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特許7553328医用画像処理装置、医用画像処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20240910BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240910BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20240910BHJP
【FI】
A61B6/46 536Q
A61B6/03 550V
A61B6/03 560C
A61B6/03 560D
A61B6/03 560J
G06F3/0481
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020186707
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076341
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500109320
【氏名又は名称】ザイオソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 純一
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 嘉明
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-325966(JP,A)
【文献】特開2015-217120(JP,A)
【文献】特開2015-096148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0086768(US,A1)
【文献】特開2016-214857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像処理装置であって、
処理部を備え、
前記処理部は、
一回の撮像で得られたシノグラムに基づく被検体を含むボリュームデータを取得し、
前記ボリュームデータの空間を2つ以上の領域に分割し、
少なくとも2つの前記領域に対応したウィンドウ幅及びウィンドウレベルの少なくとも一方を示すウィンドウ情報を取得し、
前記ウィンドウ情報に基づいて、少なくとも2つの前記領域を同時に可視化した断面画像を生成し、
操作を受け付ける操作部と、
前記断面画像を表示する表示部と、を更に備え、
前記処理部は、
前記操作部を介して前記表示部に表示された前記断面画像における画像位置を指定し、
指定された前記画像位置に対応する少なくとも2つの前記領域の境界の輪郭形状を示す情報を前記表示部に表示させ、
前記領域毎に異なる前記ウィンドウ情報が設定されている、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記輪郭形状を示す情報は、輪郭線を含み、
前記処理部は、前記輪郭線の表示の有無を制御する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
少なくとも2つの前記領域は、縦隔領域と肺野領域とを含む、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、異なる再構成に関する再構成情報に基づいて生成された2つ以上の前記ボリュームデータを取得する
請求項1~3のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
記処理部は、
前記操作部を介して前記ウィンドウ情報に関する操作情報を取得し、
前記操作情報に基づいて、前記領域毎に異なる前記ウィンドウ情報を設定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記領域は、肺野の領域又は脳実質の領域を含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、指定された前記画像位置に対応する前記領域の前記ウィンドウ情報を前記表示部に表示させる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記断面画像は、前記断面画像の断面に対して垂直な第1の方向に沿う厚みを有し、
2つ以上の前記領域は、前記第1の方向において異なる領域を含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
一回の撮像で得られたシノグラムに基づく被検体を含むボリュームデータを取得し、
前記ボリュームデータの空間を2つ以上の領域に分割し、
少なくとも2つの前記領域に対応したウィンドウ幅及びウィンドウレベルの少なくとも一方を示すウィンドウ情報を取得し、
前記ウィンドウ情報に基づいて、少なくとも2つの前記領域を同時に可視化した断面画像を生成し、
操作を受け付ける操作部を介して、表示部に表示された前記断面画像における画像位置を指定し、
指定された前記画像位置に対応する少なくとも2つの前記領域の境界の輪郭形状を示す情報を前記表示部に表示させ、
前記領域毎に異なる前記ウィンドウ情報が設定されている、
医用画像処理方法。
【請求項10】
請求項に記載の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のCT装置は、検出器によりシノグラムを検出し、シノグラムを基に、再構成関数を用いて様々なスライスデータを生成可能である。また、CT装置は、生成されたスライスデータを基に、様々なウィンドウ幅及びウィンドウレベルの設定に応じて様々な画像を生成して表示可能である。
【0003】
