IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日置電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図1
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図2
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図3
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図4A
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図4B
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図5A
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図5B
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図6
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図7
  • 特許-増幅回路及び測定装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】増幅回路及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/26 20060101AFI20240910BHJP
   H03F 1/34 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H03F1/26
H03F1/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020206343
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093186
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽田 一暁
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-167359(JP,A)
【文献】特開平1-221005(JP,A)
【文献】特表2007-522741(JP,A)
【文献】特開平9-64666(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109728787(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/26
H03F 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペアンプの非反転入力端子に入力される入力信号を増幅する増幅回路であって、
前記オペアンプから出力される出力信号を前記オペアンプの反転入力端子に帰還する第一及び第二の帰還部と、
前記第二の帰還部と前記オペアンプの反転入力端子とを交流結合する結合部と、を含み、
前記第一の帰還部は、前記結合部とともに、前記出力信号の周波数が高くなるほど前記出力信号に対して前記オペアンプの反転入力端子に印加される電位を低下させ、
前記第二の帰還部は、前記出力信号の電位よりも低い所定の電位を生成するとともに、前記結合部を介して前記所定の電位を前記オペアンプの反転入力端子に印加する、
増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の増幅回路であって、
前記結合部は、前記第二の帰還部と前記オペアンプの反転入力端子との間に接続される容量素子であり、
前記第二の帰還部は、前記出力信号を分圧して前記所定の電位を生成する分圧回路を含む、
増幅回路。
【請求項3】
請求項2に記載の増幅回路であって、
前記第一の帰還部は、前記オペアンプの出力端子と前記反転入力端子との間に接続される第一のインピーダンス素子を有し、
前記分圧回路は、
前記第一のインピーダンス素子に対し、前記結合部を介して並列に接続される第二のインピーダンス素子と、
前記第二のインピーダンス素子及び前記結合部の接続点と前記入力信号の基準となる基準電位との間に接続される第三のインピーダンス素子と、を含む、
増幅回路。
【請求項4】
請求項3に記載の増幅回路であって、
前記第一のインピーダンス素子は、前記第二のインピーダンス素子よりも高いインピーダンス値を有する、
増幅回路。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の増幅回路であって、
前記増幅回路の利得は、前記第三のインピーダンス素子に対する前記第二のインピーダンス素子の比率に応じて調整され、
前記増幅回路の利得が減衰する周波数帯域は、前記第一のインピーダンス素子と前記容量素子とを乗算した値に応じて調整される、
増幅回路。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の増幅回路であって、
前記第一のインピーダンス素子は、前記第二のインピーダンス素子の抵抗成分と前記第三のインピーダンス素子の抵抗成分とを加算した値よりも大きな抵抗成分を有する、
増幅回路。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の増幅回路であって、
前記結合部は、セラミックコンデンサである、
増幅回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の増幅回路と、
前記増幅回路からの前記出力信号に基づいて、前記増幅回路に前記入力信号を入力する測定対象物についての物理量を測定する測定部と、
