(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】サイプブレード及びタイヤ金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20240910BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20240910BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2021010847
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】石原 泰之
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-102925(JP,A)
【文献】特開平04-353432(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109476103(CN,A)
【文献】特開2014-151518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース金型に植設され、タイヤにサイプを成型するサイプブレードであって、
板材をプレス加工して成型された第1ブレードと、
前記第1ブレードの厚みよりも厚い厚みを有する第2ブレードと、
を備え、
前記第2ブレードは、
前記ベース金型に植設された第1ブレードの外周
側に
組み合わされ、
前記第1ブレードの
外周面及び一方の成型面
と対向し、前記第1ブレードの外周に沿って延長する段部を備え、
前記段部は、第1ブレード及び第2ブレードがベース金型に植設されたときに、
第1ブレードの一方の成型面に接触するとともに接触した状態で通気を可能とする当接壁と、
前記第1ブレードの外周面と対向し、前記第1ブレードの外周面との間で所定の隙間を形成する対向壁とを備え、
前記対向壁と前記第1ブレードの外周面との間に形成された隙間が、前記ベース金型の有する通気孔に連通することを特徴とするサイプブレード。
【請求項2】
ベース金型に植設され、タイヤにサイプを成型するサイプブレードであって、
板材をプレス加工して成型された第1ブレードと、
前記第1ブレードの厚みよりも厚い厚みを有する第2ブレードと、
を備え、
前記第2ブレードは、
前記ベース金型に植設された第1ブレードの外周側に組み合わされ、
前記第1ブレードの外周面及び両方の成型面と対向しつつ前記第1ブレードの外周に沿って延長し、前記第1ブレードの外周部分が嵌め込まれる収容溝を備え、
前記収容溝は、
前記第1ブレードの外周部分が嵌め込まれたときに、前記第1ブレードのスライドを許容する隙間を有する溝幅とされ、
第1ブレード及び第2ブレードがベース金型に植設されたときに、溝底と前記第1ブレードの外周面との間にベント通路を備え、
前記ベント通路が前記ベース金型の有する通気孔に連通することを特徴とするサイプブレード。
【請求項3】
前記第2ブレードの一部は、前記ベース金型によりタイヤに成型される成型物の一部に含まれることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のサイプブレード。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3いずれか
1項に記載のサイプブレードを備えたタイヤ金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤにおいてサイプを形成するサイプブレード及びタイヤ金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤでは、周方向や幅方向に延長する主溝により区画されたトレッドブロックに、主溝の溝幅よりも溝幅の細い細溝(所謂サイプ)を形成することにより、ブロック剛性をコントロールしたり、エッジを増やすことで氷上におけるグリップ力を向上させたりされる。通常、このようなタイヤを成型する金型は鋳造製法で製作されるが、前述のようなサイプ、特に溝幅が2mm程度以下のサイプを成型する部分を鋳出しで他の部分と一体的に形成すると、当該部分がタイヤ成型・脱型時の繰り返しの負荷で破損してしまう危険性が高い。そこで前述の当該部分に、より高強度な鋼材からなる金属板等を別途プレス成型製法で製作しておいた薄肉部材(サイプブレード)を鋳包む事で対応される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、サイプブレードを鋼材をプレス成型することで、サイプの形状にある程度の設定自由度が得られる。その一方で、鋼材をプレス成型して得られたサイプブレードは、厚みに大きな変化を付与するすることができないため、溝幅の形状、即ち、サイプの溝幅を部分的に広くしたりする等の自由度が低いという問題がある。
