(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240910BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020161533
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】松崎 健太
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 智洋
(72)【発明者】
【氏名】相庭 祥造
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-243445(JP,A)
【文献】特開2020-109434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
電圧が印加されて転写部で前記像担持体から被転写体にトナー像を転写させる転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電源と、
前記電源により前記転写部材に電圧を印加した際に前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、
前記転写部にトナー像が無い時に、前記転写部材に試験電圧を印加することで前記転写部にトナー像がある時に前記転写部材に印加する転写電圧を設定する設定モードを実行可能な制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記設定モードにおいて、前記電流検知部により検知される電流値が第1の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第1の電圧値を取得し、前記第1の電圧値に基づいて第2の電流値を決定し、前記電流検知部により検知される電流値が前記第2の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第2の電圧値を取得し、前記第1、第2の電流値及び前記第1、第2の電圧値に基づいて前記転写電圧を設定し、
前記第1の電流値は、前記第1の電圧値の絶対値が所定の電圧値の絶対値以下となるように設定されており、前記第2の電流値の絶対値は前記第1の電流値の絶対値よりも大き
く、
前記制御部は、前記第1の電圧値が第1の値の場合は前記第2の電流値を第2の値とし、前記第1の電圧値が前記第1の値よりも絶対値が大きい第3の値の場合は前記第2の電流値を絶対値が前記第2の値よりも小さい第4の値とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の電流値の絶対値は、5.0μA以下であることを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の電流値は、前記転写部に絶対値が放電開始電圧以上の電圧が印加されるように設定されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定の電圧値は、予め設定された前記電源の最大出力値であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
トナー像を担持する像担持体と、
電圧が印加されて転写部で前記像担持体から被転写体にトナー像を転写させる転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電源と、
前記電源により前記転写部材に電圧を印加した際に前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、
前記転写部にトナー像が無い時に、前記転写部材に試験電圧を印加することで前記転写部にトナー像がある時に前記転写部材に印加する転写電圧を設定する設定モードを実行可能な制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記設定モードにおいて、前記電流検知部により検知される電流値が第1の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第1の電圧値を取得し、前記第1の電圧値に基づいて第2の電流値を決定し、前記電流検知部により検知される電流値が前記第2の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第2の電圧値を取得し、前記第1、第2の電流値及び前記第1、第2の電圧値に基づいて前記転写電圧を設定し、
前記第1の電流値は、前記第1の電圧値の絶対値が所定の電圧値の絶対値以下となるように設定されており、前記第2の電流値の絶対値は前記第1の電流値の絶対値よりも大きく、
前記制御部は、前記設定モードにおいて、前記第1、第2の電流値及び前記第1、第2の電圧値に基づいて電圧電流特性を求め、該電圧電流特性に基づいて前記転写電圧を設定することを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記電圧電流特性として1次関数を求めることを特徴とする請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記設定モードにおいて、前記第1、第2の電流値及び前記第1、第2の電圧値に基づいて電圧電流特性を求め、前記電圧電流特性に基づいて第3の電流値を決定し、前記電流検知部により検知される電流値が前記第3の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第3の電圧値を取得し、前記第1、第2、第3の電流値及び前記第1、第2、第3の電圧値に基づいて前記転写電圧を設定し、
前記第3の電流値の絶対値は前記第2の電流値の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記電圧電流特性として1次関数を求めることを特徴とする請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記設定モードにおいて、前記第1、第2、第3の電流値及び前記第1、第2、第3の電圧値に基づいて別の電圧電流特性を求め、該別の電圧電流特性に基づいて前記転写電圧を設定することを特徴とする請求項
7又は
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記別の電圧電流特性として2次関数を求めることを特徴とする請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記像担持体は、別の像担持体から転写されたトナー像を担持して、前記被転写体としての記録材に転写するために搬送する中間転写体であることを特徴とする請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、印刷装置、あるいはこれらのうち複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式の画像形成装置として、像担持体(感光体又は中間転写体)と転写部材との間に被転写体(中間転写体又は記録材)を挟持する転写部を形成して、像担持体から被転写体にトナー像を転写する画像形成装置が広く用いられている。転写時に、転写部には、転写電圧が印加される。そして、転写時に転写部に定電圧制御で転写電圧を印加する画像形成装置では、画像形成に先立って設定モードを実行して、転写部を通過する被転写体に像担持体からトナー像を転写する際に転写部に定電圧制御で印加する転写電圧の目標電圧値を設定している。
【0003】
