IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧 ▶ 日油株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びゴム製品
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240910BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L33/14
C08K3/04
C08K3/36
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020207722
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094692
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彩花
(72)【発明者】
【氏名】田島 繁希
(72)【発明者】
【氏名】青野 竜也
(72)【発明者】
【氏名】山田 明宏
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-170657(JP,A)
【文献】特開2018-083890(JP,A)
【文献】特開昭62-078273(JP,A)
【文献】特開2012-021149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、
グリシジル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる共重合体と、
を含むゴム組成物(タイヤ用途を除く)であって、
前記モノマー成分中、前記グリシジル(メタ)アクリレートの割合が5~98mol%であり、前記ステアリル(メタ)アクリレートの割合が2~95mol%であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記共重合体を0.1~20質量部含む、
ゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項2】
前記共重合体が、更に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる、請求項1に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項3】
前記モノマー成分中、前記グリシジル(メタ)アクリレートの割合が4~51mol%であり、前記ステアリル(メタ)アクリレートの割合が2~35mol%であり、前記2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が27~94mol%である、請求項に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項4】
前記共重合体が、更にメチル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる、請求項または請求項に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項5】
前記モノマー成分中、前記グリシジル(メタ)アクリレートの割合が4~46mol%であり、前記ステアリル(メタ)アクリレートの割合が1~20mol%であり、前記2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が20~87mol%であり、前記メチル(メタ)アクリレートの割合が6~44mol%である、請求項に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項6】
前記共重合体が室温で固体である、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項7】
前記共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が2000~20000である、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項8】
充填剤としてカーボンブラックを含む、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項9】
充填剤としてシリカを更に含む、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項10】
前記ゴム成分が、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、及び、スチレンブタジエンゴムを含む、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項11】
前記天然ゴムの割合が20~60質量%であり、前記ポリブタジエンゴムの割合が20~60質量%であり、前記スチレンブタジエンゴムの割合が10~40質量%である、請求項10に記載のゴム組成物(タイヤ用途を除く)
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のゴム組成物の加硫物を用いたゴム製品(タイヤを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品(タイヤを除く)の製造に用いられるゴム組成物、及び、該ゴム組成物から製造されるゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴム製品の補強や機能を付与するなどの目的で、ゴム組成物に充填材が配合される。例えば、カーボンブラックをゴム組成物に配合することにより、引張強度、硬さ、耐摩耗性など、ゴム製品の耐久性に寄与する性能を向上させることができる他、導電性も付与することができる。
【0003】
一方で、ゴム組成物にカーボンブラックを配合することにより、カーボンブラック同士の擦れ合いが生じ、発熱性が悪化してしまうという課題があった。そこで、カーボンブラックの分散性を向上させることにより、ゴムの発熱性を抑制することが試みられている。例えば、特許文献1は、極性基含有単量体がグラフト重合された変性天然ゴムとカーボンブラックとを混合することにより、自己発熱性を抑制することができるゴム組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-152212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、天然ゴムを変性処理する必要があり、製造工程が煩雑という問題があった。また、特許文献1は、重荷重用空気入りタイヤのトレッドゴムとして、耐摩耗性改善は検討されているものの、他の機械的特性については検討されていなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、タイヤ以外のゴム製品に利用した場合に、低発熱性に優れるとともに、良好な耐破壊特性が得られるゴム組成物を提供することを目的とする。また、当該ゴム組成物を用いることにより、低発熱性に優れるとともに、良好な耐破壊特性を示すゴム製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1] ゴム成分と、グリシジル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる共重合体と、を含むゴム組成物(タイヤ用途を除く)。