また、再構成アルゴリズムを用いて撮像対象物のx線コーンビームのスキャンデータを再構成することが知られている(特許文献1参照)。この再構成アルゴリズムは、コーンビームデータが切り捨てられ、データの外挿が許可されていない場合、p+円錐角よりも大きい円形スキャンの最大断層撮像能力によるシフト不変フィルタリング及び逆投影再構成アルゴリズムを用いたものである。また、再構成スキームは、従来のFDK再構成と、微分逆投影と1Dヒルベルト変換を使用した並列再構成と、を含み、コーンビームのアーティファクトを抑制する。特許文献1では、異なる再構成カーネルであるramp filter kernel及びHilbert kernelを用いて逆投影して異なる画像を取得し、この画像を合成する。このように、異なる再構成関数を用いて、逆投影により画像を合成することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2007/0297661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、異なる再構成カーネルを用いて生成された複数の画像を合成するが、それぞれの画像の全領域を合成する。しかし、画像を観察する際には、関心領域毎に望ましい再構成関数やウィンドウ幅及びウィンドウレベルが異なる。そのため、画像の読影時には、読影者がウィンドウ幅及びウィンドウレベルを切り替えて、同一のスライス画像を何度も見直す必要がある。また、異なる再構成関数やウィンドウ幅及びウィンドウレベルを基に生成されたが複数の画像を並べて表示することも考えられる。しかし、読影者の視線がばらつくことになり、読影の正確性に影響を与えることがあり得る。したがって、被検体の複数の関心領域を読影する際の読影者の手間を低減することが望ましい。特に、救急医療の場合には、読影者の手間が極力低減されることが望ましい。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてされたものであって、被検体の複数の関心領域を読影する際の読影者の手間を低減できる医用画像処理装置、手術支援ロボット、医用画像処理方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、医用画像処理装置であって、処理部を備え、前記処理部は、一回の撮像で得られたシノグラムに基づく被検体を含むボリュームデータを取得し、前記ボリュームデータの空間を2つ以上の領域に分割し、少なくとも2つの前記領域に対応したウィンドウ幅及びウィンドウレベルの少なくとも一方を示すウィンドウ情報を取得し、前記ウィンドウ情報に基づいて、少なくとも2つの前記領域を同時に可視化した断面画像を生成し、操作を受け付ける操作部と、前記断面画像を表示する表示部と、を更に備え、前記処理部は、前記操作部を介して前記表示部に表示された前記断面画像における画像位置を指定し、指定された前記画像位置に対応する少なくとも2つの前記領域の境界の輪郭形状を示す情報を前記表示部に表示させ、前記領域毎に異なる前記ウィンドウ情報が設定されている、医用画像処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、被検体の複数の関心領域を読影する際の読影者の手間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態における医用画像処理システムの構成例を示すブロック図
図2】CT装置の構成例を示すブロック図
図3】医用画像処理装置の構成例を示すブロック図
図4】処理部の機能構成例を示すブロック図
図5A】縦隔条件に従って可視化された肺の画像の一例を示す画像
図5B】肺野条件に従って可視化された肺の画像の一例を示す図
図5C】縦隔条件に従った縦隔領域と肺野条件に従った肺野領域とを含む合成画像の一例を示す図
図6】合成画像に含まれる各画素位置のウィンドウ情報の表示例を示す図
図7】合成画像に含まれる各領域の輪郭形状の表示例を示す図
図8】ウィンドウ情報の設定例を示す図
図9】CT装置の動作例を示すフローチャート
図10】医用画像処理装置の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。尚、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
例えば、実施形態でいう「部」又は「装置」とは単にハードウェアによって実現される物理的構成に限らず、その構成が有する機能をプログラムなどのソフトウェアにより実現されるものも含む。また、1つの構成が有する機能が2つ以上の物理的構成により実現されても、又は2つ以上の構成の機能が例えば1つの物理的構成によって実現されていても構わない。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、医用画像処理システム5の構成例を示すブロック図である。医用画像処理システム5は、CT装置200と医用画像処理装置100とを含む構成である。CT装置200と医用画像処理装置100とは、ネットワークを介して、又は1対1で直接に通信可能に接続される。
【0013】
図2はCT装置200の構成例を示すブロック図である。CT装置200は、例えばマルチスライスヘリカルCT装置である。なお、CT装置200は、マルチスライスヘリカルCT装置以外のヘリカルCT装置でもよいし、ヘリカルCT装置以外のCT装置でもよい。
【0014】
CT装置200は、被検体へX線を照射し、体内の組織によるX線の吸収の違いを利用して、X線断層撮像(CT撮像)し、CTデータを取得する。CTデータは、シノグラム、スライスデータ、ボリュームデータ、仮想単色X線画像、等であってよい。被検体PSは、生体、人体、動物、等を含んでよい。CT装置200は、被検体内部の任意の箇所の情報を含むCTデータを生成する。CT装置200は、CTデータを医用画像処理装置100へ、有線回線又は無線回線を介して送信する。CT撮像は、造影剤が投与された状態又は造影剤が投与されていない状態で、1回行われる。1回のCT撮像とは、造影剤の有無を変更して同じ被検体PSを複数回撮像することや、この複数回の撮像に基づくサブトラクションを考慮しないことを意図している。
【0015】
CT装置200は、例えば、ベッドに載置された被検体PSを体軸方向(Z方向)に動かしながら、複数列のX線検出器をX線管と共に回転させるヘリカル回転を行う。X線検出器は、ヘリカル回転中、X線管から被検体PSに向けて照射されるX線を検出し、被検体PSを360°(又は180°+ファン角若しくはコーン角)の範囲で様々な投影方向から撮像し、複数枚の投影画像(シノグラム)を得る。
【0016】
CT装置200は、ガントリ40と、コンソール30と、高電圧を発生する高電圧発生器43を備える。
【0017】
ガントリ40は、X線を用いて被検体PSの少なくとも一部をスキャン(撮像)し、スキャン結果としてシノグラムを得る。スキャンは、X線照射及びX線検出により行われる。ガントリ40は、X線管41と、複数列のX線検出器42とを備える。
【0018】
X線管41は、X線を被検体PSに照射する。X線管41には、高電圧発生器43から管電流や管電圧など必要な電源電圧が供給される。X線管41は、コリメータやスリットを取り付けることによって、ファンビーム形状やコーンビーム形状のX線束を被検体PSに照射する。
【0019】
X線検出器42は、X線管41とともに、被検体PSの少なくとも一部を360°の任意の投影方向から撮像するために回転する。なお、360°回転でなく180°(+ファン角若しくはコーン角)の回転でもよい。
【0020】
