(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】キメラテルペンシンターゼ
(51)【国際特許分類】
C12P 5/00 20060101AFI20240910BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20240910BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C12P5/00
C12N9/00 ZNA
C12N1/19
(21)【出願番号】P 2020543367
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 US2019018122
(87)【国際公開番号】W WO2019161141
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-14
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516286741
【氏名又は名称】ギンゴー バイオワークス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・リドリー
(72)【発明者】
【氏名】ジュー・ワン
(72)【発明者】
【氏名】スコット・マー
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-154502(JP,A)
【文献】Plant Physiol.,2010年,Vol. 154,p. 1998-2007
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci. USA,Vol. 93,p. 6841-6845
【文献】Database GenBank, Accession POF02014, [online],2018年01月29日,[2023年3月27日検索], インターネット<URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/1336374868?sat=47&satkey=123431>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C12P 1/00 - 41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成テルペンシンターゼをコードする核酸分子を含む真菌細胞を培養する工程を含む、
アルファ-グアイエンを含む1以上の
テルペンを製造する方法であって、ここで合成テルペンシンターゼが配列番号17と少なくとも9
5%同一のアミノ酸配列を含
む、方法。
【請求項2】
前記合成テルペンシンターゼが、配列番号17と少なくとも9
8%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成テルペンシンターゼが配列番号17
の配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記合成テルペンシンターゼが、配列番号178
の配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
真菌細胞が酵母細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酵母細胞が、ピキア酵母、クリベロマイセス酵母、ハンゼヌラ属酵母、サッカロミセス属酵母、またはヤロウイア属酵母の細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酵母細胞がサッカロミセス属酵母細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サッカロミセス
属酵母細胞が出芽酵母細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酵母細胞がヤロウイア属酵母細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記酵母細胞がピキア酵母細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記合成テルペンシンターゼがDDxx(x)D/Eモチーフを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1以上のテルペンを抽出する工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上のテルペンの少なくとも1つが芳香化合物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記合成テルペンシンターゼが、少なくとも15%のアルファ-グアイエンを含むセスキテルペン組成物を製造することができる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が香料を製造する方法である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記真菌細胞がデルタ-グアイエンを製造する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
合成テルペンシンターゼが配列番号17
の配列を含む、合成テルペンシンターゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の定めにより、2018年2月14日出願の米国仮特許出願第62/630,640号、表題“キメラテルペンシンターゼ”に基づく優先権の利益を主張し、その内容全体を引用により本明細書中に包含させる。
【0002】
発明の分野
本発明は、キメラテルペンシンターゼ、キメラテルペンシンターゼの製造方法およびキメラテルペンシンターゼを用いるテルペン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
テルペン類は、五炭素を構成要素とする有機化合物の多様なクラスであり、少なくとも400の異なる構造的ファミリーを包含する。テルペン類は、その構造的多様性により、フェロモン、抗酸化剤および抗微生物剤などの多くの役割を有している。テルペンシンターゼは原核生物および真核生物の両方でテルペンを生成するが、その多様なテルペン異性体のために、天然源から高収率で抽出することができないことが多い。さらに、テルペンは構造が複雑なため、新規の化学合成には限界がある。
【発明の概要】
【0004】
概要
本発明の一面は、配列番号1-52からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むキメラテルペンシンターゼに関する。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、配列番号1-52からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、配列番号1-52からなる群より選択されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0005】
本発明のさらなる面は、本明細書に記載のキメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子に関する。ある態様において、核酸分子は、配列番号67-118からなる群より選択されるヌクレオチド配列と少なくとも90%同一の配列を含む。ある態様において、核酸分子は、配列番号67-118からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0006】
本発明のさらなる面は、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターに関する。ある態様において、ベクターはウイルスベクター、一過性発現用ベクターまたは発現誘導用ベクターである。ある態様において、ベクターは、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ガラクトース誘導性ベクターまたはドキシサイクリン誘導性ベクターである。
【0007】
本発明のさらなる面は、本明細書に記載の核酸またはベクターを含む宿主細胞に関する。
【0008】
ある態様において、宿主細胞は真菌細胞である。ある態様において、細胞は酵母細胞である。ある態様において、細胞は、出芽酵母(Saccharomyces)、ピキア酵母(Pichia)、クリベロマイセス酵母(Kluyveromyces)、ハンゼヌラ属酵母(Hansenula)またはヤロウイア属酵母(Yarrowia)である。ある態様において、細胞は、出芽酵母細胞である。
【0009】
ある態様において、宿主細胞は細菌細胞である。
【0010】
本発明のさらなる面は、キメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子に関し、ここで、該核酸分子配列またはアミノ酸配列の少なくとも10%は、希少植物または絶滅した植物に由来する。ある態様において、該核酸分子またはアミノ酸配列の少なくとも40%は、希少植物または絶滅した植物に由来する。
【0011】
ある態様において、該核酸分子またはアミノ酸配列の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%は、希少植物または絶滅した植物に由来する。ある態様において、該核酸分子またはアミノ酸配列の少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%または少なくとも95%は、希少植物または絶滅した植物に由来する。
【0012】
ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、キメラセスキテルペンシンターゼである。ある態様において、希少植物または絶滅した植物は、以下からなる群より選択される:Hibiscadelphus wilderianus、Leucadendron grandiflorum、Macrostylis villosa、Orbexilum stipulatum、Shorea cuspidateおよびWendlandia angustifolia。
【0013】
本発明のさらなる面は、キメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子に関する。ある態様において、該核酸分子配列またはアミノ酸配列の少なくとも10%は、希少植物または絶滅した植物に由来する。ある態様において、該核酸分子配列の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%は、希少植物または絶滅した植物に由来する。ある態様において、該核酸分子配列の少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%または少なくとも95%は、希少植物または絶滅した植物に由来する。
【0014】
ある態様において、核酸分子は、TATAボックス配列をさらに含む。
【0015】
本発明のさらなる面は、1以上のセスキテルペン類の製造方法に関し、ここで、該方法は、1以上のセスキテルペン類を製造するのに好適な条件で、本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む。
【0016】
本発明のさらなる面は、本明細書に記載の方法により製造された1以上のセスキテルペン類を含む組成物に関する。
【0017】
一態様において、1以上のセスキテルペン類の少なくとも1つは、芳香化合物である。
【0018】
本発明のさらなる面は、香料を製造する方法に関し、ここで、該方法は、1以上のセスキテルペン類を製造するのに好適な条件で、本明細書に記載の宿主細胞を培養すること;および、該1以上のセスキテルペン類を抽出すること、を含む。
【0019】
本明細書に記載の組成物および方法の限定のそれぞれは、記載された種々の態様を包含し得る。従って、任意の1つの要素または要素の組合せを含む本発明の限定のそれぞれは、本発明の各面に包含され得ることが予期される。本願発明は、その用途において、以下の説明に記載されるまたは図面に図示される、構造の詳細、および構成要素の配置に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面は、一定の縮尺で描かれることを意図していない。図面は単なる例示であり、本発明の実施を可能にするために必要ではない。明確にすることを目的として、すべての要素がすべての図面でラベル付けされていないことがある。
【0021】
【
図1】
図1は、H.wilderianus由来の希少な配列を含むセスキテルペンシンターゼ(SQTS)を用いて製造された、同定されたセスキテルペン類の構造を示す図である。
【
図2】
図2は、L.grandiflorum由来の希少な配列を含むSQTSを用いて製造された、同定されたセスキテルペン類の構造を示す図である。
【
図3】
図3は、M.villosa由来の希少な配列を含むSQTSを用いて製造された、セスキテルペン類の構造を示す図である。
【
図4】
図4は、O.stipulatum由来の希少な配列を含むSQTSを用いて製造された、セスキテルペン類の構造を示す図である。
【
図5】
図5は、S.cuspidata由来の希少な配列を含むSQTSを用いて製造された、同定されたセスキテルペン類の構造を示す図である。
【
図6】
図6は、W.angustifolia由来の希少な配列を含むSQTSを用いて製造された、同定されたセスキテルペン類の構造を示す図である。
【
図7】
図7は、植物種毎のキメラ生成物の分布を示す図である。キメラは、最高収量で産生されたセスキテルペンに基づいて分類されている。
【0022】
【
図8】
図8A-8Fは、希少植物種を示す写真を含む。
図8Aは、Hibiscadelphus wilderianus (Radlkoferら、New and Noteworthy Hawaiian Plants. Hawaiian Board of Agriculture and Forestry Botanical Bulletin. 1911;(1):1-15より)を示す。
図8Bは、Leucadendron grandiflorum (Salisburyら、The Paradisus Londinensis or Coloured Figures of Plants Cultivated in the Vicinity of the Metropolis. 1805; (Volume 1、part 2): 105より)を示す。
図8Cは、Macrostylis villosa subsp. Villosa (“Red List of South African Plants: Macrostylis villosa subsp. villosa”, 2007より)を示す。
図8Dは、Orbexilum stipulatum (Short、“Orbexilum stipulatum collected at Falls of the Ohio,” 1840 from The Philadelphia Herbarium at the Academy of Natural Sciencesより)を示す。
図8Eは、Shorea cuspidata (“Kew Royal Botanical Gardens: Shorea cuspidata specimen K000700460,” 1962より)を示す。
図8Fは、Wendlandia angustifolia (“Kew Royal Botanical Gardens: Wendlandia angustifolia K000030921,” 蒐集日記録なし、より)を示す。
