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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/02 20060101AFI20240910BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240910BHJP
   A61B 6/40 20240101ALI20240910BHJP
【FI】
A61B6/02 501H
A61B6/00 550P
A61B6/40 500D
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020167614
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2021058589
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2019181888
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537224(JP,A)
【文献】特開2005-013346(JP,A)
【文献】特開2006-150080(JP,A)
【文献】国際公開第2019/145149(WO,A1)
【文献】特開2014-133095(JP,A)
【文献】特表2019-523030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0078507(US,A1)
【文献】国際公開第2014/167935(WO,A1)
【文献】特開昭56-089242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の撮影において撮影された被検体の2次元X線画像を取得する画像取得部と、
前記第1の撮影の後に実行される第2の撮影においてX線発生部が移動する軌道を少なくとも1つ指定する軌道指定部と、
前記2次元X線画像と前記軌道とに基づいて、前記軌道で前記第2の撮影を実行した場合に生じるアーチファクトであって、前記被検体における部位の中で相対的にX線吸収率が高い部位から前記軌道に応じた方向に伸びるアーチファクトを予測する予測処理を行なう画像処理部と
を備える、X線診断装置。
【請求項2】
前記予測処理の結果を表示させる表示制御部を更に備える、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、前記軌道に応じた画像処理を実行することで処理済み画像を生成し、
前記表示制御部は、前記予測処理の結果として、前記処理済み画像を表示させる、請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、複数の前記軌道に応じた複数の前記画像処理を実行することで、複数の前記処理済み画像を生成し、
前記表示制御部は、前記予測処理の結果として、複数の前記処理済み画像を表示させる、請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記軌道の入力操作を受け付ける受付部を更に備え、
前記軌道指定部は、前記入力操作に基づいて前記軌道を指定する、請求項3又は4に記載のX線診断装置。
【請求項6】
複数の前記軌道のそれぞれに対応する画像処理設定を記憶する記憶部を更に備え、
前記画像処理部は、前記軌道に応じて前記記憶部から画像処理設定を読み出し、前記2次元X線画像に対して、読み出した当該画像処理設定に基づく画像処理を実行することで、前記処理済み画像を生成する、請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記軌道に応じて前記記憶部から複数の画像処理設定を読み出して合成し、前記2次元X線画像に対して、合成した当該複数の画像処理設定に基づく画像処理を実行することで、前記処理済み画像を生成する、請求項6に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記軌道に基づく画像処理を実行するように機能付けられた学習済みモデルを記憶する記憶部を更に備え、
前記画像処理部は、前記軌道に基づいて、前記学習済みモデルに前記2次元X線画像に対する画像処理を実行させることで、前記処理済み画像を生成する、請求項3~5のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、前記軌道の形状及び角度範囲に応じた画像処理を実行することで、前記処理済み画像を生成する、請求項3~8のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、前記軌道及びX線量に応じた画像処理を実行することで、前記処理済み画像を生成する、請求項3~9のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、前記軌道及びフレームレートに応じた画像処理を実行することで、前記処理済み画像を生成する、請求項3~10のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項12】
第1の撮影において撮影された被検体の2次元X線画像を取得する画像取得部と、
前記第1の撮影の後に実行される第2の撮影においてX線発生部が移動する軌道を少なくとも1つ指定する軌道指定部と、
前記2次元X線画像と前記軌道とに基づいて、前記軌道で前記第2の撮影を実行した場合に生じるアーチファクトを予測する予測処理を行なう画像処理部と、
前記予測処理の結果を表示させる表示制御部とを備え、
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、前記軌道及びフレームレートに応じた画像処理を実行することで、処理済み画像を生成し、
前記表示制御部は、前記予測処理の結果として、前記処理済み画像を表示させる、X線診断装置。
【請求項13】
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、前記軌道及び再構成条件に応じた画像処理を実行することで、前記処理済み画像を生成する、請求項3~12のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項14】
前記表示制御部は、更に、前記処理済み画像に対応する前記軌道を表示させる、請求項3~13のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項15】
前記表示制御部は、更に、前記処理済み画像に対応する前記軌道に従って前記X線発生部が移動する際に撮影系が干渉する領域を表示させる、請求項3~14のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項16】
第1の撮影において撮影された被検体の2次元X線画像を取得する画像取得部と、
前記第1の撮影の後に実行される第2の撮影においてX線発生部が移動する軌道を少なくとも1つ指定する軌道指定部と、
前記2次元X線画像と前記軌道とに基づいて、前記軌道で前記第2の撮影を実行した場合に生じるアーチファクトを予測する予測処理を行なう画像処理部と、
前記予測処理の結果を表示させる表示制御部とを備え、
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、前記軌道に応じた画像処理を実行することで処理済み画像を生成し、
前記表示制御部は、前記予測処理の結果として、前記処理済み画像を表示させ、更に、前記処理済み画像に対応する前記軌道に従って前記X線発生部が移動する際に撮影系が干渉する領域を表示させる、X線診断装置。
【請求項17】
前記表示制御部は、更に、前記処理済み画像に対応する前記軌道に基づいて複数の投影データを収集するために要する収集時間を表示させる、請求項3~16のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項18】
第1の撮影において撮影された被検体の2次元X線画像を取得する画像取得部と、
前記第1の撮影の後に実行される第2の撮影においてX線発生部が移動する軌道を少なくとも1つ指定する軌道指定部と、
前記2次元X線画像と前記軌道とに基づいて、前記軌道で前記第2の撮影を実行した場合に生じるアーチファクトを予測する予測処理を行なう画像処理部と、
前記予測処理の結果を表示させる表示制御部とを備え、
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、前記軌道に応じた画像処理を実行することで処理済み画像を生成し、
前記表示制御部は、前記予測処理の結果として、前記処理済み画像を表示させ、更に、前記処理済み画像に対応する前記軌道に基づいて複数の投影データを収集するために要する収集時間を表示させる、X線診断装置。
【請求項19】
前記画像処理部は、前記2次元X線画像に対して、180度より狭い角度範囲の前記軌道に応じた画像処理を実行することで、前記処理済み画像を生成する、請求項3~18のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項20】
前記予測処理の結果に基づいて推奨軌道を特定する特定部を更に備える、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項21】
前記推奨軌道を表示させる表示制御部を更に備える、請求項20に記載のX線診断装置。
【請求項22】
前記2次元X線画像は、位置決めのために行なわれる前記第1の撮影において前記被検体を撮影した画像である、請求項1~21のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線の照射角度を変化させた複数の投影データを収集し、再構成画像を得る種々のX線撮影方法が知られている。例えば、被検体の断層画像(スライス)を用いる検査においては、トモシンセシス撮影が実施される場合がある。トモシンセシス撮影では、X線管を所定の軌道上で移動させつつ、X線管から被検体に対してX線を照射させる。これにより、被検体に対するX線の照射角度を変化させた複数の投影データを収集し、収集した複数の投影データから複数の断層画像を再構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-87917号公報
【文献】特開2017-6244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、X線撮影における軌道の選択を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のX線診断装置は、画像取得部と、軌道指定部と、画像処理部とを備える。画像取得部は、第1の撮影において撮影された被検体の2次元X線画像を取得する。軌道指定部は、前記第1の撮影の後に実行される第2の撮影においてX線発生部が移動する軌道を少なくとも1つ指定する。画像処理部は、前記2次元X線画像と前記軌道とに基づいて、前記軌道で前記第2の撮影を実行した場合に生じるアーチファクトを予測する予測処理を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係るX線管の軌道の一例を示す図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態に係るX線管の軌道の一例を示す図である。
図2C図2Cは、第1の実施形態に係るX線管の軌道の一例を示す図である。
図3A図3Aは、第1の実施形態に係る再構成処理の一例を示す図である。
図3B図3Bは、第1の実施形態に係る断層画像の一例を示す図である。