複数列のX線検出器42は、複数列のディテクタを有し、被検体PSを透過したX線を検出し、X線透過データを得て、シノグラムを生成する。X線透過データは、1つの投影角度からの1次元の投影データである。例えば、X線検出器42は、被検体PSの周りの複数の投影角度によるX線透過データを取得することで、1回転分の1次元の投影データを取得し、これらの1次元データを合成して2次元の投影データを生成する。そして、2次元の投影データを、直交座標から回転座標に投影(写像)し、シノグラムを生成する。
【0021】
本実施形態では、画像再構成に必要な分のシノグラムを取得するのに必要な回転を、1回転と数えることにする。X線検出器42は、X線管41からコーンビーム状に照射されるX線を検出してX線透過データを得て、1回転する度にシノグラムを生成する。シノグラムは、X線検出器42におけるディテクタ毎に生成され、ディテクタ数と同数生成される。
【0022】
コンソール30は、ガントリ40により得られたシノグラムに対して、各種処理や表示を行う。コンソール30は、UI(User Interface)10、コントローラ20、ポート50、イメージプロセッサ60、ディスプレイ70、及びメモリ80を備える。
【0023】
UI10は、タッチパネル、ポインティングデバイス、キーボード、又はマイクロホンを含んでもよい。UI10は、CT装置200のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、医師、放射線技師、又はその他医療従事者(Paramedic Staff)を含んでもよい。
【0024】
コントローラ20は、CT装置200全体を制御し、例えば、専用のハードウェア、又はパソコンなどに装置制御計算法などを搭載することで構成される。コントローラ20に接続されたUI10をユーザが操作することで、ガントリ40により生成されたシノグラムを収集・表示可能である。コントローラ20は、CPUやMPUを含んでもよい。
【0025】
ポート50は、各種情報や各種データをコンソール30の外部から取得する。ポート50は、有線又は無線の通信回線を介して通信するための通信ポート、外部装置(例えばガントリ40)が接続される外部装置接続ポートを含んでもよい。ポート50は、ガントリ40で取得されたシノグラムを収集する。
【0026】
イメージプロセッサ60は、CPU、DSP、又はGPUを含んでもよい。イメージプロセッサ60は、ポート50を介してX線検出器42からシノグラムを取得する。イメージプロセッサ60は、シノグラムに対して、各種画像処理を行う。イメージプロセッサ60は、シノグラムに基づいて、被検体PSの断層画像(スライス画像、スライスデータともいう)を生成する。スライス画像は、例えばアキシャル画像である。
【0027】
つまり、イメージプロセッサ60は、シノグラムに基づいて、元の被検体PSの断面画像(元画像)としてのスライスデータを生成する。この場合、イメージプロセッサ60は、画像再構成によって、スライスデータを生成する。画像再構成の再構成手法は、フィルタ補正逆投影法、逐次近似画像再構成法、等を含む。イメージプロセッサ60は、様々な再構成関数に従って、様々な画像再構成を行う。再構成関数が異なると、再構成カーネルが異なる。イメージプロセッサ60は、再構成手法が同一(例えばフィルタ補正逆投影法)であっても、異なる再構成関数に従って、異なるスライスデータを生成し得る。再構成カーネルは、例えば被検体PSにおける関心領域毎に異なってよい。再構成カーネルは、肺野用カーネル、縦隔用カーネル、骨用カーネル、心臓用カーネル、等を含んでよい。例えば、肺野領域の画像再構成には、肺野用カーネルを用いることが好ましく、縦隔領域の画像再構成には、縦隔用カーネルを用いることが好ましい。
【0028】
フィルタ補正逆投影法による画像再構成は、画像再構成に要する処理負荷が小さく、処理時間が短い。一方、逐次近似再構成法による画像再構成は、画像再構成に要する演算負荷が高いが、再構成関数を固定して設定することが不要である。また、逐次近似再構成法による画像再構成は、空間分解能が高く、低コントラスト分解能が高く、ブルーミングアーチファクトを低減できる。また、逐次近似再構成法による画像再構成は、ノイズ低減能力が高いので、被ばく線量を低減でき、CT値の正確性を高くできる。また、逐次近似再構成法による画像再構成は、反復計算によってCT値の真値を算出するので、画像再構成関数が不要である。
【0029】
イメージプロセッサ60は、シノグラムに基づいて、仮想単色X線画像を生成してよい。仮想単色X線画像は、低エネルギーから高エネルギーにおける任意のX線エネルギーの画像である。イメージプロセッサ60は、異なる管電圧により得られた複数のシノグラムに基づいて、仮想単色X線画像を生成してよい。イメージプロセッサ60は、X線エネルギーの異なる複数の仮想単色X線画像を生成してもよい。
【0030】
イメージプロセッサ60は、スライスデータを基にボリュームデータを生成してよい。この場合、イメージプロセッサ60は、ディテクタ毎に得られるスライスデータを積層してボリュームデータを生成してよい。
【0031】
ディスプレイ70は、LCDを含んでもよく、各種画像や各種情報を表示する。ディスプレイ70は、イメージプロセッサ60で生成されたCTデータを表示する。CTデータには、スライスデータ、ボリュームデータ、シノグラム、仮想単色X線画像、等が含まれてよい。
【0032】
メモリ80は、ROMやRAM等の一次記憶装置を含む。メモリ80は、HDDやSSDの二次記憶装置を含んでよい。メモリ80は、USBメモリやSDカードや光ディスク等の三次記憶装置を含んでもよい。メモリ80は、各種情報、各種画像(例えばCTデータ)、プログラムを記憶する。メモリ80は、イメージプロセッサ60により生成された画像、コントローラ20により設定された設定情報、を含んでもよい。
【0033】
ポート50は、医用画像処理装置100との間で通信する。ポート50は、CTデータを医用画像処理装置100へ送信してよい。ポート50は、複数の種類のCTデータを送ってよい。複数の種類のCTデータは、異なる再構成関数に従って生成された複数のボリュームデータ又はスライスデータを含んでよい。また、複数の種類のCTデータは、異なる再構成手法に従って生成された複数のボリュームデータ又はスライスデータを含んでよい。複数の種類のCTデータは、異なるX線波長の仮想単色X線画像のデータを含んでよい。
【0034】
ポート50は、CTデータに関する付加情報を医用画像処理装置100へ送信してよい。付加情報は、再構成情報の設定情報、その他のCT撮像に関する設定情報を含んでよい。再構成情報は、再構成手法、再構成関数、再構成カーネル、等の情報を含む。例えば、異なる2種類の再構成情報を基に2種類のボリュームデータ又はスライスデータが取得される場合、再構成情報の設定情報又は再構成関数の設定情報として、2種類の設定情報を含むというフラグの情報を含んでよい。なお、送信されるCTデータが、異なる再構成情報を基に生成された1つのボリュームデータ又はスライスデータである場合、付加情報には、再構成情報の設定情報が含まれていなくてよい。