【
図9】
図9は、H.wilderianus キメラスクリーニングデータ(表4)から選択されたガスクロマトグラフィー-質量分析(GC/MS)クロマトグラムを示す一連の図である。
【0023】
【
図10】
図10は、L.grandiflorumキメラスクリーニングデータ(表5)から選択されたGC/MSクロマトグラムを示す一連の図である。
【
図11】
図11は、L.grandiflorumキメラスクリーニングデータ(表5)から選択されたGC/MSクロマトグラムを示す一連の図である。
【
図12】
図12は、M.villosaキメラスクリーニングデータ(表6)から選択されたGC/MSクロマトグラムを示す一連の図である。
【
図13】
図13は、S.cuspidataキメラスクリーニングデータ(表8)から選択されたGC/MSクロマトグラムを示す一連の図である。
【
図14】
図14は、W.angustifoliaキメラスクリーニングデータ(表9)から選択されたGC/MSクロマトグラムを示す一連の図である。
【
図15】
図15は、W.angustifoliaキメラスクリーニングデータ(表9)から選択されたGC/MSクロマトグラムを示す一連の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
テルペン類は、香料産業において広く用いられているが、天然源からのテルペン類の精製および新規の化学合成は、高い製造コストおよび低い収率であることが多い。本発明は、少なくとも1つの希少植物または絶滅した植物由来のテルペンシンターゼ配列の一部を含むキメラテルペンシンターゼが、多様なセスキテルペン類を製造できるという予期しない発見を前提としている。従って、本発明は、キメラテルペンシンターゼ、キメラテルペンシンターゼの製造方法および記載のキメラテルペンシンターゼを用いたテルペン類の製造方法を提供する。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、キメラセスキテルペンシンターゼである。
【0025】
本発明は、その適用において、その構築の詳細および本明細書に記載の構成要素の配置に限定されない。本発明は、他の態様が可能であり、種々の方法で実施または行われ得る。さらに、本明細書に記載の表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定するものとみなされるべきではない。“含む(including)”、“含む(comprising)”、“有する(having)”、“包含する(containing)”、“含有(involving)”および/またはそれらの変形などの用語の使用は、その後に列挙される項目およびその均等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0026】
キメラテルペンシンターゼ
本発明の一面は、少なくとも2つのテルペンシンターゼに由来するフラグメント(例えば、配列)を含むキメラテルペンシンターゼに関し、ここで、2つまたはそれ以上のテルペンシンターゼの少なくとも1つは、希少植物または絶滅した植物に由来する。例えば、キメラテルペンシンターゼの配列は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個または少なくとも10個のテルペンシンターゼに由来する1以上のフラグメント(例えば、全配列の1以上の部分)を含み得る。本明細書に記載のキメラテルペンシンターゼは合成であり得ることが理解されるべきである。従って、本明細書に記載の、合成キメラテルペンシンターゼを含むキメラテルペンシンターゼは、2個以上のテルペンシンターゼに由来する配列を含み、ここで、テルペンシンターゼの少なくとも1個は、希少植物または絶滅した植物に由来する。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、キメラセスキテルペンシンターゼである。
【0027】
テルペンシンターゼは、イソプレノイド二リン酸基質からのテルペンの形成を触媒する酵素である。少なくとも2種類のテルペンシンターゼが特徴付けられている:古典的なテルペンシンターゼおよびイソプレニル二リン酸シンターゼ型のテルペンシンターゼ。古典的なテルペンシンターゼは、原核生物(例えば、細菌)および真核生物(例えば、植物、真菌およびアメーバ)に存在するが、イソプレニル二リン酸合成酵素型テルペンシンターゼは、昆虫に見いだされている(例えば、Chen et al., Terpene synthase genes in eukaryotes beyond plants and fungi: Occurrence in social amoebae. Proc Natl Acad Sci U S A. 2016;113(43):12132-12137参照、この目的のためにその内容全体を引用により本明細書中に包含させる)。アスパラギン酸に富む“DDxx(x)D/E”モチーフおよび“NDxxSxxxD/E”(配列番号55)モチーフを含み、それらは両方とも基質結合の形成に関与している(例えば、Starks et al., Structural basis for cyclic terpene biosynthesis by tobacco 5-epi-aristolochene synthase. Science. 1997 Sep 19;277(5333):1815-20;および、Christianson et al., Unearthing the roots of the terpenome. Curr Opin Chem Biol. 2008 Apr;12(2):141-50参照、この目的のためにそれらは各々、その内容全体を引用により本明細書中に包含させる)、いくつかの高度に保存された構造モチーフが、古典的テルペンシンターゼで報告されている。
【0028】
テルペンシンターゼは、それらが生成するテルペンの種類によって分類され得る。本明細書で用いるテルペンは、特記しない限り、イソプレン(すなわち、C5H8)単位を含む有機化合物およびそれらの誘導体である。例えば、テルペンには、分子式(C5H8)n(式中、nはイソプレンサブユニットの数を表す)の純粋な炭化水素が含まれる。テルペン類には、含酸素化合物(しばしばテルペノイドと称される)も含まれる。テルペン類は構造的に多様な化合物であり、例えば、環状(例えば、単環式、多環式、ホモ環式および複素環式化合物)または非環式(例えば、直鎖状および分岐化合物)であり得る。ある態様において、テルペンは臭気を有し得る。本明細書で用いる、芳香化合物は、臭気を有する化合物を意味する。質量分析法(例えば、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC/MS、以下の実施例2に示す))を含む、当技術分野で既知の任意の方法を用いて、目的のテルペンを同定することができる。
【0029】
テルペンシンターゼは、例えば、モノテルペンシンターゼ、ジテルペンシンターゼおよびセスキテルペンシンターゼを含み得る。モノテルペンシンターゼおよびセスキテルペンシンターゼの特定の限定されない例は、例えば、Degenhardt et al., Monoterpene and sesquiterpene synthases and the origin of terpene skeletal diversity in plants. Phytochemistry. 2009 Oct-Nov;70(15-16):1621-37に見出され得て、この目的のためにその内容全体を引用により本明細書に包含させる。
【0030】
モノテルペンシンターゼは、炭素数10のモンテルペン類の生成を触媒する。一般的に、モノテルペンシンターゼは、ゲラニル二リン酸(GPP)を基質として用いる。モノテルペンシンターゼの限定的でない例としては、ミルセンシンターゼ(UniProtKb識別子:O24474)、(R)-リモネンシンターゼ(UniprotKB識別子:Q2XSC6)、(E)-ベータ-オシメンシンターゼ(UniProtKB識別子:Q5CD81)およびリモネンシンターゼ(UniProtKB識別子:Q9FV72)が挙げられる。モノテルペン類の限定的でない例としては、リモネン、サビネン、トウジェン(thujene)、カレン、ボルネオール、ユーカリプトールおよびカンフェンが挙げられるが、これに限定されない。
【0031】
ジテルペンシンターゼは、炭素数20のジテルペン類の生成を促進する。一般的に、ジテルペンシンターゼは、ゲラニルゲラニル二リン酸を基質として用いる。ジテルペンシンターゼの限定的でない例としては、シスアビエノールシンターゼ(UniProtKB識別子:H8ZM73)、スクラレオールシンターゼ(UniProtKB識別子:K4HYB0)およびアビエタジエンシンターゼ(Q38710)が挙げられる。例えば、Gong et al., Diterpene synthases and their responsible cyclic natural products. Nat Prod Bioprospect. 2014;4(2):59-72(この文献は、この目的のために引用によりその内容全体を本明細書に包含させる)を参照のこと。ジテルペン類の限定的でない例としては、センブレン(cembrene)およびスクラレオールが挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
セスキテルペンシンターゼは、15-炭素セスキテルペン類の生成を触媒する。一般的に、セスキテルペンシンターゼは、ファルネシル二リン酸(FDP)をセスキテルペンに変換する。セスキテルペンシンターゼの限定的でない例としては、(+)-デルタ-カジネンシンターゼ(UniProtKB識別子:Q9SAN0)、UniProtKB識別子:A0A067FTE8、ベータ-ユーデスモールシンターゼ(UniProtKB識別子:B1B1U4)、(+)-デルタ-カジネンシンターゼアイソザイムXC14(UniProtKB識別子:Q39760)、(+)-デルタ-カジネンシンターゼアイソザイムXC1(UniProtKB識別子:Q39761)、(+)-デルタ-カジネンシンターゼアイソザイムA(UniProtKB識別子:Q43714)、セスキテルペンシンターゼ2(UniProtKB識別子:Q9FQ26)、推定デルタ-グアイエンシンターゼ(UniProtKB識別子:A0A0A0QUT9)、デルタ-グアイエンシンターゼ1(UniProtKB識別子:D0VMR6)、アルファ-ジンジベレンシンターゼ(UniProtKB識別子:Q5SBP4)、(Z)-ガンマ-ビサボレンシンターゼ1(UniProtKB識別子:Q9T0J9)、A0A067D5M4、デルタ-エレメンシンターゼ(UniProtKB識別子:A0A097ZIE0)、ShoBecSQTS1、A0A068UHT0、テルペンシンターゼ(UniProtKB識別子:G5CV47)、A0A068VE40およびA0A068VI46が挙げられる。
【0033】
ある態様において、セスキテルペンシンターゼは、アルファ-グアイエンシンターゼである。本明細書で用いる、アルファ-グアイエンシンターゼは、アルファ-グアイエンの生成を触媒することができる。ある態様において、アルファ-グアイエンシンターゼは、基質として(2E,6E)-ファルネシル二リン酸を用いる。アルファ-グアイエンシンターゼの限定的でない例としては、UniProtKB識別子:D0VMR6、UniProtKB識別子:D0VMR7、UniProtKB識別子:D0VMR8、UniProtKB識別子:Q49SP3が挙げられる。本明細書に記載のように、アルファ-グアイエンシンターゼは、配列番号17、22または29と少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99%を超えて、その間の全ての値を含む)と同一の配列を含み得る。特定の態様において、アルファ-グアイエンシンターゼは、配列番号17、22または29を含む。特定の態様において、アルファ-グアイエンシンターゼは、配列番号17、22または29からなる。
【0034】
本明細書で用いるように、特記しない限り、セスキテルペンには、セスキテルペン炭化水素およびセスキテルペンアルコール(セスキテルペノール)が含まれる。セスキテルペンの限定的でない例としては、デルタ-カジネン(delta-cadinene)、エピ-クベノール(epi-cubenol)、タウ-カジノール(tau-cadinol)、アルファ-カジノール(alpha-cadinol)、ガンマ-セリネン(gamma-selinene)、10-エピ-ガンマ-オイデスモール(10-epi-gamma-eudesmol)、ガンマ-オイデスモール(gamma-eudesmol)、アルファ/ベータ-オイデスモール(alpha/beta-eudesmol)、ジュニパーカンファー(juniper camphor)、7-エピ-アルファ-オイデスモール(7-epi-alpha-eudesmol)、クリプトメリジオール(cryptomeridiol)異性体1、クリプトメリジオール異性体2、クリプトメリジオール異性体3、フムレン(humulene)、アルファ-グアイエン(alpha-guaiene)、デルタ-グアイエン、ジンギベレン(zingiberene)、ベータ-ビサボレン(beta-bisabolene)、ベータ-ファルネセン(beta-farnesene)、ベータ-セスキフェランドレン(beta-sesquiphellandrene)、キュベノール(cubenol)、アルファ-ビサボロール(alpha-bisabolol)、アルファ-クルクメン(alpha-crucumene)、トランス-ネロリドール(trans-nerolidol)、ガンマ-ビサボレン(gamma, bisabolene)、ベータ-カリオフィレン(beta-caryophyllene)、トランス-セスキサビネン水和物(trans-Sesquisabinene hydrate)、デルタ-エレメン(delta-elemene)、シス-オイデスム-6-エン-11-オール(cis-eudesm-6-en-11-ol)、ダウセン(daucene)、イソダウセン、トランス-ベルガモテン(trans-bergamotene)、アルファ-ジンジベレン(alpha-zingiberene)、セスキサビネン水和物および8-イソプロペニル-1,5-ジメチル-1,5-シクロデカジエン(8-Isopropenyl-1,5-dimethyl-1,5-cyclodecadiene)が挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
本発明はまた、多機能性の(例えば、2以上のセスキテルペンを生成することができる)キメラテルペンシンターゼを包含する。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、デルタ-カジネンおよびアルファ-カジノールを生成することができる。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、デルタ-カジネン、タウ-カジノールおよびアルファ-カジノールを生成することができる。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、アルファ-グアイエンおよびデルタ-グアイエンを生成することができる。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、ベータ-カリオフィレンおよびフムレンを生成することができる。
【0036】