そこで、本発明では、サイプブレードの繰り返し疲労寿命を確保しつつ、タイヤへのサイプ形状の設定自由度を向上可能なサイプブレード及びタイヤ金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するためのサイプブレードの構成として、ベース金型に植設され、タイヤにサイプを成型するサイプブレードであって、板材をプレス加工して成型された第1ブレードと、前記第1ブレードの厚みよりも厚い厚みを有する第2ブレードと、を備え、前記第2ブレードは、前記ベース金型に植設された第1ブレードの外周側に組み合わされ、前記第1ブレードの外周面及び一方の成型面と対向し、前記第1ブレードの外周に沿って延長する段部を備え、前記段部は、第1ブレード及び第2ブレードがベース金型に植設されたときに、第1ブレードの一方の成型面に接触するとともに接触した状態で通気を可能とする当接壁と、前記第1ブレードの外周面と対向し、前記第1ブレードの外周面との間で所定の隙間を形成する対向壁とを備え、前記対向壁と前記第1ブレードの外周面との間に形成された隙間が、前記ベース金型の有する通気孔に連通するようにしたり、ベース金型に植設され、タイヤにサイプを成型するサイプブレードであって、板材をプレス加工して成型された第1ブレードと、前記第1ブレードの厚みよりも厚い厚みを有する第2ブレードと、を備え、前記第2ブレードは、前記ベース金型に植設された第1ブレードの外周側に組み合わされ、前記第1ブレードの外周面及び両方の成型面と対向しつつ前記第1ブレードの外周に沿って延長し、前記第1ブレードの外周部分が嵌め込まれる収容溝を備え、前記収容溝は、前記第1ブレードの外周部分が嵌め込まれたときに、前記第1ブレードのスライドを許容する隙間を有する溝幅とされ、第1ブレード及び第2ブレードがベース金型に植設されたときに、溝底と前記第1ブレードの外周面との間にベント通路を備え、前記ベント通路が前記ベース金型の有する通気孔に連通する構成としたりすると良い。
本構成によれば、サイプ形状の設定自由度を向上が可能となり、特殊形状のサイプブレードであっても、実用上問題無い繰り返し疲労寿命で製作できる。
また、本構成によれば、より多くの空気を排出することができるとともに、タイヤの成型時のスピューの発生をより抑制することができる。
また、サイプブレードの他の構成として、第2ブレードの一部は、ベース金型により成型される形状の一部に含まれる構成とした。
本構成によれば、サイプブレードの3D曲げ形状に起因するアンダーカット形状による耐久性を向上できる。
また、上記課題を解決するためのタイヤ金型の構成として、請求項1乃至請求項3いずれかに記載のサイプブレードを備えた構成とした。
本構成によれば、タイヤ金型の耐久性を向上させることができる。
【0006】
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、特徴群を構成する個々の構成もまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】サイプブレードの平面図及び第1ブレードの平面図である。
【
図5】他のサイプブレードの分解斜視図及び組み立て図である。
【
図7】サイプブレードの他の実施形態を示す図である。
【
図8】サイプブレードの他の実施形態を示す図である。
【
図10】サイプブレードの他の実施形態を示す図である。
【
図11】第1ブレード及び第2ブレードの平面図である。
【
図12】第1ブレードと第2ブレードとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
実施形態1
図1は、実施形態1に係るタイヤ金型の要部斜視図である。
図2は、ベース金型の要部平面図及び断面図である。なお、以下の説明では、タイヤ金型1の成型対象であるタイヤの方向に基づいて方向を特定し、タイヤ半径方向、タイヤ幅方向、タイヤ円周方向、またその方向について溝底側や接地面側等として説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ金型1は、ベース金型2と、サイプブレード4とを備える。タイヤ金型1は、ベース金型2と、サイプブレード4とを別工程でそれぞれ製造し、それらを一体化することで製造される。
【0010】
図1,2に示すように、ベース金型2は、サイプブレード4が植設される土台となる金型であって、例えば、鋳造や積層造形法、機械加工などにより形成される。ベース金型2には、成型面2aにトレッドブロック等の成型物を成型するための凹凸やサイプブレード4を取り付けるためのブレード取付部12が形成される。成型物には、例えば、タイヤの成型物としての周方向溝を成型する複数の周方向溝成型部10や、幅方向溝を成型するための図外の複数の幅方向溝成型部等の凸部を備える。タイヤには、周方向溝成型部10や複数の幅方向溝成型部によって周方向溝や幅方向溝が成型され、周方向溝や幅方向溝によって区画されたトレッドブロック等が成型される。
