(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2020155905
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】安 幸治
(72)【発明者】
【氏名】片桐 真史
(72)【発明者】
【氏名】鉄野 修一
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219471(JP,A)
【文献】特開平07-334018(JP,A)
【文献】実開平01-157363(JP,U)
【文献】特許第7195804(JP,B2)
【文献】特開2016-009116(JP,A)
【文献】特開2019-184682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体に接触して一次転写部を形成し、前記一次転写部で前記像担持体からトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架する、内ローラを含む複数の張架ローラと、
前記内ローラに対向する位置で前記中間転写ベルトに接触して二次転写部を形成し、前記二次転写部で前記中間転写ベルトから記録材にトナー像を二次転写させる外ローラと、
前記外ローラに電圧を印加する電源と、
記録材の搬送方向に関して前記二次転写部よりも上流に配置された規制部材であって、前記外ローラと前記規制部材とに接触している記録材の姿勢を規制する規制部材と、
前記二次転写のために前記電源が出力する二次転写電圧を制御する制御部と、
を有し、
前記中間転写ベルトは、周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えている画像形成装置において、
前記制御部は、
前記記録材の搬送方向において、前記記録材が前記規制部材との当接部を通過するタイミングに関する情報を取得
するように制御し、
取得した前記情報に基づいて、
前記記録材に対する前記二次転写のための前記二次転写電圧の目標値を、
前記記録材の先端が前記二次転写部に当接するタイミングにおける第1の目標値と、
前記記録材の後端が前記二次転写部に当接する前であって、前記記録材の後端が前記規制部材との当接部を通過するタイミング以降のタイミングにおける第2の目標値と、の間で変化させる制御を実行可能であ
って、
前記第2の目標値は、前記第1の目標値よりも絶対値が大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記外ローラの回転軸線方向と略直交する断面において、前記内ローラの回転中心と前記外ローラの回転中心とを結ぶ直線をニップ中心線Lc、前記ニップ中心線上の前記中間転写ベルトと前記外ローラとの接点を通る、前記ニップ中心線と直交する直線をニップ接線Ln、前記内ローラと、前記中間転写ベルトの移動方向に関して前記内ローラよりも上流側で前記内ローラに隣接して配置された前記張架ローラと、で形成される前記中間転写ベルトの張架面をニップ前張架面Ptとしたとき、前記ニップ接線Lnが前記ニップ前張架面Ptよりも前記内ローラ側にあることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記
記録材が前記規制部材との当接部を通過するタイミングに関する情報を、記録材に関する情報に基づいて取得することを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の目標値に対する前記第2の目標値の変化量を、記録材に関する情報に基づいて変更可能であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録材に関する情報は、記録材の搬送方向の長さに関する情報を含むことを特徴とする請求項
3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録材に関する情報は、記録材の剛性に関する情報を含むことを特徴とする請求項
3乃至
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録材に関する情報は、記録材の坪量、材質、カテゴリー、銘柄のうち少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする請求項
3乃至
6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記規制部材は、前記二次転写部へと記録材を搬送する搬送部材であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記規制部材は、前記二次転写部へと搬送される記録材をガイドする搬送ガイド部材であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1の目標値に対する前記第2の目標値の変化量を、画像形成装置の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方に関する情報に基づいて変更可能であることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記二次転写電圧の目標値を、前記第1の目標値から前記第2の目標値に一時に変化させるように制御を行うことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記二次転写電圧の目標値を、前記第1の目標値から前記第2の目標値へと徐々に変化させるように制御を行うことを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記二次転写電圧の目標値を、前記第1の目標値から前記第2の目標値へと線形的に変化させるように制御を行うことを特徴とする請求項
12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記二次転写電圧の目標値を、前記第1の目標値から前記第2の目標値へと段階的に変化させるように制御を行うことを特徴とする請求項
12に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記二次転写電圧の目標値を、前記第1の目標値から前記第2の目標値へと非線形的に連続的に変化させるように制御を行うことを特徴とする請求項
12に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記二次転写電圧を定電圧制御し、前記二次転写電圧の目標値は前記定電圧制御における目標電圧値であることを特徴とする請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記二次転写電圧を定電流制御し、前記二次転写電圧の目標値は前記定電流制御における目標電流値であることを特徴とする請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記中間転写ベルトの周方向の長さ100mm相当の周方向の電気抵抗は1×10
9Ω以下であることを特徴とする請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記中間転写ベルトは、複数の層を有し、最も内側の層の電気抵抗が他の層の電気抵抗よりも低いことを特徴とする請求項1乃至
18のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いた画像形成装置として、中間転写方式の画像形成装置がある。この画像形成装置では、像担持体としての感光体上に形成されたトナー像が、一次転写部で中間転写体上に一次転写された後に、二次転写部で中間転写体上から紙などの記録材上に二次転写される。中間転写方式のカラー画像形成装置では、中間転写体の移動方向に複数の感光体が配置され、この複数の感光体上から中間転写体上に複数色のトナー像が重ね合わされるようにして一次転写される。中間転写体としては、複数の張架ローラに張架された無端ベルト状の中間転写ベルトが広く用いられている。一次転写は、中間転写ベルトを挟んで感光体とは反対側に設けられた一次転写部材に一次転写電源から一次転写電圧が印加されることで行われることが多い。また、二次転写は、中間転写ベルトを介して複数の張架ローラのうちの1つに当接する二次転写部材に二次転写電源から二次転写電圧が印加されることで行われることが多い。
【0003】
また、特許文献1では、中間転写ベルトの外周面に接触する電流供給部材に電圧を印加することによって一次転写を行う構成が提案されている。この構成では、中間転写ベルトは、電流供給部材から周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた、電気抵抗(ここでは、単に「抵抗」ともいう。)の低い導電性ベルトで構成されている。そして、この構成では、電流供給部材から中間転写ベルトを介して複数の感光体へ一次転写に必要な電流が供給される。なお、この構成において、電流供給部材としては、二次転写部材を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた低抵抗の中間転写ベルトを用いた場合、例えば、記録材が二次転写部を通過する際の姿勢が変化すると、二次転写部の近傍において流れる電流に変化が生じる可能性がある。これは、中間転写ベルトの電気抵抗が低いことで、二次転写部を流れる電流がその近傍に流れやすくなっているためである。このように二次転写部を流れる電流が変化すると、二次転写電源の負荷が変わって二次転写電圧が降下した場合に、トナー像を中間転写ベルトから記録材に二次転写するために必要な電流が不足し、転写不良が発生するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた中間転写ベルトを用いた構成において、二次転写部の近傍において搬送される記録材の姿勢の変化に伴う転写不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明の代表的な構成は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に接触して一次転写部を形成し、前記一次転写部で前記像担持体からトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架する、内ローラを含む複数の張架ローラと、前記内ローラに対向する位置で前記中間転写ベルトに接触して二次転写部を形成し、前記二次転写部で前記中間転写ベルトから記録材にトナー像を二次転写させる外ローラと、前記外ローラに電圧を印加する電源と、記録材の搬送方向に関して前記二次転写部よりも上流に配置された規制部材であって、前記外ローラと前記規制部材とに接触している記録材の姿勢を規制する規制部材と、前記二次転写のために前記電源が出力する二次転写電圧を制御する制御部と、を有し、前記中間転写ベルトは、周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えている画像形成装置において、前記制御部は、前記記録材の搬送方向において、前記記録材が前記規制部材との当接部を通過するタイミングに関する情報を取得するように制御し、取得した前記情報に基づいて、前記記録材に対する前記二次転写のための前記二次転写電圧の目標値を、前記記録材の先端が前記二次転写部に当接するタイミングにおける第1の目標値と、前記記録材の後端が前記二次転写部に当接する前であって、前記記録材の後端が前記規制部材との当接部を通過するタイミング以降のタイミングにおける第2の目標値と、の間で変化させる制御を実行可能であって、前記第2の目標値は、前記第1の目標値よりも絶対値が大きいことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた中間転写ベルトを用いた構成において、二次転写部の近傍において搬送される記録材の姿勢の変化に伴う転写不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