[2] 前記モノマー成分中、前記グリシジル(メタ)アクリレートの割合が5~98mol%であり、前記ステアリル(メタ)アクリレートの割合が2~95mol%ある、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 前記共重合体が、更に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[4] 前記モノマー成分中、前記グリシジル(メタ)アクリレートの割合が4~51mol%であり、前記ステアリル(メタ)アクリレートの割合が2~35mol%であり、前記2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が27~94mol%である、[3]に記載のゴム組成物。
[5] 前記共重合体が、更にメチル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる、[3]または[4]に記載のゴム組成物。
[6] 前記モノマー成分中、前記グリシジル(メタ)アクリレートの割合が4~46mol%であり、前記ステアリル(メタ)アクリレートの割合が1~20mol%であり、前記2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が20~87mol%であり、前記メチル(メタ)アクリレートの割合が6~44mol%である、[5]に記載のゴム組成物。
[7] 前記共重合体が室温で固体である、[1]~[6]のいずれかに記載のゴム組成物。
[8] 前記共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が2000~20000である、[1]~[7]のいずれかに記載のゴム組成物。
[9] 前記ゴム成分100質量部に対して前記共重合体を0.1~20質量部含む、[1]~[8]のいずれかに記載のゴム組成物。
[10] 充填剤としてカーボンブラックを含む、[1]~[9]のいずれかに記載のゴム組成物。
[11] 充填剤としてシリカを更に含む、[1]~[10]のいずれかに記載のゴム組成物。
[12] 前記ゴム成分が、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、及び、スチレンブタジエンゴムを含む、[1]~[11]のいずれかに記載のゴム組成物。
[13] 前記天然ゴムの割合が20~60質量%であり、前記ポリブタジエンゴムの割合が20~60質量%であり、前記スチレンブタジエンゴムの割合が10~40質量%である、[12]に記載のゴム組成物。
【0008】
[14] [1]~[13]のいずれかに記載のゴム組成物の加硫物を用いたゴム製品(タイヤを除く)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤ以外のゴム製品に利用した場合に、低発熱性に優れるとともに、良好な耐破壊特性が得られるゴム組成物を提供することができる。また、当該ゴム組成物を用いることにより、低発熱性に優れるとともに、良好な耐破壊特性を示すゴム製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、グリシジル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる共重合体と、を含む。
本発明のゴム組成物は、グリシジル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる共重合体を含むことにより、低発熱性に優れるゴム製品とすることができる。更に、本発明のゴム組成物を用いることにより、良好な耐破壊特性を示すゴム製品とすることができる。
【0012】
以下、本発明のゴム組成物、及び、ゴム製品の詳細について説明する。
<ゴム成分>
本発明のゴム組成物において、ゴムの種類は特に限定されない。例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、及び、これらを組み合わせたゴム等が挙げられる。
【0013】
本発明においては、ゴム成分が、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、及び、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むことが好ましい。中でも、ゴム成分が、天然ゴムの割合が20~60質量%であり、ポリブタジエンゴムの割合が20~60質量%であり、スチレンブタジエンゴムの割合が10~40質量%であることが特に好ましい。
ポリブタジエンゴムとしては、変性ブタジエンゴムであっても良く、未変性のブタジエンゴムであっても良いが、変性ブタジエンゴムであることがより好ましい。スチレン-ブタジエン共重合体ゴムとしては、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムであっても良く、未変性のスチレン-ブタジエン共重合体ゴムであっても良いが、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムであることがより好ましい。例えば、国際公開第2019/146323号に記載される変性共役ジエン系重合体を適用することができる。
【0014】
<共重合体>
本発明のゴム組成物に添加される共重合体は、モノマー成分としてグリシジル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなる。本発明において、グリシジル(メタ)アクリレートとは、グリシジルメタクリレート、または、グリシジルアクリレートを指す。本発明では、グリシジルメタクリレートあるいはグリシジルアクリレートが単独で含有される場合だけでなく、グリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートの混合物が含有される場合も含む。本発明において、ステアリル(メタ)アクリレートとは、ステアリルメタクリレート、または、ステアリルアクリレートを指す。本発明では、ステアリルメタクリレートあるいはステアリルアクリレートが単独で含有される場合だけでなく、ステアリルメタクリレート及びステアリルアクリレートの混合物が含有される場合も含む。
本発明においては、当該共重合体は、モノマー成分としては、グリシジルメタクリレート(GMA)及びステアリルメタクリレート(SMA)を含むことが好ましい。このような共重合体の例としては、グリシジルメタクリレート(GMA)及びステアリルメタクリレート(SMA)をモノマー成分として、これらを重合させた二元共重合体が挙げられる。
