(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】無線通信装置、および、無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/12 20090101AFI20240910BHJP
H04W 40/20 20090101ALI20240910BHJP
【FI】
H04W40/12
H04W40/20
(21)【出願番号】P 2020184309
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕哉
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0196527(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0159832(US,A1)
【文献】特開2006-148322(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信装置を含むネットワークに配置される前記無線通信装置であって、
自無線通信装置が宛先となっていない、前記ネットワーク内で送受信される無線通信パケットを傍受し、前記無線通信パケットの送信元無線通信装置情報、宛先無線通信装置情報、および、無線通信品質情報を抽出する他ノード宛パケット処理部と、
送信元無線通信装置情報、および、宛先無線通信装置情報から通信リンク情報を生成し、前記通信リンク情報によって特定される通信リンクの無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化しているか否かを検出する遮断検出部と、
2つ以上の通信リンクの前記無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化している場合に、遮断発生領域を推定する遮断位置推定部と、
通信経路を直線で示した場合に前記直線が、前記遮断発生領域の内側を通過しない前記通信経路を演算するルーティング演算部と、を含む無線通信装置。
【請求項2】
通信リンクが確立されている通信経路であって、前記通信経路を直線で示した場合に前記直線が前記遮断発生領域に含まれる場合には、前記通信経路の無線通信品質を測定する通信品質測定部を、さらに含み、
通信品質測定部によって測定された無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化している場合には、前記ルーティング演算部が、無線通信品質があらかじめ定められた値を満たす、宛先無線通信装置への新たな通信経路を探索する請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化した前記通信リンクを直線で示し、直線で示した2つの前記通信リンクの交点を中心点とし、前記中心点から半径R1の範囲内を前記遮断発生領域とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記遮断発生領域を避ける通信経路には、無線通信パケットを中継する無線通信装置が含まれる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記ネットワーク内に配置されるすべての無線通信装置の位置情報をあらかじめ記憶するノード位置記憶部を含み、
前記無線通信装置の起動時には、少なくとも3つの無線通信装置の位置情報が記憶されており、
前記無線通信装置の動作中に、前記少なくとも3つの無線通信装置以外の前記ネットワーク内の無線通信装置の位置情報が前記ノード位置記憶部に記憶される請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記少なくとも3つの無線通信装置以外の前記ネットワーク内の無線通信装置は、前記少なくとも3つの無線通信装置との無線通信における無線強度、前記無線強度から演算される無線送受信する無線通信装置間の距離、および、前記少なくとも3つの無線通信装置の位置情報から、自無線通信装置の位置情報を取得し、前記ネットワーク内の他の無線通信装置に自無線通信装置の位置情報を通知する請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の無線通信装置を複数含むネットワークは車両に配置され、前記遮断発生領域において想定される障害物には前記車両の乗員が含まれる無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、および、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の無線通信装置を含む無線通信ネットワークにおいて、見通し伝送路が遮断された場合に、あらたな接続先をサーチし、サーチしたあらたな接続先と無線通信を継続する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の複数の情報源間に無線回線を設けて通信を行う無線通信装置は、情報源の間の見通し線周辺が物体によって遮られること、あるいは遮られる前兆を検出する遮断検出手段を含む構成が開示されている。また、当該無線通信装置は、物体によって見通し線周辺が遮られる前の無線通信装置の設定を記録・保持する記録・保持手段と、物体が情報源の間の見通し線周辺を遮ることによる無線回線の劣化を補償する無線回線劣化補償手段を含む構成が開示されている。さらに、当該無線通信装置は、物体によって見通し線周辺の遮断が終了したことを検出する遮断終了検出手段を含む構成が開示されている。さらに、当該無線通信装置は、物体が見通し線周辺を遮る状態が終了したと検出された場合に記録・保持手段に記録・保持された見通し線周辺が遮られる前の前記無線通信装置の状態を再設定する無線通信装置状態再設定手段を含む構成が開示されている。また、無線回線劣化補償手段には、マクロダイバーシチが含まれることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の無線ポートと無線端末との間の伝送路の遮断を検出するためには、当該伝送路の伝送状況を測定する必要があるので、無線ポートと無線端末との間で直接通信を実行していない場合には、伝送路の遮断を検出できないという課題がある。また、無線ポートと無線端末との間で常時通信を実行し、または、定期的に通信を実行すると、無線ポートおよび無線端末の消費電力が増大してしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、他ノード伝送路の通信品質劣化を傍受し、通信品質が劣化した領域を推定し、当該領域を横切る自ノード伝送路の替わりの新たな接続先を低電力および低遅延で探索可能な無線通信装置、および、無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る、複数の無線通信装置を含むネットワークに配置される前記無線通信装置は、自無線通信装置が宛先となっていない、前記ネットワーク内で送受信される無線通信パケットを傍受し、前記無線通信パケットの送信元無線通信装置情報、宛先無線通信装置情報、および、無線通信品質情報を抽出する他ノード宛パケット処理部と、送信元無線通信装置情報、および、宛先無線通信装置情報から通信リンク情報を生成し、前記通信リンク情報によって特定される通信リンクの無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化しているか否かを検出する遮断検出部と、2つ以上の通信リンクの前記無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化している場合に、遮断発生領域を推定する遮断位置推定部と、通信経路を直線で示した場合に前記直線が、前記遮断発生領域の内側を通過しない前記通信経路を演算するルーティング演算部と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、他ノード伝送路の通信品質劣化を傍受し、通信品質が劣化した領域を推定し、当該領域を横切る自ノード伝送路の替わりの新たな接続先を低電力および低遅延で探索可能な無線通信装置、および、無線通信システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る無線通信システムによって形成されるネットワークの一例を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る無線通信システムの動作の一例を示す模式図である。
【
図3】本実施形態に係る通信パケットの構成の一例を示す模式図である。
【
図4】本実施形態に係る無線通信装置の状態遷移の一例を示す状態遷移図である。
【
図5】本実施形態に係る無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態に係わる送信状態の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係わる送信休止状態の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係わる接続先確認状態の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係わる記憶部の一部の記憶状態の一例を示す模式図である。
【
図10】比較例に係る無線通信システムの一例を示す模式図である。
【
図11】比較例に係る他の無線通信システムの一例を示す模式図である。
【
図12】比較例に係るその他の無線通信システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係わる無線通信装置および無線通信システムの一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
なお、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0012】
(無線通信システムの概要)
本実施形態の無線通信システムは少なくとも4つ以上の無線通信装置を含む。無線通信装置は、他の無線通信装置と直接通信または中継通信することが可能である。また、無線通信装置は、他の無線通信装置がその他の無線通信装置と無線通信する場合の無線通信情報の少なくとも一部の情報を傍受することが可能である場合がある。当該少なくとも一部の情報には、通信リンク情報、および、当該通信リンク情報によって特定される通信リンクの通信品質情報が含まれる場合がある。このような、無線通信装置を含む無線通信システムの一例について、
