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  • 特許-一斉開放弁水撃発生防止システム 図1
  • 特許-一斉開放弁水撃発生防止システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】一斉開放弁水撃発生防止システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/68 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A62C35/68
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020170228
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062312
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】志賀 法道
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-273077(JP,A)
【文献】特開2013-022103(JP,A)
【文献】特開2012-095897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火液を通流させる配管途中に設けられる一斉開放弁の閉止時に発生する水撃を防止する一斉開放弁水撃発生防止システムであって、
前記一斉開放弁の二次側配管に、該二次側配管に消火液が通流した後、前記一斉開放弁を閉止することで該二次側配管内の圧力が大気圧以下になったときに、該二次側配管内に空気を導入する空気導入機構を設けたことを特徴とする一斉開放弁水撃発生防止システム。
【請求項2】
前記空気導入機構は、逆止弁であることを特徴とする請求項1記載の一斉開放弁水撃発生防止システム。
【請求項3】
前記一斉開放弁の一次側配管に、前記一斉開放弁を閉止して前記一次側配管内の圧力が予め設定した所定の圧力以上になったときに、前記一次側配管の圧力上昇による水撃発生を防止するために、該一次側配管内の消火液を外部に排出する安全弁を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の一斉開放弁水撃発生防止システム。
【請求項4】
消火液を通流させる配管途中に設けられる一斉開放弁の閉止時に発生する水撃を防止する一斉開放弁水撃発生防止システムであって、
前記一斉開放弁の一次側配管に設けられ、該一次側配管内の圧力が予め設定した所定の圧力以上になったときに該一次側配管内の消火液を外部に排出する安全弁と、
該安全弁から排出される消火液を前記一斉開放弁の二次側配管に導入する消火液導入ラインと、を備えたことを特徴とする一斉開放弁水撃発生防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管途中に一斉開放弁が設けられた消火設備に関し、特に前記一斉開放弁を閉止した際に発生する水撃等を防止する一斉開放弁水撃発生防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
消火設備において消火液が流れる主配管には一斉開放弁が設けられる場合がある(例えば特許文献1参照)。
一斉開放弁は、二次側に接続された散水ヘッド等からの散水による消火開始時に開放され、消火の終了時には閉止される。
【0003】
消火開始時に一斉開放弁を一気に全開まで開放させると、空の二次側配管に大量の消火液が流れ込み、配管の曲がっているところや、径の絞られているところで水撃が発生する。この点、特許文献1の一斉開放弁は、二次側配管内が充水されるまで開度を小さく抑え、二次側配管内が充水されると全開することで、一斉開放弁開放時の水撃を防止している。
【0004】
一方で、水撃は一斉開放弁閉止時にも発生するため、従来は一斉開放弁の閉止操作をゆっくりすることで水撃の発生防止を図っているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-253314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、一斉開放弁の開放、閉止のいずれの場合にも水撃が生ずるが、本願発明は一斉開放弁の閉止時の水撃防止を図ることを目的としていることから、一斉開放弁の閉止時の水撃発生のメカニズムについて説明する。
まず、一斉開放弁を急に閉止することにより、一斉開放弁の一次側配管内では、流れていた消火液が閉止された一斉開放弁に衝突する格好となり水撃が発生する。
【0007】
また、一斉開放弁を閉止した場合には、一斉開放弁の一次側配管のみならず二次側配管においても水撃等が発生する。
以下、二次側配管での水撃等の問題について説明する。
一斉開放弁を急に閉止すると二次側配管内の消火液の流れが急激に止められるが、消火液は慣性力により流れ方向に移動を継続しようとする。しかし、一斉開放弁が閉止されることで流れの(二次側配管内の)上流側の配管内に負圧が発生し、消火液の流れを引き止める力が作用する。そのため、消火液の慣性力は配管や一斉開放弁を介して水撃となり、配管支持部で受け止められるため、配管接続部等にずれが生じことがある。
また、一斉開放弁の二次側配管内が負圧状態になることで、二次側配管内の消火液が逆流して一斉開放弁に衝突することで水撃が発生することもある。
【0008】
このように一斉開放弁を急閉止すると、一次側配管のみならず二次側配管にも水撃等の問題が生ずるが、従来の一斉開放弁において二次側配管に発生する水撃等の問題に対して有効な対策が講じられていないものもあった。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、一斉開放弁の閉止の際に生ずる二次側配管での水撃等に起因する不具合の発生を一斉開放弁の性能に関わらず防止できる一斉開放弁水撃発生防止システムを提供することを目的としている。
また、本発明は二次側配管のみならず、一次側配管での水撃等に起因する不具合発生も同時に防止できる一斉開放弁水撃発生防止システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る一斉開放弁水撃発生防止システムは、消火液を通流させる配管途中に設けられる一斉開放弁の閉止時に発生する水撃等を防止するものであって、
前記一斉開放弁の二次側配管に、該二次側配管内の圧力が大気圧以下になったときに、該二次側配管内に空気を導入する空気導入機構を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記空気導入機構は、逆止弁であることを特徴とするものである。
