(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】無機質断熱材及び無機質断熱材層の形成方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240910BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240910BHJP
B28B 1/32 20060101ALI20240910BHJP
C04B 14/46 20060101ALI20240910BHJP
B05B 7/26 20060101ALN20240910BHJP
B05B 7/06 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C04B28/02
E04B1/76 400G
B28B1/32 D
C04B14/46
B05B7/26
B05B7/06
(21)【出願番号】P 2020160460
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】谷辺 徹
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136681(JP,A)
【文献】特開昭58-069757(JP,A)
【文献】特開昭56-140054(JP,A)
【文献】特開2018-171601(JP,A)
【文献】特開2019-166492(JP,A)
【文献】特開2014-152101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
E04B 1/76
B28B 1/32
B05B 7/00 - 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント及び水を主成分とするセメントスラリーと、(B)ロックウールとを含有し、
前記セメント、前記水及び前記ロックウールの合計含有量が、無機質断熱材全質量に対して、99~100質量%であり、
前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記水の質量(W)の比率(W/(C+RW))が0.7~3.0であり、
且つ前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記セメントの質量(C)の比率(C/(C+RW))が0.05~0.3である、無機質断熱材
(但し、前記セメントスラリーが合成樹脂を含む場合を除く)。
【請求項2】
前記セメントスラリーのセメント濃度が3~30質量%である、請求項1に記載の無機質断熱材。
【請求項3】
ロックウール噴射口を先端部に備えるロックウール用管路と、前記ロックウール噴射口の外周及び/又は前記ロックウール用管路内に1個又は複数個配置されているセメントスラリー噴射口とを具備する吹付けガンにロックウール及びセメントスラリーを別々に送り、前記ロックウール用管路に供給された前記ロックウールを前記ロックウール噴射口から噴射させるとともに、前記セメントスラリー噴射口に前記セメントスラリーを送り当該セメントスラリーを前記セメントスラリー噴射口から噴射させることで、前記ロックウールと前記セメントスラリーとを合流混合させて被覆対象物に吹付け、ロックウール組成物からなる無機質断熱材層を形成させる無機質断熱材層の形成方法であって、
前記セメントスラリーが、セメント及び水を主成分とするものであり、
前記セメント、前記水及び前記ロックウールの合計含有量が、無機質断熱材全質量に対して、99~100質量%であり、
前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記水の質量(W)の比率(W/(C+RW))が0.7~3.0であり、
且つ前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記セメントの質量(C)の比率(C/(C+RW))が0.05~0.3である、無機質断熱材層の形成方法
(但し、前記セメントスラリーが合成樹脂を含む場合を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質断熱材及び無機質断熱材層の形成方法に関する。詳しくは、実質的に不燃性の無機質材料から構成されている無機質断熱材並びにこれを吹付ける無機質断熱材層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物や土木構造物は、鋼材、コンクリート、モルタル、石材、煉瓦、木材、タイル、漆喰、ガラス、土等の材料により構築されているが、これらの材料のみで構築された構造物は、熱伝導率が大きく熱が逃げ易いため、冷暖房効率が悪い。