【
図3】中間転写ベルトの周方向の抵抗の測定系を説明するための模式図である。
【
図4】実施例1における二次転写部の近傍の概略断面図である。
【
図5】実施例1における二次転写電圧の制御を説明するためのチャート図である。
【
図6】比較例における二次転写電圧の制御を説明するためのチャート図である。
【
図7】変形例における二次転写部の近傍の概略断面図である。
【
図8】他の変形例における二次転写電圧の制御を説明するためのチャート図である。
【
図9】他の変形例における二次転写部の近傍の概略断面図である。
【
図10】他の変形例の画像形成装置の概略断面図である。
【
図11】他の変形例の画像形成装置の概略断面図である。
【
図12】実施例2における二次転写電圧の制御を説明するためのチャート図である。
【
図13】変形例における二次転写電圧の制御を説明するためのチャート図である。
【
図14】他の変形例における二次転写電圧の制御を説明するためのチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0012】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。画像形成装置100は、画像情報に従って記録材P(例えば、記録用紙、プラスチックシート)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置100に設けられるか画像形成装置100に接続された画像読取装置や、画像形成装置100と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器から、画像形成装置100に入力される。
【0013】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)Sa、Sb、Sc、Sdを有する。本実施例では、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。なお、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用に設けられた要素であることを表す符号の末尾のa、b、c、dを省略して、総括的に説明することがある。
【0014】
トナー像を担持する像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、駆動手段を構成する駆動源(図示せず)から伝達される駆動力により、図中矢印R1方向(反時計回り方向)に回転駆動される。本実施例では、鉛直方向と交差する方向に4個の感光ドラム1が並設されている。回転する感光ドラム1の表面(外周面)は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナユニット)3によって画像情報に基づいて走査露光され、感光ドラム1上に画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。露光装置3は、例えばパーソナルコンピュータなどのホスト機器から入力された画像情報に基づいて後述するCPU回路部で演算された出力に従ってレーザー光を感光ドラム1の表面に照射することで、感光ドラム1上に静電潜像を形成する。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
【0015】
4個の感光ドラム1と対向するように、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト10が配置されている。中間転写ベルト10は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ11、テンションローラ12及び二次転写対向ローラ13に掛け渡されて、所定の張力(テンション)で張架されている。二次転写対向ローラ13と駆動ローラ11との間に、画像転写面Mが形成される。中間転写ベルト10は、駆動手段を構成する駆動源(図示せず)から伝達される駆動力により駆動ローラ11が図中矢印R2方向(時計回り方向)に回転駆動されることで、図中矢印R3方向(時計回り方向)に回転(周回移動)する。駆動ローラ11以外の張架ローラは、中間転写ベルト10の回転に伴って従動回転する。中間転写ベルト10の内周面側には、各感光ドラム1に対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ14が配置されている。一次転写ローラ14は、中間転写ベルト10の内周面を感光ドラム1に向けて押圧し、感光ドラム1と中間転写ベルト10とが接触する一次転写ニップ(一次転写部)N1を形成する。画像形成時(一次転写時)に、一次転写ニップN1において、感光ドラム1と中間転写ベルト10との間の電位差(一次転写電位)により、中間転写ベルト10から感光ドラム1に一次転写電流が流れる。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、この一次転写電流の作用によって、回転している中間転写ベルト10上に一次転写される。一次転写電流の供給に関しては後述して更に説明する。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト10上に重ね合わされるようにして順次一次転写される。
【0016】
中間転写ベルト10の外周面側において、二次転写対向ローラ(内ローラ)13と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ(外ローラ)20が配置されている。二次転写ローラ20は、二次転写対向ローラ13に向けて押圧され、中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ13と当接して、中間転写ベルト10と二次転写ローラ20とが接触する二次転写ニップ(二次転写部)N2を形成する。画像形成時(二次転写時)に、二次転写ニップN2において、二次転写ローラ20と中間転写ベルト10との間の電位差(二次転写電位)により、二次転写ローラ20から中間転写ベルト10に二次転写電流が流れる。中間転写ベルト10上に形成されたトナー像は、この二次転写電流の作用によって、中間転写ベルト10と二次転写ローラ20とに挟持されて搬送されている記録材P上に二次転写される。二次転写電流の供給に関しては後述して更に説明する。記録材Pは、記録材収容部としてのカセット51に収容されている。カセット51に収容された記録材Pは、給送手段としての給送部材である給送ローラ50などによって1枚ずつピックアップされてカセット51から送り出される。カセット51から送り出された記録材Pは、搬送手段としての搬送部材であるレジストローラ対60へと搬送される。レジストローラ対60は、詳しくは後述するように、中間転写ベルト10上のトナー像とタイミングを合わせるようにして記録材Pを二次転写ニップN2へと搬送する。
【0017】
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置30へと搬送される。定着装置30は、未定着のトナー像を担持した記録材Pに熱及び圧力を加えて、記録材Pにトナー像を定着(溶融、固着)させる。例えばフルカラー画像の形成時には、定着装置30において記録材Pが加熱及び加圧されることにより、記録材P上の4色のトナーが溶融混色されて記録材P上に固定される。本実施例では、定着装置30は、定着部材としての定着ローラ31と、定着ローラ31に圧接する加圧部材としての加圧ローラ32と、を有する。本実施例では、定着ローラ31は、金属素管の周りに絶縁シリコーンゴムの弾性層を形成し、更に弾性層の外周を絶縁PFAチューブで被膜した外径18mmのローラであり、加熱手段としてハロゲンヒータ(図示せず)を内包している。ハロゲンヒータは、定着ローラ31とは非接触であり、電源(図示せず)から電圧が供給されることで発熱する。加圧ローラ32は、芯金の周りに導電性シリコーンゴムの弾性層を形成し、更に弾性層の外周を導電性PFAチューブで被膜した外径18mmのローラである。定着ローラ31と加圧ローラ32とは、10kgfの押圧力で押圧されることで定着ニップを形成している。加圧ローラ32は、モーター(図示せず)により回転駆動され、定着ローラ31は、加圧ローラ32の回転に伴って従動回転する。そして、記録材Pは、定着ニップで定着ローラ31と加圧ローラ32とに挟持されて搬送される。加圧ローラ32は、その芯金が1000MΩの抵抗素子を介してグラウンドに接続されている。加圧ローラ32及び抵抗素子を介して定着ローラ31や加圧ローラ32上の電荷をグラウンドに逃がすことで、定着ローラ31や加圧ローラ32の表面が帯電することを抑制することができる。トナー像が定着された記録材Pは、画像形成装置100の外部へと排出(出力)される。
【0018】
一方、一次転写後に感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置5によって、感光ドラム1上から除去されて回収される。また、二次転写後に中間転写ベルト10上に残留したトナー(二次転写残トナー)や紙粉などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置7によって、中間転写ベルト10上から除去されて回収される。
【0019】
なお、画像形成装置100は、所望の1つの画像形成部Sのみを用いて、又は複数の画像形成部Sのうちいくつかを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできるようになっている。
【0020】
また、本実施例では、画像形成装置100は、プロセススピード(感光ドラム1、中間転写ベルト10の周速度に対応)148mm/sec、A4サイズ紙対応のプリンタである。
【0021】
また、各画像形成部Sにおいて、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びドラムクリーニング装置5と、は一体的に画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジ6を構成している。プロセスカートリッジ6は、画像形成装置100の装置本体に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。
【0022】
2.転写構成
本実施例では、一次転写ローラ14は、外径が6mmの円筒形状の金属ローラである。本実施例では、一次転写ローラ14の材料として、ニッケルメッキが施されたSUSを用いた。本実施例では、一次転写ローラ14は、感光ドラム1に対して中間転写ベルト10の移動方向の下流側にオフセットされて配置されている。本実施例では、一次転写ローラ14は、感光ドラム1の回転軸線方向と略直交する断面において、一次転写ローラ14の回転中心が感光ドラム1の回転中心に対して中間転写ベルト10の移動方向の下流側に8mmオフセットされた位置に配置されている。本実施例では、中間転写ベルト10の移動方向に関して、感光ドラム1と中間転写ベルト10との接触領域と、一次転写ローラ14と中間転写ベルト10との接触領域と、が重ならないように、前者の領域よりも後者の領域の方が下流側に配置されている。そして、中間転写ベルト10は、一次転写ローラ14により感光ドラム1側に押し上げられて、感光ドラム1に巻き付くようになっている。本実施例では、一次転写ローラ14は、感光ドラム1の回転軸線方向と略直交する断面において、複数の感光ドラム1の接線に対して中間転写ベルト10を感光ドラム1側に1mm押し上げた位置に配置され、中間転写ベルト10を約200gfの力で押圧する。これにより、感光ドラム1への中間転写ベルト10の巻き付き量が確保されている。本実施例では、一次転写ローラ14は、中間転写ベルト10の回転に伴って従動回転する。
