(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】テルペングリコシド誘導体およびその使用
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240910BHJP
【FI】
A23L27/00 E
A23L27/00 101A
A23L27/00 101Z
(21)【出願番号】P 2020562165
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2019075782
(87)【国際公開番号】W WO2020064787
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/108629
(32)【優先日】2018-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シアン-ウェン ガン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-319494(JP,A)
【文献】日本化学会誌,1981年,5,726-735
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A23L 27/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロースの甘味増強剤としての
、式I:
【化1】
の化合物と
式II:
【化2】
の化合物との混合物を含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月29日に出願されたPCT出願番号PCT/CN2018/108629号の優先権の利益を主張するものであり、これは、その全体が本明細書に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、テルペングリコシド、例えばステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)、テンチャ(Rubus suavissimus)、またはモンクフルーツ(Siraitia grosvenorii)から抽出された特定のそのような化合物に関する。本開示は、食品成分、風味料、および甘味料としてのそのような化合物の使用、ならびに関連する方法も提供する。本開示は、そのような化合物を含有する摂取可能な組成物、ならびに特定の植物性原料からそのような化合物を選択的に抽出する方法も提供する。
【0003】
関連技術の説明
味覚システムは、外界の化学組成物についての感覚情報を提供する。味覚の伝達は、動物において化学的に引き起こされる感覚のより複雑な形態の1つである。味覚のシグナル伝達は、単純な後生動物から最も複雑な脊椎動物まで、動物界全体で見られる。哺乳類は、甘味、苦味、酸味、塩味、および旨味の5つの基本的な味覚様相を有すると考えられている。
【0004】
甘味は、糖を多く含む食品を食べている時に最も一般的に知覚される味である。哺乳類は、通常、過剰な場合を除き、甘さを心地よい感覚であると認識する。ショ糖や果糖などの有カロリー甘味料は、甘味物質の原型の例である。様々なノンカロリーおよび低カロリーの代替品が存在するものの、これらの有カロリー甘味料は、依然として消費時に食品が甘味の知覚を生じさせる主要な手段である。
【0005】
肥満、糖尿病、および心血管疾患などの代謝障害ならびに関連する疾患は、世界中の主要な公衆衛生の懸念事項である。そして、これらの罹患率は、ほぼ全ての先進国で驚くべき速度で増加してきている。有カロリー甘味料は、消費者の口により合うようにするために様々な加工食品および飲料製品に含まれているため、この傾向の主な要因である。多くの場合、ショ糖や果糖の代わりに、ノンカロリーまたは低カロリーの代替品を食品や飲料において使用することができる。そうであっても、これらの化合物は有カロリー甘味料とは異なる甘味を付与し、多くの消費者はそれらを適切な代替品とみなしていない。さらに、そのような化合物は、特定の製品に配合することが難しい場合がある。場合によっては、これらは有カロリー甘味料の部分的な代替品として使用される場合もあるが、それらが存在するだけで、多くの消費者に不快な渋味を感じさせる可能性がある。そのため、低カロリー甘味料は、その採用に関して依然として一定の問題を抱えている。
【0006】
ステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)抽出物由来のステビオールグリコシド、ブラックベリーの葉(テンチャ、Rubus suavissimus)抽出物由来のルブソシド、およびモンクフルーツ(Siraitis grosvenorii)抽出物由来のモグロシドなどのテルペングリコシドは、天然の低カロリー甘味料である。しかし、これらの製品は、他の多くの低カロリーの糖代用品と同様に、苦味、長く残る後味、またはリコリスの風味など、不快な味の性質を有している。トランスグルコシル化は、これらの不快な味の性質の一部を軽減する方法を提供する。しかし、現在開示されているグルコシル化低カロリー甘味料の多くは、それらの幅広い採用の障害となる不快な味の性質を依然として示している。したがって、不快な味の性質をより効果的に緩和できるグルコシル化製品およびトランスグルコシル化方法を開発することが継続的に必要とされている。
【0007】
発明の概要
第1の態様では、本開示は、(a)β-グルコシル糖化合物と、テルペングリコシドと、セルラーゼ酵素とを含有する水性組成物を準備すること;および(b)セルラーゼ酵素の存在下でβ-グルコシル糖化合物をテルペングリコシドと反応させて、テルペングリコシジル部位と1つ以上のβ-グルコシル糖部位とを有するグルコシル化テルペングリコシドを形成すること;を含むグルコシル化テルペングリコシドの製造方法であって、グルコシル化テルペングリコシドがテルペングリコシド部位と1つ以上のβ-グルコシル糖部位のうちの1つとの間に1つのβ-1,4グルコシド結合を有する方法を提供する。いくつかの実施形態では、反応は、水性組成物をインキュベーションすることを含む。いくつかの実施形態では、水性組成物は水溶液である。いくつかの実施形態では、β-グルコシル糖化合物はセロビオースである。
【0008】
第2の態様では、本開示は、テルペングリコシドの不快な味を低減する方法を提供し、この方法は、(a)β-グルコシル糖化合物と、テルペングリコシドと、セルラーゼ酵素とを含有する水性組成物を準備すること;および(b)セルラーゼ酵素の存在下でβ-グルコシル糖化合物をテルペングリコシドと反応させて、テルペングリコシジル部位と1つ以上のβ-グルコシル糖部位とを有するグルコシル化テルペングリコシドを形成すること;を含み、このグルコシル化テルペングリコシドは、テルペングリコシド部位と1つ以上のβ-グルコシル糖部位のうちの1つとの間に1つのβ-1,4グルコシド結合を有する。いくつかの実施形態では、反応は、水性組成物をインキュベーションすることを含む。いくつかの実施形態では、水性組成物は水溶液である。いくつかの実施形態では、β-グルコシル糖化合物はセロビオースである。
【0009】