そのため、断熱材として、ビーズ法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム等の発泡樹脂系断熱材が広く用いられている。
しかしながら、これらの多くは可燃性であり、国内外を問わず、発泡樹脂系断熱材への引火が原因で火災も起こっている。
【0003】
一方、耐火性を付与するために、構造物の部材に、ロックウール、セメント及び水からなる耐火被覆材を吹付けるロックウール吹付け工法が行われている。この耐火被覆材は、1000℃以上の火炎に晒されても被覆した部材を一定時間保護することができるという優れた性能を有しているが、嵩密度が大きく、断熱性もフロン使用ウレタンフォームの1/2以下であるため、発泡樹脂系断熱材の代替としては使用し難かった。
また、ロックウールを合成樹脂で結合してなる不燃吹付け断熱材が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、当該不燃吹付け断熱材は、合成樹脂を結合材として含有するため、実質的に不燃性の無機質材料から構成されている訳ではない。そのため、実質的に不燃性の無機質材料から構成される断熱材が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、実質的に不燃性の無機質材料から構成されており、熱伝導率及び乾燥したときの嵩密度が小さく且つ付着強度が高い無機質断熱材並びにこれを吹付ける無機質断熱材層の形成方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、セメントの質量とロックウールの質量との合計に対する水の質量の比率を0.7~3.0にするとともに、セメントの質量とロックウールの質量との合計に対するセメントの質量の比率を0.05~0.3とした無機質断熱材が、熱伝導率及び乾燥したときの嵩密度が小さく且つ付着強度が高いものであることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<3>を提供するものである。
<1> (A)セメント及び水を主成分とするセメントスラリーと、(B)ロックウールとを含有し、前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記水の質量(W)の比率(W/(C+RW))が0.7~3.0であり、且つ前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記セメントの質量(C)の比率(C/(C+RW))が0.05~0.3である、無機質断熱材。
<2> 前記セメントスラリーのセメント濃度が3~30質量%である、<1>に記載の無機質断熱材。
<3> ロックウール噴射口を先端部に備えるロックウール用管路と、前記ロックウール噴射口の外周及び/又は前記ロックウール用管路内に1個又は複数個配置されているセメントスラリー噴射口とを具備する吹付けガンにロックウール及びセメントスラリーを別々に送り、前記ロックウール用管路に供給された前記ロックウールを前記ロックウール噴射口から噴射させるとともに、前記セメントスラリー噴射口に前記セメントスラリーを送り当該セメントスラリーを前記セメントスラリー噴射口から噴射させることで、前記ロックウールと前記セメントスラリーとを合流混合させて被覆対象物に吹付け、ロックウール組成物からなる無機質断熱材層を形成させる無機質断熱材層の形成方法であって、前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記水の質量(W)の比率(W/(C+RW))が0.7~3.0であり、且つ前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記セメントの質量(C)の比率(C/(C+RW))が0.05~0.3である、無機質断熱材層の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無機質断熱材は、熱伝導率及び乾燥したときの嵩密度が小さく且つ付着強度が高い。したがって、本発明の無機質断熱材層の形成方法によれば、熱伝導率及び嵩密度が小さく且つ付着強度が高い無機質断熱材層が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の無機質断熱材層の形成方法(吹付け工法)に用いる吹付け装置の一例の概略図である。
【
図2】本発明で用いる吹付けガンの一例(センターガン)の概念的な断面図である。
【
