(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】がんの処置のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240910BHJP
A61K 31/4418 20060101ALI20240910BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240910BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240910BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240910BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240910BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20240910BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61K31/4418
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P35/04
A61K45/00
A61K38/19
A61K38/21
A61K9/06
A61K47/36
(21)【出願番号】P 2020550706
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 US2019023157
(87)【国際公開番号】W WO2019183216
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-22
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511071555
【氏名又は名称】ダナ-ファーバー キャンサー インスティテュート, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーグ,ミカエル,ソロモン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/045058(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/151409(WO,A1)
【文献】Nanoscale,2017年,Vol.9,pp.14058-14064
【文献】European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,2014年,Vol.87,pp.208-216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00
A61K 31/33-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体材料、およびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤を含む、がんの処置における使用のための組成物であって、
ここで、該処置が、がんを罹患している対象の腫瘍切除部位における組成物の術中投与を含み;および
阻害剤が、
ロスマピモド、
抗IL-1β抗体、
抗IL-6抗体、またはこれらの組み合わせである、あるいは、
ロスマピモド、
抗IL-1β抗体、
抗IL-6抗体、またはこれらの組み合わせを含む、
前記組成物。
【請求項2】
生体材料が、約500Pa~約50,000Paの貯蔵弾性率によって特徴づけられる、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
投与のステップが、以下を含まない、請求項1または2に記載の使用のための組成物、
(i)T細胞の対象への養子移入;
(ii)対象への腫瘍抗原の投与;
および/または
(iii)微小粒子の対象への投与。
【請求項4】
生体材料が、ハイドロゲルであるか、またはこれを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
生体材料が、ヒアルロン酸であるか、またはこれを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
生体材料が、架橋されたヒアルロン酸であるか、またはこれを含む、請求項5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
生体材料が、ポリエチレングリコール架橋剤で架橋されたヒアルロン酸であるか、またはこれを含む、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
阻害剤が、組成物において単剤治療として提供される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
自然免疫の活性化因子、適応免疫の活性化因子、および/またはT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、および/または樹枝細胞を調節するサイトカインをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
自然免疫の活性化因子が、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストであるか、またはこれを含む、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
自然免疫の活性化因子が、Toll様受容体(TLR)7および/またはTLR8(「TLR7/8」)アゴニストであるか、またはこれを含む、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
T細胞、NK細胞、単球、および/または樹状細胞を調節するサイトカインをさらに含み、それが、IL-15スーパーアゴニスト、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、およびそれらの組み合わせであるか、またはこれを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
COX阻害剤が、COX-2阻害剤である、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
COX-2阻害剤が、セレコキシブであるか、またはこれを含む、請求項14に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
免疫調節性能力を伴なう化学療法剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
NOD1および/またはNOD2のアゴニストをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
抗PD-1抗体および/または抗CD137抗体をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
生体材料が、マトリックスまたはデポーを形成し、および阻害剤が、生体材料中にある、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
阻害剤が、生体材料を通した拡散により放出される、請求項19に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
生体材料が、生分解性ポリマーであるか、またはこれを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
生体材料が、組成物をマウス対象の乳腺脂肪体において移植することにより、in vivoで試験される場合に、移植の4か月後に生体材料のうちの10%以下がin vivoで残ることを特徴とする、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
生体材料が、組成物をPBS(pH7.4)中に置くことによりin vitroで試験される場合に、阻害剤のうちの100%未満が3時間以内に生体材料から放出されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
生体材料が、組成物をマウス対象の乳腺脂肪体において移植することにより、in vivoで試験される場合に、移植の8時間後に阻害剤のうちの50%以下が放出されることを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
生体材料が、マウス対象の群の腫瘍切除部位において組成物を投与することにより、in vivoで試験される場合に、生体材料が阻害剤なしで投与される場合に観察されるものと比較して、該群においてより多くのマウス対象が、しばらく生存することを特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
生体材料が、投与の24時間後に評価される場合に、阻害剤が溶液中で投与される場合に観察されるものと比較して、腫瘍切除部位においてより多くの阻害剤が存在するように、阻害剤の放出を延長することを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
移植による投与のために製剤化される、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
注射による投与のために製剤化される、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
投与が、生体材料の1つ以上の前駆体構成要素を注射して、生体材料が腫瘍切除部位で形成することを可能にすることを含む、請求項28に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
腫瘍切除部位が、肉眼での残留の腫瘍抗原の不在により特徴付けられる、請求項1~29のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
がんが、転移性がんであるかまたは微小転移を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
処置が、対象における少なくとも1つの転移部位を投与の後にモニタリングするステップをさらに含む、請求項31に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
処置が、術中投与の前に、腫瘍切除部位を形成するために対象における腫瘍を切除するステップをさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項34】
組成物が、細胞傷害剤を含まない、請求項1~33のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2018年3月20日に出願された米国仮特許出願番号62/645,613および2019年1月11日に出願された国仮特許出願番号62/791,481に対する35U.S.C.§119(e)下における優先権を主張し、これらの各々は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
医薬、栄養、または他の物質の、循環系中への全身投与は、身体全体に影響を及ぼす。全身性の投与の経路として、経腸(例えば、胃腸管を通しての薬物の吸収をもたらす経口投与)ならびに非経口(例えば、静脈内、筋肉内および皮下注射)投与が挙げられる。免疫療法剤の投与は、典型的には、これらの全身投与経路に依存し、これは、望ましくない副作用をもたらし得る。いくつかの場合において、特定の有望な治療剤は、現在の投与の方法および系の付随する毒性および限定要因に起因して、開発することが非常に困難である。
【0003】
外科手術は、しばしば、固形癌腫のための処置の第一選択であり、一般に、抗がん治療剤の全身投与と組み合わせて用いられる。しかし、外科手術により誘導される免疫抑制は、多様な代謝および内分泌応答の変化に起因して、最終的には多くの患者の死をもたらす、術後の敗血症の合併症の発症および腫瘍転移に関連づけられてきた(Smyth, M.J. et al., Nature Reviews Clinical Oncology, 2016, 13, 143-158)。
【発明の概要】
【0004】
要旨
免疫療法剤の全身投与は、有害な副作用、例えば、非腫瘍特異的免疫細胞などの非癌性の細胞および/もしくは組織にとっては望ましくない毒性の誘導、ならびに/または治療的応答をもたらすために標的部位において十分な濃度を達成するための高用量の要求をもたらし得る;および腫瘍の外科的切除は、免疫抑制をもたらし得る。外科手術はまた、細胞ストレスを誘導し得、これは、例えば傷害の後の創傷治癒を促進する1つ以上の生理学的応答の活性化を伴い得る。かかる応答として、例えば、神経性、炎症性、および/または血管新生性のシグナル伝達経路の活性化が挙げられ、これはまた、がんの増殖および/または転移による伝播を促進し得る。腫瘍切除の後で外科手術部位において起こり得る炎症性の変化として、例えば、免疫性および/または炎症性の細胞型の動員、および/または体液性因子の放出を挙げることができる。局所炎症性創傷応答および全身炎症のプロセスは、一緒になって、休眠状態の微小転移を活性化するか、または残留癌細胞の増殖を誘導して、それにより、がんの再発のリスクを増大させ得る。
【0005】
本開示は、とりわけ、例えばがんの処置に対する特定の従来のアプローチを含む特定の先行技術が有する問題の源の同定を含む見識を提供する。例えば、本開示は、免疫療法剤の全身投与に付随し得る特定の有害なイベント(例えば、皮膚の発疹、肝炎、下痢、大腸炎、下垂体炎、甲状腺炎、および副腎不全)が、免疫に関連し得るか、少なくとも部分的に、全身投与された免疫療法薬への非腫瘍特異的免疫細胞の暴露に帰することができることを認識する。とりわけ、本開示は、所望される応答を誘導するために腫瘍において十分な濃度を達成するために、全身投与のために典型的に必要とされる高用量が、かかる望ましくない効果に寄与するか、またはこれの原因であり得ることを認識する。本発明の技術は、とりわけ、免疫療法剤の局所化された送達を提供することにより、かかる問題を解決する系を提供し、これは、とりわけ、薬物が必要とされる場所において、薬物の作用を濃縮することにより、効力を改善することができる。
【0006】
さらに、本開示は、自己免疫型の病態を処置するために古典的に用いられる特定の免疫調節剤が、本明細書に記載されるように投与された場合、そのように投与されないとオフターゲット毒性が抗がん免疫調節化合物についての予想に反して存在するものと予測されていたであろうにもかかわらず、がんの処置に有用であり得るという見識を提供する。したがって、本開示は、先には有用であるとは考えられていなかった剤の、がん治療のための有用性を教示し、さらに、これらの剤および他の剤のために特に効果的および/または望ましい送達および投与戦略を教示する。
【0007】
本開示は、とりわけ、腫瘍切除部位において、1つ以上のp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により(例えばp38 MAPK阻害剤の投与により)媒介される炎症誘発性免疫応答を阻害することにより、がんの再発のリスクを低下させて、それにより生存を延長することができることを認識する。本開示は、1つ以上の免疫調節剤の送達標的部位(例えば、例えば化学療法または放射線照射により、腫瘍が取り除かれて、および/または癌細胞が処置または殺傷された部位)への送達を局所化して、それにより、免疫調節剤の作用を、それを必要とする標的部位に集中することができる、薬物送達系を提供する。かかる薬物送達系は、がんの処置のために特に有用であり得る。特に、薬物送達系は、例えば、腫瘍切除の後で、いくつかの態様においては、有害な副作用および/または全身暴露を最小化しつつ、例えば腫瘍の再発および/または転移を予防すること(例えば、その発症を遅延させるか、その程度を低下させる)などによるがんの処置のために、1つ以上の炎症誘発経路(例えば、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答;例えば、
図4~6を参照)に対して作用する(例えば阻害する)1つ以上の治療剤を送達する。
【0008】
いくつかの側面において、提供されるのは、がんを罹患している対象の標的部位(例えば、腫瘍切除部位)において、生体材料およびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤を含む組成物を術中投与することを含む、方法である。
【0009】
ある態様において、生体材料は、約500Pa~約50,000Paの貯蔵弾性率を有する。ある態様において、生体材料は、ハイドロゲルであるか、またはこれを含む。ある態様において、生体材料は、ヒアルロン酸であるか、またはこれを含む。ある態様において、生体材料は、架橋されたヒアルロン酸であるか、またはこれを含む。ある態様において、生体材料は、ポリエチレングリコール架橋剤で架橋されたヒアルロン酸であるか、またはこれを含む。
【0010】
ある態様において、方法は、T細胞の対象への養子移入を含まない。ある態様において、方法は、腫瘍抗原を対象に投与することを含まない。ある態様において、方法は、微小粒子を対象に投与することを含まない。
【0011】
ある態様において、阻害剤は、P38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤である。ある態様において、p38α/βMAPK阻害剤は、ロスマピモド(losmapimod)である。
【0012】
ある態様において、組成物は、自然免疫の活性化因子をさらに含む。ある態様において、自然免疫の活性化因子は、インターフェロン遺伝子刺激因子(stimulator of interferon genes:STING)アゴニストである。ある態様において、自然免疫の活性化因子は、Toll様受容体(TLR)7および/またはTLR8(「TLR7/8」)アゴニストである。ある態様において、組成物は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、および/または樹状細胞を調節する適応免疫の活性化因子および/またはサイトカインをさらに含む。ある態様において、組成物は、T細胞、NK細胞、単球、および/または樹状細胞を調節するサイトカインをさらに含む。かかるサイトカインの例として、これらに限定されないが、IL-15スーパーアゴニスト、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ある態様において、組成物は、例えばCOX-2阻害剤を含むシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害剤をさらに含む。
【0013】
当業者は、特定のCOX阻害剤ならびに/または他の抗炎症剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および/もしくは抗炎症性鎮痛薬)が、p38 MAPK経路またはその構成成分の修飾因子(例えば阻害剤)として作用し得ることを理解するであろう(例えば、以下において記載されるものを参照:Espositoら、「Non-steroidal anti-inflammatory drugs in Parkinson’s disease」Experimental Neurology 205: 295-312(2007);Desaiら、「Mechanisms of Phytonutrient Modulation of Cyclooxygenase-2 (COX-2) and Inflammation Related to Cancer」Nutrition and Cancer, 70: 350-375(2018);Huangら、「MAPK/ERK signalpathway involved expression of COX-2 and VEGF by IL-1beta induced in human endometriosis stomal cells in vitro」Int J Clin Exp Pathol, 6: 2129-2136(2013);およびDi Mariら、「HETEs enhance IL-1-mediated COX-2 expression via augmentation of message stability in human colonic myofibroblasts」Am J Physiol-Gastrointest Liver Physiol., 293: 2092-2101(2007))。したがって、いくつかの態様において、COX-2阻害剤または他の抗炎症剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および/もしくは抗炎症性鎮痛薬)は、本明細書において記載されるようなp38 MAPK阻害剤であってよい(および/またはこれとして用いてもよい);代替的に、または加えて、いくつかの態様において、かかるCOX-2阻害剤または他の抗炎症剤(例えば抗炎症性鎮痛薬)は、本明細書において記載されるような別のp38 MAPK阻害剤と組み合わせて利用することができる。
【0014】
ある態様において、生体材料は、マトリックスまたはデポーを形成し、阻害剤は、生体材料中にある。ある態様において、阻害剤は、生体材料を通した拡散により放出される。ある態様において、生体材料は、in vivoで生分解性である。ある態様において、生体材料は、生体材料をマウス対象の乳腺脂肪体において移植することによりin vivoで試験される場合に、移植の4か月後に生体材料のうちの10%以下がin vivoで残ることにより、特徴付けられる。ある態様において、生体材料は、生体材料およびロスマピモドを含む組成物をPBS(pH7.4)中に置くことによりin vitroで試験される場合に、ロスマピモドのうちの100%未満は、3時間以内に生体材料から放出されることにより、特徴付けられる。ある態様において、生体材料は、生体材料およびロスマピモドを含む組成物をマウス対象の乳腺脂肪体において移植することによりin vivoで試験される場合に、ロスマピモドのうちの50%以下は、in vivoで移植の8時間後に放出されることにより、特徴付けられる。ある態様において、生体材料は、それが、投与の24時間後に評価される場合に、阻害剤が溶液中で投与される場合に観察されるものと比較して、腫瘍切除部位においてより多くの阻害剤が存在するように、阻害剤の放出を延長することにより、特徴付けられる。
【0015】
ある態様において、投与は、移植によるものである。ある態様において、投与は、注射によるものである。ある態様において、投与することは、生体材料の1つ以上の前駆体構成成分を注射すること、および腫瘍切除部位において生体材料を形成させることを可能にすることを含む。標的部位が腫瘍切除部位であるある態様において、腫瘍切除部位は、肉眼での残留の腫瘍抗原の不在により特徴付けられる。ある態様において、がんは、転移性癌である。ある態様において、方法は、対象において、組成物を投与した後に、少なくとも1つの転移部位をモニタリングすることをさらに含む。
【0016】
本発明のある態様の詳細を、本明細書において記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は、詳細な説明、例および請求の範囲から明らかであろう。
【0017】
定義
本明細書において用いられる場合、用語「塩」とは、任意のおよび全ての塩を指し、薬学的に受入可能な塩を包含する。
【0018】
用語「薬学的に受入可能な塩」とは、健全な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などを伴うことなく、例えばヒトおよび/または動物の組織と接触しての使用のために好適な塩であって、妥当な利益/リスク比により釣り合うものを指す。薬学的に受入可能な塩は、当該分野において周知である。例えば、Bergeらは、本明細書において参考として援用されるJ. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19において、薬学的に受入可能な塩を詳細に記載する。本開示のある態様に従って利用することができる薬学的に受入可能な塩として、好適な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものが挙げられる。薬学的に受入可能な、非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸により、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸により、あるいは、イオン交換などの当該分野において公知の他の方法を用いて形成される、アミノ基の塩である。他の薬学的に受入可能な塩として、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩(hydroiodide)、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシオン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基から誘導される塩として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、およびN+(C1~C4アルキル)4
-塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩として、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に受入可能な塩として、適切である場合には、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、ならびにハライド、水酸化物、カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、低級アルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸などの対イオンを用いて形成させたアミンカチオンが挙げられる。
【0019】
用語「ポリマー」は、当該分野におけるその通常の意味を与えられ、すなわち、共有結合により連結された1つ以上の反復単位(モノマー)を含む分子構造である。反復単位は、全て同一であってもよく、または、いくつかの場合においては、1つより多くの型の反復単位が、ポリマー中に存在してもよい。ある態様において、ポリマーは、天然に存在する。ある態様において、ポリマーは、合成ものである(すなわち、天然には存在しない)。いくつかの態様において、本開示に従う使用のためのポリマーは、ポリペプチドである。いくつかの態様において、本開示に従う使用のためのポリマーは、核酸ではない。
【0020】
用語「生体接着剤(bioadhesive)」とは、標的表面、例えば組織表面に接着することができる生体適合性の剤を指す。いくつかの態様において、生体接着剤は、標的表面、例えば組織表面に結合して、例えば一定の期間にわたり、標的表面上に保持することができる。いくつかの態様において、生体接着剤は、生分解性であってよい。いくつかの態様において、生体接着剤は、天然の剤であってよく、これは、単離により、または合成により、調製されたまたは得られたものであってよい;いくつかの態様において、生体接着剤は、非天然の剤であってよく、例えば、人の手により(例えば、当業者により理解されるであろうように、剤に依存して、プロセッシング、合成、および/または組み換え生成により)設計および/または製造されたものであってもよい。いくつかの特定の態様において、生体接着剤は、ポリマー性材料であっても、またはこれを含んでもよい。例えば、複数のモノマーからなるものであっても、これを含むものであってもよい(糖など)。特定の例示的な生体接着剤として、例えば、シアノアクリレート(Dermabond、2-オクチルシアノアクリレート;Indermil、n-ブチル-2-シアノアクリレート;HistoacrylおよびHistoacryl Blue、n-ブチル-2-シアノアクリレート)、アルブミンおよびグルタルアルデヒド(BioGlue(商標)、ウシ血清アルブミンおよび10%グルタルアルデヒド)、フィブリン糊(Tisseel(商標)、ヒトのプールされた血漿フィブリノーゲンおよびトロンビン;Evicel(商標)、ヒトのプールされた血漿フィブリノーゲンおよびトロンビン;Vitagel(商標)、自己血漿のフィブリノーゲンおよびトロンビン;Cryoseal(商標)システム、自己血漿のフィブリノーゲンおよびトロンビン)、ホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドにより架橋されたゼラチンおよび/またはレゾルシノール、多糖ベースの接着剤(ゼラチン、コラーゲン、デキストラン、キトサン、アルギネート)、PEG、アクリレート、ポリアミン、またはウレタン誘導体(イソシアネート末端プレポリマーなどのFDAにより承認された多様な剤、および/またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えばMehdizadehおよびYang「Design Strategies and Applications of Tissue Bioadhesives」Macromol Biosci 13:271-288(2013)において記載されるような、当該分野において公知の生体接着剤他の例を、本明細書において記載される方法の目的のために用いることができる。いくつかの態様において、生体接着剤は、生分解性の生体接着剤であってよい。かかる生分解性の生体接着剤の例として、これらに限定されないが、フィブリン糊、ゼラチン-レゾルシノール-ホルムアルデヒド/グルタルアルデヒド糊、ポリ(エチレングリコール)(PEG)ベースのハイドロゲル接着剤、多糖接着剤、ポリペプチド接着剤、ポリマー性接着剤、生体模倣性生体接着剤、ならびに、BhagatおよびBecker「Degradable Adhesives for Surgery and Tissue Engineering」Biomacromolecules 18: 3009-3039 (2017)において記載されるものが挙げられる。
【0021】
用語「架橋剤」とは、1つの実体(例えば1本のポリマー鎖)を別の実体(例えば別のポリマー鎖)に連結する剤を指す。いくつかの態様において、2つの実体の間の連結(すなわち「架橋」)は、共有結合であるか、またはこれを含む。いくつかの態様において、2つの実体の間の連結は、非共有結合性の会合であるか、またはこれを含む。例えば、いくつかの態様において、2つの実体の間の連結は、イオン結合もしくはイオン相互作用であるか、またはこれを含む。いくつかの態様において、架橋剤は、アルデヒドとアミノ基との間に共有結合の形成を誘導するための小分子(例えば、ジアルデヒドまたはゲニピン)である。いくつかの態様において、架橋剤は、光感受性の官能基を含む。いくつかの態様において、架橋剤は、pH感受性の官能基を含む。いくつかの態様において、架橋剤は、熱感受性の官能基を含む。
【0022】
用語「溶媒和物」は、本明細書において用いられる場合、その当該分野において理解される意味を有し、化合物(これは例えば化合物の塩の形態であってもよい)と1つ以上の溶媒原子または分子との凝集物を指す。いくつかの態様において、溶媒和物は、液体である。いくつかの態様において、溶媒和物は、固体形態(例えば結晶形態)である。いくつかの態様において、固体形態の溶媒和物は、単離することができる。いくつかの態様において、溶媒和物中の溶媒原子と化合物との間の会合は、非共有結合性の会合である。いくつかの態様において、かかる会合は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、その原子が溶媒和物中に含まれる溶媒は、水、メタノール、エタノール、酢酸、DMSO、THF、ジエチルエーテルなどのうちの1つ以上であるか、またはこれを含んでもよい。好適な溶媒和物は、薬学的に受入可能な溶媒和物であってよい;いくつかの特定の態様において、溶媒和物は、水和物、エタノレートまたはメタノレートである。いくつかの態様において、溶媒和物は、化学量論的な溶媒和物であっても、非化学量論的な溶媒和物であってもよい。
【0023】
用語「水和物」は、本明細書において用いられる場合、その当該分野において理解される意味を有し、化合物(これは例えば化合物の塩の形態であってもよい)と1つ以上の水分子との凝集物を指す。典型的には、化合物の水和物中の水分子の数は、水和物中の化合物分子の数に対して、確定的な比にある。したがって、化合物の水和物は、例えば、一般式R・x H2Oにより表すことができ、ここで、Rは化合物であり、xは0より大きな数である。所与の化合物は、例えば一水和物(xが1である)、より低級な水和物(xが0より大きく、1より小さい数である、例えば、半水和物(R・0.5 H2O))、およびポリ水和物(xが1より大きい数である、例えば、二水和物(R・2 H2O)および六水和物(R・6 H2O))を含む、1つより多くの型の水和物を形成することができる。
【0024】
用語「互変異性体」または「互変異性体の」とは、水素原子の少なくとも1回の形式的な転移および少なくとも1回の結合価の変化(例えば、単結合から二重結合、三重結合から単結合、あるいは逆もまた同じ)から生じる、2つ以上の相互転換可能な化合物を指す。互変異性体の正確な比は、温度、溶媒およびpHを含むいくつかの要因に依存する。互変異性体化(すなわち互変異性体対を提供する反応)は、酸または塩基により触媒することができる。例示的な互変異性体化として、ケトからエノールへ、アミドからイミドへ、ラクタムからラクチムへ、エナミンからイミンへ、およびエナミンから(異なるエナミンへ)の互変異性体化が挙げられる。
【0025】
また、同じ分子式を有する化合物であるが、それらの原子の結合の性質もしくは配列またはそれらの原子の空間における配置が異なるものを、「異性体」と称することは、理解されるべきである。それらの原子の空間における配置が異なる「異性体」は、「立体異性体」と称される。
【0026】
用語「多型」とは、化合物(またはその塩、水和物もしくは溶媒和物)の結晶形態を指す。多くの化合物は、多様な異なる結晶形態(すなわち異なる多型)の形をとることができる。典型的には、かかる異なる結晶形態は、異なるX線回析パターン、赤外線スペクトルを有し、および/または、融点、密度、硬度、結晶の形状、光学的特性、電気的特性、安定性、溶解度、バイオアベイラビリティなどのいくつかまたは全ての特性において異なり得る。再結晶溶媒、結晶化の速度、貯蔵温度、および他の要因により、1つの結晶形態に所与の調製物を支配させることができる。化合物の多様な多型は、典型的には、様々な条件下における結晶化により調製することができる。
【0027】
用語「共結晶」とは、少なくとも2つの構成成分のからなる結晶構造を指す。ある態様において、共結晶は、目的の化合物(例えば、本明細書において開示されるもの)、および1つ以上の他の構成成分、例えば1つ以上の原子、イオンまたは分子(例えば溶媒分子)などを含む。ある態様において、共結晶は、目的の化合物および1つ以上の溶媒分子を含む。ある態様において、共結晶は、目的の化合物および1つ以上の酸または塩基を含む。
【0028】
用語「プロドラッグ」とは、活性化合物の形態であって、可溶媒分解によりまたは生理学的条件下において取り除かれて、その結果として活性な化合物が放出される、1つ以上の切断可能な基を含むものを指す。例示的なプロドラッグの形態として、これらに限定されないが、コリンエステル誘導体など、ならびにN-アルキルモルホリンエステルなどが挙げられる。いくつかの態様において、プロドラッグは、例えば、親酸と好適なアルコールとの反応により調製されるエステル、親酸化合物と置換または未置換のアミンとの反応により調製されるアミド、酸無水物、または混合無水物などの当該分野において公知であるような酸誘導体であってよい。目的の化合物上のペンダント状の酸性基から誘導される単純な脂肪族または芳香族のエステル、アミド、および無水物は、プロドラッグ形態の特別な例である。いくつかの場合において、(アシルオキシ)アルキルエステルまたは((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどの二重エステル型プロドラッグを調製することが望ましい場合がある。目的の化合物のC1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、アリール、C7~C12置換アリール、およびC7~C12アリールアルキルエステル。
【0029】
投与が企図される「対象」として、これらに限定されないが、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性または女性、例えば、小児対象(例えば、乳児、児童、青少年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、もしくは年配の成人))、ならびに/あるいは非ヒト動物、例えば、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル);ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコおよび/またはイヌなどの家畜動物;および/または鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウおよび/またはシチメンチョウ)が挙げられる。ある態様において、動物は、哺乳動物(例えば、発達の任意の段階におけるもの)である。いくつかの態様において、動物(例えば非ヒト動物)は、トランスジェニックまたは遺伝子操作された動物であってもよい。いくつかの態様において、対象は、腫瘍切除対象、例えば最近腫瘍切除を受けた対象である。いくつかの態様において、腫瘍切除対象は、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスを受け取る前の72時間未満(例えば、48時間未満、24時間未満、12時間未満、6時間未満、またはそれより短い時間を含む)の間に、腫瘍切除を受けた対象である。いくつかの態様において、腫瘍切除対象は、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスを受け取る前の48時間未満の間に、腫瘍切除を受けた対象である。いくつかの態様において、腫瘍切除対象は、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスを受け取る前の24時間未満の間に、腫瘍切除を受けた対象である。いくつかの態様において、腫瘍切除対象は、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスを受け取る前の12時間未満の間に、腫瘍切除を受けた対象である。
【0030】
用語「生体試料」とは、組織試料(組織切片および組織の針生検など);細胞試料(例えば、細胞学的スメア(Papスメアもしくは血液スメアなど)または顕微解剖により得られた細胞の試料);生物全体の試料(酵母または細菌の試料など);あるいは細胞の画分、フラグメントまたは細胞小器官(細胞を溶解してその構成成分を遠心分離もしくは他の方法により分離することにより得られるものなど)を含む、任意の試料を指す。生体試料の他の例として、血液、血清、尿、精液、糞便の物質、脳脊髄液、間質液、間質液、粘膜、涙、汗、膿汁、生検組織(例えば、外科的生検もしくは針生検により得られたもの)、乳頭吸引液、乳汁、膣液、唾液、スワブ(口腔内スワブなど)、または第1の生体試料に由来する生体分子を含む任意の材料が挙げられる。
【0031】
用語「投与する」、「投与すること」、または「投与」とは、本明細書において記載されるような薬物送達組成物を、移植すること、吸収すること、消化すること、注射すること、吸入すること、または別の方法でこれを導入することを指す。
【0032】
用語「処置」、「処置する」、および「処置すること」とは、本明細書において記載される「病理学的状態」(例えば、その1つ以上の徴候または症状を含む、疾患、障害または状態)を、逆転させること、軽減すること、その発症を遅延させること、またはその進行を阻害することを指す。いくつかの態様において、処置は、1つ以上の徴候または症状が発症したか、またはそれが観察された後に投与されてもよい。処置はまた、症状が解消した後で、例えば再発および/または拡散を遅延させるかまたはこれを予防するために、継続してもよい。
【0033】
用語「状態」、「疾患」、および「障害」は、交換可能に用いられる。
【0034】
「有効量」とは、所望される生物学的応答を誘発する、例えば、対象が罹患している可能性がある状態を処置するために十分な量を指す。当業者により理解されるであろうように、薬物送達組成物の有効量は、所望される生物学的エンドポイント、組成物中の治療剤の薬物動態学、処置されている状態、対象の年齢および健康などの要因に依存して変化し得る。有効量は、治療的処置および予防的処置を包含する。例えば、がんを処置することにおいて、有効量は、腫瘍再増殖を予防するか、腫瘍負荷を減少させるか、または腫瘍の増殖もしくは拡散を停止させ得る。当業者は、有効量は、単一の投与形態中に含まれている必要はないことを理解するであろう。むしろ、有効量の投与は、潜在的に経時的な(例えば投与レジメンにしたがう)、複数の用量の投与を含み得る。
【0035】
「治療有効量」とは、状態の処置において治療上の利益を提供するために十分な量であって、この治療上の利益とは、例えば、当該状態に付随する1つ以上の特徴または症状の頻度および/もしくは重篤度の低下、ならびに/またはその発症の遅延であっても、またはこれらを含んでもよい。治療有効量とは、単独で、または他の治療剤と組み合わせて、状態の処置において治療上の利益を提供する、治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」は、治療全体を改善するか、状態の症状もしくは原因を軽減または回避するか、または別の治療剤の治療効力を増強する量を包含する。当業者は、治療有効量は、単一の投与形態中に含まれている必要はないことを理解するであろう。むしろ、有効量の投与は、潜在的に経時的な(例えば投与レジメンに従う)、複数の用量の投与を含み得る。
【0036】