図1を参照して、具体的に説明する。なお、本実施形態では、無線通信装置をノードと称する場合がある。
【0013】
一例として示される
図1では、複数の無線通信装置であるノードN1、ノードN2、ノードN3、ノードN4、ノードN5、ノードN6によって無線通信システム1000のネットワークが構成される場合を想定する。本明細書では、ノードN1、ノードN2、ノードN3、ノードN4、ノードN5、ノードN6を総称して、ノードNと称する場合がある。また、ノードNの動作は、一例として
図5に示される無線通信装置100の各ブロックによって達成される場合がある。
【0014】
図1において、O1は人体等の無線通信にとって障害となる障害物を示している。C1は、ノードN1とノードN4を直線で結んだ線と、ノードN2とノードN5を直線で結んだ線との交点を示す。また、R1は、交点C1を中心点とした半径を示し、破線は、中心点を交点C1とし、半径をR1とした場合の円を示す。半径R1の値は、後述して説明する。
【0015】
図1において、ノードN1、ノードN2、ノードN4、ノードN5が通信データを送信するための送信状態にある場合について説明する。この場合のノードN1とノードN4との間の通信リンクをL14で示す。また、ノードN2とノードN5との間の通信リンクをL25で示す。ノードN6は受信状態にあり、L14および/またはL25の通信パケットを傍受できる可能性がある。ノードN6が当該通信パケットを傍受できた場合には、当該通信パケットの通信リンクに関する情報を取得し、取得した通信リンクに関する通信品質情報を取得する。なお、本実施形態では通信リンクL14と通信リンクL41における通信品質は同一と想定し、通信リンクL25と通信リンクL52における通信品質も同一と想定する。
【0016】
また、ノードN1とノードN6とは通信リンクL16によって直接通信を実行していたが、直接通信が終了し、送信休止状態にある。
【0017】
例えば、障害物O1が無線通信システム1000の外部から無線通信システム1000の無線通信が実行されている領域に侵入してきた場合には、伝送路の少なくとも一部が遮断され、伝送路の少なくとも一部に通信品質の劣化が生じる可能性がある。例えば、障害物O1が
図1における表示位置に存在する場合には、通信リンクのL14およびL25の通信品質に劣化が生じる可能性が高い。障害物O1の一例には、車両等の移動体の乗員が挙げられる。
【0018】
通信リンクのL14については、例えば、ノードN4がノードN1から受信した電波の受信電力情報または受信強度情報等の情報を測定し、パケットの通信品質情報領域に書き込み、ノードN4がノードN1へ当該パケットを送信する。通信品質情報領域は通信品質情報を示すパラメータが記載される領域であって、後述するように、通信パケットのヘッダ部に設けられることが好ましい。また、通信品質情報領域に通信品質情報を示すパラメータが記載されたパケットは、例えば、ノードN1からノードN4へ通信データが送信された後にノードN4からノードN1へ送信されるACK(ACKnowledgement)であることが可能である。また、ノードN4からノードN1へ送信されるNACK(Negative ACKnowledgement)に含まれることが可能である。また、通信品質情報領域に通信品質情報を示すパラメータが記載されたパケットは、例えば、ノードN1からノードN4へ通信データが送信された後にノードN4からノードN1へ送信される通信データのパケットに含まれることが可能である。このように、通信品質情報領域に記載される通信品質情報は、データが送受信されるたびに更新されることが可能になる。
【0019】
ノードN1およびノードN4は、障害物O1等の障害物によって、通信リンクのL14の通信品質が劣化した場合には、後述する接続先確認状態に遷移することが可能である。接続先確認状態では、各ノードNは、PER(Packet Error Rate)を低減させるように、通信データに対してさまざまな処理を実行することが可能である。例えば、接続先確認状態のノードNは、MCS(Modulation Coding Scheme)の変更、接続先ノードを切り替えて中継ノードを利用する通信ルートの設定等の処理を実行し、宛先のノードとの無線通信を継続するように動作する。
【0020】
同様に、ノードN2およびノードN5は、障害物O1等の障害物によって、通信リンクのL25の通信品質が劣化した場合には、後述する接続先確認状態に遷移することが可能である。接続先確認状態では、各ノードNは、PER(Packet Error Rate)を低減させるように、通信データに対して上述したさまざまな処理を実行することが可能である。
【0021】
ノードN6は、通信リンクであるL14およびL25で送受信されるパケットを傍受できた場合には、L16の通信品質が劣化する可能性があるか否かを判定することが可能になる。
【0022】
例えば、上述してきたように、
図1の状態が発生した場合には、通信リンクのL14およびL25の通信品質が同時に劣化している可能性が高い。また、ノードN6は傍受したパケットの通信品質情報領域から通信リンクの通信品質情報を取得可能である。ノードN6が、通信リンクのL14およびL25の通信品質が同時に劣化していることを通信品質情報から認識した場合に、見通し線の交点付近に遮蔽が発生している可能性が高く、通信リンクL16の見通し線も遮蔽され、通信品質の劣化が推測される。
【0023】
上述した場合に、ノードN6は通信リンクのL16の通信品質を確認する。通信リンクのL16の通信品質が低下している場合には、ノードN6はノードN1へ通信データを到達させることが可能な通信ルートを探索し、通信リンクを確立させる。通信ルートの探索手法は、さまざまな既知の探索手法を採用することが可能である。例えば、通信ルートの探索手法は、AODV(Ad hoc On Demand Distance Vector)ルーティングプロトコルを採用することが可能であるが、これに限定されず、既知の探索手法を採用することが可能である。ノードN6による通信ルートの探索動作が終了すると、ノードN6は探索された通信ルートにしたがって、通信データをパケットとして、ノードN1に送信することが可能になる。
【0024】
(遮蔽物の位置の具体的な推定方法)
上述したように、ノードN6が、通信リンクL14およびL25の通信品質の同時劣化を認識した場合には、L14およびL25の見通し線の交点付近に遮蔽が発生している可能性が高く、通信リンクL16の見通し線にも通信品質の劣化が推測される。
【0025】
例えば、ノードN6は、
図5に示す通信品質情報記憶部162に記憶されているすべてのリンクについて、通信品質情報の平均値と瞬時値とを比較し、瞬時値が平均値よりもあらかじめ定められたしきい値Th1を超えて低下しているか否かを判定する。瞬時値が平均値よりもあらかじめ定められたしきい値Th1を超えて低下しているリンクが2つ以上存在した場合には、当該リンクの交点を演算する交点演算処理を実行する。しきい値Th1の一例には。電波を遮断する代表的な物体のミリ波の減衰率を使用することも可能である。電波を遮断する代表的な物体の一例には、人体、犬などの哺乳類が挙げられる。例えば、人体による遮蔽が頻繁に起こることが想定される環境であり、無線通信システム1000において使用される周波数が60GHz帯である場合には、減衰率を15dB以上、好ましくは20dB以上、より好ましくは25dB以上とすることも可能である。リンクの通信品質情報の平均値と瞬時値を比較し、しきい値Th1以上にリンクの通信品質情報の平均値と瞬時値の差が変化していれば、ノードNは電波環境が突然変化したことを検出することが可能になる。
【0026】
図1のように、障害物O1がノードN1とノードN4とを結ぶ直線、および、ノードN2とノードN5とを結ぶ直線の間に移動した場合には、通信リンクのL16およびL25の通信品質情報の平均値と瞬時値の差がしきい値Th1を超えて変化する可能性がある。ノードN6が、通信リンクのL16およびL25の通信品質情報の平均値と瞬時値の差が、しきい値Th1を超えたと判定した場合には、ノードN1とノードN4とを結ぶ直線およびノードN2とノードN5とを結ぶ直線間に障害物O1が発生したと推定する。
【0027】
具体的には、ノードN6は、例えば、以下の方法で障害物O1の位置を推定することも可能である。
【0028】
最初に、ノードN6は、あらかじめ
図1に示すノードN1、ノードN2、ノードN3、ノードN4、ノードN5、ノードN6の位置を2次元平面上の座標(x、y)として記憶しているものとする。例えば、ノード同士の通信によって自ノードの座標情報を他ノードに送信し、無線通信システム1000に含まれるノードが他のノードの座標情報を共有するように構成されてもよい。この場合に、各ノードは自ノード位置を外部I/Fを介して座標情報として入力されてもよい。また、各ノードは自ノード位置を電波の到来方向や電波強度によって推定することも可能な場合があってもよい。さらに、各ノードに自ノードおよびすべての他ノードの座標情報があらかじめ
図5に示すノード位置記憶部161に記憶されていてもよい。また、各ノードは、外部I/Fを介して自ノードおよびすべての他ノードの座標情報がノード位置記憶部161に記憶されてもよい。
【0029】
ノードN1の位置は(x1、y1)として、ノードN2の位置は(x2、y2)として、ノードN3の位置は(x3、y3)として、ノードN4の位置は(x4、y4)として、ノード位置記憶部161に記憶されることが可能である。また、ノードN5の位置は(x5、y5)として、ノードN6の位置は(x6、y6)として、ノード位置記憶部161に記憶されることが可能である。
【0030】
上述の座標系を使用すると、通信リンクのL14を示す直線は(x4-x1)(y-y1)=(y4-y1)(x-x1)と、通信リンクのL25を示す直線は(x5-x2)(y-y2)=(y5-y2)(x-x5)と示すことが可能になる。上述した、通信リンクのL14を示す直線およびL25を示す直線が、無線通信を成立させる電波の伝送経路と仮定し、通信リンクのL14を示す直線およびL25を示す直線の交点C1に障害物O1が発生したとノードN6は推定することが可能である。L14を示す直線およびL25を示す直線から交点C1を演算する手法は公知の技術であるため、本実施形態では詳述を省略する。
