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特許7553341ランキンサイクル装置およびその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ランキンサイクル装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
F01K25/10 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020203446
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090876
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-05-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅也
(72)【発明者】
【氏名】倉本 哲英
(72)【発明者】
【氏名】引地 巧
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227903(JP,A)
【文献】特開2009-287433(JP,A)
【文献】特開2009-133266(JP,A)
【文献】特開2016-121665(JP,A)
【文献】特開2020-094580(JP,A)
【文献】特開2020-183702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
F01K 23/00- 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ、第1部分、蒸発器、膨張機、第2部分および凝縮器を有し、作動流体がこれらの要素をこの順番で流れるように構成され、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられている主流路と、
第1弁を有し、前記主流路における前記ポンプよりも下流側かつ前記第1部分よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第1部分よりも下流側かつ前記蒸発器よりも上流側の部分とを接続している第1バイパス流路と、
前記蒸発器の入口、前記蒸発器の内部および前記蒸発器の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける前記作動流体の温度を検出する温度センサと、
を備え、
前記第1バイパス流路は、前記凝縮器で冷却された前記作動流体を前記第1部分を経由せず前記蒸発器に直接導く、
ランキンサイクル装置。
【請求項2】
前記温度センサによって検出された温度が閾値温度以上である場合、前記第1弁が開放される、請求項1に記載のランキンサイクル装置。
【請求項3】
第2弁を有し、前記主流路における前記蒸発器よりも下流側かつ前記膨張機よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第2部分よりも下流側かつ前記凝縮器よりも上流側の部分とを接続している第2バイパス流路をさらに備えた、請求項1に記載のランキンサイクル装置。
【請求項4】
前記温度センサによって検出された温度が閾値温度以上である場合、前記第1弁および前記第2弁が開放される、請求項3に記載のランキンサイクル装置。
【請求項5】
前記閾値温度は、前記作動流体の分解温度未満である、請求項2または4に記載のランキンサイクル装置。
【請求項6】
第1モードにおいて、ポンプ、第1部分、蒸発器、膨張機、第2部分、および凝縮器に、この順に作動流体を流すことと、ここで、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられており、
第2モードにおいて、前記第1部分をバイパスする第1バイパス流路に前記作動流体を流すことと、を含
前記第1バイパス流路は、前記凝縮器で冷却された前記作動流体を前記第1部分を経由せず前記蒸発器に直接導く、ランキンサイクル装置の運転方法。
【請求項7】
第2モードにおいて、前記膨張機および前記第2部分をバイパスする第2バイパス流路に前記作動流体を流すことをさらに含む、請求項6に記載のランキンサイクル装置の運転方法。
【請求項8】
前記蒸発器の入口、前記蒸発器の内部および前記蒸発器の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける前記作動流体の温度が閾値温度未満である場合、前記第1モードが選択され、
前記蒸発器の入口、前記蒸発器の内部および前記蒸発器の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける前記作動流体の温度が閾値温度以上である場合、前記第2モードが選択される、請求項6または7に記載のランキンサイクル装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ランキンサイクル装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクル装置に関する種々の検討がなされている。特許文献1には、ランキンサイクル装置が開示されている。
【0003】
特許文献1のランキンサイクル装置は、膨張機、凝縮器、ポンプおよび蒸発器を備えている。作動流体は、これらの構成要素を上記の順番で循環する。
【0004】
特許文献1のランキンサイクル装置は、さらに、再熱器を備えている。再熱器において、膨張機から吐出された作動流体の熱エネルギーが、ポンプから吐出された作動流体に伝えられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-78685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、再熱器を備えたランキンサイクル装置の信頼性を向上させるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示におけるランキンサイクル装置は、
ポンプ、第1部分、蒸発器、膨張機、第2部分および凝縮器を有し、作動流体がこれらの要素をこの順番で流れるように構成され、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられている主流路と、