ある態様において、本発明は、キメラテルペンシンターゼ(例えば、キメラセスキテルペンシンターゼ)は、配列番号1-52からなる群より選択される配列と少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99%を超えて、その間の全ての値を含む)同一であるアミノ酸配列を含む。ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、配列番号1-52に記載のアミノ酸配列を含む。
【0037】
ある態様において、キメラテルペンシンターゼは、配列番号119-357に記載の1以上の配列を含む。
【0038】
当技術分野で公知の用語“配列同一性”とは、配列比較(アラインメント)によって決定される、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列間の関係を意味する。当技術分野では、同一性はまた、2つまたはそれ以上の残基(例えば、核酸またはアミノ酸残基)の文字列間の一致数によって決定される2つの配列間の配列関連性の程度も意味する。同一性は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(例えば、“アルゴリズム”)によって指定されたギャップアラインメント(もしあれば)を有する2以上の配列のうち小さい方の配列間の一致割合を計測する。
【0039】
関連するポリペプチドの同一性は、当業者に公知のいずれかの方法によって容易に計算することができる。2つの配列(例えば、核酸またはアミノ酸配列)の“同一性パーセント”は、例えば、Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993に記載のように改変された、Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムを用いて決定され得る。このようなアルゴリズムは、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990に記載のNBLAST(登録商標)およびXBLAST(登録商標)プログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLAST(登録商標)タンパク質検索は、例えば、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施して、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。ギャップが2つの配列の間に存在する場合、例えば、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997に記載されている、ギャップ付き(Gapped)BLAST(登録商標)を利用することができる。BLAST(登録商標)プログラムおよびギャップ付きBLAST(登録商標)プログラムを利用するとき、各プログラムのデフォルトパラメーター(例えば、XBLAST(登録商標)およびNBLAST(登録商標))を用いることができるか、またはパラメーターは、当業者によって理解されるであろうように適切に調整することができる。
【0040】
用い得るこ他の局所的なアライメント技術は、例えば、Smith-Watermanアルゴリズム(Smith, T.F. & Waterman, M.S. (1981) “Identification of common molecular subsequences.” J. Mol. Biol. 147:195-197)に基づく。用い得る一般的なグローバルアラインメント技術は、例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman, S.B. & Wunsch, C.D. (1970) “A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins.” J. Mol. Biol. 48:443-453)であり、それは動的プログラミングに基づいている。最近では、Needleman-Wunsch アルゴリズムを含む他の最適なグローバルアライメント法よりも高速に核酸およびアミノ酸配列のグローバルアライメントを生成すると称される高速最適グローバル配列決定アライメントアルゴリズム(FOGSAA)が開発された。
【0041】
本発明はまた、本明細書に記載のキメラテルペンシンターゼ(例えば、セスキテルペンシンターゼ)のいずれか1つにより生成される1以上のテルペン(例えば、セスキテルペン)を含む組成物を包含する。ある態様において、組成物は、芳香化合物である少なくとも1つのテルペン(例えば、セスキテルペン)を含む。ある態様において、組成物は香料(例えば、単一の芳香剤または芳香剤の混合物を含む)である。ある態様において、組成物は、該組成物の揮発性を低減するための固定剤(すなわち、安定化剤)をさらに含む。限定的でない例としては、固定剤(例えば、ベンゾイン、オリバナム、ストラックス、ラブダナム、ミルラおよびトルバルサム)および安息香酸ベンジルを含む固定剤が含まれる。ある態様において、組成物はさらにエチルアルコールを含む。ある態様において、組成物は蒸留水をさらに含む。
【0042】
特定の態様において、本発明のテルペンシンターゼ(例えば、セスキテルペンシンターゼ)は、セスキテルペンなどの特定のテルペン類の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%(間の任意の値を含む)を含むテルペン(例えば、セスキテルペン)組成物を生成する。セスキテルペンの限定的でない例としては、デルタ-カジネン、エピ-クベノール、タウ-カジノール、アルファ-カジノール、ガンマ-セリネン、10-エピ-ガンマ-オイデスモール、ガンマ-オイデスモール、アルファ/ベータ-オイデスモール、ジュニパーカンファー、7-エピ-アルファ-オイデスモール、クリプトメリジオール異性体1、クリプトメリジオール異性体2、クリプトメリジオール異性体3、フムレン、アルファ-グアイエン、デルタ-グアイエン、ジンギベレン、ベータ-ビサボレン、ベータ-ファルネセン、ベータ-セスキフェランドレン、クベノール、アルファ-ビサボロール、アルファ-クルクメン、トランス-ネロリドール、ガンマ-ビサボレン、ベータ-カリオフィレン、トランス-セスキサビネン水和物、デルタ-エレメン、シス-オイデスム-6-エン-11-オール、ダウセン、イソダウセン、トランス-ベルガモテン、アルファ-ジンジベレン、セスキサビネン水和物および8-イソプロペニル-1,5-ジメチル-1,5-シクロデカジエンが挙げられる。限定的でない例として、テルペンシンターゼを宿主細胞で異種発現させてよく、組換え宿主細胞によって産生されたセスキテルペンを抽出することができ、組成物中のセスキテルペンの種類を、ガスクロマトグラフィー-質量分析を用いて決定することができる。ある態様において、テルペンシンターゼを組換え発現させ、精製することができる。ある態様において、精製されたテルペンシンターゼにより生成されたセスキテルペン類を抽出し、組成物中のセスキテルペン類の種類をガスクロマトグラフィー-質量分析を用いて決定することができる。
【0043】
特定の態様において、アルファ-グアイエンシンターゼは、アルファ-グアイエンの少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%(間の任意の値を含む)を含むセスキテルペン組成物を生成することができる。ある態様において、アルファ-グアイエンシンターゼは、アルファ-グアイエンの1%から10%、5%から20%、15%から20%、6%から20%、17%から20%、18%から20%、19%から20%、20%から25%、20%から24%、20%から23%、20%から22%、20%から21%、20%から30%、30%から40%、40%から50%、50%から60%、60%から70%、70%から80%、80%から90%または90%から100%(間の任意の値を含む)を含むセスキテルペン組成物を生成することができる。
【0044】
希少植物および絶滅した植物
本明細書に記載のキメラテルペンシンターゼの配列の少なくとも一部は、希少植物または絶滅した植物に由来する。本明細書で用いる用語“希少植物”または“希少植物類”は、珍しい、希少な、まれに遭遇する、絶滅危惧種(例えば、絶滅の危機に曝されている)、脆弱であり、個人蒐集地でのみ入手可能で、特定の地域(endemic location)では見つからず、栽培でしか入手できず、および/または絶滅した、植物を包含する。ある態様において、希少植物は、まれに遭遇する(例えば、1、2、3、4または5箇所などのいくつかの箇所でのみ遭遇する)植物である。ある態様において、希少植物は絶滅した植物である。本明細書で用いる、絶滅した植物とは、生存種を有しない、生存種を有しないと分類された、または当業者によって生存種を有しないと推測された、植物種を意味する。限定的でない例として、絶滅危惧種の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストを用いて、植物の保全状況を決定し、希少植物を特定できる。例えば、絶滅した、野生で絶滅した、絶滅の危機に瀕している、絶滅の危機にある、および絶滅が近い、IUCNレッドリストで絶滅危惧種に分類されている植物は、希少植物と見なされ得る。
【0045】
希少植物の限定的でない例としては、Leucadendron grandiflorum、Shorea cuspidata、Macrostylis villosa、Orbexilum stipulatum、Myrcia skeldingii、Nesiota Elliptica、Macrostylis villosa、Wendlandia angustofola、Erica Pyramidalis、Stenocarpus dumbeenis、Pradosia glaziovii、Crassula subulata、Hibiscadelphus wilderianusおよびErica foliaceaが挙げられる。
【0046】
ある態様において、希少植物は、Hibiscadelphus wilderianusであり得る。Hibiscadelphus属は、tribe Hibisceae (Malvaceae)に属し、該属のメンバーは、下側の花弁が上側の3つの花弁よりも短いことが多い短い環状構造を形成する花弁を有することが多い(例えば、Oppenheimer et al., A new species of Hibiscadelphus Rock (Malvaceae, Hibisceae) from Maui、Hawaiian Islands; PhytoKeys, 2014;(39):65-75参照、その内容全体を引用により本明細書に包含される)。Hibiscadelphus属は、ハワイに固有であり、少なくとも8種が報告されている。これらのうち4種(Hibiscadelphus bombycinus、Hibiscadelphus crucibracteatus、Hibiscadelphus wilderianusおよびHibiscadelphus woodiiを含む)は絶滅し、これらのうち2種(Hibiscadelphus giffardianusおよびHibiscadelphus hualalaiensis)が、栽培でのみ存在しており、残り2種(Hibiscadelphus distansおよびHibiscadelphus stellatus)が、野生に存在する。
【0047】
Hibiscadelphus wilderianusは、1910年にハワイのマウイ島のアウワヒの溶岩地帯で標高2,600フィートにて最後に観察された絶滅した樹種である(例えば、Radlkofer et al., New and Noteworthy Hawaiian Plants; Hawaiian Board of Agriculture and Forestry Botanical Bulletin、1911;(1):1-15; “The IUCN Red List of Threatened Species: Hibiscadelphus wilderianus,” World Conservation Monitoring Centre, 1998参照、それぞれ、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。Hibiscadelphus wilderianusのラテン語での説明は、Radlkoferらの元の報告書に記載されている。葉および果実のある木の枝の写真が、元のRadlkoferらの報告書に含まれており、
図8Aに再現されている。
【0048】
ある態様において、希少植物は、Leucadendron grandiflorumであり得る。Leucadendronは、Proteaceae科に属する雌雄異株の属であり、南アメリカの固有種である。Leucadendron属の種は常緑低木を含み、多くの場合、円錐形の花序(infructescences)(シードヘッド)を有する。Leucadendron属には少なくとも80種が存在し、L. album、L. arcuatum、L. argenteum、L. barkerae、L. bonum、L. brunioides、L. burchellii、L. cadens、L. chamelaea、L. cinereum、L. comosum、L. concavum、L. conicum、L. coniferum、L. cordatum、L. coriaceum、L. corymbosum、L. cryptocephalum、L. daphnoides、L. diemontianum、L. discolor、L. dregei、L. dubium、L. elimense、L. ericifolium、L. eucalyptifolium、L. flexuosum、L. floridum、L. foedum、L. galpinii、L. gandogeri、L. glaberrimum、L. globosum、L. grandiflorum、L. gydoense、L. immoderatum、L. lanigerum、L. laureolum、L. laxum、L. levisanus、L. linifolium、L. loeriense、L. loranthifolium、L. macowanii、L. meridianum、L. meyerianum、L. microcephalum、L. modestum、L. muirii、L. nervosum、L. nitidum、L. nobile、L. olens、L. orientale、L. osbornei、L. platyspermum、L. pondoense、L. procerum、L. pubescens、L. pubibracteolatum、L. radiatum、L. remotum、L. roodii、L. rourkei、L. rubrum、L. salicifolium、L. salignum、L. sericeum、L. sessile、L. sheilae、L. singular、L. sorocephalodes、L. spirale、L. spissifolium、L. stellare、L. stelligerum、L. strobilinum、L. teretifolium、L. thymifolium、L. tinctum、L. tradouwense、L. uliginosum、L. verticillatumおよびL. xanthoconusが含まれる。
【0049】
