を超える場合、カブリが悪化するおそれがある。
【0035】
トナー中における荷電制御剤の付着強度は、トナーに対して振動を与えたときの荷電制御剤の残存率を求めることで測定することができる。具体的には、蛍光X線分析等によりトナー粒子上に存在する荷電制御剤由来の元素を定量分析するステップ、トナーに対して水中で超音波を印加するステップ、及び、超音波印加後におけるトナー粒子上の荷電制御剤由来の元素を定量分析し荷電制御剤の残存率を算出するステップを実行する方法により測定することができる。
【0036】
<離型剤>
離型剤としては、例えば、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体等の石油系ワックス;フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、ポリプロピレンワックス及びその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックス等)及びその誘導体等の炭化水素系合成ワックス;カルナバワックス及びその誘導体、ライスワックス及びその誘導体、キャンデリラワックス及びその誘導体、木蝋等の植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋等の動物系ワックス;脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステル及びその誘導体等の油脂系合成ワックス;シリコーン系重合体、高級脂肪酸等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物等が含まれる。離型剤の含有量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.5~10重量部であるのがより好ましい。
【0037】
<着色剤>
着色剤としては、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの顔料や染料が挙げられる。なお、トナーの色は、これに限らず、他の色に着色してもよく、その色に応じた着色剤を用いてもよい。
【0038】
ブラックの着色剤としては、例えば、カーボンブラック及び複合酸化物ブラック等の無機顔料;アニリンブラックのような有機顔料が挙げられる。
【0039】
カーボンブラックは、その製造法等により、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック及びアセチレンブラック等に分類され、これらの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択することができる。
【0040】
イエローの着色剤としては、例えば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、及びC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180及びC.I.ピグメントイエロー185等の有機顔料;C.I.アシッドイエロー1等のニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19及びC.I.ソルベントイエロー21等の油溶性染料等が挙げられる。
【0041】
マゼンタの着色剤としては、例えば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10及びC.I.ディスパーズレッド15等の有機顔料が挙げられる。
【0042】
シアンの着色剤としては、例えば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、C.I.ダイレクトブルー86及びKET.BLUE111等の有機顔料が挙げられる。
【0043】
<その他の任意成分>
その他の任意成分としては、例えば、磁性材料が挙げられる。磁性材料としては、例えば、マグネタイト粉、γ-ヘマタイト粉、各種フェライト粉等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
<トナーの製造方法>
[第1の実施形態]
図1は、本発明のトナーの製造方法の第1の実施形態を示す工程図である。図1に示すトナーの製造方法は、乾式法による粒子製造方法であり、混合工程S1と、溶融混練工程S2と、冷却粉砕工程S3と、分級工程S4と、外添工程S5とを含む。
【0045】
(混合工程S1)
混合工程S1では、樹脂材料(結着樹脂)、離型剤、荷電制御剤、着色剤及び磁性材料を混合機によって乾式混合して混合物を作製する。このとき、これらの原材料の全てを一度に混合するようにしてもよいが、荷電制御剤や着色剤以外の原材料を混合した後、荷電制御剤を混合し、その後着色剤を混合することが好ましい。後者の方法を用いることにより、溶融混練工程S2で得られる混練物中において、荷電制御剤の粒子のサイズを調整し易くなる。