【0023】
本実施例では、二次転写ローラ20は、二次転写対向ローラ13にバックアップされた中間転写ベルト10に対して、50Nの加圧力で当接し、二次転写ニップN2を形成する。本実施例では、二次転写ローラ20は、外径8mmのニッケルメッキ鋼棒の周囲を、体積抵抗率が1×108Ω・cm、厚さが5mmのNBRとエピクロルヒドリンゴムを主成分とする弾性発泡体(スポンジ)の弾性層で覆った、外径18mmのローラである。本実施例では、二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10の回転に伴って従動回転する。
【0024】
本実施例では、中間転写ベルト10は、周長が695mm、厚さが90μmの無端状のベルトで構成されている。本実施例では、中間転写ベルト10は、導電剤としてカーボンを混合したポリイミド樹脂を用いて形成されている。この中間転写ベルト10は、電気的特性としては、電子導電性の特性を示し、雰囲気の温湿度に対する抵抗値の変動が小さい特徴を有する。中間転写ベルト10の材料は、本実施例ではポリイミド樹脂を使用したが、これに限定されるものではない。中間転写ベルト10の材料としては、例えば、次のものを含む熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などの樹脂及びこれらの混合樹脂を使用することができる。また、導電剤としては、カーボン以外に、導電性の金属酸化物微粒子を使用することができる。
【0025】
本実施例では、中間転写ベルト10の体積抵抗率は、1×109Ω・cmである。体積抵抗率の測定は、三菱化学株式会社のHIRESTA-UP(MCP-HT450)にリングプローブのタイプUR(型式MCP-HTP12)を使用して行った。測定は、室内温度を23℃、室内湿度を50%に設定し、印加電圧100V、測定時間10secの条件で行った。ここで、体積抵抗率は、中間転写ベルト10の材料としての導電性の尺度である。また、ここでは、次に説明するようにして、中間転写ベルト10の周方向の抵抗を測定した。
【0026】
図3は、中間転写ベルト10の周方向の抵抗の測定系を示す模式図(後述する各ローラの回転軸線方向と略直交する断面図)である。中間転写ベルト10の周方向の抵抗は、
図3(a)に示す測定装置(周方向抵抗測定治具)を使用して測定した。まず、測定装置の構成について説明する。周方向の抵抗を測定する中間転写ベルト10は、内面ローラ101(外径30mm)と駆動ローラ102(外径30mm)とに、たるみが無いように張架される。金属で形成された内面ローラ101は、高圧電源(TREK社製高圧電源:MODEL_610E)103に接続され、駆動ローラ102は電気的に接地(グラウンドに接続)される。なお、高圧電源(TREK社製高圧電源:MODEL_610E)103は、一定電流を流しながら、印加電圧をモニターすることが可能となっている。駆動ローラ102は、金属製の芯金と、芯金の外周に弾性体で形成された弾性層と、を有する。駆動ローラ102の表面は、中間転写ベルト10に対して十分に抵抗の低い導電ゴム(弾性層)で被覆されており、中間転写ベルト10の移動速度が100mm/secとなるように回転する。
【0027】
次に、測定方法について説明する。駆動ローラ102によって中間転写ベルト10を100mm/secの移動速度で回転させた状態で、高圧電源103により内面ローラ101に一定電流I
Lを流し、高圧電源103により内面ローラ101とグラウンドとの間の電圧V
Lをモニターする。
図3(a)に示す測定系は、
図3(b)に示す等価回路であるとみなすことができる。すなわち、内面ローラ101と駆動ローラ102との間の距離(回転中心間距離)Lにおける中間転写ベルト10の周方向の抵抗R
Lは、R
L=2V
L/I
Lによって算出することができる。本実施例では、内面ローラ101と駆動ローラ102との間の距離Lは300mmである。上記R
Lを中間転写ベルト10の周方向の長さ100mm相当の値に換算することで、中間転写ベルト10の周方向の抵抗を求める。なお、電流供給部材から中間転写ベルト10を通して感光ドラム1に電流を流すためには、中間転写ベルト10の周方向の抵抗は1×10
9Ω以下であることが好ましい。
【0028】
本実施例では、上述の測定方法によって求めた中間転写ベルト10の周方向の抵抗値は1×108Ωである。本実施例では、上述の測定方法において、IL=5μAの一定電流を流した場合に、モニターされた電圧VLは750Vであった。電圧VLのモニターは、中間転写ベルト10の1周分の区間で行い、その区間の測定値の平均値を電圧VLとした。また、RLは、RL=2VL/ILであるため、RL=2×750/(5×10-6)=3×108Ωとなり、これを中間転写ベルト10の周方向の長さ100mm相当に換算すると、中間転写ベルト10の周方向の抵抗値は1×108Ωとなる。なお、電流供給部材から感光ドラム1までの最大距離が100mm以上の場合は、その長さに相当する周方向の抵抗に換算すればよい。本実施例では、このように周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた導電性ベルトを中間転写ベルト10として用いた。後述するように、本実施例では、中間転写ベルト10は、少なくとも二次転写ニップN2と一次転写ニップN1との間で中間転写ベルト10の周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えている。なお、中間転写ベルト10の周方向の抵抗値は、これに限定されるものではないが、典型的には1×104Ω以上程度である。
【0029】
ここで、中間転写ベルト10は、単層構成であっても、複数の層を有する多層構成であってもよい。多層構成の中間転写ベルト10は、例えば、次のような構成を有していてよい。例えば、中間転写ベルト10は、厚さ100μm程度のポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂にカーボンを分散させて電気抵抗を調整した基層を有する。なお、使用される樹脂は、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などでもよい。また、基層の外面に、厚さ0.5~3μm程度の高抵抗のアクリル樹脂の表層が設けられている。表層の高抵抗層は、例えば、二次転写ニップN2の長手方向(二次転写ローラ20の回転軸線方向)における記録材Pが通過する領域と記録材Pが通過しない領域との電流差を少なくして小サイズの記録材Pに対する二次転写性を向上するなどのために設けられる。基層に含有される導電体粉としてはカーボンブラックを用いることができる。ただし、中間転写ベルト10の電気抵抗値を調節するために混合する添加剤は特に制限されるものではない。例えば、抵抗を調整する導電性フィラーとしては、カーボンブラックや各種の導電性金属酸化物などがある。非フィラー系抵抗調整剤としては、各種金属塩やグリコール類などの低分子量のイオン導電材やエーテル結合や水酸基等を分子内に含んだ帯電防止樹脂又は電子導電性を示す有機高分子化合物などがある。また、多層構成の中間転写ベルト10は、例えば、次のような構成を有していてもよい。中間転写ベルト10は、基層と内面層とを有する。基層には、導電剤として多価金属塩や第4級アンモニウム塩などのイオン導電剤を混合した無端状のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いられ、内面層には、導電剤としてカーボンを混合したアクリル樹脂が用いられる。この場合、基層は、中間転写ベルト10の厚さ方向に関して、中間転写ベルト10を構成する層のうち、最も厚い層とされる。また、内面層は、中間転写ベルト10の内周面側に形成される層であり、中間転写ベルト10の移動方向と交差する方向である厚さ方向に関して、基層は内面層よりも各感光ドラム1に近い位置に形成される。基層の材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を使用することができるが、他の材料でもよく、例えば、ポリエステル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などの材料及びこれらの混合樹脂を使用してもよい。また内面層の材料としては、アクリル樹脂を使用することができるが、他の材料でもよく、例えば、ポリエステルなどの材料を使用してもよい。また、基層と内面層の電気抵抗は異なっていてよく、基層と比べて内面層の電気抵抗を低く設定することができる。ここで、外周面側(基層側)から測定した表面抵抗率を基層の電気抵抗とし、内周面側(内面層側)から測定した表面抵抗率を内面層の電気抵抗とすることができる。
【0030】
3.転写電位形成
本実施例では、中間転写ベルト10の内周面側には、各感光ドラム1a、1b、1c、1dに対応して一次転写ローラ14a、14b、14c、14dが配置されている。本実施例では、各一次転写ローラ14a、14b、14c、14dは、それぞれ一次転写電源(高圧電源回路)15a、15b、15c、15dに接続されている。また、本実施例では、駆動ローラ11、テンションローラ12、二次転写対向ローラ13は、電気的にフロートとされている。画像形成時(一次転写時、二次転写時)に、各一次転写ローラ14には、各一次転写電源15から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧(本実施例では+100V)が定電圧制御で印加される。これにより、各一次転写ニップN1において、一次転写電位(感光ドラム1と中間転写ベルト10との間の電位差)が形成される。この電位差により、中間転写ベルト10から各感光ドラム1に電流(一次転写電流)が流れる。この一次転写電流の作用によって、各感光ドラム1上から中間転写ベルト10上にトナー像が移動して一次転写が行われる。本実施例では、一次転写ローラ14が、感光ドラム1とは異なる位置で中間転写ベルト10に接触し、電圧が印加されて中間転写ベルト10の周方向に電流を流し、感光ドラム1から中間転写ベルト10にトナー像を一次転写させる電流供給部材を構成する。つまり、本実施例では、画像形成時(一次転写時、二次転写時)に、各一次転写ローラ14の電位が所定の電位(本実施例では+100V)に維持され、各一次転写ニップN1における一次転写電位が所定の電位に維持される。この一次転写電源15により維持される一次転写ローラ14の所定の電位は、各一次転写ニップN1で所望の転写効率を得ることができる一次転写電位を維持できるように設定される。周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた中間転写ベルト10を用いることで、中間転写ベルト10の周方向へ一次転写電流を流して、中間転写ベルト10の表面電位(一次転写電位)を安定させる効果が得られる。これにより、複数の一次転写ニップN1での一次転写性の向上を図ることができる。
【0031】
また、二次転写ローラ20には二次転写電源(高圧電源回路)21が接続されている。画像形成時(一次転写時、二次転写時)に、二次転写ローラ20には、二次転写電源21から詳しくは後述する所定の二次転写電圧が定電圧制御で印加される。二次転写電源21から二次転写ローラ20に電圧が印加されると、二次転写ニップN2に二次転写電位(中間転写ベルト10と二次転写ローラ20との間の電位差)が形成される。この電位差により、二次転写ローラ20から中間転写ベルト10に電流(二次転写電流)が流れる。この二次転写電流の作用によって、中間転写ベルト10上から記録材P上にトナー像が移動して二次転写が行われる。
【0032】
4.制御態様