図3】実施例で使用したロックウール粒状綿を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔無機質断熱材〕
本発明の無機質断熱材は、(A)セメント及び水を主成分とするセメントスラリーと、(B)ロックウールとを含有し、前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記水の質量(W)の比率(W/(C+RW))が0.7~3.0であり、且つ前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記セメントの質量(C)の比率(C/(C+RW))が0.05~0.3であることを特徴とする。
【0011】
本発明の無機質断熱材は、比率(W/(C+RW))が0.7~3.0である。比率(W/(C+RW))が0.7未満の場合には、無機質断熱材層を形成させるときに噴霧不良が発生しやすくなる。また、比率(W/(C+RW))が3.0超の場合には、セメントスラリー圧力が増大し、無機質断熱材層を形成させるとき安全でなくなる。
比率(W/(C+RW))は、絶乾嵩密度、熱伝導率及び付着強度の観点から、好ましくは0.8~2.7、より好ましくは0.82~2.64、更に好ましくは1.1~1.4、更に好ましくは1.17~1.36、特に好ましくは1.17~1.32である。
【0012】
また、本発明の無機質断熱材は、比率(C/(C+RW))が0.05~0.3である。比率(C/(C+RW))が0.05未満の場合には、付着強度が不充分となる。また、比率(C/(C+RW))が0.3超の場合には、熱伝導率が大となる。
比率(C/(C+RW))は、絶乾嵩密度、熱伝導率及び付着強度の観点から、好ましくは0.06~0.27、より好ましくは0.08~0.27、更に好ましくは0.08~0.15、特に好ましくは0.1~0.15である。
【0013】
また、セメントの質量(C)に対するロックウールの質量(RW)の比率(RW/C)は、絶乾嵩密度、熱伝導率及び付着強度の観点から、好ましくは1~20、より好ましくは2~17、更に好ましくは2~13、特に好ましくは5~13である。
ロックウールの質量(RW)に対する水の質量(W)の比率(W/RW)は、絶乾嵩密度、熱伝導率及び付着強度の観点から、好ましくは0.5~3.5、より好ましくは1~3、更に好ましくは1~1.43、特に好ましくは1.3~1.43である。
ロックウールの質量(RW)に対するセメントの質量(C)の比率(C/RW)は、絶乾嵩密度、熱伝導率及び付着強度の観点から、好ましくは0.01~0.4、より好ましくは0.05~0.4、更に好ましくは0.08~0.4、特に好ましくは0.08~0.2である。
【0014】
本明細書において「無機質断熱材」とは、実質的に無機質材料から構成されている断熱材をいう。また、不燃性の無機質材料は、セメント、ロックウール及び水を包含する概念である。また、「無機質断熱材層」とは、上記無機質断熱材を吹付けて形成される断熱材層をいう。
セメント、水及びロックウールの合計含有量は、無機質断熱材全質量に対して、好ましくは97.5~100質量%、より好ましくは98~100質量%、更に好ましくは99~100質量%、特に好ましくは99.9~100質量%である。
【0015】
本発明に使用するセメントは水硬性セメントであればよく、例えば、普通、早強、超早強、低熱、中庸熱等の各種ポルトランドセメント;白色セメント、エコセメント、アルミナセメント等の特殊セメント;これらのポルトランドセメントや特殊セメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメントが挙げられる。これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
上記セメントは、水と混合して、セメントスラリー(セメントペースト)として使用する。セメントスラリーのセメント濃度、即ちセメントスラリー濃度は、好ましくは3~30質量%、より好ましくは4~25質量%である。また、水の含有量は、セメントスラリー全質量に対して、好ましくは70~97質量%、より好ましくは75~96質量%である。
また、セメントスラリーは、セメント及び水を主成分とするものであればよいが、セメント及び水の合計含有量は、セメントスラリー全質量に対して、好ましくは98~100質量%、より好ましくは98.5~100質量%、更に好ましくは99~100質量%、特に好ましくは99.9~100質量%である。
【0017】