を含む測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号を増幅する増幅回路及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力信号を増幅する非反転増幅回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-14302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような増幅回路においては、入力信号のうち増幅対象となる周波数成分とともに、他の周波数成分についても増幅される。その結果、増幅回路の利得を上げようとすると、他の周波数成分も同じ利得で増幅されることになり、これに起因して増幅回路の出力が飽和することが懸念される。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、増幅回路の利得とその周波数特性とを独立して調整可能とする増幅回路及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様においてオペアンプの非反転入力端子に入力される入力信号を増幅する増幅回路は、前記オペアンプから出力される出力信号を前記オペアンプの反転入力端子に帰還する第一及び第二の帰還部と、前記第二の帰還部と前記オペアンプの反転入力端子とを交流結合する結合部とを含む。そして、前記第一の帰還部は、前記結合部とともに、前記出力信号の周波数が高くなるほど前記出力信号に対して前記オペアンプの反転入力端子に印加される電位を低下させる。これと共に、前記第二の帰還部は、前記出力信号の電位よりも低い所定の電位を生成するとともに、前記結合部を介して前記所定の電位を前記オペアンプの反転入力端子に印加する。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様によれば、第一の帰還部及び結合部により、オペアンプの出力信号の周波数が高くなるにつれて、オペアンプの非反転入力端子に印加される電位が、第二の帰還部で生成される所定の電位を下限として低下する。言い換えれば、出力信号の周波数が高くなるほど、増幅回路の帰還率が1よりも小さくなることで増幅回路の利得が高くなる。
【0008】
それゆえ、増幅回路における利得の周波数特性は、第一の帰還部及び結合部によって調整することが可能となる一方で、増幅回路の利得の上限は、第二の帰還部で生成される所定の電位によって調整することが可能となる。したがって、増幅回路の利得とその周波数特性とを独立して調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第一実施形態における増幅回路の機能構成を示すブロック図である。
図2図2は、増幅回路の構成例を示す回路図である。
図3図3は、増幅回路における利得の周波数特性の一例を示す図である。
図4A図4Aは、増幅回路における熱雑音成分の周波数特性を説明するための図である。
図4B図4Bは、図4Aに示した周波数特性を有する増幅回路のパラメータの設定条件を示す図である。
図5A図5Aは、増幅回路における等価ソースインピーダンスの周波数特性を説明するための図である。
図5B図5Bは、図5Aに示した周波数特性を有する増幅回路のパラメータの設定条件を示す図である。
図6図6は、第二実施形態における増幅回路の構成を示す回路図である。
図7図7は、第三実施形態における増幅回路を備える測定装置の機能構成を示すブロック図である。
図8図8は、比較例における非反転増幅回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0011】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態における増幅回路の機能構成を示す回路図である。
【0012】
増幅回路100は、直流又は交流の電気信号を増幅して出力するとともに出力した信号をフィードバックする非反転増幅回路である。そのため、増幅回路100は、自己の出力信号を負帰還する負帰還回路を有する。
【0013】
本実施形態における増幅回路100は、外部から入力端子1に印加される入力信号の電位Vinを増幅し、増幅後の電位Voutを示す出力信号を出力端子2から出力する。具体的には、増幅回路100は、電位Vinを示す入力信号のうち増幅対象となる特定の周波数帯域の信号成分を増幅するとともに信号成分以外のノイズ成分を抑制する交流増幅回路である。
【0014】
例えば、特定の周波数帯域の下限を1[kHz]とした場合、増幅回路100は、1[kHz]以上の高周波数帯域の信号成分を増幅するとともに1[kHz]未満の低周波数帯域のノイズ成分の増幅を抑制する。
【0015】
増幅回路100は、例えば、測定対象物に生じる電位の交流成分を検出するインピーダンス測定装置に適用される。インピーダンス測定装置としては、例えばバッテリテスタが挙げられる。
【0016】
増幅回路100の入力端子1には、1[Hz]から数[MHz]までの範囲内の特定の周波数の交流信号が入力信号として印加される。入力信号の電位Vinは、例えば数十[mV]程度の数値を示す。
【0017】
増幅回路100は、オペアンプ10と、第一の帰還部11と、第二の帰還部12と、結合部13と、を備える。そして増幅回路100は、オペアンプ10の非反転入力端子(+)に入力される入力信号の電位Vinを増幅する。
【0018】
オペアンプ10は、自己の非反転入力端子(+)及び反転入力端子(-)の両端子間の電位差を増幅する誤差増幅器である。オペアンプ10は、出力信号の電位Voutの一部が反転入力端子(-)に帰還する帰還信号のレベルに応じて電位Vinの増幅率を調整する。すなわち、増幅回路100の利得(増幅率)は、オペアンプ10の出力端子の電位Voutに対する反転入力端子(-)の電位の比率を示す帰還率に応じて定められる。
【0019】
オペアンプ10は、一般のオペアンプでもよく、或いは、有効周波数帯域の上限が数[MHz]以上である高速オペアンプであってもよい。本実施形態においてオペアンプ10は、高速オペアンプによって構成されている。
【0020】
オペアンプ10の非反転入力端子(+)は、増幅回路100の入力端子1に接続される。そして反転入力端子(-)は、帰還部11に接続されるとともに結合部13を介して帰還部12に接続される。
【0021】
本実施形態では、オペアンプ10から出力される出力信号の電位Voutが、帰還部11の入力端と帰還部12の入力端との接続点N1に対して印加される。そして、帰還部11の出力端と結合部13の出力端との接続点N2に生じる電位がオペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される。
【0022】
帰還部11は、オペアンプ10から出力される出力信号の電位Voutをオペアンプ10の反転入力端子(-)に帰還する第一の帰還回路である。帰還部11は、オペアンプ10の出力端子と反転入力端子(-)との間に形成される第一の帰還ループに配置される。
【0023】
