特許 7553327 接合部材

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-09-09

(45)【発行日】2024-09-18

(54)【発明の名称】接合部材

(51)【国際特許分類】

   E06B 11/02 20060101AFI20240910BHJP

   E04B 1/58 20060101ALI20240910BHJP

   E04H 17/14 20060101ALI20240910BHJP

   F16B 7/18 20060101ALI20240910BHJP

【ＦＩ】

E06B11/02 R

E04B1/58 503F

E04H17/14 102Z

F16B7/18 A

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2020185240

(22)【出願日】2020-11-05

(65)【公開番号】P2022076503

(43)【公開日】2022-05-20

【審査請求日】2023-08-10

(73)【特許権者】

【識別番号】000231110

【氏名又は名称】ＪＦＥ建材株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000958

【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所

(74)【代理人】

【識別番号】100120237

【弁理士】

【氏名又は名称】石橋 良規

(72)【発明者】

【氏名】岡 恵奈

(72)【発明者】

【氏名】米山 貴浩

【審査官】野尻 悠平

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１７－０１４７３１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１１－１６９００６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１９０４９３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００２－２１３０２６（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開平０２－０４７３９３（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０６Ｂ １１／００－１１／０８

Ｅ０４Ｂ １／３８－１／６１

Ｅ０４Ｈ １７／００－１７／２６

Ｆ１６Ｂ ７／００－７／２２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

所定の長さを有する一対の山形鋼を接合する接合部材であって、
前記山形鋼の一辺を鉛直方向に挟持する挟持部と、前記挟持部の一端から前記山形鋼の他辺に沿って延びる補強部とを備え、
前記山形鋼は、門扉の枠体に用いられ、
前記枠体の幅調整に用いられることを特徴とする接合部材。

【請求項2】

請求項１に記載の接合部材において、
前記挟持部は、前記山形鋼の一辺の上面に接する上片と、前記山形鋼の一辺の下面に接する下片とを備え、
前記上片及び下片を連結する接合手段を備えることを特徴とする接合部材。

【請求項3】

請求項２に記載の接合部材において、
前記下片と前記補強部は連続していることを特徴とする接合部材。

【請求項4】

請求項２又は３に記載の接合部材において、
前記上片は、前記下片と連続していることを特徴とする接合部材。

【請求項5】

請求項１から４のいずれか１項に記載の接合部材において、
前記補強部は、前記山形鋼の他辺の断面方向長さと略同一又は断面方向の長さよりも短いことを特徴とする接合部材。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、組立式門扉の枠体などを構成する山形鋼の幅寸法を調整するために用いられる接合部材に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、山形鋼（断面がＬ字形状となる所謂アングル材）は、種々の構造物に用いられている。例えば、図７に示すように、組立式門扉やフェンスの枠体などに好適に用いられている。組立式門扉１００は、基礎６に立設された支柱５の間に開閉自在に取り付けられており、山形鋼３からなる一対の縦枠及び一対の横枠からなる枠体２と、枠体２内に組付けられた金網などからなるパネル本体４が取付けられ、枠体２の補強用に対角線上にブレース部材２０が取付けられている。このようや組立式門扉やフェンスは、予め工場などで組み立てたものを施工現場に持ち込み、施工されている。

【0003】

しかし、予め工場で門扉やフェンスを組み立てる方法によると、施工現場で既製品を持ち込んで施工する際、支柱の間隔が施工現場の状態に応じて変動する可能性があり、これに対応するために幅詰めなどの調整をする必要が生じる場合がある。

【0004】

このような幅詰めの方法としては、種々の方法が知られており、例えば、特許文献１に記載されているように、門扉を施錠する際に、固定側の門柱や門扉の前後幅に合わせて、回動側の門扉に取り付けられる二個一対の施錠源の間隔を容易に拡縮することができる門扉が知られている。

【0005】

このような門扉によれば、固定側の門柱や門扉の前後幅に対応した施錠片をそれぞれ作成する必要がなくなり、支柱間隔に応じた調整を行う事ができると供に、部品点数を抑えることができる。

【0006】

また、特許文献２に記載されているように、左右の縦枠と上下の横枠とにより形成された枠体と、当該枠体に取り付けられたパネル本体とを備え、枠体は、長手方向に沿ってパネル本体の幅端部が挿入される溝部を備え、横枠の幅寸法は、パネル本体の幅寸法よりも長く、かつ、パネル本体の幅寸法に対してパネル本体の両側端部が溝部に挿入された状態で取り得る横方向の可動幅との差は、横枠の幅寸法と可動幅との差より大きい門扉パネルが知られている。