設定モードとしては、次のようなものが知られている。トナー像の転写を行っていない時に試験電圧又は試験電流を転写部に印加して、その際に検知した電流値又は電圧値に基づいて目標電圧値を設定する。また、次のようなものも知られている。トナー像の転写を行っていない時に複数段階の試験電圧又は試験電流を転写部に印加して、転写部の電圧電流特性(IV曲線)を求める。そして、求めた電圧電流特性に基づいて、所定の目標電流値に対応する目標電圧値を設定する。設定モードによれば、個体差、周囲温度、使用履歴(電圧印加の累積時間)などによって異なる転写部材や像担持体の抵抗値にあわせて、転写部に所定の目標電流値の電流が流れるように転写電圧を自動的に調整することができる。そのため、このような設定モードによる転写電圧制御は、ATVC(Automatic Transfer Voltage Control)制御と呼ばれる。
【0004】
例えば転写部材としての転写ローラは、周方向の電気抵抗ばらつき、電気抵抗の温度特性、使用に伴う電気抵抗の変化などの影響を受けるため、電気抵抗が比較的大きく変化する場合がある。そのため、ATVC制御は、ジョブの開始時に画像形成を開始する前に行うことが一般的である。
【0005】
特許文献1では、転写ローラに所定の電圧を印加して電流の計測を行い、その電流値に応じて次の出力電圧を設定するATVC制御が提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、環境検知手段で検知した環境に応じて最初に印加する電圧値を変更するATVC制御が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平2-264278号公報
【文献】特開2006-72207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、ATVC制御では、画像形成中に転写部に印加する転写電圧の目標電圧値を決定するために、定電流制御で画像形成中の目標電流値の電流を流すように転写部に電圧を印加することが多い。転写部に印加する電圧の定電流制御と定電圧制御とが可能な構成において、定電流制御で画像形成中の目標電流値の電流を流すように転写部に電圧を印加する場合、想定よりも絶対値が大きい電圧が出力される場合がある。ここで、上述のように、環境に応じて最初に転写部に印加する電圧値を決定するATVC制御が知られている。しかし、転写部材の使用に伴う劣化による電気抵抗の上昇、転写部材の付着物(紙粉、トナーなど)による電気抵抗の上昇などが生じることがある。これによって、高圧出力上限値(高圧トランス上限値、定電圧高圧電源上限値)などにより決まる最大出力値よりも絶対値が大きい電圧が出力されてしまう場合がある。そのため、環境に基づいてATVC制御における電圧の出力値を予測するだけでは不十分である。
【0009】
ATVC制御の実行時に、最大出力値(想定した電圧値)よりも絶対値が大きい電圧が出力された場合、ATVC制御における検知結果は実際と異なる結果となるため、電圧電流特性を把握するためには再度ATVC制御を実行する必要がある。また、ATVC制御の実行時に最大出力値(想定した電圧値)よりも絶対値が大きい電圧が出力された場合、高圧基盤の基準電位の振れ、高圧基盤の故障、高圧基盤における沿面放電などのリスクがある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、転写電源から想定した電圧値よりも絶対値が大きい電圧が出力されないようにして、転写部の電圧電流特性を求めることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、電圧が印加されて転写部で前記像担持体から被転写体にトナー像を転写させる転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電源と、前記電源により前記転写部材に電圧を印加した際に前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、前記転写部にトナー像が無い時に、前記転写部材に試験電圧を印加することで前記転写部にトナー像がある時に前記転写部材に印加する転写電圧を設定する設定モードを実行可能な制御部と、を有し、前記制御部は、前記設定モードにおいて、前記電流検知部により検知される電流値が第1の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第1の電圧値を取得し、前記第1の電圧値に基づいて第2の電流値を決定し、前記電流検知部により検知される電流値が前記第2の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第2の電圧値を取得し、前記第1、第2の電流値及び前記第1、第2の電圧値に基づいて前記転写電圧を設定し、前記第1の電流値は、前記第1の電圧値の絶対値が所定の電圧値の絶対値以下となるように設定されており、前記第2の電流値の絶対値は前記第1の電流値の絶対値よりも大きく、前記制御部は、前記第1の電圧値が第1の値の場合は前記第2の電流値を第2の値とし、前記第1の電圧値が前記第1の値よりも絶対値が大きい第3の値の場合は前記第2の電流値を絶対値が前記第2の値よりも小さい第4の値とすることを特徴とする画像形成装置である。
本発明の他の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、電圧が印加されて転写部で前記像担持体から被転写体にトナー像を転写させる転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電源と、前記電源により前記転写部材に電圧を印加した際に前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、前記転写部にトナー像が無い時に、前記転写部材に試験電圧を印加することで前記転写部にトナー像がある時に前記転写部材に印加する転写電圧を設定する設定モードを実行可能な制御部と、を有し、前記制御部は、前記設定モードにおいて、前記電流検知部により検知される電流値が第1の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第1の電圧値を取得し、前記第1の電圧値に基づいて第2の電流値を決定し、前記電流検知部により検知される電流値が前記第2の電流値となるように前記電源を制御して前記転写部材に前記試験電圧を印加して該試験電圧の第2の電圧値を取得し、前記第1、第2の電流値及び前記第1、第2の電圧値に基づいて前記転写電圧を設定し、前記第1の電流値は、前記第1の電圧値の絶対値が所定の電圧値の絶対値以下となるように設定されており、前記第2の電流値の絶対値は前記第1の電流値の絶対値よりも大きく、前記制御部は、前記設定モードにおいて、前記第1、第2の電流値及び前記第1、第2の電圧値に基づいて電圧電流特性を求め、該電圧電流特性に基づいて前記転写電圧を設定することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、転写電源から想定した電圧値よりも絶対値が大きい電圧が出力されないようにして、転写部の電圧電流特性を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】画像形成装置の制御態様を説明するための概略ブロック図である。
【
図3】2次転写部の電気的特性を説明するための模式図である。
【
図4】2次転写電流と2次転写効率との関係を模式的に示すグラフ図である。
【
図5】実施例1のATVC制御のフローチャート図である。
【
図6】実施例1のATVC制御を説明するためのグラフ図である。
【
図7】実施例2のATVC制御のフローチャート図である。
【
図8】実施例2のATVC制御を説明するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0015】
[実施例1]
1.画像形成装置の構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型のフルカラーレーザープリンタである。
【0016】