【0011】
ブレード取付部12は、隣接する周方向溝成型部10;10の一方から他方に達するように、タイヤ幅方向に沿って延長する。ブレード取付部12は、サイプブレード4を構成する第1ブレード40を取り付けるための第1ブレード取付部14と、第2ブレード60を取り付けるための第2ブレード取付部16とで構成される。
【0012】
第1ブレード取付部14は、周方向溝成型部10;10の間を連結するように直線状に延長して設けられる。第1ブレード取付部14は、ベース金型2の成型面2aのうちタイヤにおける接地面を成型する接地面成型部11にスリット状に窪む溝として形成される。この第1ブレード取付部14には、第1ブレード40を固定するための凸部18がタイヤ幅方向に沿って複数設けられる。凸部18は、第1ブレード取付部14を形成する溝壁14aから球面状に膨出するように形成される。
【0013】
第2ブレード取付部16は、周方向溝成型部10に設けられる。第2ブレード取付部16は、周方向溝成型部10のタイヤにおける周方向溝の溝壁を形成する溝壁成型部10Aからタイヤ幅方向外側に向けて窪み、周方向溝成型部10のタイヤにおける周方向溝の溝底を形成する溝底成型部10Bからタイヤ半径方向に延長し、成型面2aを構成する接地面成型部11よりも窪む凹部として形成される。
【0014】
図3は、サイプブレード4の平面図及び第1ブレード40の平面図である。
図1,
図3(a)に示すように、サイプブレード4は、第1ブレード40と、第2ブレード60とを備え、前述のベース金型2に取り付けられる。具体的には、第1ブレード40は、ブレード取付部12の第1ブレード取付部14に、第2ブレード60は、ブレード取付部12の第2ブレード取付部16にそれぞれ取り付けられ、第1ブレード40と第2ブレード60とを組み合わせることでタイヤに一つのサイプを成型する。
【0015】
図3(b)に示すように、本実施形態に係る第1ブレード40は、例えば、所定の厚みt1の金属板をプレス加工等の機械加工により一方長尺の平板矩形状に形成される。金属板の厚みt1は、成型後のタイヤにおいて所望の溝幅のサイプが得られるように設定される。
【0016】
第1ブレード40には、第1ブレード取付部14に設けられた凸部18に係合する板厚方向に貫通する円形の係合孔42が複数設けられる。第1ブレード40は、係合孔42が第1ブレード取付部14に設けられた凸部18と係合することで、ベース金型2に対して所定の位置に脱落不能に取り付けられる。
【0017】
図4は、第2ブレード60の平面図及び断面図である。
図4(a)に示すように、第2ブレード60は、第1ブレード40において互いに対向する一対の短辺に沿って延長する支柱部62;62と、第1ブレード40の1つの長辺に沿って延長し、支柱部62;62を連結する連結部64とを備える。第2ブレード60は、例えば、第1ブレード40とは異なる製法の積層造形法により形成される。第2ブレード60の厚みt2は、第1ブレード40の厚みt1よりも厚く設定される。第2ブレード60の厚みt2とは、第2ブレード60を構成する支柱部62;62及び連結部64の全てを言う。
【0018】
支柱部62;62は、ベース金型2の第2ブレード取付部16;16にそれぞれ取り付けられ、
図1に示すように、ベース金型2において周方向溝成型部10;10と一体をなす外形形状に形成される。また、連結部64は、周方向溝成型部10;10によりタイヤに形成される溝底よりも浅い位置を延長するように、支柱部62;62間に架橋される。
図4(c)に示すように、連結部64は、延長方向と直交する断面視において一方が先細りとなる涙滴形状に形成される。
【0019】
図4(a),(b)に示すように、第2ブレード60は、一方の支柱部62から連結部64を経て、他方の支柱部62に連続して延長し、前述の前述の第1ブレード40の一対の短辺及び長辺を収容する収容溝66を備える。この収容溝66は、第1ブレード40の外周部分が嵌め込まれる嵌め込み部として機能する。
【0020】
収容溝66は、支柱部62に形成される支柱部溝67;67と、連結部64に形成される連結部溝68とで構成される。各支柱部62;62に形成される支柱部溝67;67は、互いに対向し、各支柱部62;62の延長方向一端62tからこの支柱部62の延長方向に沿って連結部64まで互いに平行に延長する。連結部溝68は、連結部64の延長方向に沿って延長し、各支柱部62;62に設けられた支柱部溝67;67に接続される。
【0021】
収容溝66の溝幅L3は、支柱部溝67;67の一端62t;62t側から第1ブレード40の短辺側を挿入し、第1ブレード40を連結部64に向けてスライド可能に形成され、第1ブレード40の一方の長辺側が連結部溝68に挿入可能に形成される。即ち、第1ブレード40を第2ブレード60の収容溝66に嵌め込むことで、1つのサイプブレード4として一体化される。
【0022】
以下、第2ブレード60と第1ブレード40とを一体化させたときの第2ブレード60及び第1ブレード40の関係について説明する。