Leucadendron grandiflorumは、一般に、Wynberg Conebushとしても知られ、1806年に南アメリカのクラパム(Clapham)で最後に観察された。Leucadendron grandiflorumの記録された目撃情報は、ウィンバーグマウンテンであり、この種は、より湿った花崗岩土壌のウィンバーグ丘の南斜面に存在した可能性がある(例えば、T. Rebelo, “Wynberg Conebush - extinct for 200 years,” iSpot、25 July 2015参照、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。Leucadendron grandiflorumは、Salisbury et al., The Paradisus Londinensis or Coloured Figures of Plants Cultivated in the Vicinity of the Metropolis. 1805; (Volume 1、part 2): 105に記載および描写されている;www -dot- biodiversitylibrary.org-backslashia/mobot31753000575172#page/248/mode/1upを参照のこと(各々の内容は、その全体を引用により本明細書に包含させる)。Leucadendron grandiflorumの現代の蒐集の記録はなく、この種は、1800年代初期までに希少種となったか、または絶滅したと考えられる(例えば、T. Rebelo, “Wynberg Conebush - extinct for 200 years,” iSpot、25 July 2015; Catalogue of Life: Leucadendron grandiflorum (Salisb.) R. Br., 20 December 2017参照)。姉妹種としては、L. globosumおよびL. elimenseが挙げられる。
図8Bは、Leucadendron grandiflorumを示す。
【0050】
ある態様において、希少植物は、Macrostylis villosaであり得る。Macrostylis属は、Rutaceae科に属し、少なくとも10種(例えば、Macrostylis barbigera、 Macrostylis cassiopoides、Macrostylis cauliflora、Macrostylis crassifolia、Macrostylis decipiens、Macrostylis hirta、Macrostylis ramulosa、Macrostylis squarrosa、Macrostylis tenuisおよびMacrostylis villosa)が挙げられる。
【0051】
Macrostylis villosaには、M. villosa (Thunb.) Sond. subsp. minorおよびM. villosa (Thunb.) Sond. subsp. villosaの、2つの亜種が認められている。M. villosa (Thunb.) Sond. subsp. minorは、その生息地が農業に転換されたために絶滅したと分類されており、大規模探索では生存植物の移転に失敗した。以前は南アフリカのウエスタンケープで発見され、斜面の砂利および粘土質の土壌に生息していた(例えば、“Red List of South African Plants: Macrostylis villosa subsp。minor,” 2005参照、その内容全体は引用により本明細書に包含させる)。M. villosa (Thunb.) Sond. subsp. villosaは、都市の拡大、外来植物の侵入および生息地の農業への転換による生息の減少により、絶滅危惧種と見なされている。M. villosa (Thunb.) Sond. subsp. villosaの写真は、
図8Cに再現されている(例えば、“Red List of South African Plants: Macrostylis villosa subsp. villosa,” 2007参照、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。
【0052】
ある態様において、希少植物は、Orbexilum stipulatum (Psoralea stipulata)であり得る。Orbexilumは、Fabaceae科に属し、この属のメンバーは、しわ状で毛のない特徴的な鞘壁を有することが多い。Orbexilumはまた、その“開花後の萼の増大がほとんどない(scarcely accrescent calyx)”により区別され得る(例えば、Turner, Revision of the genus Orbexilum (Fabaceae: Psoraleeae). Lundellia. 2008; (11):1-7参照、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。Orbexilum種としては、O. chiapasanum、O. gracile、O. lupinellum、O. macrophyllum、O. melanocarpum、O. oliganthum、O. onobrychis、O. pedunculatum、O. simplex、O. stipulatum、およびO. virgatumが挙げられる。
【0053】
“Largestipule Leather-root”または“Falls-of-the-Ohio Scurfpea”としても公知のO. stipulatumは、ケンタッキー州のロックアイランドでのみ発見された。O. stipulatumの最後の記録された観察は、この島が再舗装され洪水に遭う前の1881年であった。ケンタッキー州とインディアナ州のオハイオ川の両岸での1998年の集中的な調査を含む、類似の生息地の調査を何度も行ったにもかかわらず、この種は移動されていない。従って、この種は絶滅したと分類されている(例えば、NatureServe Explorer:Orbexilum stipulatum - (Torr. &Grey)Rydb., 2016および上記のBaskin et al.を参照、各々、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。
【0054】
O. stipulatumは、多年草で、葉は、それぞれ長さ2cmの3枚の子葉に分かれていた。この種は葉の基部に粘り気のある付根を有しており、また、がくからはみ出さない冠管を有していると記載された。この植物は5月下旬から6月中旬に開花したと思われるが、種子は自然界では観察されていない(例えば、“NatureServem Explorer:Orbexilum stipulatum-(Torr. &Gray)Rydb. ”、2016およびBaskin et al., Geographical origin of the specimens of Orbexilum stipulatum (T. & G.) Rydb. (Psoralea stipulata T. & G.). Castanea. 1986;(51): 207-210参照、各々、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。O. stipulatumの写真は、1840年の自然科学アカデミーのフィラデルフィアハーバリウムからの“Orbexilum stipulatum collected at Falls of the Ohio,”という絵図に見出され得て、
図8Dに再現されている。
【0055】
ある態様において、希少植物は、Shorea cuspidataであり得る。Shoreaは、Dipterocarpaceae科の属であり、東南アジアに固有の多くの熱帯雨林の樹木が含まれている。多くのShorea種は被子植物(顕花植物)である。Shorea種の限定的でない例としては、Shorea affinis、Shorea congestiflora、Shorea cordifolia、Shorea disticha、Shorea megistophylla、Shorea trapezifolia、Shorea zeylanica、Shorea acuminatissima、Shorea alutacea、Shorea angustifolia、Shorea bakoensis、Shorea balanocarpoides、Shorea chaiana、Shorea collaris、Shorea cuspidata、Shorea faguetiana、Shorea faguetioides、Shorea gibbosa、Shorea hopeifolia、Shorea iliasii、Shorea induplicata、Shorea kudatensis、Shorea laxa、Shorea longiflora、Shorea longisperma、Shorea macrobalanos、Shorea mujongensis、Shorea multiflora、Shorea obovoidea、Shorea patoiensis、Shorea peltata、Shorea polyandra、Shorea richetia、Shorea subcylindrica、Shorea tenuiramulosaおよびShorea xanthophyllaが挙げられる。
【0056】
S. cuspidataは、マレーシア固有の樹木であり、現在は、IUCNレッドリスト(“The IUCN Red List: Shorea cuspidata,” 1998、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)で絶滅種と分類されているが、この分類に分類された後も、バコ国立公園、ランビル国立公園およびセメンゴ樹木園でわずかに発見されている(Ashton, Shorea cuspidata. Tree Flora of Sabah and Sarawek. 2004;(5):246-247; Ling et al., Diversity of the tree flora in Semenggoh Arboretum, Sarawak, Borneo. Gardens’ Bulletin Singapore. 2012; (64):139-169、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。Shorea cuspidataは、希少植物とみなされ得る。Shorea cuspidataは、花は二番花で淡いライムイエローの花びらを有する中型の樹木として特徴付けられている(例えば、Ashton, Man. Dipt. Brun. 1968: f. 10, pl. 14 (stem-base)参照)。Shorea cuspidata種の写真を、
図8Eに再現している(“Kew Royal Botanical Gardens: Shorea cuspidata specimen K000700460,” 1962、この内容全体は引用により本明細書に包含させる)。
【0057】
ある態様において、希少植物はWendlandia angustifoliaであり得る。Wendlandiaは、Rubiaceae科に属する顕花植物の属である。Wendlandia種の限定的でない例としては、Wendlandia aberrans、Wendlandia acuminata、Wendlandia amocana、Wendlandia andamanica、Wendlandia angustifolia、Wendlandia appendiculata、Wendlandia arabica、Wendlandia arborescens、Wendlandia augustini、Wendlandia basistaminea、Wendlandia bicuspidata、Wendlandia bouvardioides、Wendlandia brachyantha、Wendlandia brevipaniculata、Wendlandia brevitubaおよびWendlandia buddleaceaが挙げられる。
【0058】
W. angustifoliaは、インド原産の植物であり、現在IUCNレッドリストで絶滅種と分類されている(“The IUCN Red List: Wendlandia angustifolia,” 1998、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。この分類後に、W. angustifoliaは、インドのKalakkad Mundantharai Tiger 保護区で観察されたことが報告されている(Viswanathan et al., Rediscovery of Wendlandia Angustifolia Wight Ex Hook.f. (Rubiaceae)、from Tamil Nadu, a Species Presumed Extinct. Journal of The Bombay Natural History Society. 2000 97(2):311-313、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。W. angustifolia は希少植物とみなされ得る。W. angustifoliaは、葉は三日月状の渦巻きと線形の披針形をしている低木な樹木であると報告されている(例えば、Viswanathan et al., Rediscovery of Wendlandia Angustifolia Wight Ex Hook.f. (Rubiaceae)、from Tamil Nadu, a Species Presumed Extinct, Journal of The Bombay Natural History Society. 2000; 97(2):311-313参照、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。標本の写真を
図8Fに再現する(“Kew Royal Botanical Gardens: Wendlandia angustifolia K000030921,”蒐集日は記録されていない。その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。
【0059】
キメラテルペンシンターゼおよびテルペン類の製造方法
本発明はまた、キメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子を記載する。ある態様において、かかるキメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子の少なくとも10%(例えば、少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超える、その間の全ての値を含む)は、希少植物または絶滅した植物に由来し得る。
【0060】
幾つかの例において、キメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子は、配列番号67-118からなる群より選択される配列と少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超えて、その間の全ての数値を含む)同一であるヌクレオチド配列を含む。ある例において、キメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子は、配列番号67-118からなる群より選択される配列と同一のヌクレオチド配列を含む。ある例において、キメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列TATA(TATAボックス配列)をさらに含む。ある例において、キメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子は、配列番号67-118からなる群より選択される配列のN末端に位置するヌクレオチド配列TATA(TATAボックス配列)を含む。ある例において、キメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子は、配列番号119-357に記載の配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0061】