「予防有効量」とは、ある状態を予防する(例えば、ある状態の1つ以上の症状もしくは特徴の発症または再発を、例えばそれ/それらが、当該量の投与によって存在しないと予測されるであろう時点においても検出されないように、著しく遅延させる)のに十分な量である。組成物の予防有効量とは、単独で、または他の治療剤と組み合わせて、状態の予防において予防上の利益を提供する、治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」とは、予防全体を改善するか、または別の予防剤の予防効力を増強する量を包含し得る。当業者は、予防有効量は、単一の投与形態中に含まれている必要はないことを理解するであろう。むしろ、有効量の投与は、潜在的に経時的な(例えば投与レジメンに従う)、複数の用量の投与を含み得る。
【0037】
「増殖性疾患」とは、細胞の増殖(multiplication)による異常な増殖(growth)または拡張(extension)に起因して起こる疾患を指す(Walker, Cambridge Dictionary of Biology;Cambridge University Press: Cambridge, UK, 1990)。増殖性疾患は、以下と関連し得る:1)通常では静止状態の細胞の病理学的増殖;2)細胞のそれらの通常の場所からの病理学的遊走(例えば、新生物細胞の転移);3)マトリックスメタロプロテイナーゼなどのタンパク質分解酵素の病理学的発現(例えば、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼおよびエラスターゼ);または4)増殖性網膜症および腫瘍転移におけるもののような病理学的血管新生。例示的な増殖性疾患として、がん(すなわち、「悪性新生物」)、良性新生物、血管新生または血管新生に関連する疾患、炎症性疾患、自己炎症性疾患および自己免疫性疾患が挙げられる。
【0038】
用語「新生物」と「腫瘍」は、本明細書において交換可能に用いられ、組織の異常な塊を指し、ここで、塊の増殖は、正常な組織の増殖を抑制するか、またはこれと協調しない。新生物または腫瘍は、以下の特徴に依存して、「良性」または「悪性」であり得る:細胞分化の程度(形態学および機能を含む)、増殖の速度、局所侵入および転移。「良性新生物」は、一般に、よく分化しており、悪性腫瘍よりも特徴的に遅い増殖を有し、元の部位に限局し続ける。加えて、良性新生物は、浸潤(infiltrate)する、侵入(invade)する、または遠位部位に転移する能力を有さない。例示的な良性新生物として、これらに限定されないが、脂肪腫、軟骨腫、腺腫、アクロコルドン、老人性血管腫、脂漏性角化症、黒子、および皮脂腺過形成が挙げられる。いくつかの場合において、特定の「良性」腫瘍は、後に悪性新生物のもととなり得、これは、腫瘍の新生物細胞の亜集団におけるさらなる遺伝子の変化から生じ得、これらの腫瘍は、「前悪性新生物」として言及される。前悪性新生物の一例は、奇形腫である。対照的に、「悪性新生物」は、一般に、不十分に分化し(退形成)、進行性の浸潤、侵入、および周辺組織の破壊を伴う、特徴的に迅速な増殖を有する。さらに、悪性新生物は、一般に、遠位部位に転移する能力を有する。
【0039】
用語「転移」、「転移性の」、または「転移する」とは、原発のまたは元の腫瘍から別の臓器または組織へのがん性細胞の拡散または遊走を指し、典型的には、原発のまたは元の腫瘍の組織型の「続発性腫瘍」または「続発性細胞塊」の存在、および続発性(転移性)腫瘍が位置する臓器または組織の「続発性腫瘍」または「続発性細胞塊」の不在により同定可能である。例えば、骨に転移した前立腺癌は、転移前立腺癌と呼ばれ、骨組織において増殖するがん性前立腺癌細胞を含む。
【0040】
用語「がん」とは、悪性新生物を指す(Stedman’s Medical Dictionary、第25版;Hensyl編;Williams & Wilkins: Philadelphia, 1990)。本開示のいくつかの態様の文脈において特に興味深いものは、細胞の殺傷および/または除去治療(例えば、外科的切除、および/または、細胞傷害性剤による治療などの特定の化学療法剤による治療)により処置されるがんである。いくつかの態様において、本開示により処置されるがんは、外科的に切除されたもの(すなわち、それについて少なくとも1つの腫瘍が外科的に切除されたもの)である。いくつかの態様において、本開示により処置されるがんは、切除が標準的な治療であるものである。いくつかの態様において、本開示により処置されるがんは、転移したものである。ある態様において、例示的ながんとして、以下のうちの1つ以上が挙げられる:聴神経腫瘍;腺癌;副腎癌;肛門癌;血管肉腫(angiosarcoma)(例えば、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma));虫垂癌;良性単クローン性免疫グロブリン血症;胆道癌(例えば、胆管細胞癌);胆管癌;膀胱癌;骨癌;乳癌(例えば、胸部の腺癌、胸部の乳頭癌、乳癌、胸部の髄様癌);脳癌(例えば、髄膜腫、神経膠芽腫、神経膠腫(例えば、星状細胞腫、乏突起神経膠腫)、髄芽腫);気管支癌;カルチノイド腫瘍;心臓腫瘍;子宮頚癌(例えば、子宮頚部の腺癌);絨毛癌;脊索腫;頭蓋咽頭腫;結腸直腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌、結腸直腸腺癌);結合組織癌;上皮癌;非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ);上衣腫;上皮肉腫(例えば、カポジ肉腫、多発性特発性出血性肉腫(multiple idiopathic hemorrhagic sarcoma));子宮内膜癌(例えば、子宮癌、子宮肉腫);食道癌(例えば、食道の腺癌、バレット腺癌);ユーイング肉腫;眼癌(例えば、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫);家族性過好酸球増加症;胆嚢癌;胃癌(例えば、胃の腺癌);消化管間質腫瘍(GIST);生殖細胞癌;頭頚部癌(例えば、頭頚部扁平上皮癌、口腔癌(例えば、口腔扁平上皮癌)、喉の癌(例えば、喉頭癌、咽頭癌、上咽頭癌、中咽頭癌));造血器の癌(例えば、急性リンパ性白血病(ALL)(例えば、B細胞ALL、T細胞ALLなどの白血病)、急性骨髄性白血病(AML)(例えば、B細胞AML、T細胞AML)、慢性骨髄性白血病(CML)(例えば、B細胞CML、T細胞CML)、および慢性リンパ性白血病(CLL)(例えば、B細胞CLL、T細胞CLL));リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)(例えば、B細胞HL、T細胞HL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)(例えば、B細胞NHL、例えばびまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯B細胞リンパ腫(例えば、粘膜内リンパ組織(MALT)リンパ腫、結節辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯B細胞リンパ腫)、縦隔原発B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(すなわち、ワルデンストレームマクログロブリン血症)、ヘアリーセル白血病(HCL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆体Bリンパ芽球性リンパ腫および原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;およびT細胞NHL、例えば前駆体T-リンパ芽球性リンパ腫/白血病、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)(例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(例えば、菌状息肉症、セザリー症候群)、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラーT細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、および未分化大細胞リンパ腫);上記のような1つ以上の白血病/リンパ腫の混合物;多発性骨髄腫;重鎖病(例えば、アルファ鎖病、ガンマ鎖病、ミュー鎖病);血管芽腫;組織球増殖症;下咽頭癌;炎症性筋線維芽細胞腫瘍;免疫細胞アミロイドーシス;腎臓癌(例えば、腎芽腫、別名ウィルムス腫瘍、腎細胞癌);肝臓癌(例えば、肝細胞癌(HCC)、悪性ヘパトーマ);肺癌(例えば、気管支原性肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌);平滑筋肉腫(LMS);肥満細胞症(例えば、全身肥満細胞症);黒色腫;正中線癌(midline tract carcinoma);多発性内分泌腫瘍症候群;筋癌;骨髄異形成症候群(MDS);中皮腫;骨髄増殖性障害(MPD)(例えば、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板増加症(ET)、原発性骨髄線維症(agnogenic myeloid metaplasia:AMM)、別名骨髄線維症(MF)、慢性特発性骨髄線維症、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病(CNL)、好酸球増加症候群(HES));上咽頭癌;神経芽腫;神経線維腫(例えば、神経線維腫症(NF)1型または2型、神経鞘腫症);神経内分泌癌(例えば、膵消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、カルチノイド腫瘍);骨肉腫(例えば、骨癌);卵巣癌(例えば、嚢胞腺癌、卵巣胎児性癌、卵巣腺癌);乳頭状腺癌;膵臓癌(例えば、膵臓腺癌、膵管内乳頭粘液性新生物(IPMN)、島細胞腫瘍);副甲状腺癌;乳頭状腺癌;陰茎癌(例えば、陰茎および陰嚢のパジェット病);咽頭癌;松果体腫;下垂体癌;胸膜肺芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍(PNT);形質細胞新形成;腫瘍随伴症候群;上皮内新生物;前立腺癌(例えば、前立腺の腺癌);直腸癌;横紋筋肉腫;網膜芽細胞腫;唾液腺癌;皮膚癌(例えば、扁平上皮癌(SCC)、角化棘細胞腫(KA)、黒色腫、基底細胞癌(BCC));小腸の癌(例えば虫垂癌);軟部組織肉腫(例えば、悪性線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、軟骨肉腫、線維肉腫、粘液肉腫);皮脂腺癌;胃癌;小腸癌;汗腺の癌;滑膜腫;精巣癌(例えば、セミノーマ、精巣胎児性癌);胸腺癌;甲状腺癌(例えば、甲状腺の乳頭癌、甲状腺乳頭癌(PTC)、甲状腺髄様癌);尿道癌;子宮癌;腟癌;および外陰癌(例えば、外陰のパジェット病)。
【0041】
用語「免疫療法」とは、免疫応答を誘導すること、増強すること、またはこれを抑制することにより、疾患の処置を促進する治療剤を指す。免疫応答を誘発または増幅するように設計された免疫療法は、活性化免疫療法として分類され、一方、免疫応答を低下させるかまたはこれを抑制する免疫療法は、抑制免疫療法として分類される。免疫療法は、必ずしもではないが、典型的にはバイオ治療剤である。多くの免疫療法が、がんを処置するために用いられる。これらは、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、養子細胞移入、サイトカイン、ケモカイン、ワクチン、小分子阻害剤、および小分子アゴニストを含む。例えば、有用な免疫療法として、これらに限定されないが、I型インターフェロンの誘導因子、インターフェロン、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト、TLR7/8アゴニスト、IL-15スーパーアゴニスト、抗PD-1抗体、抗CD137抗体、および抗CTLA-4抗体を挙げることができる。
【0042】
用語「バイオ製剤(biologic)」、「バイオ医薬(biologic drug)」、および「バイオ医薬品(biological product)」とは、ワクチン、血液および血液成分、アレルゲン(allergenics)、体細胞、遺伝子治療剤、組織、核酸およびタンパク質などの広範な製品を指す。バイオ製剤は、糖、タンパク質、または核酸、またはこれらの物質の複雑な組み合わせを含んでもよく、または、細胞および組織などの生きている実体であってもよい。バイオ製剤は、多様な天然のソース(例えば、ヒト、動物、微生物)から単離されてもよく、および/または生物工学的方法および/または他の技術により製造することができる。
【0043】
用語「抗体」とは、血清の機能的な構成成分を指し、しばしば、分子の集合(抗体もしくは免疫グロブリン)として、または1つの分子(抗体分子もしくは免疫グロブリン分子)として、言及される。抗体は、特異的な抗原決定因子(抗原または抗原のエピトープ)に結合するかまたはこれと反応することができ、これが、次いで、免疫学的エフェクター機構の誘導をもたらす。個々の抗体は、通常、単一特異性であると考えられ、抗体の組成物は、モノクローナル(すなわち、同一の抗体分子からなる)であっても、ポリクローナル(すなわち、同じ抗原上の、または区別し得る異なる抗原上の、同じまたは異なるエピトープと反応する、2つ以上の異なる抗体からなる)であってもよい。各々の抗体は、それがその対応する抗原に特異的に結合することを可能にするユニークな構造を有し、全ての天然の抗体は、2本の同一の軽鎖および2本の同一の重鎖の、同じ全体的な基本構造を有する。抗体はまた、免疫グロブリンとして集合的に知られる。抗体は、ヒトまたは非ヒト(例えば、マウスなどのげっ歯類、イヌ、ラクダなど)由来のものであっても(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞または生物において元々発生した配列を有していても)、あるいは、例えばかかるヒトまたは非ヒト抗体に(または、いくつかの態様においてはその抗原結合部分に)基づいてキメラ化、ヒト化、再形状化(reshape)、または再フォーマットされた抗体であっても、またはこれを含んでもよい。
【0044】
いくつかの態様において、文脈から明らかであろうとおり、用語「抗体」とは、本明細書において用いられる場合、抗体のエピトープ結合配列を含むフォーマットを包含し、かかるフォーマットは、例えば、キメラおよび/または単鎖抗体(例えば、ナノボディもしくはFcab)、ならびにFab、Fvフラグメントもしくは単鎖Fv(scFv)フラグメントなどの抗体の結合フラグメント、、ならびに二量体IgA分子または五価IgM分子などの多量体形態を含む。また含まれるのは、二重特異性抗体、二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)、免疫動員性抗がんモノクローナルT細胞受容体(ImmTAC)、二重親和性リターゲティング(dual-affinity re-targeting:DART);代替足場(alternative scaffold)または抗体模倣物(例えば、アンチカリン、FN3モノボディー、DARPins、Affibodies、Affilins、Affimers、Affitins、Alphabodies、Avimers、Fynomers、Im7、VLR、VNAR、Trimab、CrossMab、Trident);ナノボディー、バイナノボディー(binanobody)、F(ab’)2、Fab’、ジ-sdFv、単一ドメイン抗体、三官能性抗体、ダイアボディー、およびミニボディーを含む
【0045】
用語「小分子」または「小分子治療剤」とは、天然に存在するか、人工的に作製された(例えば、化学合成を介して)かにかかわらず、相対的に低い分子量を有する分子を指す。典型的には、小分子は、有機化合物である(すなわち、それが炭素を含む)。小分子は、複数の炭素-炭素結合、立体中心、および他の官能基(例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボニル、およびヘテロ環式環など)を含んでもよい。ある態様において、小分子の分子量は、約1,000g/mol以下、約900g/mol以下、約800g/mol以下、約700g/mol以下、約600g/mo以下、約500g/mol以下、約400g/mol以下、約300g/mol以下、約200g/mol以下、または約100g/mol以下である。ある態様において、小分子の分子量は、少なくとも約100g/mol、少なくとも約200g/mol、少なくとも約300g/mol、少なくとも約400g/mol、少なくとも約500g/mol、少なくとも約600g/mol、少なくとも約700g/mol、少なくとも約800g/mol、または少なくとも約900g/mol、または少なくとも約1,000g/molである。上の範囲の組み合わせ(例えば、少なくとも約200g/molであり、約500g/mol以下である)もまた、可能である。ある態様において、小分子は、薬物などの治療活性剤である(例えば、連邦規則集(C.F.R.)において提供されるような米国食品医薬品局により承認される分子)。小分子はまた、1つ以上の金属原子および/または金属イオンと錯体を形成してもよい。この例において、小分子はまた、「有機小分子」としても言及される。好ましい小分子は、生物学的に活性な剤であって、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおいて生物学的効果をもたらすものである。小分子として、これらに限定されないが、放射性核種およびイメージング剤が挙げられる。ある態様において、小分子は薬物である。好ましくは、必ずしもではないが、薬物は、適切な政府機関または規制当局により、ヒトまたは動物における使用のために安全かつ有効であると、既にみなされているものである。例えば、ヒトの使用のために承認された薬物は、FDAにより、本明細書において参考として援用される21C.F.R.§§330.5、331~361、および440~460下において列記される:獣医学のための薬物は、本明細書において参考として援用される21C.F.R.§§500~589により列記される。全ての列記される医薬は、本発明による使用のために受入可能であると考えられる。
【0046】
用語「治療剤」とは、1つ以上の治療特性を有する剤であって、所望される、通常は有益な効果をもたらすものを指す。例えば、治療剤は、疾患を処置するか、寛解させるか、および/またはこれを予防し得る。いくつかの態様において、治療剤は、バイオ製剤、小分子、またはそれらの組み合わせであるか、またはこれを含んでもよい。
【0047】
用語「化学療法剤」とは、がんのための化学療法において使用できることが知られている治療剤を指す。
【0048】
用語「標的剤(targeted agent)」とは、がんの増殖、進行および拡散に関与する特定の分子(「分子標的」)を妨害することにより、がんの増殖および拡散を遮断する、抗がん剤を指す。標的剤は、ときに、「標的癌治療剤」、「分子標的薬」、「分子標的治療剤」または「精密医療」と称される。標的剤は、がんと関連する特定の分子標的に対して作用するが、一方、多くの化学療法剤は、全ての迅速に分裂する細胞に対して作用する(例えば、細胞ががん性であるか否かにかかわらず)点において、標準的な化学療法とは異なる。標的剤は、それらの標的と相互作用するように、計画的に選択または設計されるが、一方、多くの標準的な化学療法は、それらが細胞を殺傷することにより同定される。
【0049】
用語「生体材料」とは、(健全な医学的判断に従って)受入不可能な反応を誘発することなく、医学的(例えば、治療、診断)目的のために対象に投与することができることにおいて特徴付けられる、生体適合性の物質を指す。生体材料は、天然のものから得るかもしくは誘導しても、合成であってもよい。いくつかの態様において、生体材料は、ゲルの形態におけるものであってもよい。いくつかの態様において、生体材料は、注射可能なフォーマットにおけるものであってもよい。例えば、生体材料は、in situで(例えば、対象への投与の後で)形成されるべきゲルの前駆体構成成分を含んでもよい。
【0050】
用語「ハイドロゲル」とは、親水性であるポリマー鎖のネットワークから形成される材料を指し、ときに、水相が分散媒であるコロイド状ゲルとして見出される。いくつかの態様において、ハイドロゲルは、高度に吸収性の(例えば、それらは、90%を超える水を吸収および/または保持することができる)、天然または合成のポリマーネットワークである。いくつかの態様において、ハイドロゲルは、例えばそれらの顕著な含水量に起因して、天然の組織に類似の可撓性の程度を有する。
【0051】
用語「移植可能」、「移植」、「移植すること」、および「移植する」とは、典型的には一般的な外科的方法により、薬物送達組成物を対象における特定の場所(センチネルリンパ節における腫瘍切除部位の中など)に配置することを指す。
【0052】
用語「生体適合性」とは、その意図される使用のin vivoでの環境において実質的に非毒性であって、患者の生理学的な系により実質的に拒絶されない(すなわち、非抗原性である)材料を指す。このことは、ある材料が、国際標準化機構(ISO)標準番号10993および/または米国薬局方(USP)23および/または米国食品医薬品局(FDA)ブルーブックメモランダム番号G95-1、表題「Use of International Standard ISO-10993, Biological Evaluation of Medical Devices Part-1: Evaluation and Testing」において記載される生体適合性の試験を通過する能力により、計測することができる。典型的には、これらの試験は、ある材料の毒性、感染性、発熱性、刺激能力、反応性、溶血活性、発がん性、および/または免疫原性を測定する。生体適合性の構造または材料は、患者の大多数に導入された場合、典型的には外科手術または外来の物体の生体への移植に伴う温和な一過性の炎症とは区別される、不要に有害であるか、長期にわたるか、または段階的に増大する生物学的反応または応答を引き起こすことはない。
【0053】
用語「アンタゴニスト」とは、(i)別の剤の1つ以上の効果を減少させるかまたはこれを抑制する;および/または(ii)1つ以上の生物学的イベントを減少させるかまたはこれを抑制する剤を指す。いくつかの態様において、アンタゴニストは、それが標的とする1つ以上の剤のレベルおよび/または活性を低下させることができる。多様な態様において、アンタゴニストは、例えば、適切な拮抗作用を示す小分子、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、金属、および/または他の実体を含む、多様な化学クラスの剤であるか、またはこれを含んでもよい。アンタゴニストは、直接的(その場合、それは、その標的に対して直接的にその影響を発揮する)であるか、または間接的(その場合、それは、その標的に結合すること以外により:例えば標的のレベルまたは活性が改変されるように、標的の調節因子と相互作用することにより、その影響を発揮する)であってもよい。いくつかの態様において、アンタゴニストは、受容体アンタゴニスト、例えば、アゴニストのように受容体を活性化するのではなく、受容体に結合してこれを遮断することにより、生物学的応答を遮断するか、またはこれを弱める受容体リガンドまたは薬物であってよい。
【0054】
用語「アゴニスト」とは、(i)別の剤の1つ以上の効果を増大させるかまたはこれを誘導する;および/または(ii)1つ以上の生物学的イベントを増大させるかまたはこれを誘導する剤を指す。いくつかの態様において、アゴニストは、それが標的とする1つ以上の剤のレベルおよび/または活性を増大させ得る。多様な態様において、アゴニストは、例えば小分子、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、金属、および/または適切なアゴニスト作用を示す他の実体を含む多様な化学的クラスの剤であってもよく、またはこれを含んでもよい。アゴニストは、直接的なもの(この場合、それは、その標的に対して直接的にその影響を発揮する)であっても、間接的なもの(この場合、それは、その標的に結合すること以外により;例えば、例えば標的のレベルまたは活性が改変されるように、標的の制御因子と相互作用することにより、その影響を発揮する)であってもよい。部分アゴニストは、完全アゴニストの存在下において、それが、その標的および/またはその制御因子と相互作用する完全アゴニストと競合して、それにより、完全アゴニストのみにより観察されるものと比較して、(i)別の剤の1つ以上の効果の低下、および/または(ii)1つ以上の生物学的イベントの減少をもたらすことにより、競合的アンタゴニストとして作用することができる。
【0055】
用語「阻害する」または「阻害」とは、標的(例えばp38 MAPK)のレベル(例えば発現および/または活性)を調節することに関して、全体的な阻害のみに限定されない。したがって、いくつかの態様において、部分的な阻害または相対的な低下が、用語「阻害」の範囲内に含まれる。いくつかの態様において、当該用語は、標的(例えばp38 MAPK)のレベル(例えば、発現および/または活性)の、初期のまたは他の適切な参照レベル(これは、例えば標的の基線レベルであってよい)よりも、再現可能に、および/または統計学的に有意に、低いレベルまでの低下を指す。いくつかの態様において、当該用語は、標的のレベル(例えば、発現および/または活性)の、初期のレベル(これは、例えば標的の基線レベルであってよい)の75%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%、または0.0001%未満のレベルまでの、低下を指す。
【0056】
本明細書において用いられる場合、用語「阻害剤」とは、その存在またはレベルが、調節されるべき標的のレベルまたは活性の低下と相関する剤を指す。いくつかの態様において、阻害剤は、直接的に作用するものであってよい(この場合、それは、その標的に対して直接的に、例えば標的に結合することにより、その影響を発揮する);いくつかの態様において、阻害剤は、間接的に作用するものであってよい(この場合、それは、標的のレベルおよび/または活性が低下するように、標的の制御因子と相互作用するか、および/または他の方法でこれを改変することにより、その影響を発揮する)。いくつかの態様において、阻害剤は、その存在またはレベルが、特定の参照レベルまたは活性(例えば、既知の阻害剤の存在、または本明細書において開示される阻害剤の不在などの適切な参照条件下において観察されるもの)と比較して減少した標的のレベルまたは活性と相関するものである。
【0057】
用語「炎症誘発経路の阻害剤」とは、本明細書において用いられる場合、いくつかの態様においては、免疫抑制性の細胞の動員を防止するか、または急性の炎症を予防する剤を指す。かかる急性の炎症および/または免疫抑制性の細胞の動員は、局所外傷(外科手術により引き起こされるものを含む)の後で起こり得る。いくつかの態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、例えば、例えば、炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF-アルファ、IL-1βおよびIL-6)の産生、Th1細胞の活性の増大および/または増殖、骨髄系細胞の動員などを含む、炎症を誘導する免疫応答を阻害し得る。
【0058】
用語「炎症誘発性免疫応答」とは、本明細書において用いられる場合、例えば、炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF-アルファ、IL-1βおよびIL-6)の産生、Th1細胞の活性の増大および/または増殖、骨髄系細胞の動員などを含む、炎症を誘導する免疫応答を指す。いくつかの態様において、炎症誘発性免疫応答は、急性の炎症および慢性の炎症のうちの一方または両方であっても、またはこれを含んでもよい。
【0059】
用語「自然免疫応答の活性化因子」とは、自然免疫系を活性化する剤を指す。かかる活性化は、炎症性応答を開始させるか、および/または適応免疫応答を誘導することを補助する分子の発現を刺激し、抗原特異的な獲得免疫の発達をもたらすることができる。自然免疫系の活性化は、サイトカイン産生、増殖、および生存、ならびに抗原の提示および抗原提示細胞による共刺激分子の発現を増強することにより改善されたT細胞のプライミングをもたらし得る。
【0060】
用語「適応免疫応答の活性化因子」とは、適応免疫系を活性化する剤を指す。かかる活性化は、阻害性免疫チェックポイントを中和することにより、または共刺激性受容体を誘導して、最終的に癌細胞により発現される免疫原性抗原に対するヘルパーおよび/またはエフェクターT細胞応答を生じ、メモリーB細胞および/またはT細胞の集団を産生することにより、抗腫瘍機能を修復することができる。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、適応免疫応答および/または白血球の輸送の調節を含む。
【0061】
用語「マクロファージのエフェクター機能の修飾因子」とは、マクロファージのエフェクター機能を活性化するか、または免疫抑制性マクロファージまたはマクロファージ由来のサプレッサー細胞を枯渇させる剤を指す。かかる増強は、マクロファージおよび骨髄系の構成成分を動態化して、腫瘍および腫瘍脈管構造を含むその間質を破壊することができる。マクロファージは、抗腫瘍サイトカインを分泌するか、および/または食作用(抗体依存的な細胞の食作用を含む)を行うように、誘導することができる。
【0062】
本明細書において用いられる場合、用語「持続的放出(sustained release)」と「長期的放出(extended release)」とは、等価の用語である。本開示の組成物およびデバイスは、治療剤を、ある期間にわたり放出することができる。用語「持続的(sustained)」および「長期的(extended)」は、1つ以上の治療剤が、5分間から数か月間の範囲のタイムスケールにおいて、生体材料から放出されることを意味し得る。ある態様において、1つ以上の治療剤の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下が、4週間、3週間、2週間、10日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、10分間、または5分間の期間にわたり生体材料から放出される。ある態様において、1つ以上の治療剤の99%以上、95%以上、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、または1%以上が、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、10分間、または5分間の期間にわたり生体材料から放出される。いくつかの態様において、持続的放出または長期的放出の程度は、in vitroまたはin vivoで特徴付けることができる。例えば、いくつかの態様において、放出動態学は、生体材料および治療剤(例えばp38 MAPK阻害剤)を含む組成物を、水性の緩衝化溶液(例えば、pH7.4におけるPBS)中に置くことにより、in vitroで試験することができる。いくつかの態様において、生体材料および治療剤(例えばp38 MAPK阻害剤)を含む組成物が、水性の緩衝化溶液(例えば、pH7.4におけるPBS)中に置かれる場合、治療剤の100%以下(例えば90%以下、80%以下、70%以下、50%以下またはそれより低いものを含む)が、3時間以内に生体材料から放出される。いくつかの態様において、放出動態学は、生体材料および治療剤(例えばp38 MAPK阻害剤)を含む組成物を、動物対象(例えばマウス対象)の標的部位(例えば、乳腺脂肪体)に移植することにより、in vivoで試験することができる。いくつかの態様において、生体材料および治療剤(例えばp38 MAPK阻害剤)を含む組成物が、動物対象(例えばマウス対象)の標的部位(例えば、乳腺脂肪体)に移植される場合、治療剤の70%以下またはそれより低いもの(例えば、60%以下またはそれより低い、50%以下またはそれより低い、40%以下またはそれより低い、30%以下またはそれより低いものを含む)が、移植の8時間後にin vivoで放出される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、は、4T1-Luc2細胞を同所性に接種されたメスのBALB/cJマウスであって、その腫瘍が外科的に切除され、その後、p38 MAPK阻害剤を含まないハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸ハイドロゲル)を含む例示的な薬物送達デバイス、またはハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸)およびp38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、ロスマピモド)を含む例示的な薬物送達デバイスが移植されたものの、カプランマイヤー曲線である。
【0064】
【
図2】
図2は、は、4T1-Luc2細胞を同所性に接種されたメスのBALB/cJマウスであって、その腫瘍が外科的に切除され、その後、抗IL-1β抗体を含まないハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸ハイドロゲル)を含む例示的な薬物送達デバイス、またはハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸)および抗IL-1β抗体(例えば、クローンB122)を含む例示的な薬物送達デバイスが移植されたものの、カプランマイヤー曲線である。
【0065】
【
図3】
図3は、は、4T1-Luc2細胞を同所性に接種されたメスのBALB/cJマウスであって、その腫瘍が外科的に切除され、その後、抗IL-6抗体を含まないハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸ハイドロゲル)を含む例示的な薬物送達デバイス、またはハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸)および抗IL-6抗体(例えば、クローンMP5-20F3)を含む例示的な薬物送達デバイスが移植されたものの、カプランマイヤー曲線である。
【0066】
【
図4】
図4は、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)およびCOX-2を含む特定の炎症誘発経路の相互関係を示す模式図である。Desaiら、「Mechanisms of Phytonutrient Modulation of Cyclooxygenase-2 (COX-2) and Inflammation Related to Cancer」Nutrition and Cancer, 70: 350-375 (2018)を参照。かかる経路に精通している当業者は、例えば、サイトカインTNF-α、IL-6および/またはIL-1βなどの炎症誘発性シグナルが、例えばMAPK経路の活性化を介してCOX-2の転写を刺激し得ることを認識するであろう。例えば、IL-1βは、p38 MAPK経路の活性化を通してCOX-2発現を上方調節することが、確立されている(Huangら、「MAPK/ERK signal pathway involved expression of COX-2 and VEGF by IL-1beta induced in human endometriosis stomal cells in vitro」Int J Clin Exp Pathol, 6: 2129-2136 (2013)およびDi Mariら、「HETEs enhance IL-1-mediated COX-2 expression via augmentation of message stability in human colonic myofibroblasts」Am J Physiol-Gastrointest Liver Physiol., 293: 2092-2101 (2007))。
【0067】
【
図5】
図5は、特定の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が、例えばCOX-1の阻害剤および/またはCOX-2の阻害剤を含むシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害剤として、および/またはp38 MAPKの阻害剤として作用し得ることを示す模式図である。Espositoら、「Non-steroidal anti-inflammatory drugs in Parkinson’s disease」Experimental Neurology 205: 295-312 (2007)を参照。例えば、いくつかの態様において、NSAIDは、COX-1および/またはCOX-2の活性および/またはレベルを阻害するかまたはこれを低下させることができる。いくつかの態様において、NSAIDは、p38 MAPK経路またはその構成成分の活性化を阻害するかまたはこれを低下させて、それにより、AP-1の活性化を低下させるかまたはこれを阻害することができる。
【0068】
【
図6】
図6は、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)およびWnt-β-カテニンを含む特定の炎症誘発経路相互関係を示す模式図である。See Bikkavilliら、「p38 mitogen-activated protein kinase regulates canonical Wnt-β-catenin signaling by inactivation of GSK3β」Journal of Cell Science, 121: 3598-3607 (2008)を参照。かかる経路に精通している当業者は、p38 MAPKが、Wnt3aの刺激により活性化され得、かかる刺激は、Gタンパク質およびディシブルドの両方に依存し得ることを認識するであろう。p38 MAPK特異的阻害剤は、Wnt3aにより誘導されるβ-カテニンの発現を低下させることができる。したがって、p38 MAPKは、例えばGSK3βを不活化することにより、および/またはディシブルドの下流で作動することにより、Wnt-β-カテニンシグナル伝達において役割を果たす。
【発明を実施するための形態】
【0069】
ある態様の詳細な説明
本明細書において提供されるのは、1つ以上の免疫調節剤の標的部位(例えば、腫瘍が取り除かれるか、および/または例えば化学療法または放射線照射により癌細胞が処置されるかもしくは殺傷された部位)への送達を限局して、それにより免疫調節剤の作用を、それを必要とする標的部位に濃縮することができる薬物送達組成物およびデバイスである。かかる薬物送達系は、がんを処置するために特に有用であり得る。薬物送達組成物およびデバイスは、生体材料および炎症誘発経路の阻害剤を含んでもよい。いくつかの側面において、薬物送達組成物およびデバイスは、生体材料およびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤(例えばp38 MAPK阻害剤)を含んでもよい。薬物送達組成物およびデバイスは、生体材料、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、および自然免疫応答の活性化因子を含んでもよい。薬物送達組成物およびデバイスは、生体材料、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、およびサイトカインを含んでもよい。薬物送達組成物およびデバイスは、生体材料、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、およびケモカインを含んでもよい。薬物送達組成物およびデバイスは、1つ以上の適応免疫応答の活性化因子をさらに含んでもよい。薬物送達組成物およびデバイスは、さらなる治療剤(例えば、炎症誘発経路の阻害剤、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子または化学療法剤)をさらに含んでもよい。
【0070】
いくつかの態様において、薬物送達組成物およびデバイス中で提供される治療剤(例えば免疫調節剤)は、例えば外科的腫瘍切除などの外科手術により誘導される炎症(例えば慢性の炎症)を媒介することにより、がん、特に固形腫瘍の処置のためのユニークなツールを提供することができる。いくつかの態様において、薬物送達組成物およびデバイス中で提供される治療剤(例えば免疫調節剤)は、例えば外科的腫瘍切除などの外科手術により誘導される炎症(例えば慢性の炎症)を阻害することができる。いくつかの態様において、薬物送達組成物およびデバイス中で提供される治療剤(例えば免疫調節剤)は、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の活性を低下させるかまたはこれを阻害することができる。いくつかの態様において、薬物送達組成物およびデバイス中で提供される治療剤(例えば免疫調節剤)は、免疫抑制性の細胞の動員を低下させるかまたはこれを阻害することができる。いくつかの態様において、薬物送達組成物およびデバイス中で提供される治療剤(例えば免疫調節剤)は、急性の炎症を低下させるかまたはこれを阻害することができる。いくつかの態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、自然免疫応答系および/または適応免疫応答系を活性化する1つ以上の治療剤(例えば免疫調節剤)さらに含んでもよい。本明細書において提供される組成物、デバイス、方法、系、およびキットはまた、細胞の投与(例えば、養子細胞移入)または微小粒子、ペプチドもしくは腫瘍抗原などのさらなる構成成分の組み込みまたは存在を必要としない点において、既存の方法よりも有利である。
【0071】