画像形成装置100は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する4つの画像形成部(ステーション、画像形成ユニット)SY、SM、SC、SKを有する。4つの画像形成部SY、SM、SC、SKは、後述する中間転写ベルト56の移動方向に沿って一定の間隔をおいて一列に配置されている。各画像形成部SY、SM、SC、SKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾Y、M、C、Kを省略して、総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Sは、後述する感光ドラム50(50Y、50M、50C、50K)、帯電ローラ51(51Y、51M、51C、51K)、露光装置52(52Y、52M、52C、52K)、現像装置53(53Y、53M、53C、53K)、1次転写ローラ54(54Y、54M、54C、54K)、クリーニング装置55(55Y、55M、55C、55K)などを有して構成される。
【0017】
回転可能(移動可能)な第1の像担持体としての、ドラム型(円筒形)の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム50は、駆動手段を構成する駆動源としてのドラム駆動モータ(図示せず)によって、図中矢印R1方向(時計回り方向)に回転駆動される。感光ドラム50は、予め設定された所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。回転する感光ドラム50の表面は、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ51によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に略一様に帯電処理される。帯電処理時に、帯電ローラ51には、帯電電圧印加手段としての高圧電源である帯電電源(図示せず)により、所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電処理された感光ドラム50の表面は、露光手段としての露光装置52によって、各画像形成部Sに対応した画像情報に応じて走査露光され、感光ドラム50上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、露光装置52は、画像情報に応じて変調されるレーザー光を感光ドラム50の長手方向(回転軸方向)に沿って走査するレーザースキャナー装置である。
【0018】
感光ドラム50上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置53によって、各画像形成部Sに対応した色のトナーによって現像(可視化)され、感光ドラム50上にトナー像(現像剤像)が形成される。本実施例では、現像装置53は、現像剤として主に非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを備えた2成分現像剤を用いる2成分現像方式のものである。現像装置53は、回転可能な現像剤担持体としての現像スリーブによって現像剤を感光ドラム50との対向部(現像部)に搬送する。そして、現像電圧印加手段としての高圧電源である現像電源(図示せず)により、現像スリーブに所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。これにより、静電像に応じて現像スリーブ上の現像剤から感光ドラム50上にトナーが転移する。本実施例では、現像スリーブには、負極性の直流電圧成分Vdcに交流電圧成分Vacが重畳された現像電圧が印加される。本実施例では、略一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム50上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム50の帯電極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。各現像装置53Y、53M、53C、53Kには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーが収納されている。
【0019】
4つの感光ドラム50Y、50M、50C、50Kと対向するように、回転可能(移動可能)な第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された中間転写体である中間転写ベルト56が配置されている。中間転写ベルト56は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ63、テンションローラ60、上流補助ローラ67、下流補助ローラ61及び2次転写対向ローラ62によって、内周面が支持されて、所定の張力で張架されている。中間転写ベルト56は、ポリイミドなどの誘電体樹脂によって無端状に形成されている。中間転写ベルト56は、駆動手段を構成する駆動源としてのベルト駆動モータ(図示せず)によって駆動ローラ63が回転駆動されることによって、図中矢印R2方向(反時計回り方向)に回転(周回移動)する。中間転写ベルト56は、感光ドラム50の周速度と略同一の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。中間転写ベルト56の内周面側には、各感光ドラム50に対応して、1次転写手段としてのローラ状の1次転写部材である1次転写ローラ54が配置されている。1次転写ローラ54は、中間転写ベルト56の内周面を感光ドラム50に向けて押圧し、感光ドラム50と中間転写ベルト56とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)N1を形成する。感光ドラム50上に形成されたトナー像は、1次転写部N1において、1次転写ローラ54の作用によって、被転写体としての回転している中間転写ベルト56上に転写(1次転写)される。1次転写時に、1次転写ローラ54には、1次転写電圧印加手段としての高圧電源である1次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム50上に形成されたY、M、C、Kの各色のトナー像が、各1次転写部N1Y、N1M、N1C、N1Kにおいて、中間転写ベルト56上に重ね合わされるようにして順次転写(1次転写)される。
【0020】
中間転写ベルト56の外周面側において、2次転写対向ローラ(2次転写内ローラ)62と対向する位置には、2次転写手段としてのローラ状の2次転写部材である2次転写ローラ(2次転写外ローラ)64が配置されている。2次転写ローラ64は、2次転写対向ローラ62に向けて押圧され、中間転写ベルト56を介して2次転写対向ローラ62に当接して、中間転写ベルト56と2次転写ローラ64とが接触する2次転写部(2次転写ニップ)N2を形成する。中間転写ベルト56上に形成されたトナー像は、2次転写部N2において、2次転写ローラ64の作用によって、被転写体としての中間転写ベルト56と2次転写ローラ64とに挟持されて搬送されている記録用紙などの記録材P上に転写(2次転写)される。2次転写時に、2次転写ローラ64には、2次転写電圧印加手段としての高圧電源である2次転写電源E2(
図2)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である2次転写電圧(2次転写バイアス)が印加される。2次転写対向ローラ62は、電気的に接地(グラウンドに接続)されている。記録材Pは、記録材収容部としてのカセット(図示せず)などから給送手段としての給送ローラ(図示せず)などにより給送されて、搬送部材としてのレジストローラ対11まで搬送される。この記録材Pは、レジストローラ対11によって、斜行が補正されると共に、中間転写ベルト56上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写部N2に搬送される。レジストローラ対11によって搬送される記録材Pは、転写前ガイド部材12によって搬送軌跡が規制されて2次転写部N2へとガイドされる。