帰還部11は、結合部13とともに、オペアンプ10の出力信号の周波数が高くなるほどオペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される電位を出力信号の電位Voutから低下させる。具体的には、帰還部11及び結合部13は、オペアンプ10の出力信号の周波数成分のうち信号成分を減衰させるとともに低周波成分を通過させるローパスフィルタ(LPF)を構成する。
【0024】
上記の信号成分とは、増幅回路100の入力信号のうち増幅対象となる特定の周波数帯域の周波数成分のことである。低周波成分とは、増幅回路100の利得が減衰する周波数帯域、すなわちオペアンプ10の出力信号の信号成分よりも周波数が低い周波数帯域の周波数成分のことである。以下では、特定の周波数帯域のことを「増幅域」と称し、特定の周波数帯域よりも低い周波数帯域のことを「減衰域」と称する。
【0025】
帰還部11は、例えば、抵抗素子及びコイルなどの誘導素子のうち少なくとも一方の回路素子によって構成される。或いは、帰還部11は、抵抗素子及び誘導素子の少なくとも一方の回路素子と容量素子との組み合わせによって構成されてもよい。このように、帰還部11は、一又は複数のインピーダンス素子によって構成される。
【0026】
帰還部11を増幅回路100に配置することにより、オペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される電位信号の帰還率は、減衰域において概ね「1.0」に維持され、増幅域において出力信号の周波数が大きくなるにつれて「1.0」よりも小さくなる。これにより、周波数が高くなるにつれて増幅回路100の利得が0[dB]から徐々に上昇し、増幅域の下限近傍において増幅回路100の利得が上限に達し、増幅域全体に亘り一定に維持される。
【0027】
帰還部12は、オペアンプ10から出力される出力信号の電位Voutをオペアンプ10の反転入力端子(-)に帰還する第二の帰還回路である。言い換えれば、帰還部12は、オペアンプ10の出力端子と反転入力端子(-)との間に形成される第二の帰還ループに配置される。
【0028】
帰還部12は、オペアンプ10の出力信号の電位Voutよりも低い下限電位VLを生成するとともに、結合部13を介して下限電位VLをオペアンプ10の反転入力端子(-)に印加する。
【0029】
帰還部12において生成される下限電位VLは、出力信号の電位Voutよりも低い所定の電位であり、オペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される下限の電位である。この下限電位VLは、増幅回路100における利得の上限(最大値)を規定する役割を果たす。
【0030】
帰還部12は、例えば、出力信号の電位Voutを下限電位VLに変換するコンバータによって構成されてもよく、或いは、出力信号の電位Voutを分圧する分圧回路によって構成されてもよい。帰還部12は、帰還部11に対し、結合部13を介して並列に接続される。
【0031】
結合部13は、帰還部12とオペアンプ10の反転入力端子(-)とを交流結合する結合回路である。結合部13は、出力信号の周波数が高くなるほど、帰還部11と結合部13との接続点N2に対して下限電位VLによるエネルギーを伝達する割合(伝達率)を高くする。すなわち、結合部13は、出力信号の周波数が高くなるにつれて帰還部12の出力端と接続点N2との結合度を高める。
【0032】
本実施形態では、結合部13は、増幅回路100の減衰域において下限電位VLを接続点N2に伝達する割合を低くし、増幅域において下限電位VLを接続点N2に伝達する割合を高くする。結合部13は、入力信号の周波数に応じて電力の伝達率を変化させる結合回路として、例えば、コイル又は容量素子などによって構成される。
【0033】
帰還部12及び結合部13を増幅回路100に配置することにより、増幅回路100の増幅域において接続点N2に生じる電位を下限電位VLに保持することができる。
【0034】
このように、本実施形態では、帰還部12により下限電位Lを結合部13に印加するとともに、帰還部11及び結合部13により、減衰域においてオペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される電位を出力信号の電位Voutに近づける。それゆえ、増幅回路100の利得の上限は、帰還部12によって調整可能となり、利得の周波数特性における減衰域は、帰還部11及び結合部13によって調整可能となる。
【0035】
続いて、増幅回路100の具体的な回路構成について図2を参照して説明する。
【0036】
図2は、本実施形態における増幅回路100の回路構成の具体例を示す回路図である。この例では、増幅回路100の回路素子に作用して生じる内部ノイズを抑えるために、回路素子として受動素子が用いられるとともに受動素子の個数が抑えられている。
【0037】
具体的には、帰還部11は、第一のインピーダンス素子として機能する抵抗素子110によって構成され、帰還部12は、第二及び第三のインピーダンス素子として機能する抵抗素子121及び122からなる分圧回路によって構成されている。さらに結合部13は、容量素子130によって構成されている。
【0038】
抵抗素子110は、容量素子130とともにオペアンプ10からの出力信号の信号成分よりも低い低周波成分を通過させるフィルタを構成する。
【0039】
増幅回路100の利得に対する周波数特性については、入力信号の低周波成分の増幅を抑えるために、入力信号の信号成分よりも低い周波数帯域の利得を減衰させる、すなわち低周波数側に減衰域を作ることが好ましい。それゆえ、減衰域を作るためには、抵抗素子110の抵抗値R1と容量素子130の容量値Cとの乗算値(R1×C)を持つ時定数をある程度大きくしなければならない。
【0040】
増幅回路100の時定数を大きくするためには、抵抗素子110の抵抗値R1と容量素子130の容量値Cとのうち少なくとも一方の定数を大きくすることが必要となる。この場合、抵抗素子110の抵抗値R1を大きくする場合に比べて、容量素子130の容量値Cを大きくしたほうが、増幅回路100のサイズ及び製造コストが増加する傾向にある。
【0041】
そのため、本実施形態では、抵抗素子110の抵抗値R1を容量素子130の容量値Cよりも優先して大きくする。例えば、抵抗素子110の抵抗値R3は、抵抗素子121の抵抗値R2と抵抗素子122の抵抗値R3との合成抵抗値(R2+R3)よりも大きな値に調整する。これにより、容量素子130の容量値Cを比較的小さな値にすることが可能となり、増幅回路100のサイズ及び製造コストを低減することができる。
