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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】リサイクル方法及びリサイクル装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20240910BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240910BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240910BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20240910BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20240910BHJP
   C22B 11/00 20060101ALI20240910BHJP
   C22B 19/20 20060101ALI20240910BHJP
   C22B 34/34 20060101ALI20240910BHJP
   C22B 58/00 20060101ALI20240910BHJP
   C22B 61/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B09B3/30
B09B3/70 ZAB
C22B1/00 101
C22B3/06
C22B7/00 G
C22B11/00 101
C22B19/20 101
C22B34/34
C22B58/00
C22B61/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020166267
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057821
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-02-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の長期安定電源化技術開発」共同研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187218
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 宏光
(72)【発明者】
【氏名】原田 秀樹
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-059539(JP,A)
【文献】特開2005-334838(JP,A)
【文献】国際公開第2009/087908(WO,A1)
【文献】特開2004-253397(JP,A)
【文献】特開2009-197321(JP,A)
【文献】特開2004-186547(JP,A)
【文献】特開2017-222913(JP,A)
【文献】特開2000-077381(JP,A)
【文献】特開平05-009607(JP,A)
【文献】特開平11-036020(JP,A)
【文献】特開昭64-085121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/70
B09B 3/30
C22B 1/00
C22B 3/06
C22B 7/00
C22B 11/00
C22B 19/20
C22B 34/34
C22B 58/00
C22B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属が付着した基材に溶解液を接触させることによって前記金属を溶解させるエッチングステップを有し、
前記エッチングステップは、前記基材を、濾布により構成された収容体に収容した状態で行われ、
前記金属が付着した前記基材の平均粒子径は、10.0mm以下であり、
前記濾布の通気度が100cm /cm ・sec以下である、リサイクル方法。
【請求項2】
金属が付着した基材に溶解液を接触させることによって前記金属を溶解させるエッチングステップを有し、
前記エッチングステップは、前記基材を、濾布により構成された収容体に収容した状態で行われ、
前記収容体は、実質的に円柱形状の側面を有し、
前記収容体の側面における前記濾布の厚みは、0.5~3.0mmである、リサイクル方法。
【請求項3】
金属が付着した基材に溶解液を接触させることによって前記金属を溶解させるエッチングステップを有し、
前記エッチングステップは、前記基材を、濾布により構成された収容体に収容した状態で行われ、
前記溶解液は、酸性の溶液であり、
前記濾布を構成する材料は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、フッ化樹脂、ポリエステル、又はポリアミドである、リサイクル方法。
【請求項4】
金属が付着した基材に溶解液を接触させることによって前記金属を溶解させるエッチングステップと、
前記金属を溶解した溶解液と前記基材とを分離する分離ステップと、を有し、
前記エッチングステップは、前記基材を、濾布により構成された収容体に収容した状態で行われ、
前記分離ステップは、前記基材を収容した前記収容体を回転させつつ行われる、リサイクル方法。
【請求項5】
前記基材はガラス、樹脂又はシリコンを含み、
前記金属は、銅、インジウム、ガリウム、セレン、亜鉛、モリブデン及び銀の群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項6】
前記金属が付着した前記基材は、破砕された太陽電池パネルの少なくとも一部によって構成される、請求項1から5のいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項7】
前記金属が分離した前記基材を洗浄する洗浄ステップを有し、
前記洗浄ステップは、前記基材を前記収容体に収容した状態で行われる、請求項1からのいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【請求項8】
金属が付着した基材における金属を溶解させる溶解液を貯留可能なエッチング槽と、
前記基材を収容可能な濾布により構成された収容体と、を有し、
前記エッチング槽は、前記基材を収容した前記収容体を収容可能に構成されており
前記濾布の通気度が100cm /cm ・sec以下である、リサイクル装置。
【請求項9】
金属が付着した基材における金属を溶解させる溶解液を貯留可能なエッチング槽と、
前記基材を収容可能な濾布により構成された収容体と、を有し、
前記エッチング槽は、前記基材を収容した前記収容体を収容可能に構成されており、
前記収容体は、実質的に円柱形状の側面を有し、
前記収容体の側面における前記濾布の厚みは、0.5~3.0mmである、リサイクル装置。
【請求項10】