【0012】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記一斉開放弁の一次側配管に、該一次側配管内の圧力が予め設定した所定の圧力以上になったときに該一次側配管内の消火液を外部に排出する安全弁を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
(4)また、消火液を通流させる配管途中に設けられる一斉開放弁の閉止時に発生する水撃等を防止する一斉開放弁水撃発生防止システムであって、
前記一斉開放弁の一次側配管に設けられ、該一次側配管内の圧力が予め設定した所定の圧力以上になったときに該一次側配管内の消火液を外部に排出する安全弁と、
該安全弁から排出される消火液を前記一斉開放弁の二次側配管に導入する消火液導入ラインと、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、一斉開放弁の二次側配管に、該二次側配管内の圧力が大気圧以下になったときに、該二次側配管内に空気を導入する空気導入機構を設けたことにより、一斉開放弁を急閉止した場合でも、二次側配管内に充水された消火液の流れが急激に止まることを防止し、急停止した消火液によって発生する慣性力による配管支持部のずれや水撃の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る一斉開放弁水撃発生防止システムの説明図である。
図2】本発明の実施の形態2に係る一斉開放弁水撃発生防止システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁水撃発生防止システム1は、消火液を通流させる配管3途中に設けられる一斉開放弁2の閉止時に発生する水撃等を防止するものであって、図1に示すように、一斉開放弁2の二次側配管3bに、二次側配管3bの圧力が大気圧以下になったときに、二次側配管3bに空気を導入する空気導入機構としての逆止弁5を設けたものである。
なお、本実施の形態では、一斉開放弁2の一次側配管3aに、一次側配管3aの圧力が予め設定した所定の圧力以上になったときに一次側配管3a内の消火液を外部に排出する安全弁7を設けている。
安全弁7の設定圧力は、設備の仕様圧力以上で通常の通水状態で開放しない圧力である。なお、安全弁は設定圧力を調整可能なものが好ましい。
【0017】
以上のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
一斉開放弁2が開放されて消火液が配管3内を通流し、配管3の末端に設けられたスプリンクラヘッド(図示なし)から散水されて、消火が行われる。このとき、一斉開放弁2の二次側配管3bには逆止弁5が設けられているが、逆止弁5は二次側配管3b内の消火液の圧力で閉止されるため消火液が漏れることはない。
【0018】
消火の完了時に、一斉開放弁2を手動等で閉止操作する。このとき、二次側配管3b内では通流する消火液の流れが急激に止められるため、二次側配管3b内の一斉開放弁2近傍の圧力が低下する。そして、一斉開放弁2近傍の二次側配管3b内が大気圧以下になると、逆止弁5が開弁して、外部の空気が二次側配管3b内に導入される。これによって、二次側配管3b内の一斉開放弁2近傍が大きく負圧になることが防止され、上述した慣性力よって発生する水撃等の弊害を防止できる。
【0019】
また、本実施の形態では、一次側配管3aに安全弁7を設けており、一斉開放弁2を閉止した際に一次側配管3a内の一斉開放弁2近傍の圧力が急上昇するが、一次側配管3a内の一斉開放弁2近傍の圧力が所定の圧力になったときに安全弁7が開弁して一次側配管3a内の一斉開放弁2近傍の消火液が外部に排出される。
これよって、一次側配管3a内の圧力の急上昇による水撃等の発生を防止できる。
【0020】
なお、逆止弁5は二次側配管3bの基端部、すなわち二次側配管3bにおける一斉開放弁2の近傍に設けることが好ましい。同様に安全弁7は一次側配管3aの末端部、すなわち一次側配管3aにおける一斉開放弁2の近傍に設けることが好ましい。
【0021】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る一斉開放弁水撃発生防止システム9は、図2に示すように、一斉開放弁2の一次側配管3aに設けられ、一次側配管3a内の圧力が予め設定した所定の圧力以上になったときに一次側配管3a内の消火液を排出する安全弁7と、安全弁7から排出される消火液を一斉開放弁2の二次側配管3bに導入する消火液導入ライン11と、を備えたものである。
安全弁7の設定圧力は、実施の形態1と同様である。
【0022】
上記のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
一斉開放弁2が開放されて消火液が配管3内を通流し、配管3の末端に設けられたスプリンクラヘッド(図示なし)から散水されて、消火が行われる。このとき、二次側配管3bには消火液導入ライン11が設けられているので、消火液が消火液導入ライン11に流入することがあるが、外部に排出されるわけではなく特に問題ない。
もっとも、消火液が消火液導入ライン11に流入するのを防止するために、消火液導入ライン11における二次側配管3bとの接続部の近傍に逆止弁5を設けるようにしてもよい。
【0023】
消火完了時に、一斉開放弁2を手動等で閉止する。このとき、一次側配管3a内の一斉開放弁2の近傍で圧力が急上昇するが、一次側配管3a内の圧力が所定の圧力になったときに安全弁7が開弁して一次側配管3a内の消火液が消火液導入ライン11に排出される。
このため、一次側配管3a内の圧力が急上昇するのを防止でき、一次側配管3aでの水撃等の発生を防止できる。
【0024】
一方、二次側配管3bでは、通流する消火液の流れが急に止められるため、二次側配管3b内の一斉開放弁2の近傍の圧力が低下し、消火液導入ライン11に排出された消火液が二次側配管3bに吸い込まれるようにして導入される。これによって、二次側配管3b内の消火液の流れが急停止することが防止され、消火液が緩慢に流れることにより急停止による弊害を防止できる。
【0025】
以上のように、本実施の形態2においては、一斉開放弁2の一次側配管3aに安全弁7を設け、安全弁7が開弁して一次側配管3aから排出される消火液を二次側配管3bに導入するようにしたので、一斉開放弁2の急閉止による一次側配管3a及び二次側配管3bでの水撃等の発生を、簡単な機構で効果的に防止することができる。
【0026】
なお、実施の形態1、2共に新設時に設置することもできるが、既存の設備にも容易に設置できる。
【符号の説明】
【0027】
1 一斉開放弁水撃発生防止システム(実施の形態1)
2 一斉開放弁
3 配管
3a 一次側配管
3b 二次側配管
5 逆止弁(空気導入機構)
7 安全弁
9 一斉開放弁水撃発生防止システム(実施の形態2)
11 消火液導入ライン
図1
図2