【0031】
なお、通信リンクを示す直線が平行な場合等で、交点を演算できない場合には、例外処理として、交点を演算できないノードは
図4に示す送信休止状態S2を継続する。
【0032】
次に、ノードN6は、送信休止状態S2にあるノードN1との通信リンクを復帰しようとする場合には、通信リンクのL16が遮断されているか否かを判定する。判定方法は以下の処理によって実行される。
【0033】
ノードN6は、送信休止状態にあるノードN1との通信リンクであるL16を示す直線の式(x6-x1)(y-y1)=(y6-y1)(x-x1)に、(x6、y6)および(x1、y1)の座標値を代入し、演算し、L16を示す直線を生成する。
【0034】
図1に示すように、ノードN6は、交点C1から通信リンクL16を示す直線におろした垂線の長さを演算し、当該垂線の長さをD1とする。
【0035】
ノードN6は、垂線の長さD1と、交点C1からの半径R1との値を比較する。垂線の長さD1が、半径R1以下である場合には、交点C1から半径R1以内の空間を通信リンクのL16が横切る可能性があるとノードN6は判定可能である。この場合には、ノードN6とノードN1との通信が不成功となる確率が高い。したがって、ノードN6は、接続先確認状態S3に遷移し、ノードN1との通信を中継可能なノードを探索する。
【0036】
ノードN6は、垂線の長さD1と、交点C1からの半径R1との値を比較し、垂線の長さD1が、半径R1よりも大きい場合には、交点C1から半径R1以内の空間を通信リンクのL16が横切る可能性が低いとノードN6は判定可能である。この場合には、ノードN6とノードN1との通信が成功となる確率が高いので、ノードN6は送信休止状態S2を継続する。
【0037】
交点C1からの半径R1は、通信リンクを遮断する可能性のある物体の代表的な値と、無線通信システム1000で使用される周波数のフレネル半径を含む通信環境への影響因子を考慮して、無線通信システム1000において決定されることが可能である。例えば、通信リンクを遮断する可能性のある物体が人体であり、使用される周波数が60GHz帯であり、ノード間距離が2m程度であると仮定した場合を想定する。この場合には、交点C1からの半径R1は、人体の幅として想定される約50cm~100cmと、フレネル半径として想定される約5cmとの数値和として示されることが可能である。なお、通信環境への他の影響因子がある場合には、当該数値和に他の影響因子による値または値の範囲を加算した値を半径R1とすることも可能である。
【0038】
(パケットの構成例)
図3は、本実施形態に係わる無線通信システム1000のネットワークにおいて伝送されるパケットPの構成例を示す。ネットワーク内の各通信リンクにおいて、送受信されるパケットPは、ヘッダ部PH、ペイロード領域PP、および、誤り検出符号領域PCを含むことが可能である。
【0039】
ヘッダ部PHには、プリアンブル領域PHP、MCSの種類を示すMCS識別子領域PHM、パケットPの送信ノード情報領域PHS、パケットPの宛先である宛先ノード情報領域PHR、及び、リンクの通信品質を示す通信品質情報領域PHQが含まれる。
【0040】
プリアンブル領域PHPは、デジタルデータであるパケットを伝送する場合に,データの始まりに付加するデジタルデータの同期を取るための符号であって、区切り用の特殊ビット列で示され得る。
【0041】
送信ノード情報領域PHSはパケットPを送信する送信ノードの識別情報を示す領域である。送信ノード情報として、識別子であるID(Identifier)が使用されてもよい。例えば、IDはノードNごとにあらかじめ定められた固有のアドレスであってもよい。送信ノードの識別情報がIDとして示される場合には、送信ノードの識別情報を示す領域である、
図3に示す送信ノード情報領域PHSには、送信ノードのIDが書き込まれる。
【0042】
宛先ノード情報領域PHRはパケットPの宛先である宛先ノードの識別情報を示す領域である。宛先ノード情報として、識別子であるIDが使用されてもよい。上述したように、例えば、IDはノードNごとにあらかじめ定められた固有のアドレスであってもよい。宛先ノードの識別情報がIDとして示される場合には、宛先ノードの識別情報を示す領域である、
図3に示す宛先ノード情報領域PHRには、宛先ノードのIDが書き込まれる。
【0043】
通信品質情報領域PHQは、通信リンクの通信品質を示す通信品質情報を示す領域であり、通信品質情報は電波の受信強度、受信パワー、PER、BER(bit error rate)等の通信品質を示す任意の情報が記載されることが可能である。通信品質情報の種類は、無線通信システム1000において、あらかじめ定められることも可能である。また、通信品質情報の種類を示す情報は、PHQの領域のいずれかの場所、好ましくはPHQの先頭領域に書き込まれることも可能である。または、パケットPのいずれかの場所に、通信品質情報の種類を示す情報が書き込まれていてもよい。なお、通信品質情報の種類を示す情報が書き込まれる領域は、無線通信システム1000において、あらかじめ定められることも可能である。
【0044】
ペイロード領域PP、および、誤り検出符号領域PCについての説明は、公知の技術に類似するので説明を省略する。
【0045】
なお、本実施形態では、1つのパケットにおいて、ヘッダ部PHと、その他の部分とは、MCSが異なっていてもよい。例えば、ヘッダ部PHがBPSK(binary phase-shift keying)方式であり、ペイロード領域PPが16QAM(quadrature amplitude modulation)方式である場合があり得る。なお、ヘッダ部PHはBPSKに限定されず、任意のMCSを使用することが可能である。また、ペイロード領域PPは16QAMに限定されず、任意のMCSを使用することが可能である。ただし、同条件の伝送路をパケットが伝送される場合に、ヘッダ部PHのMCSは、ペイロード領域PPのMCSよりも、BERが低くなるMCSが採用されることが可能である。すなわち、パケットを受信したノードNにとっては、ペイロード領域PPよりもヘッダ部PHの復調が容易になるため、ヘッダ部PHの通信品質情報を取得できる確率が高まるのである。
【0046】
無線通信システム1000において、パケットがミリ波で通信される場合には、ミリ波通信の特徴である、電波の直進性、高い指向性、伝搬時の大きな距離減衰のために、パケットを傍受できない困難性が高まる。しかし、上述したように、ヘッダ部PHまたは通信品質情報領域PHQに、変調方式、符号化方式、転送速度の少なくとも1つがBERを低下するように設定されたMCSを採用することが好ましい。この構成によって、ノードが他のノード間のパケットの通信品質情報等の情報を傍受できる確率が高まる。
【0047】
なお、IEEE11.11adのMCS0の変調方式はπ/2のBPSKであり、符号化率は1/2であり、符号化方式はLDPCであり、無線転送速度は27.5Mbpsであり、最小受信感度は-78dBmである。一方、IEEE11.11adのMCS1の変調方式はπ/2のBPSKであり、符号化率は1/2であり、無線転送速度は385.0Mbpsであり、最小受信感度は-68dBmである。したがって、MCS1に対してMCS0は約10dBのマージンを得られるために、ヘッダ部PHにMCS0を採用することによって、ミリ波通信であってもパケットPを傍受できる可能性が高まることが理解できる。
【0048】
(ノードNの状態遷移図)
図4は、ノードNの状態遷移図を模式的に示した図である。ノードNは送信状態S1、送信休止状態S2、接続先確認状態S3のいずれかの状態をとる。
【0049】
送信状態S1は、ノードNに送信要求が発生した場合に、当該ノードNが送信要求情報に基づいて、通信データをパケット化し、通信リンクが確立された接続先ノードへパケットを送信する状態である。
【0050】
送信休止状態S2は、ノードNがパケットの送信を休止し、受信状態となっている状態である。したがって、送信休止状態S2にあるノードNは、自ノード宛てのパケット、または、他ノード宛てのパケットを受信することが可能である。パケットを受信した送信休止状態S2にあるノードNは、パケットに含まれる、通信リンク間の通信品質を含む通信品質情報を取得し、自ノードの通信品質情報記憶部に取得した通信品質情報を当該パケットの通信リンクと対応付けて記憶する。
【0051】
接続先確認状態S3は、ノードNが接続を確立している接続先ノードとの通信品質を測定し、測定された通信品質があらかじめ定められた通信品質よりも低下した場合に、ノードNがあらたな接続先ノードの探索動作を実行する状態である。
【0052】
遷移条件T12は、送信状態S1にあったノードNに送信要求がなくなった場合に、ノードNが送信状態S1から送信休止状態S2に遷移する動作を意味する。送信要求がなくなった場合とは、送信要求に係わる通信データの送信が成功した場合、および、通信データが最終的に送信成功とならなかった場合も含み得る。
【0053】
遷移条件T21は、送信休止状態S2にあったノードNに送信要求が発生し、ノードNが送信休止状態S2から送信状態S1に遷移する動作を意味する。
【0054】
遷移条件T23は、送信休止状態S2にあったノードNの通信品質情報記憶部の記憶内容が更新され、かつ、障害物O1の位置を推定できた場合に、ノードNが送信休止状態S2から接続先確認状態S3に遷移する動作を意味する。なお、障害物O1の位置推定は、2以上の通信リンクで通信品質が低下した場合に実行され得る。
【0055】
遷移条件T32は、接続先確認状態S3にあるノードNにおいて、あらかじめ定められた通信品質以上の通信品質を有する接続先ノードを探索できた場合に、ノードNが、当該接続先ノードとの通信リンクを確立し、送信休止状態S2に遷移する動作を意味する。
【0056】
遷移条件T13は、送信状態S1にあったノードNが、接続先ノードとの通信品質の劣化を検知した場合に、ノードNが送信状態S1から接続先確認状態S3に遷移する動作を意味する。
【0057】
遷移条件T31は、接続先確認状態S3にあったノードNに送信要求が発生した場合に、ノードNがあらかじめ定められた通信品質以上の通信品質を有する接続先ノードを探索し、当該接続先ノードとの通信リンクを確立し、送信状態S1に遷移する動作を意味する。
【0058】
(無線通信装置の構成例)
図5は無線通信装置100の構成の一例を示すブロック図である。無線通信装置100は、