第1弁を有し、前記主流路における前記ポンプよりも下流側かつ前記第1部分よりも上流側の部分と、前記主流路における前記第1部分よりも下流側かつ前記蒸発器よりも上流側の部分とを接続している第1バイパス流路と、
前記蒸発器の入口、前記蒸発器の内部および前記蒸発器の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける前記作動流体の温度を検出する温度センサと、
を備える。
【0008】
また、本開示におけるランキンサイクル装置の運転方法は、
第1モードにおいて、ポンプ、第1部分、蒸発器、膨張機、第2部分、および凝縮器に、この順に作動流体を流すことと、ここで、前記第1部分を流れる前記作動流体と前記第2部分を流れる前記作動流体とが熱交換する再熱器が設けられており、
第2モードにおいて、前記第1部分をバイパスする第1バイパス流路に前記作動流体を流すことと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術は、再熱器を備えたランキンサイクル装置の信頼性を向上させうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1におけるランキンサイクル装置を示す図
図2】実施の形態1におけるランキンサイクル装置の運転の制御を示すフローチャート
図3】実施の形態2におけるランキンサイクル装置を示す図
図4】実施の形態2におけるランキンサイクル装置の運転の制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、膨張機、凝縮器、ポンプおよび蒸発器がこの順に接続されているとともに、再熱器が設けられたランキンサイクル装置があった。
【0012】
特許文献1のランキンサイクル装置では、作動流体が膨張機を経由せずに再熱器に流入することを可能にするバイパス流路と、バイパス流路における作動流体の流量を調節する制御弁とが設けられている。これにより、制御弁を調節して、高温高圧の作動流体をバイパス流路に流すことにより、ランキンサイクル装置の信頼性の向上を図っている。
【0013】
ランキンサイクル装置では、熱源の過渡変動により、熱源流体の温度が過渡的に上昇し得る。熱源流体の温度が過渡的に上昇すると、これに追随して蒸発器から流出する作動流体の温度も過渡的に上昇し得る。このとき、蒸発器から流出する作動流体に分解温度を超えるような過昇温が生じると、作動流体の組成が変化し、作動流体の性能が低下する。そのため、作動流体の温度を分解温度未満に速やかに低下させることが望ましい。
【0014】
特許文献1に開示のバイパス流路によれば、蒸発器から流出する作動流体に分解温度を超えるような過昇温が生じた場合、膨張機を経由させずに作動流体を再熱器に流入させることができる。しかし、ポンプから流出した作動流体は、常に再熱器を経由して蒸発器に流入する。そのため、蒸発器には再熱器で加熱された作動流体が流入するので、蒸発器から流出する作動流体の温度を速やかに低下させることは難しい。
【0015】
作動流体の温度を速やかに低下させる方法として、例えば、ポンプの気筒容積を増加させたり、ポンプの回転数を大幅に増加させたりすることにより、作動流体の循環量を増加させる方法がある。また、凝縮器のファンのサイズアップまたは回転数の大幅な増加により、凝縮器の冷却能力を向上させて作動流体の温度を素早く低下させる方法も考えられる。しかし、これらの方法は、ランキンサイクル装置の仕様変更を伴うため、コストアップを招く。
【0016】
本発明者らは、作動流体の信頼性の向上と低コスト化との両立を実現すべく、作動流体が再熱器を経由せずに蒸発器に流入することを可能にするバイパス流路を設けることを想到した。このような構成によれば、熱源温度の過渡変動によって、作動流体に分解温度を超えるような過昇温が生じた場合であっても、作動流体が再熱器で加熱されるのを抑制することができる。
【0017】
このような知見に基づき、本発明者らは、本開示の主題を構成するに至った。
【0018】
そこで、本開示は、再熱器を備えたランキンサイクル装置の信頼性を向上させるための技術を提供する。
【0019】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0020】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0021】
(実施の形態1)
以下、図1を用いて、実施の形態を説明する。
【0022】
[1-1.構成]
図1において、ランキンサイクル装置50は、主流路F1、第1バイパス流路F2、および温度センサ10を備えている。主流路F1および第1バイパス流路F2には、作動流体が流れる。
【0023】
主流路F1は、ポンプ1、再熱器2、蒸発器3、膨張機4、および凝縮器5を有する。再熱器2は、第1部分2aおよび第2部分2bを含む。第1部分2aは、再熱器2の高圧側の流路である。第2部分2bは、再熱器2の低圧側の流路である。再熱器2において、第1部分2aおよび第2部分2bは、互いを流れる作動流体の間で熱交換がなされるように構成されている。
【0024】
主流路F1において、ポンプ1、第1部分2a、蒸発器3、膨張機4、第2部分2b、および凝縮器5を、この順に作動流体が流れる。再熱器2において、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体とが熱交換する。主流路F1において、ポンプ1、第1部分2a、蒸発器3、膨張機4、第2部分2b、および凝縮器5は、配管によって環状にこの順で接続されている。
【0025】
第1バイパス流路F2は、主流路F1におけるポンプ1よりも下流側かつ第1部分2aよりも上流側の部分と、主流路F1における第1部分2aよりも下流側かつ蒸発器3よりも上流側の部分とを接続している。第1バイパス流路F2は、再熱器2をバイパスする流路である。
【0026】
第1バイパス流路F2は、第1弁7を有している。
【0027】
ランキンサイクル装置50は、さらに、制御器12を備えていてもよい。
【0028】
以下、ランキンサイクル装置50の各構成要素について説明する。
【0029】
ポンプ1は、作動流体を吸い込んで圧送する。本実施の形態では、ポンプ1は、容積型のギヤポンプである。
【0030】
蒸発器3は、熱源流体Gの熱エネルギーを回収する熱交換器である。作動流体は、蒸発器3において、熱源流体Gによって加熱され、蒸発する。蒸発器3は、本実施の形態では、フィンチューブ式熱交換器である。
【0031】