図2は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。画像形成装置100は、画像形成装置100の全体の制御を行う制御部としてのコントローラ200を有する。コントローラ200は、演算制御部であるCPU回路部150、記憶部であるROM151及びRAM152を内蔵する。CPU回路部150は、ROM151に格納されている制御プログラムに従って、一次転写制御部201、二次転写制御部202、現像制御部203、露光制御部204、帯電制御部205などの画像形成装置100の各部を統括的に制御する。後述する二次転写電圧の目標値を決定するためのテーブルなどはROM151に格納されており、CPU回路部150によって読み出されて制御に反映される。RAM152は、制御データを一時的に保持し、また制御に伴う演算処理の作業領域として用いられる。
【0033】
一次転写制御部201、二次転写制御部202は、それぞれコントローラ200の制御のもとで一次転写電源15、二次転写電源21を制御する。一次転写制御部201、二次転写制御部202は、それぞれ図示しない電流検知部(電流検知回路)を有し、該電流検知部が検知する電流値に基づいてそれぞれ一次転写電源15、二次転写電源21から出力する電圧を制御することができる。また、一次転写制御部201、二次転写制御部202は、それぞれ図示しない電圧検知部(電圧検知回路)を有し、該電圧検知部が検知する電圧値に基づいてそれぞれ一次転写電源15、二次転写電源21から出力する電圧を制御することができる。本実施例では、画像形成時(一次転写時、二次転写時)に一次転写電源15から出力される電圧は定電圧制御される。また、本実施例では、画像形成時(一次転写時、二次転写時)に二次転写電源21から出力される電圧は定電圧制御される。二次転写電圧の制御に関しては、後述して更に詳しく説明する。
【0034】
また、コントローラ200には、画像形成装置100に設けられた操作部(操作パネル)70が接続されている。操作部70は、コントローラ200の制御によって情報を表示する表示部(表示手段)、及びユーザーやサービス担当者などの操作者による操作によってコントローラ200に情報を入力する入力部(入力手段)を有する。操作部70は、表示手段及び入力手段の機能を有するタッチパネルを有して構成されていてよい。また、コントローラ200には、画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器(外部装置)300が接続されている。なお、コントローラ200には、画像形成装置100に設けられるか又は画像形成装置100に接続された画像読取装置(図示せず)が接続されていてよい。また、コントローラ200には、後述するレジストセンサ61や環境センサ40などの画像形成装置100に設けられた各種センサが接続されている。レジストセンサ61、環境センサ40などの各種センサの検知結果に関する信号は、コントローラ200に入力され、CPU回路部150による制御に用いられる。また、コントローラ200には、後述するレジスト制御部63が接続されている。レジスト制御部63は、コントローラ200の制御のもとで後述するレジスト駆動部64を制御する。
【0035】
コントローラ200は、例えばパーソナルコンピュータなどのホスト機器300から画像情報と印刷情報(印字命令)を受信すると、上記各制御部などを制御して、印刷動作(ジョブ)を実行するように制御を行う。印刷情報は、印刷動作の開始指示(開始信号)、記録材Pに関する情報などの画像形成条件に関する情報などを含む。なお、記録材Pに関する情報とは、普通紙、上質紙、光沢紙、グロス紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙、紙質などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛性などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、商品名、品番などを含む。)などの、記録材Pを区別することのできる任意の情報を包含するものである。記録材Pに関する情報によって区別される記録材Pごとに、記録材Pの種類を構成するものと見ることができる。なお、記録材Pに関する情報は、例えば「普通紙モード」、「グロス紙モード」といった、画像形成装置100の動作設定を指定する画像形成モードの情報に含まれていたり、画像形成モードの情報で代替されたりしてもよい。また、印刷情報は、操作部70からコントローラ200に入力されてもよい。また、画像情報は、操作部70や画像読取装置(図示せず)からコントローラ200に入力されてもよい。
【0036】
5.二次転写電圧の制御
次に、本実施例における二次転写電圧の制御について更に説明する。
図4は、本実施例における二次転写ニップN2の上流近傍における記録材Pの搬送姿勢を説明するための断面図(二次転写ローラ20、二次転写対向ローラ13の回転軸線方向と略直交する断面)である。
図4(a)は、記録材Pの後端が後述するレジストローラニップRを通過する前の記録材Pの搬送姿勢を示しており、
図4(b)は、記録材Pの後端が後述するレジストローラニップRを通過した後の記録材Pの搬送姿勢を示している。
【0037】
本実施例では、レジストローラ対60は、記録材Pの姿勢を規制する規制部材としての役割も果たしている。この規制部材は、二次転写ニップN2よりも上流に配置され、二次転写ローラ20と該規制部材とに接触している記録材Pの姿勢を規制するものである。記録材Pの後端が、レジストローラ対60との接触部、すなわち、レジストローラ対60の2つのローラが形成するレジストローラニップRを通過すると、二次転写ニップN2の上流近傍における記録材Pの後端側の部分の姿勢が自由になる。ここで、記録材Pの後端側の部分とは、二次転写ニップ(二次転写部)N2を通過中の記録材Pの二次転写ローラ(外ローラ)20とレジストローラ対(規制部材)60との間に位置する部分である。
【0038】
本実施例は、概略、この記録材Pの後端側の部分の姿勢の変化によって、記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に近付いて中間転写ベルト10の面に沿うようになるタイミングで、二次転写電圧の目標電圧を上昇させる点に特徴を有している。ここで、記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10の面に沿うとは、典型的には、記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10の面(後述する二次転写ニップ前張架面Pt)と略平行になることをいう。記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10の面に沿った状態では、典型的には、記録材Pの後端側の部分の少なくとも一部が中間転写ベルト10の面と接触するが、記録材Pの後端側の部分の全体が中間転写ベルト10に接触していなくてもよい。以下、更に詳しく説明する。
【0039】
二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10の外周面に対して、本実施例では50Nの加圧力で接触し、二次転写ニップN2を形成している。二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10の回転に伴って従動回転する。そして、紙などの記録材Pは、二次転写ニップN2において中間転写ベルト10と二次転写ローラ20とに挟持されて搬送される。
【0040】
二次転写電源21は、二次転写ローラ20に接続され、トランスから出力された二次転写電圧を二次転写ローラ20に供給する。
図2に示すように、画像形成装置100の制御ICである、コントローラ200のCPU回路部150によって、二次転写制御部202が制御される。また、二次転写制御部202によって、二次転写電源21が出力する二次転写電圧が制御される。本実施例では、二次転写制御部202は、二次転写電圧が略一定となるように、予め設定された目標電圧と、電圧検知部により検知される二次転写電源21の実際の出力値である検知電圧と、の差分を、二次転写電源21のトランスにフィードバックする。これにより、二次転写制御部202は、二次転写電源21が二次転写ローラ20に供給する二次転写電圧を定電圧制御する。ここでは、流れる電流値に関係なく、電源が出力する電圧値が目標電圧値に近付くように電源の出力を調整する制御を、「定電圧制御」という。なお、本実施例では、一次転写電源15から一次転写ローラ14に印加される一次転写電圧の定電圧制御についても、コントローラ200のCPU回路部150、一次転写制御部201によって、上記同様に行われる。
【0041】
本実施例では、中間転写ベルト10の周方向の抵抗は、中間転写ベルト10の周方向に電流を流すことが可能な程度に低い。本実施例では、中間転写ベルト10は、少なくとも二次転写ニップN2と一次転写ニップN1との間で中間転写ベルト10の周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えている。そのため、二次転写ローラ20と対向する位置に配置された二次転写対向ローラ13の電位は、略一次転写ローラ14の電位(一次転写電圧)、すなわち、本実施例では前述のように+100Vになっている。そして、本実施例では、二次転写ニップN2において、二次転写制御部202で決定された二次転写電圧と、二次転写対向ローラ13の電位と、の間の電位差によって、トナー像に二次転写電流が流されることで、二次転写が行われる。なお、本実施例では、二次転写電源21は、+100V~+4000Vの範囲の電圧の出力が可能である。
【0042】
前述のように、給送手段としての給送ローラ50などは、記録材収容部としてのカセット51内の記録材Pを1枚ずつピックアップして、搬送手段としてのレジストローラ対60へと給送する。レジストローラ対60は、対向して配置された2つのローラによって構成される。これらの2つのローラは、少なくとも一方が他方に向けて押圧されることで、接触部にレジストローラニップRを形成する。また、これらの2つのローラは、少なくとも一方が駆動源や駆動列を有して構成されるレジスト駆動部64(
図2)によって回転駆動される。本実施例では、レジストローラ対60は、2つのローラがそれぞれレジスト駆動部64によって回転駆動されるが、一方が回転駆動される構成の場合は他方は従動回転する。レジスト駆動部64によるレジストローラ対60の回転の開始・停止及び回転速度は、コントローラ200の制御のもとでレジスト制御部63(
図2)によって制御される。
【0043】
図4(a)を参照して、記録材Pの先端が二次転写ニップN2に突入してから、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過する前までの記録材Pの搬送について説明する。レジストローラ対60は、給送ローラ50などによって給送された記録材PをレジストローラニップRにおいて挟持しながら二次転写ニップN2へと搬送する。このとき、
図4(a)に示すように、二次転写ニップN2とレジストローラニップRとによって記録材Pの姿勢が規制されて、略一定の二次転写性が維持されるようになっている。
【0044】
ここで、本実施例では、レジストローラ対60の位置には、記録材Pの搬送経路上の記録材Pの有無を検知するレジストセンサ61が設けられている。本実施例では、このレジストセンサ61によって、記録材Pの先端が検知される。そして、コントローラ200は、レジストセンサ61が記録材Pの先端を検知して出力する信号を取得して、その記録材Pの後端の位置を予測することができる。具体的には、本実施例では、コントローラ200は、レジストセンサ61の検知信号と、記録材Pのサイズに関する情報と、記録材Pの搬送速度の情報と、に基づいて、記録材Pの後端の位置を予測する。コントローラ200は、記録材Pのサイズに関する情報(特に、記録材Pの搬送方向の長さに関する情報)を、例えばホスト機器300から入力された印刷情報に含まれる記録材Pに関する情報から取得することができる。また、コントローラ200は、記録材Pの搬送速度の情報を、例えばレジスト制御部63によるレジスト駆動部64の制御値から取得することができる。これにより、コントローラ200は、詳しくは後述するように、記録材Pの後端の位置に基づいて、二次転写電圧を制御することができる。