第1または第2の態様のいくつかの実施形態では、テルペングリコシドは、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、レバウジオシドG、レバウジオシドM、ズルコシドA、ステビオールビオシド、ルブソシド、ステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)植物に含まれるテルペングリコシド、テンチャ(Rubus suavissimus)植物に含まれるテルペングリコシド、モンクフルーツ(Siraitis grosvenorii)植物に含まれるテルペングリコシド、またはこれらの任意の混合物である。
【0010】
第1または第2の態様のいくつかの実施形態では、ベータ-グルコシル糖化合物はセロビオースである。
【0011】
第1または第2の態様のいくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、モノβ-1,4グルコシル化ステビオシド、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドA、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドB、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドC、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドD、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドE、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドF、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドG、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドM、モノβ-1,4グルコシル化ズルコシドA、モノβ-1,4グルコシル化ステビオールビオシド、モノβ-1,4グルコシル化ルブソシド、またはこれらの任意の混合物である。
【0012】
第3の態様では、本開示は、式I:
【化1】
の化合物を提供する。
【0013】
第4の態様では、本開示は、式II:
【化2】
の化合物を提供する。
【0014】
第5の態様では、本開示は、式III:
【化3】
の化合物を提供する。
【0015】
第6の態様では、本開示は、式IV:
【化4】
の化合物を提供する。
【0016】
第7の態様では、本開示は、モノβ-1,4グルコシル化ステビオシド、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドA、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドB、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドC、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドD、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドE、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドF、モノβ-1,4グルコシルレバウジオシドG、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドM、モノβ-1,4グルコシル化ズルコシドA、モノβ-1,4グルコシル化ステビオールビオシド、およびモノβ-1,4グルコシル化ルブソシドからなる群から選択される少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドを含有する組成物を提供する。いくつかのさらなる実施形態では、1種のグルコシル化テルペングリコシドは、モノβ-1,4セロビオシル化ステビオシド、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドA、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドB、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドC、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドD、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドE、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドF、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドG、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドM、モノβ-1,4セロビオシル化ズルコシドA、モノβ-1,4セロビオシル化ステビオールビオシド、およびモノβ-1,4セロビオシル化ルブソシドからなる群から選択される。そのいくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、第3の態様の化合物、または第4の態様の化合物、または第5の態様の化合物、または第6の態様の化合物である。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、組成物中のグルコシル化テルペングリコシドは、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更する。いくつかのそのような実施形態では、テルペングリコシドは、組成物の甘味を付与、増強、改善、または変更するのに有効な量で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、組成物は風味付けされた製品である。いくつかの実施形態では、組成物は天然に存在する組成物ではない。
【0017】
第8の態様では、本開示は、摂取可能な組成物などの組成物の風味を変更するための、第3から第6の態様のうちのいずれかの化合物、または第7の態様の任意の組成物の使用を提供する。いくつかのさらなる実施形態では、使用は、摂取可能な組成物の甘味を増強することを含む。いくつかの別の実施形態では、使用は、摂取可能な組成物の苦味を低減すること、または長く残るリコリスの味を低減することを含む。そのいくつかの実施形態では、組成物は、ノンカロリーまたは有カロリーの甘味料などの甘味料を含有する。
【0018】
以下の図面は、本明細書に開示される組成物および方法の様々な実施形態を説明する目的で提供される。図面は、例示目的で提供されているにすぎず、好ましい組成物もしくは好ましい方法を説明すること、または請求項に記載の発明の範囲に対してなんらかの限定を行う根拠としての役割を果たすことを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ルブソシド(Rubu)および基質としてのセロビオース用いてセルラーゼによって酵素的に生成した生成物のHPLCクロマトグラムの図である。
【
図2】式Iの化合物と式IIの化合物との混合物を含有する組成物の
1H NMRスペクトルの図である。
【