金属が付着した基材における金属を溶解させる溶解液を貯留可能なエッチング槽と、
前記基材を収容可能な濾布により構成された収容体と、を有し、
前記エッチング槽は、前記基材を収容した前記収容体を収容可能に構成されており、
前記溶解液は、酸性の溶液であり、
前記濾布を構成する材料は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、フッ化樹脂、ポリエステル、又はポリアミドである、リサイクル装置。
【請求項11】
金属が付着した基材における金属を溶解させる溶解液を貯留可能なエッチング槽と、
前記基材を収容可能な濾布により構成された収容体と、を有し、
前記エッチング槽は、前記基材を収容した前記収容体を収容可能に構成されており、
前記収容体は、前記濾布が張り付けられた補強材を有する、リサイクル装置。
【請求項12】
リサイクル装置であって、
金属が付着した基材における金属を溶解させる溶解液を貯留可能なエッチング槽と、
前記基材を収容可能な濾布により構成された収容体と、を有し、
前記エッチング槽は、前記基材を収容した前記収容体を収容可能に構成されており、
前記リサイクル装置は、
前記基材から液体成分を分離するための分離槽と、
前記基材を洗浄する洗浄槽と、
前記基材を収容した前記収容体を、前記エッチング槽と、前記分離槽と、前記洗浄槽との間を移送させる搬送機構と、
を有する、リサイクル装置。
【請求項13】
洗浄液が付着した前記基材から液体成分を分離する洗浄液分離槽を有し、
前記搬送機構は、前記基材を収容した前記収容体を、前記洗浄液分離槽に搬送可能に構成されている、請求項1に記載のリサイクル装置。
【請求項14】
前記リサイクル装置は、破砕された太陽電池パネル用のリサイクル装置である、請求項から13のいずれか1項に記載のリサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属が付着した基材のリサイクル方法及びリサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源活用や環境保護の観点から、使用済みの物を資源としてリサイクルする技術が知られている。例えば、住宅などの建造物の屋根に設置される太陽電池モジュールは、近年、急速に普及しつつあり、太陽電池モジュールのリサイクル技術の進展が得に望まれる。
【0003】
以下の特許文献1は、太陽電池から有価物を回収する方法を開示する。特許文献1では、太陽電池を構成する積層体を細片化処理し、積層体からCIS系光吸収層を分離した後に、残渣ガラスを酸性水溶液に接触させることによって、電極層を溶解させることを開示する。電極層が溶出除去されたガラス単体は、水洗・乾燥した後、回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-79667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、例えばガラスのような基材から金属を除去する場合、基材を酸性水溶液に接触させることにより金属を溶解させることがある。しかしながら、基材を平均粒子径の小さい粉体又は粒体状に細片化した場合には、細片化された基材が設備中に分散する。そのため、リサイクル収率の低下を招く一因となったり、設備に対してダメージを与えたりする可能性がある。
【0006】
したがって、リサイクル収率の低下の抑制と設備に対するダメージの少なくとも一方を改善可能なリサイクル方法及びリサイクル装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係るリサイクル方法は、金属が付着した基材に溶解液を接触させることによって前記金属を溶解させるエッチングステップを有し、前記エッチングステップは、前記基材を、濾布により構成された収容体に収容した状態で行われる。
【0008】
一態様に係るリサイクル方法は、金属が付着した基材における金属を溶解させる溶解液を貯留可能なエッチング槽と、前記基材を収容可能な濾布により構成された収容体と、を有し、前記エッチング槽は、前記基材を収容した前記収容体を収容可能に構成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、リサイクル収率の低下の抑制と設備に対するダメージの少なくとも一方を改善可能なリサイクル方法及びリサイクル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る太陽電池モジュールの模式的断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係るリサイクル装置の模式的断面図である。
図3図3は、第2実施形態に係るリサイクル装置の模式的断面図である。
図4図4は、濾布により構成された収容体の模式図である。
図5図5は、一実施形態に係るリサイクル方法のフローチャートである。
図6図6は、第3実施形態に係るリサイクル装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。
【0012】
以下の実施形態では、太陽電池モジュールを例に挙げて、基板のリサイクル方法を説明する。ただし、本発明は、太陽電池モジュールに限らず、金属が付着した様々な基材に適用可能であることに留意されたい。
【0013】
[太陽電池モジュールの構成]
まず、リサイクルの対象となり得る太陽電池モジュールの構成の一例について説明する。図1は、一実施形態に係る太陽電池モジュールの模式的断面図である。
【0014】
図1に示す例では、太陽電池モジュール10は、太陽電池パネル20と、太陽電池パネル20の外縁を取り囲むフレーム30と、を有する。太陽電池モジュール10の背面には、電力の取り出し口となる端子箱や出力ケーブル(不図示)が取り付けられていてよい。
【0015】
また、封止材40が、太陽電池パネル20とフレーム30の間に設けられていても良い。封止材40を構成する材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン樹脂、ブチルゴムなどが挙げられる。
【0016】
太陽電池パネル20は、光電変換素子21と、裏側保護層22と、カバーガラス23と、第1封止層24と、第2封止層25と、を有していてよい。カバーガラス23は、例えば、透明又は半透明のガラス基板であってよい。
【0017】
第1封止層24は、光電変換素子21とカバーガラス23との間に配置されている。第1封止層24を構成する材料としては、例えば、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン樹脂、ブチルゴムなどが挙げられる。
【0018】
第2封止層25は、光電変換素子21と裏側保護層22との間に設けられる。第2封止層25を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン樹脂、ブチルゴムなどが挙げられる。