膨張機4は、作動流体を膨張させて減圧させる。膨張機4は、作動流体を膨張させることによって、作動流体の膨張エネルギーを回転動力に変換する。膨張機4の回転軸には、発電機(図示省略)が接続されている。膨張機4の回転によって発電機が駆動される。こうして、発電が行われる。本実施の形態では、膨張機4は、レシプロ膨張機等の容積型の膨張機である。
【0032】
再熱器2は、ポンプ1から吐出された作動流体と膨張機4から吐出された作動流体とを熱交換させる。これにより、ポンプ1から吐出された作動流体は加熱され、膨張機4から吐出された作動流体は冷却される。本実施の形態では、再熱器2は、プレート式熱交換器である。プレート式熱交換器の一具体例では、金属プレートが複数枚積層されている。
【0033】
凝縮器5は、作動流体と外気とを熱交換させることによって、作動流体を冷却して凝縮し、外気へ熱を放出する。凝縮器5はファン6を備える。ファン6は、作動流体と熱交換するべき冷却媒体を凝縮器5に送り込む。外気はファン6によって凝縮器5へ送り込まれる。本実施の形態では、凝縮器5は、空冷式のフィンチューブ熱交換器である。
【0034】
温度センサ10は、蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける作動流体の温度を検出する。「蒸発器3の入口」は、再熱器2の高圧側の出口から蒸発器3の入口までを含む概念である。主流路F1において、再熱器2の高圧側の出口から蒸発器3の入口まで、作動流体の温度は一定とみなすことができるからである。「蒸発器3の出口」は、蒸発器3の出口から膨張機4の入口までを含む概念である。主流路F1において、蒸発器3の出口から膨張機4の入口まで、作動流体の温度は一定とみなすことができるからである。蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口における作動流体の温度は高くなり易い。
【0035】
温度センサ10は、蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つに設けられていてもよい。温度センサ10は、蒸発器3の入口付近に設けられていてもよい。温度センサ10は、蒸発器3の出口付近に設けられていてもよい。温度センサ10は、蒸発器3の内部に設けられていてもよい。この場合、温度センサ10は、蒸発器3の内部の作動流体の温度を検出するものに限られない。例えば、温度センサ10は、熱源流体Gの温度を検出することにより、蒸発器3の内部の作動流体の温度を予想するものであってもよい。
【0036】
図1では、温度センサ10は、主流路F1において蒸発器3の出口よりも下流側かつ膨張機4の入口よりも上流側の部分に設けられている。
【0037】
温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、第1弁7が開放される。第1弁7の開度に応じて、第1部分2aにおける作動流体の流量と第1バイパス流路F2における作動流体の流量とが調節される。本実施の形態では、第1弁7は、温度センサ10によって検出された温度に基づき開閉する開閉弁である。
【0038】
本実施の形態では、第1弁7は、温度センサ10によって検出された温度に基づいて開閉する機械的な弁である。
【0039】
本実施の形態では、第1弁7は、温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、すなわち、蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇した場合、その開度が増加する。ここで、閾値温度をTthとし、作動流体の分解温度をTdとする。このとき、本実施の形態ではTth≦Tdであり、具体的にはTth<Tdであり、より具体的にはTd-80℃≦Tth<Tdである。一具体例では、閾値温度Tthは、200℃である。ただし、閾値温度は特に限定されない。閾値温度Tthは、温度センサ10の位置に応じて設定されてもよい。
【0040】
第1弁7は、開閉弁であってもよく、流量調整弁であってもよい。第1弁7は、主流路F1と第1バイパス流路F2との分岐位置B1に設けられた三方弁であってもよく、主流路F1と第1バイパス流路F2との合流位置C1に設けられた三方弁であってもよい。
【0041】
制御器12は、ポンプ1、ファン6、第1弁7等のランキンサイクル装置50の要素を制御する。
【0042】
本実施の形態では、作動流体は、フッ素化合物である。本実施の形態では、具体的には、作動流体は、HFO1336mzz(E)である。HFO1336mzz(E)の分解温度は、250℃である。
【0043】
[1-2.動作]
以上のように構成されたランキンサイクル装置50の運転の制御について、図2を参照しながら説明する。図2は、ランキンサイクル装置50の運転の制御を示すフローチャートである。
【0044】
まず、温度センサ10で作動流体の温度Tを検出する(ステップS1)。次に、検出された温度Tに基づき、作動流体の温度が第1閾値温度Tth以上であるかどうか判断する(ステップS2)。温度Tが第1閾値温度Tth以上である場合、第1弁7を開放する(ステップS3)。第1弁7を開放することにより、作動流体の温度を下げることができる。作動流体の分解温度をTdとするとき、Tth≦Tdであり、具体的にはTth<Tdであり、より具体的にはTd-80℃≦Tth<Tdである。一具体例では、第1閾値温度Tthは、200℃である。ただし、第1閾値温度Tthは特に限定されない。
【0045】
第1弁7を開放した後、温度センサ10で作動流体の温度Tを検出する(ステップS4)。検出された温度Tに基づき、作動流体の温度が第2閾値温度(Tth-α)以下であるかどうか判断する(ステップS5)。温度Tが第2閾値温度(Tth-α)以下になるまで、ステップS3からステップS5までの処理を繰り返す。αは、不感帯を規定する温度である。温度Tが第2閾値温度(Tth-α)以下である場合、第1弁7を閉鎖する(ステップS6)。
【0046】
ランキンサイクル装置50の運転の制御は、制御器12によって行われてもよい。この場合、制御器12は、図2のフローチャートの各処理を所定の制御周期で実行する。
【0047】
ランキンサイクル装置50の運転方法は、第1モードにおいて、ポンプ1、第1部分2a、蒸発器3、膨張機4、第2部分2b、および凝縮器5に、この順に作動流体を流すことを含む。第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体とが熱交換する再熱器2が設けられている。当該運転方法は、第2モードにおいて、第1部分2aをバイパスする第1バイパス流路F2に作動流体を流すことを含む。