【0045】
また、本実施例では、レジストローラ対60による記録材Pの搬送速度は、記録材Pの先端と中間転写ベルト10上のページ範囲の先端とが二次転写ニップN2の手前の所定の位置で一致するように、記録材Pの先端が検知されたタイミングに応じて変更される。以下、上記二次転写ニップN2の手前の所定の位置のことを、「マージポイントMP」という。そして、記録材Pの先端がマージポイントMPに到達する前に、レジストローラ対60による記録材Pの搬送速度が変更前の速度に戻されて、その記録材Pは二次転写ニップN2へと搬送される。これにより、記録材Pの搬送を止めることなく、二次転写ニップN2において、記録材Pの先端と中間転写ベルト10上のページ範囲の先端との位置を一致させることができる。なお、中間転写ベルト10上のページ範囲とは、中間転写ベルト10上の記録材Pのサイズに対応する範囲であり、その範囲内にトナー像が形成される。そして、二次転写ニップN2において、中間転写ベルト10上のページ範囲内に形成されているトナー像が記録材P上に転写される。
【0046】
次に、
図4(b)を参照して、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過してから、記録材Pの後端が二次転写ニップN2を通過するまでの記録材Pの搬送について説明する。この間の記録材Pの姿勢は、
図4(a)に示した記録材Pの姿勢とは異なる。具体的には、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過すると、二次転写ニップN2よりも上流側における記録材Pの後端側の部分の姿勢は、
図4(b)に示すようになる。つまり、記録材Pの後端側の部分の姿勢は、二次転写ニップN2とレジストローラニップRとで挟持されているときの姿勢から変化して、自由な状態になる。
【0047】
ここで、二次転写ローラ20、二次転写対向ローラ13の回転軸線方向と略直交する断面において、二次転写対向ローラ13の回転中心と二次転写ローラ20の回転中心とを結ぶ直線を二次転写ニップ中心線Lcと定義する。また、同断面において、二次転写ニップ中心線上の中間転写ベルト10と二次転写ローラ20との接点を通る、二次転写ニップ中心線Lcと直交する直線を二次転写ニップ接線Lnと定義する。また、テンションローラ12と二次転写対向ローラ13とで形成される中間転写ベルト10の張架面(外周面)を二次転写ニップ前張架面Ptと定義する。なお、テンションローラ12は、中間転写ベルト10の移動方向に関して二次転写対向ローラ13よりも上流側で二次転写対向ローラ13に隣接して配置された張架ローラの一例である。このとき、本実施例では、二次転写ニップ接線Lnが二次転写ニップ前張架面Ptよりも二次転写対向ローラ13側(内ローラ側)にある。記録材Pは、二次転写ニップN2で挟持されている場合、二次転写ニップ接線Lnに沿う姿勢になろうとする傾向がある。そのため、本実施例のように二次転写ニップ前張架面Ptに対して二次転写ニップ接線Lnが二次転写対向ローラ13側にある構成の場合、次のようになる。つまり、レジストローラニップRを通過した後の記録材Pの後端側の部分は、記録材Pの剛性(コシ)によって中間転写ベルト10に近付いて二次転写ニップ前張架面Ptに沿う形に変化する。
【0048】
本実施例のように中間転写ベルト10の周方向へ一次転写電流を流すために中間転写ベルト10の抵抗を低くした場合、次のようになる。つまり、上述のように記録材Pと中間転写ベルト10とが沿うようになると、二次転写ニップN2が見かけ上広くなり、記録材Pを介して中間転写ベルト10へ電流が多く流れてしまう。その結果、二次転写電源21の負荷が増大して二次転写電圧が降下してしまい、二次転写ニップN2で二次転写工程に必要な二次転写電圧を確保できずに、二次転写不良が発生する場合がある。
【0049】
この課題を二次転写電源21の性能の向上によって解決しようとすると、画像形成装置100の大型化やコストアップを招いてしまう。そのため、周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた中間転写ベルト10を用いた構成において、二次転写ニップN2の上流近傍で記録材Pの後端側の部分の姿勢が変わることによる二次転写不良の発生を、画像形成装置100の大型化やコストアップを招くことなく、簡易な構成で抑制することが望まれる。
【0050】
そこで、本実施例では、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過して、記録材Pの後端側の部分が二次転写ニップ前張架面Ptに沿うようになるタイミングで、二次転写電圧の目標電圧を上昇させる。
【0051】
図5は、本実施例における二次転写電圧の制御を説明するためのチャート図である。
図5は、記録材Pが二次転写ニップN2に突入してから、二次転写工程を終えるまでの、二次転写制御部202による二次転写電圧の制御における目標電圧、及び電圧検知部により検知される二次転写電源21の実際の出力値である検知電圧の推移を示している。
【0052】
本実施例では、コントローラ200は、ホスト機器300から入力された印刷情報に含まれる記録材Pに関する情報のうち記録材Pのサイズに関する情報に基づいて、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するタイミングを予測する。つまり、記録材Pの後端が自由になるタイミングを予測する。そのうえで、コントローラ200は、記録材Pの先端が二次転写ニップN2に突入してから、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するまでは、二次転写電圧の目標電圧を第1の目標電圧(第1の目標値)V1として二次転写電源21から二次転写ローラ20に二次転写電圧を印加するように二次転写制御部202を制御する。そして、コントローラ200は、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過したタイミングで、二次転写電圧の目標電圧を第2の目標電圧(第2の目標値)V2へ上昇させるように二次転写制御部202を制御する。これにより、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過したタイミングにおける二次転写電源21の負荷の増大による二次転写電圧の降下を抑える効果が得られる。
【0053】
次に、第1、第2の目標電圧V1、V2の設定について説明する。本実施例では、コントローラ200は、第1、第2の目標電圧V1、V2を、ホスト機器300から入力された印刷情報に含まれる記録材Pに関する情報、及び環境に関する情報に基づいて選択する。つまり、記録材Pの種類によって、(1)記録材Pの剛性(コシ)、(2)記録材Pの抵抗値がそれぞれ異なる。記録材Pの剛性は、例えば、記録材Pのサイズ、坪量、紙質、紙種カテゴリー、銘柄などによって異なるが、本実施例では、記録材Pの剛性に関する情報として、坪量、紙種カテゴリー(あるいは銘柄)を用いるものとする。また、記録材Pの抵抗は、例えば、記録材Pの坪量、紙質、紙種カテゴリー、銘柄などによって異なるが、本実施例では、記録材Pの抵抗値に関する情報として、坪量、紙種カテゴリー(あるいは銘柄)を用いるものとする。なお、記録材Pの紙質、紙種カテゴリー、あるいは銘柄が同じ(又は同等と見なせる)場合、記録材P(紙)の坪量と厚さとは略比例関係にある傾向があるため、坪量を厚さの指標としたり、坪量の代わりに厚さを用いたりしてもよい。また、記録材Pの抵抗値は、環境によっても変化する。環境の情報は、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方の情報であってよい。本実施例では、環境の情報として、画像形成装置100に設けられた環境センサ40による画像形成装置100の周囲の雰囲気の温湿度の検知結果に基づいて取得される絶対水分量の情報を用いるものとする。絶対水分量は、環境センサ40が求めるようになっていてもよいし、環境センサ40の検知結果に基づいてコントローラ200が求めるようになっていてもよい。上記(1)記録材Pの剛性、(2)記録材Pの抵抗値には、これに限定されるものではないが、一般に次のような傾向がある。
【0054】
(1)記録材Pの剛性に関しては、剛性が高い(厚くてコシが強い)ほど、記録材Pのバネ定数も大きくなる。そのため、剛性が高いほど、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過した後に勢いよく記録材Pの後端側の部分の姿勢が変化し、記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10により速く沿うようになって接触面積が大きくなりやすい傾向がある。すなわち、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過したタイミングにおける二次転写電圧の降下量が記録材Pの剛性によって変わる。そのため、第2の目標電圧V2(第1の目標電圧V1に対する第2の目標電圧V2の変化量)を記録材Pの剛性によって変えることが望ましい。記録材Pの剛性は、記録材Pの種類によって変わるため、第2の目標電圧V2(第1の目標電圧V1に対する第2の目標電圧V2の変化量)を記録材Pの種類(本実施例では、坪量、紙種カテゴリー(あるいは銘柄))によって変えることが望ましい。
【0055】
(2)記録材Pの抵抗値に関しては、該抵抗値によって二次転写ニップN2で必要な二次転写電流を流すための二次転写電圧が変わる。そのため、第1の目標電圧V1を記録材Pの抵抗値によって変えることが望ましい。また、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過して記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に沿うようになった後も、記録材Pの抵抗によって二次転写電圧の降下量が変わる。そのため、二次転写電圧の降下を十分に抑制するための第2の目標電圧V2(第1の目標電圧V1に対する第2の目標電圧V2の変化量)を記録材Pの抵抗値によって変えることが望ましい。記録材Pの抵抗値は、記録材Pの種類によって変わる。そのため、第1の目標電圧V1、第2の目標電圧V2(第1の目標電圧V1に対する第2の目標電圧V2の変化量)を記録材Pの種類(本実施例では、坪量、紙種カテゴリー(あるいは銘柄))によって変えることが望ましい。また、環境(本実施例では絶対水分量)は記録材Pの抵抗値に影響を与える(絶対水分量が高いほど抵抗は低くなる)。そのため、第1の目標電圧V1、第2の目標電圧V2(第1の目標電圧V1に対する第2の目標電圧V2の変化量)を記録材Pの種類ごとに絶対水分量によって変えることが望ましい。
【0056】