【0035】
図3は、医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置100は、送受部110、UI120、ディスプレイ130、プロセッサ140、及びメモリ150を備える。
【0036】
送受部110は、通信ポート、外部装置接続ポート、組み込みデバイスへの接続ポート、等を含む。送受部110は、CT装置200からの各種データを取得する。送受部110は、CT装置200からのCTデータを取得してよい。CTデータには、スライスデータ、ボリュームデータ、シノグラム、仮想単色X線画像、等が含まれてよい。CTデータがボリュームデータ以外のデータである場合、プロセッサ140により、ボリュームデータ以外のCTデータを基に、ボリュームデータを生成してよい。また、ボリュームデータは、医用画像処理装置100に取り付けられたセンサデバイスからの情報から取得されてもよい。取得された各種データは、直ぐにプロセッサ140(処理部160)に送られて各種処理されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時にプロセッサ140へ送られて各種処理されてもよい。また、各種データは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。
【0037】
CT装置200からのCTデータには、複数の種類のCTデータが含まれてよい。複数の種類のCTデータは、CT装置200によって、異なる再構成関数に従って生成された複数のボリュームデータ又はスライスデータを含んでよい。また、複数の種類のCTデータは、異なる再構成手法に従って生成された複数のボリュームデータ又はスライスデータを含んでよい。複数の種類のCTデータは、異なるX線波長の仮想単色X線画像のデータを含んでよい。
【0038】
送受部110は、CTデータに関する付加情報を取得してもよい。付加情報は、再構成情報の設定情報、その他のCT撮像に関する設定情報を含んでよい。例えば、異なる2種類の再構成情報を基に生成された2種類のボリュームデータ又はスライスデータが取得される場合、再構成情報の設定情報として、2種類の設定情報を含むというフラグの情報を含んでよい。なお、送信されるCTデータが、異なる再構成情報を基に生成された1つのボリュームデータ又はスライスデータである場合、付加情報には、再構成情報の設定情報が含まれていなくてよい。
【0039】
送受部110は、CT装置200へ各種データを送信してもよい。送信される各種データは、プロセッサ140(処理部160)から直接送信されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時に各装置へ送信されてもよい。また、各種データは、記録媒体や記録メディアを介して送られてもよい。
【0040】
UI120は、例えば、タッチパネル、ポインティングデバイス、トラックボール、キーボード、又はマイクロホンを含んでよい。UI120は、医用画像処理装置100のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、医師、放射線技師、読影医、その他医療従事者を含んでよい。
【0041】
UI120は、各種操作を受け付ける。例えば、CTデータやCTデータに基づく画像(例えば後述する3次元画像、2次元画像)における、関心領域(ROI)の指定やウィンドウ情報の設定等の操作を受け付ける。関心領域は、縦隔、肺野、等の領域を含んでよい。関心領域は、各種組織(例えば、血管、臓器、器官、骨、脳)の領域を含んでよい。組織は、病変組織、正常組織、腫瘍組織、等を含んでよい。ウィンドウ情報は、ウィンドウ幅(WW:Window Width)及びウィンドウレベル(WL:Window Level)の少なくとも一方を含み、「ww/wl」とも記載する。ウィンドウ情報は、表示される画像の輝度を調整する情報である。
【0042】
また、UI120は、ポインティングデバイスのホバー又はオーバーを検出する。ポインティングデバイスのホバーは、マウスホバーを含む。ポインティングデバイスのオーバーは、マウスオーバーを含む。ポインティングデバイスのホバー又はオーバーは、ポインティングデバイスで画像上の任意の点にカーソルを動かし、且つクリックなどの選択操作をしていない状態である。ポインティングデバイスのホバーの状態は、この状態を所定時間維持した場合に発生する状態である。ポインティングデバイスのオーバーの状態は、この状態を所定時間維持せずに、画像上の任意の点にカーソルを動かした瞬間に発生する状態である。例えばタッチパネルでは、参考特許文献1に示すような方法がある。
(参考特許文献1:米国特許第8614693号明細書)
【0043】
ディスプレイ130は、例えばLCDを含んでよく、各種情報を表示する。各種情報は、CTデータから得られる3次元画像や2次元画像を含んでよい。3次元画像は、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、仮想内視鏡画像、仮想超音波画像、CPR画像、等を含んでもよい。ボリュームレンダリング画像は、MIP画像、MinIP画像、平均値画像、レイキャスト画像、等を含んでもよい。2次元画像は、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像、MPR画像、等を含んでよい。
【0044】
メモリ150は、ROMやRAM等の一次記憶装置を含む。メモリ150は、HDDやSSD等の二次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、USBメモリやSDカードや光ディスク等の三次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、各種情報やプログラムを記憶する。各種情報は、送受部110により取得されたCTデータ及び設定情報、プロセッサ140により生成された画像、プロセッサ140により設定された設定情報、各種プログラム、等を含んでよい。メモリ150は、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
【0045】
プロセッサ140は、CPU、DSP、又はGPUを含んでよい。プロセッサ140は、メモリ150に記憶されたプログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部160として機能する。