図5に示すように、信号処理部110、送信情報処理部120、受信情報処理部130、遮断検出部140、遮断位置推定部150、記憶部160、ルーティング演算部170、および、外部I/F部180を含む。なお、アンテナANTは無線通信装置100に含まれる場合と含まれない場合があるオプションである。無線通信装置100は以上のブロックを含む一般的なコンピュータであり得る。一般的なコンピュータが制御プログラムを実行することにより、
図5に示す機能を実現することが可能となる。以下、本実施形態における特徴に関連する部分についてのみ説明する。従って、無線通信装置100は、本実施形態における特徴に直接関係しない他の機能ブロックを備えることは勿論である。
【0059】
なお、記憶部160は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)、ハードディスク等である。記憶部160は、無線通信装置100が処理を実行するための入力データ、出力データおよび中間データなどの各種データを記憶することも可能である。なお、無線通信装置100の一部の機能は、CPU(Central Processing Unit)で実行されることが可能である。
【0060】
信号処理部110は、アンテナANTと無線信号の送受信を実行し、送信無線信号の増幅、変調等の信号処理、受信無線信号の増幅、復調等の信号処理を実行する機能を有する。また、ヘッダ部とその他の部分とでMCSを切り替える機能を有する場合もある。さらに、受信される無線信号には、自ノードが宛先となる無線信号と、他ノードが宛先となる無線信号とが含まれる。また、送信される無線信号には、自ノードが宛先となる無線信号に対するACKやNACK等の応答信号である場合がある。
【0061】
送信情報処理部120には、送信無線信号のヘッダ部に通信品質情報を書き込む通信品質情報付加部121が含まれる。
【0062】
通信品質情報付加部121は、送信するパケットPの通信品質情報領域PHQに、通信リンクの通信品質情報を書き込む機能を有する。書き込まれる通信品質情報は、自ノード宛てのパケットを後述する通信品質測定部132aにおいて測定した通信品質情報である場合がある。なお、送信情報処理部120において、パケットPに含まれるプリアンブル領域PHP、MCS識別子領域PHM、送信ノード情報領域PHS、宛先ノード情報領域PHR、誤り検出符号領域PC等の領域に適切な情報が書き込まれることが可能である。
【0063】
受信情報処理部130には、パケット宛先判別部131、自ノード宛パケット処理部132、他ノード宛パケット処理部133が含まれる。
【0064】
パケット宛先判別部131は、信号処理部110において信号処理されたパケットPの宛先ノードのIDを抽出し、パケットPの宛先を判別する機能を有する。パケットPの宛先が自ノードの場合には、パケット宛先判別部131は、当該パケットPを自ノード宛パケット処理部132に伝送する。また、パケットPの宛先が他ノードの場合には、パケット宛先判別部131は、当該パケットPを他ノード宛パケット処理部133に伝送する。
【0065】
自ノード宛パケット処理部132は、自ノード宛パケットの自ノードを含む通信リンクの伝送路における通信品質を測定する通信品質測定部132aを含む。なお、自ノード宛パケットのペイロード領域PPの内容は、外部I/F部180を介して、無線通信装置100の外部の電子機器等に出力されることも可能である。また、自ノード宛パケット処理部132は、自ノード宛パケットがACK等の応答信号である場合には、自ノード宛パケットの通信品質情報領域PHQから通信品質情報を抽出する。さらに、自ノード宛パケット処理部132は、自ノードを含む通信リンク情報と抽出された通信品質情報を対応付け、通信品質情報記憶部162に記憶することも可能である。
【0066】
他ノード宛パケット処理部133は、傍受した他ノード宛パケットの他ノードを含む通信リンクの伝送路における通信品質情報を抽出する通信品質情報取得部133aを含む。
【0067】
通信品質情報取得部133aは、傍受した他ノード宛パケットの通信品質情報領域PHQから通信品質情報を抽出し、他ノードを含む通信リンク情報と抽出された通信品質情報を対応付け、通信品質情報記憶部162に記憶することが可能である。他ノードを含む通信リンクは、傍受した他ノード宛パケットの送信ノード情報領域PHSと宛先ノード情報領域PHRから通信品質情報取得部133aが取得することが可能である。なお、送信ノード情報領域PHSには送信ノードのID、宛先ノード情報領域PHRには宛先ノードのIDが書き込まれていてもよい。
【0068】
遮断検出部140は、2つ以上の通信リンクで通信品質情報があらかじめ定められた値を超えて劣化した場合に、通信リンクに障害物等による遮断が発生したと判定する機能を有する。あらかじめ定められた値は、無線通信装置100または無線通信システム1000において、任意の値を設定することが可能である。あらかじめ定められた値の一例として、通信品質情報を電波強度で示す場合には20dBとすることも可能である。比較する通信品質情報は、直前の通信品質情報、または、直前までの通信品質情報等と、最新の通信品質情報とすることも可能であるが、詳細については後述する。また、遮断検出部140は、遮断が発生したと判定した場合には、遮断が発生したと判定した通信リンクを示す通信リンク情報を含む遮断検出信号を遮断位置推定部150に出力する。
【0069】
遮断位置推定部150は、遮断検出部140から遮断検出信号を受信した場合に、遮断検出信号に含まれる通信リンクごとに通信リンクの送信ノードと宛先ノードの位置情報をノード位置記憶部161から抽出する。遮断位置推定部150は、送信ノードと宛先ノードの位置情報から、当該送信ノードと当該宛先ノードを結ぶ直線を生成する。複数の当該直線の交点を遮断位置推定部150は演算し、障害物と想定される物体が含まれる位置を特定する。すなわち、遮断位置推定部150は、演算された交点から半径R1の範囲内の領域に障害物と想定される物体が含まれると判定する。半径R1の決定方法は、すでに前述したので、説明の重複を避けるために記述を省略する。
【0070】
記憶部160には、ノード位置記憶部161と通信品質情報記憶部162が含まれる。
【0071】
ノード位置記憶部161は、ネットワーク内のすべてのノード位置情報が記憶される機能を有する。測位の基準送信局は当該ネットワーク内の固定局であり、当該ネットワーク内の3つ以上のノードがあらかじめ固定局として定められることが可能である。当該基準送信局となるノードの位置情報はあらかじめ各ノードのノード位置記憶部161に記憶されることが可能である。基準送信局となるノードの位置情報は外部I/F部180を介して座標情報として入力されてもよい。各ノードは自ノード位置を基準送信局となるノードの電波強度等を用いた三点測位等の方法で推定することが可能な場合があり得る。そして、ノード同士の通信によって自ノードの位置情報を他ノードに送信し、ネットワークを構成する無線通信システム1000に含まれるすべてのノードが他のノードの位置情報を共有するように構成されてもよい。なお、各ノードは、外部I/Fを介して自ノードおよびすべての他ノードの位置情報がノード位置記憶部161に記憶されてもよい。
【0072】
当該ネットワーク内の固定局として定められることが可能である3つ以上のノードはあらかじめ、車両のルーフ、フロントパネル、フロア等の固定構造体に取り付けられていることが可能である。すなわち、当該ネットワークは、自動車内に設置された無線通信システム1000によって構築されるネットワークを一例として説明している。しかし、実施形態は自動車内に限定されるものではなく、列車、飛行機、船舶等の移動体の内部、家屋、工場等の構造物の内部などに構築されたネットワーク全般に適用することが可能である。
【0073】
通信品質情報記憶部162には、ネットワーク内の通信リンク情報と当該通信リンクの通信品質情報が記憶される機能を有する。通信リンクはノードが受信するパケットPの送信ノードのIDと宛先ノードのIDとから判定することが可能である。また、当該パケットPのヘッダ部PHに含まれる通信品質情報が、判定された通信リンクの通信品質を示す通信品質情報となり得る。通信リンクと、当該通信リンクの通信品質を示す通信品質情報は対応した情報として通信品質情報記憶部162に記憶される。なお、通信品質情報記憶部162に記憶される、通信品質情報には自ノードが測定した通信品質情報、または、自ノード宛てのパケットPに含まれる通信品質情報が含まれる場合もあり得る。
【0074】
図9は、通信品質情報記憶部162の記憶領域の一例を示す模式図である。901列には、傍受したパケットPの送信ノード情報が記憶され、902列には、傍受したパケットPの宛先ノード情報が記憶される。同じ行に記載される送信ノード情報と宛先ノード情報は傍受した同一のパケットPのヘッダ部PHに記載されているノード情報である。したがって、同じ行に記載される送信ノード情報と宛先ノード情報から、通信リンクが特定されることが可能である。903列には、複数の同一通信リンクから通信品質情報を受信している場合に、複数の同一通信リンクの通信品質情報の平均値がdBmを単位として記憶されている。なお、平均値の演算方法は、データの合計値をデータ数で割った相加平均、相乗平均、調和平均、中央値等の任意の演算方法を無線通信システム1000が採用することが可能である。904列には、同一の通信リンクにおける最新の通信品質情報が記憶される。本実施形態では最新の通信品質情報を通信品質情報の瞬時値と称する場合もある。なお、903列には、前回の同一の通信リンクにおける複数の通信品質情報の平均の代わりに、前回の同一の通信リンクにおける通信品質情報が記憶される場合があってもよい。また、ある通信リンクにおいて最初に通信品質情報が取得された場合には、903列には、何も書き込まない、または、最初の通信品質情報が書き込まれてもよい。
【0075】
図9の通信リンクL19の通信品質情報の平均値が-52dBmであり、通信品質情報の瞬時値が-74dBmであり、差が22dBである。したがって、遮断検出部140は、当該通信リンクで通信品質情報があらかじめ定められた値を超えて劣化したと判定可能である。この場合のあらかじめ定められた値の一例を20dBとする。
【0076】
また、
図9の通信リンクL16の通信品質情報の平均値が-59dBmであり、通信品質情報の瞬時値が-62dBmであり、差が3dBである。したがって、遮断検出部140は、当該通信リンクで通信品質情報があらかじめ定められた値を超えて劣化したとは判定しないことが可能である。