【0021】
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置(図示せず)へと搬送される。定着装置は、定着ローラと加圧ローラとの間の定着ニップ部で記録材Pを挟持して搬送しながら記録材Pを加圧及び加熱することで、記録材P上にトナー像を定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、画像形成装置100の装置本体の外部に排出(出力)される。
【0022】
一方、1次転写後に感光ドラム50上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置55によって感光ドラム50上から除去されて回収される。本実施例では、クリーニング装置55は、感光ドラム50の表面に当接するクリーニング部材としてのクリーニングブレードによって、回転する感光ドラム50の表面から1次転写残トナーを掻き取って回収する。また、中間転写ベルト56の外周面側において、駆動ローラ63と対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置65が配置されている。2次転写後に中間転写ベルト56上に残留したトナー(2次転写残トナー)や紙粉などの付着物は、ベルトクリーニング装置65によって中間転写ベルト56上から除去されて回収される。本実施例では、ベルトクリーニング装置65は、中間転写ベルト56の表面に当接するクリーニング部材としてのクリーニングブレードによって、回転する中間転写ベルト56の表面から2次転写残トナーなどの付着物を掻き取って回収する。
【0023】
本実施例では、各画像形成部Sにおいて、感光ドラム50と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ51、現像装置53及びクリーニング装置55とは、一体的に画像形成装置100の装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジを構成している。
【0024】
なお、本実施例の画像形成装置100は、第1面にトナー像が定着された記録材Pを再度2次転写部N2へと搬送する両面搬送部(図示せず)を有する。そして、画像形成装置100は、両面搬送部により2次転写部N2へと再度搬送された記録材Pの上記第1面とは反対側の第2面にトナー像を形成し、定着させて、出力することができる。このように、本実施例の画像形成装置100は、自動両面プリントが可能なように構成されている。
【0025】
また、本実施例の画像形成装置100は、Y、M、C、Kの各色用の画像形成部SY、SM、SC、SKでトナー像の形成が可能なフルカラーモードと、K色用の画像形成部Kのみでトナー像の形成が可能なブラック単色モードと、で画像形成が可能である。
【0026】
2.2次転写構成
本実施例では、2次転写部材(転写回転体)としての2次転写ローラ(転写ローラ)64は、導電性を有する軸芯(導電軸)と、軸芯の外周に形成された弾性層(外周層)と、を有する。2次転写ローラ64の軸芯は、金属(例えばステンレス)などの導電性材料(導体)で形成された円柱状の部材である。2次転写ローラ64の弾性層は、例えば厚さ約4mmのスポンジ状の又はソリッドな弾性材料で形成されている。本実施例では、2次転写ローラ64の全体の外径(ローラ径)は約20mmとされている。
【0027】
2次転写ローラ64の弾性層を構成する弾性材料としては、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)やEPDM(エチレンプロピレンゴム)などのエラストマーやその他の合成樹脂を用いることができる。また、2次転写ローラ64の弾性層を構成する材料には、金属錯体などのイオン導電性の導電剤(イオン導電剤)が添加され、適度な導電性(半導電性)が付与されている。なお、イオン導電性の導電剤としては、エピクロルヒドリンゴムなどの半導電性ポリマーを弾性層の基材に混練してもよく、半導電性ポリマーと金属錯体などとを併用してもよい。また、カーボンや金属酸化物などの電子導電性の導電剤(電子導電剤)と上述のようなイオン導電性の導電剤とを、2次転写ローラ64の弾性層を構成する材料に分散させてもよい。
【0028】
また、本実施例では、中間転写ベルト56を挟んで2次転写ローラ64と対向する対向ローラとしての2次転写対向ローラ62は、EPDMなどの弾性材料からなる厚さ約0.5mmの弾性層と、弾性層を支持する金属製の軸芯と、を有する。本実施例では、2次転写対向ローラ62の全体の外径(ローラ径)は約16mmとされている。
【0029】
2次転写対向ローラ62の弾性層を構成する材料には、上述したイオン導電剤やカーボンなどの電子導電剤が添加されることで、適度な導電性が付与されている。また、2次転写対向ローラ62の弾性層の硬度は、例えばアスカーC型の計測器を用いて70°となるように設定されている。
【0030】
3.制御態様
図2は、本実施例における画像形成装置100の制御態様を説明するための概略ブロック図である。
【0031】
画像形成装置100は、制御部としてのコントローラ110を有する。コントローラ110は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段(演算制御部)としてのCPU111、記憶手段(記憶部)としてのROM、RAMなどのメモリ(記憶媒体)112などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAMには、コントローラ110に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU111とROM、RAMなどのメモリ112とは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。なお、コントローラ110には、コントローラ110と外部の機器との間の通信を制御する入出力回路(図示せず)なども設けられている。
【0032】
2次転写ローラ64には、2次転写電源(高圧回路)E2が接続されている。また、2次転写電源E2には、コントローラ110の制御のもとで2次転写電源E2が2次転写ローラ64(2次転写部N2)に印加する電圧を制御する電圧制御部(電圧制御回路)120が接続されている。本実施例では、2次転写電源E2は、定電圧高圧電源回路を有して構成されている。電圧制御部120は、2次転写電源E2の出力を制御する制御信号(指示値)から、2次転写電源E2が出力している電圧を検知することができる。なお、電圧制御部120などに、2次転写電源E2が出力している電圧を検知する電圧検知部(電圧検知回路)が設けられていてもよい。電圧制御部120は、電圧値の検知結果を示す信号をコントローラ110に入力する。また、本実施例では、電圧制御部120には電流検知部(電流検知回路)121が設けられている。電流検知部121は、2次転写電源E2が2次転写ローラ64(2次転写部N2)に電圧を印加している際に2次転写ローラ64(2次転写部N2あるいは2次転写電源E2)に流れる電流を検知することが可能である。電流検知部121は、電流値の検知結果を示す信号をコントローラ110に入力する。
【0033】
本実施例では、電圧制御部120は、電流検知部121により検知される電流の値が目標値(目標電流値)となる(近付く)ように2次転写電源E2の出力する電圧を調整することで、2次転写電源E2が2次転写ローラ64に印加する電圧を定電流制御できる。また、本実施例では、電圧制御部120は、2次転写電源E2の出力電圧値が目標値(目標電圧値)となる(近付く)ように2次転写電源E2の出力電圧を調整(設定)することで、2次転写電源E2が2次転写ローラ64に印加する電圧を定電圧制御できる。
【0034】