本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、周術期のセッティングにおいてがん(例えば固形腫瘍)を処置するために有用である。いくつかの態様において、組成物およびデバイスは、それを必要とする対象における治療の必要性がある部位におけるデバイスの移植により免疫療法剤を送達することができる。本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、いくつかの態様においては、それらは、免疫調節剤(例えばp38 MAPK阻害剤)を腫瘍切除の部位に直接的に放出することができ、全身投与を回避することができるので、既存の免疫療法よりも特に有利である。したがって、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、古典的な免疫療法の全身投与に付随し得る潜在的な毒性を回避する、腫瘍切除の部位における薬物送達のためのビヒクルを提供する。免疫療法剤を腫瘍切除の部位に濃縮することにより、同様に、効力を改善することができる。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、腫瘍増殖を遅延させるかおよび/もしくはこれを妨害し、がんの再発を予防し、腫瘍転移を予防し、ならびに/または原発腫瘍の再増殖を予防するために、有用である。
【0072】
とりわけ、いくつかの態様において、本開示は、それ自体がさらなる免疫抑制(例えばMDSCの活性)を育成する、免疫応答の抑制のための技術を提供する。
【0073】
いかなる特定の理論によっても拘束されることは望まないが、本開示は、いくつかの態様において、本明細書において提供される技術は、一般に慢性の炎症に関して観察される(例えば、しばしば自己免疫性疾患に付随する)が、本明細書において記載されるように、急性のセッティング(すなわち手術後)において活性化され得る炎症の型を軽減することができることを記述する。本開示は、本明細書において記載されるようなp38を標的とする治療が、腫瘍切除後の文脈においてユニークな有用性を有し得るという見識を提供する。例えば、p38は、特定の自己免疫状態と関連して記載されており、かかる状態の処置のための治療において標的とされてきた。当業者は、自己免疫性疾患を処置するために設計され、および/または有用である多くの治療戦略は、それらが腫瘍の進行の表現型の悪化をもたらすであろうことから、腫瘍切除のセッティングにおいては悲惨であろうことを理解するであろう。本開示は、この一般的な原理にもかかわらず、本明細書において記載されるようにp38を標的とすることが、がん治療に関して驚異的に有用であることを教示する。
【0074】
記載されるいくつかの態様において、p38を標的とする治療は、例えば、例えば、自然免疫系の活性化/受容体活性化作用(例えば、STINGアゴニストまたはTLRアゴニストなどの剤の投与を介しするもの)などの他の免疫調節戦略を含む治療と組み合わせてもよい。
【0075】
薬物送達組成物およびデバイス
生体材料(例えばハイドロゲル)
薬物送達組成物およびデバイスは、生体材料を含む。ある態様において、生体材料は、足場またはデポーである。足場またはデポーは、本明細書において記載されるような薬物送達組成物およびデバイスにおいて、任意の治療剤を含み、その持続的または長期的放出を促進するために好適な、任意の合成のまたは天然に存在する材料を含む。したがって、生体材料は、本明細書において記載される組成物およびデバイスの有利な特性(例えば、貯蔵弾性率、生分解、治療剤の放出プロフィール)を提供する特性を有する。
【0076】
ある態様において、生体材料は、腫瘍切除部位における治療剤の放出を、同じ治療剤の溶液中での投与と比較して延長する。ある態様において、生体材料は、腫瘍切除部位における治療剤の放出を、同じ治療剤の溶液中での投与と比較して、少なくとも5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、2週間、3週間、または4週間、延長する。
【0077】
いくつかの態様において、生体材料は、投与後の特定の時点において評価した場合に、治療剤が溶液中で投与された場合よりも多くの治療剤が腫瘍切除部位において存在するように、治療剤(例えばp38 MAPK阻害剤)の放出を延長する。例えば、いくつかの態様において、投与の24時間後に評価される場合に、腫瘍切除部位に放出され、そこにおいて存在する治療剤の量は、治療剤が溶液中で投与された場合に観察されるものよりも、少なくとも30%多い(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれより多くを含む)。いくつかの態様において、投与の48時間後に評価される場合に、腫瘍切除部位に放出され、そこにおいて存在する治療剤の量は、治療剤が溶液中で投与された場合に観察されるものよりも、少なくとも30%多い(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれより多くを含む)。いくつかの態様において、投与の3日後に評価される場合に、腫瘍切除部位に放出され、そこにおいて存在する治療剤の量は、治療剤が溶液中で投与された場合に観察されるものよりも、少なくとも30%多い(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれより多くを含む)。いくつかの態様において、投与の5日後に評価される場合に、腫瘍切除部位に放出され、そこにおいて存在する治療剤の量は、治療剤が溶液中で投与された場合に観察されるものよりも、少なくとも30%多い(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれより多くを含む)。
【0078】
いくつかの態様において、生体材料は、少なくとも500Pa、少なくとも1000Pa、少なくとも1500Pa、少なくとも2000Pa、少なくとも2500Pa、少なくとも3000Pa、少なくとも4000Pa、少なくとも5000Pa、少なくとも10kPa、少なくとも15kPa、またはそれより高い貯蔵弾性率により、特徴付けられる。いくつかの態様において生体材料は、50kPa以下、40kPa以下、30kPa以下、20kPa以下、10kPa以下、5000kPa以下、4000Pa以下、3000Pa以下、2000Pa以下、またはそれより低い貯蔵弾性率により、特徴付けられる。上述の範囲の組み合わせもまた可能である。例えば、いくつかの態様において、生体材料は、500Pa~50,000Pa、または1000Pa~20kPa、または1000Pa~10kPa、または1000Pa~5000Pa、または1000Pa~3000Paの貯蔵弾性率により、特徴付けられる。
【0079】
ある態様において、生体材料は、ヒアルロン酸、アルギネート、キトサン、キチン、硫酸コンドロイチン、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、セルロース、多糖、フィブリン、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGジアクリレート(PEGDA)、ジスルフィド含有PEGDA(PEGSSDA)、PEGジメタクリレート(PEGDMA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ベータ-アミノエステル)(PBAE)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(フマル酸プロピレン)(PPF)、ポリ(無水セバシン酸)(PSA)、ポリ(炭酸トリメチレン)(PTMC)、ポリ(デスアミノチロシルチロシンアルキル炭酸エステル)(PDTE)、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]、ポリオキシメチレン、単層カーボンナノチューブ、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)(PVP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMA)、ポリアセタール、ポリ(アルファエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリホスホエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリセロール、ポリグルクロン酸、それらの誘導体、および/またはそれらの組み合わせを含む。
【0080】
ある態様において、生体材料は、架橋されていない生体材料であるか、またはこれを含む。ある態様において、生体材料は、架橋された生体材料であるか、またはこれを含む。例えば、いくつかの態様において、かかる架橋された生体材料は、ハイドロゲルであるか、またはこれを含む。ハイドロゲルは、当該分野において公知の任意の方法を用いて、架橋することができる。当業者は、いくつかの場合において、ハイドロゲルは、例えば化学的架橋方法(例えば、天然のソースに由来するものであっても合成されたものであってもよい小分子架橋剤を用いることにより)、多価電解質架橋(例えば、あるポリマーを、反対の電荷を含む第2のポリマーと混合すること)、熱誘導架橋、光誘導架橋(例えば、ビニルスルホン、メタクリレート、アクリル酸を用いて)、pH誘導架橋、および/または酵素触媒架橋を用いて架橋することができることを理解するであろう。いくつかの態様において、ハイドロゲルを形成することにおいて、Parhi, Adv Pharm Bull., Review 7(4): 515-530(2017)において記載される1つ以上の架橋方法を用いることができる。いくつかの態様において、ハイドロゲルは、チオール(例えば、EXTRACEL(登録商標)、HYSTEM(登録商標))、メタクリレート、ヘキサデシルアミド(例えば、HYMOVIS(登録商標))、および/またはチラミン(例えば、CORGEL(登録商標))を結合させることにより、架橋することができる。いくつかの態様において、ハイドロゲルは、ホルムアルデヒド(例えば、HYLAN-A(登録商標))、ジビニルスルホン(DVS)(例えば、HYLAN-B(登録商標))、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)(例えば、RESTYLANE(登録商標))、グルタルアルデヒド、および/またはゲニピンで直接架橋することができる(例えば、Khunmaneeら、「Crosslinking method of hyaluronic-based hydrogel for biomedical applications」J Tissue Eng. 8: 1-16(2017)を参照)。いくつかの態様において、ハイドロゲルは、ジビニルスルホン(DVS)(例えば、HYLAN-B(登録商標))により架橋される。
【0081】
いくつかの態様において、ハイドロゲル生体材料は、少なくとも500Pa、少なくとも1000Pa、少なくとも1500Pa、少なくとも2000Pa、少なくとも2500Pa、少なくとも3000Pa、少なくとも4000Pa、少なくとも5000Pa、少なくとも10kPa、少なくとも15kPa、少なくとも20kPa、少なくとも25kPa、少なくとも30kPa、少なくとも35kPa、少なくとも40kPa、またはそれより高い貯蔵弾性率により、特徴付けられる。いくつかの態様において、ハイドロゲル生体材料は、50kPa以下、40kPa以下、30kPa以下、20kPa以下、10kPa以下、5000Pa以下、4000Pa以下、3000Pa以下、2000Pa以下、またはそれより低い貯蔵弾性率により、特徴付けられる。上述の範囲の組み合わせもまた可能である。例えば、いくつかの態様において、ハイドロゲル生体材料は、500Pa~50kPa、または1000Pa~50kPa、または1000Pa~20kPa、または1000Pa~10kPa、または500Pa~5000Pa、または500Pa~3000Paの貯蔵弾性率により、特徴付けられる。いくつかの態様において、ハイドロゲル生体材料の貯蔵弾性率は、それが水溶液(例えば水)で完全に飽和した場合に、決定することができる。
【0082】
いくつかの態様において、生体材料(例えば、ハイドロゲル生体材料)は、少なくとも5mPa/s、少なくとも10mPa/s、少なくとも20mPa/s、少なくとも30mPa/s、少なくとも40mPa/s、少なくとも50mPa/s、またはそれより高い粘度(例えば、10℃で、1000s-1の剪断速度により測定される)により、特徴付けられる。いくつかの態様において、ハイドロゲル生体材料は、50mPa/s以下、45mPa/s以下、40mPa/s以下、35mPa/s以下、30mPa/s以下、25mPa/s以下、20mPa/s、15mPa/s以下、10mPa/s以下、またはそれより低い粘度(例えば、10℃で、1000s-1の剪断速度により測定される)により特徴付けられる。上述の範囲の組み合わせもまた可能である。例えば、いくつかの態様において、ハイドロゲル生体材料は、5~50mPa/s、または10~40mPa/s、または20~30mPa/sの粘度(例えば、10℃で、1000s-1の剪断速度により測定される)により、特徴付けられる。いくつかの態様において、ハイドロゲル生体材料の粘度は、レオメーターを用いて測定することができる。
【0083】
ある態様において、生体材料(例えば、ハイドロゲル生体材料)は、ヒアルロン酸、アルギネート、キトサン、硫酸コンドロイチン、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、セルロース、多糖、フィブリン、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGジアクリレート(PEGDA)、ジスルフィド含有PEGDA(PEGSSDA)、PEGジメタクリレート(PEGDMA)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)、ポリ(ベータ-アミノエステル)(PBAE)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリアセタール、ポリグリセロール、ポリグルクロン酸、またはそれらの組み合わせであるか、またはこれを含む。ある態様において、生体材料がハイドロゲルである場合、組成物またはデバイスの治療剤は、親水性分子である。ある態様において、生体材料がハイドロゲルである場合、組成物またはデバイスの治療剤は、疎水性分子である。ある態様において、生体材料がハイドロゲルである場合、組成物またはデバイスの治療剤は、疎水性または親水性分子である。ある態様において、生体材料がハイドロゲルである場合、組成物またはデバイスの治療剤は、疎水性および親水性分子である。
【0084】
ある態様において、生体材料は、ヒアルロン酸またはアルギネートである。ある態様において、生体材料は、架橋されたヒアルロン酸または架橋されたアルギネートである。ある態様において、生体材料は、ヒアルロン酸またはアルギネートを含む。ある態様において、生体材料は、架橋されたヒアルロン酸または架橋されたアルギネートを含む。ある態様において、ハイドロゲルは、ヒアルロン酸またはアルギネートである。ある態様において、ハイドロゲルは、架橋されたヒアルロン酸または架橋されたアルギネートである。ある態様において、ハイドロゲルは、ヒアルロン酸またはアルギネートを含む。ある態様において、ハイドロゲルは、架橋されたヒアルロン酸または架橋されたアルギネートを含む。
【0085】
ある態様において、生体材料は、ヒアルロン酸を含む。ある態様において、生体材料は、架橋されたヒアルロン酸を含む。ある態様において、生体材料は、ヒアルロン酸である。ある態様において、生体材料は、架橋されたヒアルロン酸である。ある態様において、ハイドロゲルは、ヒアルロン酸を含む。ある態様において、ハイドロゲルは、架橋されたヒアルロン酸を含む。ある態様において、ハイドロゲルは、ヒアルロン酸である。ある態様において、ハイドロゲルは、架橋されたヒアルロン酸である。
【0086】
ヒアルロン酸、別名ヒアルロナンは、結合組織、上皮組織および神経組織全体にわたり広く分布する、アニオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンである。それは、硫酸化されていない点、ゴルジの代わりに細胞膜中で形成する点、および非常に大きくなり得、その分子量はしばしば100万に届く点において、グリコサミノグリカンの中でもユニークである。
【0087】
細胞外マトリックスの主要な構成成分の一つであるヒアルロン酸は、細胞の増殖および遊走に著しく寄与することから、がんの転移において重要な役割を果たす。一部のがんにおいて、ヒアルロン酸のレベルは、悪性度および予後不良と相関する。ヒアルロン酸は、しばしば、特定のがん(例えば、前立腺癌および乳癌)についての腫瘍のマーカーとして用いられ、また、個体における疾患の進行をモニタリングするために用いることができる。したがって、開示される薬物送達組成物およびデバイスにおける生体材料としてのヒアルロン酸の使用は、予想外に有用かつ有効ながん治療を提供する。
【0088】
ある態様において、ヒアルロン酸は、チオール(例えば、EXTRACEL(登録商標)、HYSTEM(登録商標))、メタクリレート、ヘキサデシルアミド(例えば、HYMOVIS(登録商標))、およびチラミン(例えば、CORGEL(登録商標))を結合させることにより、架橋することができる。ヒアルロン酸はまた、ホルムアルデヒド(例えば、HYLAN-A(登録商標))、ジビニルスルホン(DVS)(例えば、HYLAN-B(登録商標))、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)(例えば、RESTYLANE(登録商標))、グルタルアルデヒド、またはゲニピンにより、直接的に架橋することができる(例えば、Khunmaneeら、「Crosslinking method of hyaluronic-based hydrogel for biomedical applications」J Tissue Eng. 8: 1-16 (2017)を参照)。いくつかの態様において、ヒアルロン酸は、ジビニルスルホン(DVS)(例えば、HYLAN-B(登録商標))により架橋される。
【0089】
ある態様において、ヒアルロン酸は、チオール修飾されたヒアルロン酸および架橋剤を含む。ある態様において、ハイドロゲルは、チオール修飾されたヒアルロン酸(例えば、GLYCOSIL(登録商標))、およびチオール反応性のPEGDA架橋剤(例えば、EXTRALINK(登録商標))を含む。ある態様において、チオール修飾されたヒアルロン酸とチオール反応性のPEGDA架橋剤とは、組み合わされて、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスにおいて有用な、架橋されたハイドロゲルを形成する。
【0090】
ある態様において、チオール修飾されたヒアルロン酸、チオール反応性のヒアルロン酸、および架橋剤の量および濃度は、所望される物理学的特性(約500Pa~約3000Paの貯蔵弾性率を有することなど)を有する薬物送達組成物およびデバイスを提供するために、調整することができる。
【0091】
ある態様において、生体材料は、アルギネートを含む。ある態様において、生体材料は、架橋されたアルギネートを含む。ある態様において、生体材料は、アルギネートである。ある態様において、生体材料は、架橋されたアルギネートである。ある態様において、ハイドロゲルは、アルギネートを含む。ある態様において、ハイドロゲルは、架橋されたアルギネートを含む。ある態様において、ハイドロゲルは、アルギネートである。ある態様において、ハイドロゲルは、架橋されたアルギネートである。ある態様において、生体材料は、アルギネートを含まない。ある態様において、生体材料は、アルギネートではない。ある態様において、ハイドロゲルは、アルギネートではない。ある態様において、ハイドロゲルは、アルギネートを含まない。
【0092】
ある態様において、アルギネートは、架橋を促進する塩(例えば塩化カルシウム)を添加することによりイオン的に架橋することができる。
【0093】
ある態様において、アルギネートは、アルギネートおよび架橋剤(例えば塩化カルシウム)を含む。ある態様において、ハイドロゲルは、アルギネートおよび架橋剤(例えば塩化カルシウム)を含む。ある態様において、アルギネートおよび塩化カルシウム(例えばイオン性架橋剤)は、組み合わされて、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスにおいて有用な、架橋されたハイドロゲルを形成する。
【0094】
ある態様において、アルギネートおよび塩化カルシウムの量および濃度は、所望される物理学的特性(約500Pa~約3000Paの貯蔵弾性率を有することなど)を有する薬物送達組成物およびデバイスを提供するために、調整することができる。
【0095】
ある態様において、生体材料は、疎水性ポリマーである。ある態様において、疎水性ポリマーは、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(フマル酸プロピレン)(PPF)、ポリ(無水セバシン酸)(PSA)、ポリ(炭酸トリメチレン)(PTMC)、ポリ(デスアミノチロシルチロシンアルキル炭酸エステル)(PDTE)、ポリ[ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン]、ポリオキシメチレン、単層カーボンナノチューブ、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)(PVP)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMA)、ポリ(アルファエステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリホスホエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、またはポリヒドロキシアルカノエートである。疎水性ポリマーの生体材料としての使用は、組成物またはデバイス中の治療剤が親水性である場合、特に有用であり得る。疎水性治療剤は、治療効果を付与することにより貢献する放出タイムスケール(例えば数時間)ではなく、より長い期間(例えば数日間/数週間)にわたり放出されることが期待されるであろう。したがって、ある態様において、生体材料が疎水性ポリマーである場合、組成物またはデバイスの治療剤は、親水性分子である。
【0096】
ある態様において、生体材料は、架橋されたバイオ製剤を含む。ある態様において、バイオ製剤は、自己犠牲性(self-immolating)架橋剤であるジチオ-ビス(エチル1H-イミダゾール-1-カルボキシレート)(DIC)により架橋される。ある態様において、結果として生じるハイドロゲルは、小分子がロードされている。
【0097】
炎症誘発経路の阻害剤
薬物送達組成物およびデバイスは、炎症誘発経路の阻害剤を含んでもよい。薬物送達組成物およびデバイスは、1つより多くの炎症誘発経路の阻害剤を含んでもよい。いくつかの態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、免疫抑制性の細胞の動員を予防し得る。いくつかの態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、急性の炎症を予防し得る。いくつかの態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、例えば、例えば1つ以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF-アルファ、IL-1β、および/またはIL-6)の産生、Th1細胞の活性の増大および/または増殖、骨髄系細胞の動員などを含む、炎症を誘導する免疫応答を阻害し得る。例えば、いくつかの態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、IL-1βの阻害剤であってよい。いくつかの態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、IL-6の阻害剤であってよい。
【0098】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、本明細書において記載されるようなp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤である。
【0099】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、免疫抑制性の細胞の動員を予防する。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CCR2、CCR5、CXCR2、CXCR4、CXCL12またはCCL2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CCR5、CXCR2、CXCL12またはCCL2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。
【0100】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CCR2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。ある態様において、CCR2は、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Montague et al., J. Inflammation 2018, 15:101;およびXu et al., Am. J. Transl. Res. 2017, 9, 2878-2890において記載されるとおり)。ある態様において、CCR2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストは、PF-04136309、CCX872-Bまたはプロザリズマブ(plozalizumab)である。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、PF-04136309、CCX872-Bまたはプロザリズマブである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CCR2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストではない。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、PF-04136309ではない。
【0101】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CCR5の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。ある態様において、CCR5は、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Lei, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2005, 329, 610-615;およびManes, et al., J. Exp. Med. 2003, 198, 1381-1389において記載されるとおり)。ある態様において、CCR5の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストは、マラビロク、DAPTA、GSK706769、INCB009471、GW873140、ビクリビロクまたはPRO 140である。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、マラビロク、DAPTA、GSK706769、INCB009471、GW873140、ビクリビロクまたはPRO 140である。
【0102】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CCR2およびCCR5の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。ある態様において、CCR2およびCCR5の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストは、PF-04634817、セニクリビロク、またはBMS-813160である。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、PF-04634817、セニクリビロク、またはBMS-813160である。
【0103】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CXCR2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。ある態様において、CXCR2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストは、ダニリキシン、QBM076、SX-682またはSB225002である。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、ダニリキシン、QBM076、SX-682またはSB225002である。
【0104】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CXCR4の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。ある態様において、CXCR4は、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Lei, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2005, 329, 610-615;およびTrushin, et al., J. Immunol. 2007, 178, 4846-4853において記載されるとおり)。ある態様において、CXCR4の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストは、プレリキサホル、AMD070、AMD3465、AMD11070、LY2510924、MSX-122、TG-0054、CX-01、X4P-001、BL-8040、USL311またはSP01Aである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、プレリキサホル、AMD070、AMD3465、AMD11070、LY2510924、MSX-122、TG-0054、CX-01、X4P-001、BL-8040、USL311またはSP01Aである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CXCR4の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストではない。
【0105】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CXCL12の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。ある態様において、CXCL12は、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Gao, et al., Int. J. Clin. Exp. Pathol. 2018, 11, 3119-3125において記載されるとおり)。
【0106】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CCL2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストである。ある態様において、CCL2は、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Cho, et al., J. Neuroimmunol. 2008, 199, 94-103;およびMarra, et al., Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 2004, 287, G18-26において記載されるとおり)。ある態様において、CCL2の阻害剤、アンタゴニストまたは部分アゴニストは、ビンダリット(bindarit)である。
【0107】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、PF-04136309、CCX872-B、プロザリズマブ、マラビロク、DAPTA、GSK706769、INCB009471、GW873140、ビクリビロク、PRO 140、PF-04634817、セニクリビロク、BMS-813160、ダニリキシン、QBM076、SX-682、SB225002、プレリキサホル、AMD070、AMD3465、AMD11070、LY2510924、MSX-122、TG-0054、CX-01、X4P-001、BL-8040、USL311またはSP01Aである。
【0108】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、CCX872-B、プロザリズマブ、マラビロク、DAPTA、GSK706769、INCB009471、GW873140、ビクリビロク、PRO 140、PF-04634817、セニクリビロク、BMS-813160、ダニリキシン、QBM076、SX-682、SB225002、プレリキサホル、AMD070、AMD3465、AMD11070、LY2510924、MSX-122、TG-0054、CX-01、X4P-001、BL-8040、USL311またはSP01Aである。
【0109】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は急性の炎症を予防する。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は抗IL-1α抗体、抗IL-1β抗体、抗IL-1R抗体、IL-1阻害剤、抗IL-6抗体、抗IL-6R抗体、抗IL17抗体、抗IL-17A抗体、抗IL-17RA抗体、抗IL-23/IL-12抗体、または抗IL-23抗体である。
【0110】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-1α抗体である。ある態様において、抗IL-1α抗体は、MABp1である。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、MABp1である。
【0111】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-1β抗体である。ある態様において、IL-1βは、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Kulawik, et al., J. Biol. Chem. 2017, 292, 6291-6302;Rovin, et al., Cytokine 1999, 11, 118-126;Laporte, et al., Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 2000, 279, L932-L941;Baldassare, et al., J. Immunol. 1999, 162, 5367-5373;およびWeber, et al. Sci. Signal. 2010, 3, cm1において記載されるとおり)。ある態様において、抗IL-1β抗体は、カナキヌマブである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、カナキヌマブである。
【0112】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-1R抗体である。ある態様において、IL-1Rは、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Weber, et al., Sci. Signal. 2010, 3, cm1;およびJain, et al., Nat. Commun. 2018, 9:3185に記載のとおり)。ある態様において、抗IL-1R抗体は、アナキンラである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、アナキンラである。
【0113】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、IL-1阻害剤である。ある態様において、IL-1阻害剤は、リロナセプトである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、リロナセプトである。
【0114】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-6抗体である。ある態様において、IL-6は、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Sinfield, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2013, 430, 419-424;Suzuki, et al., FEBS Lett. 2000, 465, 23-27;およびNishikai-Yan Shen, et al., PLoS One 2017, 12, 1-17において記載されるとおり)。ある態様において、抗IL-6抗体は、オロキズマブ、クラザキズマブ、OPR-003、シルクマブ、ARGX-109、FE301またはFM101である。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、オロキズマブ、クラザキズマブ、OPR-003、シルクマブ、ARGX-109、FE301またはFM101である。
【0115】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-6R抗体である。ある態様において、抗IL-6R抗体は、トシリズマブ、サリルマブまたはボバリリズマブである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、トシリズマブ、サリルマブまたはボバリリズマブである。
【0116】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-17抗体である。ある態様において、IL-17は、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Noubade, et al., Blood 2011, 118, 3290-3300;Roussel, et al., J. Immunol. 2010, 184, 4531-4537;およびMai, et al., J. Biol. Chem. 2016, 291, 4939-4954において記載されるとおり)。ある態様において、抗IL-17抗体は、イキセキズマブ、ビメキズマブ(bimekizumab)、ALX-0761、CJM112、CNTO 6785、LY3074828、SCH-900117またはMSB0010841である。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、イキセキズマブ、ビメキズマブ、ALX-0761、CJM112、CNTO 6785、LY3074828、SCH-900117またはMSB0010841である。
【0117】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-17A抗体である。ある態様において、抗IL17A抗体は、セクキヌマブである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、セクキヌマブである。
【0118】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-17RA抗体である。ある態様において、抗IL17RA抗体は、ブロダルマブである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、ブロダルマブである。
【0119】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-23/IL-12抗体である。ある態様において、抗IL-23/IL-12抗体は、ウステキヌマブまたはブリアキヌマブである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、ウステキヌマブまたはブリアキヌマブである。
【0120】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、抗IL-23抗体である。ある態様において、IL-23は、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Tang, et al., Immunology 2012, 135, 112-124;およびCanavese, et al., J. Clin. Exp. Dermatol. Res. 2011, S2:002. doi:10.4172/2155-9554において記載されるとおり)。ある態様において、抗IL-23抗体は、チルドラキズマブ、BI 655066またはグセルクマブである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、チルドラキズマブ、BI 655066またはグセルクマブである。
【0121】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、MABp1、カナキヌマブ、アナキンラ、リロナセプト、オロキズマブ、クラザキズマブ、OPR-003、シルクマブ、ARGX-109、FE301、FM101、トシリズマブ、サリルマブ、ボバリリズマブ、イキセキズマブ、ビメキズマブ、ALX-0761、CJM112、CNTO 6785、LY3074828、SCH-900117、MSB0010841、セクキヌマブ、ブロダルマブ、ウステキヌマブブリアキヌマブ、チルドラキズマブ、BI 655066またはグセルクマブである。