【0077】
図9の通信リンクL25の通信品質情報の平均値が-60dBmであり、通信品質情報の瞬時値が-81dBmであり、差が21dBである。したがって、遮断検出部140は、当該通信リンクで通信品質情報があらかじめ定められた値を超えて劣化したと判定可能である。
【0078】
一例として示された
図9では、遮断検出部140は通信リンクL14および通信リンクL25において、通信品質情報があらかじめ定められた値を超えて劣化したと判定し、通信リンク情報を含む遮断検出信号を遮断位置推定部150に出力することが可能である。
【0079】
また、
図9には図示しないが、通信品質情報の瞬時値には、通信品質情報を取得した時刻に対応する時刻情報が対応付けられて記憶されていてもよい。例えば、瞬時値が記憶された時刻の差である時間があらかじめ定められた時間以上である場合には、遮断検出部140は、対応する通信リンクを遮断検出の対象から外すことも可能である。この場合のあらかじめ定められた時間は無線通信システム1000において任意の値を設定することが可能である。このような構成によって、遮断検出部140において、無駄な遮断検出動作を防止し、遮断検出動作を適切に実行することが可能になる場合もある。
【0080】
ルーティング演算部170は通信ルートの探索を実行する。通信ルートの探索手法は、さまざまな既知の探索手法を採用することが可能である。例えば、上述したように、通信ルートの探索手法は、AODVルーティングプロトコルを採用することが可能であるが、これに限定されず、既知の探索手法を採用することが可能である。既知の探索手法の一例には、Reactive型プロトコルのDSR(Dynamic Source Routing)が挙げられる。また、Proactive型プロトコルのOLSR(Optimized Link State Rout)の探索手法が挙げられる。さらに、Proactive型プロトコルのTBRPF(Topology Broadcast Based on Reverse-Path Forwarding)等の探索手法が挙げられる。これらの既知の探索手法により、通信品質があらかじめ定められた値以上の直接通信経路、中継ノードを介した間接通信経路等の経路を探索することが可能になる。
【0081】
外部I/F部180は、無線通信装置100と接続されるセンサー等のデバイス、または、電子装置とのインターフェース機能を有する。また、外部I/F部180に接続されるデバイス、または、電子装置によって、ECU(Electronic Control Unit)が構成されてもよい。電子装置には、車載機器としての車両制御機器、車両センシング機器、車両周辺情報取得機器、および、エンタテイメント機器等の電子機器が含まれてもよい。なお、車両制御機器にはナビゲーション機器や自動運転制御機器が含まれてもよい。また、他の無線通信装置100の外部I/F部と接続し、情報を送受信することも可能である。
【0082】
(ノードNの各状態における動作例)
(ノードNの送信状態S1の動作例)
図6は、ノードの状態が送信状態S1である場合のノード動作の一例を示すフローチャートである。
【0083】
ステップS601において、ノードに送信要求が発生しているので、送信要求情報から宛先ノード情報を取得し、通信データをパケット化して、パケットを宛先ノードに送信する。次に、ノードはステップS602に進む。
【0084】
ステップS602において、ノードは通信リンクの通信品質が低下しているか否かを判定する。通信リンクの通信品質が低下している場合(ステップS602:YES)には、ノードはステップS605に進む。通信リンクの通信品質が低下していない場合(ステップS602:NO)には、ノードはステップS603に進む。通信リンクの通信品質が低下しているか否かは、通信品質測定部132aが受信したパケットの電波を測定することによって実行されてもよい。
【0085】
ステップS603において、ノードはステップS601において送信しきれなかった通信データ、または、あらたな送信要求が発生したか否かを判定する。送信すべき通信データがある場合(ステップS603:YES)には、ノードはステップS601に進む。送信すべき通信データがない場合(ステップS603:NO)には、ノードはステップS604に進む。
【0086】
ステップS604において、ノードには送信すべき通信データがないので、ノードは送信休止状態S2に遷移する。そして、ノードは送信処理を終了する。
【0087】
ステップS605において、ノードは通信リンクの通信品質が低下していることを検知しているので、接続先確認状態S3に遷移し、送信処理を終了する。
【0088】
(ノードNの送信休止状態S2の動作例)
図7は、ノードの状態が送信休止状態S2である場合のノード動作の一例を示すフローチャートである。
【0089】
ステップS701において、ノードは自ノードに送信要求が発生しているか否かを判定する。自ノードに送信要求が発生している場合(ステップS701:YES)には、ノードはステップS710に進む。自ノードに送信要求が発生していない場合(ステップS701:NO)には、ノードはステップS702に進む。
【0090】
ステップS702において、ノードはパケットを受信したか否かを判定する。ノードがパケットを受信した場合(ステップS702:YES)には、ノードはステップS703に進む。ノードがパケットを受信していない場合(ステップS702:NO)には、ノードはステップS701を繰り返す。
【0091】
ステップS703において、ノードはパケットを受信しているので、受信したパケットのヘッダ部PHから、送信ノード情報、宛先ノード情報、および、通信品質情報を取得する。また、ノードは送信ノード情報および宛先ノード情報から通信リンク情報を生成する。次に、ノードはステップS704に進む。
【0092】
ステップS704において、ノードはステップS703において生成した通信リンク情報によって特定される通信リンクが、通信品質情報記憶部162に記憶されているか否かを判定する。ステップS702において受信したパケットの通信リンクが通信品質情報記憶部162に記憶されている場合(ステップS704:YES)には、ノードはステップS705に進む。ステップS702において受信したパケットの通信リンクが通信品質情報記憶部162に記憶されていない場合(ステップS704:NO)には、ノードはステップS711に進む。
【0093】
ステップS705において、ノードはステップS702において受信したパケットの通信リンクに対する通信品質情報を、ステップS703において取得した通信品質情報によって更新する。次に、ノードはステップS706に進む。
【0094】
ステップS706において、ノードは、通信品質情報記憶部162に記憶されているすべてのリンクについて、通信品質情報の平均値と瞬時値とを比較し、瞬時値が平均値よりもあらかじめ定められたしきい値Th1を超えて低下しているか否かを判定する。そして、瞬時値が平均値よりもあらかじめ定められたしきい値Th1を超えて低下している通信リンクが2つ以上存在した場合(ステップS706:YES)には、ノードはステップS707に進む。瞬時値が平均値よりもあらかじめ定められたしきい値Th1を超えて低下している通信リンクが2つ以上存在しない場合(ステップS706:NO)には、ノードはステップS701に戻る。
【0095】
ステップS707において、ノードは、瞬時値が平均値よりもあらかじめ定められたしきい値Th1を超えて低下している2つ以上の通信リンクの交点C1を演算する交点演算処理を実行する。次に、ノードはステップS708に進む。
【0096】
ステップS708において、ノードは、ステップS702において受信したパケットの通信リンクの宛先ノードである自ノードの位置と送信ノードの位置とを接続する直線が、交点C1を中心にした半径R1の範囲を横切るか否かを判定する。自ノードの位置と送信ノードの位置とを接続する直線が、交点C1を中心にした半径R1の範囲を横切る場合(ステップS708:YES)には、ノードはステップS709に進む。自ノードの位置と送信ノードの位置とを接続する直線が、交点C1を中心にした半径R1の範囲を横切らない場合(ステップS708:NO)には、ノードはステップS701に戻る。
【0097】
ステップS709において、ノードは接続先確認状態S3に遷移し、処理を終了する。
【0098】
ステップS710において、ノードは送信状態S1に遷移し、処理を終了する。
ステップS711において、ノードはステップS702において受信したパケットの通信リンクに対する通信品質情報を通信品質情報記憶部162に記憶する。次に、ノードはステップS701に戻る。
【0099】
(ノードNの接続先確認状態S3の動作例)
図8は、ノードの状態が接続先確認状態S3である場合のノード動作の一例を示すフローチャートである。
【0100】
ステップS801において、ノードは、無線接続が確立されている通信リンクの通信品質状態を確認する動作を実行する。次に、ノードはステップS802に進む。
【0101】
ステップS802において、ノードは、ステップS801において確認された通信品質状態によって示される通信品質が、あらかじめ定められた通信品質よりも低いか否かを判定する。ステップS801において確認された通信品質が、あらかじめ定められた通信品質よりも低い場合(ステップS802:YES)には、ノードはステップS803に進む。ステップS801において確認された通信品質が、あらかじめ定められた通信品質以上の場合(ステップS802:NO)には、ノードはステップS807に進む。
【0102】
ステップS803において、ノードは、通信データが送信されるべき宛先ノードへのルート探索を開始する。ルート探索は、AODVルーティングプロトコル等の任意の既知の方法によって実行されることが可能である。次に、ノードはステップS804に進む。
【0103】
ステップS804において、ノードは、ステップS803におけるルート探索によって選択されたルートによって、ノードの記憶部160のルーティングテーブルを更新する。次に、ノードはステップS805に進む。
【0104】
ステップS805において、ノードは自ノードに送信要求が発生しているか否かを判定する。自ノードに送信要求が発生している場合(ステップS805:YES)には、ノードはステップS806に進む。自ノードに送信要求が発生していない場合(ステップS805:NO)には、ノードはステップS807に進む。
【0105】
ステップS806において、ノードは送信状態S1に遷移し、処理を終了する。