【0019】
裏側保護層22は、太陽電池パネル20の裏面側を覆う保護層である。裏側保護層22は、第2封止層25の裏側に設けられる。裏側保護層22を構成する材料は、例えば、例えばPET樹脂、PVF(ポリフッ化ビニル)樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂、ナイロン樹脂もしくはポリアミド樹脂、又はこれらの組み合わせによって構成されていてよい。この代わりに、裏側保護層22は、金属製のシートによって構成されていてもよい。
【0020】
光電変換素子21は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子である。光電変換素子21は、例えば、基板、第1電極層、光電変換層、第2電極層をこの順に含んでいてよい。基板は、光電変換素子21を構成する積層体の基体になる部材であってよい。基板は、例えばガラスによって構成されていてよい。
【0021】
第1電極層は、例えば、モリブデン、チタン、クロム又は銀のような金属によって形成されていてよい。第2電極層は、例えば、III族元素を添加した酸化亜鉛(ZnO)や、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)によって構成されていてよい。薄膜系のCIS型太陽電池モジュールでは、光電変換層は、例えば、I族元素(Cu、Ag、Au等)、III族元素(Al、Ga、In等)及びVI族元素(O、S、Se、Te等)を含む化合物半導体で形成されていてよい。光電変換層は、複数のセルに区分されており、導電性の配線層によって隣接するセルは電気的に接続されていてよい。配線層は、例えば銅や銀のような金属によって構成されていてよい。
【0022】
上記例では、薄膜系のCIS型太陽電池モジュールの構造を例に挙げて説明した。CIS型太陽電池モジュールの多くは、前述したように、ガラス基板上に少なくとも1種の金属材料が付着した構造を有する。
【0023】
本発明は、薄膜系のCIS型太陽電池モジュールの代わりに、結晶型の太陽電池モジュールにも適用できる。結晶型の太陽電池モジュールの多くは、半導体シリコンを基板とした構造を有する。具体的には、シリコン基板上に例えば配線層のような金属材料が付着した構造を有する。より具体的には、結晶型シリコン系の太陽電池モジュールは、バックシートと、シリコン基板からなる複数の電池セル部と、封止材層と、カバーガラスと、をこの順に備える。特に限定するものではないが、シリコン基板の厚さは約100μm~約500μmであってよい。複数の電池セル部は、バックシートとカバーガラスとの間に配置され、封止材層で覆われて封止されている。封止材層は、電池セル部をバックシート又はカバーガラスと密着させる機能を担っている。
【0024】
[リサイクル装置]
次に、リサイクル装置について説明する。リサイクル装置は、例えば上記の太陽電池パネル用のリサイクル装置として特に好適に利用できる。ただし、本実施形態のリサイクル装置は、太陽電池パネルに限らず、金属が付着した基材のリサイクルの用途にも利用できることに留意されたい。
【0025】
図2は、第1実施形態に係るリサイクル装置の模式的断面図である。リサイクル装置100は、リサイクル対象である金属が付着した基材を収容可能な槽110と、エッチング機構と、分離機構と、洗浄機構と、乾燥機構と、を有していてよい。ここで、金属が付着した基材は、以下で詳細に説明するように、太陽電池パネルの粉砕物の少なくとも一部であってよい。ただし、金属が付着した基材は、これに限定されないことに留意されたい。
【0026】
本実施形態において、槽110は、後述する溶解液や洗浄液を貯留可能に構成されていてよい。また、槽110は、例えば図4に示すような収容体200、具体的には金属が付着した基材を収容した収容体200を収容可能に構成されていてよい。この場合、槽110は、収容体200とともに基材を収容可能に構成される。収容体200は、後述するように濾布によって構成された側部を有していてよい。槽110の上方には、開閉可能な蓋112が設けられていてもよい。リサイクル装置100は、蓋112が開かれることによって、槽110の内部にアクセス可能に構成されている。
【0027】
前述のエッチング機構は、少なくとも、槽110内に収容した基材に溶解液を接触させる機能を有する。エッチング機構は、槽110内に溶解液を導入する導入管122と、槽110内から溶解液を排出する排出管124と、を含んでいてよい。溶解液は、不図示の貯留部に貯留されており、導入管122は溶解液の貯留部と槽110を流体的に連通している。溶解液は、基材に付着した金属を溶解させる溶液であればよい。溶解液の種類については後述する。溶解液を貯留する貯留部は、複数のリサイクル装置に対して共通して設けられていてもよい。この場合、共通の貯留部から複数のリサイクル装置の槽110内に溶解液を導入することができる。これにより、リサイクル装置全体の小型化が可能になる。
【0028】
導入管122は、開閉弁123を有していてよい。これにより、リサイクル装置100は、必要なときに導入管122を通して溶解液を槽110内に導入することができる。排出管124は、開閉弁125を有していてよい。これにより、リサイクル装置100は、必要なときに排出管125を通して溶解液を槽110から排出することができる。
【0029】
前述の分離機構は、金属を溶解した溶解液と基材とを分離するための機構である。分離機構は、少なくとも槽110内において溶解液に接触した基材を回転させる回転機構132を有する。回転機構132は、槽110内において、基材の回転に伴う遠心力を利用することによって、固体成分と液体成分を分離する。ここで、固体成分は、溶解液に溶解しない基材であり、液体成分は、金属を溶解した溶解液に相当する。
【0030】
本実施形態では、回転機構132は、モータ132aと、前述の収容体200を取り付ける取り付け部132bと、を有する。図2では、取り付け部132bは、モータ132aの回転軸に連結されており、モータ132aの作用により回転可能に構成されていてよい。取り付け部132bの構造は、収容体200を着脱可能であれば、特に制限されない。モータ132aは、取り付け部132bに取り付けられた収容体200を回転させるよう構成されていてよい。これにより、回転機構132は、収容体200ごと基材を回転させることができる。
【0031】
収容体200の側部が濾布を含む場合、濾布の内部の固体成分は濾布をほとんど通過せず、液体成分が濾布を通過する。したがって、収容体200とともに基材に遠心力を加えたとしても、基材は、収容体200の内部に留まる。一方、収容体200の内部の液体成分、例えば基材に付着した溶解液は、遠心力によって収容体200の外側へ出る。これにより、金属を溶解した液体と基材とを分離することができる。
【0032】