【0122】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、TGFβR阻害剤である。ある態様において、TGFβRは、p38 MAPK経路に関連する(例えば、Yu et al., EMBO J. 2002, 21, 3749-3759;Sato, et al., J. Invest. Dermatol. 2002, 118, 704-711;およびHanafusa, et al., J. Biol. Chem. 1999, 274, 27161-27167において記載されるとおり)。ある態様において、TGFβR阻害剤は、ガルニセルチブである。ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、ガルニセルチブである。
【0123】
ある態様において、炎症誘発経路の阻害剤は、炎症収束性メディエーター(specialized pro-resolving mediator:SPM)であるか、またはこれを含む。SPMは、長鎖脂肪酸由来の脂質メディエーターであって、過剰な炎症を予防し、および/または急性の炎症性応答を収束させる協調的な収束プログラムに関与する。かかるSPMの例として、例えば、アラキドン酸(AA)由来のリポキシンおよびドコサヘキサエン酸(DHA)由来のレゾルビンが挙げられる。収束は、宿主の防御を損なうことなく、特異的な細胞表面受容体を通して、炎症をやわらげ、エフェロサイトーシスを増強し、および組織損傷を修復するシグナルを伝達する分子の産生を含む能動的なプロセスである。例えば、Caiら、「MerTK cleavage limits proresolving mediator biosynthesis and exacerbates tissue inflammation」PNAS, 113: 6526-6531 (2016);およびSerhanら、「Novel anti-inflammatory - Pro-resolving mediators and their receptorss」Curr Top Med Chem 11: 629-647 (2011)を参照。シクロオキシゲナーゼ酵素(例えばCOX-2)は、特定のSPMの産生に関与し得る。
【0124】
いくつかの態様において、炎症誘発経路の阻害剤として有用であり得るSPMは、レゾルビンであるか、またはこれを含む。レゾルビンは、マクロファージ食作用を介して腫瘍細胞デブリのクリアランスを増強し、例えばTNFα、IL-6、IL-8、CCL4および/またはCCL5を含むサイトカイン/ケモカインの放出を対抗制御(counterregulate)することが示された。例えば、Sulcinerら、「Resolvins suppress tumor growh and enhance cancer therapy」J Exp Med 215: 115-140(2018)を参照。レゾルビン(Rv)は、いくつかのクラスに分けられる:ドコサヘキサエン酸(DHA)から誘導されるレゾルビンDs(RvDs);エイコサペンタエン酸(EPA)から誘導されるレゾルビンEs(RvEs);DPA異性体、オスボン酸(osbonic acid)から誘導されるレゾルビンDn-6DPA(RvDn-6DPA);DPA異性体、クルパノドン酸から誘導されるレゾルビンDn-3DPA(RvDn-3DPA);クルパノドン酸から誘導されるレゾルビンTs(RvTs)(RvDn-3DPA(17S-ヒドロキシル残基を有する)とは対照的に、17R-ヒドロキシル残基を有する)。当業者は、いくつかの場合において、レゾルビンは、RvD1、RvD2、RvD3、RvD4、RvD5、RvD6、17R-RvD1、17R-RvD2、17R-RvD3、17R-RvD4、17R-RvD5、17R-RvD6、RvE1、18S-RvE1、RvE2、RvE3、RvT1、RvT2、RvT3、RvT4、RvD1n-3、RvD2n-3、RvD5n-3、またはそれらの組み合わせであるか、またはこれを含むことを理解するであろう。
【0125】
いくつかの態様において、炎症誘発経路の阻害剤として有用であり得るSPMは、リポキシン(例えば、LxA4、LxB4、15-epi-LxA4、および/または15-epi-LxB4を含む)、プロテクチン/ニューロプロテクチン(例えば、DHA由来のプロテクチン/ニューロプロテクチンおよび/またはn-3 DPA由来のプロテクチン/ニューロプロテクチン)、マレシン(例えば、DHA由来のマレシンおよび/またはn-3 DPA由来のマレシン)、ならびに他のDPA代謝物であるか、またはこれを含む。
【0126】
P38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤
本開示は、とりわけ、標的部位(例えば、腫瘍切除部位)においてp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答を阻害すること(例えば、p38 MAPK媒介性炎症誘発経路またはその構成成分を調節する(例えば阻害する)p38 MAPK阻害剤の投与により;例えば、
図4~6を参照)により、がんの再発のリスクを低下させ、それにより生存を延長することができることを認識する。MAPKを標的とする治療(例えば、BRAF/MEK/ERKモジュールの阻害)は、抗PD-1免疫チェックポイント遮断治療に対する耐性と関連する転写シグネチャーを誘導し、これが、次いで、抗PD-1/L1がん治療に対する応答性に負の影響を及ぼし得ることが報告されたことから(例えば、Hugo et al., Cell 2016, 165, 35-44を参照)、MAPKの阻害により抗腫瘍免疫を促進することができることは、予想外であった。
【0127】
したがって、いくつかの態様において、本明細書において提供されるのは、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤を含む薬物送達組成物およびデバイスである。いくつかの態様において、本明細書において提供される薬物送達組成物およびデバイスは、1つより多くのp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤を含んでもよい。
【0128】
MAPKのp38ファミリーは、p38α、p38β、p38γおよびp38δアイソフォームを含む。p38 MAPKは、多数の免疫受容体により活性化され、それにより、p38の上流または下流のいずれかで機能するシグナル伝達モジュールまたは制御性の標的の阻害により、それが媒介する分子経路および炎症誘発性免疫応答を阻害する、効果的かつ選択的な方法を提供し得る。
【0129】
例えば、p38 MAPKは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ3(MAP2K3)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ6(MAP2K6)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ1(MAP3K1)、および/またはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ4(MAP3K4)により活性化され得る。したがって、p38 MAPKの上流の標的を阻害することは、p38 MAPK経路の阻害において有効であり得る。
【0130】
p38 MAPKの下流の標的の阻害はまた、p38 MAPK経路を阻害する有効な手段であり得る。p38 MAPKの下流、例えば、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ相互作用タンパク質キナーゼ(mitogen-activated protein kinase interacting protein kinase)1および2(MNK1およびMNK2)は、p38 MAPK経路により活性化される。MNKキナーゼは、mRNAの翻訳を制御することにおいて重要な役割を果たし、結果として、癌化の進行、薬物耐性、炎症誘発性サイトカインの産生およびサイトカインシグナル伝達の重要なメディエーターである。マイトジェン・ストレス活性化キナーゼ(mitogen- and stress-activated kinase)1および2(MSK1およびMSK2)もまた、p38 MAPKの下流の標的であり、炎症性応答に影響を及ぼす。MAPキナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2、3および5(MK2、MK3、MK5)は、p38 MAPKにより活性化され、細胞ストレスおよび炎症性応答に関与する。
【0131】
前述のことを考慮すると、p38 MAPK経路の阻害により、がんの処置のための治療戦略を提供することができる。特に、局所炎症性創傷応答および全身性炎症プロセスは、一緒に、休止状態の微小転移を活性化するか、または残留癌細胞の増殖を誘導し、それによりがんの再発のリスクを増大し得る。したがって、腫瘍切除部位においてp38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答を阻害することにより、がんの再発のリスクを軽減し、対象の生存を延長することができる。
【0132】
ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、p38 MAPキナーゼ阻害剤である。ある態様において、p38 MAPキナーゼ阻害剤は、p38α、p38β、p38γ、および/またはp38δMAPキナーゼの阻害剤である。ある態様において、p38 MAPキナーゼ阻害剤は、セマピモド、ぺクスメチニブ(pexmetinib)、BMS-582949、ロスマピモド、パマピモド(pamapimod)、ラリメチニブ、ドラマピモド、VX-702、VX-745、TAK-715、SB239063、SB202190、SB203580、SCIO 469、PH-797804、AZD7624、ARRY-797、ARRY-614、AVE-9940、LY3007113、スケピノン-L、UM-164、SCIO 323、SX-011、SK-F860002、SB706504、SB681323、CHF-6297、RWJ-67657、Org48762-0、ML3403、JX-401、EO-1428、DBM 1285、AMG-548、AL-8697、PD-169316、PF-03715455、PH-797804、セロンセルチブ、ソラフェニブまたはジルマピモド(dilmapimod)である。ある態様において、p38 MAPキナーゼ阻害剤は、キナゾリノン、ピリミド-ピリミドン、ピリド-ピリミドン、ピラゾール、キノリノンおよび/またはナフチリジノンコア構造を含む。ある態様において、p38 MAPキナーゼ阻害剤は、ロスマピモドである。
【0133】
ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、p38α、p38β、p38γ、および/またはp38δMAPキナーゼの阻害剤である。ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、セマピモド、ペクスメチニブ、BMS-582949、ロスマピモド、パマピモド、ラリメチニブ、ドラマピモド、VX-702、VX-745、TAK-715、SB239063、SB202190、SB203580、SCIO 469、PH-797804、AZD7624、ARRY-797、ARRY-614、AVE-9940、LY3007113、スケピノン-L、UM-164、SCIO 323、SX-011、SK-F860002、SB706504、SB681323、CHF-6297、RWJ-67657、Org48762-0、ML3403、JX-401、EO-1428、DBM 1285、AMG-548、AL-8697、PD-169316、PF-03715455、PH-797804、セロンセルチブ、ソラフェニブまたはジルマピモドである。ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、キナゾリノン、ピリミド-ピリミドン、ピリド-ピリミドン、ピラゾール、キノリノンおよび/またはナフチリジノンコア構造を含む。ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、ロスマピモドである。
【0134】
ある態様において、p38 MAPキナーゼ阻害剤は、少なくとも1つのp38 MAPキナーゼ、例えば、p38α、p38β、p38γおよび/またはp38δMAPキナーゼのATP結合部位に結合する。ある態様において、p38 MAPキナーゼ阻害剤は、少なくとも1つのp38 MAPキナーゼ、例えば、p38α、p38β、p38γおよび/またはp38δMAPキナーゼのアロステリック阻害剤である。
【0135】
ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、p38 MAPKの上流のエフェクターの阻害剤である。ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、RIPK1、RIPK2、RIPK3、RIPK4、RAC1、CDC42、MTK1、TAK1、MEKK1、MEKK2、MEKK3、MEKK4、DLK、MLK2、TAO1、TAO2、TLP2、TPL2、ASK1、MKK3、MKK4および/またはMKK6の阻害剤である。ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、p38 MAPKの下流のエフェクターの阻害剤である。ある態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、MK2、MK3、MNK1、MNK2、MSK1、MSK2、MSK3、RSK、PP2Aおよび/またはcPLA2の阻害剤である。
【0136】
いくつかの態様において、当業者は、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤(例えばp38 MAPK阻害剤)は、シクロオキシゲナーゼ(COX)-1および/またはCOX-2の活性および/または発現を調節する(例えば阻害する)ことができることを、理解するであろう。例えば、Matsuiら、「Release of prostaglandin E2 and nitric oxide from spinal microglia is dependent on activation of p38 mitogen-activated protein kinase」Anesthesia & Analgesia, 111(2): 554-560 (2010)を参照。
【0137】
いくつかの態様において、当業者は、特定のCOX阻害剤(例えば、COX-1および/またはCOX-2阻害剤)および/または他の抗炎症剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および/または抗炎症性鎮痛薬)は、p38 MAPK経路またはその構成成分の修飾因子(例えば阻害剤)として作用することができることを、理解するであろう(例えば、Espositoら、「Non-steroidal anti-inflammatory drugs in Parkinson’s disease」Experimental Neurology 205: 295-312 (2007);Desaiら、「Mechanisms of Phytonutrient Modulation of Cyclooxygenase-2 (COX-2) and Inflammation Related to Cancer」Nutrition and Cancer, 70: 350-375 (2018);Huangら、「MAPK/ERK signal pathway involved expression of COX-2 and VEGF by IL-1beta induced in human endometriosis stomal cells in vitro」Int J Clin Exp Pathol, 6: 2129-2136 (2013);およびDi Mariら、「HETEs enhance IL-1-mediated COX-2 expression via augmentation of message stability in human colonic myofibroblasts」Am J Physiol-Gastrointest Liver Physiol., 293: 2092-2101 (2007)において記載されるものを参照)。したがって、いくつかの態様において、COX-2阻害剤または他の抗炎症剤は、本明細書において記載されるようなp38 MAPK阻害剤であっても(および/またはこれとして用いられても)よい;あるいは、または加えて、いくつかの態様において、かかるCOX阻害剤または他の抗炎症剤は、本明細書において記載されるような別のp38 MAPK阻害剤と組み合わせて利用されてもよい。
【0138】
いくつかの態様において、COX阻害剤は、非選択的なCOX-1および/またはCOX-2阻害剤であってもよい。いくつかの態様において、COX阻害剤は、選択的なCOX-1および/またはCOX-2阻害剤であってもよい。
【0139】
いくつかの態様において、p38 MAPK経路阻害剤(すなわち、p38 MAPK経路またはその構成成分の阻害剤)として有用な特定のCOX阻害剤として、これに限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。いくつかの態様において、NSAIDは、例えば、典型的には炎症に関与するプロスタグランジンの産生に関与するシクロオキシゲナーゼ(COX-1および/またはCOX-2)酵素の活性を阻害することにより、炎症を軽減することができる。
【0140】
いくつかの態様において、p38 MAPK経路阻害剤としての使用のためのNSAIDは、典型的には選択的COX-2阻害剤として知られるセレコキシブであるか、またはこれを含む。例えば、Chenら、「Celexocib inhibits the lytic activation of Kaposi’s sarcoma-associated herpesvirus through down-regulation of RTA expression by inhibiting the activation of p38 MAPK」Viruses 7:2268-2287 (2015);およびFanら、「Celecoxib attenuates systemic lipopolysaccharide-induced brain inflammation and white matter injury in the neonatal rats」Neuroscience 240: 27-38 (2013)を参照。
【0141】
いくつかの態様において、p38 MAPK経路阻害剤としての使用のためのNSAIDは、ケトロラクであるか、またはこれを含む。ケトロラクは、例えばCOX酵素の競合的遮断により、プロスタグランジン合成を阻害することが知られている。いくつかの態様において、ケトロラクは、IL-6の発現を低下させることができる。例えば、Singhら、「A prospective study to assess the levels of interleukin-6 following administration of diclofenac, ketorolac and tramadol after surgical removal of lower third molars」J. Maxillofac Oral Surg. 14: 219-225 (2015)を参照。当業者はまた、ケトロラクが、既知の抗炎症特性を有する非選択的COX阻害剤として作用し得ることを理解するあろう。しかし、特定の理論により拘束されることは望まないが、いくつかの態様においては、ケトロラクは、COX-2よりもCOX-1を阻害することについて、より高い選択性を有すると考えられ得る(See HershおよびDionne、「Nonopioid analgesics」(Pharmacology and Therapeutics for Dentisty(第7版)、Dowdら、Elsevier Inc. 2017中)を参照)。ケトロラクは、短期の疼痛管理のために従来から用いられており、したがって、典型的には、5日間よりも長期にわたっては処方されない。いくつかの態様において、本開示における使用のためのケトロラクは、腫瘍切除外科手術により誘導される免疫抑制性炎症が阻害されるかまたは軽減されるように、少なくとも5日間またはそれより長い、例えば少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、またはそれより長い期間にわたり、生体材料から放出される(例えば、本明細書において記載されるように)。ケトロラクは、ラセミ混合物として投与されても、または個々のエナンチオマー、例えばS-エナンチオマーとして投与されてもよい。
【0142】
本開示にしたがって有用であるNSAIDの他の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:(i)サリチレート(例えば、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、サリチル酸および他のサリチレート、および/またはサルサラート);(ii)プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、デキシブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、および/またはロキソプロフェン;(iii)酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、および/またはナブメトン);(iv)エノール酸(enolic acid)(オキシカム)誘導体(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、および/またはフェニルブタゾン);(v)アントラニル酸誘導体またはフェナム酸(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、および/またはトルフェナム酸);(vi)選択的COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、および/またはフィロコキシブ);(vii)スルホンアニリド(例えば、ニメスリド);(viii)その他(例えば、クロニキシン、リコフェロン[例えば、リポキシゲナーゼ(LOX)およびCOXを阻害することにより作用する]、および/またはH-ハルパジド(harpagide))、およびそれらの組み合わせ。
【0143】
当業者により理解されるであろうとおり、いくつかの態様において、例えば
図5において示され、Bikkavilliら、「p38 mitogen-activated protein kinase regulates canonical Wnt-β-catenin signaling by inactivation of GSK3β」Journal of Cell Science, 121: 3598-3607 (2008)において記載されるとおり、p38 MAPK阻害剤は、Wnt-β-カテニン経路またはその構成成分を調節する(例えば阻害する)ことができる。したがって、いくつかの態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、Wnt阻害剤であっても、またはこれを含んでもよい。いくつかの態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、GSK3β阻害剤であっても、またはこれを含んでもよい。いくつかの態様において、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤は、β-カテニン阻害剤であっても、またはこれを含んでもよい。
【0144】
当業者はまた、特定のWnt/β-カテニン経路阻害剤が、p38 MAPK経路またはその構成成分の修飾因子(例えば阻害剤)として作用し得ることを理解するであろう(例えば、Andreら、「Wnt5a and Wnt11 regulate mammalian anterior-posterior axis elongation」Development 142: 1516-1527 (2015);およびMaら、「Crosstalk between Wnt/β-catenin and NF-κB signaling pathway during inflammation」Front Immunol. 7: 378 (2016)において記載されるものを参照)。したがって、いくつかの態様において、Wnt/β-カテニン経路阻害剤は、本明細書において記載されるようなp38 MAPK阻害剤であっても(および/またはこれとして用いられても)よい;あるいは、または加えて、いくつかの態様において、かかるWnt/β-カテニン経路阻害剤は、本明細書において記載されるような別のp38 MAPK阻害剤と組み合わせて利用されてもよい。
【0145】
自然免疫応答の活性化因子
薬物送達組成物およびデバイスは、自然免疫応答の活性化因子を含んでもよい。薬物送達組成物およびデバイスは、1つより多くの自然免疫応答の活性化因子を含んでもよい。自然免疫応答の主な機能は、特化した化学メディエーター(例えばサイトカイン)を含む化学因子の産生を通して免疫細胞を感染の部位に動員すること;;細菌を同定し、細胞を活性化し、および抗体複合体または死細胞のクリアランスを促進する、補体カスケードの活性化;特化した白血球による臓器、組織、血液およびリンパにおいて存在する外来物質の同定および除去;抗原提示として公知のプロセスを通した適応免疫系の活性化;ならびに感染性因子に対する物理的および化学的障壁として作用すること(例えば、上皮表面、胃腸管)を含む。典型的には、白血球(leukocyte)は、自然免疫系の作用を実行する白血球細胞(white blood cell)である。これらの細胞は、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球、マクロファージ、好中球および樹状細胞を含む。これらの細胞は、感染を引き起こし得る病原体を同定および除去することにより、免疫系内で機能する。
【0146】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、パターン認識受容体(PRR)のリガンドである。
【0147】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、パターン認識受容体(PRR)のアゴニストである。
【0148】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、I型インターフェロンの誘導因子である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、組み換えインターフェロンである。
【0149】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、NK細胞の活性化および/または増殖の有効な誘導因子である。ある態様において、「有効な誘導因子」とは、NK細胞の活性化および/または増殖を直接的に誘導する自然免疫応答の活性化因子を指す。
【0150】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、樹状細胞の活性化および/または成熟の有効な誘導因子である。ある態様において、「有効な誘導因子」とは、樹状細胞の活性化および/または成熟を直接的に誘導する自然免疫応答の活性化因子を指す。
【0151】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、樹状細胞によるI型インターフェロンの有効な誘導因子である。ある態様において、「有効な誘導因子」とは、樹状細胞によるI型インターフェロンを直接的に誘導する自然免疫応答の活性化因子を指す。
【0152】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、小分子またはバイオ製剤である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、小分子である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、バイオ製剤である。
【0153】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト、サイトゾルDNAセンサー(CDS)アゴニスト、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、C型レクチン受容体(CLR)アゴニスト、NOD様受容体(NLR)アゴニスト、RIG-I様受容体(RLR)アゴニスト、またはインフラマソーム誘導因子である。
【0154】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、またはNOD様受容体(NLR)アゴニストである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストまたはToll様受容体(TLR)アゴニストである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト、TLR7アゴニスト、またはTLR8アゴニストである。
【0155】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、3’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Rp)、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、2’2’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AMP(PS)2(Rp/Rp)、2’3’-c-ジ-AMP(PS)2(Rp/Sp)、c-ジ-GMP、c-ジ-IMP、HSV-60、ISD、VACV-70、ポリ(dA:dT)、ポリ(dG:dC)、加熱殺菌された細菌、リポグリカン、リポ多糖(LPS)、リポテイコ酸、ペプチドグリカン(PGN)、合成リポタンパク質、ポリ(A:U)、ポリ(I:C)、モノホスホリルリピドA(MPLA)、GSK1795091、g100、sd-101、mgn1703、cmp-001、フラゲリン(FLA)、ポリU、ポリ(dT)、ガーディキモド、イミキモド(R837)、塩基類似体、アデニン類似体、グアノシン類似体、プリン誘導体、ベノアゼピン類似体、イミダゾキノリン、チアゾキノリン、ロキソリビン、レシキモド(R848)、ダクトリシブ、スマニロール、N1-グリシニル[4-((6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-8-ヒドロキシ-9H-プリン-9-イル)メチル)ベンゾイル]スペルミン(CL307)、CL264、CL097、CL075、CL347、CL401、CL413、CL419、CL531、CL553、CL572、MEDI9197、MEDI5083、ヒポキサンチン、TL8-506、PF-4878691、イサトリビン、SM-324405、SM-324406、AZ12441970、AZ12443988、CpGオリゴヌクレオチド、細菌DNA、ベータグルカン、真菌および細菌の細胞壁からのベータグルカン、γ-D-Glu-mDAP(iE-DAP)、Ie-dap誘導体、ムラミルジペプチド(MDP)、MDP誘導体、5’三リン酸二本鎖RNA、ポリ(dA:dT)、ATP、キトサン、硫酸アルミニウムカリウム、無水ピロリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、MurNAc-L-Ala-γ-D-Glu-mDAP(M-TriDAP)、キサンテノン類似体(例えば、DMXAA;バジメザン)、TREX1阻害剤、環状ジヌクレオチド、LHC165、GSK-2245035、RG7854、GS-9620、GS-9688、EMD1201081、PF-3512676、BO-112、RGT-100、MK-1454、SB-11285、NKTR-262、CDX-301、2’3’-c-ジ-GMP、cAIMP、cAIM(PS)2(Rp/Sp)、それらの誘導体、またはその薬学的に受入可能な塩。
【0156】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、上の活性化因子のいずれかのフッ素化誘導体である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、二フッ化cAIMP(c-(2’FdAMP-2’FdIMP))である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、二フッ化cAIM(PS)2(Rp/Sp)である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、上の活性化因子のいずれかのO-メチル化誘導体である。
【0157】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、3’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-cGAM(PS)2(Rp,Sp)、2’2’-cGAMP、c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Sp)、c-ジ-GMP、2’3’-c-ジ-GMP、2’3’-c-ジ-GM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-c-ジ-GM(PS)2(Rp,Sp)、c-ジ-IMP、レシキモド、CpGオリゴヌクレオチド、ポリイノシン・ポリシチジン酸、LHC165、GSK-2245035、RG7854、GS-9620、GS-9688、EMD1201081、PF-3512676、BO-112、RGT-100、MK-1454、SB-11285、NKTR-262、CDX-301、2’3’-c-ジ-GMP、cAIMP、cAIM(PS)2(Rp/Sp)、またはその薬学的に受入可能な塩である。
【0158】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、3’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-cGAM(PS)2(Rp,Sp)、2’2’-cGAMP、c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Sp)、c-ジ-GMP、2’3’-c-ジ-GMP、2’3’-c-ジ-GM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-c-ジ-GM(PS)2(Rp,Sp)、c-ジ-IMP、2’3’-c-ジ-GMP、cAIMP、cAIM(PS)2(Rp/Sp)のフッ素化誘導体、またはその薬学的に受入可能な塩である。
【0159】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、3’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-cGAM(PS)2(Rp,Sp)、2’2’-cGAMP、c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Sp)、c-ジ-GMP、2’3’-c-ジ-GMP、2’3’-c-ジ-GM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-c-ジ-GM(PS)2(Rp,Sp)、c-ジ-IMPのO-メチル化誘導体、またはその薬学的に受入可能な塩である。
【0160】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2’3’-cGAMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)、MurNAc-L-Ala-γ-D-Glu-mDAP(M-TriDAP)、c-ジ-GMP、またはレシキモドである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2’3’-cGAMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)、MurNAc-L-Ala-γ-D-Glu-mDAP(M-TriDAP)、またはレシキモドである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2’3’-cGAMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)、またはレシキモドである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)またはレシキモドである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、cAIMPまたはそのフッ素化誘導体である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、二フッ化cAIMPである。
【0161】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2’3’-cGAMP、またはその薬学的に受入可能な塩である。特に、2’3’-cGAMP(環状[G(2’,5’)pA(3’,5’)p])は、内在セカンドメッセンジャーとして機能し、STING依存的なI型インターフェロン応答を誘導することが記載されている。2’3’-cGAMPはまた、マウスにおいて抗原特異的抗体の産生およびT細胞応答をブーストする有効なアジュバントであることが示されている。2’3’-cGAMPは、それが産生される細胞において抗ウイルス機能を果たすが、また、受動拡散により細胞膜を越えて、近傍の細胞に対して効果を発揮することができる。
【化1】
【0162】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)、またはその薬学的に受入可能な塩である。2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)は、3’3’-環状アデノシン一リン酸(c-ジ-AMP)の2’3’ビスホスホロチオエート類似体のRp,Rp-異性体である。それはまた、STINGアゴニストでもある。
【化2】
【0163】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、cAIMP、その二フッ化誘導体、その二フッ化ビスホスホロチオエート誘導体(cAIM(PS)2(Rp/Sp))、またはその薬学的に受入可能な塩である。cAIMPおよびその誘導体もまた、STINGアゴニストである。
【化3】
【0164】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、STINGアゴニストであり、ここで、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチドである。ある態様において、環状ジヌクレオチドは、2016年8月11日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 15/234,182において開示される任意の環状ジヌクレオチドであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、環状ジヌクレオチドは、2014年12月16日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 14/362,441において開示される任意の環状ジヌクレオチドであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0165】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、MK-1454である。
【0166】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、細胞質ゾルDNAセンサー(CDS)アゴニストである。ある態様において、CDSアゴニストは、環状GMP-AMPシンターゼ(cGAS)アゴニストである。