図3C図3Cは、第1の実施形態に係る断層画像の一例を示す図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係る被検体の位置決めの一例を示す図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係る2次元X線画像の一例を示す図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
図5B図5Bは、第1の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
図5C図5Cは、第1の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
図5D図5Dは、第1の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るX線診断装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態に係るX線管の軌道の入力操作を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るX線診断装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
図9図9は、第3の実施形態に係る軌道の角度範囲の一例を示す図である。
図10A図10Aは、第3の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
図10B図10Bは、第3の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
図11図11は、第3の実施形態に係る干渉領域を示す図である。
図12図12は、第3の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図13図13は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係るX線診断装置を説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、図1に示すX線診断装置1を例として説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線診断装置1は、X線高電圧装置11と、X線管12と、X線絞り器13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16と、メモリ17と、ディスプレイ18と、入力インターフェース19と、処理回路20とを備える。
【0009】
なお、本実施形態では、X線の照射角度を変化させた複数の投影データを収集するX線撮影方法の一例として、トモシンセシス撮影について説明する。また、説明の便宜のため、天板14の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、天板14に対して水平な方向をX軸方向とする。なお、X軸方向は、天板14の短手方向に対応する。また、Z軸方向に直交し、天板14に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0010】
X線高電圧装置11は、処理回路20による制御の下、X線管12に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置11は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管12に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管12が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0011】
X線管12は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管12は、X線高電圧装置11から供給される管電圧を用いて、フィラメントからターゲットに向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。なお、X線管12は、X線発生部の一例である。
【0012】
X線絞り器13は、X線管12により発生されたX線の照射範囲を絞り込むコリメータ、及び、X線管12により発生されたX線を調節するフィルタを有する。
【0013】
X線絞り器13におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。コリメータは、絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管12のX線照射口付近に設けられる。
【0014】
X線絞り器13におけるフィルタは、被検体Pに対する被曝線量の低減とX線画像の画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体Pに吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像のコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管12から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0015】
例えば、X線絞り器13は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路20による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器13は、処理回路20から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器13は、処理回路20から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
【0016】
天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台駆動装置の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置1に含まれない。例えば、寝台駆動装置は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路20による制御の下、駆動機構を動作させることにより、天板14の移動・傾斜を制御する。例えば、寝台駆動装置は、処理回路20から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、天板14を移動させたり、傾斜させたりする。
【0017】
Cアーム15は、X線管12及びX線絞り器13と、X線検出器16とを、被検体Pを挟んで対向するように保持する。例えば、Cアーム15は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路20による制御の下、駆動機構を動作させることにより、回転したり移動したりする。例えば、Cアーム15は、処理回路20から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、X線管12及びX線絞り器13と、X線検出器16とを被検体Pに対して回転・移動させ、X線の照射位置や照射角度を制御する。なお、図1では、X線診断装置1がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
【0018】
また、Cアーム15は、複数方向に回転可能に構成される。例えば、Cアーム15は、図1に示すように、X線管12及びX線絞り器13とX線検出器16とで、被検体Pを+X方向から挟み込むように配置される。即ち、Cアーム15は、被検体Pの側面に配置される。かかる場合において、Cアーム15は、X軸方向を回転軸として回転したり、Z軸方向を回転軸として回転したりすることができる。なお、図1はあくまで一例であり、被検体Pに対するCアーム15の配置や、Cアーム15の回転軸の数及び方向については任意に変更が可能である。
【0019】
X線検出器16は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器16は、X線管12から照射されて被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路20へと出力する。ここで、X線検出器16は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0020】
メモリ17は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ17は、処理回路20によって収集された各種のデータを受け付けて記憶する。また、メモリ17は、X線診断装置1に含まれる回路によって実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。なお、メモリ17は、X線診断装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。また、メモリ17は、記憶部の一例である。
【0021】
ディスプレイ18は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ18は、処理回路20による制御の下、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や各種の画像を表示する。例えば、ディスプレイ18は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。なお、ディスプレイ18はデスクトップ型でもよいし、処理回路20と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0022】
入力インターフェース19は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路20に出力する。例えば、入力インターフェース19は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース19は、処理回路20と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース19は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路20へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース19の例に含まれる。
【0023】
処理回路20は、制御機能201、受付機能202、画像処理機能203及び表示制御機能204を実行することで、X線診断装置1全体の動作を制御する。ここで、制御機能201は、制御部の一例である。また、受付機能202は、受付部の一例である。また、画像処理機能203は、画像取得部、軌道指定部、及び画像処理部の一例である。また、表示制御機能204は、表示制御部の一例である。
【0024】
例えば、処理回路20は、メモリ17から制御機能201に相当するプログラムを読み出して実行することにより、処理回路20の各種機能を制御する。また、制御機能201は、X線高電圧装置11を制御することによりX線管12に管電圧を供給させ、X線管12からX線を発生させる。また、制御機能201は、X線絞り器13の動作を制御し、コリメータが有する絞り羽根の開度を調整することで、X線管12により発生されたX線の照射範囲を絞り込む。また、制御機能201は、X線絞り器13の動作を制御し、フィルタの位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。また、制御機能201は、Cアーム15の動作を制御し、Cアーム15を回転させたり移動させたりすることで、X線の照射位置や照射角度を制御する。また、制御機能201は、寝台駆動装置の動作を制御し、天板14を移動させたり傾斜させたりすることで、X線の照射位置や照射角度を制御する。