また、コントローラ110には、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の、温度又は湿度の少なくとも一方を検知するための環境検知手段としての、環境センサ130が接続されている。本実施例では、環境センサ130は、温湿度センサで構成されており、画像形成装置100の装置本体の内部に設けられ、画像形成装置100の内部(機内)の温度及び湿度を検知することが可能である。環境センサ130は、温度及び湿度の検知結果を示す信号をコントローラ110に入力する。コントローラ110は、環境センサ130による温度及び湿度の検知結果に基づいて、絶対水分量を求めることが可能である。なお、本実施例では、環境センサ130は、現像装置53の近傍の温度及び湿度を検知するように設けられている。
【0035】
コントローラ110は、画像形成装置100の各部を統括的に制御してシーケンス動作させる。コントローラ110には、画像形成装置100に接続された画像読取装置やパーソナルコンピュータなどの外部機器(ホスト装置)200から、画像形成信号(画像データ、制御指令)が入力される。コントローラ110は、この画像形成信号(ジョブの情報)に従って、画像形成装置100の各部を制御して、画像形成動作を実行させる。制御指令は、画像形成開始指示、記録材Pに関する情報や画像形成枚数などの画像形成条件に関する情報などを含む。なお、記録材Pに関する情報とは、普通紙、上質紙、光沢紙、グロス紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙、紙質などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛性などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、商品名、品番などを含む。)などの、記録材Pを区別することのできる任意の情報を包含するものである。記録材Pに関する情報によって区別される記録材Pごとに、記録材Pの種類を構成するものと見ることができる。なお、記録材Pに関する情報は、例えば「普通紙モード」、「グロス紙モード」といった、画像形成装置100の動作設定を指定する画像形成モードの情報に含まれていたり、画像形成モードの情報で代替されたりしてもよい。また、画像形成信号(ジョブの情報)の一部又は全てが、画像形成装置100に設けられた表示手段や入力手段を備えた操作部(図示せず)からコントローラ110に入力されてもよい。
【0036】
ここで、画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリントジョブ、画像出力動作)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、画像形成時のタイミングは、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で異なり、感光ドラム50上や中間転写ベルト56上の画像形成領域が上記各位置を通過している期間に相当する。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続プリント、連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。より詳細には、非画像形成時のタイミングは、感光ドラム50上や中間転写ベルト56上の非画像形成領域が、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う各位置を通過している期間に相当する。なお、感光ドラム50上や中間転写ベルト56上の画像形成領域とは、記録材Pに転写されて画像形成装置100から出力される画像が形成され得る領域であり、非画像形成領域は画像形成領域以外の領域である。本実施例では、コントローラ110は、非画像形成時に、後述するATVC制御を実行可能とされている。
【0037】
4.2次転写部の電気的特性
図3は、本実施例における2次転写部N2の電気的特性を説明するための模式図である。本実施例では、画像形成時(2次転写時)に、2次転写電源E2により2次転写ローラ64(2次転写部N2)に電圧(2次転写電圧)が印加されることで、2次転写ローラ64から電気的に接地された2次転写対向ローラ62に電流(2次転写電流)が流れる。これにより、2次転写部N2に、正規の帯電極性に帯電したトナーを中間転写ベルト56から2次転写部N2を通過する記録材Pに移動させる転写電界(2次転写電界)が形成される。本実施例では、2次転写電源E2は、2次転写ローラ64に対してトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施形態では正極性)の電圧を出力する定電圧源である。
【0038】
なお、本実施例では、2次転写電源E2の最大出力値(最大出力可能電圧値)Vmaxは、6500[V]に設定されている。この最大出力値Vmaxは、高圧出力上限値(高圧トランス上限値、定電圧高圧電源上限値)などにより決まる、予め想定した2次転写電源E2が2次転写ローラ64(2次転写部N2)に印加可能な電圧の絶対値の最大値である。この最大出力値Vmaxは、必ずしも高圧出力上限値自体でなくてもよく、該高圧出力上限値より低い値に設定されていてもよい。
【0039】
また、本実施例では、画像形成装置100のプロセス速度は320mm/s(中間転写ベルト56の周速度に対応)である。
【0040】
図4は、2次転写電流と2次転写効率との関係を模式的に示すグラフ図である。2次転写効率は、中間転写ベルト56に担持されたトナーのうち記録材Pへ転移するトナーの割合で表される。
図4に示すように、2次転写効率は、一般に、ある2次転写電流値においてピーク(図中白丸点)を示す。そのため、2次転写電圧は、この2次転写効率がピークを示す値の2次転写電流が2次転写ローラ64(2次転写部N2)に流れるように制御(設定)されることが望まれる。2次転写部N2(本実施例では主に2次転写ローラ64)の電気抵抗は、部材の使用量や環境によって変動するため、所望の2次転写電流値が得られる2次転写電圧値も変わる。そのため、非画像形成時に、2次転写部N2に記録材Pが無い状態で2次転写ローラ64(2次転写部N2)に電圧を印加し、電圧と電流との関係に関する情報を取得する。これにより、2次転写部N2(本実施例では主に2次転写ローラ64)の電気抵抗に関する情報を取得する。そして、この情報に基づいて、画像形成時(2次転写時)に2次転写ローラ64(2次転写部N2)に印加する2次転写電圧を設定する。このような制御(設定モード)が、前述のATVC制御である。
【0041】
一般的なATVC制御の一例について説明する。2次転写部N2に記録材Pが到達する前に、画像形成時(2次転写時)に2次転写部N2に記録材Pがある状態で上記2次転写効率がピークを示す目標電流値Itの2次転写電流が流れるように画像形成時の2次転写電圧の目標電圧値を決定する。より具体的には、例えば、コントローラ110は、画像形成を行う前に、2次転写部N2に記録材Pが無い状態で、電流検知部121で検知される電流値を目標電流値Itに近付けるように2次転写ローラ64(2次転写部N2)に印加する電圧を定電流制御する。この目標電流値Itは、記録材Pの種類(坪量、材質など)、環境に応じて予め設定されている。そして、コントローラ110はこのときに検知される電圧値に基づいて、画像形成時(2次転写時)に2次転写部N2に記録材Pがある状態で2次転写ローラ64(2次転写部N2)に印加する2次転写電圧の目標電圧値を決定する。なお、より詳細には、上述のように2次転写部N2の電気抵抗に応じて決定される電値圧に対して、記録材分担電圧を足し合わせるなどして、画像形成時に2次転写ローラ64に印加する2次転写電圧の目標電圧値を設定することができる。記録材分担電圧は、画像形成に用いる記録材Pの種類(坪量、材質など)や環境に応じて予め設定されている。ただし、簡単のため、ここでは記録材分担電圧に関する詳しい説明は省略する。
【0042】
