(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】塗料組成物、部材、及び鉄道車両
(51)【国際特許分類】
C09D 167/06 20060101AFI20240910BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20240910BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240910BHJP
【FI】
C09D167/06
C09D201/02
C09D7/65
(21)【出願番号】P 2021003461
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】勝村 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】鵜原 治
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001884(JP,A)
【文献】米国特許第05969009(US,A)
【文献】特開2017-036373(JP,A)
【文献】特開2007-077176(JP,A)
【文献】特開2002-322423(JP,A)
【文献】特開2005-336336(JP,A)
【文献】特開2014-019836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和ポリエステル樹脂と、
(B)重合性不飽和化合物と、
(C)重合開始剤と、
(D)充填剤と、
(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物と、を含み、
前記(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、前記(B)重合性不飽和化合物と前記(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物の合わせた配合部が20重量部以上150重量部未満であり、
前記(B)重合性不飽和化合物は、スチレン、メチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ブチルメタクリレートから選ばれる1種以上であり、
前記(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物は、シンジオタクチックポリスチレンである、
ことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の塗料組成物であって、
前記(B)重合性不飽和化合物と前記(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物の重量比率が4:6~9:1である、
ことを特徴とする塗料組成物。
【請求項3】
基材上にパテ層を有する部材であって、
前記パテ層は:
(A)不飽和ポリエステル樹脂と、
(B)重合性不飽和化合物と、
(C)重合開始剤と、
(D)充填剤と、
(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物と、を含み、
前記(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、前記(B)重合性不飽和化合物と前記(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物の合わせた配合部が20重量部以上150重量部未満であり、
前記(B)重合性不飽和化合物は、スチレン、メチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ブチルメタクリレートから選ばれる1種以上であり、
前記(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物は、シンジオタクチックポリスチレンである、
ことを特徴とする部材。
【請求項4】
パテ層を含有する塗膜を有する鉄道車両であって、
前記パテ層は:
(A)不飽和ポリエステル樹脂と、
(B)重合性不飽和化合物と、
(C)重合開始剤と、
(D)充填剤と、
(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物と、を含み、
前記(A)不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、前記(B)重合性不飽和化合物と前記(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物の合わせた配合部が20重量部以上150重量部未満であり、
前記(B)重合性不飽和化合物は、スチレン、メチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ブチルメタクリレートから選ばれる1種以上であり、
前記(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物は、シンジオタクチックポリスチレンである、