支柱部溝67;67及び連結部溝68は、例えば、
図4(b),(c)の拡大図に示すように、延長方向と直交する断面視において、それぞれ一方開口の箱型に形成される。
図4(b)に示すように、第2ブレード60の各支柱部62に設けられた互いに対向する支柱部溝67;67の溝底67n;67n間の距離L2が、第1ブレード40の長辺の長さL1よりもやや長く設定され、支柱部溝67;67の溝壁67m;67m間の距離である溝幅L3が、第1ブレード40の厚みt1よりもやや広く設定され、前述のようにスライドを許容する隙間を有するように寸法が設定される。
【0023】
また、
図4(c)に示すように、第2ブレード60は、連結部溝68を形成する溝壁68m;68m間の距離である溝幅L3が、第1ブレード40の厚みt1よりもやや広く設定される。また、第2ブレード60の連結部溝68の溝底68nに第1ブレード40の一方の長辺の外周面(板材の厚み部分)40aが達したときに、他方の長辺(連結部溝68に収容されていない長辺)の外周面40aが支柱部62の一端62tと面一となるように、一端62tから溝底68nまでの距離L4が設定される。
【0024】
そして、サイプブレード4は、前述したように、例えば、第1ブレード40を第2ブレード60に組み合わせた状態でベース金型2のブレード取付部12に挿入され、タイヤ金型1の一部を構成する。サイプブレード4は、ベース金型2に取り付けられた状態において、厚みの異なる第1ブレード40及び第2ブレード60の連結部64が、周方向溝成型部10;10間に露出することにより、タイヤを成型したときの1つのサイプにおいてタイヤ半径方向に溝幅を変化させることができる。
【0025】
このように、即ち、厚みの薄い第1ブレード40によりタイヤの接地面からタイヤ半径方向に延長する細溝を、この細溝の溝底側に第1ブレード40よりも厚みの厚い第2ブレード60により溝幅の広い太溝を成型することができる。このようにサイプを成型することにより、接地面側から細溝内に進入した水を、溝底側の太溝から周方向溝へと効率良く排水することができる。
【0026】
このように、サイプにおいて細溝を成型する部分について、板材をプレス加工により形成したものを用い、太溝を成型する部分について積層造形法により形成することにより、それぞれの製法の長所を生かすことができ、サイプブレード4の耐久性を向上させることができる。即ち、板材のような細溝を積層造形法によって形成したときには耐久性が低下してしまうが、板材を用いることによりこれを防ぐことができる。
【0027】
実施形態2
図5は、サイプブレード4の他の実施形態を示す図である。
図6は、ベース金型2の他の実施形態を示す図である。前述の実施形態1では、第1ブレード40の外周を第2ブレード60の収容溝66に嵌め込むものとして説明したが、
図5に示すように、空気の流通を可能にするベント通路70を収容溝66に設けるようにしても良い。以下、
図5,6を用いてサイプブレード4の他の実施形態について説明する。前述のように、第2ブレード60は、積層造形法を用いることにより容易に製造することができる。
【0028】
本実施形態に係るサイプブレード4は、タイヤ成型時に、タイヤ金型1と生タイヤとの間に介在する空気の排気を可能にするベント通路70を備える点で先のサイプブレード4と相違する。
図5(a),(b)に示すように、ベント通路70は、第2ブレード60の一方の支柱部62から連結部64を経て、他方の支柱部62に連続して延長する収容溝66の溝底を形成するように収容溝66に沿って延長する。
【0029】
収容溝66は、積層造形法により形成され、第1ブレード40は、板材をプレス加工などにより形成されているため、それぞれ表面粗さが異なる。具体的には、第1ブレード40の表面は、積層造形法により形成された第2ブレード60の表面粗さ(積層造形法固有の視認できる粗さ)よりも滑らかである。この表面粗さの違いによって、第1ブレード40と、第2ブレード60との間には、隙間が形成されるため、ベント通路70へと空気を流通させることができる。この隙間をベント通路70への導入路として利用することができる。
【0030】
このようにサイプブレード4を構成する場合、
図6に示すように、ベース金型2において第2ブレード60の支柱部62;62が取り付けられる第2ブレード取付部16と、ベース金型2の背面2bとに貫通する通気孔20を設けると良い。このようにベース金型2を構成することにより、タイヤを成型するときに、生タイヤと成型面2aとの間に介在する空気を効率良く空気を排出することができ、ベース金型2の他の部分に通気孔を不要とすることができる。また、ことにより、ベース金型2に設けた通気孔20から空気を排出することができる。また、表面粗さの違いにより形成される隙間は、ゴムがほとんど進入しない程度であるため、サイプブレード4を介して空気を排出することができるだけでなく、タイヤ表面にスピュー(成型痕)が成型されないので、成型後のタイヤの外観を向上させることができる。