【0167】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2013年12月16日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 14/653,586において開示される任意のSTINGアゴニストまたはcGASアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2014年5月2日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 14/268,967において開示される任意のSTINGアゴニストまたはcGASアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2014年4月29日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 14/787,611において開示される任意のSTINGアゴニストまたはcGASアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2014年7月31日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 14/908,019において開示される任意のSTINGアゴニストまたはcGASアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0168】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2011年6月14日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 13/057,662において開示される任意のSTINGアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2013年12月13日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 14/106,687において開示される任意のSTINGアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2016年5月19日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 15/035,432において開示される任意のSTINGアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2017年1月11日に出願された国際特許出願PCT/US2017/013049において開示される任意のSTINGアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2017年1月11日に出願された国際特許出願PCT/US2017/013066において開示される任意のSTINGアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2014年5月18日に出願された国際特許出願PCT/US2014/038525において開示される任意のSTINGアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2013年6月7日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 13/912,960において開示される任意のSTINGアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2016年1月12日に出願された国際特許出願PCT/IB2016/057265において開示される任意のSTINGアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0169】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、MurNAc-L-Ala-γ-D-Glu-mDAP(M-TriDAP)、またはその薬学的に受入可能な塩である。M-TriDAPは、ほとんどがグラム陰性細菌において見出される、ペプチドグリカン(PGN)分解生成物である。M-TriDAPは、細胞内センサーNOD1(CARD4)により、および、より低い程度まではNOD2(CARD15)により認識される。NOD1/NOD2によるM-TriDAPの認識は、セリン/スレオニンRIP2(RICK、CARDIAK)キナーゼを含むシグナル伝達カスケードを誘導し、これは、IKKと相互作用して、NF-κBの活性化ならびにTNF-αおよびIL-6などの炎症性サイトカインの産生をもたらす。M-TriDAPは、NF-κBの活性化を、Tri-DAPに類似のレベルで誘導する。
【0170】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、TLR7アゴニストである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、TLR8アゴニストである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、TLR7アゴニストおよびTLR8アゴニストである。
【0171】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、免疫応答修飾因子(IRM)である。
【0172】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、1996年3月22日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 08/620,779において開示される任意のIRMであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、1997年10月24日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 08/957,192において開示される任意のIRMであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2000年3月20日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 09/528,620において開示される任意のIRMであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、1985年11月15日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 06/798,385において開示される任意のIRMであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、1994年9月8日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 08/303,216において開示される任意のIRMであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、1998年12月11日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 09/210,114において開示される任意のIRMであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、1999年7月27日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 09/361,544において開示される任意のIRMであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2004年10月1日に出願された国際特許出願PCT/US2004/032480において開示される任意のIRMであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0173】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、CL307(N1-グリシニル[4-((6-アミノ-2-(ブチルアミノ)-8-ヒドロキシ-9H-プリン-9-イル)メチル)ベンゾイル]スペルミン)、またはその薬学的に受入可能な塩である。CL307は、非常に強力なTLR7アゴニストである。滴定実験により、CL307が、わずか20nM(10ng/ml)の濃度においてすら、強力なNF-κBの活性化を誘導することが示されている。
【化4】
【0174】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、CL264、またはその薬学的に受入可能な塩である。CL264は、TLR7を発現する細胞においてNF-κBの活性化およびIFN-αの分泌を誘導する。CL264は、TLR7特異的リガンドであって、高濃度(>10μg/ml)であってもTLR8を刺激しない。TLR7を遺伝子導入されたHEK293細胞において、CL264は、イミキモドよりも5~10倍低い0.1μMの濃度で、NF-κBの活性化を引き起こす。
【化5】
【0175】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、ロキソリビン、またはその薬学的に受入可能な塩である。ロキソリビンは、N7およびC8の位置で誘導体化されたグアノシン類似体である。このヌクレオシドは、免疫系の非常に強力な刺激因子である。ロキソリビンは、TLR7を通して自然免疫系を活性化させ、この活性化は、エンドソームの成熟を必要とする。ロキソリビンの認識は、TLR7に限定される。
【化6】
【0176】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、ヒポキサンチン、またはその薬学的に受入可能な塩である。ヒポキサンチンは、天然に存在するプリン誘導体である。
【化7】
【0177】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、TL8-506、またはその薬学的に受入可能な塩である。TL8-506は、Toll様受容体8(TLR8)アゴニストVTX-2337の類似体であるベンゾアゼピン化合物である。TL8-506は、R848およびCL075よりも強力に、TLR8を活性化する。TL8-506は、TLR8を遺伝子導入されたHEK293細胞において、NF-κBの活性化を誘導することにおいて、R848およびCL075よりも、それぞれ約50×および約25×、より強力である。TL8-506は、TLR8の選択的アゴニストである。
【化8】
【0178】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、PF-4878691、イサトリビン、SM-324405、SM-324406、AZ12441970、AZ12443988、GSK-2245035、RG7854、GS-9620、LHC165、NKTR-262、GS-9688、VTX-2337、またはその薬学的に受入可能な塩である。PF-4878691、イサトリビン、SM-324405、SM-324406、AZ12441970、AZ12443988、GSK-2245035、RG7854およびGS-9620は、TLR7アゴニストである。LHC165およびNKTR-262は、TLR7およびTLR8の両方のアゴニストである。GS-9688およびVTX-2337は、TLR8アゴニストである。
【0179】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、ダクトリシブ、イミキモド、ガーディキモド、レシキモド、スマニロール、およびその薬学的に受入可能な塩を含むイミダゾキノリン誘導体である。
【0180】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、CL097、またはその薬学的に受入可能な塩である。CL097は、高度に水溶性の誘導体レシキモド(≧20mg/ml)である。CL097は、TLR7およびTLR8のリガンドである。それは、TLR7を遺伝子導入されたHEK293細胞においては0.4μM(0.1μg/ml)で、TLR8を遺伝子導入されたHEK293細胞においては4μM(1μg/ml)で、NF-κBの活性化を誘導する。
【化9】
【0181】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、CL075、またはその薬学的に受入可能な塩である。CL075(3M002)は、ヒト末梢血単核球においてTLR8を刺激するチアゾロキノロン誘導体である。それは、NF-κBを活性化して、TNF-αおよびIL-12の産生を優先的に引き起こす。CL075はまた、TLR7を通してIFN-αの分泌を誘導するが、これは、より低い程度までである。それは、TLR8を遺伝子導入されたHEK293細胞においては0.4μM(0.1μg/ml)で、NF-κBの活性化を誘導し、TLR7を遺伝子導入されたHEK293細胞においてNF-κBを活性化するためには、約10倍多くのCL075が必要とされる。
【化10】
【0182】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、MEDI9197、またはその薬学的に受入可能な塩である。MEDI9197(3M052)は、注射可能なTLR7およびTLR8のアゴニストである。それは、イミダゾキノリン免疫応答修飾因子(IRM)であって、C18脂質部分を有し、投与の部位からゆっくりと広がるように設計されている。
【化11】
【0183】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、レシキモド(R848)、またはその薬学的に受入可能な塩である。特に、レシキモドは、免疫応答修飾因子として作用する剤であって、抗ウイルスおよび抗腫瘍活性を有する。それは、皮膚病変(単純ヘルペスウイルスおよび皮膚T細胞リンパ腫により引き起こされるものなど)の処置において、局所用ゲルとして用いられる。それはまた、ワクチンの有効性を増大させるためのアジュバントとして用いられる。それは、いくつかの作用機序を有し、Toll様受容体7(TLR7)および8(TLR8)の両方についてのアゴニストであり、オピオイド増殖因子受容体の上方調節因子である。
【化12】
【0184】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、TLR7選択的アンテドラッグである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、SM-324405、AZ12441970、またはその薬学的に受入可能な塩である。
【0185】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、GS-9620である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、PF-4878691である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、NKTR-262である。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、LHC165である。
【0186】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、インフラマソーム誘導因子である。インフラマソームは、感染および内在危険シグナルに対する宿主の防御のために重要な、多量体タンパク質複合体である。それらは、炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン(IL)-1βおよびIL-18の分泌を促進し、ピロトーシスと称される、迅速かつ炎症誘発性の形態の細胞死を引き起こす。
【0187】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、NLRP3、AIM2、NLRC4またはNLRP1インフラマソームの誘導因子である。
【0188】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、
【化13】
、またはその薬学的に受入可能な塩であって、ここで:R
1はHであり、R
2はHであるか;R
1はブチル基であり、R
2はHであるか;R
1はHであり、R
2は-CO
2CH
3であるか;またはR
1はブチル基であり、R
2は-CO
2CH
3である。
【0189】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、以下である:イミダゾキノリン;イミダゾナフチリジン;ピラゾロピリジン;アリール置換イミダゾキノリン;1-アルコキシ1H-イミダゾ環系を有する化合物;オキサゾロ[4,5-c]-キノリン-4-アミン;チアゾロ[4,5-c]-キノリン-4-アミン;セレナゾロ[4,5-c]-キノリン-4-アミン;イミダゾナフチリジン;イミダゾキノリナミン;1-置換、2-置換1H-イミダゾ[4,5-C]キノリン-4-アミン;縮合シクロアルキルイミダゾピリジン;1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;1-置換1H-イミダゾ-[4,5-c]キノリン-4-アミン;イミダゾ-[4,5-C]キノリン-4-アミン;2-エチル1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;オレフィン性1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;6,7-ジヒドロ-8-(イミダゾール-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-2-カルボン酸;ピリドキノキサリン-6-カルボン酸;6,7-ジヒドロ-8-(イミダゾール-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-2-カルボン酸;置換ナフト[ij]キノリジン;置換ピリドキノキサリン-6-カルボン酸;7-ヒドロキシ-ベンゾ[ij]キノリジン-2-カルボン酸誘導体;置換ベンゾ[ij]キノリジン-2-カルボン酸;7-ヒドロキシ-ベンゾ[ij]キノリジン-2-カルボン酸;置換ピリド[1,2,3,-de]-1,4-ベンゾキサジン;テトラヒドロキノリンのN-メチレンマロン酸エステル、またはその薬学的に受入可能な塩。
【0190】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2016年8月31日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 15/253,215において開示される任意のNLRP3アゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0191】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、RORγアゴニストである。RORγアゴニストは、例えば患者または細胞の集団において、RORγに結合してこれを活性化することにより、またはRORγの発現を増大させることにより、RORγの活性を促進する剤である。RORγアゴニストは、例えば、有機小分子、ポリペプチドまたは核酸であってよい。多様なRORγアゴニストが、文献において、例えば米国特許出願U.S.S.N. 14/398,774;Zhangら 、Mol. Pharmacol.(2012年)第82巻、583~590頁において;およびWangら、ACS Chem. Biol.(2010年)、第5巻、1029~1034頁において報告され、これらの各々は、本明細書において参考として援用される。
【0192】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、RORγアゴニスト、例えば、
【化14】
およびその薬学的に受入可能な塩である。
【0193】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、米国特許出願U.S.S.N. 14/398,774において記載される一般的なまたは具体的な化合物、例えば式(I):
【化15】
の化合物、またはその薬学的に受入可能な塩であって;式中:
Aは、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;これらの各々は、任意に、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6ヒドロキシアルキル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルコキシ、-N(R
4)(R
5)、-CO
2R
6、-C(O)R
6、-CN、-C
1~4アルキレン-C
1~4アルコキシ、-C
1~4アルキレン-N(R
4)(R
5)、-C
1~4アルキレン-CO
2R
6、-O-C
1~6アルキレン-N(R
4)(R
5)、-N(R
4)C(O)-C
1~6アルキレン-N(R
4)(R
5)、-S(O)
pC
1~6アルキル、-SO
2N(R
4)(R
5)、-N(R
4)SO
2(C
1~6アルキル)、-C(O)N(R
4)(R
5)、および-N(R
4)C(O)N(R
4)(R
5)からなる群より選択される1、2または3個の置換基により置換されており;
Xは、-O-[C(R
6)(R
7)]-[C(R
6)2]
m-Ψ、-O-C(R
6)2-C(R
6)(R
7)-C(R
6)2-Ψ、-O-C(R
6)2-C(R
6)(R
7)-Ψ、-C(R
6)2-[C(R
6)(R
7)]-[C(R
6)
2]
m-Ψ、-C(O)-[C(R
6)(R
7)]-[C(R
6)
2]
m-Ψ、-C(R
6)
2-N(R
8)-[C(R
6)(R
7)]-[C(R
6)
2]
m-Ψ、-C(R
6)=N-Ψ、-C(R
6)
2C(R
6)=N-Ψ、-N=C(R
6)-Ψ、または-N=C(R
6)C(R
6)
2-Ψであり;ここで、Ψは、式Iにおけるスルホンアミド環窒素原子への結合であり;
Yは、-N(R
2)(R
3)または-O-アラルキルであり、ここで、前記アラルキルは、任意に、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルコキシ、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、-N(R
4)(R
5)、-CN、-CO
2-C
1~6アルキル、-C(O)-C
1~6アルキル、-C(O)N(R
4)(R
5)、-S(O)
pC
1~6アルキル、-SO
2N(R
4)(R
5)、および-N(R
4)SO
2(C
1~6アルキル)からなる群より選択される1、2または3個の置換基で置換されており;
R
1は、独立して、各々の場合について、水素、ハロゲン、またはC
1~6アルキルを表し;
R
2は、-C(O)-アリール、-C(O)-アラルキル、-C(O)-[C(R
6)
2]
m-シクロアルキル、-C(O)-[C(R
6)
2]
m-ヘテロシクリル、-C(O)-C
1~6アルキル、-C(O)-C
1~6アルキレン-C
1~6アルコキシル、-C(O)-C
1~6アルキレン-シクロアルキル、または-C(O)-C
1~6アルキレン-ヘテロシクロアルキルであり;これらの各々は、任意に、独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルコキシ、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、-N(R
4)(R
5)、-CN、-CO
2-C
1~6アルキル、-C(O)-C
1~6アルキル、-C(O)N(R
4)(R
5)、-S(O)
pC
1~6アルキル、-SO
2N(R
4)(R
5)、および-N(R
4)SO
2(C
1~6アルキル)からなる群より選択される1、2または3個の置換基により置換されており;
R
3は、水素またはC
1~6アルキルであり;
R
4およびR
5は、各々、独立して、各々の場合について、水素もしくはC
1~6アルキルを表すか;またはR
4およびR
5は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、3~7員のヘテロ環式環を形成し;
R
6は、独立して、各々の場合について、水素またはC
1~6アルキルを表し;
R
7は、水素、ヒドロキシル、C
1~6ヒドロキシアルキル、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、-CO
2R
6、C
1~6アルキレン-CO
2R
6、C
1~4ヒドロキシアルキレン-CO
2R
6、-N(R
4)(R
5)、C
1~6アルキレン-N(R
4)(R
5)、C
1~6ヒドロキシアルキレン-N(R
4)(R
5)、-N(R
4)C(O)R
9、C
1~6アルキレン-N(R
4)C(O)R
9、C
1~6アルキレン-C(O)N(R
4)(R
5)、-N(R
4)CO
2-C
1~6アルキル、もしくはC
1~6アルキレン-N(R
4)(C(O)N(R
4)(R
5)であるか;またはR
7は、ヘテロシクロアルキルもしくはC
1~4アルキレン-ヘテロシクロアルキルであり、ここで、ヘテロシクロアルキルは、任意に、独立して、オキソ、ハロゲン、ヒドロキシル、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6ヒドロキシアルキル、C
1~6アルコキシ、およびC
1~6ハロアルコキシからなる群より選択される1、2または3個の置換基で置換されており;
R
8は、水素、C
1~6アルキル、または-C(O)-C
1~6アルキルであり;
R
9は、水素、C
1~6アルキル、C
1~6ヒドロキシアルキル、C
1~6アルキレン-N(R
4)(R
5)、またはC
1~6アルキレン-N(R
4)C(O)-C
1~6アルキルであり;
nは、1または2であり;ならびに
mおよびpは、各々、独立して、各々の場合について、0、1または2を表す。
【0194】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2014年11月4日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 14/398,774において開示される、任意のRORγアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、2016年8月23日に出願された米国特許出願U.S.S.N. 15/120,798において開示される、任意のRORγアゴニストであり、当該出願の全内容は、本明細書において参考として援用される。
【0195】
ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、RIG-I様受容体(RLR)アゴニストである。ある態様において、自然免疫応答の活性化因子は、RGT-100である。
【0196】
サイトカイン
薬物送達組成物およびデバイスは、サイトカインを含んでもよい。サイトカインは、細胞のシグナル伝達において重要である、小さなタンパク質(約5~20kDa)の広範なカテゴリーである。それらの放出は、それらの周囲の細胞の挙動に対して効果を有する。サイトカインは、自己分泌シグナル伝達、パラ分泌シグナル伝達、および内分泌シグナル伝達において、免疫調節剤として関与する。サイトカインとして、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンフォカイン、および腫瘍壊死因子が挙げられる。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球および肥満細胞などの免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞、および多様な間質細胞を含む広範な細胞により産生される。それらは、受容体を通して作用し、免疫系において重要な役割を果たす。サイトカインは、体液性免疫応答と細胞ベースの免疫応答との間のバランスを調節し、特定の細胞集団の成熟、増殖および応答性を制御する。いくつかのサイトカインは、複雑な方法において、他のサイトカインの作用を増強または阻害する。サイトカインは、感染に対する宿主の応答、免疫応答、炎症、外傷、敗血症、がん、および生殖において重要である。
【0197】
さらに、多くのサイトカインおよびケモカインの免疫刺激機能が完全に活用されることを可能にするために、送達の方法、投与およびスケジューリング、ならびに毒性に関連する問題に取り組まねばならないことは、当該分野において現在知られている。
【0198】
ある態様において、サイトカインは、IL-1、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-2スーパーカイン、IL-6、IL-7、IL-9、AM0010、IL-12、IL-15、IL-15スーパーアゴニスト、ALT-803、NIZ985、IL-16、IL-18、IL-21、IL-21スーパーアゴニスト、デネニコキン、IL-21スーパーアゴニスト抗体、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、GM-CSF、サイトカイン融合物、RG7461、RG7813、M9241、NKTR-214、NKTR-255、BMS-982470、BG-00001、Flt3L、またはCDX-301である。
【0199】
ある態様において、サイトカインは、ALT-803、NIZ985、デネニコキン、RG7461、RG7813、M9241、IFN-α、IFN-β、またはIFN-γである。
【0200】
ある態様において、サイトカインは、IL-15スーパーアゴニストまたはIL-21である。ある態様において、サイトカインは、IL-15スーパーアゴニストである。
【0201】
ある態様において、サイトカインは、IL-15スーパーアゴニスト、IL-21、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CCL4、CCL5、CXCL9、またはCXCL10である。ある態様において、サイトカインは、IL-15スーパーアゴニスト、IFN-α、IFN-β、またはIFN-γである。ある態様において、サイトカインは、IL-15スーパーアゴニストまたはIFN-αである。
【0202】
IL-15(インターロイキン15)は、IL-2に構造的に類似するサイトカインであって、ウイルスによる感染の後で、単核貪食細胞により分泌される。IL-15は、その主な役割がウイルスに感染した細胞を殺傷することであるナチュラルキラー細胞の細胞増殖を誘導する。IL-15と可溶性のIL-15Rαとの組み合わせは、IL-15スーパーアゴニスト(IL-15sa)と称される複合体を生じ、これは、IL-15単独よりも高い生物学的活性を有する。IL-15saは、NKおよびメモリーCD8+T(mCD8+T)リンパ球を選択的に増殖させるその能力により、抗腫瘍および抗ウイルス剤である。
【0203】
ある態様において、サイトカインは、IL-15スーパーアゴニストであるALT-803として公知のIL-15スーパーアゴニストである。ALT-803は、メモリーCD8+T細胞の増殖を誘導し、自然免疫に関与する受容体を上方調節し、インターフェロン-γを分泌し、抗原性の刺激の不在下において悪性細胞を殺傷する能力を獲得すると考えられる。したがって、ALT-803は、メモリーCD8+T細胞の増殖および活性化を促進しつつ、それらを、強力な抗悪性腫瘍活性を示す自然免疫エフェクター細胞へと変換することができる。ALT-803は、IL-15変異体とIL-15Rα/Fc複合体との融合タンパク質であって、直接的な免疫調節剤として最近臨床治験に入った。ALT-803は、生物学的活性において、IL-15と比較して、>25倍の増強を示す。
【0204】
ある態様において、サイトカインは、NIZ985(hetIL-15)である。研究は、hetIL-15の投与が、腫瘍特異的T細胞を含むCD8+T細胞の腫瘍浸潤および残留の増大を促進して、CD8+/Treg比の増大をもたらし得ることを示している。腫瘍耐性CD8+T細胞は、エフェクター細胞の特徴を示し、増大した増殖(Ki67+)および高い細胞傷害能力(グランザイムB+)により特徴付けられる。hetIL-15の不在下において、腫瘍浸潤性T細胞のより小さな集団は、高レベルの疲弊のマーカーPD-1を示し、これは、潜在的に、それらの抗がん有効性を限定している。hetIL-15の提供は、PD-1のリンパ球発現の著しい低下をもたらして、疲弊の表現型についての1つの潜在的な機構を軽減し得る。前臨床がん研究は、制御性細胞よりもエフェクターを有利にすることにより抗腫瘍応答の発生を促進するための腫瘍免疫療法アプローチにおける、hetIL-15の使用を支持する。
【0205】
ある態様において、サイトカインは、インターフェロンα(IFN-α)である。IFN-αタンパク質は、白血球により産生される。それらは、主に、ウイルス感染に対する自然免疫応答に関与する。
【0206】
ある態様において、サイトカインは、インターフェロンβ(IFN-β)である。IFN-βは、線維芽細胞により産生されたタンパク質を含み、自然免疫応答に関与する。IFN-βは、マクロファージおよびNK細胞の両方を刺激して抗ウイルス応答を引き起こし、また、腫瘍に対して活性である。マウスにおいて、IFN-βは、免疫細胞が増殖因子を産生することを阻害し、それにより、腫瘍の増殖を遅延させ、他の細胞が増殖因子を産生する血管を生成することを阻害し、それにより、腫瘍血管新生を遮断し、腫瘍が血管系中に連結することを妨害する。
【0207】
ある態様において、サイトカインは、インターフェロンγ(IFN-γ)である。IFN-γ、またはII型インターフェロンは、自然免疫および適応免疫のために有用なサイトカインである。IFN-γは、マクロファージの重要な活性化因子、およびクラスII主要組織適合抗原(MHC)分子の発現の誘導因子である。癌細胞におけるIFN-γのin vitro研究は、広範なものであり、結果は、増殖阻害、または一般にはアポトーシスにより誘導されるがときにはオートファジーにより誘導される細胞死をもたらす、IFN-γの抗増殖活性を示す。IFN-γの臨床投与は、卵巣癌、膀胱癌および黒色腫の癌を有する患者の生存率の改善をもたらした。
【0208】
ある態様において、サイトカインは、ケモカインである。ケモカインは、小さなサイトカインのファミリーである。ケモカインの主な役割は、細胞の遊走をガイドする化学誘引物質として作用することである。いくつかのケモカインは、免疫監視のプロセスの間に免疫系の細胞を制御し、例えば、リンパ球をリンパ節へ指向させて、それらの組織において存在する抗原提示細胞と相互作用することにより病原体の侵入についてスクリーニングすることができるようにする。これらは、恒常性ケモカインとして知られ、それらのソース細胞を刺激することを必要とせず、産生され、分泌される。いくつかのケモカインは、発生において役割を果たすか、血管新生(新しい血管の増殖)を促進するか、または細胞を、細胞の成熟のために重要な特異的シグナルを提供する組織へとガイドする。他のケモカインは、炎症性であり、細菌、ウイルスおよび身体の損傷を引き起こす剤、例えば痛風を引き起こすシリカまたは尿酸の結晶に対する応答において、多様な細胞から放出される。それらの放出は、しばしば、インターロイキン1などの炎症誘発性サイトカインにより刺激される。炎症性ケモカインは、主に、白血球のための化学誘引物質として機能し、単球、好中球および他のエフェクター細胞を、血液から感染または組織損傷の部位に動員する。特定の炎症性ケモカインは、細胞を活性化して免疫応答を開始させるか、または創傷治癒を促進する。それらは、多くの異なる細胞型により放出され、自然免疫系および適応免疫系の両方の細胞をガイドするために役立つ。
【0209】
さらに、多くのケモカインの免疫刺激機能が完全に活用されることを可能にするために、送達の方法、投与量およびスケジューリング、ならびに毒性に関連する問題に取り組まなければならないことが、当該分野において現在知られている。
【0210】
ある態様において、ケモカインは、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL17、CCL19、CCL21、CCL22、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、CXCL16、またはCX3CL1である。
【0211】
適応免疫応答の活性化因子
薬物送達組成物およびデバイスは、1つ以上の適応免疫応答の活性化因子を含んでもよい。
【0212】
獲得免疫系としても知られる適応免疫応答系は、免疫系全体の下位の系であって、高度に特化した全身性細胞、および病原体を取り除くかまたはその増殖を防止するプロセスを含む。適応免疫系は、脊椎動物において見出される2つの主要な免疫戦略のうちの一つである(もう一方は自然免疫系である)。適応免疫は、特異的な病原体に対する初期応答の後で免疫記憶を作り出し、その病原体とのその後の邂逅に対して、増強された応答をもたらす。獲得免疫のこのプロセスは、ワクチン接種の基礎である。自然免疫系と同様に、適応免疫系は、体液性免疫の構成成分と細胞媒介性免疫の構成成分の両方を含む。自然免疫系とは異なり、適応免疫系は、特定の病原体に対して、高度に特異的である。
【0213】
適応免疫応答系は、病原体が自然免疫応答系を逃れて、抗原の閾値レベルを生じ、樹状細胞を活性化する「stranger」または「danger」シグナルを生じた場合に誘導される。獲得免疫系の主要な機能は、抗原提示のプロセスの間の「自己」の存在下における特異的な「非自己」抗原の認識;特異的な病原体または病原体感染細胞を除去するために個別対応(tailor)された応答の発生;ならびに、病原体が、メモリーB細胞およびメモリーT細胞を通して「記憶」される免疫記憶の発達を含む。
【0214】
適応免疫応答系を活性化する(例えば、治療的な抗腫瘍免疫を活性化する)ために有用なアプローチとして、免疫チェックポイントの遮断が挙げられる。免疫チェックポイントは、コラテラルな組織損傷を最小化するために、自己寛容を維持し、末梢組織における生理学的免疫応答の期間および振幅を調節するために重要である、免疫系に物理的に組み込まれた(hardwired)多くの阻害性経路を指す。腫瘍は、特定の免疫チェックポイント経路を、特に腫瘍抗原に対して特異的なT細胞に対する免疫耐性の主要な機構として組み入れる。免疫チェックポイントの多くは、リガンド-受容体相互作用により開始されるので、それらは、抗体により容易に遮断することができ、またはリガンドまたは受容体の組み換え形態により調節することができる。細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)抗体は、このクラスの免疫療法剤のうちFDAの承認を受けた最初のものであった(イピリムマブ)。プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)などのさらなる免疫チェックポイントタンパク質の遮断薬による先行の臨床の知見は、抗腫瘍免疫を増強するための広範かつ多様な機会、および耐久性の臨床応答を作り出す可能性を示す
【0215】
PD-1は、T細胞の活性化を阻害することにより免疫系を下方調節する役割を果たし、それが次いで、自己免疫を低下させ、自己耐性を促進する。PD-1の阻害効果は、リンパ節における抗原特異的T細胞におけるアポトーシス(プログラム細胞死)を促進つつ、同時に制御性T細胞(サプレッサーT細胞)におけるアポトーシスを減少させるという、二重の機構を通して達成される。PD-1を遮断する新たなクラスの治療剤であるPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)は、、腫瘍を攻撃するように免疫系を活性化し、したがって、いくつかの型のがんを処置するために用いられる。加えて、プログラム死リガンド1(PD-L1)の抗体は、適応免疫応答を活性化することに対して、PD-1を標的とする抗体と類似の影響を提供する。したがって、抗PD-L1抗体を含む組成物およびデバイスは、抗PD-1抗体を含むものと類似の治療的効果を提供することが期待される。
【0216】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、小分子である。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、生物学的薬剤(biologic)である。ある態様において、生物学的薬剤は、タンパク質である。ある態様において、生物学的薬剤は、抗体またはそのフラグメントである。ある態様において、生物学的薬剤は、タンパク質をコードする核酸である。
【0217】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM3抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、抗LAG-3抗体、抗CD137抗体、抗CD3抗体、抗CD27抗体、抗CD28抗体、抗CD28H抗体、抗CD30抗体、抗CD39抗体、抗CD40抗体、抗CD43抗体、抗CD47抗体、抗CD48抗体、抗CD70抗体、抗CD73抗体、抗CD96抗体、抗CD123抗体、抗CD155抗体、抗CD160抗体、抗CD200抗体、抗CD244抗体、抗ICOS抗体、抗TNFRSF25抗体、抗TMIGD2抗体、抗DNAM1抗体、抗BTLA抗体、抗LIGHT抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗HVEM抗体、抗シグレック抗体、抗GAL1抗体、抗GAL3抗体、抗GAL9抗体、抗BTNL2(ブチロフィリン)抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗B7-H5抗体、抗B7-H6抗体、抗KIR抗体、抗LIR抗体、抗ILT抗体、抗CEACAM1抗体、抗CEACAM5抗体、抗CEACAM6抗体、抗MICA抗体、抗MICB抗体、抗NKG2D抗体、抗NKG2A抗体、抗A2AR抗体、抗C5aR抗体、抗TGFβ抗体、抗TGFβR抗体、抗CXCR4抗体、抗CXCL12抗体、抗CCL2抗体、抗IL-10抗体、抗IL-13抗体、抗IL-23抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗ニュートロピリン抗体、抗GalCer抗体、抗HER2抗体、抗VEGFA抗体、抗VEGFR抗体、抗EGFR抗体、抗Tie2抗体、抗CCR4抗体、または抗TRAIL-DR5抗体である。
【0218】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、上に列記される抗体のいずれかのフラグメントである。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、上に列記される抗体のいずれかのヒト化形態である。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、上に列記される抗体のいずれかの単鎖である。ある態様において、免疫応答の活性化因子は、上に列記される抗体のいずれかの多量体形態(例えば、二量体IgA分子、五価のIgM分子)である。
【0219】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗PD-1抗体、アゴニスト抗CD137抗体、アゴニスト抗CD40抗体、抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、抗TIM3、またはそれらの組み合わせである。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗PD-1抗体または抗CTLA-4抗体である。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗PD-1抗体である。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗CTLA-4抗体である。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、アゴニスト抗CD137抗体である。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗LAG-3抗体である。ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗TIM3抗体である。
【0220】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、PF-06801591、ウトミルマブ(utomilumab)、PDR001、PBF-509、MGB453、LAG525、AMP-224、INCSHR1210、INCAGN1876、INCAGN1949、サマリズマブ、PF-05082566、ウレルマブ、リリルマブ、ルリズマブ、BMS-936559、BMS-936561、BMS-986004、BMS-986012、BMS-986016、BMS-986178、IMP321、IPH2101、IPH2201、IPH5401、IPH4102、IPH4301、IPH52、IPH53、バルリルマブ(varlilumab)、ウロクプルマブ、モナリズマブ(monalizumab)、MEDI0562、MEDI0680、MEDI1873、MEDI6383、MEDI6469、MEDI9447、AMG228、AMG820、CC-90002、CDX-1127、CGEN15001T、CGEN15022、CGEN15029、CGEN15049、CGEN15027、CGEN15052、CGEN15092、CX-072、CX-2009、CP-870893、ルカツムマブ(lucatumumab)、ダセツズマブ、Chi Lob 7/4、RG6058、RG7686、RG7876、RG7888、TRX518、MK-4166、IMC-CS4、エマクツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、オビヌツズマブ、カビラリズマブ、マルゲツキシマブ、エノブリツズマブ(enoblituzumab)、モガムリズマブ、パニツムマブ、カルルマブ、ラムシルマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、フレソリムマブ、デノスマブ、MGA012、AGEN1884、AGEN2034、LY3300054、JTX-4014、テピリズマブ、FPA150、PF-04136309、PF-06747143、AZD5069、GSK3359609、FAZ053、TSR022、MBG453、REGN2810、REGN3767、MOXR0916、PF-04518600、RO7009789、BMS986156、GWN323、JTX-2011、NKTR-214、GSK3174998、DS-8273a、NIS793、またはBGB-A317である。
【0221】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、REGN2810、MGA012、AGEN1884、AGEN2034、LY3300054、JTX-4014、またはアベルマブである。
【0222】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗体模倣物または抗体融合物である。
【0223】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、二重特異性抗体である。ある態様において、二重特異性抗体は、RG7802(癌胎児抗原(CEA)およびCD3受容体を標的とする抗体)、RG7828(B細胞上のCD20およびT細胞上のCD3を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、RG7221(VEGFおよびアンジオポエチン2を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、RG7386(FAPおよびDR5を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、ERY974(CD3およびグリピカン-3を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、MGD012(PD-1およびLAG-3を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、AMG211(CD3およびCEAを標的とする二重特異性T細胞誘導抗体(bispecific T cell engager))、MEDI573(IGF1およびIGF2を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、MEDI565(CD3およびCEAを標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、FS17(開示されていない標的)、FS18(LAG3および開示されていない標的を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、FS20(開示されていない標的)、FS22(開示されていない標的)、FS101(EGFRおよびHGFを標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、FS117(開示されていない標的)、FS118(LAG3およびPD-L1を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、RO6958688(CD3およびCEAを標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、MCLA-128(HER2およびHER3を標的とする二重特異性モノクローナル抗体)、M7824(PD-L1およびTGFβを標的とする二官能性融合タンパク質)、MGD009(B7-H3およびCD3の両方を認識するヒト化抗体)、またはMGD013(二重特異性PD-1およびLAG-3抗体)である。
【0224】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、抗体-薬物抱合体である。ある態様において、抗体-薬物抱合体は、トラスツズマブエムタンシン、イノツズマブオゾガマイシン、PF-06647020、PF-06647263、PF-06650808、RG7596、RG7841、RG7882、RG7986、DS-8201、ABBV-399、グレムバツムマブベドチン(glembatumumab vedotin)、イノツズマブオゾガマイシン、MEDI4276、またはその薬学的に受入可能な塩である。
【0225】
ある態様において、適応免疫応答の活性化因子は、小分子である。ある態様において、小分子は、IDO阻害剤、TGFβR阻害剤、BRAF阻害剤、KIT阻害剤、A2aR阻害剤、Tie2阻害剤、アルギナーゼ阻害剤、iNOS阻害剤、HIF1α阻害剤、STAT3阻害剤、PGE2阻害剤、PDE5阻害剤、RON阻害剤、mTOR阻害剤、JAK2阻害剤、HSP90阻害剤、PI3K-AKT阻害剤、β-カテニン阻害剤、GSK3β阻害剤、IAP阻害剤、HDAC阻害剤、DNMT阻害剤、BET阻害剤、COX2阻害剤、PDGFR阻害剤、VEGFR阻害剤、BCR-ABL阻害剤、プロテアソーム阻害剤、血管新生阻害剤、MEK阻害剤、BRAF+MEK阻害剤、pan-RAF阻害剤、EGFR阻害剤、PARP阻害剤、グルタミナーゼ阻害剤、WNT阻害剤、FAK阻害剤、ALK阻害剤、CDK4/6阻害剤、またはFGFR3阻害剤である。
【0226】
ある態様において、小分子は、セレコキシブ、スニチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、ボルテゾミブ、ボリノスタット、ポマリドミド、サリドマイド、レナリドミド、エパカドスタット、インドキシモド、GDC0919、BMS986205、AZD8055、AZD4635、CPI-444、PBF509、LCL161、CB-839、CB-1158、FPA008、BLZ945、IPI-549、ペキシダルチニブ、ガルニセルチブ、ビリナパント、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、エンサルチニブ、ゲフィチニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、ニンテダニブ、SYM004、ベリパリブ、オラパリブ、BGB-290、エベロリムス、LXH254、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン、RRX001、CC486、ロミデプシン、エンチノスタット、パノビノスタット、タモキシフェン、イブルチニブ、イデラリシブ、カプマチニブ、セルメチニブ、アベマシクリブ、パルボシクリブ、グラスデギブ、エンザルタミド、AZD9150、PF-06840003、SRF231、Hu5F9-G4、CC-900002、TTI-621、WNT974、BGJ398、LY2874455、またはその薬学的に受入可能な塩である。
【0227】
さらなる治療剤
薬物送達組成物およびデバイスは、さらなる治療剤を含んでもよい。
【0228】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子を含んでもよい。マクロファージは、循環している単球に由来する免疫細胞であって、全ての組織に存在し、病態の多くの段階に関与する。マクロファージは、がんにおいて二分的な役割を果たし、そこで、それらは、腫瘍の増殖を促進し得るが、また、治療抗体の重要な免疫エフェクターとしても働き得る。マクロファージは、全てのクラスのFcγ受容体を発現し、それらは、抗体依存的な細胞の食作用のプロセスを介して腫瘍を破壊する能力を有する。多数の研究が、マクロファージの食作用が、がんを処置することが承認されている多くの抗体の作用の主要な機構であることを示している。したがって、新たな標的の探査および機能が増強された抗体の開発を含む、治療抗体に対するマクロファージの応答を増強するための多数のアプローチが、研究中である。マクロファージの抗体治療に対する応答はまた、操作されたFcバリアント、二重特異性抗体、または抗体-薬物抱合体により増強することができる。マクロファージは、がん免疫療法のエフェクターとしての成功を示している。
【0229】
ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を含む抑制性骨髄系細胞の修飾因子である。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、マクロファージおよび/またはMDSCを、殺傷するか、枯渇させるか、またはこれを増強することができる。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、抗CD40抗体、抗CD47抗体、抗CSF1抗体、または抗CSF1R抗体である。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、SRF231、Hu5F9-G4、CC-900002、またはTTI-621(抗CD47抗体)である。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、MCS-110(抗CSF1抗体)である。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、FPA008、RG7155、IMC-CS4、AMG820、またはUCB6352(抗CSF1R抗体)である。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、CSF1Rの小分子阻害剤である。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、BLZ945、GW2580またはPLX3397(CSF1Rの小分子阻害剤)である。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、BTK阻害剤、ITK阻害剤、PI3Kγ阻害剤またはPI3Kδ阻害剤である。ある態様において、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子は、組成物またはデバイス中の1つ以上の適応免疫応答の活性化因子を置き換えてもよい。
【0230】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、腫瘍溶解性ウイルスをさらに含んでもよい。ある態様において、腫瘍溶解性ウイルスとして、これらに限定されないが、単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV1716、OncoVex GM-CSF);アデノウイルス(例えば、H101、Onyx-15);ポリオウイルス(例えば、PV1(RIPO));レオウイルス(例えば、レオリシン(reolysin));セネカウイルス(例えば、NTX-010、SVV-001);Rigvirウイルス;マラバウイルス;麻疹;ニューカッスル病ウイルス;ワクシニア;またはECHOウイルスが挙げられる。
【0231】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、放射性同位体を(例えば分子の一部として、またはビーズ上に)さらに含んでもよい。ある態様において、放射性同位体は、イットリウム-90、パラジウム-103、ヨウ素-125、セシウム-131またはイリジウム-192である。
【0232】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、化学療法剤をさらに含んでもよい。ある態様において、化学療法剤として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、およびメゲストロール)、LHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリンおよびロイプロリド)、抗アンドロゲン薬(例えば、フルタミドおよびビカルタミド)、光線力学的治療(例えば、ベルテポルフィン(vertoporfin)(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、およびデメトキシ-ヒポクレリンA(2BA-2-DMHA))、ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、エストラムスチン、およびメルファラン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU))、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファンおよびトレオスルファン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジンおよびテモゾロミド)、白金含有化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン)、タキソイド(例えば、パクリタキセル、または、ナノ粒子アルブミン結合型パクリタキセル(ABRAXANE)、ドコサヘキサエン酸結合型パクリタキセル(DHA-パクリタキセル、Taxoprexin)、ポリグルタミン酸結合型パクリタキセル(PG-パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメクス、CT-2103、XYOTAX)、腫瘍活性型プロドラッグ(TAP)ANG1005(3分子のパクリタキセルに結合したAngiopep-2)、パクリタキセル-EC-1(erbB2認識ペプチドEC-1に結合したパクリタキセル)、およびグルコース抱合体型パクリタキセル、例えば、2-パクリタキセルメチル2-グルコピラノシルスクシネート;ドセタキセル、タキソールなどのパクリタキセル等価物)、エピポドフィリン(例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、イリノテカン、クリスナトールおよびマイトマイシンC)、代謝拮抗薬、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキサート、ジクロロメトトレキセート、トリメトレキサートおよびエダトレキサート)、IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、およびEICAR)、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤(例えば、ヒドロキシウレアおよびデフェロキサミン)、ウラシル類似体(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、テガフール-ウラシルおよびカペシタビン)、シトシン類似体(例えば、シタラビン(ara C)、シトシンアラビノシドおよびフルダラビン)、プリン類似体(例えば、メルカプトプリンおよびチオグアニン)、ビタミンD3類似体(例えば、EB 1089、CB 1093およびKH 1060)、イソプレニル化阻害剤(例えば、ロバスタチン)、ドパミン作動性神経毒(例えば、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2およびペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシンおよびミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えば、ベラパミル)、Ca2+ATPase阻害剤(例えば、タプシガルジン)、オブリメルセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルバジン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテシン(campathecin)、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン(leurosidine)、ロイロシン(leurosine)、クロラムブシル、トラベクテジン、プロカルバジン、ディスコデルモリド、カルミノマイシン、アミノプテリン、ヘキサメチルメラミン、およびそれらの薬学的に受入可能な塩。
【0233】
ある態様において、化学療法剤は、免疫調節性の化学療法剤である。ある態様において、化学療法剤は、既知の免疫調節性の機能を有する(例えば、免疫原性細胞死の誘導または免疫抑制性調節性免疫細胞の枯渇)。ある態様において、化学療法剤は、従来の癌細胞に固有の細胞傷害性化学療法剤としての使用ではなく、むしろその免疫療法特性のために、薬物送達組成物およびデバイス中に含められる。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、化学療法剤を含まない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、細胞傷害剤を含まない。
【0234】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、標的剤をさらに含んでもよい。ある態様において、標的剤として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:IDO阻害剤、TGFβR阻害剤、アルギナーゼ阻害剤、iNOS阻害剤、HIF1α阻害剤、STAT3阻害剤、CSF1R阻害剤、PGE2阻害剤、PDE5阻害剤、RON阻害剤、mTOR阻害剤、JAK2阻害剤、HSP90阻害剤、PI3K-AKT阻害剤、β-カテニン阻害剤、GSK3阻害剤、IAP阻害剤、HDAC阻害剤、DNMT阻害剤、BET阻害剤、A2AR阻害剤、BRAF+MEK阻害剤、pan-RAF阻害剤、PI3Kγ阻害剤、PI3Kδ阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、PARP阻害剤、グルタミナーゼ阻害剤、BTK阻害剤、ITK阻害剤、WNT阻害剤、FAK阻害剤、ALK阻害剤、CDK4/6阻害剤、またはFGFR3阻害剤。
【0235】
ある態様において、標的剤として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:イマチニブ、サリドマイド、レナリドミド、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI-606)、セジラニブ(RECENTINTM、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS-354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI-571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP-701)、ネラチニブ(HKI-272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ(semaxanib)(セマキシニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、テムシロリムス(TORISEL(登録商標))、ENMD-2076、PCI-32765、AC220、乳酸ドビチニブ(TKI258、CHIR-258)、BIBW 2992(TOVOKTM)、SGX523、PF-04217903、PF-02341066、PF-299804、BMS-777607、ABT-869、MP470、BIBF 1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ-26483327、MGCD265、DCC-2036、BMS-690154、CEP-11981、チボザニブ(AV-951)、OSI-930、MM-121、XL-184、XL-647、および/またはXL228)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(VELCADE))、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD-001)、リダフォロリムス、AP23573(Ariad)、AZD8055(AstraZeneca)、BEZ235(Novartis)、BGT226(Norvartis)、XL765(Sanofi Aventis)、PF-4691502(Pfizer)、GDC0980(Genetech)、SF1126(Semafoe)およびOSI-027(OSI))、エパカドスタット、インドキシモド、GDC0919、BMS986205、AZD4635、CPI-444、PBF509、LCL161、CB-839、CB-1158、FPA008、BLZ945、IPI-549、ペキシダルチニブ、ガルニセルチブ、ビリナパント、トラメチニブ、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、エンサルチニブ、パゾパニブ、ニンテダニブ、SYM004、ベリパリブ、オラパリブ、BGB-290、LXH254、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン、RRX001、CC486、ロミデプシン、エンチノスタット、ボリノスタット、パノビノスタット、タモキシフェン、イブルチニブ、イデラリシブ、カプマチニブ、セルメチニブ、アベマシクリブ、パルボシクリブ、グラスデギブ、エンザルタミド、AZD9150、PF-06840003、SRF231、Hu5F9-G4、CC-900002、TTI-621、WNT974、BGJ398、LY2874455、抗Tie2抗体、またはその薬学的に受入可能な塩。
【0236】
薬物送達組成物およびデバイスの態様
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよび炎症誘発経路の阻害剤を含む。
【0237】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、および自然免疫応答の活性化因子を含む。
【0238】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、およびさらなる自然免疫応答の活性化因子を含む。
【0239】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、およびサイトカインを含む。
【0240】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、さらなる自然免疫応答の活性化因子、およびサイトカインを含む。
【0241】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、およびケモカインを含む。
【0242】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、さらなる自然免疫応答の活性化因子、およびケモカインを含む。
【0243】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、およびサイトカインを含む。
【0244】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、およびケモカインを含む。
【0245】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0246】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0247】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、さらなる自然免疫応答の活性化因子、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0248】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、適応免疫応答の活性化因子、およびさらなる適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0249】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、適応免疫応答の活性化因子、および2つのさらなる適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0250】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、サイトカイン、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0251】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、さらなる自然免疫応答の活性化因子、サイトカイン、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0252】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、サイトカイン、適応免疫応答の活性化因子、およびさらなる適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0253】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、さらなる自然免疫応答の活性化因子、サイトカイン、適応免疫応答の活性化因子、およびさらなる適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0254】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、ケモカイン、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0255】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、さらなる自然免疫応答の活性化因子、ケモカイン、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0256】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、ケモカイン、適応免疫応答の活性化因子、およびさらなる適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0257】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、自然免疫応答の活性化因子、さらなる自然免疫応答の活性化因子、ケモカイン、適応免疫応答の活性化因子、およびさらなる適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0258】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、サイトカイン、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0259】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、サイトカイン、適応免疫応答の活性化因子、およびさらなる適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0260】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、ケモカイン、および適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0261】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤、ケモカイン、適応免疫応答の活性化因子、およびさらなる適応免疫応答の活性化因子を含む。
【0262】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよび抗IL-1β抗体を含む。
【0263】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよび抗IL-6抗体を含む。
【0264】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよび抗IL-6R抗体を含む。
【0265】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤を含む。
【0266】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよびp38 MAPK阻害剤を含む。
【0267】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよびP38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤を含む。
【0268】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよびロスマピモドを含む。
【0269】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよびTGFβR阻害剤を含む。
【0270】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよびCCR2阻害剤を含む。
【0271】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよびCXCR4阻害剤を含む。
【0272】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-1β抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0273】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-6抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0274】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-6R抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0275】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、TGFβR阻害剤、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0276】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、CCR2阻害剤、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0277】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、CXCR4阻害剤、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0278】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0279】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、p38 MAPK阻害剤、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0280】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、P38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤、ならびにTLR7/8アゴニストを含む。
【0281】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、ロスマピモド、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0282】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-1β抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0283】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-6抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0284】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-6R抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0285】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-1β抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0286】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-6抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0287】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、抗IL-6R抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0288】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0289】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、p38 MAPK阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0290】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、P38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0291】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲル、ロスマピモド、およびレシキモドを含む。
【0292】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ハイドロゲルおよびレシキモドを含む。
【0293】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸および抗IL-1β抗体を含む。
【0294】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸および抗IL-6抗体を含む。
【0295】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸および抗IL-6R抗体を含む。
【0296】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸およびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤を含む。
【0297】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸およびp38 MAPK阻害剤を含む。
【0298】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸ならびにP38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤を含む。
【0299】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸およびロスマピモドを含む。
【0300】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸およびTGFβR阻害剤を含む。
【0301】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸およびCCR2阻害剤を含む。
【0302】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸およびCXCR4阻害剤を含む。
【0303】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-1β抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0304】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-6抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0305】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-6R抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0306】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、TGFβR阻害剤、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0307】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、CCR2阻害剤、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0308】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、CXCR4阻害剤、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0309】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0310】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、p38 MAPK阻害剤、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0311】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、P38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤、ならびにTLR7/8アゴニストを含む。