ある態様において、キメラテルペンシンターゼ(例えば、キメラセスキテルペンシンターゼ)のアミノ酸配列の少なくとも10%(例えば、少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超えて、その間の全ての数値を含む)は、希少植物または絶滅した植物に由来し得る。ある例において、キメラテルペンシンターゼは、配列番号119-357に記載の1以上の配列を含む。
【0062】
また、本発明は、アルファ-グアイエンを製造可能なキメラテルペンシンターゼを記載する。ある態様において、かかるキメラテルペンシンターゼをコードする核酸分子の少なくとも10%(例えば、少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超えて、その間の全ての数値を含む)は、希少植物または絶滅した植物に由来し得る。
【0063】
ある態様において、アルファ-グアイエンを製造可能なキメラテルペンシンターゼのアミノ酸配列の少なくとも10%(例えば、少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超えて、その間の全ての数値を含む)は、希少植物または絶滅した植物に由来し得る。
【0064】
ある例において、キメラの構築は、少なくとも2つの目的のテルペンシンターゼの間の配列(例えば、核酸配列および/またはアミノ酸配列)アライメントを含み得る。例えば、配列アライメント分析を用いて、特定のテルペンシンターゼのフラグメント(例えば、ドメイン)を同定して、キメラテルペンシンターゼに含めることができる。ある態様において、キメラテルペンシンターゼはキメラセスキテルペンシンターゼである。分析の限定的でない例としては、実施例2に記載のblastn-mapdamageおよびtblastnパイプラインに記載のタイプが挙げられ得る。
【0065】
ある態様において、キメラテルペンシンターゼコーディング配列は、参照キメラテルペンシンターゼコーディング配列に対して1、2、3、4、5またはそれ以上の位置での変異を含む。ある態様において、キメラテルペンシンターゼコーディング配列は、参照キメラテルペンシンターゼコーディング配列と比較して、該コーディング配列の1、2、3、4、5またはそれ以上のコドンに変異を含む。当業者に理解され得るように、コドン内の変異は、遺伝子コードの縮重のために該コドンによってコードされるアミノ酸を変化させても変化させなくてもよい。ある態様において、コーディング配列における1以上の変異は、参照キメラテルペンシンターゼのアミノ酸配列と比較して、キメラテルペンシンターゼのアミノ酸配列を変化させない。
【0066】
ある態様において、キメラテルペンシンターゼ配列における1以上の変異は、参照キメラテルペンシンターゼのアミノ酸配列と比較して、該キメラテルペンシンターゼのアミノ酸配列を変化させる。ある態様において、1以上の変異は、参照キメラテルペンシンターゼのアミノ酸配列と比較してキメラテルペンシンターゼのアミノ酸配列を変化させ、かつ参照キメラテルペンシンターゼと比較して、該キメラテルペンシンターゼの活性を変化(増強または低減)させる。
【0067】
当業者はまた、キメラテルペンシンターゼコーディング配列における変異は、前記ポリペプチドの機能的に等価な変異体、例えば、該ポリペプチドの活性を保持する変異体を提供するために、保存的アミノ酸置換をもたらし得ることを認識し得る。本明細書で用いる“保存的アミノ酸置換”とは、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対的電荷またはサイズ特性または機能的活性を変化させないアミノ酸置換を意味する。
【0068】
ある例において、アミノ酸は、そのR基によって特徴付けられる(例えば、表1参照)。例えば、アミノ酸は、非極性脂肪族R基、正に荷電R基、負に荷電R基、非極性芳香族R基、または極性無荷電R基を含み得る。非極性脂肪族R基を含むアミノ酸の限定的でない例としては、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、メチオニンおよびイソロイシンが挙げられる。正に荷電R基を含むアミノ酸の限定的でない例としては、リシン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。負に荷電R基を含むアミノ酸の限定的でない例としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。非極性、芳香族性R基を含むアミノ酸の限定的でない例としては、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンが挙げられる。極性無荷電R基を含むアミノ酸の限定的でない例としては、セリン、スレオニン、システイン、プロリン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。
【0069】
変異体は、ポリペプチド配列を改変するための方法をまとめた文献、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Fourth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 2012、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New York, 2010に記載のような、当業者に公知のポリペプチド配列を改変するための方法に従って製造することができる。
【0070】
ポリペプチドの機能的に等価な変異体の限定的でない例としては、本明細書に記載のタンパク質のアミノ酸配列における保存的アミノ酸置換が挙げられる。アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸間での置換が含まれる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および、(g)E、D。ある態様において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または20を超える残基が、変異体ポリペプチドを製造する際に変更され得る。ある態様において、アミノ酸は、保存的アミノ酸置換により置換される。
【0071】
【0072】
所望の特性および/または活性を有するキメラテルペンシンターゼ(例えば、キメラセスキテルペンシンターゼ)変異体を製造するためのポリペプチドのアミノ酸配列におけるアミノ酸置換は、キメラテルペンシンターゼ(例えば、キメラセスキテルペンシンターゼ)のコーディング配列の改変によって行われ得る。同様に、ポリペプチドの機能的に等価な変異体を製造するためのポリペプチドのアミノ酸配列における保存的アミノ酸置換は、一般的に、キメラテルペンシンターゼ(例えば、キメラセスキテルペンシンターゼ)のコーディング配列の改変によって行われる。
【0073】
変異(例えば、置換)は、当業者に既知の種々の方法によりヌクレオチド配列中に行われ得る。例えば、変異は、Kunkel(Kunkel, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 82: 488-492, 1985)の方法に従うPCR特異的変異導入、部位特異的変異導入によるか、またはポリペプチドをコードする遺伝子の化学合成によって行われ得る。
【0074】
循環置換(circular permutation)(Yu and Lutz, Trends Biotechnol. 2011 Jan;29(1):18-25)を含む好適な方法を、変異体製造のために用いることができる。循環置換では、ポリペプチドの線形一次配列を環化し(例えば、配列のN末端およびC末端を連結することにより)、ポリペプチドを別の位置で切断する(“切断(broken)”)ことができる。従って、新規ポリペプチドの線形一次配列は、線形配列アライメント法(例えば、Clustal OmegaまたはBLAST)により決定される、低い配列同一性(例えば、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%以下または5%未満、その間の全ての値を含む)を有し得る。しかしながら、2つのタンパク質のトポロジー分析は、2つのポリペプチドの三次構造が類似または非類似であることを明らかにし得る。特定の理論に関わらず、参照ポリペプチドの循環置換によって作製され、参照ポリペプチドと同様の三次構造を有する変異ポリペプチドは、類似の機能特性(例えば、酵素活性、酵素動態、基質特異性または生成物特異性)を共有し得る。ある例において、循環置換は、二次構造、三次構造または四次構造を変化させ、異なる機能特性(例えば、増加または減少した酵素活性、異なる基質特異性または異なる生成物特異性)を有する酵素を生成し得る。例えば、Yu and Lutz、Trends Biotechnol。2011 Jan;29(1):18-25を参照のこと。
【0075】
循環置換されたタンパク質では、そのタンパク質のアミノ酸配列は、循環置換されていない参照タンパク質とは異なることが理解されるべきである。しかしながら、当業者であれば、例えば配列をアライメントし、保存されたモチーフを検出し、および/または例えば相同性モデリングによりタンパク質の構造または予測された構造を比較することにより、循環置換されたタンパク質中の残基が、循環置換されていない参照タンパク質中の残基に対応しているかを容易に決定することができる。
【0076】
本発明の一面は、酵素をコードする遺伝子の組換え発現、機能的修飾およびそれらの変異体、ならびにそれらに関連する使用に関する。
【0077】
本明細書に記載のキメラテルペンシンターゼのいずれかをコードする核酸は、当技術分野で公知の任意の方法により適当なベクターに組み込まれてもよい。例えば、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクター)、一過性発現に適する任意のベクター、または任意の発現誘導用ベクター(例えば、ガラクトース誘導性ベクターもしくはドキシサイクリン誘導性ベクター)を含むが、これらに限定されない、発現ベクターであり得る。キメラテルペンシンターゼ(例えば、キメラセスキテルペンシンターゼ)の発現のためのベクターの限定的でない例は、以下の実施例2に記載されている。
【0078】
ある態様において、ベクターは、細胞内で自律的に複製する。ベクターは、制限エンドヌクレアーゼによって切断される1以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含み、本明細書に記載の遺伝子を含む核酸を挿入および連結して、細胞内で複製できる組換えベクターを生成することができる。ベクターは通常DNAから構成されるが、RNAベクターも利用可能である。クローニングベクターとしては、プラスミド、フォスミド、ファージミド、ウイルスゲノム、人工染色体が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で用いる用語“発現ベクター”または“発現構築物”とは、酵母細胞のような宿主細胞(例えば、微生物)における特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸要素を有する、組換え的または合成的に生成された核酸構築物を意味する。ある態様において、本明細書に記載の遺伝子の核酸配列は、それが調節配列に作動可能に連結されるようなクローニングベクターに挿入され、ある態様では、RNA転写物として発現される。ある態様において、ベクターは、組換えベクターで形質転換またはトランスフェクトされた細胞を同定するために、本明細書に記載の選択可能マーカーなどの1以上のマーカーを含む。
【0079】
ある態様において、ベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。
【0080】
コーディング配列および調節配列が共有結合し、コーディング配列の発現または転写が調節配列の影響下または制御下にあるとき、該コーディング配列と調節配列は“作動可能に結合された”または“作動可能に連結された”と言われる。コーディング配列が機能的タンパク質に翻訳されるべきときは、該コーディング配列および調節配列は、5’調節配列のプロモーターの誘導がコーディング配列を転写し、そしてコーディング配列と調節配列の間の結合の性質が、(1)フレームシフト変異の導入をもたらさない、(2)コーディング配列の転写を指示するプロモーター領域の能力を妨害しない、または(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力を妨害しない場合、作動可能に結合または連結されているといわれる。従って、プロモーター領域がコード配列を転写し、転写物が目的のタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得る場合、プロモーター領域は、コーディング配列に作動可能に結合または連結される。
【0081】
ある態様において、本明細書に記載のタンパク質のいずれかをコードする核酸は、調節配列(例えば、エンハンサー配列)の制御下にある。ある態様において、核酸はプロモーターの制御下で発現される。プロモーターは、天然のプロモーター、例えば、遺伝子の発現の正常な調節を提供する、その内因性の状況における遺伝子のプロモーターであり得る。あるいは、プロモーターは、遺伝子の天然プロモーターとは異なるプロモーターであってよく、例えば、プロモーターは、その内因性の状況において遺伝子のプロモーターとは異なる。本明細書で用いる“異種プロモーター”または“組換えプロモーター”とは、それが作動可能に結合または連結されているDNA配列の転写を天然または通常関連しないか、または天然または通常制御しないプロモーターである。ある態様において、ヌクレオチド配列は、異種プロモーターの制御下にある。
【0082】
ある態様において、プロモーターは真核生物プロモーターである。真核生物プロモーターの限定的でない例としては、TDH3、PGK1、PKC1、TDH2、PYK1、TPI1、AT1、CMV、EF1a、SV40、PGK1(ヒトまたはマウス)、Ubc、ヒトβアクチン、CAG、TRE、UAS、Ac5、ポリヘドリン、CaMKIIa、GAL1、GAL10、TEF1、GDS、ADH1、CaMV35S、Ubi、H1、U6が挙げられ、これらは当業者に既知であり得る(例えば、Addgene website: blog.addgene.org/plasmids-101-the-promoter-region参照)。ある態様において、プロモーターは、原核生物プロモーター(例えば、バクテリオファージまたは細菌プロモーター)である。バクテリオファージプロモーターの限定的でない例としては、Pls1con、T3、T7、SP6およびPLが挙げられる。細菌プロモーターの限定的でない例としては、Pbad、PmgrB、Ptrc2、Plac/ara、Ptac、Pmが挙げられる。
【0083】