【0025】
そして、制御機能201は、X線高電圧装置11、X線管12、X線絞り器13、天板14、Cアーム15、X線検出器16の動作を制御することで、各種の撮影を実行することができる。例えば、制御機能201は、Cアーム15の動作を制御することでX線の照射角度を変化させつつ、X線管12から被検体Pに対してX線を照射させることで、複数の投影データを収集する。即ち、制御機能201は、被検体Pに対するトモシンセシス撮影を実行する。なお、制御機能201によるトモシンセシス撮影については後述する。
【0026】
また、処理回路20は、メモリ17から受付機能202に相当するプログラムを読み出して実行することにより、入力インターフェース19を介して、操作者から各種の入力操作を受け付ける。例えば、受付機能202は、操作者から、撮影条件の入力操作を受け付ける。なお、受付機能202が受け付ける入力操作については後述する。
【0027】
また、処理回路20は、メモリ17から画像処理機能203に相当するプログラムを読み出して実行することにより、X線検出器16から出力された検出信号に基づいて2次元X線画像を生成し、生成したX線画像をメモリ17に格納する。即ち、画像処理機能203は、2次元X線画像を取得する。また、画像処理機能203は、トモシンセシス撮影においてX線管12が移動する軌道を少なくとも1つ指定する。また、画像処理機能203は、指定した軌道で第2の撮影を実行した場合に生じるアーチファクトを予測する予測処理を行なう。例えば、画像処理機能203は、トモシンセシス撮影におけるX線管12の軌道に応じた画像処理を2次元X線画像に対して実行することで、予測処理の結果として、処理済み画像を生成する。なお、画像処理機能203による予測処理については後述する。
【0028】
また、画像処理機能203は、トモシンセシス撮影において、X線検出器16から出力された検出信号に基づいて複数の投影データを生成し、生成した複数の投影データをメモリ17に格納する。また、画像処理機能203は、複数の投影データに基づいて、複数の断層画像を再構成する。なお、画像処理機能203による断層画像の生成処理については後述する。
【0029】
また、処理回路20は、メモリ17から表示制御機能204に相当するプログラムを読み出して実行することにより、ディスプレイ18に各種の情報を表示させる。例えば、表示制御機能204は、操作者の指示を受け付けるためのGUIをディスプレイ18に表示させる。また、表示制御機能204は、画像処理機能203による予測処理の結果をディスプレイ18に表示させる。一例を挙げると、表示制御機能204は、画像処理機能203が生成した処理済み画像をディスプレイ18に表示させる。また、制御機能201は、X線診断装置1と他の装置との間におけるデータの送受信を制御する。例えば、制御機能201は、画像処理機能203が生成した各種の画像を、図示しない画像保管装置に対して送信する。
【0030】
図1に示すX線診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ17へ記憶されている。処理回路20は、メモリ17からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路20は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、図1においては単一の処理回路20にて、制御機能201、受付機能202、画像処理機能203及び表示制御機能204が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路20を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路20が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0031】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、メモリ17に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0032】
なお、図1においては、単一のメモリ17が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ17を分散して配置し、処理回路20は、個別のメモリ17から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ17にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0033】
また、処理回路20は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路20は、メモリ17から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線診断装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1に示す各機能を実現する。
【0034】
以上、X線診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、処理回路20による処理によって、トモシンセシス撮影における軌道の選択を容易にする。
【0035】
まず、X線診断装置1により実行されるトモシンセシス撮影の一例について説明する。トモシンセシス撮影を実行する際、制御機能201は、まず、トモシンセシス撮影に関する各種の撮影条件を設定する。ここで、トモシンセシス撮影に関する撮影条件としては、例えば、X線管12の軌道、X線量、フレームレート等が挙げられる。一例を挙げると、操作者は、被検体Pの検査情報に基づき、入力インターフェース19を介して撮影条件の入力操作を行なう。また、受付機能202は、操作者による撮影条件の入力操作を受け付ける。また、制御機能201は、受付機能202が受け付けた入力操作に基づいて、撮影条件を設定する。
【0036】
ここで、トモシンセシス撮影におけるX線管12の軌道について、図2Aを用いて説明する。図2Aは、第1の実施形態に係るX線管12の軌道の一例を示す図である。例えば、制御機能201は、図2Aに示すように、XZ平面上の軌道T11を撮影条件として設定する。なお、軌道T11は、X軸方向に沿った直線状の軌道である。また、撮影条件の設定後、制御機能201は、X線管12から被検体Pに対してX線を照射させつつ、X線管12を軌道T11に沿って移動させることにより、トモシンセシス撮影を実行する。
【0037】
例えば、制御機能201は、Cアーム15を回転させることで、X線管12を軌道T11に沿って移動させる。一例を挙げると、制御機能201は、まず、Cアーム15を回転・移動させることで、図2Bに示す位置X1にX線管12を配置するとともに、被検体Pを挟んでX線管12とX線検出器16とを対向させる。次に、制御機能201は、Z軸を回転軸としてCアーム15を回転させる。これにより、X線管12は、軌道T11に沿って移動し、図2Cに示す位置X2まで移動する。この際、図2B及び図2Cに示すように、X線管12の位置の変化に伴って、X線の照射角度は変化する。なお、図2B及び図2Cは、第1の実施形態に係るX線管12の軌道の一例を示す図である。
【0038】
なお、Cアーム15を回転させることでX線管12を移動させる場合、図2B及び図2Cに示したように、X線管12はY軸方向の変化を含む曲線に沿って移動することとなる。しかしながら、かかる曲線は、Y軸方向から見ればX軸方向に沿った直線となっている。即ち、制御機能201は、Cアーム15を回転させることにより、XZ平面において設定した軌道T11に沿ってX線管12を移動させることができる。
【0039】
また、制御機能201は、軌道T11に沿ってX線管12を移動させつつX線高電圧装置11からX線管12に対する管電圧の供給を制御し、設定されたフレームレートに従って、被検体Pに対してX線パルスを繰り返し照射させる。即ち、制御機能201は、X線の照射角度を変化させながら、X線パルスを繰り返し照射させる。ここで、X線検出器16は、被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路20へと出力する。また、画像処理機能203は、X線検出器16から出力された検出信号に基づいて投影データを生成する。即ち、画像処理機能203は、X線の照射角度を変化させた複数の投影データを生成する。
【0040】
次に、画像処理機能203は、複数の投影データに基づいて、複数の断層画像を再構成する。例えば、画像処理機能203は、まず、複数の投影データに対して種々の画像処理を実行する。一例を挙げると、画像処理機能203は、複数の投影データからDC成分(直流成分)を除去する。そして、画像処理機能203は、処理後の複数の投影データに対してFBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理を実行することによって、図3Aに示すように、XZ平面に平行な複数の断層画像を再構成する。即ち、画像処理機能203は、複数の投影データに基づいて、再構成面をY軸方向にずらした複数の断層画像を再構成する。なお、図3Aは、第1の実施形態に係る再構成処理の一例を示す図である。
【0041】
表示制御機能204は、画像処理機能203が再構成した複数の断層画像を表示させる。例えば、表示制御機能204は、ディスプレイ18において、複数の断層画像のいずれかを表示させたり、複数の断層画像を順次表示させたりする。一例を挙げると、表示制御機能204は、図3Bに示す断層画像B1や、図3Cに示す断層画像B2をディスプレイ18に表示させる。なお、図3B及び図3Cは、第1の実施形態に係る断層画像の一例を示す図である。
【0042】
例えば、図3Bに示す部位R1が検査対象部位である場合、表示制御機能204は、断層画像B1をディスプレイ18に表示させる。また、例えば、図3Cに示す部位R2が検査対象部位である場合、表示制御機能204は、断層画像B2をディスプレイ18に表示させる。これにより、操作者は、検査対象部位が現れた断層画像に注目して、検査対象部位の観察を行なうことができる。
【0043】
ここで、図3B及び図3Cに示すように、画像処理機能203が再構成した断層画像にはアーチファクトが含まれる場合がある。具体的には、部位R1及び部位R2のX線吸収率が高い場合(部位R1及び部位R2が骨や金属である場合等)、部位R1及び部位R2の周辺に、X線管12の軌道に応じた方向に伸びるアーチファクトが生じる。例えば、X軸方向に沿った直線状の軌道T11によりトモシンセシス撮影を実行した場合、図3B及び図3Cに示すように、部位R1及び部位R2からX軸方向に伸びるアーチファクトが生じる。なお、かかるアーチファクトについては、陰影障害とも記載する。
【0044】
そして、アーチファクトが生じる方向によっては、検査対象部位の観察に支障をきたす場合がある。例えば、図3Bに示す部位R1が検査対象部位であって断層画像B1が表示されている場合において、部位R1周辺における位置C1に注目する場合、図3Bに示したアーチファクトが観察の妨げとなる。一方で、部位R1周辺における位置C2に注目する場合、図3Bに示したアーチファクトは、観察の妨げとはならない。ここで、アーチファクトはX線管12の軌道に応じた方向に生じるのであるから、X線管12の軌道を適切に選択することで、アーチファクトが観察の妨げとなる事態を回避することができる。しかしながら、撮影条件の設定の段階でこれから生じるアーチファクトを推測し、X線管12の軌道を適切に選択することは容易でない。
【0045】