図3】式Iの化合物と式IIの化合物との混合物を含有する組成物の
13C NMRスペクトルの図である。
【0020】
詳細な説明
以下の説明では、例示目的で示されている実施され得る特定の実施形態について言及する。これらの実施形態は、当業者が本明細書に記載の本発明を実施できるようにするために詳細に説明されているが、他の実施形態を利用できること、本明細書で提示されている態様の範囲から逸脱することなく論理的な変更を行い得ることが理解されるべきである。したがって、例示的な実施形態の以下の説明は、限定の意味で解釈されるべきではなく、本明細書で提示されている様々な態様の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0021】
方法
特定の態様では、本開示は、グルコシル化テルペングリコシドの製造方法を提供し、この方法は、(a)β-グルコシル糖化合物と、テルペングリコシドと、セルラーゼ酵素とを含有する水性組成物を準備すること;および(b)セルラーゼ酵素の存在下でβ-グルコシル糖化合物をテルペングリコシドと反応させて、テルペングリコシジル部位と1つ以上のβ-グルコシル糖部位とを有するグルコシル化テルペングリコシドを形成すること;を含み、このグルコシル化テルペングリコシドは、テルペングリコシド部位と1つ以上のβ-グルコシル糖部位のうちの1つとの間に1つのβ-1,4グルコシド結合を有する。いくつかの実施形態では、反応は、水性組成物をインキュベーションすることを含む。
【0022】
特定の関連する態様では、本開示は、テルペングリコシドの不快な味を低減する方法を提供し、この方法は、(a)β-グルコシル糖化合物と、テルペングリコシドと、セルラーゼ酵素とを含有する水性組成物を準備すること;および(b)セルラーゼ酵素の存在下でβ-グルコシル糖化合物をテルペングリコシドと反応させて、テルペングリコシジル部位と1つ以上のβ-グルコシル糖部位とを有するグルコシル化テルペングリコシドを形成すること;を含み、このグルコシル化テルペングリコシドは、テルペングリコシド部位と1つ以上のβ-グルコシル糖部位のうちの1つとの間に1つのβ-1,4グルコシド結合を有する。いくつかの実施形態では、反応は、水性組成物をインキュベーションすることを含む。
【0023】
任意の前述した態様および実施形態のいくつかの実施形態では、テルペングリコシドは、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、レバウジオシドG、レバウジオシドM、ズルコシドA、ステビオールビオシド、ルブソシド、ステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)植物に含まれるテルペングリコシド、テンチャ(Rubus suavissimus)植物に含まれるテルペングリコシド、モンクフルーツ(Siraitis grosvenorii)植物に含まれるテルペングリコシド、またはこれらの混合物である。
【0024】
いくつかのさらなる実施形態では、酵素プロセスのための出発物質(例えばテルペングリコシド)は、ステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)植物の抽出物、テンチャ(Rubus suavissimus)植物の抽出物、またはモンクフルーツ(Siraitis grosvenorii)植物の抽出物である。いくつかのそのような実施形態では、植物抽出物は1種以上のテルペングリコシドを含む。
【0025】
ある非限定的な例では、ステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)は、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、レバウジオシドG、レバウジオシドM、ズルコシドA、およびステビオールビオシドを含む多数のジテルペングリコシドを生成する。別の非限定的な例では、ルブソシドは、ルブソシドと呼ばれる実質的に単一のテルペングリコシドを含むブラックベリーの葉(テンチャ、Rubus suavissimus)から得られる。別のいくつかの非限定的な例では、ルブソシドはステビアの葉に少量含まれる。いくつかのさらなるそのような非限定的な例では、ルブソシドは、ステビアの葉(Stevia rebaudiana Bertoni)の抽出物に含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、酵素プロセスの出発物質(例えばテルペングリコシド)は、ステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)植物の抽出物、テンチャ(Rubus suavissimus)植物の抽出物、またはモンクフルーツ(Siraitis grosvenorii)植物の抽出物のいずれかから精製されたテルペングリコシドである。
【0027】
いくつかの実施形態では、テルペングリコシド出発物質は、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、レバウジオシドG、レバウジオシドM、ズルコシドA、ステビオールビオシド、ルブソシド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
いくつかのさらなる実施形態では、テルペングリコシド出発物質は、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、およびルブソシドからなる群から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、テルペングリコシド出発物質は、米国特許第8,257,948号明細書に開示されている出発物質である。
【0030】
いくつかの実施形態では、テルペングリコシド出発物質は、国際公開第2017/089444号に開示されている出発物質である。
【0031】
いくつかの実施形態では、テルペングリコシド出発物質は、国際公開第2013/019050号に開示されている出発物質である。
【0032】
いくつかの実施形態では、テルペングリコシド出発物質は、欧州特許出願公開第3003058号明細書に開示されている出発物質である。
【0033】
本明細書において、「グリコシド」という用語は、1つ以上の糖単位が化学構造の1つ以上の部位で共有結合している有機化合物を指す。
【0034】
いくつかの実施形態では、水性組成物は脱イオン水を含む。あるいは、いくつかの実施形態では、水性組成物は酢酸ナトリウムを含む。前述した任意の実施形態のいくつかの実施形態では、水性組成物は溶液である。
【0035】