【0106】
ステップS807において、ノードは送信休止状態S2に遷移し、処理を終了する。
【0107】
(無線通信システムの動作フローの一例)
以上説明してきた無線通信装置100の動作に基づいて、
図2において、無線通信システム1000の全体の動作フローの一例について説明する。
図2は、送信休止状態S2にあるノードN6に送信要求が発生し、ノードN6が、送信状態S1、送信休止状態S2、接続先確認状態S3、送信休止状態S2の順番に状態が遷移する動作の詳細を示す図である。なお、
図2においては、通信リンクL14およびL25においてあらかじめ定められた値を超えて、通信品質が劣化した場合を想定している。
なお、ネットワーク構成は
図1を参照して説明する。
【0108】
ステップS201において、ノードN6は送信要求が発生した通信データをパケットとして、送信要求情報によって指定される宛先ノードであるノードN1に送信する。次に、ノードN6はステップS202に進む。
【0109】
ステップS202において、ノードN6はステップS201において送信したパケットの応答パケットをノードN1から受信する。応答パケットはACKまたはNACK等のパケットであり、通信品質情報が含まれているので、ノードN6は通信リンク情報と当該通信品質情報を対応付けて通信品質情報記憶部162に記憶する。次に、伝送すべき通信データが無くなったノードN6は送信休止状態S2に遷移する。
【0110】
ステップS202において、ノードN6からパケットを受信したノードN1は、パケットの受信が成功したのでACKをパケットの送信ノードであるノードN6に送信する。ノードN6から受信したパケットのヘッダ部PHに含まれる送信ノードのIDと宛先ノードのIDとからリンクを特定し(L16)、当該ヘッダ部PHに含まれる通信品質情報から当該リンクの通信品質を取得する。特定された通信リンクが通信品質情報記憶部162に記憶されていないあらたなリンクである場合には、当該特定された通信リンクと通信品質情報が対応付けられて、通信品質情報記憶部162に記憶される。また、特定された通信リンクが通信品質情報記憶部162にすでに記憶されている通信リンクである場合には、特定された通信リンクに対応する通信品質情報の瞬時値を書き換えて更新する。また、書き換えられた通信品質情報の瞬時値が通信品質情報の平均値に比べてあらかじめ定められた値を超えて劣化していない場合には、次の処理を実行する。すなわち、特定された通信リンクに対応する通信品質情報の平均値を、当該通信リンクの通信品質情報に加えて演算し直し、演算し直した平均値を通信品質情報の平均値として書き換えて更新する。なお、平均値の演算方法は、データの合計値をデータ数で割った相加平均、相乗平均、調和平均、中央値等の任意の演算方法を無線通信システム1000は採用することが可能である。次に、伝送すべき通信データが無くなったノードN6は送信休止状態S2に遷移する。
【0111】
ステップS203において、ノードN1に送信要求が発生し、ノードN1は送信要求に係わる通信データを含むパケットをノードN4に送信する。次に、ノードN1はステップS204に進む。
【0112】
ステップS204において、ノードN1はステップS203において送信したパケットの応答パケットをノードN4から受信する。なお、ノードN6はステップS203およびステップS204で送受信されるパケットを傍受することが可能である場合がある。
【0113】
ステップS205において、ノードN2に送信要求が発生し、ノードN2は送信要求に係わる通信データを含むパケットをノードN5に送信する。次に、ノードN2はステップS206に進む。
【0114】
ステップS206において、ノードN2はステップS205において送信したパケットの応答パケットをノードN5から受信する。なお、ノードN6はステップS205およびステップS206で送受信されるパケットを傍受することが可能である場合がある。
【0115】
ステップS206とステップS207との間で、
図1に示すように障害物O1が
図1の位置に侵入してきた場合を想定する。
【0116】
ステップS207において、ノードN1に送信要求が発生し、送信要求に係わる通信データを含むパケットをノードN4に送信する。通信リンクL14の一部が障害物O1によって遮断され、通信品質が劣化するが、ノードN4が送信したパケットはノードN4に受信されるものとする。ノードN4は、受信したパケットの通信品質を通信品質測定部132aにおいて測定し、測定した通信品質情報を含むパケットを生成する。次に、ノードN4はステップS208に進む。
【0117】
ステップS208において、ノードN1はステップS207において送信したパケットの応答パケットをノードN4から受信する。なお、ノードN6はステップS207およびステップS208で送受信されるパケットを傍受しているものとする。
【0118】
具体的には、ステップS209において、ノードN6は、ステップS208で送受信されたパケットに含まれている通信品質情報および通信リンク情報を傍受し、ノードN6は通信リンク情報と当該通信品質情報を対応付けて通信品質情報記憶部162に記憶する。
【0119】
ステップS210において、ノードN2に送信要求が発生し、ノードN2は送信要求に係わる通信データを含むパケットをノードN5に送信する。通信リンクL25の一部が障害物O1によって遮断され、通信品質が劣化するが、ノードN2が送信したパケットはノードN5に受信されるものとする。ノードN5は、受信したパケットの通信品質を通信品質測定部132aにおいて測定し、測定した通信品質情報を含むパケットを生成する。次に、ノードN5はステップS211に進む。
【0120】
ステップS211において、ノードN2はステップS210において送信したパケットの応答パケットをノードN5から受信する。なお、ノードN6はステップS210およびステップS211で送受信されるパケットを傍受しているものとする。
【0121】
具体的には、ステップS212において、ノードN6は、ステップS211で送受信されたパケットに含まれている通信品質情報および通信リンク情報を傍受し、ノードN6は通信リンク情報と当該通信品質情報を対応付けて通信品質情報記憶部162に記憶する。ノードN6の遮断検出部140は、通信リンクL14と通信リンクL25の2つの通信リンクの通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化していることを検出する。そして、
図1に示すように、通信リンクL61の通信品質が劣化している可能性を遮断位置推定部150が判定する。したがって、ノードN6は送信休止状態S2から接続先確認状態S3に遷移する。次に、ノードN6はステップS213に進む。
【0122】
ステップS213において、ノードN6は、通信品質が劣化している可能性がある通信リンクL61の通信品質を確認するために、ペイロード領域PP無し、または、ペイロード領域PPに所定のパターンを書き込んだパケットをノードN1に送信する。ノードN1は、受信したパケットの通信品質を通信品質測定部132aにおいて測定し、測定した通信品質情報を含むパケットを生成する。所定のパターンは、無線通信システム1000においてあらかじめ定められることが可能である。また、ペイロード領域PPに通信データが含まれていてもよい。次に、ノードN1はステップS214に進む。
【0123】
ステップS214において、ノードN6はステップS213において送信したパケットの応答パケットをノードN1から受信する。ノードN6は受信されたパケットに含まれている通信品質情報を抽出し、抽出した通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化している場合には、新たな接続先を探索する。ノードN6は、接続先確認状態S3において、新たな接続先を探索するために、既知のルーティング手法を実行する。その結果、ノードN6が、中継ノードとしてノードN3を探索した場合には、ステップS215に進む。
図1に示すように、障害物O1を避けるように、通信リンクL63、通信リンクL31が確保可能であることが、ノードN6は既知のルーティング手法によって認識可能である。この場合に、ノードN3は上述したように中継ノードとして機能することが可能である。
【0124】
ステップS215において、ノードN6は探索した中継ノードとしてのノードN3にパケットを送信する。
【0125】
ステップS216において、ノードN6が送信したパケットを受信したノードN3は、ノードN3が記憶するルーティングテーブルにしたがって、当該パケットをノードN1に送信する。なお、ルーティングテーブルはノードN6のルーティング動作時に経路上の各ノードの記憶部に形成されることが可能である。
【0126】
ステップS217において、ノードN3からパケットを受信したノードN1は、当該パケットの応答パケットをノードN3に送信する。
【0127】
ステップS218において、ノードN1から応答パケットを受信したノードN3は受信した応答パケットを、ノードN3が記憶するルーティングテーブルにしたがって、ノードN6に送信する。ノードN3から応答パケットを受信したノードN6は、応答パケットのヘッダ部に含まれる通信品質情報を抽出する。通信リンクL63および通信リンクL31の通信品質があらかじめ定められた値以上である場合には、ノードN6はノードN3との通信リンクを確立して、送信休止状態S2に遷移する。
【0128】
(変形例1)
以上の実施形態の説明では、通信品質測定部が測定する通信品質は、パケットPのヘッダ部PHに含まれるRSSI(Received Signal Strength Indicator)情報に限定されるわけではない。通信品質測定部が測定する通信品質情報は、RSSI情報に限られず、通信品質を比較可能に表現できる情報であれば、任意の情報を通信品質測定部は通信品質情報として測定することが可能である。例えば、上述したBERの他にも、PER(Packet Error Rate)、SNR(Signal to Noise Ration)、RCPI(Received Channel Power Indicator)等の情報が含まれてもよい。通信品質測定部は、測定した情報を、ヘッダ部PHの通信品質情報領域PHQに書き込むが、通信品質情報領域PHQの種類は、あらかじめ無線通信システム1000において決定されていてもよい。または、通信品質情報領域PHQのあらかじめ定められた領域、または、パケットPの誤り検出符号領域PCを除くあらかじめ定められた領域に、通信品質情報の種類を示す識別子が書き込まれていてもよい。通信品質情報の種類を示す識別子を通信品質情報識別子と称すると、通信品質情報識別子は、RSSIの種類、BER、PER、SNR、RCPI等の通信品質情報を区別して認識できるように示された任意の文字情報である。