【0015】
当該モノマー成分中、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が5~98mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が2~95mol%であることが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が5~50mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が50~95mol%であることがより好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が5~25mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が75~95mol%であることが更に好ましい。
【0016】
当該共重合体は、更に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなることが好ましい。本発明において、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、または、2-ヒドロキシエチルアクリレートを指す。本発明では、2-ヒドロキシエチルメタクリレートあるいは2-ヒドロキシエチルアクリレートが単独で含有される場合だけでなく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートの混合物が含有される場合も含む。共重合体が2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなることにより、特に耐破壊特性を向上させることができる。
中でも、共重合体が、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含むモノマー成分を重合してなることが更に好ましい。本発明においては、当該共重合体は、グリシジルメタクリレート(GMA)、ステアリルメタクリレート(SMA)、及び、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含むモノマー成分を重合してなることがより好ましい。このような共重合体の例としては、グリシジルメタクリレート(GMA)、ステアリルメタクリレート(SMA)、及び、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)をモノマー成分として、これらを重合させた三元共重合体が挙げられる。
【0017】
当該共重合体が2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを更に含むモノマー成分を重合してなる場合、当該モノマー成分中、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が4~51mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が2~35mol%であり、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が27~94mol%であることが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が10~40mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が10~32mol%であり、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が35~80mol%であることがより好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が20~30mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が20~30mol%であり、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が40~60mol%であることが更に好ましい。
【0018】
当該共重合体は、更にメチル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなるものでも良い。本発明において、メチル(メタ)アクリレートとは、メチルメタクリレート、または、メチルアクリレートを指す。本発明では、メチルメタクリレートあるいはメチルアクリレートが単独で含有される場合だけでなく、メチルメタクリレート及びメチルアクリレートの混合物が含有される場合も含む。共重合体がモノマー成分としてメチル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合してなることにより、共重合体の融点を高くすることができる。共重合体の融点を高くすることができた結果、後述するように、製造段階で固体として秤量等が行われるため、取扱いが容易となる。
中でも、共重合体が、メチルメタクリレート(MMA)を含むモノマー成分を重合してなることが好ましい。本発明においては、当該共重合体は、グリシジルメタクリレート(GMA)、ステアリルメタクリレート(SMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、及び、メチルメタクリレート(MMA)を含むモノマー成分を重合してなることがより好ましい。このような共重合体の例として、グリシジルメタクリレート(GMA)、ステアリルメタクリレート(SMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、及び、メチルメタクリレート(MMA)をモノマー成分として、これらを重合して得られる四元共重合体が挙げられる。
【0019】
当該共重合体がメチル(メタ)アクリレートを更に含むモノマー成分を重合してなる場合、当該モノマー成分中、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が4~46mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が1~20mol%であり、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が20~87mol%であり、メチル(メタ)アクリレートの割合が6~44mol%であることが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が10~40mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が5~17mol%であり、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が30~75mol%であり、メチル(メタ)アクリレートの割合が8~35mol%であることがより好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートの割合が20~35mol%であり、ステアリル(メタ)アクリレートの割合が7~15mol%であり、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が40~63mol%であり、メチル(メタ)アクリレートの割合が10~20mol%であることが更に好ましい。