なお、第1の目標電圧V1に対する第2の目標電圧V2の変化量に関しては、記録材Pの種類ごとの吸湿のしやすさなどが影響し、剛性と抵抗値とのいずれが支配的に影響するかが変わる。そのため、第1の目標電圧V1に対する第2の目標電圧V2の変化量は、予め実験などを通して、二次転写不良を十分に抑制できるように適宜設定することが望ましい。概して、普通紙などの表面にコート処理が施されていない記録材Pの場合、坪量の増加による剛性の上昇よりも、坪量が小さいことで吸湿しやすくなる性質の方が支配的に影響する傾向がある。そのため、このような記録材Pでは、坪量が第1の坪量の記録材Pに対するV1とV2との差分の方を、坪量が第1の坪量よりも大きい(剛性の高い)第2の坪量の記録材Pに対するV1とV2との差分よりも大きくする。そして、絶対水分量が第1の絶対水分量の場合のV1とV2との差分よりも、絶対水分量が第1の絶対水分量よりも大きい(記録材Pの抵抗が低い)第2の絶対水分量の場合の方のV1とV2との差分を大きくする(下記表1参照)。一方、グロス紙などの表面にコート処理が施されている記録材Pの場合、坪量の増加による剛性の上昇の方が、坪量が小さいことで吸湿しやすくなる性質よりも支配的に影響する傾向がある。そのため、このような記録材Pでは、坪量が第1の坪量の記録材Pに対するV1とV2との差分よりも、坪量が第1の坪量よりも大きい(剛性の高い)第2の坪量の記録材Pに対するV1とV2との差分の方を大きくする。そして、絶対水分量が第1の絶対水分量の場合のV1とV2との差分よりも、絶対水分量が第1の絶対水分量よりも大きい(記録材Pの抵抗が低い)第2の絶対水分量の場合の方のV1とV2との差分を大きくする(下記表2参照)。
【0057】
特に、記録材Pの抵抗値に関しては、種々の要素(坪量、紙質、絶対水分量など)によって変化する。本実施例では、記録材Pの種類(紙種カテゴリー(あるいは銘柄))ごとに、坪量及び絶対水分量のそれぞれと第1、第2の目標電圧V1、V2との関係を示すテーブルを予め求めてコントローラ200のROM151に格納しておく。そして、コントローラ200のCPU回路部150が、印刷情報及び環境センサ40の検知結果に基づいて、上記テーブルから対応する第1、第2の目標電圧V1、V2を読み出して二次転写電圧の制御に反映させる。
【0058】
表1、表2は、上記第1、第2の目標電圧V1、V2のテーブルの一例を示す。表1は、普通紙に対するテーブルであり、表2は、グロス紙に対するテーブルである。本実施例では、コントローラ200は、テーブル中の坪量、絶対水分量の間の坪量、絶対水分量など、テーブルにない坪量、絶対水分量に対する第1、第2の目標電圧V1、V2は、線形補間により決定する。なお、表1、表2に示すように、全ての条件で上述のような二次転写電圧の目標電圧を第1の目標電圧V1と第2の目標電圧V2との間で変化させる制御(「目標値変更制御」)を行う必要はない。二次転写不良が発生しない条件では、第1の目標電圧V1と第2の目標電圧V2とを同じにしても(すなわち、目標値変更制御を行わなくても)よい。つまり、コントローラ200は、表1、表2に示すように、予め設定された所定の記録材P(坪量、紙種カテゴリー(あるいは銘柄)など)に画像を形成する場合に、目標値変更制御を実行することができる。また、コントローラ200は、表1、表2に示すように、環境の条件が予め設定された所定の条件を満たす場合(例えば、絶対水分量が所定の閾値以上の場合)に、目標値変更制御を実行することができる。
【0059】
【0060】
【0061】
以上のようにして、種々の記録材Pに対して、記録材Pの先端から後端まで略一定の二次転写性を確保することができ、二次転写不良を抑制することができる。
【0062】
6.効果確認
本実施例の効果を確認するため、種々の記録材Pを用いて、高温高湿環境(温度30℃/相対湿度80%、絶対水分量24.3g/m3)において、画像不良の発生の有無を調べる試験を行った。試験は、本実施例と比較例とについて行った。
【0063】
比較例の画像形成装置100では、
図6に示すように記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過して記録材Pの後端側の部分の姿勢が変わる前後で二次転写電圧の目標電圧を一定にした。比較例の画像形成装置100の構成及び動作は、上記の点を除いて、本実施例の画像形成装置100の構成及び動作と実質的に同じである。
【0064】
表3は、試験において用いた記録材Pの種類(銘柄、坪量)及び第1、第2の目標電圧V1、V2の設定と、画像不良の発生の有無の結果と、を示している。画像不良は、所定の試験画像における二次転写不良(画像の濃度低下や画像抜け)を目視で観察することで評価した。画像不良が発生しなかった場合を「OK」、発生した場合を「NG」とした。
【0065】
【0066】
比較例の構成では、いずれの記録材Pを用いた試験においても、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過して記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に沿うようになったタイミング以降の画像に画像不良が発生した。
図6に示すように、該タイミングで記録材Pを介して中間転写ベルト10に電流が多く流れて、二次転写電圧が降下したためであるものと考えられる。
【0067】
一方、本実施例の構成では、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過して記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に沿うようになったタイミングにおいて二次転写電圧の目標電圧を上昇させることで、二次転写電圧の降下を抑えることができた。そのため、いずれの記録材Pを用いた試験においても、画像不良が発生することはなかった。
【0068】
以上のように、本実施例では、画像形成装置100は、制御部200が、二次転写部N2を通過中の記録材Pの外ローラ20と規制部材60との間に位置する部分の姿勢が中間転写ベルト10に近付くように変化し得るタイミングに関する情報を取得し、該情報に基づいて、該記録材Pに対する二次転写のための二次転写電圧の目標値を、上記タイミングより前の期間の第1の目標値と、上記タイミングより後の期間の第1の目標値よりも絶対値が大きい第2の目標値と、の間で変化させる制御を実行可能である構成を有する。特に、本実施例では、制御部200は、二次転写部N2を通過中の記録材Pの搬送方向の後端が規制部材60との接触部を通過するタイミングに基づく所定のタイミングで、該記録材Pに対する二次転写のための二次転写電圧の目標値を絶対値が大きくなるように変化させる制御を実行可能である。制御部200は、上記タイミングに関する情報を、記録材Pに関する情報に基づいて取得することができる。本実施例では、記録材Pに関する情報は、記録材Pの搬送方向の長さに関する情報を含む。また、本実施例では、記録材Pに関する情報は、記録材Pの剛性に関する情報を含む。なお、記録材Pに関する情報は、記録材Pの坪量、材質、カテゴリー、銘柄のうち少なくとも1つの情報を含むものであってよい。また、制御部200は、第1の目標値に対する第2の目標値の変化量を、上記同様の記録材Pに関する情報に基づいて変更可能である。また、制御部200は、第1の目標値に対する第2の目標値の変化量を、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方に関する情報(環境に関する情報)に基づいて変更可能である。また、本実施例では、制御部200は、二次転写電圧を定電圧制御し、二次転写電圧の目標値は定電圧制御における目標電圧値である。
【0069】
本実施例によれば、周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた中間転写ベルト10を用いた構成において、二次転写ニップN2の上流近傍で記録材Pの後端側の部分の姿勢が変わることによる二次転写不良の発生を、画像形成装置100の大型化やコストアップを招くことなく、簡易な構成で抑制することができる。つまり、本実施例によれば、周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた中間転写ベルト10を用いた構成において、二次転写部N2の近傍において搬送される記録材Pの姿勢の変化に伴う転写不良の発生を抑制することができる。
【0070】
7.変形例
次に、本実施例の変形例について説明する。
【0071】
本実施例では、普通紙及びグロス紙に対する二次転写電圧の目標値を決定するためのテーブルの例(表1、表2)を示したが、例えばラフ紙やプラスチック紙などの他の記録材に対しても同様のテーブルを用意して、本実施例と同様の制御を行うことができる。また、例えば、普通紙の中でも銘柄などに応じて異なるテーブルを用意して、本実施例と同様の制御を行うことができる。
【0072】
本実施例では、表1、表2に示すようなテーブル中の坪量、絶対水分量の間の坪量、絶対水分量に対する第1、第2の目標電圧V1、V2は、線形補間により決定したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、第2の目標電圧V2(第1の目標電圧V1に対する第2の目標電圧V2の変化量)は、二次転写電圧の降下が大きい条件に対しては、その他の補間方法で決定してもよい。例えば、二次転写電圧の降下が大きい条件ほど、V1とV2との差分がより大きくなるように、第2の目標電圧V2を非線形的に補完して決定してもよい。
【0073】
本実施例では、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過したタイミングで記録材Pの後端側の部分の姿勢が変化する場合について説明したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、
図7(a)、(b)に示すように、記録材Pの後端が規制部材としての搬送ガイド部材62との接触部を通過したタイミングで記録材Pの後端側の部分の姿勢が変化する場合にも本発明を適用することができる。
図7は、本例における二次転写ニップN2の近傍を示す断面図(二次転写ローラ20、二次転写対向ローラ13の回転軸線方向と略直交する断面)である。
図7において、
図1に示す本実施例の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同一の符号を付している。
図7に示す画像形成装置100は、二次転写ニップN2よりも上流に配置された規制部材であって二次転写ローラ20と規制部材とに接触している記録材Pの姿勢を規制する規制部材として、搬送ガイド部材62を有する。この搬送ガイド部材62は、記録材Pが中間転写ベルト10(二次転写ニップ前張架面Pt)に近付く方向の移動を規制するように構成されている。
図7(a)は、記録材Pの後端が搬送ガイド部材62との接触部を通過する前の記録材Pの搬送姿勢を示しており、
図7(b)は、記録材Pの後端が搬送ガイド部材62との接触部を通過した後の記録材Pの搬送姿勢を示している。本例では、記録材Pの後端が、搬送ガイド部材62との接触部(典型的には搬送ガイド部材62の記録材Pの搬送方向における下流側の端部)を通過すると、二次転写ニップN2の上流近傍における記録材Pの後端側の部分の姿勢が自由になる。そして、この記録材Pの姿勢の変化によって記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に近付いて中間転写ベルト10の面に沿うようになる。したがって、本実施例と同様に、このように記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に沿うようになるタイミングで、二次転写電圧の目標電圧を上昇させればよい。すなわち、画像形成装置100における記録材Pの搬送路に応じて、記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に沿うようになるタイミングで二次転写電圧の目標電圧を上昇させればよい。
【0074】