そこで、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、トモシンセシス撮影においてX線管12が移動する軌道を少なくとも1つ指定し、被検体Pから予め収集された2次元X線画像と指定した軌道とに基づいて、指定した軌道でトモシンセシス撮影を実行した場合に生じるアーチファクトを予測する予測処理を行なうことで、トモシンセシス撮影における軌道の選択を容易にする。具体的には、X線診断装置1は、X線管12の軌道に応じた画像処理を被検体Pから予め収集された2次元X線画像に対して実行することで処理済み画像を生成し、生成した処理済み画像を表示させることで、トモシンセシス撮影における軌道の選択を容易にする。以下、この点について詳細に説明する。
【0046】
まず、画像処理機能203は、被検体Pから予め収集された2次元X線画像を取得する。即ち、画像処理機能203は、トモシンセシス撮影の実行前に被検体Pから収集された2次元X線画像を取得する。一例を挙げると、画像処理機能203は、被検体Pから予め収集された2次元X線画像として、トモシンセシス撮影の実行前に被検体Pの位置決めのために収集されたX線画像を取得する。位置決めのために行なわれる撮影は、第1の撮影の一例である。また、第1の撮影の後に実行されるトモシンセシス撮影は、第2の撮影の一例である。
【0047】
ここで、図4Aを用いて、被検体Pの位置決めについて説明する。図4Aは、第1の実施形態に係る被検体Pの位置決めの一例を示す図である。まず、制御機能201は、Cアーム15を回転・移動させることで、図4Aに示す位置X3にX線管12を配置するとともに、Y軸方向から被検体Pを挟み込むように、X線管12とX線検出器16とを対向させる。これにより、制御機能201は、X線の照射角度を、Y軸方向に一致するように制御する。即ち、制御機能201は、トモシンセシス撮影における収集基準位置に、X線管12を配置する。
【0048】
次に、制御機能201は、図4Aに示す配置において、被検体Pに対してX線を照射させる。一例を挙げると、制御機能201は、X線高電圧装置11からX線管12に対する管電圧の供給を制御することにより、被検体Pに対してX線パルスを繰り返し照射させる。ここで、X線検出器16は、被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路20へと出力する。また、画像処理機能203は、X線検出器16から出力された検出信号に基づいてX線画像を生成する。例えば、画像処理機能203は、被検体Pに対するX線パルスの照射が行われるごとに、X線画像を順次生成する。また、表示制御機能204は、X線画像が生成される毎に、生成されたX線画像をディスプレイ18に順次表示させる。なお、以下では、X線の照射と並行して順次表示されるX線画像を、透視像と記載する。
【0049】
操作者は、ディスプレイ18に表示された透視像を参照し、透視像に検査対象部位が含まれているか否かを判断する。ここで、透視像に検査対象部位が含まれていない場合、制御機能201は、操作者による入力操作の下、透視像に検査対象部位が含まれるように天板14又はCアーム15の位置を変更する。一方で、透視像に検査対象部位が含まれている場合、制御機能201は、被検体Pの位置決めを終了する。
【0050】
また、画像処理機能203は、被検体Pの位置決めにおいて最後に収集された透視像を、2次元X線画像として取得する。即ち、画像処理機能203は、ラストイメージホールド(LIH:Last Image Hold)を、2次元X線画像として取得する。ここで一例として、図4Bに2次元X線画像I1を示す。図4Bに示すように、2次元X線画像I1は、部位R1及び部位R2の双方を含んだ画像となる。即ち、2次元X線画像I1は、トモシンセシス撮影による断層画像(断層画像B1、断層画像B2等)とは異なり、Y軸方向に位置の異なる複数の部位を含んだ画像となる。なお、図4Bは、第1の実施形態に係る2次元X線画像I1の一例を示す図である。
【0051】
次に、画像処理機能203は、X線管12の軌道に応じた画像処理を2次元X線画像I1に対して実行する。例えば、画像処理機能203は、軌道T11に応じた画像処理を2次元X線画像I1に対して実行することで、図5Aに示す処理済み画像I21を生成する。かかる画像処理は、例えば、事前に設定された画像処理設定に基づいて実行される。一例を挙げると、メモリ17は、軌道T11に対応する画像処理設定として、フィルタ処理に用いるカーネルを記憶する。そして、画像処理機能203は、軌道T11に応じてメモリ17からカーネルを読み出し、読み出したカーネルを用いて2次元X線画像I1に対するフィルタ処理を実行することで、図5Aに示す処理済み画像I21を生成する。また、表示制御機能204は、生成された処理済み画像I21をディスプレイ18に表示させる。図5Aは、第1の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
【0052】
例えば、軌道T11はプリセットされた軌道であり、メモリ17において保管される。画像処理機能203は、メモリ17から軌道T11を読み出し、トモシンセシス撮影においてX線管12が移動する軌道として指定することができる。後述する軌道T12、軌道T13、軌道T14等についても同様である。
【0053】
図5Aに示すように、処理済み画像I21においては、図3B及び図3Cに示した断層画像と同様に、部位R1及び部位R2の周辺に陰影が生じている。即ち、処理済み画像I21は、トモシンセシス撮影による断層画像に生じるアーチファクトを予測したものとなっている。即ち、図5Aに示した画像処理は、2次元X線画像と軌道T11とに基づいて、軌道T11でトモシンセシス撮影を実行した場合に生じるアーチファクトを予測する予測処理である。また、処理済み画像I21は、予測処理の結果の一例である。
【0054】
処理済み画像I21により、操作者は、X線管12の軌道として、軌道T11が適切であるか否かを判断することができる。例えば、部位R1周辺における位置C1に注目する場合、処理済み画像I21に予測されたアーチファクトが観察の妨げとなることから、操作者は、軌道T11が適切でないと判断することができる。また、例えば、部位R1周辺における位置C2に注目する場合、処理済み画像I22に予測されたアーチファクトが観察の妨げとなっていないことから、操作者は、軌道T11が適切であると判断することができる。即ち、操作者は、処理済み画像I21に基づいて、軌道T11が適切であるか否かを容易に判断することができる。
【0055】
なお、表示制御機能204は、処理済み画像I21に加えて、処理済み画像I21に対応する軌道T11を表示させることとしてもよい。例えば、表示制御機能204は、Y軸方向から見た軌道T11を図示する。一例を挙げると、表示制御機能204は、図5Aの上図に示すように、天板14に対する軌道T11の位置及び向きを図示する。
【0056】
また、表示制御機能204は、処理済み画像I21に加えて、処理済み画像I21に対応する収集時間を表示させることとしてもよい。即ち、表示制御機能204は、処理済み画像I21に対応する軌道T11に基づいてトモシンセシス撮影を実行する場合において、複数の投影データを収集するために要する収集時間を表示させることとしてもよい。例えば、表示制御機能204は、図5Aの上図に示すように、収集時間として「4秒」を表示させる。
【0057】
同様に、画像処理機能203は、図5Bに示す軌道T12に応じた画像処理を2次元X線画像I1に対して実行することで、処理済み画像I22を生成する。なお、軌道T12はZ軸方向に沿った直線状の軌道であり、軌道T12によりトモシンセシス撮影を行なう場合、Z軸方向に伸びるアーチファクトが断層画像に生じる。例えば、画像処理機能203は、軌道T12に応じたカーネルをメモリ17から読み出し、読み出したカーネルを用いて2次元X線画像I1に対するフィルタ処理を実行することで、処理済み画像I22を生成する。また、表示制御機能204は、生成された処理済み画像I22をディスプレイ18に表示させる。なお、図5Bは、第1の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
【0058】
処理済み画像I22により、操作者は、X線管12の軌道として、軌道T12が適切であるか否かを判断することができる。例えば、部位R1周辺における位置C1に注目する場合、処理済み画像I22に予測されたアーチファクトが観察の妨げとなっていないことから、操作者は、軌道T12が適切であると判断することができる。また、例えば、部位R1周辺における位置C2に注目する場合、処理済み画像I22に予測されたアーチファクトが観察の妨げとなることから、操作者は、軌道T12が適切でないと判断することができる。即ち、操作者は、処理済み画像I22に基づいて、軌道T12が適切であるか否かを容易に判断することができる。
【0059】
なお、表示制御機能204は、処理済み画像I22に加えて、処理済み画像I22に対応する軌道T12を表示させることとしてもよい。例えば、表示制御機能204は、図5Bの上図に示すように、Y軸方向から見た軌道T12を図示する。また、表示制御機能204は、処理済み画像I22に加えて、処理済み画像I22に対応する収集時間を表示させることとしてもよい。例えば、表示制御機能204は、図5Bの上図に示すように、収集時間として「4秒」を表示させる。
【0060】
同様に、画像処理機能203は、図5Cに示す軌道T13に応じた画像処理を2次元X線画像I1に対して実行することで、処理済み画像I23を生成する。なお、軌道T13は、X軸方向に長い8の字状の軌道である。軌道T13によりトモシンセシス撮影を行なう場合、軌道T13がX軸方向に長いため、X軸方向に伸びるアーチファクトが断層画像に生じる。しかしながら、軌道T13はZ軸方向の動きも含んでいるため、軌道T11によりトモシンセシス撮影を行なう場合と比較してアーチファクトは低減される。例えば、画像処理機能203は、軌道T13に応じたカーネルをメモリ17から読み出し、読み出したカーネルを用いて2次元X線画像I1に対するフィルタ処理を実行することで、処理済み画像I23を生成する。また、表示制御機能204は、生成された処理済み画像I23をディスプレイ18に表示させる。なお、図5Cは、第1の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
【0061】
処理済み画像I23により、操作者は、X線管12の軌道として、軌道T13が適切であるか否かを判断することができる。例えば、位置C1より位置C2の注目度が高い場合、処理済み画像I23に予測されたアーチファクトは、位置C1の観察の妨げになり得るものの、位置C2の観察の妨げとはならないことから、操作者は、軌道T13が適切であると判断することができる。また、例えば、位置C2より位置C1の注目度が高い場合、処理済み画像I23に予測されたアーチファクトが位置C1の観察の妨げになり得ることから、操作者は、軌道T13が適切でないと判断することができる。即ち、操作者は、処理済み画像I23に基づいて、軌道T13が適切であるか否かを容易に判断することができる。
【0062】
なお、表示制御機能204は、処理済み画像I23に加えて、処理済み画像I23に対応する軌道T13を表示させることとしてもよい。例えば、表示制御機能204は、図5Cの上図に示すように、Y軸方向から見た軌道T13を図示する。また、表示制御機能204は、処理済み画像I23に加えて、処理済み画像I23に対応する収集時間を表示させることとしてもよい。例えば、表示制御機能204は、図5Cの上図に示すように、収集時間として「8秒」を表示させる。
【0063】