【0042】
帰還部12を構成する分圧回路は、抵抗素子121及び抵抗素子122を用いて出力信号の電位Voutを分圧することにより下限電位VLを生成する。この分圧回路は、生成した下限電位VLを容量素子130の一端に出力する。
【0043】
分圧回路で構成される帰還部12においては、抵抗素子121の一端が、抵抗素子110の一端及びオペアンプ10の出力端子に接続されるとともに他端が、抵抗素子122の一端及び容量素子130の一端に接続されている。そして抵抗素子122の他端が、入力信号の電位Vinの基準となる基準電位に接続されている。
【0044】
本実施形態では、抵抗素子122は、分圧抵抗であり、基準電位を有する筐体又は配線と抵抗素子121及び容量素子130の接続点N3との間に接続されている。基準電位の一例として概ね0[V]を示すグランド電位GNDが用いられている。
【0045】
帰還部12で生成される下限電位VLは、抵抗素子122の抵抗値R3に対する抵抗素子121の抵抗値R2の比率(R2/R3)に応じて変化する。例えば、下限電位VLが出力信号の電位Voutよりも小さくなるほど、増幅回路100の利得の上限が高くなる。
【0046】
また、増幅回路100の利得の上限を高くするには、下限電位VLが小さくなるよう、抵抗素子121の抵抗値R2を抵抗素子122の抵抗値R3よりも大きな値に設定することが好ましい。それゆえ、本実施形態では、上記の比率(R2/R3)は、増幅回路100の利得の上限が約50倍となるように抵抗値R2及び抵抗値R3が調整されている。
【0047】
また、抵抗素子121,122の各々において帰還信号に混入されるノイズを小さくするには、抵抗素子121の抵抗値R2と抵抗素子122の抵抗値R3との双方を小さな値にすることが好ましい。
【0048】
これに対し、抵抗素子110は、主に増幅回路100の減衰域を規定するための回路素子であり、増幅域において抵抗素子110で生じるノイズが増幅回路100の出力信号に与える影響は抵抗素子121,122に比べて軽微である。それゆえ、本実施形態では、抵抗素子121及び抵抗素子122の合成抵抗値(R2+R3)は、抵抗素子110の抵抗値R1よりも小さな値に設定される。
【0049】
容量素子130は、帰還部12とオペアンプ10の反転入力端子(-)とを容量結合する静電容量である。容量素子130は、主に増幅回路100の増幅域において、オペアンプ10の反転入力端子(-)と容量素子130の他端との接続点N2に対して下限電位VLを印加する。
【0050】
容量素子130は、一般のコンデンサでもよく、或いは、一般のコンデンサに比べて自身の温度変化又は経年劣化に伴う容量値の変化が小さなセラミックコンデンサであってもよい。
【0051】
本実施形態では、容量素子130は、セラミックコンデンサによって構成されている。セラミックコンデンサとしては、環境の変化に伴う容量値の変動が相対的に小さな温度補償用セラミックコンデンサや、単位面積及び単位コストあたりの静電容量が相対的に大きな高誘電率系セラミックコンデンサなどが挙げられる。増幅回路100の利得変動を抑えるためには、温度補償用セラミックコンデンサを用いることが好ましい。
【0052】
容量素子130を温度補償用セラミックコンデンサで構成する場合は、上述したように容量素子130の容量値Cよりも抵抗素子110の抵抗値R1を優先して大きくすることにより、増幅回路100のサイズ及び製造コストを低減することが可能となる。
【0053】
続いて、図2に例示した増幅回路100の動作について簡単に説明する。
【0054】
まず、増幅回路100の入力信号のうち直流成分及びその近傍の低周波成分に対し、容量素子130は、これらの成分を遮断する絶縁素子として機能する。すなわち、増幅回路100の減衰域のうち直流及びその近傍の周波数帯域において、容量素子130は開放状態となる。
【0055】
それゆえ、接続点N2には、接続点N3に生じる下限電位VLが容量素子130によって遮断される。一方、接続点N1に生じる出力信号の電位Voutが抵抗素子110を介して接続点N2に印加される。
【0056】
したがって、接続点N2には出力信号の電位Voutに相当する電位が生じる。このため、増幅回路100の帰還率は「1.0」を示す最大値となり、増幅回路100の利得は0[dB]に減衰される。
【0057】
増幅回路100の減衰域において周波数が高くなるにつれて、接続点N2から容量素子130を介してグランド電位GNDに信号が流れるやすくなるため、接続点N2に生じる電位は低下する。このため、増幅回路100の帰還率は「1.0」から小さくなり、増幅回路100の利得は0[dB]から上昇する。
【0058】
そして、入力信号のうち増幅対象となる高周波成分に対し、容量素子130は、高周波成分を通過させるための短絡素子として機能する。すなわち、増幅回路100の増幅域において容量素子130は短絡状態となる。
【0059】
それゆえ、接続点N2には、接続点N3に生じる下限電位VLが容量素子130によって印加される。一方、接続点N1に生じる出力信号の電位Voutは、抵抗素子110及び容量素子130で構成されるローパスフィルタによって減衰する。それゆえ、接続点N1から接続点N2に伝達される電位は、接続点N3に生じる下限電位VLに比べて十分に小さくなる。
【0060】
したがって、接続点N2には、接続点N3に生じる下限電位VLに相当する電位が生じる。このため、増幅回路100の帰還率が最小値となり、増幅回路100の利得は上限、例えば50倍程度に達する。
【0061】
このとき、増幅回路100の利得の上限Gmaxは、抵抗素子110の抵抗値R1と抵抗素子121の抵抗値R2と抵抗素子122の抵抗値R3とを用いて、次式(1)及び(2)のように表すことができる。
【0062】
【数1】
【0063】
本実施形態では、抵抗素子121の抵抗値R2が抵抗素子110の抵抗値R1よりも小さい値に設定されている。このため、抵抗素子110と抵抗素子121との合成抵抗値(R1||R2)は、抵抗素子121の抵抗値R2よりも若干小さくなる。言い換えれば、合成抵抗値(R1||R2)においては抵抗素子121の抵抗値R2が支配的となる。
【0064】
それゆえ、抵抗素子121の抵抗値R2を変化させると、その変化と同じように増幅回路100の利得の上限Gmaxも変化する。したがって、抵抗素子121の抵抗値R2を調整することにより、利得の上限Gmaxを調整することが可能になる。