【0046】
特に、混合物中に着色剤及び磁性材料を添加する場合には、次のようにすることが好ましい。
【0047】
まず、樹脂材料及び着色剤を含むマスターバッチを作製する。これにより、着色剤を樹脂材料(ひいては混練物)中に均一に分散させることができる。マスターバッチは、例えば、樹脂材料及び着色剤を混合機で乾式混合した後、混練機で溶融混練して混練物を得、この混練物を粉砕機で粉砕(粗粉砕)することにより作製することができる。
【0048】
この際の混合時間は、好ましくは60~180秒程度であり、より好ましくは90~150秒程度である。また、混練温度は、樹脂材料の軟化温度によるが、好ましくは50~180℃程度であり、より好ましくは90~150℃程度である。
【0049】
混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)のようなヘンシェルタイプの混合機、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
混練機としては、例えば、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミル、ラボブラストミル等が挙げられる。具体的な混練機としては、例えば、TEM-100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM-65/87、PCM-30(いずれも商品名、株式会社池貝製)のような1軸又は2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)のようなオープンロール方式の混練機等が挙げられる。
【0051】
また、粉砕機としては、例えば、ハンマーミル、カッティングミル、スピードミル等が挙げられる。なお、マスターバッチの平均粒径(例えば、体積平均粒径)は、通常1~5mm程度とされる。
【0052】
次に、マスターバッチ、樹脂材料、離型剤及び磁性材料を、前記と同様の混合機を用いて混合して、第1混合物を得る。なお、この際の混合時間は、好ましくは60~200秒程度であり、より好ましくは90~180秒程度である。
【0053】
最後に、得られた第1混合物及び荷電制御剤を、前述したような混合機を用いて混合して、第2混合物を得る。なお、この際の混合時間は、好ましくは100~700秒程度であり、より好ましくは200~500秒程度である。
【0054】
このような順で原材料を混合して混合物を得ること、即ち、荷電制御剤以外の原材料を混合した後、荷電制御剤を混合して混合物を得ることにより、混合物中で荷電制御剤の針状の粒子が過剰に粉砕されるのを防止することができる。このため、次の溶融混練工程S2で得られる混練物中において、荷電制御剤の粒子のサイズを調整し易くなる。
【0055】
(溶融混練工程S2)
溶融混練工程S2では、混合工程S1で作製された第2混合物を、混練機によって溶融混練して、樹脂材料中に離型剤、荷電制御剤、着色剤及び磁性材料が分散した混練物を作製する。
【0056】
溶融混練工程S2では、混合工程S1で挙げた混練機と同様の混練機を用いることがきる。また、複数の混練機を用いて溶融混練を行ってもよい。
【0057】
溶融混練時の温度は、用いる混練機の種類にもよるが、80~200℃程度であることが好ましく、100~150℃程度であることがより好ましい。このような範囲の温度で溶融混練を行うことにより、樹脂材料中に、離型剤、荷電制御剤、着色剤及び磁性材料をより均一に分散させることができる。
【0058】
混合工程S1における混合時間や、溶融混練工程S2で用いる混練機の種類、溶融混練時の温度等を適宜変更することにより、混練物中における荷電制御剤の平均粒径を希望する値に調整することができる。
【0059】
混合工程S1及び溶融混練工程S2は、両工程を一回ずつのみ実施しても、両工程のセットを複数回実施してもよく、混合工程S1を複数回連続して実施した後に溶融混練工程S2を実施してもよい。また、溶融混練工程S2の後に混合工程S1を再度実施してもよく、最終的に溶融混練工程S2を実施してから、冷却粉砕工程S3及び分級工程S4が実施されればよい。さらに、冷却粉砕工程S3及び分級工程S4を経た粉砕物を、混合工程における材料としてもよい。
【0060】
混合工程S1において混合機の回転数や回転時間、材料の投入順序を変えることにより荷電制御剤の粒径を制御することができる。その際、別途荷電制御剤単体を混合機等で砕いたものを使用してもよい。
【0061】