セメントスラリーには、本発明の効果を損なわない範囲で、混和材料を1種又は2種以上含有させてもよい。この混和材料としては、例えば、セメント分散剤、膨張材、防水材、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、発泡剤、消泡剤、石膏、高炉スラグ微粉末、ポゾラン物質、撥水剤、セメント用ポリマー、表面硬化剤等が挙げられる。混和材料は、好ましくは無機質の混和材料であるが、有機質の混和材料もセメント100質量部に対して5質量部以下程度であれば使用できる。
【0018】
本発明に使用するロックウールは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら繊維化された素材(鉱物繊維)であればよく、例えば、高炉スラグを主体とする材料より製造されたスラグウールなども包含される。
本発明に使用するロックウールとしては、粒状ロックウール(粒状綿)が好ましい。
粒状ロックウールは、繊維化された鉱物繊維を集めた原綿を解綿機等で細かくすることで調製できる。具体的には、ロックウールの原綿に、解砕、解綿、切断、分級(例えば、篩い分け)及び造粒から選ばれる1種又は2種以上の処理を行うことで調製できる。
本発明においてロックウールとして原綿を用いる場合には、圧送前に解綿機等で細かくしてから用いるのが好ましい。また、粒状ロックウール(粒状綿)をロックウールとして用いる場合においても、解綿機等で解した上で圧送することが、セメントスラリーとの接触面が増すため好ましい。
ロックウールの含有量は、無機質断熱材全質量に対して、好ましくは15~55質量%、より好ましくは20~50質量%、更に好ましくは24~45質量%、特に好ましくは24.5~43質量%である。
【0019】
本発明の無機質断熱材は、例えば、(A)セメント及び水を主成分とするセメントスラリーと、(B)ロックウールとを別経路で吹付けガンへ圧送し、(A)セメントスラリーと(B)ロックウールとを、吹付けガンが備えるそれぞれの噴射口より噴射し且つ合流混合させることで製造することができる。
【0020】
そして、本発明の無機質断熱材は、実質的に不燃性の無機質材料から構成されており、熱伝導率及び乾燥したときの嵩密度が小さく且つ付着強度が高い。
したがって、本発明の無機質断熱材は、例えば、壁、床及び天井等に発泡樹脂系断熱材の代替として用いることができ、しかも実質的に不燃性の無機質材料から構成されているので燃焼しにくく引火による火災が発生しにくいため、構造物等の断熱材として極めて有用である。
【0021】
〔無機質断熱材層の形成方法〕
本発明の無機質断熱材層の形成方法は、ロックウール噴射口を先端部に備えるロックウール用管路と、前記ロックウール噴射口の外周及び/又は前記ロックウール用管路内に1個又は複数個配置されているセメントスラリー噴射口とを具備する吹付けガンにロックウール及びセメントスラリーを別々に送り、前記ロックウール用管路に供給された前記ロックウールを前記ロックウール噴射口から噴射させるとともに、前記セメントスラリー噴射口に前記セメントスラリーを送り当該セメントスラリーを前記セメントスラリー噴射口から噴射させることで、前記ロックウールと前記セメントスラリーとを合流混合させて被覆対象物に吹付け、ロックウール組成物からなる無機質断熱材層を形成させる無機質断熱材層の形成方法であって、前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記水の質量(W)の比率(W/(C+RW))が0.7~3.0であり、且つ前記セメントの質量(C)と前記ロックウールの質量(RW)との合計に対する前記セメントの質量(C)の比率(C/(C+RW))が0.05~0.3であることを特徴とする。
【0022】
無機質断熱材層の形成は、セメントスラリーとロックウールとからなる耐火被覆材の形成に用いる半乾式ロックウール吹付け工法に用いる吹付け装置を用いて行うことが好ましい。
図1は、本発明の無機質断熱材層の形成方法(吹付け工法)に用いる吹付け装置の一例の概略図であり、この装置は、半乾式ロックウール吹付け工法に用いられるものである。
図2は、本発明で用いる吹付けガンの一例(センターガン)の概念的な断面図である。
ここで、
図1に示した吹付け装置を用いる場合の無機質断熱材層の形成方法について説明する。
図1に示すように、吹付け装置10は、吹付けガン1と、ロックウール圧送用ホース9と、解綿機20と、ブロワ14と、セメントスラリー圧送用ホース6と、セメントスラリー用圧送ポンプ7と、セメントスラリー用貯留槽8と、セメントスラリー用吸引ホース15とを具備する。また、解綿機20は、第一解綿部21と、第二解綿部22と、スクリューフィーダ24と、ホッパ23と、ロックウール圧送管26と、ロータリフィーダ(定量供給装置)25とを具備する。
【0023】