ことを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性に優れ、且つ高湿条件下で塗膜に発生する膨れを抑制できる、鉄道車両等の塗膜に使用できる不飽和ポリエステル系パテ用樹脂組成物、及びこれらを使用した部材、及び鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に不飽和ポリエステル樹脂は、他の樹脂に比べ比較的安価であり、また常温でも短時間で硬化するため作業性に優れ、さらに主原料の選択によって種々の優れた物理的及び化学的特性を有する。その硬化性、乾燥性、研磨性、密着性等の面で、鉄道車両の塗装、車両用の補修用パテ塗料、木工用塗料、成形物、シーリング材など各種用途に広く使用されている。
【0003】
これらの用途に使用されている不飽和ポリエステル樹脂組成物は、(1)容易に厚塗りが可能で常温で速やかに硬化し、塗膜の硬化性にすぐれていること、(2)基材や塗膜の変形する場合に割れなどが発生しない等の性能が要求される。特に前記(2)割れにくいことは、使用環境下での塗膜の特性を確保する観点で重要である。
【0004】
このような不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いたパテ組成物を使用した塗膜は、高湿条件下で長時間使用すると塗膜に割れやブリスタという膨れが発生するという課題があった。このようなブリスタは塗膜のパテに環境から水分が浸透し、内部で滞留し発生することが知られている。
【0005】
一方、このような不飽和ポリエステル樹脂組成物に重合性希釈剤としてスチレンを主成分としたビニル重合性単量体が添加されている。例えば、特許文献1には、「ジシクロペンタジエン又はその誘導体を縮合構成成分とし、水酸基価が15~65mgKOH/g、酸価が30~65mgKOH/gで、かつスチレン混和度が90重量%以上である不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とするパテ用樹脂組成物」が開示されている。
【0006】
しかしながら上記いずれの樹脂組成物においても、液体であるビニル重合性単量体を多く添加しているためにパテ粘度が低くなり、厚塗りが難しく多数回の塗り付けが必要となるため、作業が長時間に及ぶ傾向があった。
【0007】
一方、近年鉄道業界では、高級列車の導入や企業イメージの向上のため、塗装外観の美しさが求められている。また、ブリスタが進行すると、塗装による下地保護の効果が低下することもある。このようなブリスタの発生は美観、下地保護を損なうなどの問題があり、その解決が望まれている。従来、ブリスタの発生を抑制し、作業性が良好なパテ用樹脂組成物およびこれを硬化して得られるパテは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1によれば、スチレンを主成分としたビニル重合性単量体は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して35~75重量部、好ましくは40~55重量部であり、35重量部以下の時は高硬度の塗膜が得られず、又パテ塗膜の研磨の際にキズがつきやすくなり、70重量部を越えるときパテ塗膜の肉持性が悪くなり硬化性が低下するとある。添加されたビニル重合性単量体が疎水性である場合は、パテに水分が侵入しにくくなるため、多く添加した方がブリスタは発生し難くなる。一方で、液体であるビニル重合性単量体を35重量部添加すると、パテ粘度が低下するためパテ塗り付け時に少ない塗り付け回数で厚塗りしようとするとタレ等が発生してしまう。また、ビニル重合性単量体の重合反応が完了するまでに時間がかかり、作業性が低下する。
【0010】
本発明の目的は、ブリスタ発生の抑制と、良好なパテ塗り付けの作業性を得ることで、意匠性を低下させることなく従来よりもメンテナンス頻度を抑え、塗装作業性及びコストを抑制しうる塗料組成物、塗膜を形成した部材、及び鉄道車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者においては、不飽和ポリエステル系パテ用樹脂組成物に、ポリスチレン等の重合物を液体のビニル重合性単量体へ溶解した溶液を添加することで、ブリスタ発生を抑制でき、かつ作業性に優れるパテが得られることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、上記目的を達成するため、
(A)不飽和ポリエステル樹脂と、
(B)重合性不飽和化合物と、
(C)重合開始剤と、
(D)充填剤と、
(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物と、を含む、構成の塗料組成物を提供する。
【0013】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、基材上にパテ層を有する部材であって、パテ層は:
(A)不飽和ポリエステル樹脂と、
(B)重合性不飽和化合物と、
(C)重合開始剤と、
(D)充填剤と、
(E)重合性不飽和化合物に溶解する重合物と、を含む部材を提供する。
【0014】
更に、上記の目的を達成するため、本発明においては、パテ層を含有する塗膜を有する鉄道車両であって、パテ層は:
(A)不飽和ポリエステル樹脂と、
(B)重合性不飽和化合物と、
(C)重合開始剤と、
(D)充填剤と、
(E)前記重合性不飽和化合物に溶解する重合物と、を含む鉄道車両を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブリスタ発生が抑制でき、かつパテ用樹脂組成物の粘度をポリスチレンの分子量や含有量で調整することによって塗り付け作業を容易にし、硬化完了時間を短縮できるパテが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。実施形態のパテ用樹脂組成物は、下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、および(E)成分を含有する。以下、各成分について説明する。