【0065】
これに加え、本実施形態では、抵抗素子122の抵抗値R3が抵抗素子110の抵抗値R1よりも小さな値に設定されている。このため、抵抗素子122の抵抗値R3が抵抗素子110の抵抗値R1よりも大きい場合に比べて、抵抗素子121の抵抗値R2の変化量に対する利得の上限Gmaxの変化量が大きくなる。
【0066】
また、抵抗値R3が抵抗値R1よりも小さな値に設定されると、抵抗値R3が抵抗値R1よりも大きい場合に比べて、利得の上限Gmaxを高くすることが可能になる。このように、抵抗素子121の抵抗値R2及び抵抗素子122の抵抗値R3の少なくとも一方を増減させることで、利得の上限Gmaxを高くすることが可能になる。
【0067】
このように、本実施形態では、抵抗素子110の抵抗値R1は、抵抗素子121,122の抵抗値R2,R3の各々に対して大きな値に設定されている。これにより、抵抗素子110の抵抗値R1の変更に伴う利得の上限Gmaxの変化量が十分に小さくなるので、抵抗素子110の抵抗値R1を調整する際の自由度を高めることができる。
【0068】
次に、図2に示した増幅回路100における利得の周波数特性について図3を参照して説明する。
【0069】
図3は、増幅回路100における利得と周波数との関係の一例を示す図である。ここでは、縦軸が利得を示し、横軸が周波数を示す。
【0070】
図3には、立上り周波数frise及び立下り周波数ffallが示されている。立上り周波数friseは、利得が0[dB]から+3[dB]だけ上昇したときの周波数であり、立下り周波数ffallは、利得が上限Gmaxから+3[dB]だけ低下したときの周波数である。この例では、利得の上限Gmaxは57.7倍である。
【0071】
増幅回路100における利得の上限Gmaxは、抵抗素子121に対する抵抗素子122の抵抗値の比率(R2/R3)によって支配的に定められる。例えば、抵抗素子122に対する抵抗素子121の抵抗値の比率(R2/R3)が大きくなるほど、利得の上限Gmaxは高くなる。
【0072】
また、増幅回路100における減衰域の周波数特性は、抵抗素子110の抵抗値R1と容量素子130の容量値Cとの乗算値(R1×C)によって支配的に定められる。それゆえ、図3に示すように、増幅回路100において入力信号の信号成分よりも低い周波数帯域に減衰域を作るには、抵抗素子110と容量素子130との乗算値(R1×C)をある程度大きくすることが必要である。したがって、抵抗素子110及び容量素子130の少なくとも一方の値を大きくすることにより、増幅回路100の低周波数帯域において利得を減衰させることができる。
【0073】
以上のように、本実施形態の増幅回路100によれば、利得の上限Gmaxと利得の周波数特性とを独立して調整できるため、回路素子の設計の自由度が向上する。例えば、抵抗素子121,122において生じるノイズが小さくなるよう、抵抗値R1,R2を小さくすることが可能となる。
【0074】
続いて、図2に示した増幅回路100のノイズ特性について説明する。
【0075】
増幅回路100のノイズ特性について説明するにあたり、ここでは、増幅回路100の比較例として図8に示す非反転増幅回路900が挙げられている。比較例に係る非反転増幅回路900は、帰還部が一つのみで構成され、オペアンプ90と分圧回路を構成する一対の抵抗素子91,92と、抵抗素子92及びグランド電位GNDの間に接続される容量素子93とを備えている。
【0076】
まず、図4A及び図4Bを参照して、増幅回路100における熱雑音成分の周波数特性について説明する。
【0077】
図4Aは、増幅回路100のシミュレーション解析によって得られた電圧ノイズ密度の周波数特性を示す図である。図4Bは、図4Aに示す周波数特性ごとに設定された回路素子定数の数値を示す図である。図4Bには、回路素子の設定条件に加え、増幅回路100における利得の上限Gmax及び利得の立下り周波数ffallが示されている。
【0078】
図4Bに示すように、抵抗素子121の抵抗値R2を2[kΩ]に固定した状態で、利得の上限Gmaxと利得の立下り周波数ffallが一定となるよう、容量素子130の容量値C、抵抗素子110の抵抗値R1及び抵抗素子122の抵抗値R3を変更している。
【0079】
上述の設定条件では、図4Aに示すように、本実施形態における増幅回路100の電圧ノイズ密度は、増幅域において比較例の非反転増幅回路900の電圧ノイズ密度に比べて小さいことがわかる。
【0080】
続いて、図2に示した増幅回路100における等価ソースインピーダンスの周波数特性について図5A及び図5Bを参照して説明する。なお、等価ソースインピーダンスとは、オペアンプ10から帰還回路を構成する帰還部11,12を見たときのインピーダンスである。この等価ソースインピーダンスにオペアンプ10が固有にもつ電流ノイズが作用(乗算)することでノイズが生じる。それゆえ、等価インピーダンスが大きくなるほど、ノイズが大きくなる。
【0081】
図5Aは、増幅回路100の回路方程式から導出された数式を用いて得られた等価ソースインピーダンスの周波数特性を示す図である。図5Bは、図5Aに示す周波数特性ごとに上記数式に設定された回路素子定数の数値を示す図である。
【0082】
図5Bに示すように、抵抗素子121の抵抗値R2を2[kΩ]に固定した状態で、利得の上限Gmaxと利得の立下り周波数ffallが一定となるよう、容量素子130の容量値C、抵抗素子110の抵抗値R1及び抵抗素子122の抵抗値R3を変更している。
【0083】
上述の設定条件では、図5Aに示すように、増幅回路100の等価ソースインピーダンスは、増幅域において非反転増幅回路900の等価ソースインピーダンスに比べて小さいことがわかる。これは、増幅回路100の増幅域では、オペアンプ10の電流ノイズが主に作用する抵抗素子121,122の抵抗値R2,R3が、非反転増幅回路900の抵抗素子91,92の抵抗値よりも小さな値に設定されているからである。
【0084】
以上のように、本実施形態の増幅回路100においては、非反転増幅回路900に比べて、増幅域における電圧ノイズ密度及び等価ソースインピーダンスの双方を小さくすることができる。
【0085】
次に、増幅回路100の製造コスト及びサイズを抑制する手法について説明する。
【0086】
本実施形態では、容量素子130が温度補償用セラミックコンデンサで構成されていることから、抵抗素子110の抵抗値R1を大きくする場合に比べて、容量値Cを大きくしたほうが、増幅回路100の製造コスト及びサイズが大きくなってしまう。