濾布を含む収容体200を使用しない場合、回転機構132は、沈降速度の違いを利用した遠心分離による機構として構成されていてもよい。この場合であっても、金属を溶解した液体と基材とを分離することができる。ただし、基材が、小さい粒子径を有する粉体又は粒体である場合、濾布により構成された収容体200を用いた固液分離を実行する方がより好ましい。
【0033】
第1実施形態では、回転機構132の回転軸Rは、概ね鉛直方向に沿っている。この場合、リサイクル装置100が、回転機構132による回転動作中に安定し易いというメリットが得られる。また、図示した態様の代わりに、モータ132aは、収容体200の上方に設けられていてもよい。この場合、収容体200は、上部から吊るされる形で槽110内に配置されてもよい。これにより、モータ132aの回転軸が、槽110と摺動しないよう槽110と間隔をあけて配置されていたとしても、槽110の側部及び下部に隙間が生じないため、溶解液や後述する洗浄液の漏れを抑制する効果がある。
【0034】
回転機構132は、溶解液による金属のエッチング中に利用されてもよい。すなわち、槽110内に溶解液を導入して金属を溶解させている間に、回転機構132により基材を回転させてもよい。この場合、溶解液の付着にともなう基材の凝集を抑制することができ、エッチングの効率を上げることができる。この場合、回転機構132は、エッチング機構と分離機構の両方を兼ねる。
【0035】
洗浄機構は、槽110内に洗浄液を導入する導入管142と、槽110内から洗浄液を排出する排出管144と、を含んでいてよい。洗浄液は、不図示の貯留部に貯留されていてよい。導入管142は、洗浄液の貯留部と槽110を流体的に連通している。洗浄液は、基材を洗浄する液体であってよい。洗浄液の種類については後述する。洗浄液を貯留する貯留部は、複数のリサイクル装置に対して共通して設けられていてもよい。この場合、共通の貯留部から複数のリサイクル装置の槽110内に洗浄液を導入することができる。これにより、リサイクル装置全体の小型化が可能になる。
【0036】
導入管142は、開閉弁143を有していてよい。これにより、リサイクル装置100は、必要なときに導入管142を通して洗浄液を槽110内に導入することができる。排出管144は、開閉弁145を有していてよい。これにより、リサイクル装置100は、必要なときに排出管145を通して洗浄液を槽110から排出することができる。
【0037】
図2に示す実施形態では、洗浄液用の排出管144は、溶解液用の排出管124とは別に設けられている。この代わりに、洗浄液用の排出管144と溶解液用の排出管124は、共通の管によって構成されていてもよい。
【0038】
図2に示す実施形態の代わりに、導入管122及び/又は導入管142の導出口は、槽110の上方に位置していてもよい。これにより、リサイクル装置は、後述する収容体200の蓋220を開けた状態で収容体200の内部に、直接、溶解液及び/又は洗浄液を導入することができる。溶解液及び/又は洗浄液の導入後は、後述する蓋220によって収容体200を閉じてもよい。この場合、導入管122及び/又は導入管142の位置又は向きは、変更可能に構成されていてよい。例えば、導入管122及び/又は導入管142が蛇腹構造を有していれば、導入管122及び/又は導入管142の導出口の位置を変えることができる。これにより、収容体200を槽110内に収容する際に、導入管122及び/又は導入管142が邪魔にならないよう導入管122及び/又は導入管142を退避させることができる。
【0039】
回転機構132は、基材の洗浄中に利用されてもよい。すなわち、基材は、洗浄液による洗浄中に回転させられてもよい。この場合、基材の洗浄中に基材の凝集を抑制することができ、洗浄の効率を上げることができる。この場合、回転機構132は、分離機構及び/又はエッチング機構の他に、洗浄機構を兼ねる。
【0040】
乾燥機構は、ヒータ152と、ヒータ152により加熱した気体を槽110内に送る送風機154と、を有していてよい。これにより、槽110内に加熱気体を送ることができ、槽110内の基材を乾燥することができる。乾燥機構は、さらに、槽110内の気体を循環させる循環路156と、循環路156に設置された除湿部158と、を有していてよい。この場合、リサイクル装置100内で気体を循環させながら、乾燥した気体を槽110内に送ることができる。したがって、基材の乾燥の効率を高めることができる。
【0041】
回転機構132は、乾燥の効率を上げるため、基材の乾燥中に利用されてもよい。すなわち、基材は、乾燥中に回転させられてもよい。この場合、回転機構132は、分離機構、エッチング機構、及び/又は洗浄機構の他に、乾燥機構を兼ねる。
【0042】
図3は、第2実施形態に係る基材から金属を分離するリサイクル装置の模式的断面図である。以下では、第1実施形態(図2)で説明したものと同様の構成については、その説明を省略する。また、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付していることに留意されたい。
【0043】
図3に示す態様では、リサイクル装置100は、槽110が、鉛直方向から傾斜して設けられている。さらに、回転機構132の回転軸Rが、鉛直方向から傾斜している。この場合、エッチング機構や洗浄機構において、槽110の内部に導入する溶解液や洗浄液が少なくても、回転機構132による回転の作用によって槽110の内部に投入した基材に溶解液や洗浄液を十分に接触させることができる。なお、図2に示す態様と同様に、槽110は、収容体200を収容可能に構成されていてよい。
【0044】
図2及び図3に示す態様では、リサイクル装置100は、エッチング機構、分離機構、洗浄機構及び乾燥機構の全てを備えている。この代わりに、リサイクル装置100は、エッチング機構、分離機構及び洗浄機構のうちの少なくとも2つの機構を有していてよい。また、リサイクル装置100は、エッチング機構、分離機構及び洗浄機構の3つを有していてもよい。特に、リサイクル装置100は、エッチング機構、分離機構及び洗浄機構のうち、以下の方法で説明する連続する2つのステップ、好ましくは連続する3つのステップ、より好ましくはすべてのステップを実行するため機構を備えていることが好ましい。これにより、リサイクル装置100全体の小型化が可能になる。
【0045】
例えば、リサイクル装置100が、エッチング機構と分離機構を備え、洗浄機構及び乾燥機構を備えていない場合、リサイクル装置100は、導入管142、開閉弁143、排出管144、開閉弁145、ヒータ152と、送風機154、循環路156、及び除湿部158を有していなくてよい。
【0046】
また、リサイクル装置100が、エッチング機構と分離機構と洗浄機構を備え、乾燥機構を備えていない場合、リサイクル装置100は、ヒータ152と、送風機154、循環路156、及び除湿部158を有していなくてよい。
【0047】
図4は、濾布を含む収容体200の模式図である。収容体200は、基部210と蓋220を有していてよい。蓋220を開けたときに、基材(粉体又は粒体)を収容体200内に入れたり、基材を収容体200から取り出したりすることができる。