【0017】
<(A)成分>
実施の形態における(A)成分は、不飽和ポリエステル樹脂であり、低反応性の不飽和ポリエステル樹脂から高反応性の不飽和ポリエステル樹脂まで包含される。不飽和ポリエステルは、マレイン酸やフマル酸等の不飽和二塩基酸とエチレングリコールやプロピレングリコール等の多価アルコールの重縮合物である。空気硬化性とするためポリエステル鎖中にアリル基を導入したり、酸成分としてヘキサヒドロ無水フタル酸を使用することもできる。
【0018】
不飽和ポリエステル樹脂そのものは良く知られており、F R P用、塗料用、その他の用途として多くの樹脂メーカーから入手可能である。実施の形態で使用できる不飽和ポリエステルは通常のパテの成分として使用できるものであれば特に限定されない。
【0019】
例えば、日本ユピカ(株)製「ユピカ(登録商標)」、DICマテリアル株式会社製「サンドーマ(登録商標)」の各種銘柄等から適宜選んで使用することができる。
【0020】
実施の形態における不飽和ポリエステル樹脂には、多塩基酸又はその無水物と多価アルコール類とから得られる不飽和ポリエステル樹脂に加えて、この不飽和ポリエステル樹脂をグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシ等のエポキシ化合物、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル-ジメチル-ベンジルイソシアネート等のイソシアネート化合物等で変性したものが包含される。
【0021】
<(B)成分>
実施の形態における(B)成分は、重合性不飽和化合物であり、1つ以上のエチレン性不飽和基を1つ以上有する重合性不飽和化合物である。成分としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン系モノマーや、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等の(メタ)アクリル系モノマーや、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、等の(メタ)アクリルアミド系モノマーや、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル等が例示できる。これらの重合性不飽和化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ブリスタ抑制の観点から、特に疎水性及び汎用性が高いスチレンが好ましい。
【0022】
<(C)成分>
実施の形態における(C)成分は重合開始剤であり、パテ用樹脂組成物を用いて各種用途でパテとして使用するには、(A) 不飽和ポリエステル樹脂の不飽和部分と(B)重合性不飽和化合物との反応を開始させるために、通常、(C)成分の重合開始剤がパテ用樹脂組成物に配合される。(C)成分の重合開始剤としては、熱によりラジカルを発生する熱硬化剤、活性エネルギー線によりラジカルを発生する紫外線硬化剤や電子線硬化剤等が挙げられる。
【0023】
熱開始剤としては、有機過酸化物が挙げられ、例えば、ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール等の公知のものが使用される。
【0024】
紫外線開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキシド系、ベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系化合物等の公知のものが使用される。
【0025】
電子線開始剤としては、例えば、ハロゲン化アルキルベンゼン、ジサルファイド系化合物等の公知のものが使用される。
【0026】
上記(C)成分の重合開始剤は、使用する不飽和ポリエステルの種類、所望のポットライフおよび温度における硬化時間等によって広範囲に選択される。重合開始剤の添加量は、パテ用樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1~6重量部である。なお、重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。また、重合開始剤は、硬化しない条件であれば予めパテ用樹脂組成物に配合しておいても良いが、通常は使用時に配合され、特に熱開始剤などは使用時に配合するのが好ましい。
【0027】
<(D)成分>
実施の形態における(D)成分は、充填剤であり、特に代表的なもののみを例示すれば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト、石灰石、セッコウ、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの充填材は、作業性や得られる成形物の強度、外観、経済性などを考慮して選ばれるが、通常、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、タルク等が用いられる。なお、充填剤として、表面処理されたものを用いても良い。