【0087】
そこで、図8に示す非反転増幅回路900を増幅回路100の比較対象とし、増幅回路100で生じるノイズの増加を抑制しつつ増幅回路100の製造コスト及びサイズを削減するための条件について検討する。ここでは、増幅回路100及び非反転増幅回路900について両回路の抵抗値R2を変えることなく一定にして両回路を比較する。
【0088】
非反転増幅回路900における容量素子93の容量値Cは、利得の上限Gmax及び立下り周波数ffallを用いて次式(3)のように表すことができる。
【0089】
【数2】
【0090】
一方、増幅回路100における容量素子130の容量値Cは、利得の上限Gmax及び立下り周波数ffallを用いて次式(4)のように表すことができる。
【0091】
【数3】
【0092】
増幅回路100及び非反転増幅回路900について利得の上限Gmax及び立下り周波数ffallが共に同じ値となるよう設計する場合において、容量素子130を容量素子93よりも小さな容量値にするためには、次式(5)の関係を満たすことが必要となる。
【0093】
【数4】
【0094】
すなわち、上式(5)の両辺を整理した次式(6)の関係を満たすことにより、増幅回路100における容量素子130の容量値Cを、図8に示した非反転増幅回路900における容量素子93の容量値よりも小さくすることが可能となる。
【0095】
【数5】
【0096】
ここで、増幅回路100における利得の上限Gmaxは、上式(1)のように表すことができるため、上式(6)における利得の上限Gmaxに式(1)を代入することにより、次式(7)が導出される。
【0097】
【数6】
【0098】
上式(7)の関係から、抵抗素子110,121,122の抵抗値R1,R2,R3は、次式(8)の関係を満たすことがわかる。
【0099】
【数7】
【0100】
したがって、上式(8)のように抵抗素子110の抵抗値R1を抵抗素子121と抵抗素子122との合成抵抗値(R2+R3)よりも大きな値にすることで、増幅回路100の容量素子130を非反転増幅回路900の容量素子93に比べて小さくすることが可能となる。
【0101】
このように、抵抗素子110の抵抗値R1を大きくすることにより、抵抗素子121の抵抗値R2を大きくすることなく容量素子130の容量値Cを小さくできる。すなわち、抵抗素子110の抵抗値R1を大きくすることにより、抵抗素子121で生じるノイズを抑制しつつ、容量素子130に要するコスト及びサイズを削減することができる。
【0102】
次に、第一実施形態における作用効果について詳細に説明する。
【0103】
本実施形態におけるオペアンプ10の非反転入力端子(+)に入力される入力信号を増幅する増幅回路100は、オペアンプ10から出力される出力信号をオペアンプ10の反転入力端子(-)に帰還する第一及び第二の帰還部11及び12を備える。さらに増幅回路100は、第二の帰還部12とオペアンプ10の反転入力端子(-)とを交流結合する結合部13を含む。
【0104】
そして、第一の帰還部11は、結合部13とともに、オペアンプ10の出力信号の周波数が高くなるほどオペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される電位をオペアンプ10の出力信号よりも低下させる。また、第二の帰還部12は、オペアンプ10出力信号の電位Voutよりも低い所定の電位VLを生成するとともに、結合部13を介して所定の電位VLをオペアンプ10の反転入力端子(-)に印加する。
【0105】
この構成によれば、帰還部11及び結合部13により、オペアンプ10の出力信号の周波数が高くなるにつれて、オペアンプ10の反転入力端子(-)に印加される電位が、帰還部12で生成される所定の電位VLを下限として低下する。これにより、オペアンプ10の出力信号の周波数が高くなるほど、増幅回路100の帰還率が「1」よりも小さくなるので、増幅回路100の利得が「1」よりも高くなる。
【0106】
それゆえ、増幅回路100における利得の周波数特性は、帰還部11及び結合部13の定数に応じて調整することが可能となる一方で、増幅回路100の利得の上限Gmaxは、帰還部12で生成される所定の電位VLの大きさに応じて調整することが可能となる。
【0107】
したがって、増幅回路100の利得とその周波数特性とを独立して調整することが可能となる。それゆえ、増幅回路100の利得の上限Gmaxを数十倍又は数百倍に高くしつつ出力信号のノイズ成分を低減することができる。
【0108】
また、本実施形態における結合部13は、帰還部12とオペアンプ10の反転入力端子(-)との間に接続される容量素子130を含み、帰還部12は、オペアンプ10の出力信号を分圧することで所定の電位VLを生成する分圧回路を含む。
【0109】
この構成によれば、帰還部12を分圧回路で構成することにより、ノイズ発生源となる一般的な電圧生成回路に比べて、帰還部12から帰還信号に混入されるノイズを低減することができる。これに加え、結合部13を容量素子130で構成することにより、利得が上限Gmaxに達する高周波数帯域を含む増幅域で所定の電位VLをオペアンプ10の反転入力端子(-)に伝達する割合が高くなるので、簡易な構成により適切に周波数選択を行うことができる。
【0110】
したがって、上記の構成により、増幅回路100の回路構成を簡素にしつつ、オペアンプ10の反転入力端子(-)に入力される帰還信号のノイズ成分を低減することができる。
【0111】
また、本実施形態における帰還部11は、オペアンプ10の出力端子と反転入力端子(-)との間に接続される第一のインピーダンス素子として抵抗素子110を有する。また、帰還部12を構成する分圧回路は、抵抗素子121及び抵抗素子122によって構成される。
【0112】
そして、抵抗素子121は、抵抗素子110に対し結合部13を介して並列に接続される第二のインピーダンス素子として機能する。また、抵抗素子122は、抵抗素子121及び結合部13の接続点N3とグランド電位GNDとの間に接続される第三のインピーダンス素子として機能し、グランド電位GNDは、オペアンプ10の非反転入力端子(+)に入力される入力信号の基準となる基準電位として用いられる。
【0113】
この構成によれば、帰還部11を受動素子である抵抗素子110で構成することにより、増幅回路100の回路構成を簡素にしつつ、能動素子に比べて帰還部11で生じるノイズ成分を低減することができる。同じように、帰還部12の分圧回路を二つの抵抗素子121,122で構成することにより、回路構成の簡素化とノイズ成分の低減との両立を図ることができる。