また、同じように、後述の粉砕分級工程(S3とS4)で、粉砕機や分級機の回転数や供給量、エアー圧等を変えることによりトナー粒径を制御することができる。混合工程S1及び粉砕分級工程(S3とS4)のどちらか一方、又は両方を制御することで、希望するトナー粒径と荷電制御剤粒径とを得ることができる。
【0062】
(冷却粉砕工程S3)
冷却粉砕工程S3では、溶融混練工程S2で得られた混練物を冷却固化した後、粉砕して、粉砕物を得る。
【0063】
具体的には、冷却固化された混練物を粗粉砕して粗粉砕物を得た後、さらに粗粉砕物を微粉砕して粉砕物を得る。なお、粗粉砕物の体積平均粒径は、好ましくは100μm~5mm程度であり、粉砕物の体積平均粒径は、好ましくは15μm以下である。
【0064】
混練物の粉砕には、混合工程S1で挙げた粉砕機と同様の粉砕機を用いることがきる。また、粗粉砕物の微粉砕には、例えば、超音速ジェット気流を利用するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機等を用いることができる。
【0065】
このようにして得られた粉砕物には、通常、トナー粒子(第1粉砕粒子)と、トナー粒子の平均粒径(例えば、体積平均粒径)より小さい平均粒径(例えば、体積平均粒径)を有する過粉砕トナー粒子(第2粉砕粒子)と、トナー粒子の平均粒径(例えば、体積平均粒径)より大きい平均粒径(例えば、体積平均粒径)を有する粗大トナー粒子(第3粉砕粒子)とが含まれている。
【0066】
(分級工程S4)
分級工程S4では、冷却粉砕工程S3で得られた粉砕物を分級機によって分級し、過粉砕トナー粒子(第2粉砕粒子)及び粗大トナー粒子(第3粉砕粒子)を除去し、トナー粒子(第1粉砕粒子)を得る。過粉砕トナー粒子及び粗大トナー粒子(特に、過粉砕トナー粒子)は、回収して異なる又は次回のトナー製造工程に再利用することができる。
【0067】
なお、以下において適宜、このトナー粒子(第1粉砕粒子)のように外添剤を表面に付着させる前のトナー粒子を有するトナーのことを未外添トナーといい、外添剤が表面に付着したトナー粒子を有するトナーのことを外添トナーという。
【0068】
分級には、例えば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)のような遠心力及び風力を利用する分級機等を用いることができる。
【0069】
上記のとおり、荷電制御剤の平均粒径を調整することにより、混練物中に含まれる荷電制御剤の分散径が適度なサイズとなるため、混練物の過剰な粉砕が抑制され、その結果、過粉砕トナー粒子(第2粉砕粒子)中に含まれる荷電制御剤の量(荷電制御剤の偏析率)が低減される。このため、過粉砕トナー粒子をトナー製造工程に再利用し続けた場合でも、後の回で得られるトナー粒子(再生トナー粒子)は、優れた帯電特性を十分に維持することができる。
【0070】
この荷電制御剤の偏析率とは、過粉砕トナー粒子(第2粉砕粒子)中に含まれる前記荷電制御剤の量をA、トナー粒子(第1粉砕粒子)中に含まれる前記荷電制御剤の量をBとすると、A/B×100で規定される。例えば、蛍光X線分析を用いて、上記両粒子における荷電制御剤由来の元素を定量分析することでA及びBを測定し、上記式で算出することができる。
【0071】
本発明では、この荷電制御剤の偏析率が102%以上130%以下であることが好ましく、104%以上120%以下であることがより好ましく、106%以上115%以下であることがさらに好ましい。荷電制御剤の偏析率が上記下限未満の場合、荷電制御剤の効果が小さくなり、チャージアップの原因となるおそれがある。荷電制御剤の偏析率が上記上限を超える場合、カブリが悪化するおそれがある。
【0072】
回収すべきトナー粒子(第1粉砕粒子)の体積平均粒径は、特に限定されないが、3μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上9μm以下であることがより好ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに好ましく、5μm以上8μm以下であることが特に好ましい。このように粒径の小さいトナー粒子は、適度な帯電量を有し、十分な流動性も確保することができる。このため、トナー粒子を感光体に安定して供給することができ、鮮明且つ高精細な画像を形成することができると共に、トナー粒子の飛散による機内汚染の発生も防止することができる。
【0073】
また、回収したトナー中における個数平均粒径4μm以下のトナー粒子の含有率(微粉率)は、30%未満であることが好ましい。個数平均粒径4μm以下のトナー粒子の含有率が上記上限以上の場合、機内飛散や紙上カブリが悪化するおそれがある。なお、個数平均粒径4μm以下のトナー粒子の含有率は、例えば、フロー式粒子像分析装置(マルバーン社製、型式:FPIA-3000)を用いて粒度分布測定することで、算出することができる。