【0048】
ランキンサイクル装置50の運転方法においては、蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける作動流体の温度が閾値温度未満である場合、第1モードが選択される。蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける作動流体の温度が閾値温度以上である場合、第2モードが選択される。
【0049】
第1モードにおいて、作動流体は、第1部分2aに流れ、第1バイパス流路F2には流れない。一方、第2モードにおいて、作動流体は、第1バイパス流路F2のみに流れてもよく、第1バイパス流路F2に加えて第1部分2aに流れてもよい。
【0050】
図2のフローチャートにおけるステップS2は、第1モードと第2モードとのいずれかの運転モードを選択するステップである。ヒステリシス制御を採用した場合、温度センサ10によって検出された温度が第1閾値温度Tth未満であるにもかかわらず、第2モードが選択され続ける期間が存在する。
【0051】
第1弁7が閉鎖している状態において、作動流体は、ポンプ1に吸い込まれ、加圧される。高圧の作動流体は、再熱器2の第1部分2aに流入する。第1部分2aから流出した作動流体は、蒸発器3に流入する。蒸発器3において、作動流体は、熱源流体Gから熱を受け取って蒸発し、過熱状態の気相の作動流体へと変化する。高温かつ気相の作動流体は、膨張機4へと送られる。膨張機4において、作動流体の圧力エネルギーが機械エネルギーに変換され、発電機において電力が生成される。低圧の作動流体は、再熱器2の第2部分2bに流入する。第2部分2bから流出した作動流体は凝縮器5に流入する。作動流体は、凝縮器5おいて、外気によって冷却され、凝縮する。凝縮した作動流体はポンプ1によって加圧され、再び蒸発器3に送られる。
【0052】
第1弁7が閉鎖している状態において、再熱器2では、ポンプ1から吐出された作動流体と膨張機4から吐出された作動流体との熱交換が行われる。ポンプ1から吐出された作動流体は、膨張機4から吐出された作動流体によって加熱され、膨張機4から吐出された作動流体はポンプ1から吐出された作動流体によって冷却される。
【0053】
温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、第1弁7が開放される。これにより、作動流体が、第1バイパス流路F2を流れ、再熱器2の第1部分2aをバイパスする。本実施の形態では、閾値温度は、作動流体の分解温度未満の温度である。
【0054】
第1弁7が開放している状態において、一部の作動流体は再熱器2の第1部分2aへ流れてもよい。第1部分2aへ流れた一部の作動流体は、第1部分2aで加熱され、その後、第1バイパス流路F2を流れた作動流体と合流する。合流後、作動流体は、蒸発器3へ流入する。
【0055】
ただし、第1弁7が閉鎖している状態に比べて、第1弁7が開放している状態においては、第1部分2aを流れる作動流体の流量は小さい。そのため、第1弁7が閉鎖している状態に比べて、第1弁7が開放している状態においては、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量は小さい。よって、第1弁7が開放している状態において、第1部分2aにおける作動流体の温度の上昇幅は抑制される。このため、蒸発器3に温度が低い作動流体を供給し得る。
【0056】
典型例では、第1弁7が開放している状態において、第1部分2aを流れる作動流体の流量は、第1バイパス流路F2を流れる作動流体の流量に比べて小さい。一具体例では、第1部分2aを流れる作動流体の流量は、第1バイパス流路F2を流れる作動流体の流量の0%以上30%以下であり、0%以上20%以下であってもよく、0%以上10%以下であってもよい。第1部分2aを流れる作動流体の流量は、実質的にゼロであってもよく、ゼロであってもよい。なお、実質的にゼロとは、完全なゼロのみならず、例えば流量の測定誤差等をゼロに加減算した範囲を含む意味である。
【0057】
第1弁7が開放している状態において、第1部分2aを流れる作動流体の流量を実質的にゼロにするために、分岐位置B1と再熱器2の高圧側の入口との間に追加の開閉弁を設けてもよい。追加の開閉弁は、合流位置C1と再熱器2の高圧側の出口との間に設けられていてもよい。2つの開閉弁に代えて、分岐位置B1または合流位置C1に三方弁が設けられていてもよい。
【0058】
[1-3.効果等]
本実施の形態では、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度未満である場合、第1弁7は閉鎖している。この場合、第1バイパス流路F2に作動流体は流れない。つまり、ポンプ1から流出した作動流体は、再熱器2の第1部分2aを経由して蒸発器3に導かれる。これにより、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量が確保される。このことは、第1部分2aにおける作動流体の温度の上昇幅を稼ぎ易く、蒸発器3に供給される作動流体の温度を高め易いことを意味する。このことは、ランキンサイクル装置50の運転効率を向上させる観点から有利である。
【0059】
一方、温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、第1弁7が開放される。これにより、第1バイパス流路F2に作動流体が流れる。つまり、凝縮器5で冷却された作動流体が、第1部分2aを経由せず蒸発器3に導かれる経路が形成される。これにより、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量が減少する。
【0060】
以上の説明から理解されるように、本実施の形態によれば、再熱器2における熱交換により、ランキンサイクル装置50の運転効率が向上し得る。一方、第1バイパス流路F2によれば、作動流体の温度が過度に上昇した場合あるいは過度に上昇しつつある場合、再熱器2による作動流体の温度上昇作用を抑制し、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。そのため、再熱器2を備えたランキンサイクル装置50において、ファン6のサイズアップまたは回転数の大幅な増加を必要とすることなく、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。よって、低コスト化を図りつつランキンサイクル装置50の信頼性を向上させることができる。
