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  • 特許-天井構造及び天井の構築方法 図1
  • 特許-天井構造及び天井の構築方法 図2
  • 特許-天井構造及び天井の構築方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】天井構造及び天井の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20240910BHJP
   E04B 9/22 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
E04B9/18 A
E04B9/22 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020193063
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081865
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福原 健司
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066977(JP,A)
【文献】実用新案登録第2524684(JP,Y2)
【文献】特開昭56-048454(JP,A)
【文献】実公昭51-044654(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する壁の間に構築された天井の構造であって、
前記対向する壁に取り付けられる取り付け面、及び前記取り付け面の下端部に辺状に連結されて前記取り付け面と直交する、貫通孔が形成された水平な受け面をそれぞれ有する金属からなるアングルピースである複数対の受け具と、
前記複数対の各一対の受け具の、前記取り付け面の下端部に水平に連結された前記受け面上に、貫通孔が形成された両端部がそれぞれ載置された状態で取り付けられた複数の野縁受けと、
前記複数の野縁受けの下に取り付けられた複数の野縁と、
前記複数の野縁の下に取り付けられた天井板とを備えることを特徴とする天井構造。
【請求項2】
前記受け具の前記受け面の貫通孔及び前記野縁受けの貫通孔はともに、前記野縁受けの長手方向に長軸を有する長円状となっており、前記野縁受けに所定以上の力が作用したとき、前記受け面と前記野縁受けとは、少なくとも当該野縁受けの長手方向に相対的に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の天井構造。
【請求項3】
前記野縁受けの両端部の端面と前記受け具の前記取り付け面との間に配置された衝撃吸収材をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の天井構造。
【請求項4】
前記対向する壁はそれぞれ部屋の側壁を構成する壁であり、前記天井は前記部屋の間に位置する廊下の天井であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の天井構造。
【請求項5】
対向する壁の間に天井を構築する方法であって、
取り付け面、及び前記取り付け面の下端部に辺状に連結されて前記取り付け面と直交する、貫通孔が形成された受け面をそれぞれ有する金属からなるアングルピースである複数対の受け具を準備する工程と、
前記対向する壁に前記複数対の受け具が対向し、かつ前記取り付け面の下端部に連結された前記受け面が水平になるように、それぞれの前記取り付け面を前記壁に取り付ける工程と、
前記複数対の各一対の受け具の、前記取り付け面の下端部に水平に連結された前記受け面上に、貫通孔が形成された両端部がそれぞれ載置された状態で複数の野縁受けを取り付ける工程と、
前記複数の野縁受けの下に複数の野縁を取り付ける工程と、
前記複数の野縁の下に天井板を取り付ける工程とを備えることを特徴とする天井の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井構造、及び天井を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部屋の間に位置する廊下に天井を設けず、配管や電気を配設するためのラックを梁から吊り下げ、これらラックを露出させておくことがある。
【0003】
なお、例えば、特許文献1には、天井スラブ等に一端が固定された吊りボルトに固定される、配管の吊り下げ用支持具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-150452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラックを吊り下げるためには廊下の上方の梁に鋼材などを取り付ける必要があり、強度の確保が必要であるので、工程が多くなり、工期が長くなっていた。また、天井がないので、配管やラックがむき出しになるので見栄えが悪く、さらに埃などが溜まり易いので頻繁な掃除が必要であった。