【0007】

このような門扉パネルによれば、門扉パネルの幅詰め作業の際に、一方の縦枠を外し、所定の位置で横枠とパネル本体を面一に切断しても、不具合なく縦枠を取り付け直して門扉パネルを組み立てることができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【文献】特開２００７－３０８９２７号公報

【文献】特開２０１８－３３０２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

しかしながら、従来の幅詰め方法によると、既製品を用いているため、幅詰めの調整幅が少なく、施工現場の状態に応じて柔軟に幅調整を行うことができないという問題があった。

【0010】

そこで本発明は、上記問題点に鑑みてされた発明であり、門扉やフェンスなど、山形鋼を用いた枠体の幅寸法の調整をより容易に行うことができ、幅寸法の調整幅も、幅詰めといった幅寸法を短くすることのみならず、幅寸法を広く確保することができる幅調整用の接合部材を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0011】

本発明に係る接合部材は、所定の長さを有する一対の山形鋼を接合する接合部材であって、前記山形鋼の一辺を鉛直方向に挟持する挟持部と、前記挟持部の一端から前記山形鋼の他辺に沿って延びる補強部とを備え、前記山形鋼は、門扉の枠体に用いられ、前記枠体の幅調整に用いられることを特徴とする。

【0012】

また、本発明に係る接合部材において、前記挟持部は、前記山形鋼の一辺の上面に接する上片と、前記山形鋼の一辺の下面に接する下片とを備え、前記上片及び下片を連結する接合手段を備えると好適である。

【0013】

また、本発明に係る接合部材において、前記下片と前記補強部は連続していると好適である。

【0014】

また、本発明に係る接合部材において、前記上片は、前記下片と連続していると好適である。

【0015】

また、本発明に係る接合部材において、前記補強部は、前記山形鋼の他辺の断面方向長さと略同一又は断面方向の長さよりも短いと好適である。

【0017】

上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。

【発明の効果】

【0018】

本発明に係る接合部材は、山形鋼の一辺を鉛直方向に挟持する挟持部と、挟持部の一端から山形鋼の他辺に沿って延びる補強部とを備えるので、山形鋼を所定の長さに切断した後、これらを接合することで、容易に山形鋼の幅寸法の調整を行うことができる。また、鉛直方向に沿って延びる補強部を備えているので、山形鋼の接合箇所に自重等により鉛直方向の荷重が加わった場合であっても、接合箇所が座屈や破断することを防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】本発明の実施形態に係る接合部材を用いて幅調整を行った組立式門扉の斜視図。

【図2】本発明の実施形態に係る接合部材によって接合された状態を説明するための拡大図。

【図3】本発明の実施形態に係る接合部材の側面図。

【図4】本発明の実施形態に係る接合部材の変形例を示す側面図。

【図5】本発明の実施形態に係る接合部材の連結部の構成を説明するための拡大図。

【図6】本発明の実施形態に係る接合部材を用いた幅調整方法を説明するための工程図。

【図7】従来の組立式門扉の構成を示す斜視図。

【発明を実施するための形態】

【0020】

以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。

【0021】

図１は、本発明の実施形態に係る接合部材を用いて幅調整を行った組立式門扉の斜視図であり、図２は、本発明の実施形態に係る接合部材によって接合された状態を説明するための拡大図であり、図３は、本発明の実施形態に係る接合部材の側面図であり、図４は、本発明の実施形態に係る接合部材の変形例を示す側面図であり、図５は、本発明の実施形態に係る接合部材の連結部の構成を説明するための拡大図であり、図６は、本発明の実施形態に係る接合部材を用いた幅調整方法を説明するための工程図である。

【0022】

図１に示すように、本実施形態に係る組立式門扉１は、地面に打設された基礎６に固定された支柱５が所定の間隔で配置され、該支柱５の間に門扉４０が開閉自在に取り付けられている。

【0023】

門扉４０は、支柱５の軸方向に沿って取付けられたヒンジ４１を介して開閉自在に取付けられている。また、門扉４０は、山形鋼３からなる一対の縦枠及び横枠を有する枠体２と、当該枠体２内に取り付けられる門扉本体４と、枠体２の対角線上に配置される一対のブレース部材２０とを有している。枠体２の互いに交差する縦枠と横枠は、互いに略直交するように溶接されている。