同様に、画像処理機能203は、図5Dに示す軌道T14に応じた画像処理を2次元X線画像I1に対して実行することで、処理済み画像I24を生成する。なお、軌道T14は、Z軸方向に長い8の字状の軌道である。軌道T14によりトモシンセシス撮影を行なう場合、軌道T14がZ軸方向に長いため、Z軸方向に伸びるアーチファクトが断層画像に生じる。しかしながら、軌道T14はX軸方向の動きも含んでいるため、軌道T12によりトモシンセシス撮影を行なう場合と比較してアーチファクトは低減される。例えば、画像処理機能203は、軌道T14に応じたカーネルをメモリ17から読み出し、読み出したカーネルを用いて2次元X線画像I1に対するフィルタ処理を実行することで、処理済み画像I24を生成する。また、表示制御機能204は、生成された処理済み画像I24をディスプレイ18に表示させる。なお、図5Dは、第1の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
【0064】
処理済み画像I24により、操作者は、X線管12の軌道として、軌道T14が適切であるか否かを判断することができる。例えば、位置C1より位置C2の注目度が高い場合、処理済み画像I24に予測されたアーチファクトは、位置C1の観察の妨げとはならないものの、位置C2の観察の妨げになり得ることから、操作者は、軌道T14が適切でないと判断することができる。また、例えば、位置C2より位置C1の注目度が高い場合、処理済み画像I24に予測されたアーチファクトが位置C1の観察の妨げとはならないことから、操作者は、軌道T14が適切であると判断することができる。即ち、操作者は、処理済み画像I24に基づいて、軌道T14が適切であるか否かを容易に判断することができる。
【0065】
なお、表示制御機能204は、処理済み画像I24に加えて、処理済み画像I24に対応する軌道T14を表示させることとしてもよい。例えば、表示制御機能204は、図5Dの上図に示すように、Y軸方向から見た軌道T14を図示する。また、表示制御機能204は、処理済み画像I24に加えて、処理済み画像I24に対応する収集時間を表示させることとしてもよい。例えば、表示制御機能204は、図5Dの上図に示すように、収集時間として「8秒」を表示させる。
【0066】
例えば、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、軌道T11に応じた画像処理、軌道T12に応じた画像処理、軌道T13に応じた画像処理及び軌道T14に応じた画像処理を実行することで、処理済み画像I21、処理済み画像I22、処理済み画像I23及び処理済み画像I24をそれぞれ生成する。即ち、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、複数の軌道に応じた画像処理を実行することで、複数の処理済み画像を生成する。また、表示制御機能204は、処理済み画像I21、処理済み画像I22、処理済み画像I23及び処理済み画像I24をディスプレイ18に表示させる。例えば、表示制御機能204は、複数の処理済み画像を並列表示させたり、操作者からの入力操作に応じて処理済み画像を切り替え表示させたりする。
【0067】
次に、受付機能202は、操作者から複数の処理済み画像のうちいずかを選択する操作を受け付け、制御機能201は、選択された処理済み画像に対応する軌道を撮影条件として設定する。ここで、操作者は、各処理済み画像に予測されたアーチファクトを参照しつつ、適切な処理済み画像を容易に選択することができる。即ち、操作者は、処理済み画像に基づいて、トモシンセシス撮影における軌道を容易に選択することができる。
【0068】
トモシンセシス撮影に関する各種の撮影条件(X線管12の軌道、X線量、フレームレート等)が設定された後、制御機能201は、設定された撮影条件に基づいて、トモシンセシス撮影を実行する。具体的には、制御機能201は、設定された軌道に沿ってX線管12を移動させつつ、X線管12から被検体Pに対してX線を照射させる。また、画像処理機能203は、X線検出器16から出力された検出信号に基づいて複数の投影データを生成し、複数の投影データに基づいて複数の断層画像を再構成する。そして、表示制御機能204は、画像処理機能203が再構成した複数の断層画像をディスプレイ18に表示させる。ここで、表示される断層画像にはX線管12の軌道に応じたアーチファクトが含まれる場合があるものの、X線管12の軌道は処理済み画像に基づいて適切に選択されているため、アーチファクトが観察の妨げとなる事態は回避することができる。
【0069】
次に、X線診断装置1による処理の手順の一例を、図6を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS105、ステップS106及びステップS109は、制御機能201に対応するステップである。ステップS104は、受付機能202に対応するステップである。ステップS101、ステップS102及びステップS107は、画像処理機能203に対応するステップである。ステップS103及びステップS108は、表示制御機能204に対応するステップである。
【0070】
まず、処理回路20は、被検体Pから予め収集された2次元X線画像I1を取得する(ステップS101)。次に、処理回路20は、2次元X線画像I1に対して複数の軌道に応じた複数の画像処理を実行することで、複数の処理済み画像を生成する(ステップS102)。次に、処理回路20は、生成した複数の処理済み画像をディスプレイ18に表示させる(ステップS103)。
【0071】
ここで、処理回路20は、複数の処理済み画像のうちいずれかを選択する操作を受け付けたか否かを判定し(ステップS104)、選択操作を受け付けない場合(ステップS104否定)には待機状態となる。一方で、選択操作を受け付けた場合(ステップS104肯定)、処理回路20は、選択された処理済み画像に対応する軌道を、撮影条件として設定する(ステップS105)。
【0072】
次に、処理回路20は、設定した撮影条件に従って、トモシンセシス撮影を実行する(ステップS106)。また、処理回路20は、トモシンセシス撮影により収集した複数の投影データから複数の断層画像を再構成し(ステップS107)、再構成した断層画像をディスプレイ18に表示させる(ステップS108)。ここで、処理回路20は、検査を終了するか否かを判定し(ステップS109)、検査を終了しないと判定した場合(ステップS109否定)、待機状態となる。一方で、検査を終了すると判定した場合(ステップS109肯定)、処理回路20は、処理を終了する。
【0073】
上述したように、第1の実施形態によれば、X線管12は、被検体Pに対してX線を照射する。また、制御機能201は、被検体Pに対してX線管12を移動させ、複数の位置からX線を照射するようX線管12を制御することで、トモシンセシス撮影を実行する。また、画像処理機能203は、X線管12の軌道に応じた画像処理を、事前に収集された被検体Pの2次元X線画像I1に対して実行することで、処理済み画像を生成する。また、表示制御機能204は、生成された処理済み画像を表示させる。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、トモシンセシス撮影における軌道の選択を容易にすることができる。
【0074】
また、上述したように、第1の実施形態によれば、表示制御機能204は、処理済み画像に加えて、その処理済み画像に対応する軌道に基づいてトモシンセシス撮影を実行する際における収集時間を表示させる。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1によれば、収集時間を考慮して、トモシンセシス撮影における軌道をより適切に選択することができる。
【0075】
また、上述したように、第1の実施形態によれば、画像処理機能203は、2次元X線画像I1として被検体Pの透視像を取得し、取得した透視像に対してX線管12の軌道に応じた画像処理を実行することで、処理済み画像を生成する。即ち、画像処理機能203は、追加の撮影を実施せずとも2次元X線画像I1を取得し、処理済み画像を生成することができる。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1によれば、被検体Pの被ばく線量を低減することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、2次元X線画像に基づく複数の処理済み画像を表示させ、複数の処理済み画像のうちいずれかを選択する操作を受け付けることで、トモシンセシス撮影におけるX線管12の軌道を設定する場合について説明した。これに対し、第2の実施形態では、X線管12の軌道の入力操作を受け付け、受け付けた軌道に応じた処理済み画像を表示させる場合について説明する。
【0077】
第2の実施形態に係るX線診断装置1は、図1に示した第1の実施形態に係るX線診断装置1と同様の構成を有し、受付機能202及び画像処理機能203による処理の一部が相違する。第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0078】
まず、画像処理機能203は、被検体Pから予め収集された2次元X線画像I1を取得する。例えば、画像処理機能203は、被検体Pの位置決めにおいて収集された透視像を、2次元X線画像I1として取得する。次に、表示制御機能204は、画像処理機能203が取得した2次元X線画像I1を、ディスプレイ18に表示させる。
【0079】
ここで、受付機能202は、2次元X線画像I1を参照した操作者から、X線管12の軌道の入力操作を受け付ける。例えば、受付機能202は、図7に示すように、2次元X線画像I1上に軌道T21を設ける操作を受け付ける。一例を挙げると、操作者は、2次元X線画像I1上の2点を指定し、受付機能202は、指定された2点を結ぶ直線を軌道T21として受け付ける。また、画像処理機能203は、受付機能202が受け付けた入力操作に基づいて、トモシンセシス撮影においてX線管12が移動する軌道として、軌道T21を指定する。なお、図7は、第2の実施形態に係るX線管12の軌道の入力操作を示す図である。
【0080】
例えば、操作者は、2次元X線画像I1を参照しながら、軌道T21として、部位R1や部位R2において注目するエッジに沿った軌道を入力する。即ち、断層画像に生じるアーチファクトはX線管12の軌道に沿った方向に生じるため、通常、部位R1や部位R2においてX線管12の軌道に沿ったエッジにはアーチファクトが生じない。従って、注目するエッジに沿った軌道でトモシンセシス撮影を行なうことによって、通常、注目するエッジがアーチファクトにより観察しにくくなる事態を回避することができる。
【0081】
次に、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、受付機能202が受け付けた軌道T21に応じた画像処理を実行する。例えば、画像処理機能203は、軌道T21に応じてメモリ17から画像処理設定を読み出し、2次元X線画像I1に対して、読み出した画像処理設定に基づく画像処理を実行する。これにより、画像処理機能203は、図示しない処理済み画像I25を生成する。
【0082】
なお、メモリ17が軌道T21に応じた画像処理設定を記憶していない場合、画像処理機能203は、複数の画像処理設定を読み出して合成し、2次元X線画像I1に対して、合成した画像処理設定に基づく画像処理を実行することとしてもよい。例えば、図7に示すように、軌道T21は、X軸方向及びZ軸方向と略45度の角度で交わる直線である。即ち、軌道T21は、X軸方向及びZ軸方向の中間方向の直線である。従って、画像処理機能203は、X軸方向に沿った直線状の軌道(軌道T11等)に応じた画像処理設定と、Z軸方向に沿った直線状の軌道(軌道T12等)に応じた画像処理設定とを読み出して合成する。そして、画像処理機能203は、合成した画像処理設定に基づく画像処理を2次元X線画像I1に対して実行することにより、処理済み画像I25を生成する。
【0083】
次に、表示制御機能204は、生成された処理済み画像I25をディスプレイ18に表示させる。ここで、軌道T21として注目するエッジに沿った軌道が入力されていた場合、通常、処理済み画像I25に予測されたアーチファクトは、注目するエッジには生じない。そして、処理済み画像I25において注目するエッジにアーチファクトが生じていない場合、操作者は、軌道T21が適切であると判断することができる。この場合、制御機能201は、軌道T21を撮影条件として設定する。