また、(D)充填剤の配合量は、(A)不飽和ポリエステル樹脂と(B) 重合性不飽和化合物、(E)(B)の重合性不飽和化合物に溶解する重合物との配合量の合計量100重量部に対して、50~250重量部である。
【0028】
<(E)成分>
実施の形態における(E)成分は、(B)の重合性不飽和化合物に溶解する重合物である。例えば、次の重合性不飽和化合物の重合物が例示できる。スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン系モノマーや、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等の(メタ)アクリル系モノマーや、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、等の(メタ)アクリルアミド系モノマーや、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル等の重合物が例示できる。これらの重合性不飽和化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ブリスタ抑制の観点から、特に疎水性であるポリスチレンが好ましい。
【0029】
また、ポリスチレンの中でもシンジオタクチックポリスチレンがより好ましい。ポリスチレンには、立体構造の異なる、アタクチックポリスチレン、イソタクチックポリスチレンとシンジオタクチックポリスチレンがある。パテ用樹脂組成物の中でスチレンからポリスチレンに重合する場合は、ベンゼン環がランダムに配列したアタクチックポリスチレンとなる。一方で、ポリスチレンとして添加する場合は、ベンゼン環が規則的に配列した、イソタクチックポリスチレンとシンジオタクチックポリスチレンを添加することが出来る。特にシンジオタクチックポリスチレンは結晶性が高いため、ポリスチレン自体の加水分解が極めて低くく、耐ブリスタ性をより向上することができる。
【0030】
(A)成分の不飽和ポリエステル樹脂と、(B) 成分の重合性不飽和化合物と(E)成分の(B)の重合性不飽和化合物に溶解する重合物の配合割合は、(A)成分100重量部に対して、(B)成分と(E)成分を合わせた配合量が20~150重量部であり、好ましくは50~120重量部である。(B)成分と(E)成分を合わせた配合量が20重量部未満の場合、硬化に必要な成分が不足し、硬化不良が生じるといった問題が生じる傾向がある。(B)成分が150重量部を超える場合、下地への密着性が大幅に低下する傾向がある。
【0031】
また、(B)成分と(E)成分の比率は、4:6~9:1(重量比)であり、好ましくは5:5~7:3である。(E)成分の比率が6以上の場合、粘度が高くなりすぎて流動性が低下し塗り付けが難しくなる傾向がある。(E)成分が1未満の場合、粘度が低くなりすぎてタレが多発し、パテ用樹脂組成物の塗り付けが難しくなる傾向がある。
【0032】
また、実施の形態のパテ用樹脂組成物には、硬化速度を調整するための硬化促進剤、重合禁止剤、着色剤等が配合されても良い。
【0033】
硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、p-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2- ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4-[N,N-ビス(2- ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4-(N-メチル-N-ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、トリエタノールアミン、m-トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N-置換アニリン、N,N-置換-p-トルイジン、4-(N,N-置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられる。
【0034】
硬化促進剤の配合量は、(A) 不飽和ポリエステル樹脂と(B)重合性不飽和化合物との配合量の合計量100重量部に対して、0.1~5重量部であることが好ましい。なお、硬化促進剤は、1種又は2種以上の組合せで用いることができ、さらに、予めパテ用樹脂組成物に配合しておいても良いし、使用時に配合しても良い。
【0035】
重合禁止剤としては、例えば、トリハイドロベンゼン、トルハイドロキノン、1,4-ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p-tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等を挙げることができる。重合禁止剤の配合量は、(A) 不飽和ポリエステル樹脂と(B)重合性不飽和化合物との配合量の合計量100重量部に対して、0.001~0.1重量部であることが好ましい。
【0036】
着色剤としては、特に代表的なもののみを例示すれば、チタンホワイト、カーボンブラック等の無機顔料類、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等の有機顔料類が挙げられ、色相に応じて、種々の着色剤を用いることができる。
【0037】