水性組成物は、任意の適切なpHを有することができる。いくつかの実施形態では、水性組成物のpHはpH4.0~pH7.0の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物のpHはpH4.0~pH6.0の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物のpHはpH4.0~pH5.0の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物のpHはpH5.0~pH7.0の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物のpHはpH6.0~pH7.0の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物のpHはpH4.0、または4.1、または4.2、または4.3、または4.5、または4.6、または4.7、または4.9、または5.0、または5.1、または5.2である。または5.3、または5.4、または5.5、または5.6、または5.7、または5.8、または5.9、または6.0、または6.1、または6.2、または6.3、または6.4、または6.5、または6.6、または6.7、または6.8、または6.9、または7.0である。いくつかのそのような実施形態では、水性組成物のpHは、約5.0のpHである。
【0036】
本明細書に開示の方法では、テルペングリコシドは、任意の適切な濃度で水性組成物に添加することができる。いくつかの実施形態では、テルペングルコシドは、0.005g/mL~0.5g/mLの濃度で水性組成物に添加される。いくつかの実施形態では、テルペングルコシドは、0.05mL~0.25g/mLの濃度で水性組成物に添加される。いくつかの実施形態では、テルペングルコシドは、0.1g/mL~0.2g/mLの濃度で水性組成物に添加される。
【0037】
本明細書に開示の方法では、任意の適切なベータ-グルコシル糖化合物を使用することができる。いくつかの実施形態では、ベータ-グルコシル糖化合物は、β-1,4結合によって連結された2つのβ-グルコース分子を含む還元糖である。いくつかの実施形態では、ベータ-グルコシル糖化合物は、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、およびセロヘキサオースからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ベータ-グルコシル糖化合物は、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、およびセロヘキサオースからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ベータ-グルコシル糖化合物はセロビオースである。いくつかの実施形態では、ベータ-グルコシル糖化合物はセロデキストリンである。いくつかの実施形態では、ベータ-グルコシル糖化合物はセルロースまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、ベータ-グルコシル糖化合物はセロビオースである。
【0038】
本明細書に開示の方法では、ベータ-グルコシル糖化合物は、任意の適切な濃度で水性組成物に添加することができる。いくつかの実施形態では、水性組成物中のベータ-グルコシル糖化合物の濃度は、10%~40%(重量/重量)、または20%~30%(重量/重量)の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物中のベータ-グルコシル糖化合物の濃度は0.005g/mL~0.5g/mLの範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物中のベータ-グルコシル糖化合物の濃度は約0.2g/mLである。
【0039】
本明細書に開示の方法では、テルペングリコシドは、ベータ-グルコシル糖化合物に対する任意の適切な比率で水性組成物中に存在することができる。いくつかの実施形態では、水性組成物中のテルペングリコシド対ベータ-グルコシル糖化合物の比(重量/重量)は100:1~1:100の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物中のテルペングリコシド対ベータ-グルコシル糖化合物の比(重量/重量)は10:1~1:10の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物中のテルペングリコシド対ベータ-グルコシル糖化合物の比(重量/重量)は約1:1である。
【0040】
いくつかの実施形態では、セルラーゼは、水性組成物中に存在し、トランスグルコシル化反応を行い、それにより、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドを生成する。いくつかの実施形態では、トランスグルコシダーゼは、トランスグルコシル化反応を行い、それにより、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに共有結合した1つ以上のグルコース残基を有するグルコシル化テルペングリコシドを生成する。いくつかの実施形態では、テルペングリコシドに付加されるグルコース残基の数は、例えば反応時間、反応温度、テルペングリコシドの濃度、ベータ-グルコシル糖化合物の濃度などのパラメータにより制御される。
【0041】
いくつかの実施形態では、セルラーゼは、基質としてセロビオースを使用してトランスグルコシル化反応を行い、それにより2つのグルコース単位がβ-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに付加されたグルコシル化テルペングリコシドを生成する。いくつかの実施形態では、セルラーゼは、トランスグルコシル化反応を行い、それによりβ-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドを生成する。いくつかの実施形態では、トランスグルコシダーゼは、トランスグルコシル化反応を行い、それによりβ-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに共有結合した1つ以上のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドを生成する。いくつかの実施形態では、テルペングリコシドに付加されるセロビオシル残基の数は、例えば反応時間、反応温度、テルペングリコシドの濃度、ベータ-グルコシル糖化合物の濃度などのパラメータにより制御される。
【0042】
いくつかの実施形態では、セルラーゼは、無細胞培養ブロス、濃縮液体無細胞培養ブロス、噴霧乾燥もしくは凍結乾燥された無細胞培養ブロス、または高純度タンパク質の形態である。遊離酵素および固定化酵素の製剤も使用することができる。
【0043】
任意の適切なセルラーゼを使用することができる。本明細書で使用される「セルラーゼ」という用語には、エンド-1,4-ベータ-D-グルカナーゼ(ベータ-1,4-グルカナーゼ、ベータ-1,4-エンドグルカンヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼD、1,4-(1,3,1,4)-ベータ-D-グルカン4-グルカノヒドロラーゼ)、カルボキシメチルセルラーゼ(CMCase)、アビセラーゼ、セルデキストリナーゼ、セルラーゼA、セルロシンAP、アルカリセルラーゼ、セルラーゼA3、9.5セルラーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、セルロース1,4-ベータ-セロビオシダーゼ、およびパンセラーゼSSが含まれる。
【0044】