【0084】
一方で、複数のエッジが隣接している場合等、注目するエッジにアーチファクトが生じる場合も想定される。かかる場合、操作者は、処理済み画像I25に基づいて、軌道T21が適切でないと判断し、X線管12の軌道の入力操作を再度行なうことができる。ここで、受付機能202は、X線管12の軌道の入力操作を再度受け付ける。また、画像処理機能203は、受付機能202が受け付けた入力操作に基づいて軌道を再度指定する。また、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、再度指定した軌道に応じた画像処理を実行することで、処理済み画像を再度生成する。そして、表示制御機能204は、再度生成された処理済み画像をディスプレイ18に表示させる。
【0085】
或いは、操作者により軌道T21が適切でないと判断された場合、表示制御機能204は、複数の処理済み画像(処理済み画像I21、処理済み画像I22、処理済み画像I23及び処理済み画像I24等)を表示させる。ここで、表示制御機能204は、処理済み画像I25に代えて複数の処理済み画像を表示させてもよいし、処理済み画像I25に加えて複数の処理済み画像を表示させてもよい。そして、受付機能202は、表示制御機能204が表示させた複数の処理済み画像のうちいずかを選択する操作を受け付け、制御機能201は、選択された処理済み画像に対応する軌道を撮影条件として設定する。
【0086】
次に、X線診断装置1による処理の手順の一例を、図8を用いて説明する。図8は、第2の実施形態に係るX線診断装置1の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS206、ステップS207及びステップS210は、制御機能201に対応するステップである。ステップS202及びステップS205は、受付機能202に対応するステップである。ステップS201、ステップS203及びステップS208は、画像処理機能203に対応するステップである。ステップS204及びステップS209は、表示制御機能204に対応するステップである。
【0087】
まず、処理回路20は、被検体Pから予め収集された2次元X線画像を取得する(ステップS201)。次に、処理回路20は、X線管12の軌道の入力操作を受け付け(ステップS202)、受け付けた入力操作に基づいて軌道を指定し、指定した軌道に応じた画像処理を2次元X線画像に対して実行することで、処理済み画像を生成する(ステップS203)。次に、処理回路20は、生成した処理済み画像をディスプレイ18に表示させる(ステップS204)。
【0088】
次に、処理回路20は、処理済み画像を参照した操作者から軌道を変更するための入力操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS205)。ここで、軌道を変更する旨の入力操作を受け付けた場合、処理回路20は、再度ステップS202に移行する。一方で、軌道を変更する旨の入力操作を受け付けない場合、処理回路20は、ステップS202にて受け付けた軌道を撮影条件として設定する(ステップS206)。
【0089】
次に、処理回路20は、設定した撮影条件に従って、トモシンセシス撮影を実行する(ステップS207)。また、処理回路20は、トモシンセシス撮影により収集した複数の投影データから複数の断層画像を再構成し(ステップS208)、再構成した断層画像をディスプレイ18に表示させる(ステップS209)。ここで、処理回路20は、検査を終了するか否かを判定し(ステップS210)、検査を終了しないと判定した場合(ステップS210否定)、待機状態となる。一方で、検査を終了すると判定した場合(ステップS210肯定)、処理回路20は、処理を終了する。
【0090】
上述したように、第2の実施形態に係る受付機能202は、X線管12の軌道の入力操作を受け付ける。また、画像処理機能203は、受付機能202が受け付けた入力操作に基づいて軌道を指定する。また、画像処理機能203は、2次元X線画像に対して、指定した軌道に応じた画像処理を実行することで、処理済み画像を生成する。従って、第2の実施形態に係るX線診断装置1は、操作者が所望する軌道が適切であるか否かを処理済み画像によって示し、トモシンセシス撮影における軌道の選択を補助することができる。
【0091】
なお、受付機能202が受け付けた入力操作に基づいて軌道を指定する場合について説明したが、軌道の指定方法については種々の変形が可能である。例えば、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に基づいて軌道の指定を行なうこともできる。一例を挙げると、画像処理機能203は、2次元X線画像I1から部位R1を抽出し、部位R1のエッジに沿って軌道の指定を行なう。
【0092】
(第3の実施形態)
さて、これまで第1~第2の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0093】
上述した実施形態では、X線管12の軌道の形状に応じた画像処理を実行する場合について説明した。例えば、図5AではX軸方向に沿った直線状の軌道T11に応じた画像処理を実行する場合について説明し、図5BではZ軸方向に沿った直線状の軌道T12に応じた画像処理を実行する場合について説明し、図5CではX軸方向に長い8の字状の軌道T13に応じた画像処理を実行する場合について説明し、図5DではZ軸方向に長い8の字状の軌道T14に応じた画像処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、X線管12の軌道の形状及び角度範囲に応じた画像処理を実行する場合であってもよい。
【0094】
ここで、X線管12の軌道の角度範囲について、図9を用いて説明する。図9は、第3の実施形態に係る軌道の角度範囲の一例を示す図である。図9に示す軌道T31は、X軸方向に沿った直線状の軌道である。軌道T31に沿ってX線管12を移動させる場合、制御機能201は、まず、Cアーム15を回転・移動させることで、図9に示す位置X4にX線管12を配置するとともに、被検体Pを挟んでX線管12とX線検出器16とを対向させる。次に、制御機能201は、位置X5を通り、かつ、Z軸方向に平行な軸を回転軸として、角度範囲θ1の分だけCアーム15を回転させる。これにより、X線管12は、軌道T31に沿って移動し、図9に示す位置X6まで移動する。
【0095】
即ち、角度範囲θ1は、軌道T31のサイズを示すパラメータである。トモシンセシス撮影においては、角度範囲θ1が大きいほど、収集される複数の投影データのX線照射角度をより大きく変化させることができる。ひいては、角度範囲θ1が大きいほど、複数の投影データから再構成される複数の断層画像についてアーチファクトを低減することができる。一方で、角度範囲θ1が大きいほど、複数の投影データを収集するために要する収集時間は長くなる。
【0096】
なお、トモシンセシス撮影において、X線管12の軌道の角度範囲は180度より狭くなる。即ち、トモシンセシス撮影におけるX線管12の軌道は、180度より狭い角度範囲の軌道である。トモシンセシス撮影によれば、180度より広い角度範囲からX線を照射する撮影方式(CTスキャン等)よりも低線量で断層画像を収集することが可能である。
【0097】
以下、X線管12の軌道の形状及び角度範囲に応じた画像処理を実行する場合について、図10A及び図10Bを用いて説明する。なお、図10A及び図10Bは、第3の実施形態に係る処理済み画像の一例を示す図である。
【0098】
図10Aに示す軌道T32は、X軸方向に沿った直線状の軌道であり、角度範囲は「40度」である。画像処理機能203は、軌道T32に応じた画像処理を2次元X線画像I1に対して実行することで、処理済み画像I26を生成する。また、図10Bに示す軌道T33は、X軸方向に沿った直線状の軌道であり、角度範囲は「20度」である。画像処理機能203は、軌道T33に応じた画像処理を2次元X線画像I1に対して実行することで、処理済み画像I27を生成する。
【0099】
ここで、図10A及び図10Bに示すように、角度範囲「40度」の軌道T32に対応する処理済み画像I26に予測されたアーチファクトは、角度範囲「20度」の軌道T33に対応する処理済み画像I27に予測されたアーチファクトよりも少ない。また、処理済み画像I26に対応する収集時間は「8秒」であり、処理済み画像I27に対応する収集時間は「4秒」である。即ち、角度範囲「40度」の軌道T32によりトモシンセシス撮影を実行する場合における収集時間は、角度範囲「20度」の軌道T33によりトモシンセシス撮影を実行する場合における収集時間よりも長くなる。
【0100】
例えば、表示制御機能204は、図10A及び図10Bに示した処理済み画像及び収集時間をディスプレイ18に表示させる。そして、操作者は、処理済み画像及び収集時間に基づいて、処理済み画像I26及び処理済み画像I27のいずれかを選択することにより、X線管12の軌道を選択することができる。例えば、アーチファクトの低減を優先する場合、操作者は、処理済み画像I26を選択する。この場合、制御機能201は、軌道T32を撮影条件として設定する。また、例えば、収集時間の短縮を優先する場合、操作者は、処理済み画像I27を選択する。この場合、制御機能201は、軌道T33を撮影条件として設定する。なお、表示制御機能204は、図10A及び図10Bに示すように、処理済み画像及び収集時間に加えて、その処理済み画像に対応する軌道や、角度範囲を表示させることとしてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、X線管12の軌道に応じた画像処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、X線管12の軌道と、軌道以外の種々の撮影条件とに応じた画像処理を実行する場合であってもよい。
【0102】
例えば、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、X線管12の軌道と、X線量とに応じた画像処理を実行する。例えば、画像処理機能203は、まず、2次元X線画像I1に対して、軌道T11に応じた画像処理を実行することで、図5Aに示した処理済み画像I21を生成する。次に、画像処理機能203は、処理済み画像I21に対して、X線量D1に応じた画像処理を実行することで、図示しない処理済み画像I28を生成する。また、画像処理機能203は、処理済み画像I21に対して、X線量D1より高いX線量D2に応じた画像処理を実行することで、図示しない処理済み画像I29を生成する。
【0103】
一例を挙げると、画像処理機能203は、X線量D1に応じたノイズ成分を処理済み画像I21に付加することで、処理済み画像I28を生成する。また、画像処理機能203は、処理済み画像I21に対して、X線量D2に応じたノイズ成分であって、X線量D1に応じたノイズ成分より少ないノイズ成分を処理済み画像I21に付加することで、処理済み画像I29を生成する。即ち、画像処理機能203は、処理済み画像I28より処理済み画像I29のノイズが少なくなるように、処理済み画像I28及び処理済み画像I29を生成する。次に、表示制御機能204は、処理済み画像I28及び処理済み画像I29をディスプレイ18に表示させる。そして、操作者は、処理済み画像I28及び処理済み画像I29のいずれかを選択することにより、X線量を選択する。
【0104】
例えば、処理済み画像I28が示すノイズが許容範囲内である場合、操作者は、処理済み画像I28を選択する。この場合、制御機能201は、X線量D1を撮影条件として設定する。これにより、X線診断装置1は、トモシンセシス撮影における被検体Pの被ばく線量を低減することができる。一方で、処理済み画像I28が示すノイズによって検査対象部位の観察に支障をきたすと判断した場合、操作者は、処理済み画像I29を選択する。この場合、制御機能201は、X線量D2を撮影条件として設定する。