【0046】
図4は、処理部160の機能構成例を示すブロック図である。処理部160は、領域処理部161、輝度処理部162、画像生成部163、及び表示制御部164を備える。なお、処理部160に含まれる各部は、1つのハードウェアにより異なる機能として実現されてもよいし、複数のハードウェアにより異なる機能として実現されてもよい。また、処理部160に含まれる各部は、専用のハードウェア部品により実現されてもよい。
【0047】
領域処理部161は、例えば送受部110を介して、被検体PSのCTデータ(例えばボリュームデータ)を取得する。領域処理部161は、ボリュームデータに含まれる任意の領域を抽出する。領域処理部161は、例えばボリュームデータの画素値に基づいて、自動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。領域処理部161は、例えばUI120を介して、手動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。領域処理部161は、例えば、縦隔領域と、肺野領域とを抽出し、その他の領域を抽出してもよい。なお、縦隔領域とは、肺周辺で肺本体以外の領域である。肺野領域とは、肺周辺で肺本体の領域である。
【0048】
また、関心領域は、単一の組織だけでなく、その組織の周囲の組織を含んでセグメンテーション(区分)されて抽出されてもよい。例えば、関心領域としての臓器(例えば肺)本体だけでなく、臓器に接続する又は臓器内若しくは臓器周辺を走行する血管、臓器周辺の骨(例えば肋骨)や筋肉を含んでもよい。また、上記の臓器本体と臓器内又は臓器周辺の血管と臓器周辺の骨や筋肉とは、別々の組織としてセグメンテーションされて得られてもよい。
【0049】
輝度処理部162は、表示される画像のウィンドウ情報を決定する。輝度処理部162は、被検体PSの領域毎にウィンドウ情報を決定してよい。この場合、例えば、UI120を介してウィンドウ情報を取得してもよいし、メモリ150からウィンドウ情報を取得してもよい。輝度処理部162は、例えば、縦隔領域を観察するための縦隔条件と肺野領域を観察するための肺野条件とで、それぞれウィンドウ情報を決定してよい。
【0050】
画像生成部163は、各種画像を生成する。画像生成部163は、取得されたボリュームデータの少なくとも一部(例えばボリュームデータにおいて抽出された領域)に基づいて、3次元画像や2次元画像を生成する。画像生成部163は、設定されたウィンドウ情報に従って、画像を生成してよい。画像生成部163は、領域毎に設定されたウィンドウ情報に従って、領域毎の画像を生成してよい。
【0051】
画像生成部163は、ボリュームデータの複数の一部である各領域(例えば縦隔領域と肺野領域)を合成して、断面画像としての合成画像を生成してよい。また、画像生成部163は、複数のボリュームデータにおける異なる領域を合成して、合成画像を生成してよい。この場合、画像生成部163は、各ボリュームデータにおける合成対象の各3次元領域を合成して1つの合成ボリュームデータを生成し、合成ボリュームデータをレンダリングして表示対象の断面画像を生成してよい。また、画像生成部163は、各ボリュームデータにおける合成対象の各3次元領域をレンダリングして断面画像をそれぞれ生成し、それぞれの領域を含む断面画像を合成して合成画像を生成してもよい。なお、合成画像の基となった複数のボリュームデータは、メモリ150に保持させておいてよい。この場合、医用画像処理装置100は、複数のボリュームデータを残すことができ、領域を変更する場合でも元の複数のボリュームデータを基に、異なる合成画像を生成できる。
【0052】
この合成画像は、1つの断面画像において、異なる再構成情報やウィンドウ情報に従って生成された各領域が混在した画像でよい。断面画像は、スライスデータ、MPR画像、アキシャル画像、コロナル画像、サジタル画像、いわゆる厚み付きMPR画像、等であってよい。厚み付きMPR画像は、複数(例えば少数枚)のスライスデータを合成した画像であってよい。少数枚のスライスデータを合成した画像の合成手法は、MIP、MinIP、Average、等であってよい。
【0053】
また、画像生成部163は、被検体PSにおける断面画像を描画する断面位置を決定する。断面位置は、例えばUI120を介して指定されてもよいし、自動で指定されてもよい。画像生成部163は、例えばUI120を介して断面位置の変更指示を順次取得することで、断面位置を順次変更し、断面画像を順次生成してもよい。これにより、医用画像処理装置100は、例えば断面位置を順次変更する断面送り(例えばスライス送り)を行って、断面画像を順次変更できる。よって、ユーザは、断面位置を順次送りながら被検体PSの内部を確認できる。断面送りされる合成画像としての断面画像には、いずれの断面画像においても、組織等が異なる複数の領域が含まれ得る。
【0054】
また、画像生成部163は、隣接する複数のMPR位置のMPR画像を合成して、1つのMPR画像(厚み付きMPR画像)を生成してよい。厚み付きMPR画像における各画素の画素値は、厚み付きMPR画像の基となった複数のMPR画像の同じ画素の画素値の統計値(例えば平均値、加重平均値)であってよい。
【0055】
被検体PSにおける各領域は、3次元領域である。そのため、隣接する複数のMPR画像における同じ画素位置、同一の組織の領域に含まれることも、異なる組織の領域に含まれることもあり得る。輝度処理部162は、隣接する複数のMPR画像における同じ画素位置が異なる領域に属する場合、厚み付きMPR画像におけるこの画素位置のウィンドウ情報として、どの領域のウィンドウ情報に設定してもよい。例えば、厚み付きMPR画像の基となった3つのMPR画像における同一の画素位置g1が、1つ目のMPR画像では縦隔領域に属し、2つ目及び3つ目のMPR画像では肺野領域に属するとする。この場合、輝度処理部162は、厚み付きMPR画像の画素位置g1のウィンドウ情報として、縦隔領域のウィンドウ情報に設定してもよいし、肺野領域のウィンドウ情報に設定してもよい。
【0056】
言い換えると、厚み付きMPR画像には、奥行き方向(MPR面に垂直な方向)に複数の領域が含まれ得る。これに対して、画像生成部163は、奥行き方向の複数の領域のそれぞれで独立して画素値の平均値を取得し、それぞれの奥行き方向の領域の厚みに応じて加重平均してよい。また、画像生成部163は、奥行き方向において最も手前の断面(表示対象面)における領域の画素値を採用してもよい。また、画像生成部163は、奥行き方向においてUI120によりマウスホバーが検出された領域の画素値を採用してよい。また、画像生成部163は、厚み付きMPR画像の合成手法がMIP又はMinIPの場合、奥行き方向において複数の領域の画素値のうち最大値又は最小値を取得して、その最大値又は最小値の属する領域に対応するウィンドウ情報に従って、合成画像としての断面画像を生成してよい。