【0061】
本実施の形態では、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が作動流体の分解温度以上である場合、第1弁7が開放する。このようにすれば、作動流体の温度が作動流体の分解温度以上に到達し難いので、作動流体が分解し難い。
【0062】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1バイパス流路F2における作動流体の流量が増加してもよい。閾値温度は、作動流体の分解温度未満の値であってもよい。このような構成は、作動流体の分解を防止するのに適している。
【0063】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1弁7の開度が増加してもよい。閾値温度は、作動流体の分解温度未満の値であってもよい。このような構成は、作動流体の分解を防止するのに適している。
【0064】
また、本実施の形態において、閾値温度と分解温度との差は、80℃以下であってもよい。このような構成によれば、作動流体の温度が分解温度よりも十分に低いにも関わらず第1バイパス流路F2における作動流体の流量が増加することを防止し易く、再熱器2に基づく運転効率の向上の効果を享受し易い。
【0065】
閾値温度と分解温度との差は、70℃以下であってもよく、60℃以下であってもよい。閾値温度と分解温度との差は、20℃以上80℃以下であってもよく、30℃以上70℃以下であってもよく、40℃以上60℃以下であってもよい。一例では、閾値温度と分解温度との差は、50℃である。
【0066】
一具体例では、作動流体は、HFO1336mzz(E)である。HFO1336mzz(E)の分解温度は、250℃である。ただし、HFO1336mzz(E)の特性変化は温度が220から230℃であるときから徐々に起こり始めるという報告がある。そこで、少し余裕をみて閾値温度を200℃と設定する。このようにすれば、HFO1336mzz(E)の分解のみならず特性変化が生じ難い。
【0067】
閾値温度と分解温度との差が80℃以下である構成は、作動流体がHFO1336mzz(E)である場合以外においても採用され得る。この差が70℃以下である構成、この差が60℃以下である構成、この差が20℃以上80℃以下である構成、この差が30℃以上70℃以下である構成、この差が40℃以上60℃以下である構成、この差が50℃である構成についても、同様である。
【0068】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1バイパス流路F2における作動流体の流量が増加するとともに、ポンプ1の回転数が増加してもよい。ポンプ1の回転数だけでなく、第1バイパス流路F2における作動流体の流量も増加させれば、ポンプ1の回転数を大幅に増加させる必要がない。このような構成によれば、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0069】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1弁7の開度が増加するとともに、ポンプ1の回転数が増加してもよい。ポンプ1の回転数だけでなく、第1弁7の開度も増加させれば、ポンプ1の回転数を大幅に増加させる必要がない。このような構成によれば、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0070】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1バイパス流路F2における作動流体の流量が増加するとともに、ファン6の回転数が増加してもよい。ファン6の回転数だけでなく、第1バイパス流路F2における作動流体の流量も増加させれば、ファン6の回転数を大幅に増加させる必要がない。このような構成によれば、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0071】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1弁7の開度が増加するとともに、ファン6の回転数が増加してもよい。ファン6の回転数だけでなく、第1弁7の開度も増加させれば、ファン6の回転数を大幅に増加させる必要がない。このような構成によれば、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0072】
図1の例では、冷却媒体は、外気である。
【0073】
また、本実施の形態において、第1バイパス流路F2は、主流路F1から第1弁7まで延びる上流部分F2aと、第1弁7から主流路F1まで延びる下流部分F2bとを含んでいてもよい。上流部分F2aは下流部分F2bよりも長くてもよい。このような構成によれば、上流部分F2aを流れている間に作動流体の温度が下がり易い。このため、第1弁7の温度は、上昇し難く、第1弁7の耐熱温度を超え難い。
【0074】
また、本実施の形態において、作動流体は、フッ素化合物であってもよい。フッ素化合物である作動流体は、地球温暖化係数が低く、環境負荷が低い傾向にある。一方、フッ素化合物である作動流体は、分解温度が低い傾向にある。第1バイパス流路F2によれば、作動流体の温度上昇を抑制でき、作動流体の分解を抑制できる。このため、本実施の形態によれば、作動流体の環境負荷が低いというメリットを、作動流体が熱により分解し易いというデメリットを抑制しつつ享受できる。
【0075】
なお、フッ素化合物は、フッ素原子を含む化合物である。
【0076】
また、本実施の形態において、ランキンサイクル装置50は、ランキンサイクル装置50の外部から蒸発器3に熱源流体Gを導く熱源流路9を備えていてもよい。
【0077】
熱源流路9は、熱源Sから蒸発器3に熱源流体Gを導く。熱源Sは、ランキンサイクル装置50の外部に設けられている。具体的には、熱源Sは、工場、焼却炉等の施設である。熱源流体Gは、排気ガスである。熱源流路9は、排熱流路であり、具体的には排気ダクトである。
【0078】