本実施例では、ホスト機器300から入力された印刷情報に基づいて記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するタイミングを予測したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、レジストセンサ61による記録材Pの後端の検知結果を用いることで、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するタイミングを検知して、そのタイミングで二次転写電圧の目標電圧を上昇させるよう制御してもよい。
図8は、レジストセンサ61の検知信号、二次転写電圧の目標電圧、及び検知電圧の推移を示すチャート図である。本例では、レジストセンサ61の検知信号は、記録材Pの先端がレジストローラニップRに突入するとONとなり、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するとOFFとなる。したがって、本例では、コントローラ200は、レジストセンサ61の検知信号がONからOFFに変化するタイミングから、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するタイミングを検知することができる。例えば、操作者が記録材Pのサイズの指定を間違えた場合や、あるいは定型紙以外の記録材Pが用いられた場合などにおいても、本例によればレジストセンサ61の検知結果が二次転写電圧の目標電圧を切り替えるタイミングの基準となる。このように、レジストセンサ61の検知結果を用いて二次転写電圧の目標電圧を上昇させるタイミングを決定することによって、記録材Pのサイズによらずに二次転写不良を抑制するという効果をより確実に得ることができる。
【0075】
本実施例では、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するタイミングの前後で二次転写電圧の目標電圧を変更したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。二次転写電圧の目標電圧は、記録材Pの後端側の部分の姿勢の変化によって記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に近付いて中間転写ベルト10の面に沿うようになるタイミングで変更すればよい。つまり、二次転写電圧の目標電圧は、記録材Pの後端側の部分の姿勢の変化によって記録材Pの後端側の部分と中間転写ベルト10との間の距離が所定値を超えて小さくなるタイミングで変更すればよい。例えば、レジストローラ対60による記録材Pの搬送速度を早くするタイミングにおいても、記録材Pの後端側の部分の姿勢の変化によって記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に近付いて中間転写ベルト10の面に沿うようになることがある。そのため、そのタイミングの前後で二次転写電圧の目標電圧を変更することができ、本実施例と同様の効果を得ることができる。なお、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するタイミングに基づいて二次転写電圧の目標電圧を変更する場合も、該通過するタイミングと実質的に同時に二次転写電圧の目標電圧を変更することに限定されるものではない。二次転写電圧の降下を十分に抑制できるように、該通過するタイミングの前後にずれたタイミングで二次転写電圧の目標電圧を変更することができる。例えば、二次転写電圧の目標電圧と同様に、記録材Pの種類や環境に基づいて、予め該通過するタイミングの前後へのタイミングのずれ量を設定することができる。上述のようにレジストセンサ61の検知結果に基づいて二次転写電圧の目標電圧を変更する場合も同様であり、レジストセンサ61が記録材Pの後端を検知するタイミングと実質的に同時に二次転写電圧の目標電圧を変更することに限定されるものではない。二次転写電圧の降下を十分に抑制できるように、該検知するタイミングの前後にずれたタイミングで二次転写電圧の目標電圧を変更することができる。例えば、二次転写電圧の目標電圧と同様に、記録材Pの種類や環境に基づいて、予め該検知するタイミングの前後へのタイミングのずれ量を設定することができる。
【0076】
本実施例では、二次転写電圧の目標電圧を、第1の目標電圧V1から、第1の目標電圧V1よりも絶対値が大きい第2の目標電圧V2へ上昇させたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。画像形成装置100における記録材Pの後端側の部分の姿勢の変化態様によっては、二次転写電圧の目標電圧を、第1の目標電圧V1から、第1の目標電圧V1よりも絶対値が小さい第2の目標電圧V2’へ低下させてもよい。具体的には、次のような場合が挙げられる。例えば、記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10の面に沿っている状態から、レジストローラ対60による記録材Pの搬送速度を遅くする場合が挙げられる。この場合、記録材Pが弛むため、記録材Pの後端側の部分の姿勢の変化によって記録材Pの後端側の部分は中間転写ベルト10から離れて中間転写ベルト10の面に沿わなくなる。この場合は、本実施例とは逆に、二次転写電源21の負荷が軽減するため、二次転写電圧が想定よりも上昇してしまう可能性がある。二次転写電圧が想定よりも上昇してしまうと、異常放電の発生などにより画像不良が発生する可能性がある。したがって、この場合には、二次転写電圧の目標電圧を、第1の目標電圧V1から、第1の目標電圧V1よりも絶対値が小さい第2の目標電圧V2’へ低下させる制御とすることができる。また、画像形成装置100が
図9に示すような構成とされている場合が挙げられる。
図9は、本例における二次転写ニップN2の近傍を示す断面図(二次転写ローラ20、二次転写対向ローラ13の回転軸線方向と略直交する断面)である。
図9において、
図1に示す本実施例の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同一の符号を付している。
図9に示す画像形成装置100では、二次転写ローラ20の回転軸線方向と略直交する断面において、二次転写ニップ接線Lnが二次転写前張架面Ptよりも二次転写ローラ20側(外ローラ側)にある。この場合は、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過する前後で、記録材Pの後端側の部分は中間転写ベルト10の面に沿っている状態から離れた状態に変化する。そして、この場合は、本実施例とは逆に、二次転写電源21の負荷が軽減するため、二次転写電圧が想定よりも上昇してしまう可能性がある。したがって、この場合には、二次転写電圧の目標電圧を、第1の目標電圧V1から、第1の目標電圧V1よりも絶対値が小さい第2の目標電圧V2’へ低下させる制御とすることができる。二次転写電圧の目標電圧を低下させる制御とする場合も、二次転写電圧の目標電圧は、記録材Pの姿勢の変化によって記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10から離れて中間転写ベルト10の面に沿わなくなるタイミングで変更すればよい。つまり、二次転写電圧の目標電圧は、記録材Pの後端側の部分の姿勢の変化によって記録材Pの後端側の部分と中間転写ベルト10との間の距離が所定値を超えて大きくなるタイミングで変更すればよい。その他、二次転写電圧の目標電圧を変更するタイミングの検知や設定について、二次転写電圧の目標電圧を上昇させる場合についての本実施例の説明やここでの変形例の説明は、二次転写電圧の目標電圧を低下させる場合にも同様にあてはまる。
【0077】
本実施例では、一定に維持された一次転写電圧(二次転写対向ローラ13の電位)+100Vに対して、二次転写電源21から二次転写ローラ20に印加する電圧の目標値を変化させた。これによって、二次転写ローラ20と二次転写対向ローラ13との間の電位差である二次転写電圧の目標値を変更した。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。一次転写電圧(二次転写対向ローラ13の電位)を変更することで二次転写ローラ20と二次転写対向ローラ13との間の電位差である二次転写電圧の目標値を変更してもよい。二次転写ローラ20の電位(二次転写電源21が二次転写ローラ20に印加する電圧)と二次転写対向ローラ13の電位(一次転写電源15が一次転写ローラ14に印加する電圧)との両方を変更してもよい。本例は、二次転写が一次転写と異なるタイミングで行われる構成において採用することができる。
【0078】
本実施例では、複数の一次転写ローラ14のそれぞれに独立した一次転写電源15から電圧を印加したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、複数の一次転写ローラ14の全て又は一部に共通の一次転写電源15から電圧を印加してもよい。
図10は、本例の画像形成装置100の概略断面図である。
図10において、
図1に示す本実施例の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同一の符号を付している。
図10に示す画像形成装置100では、各一次転写ローラ14a、14b、14c、14dは、共通の一次転写電源(高圧電源回路)15に接続されている。また、本例では、二次転写対向ローラ13が上記共通の一次転写電源15に接続されている。また、本例では、駆動ローラ11、テンションローラ12は、電気的にフロートとされている。なお、二次転写対向ローラ13を上記共通の一次転写電源15に接続せずに電気的にフロートとする構成、あるいは駆動ローラ11及びテンションローラ12のうち少なくとも一方を更に上記共通の一次転写電源15に接続する構成も企図し得る。このような構成でも、本実施例と同様に、画像形成時(一次転写時、二次転写時)に、各一次転写ローラ14及び二次転写対向ローラ13が所定の電位(例えば+100V)に維持され、各一次転写ニップN1における一次転写電位が所定の電位に維持される。本例によれば、一次転写電源15の削減により、画像形成装置100の構成の簡易化、低コスト化を図ることができる。
【0079】
本実施例では、一次転写電源15を設けて一次転写電圧を印加したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。周方向に電流を流すことが可能な導電性を備えた中間転写ベルト10を用いる場合、一次転写電圧電源15を設けずに、二次転写電源21を、一次転写電流を供給するための電源として用いることができる。
図11は、本例の画像形成装置100の概略断面図である。
図11において、
図1に示す本実施例の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同一の符号を付している。