【0057】
表示制御部164は、各種データ、情報、画像をディスプレイ130に表示させる。表示制御部164は、画像生成部163で生成された画像を表示させる。例えば、複数の組織の領域を含む合成画像を表示させてよい。
【0058】
表示制御部164は、合成画像に含まれる各領域の境界を示す輪郭線の表示の有無を制御してよい。例えば輪郭線の表示の有無の設定情報が、メモリ150に保持されており、表示制御部164が、この設定情報に基づいて、輪郭線の表示の有無を決定してよい。表示制御部164は、輪郭線の表示有りの設定の場合、輪郭線を表示させる。
【0059】
また、表示制御部164は、合成画像に対するマウスホバーの検出の有無に基づいて、輪郭線の表示の有無を制御してもよい。例えば、マウスホバーを検出した場合、輪郭線を表示させ、マウスホバーを検出しなかった場合、輪郭線を表示させない。また、表示制御部164は、合成画像に対するマウスオーバーの検出の有無に基づいて、輪郭線の表示の有無を制御してもよい。例えば、マウスオーバーを検出した場合、輪郭線を表示させ、マウスホバーを検出しなかった場合、輪郭線を表示させない。
【0060】
表示制御部164は、合成画像に含まれる各領域の境界を示す輪郭線を表示する際に発生するジャギーのスムージングの有無を制御してよい。例えばジャギーのスムージングの有無の設定情報が、メモリ150に保持されており、表示制御部164が、この設定情報に基づいて、ジャギーのスムージングの有無を設定してよい。表示制御部164は、合成画像の基である各領域の画像を合成する際に、各領域の輪郭形状を基に、隣接する領域の画像のそれぞれの、合成画像の画素(ピクセル)に対する寄与率を按分することで、ジャギーをスムージングしてよい。これにより、医用画像処理装置100は、合成画像における各領域の境界付近において画素値が急激に変化することを抑制でき、各領域を滑らかに繋げることができる。よって、合成画像を視認するユーザの目に優しくなり、読影効率が向上する。
【0061】
次に、縦隔条件及び肺野条件のそれぞれを加味した画像、及び合成画像の具体例について説明する。
【0062】
図5Aは、縦隔条件に従って可視化された肺の画像G11の一例を示す画像である。画像生成部163は、肺の画像G11を生成する。画像G11は、肺の組織の実質部分や、縦隔や胸壁の軟部組織を観察することに適している。縦隔条件でのwwは、例えばww=300~500の間の値であり、例えばww=498である。縦隔条件でのwlは、例えばwl=20~60の間の値であり、例えばwl=41である。
【0063】
図5Bは、肺野条件に従って可視化された肺の画像G12の一例を示す図である。画像生成部163は、肺の画像G12を生成する。画像G12は、肺野の観察、つまり気管支の末梢から肺胞のある肺の奥の部分を観察することに適している。肺野条件でのwwは、例えばww=1000~1500の間の値であり、例えばww=1492である。肺野条件でのwlは、例えばwl=-750~-500の間の値であり、例えばwl=-716である。縦隔条件及び肺野条件のそれぞれのww及びwlを含むウィンドウ情報は、輝度処理部162により設定される。
【0064】
図5Cは、縦隔条件に従った縦隔領域D1と肺野条件に従った肺野領域D2とを含む合成画像G13の一例を示す図である。画像生成部163は、肺の画像G11の縦隔領域D1及び肺の画像G12の肺野領域D2を合成して、合成画像G13を生成する。例えば、交通事故における肺の気胸肺挫傷は肺野条件に従った肺野領域D2の画像で観察することが好ましく、交通事故における多臓器からの出血や骨折は縦隔条件に従った縦隔領域D1の画像で観察することが好ましい。合成画像G13によれば、いずれの合成画像G13では、縦隔条件に従った縦隔領域D1と肺野条件に従った肺野領域D2とが1つの画面上で同時に表示されるので、所望の状態で縦隔領域D1も肺野領域D2も観察できる。
【0065】
なお、画像G11及び画像G12は、ウィンドウ情報の設定が異なり、異なるウィンドウ情報に基づいて生成された画像であることを例示したが、これに限られない。また、異なるウィンドウ情報及び異なる再構成情報に基づいて生成された画像であってもよい。
【0066】
図6は、合成画像G13に含まれる各画素位置のウィンドウ情報の表示例を示す図である。図6では、ディスプレイ130は、合成画像G13を表示する。ユーザは、合成画像G13の表示を確認し、合成画像G13における任意の位置にマウスカーソルを合わせるマウスホバーを行う。UI120は、マウスホバーを検出し、マウスホバーの検出位置(単にホバー検出位置とも称する)を算出する。表示制御部164は、ホバー検出位置が合成画像G13におけるどの領域(例えば縦隔領域、肺野領域)に含まれているかを算出する。表示制御部164は、ホバー検出位置と、ホバー検出位置におけるCT値(例えば-413)と、ホバー検出位置のウィンドウ情報、つまりホバー検出位置が属する領域のウィンドウ情報(例えばww:1492、wl:wl:-716)と、をディスプレイ130に表示させる。表示制御部164は、ホバー検出位置を、クロスヘア型(十字型)のマウスカーソルによって表示させてもよい。
【0067】
これにより、ユーザは、ホバー検出位置におけるCT値及びウィンドウ情報の双方を把握でき、表示上の輝度ではなく本来のホバー検出位置に対応する組織の本来の輝度を認識できる。また、ユーザは、クロスヘア型(十字型)のマウスカーソルの表示を確認することで、タッチパネル面の2次元平面におけるホバー検出位置を直感的に把握できる。
【0068】
図7は、合成画像G13に含まれる各領域の輪郭形状の表示例を示す図である。図7では、ディスプレイ130は、合成画像G13を表示する。ユーザは、合成画像G13の表示を確認し、合成画像G13における任意の位置にマウスカーソルを合わせるマウスホバーを行う。UI120は、マウスホバーを検出し、ホバー検出位置を算出する。表示制御部164は、ホバー検出位置が合成画像G13におけるどの領域(例えば縦隔領域、肺野領域)に含まれているかを算出する。表示制御部164は、ホバー検出位置と、ホバー検出位置が属する領域の輪郭(つまり輪郭形状)と、をディスプレイ130に表示させる。領域の輪郭は、例えば、この領域の輪郭線L1によって示されてよい。
【0069】
これにより、ユーザは、ホバー検出位置が属する領域の輪郭形状を把握でき、観察対象の領域が合成画像G13におけるどの範囲にあるかを直感的に把握できる。
【0070】