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、工期の短縮化及び見栄えの向上を図ることが可能な天井構造及び天井の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の天井構造は、対向する壁の間に構築された天井の構造であって、前記対向する壁に取り付けられる取り付け面、及び前記取り付け面と直交する水平な受け面をそれぞれ有する複数対の受け具と、前記複数対の各一対の受け具の前記受け面上に両端部がそれぞれ載置された状態で取り付けられた複数の野縁受けと、前記複数の野縁受けの下に取り付けられた複数の野縁と、前記複数の野縁の下に取り付けられた天井板とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の天井構造によれば、野縁受けを取り付けるためには受け具を壁に取り付ければよいだけであるので、工程が簡易であり、工期の短縮化を図ることが可能となる。また、天井が存在するので、配管やラックが天井で隠され、見栄えが優れたものとなると共に、これらを掃除することが不要となる。なお、取り付け面と受け面とは厳密に直交でなくともよく、受け面も厳密に水平でなくともよい。
【0009】
本発明の天井構造において、前記野縁受けに所定以上の力が作用したとき、前記受け面と前記野縁受けとは、少なくとも当該野縁受けの長手方向に相対的に移動可能であることが好ましい。
【0010】
この場合、地震などによって天井、ひいては野縁受けに大きな力が作用した場合であっても、受け具や野縁受けなどの破損や脱落などが生じる可能性が低減されるので、天井の破損、落下などの抑制を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明の天井構造において、前記野縁受けの両端部の端面と前記受け具の前記取り付け面との間に配置された衝撃吸収材をさらに備えることが好ましい。
【0012】
この場合、衝撃吸収材によって地震のエネルギーの一部を吸収することができるので、天井の耐震性能の向上を図ることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の天井構造において、例えば、前記対向する壁はそれぞれ部屋の側壁を構成する壁であり、前記天井は前記部屋の間に位置する廊下の天井である。
【0014】
本発明の天井の構築方法は、対向する壁の間に天井を構築する方法であって、取り付け面及び前記取り付け面と直交する受け面をそれぞれ有する複数対の受け具を準備する工程と、前記対向する壁に前記複数対の受け具が対向し、かつ前記受け面が水平になるようにそれぞれの前記取り付け面を前記壁に取り付ける工程と、前記複数対の各一対の受け具の前記受け面上に両端部がそれぞれ載置された状態で複数の野縁受けを取り付ける工程と、前記複数の野縁受けの下に複数の野縁を取り付ける工程と、前記複数の野縁の下に天井板を取り付ける工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の天井の構築方法によれば、野縁受けを取り付けるためには受け具を壁に取り付ければよいだけであるので、工程が簡易であり、工期の短縮化を図ることが可能となる。また、天井が存在するので、配管やラックが天井で隠され、見栄えが優れたものとなると共に、これらを掃除することが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る天井構造の上面図。
図2図1のII-II線における拡大断面図。
図3】本発明の実施形態に係る天井の構築方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る天井構造について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1及び図2は本実施形態を模式的に説明するための図であり、寸法はデフォルメされている。
【0018】
天井構造は、対向する壁10の間に構築された天井100の構造であって、ここでは、部屋の側壁である壁10の間に位置する廊下の天井100の構造である。
【0019】
天井構造は、対向する壁10に取り付けられた複数対の受け具20、この複数対の受け具20に両端部が載置された状態で取り付けられた複数の野縁受け30、複数の野縁受け30の下に取り付けられた複数の野縁40、複数の野縁40の下に取り付けられた天井板(天井パネル)50などから構成されている。なお、図示しないが、天井100の上方にダクトなどの天井裏に配置される各種の構成を配置してもよい。
【0020】
各受け具20は、壁10に取り付けられる取り付け面21と、取り付け面21と直交し、上面に野縁受け30の長手方向の端部が載置された状態で水平に取り付けられる受け面22とをそれぞれ有している。ここでは、受け具20は、ステンレス鋼などの金属からなるアングルピースであり、取り付け面21と受け面22が直交しており、これらの端部が辺状に連結されている。
【0021】
取り付け面21には、ここでは、2個の円形の貫通孔23が形成されており、これら貫通孔23にそれぞれ打ち込みビス24が挿通され、これら打ち込みビス24が壁10に打ち込まれる。これにより、受け具20は壁10の垂直面に固定され、受け面22が水平面状に所定の位置に対向して配置される。
【0022】
受け面22には、野縁受け30を取り付けるための2個の長円状の貫通孔25が形成されている。これら2個の貫通孔25は野縁受け30の長手方向(図1及び図2における左右方向)と直交する方向(図1における上下方向)に並列して配置されている。
【0023】