【0048】
収容体200は、略円柱形状であってよい。収容体200が、前述したリサイクル装置100の槽110内に入れられた場合、円柱形状の収容体200の中心軸が回転機構132の回転軸Rに略一致することが好ましい。この場合、収容体200は、回転機構132により中心軸まわりに回転させられる。
【0049】
基部210は、補強材212と、補強材212の内側に設けられた濾布214と、を有していてよい。濾布214は、少なくとも円柱形状の側部に相当する部分に設けられていてよい。補強材212は、濾布よりも強度が高い材料によって構成されていてよく、収容体200としての形状を維持するために設けられていてよい。補強材212は、例えば網状の構造であってよい。この代わりに、補強材212は、多数の穴を有する円筒状の構造や、濾布214よりも十分に透過性の高い多孔質部材を有していてもよい。
【0050】
円柱形状の収容体200の側面における濾布の厚みは、好ましくは0.5~3.0mmであり、より好ましくは0.5~2.0mmである。これにより、濾布の強度を維持するとともに、濾布による濾過の効果を維持することができる。
【0051】
濾布を構成する材料は、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、 ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂、ポリエステル、又はポリアミド等であってよい。酸性の溶解液に対する耐性という観点から、濾布を構成する材料は、好ましくはポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、 ポリテトラフルオロエチレン又はポリエステルであり、より好ましくはポリプロピレンである。
【0052】
後述する分離工程は、収容体200内に基材を収容した状態で、かつ収容体200を回転しつつ行われることが好ましい。この場合、収容体200の側面が、濾過面として機能する。この場合、基材にかかる遠心力と濾過面積を考慮し、収容体200の高さと直径の比は、0.8~1.25の範囲であることが好ましい。
【0053】
さらに、濾布の側面における通気度は、好ましくは5cm/cm・sec以上であり、より好ましくは20cm/cm・sec以上であってよい。これにより、収容体200内部に基材を収容した状態で、基材を十分に乾燥することができる。
【0054】
収容体200の側部を構成する濾布の通気度は、好ましくは100cm/cm・sec以下であり、より好ましくは50cm/cm・sec以下であり、いっそう好ましくは30cm/cm・sec以下であってよい。これにより、後述するようなサイズの粉体又は粒体を効果的にトラップすることができる。具体的には、例えば100μm以上の粒子径を有する基材を効果的にトラップすることができる。
【0055】
後述するように、太陽電池パネルからカバーガラスと裏側保護層が取り除かれた積層構造体を、粉体又は粒体になるまで粉砕した。なお、粉砕された粉体又は粒体は、金属が付着したガラスから構成されている。粉砕されたガラスの粒度の分布は、以下の表1に示すとおりである。
【0056】
[表1]
【0057】
次に、50gの粉体又は粒体(基材)を硝酸によってエッチングして金属を除去した。それから、エッチング後の基材を、約1mmの厚さを有する濾布のサンプルを通して濾過した。準備した濾布のサンプルは、ポリプロピレン製のサンプルである。濾布のサンプルは、初期状態のもの、又は予め168時間だけ硝酸に浸したものを準備し、それぞれの濾布で実験を行った。さらに、通気度の異なる3つの濾布のサンプル(サンプルA、サンプルB、サンプルC)を用いて実験が行われた。
【0058】
濾布のサンプルを濾過した透過液を、さらに1μmの定量濾紙によって濾過し、当該濾紙上に捕獲された物の重量を測定した。通気度の異なる3種類の濾布のサンプルA~Cを、初期状態と予め硝酸に漬けた場合の2通りずつのパターンで実験を行った。その結果が、以下の表2に示されている。
【0059】
[表2]
【0060】
いずれの場合においても、定量濾紙に補足された物の量は、1238ppm以下という非常に少ない値であった。これは、粉砕された粉体又は粒体が、濾布のサンプルをほとんど通過していないということを意味する。したがって、50cm/cm・sec以下の通気度を有する濾布は、粉砕された粉体又は粒体に対する濾過性が高いことがわかった。特に、このような濾布は、例えば100~250μm以上の粒子径を有する基材を効果的にトラップすることができる。したがって、50cm/cm・sec以下の通気度を有する濾布を含む収容体200は、0~250μmの範囲の粒子径を有する粉体の割合が10%以下の基材、特にガラス基材を十分にトラップすることができる。
【0061】
なお、露布は、上記の通気度を有するものに制限されず、100cm/cm・sec以下の通気度を有するものであっても、十分に粉体をトラップする効果を奏し得ることに留意されたい。
【0062】
また、サンプルA~Cを比較すると、通気度が、50cm/cm・secよりも低い範囲、例えば30cm/cm・sec以下の範囲の濾布を使用することで、定量濾紙に補足された物の量が急激に少なくなることがわかる。したがって、30cm/cm・sec以下の通気度を有する濾布が、収容体200に用いられることがより好ましい。
【0063】
また、前述したように表1に示すよう粉砕した基材を硝酸によってエッチングして金属を除去した後、エッチング後の基材を約1mmの厚さを有する別の濾布のサンプルを通す実験も行った。本実験で使用した濾布のサンプルは、フッ素樹脂のうちの1つであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる。この濾布のサンプルは、初期状態のもの、又は予め168時間だけ硝酸に浸したものを準備し、それぞれの濾布で前述したとおりに実験を行った。初期状態のPTFE製の濾布を通過させた後に定量濾紙に補足された物の量は、182ppmであった。また、168時間だけ硝酸に浸したPTFE製の濾布を通過させた後に定量濾紙に補足された物の量は、概ね0ppmに近い値であった。このように、濾布の材料として、フッ素樹脂、特にPTFEも好適に使用できることがわかった。
【0064】
[リサイクル方法]
次に、図5を参照しつつ、太陽電池モジュールのリサイクル方法について説明する。図5は、太陽電池モジュールのリサイクル方法の一例を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、太陽電池モジュールのリサイクル方法を例に挙げて説明しているが、後述するステップS3~S8は、太陽電池モジュール以外のものにも適用可能であることに留意されたい。
【0065】
(ステップS1)
まず、太陽電池モジュール10からフレーム30や端子箱を取り外す。これにより、太陽電池パネル20が取り出される。
【0066】
(ステップS2)