図1の例では、熱源流路9内に、蒸発器3が設けられている。図1に示すように、熱源流路9内に、蒸発器3が設けられていてもよい。この場合、蒸発器3は、排熱エネルギーを回収する熱交換器である。このような構成によれば、蒸発器3において、熱源流体Gと作動流体とを直接的に熱交換させ易く、蒸発器3で作動流体を加熱し易く、ランキンサイクル50の運転効率を向上させ易い。
【0079】
また、熱源Sの過渡変動により、熱源流体Gの温度が過渡的に上昇し得る。熱源流体Gの温度が過渡的に上昇すると、これに追随して蒸発器3から流出する作動流体の温度も過渡的に上昇し得る。例えば、熱源Sが工場、焼却炉等の施設である場合、ファン等の不具合によって、上記のような過渡変動が生じ得る。本実施の形態によれば、熱源流体Gの温度が過渡的に上昇し、これに追随して蒸発器3から流出する作動流体に分解温度を超えるような過昇温が生じても、第1バイパス流路F2により、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0080】
以下、他の実施の形態を例示する。以下では、先に説明した実施の形態と同一の機能を有する構成要素には同一番号を付して詳細な説明は省略することがある。
【0081】
(実施の形態2)
以下、図3を用いて、実施の形態2を説明する。
【0082】
[2-1.構成]
ランキンサイクル装置60は、図1を参照して説明したランキンサイクル装置50に加え、第2バイパス流路F3をさらに備えている。
【0083】
第2バイパス流路F3は、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ膨張機4よりも上流側の部分と、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分とを接続している。第2バイパス流路F3は、膨張機4および再熱器2をバイパスする流路である。
【0084】
第2バイパス流路F3は、第2弁8を有している。
【0085】
温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、第1弁7および第2弁8が開放される。第1弁7の開度に応じて、第1部分2aにおける作動流体の流量と第1バイパス流路F2における作動流体の流量とが調節される。第2弁8の開度に応じて、膨張機4および第2部分2bにおける作動流体の流量と第2バイパス流路F3における作動流体の流量とが調節される。本実施の形態では、第1弁7および第2弁8は、温度センサ10によって検出された温度に基づき開閉する開閉弁である。
【0086】
本実施の形態では、第1弁7および第2弁8は、温度センサ10によって検出された温度に基づいて開閉する機械的な弁である。
【0087】
本実施の形態では、第1弁7および第2弁8は、温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、すなわち、蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける作動流体の温度が閾値温度を跨いで上昇した場合、第1弁7および第2弁8の開度が増加する。閾値温度Tthは、温度センサ10の位置に応じて設定されてもよい。
【0088】
第2弁8は、開閉弁であってもよく、流量調整弁であってもよい。第2弁8は、主流路F1と第2バイパス流路F3との分岐位置B2に設けられた三方弁であってもよく、主流路F1と第2バイパス流路F3との合流位置C2に設けられた三方弁であってもよい。
【0089】
[2-2.動作]
以上のように構成されたランキンサイクル装置60の運転の制御について、図4を参照しながら説明する。図4は、ランキンサイクル装置60の運転の制御を示すフローチャートである。図4におけるST1は、図2におけるS1に対応している。図4におけるST2は、図2におけるS2に対応している。図4におけるST4は、図2におけるS4に対応している。図4におけるST5は、図2におけるS5に対応している。そのため、ランキンサイクル装置60の運転の制御については、図2を参照しながら説明したランキンサイクル装置50の運転の制御と異なるST3およびST6のみについて説明する。
【0090】
温度Tが第1閾値温度Tth以上である場合、第1弁7および第2弁8を開放する(ステップST3)。第1弁7および第2弁8を開放することにより、作動流体の温度を下げることができる。
【0091】
温度Tが第2閾値温度(Tth-α)以下である場合、第1弁7および第2弁8を閉鎖する(ステップST6)。
【0092】
ランキンサイクル装置60の運転の制御は、制御器12によって行われてもよい。この場合、制御器12は、図4のフローチャートの各処理を所定の制御周期で実行する。
【0093】
ランキンサイクル装置60の運転方法は、実施の形態1で説明したランキンサイクル装置50の運転方法と、第2モードのみが異なる。ランキンサイクル装置60の運転方法では、第2モードにおいて、膨張機4および第2部分2bをバイパスする第2バイパス流路F3に作動流体を流すことをさらに含む。
【0094】
ランキンサイクル装置60の運転方法においては、蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける作動流体の温度が閾値温度未満である場合、第1モードが選択される。蒸発器3の入口、蒸発器3の内部および蒸発器3の出口からなる群より選ばれる少なくとも1つにおける作動流体の温度が閾値温度以上である場合、第2モードが選択される。
【0095】
第1モードにおいて、作動流体は、第1部分2aに流れ、第1バイパス流路F2には流れない。また、第1モードにおいて、作動流体は、第2部分2bに流れ、第2バイパス流路F3には流れない。一方、第2モードにおいて、作動流体は、第1バイパス流路F2のみに流れてもよく、第1バイパス流路F2に加えて第1部分2aに流れてもよい。また、第2モードにおいて、作動流体は、第2バイパス流路F3のみに流れてもよく、第2バイパス流路F3に加えて第2部分2bに流れてもよい。
【0096】
図4のフローチャートにおけるステップST2は、第1モードと第2モードとのいずれかの運転モードを選択するステップである。ヒステリシス制御を採用した場合、温度センサ10によって検出された温度が第1閾値温度Tth未満であるにもかかわらず、第2モードが選択され続ける期間が存在する。
【0097】
第1弁7および第2弁8が閉鎖している状態における作動流体の流れは、実施の形態1で説明した通りである。
【0098】