【0024】

山形鋼３は、断面Ｌ字状の鋼材であって、図２に示すように、互いに略直交に交差する上辺３ａ及び下辺３ｂを有している。また、門扉本体４は、金網やメッシュ材並びに多孔材など種々の材料を用いることが可能であり、耐風性や耐久性を考慮して適宜選択することができる。

【0025】

さらに、図１に示すように、ブレース部材２０は、棒状部材であって、枠体２の幅又は高さ寸法が大きい場合に枠体２の補強のために取り付けられている。したがって、枠体２自体が十分な剛性を有していれば、ブレース部材２０は取り付けずに施工しても構わない。

【0026】

また、門扉４０は、縦枠同士を連結するように地面と略平行に配置される補強板７を有している。また、補強板７には、門扉４０を開閉する際の操作部となる取手８が取り付けられており、補強板７の延設方向に沿って移動可能なカンヌキ９が取付けられ、当該カンヌキ９を支柱５側に移動することで門扉４０と支柱５とを連結して施錠することができる。

【0027】

枠体２の横枠及び補強板７は、支柱５の間隔に合わせて切断され、切断部を接合部材１０，３０によって連結されている。図２に示すように、切断された横枠である山形鋼３を連結する接合部材１０は、山形鋼３の水平方向に延びる上辺３ａを鉛直方向に挟持する挟持部１１と、挟持部１１の一端から山形鋼３の下辺３ｂに沿って延びる補強部１２とを備えており、挟持部１１を貫通するように接合手段１３によって接合されている。接合手段１３は、接合部材１０を枠体２に取り付けることができれば、種々の構成を採用可能であるが、例えば、ボルト及びナットを用いると好適である。

【0028】

図３に示すように、接合部材１０の挟持部１１は、互いに平行に延びる上片１１ａ及び下片１１ｂ並びに、上片１１ａ及び下片１１ｂの一端を連結する連続部１１ｃを有する略Ｕ字状に形成されており、補強部１２は、下片１１ｂの他端から挟持部１１と略直交する方向に延設されている。

【0029】

挟持部１１の上片１１ａ及び下片１１ｂは、図２に示すように、山形鋼３の上辺３ａを挟持することができるように、山形鋼３の板厚分だけ離間して配置されており、上片１１ａ及び下片１１ｂを貫通するように貫通孔１４が形成されている。当該貫通孔１４には、上述した接合手段１３が組付けられる。

【0030】

また、補強部１２は、下辺３ｂの断面方向の長さと略同一又は下辺３ｂよりも短く形成されている。このように、補強部１２を形成することで、接合部材１０を枠体２に取り付けた際に、枠体２から補強部１２が突出することを防止することができ、接合部材１０の取り付け後の門扉４０の美観を損なうことがない。

【0031】

なお、補強部１２は、接合部材１０を切断した枠体２に取り付けた際に、自重によって鉛直方向に加わる荷重を負荷することができる程度の剛性が必要であり、その長さは切断後の枠体２の長さに応じて適宜変更することができる。

【0032】

また、本実施形態に係る接合部材１０の挟持部１１は、断面略Ｕ字状に形成することに限定されず、山形鋼３の一辺を挟持することができれば、図４に示すように、上片１１ａと下片１１ｂを連結せずに互いに分離した挟持部１１´としても構わない。この場合、連続部１１ｃを曲げ加工する必要がないことから、簡易な加工で挟持部１１´を形成することができる。

【0033】

図５に示すように、補強板７の接合部材３０は、支柱５の間隔に合わせて切断された補強板７を互いに連結することができる板材であり、一対の補強板７に対応して鉛直方向に所定の間隔を隔てて一対取り付けられている。なお、接合部材３０の取り付けは、任意の数の取付ボルト３１によって取り付けられている。

【0034】

なお、接合部材３０は、カンヌキ９の移動の際に干渉しないように補強板７に対応するように所定の間隔を空けて一対取り付けられているが、カンヌキ９の移動に干渉しない位置に取り付けられる場合には、一対の補強板７を一連に連結する一枚板で構成しても構わない。このように一対の補強板７を一連に連結する一枚板で接合部材３０を構成することで、接合部材３０の剛性を向上させることができる。