【0105】
別の例を挙げると、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、X線管12の軌道と、フレームレートとに応じた画像処理を実行する。なお、フレームレートは、トモシンセシス撮影において単位時間あたりに収集する投影データの数であってもよいし、単位となる角度範囲あたりに収集する投影データの数であってもよい。
【0106】
例えば、画像処理機能203は、まず、2次元X線画像I1に対して、軌道T11に応じた画像処理を実行することで、図5Aに示した処理済み画像I21を生成する。次に、画像処理機能203は、処理済み画像I21に対して、フレームレートF1に応じた画像処理を実行することで、図示しない処理済み画像I30を生成する。また、画像処理機能203は、処理済み画像I21に対して、フレームレートF1より高いフレームレートF2に応じた画像処理を実行することで、図示しない処理済み画像I31を生成する。一例を挙げると、画像処理機能203は、処理済み画像I31に予測されたアーチファクトが処理済み画像I30に予測されたアーチファクトよりも少なくなるように、処理済み画像I21に予測されたアーチファクトを増加又は低減させることで、処理済み画像I30及び処理済み画像I31を生成する。次に、表示制御機能204は、処理済み画像I30及び処理済み画像I31をディスプレイ18に表示させる。そして、操作者は、処理済み画像I30及び処理済み画像I31のいずれかを選択することにより、フレームレートを選択する。
【0107】
例えば、処理済み画像I30に予測されたアーチファクトを参照し、検査対象部位の観察には支障をきたさないと判断した場合、操作者は、処理済み画像I30を選択する。この場合、制御機能201は、フレームレートF1を撮影条件として設定する。これにより、X線診断装置1は、トモシンセシス撮影における被検体Pの被ばく線量を低減することができる。一方で、処理済み画像I30に予測されたアーチファクトを参照し、検査対象部位の観察に支障をきたすと判断した場合、操作者は、処理済み画像I31を選択する。この場合、制御機能201は、フレームレートF2を撮影条件として設定する。
【0108】
別の例を挙げると、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、X線管12の軌道と、再構成条件とに応じた画像処理を実行する。例えば、画像処理機能203は、まず、2次元X線画像I1に対して、軌道T11に応じた画像処理を実行することで、図5Aに示した処理済み画像I21を生成する。
【0109】
ここで、処理済み画像I21は、再構成条件「DC成分あり」に対応する画像となる。即ち、処理済み画像I21は、投影データのDC成分を除去せずにFBP法による逆投影処理を実行した場合における断層画像のアーチファクトを予測したものとなる。次に、画像処理機能203は、処理済み画像I21からDC成分を除去する画像処理を実行することで、図示しない処理済み画像I32を生成する。ここで、処理済み画像I32は、再構成条件「DC成分なし」に対応する画像となる。即ち、処理済み画像I32は、投影データからDC成分を除去した後にFBP法による逆投影処理を実行した場合における断層画像のアーチファクトを予測したものとなる。
【0110】
次に、表示制御機能204は、処理済み画像I21及び処理済み画像I32をディスプレイ18に表示させる。そして、操作者は、処理済み画像I21及び処理済み画像I32のいずれかを選択することにより、再構成条件を選択することができる。例えば、操作者が処理済み画像I21を選択した場合、制御機能201は、「DC成分あり」を再構成条件として設定する。これにより、X線診断装置1は、DC成分を含んだ断層画像を再構成することができる。かかる断層画像は、透視像等と同様にDC成分を含んでいる点で見え方が自然であり、操作者にとって観察が容易である場合が多い。また、例えば、操作者が処理済み画像I32を選択した場合、制御機能201は、「DC成分なし」を再構成条件として設定する。これにより、X線診断装置1は、DC成分を除去した後に逆投影処理を実行し、断層画像におけるY軸方向の分解能を向上させることができる。
【0111】
また、上述した実施形態では、メモリ17が記憶する画像処理設定に基づいて、2次元X線画像I1に対する画像処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、メモリ17は、X線管12の軌道に基づく画像処理を実行するように機能付けられた学習済みモデルを記憶する。この場合、画像処理機能203は、X線管12の軌道に基づいて、学習済みモデルに2次元X線画像I1に対する画像処理を実行させることで、処理済み画像を生成する。
【0112】
例えば、画像処理機能203は、過去に実施されたトモシンセシス撮影の結果を学習データとして用いて、学習済みモデルを生成する。一例を挙げると、画像処理機能203は、過去に実施されたトモシンセシス撮影において位置決めのために収集された透視像、そのトモシンセシス撮影におけるX線管12の軌道、及び、そのトモシンセシス撮影により収集された断層画像を学習データとして取得する。そして、画像処理機能203は、これら学習データを機械学習エンジンに入力することによって、機械学習を実行する。
【0113】
具体的には、画像処理機能203は、透視像及びX線管12の軌道を入力側データとし、収集された断層画像を出力側データとして、機械学習エンジンに入力する。これにより、機械学習エンジンは、画像処理後の透視像が断層画像に近似するように画像処理のパラメータを決定して、学習済みモデルを生成する。例えば、機械学習エンジンは、ディープラーニング(Deep Learning)や、ニューラルネットワーク(Neural Network)、ロジスティック(Logistic)回帰分析、非線形判別分析、サポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ナイーブベイズ(Naive Bayes)等の各種のアルゴリズムを用いて、画像処理のパラメータを決定する。
【0114】
そして、画像処理機能203は、被検体Pに対するトモシンセシス撮影の撮影条件を設定する際、2次元X線画像I1を学習済みモデルに入力する。これにより、学習済みモデルは、決定したパラメータに基づく画像処理を2次元X線画像I1に対して実行する。即ち、画像処理機能203は、学習済みモデルに2次元X線画像I1に対する画像処理を実行させて、処理済み画像を生成する。
【0115】
また、上述した実施形態では、処理済み画像に加えて、その処理済み画像に対応する軌道や、その処理済み画像に対応する軌道に基づいて複数の投影データを収集するために要する収集時間、その処理済み画像に対応する軌道の角度範囲等を表示させる場合について説明した。しかしながら、処理済み画像に加えて表示させる情報の例はこれに限定されるものではない。
【0116】
一例を挙げると、表示制御機能204は、図11に示すように、処理済み画像I33に加えて、処理済み画像I33に対応する軌道T34、軌道T34に基づいて複数の投影データを収集するために要する収集時間「8秒」、及び、軌道T34の角度範囲「20度」を表示させる。更に、表示制御機能204は、軌道T34に従ってX線管12が移動する際に、X線診断装置1の撮影系が干渉する領域(干渉領域)を表示させる。ここで、撮影系には、例えば、X線管12、X線絞り器13、Cアーム15、X線検出器16等が含まれる。なお、図11は、第3の実施形態に係る干渉領域を示す図である。
【0117】
即ち、トモシンセシス撮影においてはX線管12の移動に伴って撮影系における他の構成も移動するため、操作者は、撮影系が干渉する領域から退避する必要がある。換言すると、トモシンセシス撮影において、操作者は、撮影系が干渉する領域をワークスペース(Workspace)として利用することができない。従って、操作者は、処理済み画像I33に加えて干渉領域を参照することにより、ワークスペース確保の観点から軌道T34が適切であるか否かを判断することができる。
【0118】
また、上述した実施形態では、X線管12が複数方向に移動可能であるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、X線管12は、1方向にのみ移動可能であってもよい。この場合、画像処理機能203は、2次元X線画像I1に対して、X線管12の軌道の角度範囲に応じた複数の画像処理を実行することで、複数の処理済み画像を生成することができる。
【0119】
また、上述した実施形態では、X線診断装置1がCアーム15を備え、Cアーム15の回転によってX線管12が移動するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。即ち、X線管12を移動させる機構は、Cアーム15に限定されるものではない。換言すると、上述した実施形態は、トモシンセシス撮影を実行可能な任意のX線診断装置について適用可能である。一例を挙げると、上述した実施形態は、トモシンセシス撮影を実行可能なマンモグラフィ装置について適用可能である。
【0120】
また、図2B図2C及び図9においては、Z軸方向から見たX線管12の軌道が、Y軸方向の変化を含む円弧形状の曲線であるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、Z軸方向から見たX線管12の軌道は、Y軸方向の変化を含むその他の形状の軌道であってもよい。一例を挙げると、Z軸方向から見たX線管12の軌道は、二次曲線やカテナリー曲線といった他の曲線形状や、折れ線形状であってもよい。或いは、Z軸方向から見たX線管12の軌道は、Y軸方向の変化を含まない直線状の軌道であってもよい。即ち、Z軸方向から見たX線管12の軌道は、トモシンセシス撮影を実行可能な任意の形状とすることができる。また、図2B図2C及び図9においては、X線検出器16よりもX線管12が上方に位置するものとして説明したが、X線管12はX線検出器16の下方に位置してもよい。
【0121】
また、図2B及び図2Cにおいては、X線検出器16は、X線管12と対向した状態で移動するものとして説明した。即ち、Z軸方向から見たX線検出器16の軌道が、Y軸方向の変化を含む曲線であるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、Z軸方向から見たX線検出器16の軌道は、Y軸方向の変化を含むその他の形状の軌道であってもよいし、Y軸方向の変化を含まない直線状の軌道であってもよい。一例を挙げると、Z軸方向から見てX線管12が+X方向に直線状に移動する場合に、X線検出器16は、-X方向に直線状に移動してもよい。或いは、X線検出器16は、移動しないこととしても構わない。例えば、X線検出器16は、X線管12が複数の位置からX線を照射する間、被検体Pを透過したX線を検出することができるように、そのサイズ及び位置が調整される。
【0122】
また、上述した実施形態では、画像処理機能203による予測処理の結果を表示させる場合について説明した。例えば、図5A図5Dでは、処理済み画像I21~I24を生成してディスプレイ18に表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理回路20は、図12に示すように特定機能205を更に備え、表示制御機能204は、特定機能205が特定した推奨軌道を表示させてもよい。図12は、第3の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0123】