【0074】
(外添工程S5)
外添工程S5では、分級工程S4で得られたトナー粒子と外添剤とを混合してトナーを得る。外添剤の添加によって、トナーの流動性及び感光体表面に残留するトナー粒子のクリーニング性が向上し、感光体へのフィルミングを防止することができる。なお、外添剤が外添されていないトナー粒子自体を、トナー(未外添トナー)として用いることもできる。
【0075】
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛のような無機化合物、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレンのような化合物、これらの化合物の共重合体樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、ステアリン酸のような高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、カーボンブラック、フッ化黒鉛、炭化珪素、窒化ホウ素等が挙げられる。外添剤は、例えば、シリコーン樹脂、シランカップリング剤等によって表面処理されていることが好ましい。
【0076】
外添剤の添加量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、トナー粒子100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下である。
【0077】
[第2の実施形態]
図2は、本発明のトナーの製造方法の第2の実施形態を示す工程図である。第2の実施形態においては、分級工程S4で発生した過粉砕トナー粒子を混合工程S1に戻して再利用する。この点以外については、上記第1の実施形態と同様である。
【0078】
混練物中に含まれる過粉砕トナー粒子の量は、特に限定されないが、樹脂材料100重量部に対して5~40重量部であることが好ましく、10~35重量部であることがより好ましい。上述のとおり混合工程S1や溶融混練工程S2において荷電制御剤の平均粒径を調整することにより、混練物中に比較的多くの過粉砕トナー粒子を添加した場合であっても、得られるトナー粒子は優れた帯電特性を十分且つ確実に維持することができる。
【0079】
なお、分級工程S4で発生した過粉砕トナー粒子を混合工程S1に戻して再利用する場合には、樹脂材料、離型剤、着色剤及び磁性材料(荷電制御剤及び過粉砕トナー粒子以外の原材料)を混合した後、荷電制御剤及び過粉砕トナー粒子をこの順で混合して混合物を得ることが好ましい。これにより、混合物中で荷電制御剤の針状の粒子のみならず、過粉砕トナー粒子中に含まれる荷電制御剤の粒子が過剰に粉砕されるのを防止することができる。このため、溶融混練工程S2で得られる混練物中において、荷電制御剤の粒子のサイズを調整し易くなる。
【0080】
また、混合工程S1には、トナー粒子(製品とすべきトナー粒子)の平均粒径(例えば、体積平均粒径)より小さい平均粒径(例えば、体積平均粒径)を有する微粉トナー粒子を供することができる。したがって、微粉トナー粒子には、本実施形態のように同一のトナー製造工程で発生した過粉砕トナー粒子の他、同一のトナー製造工程で発生した粗大トナー粒子を回収して別途粉砕した微粉砕物、異なるトナー製造工程で発生した過粉砕トナー粒子、異なるトナー製造工程で発生した粗大トナー粒子を回収して別途粉砕した微粉砕物、又はこれらの混合物等を用いることができる。これらの微粉トナー粒子を用いても、上記と同様の効果が得られる。
【実施例
【0081】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。まず、実施例等で行った測定の方法について説明する。
【0082】
<トナー粒子の体積平均粒径(Dt)の測定方法>
電解液(ベックマン・コールター株式会社製、商品名:ISOTON-II)50mlに、試料20mg及びアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(アズワン株式会社製、卓上型2周波超音波洗浄器、型式:VS-D100)を用いて周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を得た。得られた測定用試料を、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、型式:Multisizer3)を用いて、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下で測定し、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