ある態様において、プロモーターは誘導性プロモーターである。本明細書で用いる“誘導性プロモーター”は、ある分子の存在または不存在によって制御されるプロモーターである。誘導性プロモーターの限定的でない例には、化学的に調節されたプロモーターおよび物理的に調節されたプロモーターが含まれる。化学的に調節されたプロモーターの場合、転写活性は、アルコール、テトラサイクリン、ガラクトース、ステロイド、金属または他の化合物などの1以上の化合物によって調節することができる。物理的に調節されるプロモーターの場合、転写活性は光または温度などの現象によって調節できる。テトラサイクリン調節型プロモーターの限定的でない例には、アンヒドロテトラサイクリン(aTc)応答性プロモーターおよび他のテトラサイクリン応答性プロモーターシステム(例えば、テトラサイクリン抑制性タンパク質(tetR)、テトラサイクリンオペレーター配列(tetO)およびテトラサイクリントランスアクティベーター融合タンパク質(tTA))が含まれる。ステロイド調節型プロモーターの限定的でない例には、ラットグルココルチコイド受容体、ヒトエストロゲン受容体、ガエクジソン受容体に基づくプロモーター、およびステロイド/レチノイド/甲状腺受容体スーパーファミリーからのプロモーターが含まれる。金属調節型プロモーターの限定的でない例には、メタロチオネイン(金属イオンを結合および隔離するタンパク質)遺伝子に由来するプロモーターが含まれる。病因調節型(pathogenesis-regurated)プロモーターの限定的でない例には、サリチル酸、エチレンまたはベンゾチアジアゾール(BTH)によって誘導されるプロモーターが含まれる。温度/熱誘導性プロモーターの限定的でないで例には、熱ショックプロモーターが含まれる。光調節型プロモーターの限定的でない例には、植物細胞由来の光応答性プロモーターが含まれる。特定の態様において、誘導性プロモーターはガラクトース誘導性プロモーターである。ある態様において、誘導性プロモーターは、1以上の生理学的条件(例えば、pH、温度、放射線、浸透圧、生理食塩水勾配、細胞表面結合、または1以上の外因性もしくは内因性誘導物質の濃度)によって誘導される。外因性誘導物質または誘導剤の限定的でない例には、アミノ酸およびアミノ酸類縁体、糖類および多糖類、核酸、タンパク質転写活性化因子および抑制因子、サイトカイン、毒素、石油ベースの化合物、金属含有化合物、塩、イオン、酵素基質類縁体、ホルモンまたはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0084】
ある態様において、プロモーターは構成的プロモーターである。本明細書で用いる“構成的プロモーター”とは、遺伝子の連続的な転写を可能にする調節されていないプロモーターを意味する。構成的プロモーターの限定的でない例には、CP1、CMV、EF1a、SV40、PGK1、Ubc、ヒトベータアクチン、CAG、Ac5、ポリヘドリン、TEF1、GDS、CaM35S、Ubi、H1およびU6が含まれる。
【0085】
当業者に既知の他の誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターもまた、本明細書において企図される。
【0086】
遺伝子発現に必要な調節配列の細かな性質は、種または細胞タイプの間で異なるが、一般に、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などのような、転写および翻訳の開始にそれぞれ関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列が含まれる。特に、そのような5’非転写調節配列は、作動可能に結合または連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含み得る。調節配列はまた、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列を含み得る。本明細書に記載のベクターは、5’リーダー配列またはシグナル配列を含み得る。調節配列はまた、ターミネーター配列を含み得る。ある態様において、ターミネーター配列は、転写中にDNAの遺伝子の末端をマークする。異種生物において本明細書に記載の1以上の遺伝子の発現を誘導するのに適する1以上の適切なベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量の範囲内である。
【0087】
発現に必要な要素を含む発現ベクターは市販されており、当業者に知られている(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2012参照)。
【0088】
真核細胞または原核細胞を含む、本明細書に記載の何れかのキメラテルペンシンターゼを製造するために、好適な宿主細胞を用い得る。好適な宿主細胞としては、真菌細胞(例えば、酵母細胞)および細菌細胞(例えば、大腸菌細胞)が挙げられる。発現のための酵母の属の限定的でない例としては、出芽酵母(例えば、S. cerevisiae)、ピキア酵母、クリベロマイセス酵母(例えば、K. lactis)、ハンゼヌラ属酵母およびヤロウイア(Yarrowia)が挙げられる。ある態様において、酵母株は、工業用ポリプロイド酵母菌株である。真菌細胞の他の限定的でない例としては、アスペルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属、リゾプス属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ソーダリア属、マグナポルテ属、カワリミズカビ(Allomyces)属、ウスチラゴ属、ボトリチス種およびトリコデルマ属が挙げられる。
【0089】
本明細書で用いる用語“細胞”は、同じ細胞株または系統に属する細胞の集団などの単一の細胞または細胞の集団を意味し得る。単数形の用語“細胞”の使用が、細胞の集団ではなく、単一の細胞を明示的に意味すると解釈されるべきではない。
【0090】
本明細書に記載のキメラテルペンシンターゼ(例えば、キメラセスキテルペンシンターゼ)のいずれかをコードするベクターは、当技術分野で公知の任意の方法を用いて適当な宿主細胞に導入され得る。酵母形質転換プロトコールの限定的でない例が以下の実施例2およびGietz et al., Yeast transformation by the LiAc/SS Carrier DNA/PEG method. Methods Mol Biol. 2006;313:107-20に記載されている(この目的のために、その内容全体を引用により本明細書に包含させる)。宿主細胞は、当業者により理解されるように、適切な任意の条件下で培養され得る。例えば、当技術分野で既知である何れかの培地、温度およびインキュベーション条件を用いることができる。誘導性ベクターを担持する宿主細胞については、細胞は、発現を促進するために適切な誘導性物質と共に培養されてよい。
【0091】
本明細書に記載の細胞のいずれも、核酸の接触および/または挿入の前、その途中、および/またはその後において、任意のタイプ(リッチまたはミニマム)および任意の組成の培地中で培養することができる。培養または培養プロセスの条件は、当業者によって理解されるように、常套の試験によって最適化することができる。ある態様において、選択された培地は、様々な構成要素で補充される。ある態様において、補充成分の濃度および量が最適化される。ある態様において、培地および増殖条件(例えば、pH、温度など)は、常套試験により最適化される。ある態様において、培地に1以上の補充成分が添加される頻度、および細胞の培養時間の長さが最適化される。
【0092】
本明細書に記載の細胞の培養は、当技術分野で知られかつ用いられている培養器で行うことができる。ある態様において、細胞を培養するために、曝気反応器(例えば、撹拌槽反応器)が用いられる。ある態様において、バイオリアクターまたは発酵槽を用いて細胞を培養する。したがって、ある態様において、細胞は発酵に用いられる。本明細書で使用する用語“バイオリアクター”および“発酵槽”は互換的に用いられ、生物または生物の一部を含む、生物学的、生化学的および/または化学反応が行われる限定空間または部分的限定空間を意味する。“大規模バイオリアクター”または“工業規模バイオリアクター”は、商業規模または準商業規模で製品を産生するために用いられるバイオリアクターである。大規模バイオリアクターは、通常、数リットル、数百リットル、数千リットルまたはそれ以上の容量である。
【0093】
ある態様において、バイオリアクターは、本明細書に記載の細胞または細胞培養物などの、細胞(例えば、酵母細胞)または細胞培養物(例えば、酵母細胞培養物)を含む。ある態様において、バイオリアクターは、単離された微生物の胞子および/または休眠細胞型(例えば、乾燥状態の休眠細胞)を含む。
【0094】
バイオリアクターの限定的でない例には、撹拌タンク発酵槽、回転混合装置によって撹拌されるバイオリアクター、ケモスタット、振とう装置によって撹拌されるバイオリアクター、エアリフト発酵槽、充填床リアクター、固定床リアクター、流動床バイオリアクター、波動撹拌を採用するバイオリアクター、遠心バイオリアクター、ローラーボトル、および中空糸バイオリアクター、ローラー装置(例えば、ベンチトップ、カート搭載型および/または自動化型など)、垂直に積み重ねられたプレート、スピナーフラスコ、撹拌フラスコまたは振動(rocking)フラスコ、振盪マルチウェルプレート、MDボトル、Tフラスコ、ルーボトル、多表面(multiple-surface)組織培養増殖器、改変型発酵槽およびコーティングされたビーズ(例えば、細胞の付着を防ぐために血清タンパク質、ニトロセルロースまたはカルボキシメチルセルロースでコーティングされたビーズ)が含まれる。
【0095】
ある態様において、バイオリアクターは、細胞(例えば、酵母細胞)が移動する液体および/または気泡と接触している細胞培養システムを含む。ある態様において、細胞または細胞培養物は、懸濁液中で増殖される。他の態様において、細胞または細胞培養物は、固相担体に付着される。担体系の限定的でない例には、マイクロ担体(例えば、ポリマー球体、マイクロビーズ、および多孔性または非多孔性であり得るマイクロディスク)、特定の化学基(例えば、第三級アミン)で荷電された架橋ビーズ(例えば、デキストラン)、非多孔質ポリマー繊維内に捕捉された細胞を含む2Dマイクロキャリア、3D担体(例えば、担体繊維、中空繊維、マルチカートリッジ反応器および多孔性繊維を含み得る半透膜)、低減されたイオン交換能を有するマイクロキャリア、カプセル化細胞、キャピラリーおよび凝集体が挙げられる。ある態様において、担体は、デキストラン、ゼラチン、ガラスまたはセルロースなどの材料から作製される。
【0096】
ある態様において、工業規模のプロセスは、連続、半連続または非連続モードで操作される。操作モードの限定的でない例は、バッチ、供給バッチ、拡張バッチ、反復バッチ、ドロー/フィル、回転壁、回転フラスコ、および/または灌流操作モードである。ある態様において、バイオリアクターは、基質ストック、例えば、炭水化物源の連続的または半連続的補充および/またはバイオリアクターからの生成物の連続的または半連続的分離を可能にする。
【0097】
ある態様において、バイオリアクターまたは発酵槽は、反応パラメーターを測定および/または調整するためのセンサーおよび/または制御システムを含む。反応パラメーターの限定的でない例には、生物学的パラメーター(例えば、増殖速度、細胞サイズ、細胞数、細胞密度、細胞タイプまたは細胞状態など)、化学的パラメーター(例えば、pH、酸化還元電位、反応基質および/または生成物の濃度、酸素濃度およびCO2濃度などの溶存ガスの濃度、栄養素濃度、代謝産物濃度、オリゴペプチド濃度、アミノ酸濃度、ビタミン濃度、ホルモン濃度、添加剤濃度、血清濃度、イオン強度、イオン濃度、相対湿度、モル濃度、浸透圧、他の化学物質、例えば緩衝剤、アジュバントまたは反応副産物の濃度)、物理的/機械的パラメーター(例えば、密度、導電率、撹拌の程度、圧力、および流量、せん断応力、せん断速度、粘度、色、濁度、光吸収、混合速度、変換速度ならびに光の強度/品質などの熱力学的パラメーター)が含まれる。本明細書に記載のパラメーターを測定するためのセンサーは、関連する機械および電子技術分野の当業者によく知られている。本明細書に記載のセンサーからの入力に基づいてバイオリアクター内のパラメーターを調整するための制御システムは、バイオリアクター工学分野における当業者によく知られている。
【0098】
本明細書に開示の宿主細胞のいずれかによって産生されるテルペンは、当技術分野で知られている任意の方法を用いて抽出することができる。セスキテルペン抽出方法の限定的でない例を実施例2に提供する。本明細書に記載の方法、組成物または宿主細胞から産生されるテルペンはいずれも、例えば、皮膚、毛髪、衣類または家庭内の物品(例えば、香料)への局所適用に適した組成物に用いることができる。本明細書で用いる用語“香料”とは、人の髪、皮膚または衣類もしくは家庭内の物品への適用に適した任意の香料製剤である。この用語には、オードコロン、オードトワレ、オードパルファム(eau de parfum)、香水エキスまたはエクストラが含まれるが、これらに限定されない。本出願の1以上のテルペンを含むことに加えて、そのような香料は、例えば、1以上の天然油、固定剤、皮膚軟化剤または溶媒を含み得る。
【0099】
香料配合物に用いられ得る天然油の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミリス油;アンゼリカ種子油;アンゼリカ根油;アニス種子油;バレリアン油;バジル油;ベイ油;ヨモギ油;ベンゾイン樹脂;ベルガモット油;バーチタール油;ビターアーモンド油;セイボリー油;ブッコ葉油(bucco-leaf oil);カブレバ油;ケイド油;カラマス油;クスノキ油;カナンガ油;カルダモン油;カスカリラ油;カシア油(cassia oil);カストリウムアブソリュート(castoreum absolute);シダー油(cedar-leaf oil);セダーウッド油;シスタス油(cistus oil);シトロネラオイル;レモン油;コパイババルサム油;コリアンダー油;コスタス根油;クミン油;ヒノキ油;ダバナ油;ディル油;ディルシード油;エレミ油;タラゴン油;ユーカリシトリドーラ油(eucalyptus citriodora oil);ユーカリ油;フェンネル油;モミ油;ガルバナム油;ゼラニウム油;グレープフルーツ油;グアヤクウッド油;グルジュンバルサム油;ヘリクリサム油;ジンジャー油;アイリス根油;カラマス油;ブルーカモミール油;ローマカモミール油;ニンジン種子油;カスカリラ油(cascarilla oil);松葉油(pine-needle oil);スペアミント油;キャラウェイ油;ラブダナム油;ラバンディン油;ラベンダー油;レモングラス油;ラビッジ油(lovage oil);ライム油(例えば、蒸留または圧搾されたライム油);リナロエ油(linaloe oil);リトシーキュベバ油(litsea cubeba oil);ベイリーフ油;メイス油;マジョラム油;マンダリン油;マッソイ樹皮油;アンブレット油;クラリセージ油;ミリスチカ油(myristica oil);ミルラ油(myrrh oil);マートル油;クローブ葉油;クローブ花油;ネロリ油;オルバナム油(olibanum oil);オポパナックス油;オレンジ油;オリガナム油;パルマールオーサ油(palmar osa oil);パチョリ油;ぺリラ油;ペルーバルサム油;パセリ葉油;パセリ種子油;プチグレイン油;ハッカ油;コショウ油;ピメント油;パイン油;ペニーロイヤル油;ローズウッド油;バラ油;ローズマリー油;ダルメシアンセージ油;スペインセージ油;白檀油(sandalwood oil);セロリ種子油;スパイクラベンダー油;日本のアニス油;スタイラックス油(styrax oil); タゲテス油;モミジニードル油;ティーツリー油;ターペンタイン油(turpentine oil);タイム油;チューベローズアブソリュート;バニラ抽出物;バイオレットリーフアブソリュート(violet leaf absolute);バーベナ油;ベチバー油;ジュニパー油;ワイン粕油;ヨモギ油;ウィンターグリーン油;イラン油;ヒソップ油;シベットアブソリュート;シナモン葉油;シナモン樹皮油;ならびにそれらの画分またはそこから単離された成分;およびそれらの組み合わせ。