各野縁受け30は、ステンレス鋼などの金属からなる長尺状の部材であり、ここでは、リップ型や断面コの字状の溝形鋼である。野縁受け30は、その長手方向が壁10の対向する方向に延び、互いに平行となるように、受け具20に取り付けられている。野縁受け30は、受け具20を介して壁10に取り付けられているだけであり、廊下の上方の梁などに吊り下げ具などによって吊り下げられてはいない。
【0024】
野縁受け30は、水道管、ガス管、冷・暖房管などの各種配管を支えるラックとして用いることができる。そして、複数の野縁受け30の上に、電気ケーブルなどの各種ケーブルを支えるラックを配置することもできる。
【0025】
各野縁受け30の両端部には、2個の長円状の貫通孔31が、上下方向に貫通してそれぞれ2個形成されている。そして、受け具20の受け面22の貫通孔25と野縁受け30の貫通孔31とにボルト26が挿通され、このボルト26の先端部からナット27が螺合されて固定されている。これにより、野縁受け30が受け具20に固定されている。
【0026】
受け具20の受け面22の各貫通孔25及び野縁受け30の各貫通孔31はともに、野縁受け30の長手方向に長軸を有する長円状となっている。これにより、ボルト26とナット27と螺合力を超える力(本発明の所定の力に相当する)を野縁受け30の長手方向に受けた場合、貫通孔25,31内にてその長軸方向にボルト26は移動することが可能である。よって、地震などにより天井100、ひいては野縁受け30に大きな力が作用した場合であっても、受け具20や野縁受け30などの破損や脱落などが生じる可能性が低減されるので、天井100の破損、落下などの抑制を図ることが可能となる。
【0027】
なお、受け具20の受け面22の各貫通孔25又は野縁受け30の各貫通孔31の少なくとも一方が長円状であればよく、他の一方は円状であってもよい。また、受け具20の受け面22の各貫通孔25又は野縁受け30の各貫通孔31をボルト26の直径と比較して全体として余裕の大きなルーズホールとしてもよい。これにより、全ての方向に対して移動の余裕を有することが可能となる。
【0028】
また、各受け具20の取り付け面21と野縁受け30の両端部の端面との間に衝撃吸収材(クッション材)60を配置させることが好ましい。衝撃吸収材60は、弾性変形可能な材料、例えばゴムやエラストマーからなるものである。このように配置した衝撃吸収材60によって地震のエネルギーの一部を吸収することができるので、天井100の耐震性能のさらなる向上を図ることが可能となる。さらに、図示しないが、受け具20の受け面22の上面と野縁受け30の両端部の下面との間に衝撃吸収材を配置してもよい。
【0029】
複数の野縁40は、例えば断面コの字状や断面ロ字状の溝形鋼からなる天井下地であり、それぞれ複数の野縁受け30の下面に上面が当接するように取り付けられている。これらの取り付けは、図示しないがクリップなどのジョイント部材を用いた従来から既知の構成で取り付けられていればよい。
【0030】
天井板50は、例えば化粧石膏ボードなどからなるものであり、野縁40の下面に上面が当接するように取り付けられている。天井板50の取り付けは、ビス留めなどの従来から既知の構成によって取り付けられていればよい。
【0031】
以下、上述した天井100の構築方法について図3も参照して説明する。
【0032】
まず、複数の受け具20を準備する受け具準備工程(STEP1)を行う。次に、壁10に対となる受け具20が対向するように、打ち込みビス24を用いて受け具20の取り付け面21を壁10に取り付ける受け具取り付け工程(STEP2)を行う。これにより、各受け具20の受け面22は水平に同じ高さで取り付けられた状態となる。
【0033】
次に、各一対の受け具20のそれぞれ受け面22上に両端部を載置された状態で野縁受け30をボルト26及びナット27を用いて取り付ける野縁受け取り付け工程(STEP3)を行う。次に、複数の野縁受け30の下に複数の野縁40を取り付ける野縁取り付け工程(STEP4)を行う。最後に、複数の野縁40の下の天井板50を取り付ける天井板取り付け工程(STEP5)を行う。これにより、天井100の構築が完成する。
【0034】
以上、説明したように、天井100によれば、野縁受け30を取り付けるためには受け具20を壁10に取り付ければよいだけであるので、工程が簡易であり、工期の短縮化を図ることが可能となる。また、天井100が存在するので、配管やラックが天井100で隠され、これらの掃除が不要となると共に、見栄えが優れたものとなる。
【0035】
また、従来のように吊り下げ具を必要としないので、天井裏の作業が容易となり、メンテナンス性が優れたものとなる。さらに、壁10に取り付けた受け具20で野縁受け30を支持しているので、従来のように吊り下げ具で野縁受けを支持する場合と比較して、野縁受け30を確実に支持することが可能となる。
【0036】
なお、本発明は、上述した天井100の構造に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0037】
例えば、本実施形態に係る天井100は部屋の側壁である壁10の間に位置する廊下の天井であるが、これに限定されず、例えば、部屋の中の天井であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…壁、 20…受け具、 21…取り付け面、 22…受け面、 23…貫通孔、 24…打ち込みビス、 25…貫通孔、 26…ボルト、 27…ナット、 30…野縁受け、 31…貫通孔、 40…野縁、 41…貫通孔、 50…天井板、 60…衝撃吸収材、 100…天井。
図1
図2
図3