次に、カバーガラス23を引き剥がすことによって太陽電池パネル20からカバーガラス23を分離する。分離されたカバーガラス23は、ガラスカレット原料としてリサイクルすることが可能である。
【0067】
必要に応じて、太陽電池パネル20から裏側保護層22を分離してもよい。この場合、裏側保護層22は、シート状のままでリサイクル可能である。なお、裏側保護層22を分離することなく以降のステップを実行してもよい。
【0068】
ステップS2において、太陽電池パネル20から、カバーガラス23、又はカバーガラス23と裏側保護層22が取り除かれた積層構造体が得られる。
【0069】
(ステップS3)
次に、積層構造体を粉砕する。積層構造体の粉砕の方法は、特に限定されない。積層構造体の粉砕は、例えば、積層構造体を噛み込みながら粉砕する2軸型の粉砕機、片刃で所望のサイズ以下になるまで連続粉砕する1軸型の粉砕機、又は高速回転するハンマーでたたきながら所望のサイズ以下になるまで連続粉砕する竪型の粉砕機を利用することもできる。
【0070】
ステップS3において、必要に応じて、多段階で積層構造体の粉砕を実行してもよい。例えば、前述した粉砕機による粉砕後に、荒い表面を有する一対の板の間で粉砕された積層構造体をすり潰すことによって、更に粒子径の小さい粉体又は粉体にまるまで粉砕してもよい。
【0071】
積層構造体の粉砕中に、積層構造体中のガラス又はシリコンのような基板から、樹脂層(封止層)が剥離されることがある。この場合、積層構造体中に存在していた基板と樹脂層を分離し易くなる。
【0072】
太陽電池モジュールのリサイクルの場合、積層構造体の粉砕により生じた粉体又は粒体(以下、「基材」と称することもある。)は、少なくとも光電変換素子21を構成する基板の粉砕物を含んでいてよい。ここで、基材は、光電変換素子21を構成する基板の材料や、当該基板に付着した金属を含む。ここで、基板に付着した金属は、例えば配線層を構成する金属材料であってもよく、電極層や光電変換層を構成する金属材料であってもよい。具体的には、粉砕により生じた粉体又は粒体は、ガラス、樹脂もしくはシリコン、又はこれらの組み合わせにより構成される基材と、当該基材に付着した銅、インジウム、ガリウム、セレン、亜鉛、モリブデンもしくは銀、又はそれらの組み合わせのような金属と、を含んでいてよい。
【0073】
ステップS3において、積層構造体の粉砕により生じた粉体又は粒体の粒子径は、ガラス又はシリコンのような基板では約10μmから2mm程度の範囲である。樹脂層(封止層)は、100μmから10mm程度の範囲であってもよい。したがって、積層構造体は、例えば10mm以下、好ましくは5mm以下の平均粒子径を有する粉体又は粒体になるまで粉砕されてよい。より具体的な例では、ガラス又はシリコンの全重量のうち0~250μmの範囲の粒子径を有するガラス又はシリコンの粉体の割合が10%以下になるよう、積層構造体を粉砕すればよい。ただし、ガラス又はシリコンのような基板では、2mm以下の平均粒子径を有する粉体又は粒体であることが好ましい。積層構造体をこのように小さい平均粒子径を有する粉体又は粒体になるまで粉砕することにより、以降のエッチングステップにおいて、金属を溶解させ易くすることができる。なお、「粒子径」は、日本産業規格「JIS Z 8815」に規定する乾式ふるい分け試験に準拠して測定した値によって定義することができる。
【0074】
積層構造体の粉砕後に、必要に応じて、粉砕により生じた粉体又は粒体を水のような溶液に浸漬してもよい。比重の小さい樹脂材料(封止層)の破片は、溶液の表面に浮くため、浮いた樹脂材料の破片を分離、除去することができる。
【0075】
ステップS3によって生じた粉砕物(基材)は、好ましくは、ステップS4の実施前に図4に示す収容体200内に収容される。これにより、粉体又は粒体状の基材の飛散を抑制することができる。これにより、集塵設備を縮小又は排除することがき、プロセス全体を実行するためのシステムを簡易化することができる。また、粉砕物(基材)の搬送中の収率を低下も抑制することができる。特に、基材がインジウムやセレン等の規制物質を含む場合、当該規制物質の飛散を防止できるという利点が得られる。
【0076】
(ステップS4)
次に、金属が付着した基材、すなわちステップS3によって生じた粉砕物から、金属を分離する。具体的には、金属を溶解させる溶解液によって、基板から金属を除去することができる(エッチングステップ)。エッチングステップは、例えば図2及び図3に示すリサイクル装置100を用い、槽110内で基材を酸性の溶解液に接触させることによって実行することができる。金属の溶解が終了したら、槽110の内部から溶解液を排出すればよい。
【0077】
ステップS4は、基材を収容体200に収容した状態で実行されてもよい。収容体200が濾布を含むため、溶解液は、収容体200の内部に入り込み、基材に接触することができる。したがって、基材を収容体200に収容した状態で、上記のステップS4は実行可能である。また、基材が収容体200に収容されていると、粉体又は粒体状の基材がリサイクル装置100中に分散することを抑制することができ、設備に対するダメージを軽減することもできる。また、基材が、前述のように小さい平均粒子径を有する場合であっても、基材が収容体200内にトラップされるため、リサイクルの収率の低下を抑制することができる。
【0078】
溶解液の種類は、基材中に含まれる金属材料の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、基材がI-III-VI族化合物やI-II-IV-VI族化合物を含む場合、溶解液として硝酸を用いることができる。また、基材がII-VI族化合物を含む場合、溶解液として、硝酸、塩酸や硫酸等の酸を用いることができる。
【0079】
ステップS4は、必要に応じて、基材を回転させながら基材を溶解液に漬けてもよい。好ましくは、基材は、収容体200に収容された状態で、収容体200ごと回転される。基材の回転は、前述した回転機構132により実施できる。回転のスピードは、特に制限されないが、例えば100rpm以下であってよい。回転させながら基材を溶解液に漬けることにより、粉体又は粒体状の基材の凝集を抑制し、金属の溶解の効率を上げることができる。
【0080】
(ステップS5)
次に、金属を溶解した液体と基材とを分離する(分離ステップ)。例えば図2及び図3に示すリサイクル装置100を用い、槽110内における基材の回転に伴う遠心力の作用により、溶解液に接触した基材の固体成分と液体成分の分離が可能である。
【0081】
ステップS5は、基材を収容体200に収容した状態で実行されてもよい。収容体200が濾布により構成されているため、粉体又は粒体状の基材にしみ込んだ液体成分(溶解液)は、遠心力により収容体200の外側へ出る。一方、収容体200内の固体成分(基材)は、収容体200の内部にトラップされる。これにより、金属を溶解した液体と基材とを分離することができる。
【0082】