【0312】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、ロスマピモド、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0313】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-1β抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0314】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-6抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0315】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-6R抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0316】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-1β抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0317】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-6抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0318】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、抗IL-6R抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0319】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0320】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、p38 MAPK阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0321】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、P38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0322】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸、ロスマピモド、およびレシキモドを含む。
【0323】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ヒアルロン酸およびレシキモドを含む。
【0324】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネートおよび抗IL-1β抗体を含む。
【0325】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネートおよび抗IL-6抗体を含む。
【0326】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネートおよび抗IL-6R抗体を含む。
【0327】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネートおよびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤を含む。
【0328】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネートおよびp38 MAPK阻害剤を含む。
【0329】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネートおよびP38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤を含む。
【0330】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネートおよびロスマピモドを含む。
【0331】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-1β抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0332】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-6抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0333】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-6R抗体、およびインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストを含む。
【0334】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0335】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、p38 MAPK阻害剤、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0336】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、P38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤、ならびにTLR7/8アゴニストを含む。
【0337】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、ロスマピモド、およびTLR7/8アゴニストを含む。
【0338】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-1β抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0339】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-6抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0340】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-6R抗体、および2’3’-cGAMPを含む。
【0341】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-1β抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0342】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-6抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0343】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、抗IL-6R抗体、および2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)を含む。
【0344】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0345】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、p38 MAPK阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0346】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、P38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤、およびレシキモドを含む。
【0347】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、ロスマピモド、およびレシキモドを含む。
【0348】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネートおよびレシキモドを含む。
【0349】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、アルギネート、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、および抗PD-1抗体を含まない。
【0350】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、1,3,-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア(BCNU)およびエチレン-酢酸ビニルコポリマーを含まない。
【0351】
薬物送達組成物およびデバイスの特性
本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスのために有用な生体材料は、生体適合性である。いくつかの態様において、生体材料(例えば、ハイドロゲル)は、生分解性である。薬物送達組成物およびデバイスは、化学的におよび/または生物学的に、生理学的条件の中で、例えば体内で、分解されることができる。組成物およびデバイスの分解は、構成成分および用いられるハイドロゲルに依存して、多様な速度で起こり得る。例えば、組成物およびデバイスの半減期(組成物の50%がモノマーおよび/または他の非ポリマー性部分に分解する時間)は、数日間、数週間、数か月間、または数年間の桁であってよい。組成物およびデバイスは、生物学的に、例えば酵素活性または細胞の機構により、いくつかの場合においては例えばリゾチームへの暴露を通して(例えば相対的に低いpHを有する)分解されるものであっても、または単純な加水分解により分解されるものであってもよい。いくつかの場合において、組成物およびデバイスは、細胞が、当該細胞に対する著しい毒性を伴うことなく、再使用または処分することができる、モノマーおよび/または他の非ポリマー性部分に分解され得る。薬物送達組成物およびデバイスは、それらが、好適な時間の中で意図される標的に薬物を送達するように、in vivoで安定である。
【0352】
ある態様において、デバイスの90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の12か月後に、in vivoで残留する。
【0353】
ある態様において、組成物の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の6か月後に、in vivoで残留する。
【0354】
ある態様において、組成物の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の5か月後に、in vivoで残留する。
【0355】
ある態様において、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の4か月後に、in vivoで残留する。
【0356】
ある態様において、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の3か月後に、in vivoで残留する。
【0357】
ある態様において、組成物の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の2か月後に、in vivoで残留する。
【0358】
ある態様において、組成物の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の1か月後に、in vivoで残留する。
【0359】
ある態様において、組成物の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の1週間後に、in vivoで残留する。
【0360】
ある態様において、組成物の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下が、0.1%、薬物送達組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の一日後に、in vivoで残留する。
【0361】
粘弾性材料における貯蔵弾性率は、当該材料の弾性部分の貯蔵エネルギーを測定する。貯蔵弾性率は、レオメーターにより測定することができる。本明細書において提供される測定は、室温で、TA InstrumentsのAR-G2磁気ベアリングレオメーターにより行われた。薬物送達組成物およびデバイスの貯蔵弾性率は、組成物の構成成分に基づいて異なるであろう。
【0362】
一般に、チオール修飾されたヒアルロン酸(例えば、GLYCOSIL(登録商標))およびチオール反応性のPEGDA架橋剤(例えば、EXTRALINK(登録商標))の、貯蔵弾性率と濃度との間の関係は、直線的である(感受性の限界を除外する)。例えば、0.8%のGLYCOSIL(登録商標)および0.2%のEXTRALINK(登録商標)の処方物は、約100Paの貯蔵弾性率を有し、1.3%のGLYCOSIL(登録商標)および2%のEXTRALINK(登録商標)の処方物は、約1600Paの貯蔵弾性率を有するであろう。
【0363】
ある態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスは、少なくとも50Pa、少なくとも100Pa、少なくとも200Pa、少なくとも300Pa、少なくとも400Pa、少なくとも500Pa、少なくとも600Pa、少なくとも700Pa、少なくとも800Pa、少なくとも900Pa、少なくとも1000Pa、少なくとも1100Pa、少なくとも1200Pa、少なくとも1300Pa、少なくとも1400Pa、少なくとも1500Pa、少なくとも1600Pa、少なくとも1700Pa、少なくとも1800Pa、少なくとも1900Pa、少なくとも2000Pa、少なくとも2100Pa、少なくとも2200Pa、少なくとも2300Pa、少なくとも2400Pa、少なくとも2500Pa、少なくとも2600Pa、少なくとも2700Pa、少なくとも2800Pa、少なくとも2900Pa、または少なくとも3000Paの貯蔵弾性率を有する。
【0364】
ある態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスは、約50Pa~約100,000,000Pa、約50Pa~約100,000Pa、約50Pa~約10,000Pa、約50Pa~約3,000Pa、約100Pa~約3,000Pa、約100Pa~約2,000Pa、約500Pa~約3,000Pa、約500Pa~約2,000Pa、約1,000Pa~約2,000Pa、約1,200Pa~約1,800Pa、約1,300Pa~約1,700Pa、または約1,400Pa~約1,600Paの貯蔵弾性率を有する。
【0365】
ある態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスは、約600Paまで、約700Paまで、約800Paまで、約900Paまで、約1,000Paまで、約1,100Paまで、約1,200Paまで、約1,300Paまで、約1,400Paまで、約1,500Paまで、約1,600Paまで、約1,700Paまで、約1,800Paまで、約1,900Paまで、約2,000Paまで、約2,500Paまで、約3,000Paまで、約5,000Paまで、約10,000Paまで、約100,000Paまで、約1,000,000Paまで、約10,000,000Paまで、または約100,000,000Paまでの貯蔵弾性率を有する。
【0366】
本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、生理学的条件下において、例えば体内で、1つ以上の治療剤を放出する。1つ以上の治療剤の放出は、組成物またはデバイスの構成成分(例えば、ハイドロゲルのアイデンティティおよび濃度)に依存して、多様な速度で起こり得る。例えば、1つ以上の治療剤の放出速度(治療剤が、もはや組成物またはデバイスの部分ではなくなる時間)は、数分間、数時間、数日間、数週間、数か月間または数年間の桁におけるものであってもよい。治療剤は、多様な機構により、例えば拡散、化学活性、酵素活性、または細胞の機構により、放出され得る。いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、それらが、好適な時間の中で意図される標的に薬物を送達するように、in vivoで安定である。
【0367】
ある態様において、自然免疫系の活性化因子の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後4週間、3週間、2週間、10日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0368】
ある態様において、自然免疫系の活性化因子の99%以上、95%以上、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、または1%以上が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0369】
ある態様において、任意のさらなる自然免疫系の活性化因子の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、4週間、3週間、2週間、10日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0370】
ある態様において、任意のさらなる自然免疫系の活性化因子の99%以上、95%以上、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、または1%以上が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0371】
ある態様において、適応免疫系の活性化因子の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、4週間、3週間、2週間、10日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0372】
ある態様において、適応免疫系の活性化因子の99%以上、95%以上、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、または1%以上が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0373】
ある態様において、任意のさらなる適応免疫系の活性化因子の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、4週間、3週間、2週間、10日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0374】
ある態様において、任意のさらなる適応免疫系の活性化因子の99%以上、95%以上、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、または1%以上が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0375】
ある態様において、サイトカインの90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、4週間、3週間、2週間、10日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0376】
ある態様において、サイトカインの99%以上、95%以上、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、または1%以上が、組成物またはデバイスの投与(例えば移植)の後、1日間、18時間、12時間、8時間、6時間、4時間、3時間、2時間、1時間、45分間、30分間、20分間、15分間、または10分間以内に、in vivoで放出される。
【0377】
薬物送達組成物およびデバイスの調製および投与
本開示は、本明細書において記載されるような治療剤を含む薬物送達組成物およびデバイスを提供する。ある態様において、治療剤は、疾患(例えば、がんなどの増殖性疾患)を処置および/または予防するために、薬物送達組成物およびデバイス中で有効量において提供される。ある態様において、有効量は、特定の治療剤の治療有効量である。ある態様において、有効量は、特定の治療剤の予防有効量である。
【0378】
本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、製薬の分野において公知の任意の方法により調製することができる。ある態様において、かかる調製方法は、チオール修飾されたヒアルロン酸を鋳型中に加えるステップ;炎症誘発経路の阻害剤(例えば、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤)を添加するステップ;任意に適応免疫応答の活性化因子を鋳型中に添加するステップ;任意にケモカインまたはサイトカインを鋳型中に添加するステップ;任意に自然免疫応答の活性化因子を鋳型中に添加するステップ;架橋剤を鋳型中に添加するステップ(例えば、チオール反応性のPEGDA架橋剤);および混合物を少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間、少なくとも25分間、少なくとも30分間、少なくとも35分間、少なくとも40分間、少なくとも45分間、少なくとも50分間、少なくとも55分間、少なくとも1時間、少なくとも90分間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、または少なくとも6時間にわたり、凝固のために静置するステップを含む。
【0379】
ある態様において、ハイドロゲルの調製のために用いられるチオール修飾されたヒアルロン酸(例えば、GLYCOSIL(登録商標))の濃度は、重量/容積により、約1%~約10%、約1%~約5%、約1%~約3%、または約1.5%~約2.5%であり;およびハイドロゲルの調製のために用いられるチオール反応性のPEGDA架橋剤(例えば、EXTRALINK(登録商標))の量は、重量/容積により、約1%~約20%、約10%~約20%、約5%~約15%、または約10%~約15%である。ある好ましい態様において、チオール修飾されたヒアルロン酸の濃度は約2%w/vであり、チオール反応性のPEGDA架橋剤の濃度は約12.5%w/vである。ある態様において、2%のチオール修飾されたヒアルロン酸および12.5%の処方は、約1000Pa~約2000Paの貯蔵弾性率のハイドロゲルを提供する。
【0380】
当該分野において公知の標準的な組織工学適用物の調製のために、チオール修飾されたヒアルロン酸(例えば、GLYCOSIL(登録商標))の典型的な濃度は、約1%w/vであり、チオール反応性のPEGDA架橋剤(例えば、EXTRALINK(登録商標))の典型的な濃度は、約1%w/vである。したがって、2%w/vのチオール修飾されたヒアルロン酸(例えば、GLYCOSIL(登録商標))および12.5%w/vのチオール反応性のPEGDA架橋剤(例えば、EXTRALINK(登録商標))の使用は、開示された薬物送達組成物およびデバイスにおいて、予想外に有用かつ有利な生体材料を提供する。
【0381】
当業者は、ハイドロゲル(例えば、ヒアルロン酸ハイドロゲル)を形成するために適切な濃度で他の架橋剤を用いてもよいことを理解するであろう。例えば、いくつかの態様において、ハイドロゲル(例えば、ヒアルロン酸ハイドロゲル)は、チオール(例えば、EXTRACEL(登録商標)、HYSTEM(登録商標))、メタクリレート、ヘキサデシルアミド(例えば、HYMOVIS(登録商標))、および/またはチラミン(例えば、CORGEL(登録商標))を付加することにより、架橋することができる。いくつかの態様において、ハイドロゲル(例えば、ヒアルロン酸ハイドロゲル)は、ホルムアルデヒド(例えば、HYLAN-A(登録商標))、ジビニルスルホン(DVS)(例えば、HYLAN-B(登録商標))、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)(例えば、RESTYLANE(登録商標))、グルタルアルデヒド、および/またはゲニピンにより、直接的に架橋することができる(例えば、Khunmaneeら、「Crosslinking method of hyaluronic-based hydrogel for biomedical applications」J Tissue Eng. 8: 1-16 (2017)を参照)。いくつかの態様において、ハイドロゲル(例えば、ヒアルロン酸ハイドロゲル)は、ジビニルスルホン(DVS)(例えば、HYLAN-B(登録商標))により架橋される。
【0382】
ある態様において、ハイドロゲルの調製のために用いられるアルギネートの濃度は、重量/容積により、約0.5%~約2.5%、約0.75%~約2.0%、または約1.0%~約1.5%のアルギネートである。ある態様において、ハイドロゲルの調製のために用いられる1Mの塩化カルシウム架橋剤溶液の量は、約5μL~25μL、約10μL~20μL、または約15μLである。ある態様において、目的のペイロードを、約10μL~70μLの溶媒(PBSもしくはDMSO)、20μL~60μLの溶媒(PBSもしくはDMSO)、約30μL~50μLの溶媒(PBSもしくはDMSO)、または約40μLの溶媒(PBSもしくはDMSO)中でロードすることができる。
【0383】
薬物送達組成物およびデバイスは、少なくとも1つの賦形剤をさらに含んでもよい。ある態様において、賦形剤は、リン酸緩衝化食塩水、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、硝酸カルシウム、グルコース、ラクトース、トレハロース、スクロース、またはそれらの組み合わせである。ある態様において、賦形剤は、リン酸緩衝化食塩水、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化ナトリウム、またはそれらの組み合わせである。ある態様において、賦形剤は、リン酸緩衝化食塩水である。
【0384】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ナノ粒子または微小粒子を含まない。ナノ粒子は、1~100nmのサイズの粒子を含む。微小粒子は、0.1~100μmのサイズの粒子を含む。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、シリカ微小粒子、ポリエチレン微小粒子、ポリスチレン微小粒子、ポリエステル微小粒子、ポリ無水物微小粒子、ポリカプロラクトン微小粒子、ポリカーボネート微小粒子、またはポリヒドロキシ酪酸微小粒子を含まない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、多孔質シリカ微小粒子を含まない。
【0385】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、1つ以上の有機溶媒を含む。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
【0386】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、有機溶媒を含まない。ある態様において、有機溶媒は、組成物またはデバイスの調製において用いられない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、有機溶媒を含まない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、有機溶媒を実質的に含まない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、重量により、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、または0.0001%未満の有機溶媒を含む。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、重量により、1000ppm未満、500ppm未満、400ppm未満、300ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、1ppm未満、10ppb未満、または1ppb未満の有機溶媒を含む。ある態様において、薬物送達組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含まない。
【0387】
ある態様において、薬物送達組成物は、有機溶媒を含む。ある態様において、有機溶媒は、シクロデキストリン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはそれらの組み合わせである。
【0388】
薬物送達組成物およびデバイスは、バルクで、単一の単位用量として、および/または複数の単一の単位用量として、調製、包装および/または販売することができる。「単位用量」とは、予め決定された量の治療剤を含む、組成物またはデバイスの個別の量である。治療剤の量は、一般に、対象に投与されるであろう治療剤の投与量に等しいか、および/またはかかる投与量の便利な画分、例えばかかる投与量の2分の1、3分の1、または4分の1などである。
【0389】
本開示の組成物またはデバイス中の、治療剤、賦形剤、および/または任意のさらなる成分の相対量は、処置される対象のアイデンティティ、サイズ、および/または状態に依存して変化し得る。例として、組成物またはデバイスは、0.1%~99%(w/w)、0.1%~90%(w/w)、0.1%~80%(w/w)、0.1%~70%(w/w)、1%~50%(w/w)、10%~80%(w/w)、10%~90%(w/w)、10%~80%(w/w)、20%~80%(w/w)、30%~80%(w/w)、30%~70%(w/w)、または40%~60%(w/w)の治療剤を含んでもよい。
【0390】
提供される薬物送達組成物およびデバイスの製造において、さらなる薬学的に受入可能な賦形剤を用いてもよい。これらは、不活性な希釈剤、分散剤および/または造粒剤、界面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝化剤、潤滑剤、および/または油脂を含む。カカオバターおよび坐剤用ロウなどの賦形剤、着色剤およびコーティング剤もまた、組成物またはデバイス中に存在してもよい。
【0391】
例示的な希釈剤として、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉糖、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0392】
例示的な造粒剤および/または分散剤として、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、クレイ、アルギン酸、グアーガム、柑橘類の果肉、寒天、ベントナイト、セルロース、および木製製品、天然の海綿、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、シリケート、炭酸ナトリウム、架橋されたポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、デンプンカルボキシメチルナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化(pregelatinized)デンプン(starch 1500)、微結晶性デンプン、非水溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(VEEGUM)、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0393】
例示的な界面活性剤および/または乳化剤として、天然の乳化剤(例えば、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ロウおよびレシチン)、コロイド状粘土(例えば、ベントナイト(ケイ酸アルミニウム)およびVeegum(ケイ酸マグネシウムアルミニウム))、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレート、およびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)80)、ソルビタンモノパルミテート(Span(登録商標)40)、ソルビタンモノステアレート(Span(登録商標)60)、ソルビタントリステアレート(Span(登録商標)65)、グリセリルモノラウレート、ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)80))、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート(MYRJ 45)、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびSolutol)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor(商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ 30))、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、PLURONIC(登録商標)F-68(別名Poloxamer-188)、PLURONIC(登録商標)F-127(別名Poloxamer-407)、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウム、および/またはこれらの混合物が挙げられる。
【0394】
例示的な結合剤として、デンプン(例えば、コーンスターチおよびデンプン糊)、ゼラチン、糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、モラセス、ラクトース、ラクチトール、マンニトールなど)、天然および合成のゴム(例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモス抽出物、パンワー(panwar)ゴム、ガッチ(ghatti)ゴム、イサプゴール(isapol)外皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(VEEGUM)、およびカラマツアラビノガラクタン)、アルギネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ロウ、水、アルコール、および/またはこれらの混合物が挙げられる。
【0395】
例示的な保存剤として、抗酸化剤、キレート剤、抗菌性保存剤、抗真菌性保存剤、アルコール性保存剤、酸性保存剤、および他の保存剤が挙げられる。ある態様において、保存剤は、抗酸化剤である。他の態様において、保存剤は、キレート剤である。
【0396】
例示的な抗酸化剤として、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0397】
例示的なキレート剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ならびにその塩および水和物(例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸二カリウムなど)、クエン酸酸ならびにその塩および水和物(例えば、クエン酸一水和物)、フマル酸ならびにその塩および水和物、リンゴ酸ならびにその塩および水和物、リン酸ならびにその塩および水和物、および酒石酸ならびにその塩および水和物が挙げられる。例示的な抗菌性保存剤として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、フェニル硝酸水銀、プロピレングリコール、およびチメロサールが挙げられる。
【0398】
例示的な抗真菌性保存剤として、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびソルビン酸が挙げられる。
【0399】
例示的なアルコール保存剤として、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール性化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、およびフェニルエチルアルコールが挙げられる。
【0400】
例示的な酸性保存剤として、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータ-カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、およびフィチン酸が挙げられる。
【0401】
他の保存剤として、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテルオキシムメシレート(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANT PLUS、PHENONIP、メチルパラベン、GERMALL 115、GERMABEN II、NEOLONE、KATHON、およびEUXYLが挙げられる。
【0402】
例示的な緩衝化剤として、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロピオン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、水酸化カルシウムリン酸、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0403】
例示的な潤滑剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、モルト、ベヘン酸グリセリル、水素化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0404】
例示的な天然の油脂として、アーモンド油、杏仁油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、クロフサスグリ種子油、ルリジサ油、カデ油、カミツレ油、キャノーラ油、キャラウェイ油、カルナウバロウ(carnauba)油、ヒマシ油、ケイヒ油、カカオバター油、ココナッツ油、タラ肝油、コーヒー油、コーン油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、亜麻仁油、ゲラニオール油、ヒョウタン油、ブドウ種子油、ハシバミ実油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、アオモジ油、マカダミアナッツ油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、桃仁油、ピーナッツ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、ナタネ油、コメヌカ油、ローズマリー油、ベニバナ油、サンダルウッド油、サスクアナ(sasquana)油、セイボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター油、シリコーン油、ダイズ油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチバー油、クルミ油およびコムギ胚芽油が挙げられる。例示的な合成の油脂として、これらに限定されないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン(cyclomethicone)、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0405】
本明細書において提供される薬物送達組成物の説明は、主にヒトへの投与のために好適な組成物に向けられているが、当業者は、かかる組成物が、一般に全ての種類の動物への投与のために好適であることを理解するであろう。組成物を、多様な動物への投与のために好適にするためのヒトへの投与のために好適な薬物送達組成物の改変は、よく理解されており、通常の技術を有する薬理学者は、通常の実験により、かかる改変を設計および/または実施することができる。
【0406】
本明細書において提供される薬物送達組成物およびデバイスは、典型的には、投与の容易性のために、意図された使用(例えば外科移植)のために適切なサイズ(例えば容積)および重量で処方される。しかし、本開示の組成物またはデバイスの総量(例えば、移植されたデバイスの数)は、主治医により、健全な医学的判断の範囲内において決定されるであろうことが、理解されるであろう。任意の特定の対象または生物のための具体的な治療的に有効な用量レベルは、処置されている疾患および障害の重篤度;使用される特定の活性成分の活性;使用される特定の組成物;対象の年齢、体重、一般的健康、性別および食事;投与の時間、投与の経路、および使用される特定の活性成分の排出の速度;処置の期間;使用される特定の活性成分と組み合わせて用いられる薬物;ならびに医学の分野において周知の類似の要因を含む、多様な要因に依存するであろう。
【0407】
本明細書において提供される薬物送達組成物およびデバイスは、外科移植により投与することができる。例えば、薬物送達組成物またはデバイスは、切除された腫瘍のボイド容量における外科移植により投与することができる。さらなる例として、薬物送達組成物またはデバイスは、外科移植により投与して、生体接着剤により固定することができる。ある態様において、薬物送達組成物またはデバイスは、切除された腫瘍のボイド容量における生体接着剤により固定することができる。
【0408】
ある態様において、薬物送達組成物またはデバイスは、外科移植により、切除された腫瘍のボイド容量の100cm、90cm、80cm、70cm、60cm、50cm、40cm、30cm、20cm、10cm、9cm、8cm、7cm、6cm、5cm、4cm、3cm、2cm、1cm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm以内の部位に投与される。ある態様において、切除された腫瘍のボイド容量は、腫瘍を有する切除された臓器(例えば、肺、腎臓、膵臓、肝臓、結腸、精巣、卵巣、乳房、虫垂、膀胱)のボイド容量である。ある態様において、切除された腫瘍のボイド容量は、腫瘍を有する臓器(例えば、肺、腎臓、膵臓、肝臓、結腸、精巣、卵巣、乳房、虫垂、膀胱)の切除された部分のボイド容量である。
【0409】