セルラーゼは、任意の適切な濃度で添加することができる。いくつかの実施形態では、セルラーゼは、ベータ-グルコシル糖化合物1グラムあたり0.2~0.4単位の範囲の濃度で水性組成物に添加される。いくつかの実施形態では、セルラーゼは、2mg/mL~200mg/mLの範囲の濃度で水性組成物に添加される。いくつかの実施形態では、セルラーゼは、約40mg/mLの濃度で水性組成物に添加される。
【0045】
本明細書に開示の方法では、テルペングリコシドは、セルラーゼ酵素に対して任意の適切な濃度で使用することができる。いくつかの実施形態では、水性組成物中のテルペングリコシド対セルラーゼ酵素の比(重量/重量)は、100:1~1:100、または10:1~1:10の範囲である。いくつかの実施形態では、水性組成物中のテルペングリコシド対セルラーゼ酵素の比(重量/重量)は約1:1である。
【0046】
いくつかの実施形態では、テルペングリコシドの量に対するセルラーゼ酵素の量の重量%単位での比率は、0.1%~100%、または1%~50%、または10%~20%の範囲である。
【0047】
いくつかの実施形態では、セルラーゼを含有する混合物は、例えばグルコシル化テルペングリコシドを生成するのに十分な時間および温度でインキュベーションされる。いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。あるいは、いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。いくつかの実施形態では、セルラーゼを含有する混合物は、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドを生成するのに十分な時間および温度でインキュベーションされる。
【0048】
インキュベーションのために任意の適切な温度を使用することができる。いくつかの実施形態では、温度は、30~90℃、または70~90℃の範囲である。いくつかの実施形態では、温度は約60℃である。いくつかの実施形態では、温度は約37℃である。
【0049】
インキュベーションは、任意の適切な時間行うことができる。いくつかの実施形態では、十分な時間は24時間以上である。いくつかの実施形態では、十分な時間は24時間以下である。いくつかの実施形態では、十分な時間は、24時間、または23時間、または22時間、または21時間、または20時間、または19時間、または18時間、または17時間、または16時間、または15時間、または14時間、または13時間、または12時間、または11時間、または10時間、または9時間、または8時間、または7時間、または6時間、または5時間、または4時間、または3時間、または2時間、または1時間である。いくつかの実施形態では、十分な時間は約24時間である。
【0050】
いくつかの実施形態では、インキュベーション工程の後、グルコシル化テルペングリコシドを含有する混合物はさらに処理されてもよい。そのようなさらなる処理としては、例えばグルコシル化テルペングリコシドを単離または精製する不活化工程または精製工程を挙げることができる。いくつかの態様では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。あるいは、いくつかの態様では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。
【0051】
精製工程の非限定的な例としては、グルコシル化テルペングリコシドの濃縮、単離、もしくは精製、または反応混合物からの固体の除去が挙げられる。いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。あるいは、いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。
【0052】
いくつかの実施形態では、固体は、濾過、遠心分離、または当業者に公知の他の技術などの手段によって反応混合物から除去される。いくつかの実施形態では、炭水化物は、吸着樹脂、析出、または当業者に公知の他の技術を使用して混合物から除去される。いくつかの実施形態では、さらなる処理にはセルラーゼを不活性化することが含まれる。そのような一例では、セルラーゼは、熱を加えることによって不活性化される。いくつかの実施形態では、セルラーゼは、セルラーゼを不活性化するのに十分な温度まで反応混合物を加熱することによって不活性化される。いくつかのそのような実施形態では、十分な温度は100℃である。
【0053】
米国特許第8,257,948号明細書には、グルコシル化テルペングリコシドを単離または精製するために本開示のいくつかの態様で利用できる精製工程のいくつかの例が開示されている。
【0054】
国際公開第2017/089444号には、グルコシル化テルペングルコシドを単離または精製するために本開示のいくつかの態様で利用できる精製工程の別の例が開示されている。
【0055】
国際公開第2013/019050号には、グルコシル化テルペングリコシドを単離するために本開示のいくつかの態様で利用できる精製工程の他の例が開示されている。
【0056】
欧州特許出願公開第3003058号明細書には、グルコシル化テルペングリコシドを単離または精製するために本開示のいくつかの態様で利用できる精製工程の別の例が開示されている。
【0057】
米国特許第8,257,948号明細書には、本開示のいくつかの態様で利用できる不活化工程のいくつかの例が開示されている。
【0058】
国際公開第2017/089444号には、本開示のいくつかの態様で利用できる不活化工程の別の例が開示されている。
【0059】
グルコシル化テルペングリコシド
いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、モノβ-1,4グルコシル化ステビオシド、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドA、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドB、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドC、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドD、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドE、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドF、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドG、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドM、モノβ-1,4グルコシル化ズルコシドA、モノβ-1,4グルコシル化ステビオールビオシド、モノβ-1,4グルコシル化ルブソシド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、ジβ-1,4グルコシル化ステビオシド、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドA、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドB、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドC、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドD、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドE、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドF、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドG、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドM、ジβ-1,4グルコシル化ズルコシドA、ジβ-1,4グルコシル化ステビオールビオシド、ジβ-1,4グルコシル化ルブソシド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0061】
いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、モノβ-1,4セロビオシル化ステビオシド、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドA、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドB、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドC、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドD、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドE、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドF、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドG、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドM、モノβ-1,4セロビオシル化ズルコシドA、モノβ-1,4セロビオシル化ステビオールビオシド、およびモノβ-1,4セロビオシル化ルブソシドからなる群から選択される。
【0062】
特定の態様では、本開示は、式Iの化合物:
【化5】
を提供する。
【0063】
特定の態様では、本開示は、式IIの化合物:
【化6】
を提供する。
【0064】
特定の態様では、本開示は、式IIIの化合物:
【化7】
を提供する。
【0065】
特定の態様では、本開示は、式IVの化合物:
【化8】
を提供する。
【0066】
本明細書では、前述した式IからIVの化合物を、それぞれ、「化合物I」、「化合物II」、「化合物III」、および「化合物IV」と呼ぶこともある。
【0067】
特定の態様では、本開示は、モノβ-1,4グルコシル化ステビオシド、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドA、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドB、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドC、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドD、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドE、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドF、モノβ-1,4グルコシル化レバウジオシドM、モノβ-1,4グルコシル化ズルコシドA、モノβ-1,4グルコシル化ステビオールビオシド、モノβ-1,4グルコシル化ルブソシド、ジβ-1,4グルコシル化ステビオシド、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドA、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドB、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドC、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドD、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドE、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドF、ジβ-1,4グルコシル化レバウジオシドM、ジβ-1,4グルコシル化ズルコシドA、ジβ-1,4グルコシル化ステビオールビオシド、ジβ-1,4グルコシル化ルブソシド、モノβ-1,4セロビオシル化ステビオシド、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドA、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドB、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドC、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドD、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドE、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドF、モノβ-1,4セロビオシル化レバウジオシドM、モノβ-1,4セロビオシル化ズルコシドA、モノβ-1,4セロビオシル化ステビオールビオシド、およびモノβ-1,4セロビオシル化ルブソシドからなる群から選択される少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドを含有する組成物を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、組成物は、式Iの化合物、式IIの化合物、式IIIの化合物、および式IVの化合物からなる群から選択される少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドを含有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、組成物は、式Iの化合物および式IIの化合物からなる群から選択される、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有する少なくとも1つのグルコシル化テルペングリコシドを含有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、組成物は、式IIIの化合物および式IVの化合物からなる群から選択される、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル化残基を有する少なくとも1つのグルコシル化テルペングリコシドを含有する。
【0071】
甘味料または甘味増強剤