【0020】
共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互コポリマーなど、いずれの形態であっても良い。特に、ランダム共重合体が好適である。
【0021】
本発明において、当該共重合体は、室温において固体であることが好ましい。このような共重合体であることにより、ゴム組成物の製造段階において、共重合体の秤量が容易となる。また、ゴム組成物の混練段階において、共重合体をミキサーに投入しやすくなる。更に、バッチ間でゴム組成物中に投入される共重合体量の変動を抑制することができるため、バッチ間での組成変動を抑制できるというメリットもある。固体状態であれば共重合体の形態に特に制限はなく、粒状、粉末状などの形態でゴム組成物の混練に用いることができる。なお、本発明において「室温」とは、25±5℃であることを指す。
【0022】
本発明において、当該共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が2000~20000であることが好ましい。ポリスチレン換算重量平均分子量が2000以上であることにより、共重合体は室温において固体となる。また、ゴム成分と混合したゴム組成物としたときに、低発熱性に優れるとともに、良好な耐破壊特性を有するゴム組成物とすることが可能となる。当該共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、2300以上であることがより好ましく、2500以上であることが更に好ましい。一方で、ゴム成分との混合性を考慮すると、共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は20000以下であることがより好ましく、18000以下であることが更に好ましく、15000以下であることが特に好ましい。
【0023】
本発明のゴム組成物において、共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して1~20質量部であることが好ましい。共重合体の含有量が1質量部以上であることにより、良好な耐破壊特性を有するゴム製品とすることが可能となる。一方、耐摩耗性能の観点から、ゴム成分100質量部に対する共重合体の含有量は、20質量部以下であることが好ましい。
【0024】
<充填剤>
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物を補強する充填剤を含有する。ゴム組成物が充填剤を含有することで、ゴム製品の耐破壊特性など、強度を上げることができる。
本発明のゴム組成物は、充填剤としてカーボンブラックを含有することが好ましい。また、本発明のゴム組成物は、カーボンブラック以外に、シリカ、及び、無機充填剤を含んでいてもよい。無機充填剤としては、クレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0025】
<<カーボンブラック>>
カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。これらカーボンブラックは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0026】
ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、耐摩耗性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、発熱性悪化の抑制の観点から、ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
【0027】
<<シリカ>>
本発明において、シリカの種類は特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
また、本発明で用いるシリカの窒素吸着比表面積(BET法)は特に制限はない。
。例えば、シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積(CTAB)は特に制限はない。例えば、シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積(CTAB)は、好ましくは40~350m/gであり、より好ましくは100~250m/gである。なお、シリカのCTABは、シリカのCTAB比表面積は、ASTM-D3765-80の方法に準拠した方法で測定した値である。
【0028】
ゴム組成物中のシリカの含有量は、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。ただし、低発熱性の悪化を抑えつつ、良好な耐破壊特性を得る観点から、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して5~120質量部であることが好ましく、15~100質量部であることがより好ましい。
【0029】
シリカの含有量とカーボンブラックの含有量との合計は、25~130質量部であることが好ましく、50~90質量部であることがより好ましい。
【0030】
<各種成分>
本発明におけるゴム組成物は、既述の成分以外に、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される各種成分、例えば、ステアリン酸、老化防止剤、シランカップリング剤、亜鉛華(酸化亜鉛)、加硫促進剤、加硫剤、作業改良剤、樹脂、ワックス、オイル等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。
【0031】
[ゴム組成物の調製]
本発明のゴム組成物は、上述した各成分を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を使用して混練りすることによって製造することができる。各成分の配合量は、ゴム組成物中の含有量として既述した量と同じである。
各成分の混練は、全一段階で行ってもよいが、二段階以上に分けて行うことが好ましい。二段階以上に分けて混錬を行う場合には、混練の第一段階で、少なくとも、ゴム成分、上述の共重合体、及び、シリカを混練する。
【0032】
[ゴム組成物の使用(使用方法)]
本発明のゴム組成物は、これを用いてゴム製品としたときに発熱性を悪化させることなく、優れた耐破壊特性が得られる用途に好適に使用される。具体的には、ゴム成分と充填剤とを含んで構成されるタイヤ以外のゴム製品において、タイヤ程の大変形耐性や高耐久性は要求されないものの、使用環境下での発熱性の低減や耐破壊特性が要求される用途に特に好適に使用される。