【0114】
本実施形態における第一のインピーダンス素子として機能する抵抗素子110は、抵抗素子121よりも高い抵抗値、すなわちインピーダンス値を有する。
【0115】
増幅回路100の増幅域においては、抵抗素子110で生じるノイズが増幅回路100の出力に与える影響の度合いが小さくなるので、抵抗素子110の抵抗値R1を容量素子130の容量値Cよりも優先して大きくできる。それゆえ、抵抗素子110の抵抗値R1を抵抗素子121の抵抗値R2よりも高くすることにより、増幅域におけるノイズの増加を抑制しつつ容量素子130のコスト及びサイズを削減することができる。
【0116】
本実施形態において増幅回路100の利得は、抵抗素子122に対する抵抗素子121の比率(R2/R3)に応じて調整されるとともに、増幅回路100の利得が減衰する周波数帯域では、抵抗素子110と容量素子130とを乗算した値(R1・C)に応じて調整される。
【0117】
このように、本実施形態の構成によれば、増幅回路100の利得と利得の周波数特性とを別々に調整することが可能である。したがって、増幅回路100の回路素子の定数を設定する際の自由度を高めることができる。
【0118】
また、本実施形態における抵抗素子110は、分圧回路を構成する抵抗素子121の抵抗成分と抵抗素子122の抵抗成とを加算した値(R2+R3)よりも大きな抵抗成分(R1)を有する。
【0119】
この構成によれば、増幅回路100の増幅域において帰還部12で生じる熱雑音成分を、減衰域において帰還部11で生じる熱雑音成分よりも抑えることができる。
【0120】
これに加え、抵抗素子110の抵抗値R1を加算値(R2+R3)よりも大きくすることにより、図8に示した非反転増幅回路900に比べて容量値Cを小さくできる。したがって、増幅回路100の製造コスト及びサイズを抑制しつつ、増幅回路100において入力信号の信号成分よりも周波数が低い周波数帯域の利得を減衰させることができる。
【0121】
また、本実施形態における結合部13は、セラミックコンデンサによって構成される。これにより、結合部13の温度変化及び経年劣化に伴う容量値Cの変動が一般のコンデンサに比べて小さくなるので、増幅回路100における特性の変動を抑制することができる。
【0122】
特に、上式(8)の関係を満たすように増幅回路100の部品定数を調整することにより、非反転増幅回路900に比べて容量値Cを小さくできるので、セラミックコンデンサのサイズ及びコストを抑えることができる。したがって、増幅回路100の製造コスト及びサイズの増加を効果的に削減することができる。
【0123】
(第二実施形態)
図6は、第二実施形態における差動増幅回路200の構成を示す回路図である。
【0124】
差動増幅回路200は、図1に示した増幅回路100を差動増幅回路に適用したものである。差動増幅回路200は、正極側オペアンプ10Aと、正極側帰還部11Aと、正極側帰還部12Aと、正極側結合部13Aと、負極側オペアンプ10Bと、負極側帰還部11Bと、負極側帰還部12Bと、負極側結合部13Bとを備えている。
【0125】
正極側帰還部11A及び負極側帰還部11Bは、図1に示した帰還部11に対応する。本実施形態における正極側帰還部11A及び負極側帰還部11Bは、インピーダンス素子を有し、それぞれ抵抗素子20A及び抵抗素子20Bによって構成される。
【0126】
正極側帰還部12A及び負極側帰還部12Bは、図1に示した帰還部12に対応する。本実施形態における正極側帰還部12A及び負極側帰還部12Bは、それぞれ分圧回路によって構成される。
【0127】
図1に示した帰還部12と同様、正極側帰還部12Aを構成する分圧回路は、複数のインピーダンス素子として抵抗素子31A及び抵抗素子32を有する。そして負極側帰還部12Bを構成する分圧回路は、複数のインピーダンス素子として抵抗素子31B及び抵抗素子32を有する。抵抗素子32は、図6に示すように、正極側帰還部12A及び負極側帰還部12Bを構成する各分圧回路における共通の分圧抵抗である。
【0128】
正極側結合部13A及び負極側結合部13Bは、図1に示した結合部13に対応する。本実施形態における正極側結合部13A及び負極側結合部13Bは、それぞれ容量素子40A及び40Bによって構成される。
【0129】
第一実施形態と同様、差動増幅回路200において、入力端子1Aに印加される入力信号に対する出力端子2Aに生じる出力信号の利得の上限は、抵抗素子31A,32の定数(抵抗値)に応じて調整される。そして利得の周波数特性は、抵抗素子20A及び容量素子40Aの定数に応じて調整される。
【0130】
同様に、入力端子1Bの入力信号に対する出力端子2Bの出力信号の利得の上限は、抵抗素子31A,32の定数に応じて調整され、利得の周波数特性は、抵抗素子20B及び容量素子40Bの定数に応じて調整される。
【0131】
このように、差動増幅回路200においても、利得の上限及び利得の周波数特性の双方を独立して調整することができる。
【0132】
(第三実施形態)
図7は、第三実施形態における測定装置300の構成を示すブロック図である。
【0133】
測定装置300は、測定対象物DUTのインピーダンスを測定するための測定装置に対し、図1に示した増幅回路100を適用したものである。本実施形態では、測定対象物DUTは、二次電池又は電気二重層などで構成される蓄電デバイスであり、測定装置300は、例えばバッテリテスタである。
【0134】
測定装置300は、増幅回路100に加えて、操作受付部310と、処理部320と、表示部330と、制御回路410と、交流印加回路420と、同期検波回路430と、直流アンプ440と、切替器450と、AD変換器460と、を備えている。
【0135】
操作受付部310は、キーボード、マウス及びタッチパネルなどによって構成される。操作受付部310は、測定者による入力操作によって生成される操作信号を受け付け、その操作信号を処理部320に出力する。操作受付部310は、例えば、直流電圧の測定又はインピーダンスの測定を指示する操作信号を受け付ける。
【0136】
処理部320は、プロセッサを備えるコンピュータによって構成される。処理部320は、操作受付部310からインピーダンスの測定を指示する操作信号を取得すると、測定対象物DUTに交流信号を印加するための制御信号を制御回路410に供給する。