本明細書に記載の1種のグルコシル化テルペングリコシドは、様々な風味付けされた製品において、甘味増強剤、風味増強剤、矯味剤、または甘味料として使用することができる。いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。あるいは、いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。
【0072】
特定の態様では、本開示は、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、また変更するための、前述した態様および実施形態の少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドの使用を提供する。いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。あるいは、いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。
【0073】
特定の態様では、本開示は、風味付けされた製品の長引く後味を隠すための、本明細書で提示されるいくつかの態様による少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドの使用を提供する。いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。あるいは、いくつかの実施形態では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。
【0074】
特定の態様では、本開示は、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更する方法を提供し、この方法は、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有する本明細書で提示されるいくつかの態様による少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドを、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更するのに有効な量で風味付けされた製品に添加することを含む。
【0075】
特定の態様では、本開示は、風味付けされた製品の長引く後味を隠す方法を提供し、この方法は、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有する本明細書で提示されるいくつかの態様によるグルコシル化テルペングリコシドを、風味付けされた製品の長引く後味を隠すのに有効な量で風味付けされた製品に添加することを含む。
【0076】
特定の態様では、本開示は、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更する方法を提供し、この方法は、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有する本明細書で提示されるいくつかの態様による少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドを、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更するのに有効な量で風味付けされた製品に添加することを含む。
【0077】
特定の態様では、本開示は、風味付けされた製品の長引く後味を隠す方法を提供し、この方法は、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有する本明細書で提示されるいくつかの態様によるグルコシル化テルペングリコシドを、風味付けされた製品の長引く後味を隠すのに有効な量で風味付けされた製品に添加することを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更するのに有効な量は、約40ppmであり、例えば30ppm~50ppm、または20ppm~60ppm、または10ppm~70ppmである。いくつかの実施形態では、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更するのに有効な量は40ppm未満である。いくつかの態様では、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更するのに有効な量は40ppm超である。いくつかの実施形態では、風味付けされた製品の甘味を付与、増強、改善、または変更するのに有効な量は0~1000ppmである。
【0079】
いくつかの態様では、本開示は、(前述の態様および実施形態の)少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドと、食品ベースとを含む風味付けされた製品を提供し、このグルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドおよびβ-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドからなる群から選択される。
【0080】
例えば食料や飲料などの適切な食品も本明細書で提供される。本開示の目的のためには、「食品ベース」は、例えば食料や飲料などの食用製品を意味する。したがって、本明細書で提供される風味付けされた製品は、機能性製剤、ならびに例えば味付けキューブなどの目的とする食品に対応する任意選択的な追加の有益な添加剤、および風味付けに有効な量の本明細書に記載の少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドを含有する。いくつかの態様では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。あるいは、いくつかの態様では、グルコシル化テルペングリコシドは、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドである。
【0081】
本明細書で提供される組成物および方法は、食料または飲料製品において有用である。食品が粒子状または粉末状の食品である場合、乾燥粒子は、乾式混合によって容易にそれらに添加することができる。典型的な食品は、インスタントスープまたはソース、朝食用シリアル、粉ミルク、ベビーフード、粉末飲料、粉末チョコレート飲料、スプレッド、粉末シリアル飲料、チューインガム、発泡性タブレット、シリアルバー、およびチョコレートバーからなる群から選択される。粉末状の食料または飲料は、製品を水、牛乳、および/もしくはジュース、または別の水性液体で再構成した後に消費することが意図されている場合がある。
【0082】
食品は、調味料、焼き菓子、粉末食品、ベーカリーフィリング、および液状乳製品からなる群から選択することができる。
【0083】
調味料としては、限定するものではないが、ケチャップ、マヨネーズ、サラダドレッシング、ウスターソース、フルーツ味のソース、チョコレートソース、トマトソース、チリソース、およびマスタードが挙げられる。
【0084】
焼き菓子としては、限定するものではないが、ケーキ、クッキー、ペストリー、パン、ドーナツなどが挙げられる。
【0085】