温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、第1弁7および第2弁8が開放される。これにより、作動流体が、第1バイパス流路F2を流れ、再熱器2の第1部分2aをバイパスするようになる。また、作動流体が、第2バイパス流路F3を流れ、膨張機4および再熱器2の第2部分2bをバイパスするようになる。本実施の形態では、閾値温度は、作動流体の分解温度未満である。
【0099】
温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、第1弁7および第2弁8は、略同時に開放されてもよい。温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、まず第1弁7が開放され、次に第2弁8が開放されてもよい。温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、まず第2弁8が開放され、次に第1弁7が開放されてもよい。ただし、第1弁7よりも先に第2弁8が開放される場合において、第2弁8の開放と第1弁7の開放との間にある程度の時間が存在すると、その間に再熱器2の第1部分2aにより加熱された作動流体が蒸発器3に流入する。そのため、温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、第1弁7および第2弁8は、略同時に開放されてもよい。もしくは、まず第1弁7が開放され、次に第2弁8が開放されてもよい。なお、略同時とは、同時または実質的に同時とみなせる程度にわずかな時間以内を意味する。
【0100】
第2弁8が開放している状態において、一部の作動流体は膨張機4へ流れてもよい。膨張機4へ流れた一部の作動流体は、次に、再熱器2の第2部分2bで冷却され、その後、第2バイパス流路F3を流れた作動流体と合流する。合流後、作動流体は、凝縮器5へ流入する。
【0101】
第1弁7および第2弁8が閉鎖している状態に比べ、第1弁7および第2弁8が開放している状態においては、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量はかなり小さい。そのため、第1弁7および第2弁8が開放している状態において、第1部分2aにおける作動流体の温度の上昇幅は大幅に抑制される。このため、蒸発器3に温度がより低い作動流体を供給し得る。
【0102】
典型例では、第2弁8が開放している状態において、第2部分2bを流れる作動流体の流量は、第2バイパス流路F3を流れる作動流体の流量に比べて小さい。一具体例では、第2部分2bを流れる作動流体の流量は、第2バイパス流路F3を流れる作動流体の流量の0%以上30%以下であり、0%以上20%以下であってもよく、0%以上10%以下であってもよい。第2部分2bを流れる作動流体の流量は、実質的にゼロであってもよく、ゼロであってもよい。
【0103】
第2弁8が開放している状態において、第2部分2bを流れる作動流体の流量を実質的にゼロにするために、分岐位置B2と膨張機4の入口との間に追加の開閉弁を設けてもよい。追加の開閉弁は、合流位置C2と再熱器2の低圧側の出口との間に設けられていてもよい。2つの開閉弁に代えて、分岐位置B2または合流位置C2に三方弁が設けられていてもよい。
【0104】
[2-3.効果等]
本実施の形態では、温度センサ10によって検出された温度が閾値温度以上である場合、第1弁7および第2弁8が開放される。これにより、第1バイパス流路F2および第2バイパス流路F3に作動流体が流れる。つまり、凝縮器5で冷却された作動流体が、第1部分2aを経由せず蒸発器3に導かれるとともに、蒸発器3から流出した作動流体が、膨張機4および第2部分2bを経由せずに最短ルートで凝縮器5に導かれ、冷却される。これにより、第1部分2aを流れる作動流体と第2部分2bを流れる作動流体との間の熱交換量が大幅に減少する。
【0105】
また、本実施の形態において、第2バイパス流路F3は、主流路F1における蒸発器3よりも下流側かつ膨張機4よりも上流側の部分と、主流路F1における第2部分2bよりも下流側かつ凝縮器5よりも上流側の部分とを接続している。これにより、第2弁8の開度が非ゼロであるときに、第2部分2bに作動流体が流れることを膨張機4により制限しながら、第2バイパス流路F3に作動流体を流すことができる。このようにすれば、第2部分2bにおける作動流体の流量を小さい値またはゼロにし易い。
【0106】
また、本実施の形態によれば、凝縮器5から流出した作動流体の温度が高い場合であっても、第1バイパス流路F2によって、第1部分2aを経由せずに作動流体を蒸発器3に導くことができる。そして、第2バイパス流路F3によって、蒸発器3から流出した作動流体の全てが膨張機4に流れることを回避できる。これにより、膨張機4の熱による損傷およびこれに伴う発電機の発電電力の低下が生じ難くなる。
【0107】
ここで、再熱器2は、ランキンサイクル装置60の発電効率を向上させるというメリットをもたらし得る一方で、低圧側の第2部分2bにおいて作動流体の圧力を損失させるというデメリットももたらし得る。外気温が高いとき、または膨張機4の吐出温度が低くなるような条件では、再熱器2における圧力損失というデメリットが増加する傾向がある。第2バイパス流路F3によれば、上述のような条件下においても、再熱器2の第2部分2bにおける作動流体の圧力損失を抑制することができるので、発電効率を向上させることができるという利点がある。
【0108】
以上の説明から理解されるように、本実施の形態によれば、再熱器2における熱交換により、ランキンサイクル装置60の運転効率が向上し得る。一方、第1バイパス流路F2および第2バイパス流路F3によれば、作動流体の温度が過度に上昇した場合あるいは過度に上昇しつつある場合、再熱器2による作動流体の温度上昇作用を大幅に抑制し、作動流体の温度をより速やかに低下させることができる。そのため、再熱器2を備えたランキンサイクル装置60において、ファン6のサイズアップまたは回転数の大幅な増加を必要とすることなく、作動流体の温度をより速やかに低下させることができる。よって、低コスト化を図りつつランキンサイクル装置60の信頼性をより向上させることができる。
【0109】
本実施の形態では、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が作動流体の分解温度以上である場合、第1弁7および第2弁8が開放する。このようにすれば、作動流体の温度が作動流体の分解温度以上になり難いので、作動流体が分解し難い。