【0083】
<荷電制御剤の数平均分散粒径(Dc)の測定方法>
トナー粒子を180℃で溶融し冷却して冷却物を得た。次に、この冷却物を超音波振動するナイフを備えるウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製、製品名:EM UC7)を使用して切断することにより、厚み100nmの薄切片を作製した。その後、この薄切片の断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM、商品名:S-4800、日立ハイテクノロジーズ(現 日立ハイテク)製)で観察した。得られたSTEM画像において、分散径(円相当径)を求めた。
【0084】
粒子の個数や分散径を計測するには画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング製)により画像の2値化を行い、荷電制御剤の数と分散径を計測し、各サンプルの数平均分散粒径を求めた。
【0085】
<荷電制御剤の粒度分布におけるDc10及びDc90の測定方法>
上記方法で得た薄切片の断面画像中の、1000個以上の荷電制御剤の粒子をノギスやスケールを用いて測定して、荷電制御剤の粒度分布を求めた。なお、この測定には画像処理ソフト等を用いてもよい。次に、求めた粒度を小粒径側から並べて、累計個数が10%になる粒子の粒径をDc10、累計個数が90%になる粒子の粒径をDc90として、Dc10及びDc90の値を求めた。
【0086】
<トナー中における荷電制御剤の付着強度の測定方法>
トナー中の荷電制御剤の付着強度は、以下の手順で測定した。
(1)トリトン(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)の濃度0.2質量%水溶液40mlにトナー(外添トナー)を2.0g加えて1分間撹拌する。
(2)さらに上記の水溶液にホモジナイザー:US-300T(株式会社日本精機製作所製)にて超音波を照射する(出力:40μA、2分間)。
(3)超音波照射後の水溶液を3時間放置し、トナーと遊離した荷電制御剤とを分離する。
(4)上澄み液を取り除いた後、沈殿物に純水を約50ml加え、5分間撹拌する。
(5)孔径1μmのメンブレンフィルタ(アドバンテック社製)を用いて吸引ろ過する。
(6)フィルタ上に残ったトナーを一晩、真空乾燥する。
(7)蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、型式:ZSX Primus II)にて上記(1)~(6)の一連の超音波処理前後のトナー1gの荷電制御剤中の元素(K)の強度を分析し、下記式にて、荷電制御剤の付着強度を算出した。
【0087】
荷電制御剤の付着強度(%)={(超音波処理後のK元素の蛍光X線強度)/(超音波処理前のK元素の蛍光X線強度)}×100
【0088】
<荷電制御剤の偏析率の測定方法>
蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、型式:ZSX Primus II)を用いて、未外添のトナー粒子(上述した第1粉砕粒子)及び過粉砕トナー粒子(上述した第2粉砕粒子)における、荷電制御剤由来の元素を定量分析した。
【0089】
この定量分析により測定した、過粉砕トナー粒子(上述した第2粉砕粒子)中に含まれる荷電制御剤の量(A)、及びトナー粒子(上述した第1粉砕粒子)中に含まれる荷電制御剤の量(B)に基づいて、荷電制御剤の偏析率(A/B×100)を算出した。
【0090】
<個数平均粒径4μm以下のトナー粒子の含有率(微粉率)の測定方法>
フロー式粒子像分析装置(マルバーン社製、型式:FPIA-3000)を用いて粒度分布測定することで、算出した。
【0091】
<画質の評価方法>
測色色差計(日本電色工業株式会社製、型式:ZE 6000)を用いて印字前の紙の白度を測定し、印字後再度同じ場所(非印字部)の白度を測定し、その差を紙上カブリとして求めた。
【0092】
得られた結果から、画質を次の基準により評価した。
◎:優秀(使用可。白度の差が0以上0.5未満)
○:良好(使用可。白度の差が0.5以上1.0未満)
△:可 (使用可。白度の差が1.0以上1.5未満)
×:不可(使用不可。白度の差が1.5以上)
【0093】
[マスターバッチの作製]
本実施形態では、最初に、結着樹脂の一部(L体)及び着色剤を含むマスターバッチを作製する。マスターバッチは、結着樹脂の一部及び着色剤を乾式混合した後に溶融混練して作製される。
【0094】