ベーカリーフィリングとしては、限定するものではないが、低いまたは中性のpHのフィリング、高、中、または低固形分のフィリング、果物または牛乳ベース(プリンタイプまたはムースタイプ)のフィリング、高温または低温の調理(make-up)フィリング、および無脂肪から全脂肪までのフィリングが挙げられる。
【0086】
液状乳製品としては、限定するものではないが、例えば牛乳、アイスクリーム、シャーベット、およびヨーグルトなどの非凍結の、部分的に凍結した、および凍結した液状乳製品が挙げられる。
【0087】
飲料製品としては、限定するものではないが、コーラ、レモンライム、ルートビア、ヘビーシトラス(「デュータイプ」)、フルーツ味のソーダ、およびクリームソーダなどの炭酸清涼飲料水;粉末のソフトドリンク、およびファウンテンシロップやコーディアルなどの濃縮液;コーヒーおよびコーヒーベースの飲料、コーヒー代用品、ならびにシリアルベースの飲料;ドライミックス製品やすぐに飲めるお茶(ハーブおよびティーリーフベース)などのお茶;果物および野菜のジュース、果汁風味飲料、果汁飲料、ネクター、濃縮液、パンチ、および「エード」;炭酸水と非炭酸水の両方の甘味および風味が付与された水;スポーツ/エネルギー/健康飲料;ビールおよびモルト飲料、サイダー、ならびにワイン(非炭酸、スパークリング、酒精強化ワイン、およびワインクーラー)などの、アルコール飲料ならびにアルコールフリーおよびその他の低アルコール製品;加熱(注入、低温殺菌、超高温、オーム加熱、または商業用無菌消毒)および高温充填包装で処理されたその他の飲料;ならびに濾過または他の保存技術により製造された低温充填製品が挙げられる。
【0088】
食料または飲料の成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれにしても網羅するものではない。当業者は、一般知識に基づいて、および製品の性質に応じてそれらを選択することができる。
【0089】
本明細書に記載の少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドを前述の様々な製品または組成物に配合することが可能な割合は、幅広い値の範囲内で変動する。これらの値は、風味付けされる製品の性質および望まれる官能効果、ならびに本発明の化合物が当該技術分野で一般的に使用されている風味付け併用成分、溶剤、または添加剤と混合される場合の所定のベース中の併用成分の性質に依存する。
【0090】
風味付け用の組成物の場合、典型的な濃度は、それらが配合される消費者製品の重量を基準として約0.0001重量%~1重量%またはそれ以上の程度の、本明細書に記載の少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドである。本明細書に記載の少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドが風味付けされた製品に配合される場合、これらよりも低い濃度、例えば0.001重量%~0.5重量%程度を使用することができ、このパーセントは製品の重量に対するものである。
【0091】
実施例
実施例1:本明細書に提示されたいくつかの態様の方法による、出発物質としてルブソシドを使用するモノβ-1,4-グルコシル化テルペングリコシド化合物(化合物IおよびII)の生成
ルブソシド(1g)とセロビオース(1g)を室温で10mlのNaOAc-HOAc(pH=5.0、0.2M、5mL)緩衝液に溶解した。続いて、200mgのセルラーゼ(Aladdin)を混合物に添加した。その後、酵素が入っている混合物を37℃に加熱し、酵素が入っている混合物を37℃で24時間インキュベーションすることで、トランスグルコシド化反応を進行させ、それにより、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有する少なくとも1種のグルコシル化テルペングリコシドを生成した。反応混合物を100℃で30分間インキュベーションすることによりセルラーゼを不活性化することで反応を停止した。
【0092】
得られた反応混合物をUPLC-UVにより分析し、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のグルコシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドを含有する混合物を同定した(
図1を参照)。同定した混合物は、分取LCにより精製した。混合物中の化合物は、2:1の比率の化合物IおよびIIとして同定された。
【0093】
得られた反応混合物をUPLC-UVで分析し、β-1,4グルコシド結合を介してテルペングリコシドに連結された単一のセロビオシル残基を有するグルコシル化テルペングリコシドを含有する混合物を同定した(
図1を参照)。同定した混合物は、分取LCにより精製した。混合物中の化合物は、4:1の比率の式IIIの化合物および式IVの化合物として同定された。
【0094】
図2は、式Iの化合物と式IIの化合物との混合物を含有する組成物の
1H NMRスペクトルを示している。
図3は、式Iの化合物と式IIの化合物との混合物を含有する組成物の
13C NMRスペクトルを示している。
【0095】
実施例2:化合物IおよびIIを含有する組成物の官能特性
2:1の比(重量/重量)の式Iの化合物と式IIの化合物とを混合物を含有する組成物を、実施例1に記載の方法に従って生成した。組成物を(i)4重量%のスクロース溶液と(ii)0.02重量%の95%ステビオールグリコシド溶液のいずれかに溶解させた。訓練を受けた25人のパネルが、味覚特性(甘味、リコリス、甘味の長引く後味)の試験溶液を-5~5のスケールで評価した(-5は効果がないことを意味し、5は非常に強い効果を意味し、0は(i)4重量%のスクロース溶液、または(ii)0.02重量%の95%ステビオールグリコシド溶液のいずれかを含む参照水溶液の強度である)。結果を下の表に示す。
【0096】
【0097】
これらのデータは、化合物IおよびIIを2:1の比率で含有する組成物が、ノーズクリップ有無にかかわらず4重量%スクロース溶液の甘味強度を有意に増強した(99.9%の信頼水準)ことを示唆している。式Iの化合物と式IIの化合物を2:1の比率で含有する組成物は、ノーズクリップありでの長引く後味の強度を有意に減少させ(95%の信頼水準)、0.02%のSG95ベース中での甘味、リコリス強度にわずかに影響を与えた。
【0098】
実施例3:本明細書に提示された少なくとも1種のモノβ-1,4-グルコシル化テルペングリコシドを含有する組成物の官能特性
少なくとも1種のグルコシル化テルペングルコシドを含有する組成物は、実施例1に記載の方法に従って生成することができる。組成物は、(i)水、または(ii)4重量%のスクロース溶液、または(iii)7重量%の転化糖+0.15重量%のクエン酸の溶液のいずれかの中に溶解させることができ、溶液中の組成物の最終濃度は、0~1000ppmの範囲とすることができる。(i)1.5重量%、もしくは(ii)4重量%のスクロース、または(iii)7重量%の転化糖+0.15重量%のクエン酸の溶液のいずれかの対応する対照溶液も生成される。10人の専門家のパネルが、三肢強制選択法(3-AFC)または甘味強度スケール法を使用して、試験組成物の溶液とスクロース溶液との相違を評価する。いずれのサンプルも、ランダムな順序でブラインドテストする。