図8は、ウィンドウ情報の設定例を示す図である。図8は、ウィンドウ情報の設定するための設定画面GWである。設定画面GWでは、被検体PSにおける各領域のウィンドウ情報(例えばww、wl)が、左右方向に延びるスライドバーSB(図8では左右方向に長い長方形)によって設定可能になっている。各スライドバーSBにおける各設定点SPの位置によって、それぞれのww及びwlの値が定まる。スライドバーSBにおける設定点SPは、図8では黒丸(●)印で示されている。
【0071】
図8では、各領域として、肺の領域、心臓の領域、骨の領域、その他の領域が示されている。スライドバーSBの左端は、ww及びwlの設定可能な最小値に対応する。スライドバーSBの右端は、ww及びwlの設定可能な最大値に対応する。スライドバーSBにおいて設定点SPが左端に近い程、ww及びwlの設定値が小さく、スライドバーSBにおいて設定点SPが右端に近い程、ww及びwlの設定値が大きい。
【0072】
また、設定画面GWには、領域を追加するための領域追加ボタンB1が表示されてよい。処理部160は、UI120を介して領域追加ボタンB1が選択されると、ウィンドウ情報を設定可能な被検体PSの領域を追加する。追加された領域のウィンドウ情報は、スライドバーSBによって個別に設定可能となる。追加された領域は、その他の領域から除かれる。
【0073】
設定画面GWは、UI120及びディスプレイ130によるタッチパネルに表示されて操作され、ウィンドウ情報が設定されてもよい。また、設定画面GWは、タッチパネル以外のディスプレイ130に表示され、UI120によって操作され、ウィンドウ情報が設定されてもよい。このような領域毎のウィンドウ情報の設定情報は、メモリ150に保持されてよい。
【0074】
次に、医用画像処理システム5の動作例について説明する。
図9は、CT装置200の動作例を示すフローチャートである。図10は、医用画像処理装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0075】
まず、CT装置200では、ガントリ40は、被検体PSを1回のCT撮像で撮像し、シノグラムを生成する(S11)。コンソール30は、シノグラムを基に、肺野観察用の再構成カーネルK1を有する再構成関数F1に従って、ボリュームデータV1を生成する(S12)。また、シノグラムを基に、出血観察用(例えば縦隔観察用)の再構成カーネルK2を有する再構成関数F2に従って、ボリュームデータV2を生成する(S13)。なお、ボリュームデータV1,V2の生成元であるシノグラムは、同一のシノグラムである。ポート50は、ボリュームデータV1及びボリュームデータV2を医用画像処理装置100に送信する(S14)。
【0076】
続いて、医用画像処理装置100では、送受部110は、ボリュームデータV1及びボリュームデータV2をCT装置200から取得する(S21)。輝度処理部162は、組織毎(つまり領域毎)のウィンドウ情報の設定情報及び再構成カーネルの設定情報を取得する(S22)。
【0077】
領域処理部161は、再構成カーネルの設定情報に基づいて、ボリュームデータV1から肺野の領域を抽出する(S23)。また、再構成カーネルの設定情報に基づいて、ボリュームデータV2から心臓の領域及び骨の領域を抽出する(S23)。つまり、領域処理部161は、ボリュームデータの空間を2つ以上の領域に分割する。
【0078】
画像生成部163は、肺の領域用のウィンドウ情報に基づいて、肺の領域の画像G21を生成する(S24)。画像生成部163は、心臓の領域用のウィンドウ情報に基づいて、心臓の領域の画像G22を生成する(S25)。画像生成部163は、骨の領域用のウィンドウ情報に基づいて、骨の領域の画像G23を生成する(S26)。画像生成部163は、臓器一般用(その他用)のウィンドウ情報に基づいて、肺野、心臓、骨以外のその他の領域の画像G23を生成する(S27)。
【0079】
画像生成部163は、画像G21と画像G22と画像G23とを合成して、合成画像G24を生成する(S28)。表示制御部164は、合成画像G24をディスプレイ130に表示させる(S28)。
【0080】
このような医用画像処理システム5の動作例によれば、領域毎に好適な再構成情報やウィンドウ情報に応じて生成された各画像を含む合成画像G24を表示する。よって、医用画像処理装置100は、被検体PSにおける位置毎に適切な再構成情報やウィンドウ情報が混在して適用された1つの画像を表示できる。そのため、ユーザは、被検体PSのいずれの領域を観察する際にも、ウィンドウ情報を切り替えたり、異なるウィンドウ情報に従って生成された画像を並べて観察したりすることが不要であり、各領域に含まれる組織等を観察し易くできる。例えば、ユーザは、観察対象の組織に応じて、肺野条件の切替操作やウィンドウ情報の値の変更操作が不要となる。よって、医用画像処理装置100は、被検体PSの複数の関心領域を読影する際の読影者の手間を低減でき、読影効率を向上できる。特に緊急を要する救急救命時には、短時間で大量の断面画像を正確に読影可能であることは非常に有益である。
【0081】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0082】
上記実施形態では、肺の周辺の領域について主に説明したが、脳の周辺の領域(例えば脳実質の領域)についても上記実施形態を適用可能である。
【0083】
また、医用画像処理装置100は、少なくともプロセッサ140及びメモリ150を備えていればよい。送受部110、UI120、及びディスプレイ130は、医用画像処理装置100に対して外付けであってもよい。
【0084】
また、CT撮像により得られたCTデータとしてのボリュームデータ、スライスデータ、又はシノグラムは、CT装置200から医用画像処理装置100へ送信されることを例示した。この代わりに、ボリュームデータ、スライスデータ、又はシノグラムが一旦蓄積されるように、ネットワーク上のサーバ(例えば画像データサーバ(PACS)(不図示))等へ送信され、保管されてもよい。この場合、必要時に医用画像処理装置100の送受部110が、ボリュームデータを、有線回線又は無線回線を介してサーバ等から取得してもよいし、任意の記憶媒体(不図示)を介して取得してもよい。
【0085】
また、CT撮像により得られたCTデータとしてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へ送受部110を経由して送信されることを例示した。これは、実質的にCT装置200と医用画像処理装置100とを併せて一製品として成立している場合も含まれるものとする。また、医用画像処理装置100がCT装置200のコンソールとして扱われている場合も含む。
【0086】