図11に示す画像形成装置100では、二次転写対向ローラ13、駆動ローラ11、及びテンションローラ12は、電圧維持手段(電圧安定化手段)としての電圧維持素子であるツェナーダイオード16を介して電気的に接地(グラウンドに接続)される。また、中間転写ベルト10の内周面側において、二次転写対向ローラ13と駆動ローラ11との間には、各感光ドラム1に対応して、中間転写ベルト10の内周面に接触する接触部材としての一次転写ローラ14が配置されている。一次転写ローラ14の構成及び配置は、本実施例と同様である。そして、各一次転写ローラ14は、上記ツェナーダイオード16を介して電気的に接地(グラウンドに接続)される。定電圧素子であるツェナーダイオード16は、電流が流れることにより所定の電圧(ツェナー電圧)を維持する素子であり、一定以上の電流が流れた際にカソード側にツェナー電圧が発生する。すなわち、ツェナーダイオード16の一端側(アノード側)はグラウンドに接続され、他端側(カソード側)は二次転写対向ローラ13、駆動ローラ11、テンションローラ12、及び各一次転写ローラ14に接続される。二次転写電源21から二次転写ローラ20に電圧が印加されることにより、二次転写対向ローラ13及び各一次転写ローラ14(更には駆動ローラ11及びテンションローラ12)はツェナー電圧に維持される。本例では、各感光ドラム1の近傍に配置され、ツェナー電圧に維持された各一次転写ローラ(金属ローラ)14から、中間転写ベルト10を介して各感光ドラム1に電流が流れる。これにより、各感光ドラム1から中間転写ベルト10にトナー像が一次転写される。本例では、二次転写ローラ20が、感光ドラム1とは異なる位置で中間転写ベルト10に接触し、電圧が印加されて中間転写ベルト10の周方向に電流を流し、感光ドラム1から中間転写ベルト10にトナー像を一次転写させる電流供給部材を構成する。なお、二次転写対向ローラ13、駆動ローラ11及びテンションローラ12のうち少なくとも1つをツェナーダイオード16に接続せずに電気的にフロートとする構成も企図し得る。このように、ツェナーダイオード16のツェナー電圧の絶対値が一次転写電圧になるため、本実施例のように一次転写電源15を設けなくても、一次転写電圧を一定に維持することができる。本例によれば、画像形成装置100の小型化、低コスト化を図ることができる。本例では、上述のように決定された一次転写電圧(二次転写対向ローラ13の電位)に対して、二次転写ローラ20に印加する二次転写電圧の目標電圧を、本実施例又はここで説明している変形例の構成と同様に制御すればよい。なお、本例では、電圧維持素子としてツェナーダイオードを用いたが、これに限定されるものではなく、同様の効果を得られる素子であれば用いることができる。例えば、抵抗素子や、定電圧素子であるバリスタを用いることも可能である。また、本実施例における一次転写電源15は、一次転写ローラ14、二次転写対向ローラ13の電圧を維持するための電圧維持手段(電圧安定化手段)と見ることもできる。
【0080】
本実施例では、二次転写電圧の目標電圧は、第1の目標電圧V1と第2の目標電圧V2との2段階に変化させたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、記録材Pの後端側の部分と中間転写ベルト10との間の距離(接触状態)が段階的に変わる構成の場合、二次転写電圧の目標電圧を、3段階以上の多段階に変化させるようにしてもよい。この場合も、二次転写電圧の目標電圧の少なくとも1つは、記録材Pの後端が規制部材(レジストローラ対60など)との接触部を通過する前の期間における目標電圧に対応する。また、二次転写電圧の目標電圧の少なくとも1つは、記録材Pの後端が規制部材との接触部を通過した後の期間における目標電圧に対応する。
【0081】
また、本実施例では、二次転写電圧の目標値として、二次転写電圧を定電圧制御する場合における二次転写電圧の目標電圧値を変化させたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。二次転写電圧の目標値として、二次転写電圧を定電流制御する場合における二次転写電流の目標電流値を変化させてもよい。この場合、二次転写電源21は、二次転写ローラ20に電圧を印加することで二次転写ニップN2に流れる電流を検知する電流検知部(電流計)を有する。この電流検知部は、画像形成時(二次転写時)に、二次転写ニップN2に流れる電流を所定の周期(電流検知周期)で検知する。そして、二次転写制御部202は、予め設定された目標電流値と、電流検知部で検知された検知電流値との差分に基づいて、次の電流検知周期で二次転写電源21から二次転写ローラ20に印加する電圧を決定する。つまり、検知電流値が目標電流値に近付くように、次の電流検知周期で二次転写ローラ20に印加する電圧を調整する。これにより、二次転写電源21から二次転写ローラ20に印加される二次転写電圧は、二次転写ニップN2に流れる電流が略一定になるように制御される。ここでは、このように流れる電流値が目標電流値に近付くように電源の出力を調整する制御を、「定電流制御」という。このように二次転写電圧を定電流制御する場合においても、略一定の二次転写性が得られるように本実施例又はここで説明している変形例における目標電圧値に代えて目標電流値を制御することで、同様の効果を得ることができる。
【0082】
なお、本実施例の効果は、中間転写ベルト10の周方向の抵抗が低いほどより顕著となる。本実施例では、中間転写ベルト10の周方向の抵抗値は1×108Ωである。中間転写ベルト10として更に周方向の抵抗値が低いものを用いる場合は、記録材Pの後端側の部分の姿勢の変化に伴う二次転写ニップN2における二次転写電流の変化は大きくなるため、本実施例の効果はより顕著となる。特に、中間転写ベルト10の最内面に導電性の層(例えば、周方向の抵抗値で約1×106Ω以下)がある場合は、中間転写ベルト10の内周面に電極があるのと同義になる。そのため、記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10に沿うようになる前後での容量変化によって、記録材Pを介して中間転写ベルト10に電流がより流れやすくなり、二次転写電圧の降下が発生しやすくなる。したがって、中間転写ベルト10の最内面に導電性の層がある場合には、本実施例の効果がより顕著となる。中間転写ベルト10が複数の層を有する場合、最も内側の層の電気抵抗が他の層の電気抵抗よりも低い場合に、本実施例の効果がより顕著となる。
【0083】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0084】
1.本実施例の構成
実施例1では、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過する前後で二次転写電圧の目標電圧を一気に上昇させた。つまり、実施例1では、コントローラ200は、二次転写電圧の目標電圧を、第1の目標電圧V1から第2の目標電圧V2に一時に変化させるように制御を行った。これに対して、本実施例では、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過してから記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10の面に徐々に沿うようになるのに合わせて、二次転写電圧の目標電圧を徐々に変化させる。
【0085】
図12は、本実施例における二次転写電圧の制御を説明するためのチャート図である。
図12は、記録材Pが二次転写ニップN2に突入してから、二次転写工程を終えるまでの、二次転写制御部202による二次転写電圧の制御における目標電圧、及び電圧検知部により検知される二次転写電源21の実際の出力値である検知電圧の推移を示している。
【0086】
本実施例では、コントローラ200は、ホスト機器300から入力された印刷情報に含まれる記録材Pに関する情報のうち記録材Pのサイズに関する情報に基づいて、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するタイミングを予測する。つまり、記録材Pの後端が自由になるタイミングを予測する。そのうえで、コントローラ200は、記録材Pの先端が二次転写ニップN2に突入してから、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過するまでは、二次転写電圧の目標電圧を第1の目標電圧V1として二次転写電源21から二次転写ローラ20に二次転写電圧を印加するように二次転写制御部202を制御する。そして、コントローラ200は、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過したタイミングで、二次転写電圧の目標電圧の上昇を開始して、記録材Pの後端が二次転写ニップN2を通過するまでに第2の目標電圧V2に到達するように二次転写電圧の目標電圧を徐々に上昇させるように二次転写制御部202を制御する。このとき、本実施例では、コントローラ200は、二次転写電圧の目標電圧を、第1の目標電圧V1から第2の目標電圧V2へと線形的に変化させように制御を行う。これにより、記録材Pの後端がレジストローラニップRを通過した後、記録材Pの後端側の部分が中間転写ベルト10の面に徐々に沿うようになる状態変化により即して、徐々に変化する二次転写電圧の降下を抑制することができる。
【0087】
以上のように、本実施例によれば、記録材Pの後端側の部分の姿勢が徐々に変化する構成において、該姿勢の変化により即した制御を行って、実施例1で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0088】
2.変形例
次に、本実施例の変形例について説明する。
【0089】
本実施例では、二次転写電圧の目標電圧を第1の目標電圧V1から第2の目標電圧V2へと線形的に変化させたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、
図13に示すように、コントローラ200は、二次転写電圧の目標電圧を、第1の目標電圧V1から第2の目標電圧V2へと段階的に変化させるように制御を行ってもよい。記録材Pが剛性の小さい記録材P(薄紙など)である場合などには、記録材PがレジストローラニップRを通過しても、記録材Pは、そのバネ性が弱く、急激な姿勢変化が少なく、徐々に中間転写ベルト10に沿うようになることがある。このような場合には、上述のように二次転写電圧の目標電圧を段階的に変更する制御がより好ましい場合がある。その他、記録材Pがラベル紙である場合などには、記録材Pの面内で不連続に厚さ、抵抗、剛性、紙質が変わる場合がある。このような場合にも、上述のように段階的に二次転写電圧の目標電圧を変化させることが好ましい場合がある。
【0090】
また、例えば、
図14に示すように、コントローラ200は、二次転写電圧の目標電圧を、第1の目標電圧V1から第2の目標電圧V2へと非線形的に連続的に変化させるように制御を行ってもよい。記録材Pが剛性の高い記録材P(厚紙など)である場合などには、次のようになる場合がある。つまり、記録材Pは、そのバネ性によって、レジストローラニップRを通過した瞬間に後端側の部分における先端側が勢いよく中間転写ベルト10に沿うようになり、その後最後端にかけて徐々に中間転写ベルト10に沿うようになる場合がある。このような場合には、上述のように二次転写電圧の目標電圧を非線形的に連続的に第1の目標電圧V1から第2の目標電圧V2へと変更する制御がより好ましい場合がある。つまり、二次転写電圧の目標電圧を、初めは比較的大きな上昇速度で上昇させ、その後徐々にその上昇速度を小さくしていく。この場合は、記録材Pの剛性などに応じて、二次転写電圧の目標電圧の変化の傾きの変更態様を変えることができる。
【0091】
なお、本実施例の制御及び上記変形例の制御を、実施例1において説明した変形例の構成に組み合わせてもよい。
【0092】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0093】
上述の実施例では、一次転写部材(接触部材)は、導電性材料である金属で形成されたローラ状の部材であったが、導電性材料は金属に限定されるものではなく、またローラ状の部材に限定されるものでもない。一次転写部材(接触部材)は、導電性の樹脂やゴムで形成された弾性層を有するローラ状の部材、導電性の樹脂などで形成されたシート状の部材、導電性のブラシ繊維を有するブラシ状の部材などであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 感光ドラム
10 中間転写ベルト
13 二次転写対向ローラ
14 一次転写ローラ
15 一次転写電源
16 ツェナーダイオード
20 二次転写ローラ
60 レジストローラ対
61 レジストセンサ
62 搬送ガイド部材
100 画像形成装置
200 コントローラ
N1 一次転写ニップ
N2 二次転写ニップ
R レジストローラニップ