【0100】
香料製剤に用いられ得る化合物の他の例としては、以下のものが挙げられる:ウッドモス(wood moss)アブソリュート;蜜蝋アブソリュート;カッシアアブソリュート;オードブルアブソリュート(Eau de brouts absolute);オークモスアブソリュート;ガルバナム樹脂;ヘリクリサムアブソリュート;イリス根アブソリュート;ジャスミンアブソリュート;ラブダナムアブソリュート(labdanum absolute);ラブダナム樹脂;ラバンジンアブソリュート;ラベンダーアブソリュート;ミモザアブソリュート;ムスクチンキ(tincture of musk);ミルラアブソリュート;オリバナムアブソリュート;オレンジ花アブソリュート(orange blossom absolute);ローズアブソリュート;トルバルサム;トンカアブソリュート(Tonka absolute);ならびにそれらの画分またはそれらから単離された成分;および、それらの組み合わせ。
【0101】
本明細書で用いる用語“皮膚軟化剤”とは、組織の水分含量を増加させる(そして、例えば、皮膚をより柔らかく、より柔軟にし得る)、脂肪性または油性の物質を意味する。本発明の化合物および方法で用いる皮膚軟化剤としては、何れかの適切な動物性油脂/油、植物油および/またはワックスが挙げられ得る。限定的でない例として、本発明の組成物および方法で用いるための皮膚軟化剤は、天然または合成由来のものであってよく、以下のものが挙げられ得る:冷圧(cold-pressed)アーモンド油、ホホバ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ヘーゼルナッツ油、アボカド油、ベニバナ油、ブドウ種子油、ヤシ油、小麦胚芽油、アプリコットカーネル油、天然ワックスおよび“バター”(例えば、未精製蜜蝋、シアバター、ホホババターおよび/またはカカオバター)、Schercemol(商標)LLエステル、Schercemol(商標)1818エステル、ブチレングリコール、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、セテアレス-20、1種以上の脂肪アルコール(例えば、セテアリルアルコール、セチルアルコールおよび/またはココナッツ脂肪酸)、1種以上のシリコーン(例えば、シクロメチコン、ジメチコンおよび/またはシクロペンタシロキサン)、乳化ワックス、石油ゼリー、脂肪酸、ステアリン酸グリセリル、硬化油、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、パルミチン酸オクチル、パラフィン、スクアレン、ステアリン酸、パルミトイルプロリンまたはパルミトイルグルタミン酸マグネシウム。
【0102】
本明細書で用いる用語“固定剤”とは、香料中の1以上の化合物の蒸気圧(したがって、揮発性)を等しくするために用いられる化合物を意味する。限定的でない例として、本明細書に記載の化合物および香料と共に用いるための固定剤としては、以下が挙げられる:ジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、へジオン(登録商標)、ロジンのアバリン(商標)DEメチルエステル、ホホバ(例えば、フローラエステルK-100ホホバまたはフローラエステルK-20Wホホバ)、セピサイドLD、および/またはフォラリン(Foralyn)(商標)5020-F CG水素化ロジン。
【0103】
本明細書で用いる用語“溶媒”は、香料を製造するために用いられる希釈剤である。限定的でない例として、溶媒は、アルコール(例えば、エチルアルコール)、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、中性香気油(neutral smelling oil)(例えば、分画されたココナッツ油またはホホバ油)、または1以上の揮発性シリコーンであり得る。限定的でない例として、香料用アルコール(perfumers' alcohol)(エチルアルコールの一種)を用いてもよい。香料用アルコールは、極少量のブチルアルコール、安息香酸デナトニウム(Britex)および/またはヘキシレングリコールを含んでいてよい200プルーフのエチルアルコールから調製される。SDA 40B 200プルーフおよびSDA-B 200プルーフを含む、香料用の種々のグレードのアルコールが利用可能である。
【0104】
本明細書に記載の香料組成物で用いるためのさらなる化合物または香料材料は、当技術分野で慣習的に用いられている何れかの化合物を含んでいてよい。
【0105】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、いかなる意味でも限定するものとして解釈されるべきではない。本出願を通して引用された全ての文献(参考文献、発行済み特許、公開特許出願および共同係属中の特許出願を含む)の内容全体は、引用により本明細書に明示的に包含させる。
【実施例】
【0106】
実施例
実施例1.キメラテルペンシンターゼの機能的特徴付け
12種の絶滅した植物サンプルからのゲノムDNAを配列決定した(表2)。セスキテルペンシンターゼ(SQTS)フラグメントは、7つの植物から取得されたが(表11)、配列のギャップにより完全長遺伝子の再構築は不可能であった。2,738のテルペンシンターゼキメラ(配列のギャップを埋めるために、現存する植物のセスキテルペンシンターゼの配列を含み、配列のギャップを埋める)を含むライブラリーをスクリーニングした。6つの希少植物(表2)からの52のSQTSキメラ(表10に示す配列)の発現により、スクリーニング株でセスキテルペンの産生がもたらされた。本実施例に記載された各操作の方法および材料は、実施例2に見出され得る。
【0107】
【0108】
機能的なSQTSキメラによって産生されたテルペンを、最初にガスクロマトグラフィー-質量スペクトル(GC/MS)データに基づいて同定した。ある場合には、特性化されたセスキテルペンを含む標準品(authentic standard)またはエッセンシャルオイルを用いて、質量スペクトルおよび保持時間に基づく同定を確認できた。他の場合には、標準物質が入手できず、質量スペクトル分析のみに基づいて構造の同定が行われた。構造の同定に用いられた異なる方法を表3に詳述し、各セスキテルペンの同定に用いられた特定の方法を、表4から9に示す。ある場合に、製品は“セスキテルペン”または“セスキテルペノール”としてのみ同定された。ある場合に、質量スペクトルが取得されたが、NIST/内部データベースでは一致しながった。このセスキテルペノールは、製品表で“未同定セスキテルペノール”として同定され、構造を決定するためにさらなる特性評価を用い得る。
【0109】
Hibiscadelphus wilderianus由来の14種のSQTSキメラは、1種以上のセスキテルペンを産生した(
図1、表1)。Leucadendron grandiflorum由来の7種のSQTSキメラも、セスキテルペンを産生し(
図2、表5)、Macrostylis villosa由来の6種のSQTSキメラも(
図3、表6)、O. stipulatum由来の2種のSQTSキメラも(
図4、表7)、Shorea cuspidata由来の6種のSQTSキメラも(
図5、表8)、Wendlandia angustifolia由来の17種のSQTSキメラも(
図6、表9)、セスキテルペンを産生した。SQTSは1から9種の異なるテルペンを産生することがわかった。機能的SQTSキメラを最高収率で産生されたテルペンによりグループ分けしたとき(
図7)、植物SQTSキメラの産物プロファイルは異なっていた。デルタ-カジネンシンターゼ(delta-cadinene synthase)は、合計22の機能的キメラの最多数のグループであり、4つの植物に由来した。H. wilderianus の14種のシンターゼのうち10種は、この種のものであった。アルファ-カジノールは、デルタ-カジネンシンターゼの副産物として頻繁に検出されたが、S. cuspidata由来の3種のSQTSが、デルタ-カジネンより多くのアルファ-カジノールが得られた。これらのS. cuspidata由来の6種のSQTSキメラは、顕著に類似した生成物の混合物を生成した(表8、
図13)。
【0110】
2,738メンバーのキメラセスキテルペンシンターゼライブラリーのスクリーニングにより、52個の機能的なキメラセスキテルペンシンターゼ(SQTS)の発現に成功した。14種のシンターゼは、100年以上前にハワイで絶滅したH. wilderianusに由来した。これらのキメラから、カジネン、カジノールおよびオイデスモール型のセスキテルペンが生成された。1800年代にケンタッキー州で絶滅した植物であるO. stipulatumからも、いくつかの活性なキメラが生成された。これらのシンターゼによって2つのグアイエンおよびγ-ビサボレンが生成された。200年以上前に絶滅した植物であるL. grandiflorumから、7つの機能的SQTSキメラが構築された。これらのキメラによって、他の3つの植物由来のものに加えて、多様なセスキテルペンおよびセスキテルペノール構造が得られた。
【0111】
【0112】
【0113】
1 構造同定ランキングキーは表3に定義されており、数値が小さいほど信頼性が高いことを示している。
2 各キメラからの全セスキテルペンの組成は、共通(common)のイオン数値(count)(m/z 204.2)に基づく推定であった。代謝物の比率は生産菌株で異なっていてよく、サンプル調製時に他の微量代謝物が検出された可能性がある。太字のキメラの代表的なGC/MSクロマトグラムを
図9に示す。
3 これらの分析条件下で共溶出した。ピークは、より長い分析条件下で部分的に分離され、約6/4アルファ/ベータ-オイデスモールであった。
【0114】
【0115】
1 構造同定ランキングキーは表3に定義されており、数値が小さいほど信頼性が高いことを示している。
2 各キメラからの全セスキテルペンの組成は、共通のイオン数値(m/z 204.2)に基づく推定であった。代謝物の比率は生産菌株で異なっていてよく、サンプル調製時に他の微量代謝物が検出された可能性がある。太字のキメラの代表的なGC/MSクロマトグラムを
図10および11に示す。
3 これらの分析条件下で共溶出した。ピークは、より長い分析条件下で部分的に分離され、約6/4アルファ/ベータ-オイデスモールであった。
【0116】
【0117】
1 構造同定ランキングキーは表3に定義されており、数値が小さいほど信頼性が高いことを示している。
2 各キメラからの全セスキテルペンの組成は、共通のイオン数値(m/z 204.2)に基づく推定であった。代謝物の比率は生産菌株で異なっていてよく、サンプル調製時に他の微量代謝物が検出された可能性がある。太字のキメラの代表的なGC/MSクロマトグラムを
図12に示す。
【0118】
【0119】
1 構造同定ランキングキーは表3に定義されており、数値が小さいほど信頼性が高いことを示している。2 各キメラからの全セスキテルペンの組成は、共通のイオン数値(m/z 204.2)に基づく推定であった。代謝物の比率は生産菌株で異なっていてよく、サンプル調製時に他の微量代謝物が検出された可能性がある。
【0120】
【0121】
1 構造同定ランキングキーは表3に定義されており、数値が小さいほど信頼性が高いことを示している。
2 各キメラからの全セスキテルペンの組成は、共通のイオン数値(m/z 204.2)に基づく推定であった。代謝物の比率は生産菌株で異なっていてよく、サンプル調製時に他の微量代謝物が検出された可能性がある。太字のキメラの代表的なGC/MSクロマトグラムを
図13に示す。
【0122】
【0123】
1 構造同定ランキングキーは表3に定義されており、数値が小さいほど信頼性が高いことを示している。
2 各キメラからの全セスキテルペンの組成は、共通のイオン数値(m/z 204.2)に基づく推定であった。代謝物の比率は生産菌株で異なっていてよく、サンプル調製時に他の微量代謝物が検出された可能性がある。太字のキメラの代表的なGC/MSクロマトグラムを添付の
図14および15に示す。
3 これらの分析条件下で共溶出した。ピークは、より長い分析条件下で部分的に分離され、約6/4アルファ/ベータ-オイデスモールであった。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
実施例2.テルペンシンターゼキメラの構築のための材料および方法
Capture-seqおよびキメラ足場用のテルペンシンターゼ
セスキテルペンシンターゼ(SQTS)の候補を、希少花ゲノム(rare flower genome)からの配列フラグメント(表11)とUniProtおよびGenBankを含む供給源からの“足場”(scaffold)SQTSを組み合わせることにより設計した。
【0140】
Capture-seq(テルペンシンターゼの標的配列決定)では、EMBL/Genbankのヌクレオチド配列を有するUniProtから5,171個のテルペンシンターゼ(TPS)のサブセットを集めた。TPS相同配列の希少花DNAサンプルを濃縮してオリゴヌクレオチドチップを作製し、次いで最初にイルミナ配列決定にかけた。Capture-seqライブラリーもまたより深い深度で2回配列決定した。
【0141】
SQTSキメラ再構築では、注釈付き(annotated)モノ-、ジ-、またはトリ-テルペンシンターゼよりも注釈付きSQTSに近い配列を選択した。この1,521個の推定SQTSのセットを、以下のキメラ構築パイプラインでblastnおよびtblastnのクエリー配列として(ヌクレオチドおよびペプチドの両方の形式で)用いた。
【0142】
キメラ再構築
キメラSQTSを構築するために2つの方法を用いた:1)blastn-mapDamageパイプラインおよびb)tblastnパイプライン。
【0143】
blastn-mapDamageパイプライン
一般的に、blastn-mapDamageパイプラインを、足場と類似性の高いヌクレオチドを有するフラグメントを注意深く(conservatively)に検出し、結果として、希少花の元の酵素配列と非常に近いと思われるキメラテルペンシンターゼ(例えば、キメラセスキテルペンシンターゼ)を得た。希少花DNAのステレオタイプの損傷による人工物(artifact)であり得る変異体を検出するために、bam形式のイルミナの読み取りアラインメントをmapDamageソフトウェアに入力した。
【0144】
具体的には、次の手順を用いて、希少花からのDNAフラグメントと種々のSQTS足場とのアライメントを作成した。
1.ゲノム capture-seq ランからのIllumina読み取り(fastqファイル)を合わせ、SPADESによってより長いコンティグ(contig)にアセンブルした。
2.1521セットのSQTS足場を、SPADESコンティグに対するデフォルトパラメーターを用いたblastn検索でクエリーとして用いた。比較的少数の骨格にヒットがあったため、次のステップでの読み取りアライメントの対照として、ヒットのある骨格をすべて選択した。
3.配列決定ランからの読み取りの組み合わせは、質をトリミングし(quality-timmed)(bbdukを使用)、ペアを合わせ(bbmergeを使用)、そしてbwamemを用いて選択したSQTS対照配列に整列させた。結果は、BAMに再フォーマットされ、ソートされ、索引付けされた。
4.mapDamageを、整列された読み取りに対して実行した。これにより、DNA損傷に似たSNPに低い質スコアが割り当てられた読み取りアライメントが得られた。