また、CT装置200によりCT撮像し、被検体内部の情報を含むボリュームデータ、スライスデータ、シノグラム、又は仮想単色X線画像を生成することを例示したが、他の装置により撮像し、ボリュームデータ、スライスデータ、シノグラム、又は仮想単色X線画像を生成してもよい。他の装置は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、血管造影装置(Angiography装置)、又はその他のモダリティ装置を含む。また、PET装置は、他のモダリティ装置と組み合わせて用いられてもよい。
【0087】
また、医用画像処理装置100における動作が規定された医用画像処理方法として表現可能である。また、コンピュータに医用画像処理方法の各ステップを実行させるためのプログラムとして表現可能である。
【0088】
(上記実施形態の概要)
上記実施形態の一態様は、医用画像処理装置100であって、処理部160を備える。処理部160は、一回の撮像で得られたシノグラムに基づく被検体PSを含むボリュームデータを取得し、ボリュームデータの空間を2つ以上の領域(例えば縦隔領域D1、肺野領域D2)に分割し、少なくとも2つの領域に対応したウィンドウ幅及びウィンドウレベルの少なくとも一方を示すウィンドウ情報を取得し、ウィンドウ情報に基づいて、少なくとも2つの前記領域を同時に可視化した断面画像(例えば合成画像G13)を生成する。なお、領域には、ウィンドウ情報が割り当てられていない領域が含まれてもよい。なお、ボリュームデータの空間とは、ボリュームデータの座標系における空間である。例えば、ボリュームデータの空間を2つ以上の領域に分割することは、複数のボリュームデータに対して位置合わせし、ボリュームデータの座標系における空間により領域を分ける(分割する)場合、複数のボリュームデータの各々について領域を分けることを含む。また、ボリュームデータの空間を2つ以上の領域に分割することは、単に、一つのボリュームデータを2つ以上の領域に分割することを含む。
【0089】
これにより、医用画像処理装置100は、領域毎に好適なウィンドウ情報に応じて生成された複数の領域を含む断面画像を表示できる。そのため、ユーザは、被検体PSのいずれの領域を観察する際にも、ウィンドウ情報を切り替えたり、異なるウィンドウ情報に従って生成された画像を並べて観察したりすることが不要であり、各領域に含まれる組織等を観察し易くできる。よって、医用画像処理装置100は、被検体PSの複数の関心領域を読影する際の読影者の手間を低減でき、読影効率を向上できる。
【0090】
また、処理部160は、異なる再構成に関する再構成情報に基づいて生成された2つ以上の前記ボリュームデータを取得してよい。再構成情報は、例えば再構成手法又は再構成関数を含んでよい。これにより、医用画像処理装置100は、各組織の領域に応じて好適な再構成手法や再構成関数によって得られたボリュームデータを得ることができる。よって、医用画像処理装置100は、断面画像における各領域を一層好適に描画でき、ユーザによる読影効率を向上させることができる。
【0091】
また、医用画像処理装置100は、操作を受け付けるUI120(操作部の一例)を備えてよい。処理部160は、UI120を介してウィンドウ情報に関する操作情報を取得し、操作情報に基づいて、領域毎に異なるウィンドウ情報を設定してよい。これにより、医用画像処理装置100は、例えば設定画面GWを用いて、ユーザ所望のウィンドウ情報を容易に設定できる。
【0092】
また、領域は、肺野の領域又は脳実質の領域を含んでよい。これにより、医用画像処理装置100は、肺周辺の領域や脳周辺の領域を、この領域における各組織に好適な輝度の状態で表示できる。
【0093】
また、医用画像処理装置100は、断面画像を表示するディスプレイ130(表示部の一例)を備えてよい。処理部160は、UI120を介してディスプレイ130に表示された断面画像における画像位置を指定してよい。画像位置の指定は、例えばマウスホバー又はマウスオーバーによって行われてよい。処理部160は、指定された画像位置に対応する領域のウィンドウ情報をディスプレイ130に表示させてよい。これにより、医用画像処理装置100は、例えば、ユーザは、UI120を介してウィンドウ情報を確認したい断面画像上の画像位置を指定し、その画像位置に対応するウィンドウ情報を確認できる。よって、ユーザは、ウィンドウ情報を確認することで、その画像位置が被検体PSのどの領域に含まれているかを認識できる。
【0094】
また、処理部160は、UI120を介してディスプレイ130に表示された断面画像における画像位置を指定し、指定された画像位置に対応する領域の輪郭形状を示す情報(例えば輪郭線L1)をディスプレイ130に表示させてよい。これにより、ユーザは、輪郭形状を示す情報を確認することで、その画像位置が被検体PSのどの領域に含まれているかを認識できる。
【0095】
また、断面画像は、断面画像の断面に対して垂直な第1の方向に沿う厚みを有してよい。2つ以上の領域は、第1の方向において異なる領域を含んでよい。例えば厚み付きMPR画像において、MPR面に垂直な方向(第1の方向に相当)に複数の領域を含んでよい。この場合でも、医用画像処理装置100は、例えば、MPR面に垂直な方向の複数の領域が加味して、ウィンドウ情報の設定できる。
【0096】
上記実施形態の一態様は、一回の撮像で得られたシノグラムに基づく被検体を含むボリュームデータを取得し、ボリュームデータの空間を2つ以上の領域に分割し、少なくとも2つの領域に対応したウィンドウ幅及びウィンドウレベルの少なくとも一方を示すウィンドウ情報を取得し、ウィンドウ情報に基づいて、少なくとも2つの領域を同時に可視化した断面画像を生成する、医用画像処理方法である。
【0097】
上記実施形態の一態様は、上記の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示は、被検体の複数の関心領域を読影する際の読影者の手間を低減できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及びプログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0099】
5 医用画像処理システム
20 コントローラ
30 コンソール
40 ガントリ
41 X線管
42 X線検出器
50 ポート
60 イメージプロセッサ
70 ディスプレイ
80 メモリ
100 医用画像処理装置
110 送受部
120 UI
130 ディスプレイ
140 プロセッサ
150 メモリ
160 処理部
161 領域処理部
162 輝度処理部
163 画像生成部
164 表示制御部
200 CT装置
PS 被検体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10