基材の回転は、前述した回転機構132により実施できる。回転のスピードは、エッチングステップS4における回転のスピードより高いことが好ましい。これにより、基材に十分な遠心力を作用させることができる。回転のスピードは、特に制限されないが、例えば500rpm以上であってよい。
【0083】
(ステップS6)
次に、金属が分離された基材、すなわち分離ステップS5の後に残留した固体成分(基材)を洗浄する(洗浄ステップ)。洗浄ステップは、例えば図2及び図3に示すリサイクル装置100を用い、槽110内において実施可能である。洗浄ステップS6で使用される洗浄液は、例えば水や純水等であってよい。
【0084】
ステップS6は、基材を収容体200に収容した状態で実行されてもよい。収容体200が濾布により構成されているため、基材を収容体200に収容した状態であっても、基材を洗浄液によって洗浄することが可能である。基材が収容体200に収容されていると、粉体又は粒体状の基材がリサイクル装置100中に分散することを抑制することができ、設備に対するダメージを軽減することもできる。基材の洗浄後、洗浄液は、槽110内から排出すればよい。
【0085】
ステップS6は、必要に応じて、基材を回転させながら基材を洗浄してもよい。基材の回転は、前述した回転機構132により実施できる。回転のスピードは、特に制限されないが、例えば100rpm以下であってよい。回転させながら基材を洗浄することにより、粉体又は粒体状の基材の凝集を抑制し、洗浄の効率を上げることができる。
【0086】
(ステップS7)
ステップS6の後に、必要に応じて、洗浄効果を上げるため、ステップS5と同様に洗浄液分離ステップを実行してもよい(ステップS7)。例えば図2及び図3に示すリサイクル装置100を用い、槽110内における基材の回転に伴う遠心力の作用により、基材から洗浄液を分離することができる。
【0087】
ステップS7は、基材を収容体200に収容した状態で実行されてもよい。収容体200が濾布により構成されているため、粉体又は粒体状の基材にしみ込んだ液体成分(洗浄液)は、遠心力により収容体200の外側へ出る。一方、収容体200内の固体成分(基材)は、収容体200の内部にトラップされる。これにより、洗浄液と基材とを分離することができる。
【0088】
基材の回転は、前述した回転機構132により実施できる。回転のスピードは、エッチングステップS4における回転のスピードより高いことが好ましい。これにより、基材に十分な遠心力を作用させることができる。回転のスピードは、特に制限されないが、例えば500rpm以上であってよい。
【0089】
ステップS6からステップS7に至るシーケンスは、基材に含まれる酸(溶解液)の残量が目標値を下回るまで複数回行ってもよい。また目標値は、基材のリサイクル用途に応じて定められた値を基準として設定してもよい。さらに、ステップS6からステップS7に至るシーケンスは、同一の槽110内で実行されることが好ましい。この場合、ステップS6及びステップS7を繰り返す回数を、装置を制御するプログラムの設定変更によって容易に変更することができる。
【0090】
(ステップS8)
次に、洗浄後に基材を乾燥する(乾燥ステップ)。乾燥ステップS8は、例えば図2及び図3に示すリサイクル装置100を用い、槽110内において実施可能である。乾燥ステップS8では、加熱空気又は乾燥空気を基材に吹き付けることによって実施できる。また、基材のリサイクルの用途に応じては、乾燥ステップを省略してもよい。
【0091】
ステップS8は、基材を収容体200に収容した状態で実行されてもよい。収容体200が濾布を含むため、基材を収容体200に収容した状態であっても、基材の乾燥が可能である。基材が収容体200に収容されていると、粉体又は粒体状の基材が分散することを抑制することができる。
【0092】
ステップS8では、基材を回転させながら基材を乾燥してもよい。基材の回転は、前述した回転機構132により実施できる。回転のスピードは、洗浄ステップS8における回転のスピードより高いことが好ましい。これにより、基材の乾燥の効率を高めることができる。回転のスピードは、特に制限されないが、例えば500rpm以上であってよい。
【0093】
(ステップS9)
次に、洗浄及び乾燥後に得られた固体成分(基材)を選別する。基材は、例えば篩選別によって選別されることが有効である。この場合、粒子径の小さなガラスやシリコンと粒子径の大きな樹脂成分とを効果的に分離することが可能となる。また、基材の選別は、風力比重選別法や湿式比重分離によっても、行うことができる。湿式比重分離では、ジグ型比重分離機や、テーブル型比重分離機を使用することが好ましい。例えば、残ったガラス材料、シリコン材料及び/又は樹脂材料をそれぞれの材料ごとに選別することができる。ステップS9は、収容体200から基材を取り出して行われる。
【0094】
前述した実施形態において、エッチングステップS4、分離ステップS5、洗浄ステップS6、洗浄液分離ステップS7及び乾燥ステップS8のすべてが、同一の槽110で行われることが好ましい。この代わりに、エッチングステップS4、分離ステップS5及び洗浄ステップS6のうち少なくとも2つ又は全てのステップが同一の槽110で行われてもよい。また、エッチングステップS4、分離ステップS5及び洗浄ステップS6のうちの連続する少なくとも2つのステップが同一の槽110内で実施されてもよい。これにより、各ステップを実行するための専用の槽をそれぞれ準備する必要がなく、リサイクル方法の簡素化、又はリサイクル装置の小型化が可能になる。また、各ステップを実行するための専用の槽どうしの間で基材を搬送する必要がなくなるため、全ステップを実行するために要する時間の短縮も可能になる。
【0095】
また、洗浄液分離ステップS7が、エッチングステップS4、分離ステップS5及び/又は洗浄ステップS6と同様に、同一の槽で行われてもよい。同様に、乾燥ステップS8が、エッチングステップS4、分離ステップS5及び/又は洗浄ステップS6と同様に、同一の槽で行われてもよい。この場合にも、リサイクル方法の簡素化、又はリサイクル装置の小型化が可能になる。
【0096】
前述した例の代わりに、エッチングステップS4、分離ステップS5及び洗浄ステップS6が、図2及び図3で示すような同一の槽110内で行われ、乾燥ステップS8が別の槽(不図示)によって行われてもよい。この場合、基材の乾燥は、乾燥に適した別個の装置により実行できるため、乾燥の効率を上げることも可能になる。
【0097】
また、ステップS3における積層構造体の粉砕の後に、粉砕物(基材)を収容体200に収容し、エッチングステップS4、分離ステップS5及び洗浄ステップS6が終えるまで、基材を収容体200に収容した状態を維持することが好ましい。ここで、インジウムやセレン等の規制物質を含む金属のほとんどは、エッチングステップS4、分離ステップS5及び洗浄ステップS6の実施により、基材から分離されている。したがって、基材が、少なくともエッチングステップS4から洗浄ステップS6まで収容体200に収容されていれば、規制物質を含む金属の飛散を大幅に抑制することができる。