ある態様において、ハイドロゲルの前駆体構成成分(例えば、ヒアルロン酸)および架橋剤は、対象に(例えば、腫瘍切除の部位において)別々に投与され、したがって、in vivoで薬物送達組成物を形成する。ある態様において、ハイドロゲルの前駆体構成成分(例えば、ヒアルロン酸)および架橋剤は、連続的に投与される。ある態様において、ハイドロゲルの前駆体構成成分(例えば、ヒアルロン酸)および架橋剤は、同時に投与される。ある態様において、ハイドロゲルの前駆体構成成分(例えば、ヒアルロン酸)および架橋剤は、混合物として投与される。ある態様において、投与は、注射を介するものである。
【0410】
ある態様において、アルギネートおよび架橋剤は、対象に(例えば、腫瘍切除の部位において)別々に投与され、したがって、in vivoで薬物送達組成物を形成する。ある態様において、アルギネートおよび架橋剤は、連続的に投与される。ある態様において、アルギネートおよび架橋剤は、同時に投与される。ある態様において、アルギネートおよび架橋剤は、混合物として投与される。ある態様において、投与は、注射を介するものである。
【0411】
有効量を達成するために必要とされる治療剤の正確な量は、例えば、対象の種、年齢および一般的状態、副作用または障害の重篤度、特定の剤のアイデンティティなどに依存して、対象ごとに変化するであろう。
【0412】
ある態様において、70kgの成人ヒトへの投与のための組成物またはデバイスの有効量は、約0.0001mg~約3000mg、約0.0001mg~約2000mg、約0.0001mg~約1000mg、約0.001mg~約1000mg、約0.01mg~約1000mg、約0.1mg~約1000mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mg、または約100mg~約1000mgを含んでもよい。
【0413】
ある態様において、組成物またはデバイスは、所望される治療効果を得るために、対象の体重1kgあたり1日あたり約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kgの組成物中に存在する治療剤のいずれかを送達するために十分な投与量レベルであってよい。
【0414】
本明細書において記載されるような用量範囲は、提供される薬物送達組成物およびデバイスの成人への投与のためのガイダンスを提供することは、理解されるであろう。例えば小児または青年に投与されるべき量は、医師または当業者により決定され得、成人に投与されるより低くても、これと同じであってもよい。
【0415】
また、本明細書において記載されるような組成物およびデバイスは、1つ以上のさらなる医薬剤と組み合わせて投与することができることが、理解するであろう。例えば、組成物およびデバイスは、それらの代謝を低下させるかおよび/またはこれを改変するか、それらの排出を阻害するか、および/またはそれらの体内での分布を改変する、さらなる医薬剤と組み合わせて投与することができる。また、使用されるさらなる治療は、同じ障害のために所望される効果を達成しても、および/またはそれは、異なる効果を達成してもよいことが、理解されるであろう。
【0416】
組成物およびデバイスは、例えば併用治療剤として有用であり得る、1つ以上のさらなる医薬剤と同時に、これより前に、またはこれの後に、投与することができる。医薬剤は、治療活性剤を含む。医薬剤はまた、予防活性剤を含む。各々のさらなる医薬剤は、その医薬剤について決定された用量において、および/または時間スケジュールにおいて、投与してもよい。さらなる医薬剤は、異なる用量および/または異なる投与の経路において、別々に投与されるであろう。レジメンにおいて使用するための特定の組み合わせは、薬物送達組成物のさらなる医薬剤との適合性、ならびに/または達成されるべき所望される治療および/もしくは予防効果を考慮するであろう。一般的に、組み合わせにおいて利用されるさらなる医薬剤は、それらが個々に利用されるレベルを超えないレベルにおいて、利用されることが期待される。いくつかの態様においては、組み合わせにおいて利用されるレベルは、個々に利用されるものよりも低くなるであろう。
【0417】
例示的なさらなる医薬剤として、これらに限定されないが、抗増殖剤、抗がん剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、および疼痛緩和剤が挙げられる。医薬剤として、薬物化合物(例えば、連邦規則集(CFR)中に提供されるように米国食品医薬品局により承認された化合物)などの小分子治療剤、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成のポリペプチドまたはタンパク質、タンパク質に連結した小分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、ビタミンおよび細胞が挙げられる。
【0418】
ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、細胞を含まない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、養子移入された細胞を含まない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、T細胞を含まない。ある態様において、さらなる医薬剤は、養子移入された細胞ではない。ある態様において、さらなる医薬剤は、T細胞ではない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、腫瘍抗原を含まない。ある態様において、薬物送達組成物およびデバイスは、ex vivoでロードされた腫瘍抗原を含まない。
【0419】
ある態様において、「薬物送達組成物」とは、液体の形態における組成物(例えば粘性の溶液)を指す。ある態様において、用語「薬物送達デバイス」とは、固体の形態における組成物(例えばハイドロゲル)を指す。ある態様において、組成物からデバイスへの移行は、結果として生じる材料が物理的に操作されることができ、外科的手法により移植されることができるだけの固体形態と一致する貯蔵弾性率を有するような、十分な架橋により起こり得る。したがって、薬物送達デバイスは、その固体の形態において、本開示の意図された使用(例えば、外科的移植)を実施するために、特に受け入れられ得る。
【0420】
ある態様において、薬物送達組成物および/または薬物送達デバイスは、in vivoでの移植の直前に(例えば、手術室または近傍において)調製される。ある態様において、薬物送達組成物および/または薬物送達デバイスは、in vivoでの移植の24時間、18時間、12時間、11時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分、20分、10分、5分、または1分以内に、調製される。
【0421】
ある態様において、薬物送達組成物および/または薬物送達デバイスは、in vivoでの移植に先立って調製される。ある態様において、薬物送達組成物および/または薬物送達デバイスは、in vivoでの移植の31日、28日、21日、14日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、1日以内に調製される。
【0422】
ある態様において、薬物送達組成物は、治療的セッティングにおけるその使用の1年間、10か月、8か月、6か月、4か月、3か月、2か月、31日、28日、21日、14日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、または1日以内に調製される。ある態様において、調製された薬物送達組成物は、次いで、本明細書において記載されるとおり、架橋剤の添加により対応する薬物送達デバイスを調製するために、in vivoでの移植の31日、28日、21日、14日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、1日、18時間、12時間、11時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分、20分、10分、5分、または1分以内に使用される。
【0423】
本開示によりまた包含されるのは、キットである。提供されるキットは、本明細書において記載される組成物および/またはデバイス、ならびに容器(例えば、バイアル、アンプル、ボトル、シリンジ、および/またはディスペンサーパッケージ、または他の好適な容器)を含んでもよい。いくつかの態様において、提供されるキットは、任意に、本明細書において記載される医薬組成物または化合物の希釈または懸濁のための医薬用賦形剤を含む第2の容器をさらに含んでもよい。いくつかの態様において、キットは、薬物送達組成物および/または薬物送達デバイスに対する前駆体構成成分(例えば、ヒアルロン酸および架橋剤;またはアルギネートおよび架橋剤)を含む。
【0424】
ある態様において、キットは、ハイドロゲルおよび炎症誘発経路の阻害剤(例えば、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤)を含む。ある態様において、キットは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤(例えば、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤)、および自然免疫応答の活性化因子を含む。ある態様において、キットは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤(例えば、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤)、およびサイトカインを含む。ある態様において、キットは、ハイドロゲル、炎症誘発経路の阻害剤(例えば、p38 MAPK経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤)、および適応免疫応答の活性化因子を含む。ある態様において、キットは、自然免疫の機能の活性化因子をさらに含む。ある態様において、キットは、サイトカインをさらに含む。ある態様において、キットは、適応免疫応答の活性化因子をさらに含む。ある態様において、キットは、マクロファージのエフェクター機能の修飾因子をさらに含む。ある態様において、キットは、さらなる適応免疫応答の活性化因子をさらに含む。ある態様において、キットは、腫瘍溶解性ウイルス、放射性同位体、免疫調節性の化学療法剤、標的剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む。ある態様において、キットは、本明細書において記載される任意の薬物送達組成物を含む。ある態様において、キットは、本明細書において記載される任意の薬物送達デバイスを含む。
【0425】
ある態様において、キットは、化学療法剤を含まない。ある態様において、キットは、細胞傷害剤を含まない。
【0426】
ある態様において、本明細書において記載されるキットは、当該キットを用いるための指示をさらに含む。本明細書において記載されるキットは、米国食品医薬品局(FDA)などの規制当局により要求されるような情報を含んでもよい。ある態様において、キット中に含まれる情報は、処方の情報である。ある態様において、キットおよび指示は、がんの処置を準備する。本明細書において記載されるキットは、本明細書において記載される1つ以上のさらなる医薬剤を、別の組成物として含んでもよい。
【0427】
処置の方法および使用
本開示は、対象におけるがん(例えば、肉腫、癌腫、リンパ腫、生殖細胞腫瘍または芽細胞腫)などの増殖性疾患の処置および/または予防のために、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスを用いる方法を提供する。いくつかの態様において、本明細書において記載される組成物および/またはデバイスは、切除可能な腫瘍の処置における使用のためのものである。いくつかの態様において、本明細書において記載される組成物および/またはデバイスは、脾臓またはリンパ系の外の組織、例えば甲状腺または胃において存在するリンパ腫の処置における使用のためのものである。
【0428】
いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、がんを処置することにおいて有用である。いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、がんの症状の発症を遅延させるか、これの進行を遅らせるか、またはこの症状を寛解させるために有用である。いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、がんを予防するために有用である。いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、原発腫瘍の再増殖を予防するために有用である。いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、腫瘍転移を予防するために有用である。いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、癌を処置するための他の化合物、薬物または治療剤と組み合わせて投与される。
【0429】
ある態様において、がんは、固形腫瘍である。ある態様において、がんは、肉腫、癌腫、リンパ腫、生殖細胞腫瘍、芽細胞腫、またはそれらの組み合わせである。ある態様において、腫瘍は、肉腫、癌腫、リンパ腫、生殖細胞腫瘍、芽細胞腫、またはそれらの組み合わせである。
【0430】
いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、以下を含むがこれらに限定されない、がんを処置するために有用である:聴神経腫瘍;腺癌;副腎癌;肛門癌;血管肉腫(angiosarcoma)(例えば、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、血管肉腫(hemangiosarcoma));虫垂癌;良性単クローン性免疫グロブリン血症;胆道癌(例えば、胆管細胞癌);胆管癌;膀胱癌;骨癌;乳癌(例えば、胸部の腺癌、胸部の乳頭癌、乳癌、胸部の髄様癌);脳癌 (例えば、髄膜腫、神経膠芽腫、神経膠腫(例えば、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、髄芽腫);気管支癌;カルチノイド腫瘍;心臓腫瘍;子宮頚癌(例えば、子宮頚部の腺癌);絨毛癌;脊索腫;頭蓋咽頭腫;結腸直腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌、結腸直腸腺癌);結合組織癌;上皮癌;非浸潤性乳管癌;上衣腫;上皮肉腫(例えば、カポジ肉腫、多発性特発性出血性肉腫);子宮内膜癌(例えば、子宮癌、子宮肉腫);食道癌(例えば、食道の腺癌、バレット腺癌);ユーイング肉腫;眼癌(例えば、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫);家族性過好酸球増加症;胆嚢癌;胃癌(例えば、胃の腺癌);消化管間質腫瘍(GIST);生殖細胞癌;頭頚部癌(例えば、頭頚部扁平上皮癌、口腔癌(例えば、口腔扁平上皮癌)、喉の癌(例えば、喉頭癌、咽頭癌、上咽頭癌、中咽頭癌);造血器の癌(例えば、リンパ腫、原発性肺リンパ腫、気管支関連リンパ組織のリンパ腫、脾臓リンパ腫、結節辺縁帯リンパ腫、小児B細胞非ホジキンリンパ腫);血管芽腫;組織球増殖症;下咽頭癌;炎症性筋線維芽細胞腫瘍;免疫細胞アミロイドーシス;腎臓癌(例えば、腎芽腫、別名ウィルムス腫瘍、腎細胞癌);肝臓癌(例えば、肝細胞癌(HCC)、悪性ヘパトーマ);肺癌(例えば、気管支原性肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌);平滑筋肉腫(LMS);黒色腫;正中線癌;多発性内分泌腫瘍症候群;筋癌;中皮腫;上咽頭癌;神経芽腫;神経線維腫(例えば、神経線維腫症(NF)1型または2型、神経鞘腫症);神経内分泌癌(例えば、膵消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、カルチノイド腫瘍);骨肉腫(例えば、骨癌);卵巣癌(例えば、嚢胞腺癌、卵巣胎児性癌、卵巣腺癌);乳頭状腺癌;膵臓癌(例えば、膵臓腺癌、膵管内乳頭粘液性新生物(IPMN)、島細胞腫瘍);副甲状腺癌;乳頭状腺癌;陰茎癌(例えば、陰茎および陰嚢のパジェット病);咽頭癌;松果体腫;下垂体癌;胸膜肺芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍(PNT);形質細胞新形成;腫瘍随伴症候群;上皮内新生物;前立腺癌(例えば、前立腺の腺癌);直腸癌;横紋筋肉腫;網膜芽細胞腫;唾液腺癌;皮膚癌(例えば、扁平上皮癌(SCC)、角化棘細胞腫(KA)、黒色腫、基底細胞癌(BCC));小腸の癌(例えば虫垂癌);軟部組織肉腫(例えば、悪性線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、軟骨肉腫、線維肉腫、粘液肉腫);皮脂腺癌;胃癌;小腸癌;汗腺の癌;滑膜腫;精巣癌(例えば、セミノーマ、精巣胎児性癌);胸腺癌;甲状腺癌(例えば、甲状腺の乳頭癌、甲状腺乳頭癌(PTC)、甲状腺髄様癌);尿道癌;子宮癌;腟癌;外陰癌(例えば、外陰のパジェット病)、または任意のそれらの組み合わせ。
【0431】
ある態様において、がんは、乳癌である。ある態様において、がんは、皮膚癌である。ある態様において、がんは、黒色腫である。ある態様において、がんは、肺癌である。ある態様において、がんは、腎臓癌である。ある態様において、がんは、肝臓癌である。ある態様において、がんは、膵臓癌である。ある態様において、がんは、結腸直腸癌である。ある態様において、がんは、膀胱癌である。ある態様において、がんは、リンパ腫である。ある態様において、がんは、前立腺癌である。ある態様において、がんは、甲状腺癌である。
【0432】
いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、以下を処置するために有用である:腺癌、副腎癌、肛門癌、血管肉腫、虫垂癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、気管支癌、カルチノイド腫瘍、心臓腫瘍、子宮頚癌、絨毛癌、脊索腫、結腸直腸癌、結合組織癌、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管癌、上皮肉腫、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫、眼癌、家族性過好酸球増加症、胆嚢癌、胃癌、胃腸管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、生殖細胞癌、頭頚部癌、血管芽腫、組織球増殖症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、上皮内新生物、免疫細胞アミロイドーシス、カポジ肉腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、平滑筋肉腫(LMS)、黒色腫、正中線癌、多発性内分泌腫瘍症候群、筋癌、中皮腫、骨髄増殖性障害(MPD)、上咽頭癌、神経芽腫、神経線維腫、神経内分泌癌、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、腫瘍随伴症候群、副甲状腺癌、乳頭状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体腫、下垂体癌、胸膜肺芽細胞腫、原始神経外胚葉性腫瘍(PNT)、形質細胞新形成、前立腺癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮脂腺癌、皮膚癌、小腸の癌、小腸癌、軟部組織肉腫、胃癌、汗腺の癌、滑膜腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、腟癌、血管の癌、外陰癌、またはそれらの組み合わせ。
【0433】
いくつかの態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、固形腫瘍および転移を処置および/または予防することにおいて有用である。
【0434】
例えば、いくつかの態様において、方法は、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイス(例えば、ハイドロゲル生体材料およびp38 MAPK経路の阻害剤を含むもの)を、最近腫瘍切除を経験した対象標的部位に投与することを含む。いくつかの態様において、標的部位は、腫瘍切除部位である。いくつかの態様において、標的部位は、センチネルリンパ節である。いくつかの態様において、標的部位は、流入領域リンパ節である。いくつかの態様において、標的部位は、がん治療、例えば化学療法または放射線照射に先立って、癌細胞が処置または殺傷された部位である。
【0435】
いくつかの態様において、標的部位に投与される薬物送達組成物(例えば、ハイドロゲル生体材料およびp38 MAPK経路の阻害剤を含むもの)は、予め形成されたゲルであり、それは、移植により標的部位に投与することができる。いくつかの態様において、標的部位に投与される薬物送達組成物(例えば、ハイドロゲルの前駆体構成成分およびp38 MAPK経路の阻害剤を含むもの)は、注射可能なフォーマット(例えば液体)におけるものである。いくつかの態様において、本明細書において記載される投与は、in situで相互作用または反応して、本明細書において記載されるようなゲル組成物を形成する、1つ以上の生体材料(例えば、ハイドロゲル)前駆体構成成分の投与を含む;いくつかのかかる態様において、かかる相互作用または反応は、架橋することを含み、これは、いくつかの態様においては自発的に起こり得、いくつかの態様においては、剤の適用(例えば、触媒および/もしくは反応物)ならびに/または条件(例えば、熱、pH、圧力、特定の波長におけるものであってよい電磁放射などのうちの1つ以上)により引き起こされ得る。いくつかの態様において、生体材料(例えば、ハイドロゲル)は、チオール(例えば、EXTRACEL(登録商標)、HYSTEM(登録商標))、メタクリレート、ヘキサデシルアミド(例えば、HYMOVIS(登録商標))、および/またはチラミン(例えば、CORGEL(登録商標))を付加させることにより、架橋することができる。いくつかの態様において、生体材料(例えば、ハイドロゲル)は、ホルムアルデヒド(例えば、HYLAN-A(登録商標))、ジビニルスルホン(DVS)(例えば、HYLAN-B(登録商標))、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)(例えば、RESTYLANE(登録商標))、グルタルアルデヒド、および/またはゲニピンにより、直接的に架橋することができる(例えば、Khunmaneeら、「Crosslinking method of hyaluronic-based hydrogel for biomedical applications」J Tissue Eng. 8: 1-16(2017)を参照)。いくつかの態様において、生体材料(例えば、ハイドロゲル)は、ジビニルスルホン(DVS)(例えば、HYLAN-B(登録商標))により架橋される。
【0436】
ある態様において、本明細書において記載される方法は、対象において、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスの有効量を移植すること(例えば、生体材料ゲルまたは本明細書において記載されるようなその前駆体のセットの投与を介して)を含む。ある態様において、本明細書において記載される方法は、対象において、本明細書において記載される薬物送達組成物またはデバイスの有効量を、外科的に移植することを含む。ある態様において、本明細書において記載される方法は、腫瘍の外科的切除の後に、薬物送達組成物またはデバイスを移植することをさらに含む。ある態様において、本明細書において記載される方法は、腫瘍切除の部位において、薬物送達組成物またはデバイスを移植することをさらに含む。ある態様において、本明細書において記載される方法は、切除された腫瘍のボイド容量において、薬物送達組成物またはデバイスを移植することをさらに含む。ある態様において、本明細書において記載される方法は、腫瘍切除外科手術の間に、腫瘍切除部位において、薬物送達組成物またはデバイスを移植することをさらに含む。
【0437】
ある態様において、本明細書において記載される方法は、切除された腫瘍の、重量により50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の除去の後で、薬物送達組成物またはデバイスを投与すること(例えば移植すること)を含む。ある態様において、本明細書において記載される方法は、切除された腫瘍の、容積により、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の除去の後で、薬物送達組成物またはデバイスを投与すること(例えば移植すること)を含む。
【0438】
ある態様において、本明細書において記載される方法は、腫瘍に隣接する部位に薬物送達組成物またはデバイスを投与すること(例えば移植すること)を含まない。ある態様において、本明細書において記載される方法は、腫瘍の切除なしで、腫瘍に隣接して、薬物送達組成物またはデバイスを投与すること(例えば移植すること)を含まない。
【0439】
ある態様において、本明細書において記載される薬物送達組成物およびデバイスは、本明細書において記載される1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与される。ある態様において、さらなる治療剤は、抗がん剤である。
【0440】
ある態様において、処置されている対象は、哺乳動物である。ある態様において、対象は、ヒトである。ある態様において、対象は、ネオアジュバント(術前)化学療法を受けたヒト患者である。ある態様において、対象は、ネオアジュバント放射線療法を受けたヒト患者である。ある態様において、対象は、ネオアジュバント化学療法および放射線療法を受けたヒト患者である。ある態様において、対象は、ネオアジュバント分子標的治療を受けたヒト患者である。ある態様において、対象は、免疫チェックポイント遮断(例えば、抗CTLA-4、抗PD-1および/または抗PD-L1)を含むネオアジュバント免疫療法を受けたヒト患者である。ある態様において、対象は、免疫チェックポイント遮断(例えば、抗CTLA-4、抗PD-1および/または抗PD-L1)を含むネオアジュバント免疫療法を受けていないヒト患者である。ある態様において、対象は、その腫瘍が、ネオアジュバント治療に対して客観的に応答していない(固形癌効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors:RECIST)または免疫関連効果判定基準(immune-related Response Criteria:irRC)により定義されるとおり)ヒト患者である(例えば、安定疾患、進行性疾患)。ある態様において、対象は、その標的病変が、ネオアジュバント治療に対して客観的に応答している(例えば、部分的応答、完全応答)ヒト患者である。非標的病変は、不完全な応答、安定疾患または進行性疾患を示していてもよい。ある態様において、対象は、アジュバント(術後)セッティングにおける治療の標準として、免疫療法を受けるために適格であろうヒト患者である。ある態様において、対象は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジまたはヤギなどの飼育動物である。ある態様において、対象は、イヌまたはネコなどの伴侶動物である。ある態様において、対象は、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジまたはヤギなどの家畜動物である。ある態様において、対象は、動物園の動物である。別の態様において、対象は、げっ歯類、ブタ、イヌまたは非ヒト霊長類などの研究動物である。ある態様において、対象は、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックブタなどの、非ヒトトランスジェニック動物である。
【0441】
例
本明細書において記載される本発明がより完全に理解され得るために、以下の例を記載する。これらの例は、単に説明を目的とするものであり、本発明をいかなる様式においても限定するものとして解釈されるべきではないことが、理解されるべきである。
【0442】
例1.例示的な薬物送達組成物の調製および使用
本明細書において記載されるいくつかの態様によるハイドロゲルを調製するために、架橋可能なヒアルロン酸(例えば、GLYCOSIL(登録商標)ヒアルロン酸などのチオール修飾されたヒアルロン酸)および化学架橋剤(例えば、ポリエチレンジアクリレートなどのチオール反応性の架橋剤、例えば、EXTRALINK(登録商標)ポリエチレングリコールジアクリレート架橋剤)を組み合わせて、ハイドロゲルを形成させた。ハイドロゲルは、組み合わせた試薬を少なくとも1時間にわたり静置させることにより、形成された。ハイドロゲルの貯蔵弾性率は、レオメーターにより測定した。それらを表1においてまとめる。
表1.
【表1】
【0443】
図1のためのハイドロゲルは、表1におけるハイドロゲル1について記載される方法に従って調製した。120μLのヒアルロン酸溶液(2.0%w/vのGLYCOSIL)を、鋳型中にピペッティングした。1mgのp38 MAPK阻害剤(例えば、ロスマピモド(Selleckchem))を、10μLのDMSO中に溶解し、この溶液を、鋳型中のヒアルロン酸溶液に添加した。ペイロードの均一な分布を作り出すために混合した後で、30μLのPEG-ジアクリレート架橋剤溶液(12.5%w/vのEXTRALINK)を、鋳型中にピペッティングした。架橋されたハイドロゲルは、数分間の経過の間に鋳型中で凝固した。メスのBALB/cJマウスに、それらの第4乳腺脂肪体において同所性に4T1-Luc2乳癌細胞を接種した。腫瘍接種の後第10日において、腫瘍(約100mm
3)を切除し、p38 MAPK阻害剤(例えば、ロスマピモド)をロードしたハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸ハイドロゲル)を、腫瘍切除部位中に配置した。空のハイドロゲルを、陰性対照として用いた。p38阻害剤延長された局所放出による生存の延長の利益が観察された(
図1)。
【0444】
図2のためのハイドロゲルは、表1におけるハイドロゲル1について記載された方法に従って調製した。120μLのヒアルロン酸溶液(2.0%w/vのGLYCOSIL)を、鋳型中にピペッティングした。500μg(40μL)の抗IL-1β抗体(例えば、クローンB122(BioXCell))を、鋳型中のヒアルロン酸溶液に添加した。ペイロードの均一な分布を作り出すために混合した後で、30μLのPEG-ジアクリレート架橋剤溶液(12.5%w/vのEXTRALINK)を、鋳型中にピペッティングした。架橋されたハイドロゲルは、数分間の経過の間に鋳型中で凝固した。メスのBALB/cJマウスに、それらの第4乳腺脂肪体において、同所性に4T1-Luc2乳癌細胞を播種した。腫瘍接種の後第10日において、腫瘍(約100mm
3)を切除し、抗IL-1β抗体(例えば、クローンB122)をロードしたハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸ハイドロゲル)を、腫瘍切除部位中に配置した。空のハイドロゲルを、陰性対照として用いた。抗IL-1β抗体の延長された局所放出による生存の延長の利益が観察された(
図2)。
【0445】
図3のためのハイドロゲルは、表1におけるハイドロゲル1について記載された方法に従って調製した。120μLのヒアルロン酸溶液(2.0%w/vのGLYCOSIL)を、鋳型中にピペッティングした。500μg(40μL)の抗IL-6抗体(例えば、クローンMP5-20F3(BioXCell))を、鋳型中のヒアルロン酸溶液に添加した。ペイロードの均一な分布を作り出すために混合した後で、30μLのPEG-ジアクリレート架橋剤溶液(12.5%w/vのEXTRALINK)を、鋳型中にピペッティングした。架橋されたハイドロゲルは、数分間の経過の間に鋳型中で凝固した。メスのBALB/cJマウスに、それらの第4乳腺脂肪体において、同所性に4T1-Luc2乳癌細胞を播種した。腫瘍接種の後第10日において、腫瘍(約100mm
3)を切除し、抗IL-6抗体(例えばクローンMP5-20F3)をロードしたハイドロゲル(例えば、架橋されたヒアルロン酸ハイドロゲル)を、腫瘍切除部位中に配置した。空のハイドロゲルを、陰性対照として用いた。抗IL-6抗体の延長された局所放出による生存の延長の利益が観察された(
図3)。
【0446】
均等物および範囲
請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、文脈から逆であることが示されるかまたは別段に明らかでないかぎり、1つまたは1つより多くを意味し得る。グループのうちの1つ以上のメンバーの間に「or」を含む請求項または記載は、文脈から逆であることが示されるかまたは別段に明らかでないかぎり、グループのメンバーのうちの1つ、1つより多く、または全てが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、これにおいて使用されるか、またはこれに別段に関連がある場合に、満たされると考えられる。本発明は、グループのうちの正確に1つのメンバーが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、これにおいて使用されるか、またはこれに別段に関連がある態様を含む。本発明は、グループのうちの1つより多く、または全てが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在するか、これにおいて使用されるか、またはこれに別段に関連がある態様を含む。
【0447】
さらに、本発明は、列記される請求項のうちの1つ以上からの1つ以上の限定、要素、節、および説明的用語が、別の請求項に導入される、全てのバリエーション、組み合わせおよび並べ替えを包含する。例えば別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基礎請求項に従属する任意の他の請求項において見出される1つ以上の限定を含むように改変することができる。要素がリストとして、例えばマーカッシュ群の形式において存在する場合、要素の各々のサブグループもまた開示され、群からの任意の要素を取り除くことができる。一般的に、本発明または本発明の側面が、特定の要素および/または特徴を含むものとして言及される場合、本発明のある態様または本発明の側面は、かかる要素および/または特徴からなるか、これから本質的になることが、理解されるべきである。単純化を目的として、それらの態様は、本明細書において文言としては特に記載されていない。また、用語「含むこと(comprising)」および「含むこと(containing)」は、オープンであることを意図され、さらなる要素またはステップの包含を許容することに注意する。範囲が示される場合、エンドポイントは含まれる。さらに、文脈および当業者の理解から別段に示されるか別段に明らかでないかぎり、範囲として表される値は、本発明の様々な態様において記述された任意の特定の値または部分範囲を、文脈が明らかに別のことを指示しない限り、当該範囲の下限の単位の10分の1まで、想定し得る。
【0448】
本願は、多様な発行された特許、公開された特許出願、学術雑誌の記事、および他の刊行物を引用し、これらの全ては、本明細書において参考として援用される。援用された参考文献のうちのいずれかと本明細書との間に矛盾が存在する場合、本明細書が支配すべきである。加えて、本発明の任意の特定の態様であって、先行技術に該当するものは、請求項のうちの任意の1つ以上から明示的に除外される。かかる態様は、当業者に公知であるとみなされるので、それらは、除外が本明細書において明示的に記載されていない場合であっても、除外することができる。本発明の任意の特定の態様を、任意の請求項から、任意の理由のために、先行技術の存在に関係するか否かにかかわらず、除外することができる。
【0449】
当業者は、本明細書において記載される特定の態様に対する多くの均等物を認識するか、または、慣用的な実験のみを用いてこれを確認することができるであろう。本明細書において記載される本発明の態様の範囲は、上の説明に限定されることを意図されるのではなく、添付される請求の範囲において記載されるとおりである。当業者は、以下の請求の範囲において定義されるような本発明の精神または範囲から逸脱することなく、この記載に対して多様な変更および改変を行うことができることを、理解するであろう。
【0450】
国際特許公開番号WO 2018/045058の全内容(例えば、組成物、デバイス、調製の方法、使用の方法、およびキット)は、本明細書において記載される目的のために、本明細書において参考として援用される。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
がんを罹患している対象の腫瘍切除部位における、生体材料およびp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路により媒介される炎症誘発性免疫応答の阻害剤を含む組成物の術中投与
のステップを含む、方法。
[発明2]
生体材料が、約500Pa~約50,000Paの貯蔵弾性率により特徴付けられる、発明1に記載の方法。
[発明3]
投与のステップが、T細胞の対象への養子移入を含まない、発明1に記載の方法。
[発明4]
投与のステップが、腫瘍抗原の対象への投与を含まない、発明1に記載の方法。
[発明5]
投与のステップが、微小粒子の対象への投与を含まない、発明1に記載の方法。
[発明6]
生体材料が、ハイドロゲルであるか、またはこれを含む、発明1に記載の方法。
[発明7]
生体材料が、ヒアルロン酸であるか、またはこれを含む、発明6に記載の方法。
[発明8]
生体材料が、架橋されたヒアルロン酸であるか、またはこれを含む、発明7に記載の方法。
[発明9]
生体材料が、ポリエチレングリコール架橋剤で架橋されたヒアルロン酸であるか、またはこれを含む、発明8に記載の方法。
[発明10]
阻害剤が、p38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38 MAPK阻害剤であるか、またはこれを含む、発明1に記載の方法。
[発明11]
阻害剤が、P38 MAPKのATPおよび/またはアロステリック結合部位に結合するp38α/βMAPK阻害剤であるか、またはこれを含む、発明1に記載の方法。
[発明12]
p38α/βMAPK阻害剤が、ロスマピモドであるか、またはこれを含む、発明11に記載の方法。
[発明13]
組成物が、自然免疫の活性化因子をさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明14]
自然免疫の活性化因子が、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストであるか、またはこれを含む、発明13に記載の方法。
[発明15]
自然免疫の活性化因子が、Toll様受容体(TLR)7および/またはTLR8(「TLR7/8」)アゴニストであるか、またはこれを含む、発明13に記載の方法。
[発明16]
組成物が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、および/または樹状細胞を調節する適応免疫の活性化因子および/またはサイトカインをさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明17]
組成物が、T細胞、NK細胞、単球、および/または樹状細胞を調節するサイトカインをさらに含み;およびサイトカインが、IL-15スーパーアゴニスト、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、およびそれらの組み合わせから選択される、発明1に記載の方法。
[発明18]
組成物が、COX阻害剤をさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明19]
組成物が、COX-2阻害剤をさらに含む、発明1に記載の方法。
[発明20]
発明1に記載の方法。生体材料が、マトリックスまたはデポーを形成し、阻害剤が、生体材料中にある。
[発明21]
阻害剤が、生体材料を通した拡散により放出される、発明20に記載の方法。
[発明22]
生体材料が、in vivoで生分解性である、発明1に記載の方法。
[発明23]
生体材料が、当該生体材料をマウス対象の乳腺脂肪体において移植することにより、in vivoで試験される場合に、移植の4か月後に生体材料のうちの10%以下がin vivoで残ることを特徴とする、発明1に記載の方法。
[発明24]
生体材料が、当該生体材料およびロスマピモドを含む組成物をPBS(pH7.4)中に置くことによりin vitroで試験される場合に、ロスマピモドのうちの100%未満が3時間以内に生体材料から放出されることを特徴とする、発明1に記載の方法。
[発明25]
生体材料が、当該生体材料およびロスマピモドを含む組成物をマウス対象の乳腺脂肪体において移植することによりin vivoで試験される場合に、ロスマピモドのうちの50%以下が、in vivoで移植の8時間後に放出されることを特徴とする、発明1に記載の方法。
[発明26]
生体材料が、投与の24時間後に評価される場合に、阻害剤が溶液中で投与される場合に観察されるものと比較して、腫瘍切除部位においてより多くの阻害剤が存在するように、阻害剤の放出を延長することを特徴とする、発明1に記載の方法。
[発明27]
投与が、移植によるものである、発明1に記載の方法。
[発明28]
投与が、注射によるものである、発明1に記載の方法。
[発明29]
投与が、生体材料の1つ以上の前駆体構成成分を注射すること、および腫瘍切除部位において生体材料を形成させることを可能にすることを含む、発明28に記載の方法。
[発明30]
腫瘍切除部位が、肉眼での残留の腫瘍抗原の不在により特徴付けられる、発明1に記載の方法。
[発明31]
がんが、転移性癌である、発明1に記載の方法。
[発明32]
対象における少なくとも1つの転移部位を投与の後にモニタリングするステップをさらに含む、発明31に記載の方法。