【0137】
また、処理部320は、測定対象物DUTに生じる応答信号を示す測定データをAD変換器460から取得すると、その測定データに示される応答信号に基づいて測定対象物DUTのインピーダンスを算出する。処理部320は、インピーダンスの算出結果を表示部330に出力する。
【0138】
表示部330は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどによって構成される。表示部330は、例えば、インピーダンスの測定結果を表示する。
【0139】
制御回路410は、処理部320からの制御信号に従って、交流印加回路420及び切替器450の各々の動作を制御する。例えば、処理部320が直流電圧の測定処理を実行する場合は、制御回路410は、交流印加回路420に対して交流信号の停止指令を出すとともに、直流アンプ440とAD変換器460との間を接続するよう切替器450の接続を切り替える。
【0140】
また、処理部320がインピーダンスの測定処理を実行する場合は、制御回路410は、交流印加回路420に対して交流信号の印加指令を出すとともに、同期検波回路430とAD変換器460との間を接続するよう切替器450の接続を切り替える。
【0141】
交流印加回路420は、制御回路410から交流信号の印加指令を受けると、所定の周波数の交流信号を測定対象物DUTに印加する。このとき、交流印加回路420は、測定対象物DUTに印加される交流信号と同相の同期信号を同期検波回路430に供給する。
【0142】
例えば、交流印加回路420は、測定対象物DUTを構成する蓄電デバイスの正極及び負極間に1[kHz]の交流電流を印加する。この状態において、一対のプローブにより測定対象物DUTの電極間に生じる交流電圧が応答信号として検出される。
【0143】
増幅回路100は、測定対象物DUTから出力される応答信号を増幅する交流アンプである。本実施形態では、正極側のプローブの接続端子303が増幅回路100の入力端子1に接続されるとともに、負極側のプローブの接続端子304の電位が増幅回路100の基準電位として用いられる。例えば、図2に示すグランド電位GNDの代わりに負極側のプローブの接続端子304が抵抗素子122の一端に接続される。
【0144】
増幅回路100の増幅域は、1[kHz]の信号成分を包含するように設計されている。このため、増幅回路100は、測定対象物DUTからの応答信号を所定の利得、例えば数十倍で増幅するとともに、測定対象物DUTの直流電圧の増幅を制限する。このように、直流電圧の増幅を制限することにより、増幅回路100の出力飽和を回避することができる。増幅回路100は、増幅した応答信号を同期検波回路430に出力する。
【0145】
同期検波回路430は、交流印加回路420から供給される同期信号に基づいて増幅後の応答信号のうち同期信号と同相の周波数成分を検波する。具体的には、同期検波回路430は、増幅回路100で増幅された応答信号に対して同期信号を乗じることにより、増幅後の応答信号のうち測定対象物DUTに印加された交流電流と同相の交流電圧を抽出する。そして同期検波回路430は、抽出した交流電圧を示す応答信号を、切替器450の第一入力端子に出力する。
【0146】
直流アンプ440は、測定対象物DUTの直流電圧を増幅する。そして直流アンプ440は、増幅した直流電圧を示す直流信号を切替器450の第二入力端子に出力する。
【0147】
切替器450は、制御回路410の指令に従って、AD変換器460に接続される回路を同期検波回路430又は直流アンプ440に切り替える。例えば、インピーダンス測定を実行する場合、切替器450は、同期検波回路430からの応答信号をAD変換器460に出力する。一方、直流電圧の測定を実行する場合、切替器450は、直流アンプ440からの直流信号をAD変換器460に出力する。
【0148】
AD変換器460は、切替器450から出力される信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。AD変換器460は、変換したデジタル信号を測定データとして処理部320に出力する。
【0149】
これにより、処理部320は、測定データに示される応答信号を検出する。さらに処理部320は、検出した応答信号と印加した交流信号とを用いて測定対象物DUTのインピーダンスを算出する。このように、処理部320は、増幅回路100からの出力信号に基づいて測定対象物DUTの物理量を測定する測定部を構成する。
【0150】
本実施形態では、測定装置300に増幅回路100を適用することにより、増幅回路100において応答信号を増幅しつつ、回路素子に作用する電流によって生じるノイズを低減することができる。また、増幅回路100は、応答信号を増幅するとともに直流信号の増幅を抑制することにより、増幅回路100の出力飽和が抑制されるので、応答信号を的確に増幅することができる。
【0151】
また、増幅回路100は、非反転増幅回路で構成することにより、反転増幅回路に比べて、入力インピーダンスが高いので測定対象物DUTから増幅回路100に流入する電流を低減することができる。これにより、流入電流に伴う応答電圧の低下が抑制されるので、測定対象物DUTのインピーダンスを精度よく測定することができる。
【0152】
続いて、第三実施形態における作用効果について説明する。
【0153】
本実施形態における測定装置300は、測定対象物DUTから入力される入力信号を増幅する増幅回路100と、増幅回路100からの出力信号に基づいて測定対象物DUTの物理量を測定する測定部として機能する処理部320と、を含む。
【0154】
この構成によれば、増幅回路100に入力される入力信号の高周波成分を増幅しつつ低周波成分の増幅を抑制することができる。これにより、増幅回路100の出力飽和が抑制されるので、的確に入力信号を増幅することができる。
【0155】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0156】
10、10A、10B オペアンプ
11、11A、11B 帰還部(第一の帰還部)
12、12A、12B 帰還部(第二の帰還部)
13 結合部
100 増幅回路
110 抵抗素子(インピーダンス素子)
121、122 抵抗素子(インピーダンス素子、分圧回路)
130 容量素子
200 差動増幅回路(増幅回路)
300 測定装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8