実施の形態のパテ用樹脂組成物には、その他各種添加剤が配合されても良い。例えば、減粘剤等の粘度調節剤、脱泡剤、シランカップリング剤、パラフィン等の空気遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、補強材等が配合されても良い。
【0038】
実施の形態のパテは、上記(A)~(E)の各成分を少なくとも含有し、任意の方法で硬化させた硬化成形物である。実施の形態のパテ用樹脂組成物に硬化剤を配合し、これを硬化してパテを得る際には、作業時間(例えば乾燥時間)や、対象となる基材の厚さ等に応じて、加熱手段で硬化させるか、自然乾燥によって硬化させるか等の乾燥方法を適宜選択することができ、パテ付けを行なった後にも、任意に乾燥時間や、硬化状態を調整することができる。
【0039】
例えば、外気温が低い場合には、強制乾燥(加熱乾燥)による乾燥方法を使用し、外気温が高い場合には、自然乾燥による乾燥方法を使用することができる。
【0040】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、以下に記載の「部」は重量部を表わす。
〔パテ用樹脂組成物およびパテの調製〕
[実施例1]
【0041】
(A)不飽和ポリエステル樹脂(ディーエイチ・マテリアル(株)製、サンドーマ(登録商標)CN-703、固形分:約65%)から揮発成分を留去して固形分が100%となるようにした。得られた不飽和ポリエステル樹脂100部に(B)エチレン性不飽和単量体であるスチレンを15部、(D) 充填剤としてのタルク(タルクSW:日本タルク(株)製、粒子径:平均12μm)を150部、 (E) (B)の重合性不飽和化合物に溶解する重合物としてアタクチックポリスチレン(HF77、PSジャパン(株)製)10部、コバルト系促進剤(促進剤RP-136、DIC(株)製)を2部、 アミン系促進剤(試薬:ジメチルアニリン)を0.5部加え、高速ディソルバーで15分攪拌してパテ用樹脂組成物を得た。 得られたパテ用樹脂組成物100部に、(C)重合開始剤として1.5部クメンハイドロパーオキサイド(日油(株)製:パークミルH-80)を加え、十分撹拌して、パテ用樹脂組成物を得た。
【0042】
上記のパテ用樹脂組成物を、垂直に立つパネルに貼り付けたアルミニウム板(A6N01、サイズ:70mm×150mm×0.8mm)に、厚さ約1mmのステンレス製のヘラを用いて2mm厚で塗り付け、25℃の条件にて、24時間放置して硬化させてパテを得た。
【0043】
得られたパテ板を#400耐水ペ-パ-で軽く研磨し、「レタンPG80ホワイトベース」(商品名、アクリルウレタン樹脂系上塗り塗料、関西ペイント( 株)社製) を乾燥膜厚50μmになるようスプレ-塗装し、25℃で24時間間乾燥させて各塗装板を得た。得られたパテの塗装板を用いて、以下の評価試験を行った。それらの結果を表1にまとめた。
【0044】
【0045】
(作業性の評価)
パテ用樹脂組成物を塗り付ける際に、パテ用樹脂組成物のタレ易さを評価した。
○:タレが少なく2mm厚の形成は良好、
△:タレが多く1回以上の硬化を行わないと2mm厚の形成が難しかった
×:2mm厚の形成ができなかった
(密着性の評価)
上記方法で得られた試験片を用いて、60℃の温水に72時間浸漬した後、40℃で24時間乾燥した。その後JIS K 5600-5-6に準拠した条件でクロスカット試験を行い、下記の判定基準にて塗膜の密着性評価を行なった。
【0046】
○:剥離なし、×:剥離あり
(耐ブリスタ性の評価)
上記方法で得られた試験片を、85℃の温水に浸漬し、経時後の表面状態を観察し、下記の判定基準にて評価を行なった。
【0047】
S:200時間でブリスタ無し、A:100時間でブリスタなし、B:100時間で微小ブリスタが10個程度あり、C:100時間で試験片全面にブリスタあり
[実施例2~10、比較例1~5]
【0048】
実施例2~10および比較例1~5では、それぞれ不飽和ポリエステル樹脂、重合性不飽和化合物の種類と配合量、充填剤の種類、充填剤の配合量を表2に示される配合に変更した以外は、実施例1に準じてパテ用樹脂組成物およびパテ、パテの塗装板を得た。
【0049】
得られたパテの試験片について、実施例1に準じて評価試験を行い、評価結果を表1、2にまとめた。
【0050】
【0051】
CN-703:ディーエイチ・マテリアル(株)製
CN-705:ディーエイチ・マテリアル(株)製
スチレン:昭和電工(株)製
エチルメタクリレート:(株)日本触媒製
ベンジルアクリレート:大阪有機化学工業(株)製
ブチルメタクリレート:三菱ガス化学(株)製
パークミル(登録商標)H-80:日油(株)製、クメンハイドロパーオキサイド
ナイパー(登録商標)BW:日油(株)製、ジアシルパーオキサイド
タルクSW:日本タルク(株)製、粒子径:平均12μm
タルクMS:日本タルク(株)製、粒子径:平均14μm
アタクチックポリスチレン:PSジャパン(株)
シンジオタクチックポリスチレン:出光興産(株)
ポリメチルメタクリレート:旭化成(株)
以上の実施例および比較例の評価結果から、本発明のパテ用樹脂組成物では、不飽和ポリエステル系パテ用樹脂組成物に、重合性不飽和化合物と重合性不飽和化合物に溶解する重合物を特定の配合部含有することで、ブリスタ発生が抑制でき、かつ作業性、密着性に優れるパテが得られることがわかる。すなわち、意匠性を低下させることなく従来よりもメンテナンス頻度を抑え、塗装作業性及びコストを抑制しうるパテ用樹脂組成物、これを硬化して得られるパテ、このパテを有する塗装膜および塗装体を提供することができる。