【0035】

次に、図６を参照して、本実施形態に係る接合部材１０，３０を用いた門扉４０の幅調整方法について説明を行う。

【0036】

本実施形態に係る接合部材１０，３０を用いた門扉４０の幅調整方法は、枠体切断工程（Ｓ１０１）、門扉本体切断工程（Ｓ１０２）、枠体接合工程（Ｓ１０３）並びに補強板接合工程（Ｓ１０４）からなる接合工程（Ｓ１０５）、門扉本体取付工程（Ｓ１０６）及びブレース部材調整工程（Ｓ１０７）とを有している。

【0037】

枠体切断工程（Ｓ１０１）は、支柱５の間隔に合わせて枠体２の横枠を切断する。この際、予め用意した枠体２の横枠の長さが支柱５の間隔よりも長い場合には、切断後の山形鋼３の長さが支柱５の間隔に合うように切断されるが、支柱５の間隔よりも短い場合には、切断後に所定の長さの延長材を準備することで、枠体２の幅方向の短縮及び延長することが可能である。

【0038】

門扉本体切断工程（Ｓ１０２）は、門扉本体４の幅を支柱５の間隔に合わせて切断する。次に、接合工程（Ｓ１０５）によって、枠体切断工程（Ｓ１０１）及び門扉本体切断工程（Ｓ１０２）で切断された枠体２及び門扉本体４の接合を行う。

【0039】

枠体接合工程（Ｓ１０３）は、切断した横枠部分の山形鋼３を互いに突き合わせ、山形鋼３の一辺の上面が上片１１ａに、下面が下片１１ｂと接するように、接合部材１０の挟持部１１を組み付け、貫通孔１４に接合手段１３を締結させて支柱５の間隔に合わせた枠体２となるように幅調整を行う。なお、山形鋼３の長さが支柱５の間隔よりも短い場合には、切断後の山形鋼３と延長材とを接合部材１０によって接合しても構わない。なお、枠体２の接合は、上側の横枠及び下側の横枠の両側について接合部材１０を用いて行われるが、上側及び下側に組付けられる接合部材１０は、天地反転して組み付けることで共用することが可能である。

【0040】

補強板接合工程（Ｓ１０４）は、切断した補強板７を互いに突き合わせ接合部材３０によって互いに接合される。なお、補強板７の長さが支柱５の間隔よりも短い場合には、切断後の補強板７と延長材とを接合部材３０によって接合しても構わない。

【0041】

門扉本体組付工程（Ｓ１０６）は、支柱５の間隔に合わせて組み立てられた枠体２に、門扉本体切断工程（Ｓ１０２）で切断された門扉本体４を組み付ける。門扉本体４の枠体２への取り付けは、従来周知の取付金具を用いても構わないし、枠体２に門扉本体４を溶接などして取り付けても構わない。

【0042】

ブレース部材調整工程（Ｓ１０７）は、幅調整がなされた枠体２の対角線の長さに合わせるようにブレース部材を調整する。その後、対角線長さに合うように調整されたブレース部材２０を枠体２に組み付けて門扉４０を構成する。なお、上述したように、門扉４０にブレース部材を取り付ける必要がない場合には、当該ブレース部材調整工程（Ｓ１０７）は省略しても構わない。

【0043】

このように、本実施形態に係る接合部材１０，３０を用いた門扉の幅調整方法によれば、枠体２や補強板７の切断量を調整することで、幅調整の調整幅を大きくすることができ、施工現場に応じた門扉の幅調整を柔軟に行うことができる。また、施工現場の支柱５の間隔に合わせて門扉４０を作成することができるので、既製品を加工することで幅調整を行い、幅寸法にバリエーションを持たせる必要がないため、製造コストの抑制も図ることができる。

【0044】

なお、以上の実施の形態では、門扉４０は、支柱５の間に一つ取り付けた片開きである場合について説明を行ったが、支柱５の間に門扉４０を一対設けた両開きに構成しても構わない。また、上述した実施の形態では、組立式門扉の門扉４０の幅調整に本実施形態に係る接合部材を用いた場合について説明を行ったが、例えば、山形鋼を用いた部材の幅調整に適用することが可能であり、例えばフェンスの枠体の幅調整に用いても構ない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【符号の説明】

【0045】

１ 組立式門扉
２ 枠体
３ 山形鋼
４ 門扉本体
５ 支柱
６ 基礎
７ 補強板
８ 取手
９ カンヌキ
１０，３０ 接合部材
１１，１１´ 挟持部
１１ａ 上片
１１ｂ 下片
１１ｃ 連続部
１２ 補強部
１３ 接合手段
１４ 貫通孔
２０ ブレース部材
３１ 取付ボルト
４０ 門扉
４１ ヒンジ

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】