以上、一般的な2次転写部N2におけるATVC制御の一例について説明した。しかし、前述のように、2次転写部N2に印加する電圧の定電流制御と定電圧制御とが可能な構成において、定電流制御で画像形成中の目標電流値の電流を流すように2次転写部N2に電圧を印加する場合、想定よりも絶対値が大きい電圧が出力される場合がある。
【0043】
5.本実施例のATVC制御
次に、本実施例における2次転写部N2のATVC制御について説明する。
図5は、本実施例におけるATVC制御の手順の概略を示すフローチャート図である。また、
図6は、本実施例におけるATVC制御を説明するための電圧電流特性を模式的に示すグラフ図である。
【0044】
本実施例では、ジョブを実行するごとに、前回転工程において、2次転写部N2のATVC制御(設定モード)が実行される。また、本実施例では、2次転写ローラ64は、弾性材料を用いて構成されており、電気抵抗のムラが存在する場合がある。そのため、本実施例では、2次転写電圧の目標電圧値を精度よく求めるために、ATVC制御において、所定の電流値での定電流制御で2次転写ローラ64の少なくとも1周分(本実施例では1周分)の時間にわたり2次転写ローラ64に電圧を印加する。そして、その際に検知された電圧値の平均値に基づいて、以下に説明する2次転写電圧の目標電圧値を決定するための処理を行う。なお、ATVC制御は、毎回のジョブごとに実行することに限定されるものではなく、所定の画像形成枚数(プリント枚数)ごと、環境の変化が所定の範囲を超えた場合などの、予め設定された所定のタイミングごとに非画像形成時に実行することができる。また、ATVC制御は、前回転動作時に実行することに限定されるものではなく、紙間や後回転工程において実行してもよい。
【0045】
また、本実施例では、
図4を参照して説明した2次転写効率がピークを示す2次転写電流値に相当する目標電流値It(ここでは「テーブル値」ともいう。)が、記録材Pの種類(坪量、材質など)ごとに、環境(絶対水分量)に応じて求められて、表1に示すようなテーブルとして設定されている。この目標電流値Itのテーブルは、予めメモリ112に記憶されている。表1は、一例としての所定の種類の記録材P(例えば普通紙)に対する目標電流値Itの設定を示している。また、表1に示すように、本実施例では、目標電流値Itのテーブル値は、フルカラーモードとブラック単色モードとにそれぞれ対応して設定されている。また、表1に示すように、本実施例では、目標電流値Itのテーブル値は、フルカラーモード及びブラック単色モードのそれぞれにおいて、片面プリント(及び両面プリントの1面目)と両面プリントの2面目とのそれぞれに対応して設定されている。なお、画像形成装置100が複数の異なるプロセススピードで動作可能な場合、プロセススピードごとに、例えば表1に示すようなテーブルとして目標電流値Itが設定されていてもよい。なお、テーブルにない絶対水分量に対応する目標電流値Itは、例えば線形補間によって求められる。
【0046】
【0047】
コントローラ110は、ジョブが開始されると、前回転工程においてATVC制御を開始する(S101)。コントローラ110は、ATVC制御を開始すると、環境センサ130によって検知された機内の温度及び湿度を取得して絶対水分量を求める(S102)。次に、コントローラ110は、ジョブの情報において選択されている記録材Pの種類(紙種設定)、及び上記絶対水分量に応じて、表1に示すようなテーブルから目標電流値Itのテーブル値を決定する(S103)。次に、コントローラ110は、電流検知部121で検知される電流が予め設定された所定の1段目ターゲット電流値(第1の電流値)I1となるように定電流制御された電圧を、2次転写電源E2から出力させる(S104)。この1段目ターゲット電流値I1は、上記目標電流Itのテーブル値よりも絶対値が小さい。また、この1段目ターゲット電流値I1は、2次転写電源E2の出力が最大出力値以下となり、かつ、2次転写ローラ64(2次転写部N2)に放電開始電圧以上の電圧が印加されるように、予め設定されている。特に、本実施例では、この1段目ターゲット電流値I1は、5μAとした。定電流制御でATVC制御を行うことにより、確実に放電開始電圧以上の電圧を2次転写部N2に印加できる。そして、コントローラ110は、2次転写電源E2から1段目ターゲット電流値I1で定電流制御された電圧を出力している際に電圧制御部120で検知された電圧値を平均化処理し、平均化された1段目検知電圧値V1を求める(S105)。
【0048】
次に、コントローラ110は、2次転写電源E2から出力させる電圧の2段目ターゲット電流値(第2の電流値)I2を決定する。まず、コントローラ110は、1段目検知電圧値V1が200V(第1閾値)未満の場合は、2段目ターゲット電流値I2を、上述の目標電流値Itのテーブル値である第1の2段目ターゲット電流値I2-1に決定する(S106)。この場合は、2次転写部N2(本実施例では主に2次転写ローラ64)のインピーダンスは十分に低いと判断できるためである。そして、コントローラ110は、電流検知部121で検知される電流がこの第1の2段目ターゲット電流値I2-1となるように定電流制御された電圧を、2次転写電源E2から出力させる(S107)。
【0049】
一方、コントローラ110は、1段目検知電圧値V1が200V(第1閾値)以上、400V(第2閾値)未満の場合は、次のようにする。つまり、2段目ターゲット電流値I2を、上述の目標電流値Itのテーブル値よりも絶対値が小さい第2の2段目ターゲット電流値I2-2に決定する(S108)。この場合は、2次転写部N2(本実施例では主に2次転写ローラ64)のインピーダンスが高い可能性があると判断できるためである。この第2の2段目ターゲット電流値I2-2は、1段目ターゲット電流値I1よりも絶対値が大きい。また、この第2の2段目ターゲット電流値I2-2は、2次転写電源E2の出力が最大出力値以下となり、かつ、2次転写ローラ64(2次転写部N2)に放電開始電圧以上の電圧が印加されるように設定される。例えば、第2の2段目ターゲット電流値I2-2は、第1の2段目ターゲット電流値I2-1(本実施例では目標電流値Itのテーブル値)の0.7倍に設定される。そして、コントローラ110は、電流検知部121で検知される電流が第2の2段目ターゲット電流値I2-2となるように定電流制御された電圧を、2次転写電源E2から出力させる(S109)。
【0050】
また、コントローラ110は、1段目検知電圧値V1が400V(第2閾値)以上の場合は、2段目ターゲット電流値I2を、第2の2段目ターゲット電流値I2-2よりもさらに絶対値が小さい第3の2段目ターゲット電流値I2-3に決定する(S108)。この場合は、2次転写部N2(本実施例では主に2次転写ローラ64)のインピーダンスが高い可能性がより高いと判断できるためである。この第3の2段目ターゲット電流値I2-3は、1段目ターゲット電流値I1よりも絶対値が大きい。また、この第3の2段目ターゲット電流値I2-3は、2次転写電源E2の出力が最大出力値以下となり、かつ、2次転写ローラ64(2次転写部N2)に放電開始電圧以上の電圧が印加されるように設定される。例えば、第3の2段目ターゲット電流値I2-3は、第1の2段目ターゲット電流値I2-1(本実施例では目標電流値Itのテーブル値)の0.5倍に設定される。そして、コントローラ110は、電流検知部121で検知される電流が第3の2段目ターゲット電流値I2-3となるように定電流制御された電圧を、2次転写電源E2から出力させる(S110)。
【0051】
そして、コントローラ110は、2次転写電源E2から2段目ターゲット電流値I2(I2-1、I2-2、又はI2-3)で定電流制御された電圧を出力している際に電圧制御部120で検知された電圧値を平均化処理し、平均化された2段目検知電圧値V2を求める(S111)。
【0052】