特定機能205は、画像処理機能203による予測処理の結果に基づいて、推奨軌道を特定する。例えば、特定機能205は、図5A図5Dに示した処理済み画像I21~I24に基づいて、推奨軌道を特定する。具体的には、操作者が位置C1に注目する場合において、図5Bの処理済み画像I22及び図5Dの処理済み画像I24の場合には位置C1にアーチファクトが生じていないことから、特定機能205は、軌道T12及び軌道T14を推奨軌道として特定することができる。
【0124】
表示制御機能204は、特定機能205が特定した推奨軌道をディスプレイ18に表示させる。一例を挙げると、表示制御機能204は、処理済み画像I21~I24のうち処理済み画像I22及び処理済み画像I24のみを、軌道T12及び軌道T14とともに表示させる。或いは、表示制御機能204は、処理済み画像I21~I24を軌道T11~T14とともに表示させ、更に、軌道T11~T14のうち軌道T12及び軌道T14が推奨軌道であることを示す情報を表示させてもよい。或いは、表示制御機能204は、処理済み画像I21~I24の表示を省略し、軌道T12及び軌道T14を推奨軌道として表示させてもよい。
【0125】
また、特定機能205は、画像処理機能203による予測処理の結果に基づいて、単一の推奨軌道を特定することとしてもよい。例えば、操作者が位置C1に注目する場合において、図5Bの処理済み画像I22及び図5Dの処理済み画像I24の場合には位置C1にアーチファクトが生じておらず、更に、処理済み画像I22の収集時間の方が短いことから、特定機能205は、軌道T12を推奨軌道として特定する。そして、表示制御機能204は、特定機能205が特定した推奨軌道をディスプレイ18に表示させる。
【0126】
或いは、表示制御機能204による推奨軌道の表示は省略することとしても構わない。例えば、特定機能205は、画像処理機能203による予測処理の結果に基づいて、単一の推奨軌道を特定する。そして、制御機能201は、推奨軌道を撮影条件として設定し、トモシンセシス撮影を実行する。即ち、制御機能201は、画像処理機能203による予測処理の結果に基づいて、トモシンセシス撮影の軌道を自動設定してもよい。
【0127】
また、上述した実施形態では、画像処理機能203による予測処理の結果に基づいて推奨軌道を特定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。即ち、X線診断装置1は、画像処理機能203による予測処理を省略し、2次元X線画像に基づいて推奨軌道の特定を行なうこともできる。
【0128】
2次元X線画像に基づいて推奨軌道の特定は、例えば、機械学習の手法で実現することができる。例えば、メモリ17は、2次元X線画像の入力を受けて推奨軌道を出力するように機能付けられた学習済みモデルを記憶する。かかる学習済みモデルは、特定機能205が生成してもよいし、X線診断装置1以外の外部装置が生成してもよい。
【0129】
一例を挙げると、特定機能205は、学習データとして、2次元X線画像と、その2次元X線画像の収集後に実行されたトモシンセシス撮影において使用された正解軌道との組を多数取得する。また、特定機能205は、2次元X線画像を入力側データとし、正解軌道を出力側データとして、機械学習エンジンに入力する。これにより、特定機能205は、2次元X線画像に基づいて推定した推奨軌道と、正解軌道との不整合を解消するように機械学習エンジンを学習させて、学習済みモデルを生成することができる。例えば、機械学習エンジンは、ニューラルネットワーク等によって構成することができる。
【0130】
そして、特定機能205は、被検体Pに対するトモシンセシス撮影の撮影条件を設定する際、2次元X線画像I1を学習済みモデルに入力する。これにより、特定機能205は、被検体Pに対するトモシンセシス撮影においてX線管12が移動する軌道として推奨される推奨軌道を特定する。また、表示制御機能204は、特定機能205が特定した推奨軌道をディスプレイ18に表示させる。或いは、制御機能201は、特定機能205が特定した推奨軌道に基づいてトモシンセシス撮影の軌道を自動設定してもよい。
【0131】
また、上述した実施形態では、処理回路20が、受付機能202、画像処理機能203、表示制御機能204及び特定機能205を有する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線診断装置1以外の他の装置が備える処理回路が、受付機能202、画像処理機能203、表示制御機能204及び特定機能205に相当する機能を有する場合であってもよい。
【0132】
一例を挙げると、X線診断装置1は、図13に示すように、ネットワークNWを介して医用画像処理装置3と接続される。また、医用画像処理装置3は、入力インターフェース31、ディスプレイ32、メモリ33及び処理回路34を備える。なお、図13は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置3の構成の一例を示すブロック図である。
【0133】
入力インターフェース31は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路34に出力する。例えば、入力インターフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース31は、処理回路34と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像処理装置3とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路34へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース31の例に含まれる。
【0134】
メモリ33は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ33は、医用画像処理装置3に含まれる回路によって実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。なお、メモリ33は、医用画像処理装置3とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0135】
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、処理回路34による制御の下、操作者の指示を受け付けるためのGUIや、各種のX線画像を表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。なお、ディスプレイ32はデスクトップ型でもよいし、処理回路34と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0136】
処理回路34は、画像処理機能341、出力機能342、受付機能343及び特定機能344を実行することで、医用画像処理装置3全体の動作を制御する。例えば、画像処理機能341は、まず、ネットワークNWを介して、X線診断装置1から2次元X線画像I1を取得する。また、画像処理機能341は、トモシンセシス撮影におけるX線管12の軌道を少なくとも1つ指定する。次に、画像処理機能341は、X線管12の軌道に応じた画像処理を2次元X線画像I1に対して実行することで、処理済み画像を生成する。
【0137】
例えば、画像処理機能341は、2次元X線画像I1に対して、複数の軌道に応じた複数の画像処理を実行することで、複数の処理済み画像を生成する。次に、出力機能342は、生成された複数の処理済み画像をディスプレイ32に表示させる。次に、受付機能343は、操作者から、複数の処理済み画像のうちいずれかを選択する操作を受け付け、選択された処理済み画像に対応する軌道を特定する。次に、出力機能342は、受付機能343が特定したX線管12の軌道をX線診断装置1に対して出力する。そして、X線診断装置1は、医用画像処理装置3から受け付けたX線管12の軌道を、撮影条件として設定する。
【0138】
或いは、出力機能342は、画像処理機能341が生成した複数の処理済み画像を、X線診断装置1に対して出力する。この場合、X線診断装置1における表示制御機能204は、医用画像処理装置3から受け付けた複数の処理済み画像をディスプレイ18に表示させる。次に、受付機能202は、操作者から、複数の処理済み画像のうちいずれかを選択する操作を受け付ける。そして、制御機能201は、選択された処理済み画像に対応する軌道を、撮影条件として設定する。
【0139】
別の例を挙げると、まず、受付機能343は、操作者から、X線管12の軌道の入力操作を受け付ける。次に、画像処理機能341は、2次元X線画像I1に対して、受付機能343が受け付けた軌道に応じた画像処理を実行することで、処理済み画像を生成する。次に、出力機能342は、生成された処理済み画像をディスプレイ32に表示させる。ここで、操作者によって軌道が適切であると判断された場合、出力機能342は、受付機能343が受け付けた軌道をX線診断装置1に対して出力する。そして、X線診断装置1は、医用画像処理装置3から受け付けたX線管12の軌道を撮影条件として設定する。
【0140】
或いは、特定機能344は、画像処理機能341が生成した処理済み画像に基づいて推奨軌道を特定する。或いは、画像処理機能341による処理済み画像の生成処理は省略し、特定機能344は、2次元X線画像I1に基づいて推奨軌道を特定する。そして、出力機能342は、推奨軌道をディスプレイ32に表示させる。或いは、出力機能342は、推奨軌道をX線診断装置1に対して出力する。この場合、X線診断装置1は、ディスプレイ18において推奨軌道を表示させ、或いは、推奨軌道を撮影条件として自動設定することができる。
【0141】
また、上述した実施形態では、第2の撮影としてトモシンセシス撮影について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、X線の照射角度を変化させた複数の投影データを収集する各種のX線撮影方法について同様に適用が可能である。
【0142】
例えば、被検体Pから方向の異なる2つの投影データを収集し、これら2つの投影データから再構成画像を得るX線撮影方法が知られている。かかるX線撮影方法を第2の撮影として実行する場合においても、上述した各実施形態が同様に適用可能である。即ち、2つの投影データを収集する場合には異なる2つの位置からX線の照射を行なうところ、これら2つの位置を結ぶ線分をX線管12の軌道として扱うことができる。そして、X線診断装置1又は医用画像処理装置3は、この軌道で2つの投影データを収集した場合に生じるアーチファクトを予測する予測処理を行なうことができる。或いは、X線診断装置1又は医用画像処理装置3は、2つの投影データを収集するための推奨軌道を特定することもできる。
【0143】
第1~第3の実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0144】
また、第1~第3の実施形態で説明した画像処理方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0145】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、X線撮影における軌道の選択を容易にすることができる。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0147】
1 X線診断装置
12 X線管
15 Cアーム
17 メモリ
18 ディスプレイ
19 入力インターフェース
20 処理回路
201 制御機能
202 受付機能
203 画像処理機能
204 表示制御機能
205 特定機能
3 医用画像処理装置
31 入力インターフェース
32 ディスプレイ
33 メモリ
34 処理回路
341 画像処理機能
342 出力機能
343 受付機能
344 特定機能
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13