5.読み取りアライメントを以下のように処理した:質が25未満の塩基をマスキングした(対照、に変更した);アラインメントをfastaに再フォーマットした;カウント数6未満のSNPをマスキングした;重複した読み取りを除いた;頻度が0.1未満のSNPをマスキングした;他の読み取りの正確な部分配列(subsequences)の読み取りを除いた;読み取りを対照のフレームで翻訳した;そして、部分配列を再び除いた;アライメントのマスキングに用いる質およびSNP頻度の閾値を、質およびSNPの頻度の分布を調べることにより、実験的に決定した。
6.読み取りアライメントおよびSPADEコンティグアライメント(対照フレーム翻訳後)を合わせ、Clustal Omegaを用いて再配置した。これは、一部のコンティグが、読み取りされなかった足場の領域にまたがっていたために行われた。
【0145】
上記のステップのアラインメントを用いて、SQTSキメラを以下のように構築した:
1.アラインメントを、各サブリージョンには、別のサブリージョン(サブリージョン間で同一の重複が許可された)のフラグメントと重複するおよび異なるサブリージョンからのフラグメント(アラインメントされた読み取り)が含まれていないように、“独立したサブリージョン”に分割した。
2.各サブリージョンで、“互換性のある(compatible)フラグメント”のすべての可能な組み合わせを列挙した。互換性のあるフラグメントは、同一としてオーバーラップする(従って、より長いフラグメントに融合できる)か、まったくオーバーラップしない(例えば、同じハプロタイプに由来すると推定された)フラグメントとして定義された。フラグメントの組み合わせは“最大カバレッジ(coverage)”であった。すなわち、可能な限り多くの互換性のあるフラグメントが含まれた。各最大カバレッジフラグメントの組み合わせを、アライメントのその領域の可能な再構築であると見なし、スーパーフラグメント(ギャップが含まれていてよい)に融合させて(merged)、保存した。
3.各サブリージョンのスーパーフラグメントを、通常の反復アルゴリズムを用いて90%または95%の同一性にダウンサンプリングし、異なるサブリージョンのダウンサンプリングされたスーパーフラグメントのすべての可能な組み合わせを組合せた。特定の閾値より短い領域を、単一の配列にダウンサンプリングする。スーパーフラグメントの各組み合わせを足場にマージして、キメラ配列を作成した。ダウンサンプリングパラメータを、いずれの場合も1を超えるが100未満のキメラを構築できるように、サンプルおよび足場に応じてわずかに変化させた。
【0146】
上記のパイプラインを各サンプルで実行した後、合計1136個のキメラが作成された。キメラのかなりの画分は、純粋に整列された読み取りから構築された。
【0147】
これらの方法を用いて、合計652個のセスキテルペンシンターゼキメラを作成した。
【0148】
tblastnパイプライン
一般に、tblastnパイプラインは、SQTS足場に相同なフラグメントを検出する感度を最大化したため、使用可能な配列に対して広いネットを形成した。
【0149】
具体的には、次の手順を用いて、各花(フラワー)からのDNAフラグメントと種々のSQTS足場とのアライメントを作成した。
1.1521セットのSQTS足場を、SPADESコンティグ(上記)のすべてのフレームの翻訳を検索するためのtblastnへのタンパク質クエリーとして用いた。
2.ヒット(整列されたコンティグ)を、足場に対して最低40%の同一性、およびヒューリスティック関数によってヒットの同一性に依存する最小の長さにフィルタリングした。フィルタリング基準は、すべてのサンプルにわたる同一性とヒット長プロットの検定によって選択した。
3.足場のダウンサンプリングを、各ヒットと同一の残基の数によって足場を階層的にクラスター化することによって実行した。キメラの再構築のために、すべてのヒットに対して同一性の数が最も多い骨格を各クラスターにおいて保持した。ダウンサンプリングにより、骨格の数が20分の1に減少した。ヒットが10未満の骨格の場合、この手順はスキップされた。
4.特定の骨格が、以前に活性を有していると識別(同定)されていたり、および/または文献で知られていたりしたため(別の配列がヒットに対してより多くの同一性を有していたとしても)、常にクラスターの代表として選択された。これらの好ましい足場はダウンサンプリングされず、キメラ構築のためにtblastnヒットを保持した。
5.足場にヒットするすべてのコンティグの整列部分を、Clustal Omegaを用いて足場に再整列した。コンティグの整列されていない部分は、イントロンを表す可能性が高いとして廃棄した。この整列(アライメント)を、キメラ構築に用いた。
6.キメラを、サブ領域でダウンサンプリングすることなく、上記のコンビナトリアル互換フラグメント法を用いて、整列されたtblastnヒットから構築した。“最大カバレッジ”(各セットで可能な限り互換性のあるフラグメント)と“最小カバレッジ”(各セットでただ1つの互換性のあるフラグメント)の両方のキメラを作成した。最小カバレッジキメラは、無関係な配列からのフラグメントの結合を回避し得る。
【0150】
tblastnパイプラインは、10,114の“最大カバレッジ”キメラおよび2,624の“最小カバレッジ”キメラを生成した。特定の最大カバレッジキメラは、CD-HITによって95%の同一性にダウンサンプリングされた。これにより、388の配列が得られた(不明瞭なアミノ酸を含む配列を除いた後は382)。特定の最大カバレッジキメラを希少DNA含有率60%にフィルター処理して、90%の同一性にダウンサンプリングした。これにより、1320個の配列が得られた。特定の最小カバレッジキメラを希少DNA含有率10%にフィルター処理して、CD-HITにより95%の同一性にダウンサンプリングした。
【0151】
エンコードおよび合成の順序
各酵素を2回コドン最適化した。1回目は酵母発現加重コドン表を用い、もう1回は、10%未満の頻度でコドンを除去した後に酵母発現加重コドン表を用いた。異なる乱数(random number)を各エンコーディングのシードとして用いた。異なる酵素のエンコーディングは完全に独立しており、キメラが足場から継承した残基のコドンを保存するために特定の操作は用いなかった。
【0152】
キメラ酵素をコードする配列を、pGAL1により駆動され、tCYC1によって終結される、pESC-URA3スクリーニングベクター中にクローニングした。
【0153】
既存のトランスクリプトームによるキメラの再構築
絶滅した花種の1つであるShorea cuspidataについては、現存する近縁種であるShorea beccarianaのトランスクリプトーム配列データが利用可能であった。これにより、関連する花からSQTS足場を用いてキメラを構築することが可能になった。これは2段階のプロセスで行われた:
1.S. beccariana (Sb)トランスクリプトームデータを組み立て、SQTS相同体のために採用した。データを、NCBI SRAデータベースのデータセットSRR687302からダウンロードした。組み立てはTrinityを用いて行い、ORFはTransdecoderにより予測された。BLASTを用いて、1,500のキュレートされたSQTS配列のセットに相同なフラグメントを同定した。
2.同定されたSb SQTSまたはSQTSフラグメントを、tblastnまたはblastn-mapDamageパイプラインで足場配列として用いて、キメラを再構築した。足場自体がフラグメントだった場合は、次に、最も近いUniprotをソースとするSQTS配列にマージして、完全長キメラを生成した。
【0154】
スクリーニング株およびセスキテルペンシンターゼ形質転換
キメラセスキテルペンシンターゼを、ガラクトース誘導性P(gal1)プロモーターの制御下で高コピーpESC-URA3-由来の発現ベクターに形質転換した(Sikorski et al., A system of shuttle vectors and yeast host strains designed for efficient manipulation of DNA in Saccharomyces cerevisiae. Genetics. 1989 May;122(1):19-27、この目的のためにその内容全体を引用により本明細書中に包含させる)。
【0155】
これらのベクターを、4番染色体上の同種スイッチングエンドヌクレアーゼ(YDL227C)遺伝子座における収束性(convergent)P(gal1)プロモーターの制御下で、HMG-CoAレダクターゼ1の触媒領域の2コピーの統合を介してセスキテルペンフラックス(flux)を増加させるように改変したハプロイド出芽酵母CEN.PK2株 (MATa ura3-52 trp1-289 leu2-3_112 his3Δ1 MAL2-8C SUC2)に形質転換した(下記の配列番号53参照)。Entian et al., Yeast Genetic Strain and Plasmid Collections. Methods in Microbiology. 2007; (36): 629-666; tHMG1, Donald et al., Effects of overproduction of the catalytic domain of 3-hydroxy-3-mthylglutaryl coenzyme A reductase on squalen synthesis in Saccharomyces cerevisiae. Appl Environ Microbiol. 1997 Sep;63(9):3341-4; Oezaydin et al., Carotenoid-based phenotypic screen of the yeast deletion collection reveals new genes with roles in isoprenoid production. Metab Eng。2013 Jan;15:174-83を参照のこと(それぞれ引用によりその内容を本明細書中に包含させる)。ファネシルピロリン酸に対する競合は、Erg9(ファルネシル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ)プロモーターを、以下の配列番号54に示すメチオニン抑制性Met3プロモーターに置き換え、メチオニンを含む培地中で培養することにより、これらの細胞において低減された(Ro et al.、Production of the antimalarial drug precursor artemisinic acid in engineered yeast. Nature. 2006 Apr 13;440 (7086):940-3;および、Asadollahi et al., Production of plant sesquiterpens in Saccharomyces cerevisiae: effect of ERG9 repression on sesqiterpene biosynthesis。Biotechnol Bioeng. 2008 Feb 15;99(3):666-77参照(それぞれ、この目的に関してその内容を引用により本明細書中に包含させる)。下方制御されたErg9を有するこの株は、4番染色体上にガラクトース誘導性tHMG1の2つのコピーを含み、t119889と命名された。
【0156】
キメラセスキテルペンベクターのt119889株への形質転換を、Gietz et al., Yeast transformation by the LiAc/SS Carrier DNA/PEG method. Methods Mol Biol. 2006;313:107-20(この目的のためにその内容全体を引用により本明細書中に包含させる)にて実証された化学形質転換技術を用いて行った。
【0157】
セスキテルペン産生および抽出
形質転換コロニーを、96ディープウェルプレート中、300μlのSC-ura培地(2%デキストロースを含む合成完全培地、ウラシル無添加)に接種した。プレートを、Excel Scientific AeroSeal膜(BS-25)で覆い、振とうインキュベーター中で30℃にて48時間インキュベートした。30μlの培養物(1:15希釈)を、炭素源として、1.8%ガラクトースおよび0.2%ラフィノースを含む420μlのSC-ura 誘導培地に混合し、600nm(OD600)での開始光学密度が約0.1-0.2となるようにした。0.88%ドデカンオーバーレイ(4μl)を各ウェルに添加し、プレートをAeroSeal膜で覆い、振とうインキュベーター中で30℃にて4日間培養した。各培養物15μlを取りだし、4日間の終了時にOD600を測定した。350μlの酢酸エチル(250μMトリデカン内部標準)を各ウェルに直接添加し、混合した(1:1抽出)。次いで、96ウェルプレートを遠心分離し、酢酸エチル抽出物を、GC-MSによる分析までガラスバイアル中で-80℃にて保存した。
【0158】
セスキテルペンの構造同定
酢酸エチルサンプル(1.0uL)を、Agilent/Gerstel 7890B GCシステムに注入し、GCインレットを250℃に設定し、スプリット比を2:1にした。キャピラリーカラムは、担体ガス(ヘリウム)の流量を1.5ml/分に設定してAgilent DB-5MS (20m×0.18mm×0.18μm)を用いた。GCオーブン温度を、40℃/分の上昇で100℃(0.10分間保持)に設定し、155℃まで上昇させ、そこから15℃/分の上昇で190℃まで上昇させ、最後に75℃/分の上昇で280℃まで上昇させた(5分間法)。標的のより包括的な分析のために、GCオーブン温度を、10℃/分の上昇で100℃(2.0分間保持)に設定し、250℃まで上昇(2.0分間保持)させる方法を利用した(20分間法)。両法とも、Agilent 5977B MSD (Etune)上のMS源および四重極は、それぞれ230℃および180℃に設定した。マススキャン範囲を40-250mzに設定し、スペクトルおよび線形保持指数の計算を、利用可能な標準物質および精油に加えて、NIST MS データベース (2008年版)と照合した。
【0159】
抽出されたイオンクロマトグラム(204.2mzの親質量数)に存在するピークを、6つの方法のいずれかで同定した(表3を参照)。製品の検証のためにこのスクリーンで利用された標準品は、β-カリオフィレン(Sigma-Aldrichカタログ# W225207-SAMPLE-K)、β-ファルネセン(Sigma-Aldrichカタログ# 73492-1ML-F)、トランス-ネロリドール(Sigma-Aldrichカタログ# 18143-100MG-F)およびα-フムレン(Sigma-Aldrichカタログ# 53675-1ML)であった。構造同定を助けるために用いたセスキトペレンに富むエッセンシャルオイルは、以下の植物に由来していた:ローデンドロン(Rhodendron)、スイートバジル(Sweet Basil)、ブラックペッパー(Black Pepper)、シトロネラ(Citronella)、イラン(Ylang)、バルサムコパイバ(Balsam copaiba)およびパチョリ(Patchouli)。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
均等物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認識し、または常套の実験のみを用いて確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0164】
本明細書に開示されている特許文献を含むすべての参考文献は、特に本明細書で参照されている開示について、引用によりその全体が本明細書中に包含される。
【配列表】