次に、コントローラ110は、1段目ターゲット電流値I1、2段目ターゲット電流値I2(I2-1、I2-2、又はI2-3)、1段目検知電圧値V1、2段目検知電圧値V2に基づいて、電圧電流特性として本実施例では1次関数(1次曲線)を算出する(S112)。そして、コントローラ110は、算出した1次関数に基づいて、画像形成時(2次転写時)に2次転写ローラ64(2次転写部N2)に印加する2次転写電圧の目標電圧値(目標電流値Itに対応する電圧値)を決定する(S113)。その後、コントローラ110は、ATVC制御を終了する(S114)。
【0053】
前述のように、定電流制御でATVC制御を行うことにより、確実に放電開始電圧以上の電圧を2次転写部N2に印加できる。しかし、前述のように、ATVC制御におけるターゲット電流値を大きくしてしまうと、環境、耐久条件によっては、定電圧高圧基盤の最大出力値を超えてしまい、高圧基盤の基準電位の振れ、高圧基盤の故障、高圧基盤における沿面放電などのリスクがある。
【0054】
そのため、本実施例では、ATVC制御において最大出力値を確実に下回る電圧値になるようなターゲット電流値で2次転写電源E2から電圧を出力するために、1段目ターゲット電流値の絶対値を十分に小さくする。これに限定されるものではないが、1段目ターゲット電流値の絶対値は5μA以下とすることが好ましい。ただし、1段目ターゲット電流値の絶対値は、2次転写部N2に放電開始電圧以上の電圧が印加される値以上とする。なお、本実施例では、1段目ターゲット電流値を5μAとしたが、これに限定されるものではなく、定電流制御で2次転写電源E2の出力が最大出力値以下になるような電圧を出力するようにすればよい。
【0055】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、トナー像を担持する像担持体56と、電圧が印加されて転写部N2で像担持体56から被転写体Pにトナー像を転写させる転写部材64と、転写部材64に電圧を印加する電源E2と、電源E2により転写部材64に電圧を印加した際に転写部材64に流れる電流を検知する電流検知部121と、転写部N2にトナー像が無い時に、転写部材64に試験電圧を印加することで転写部N2にトナー像がある時に転写部材64に印加する転写電圧を設定する設定モードを実行可能な制御部110と、を有する。そして、制御部110は、設定モードにおいて、電流検知部121により検知される電流値が第1の電流値I1となるように電源E2を制御して転写部材64に試験電圧を印加して該試験電圧の第1の電圧値V1を取得し、第1の電圧値V1に基づいて第2の電流値I2を決定し、電流検知部121により検知される電流値が第2の電流値I2となるように電源E2を制御して転写部材64に試験電圧を印加して該試験電圧の第2の電圧値V2を取得し、第1、第2の電流値I1、I2及び第1、第2の電圧値V1、V2に基づいて転写電圧を設定する。このとき、第1の電流値I1は、第1の電圧値V1の絶対値が所定の電圧値の絶対値以下となるように設定されており、第2の電流値I2の絶対値は第1の電流値I1の絶対値よりも大きい。本実施例では、制御部110は、第1の電圧値V1が第1の値の場合は第2の電流値I2を第2の値I2-1とし、第1の電圧値V1が上記第1の値よりも絶対値が大きい第3の値の場合は第2の電流値I2を絶対値が上記第2の値よりも小さい第4の値I2-2(又はI2-3)とする。また、本実施例では、第1の電流値I1の絶対値は、5.0μA以下である。また、本実施例では、第1の電流値I1は、転写部N2に絶対値が放電開始電圧以上の電圧が印加されるように設定されている。また、本実施例では、上記所定の電圧値は、予め設定された電源E2の最大出力値である。また、本実施例では、制御部110は、設定モードにおいて、第1、第2の電流値I1、I2及び第1、第2の電圧値V1、V2に基づいて電圧電流特性を求め、該電圧電流特性に基づいて転写電圧を設定する。本実施例では、制御部110は、上記電圧電流特性として1次関数を求める。また、本実施例では、像担持体56は、別の像担持体50から転写されたトナー像を担持して、被転写体としての記録材Pに転写するために搬送する中間転写体である。
【0056】
6.効果
従来の2次転写部N2のATVC制御では、環境、耐久条件、紙粉などの影響によって、2次転写ローラ64が想定以上のインピーダンスとなり、ATVC制御の実行時に2次転写電源E2の出力が最大出力値よりも絶対値が大きくなる場合がある。その場合、ATVC制御における検知結果は実際と異なる結果となるため、電圧電流特性(IV曲線)を把握するためには再度ATVC制御を実行する必要がある。また、ATVC制御の実行時に2次転写電源E2の出力が最大出力値よりも絶対値が大きくなった場合、高圧基盤の基準電位の振れ、高圧基盤の故障、高圧基盤における沿面放電などのリスクがある。
【0057】
これに対し、本実施例によれば、ATVC制御の実行時に2次転写電源E2が最大出力値(想定した電圧値)よりも絶対値が大きい電圧を出力しないようにできる。そのため、ATVC制御のやり直しが必要となることを抑制することができる。また、上記高圧基盤の基準電位の振れ、高圧基盤の故障、高圧基盤における沿面放電などのリスクを低減することができる。また、本実施例によれば、ATVC制御において検知点を複数にすることで、コスト、スペースの増大につながる部品などの追加の必要なく、幅広い電圧電流特性を把握することができる。
【0058】
また、本実施例では、プロセス速度が320mm/s(中間転写ベルト56の周速度に対応)の画像形成装置100において、ある電流値を出力するための電圧値の算出のために、例えば2次転写ローラ64の1周分以下の時間とすることも可能となる。つまり、本実施例によれば、FCOT(画像形成開始指示の入力から画像が形成された1枚目の記録材が出力されるまでの時間)に影響しない範囲で検知回数を増やすことが可能となる。FCOTに影響しない範囲でATVC制御の検知点を増やすことができれば、高精度の2次転写電圧の設定が可能となる。そのため、高圧出力上限値(高圧トランス上限値)などで決まる出力可能電圧値の予想の精度向上や、2次転写電圧の上下限リミッター制御のリミッター電圧値の算出の精度向上などを図る上でも有利である。なお、上下限リミッター制御は、例えば想定外の電気抵抗の記録材Pが用いられた場合などに、2次転写電流が多すぎたり少なすぎたりすることを抑制するために、2次転写時の2次転写電源の出力に上限値、下限値を設ける制御である。
【0059】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。本実施例は、2次転写部N2のATVC制御が実施例1とは異なる。
【0060】
1.本実施例のATVC制御
本実施例では、2次転写部N2のATVC制御において、3段以上のターゲット電流値で電圧値の検知を行い、電圧電流特性を2次関数で把握する。
【0061】
現在、市場では、(1)プリント速度の高速化、(2)コストダウン、(3)装置本体の小型化などが進んでいる。つまり、高速化における転写性の確保に必要な転写電圧の上昇と、コストダウンによるトランス容量の削減によるトランス容量のマージン不足、小型化による高圧基盤の配線の縮小化が進んでいることを意味する。近年では、ATVC制御の結果を2次転写電圧の決定をするため以外の用途(高圧出力上限値(トランス容量上限)などで決まる出力可能電圧値把握、寿命判断など)でも使用することがある。そのため、幅広い電圧電流特性(IV曲線)を把握できることにより得られる利点は多い。
【0062】
図7は、本実施例におけるATVC制御の手順の概略を示すフローチャート図である。また、
図8は、本実施例におけるATVC制御を説明するための電圧電流特性を模式的に示すグラフ図である。
【0063】
本実施例では、実施例1と同様に、ジョブを実行するごとに、前回転工程において、2次転写部N2のATVC制御が実行される。また、本実施例では、実施例1と同様に、ATVC制御において、所定の電流値での定電流制御で2次転写ローラ64の少なくとも1周分(本実施例では1周分)の時間にわたり2次転写ローラ64(2次転写部N2)に電圧を印加する。そして、その際に検知された電圧値の平均値に基づいて、以下に説明する2次転写電圧の目標電圧値を決定するための処理を行う。また、本実施例では、2次転写電圧制御において、実施例1で説明したのと同様の、表1に示すような目標電流値Itのテーブルが用いられる。