【0110】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1バイパス流路F2および第2バイパス流路F3における作動流体の流量が増加してもよい。閾値温度は、作動流体の分解温度未満の値であってもよい。このような構成は、作動流体の分解を防止するのに適している。
【0111】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1弁7および第2弁8の開度が増加してもよい。閾値温度は、作動流体の分解温度未満の値であってもよい。このような構成は、作動流体の分解を防止するのに適している。
【0112】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1バイパス流路F2および第2バイパス流路F3における作動流体の流量が増加するとともに、ポンプ1の回転数が増加してもよい。ポンプ1の回転数だけでなく、第1バイパス流路F2および第2バイパス流路F3における作動流体の流量も増加させれば、ポンプ1の回転数を大幅に増加させる必要がない。このような構成によれば、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0113】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1弁7および第2弁8の開度が増加するとともに、ポンプ1の回転数が増加してもよい。ポンプ1の回転数だけでなく、第1弁7および第2弁8の開度も増加させれば、ポンプ1の回転数を大幅に増加させる必要がない。このような構成によれば、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0114】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1バイパス流路F2および第2バイパス流路F3における作動流体の流量が増加するとともに、ファン6の回転数が増加してもよい。ファン6の回転数だけでなく、第1バイパス流路F2および第2バイパス流路F3における作動流体の流量も増加させれば、ファン6の回転数を大幅に増加させる必要がない。このような構成によれば、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0115】
また、本実施の形態において、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、第1弁7および第2弁8の開度が増加するとともに、ファン6の回転数が増加してもよい。ファン6の回転数だけでなく、第1弁7および第2弁8の開度も増加させれば、ファン6の回転数を大幅に増加させる必要がない。このような構成によれば、温度センサ10によって検出された作動流体の温度が閾値温度以上である場合に、作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
【0116】
また、本実施の形態において、第2バイパス流路F3は、主流路F1から第2弁8まで延びる上流部分F3aと、第2弁8から主流路F1まで延びる下流部分F3bとを含んでいてもよい。上流部分F3aは下流部分F3bよりも長くてもよい。このような構成によれば、上流部分F3aを流れている間に作動流体の温度が下がり易い。このため、第2弁8の温度は、上昇し難く、第2弁8の耐熱温度を超え難い。
【0117】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1および2を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用できる。
【0118】
以下、他の実施の形態を例示する。
【0119】
膨張機4が容積型のレシプロ式の膨張機であれば、膨張比を増加させることができる。このため、サイクル条件に適した仕様を採用し易い。このことは、ランキンサイクル装置の運転効率を向上させる観点から有利である。ただし、膨張機4は、容積型のスクロール式の膨張機であってもよい。膨張機4は、速度型のタービンであってもよい。膨張機4が容積型のスクロール式の膨張機であれば、膨張機の振動を低減し易い。膨張機4が速度型のタービンであれば、大流量に対応し易い。
【0120】
凝縮器5は、シェルアンドチューブ熱交換器およびプレート熱交換器等の間接接触型の熱交換器であってもよく、噴霧式または充填材式の熱交換器等の直接接触式の熱交換器であってもよい。
【0121】
作動流体は、その他HFO系、またはHFC系、イソペンタン等の炭化水素であってもよい。用途に応じて作動流体の選択が可能である。HFO1336mzz(E)は、地球温暖化係数が小さい。そのため、作動流体がHFO1336mzz(E)であれば、環境負荷を低減し易い。一例に係る排熱利用のランキンサイクルでは、作動流体の温度、熱源流体Gの温度、外気温等を考慮すると、HFO1336mzz(E)を使用することにより、発電効率向上、信頼性向上、環境負荷低減等がバランスよく実現されることが期待される。
【0122】
上述の通り、各実施の形態の構成の一部を省略可能である。例えば、熱源流路9内に蒸発器3を配置したり、熱源流体Gと作動流体とを直接的に熱交換させたりすることは、必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示に係る技術は、工場、温泉、焼却炉等の施設あるいは自動車等の排熱から熱を回収して発電を行うランキンサイクル装置に有用である。また、本開示に係る技術は、CHP(Combined Heat and Power)、燃料電池等のコジェネレーションシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 ポンプ
2 再熱器
2a 第1部分
2b 第2部分
3 蒸発器
4 膨張機
5 凝縮器
6 ファン
7 第1弁
8 第2弁
9 熱源流路
10 温度センサ
12 制御器
50,60 ランキンサイクル装置
F1 主流路
F2 第1バイパス流路
F2a 上流部分
F2b 下流部分
F3 第2バイパス流路
F3a 上流部分
F3b 下流部分
B1 分岐位置(主流路F1と第1バイパス流路F2)
C1 合流位置(主流路F1と第1バイパス流路F2)
B2 分岐位置(主流路F1と第2バイパス流路F3)
C2 合流位置(主流路F1と第2バイパス流路F3)
G 熱源流体
S 熱源
図1
図2
図3
図4