本実施形態では、100重量部のL体樹脂(ガラス転移点60℃前後、軟化温度70℃前後)、及び10重量部のカーボンブラック(三菱ケミカル社製、MA-77)を、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製)で混合分散した後、オープンロール方式の混練機(三井鉱山株式会社製、ニーデックス)を用いて溶融混練した。ヘンシェルミキサでの混合条件は、回転数550rpm、時間2分とした。
【0095】
[混合工程、溶融混練工程]
(第1製造方法)
第1製造方法では、実施例4及び比較例4のトナーを作製した。
第1製造方法においては、マスターバッチ、結着樹脂の一部(H体)、離型剤、磁性材料、及び荷電制御剤を混合した後、溶融混練して混練物を作製する。その後、粉砕・分級工程及び外添工程を経て、混練物からトナーが作製される。つまり、第1製造方法において、荷電制御剤は、結着樹脂や他材料と同時に投入されている(混合1)。
【0096】
実施例4では、上述したマスターバッチに、1重量部の荷電制御剤(日本カーリット株式会社製、LR-147A)、3.2重量部のマイクロクリスタリンワックス(日本精蝋株式会社製、Hi-Mic-1090)、1.5重量部の磁性材料(チタン工業株式会社製、BL-220)、及び60重量部のH体樹脂を加えて、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製)で混合分散した後、二軸押出機を用いて溶融混練した。ヘンシェルミキサによる混合条件は、回転数1200rpm、回転時間5分とした。二軸押出機の運転条件は、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数250rpm、原料供給速度10kg/時間とした。一方、比較例4では、上記のヘンシェルミキサによる混合条件が異なっており、回転数800rpm、回転時間1分とし、材料投入のタイミングや混練については、実施例4と同様の条件とした。
【0097】
(第2製造方法)
第2製造方法では、実施例1~2、実施例5~6、及び比較例2~3のトナーを作製した。
第2製造方法においては、第1製造方法とは材料を混合する手順が違っており、マスターバッチ、結着樹脂の一部(H体)、離型剤、及び磁性材料を混合した後、混合物に荷電制御剤を投入して、再度混合する。全ての材料を混合した後、溶融混練・粉砕・分級・外添を経て、トナーが作製される。つまり、第2製造方法において、他材料を一旦混合した後、荷電制御剤を別にして投入している。
【0098】
実施例1では、上述したマスターバッチに、3.2重量部のマイクロクリスタリンワックス(日本精蝋株式会社製、Hi-Mic-1090)、1.5重量部の磁性材料(チタン工業株式会社製、BL-220)、及び60重量部のH体樹脂を加えて、ヘンシェルミキサで混合分散(混合1回目)した。ヘンシェルミキサでの混合条件は、回転数1500rpm、回転時間2.5分とした。
【0099】
上記の(混合1回目の)混合物に、1重量部の荷電制御剤(日本カーリット株式会社製、LR-147A)を加えて、再度、ヘンシェルミキサで混合分散(混合2回目)した。ヘンシェルミキサでの混合条件は、回転数1500rpm、回転時間2.5分とした。
【0100】
上記の(混合2回目の)混合物を、二軸押出機を用いて溶融混練した。二軸押出機の運転条件は、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数250rpm、原料供給速度10kg/時間とした。
【0101】
実施例2では、混合条件について、ヘンシェルミキサでの混合1回目の回転数を1200rpm、回転時間を2.5分とし、混合2回目の回転数を1200rpm、回転時間を2.5分とした。材料の投入タイミングや混練については実施例1と同様の条件とした。
【0102】
実施例5では、混合条件について、ヘンシェルミキサでの混合1回目の回転数を1500rpm、回転時間を3分20秒とし、混合2回目の回転数を1200rpm、回転時間を1分20秒とした。材料の投入タイミングや混練については実施例1と同様の条件とした。
【0103】
実施例6では、混合条件について、ヘンシェルミキサでの混合1回目の回転数を1000rpm、回転時間を1分20秒とし、混合2回目の回転数を1000rpm、回転時間を2.5分とした。材料の投入タイミングや混練については実施例1と同様の条件とした。
【0104】
比較例2では、混合条件について、ヘンシェルミキサでの混合1回目の回転数を700rpm、回転時間を1分40秒とし、混合2回目の回転数を1000rpm、回転時間を1分とした。材料の投入タイミングや混練については実施例1と同様の条件とした。
【0105】
比較例3では、混合条件について、ヘンシェルミキサでの混合1回目の回転数を800rpm、回転時間を2.5分とし、混合2回目の回転数を800rpm、回転時間を50秒とした。材料の投入タイミングや混練については実施例1と同様の条件とした。