図1に示した吹付け装置に用いられている吹付けガン1は、ロックウール噴射口2の中央付近にセメントスラリー噴射口3が配置されたもの(センターガン)であるが、ロックウール噴射口2の外周にセメントスラリー噴射口が1個又は複数個配置配置されたもの(例えばリングガン)を、本発明の無機質断熱材層の形成方法に使用することもできる。
図2に示したセンターガンでは、セメントスラリー噴射口3は、ロックウール用管路32の中心軸33上にある。また、
図2に示したセンターガンでは、セメントスラリー噴射口3は、ロックウール用管路32の先端から突出しないように、ロックウール用管路32内に没入した状態で収容されているが、ロックウール噴射口2から突出していてもよく、また、ロックウール噴射口2と同じ位置でもよい。また、ロックウール用管路32はストレート管であり、セメントスラリー用管路31は屈曲した管であるが、これらはいずれも円筒状のものが好ましい。セメントスラリー用管路31の一部(セメントスラリー噴射口3と反対側の端部を含む領域)は、ロックウール用管路32の壁面に設けられた管路貫通孔より外部へと突出している。
また、センターガンの代表的な例としては、実公昭55-054755号公報の
図1及び
図2に示されている吹付け施工用ガン又はこの吹付け施工用ガンにおける空気用パイプがないもの、或いは実公昭59-024384号公報の
図2に示されている無機繊維吹付用ガン等が挙げられる。
【0024】
ロックウール11は、解綿機20のホッパ23に投入される。投入されたロックウール11は、ホッパ23の下部に備えられた第一解綿部21で解された後に、スクリューフィーダ24により第二解綿部22に送られ、この第二解綿部22で更に細かく解された後に、第二解綿部22の下部に備えられたロータリフィーダ25に自重で落ち、ロータリフィーダ25内部の仕切りが回転することで、ロックウール圧送管26に定量供給される。
【0025】
ロックウール圧送管26に定量供給されたロックウールは、ブロワ14から送られてきた空気の流れにより、ロックウール圧送管26に連結してあるロックウール圧送用ホース9を通って、吹付けガン1のロックウール用管路32に供給され、ロックウール噴射口2から下地13に向かって噴射(吐出)させる。
【0026】
また、セメントスラリー4は、セメントスラリー用貯留槽8内に貯留されている。セメントスラリー用圧送ポンプ7の吸引口に接続されたセメントスラリー用吸引ホース15の先端は、セメントスラリー用貯留槽8に貯留してあるセメントスラリー4に挿されている。セメントスラリー用圧送ポンプ7を稼働させると、セメントスラリー用吸引ホース15の先からセメントスラリー4が吸引され、セメントスラリー圧送用ホース6を通り、これに接続されている吹付けガン1のセメントスラリー用管路31を通って、その先端のセメントスラリー噴射口3から下地13に向かって噴射(吐出)させる。
【0027】
噴射したセメントスラリー4は霧化して、ロックウール噴射口2から噴射したロックウール5と合流混合することで無機質断熱材となり、下地13に吹付けられ、ロックウールとセメントスラリーとの合流混合物からなる無機質断熱材層12が形成される。
【0028】
このようにして本発明の無機質断熱材層の形成方法で形成されるロックウール組成物からなる無機質断熱材層(ロックウールとセメントスラリーとの合流混合物からなる無機質断熱材層)に含まれる成分並びに各成分の含有割合及び含有量は、本発明の無機質断熱材に含まれる成分並びに各成分の含有割合及び含有量と同様である。ここで、無機質断熱材層に含まれる各成分の含有割合及び含有量は、被覆対象物に吹付けられた時の値をいうものとする。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
[試験No.1~11]
<無機質断熱材層の形成>
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)と水(千葉県佐倉市上水)を用いてセメントペーストを作製し、ロックウール(
図3に示すロックウール粒状綿(太平洋マテリアル社製))とともに、半乾式工法のロックウール吹付け工法に使用されるセンターガンを備える装置を使用して、壁面の鋼製下地(鋼板)に吹付け、無機質断熱材層を形成した。このときのロックウールの噴射量は、4.0kg/分とした。各材料の配合割合、無機質断熱材の組成割合(W/(C+RW)、C/(C+RW))を表1に示した。
<無機質断熱材の組成割合>
・W/(C+RW) : セメントの質量(C)とロックウールの質量(RW)との合計に対する水の質量(W)の比率
・C/(C+RW) : セメントの質量(C)とロックウールの質量(RW)との合計に対するセメントの質量(C)の比率
【0031】