【0064】
コントローラ110は、ジョブが開始されると、前回転工程においてATVC制御を開始する(S201)。コントローラ110は、ATVC制御を開始すると、環境センサ130によって検知された機内の温度及び湿度を取得して絶対水分量を求める(S202)。次に、コントローラ110は、ジョブの情報において選択されている記録材Pの種類(紙種設定)、及び上記絶対水分量に応じて、表1に示すようなテーブルから目標電流値Itのテーブル値を決定する(S203)。次に、コントローラ110は、電流検知部121で検知される電流が予め設定された所定の1段目ターゲット電流値I1となるように定電流制御された電圧を、2次転写電源E2から出力させる(S204)。この1段目ターゲット電流値I1は、実施例1で説明したものと同様である。そして、コントローラ110は、2次転写電源E2から1段目ターゲット電流値I1で定電流制御された電圧を出力している際に電圧制御部120で検知された電圧値を平均化処理し、平均化された1段目検知電圧値V1を求める(S205)。
【0065】
次に、コントローラ110は、実施例1で説明したのと同様にして、2次転写電源E2から出力させる電圧の2段目ターゲット電流値I2を決定する(
図5のS106~S110参照)。そして、コントローラ110は、電流検知部121で検知される電流が2段目ターゲット電流値I2(I2-1、I2-2、又はI2-3)となるように定電流制御された電圧を、2次転写電源E2から出力させる(S206)。そして、コントローラ110は、2次転写電源E2から2段目ターゲット電流値I2(I2-1、I2-2、又はI2-3)で定電流制御された電圧を出力している際に電圧制御部120で検知された電圧値を平均化処理し、平均化された2段目検知電圧値V2を求める(S207)。
【0066】
次に、コントローラ110は、1段目ターゲット電流値I1、2段目ターゲット電流値I2(I2-1、I2-2、又はI2-3)、1段目検知電圧値V1、2段目検知電圧値V2に基づいて、1次関数(1次曲線)を算出する(S208)。そして、コントローラ110は、算出した1次関数に基づいて、3段目ターゲット電流値(第3の電流値)I3を決定する(S209)。この3段目ターゲット電流値I2-3は、2段目ターゲット電流値I2よりも絶対値が大きい。また、この3段目ターゲット電流値I3は、2次転写電源E2の出力が最大出力値以下となり、かつ、2次転写ローラ64(2次転写部N2)に放電開始電圧以上の電圧が印加されるように設定される。本実施例では、
図8に示すように、上述のようにして求めた1次関数(傾き)と2次転写電源E2の最大出力値Vmaxとの交点から、3段目ターゲット電流値I3を決定する。つまり、本実施例では、2次転写部N2(本実施例では主に2次転写ローラ64)の電圧電流特性は、2次以上の関数(本実施例では2次関数)に従う。そして、上述のようにして3段目ターゲット電流値I3を決定することで、3段目ターゲット電流値I3を得るために使用な電圧値が最大出力値を超えることを防止することができる。
【0067】
次に、コントローラ110は、電流検知部121で検知される電流が上記3段目ターゲット電流値I3となるように定電流制御された電圧を、2次転写電源E2から出力させる(S210)。そして、コントローラ110は、2次転写電源E2から3段目ターゲット電流値I3で定電流制御された電圧を出力している際に電圧制御部120で検知された電圧値を平均化処理し、平均化された3段目検知電圧値V3を求める(S211)。
【0068】
次に、コントローラ110は、1段目、2段目、3段目のターゲット電流値I1、I2(I2-1、I2-2、又はI2-3)、I3と、検知電圧値V1、V2、V3と、に基づいて、電圧電流特性として本実施例では2次関数(2次曲線)を算出する(S212)。そして、コントローラ110は、算出した2次関数に基づいて、画像形成時(2次転写時)に2次転写ローラ64(2次転写部N2)に印加する2次転写電圧の目標電圧値(目標電流値Itに対応する電圧値)を決定する(S213)。その後、コントローラ110は、ATVC制御を終了する(S214)。
【0069】
なお、本実施例では、ATVC制御における検知点は3点としたが、4点以上としてもよい。この場合も、4点目以降の検知点のターゲット電流値は、それ以前の検知点の検知結果から求めた電圧電流特性(例えば1次関数)に基づいて決定すればよい。ただし、検知点が多すぎると制御にかかる時間が長くなる場合がある。検知点は10点以下で十分なことが多く、典型的には5点以下である。
【0070】
このように、本実施例では、制御部110は、設定モードにおいて、第1、第2の電流値I1、I2及び第1、第2の電圧値V1、V2に基づいて電圧電流特性を求め、該電圧電流特性に基づいて第3の電流値I3を決定し、電流検知部121により検知される電流値が第3の電流値I3となるように電源E2を制御して転写部材64に試験電圧を印加して該試験電圧の第3の電圧値V3を取得し、第1、第2、第3の電流値I1、I2、I3及び第1、第2、第3の電圧値V1、V2、V3に基づいて転写電圧を設定する。このとき、第3の電流値I3の絶対値は第2の電流値I2の絶対値よりも大きい。また、本実施例では、制御部110は、上記電圧電流特性として1次関数を求める。また、本実施例では、制御部110は、設定モードにおいて、第1、第2、第3の電流値I1、I2、I3及び第1、第2、第3の電圧値V1、V2、V3に基づいて別の電圧電流特性を求め、該別の電圧電流特性に基づいて転写電圧を設定する。本実施例では、制御部110は、上記別の電圧電流特性として2次関数を求める。
【0071】
2.効果
本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られる。また、本実施例によれば、ATVC制御において電圧電流特性を2次関数で把握することができ、より高精度の2次転写電圧の設定が可能となる。また、本実施例によれば、実施例1よりも更に幅広い電圧電流特性を把握することができる。
【0072】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0073】
上述の実施例では、環境情報として、温度及び湿度の検知結果に基づいて求められる絶対水分量を用いたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、2次転写ローラの電気抵抗が温度又は湿度の少なくとも一方と十分の相関を有する場合、環境情報として温度又は湿度の少なくとも一方を用いた制御としてもよい。
【0074】
また、本発明は、タンデム型の画像形成装置に限らず、他の方式の画像形成装置にも適用することができる。例えば、本発明は、フルカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置にも適用することができる。この場合、典型的には、像担持体としての感光体から記録材にトナー像を転写させる転写部材としての転写ローラに関して、本発明を適用することになる。また、画像形成装置は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で用いられるものであってよい。
【0075】
また、上述の実施例では、転写部材は、導電性の弾性層を備えたローラ状の部材であったが、転写部材はローラ状の部材に限定されるものではない。転写部材は、導電性の樹脂などで形成されたシート状の部材、導電性のブラシ繊維を有するブラシ状の部材などであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
50 感光ドラム
54 1次転写ローラ
56 中間転写ベルト
62 2次転写対向ローラ
64 2次転写ローラ
110 コントローラ
120 電圧制御部
121 電流検知部
E2 2次転写電源
P 記録材