【0106】
(第3製造方法)
第3製造方法では、実施例3及び比較例1のトナーを作製した。
第3製造方法においては、第1製造方法及び第2製造方法とは混練の工程や材料を混合する手順が違っており、結着樹脂(L体及びH体)、離型剤、及び磁性材料を混合した後、混合物に荷電制御剤を投入して、再度混合する。その後、着色剤や場合に応じて過粉砕トナーを投入して、再度混合する。全ての材料を混合した後、溶融混練・粉砕・分級・外添を経て、トナーが作製される。つまり、第3製造方法において、マスターバッチを使用せず他材料を一旦混合した後、荷電制御剤を別に投入し、その後着色剤等を投入している。
【0107】
実施例3では、3.2重量部のマイクロクリスタリンワックス(日本精蝋株式会社製、Hi-Mic-1090)、1.5重量部の磁性材料(チタン工業株式会社製、BL-220)、及び60重量部のH体樹脂と40重量部のL体樹脂とを加えて、ヘンシェルミキサで混合分散(混合1回目)した。ヘンシェルミキサでの混合条件は、回転数1200rpm、回転時間2.5分とした。
【0108】
上記の(混合1回目の)混合物に、1重量部の荷電制御剤(日本カーリット株式会社製、LR-147A)を加えて、再度、ヘンシェルミキサで混合分散(混合2回目)した。ヘンシェルミキサでの混合条件は、回転数1200rpm、回転時間1分15秒とした。
【0109】
上記の(混合2回目の)混合物に、10重量部の着色剤(三菱ケミカル株式会社製、MA-77)を加えて再度、ヘンシェルミキサで混合分散(混合3回目)した。ヘンシェルミキサでの混合条件は、回転数1200rpm、回転時間5分とした。
【0110】
上記の(混合3回目の)混合物を、二軸押出機を用いて溶融混練した。二軸押出機の運転条件は、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数250rpm、原料供給速度10kg/時間とした。
【0111】
比較例1では、混合条件について、ヘンシェルミキサでの混合1回目の回転数を800rpm、回転時間を1分とし、混合2回目の回転数を800rpm、回転時間を1分とし、混合3回目の回転数を800rpm、回転時間を3分20秒とした。材料の投入タイミングや混練については実施例3と同様の条件とした。
【0112】
なお、本実施形態では、混合3回目に着色剤を混合したが、これに限定されず、過粉砕トナー等を混合してもよい。また、本実施形態では、第1製造方法や第2製造方法と同じ混練条件としたが、これに限定されず、異なる混練条件としてもよい。
【0113】
これらの実施例及び比較例におけるヘンシェルミキサによる混合条件の一覧を、以下の表1に示す。なお、表1中、回転数の単位はrpm、時間の単位は秒である。
【0114】
【表1】
【0115】
[冷却粉砕工程、分級工程]
冷却粉砕工程及び分級工程は、上記第1製造方法~第3製造方法で共通である。
得られた混練物を冷却ベルトにて冷却後、φ1mmのスクリーンを有するスピードミルにて粗砕することにより、粒径が1mmの粗砕物を得た。
【0116】
上記で得られた粗砕物をカウンタージェットミル(商品名:AFG、ホソカワミクロン株式会社製)で微粉砕して、体積平均粒径6.2μmの微粉砕粒子を得た。
【0117】
上記で得られた微粉砕粒子を、ロータリー式分級機(商品名:TSPセパレータ、ホソカワミクロン株式会社製)で分級して、体積平均粒径6.7μmの未外添の微粒子(未外添トナー)を得た。
【0118】
これらの実施例及び比較例で得たトナーにおける測定結果及び評価結果の一覧を、以下の表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
表2から明らかなように、Dc/Dtが0.1以上0.2以下であり、Dc90/Dc10が3.0以下である実施例1~6のトナーは画質評価に優れ、カブリ等の画像不良の発生が抑制されたものであった。
【0121】
これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~4は、画質評価が「×(不可)」となり、実施例に対して劣っていた。
【0122】
次に、Dc/Dtが0.1以上0.2以下であり、Dc90/Dc10が3.0以下であるトナーとして、実施例1-1~実施例1-9のトナーを下記手順により製造し、荷電制御剤の付着強度、荷電制御剤の偏析率、及び個数平均粒径4μm以下のトナー粒子の含有率(微粉率)を測定し、画質評価を行った。
【0123】
実施例1-1~実施例1-9では、上述の第2製造方法によって、荷電制御剤の添加量を変更した以外は上記の実施例1と同様にして、トナーを作製した。なお、第2製造方法においては、マスターバッチ、結着樹脂の一部(H体)、離型剤、及び磁性材料を混合した後、混合物に荷電制御剤を投入して、再度混合する。全ての材料を混合した後、溶融混練・粉砕・分級・外添を経て、トナーが作製される。