吹付施工時の評価及び製造した無機質断熱材の評価を表2にまとめて示した。吹付施工時の評価方法及び無機質断熱材の評価方法は、以下の通りである。
<吹付施工時の評価方法>
・安全性
吹付施工時のセメントスラリーの圧力(スラリー圧力)を測定した。スラリー圧力が1.0MPa以下である場合を安全(記号:○)、1.0MPaを超える場合を安全でないもの(記号:×)と評価した。スラリー圧力が1.0MPaを超えると、セメントスラリー圧送用ホースが破裂する虞、並びにセメントスラリー圧送用ホースがセメントスラリー用圧送ポンプ及び/又は吹付けガンのセメントスラリー用管路から外れる虞がある。
【0032】
・粉塵量
吹付施工時に発生した粉塵量を目視により確認し、耐火被覆材の形成に用いる半乾式ロックウール吹付け工法で発生する粉塵量(試験No.1と同じ配合のもの)と比較して、粉塵発生量が同程度である場合を「良好」(記号:○)、明らかに粉塵発生量が少ない場合を「最良」(記号:◎)、明らかに粉塵発生量が多い場合を「不良」(記号:×)と評価した。
【0033】
<無機質断熱材の評価方法>
・熱伝導率
JIS A 1412-2「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)」に従い、英弘精機社製熱伝導率測定装置「FOX200」により、平均温度20℃、サンプルサイズ200×200×30mmで測定した。
また、熱伝導率は、0.045W/(m・K)以上0.050W/(m・K)未満を「良好」(記号:○)、0.045W/(m・K)未満を「最良」(記号:◎)、0.050W/(m・K)以上を「不良」(記号:×)と評価した。
【0034】
・絶乾嵩密度
熱伝導率測定後の供試体の外寸から供試体の体積(V)を求め、その値とその時の供試体の質量(M)から次式(1)により嵩密度(ρ)を求めた。
ρ=M/V ・・・・・ (1)
絶乾嵩密度の評価は、0.21g/cm3以上0.30g/cm3以下を「良好」(記号:○)、0.20g/cm3以下を「最良」(記号:◎)、0.31g/cm3以上を「不良」(記号:×)とした。
【0035】
・付着強度
鋼板(350×350×40mm)の平面(350×350mm)の各辺に幅10mm、高さ40mmの枠を取り付け、内側の形状が330×330×40mmとなる型枠を作製し、その型枠内に無機質断熱材を厚み40mmとなるように吹付けた後に、その表面を鏝で平らに仕上げた。無機質断熱材の表面に100×100×0.8mmの鉄板を接着剤で貼り付けた後に、鉄板の各辺に沿って下地の鋼板まで切り込みを入れた。無機質断熱材の表面に貼り付けた鉄板を、プッシュプルゲージを用いて引張り最大応力を測定し、付着強度を求めた。
付着強度の評価は、1000Pa以上2000Pa未満の場合を「良好」(記号:○)、2000Pa以上3500Pa未満の場合を「優良」(記号:◎)、3500Pa以上の場合を「最良」(記号:◎◎)、1000Pa未満の場合を「不良」(記号:×)とした。
【0036】
・総合評価
総合評価の評価基準は以下の通りである。
「最良」(記号:◎):熱伝導率の評価が「最良」(記号:◎)且つ付着強度の評価が「優良」(記号:◎)又は「最良」(記号:◎◎)の場合
「良好」(記号:○):熱伝導率の評価及び付着強度の評価の少なくとも一方が「良好」(記号:○)であり且つこの2つの評価で「不良」(記号:×)がない場合
「不良」(記号:×):熱伝導率の評価及び付着強度の評価の少なくとも一方が「不良」(記号:×)である場合
【0037】
【0038】
【0039】
試験No.2~8(実施例)の無機質断熱材は、乾燥したときの嵩密度が小さく、また熱伝導率が小さく断熱性に優れ、更に付着強度が高く、断熱材としての性能が優れるものであった。また、このうち、試験No.5~7の無機質断熱材は断熱性に特に優れるものであった。試験No.5~6の無機質断熱材は、断熱性及び付着強度に特に優れるものであった。
【符号の説明】
【0040】
1 吹付けガン(センターガン)
2 ロックウール噴射口
3 セメントスラリー噴射口
4 セメントスラリー
5 解されたロックウール
6 セメントスラリー圧送用ホース
7 セメントスラリー用圧送ポンプ
8 セメントスラリー用貯留槽
9 ロックウール圧送用ホース
10 吹付け装置(吹付けシステム)
11 ロックウール
12 ロックウールとセメントスラリーとの合流混合物からなる無機質断熱材層
13 下地(壁)
14 ブロワ(送風機)
15 セメントスラリー用吸引ホース
20 解綿機
21 第一解綿部
22 第二解綿部
23 ホッパ
24 スクリューフィーダ
25 ロータリフィーダ(定量供給装置)
26 ロックウール圧送管
31 セメントスラリー用管路
32 ロックウール用管路
33 ロックウール用管路の中心軸