【0129】
(変形例2)
以上の実施形態の説明では、通信品質情報記憶部162に記憶される情報、および、通信リンクの劣化または遮断を検出するために使用する情報は、通信品質情報の平均値と瞬時値であったが、これらの情報に限定されるわけではない。例えば、通信品質情報記憶部162に記憶される情報を、あらかじめ定められた時間前の瞬時値と、最新、好ましくは現時点の瞬時値であってもよい。通信リンクの劣化または遮断は、あらかじめ定められた時間前の瞬時値と現時点の瞬時値を比較することによって検出されることも可能である。また、あらかじめ定められた時間前の瞬時値は、前回測定された値であってもよい。なお、あらかじめ定められた時間は、無線通信システム1000によって任意の時間に設定されることが可能である。
【0130】
(変形例3)
以上の実施形態の説明では、通信品質情報記憶部162に記憶される通信品質情報は、例えば、他ノード間のパケットを傍受することによって取得される場合と、自ノード宛てのパケットを受信することによって取得される場合について説明した。しかし、通信品質情報の取得方法は、これらの場合に限定されるわけではない。例えば、各ノード、または、ネットワーク内に配置される制御ノードが、通信品質情報をブロードキャストすることによって、ネットワーク内のすべてのノードがすべての通信リンクの通信品質情報を取得することも可能である。この場合のブロードキャストされる情報は、ミリ波帯以外の周波数帯でブロードキャストされることも可能である。例えば、ブロードキャストされる情報は、ミリ波帯よりも周波数が低い周波数帯であればよく、マイクロ波帯で当該情報がブロードキャストされてもよい。
【0131】
(変形例4)
以上の実施形態の説明では、無線通信システム1000においてパケットの送受信に使用される周波数帯はミリ波帯を中心に説明したが、パケットの送受信に使用される周波数帯はミリ波帯に限定されるわけではない。例えば、直進性が高く、見通し伝送路が比較的容易に遮断される可能性がある周波数帯を、パケットの送受信に使用される周波数帯とすることも可能である。例えば、パケットの送受信に使用される周波数帯に、近赤外線、中赤外線、遠赤外線を含む赤外線の周波数帯、可視光の周波数帯、テラヘルツ波の周波数帯を使用することも可能である。
【0132】
(変形例5)
以上の実施形態の説明では、各ノードのノード位置記憶部161に記憶されるノードの位置情報は適切な点を原点とした2次元デカルト座標系であるが、位置情報は任意の形態で表現されることが可能である。例えば、位置情報は極座標を含む地理座標系、投影座標系、鉛直座標系のような任意の座標系で表現されることが可能である。
【0133】
(変形例6)
以上の実施形態の説明では、各ノードのノード位置記憶部161に記憶されるノードの位置情報はネットワークを構築する時に、あらかじめノード位置記憶部161に記憶されてもよい。また、各ノードは、受信した電波強度を用いた三点測位等の任意の測位方法によって自ノードの位置を演算し、演算された自ノード位置を他ノードに通知することによって、各ノードが自ノードを含むネットワーク内の他ノードの位置を記憶することも可能である。
【0134】
(変形例7)
以上の実施形態の説明では、各ノードはパケットの送信ノード情報および宛先ノード情報を当該パケットのヘッダ部PHの送信ノード情報領域PHSおよび宛先ノード情報領域PHRから取得するように説明した。しかし、各ノードはパケットの送信ノード情報および宛先ノード情報を、各ノードが使用する通信チャネル情報から取得することも可能である。
【0135】
例えば、無線通信システム1000において、FDMA(Frequency Division Multiple Access)が使用されている場合には、各ノードは以下のように送信ノード情報および宛先ノード情報を識別可能である。すなわち、各ノードはパケットの送受信に使用された周波数チャネルから通信リンクを識別できるので、各ノードは、識別された通信リンクから送信ノード情報および宛先ノード情報を識別し、記憶することが可能である。
【0136】
また、例えば、無線通信システム1000において、TDMA(Time Division Multiple Access)が使用されている場合には、各ノードは以下のように送信ノード情報および宛先ノード情報を識別可能である。すなわち、各ノードはどの送信タイミングがどのノードに割り当てられているかを認識可能であるので、送信タイミングから通信リンクを特定することが可能になる。
【0137】
また、例えば、無線通信システム1000において、CDMA(Code Division Multiple Access)が使用されている場合には、各ノードは以下のように送信ノード情報および宛先ノード情報を識別可能になる場合がある。例えば、CDMAに使用される符号系列が各ノードまたは各通信リンクと対応付けられている場合には、各ノードは使用された符号系列から送信ノード情報および宛先ノード情報を識別可能になる。
【0138】
なお、本実施形態に係わる無線通信システムには、各無線通信装置の送受信タイミングを制御するコントローラが存在する場合と存在しない場合がある。例えば、コントローラが存在しない場合には、無線通信システムはCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)等のプロトコルを採用する。
【0139】
(変形例8)
以上の実施形態の説明では、遮断検出部140は傍受した通信リンクの通信品質情報に基づいて、遮断検出を実行していたが、遮断検出部140は自ノードが受信した通信品質情報に基づいて、遮断検出を実行することも可能である。すなわち、通信品質情報記憶部162には、自ノードが含まれる通信リンクについての通信品質情報も記憶され、遮断検出部140が、当該通信リンクを検出対象に加えることも可能である。
【0140】
(比較例1)
図10に本実施形態に対する従来の比較例1を模式的に示す。
【0141】
図10において、準固定端末7と基地局5を有する通信システム1において、準固定端末7と基地局5は、通信相手の方向および通信相手に対応したアンテナの指向性の方向および指向性を設定する位相情報を記憶する記憶部を含む。また、準固定端末7と基地局5は、アンテナの指向性を設定する制御部も含む。準固定端末7は、基本的に宅内やオフィス内や公共の場所等の固定的な場所に設置されるものである。「準固定端末」という語における「準固定」の意味は、いつでも移動させることができるが、移動の頻度は相対的に低いことを意味する。例えば、準固定端末7は、据置型のサーバーコンピュータや、デスクトップコンピュータや、PC周辺機器(プリンタ、スキャナ、複合機、カメラなど)や、各種の家電製品や、主に据え置いて使用されるIoT機器などが挙げられる。
【0142】
準固定端末7と基地局5間の無線通信において、通信相手に対応したアンテナの指向性の方向を記憶する。
【0143】
準固定端末7は、記憶された通信相手と通信を開始する場合に、ビームサーチを実行することなく、記憶されたアンテナの指向性の方向を、アンテナに対して設定し、無線通信を実行する。
【0144】
このように、準固定端末7と基地局5間の無線通信において、ビームサーチの実行を省略することが可能になるので、準固定端末7と基地局5の接続時の高速化、及び、低消費電力化を図ることが可能になる。すなわち、ビームフォーミング制御に関する効率を向上することが可能になる。なお、移動端末9との無線通信においては、ビームサーチが従来通り必要になる場合がある。
【0145】
しかし、準固定端末7と基地局5間の無線通信環境に遮蔽等の大きな変化があった場合には、通信品質が低下する可能性がある。比較例1では、通信相手に対応してあらかじめ定められた記憶された指向性の方向を設定して無線通信を実行する構成である。したがって、人体の移動に伴う遮蔽等によって発生する動的な無線通信環境の変化に対しては、比較例1のビームフォーミング制御に関する効率を向上させることができない場合がある。
【0146】
(比較例2)
図11に本実施形態に対する従来の比較例2を模式的に示す。
【0147】
図11において、複数の無線ポートを有する無線基地局と無線端末との通信が開示されている。無線基地局は、ある無線ポートと無線端末との間の見通し線の遮断またはその前兆を検出し、無線ポートを切り替えるか、複数の無線ポートからの無線信号を適切に合成するダイバーシティ機能を有することが開示されている。
【0148】
図11における比較例2では、人体などが見通し線を遮断することによって発生する基地局と無線端末との間の通信品質の劣化を補償可能な構成となっている。
【0149】
しかし、比較例2は、ミリ波帯等の高周波数帯域の無線通信システムに対して適用することが困難であるという課題を有する。引例2では、遮断を検出することによって、使用する無線ポートを切り替え、アンテナダイバーシティによって無線信号品質の改善効果を得るためには、無線ポートから基地局に無線信号を伝送する必要がある。しかし、マイクロ波帯等の無線信号の場合には、同軸ケーブル等によって無線ポートから基地局に無線信号を伝送することも可能であるが、ミリ波帯等の無線信号の場合には、同軸ケーブルの減衰が非常に大きいために長距離伝送が困難になる。
【0150】
また、無線ポートと無線端末が電波の送受信を休止している場合には、遮断を検出することが困難となる。ある無線ポートと無線端末との間の見通し線の遮断またはその前兆を検出するためには、伝送経路の伝送状況を測定する必要があるので、無線ポートと無線端末が電波の送受信を休止している場合には、遮断を検出できないことになる。この現象を解消するためには、常時あるいは定期的に電波を送信し続ける必要があるので、無線ポートおよび無線端末の消費電力が増大することが懸念される。
【0151】
(比較例3)
図12に本実施形態に対する従来の比較例3を模式的に示す。
【0152】
図12において、ヘッドマウントディスプレイを例とする無線通信装置と、無線通信装置の相手となる通信相手が存在し、ヘッドマウントディスプレイは環境の画像を取得する画像取得部を含む。
【0153】
取得した画像情報に基づいて、無線通信装置と通信相手の間の、反射面を経由する電波の通信経路をヘッドマウントディスプレイが特定する。