【0124】
[実施例1-1]
実施例1-1では、上述したマスターバッチに、3.2重量部のマイクロクリスタリンワックス(日本精蝋株式会社製、Hi-Mic-1090)、1.5重量部の磁性材料(チタン工業株式会社製、BL-220)、及び60重量部のH体樹脂を加えて、ヘンシェルミキサで混合分散(混合1回目)した。ヘンシェルミキサでの混合条件は、回転数1500rpm、回転時間2.5分とした。
【0125】
上記の(混合1回目の)混合物に、0.05重量部の荷電制御剤(日本カーリット株式会社製、LR-147A)を加えて、再度、ヘンシェルミキサで混合分散(混合2回目)した。ヘンシェルミキサでの混合条件は、回転数1500rpm、回転時間2.5分とした。
【0126】
上記の(混合2回目の)混合物を、二軸押出機を用いて溶融混練した。二軸押出機の運転条件は、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数250rpm、原料供給速度10kg/時間とした。
【0127】
得られた混練物を冷却ベルトにて冷却後、φ1mmのスクリーンを有するスピードミルにて粗砕することにより、粒径が1mmの粗砕物を得た。
【0128】
上記で得られた粗砕物をカウンタージェットミル(商品名:AFG、ホソカワミクロン株式会社製)で微粉砕して、体積平均粒径6.2μmの微粉砕粒子を得た。
【0129】
上記で得られた微粉砕粒子を、ロータリー式分級機(商品名:TSPセパレータ、ホソカワミクロン株式会社製)で分級して、体積平均粒径6.7μmの未外添の微粒子(未外添トナー)を得た。
【0130】
[実施例1-2~実施例1-9]
荷電制御剤(日本カーリット株式会社製、LR-147A)の添加量を0.08重量部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、実施例1-2のトナーを得た。
実施例1-3~実施例1-9についても、荷電制御剤(日本カーリット株式会社製、LR-147A)の添加量を、実施例1-3で0.1重量部、実施例1-4で0.15重量部、実施例1-5で0.5重量部、実施例1-6で1.0重量部、実施例1-7で2.0重量部、実施例1-8で2.5重量部、実施例1-9で3.2重量部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、それぞれのトナーを得た。
【0131】
実施例1-1~実施例1-9で得たトナーにおける測定結果及び評価結果の一覧を、以下の表3及び表4に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
表3から明らかなように、トナー中における荷電制御剤の付着強度が35%以上75%以下である実施例1-2~実施例1-8のトナーは、実施例1-1(付着強度が33.7%)や実施例1-9(付着強度が78.1%)のトナーよりも、画質評価に優れ、カブリ等の画像不良の発生が抑制されたものであった。トナー中における荷電制御剤の付着強度が50%以上65%以下である実施例1-5~実施例1-7のトナーは、他の実施例のトナーよりも、さらに画質評価に優れ、カブリ等の画像不良の発生が抑制されたものであった。
【0135】
なお、荷電制御剤の付着強度は荷電制御剤の粒径と相関性があると考えられ、荷電制御剤の粒径が大きいと、過粉砕トナーに荷電制御剤が多く含有され、トナー粒子中の荷電制御剤はトナー表面に露出しやすく付着強度が低くなると考えられる。一方、荷電制御剤の粒径が小さいと、荷電制御剤はトナー表面に露出せず、荷電制御剤としての効果は小さくなり、付着強度としては高くなると考えられる。
【0136】
表4から明らかなように、荷電制御剤の偏析率が102%以上130%以下である実施例1-2~実施例1-8のトナーは、実施例1-1(偏析率が101%)や実施例1-9(偏析率が142%)のトナーよりも、画質評価に優れ、カブリ等の画像不良の発生が抑制されたものであった。荷電制御剤の偏析率が106%以上115%以下である実施例1-5~実施例1-7のトナーは、他の実施例のトナーよりも、さらに画質評価に優れ、カブリ等の画像不良の発生が抑制されたものであった。
【0137】
また、トナー中における個数平均粒径4μm以下のトナー粒子の含有率(分級後トナー中の微粉率)が30%未満である実施例1-3~実施例1-8のトナーは、実施例1-1(微粉率が40%)や実施例1-9(微粉率が38%)のトナーよりも、画質評価に優れ、カブリ等の画像不良の発生が抑制されたものであった。
【0138】
<その他の実施形態>
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
図1
図2