【0098】
より好ましくは、基材は、ステップS3における積層構造体の粉砕の後から乾燥ステップS8が終えるまで、収容体200に収容された状態に維持される。この場合、収容体200内の粉体又は粒体の飛散を抑制することができるので、リサイクルの収率の低下を抑制することができる。
【0099】
なお、エッチングステップS4、分離ステップS5、洗浄ステップS6、洗浄液分離ステップS7及び/又は乾燥ステップS8が基材を回転させながら行われる場合、回転軸は、前述したように鉛直方向に沿っていてもよく、鉛直方向から傾斜していてもよい(図2及び図3も参照)。
【0100】
[リサイクル装置の変更例]
次に、第3実施形態に係るリサイクル装置について説明する。図6は、第3実施形態に係るリサイクル装置の模式図である。リサイクル装置300は、エッチング槽320と、分離槽330と、洗浄槽340と、乾燥槽350と、を有する。
【0101】
また、リサイクル装置300は、金属が付着した基材を収容した収容体200を搬送する搬送機構310を有していてよい。収容体200については、前述したとおりである。搬送機構310は、収容体200を保持可能な保持機構312を有しており、保持機構312を搬送ラインに沿って搬送する。さらに、搬送機構310は、保持機構312及び収容体200を、エッチング槽320、分離槽330、洗浄槽340及び乾燥槽350の上方に位置させた状態で、保持機構312及び収容体200を下降させることにより、収容体200をエッチング槽320、分離槽330、洗浄槽340及び乾燥槽350に導入することができる。
【0102】
一例では、搬送機構310は、保持機構312及び収容体200を、エッチング槽320、分離槽330、洗浄槽340及び乾燥槽350をこの順に搬送する動作(カスケード動作)を行う。この代わりに、搬送機構310は、保持機構312及び収容体200を、例えば洗浄槽340に搬送したあとに分離槽330に戻すよう搬送してもよい。このように、搬送機構310は、基材を収容した収容体200を、エッチング槽320と、分離槽330と、洗浄槽340との間を移送させるよう構成されていてよい。
【0103】
エッチング槽320は、金属が付着した基材における金属を溶解させる溶解液を貯留する。金属が付着した基材は、例えば、上記のステップS3において積層構造体の粉砕により生じた粉体又は粒体であってよい。また、溶解液については、前述したとおりである。エッチング槽320中の溶解液に基材を収容した収容体200を浸漬することによって、前述のエッチングステップS4に相当する処理を実行することができる。
【0104】
分離槽330は、金属を溶解した溶解液と基材とを分離するために設けられている。分離槽330は、搬送された収容体200を回転させる回転機構332を備えていてよい。回転機構332により収容体200を回転させることによって、前述の分離ステップS5に相当する処理を実行することができる。
【0105】
また、分離槽330は、必要に応じて、後述する洗浄液を基材から分離するために利用することもできる。すなわち、前述した分離ステップS5と、前述した洗浄液分離ステップS7とは、共通の分離槽330で実施することができる。この場合、搬送機構310は、基材を収容した収容体200を、後述の洗浄槽340の後に、分離槽330へ搬送すればよい。
【0106】
この代わりに、リサイクル装置300は、洗浄液が付着した基材から液体成分を分離する不図示の洗浄液分離槽を有していてもよい。搬送機構310は、基材を収容した収容体200を、洗浄液分離槽へ搬送可能に構成されていてよい。具体的には、この洗浄液分離槽は、洗浄槽340と乾燥槽350との間に設けられていてよい。この場合、搬送機構310は、基材を収容した収容体200を、カスケード動作によって、エッチング槽320、分離槽330、洗浄槽340及び洗浄液分離槽の順に移送させることができる。
【0107】
洗浄槽340は、基材を洗浄する洗浄液を貯留する。洗浄液については、前述したとおりである。洗浄槽340中の洗浄液に基材を収容した収容体200を浸漬することによって、前述の洗浄ステップS5に相当する処理を実行することができる。
【0108】
乾燥槽350は、基材を乾燥するための槽である。乾燥槽350は、基材を収容した収容体200に、乾燥気体又は加熱気体を吹き付ける送風器352を有していてよい。また、乾燥槽350は、収容体200を回転させる回転機構354を備えていてもよい。回転機構354により収容体200を回転させつつ乾燥気体又は加熱気体を吹き付けることによって、収容体200内の基材を効率的に乾燥させることができる。乾燥槽350は、必要に応じて設けられていればよい。
【0109】
前述したように、搬送機構310は、基材を収容した収容体200を、エッチング槽320と、分離槽330と、洗浄槽340との間で搬送可能に構成されていてよい。これにより、搬送中のおける粉体又は粒体状の基材の飛散を抑制することができる。
【0110】
この代わりに、搬送機構310は、基材を収容した収容体200を、少なくともエッチング槽320、分離槽330及び洗浄槽340の間で搬送可能に構成されていてもよい。ここで、インジウムやセレン等の規制物質を含む金属のほとんどは、エッチング槽320、分離槽330及び洗浄槽340により、基材から分離されている。したがって、基材が、少なくともエッチング槽320から洗浄槽340まで収容体200に収容されていれば、規制物質を含む金属の飛散を大幅に抑制することができる。
【0111】
また、前述したように、搬送機構310は、基材を収容した収容体200を、少なくともエッチング槽320、分離槽330、洗浄槽340の順に搬送した後に、ふたたび分離槽330へ搬送するよう構成されていてもよい。洗浄後340を基材から分離する処理を分離槽330において行うことにより、基材内に残留する洗浄液を抑制することが可能となる。
【0112】
搬送機構310は、複数の収容体200を同時に搬送可能に構成されていてもよい。具体的には、搬送機構310は、複数の収容体200のそれぞれを、エッチング槽320、分離槽330、洗浄槽340及び乾燥槽350に同時に導入するよう同期されていてよい。これにより、リサイクルの全体的な効率を上げることができる。これは、搬送機構310をカスケード動作させる場合に特に有効である。
【0113】
必要に応じて乾燥槽350による乾燥の後、前述したステップS9のように、基材の選別が行われればよい。
【0114】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0115】
20 太陽電池パネル
100,300 リサイクル装置
110 槽
122 導入管
132 回転機構
142 導入管
200 収容体
310 搬送機構
320 エッチング槽
330 分離槽
332 回転機構
340 洗浄槽
350 乾燥槽

図1
図2
図3
図4
図5
図6