【0154】
無線通信装置と通信相手の間の通信品質が所定の通信品質より低下した場合、または、電波の遮蔽物が確認された場合に、当該通信経路を画像情報からヘッドマウントディスプレイが特定する。
【0155】
そして、ヘッドマウントディスプレイは取得した画像情報に基づいて、無線通信装置と通信相手の間の通信品質が所定の通信品質を超える通信経路を特定することが可能になる場合がある。したがって、ビームフォーミング技術により、アンテナの指向性の方向をスイープして無線通信品質が高くなる方向を決定する処理に比較して、比較例3は通信品質が高い通信経路の特定に要する時間を短くすることが可能になる場合がある。
【0156】
しかし、比較例3の通信経路を特定する技術は、画像取得および画像処理が必要となるために、装置の構成が複雑となり、かつ、演算負荷が増大してしまうという課題が存在する。
【0157】
以下に、本実施形態の無線通信装置100および無線通信システム1000の特徴について記載する。
【0158】
本発明の第1の態様に係る無線通信装置100は、複数の無線通信装置100によってネットワークが構築されることが好ましい。無線通信装置100は、他ノード宛パケット処理部133を含むことが好ましい。他ノード宛パケット処理部133は、自無線通信装置が宛先となっていない、ネットワーク内で送受信される無線通信パケットを傍受し、無線通信パケットの送信元無線通信装置情報、宛先無線通信装置情報、および、無線通信品質情報を抽出することが好ましい。また、無線通信装置100は、送信元無線通信装置情報、および、宛先無線通信装置情報から通信リンク情報を生成し、通信リンクの無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化しているか否かを検出する遮断検出部140を含むことが好ましい。さらに、無線通信装置100は、2つ以上の通信リンクの前記無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化している場合に、遮断発生領域を推定する遮断位置推定部150を含むことが好ましい。さらに、無線通信装置100は、通信経路を直線で示した場合に当該直線が、遮断発生領域の内側を通過しない通信経路を演算するルーティング演算部170を含むことが好ましい。
【0159】
上記構成によれば、他ノード伝送路の通信品質劣化を傍受し、通信品質が劣化した領域を推定し、当該領域を横切る自ノード伝送路の替わりの新たな接続先を低電力および低遅延で探索可能な無線通信装置等を提供することが可能となる。
【0160】
本発明の第2の態様に係る無線通信装置100は、通信リンクが確立されている通信経路であって、通信経路を直線で示した場合に当該直線が遮断発生領域に含まれる場合には、通信経路の無線通信品質を測定する通信品質測定部132aを含むことが好ましい。通信品質測定部132aが測定し無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化している場合には、ルーティング演算部170が、無線通信品質があらかじめ定められた値を満たす、宛先無線通信装置への新たな通信経路を探索することが好ましい。
【0161】
上記構成によれば、他ノード伝送路の通信品質劣化を傍受し、通信品質が劣化した領域を推定し、当該領域を横切る自ノード伝送路の替わりの新たな接続先を低電力および低遅延で探索することが可能となる。
【0162】
本発明の第3の態様に係る無線通信装置100の遮断発生領域は、無線通信品質があらかじめ定められた値を超えて劣化した通信リンクを直線で示し、直線で示した2つの通信リンクの交点を中心点とし、中心点から半径R1の範囲内とすることが好ましい。
【0163】
上記構成によれば、他ノード伝送路の通信品質劣化を傍受し、通信品質が劣化した領域の中心を傍受した通信リンクの交点と推定することによって、当該領域を適切に特定することが可能になる。また、2つ以上の通信リンクの通信品質が劣化した場合にも、上記構成によって、それぞれの交点を通信品質が劣化した領域の中心と推定することによって、当該領域を適切に特定することが可能になる。
【0164】
本発明の態様に係る無線通信装置100の半径R1は、使用する周波数帯域、および、通信品質が劣化した通信リンク間の距離を含む変数に基づいて決定されるフレネルゾーン半径、並びに、想定される障害物の最大幅を加算した値であることが好ましい。
【0165】
上記構成によれば、推定された通信品質が劣化した領域の中心から、使用周波数帯域、通信リンク間距離を考慮して、フレネルゾーン半径を推定するので、適切な通信品質劣化領域を推定することが可能になる。さらに、想定される障害物の最大幅を考慮するので、より適切な通信品質劣化領域を推定することが可能になる。
【0166】
本発明の第4の態様に係る無線通信装置100の遮断発生領域を避ける通信経路には、無線通信パケットを中継する無線通信装置100が含まれることが好ましい。
【0167】
上記構成によれば、通信品質が劣化した領域を推定し、当該領域を横切る自ノード伝送路の替わりの新たな接続先には、中継ノードを含むことが可能になるので、直接通信が困難な場合にも、適切な通信経路を探索することが可能となる。
【0168】
本発明の第5の態様に係る無線通信装置100は、ネットワーク内に配置されるすべての無線通信装置の位置情報をあらかじめ記憶するノード位置記憶部161を含むことが好ましい。また、無線通信装置100の起動時には、少なくとも3つの無線通信装置の位置情報が記憶されており、無線通信装置の動作中に、ネットワーク内のその他の無線通信装置の位置情報がノード位置記憶部161に記憶されることが好ましい。
【0169】
上記構成によれば、ネットワーク内に基準となる固定無線通信装置を設けることによって、その他の無線通信装置の位置情報も適切に記憶部に記憶することが可能になる。
【0170】
本発明の第6の態様に係る、少なくとも3つの無線通信装置以外のネットワーク内の無線通信装置100は、以下の動作によって自無線通信装置の位置情報を取得し、ネットワーク内の他の無線通信装置に自無線通信装置の位置情報を通知することが好ましい。当該動作は、少なくとも3つの無線通信装置との無線通信における無線強度、無線強度から演算される無線送受信する無線通信装置間の距離、および、少なくとも3つの無線通信装置の位置情報から、自無線通信装置の位置情報を取得することが好ましい。
【0171】
上記構成によれば、ネットワーク内に基準となる固定無線通信装置を設けることによって、その他の無線通信装置の位置情報も無線通信装置の動作中に適切に演算、取得し、相互に通知し、ネットワーク内の無線通信装置が相互に位置情報を記憶可能になる。
【0172】
本発明の態様に係る無線通信装置100が送受信する無線通信パケットは、ミリ波帯、赤外線周波数帯、可視光周波数帯、テラヘルツ周波数帯の少なくとも1つの周波数帯で送受信されることが好ましい。
【0173】
上記構成によれば、無線通信装置100が高周波数帯域の周波数を使用している場合に、見通し経路に遮断が発生した場合には、通信品質が大きく劣化する可能性が高くなる。このような場合に、本実施形態によれば、他ノード伝送路の通信品質劣化を傍受し、通信品質が劣化した領域を推定し、当該領域を横切る伝送路の替わりの新たな接続先を適切に探索することが可能となる。
【0174】
本発明の態様に係る無線通信装置100の無線通信パケットのヘッダ部のMCSの種類とペイロード部のMCSの種類とは異なることが好ましい。
【0175】
上記構成によれば、無線通信パケットのヘッダ部のMCSに、ペイロード部のMCSの種類とは異なるMCSを使用可能とすることで、ヘッダ部を適切に復調する可能性が高まるので、通信品質劣化領域を適切に推定することが可能になる。
【0176】
本発明の第7の態様に係る無線通信システム1000は、第1の態様から第6の態様のいずれかの無線通信装置100を複数含むネットワークが車両に配置され、遮断発生領域において想定される障害物には車両の乗員が含まれることが好ましい。
【0177】
上記構成によれば、他ノード伝送路の通信品質劣化を傍受し、通信品質が劣化した領域を推定し、当該領域を横切る自ノード伝送路の替わりの新たな接続先を低電力および低遅延で探索可能な無線通信装置、および、無線通信システムを提供することが可能となる。
【0178】
上述した実施形態の説明に用いた
図5のブロック構成図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックを実現する方法は、特に限定されない。例えば、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的または間接的に接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、1つの装置または複数の装置に、ソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0179】
無線通信装置100が、複数のハードウェア要素で構成される場合、各機能ブロックは、何れかのハードウェア要素、又は当該ハードウェア要素の組み合わせによって実現される。ハードウェア要素として、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信装置、入力装置、出力装置、バスなどが挙げられる。
【0180】
また、この場合、無線通信装置100の各機能は、プロセッサ、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェアまたはプログラムを読み込ませることによって実現される。具体的には、各機能は、ハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、プロセッサが演算を行い、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みを制御することによって実現される。
【0181】
実施形態につき、図面を参照して詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0182】
100 無線通信装置
110 信号処理部
120 送信情報処理部
130 受信情報処理部
140 遮断検出部
150 遮断位置推定部
160 記憶部
170 ルーティング演算部
180 外部I/F部
1000 無線通信システム