上記ゴム製品としては、具体的には、コンベアベルト、クローラー、防振ゴム類、制震ゴム類、免震ゴム類、ホース・チューブ類、配管、ケーブル類、シール材、キャップ、パッキン、ガスケット、吸音材、ソールなどが例示される。
【0033】
[ゴム製品]
本発明のゴム製品は、本発明のゴム組成物を加硫した加硫ゴムであり、低発熱性に優れ、良好な耐破壊特性を示すものである。
本発明のゴム製品は、タイヤ以外のゴム製品である。具体的には、コンベアベルト、クローラー、防振ゴム類、制震ゴム類、免震ゴム類、ホース・チューブ類、配管、ケーブル類、シール材、キャップ、パッキン、ガスケット、吸音材、ソールなどが例示される。
【実施例
【0034】
[ゴム組成物の調製]
下記表1に示す配合組成(表中の数値は質量部)で各成分を2段階で混練し、ゴム組成物を調製した。なお、表中の成分の詳細は以下のとおりである。
【0035】
1.ゴム成分
NR:天然ゴム(RSS♯3)
BR:下記製法により得た変性ポリブタジエンゴム
SBR:下記製法により得た変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム
2.共重合体
共重合体1:GMA10mol%、SMA90mol%であるモノマー成分を重合してなるメタクリル酸系ランダム共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量11,000、粒状(室温)
共重合体2:GMA25mol%、SMA25mol%、HEMA50mol%であるモノマー成分を重合してなるメタクリル酸系ランダム共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量5,000、粒状(室温)
共重合体3:GMA25mol%、SMA12.5mol%、HEMA50mol%、MMA12.5mol%であるモノマー成分を重合してなるメタクリル酸系ランダム共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量5,200、粒状(室温)
共重合体4:GMA25mol%、SMA12.5mol%、HEMA50mol%、MMA12.5mol%であるモノマー成分を重合してなるメタクリル酸系ランダム共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量13,400、粒状(室温)
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8121GPC/HT、カラム:東ソー社製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]を用いて、測定温度40℃で測定し、単分散ポリスチレンを基準として求めた。
3.充填剤
シリカ:
セチルトリメチルアンモニウムブロミド比表面積(CTAB)191m/gのシリカ
カーボンブラック:SAF級カーボン
4.シランカップリング剤
ビス-(トリエトキシシリルプロピル)-ポリスルフィド
5.樹脂
C5系脂肪族炭化水素樹脂
6.加硫促進剤
スルフェンアミド系加硫促進剤及びチアゾール系加硫促進剤の混合物
【0036】
<変性ポリブタジエンゴムの製造方法>
容積約1リットルのゴム栓付きガラスびんを乾燥・窒素置換した。該ガラスびんに、乾燥精製したブタジエンのシクロヘキサン溶液、及び、乾燥シクロヘキサンを投入し、ブタジエン15.0質量%のシクロヘキサン溶液が330g投入された状態とした。これにヘキサメチレンイミン(HMI)0.513mmolを投入した。次に、tert-ブチルリチウム(1.57M)0.36mL、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン(0.2N)0.057mLを添加し、50℃の水浴中で4.5時間重合を行った。その後、四塩化錫(SnCl)を0.10mmol添加し、50℃で1時間反応させた。その後、微量の2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)を含むイソプロパノール中で再沈殿した後、ドラムにて乾燥することで、変性ブタジエンゴムを得た。収率はほぼ100%であった。
【0037】
<変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの製造方法>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及び、スチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5g及びスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この時の重合転化率はほぼ100%であった。この重合反応系に対し、〔N,N-ビス(トリメチルシリル)-(3-アミノ-1-プロピル)〕(メチル)(ジエトキシ)シランを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2mLの2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液を加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して、変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを得た。
得られた変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴムのミクロ構造を測定した結果、結合スチレン含有量が10質量%、ブタジエン部分のビニル含有量が40%、ゲル浸透クロマトグラフィーにより得られたポリスチレン換算ピーク分子量が200,000であった。
【0038】
[評価]
1.低発熱性評価
実施例及び比較例のゴム組成物を145℃33分間加硫し、加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムから試験片を得て、粘弾性測定機を用い、動的歪:10%、周波数:15Hz、測定温度:30℃の条件下で、加硫ゴムの損失正接(tanδ)を測定した。
比較例1の加硫ゴムのtanδを100として、各実施例及び各比較例の測定値を指数で表わした。結果を表1に示す。指数が大きいほど、低発熱性に優れるゴム製品であることを示す。
【0039】
2.耐破壊性能
各加硫ゴムについて、JIS K6301-1995に準拠して室温で引張試験を行い、引張強さ(TB)を測定した。比較例1の試験片の引張強さを100とし、下記式により指数表示した。
耐破壊性指数=(比較例1以外の試験片の引張強さ/比較例1の試験片の引張強さ)×100
耐破壊性能指数が大きい程、加硫ゴムが破壊しにくく、耐破壊性能が優れていることを示す。耐破壊性能指数の許容範囲は98以上である。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1のゴム組成物を用いたゴム製品は、耐破壊特性が比較例1と同程度であるが、低発熱性に優れるとの結果が得られた。実施例2~4の加硫ゴムは、比較例に対して、低発熱性及び耐破壊特性のいずれも優れていた。