【0031】
実施形態3
図7は、サイプブレード4の他の実施形態を示す図である。また、前述の実施形態1,2では、第1ブレード40を一方長尺の平板矩形状として説明したが、これに限定されない。第1ブレード40は、
図7(a),(b)に示すように、タイヤ円周方向やタイヤ半径方向に凹凸を有する所謂3Dサイプを形成するようにしても良い。
【0032】
第2ブレード60は、前述の実施形態1,2のように、第2ブレード60の支柱部62;62と、連結部64とを一体的とせずに、
図7(b)に示すように、各支柱部62;62及び連結部64を別体として積層造形法により形成するようにしても良い。この場合、
図7(c)に示すように、各支柱部62に第1ブレード40の短辺が挿入される支柱部溝67と、連結部64の端部を挿入可能に形成された連結部挿入凹部69とを形成すれば良い。また、
図7(d)に示すように、ベース金型2には、第1ブレード40に形成された凹凸に対応して、第1ブレード取付部14を形成すれば良い。
【0033】
実施形態4
図8は、サイプブレード4の他の実施形態を示す図である。
図9は、サイプブレード4の分解図及び組立図である。サイプブレード4を構成する第1ブレード40は、上記実施形態1乃至3に示したように、1つの第1ブレード40に限定されず、
図8,
図9(b),(c)に示すように、複数の第1ブレード40A乃至40Cにより構成しても良い。
図8(b)に示すように、第1ブレード40A乃至40Cは、サイプブレード4が円弧状となるように配置される。即ち、実施形態4で示すサイプブレード4は、周方向溝成型部10;10間において円弧状に延長する。
【0034】
図9に示すように、第2ブレード60は、ベース金型2に取り付けられた第1ブレード40A~40Cに重ねて設けられ、サイプブレード4として第1ブレード40A~40Cと一体化される。第2ブレード60は、ベース金型2から露出する第1ブレード40A~40Cに対して、第1ブレード40A~40Cの立設方向からベース金型2に取り付けられる。第2ブレード60は、ベース金型2に取り付けられたときに、ベース金型2に取り付けられた第1ブレード40A~40Cの外周部を囲繞しつつ第1ブレード40A~40Cの成型面40m;40mを露出させるための複数の開口部61A;61B;61Cを備える。
【0035】
図9(a)に示すように、第2ブレード60は、一方の周方向溝成型部10と第1ブレード40Aの間を立ち上がる支柱部62A、第1ブレード40Aと40Bの間を立ち上がる支柱部62Bと、第1ブレード40Bと40Cの間を立ち上がる支柱部62Cと、第1ブレード40Cと他方の周方向溝成型部10との間を立ち上がる支柱部62Dと、ベース金型2から立ち上がる支柱部62A~62Dの先端を結ぶ連結部64とで形成される。本実施形態では、第2ブレード60は、周方向溝成型部10;10に含まれないように形成される。即ち、支柱部62A及び62Dが周方向溝成型部10;10の溝壁成型部10Aに接するように形成される。
【0036】
第2ブレード60において開口部61A;61B;61Cを形成する板厚面61mには、この板厚面61mの延長方向に沿って延長し、第1ブレード40A~40Cの外周を挿入可能な溝状の収容溝(前述の収容溝66に相当する)が形成されている。サイプブレード4は、本実施形態4に示すように形成しても良い。
【0037】
なお、第1ブレード40A~40Cの厚みは、同一であっても良く、またそれぞれについて異なる厚みを設定しても良く、また、2つを同じ厚みとし、残りの1つとを厚みが異なる等のように適宜設定すれば良い。このように、第1ブレード40A~40Cの厚みを変化させた場合であっても第2ブレード60を積層造形法により形成することで、第1ブレード40A~40Cを収容する溝幅を簡単に変更し、形成することができる。
【0038】
実施形態5
図10は、サイプブレード4の他の実施形態を示す図である。
図11は、第1ブレード40及び第2ブレード60の平面図である。
図12は、第1ブレード40と第2ブレード60との関係を示す図である。
前述の実施形態1乃至4では、サイプブレード4が、周方向溝成型部10;10間に達するように延長するものとして説明したが、これに限定されない。サイプブレード4は、
図10に示すように、周方向溝成型部10;10間に達することなくタイヤ幅方向に延長するように形成しても良い。このようにサイプブレード4を構成することにより、タイヤには、周方向溝に開口しないサイプを形成することができる。
【0039】
実施形態5に係るサイプブレード4は、第1ブレード40に対して第2ブレード60が接するように設けられる。即ち、前述の実施形態1乃至4では、収容溝66を形成する一対の溝壁66m;66mにより第1ブレード40の成型面40m;40mを支持するように第2ブレード60を形成するものとして説明したが、
図12に示すように、第2ブレード60に段部72を設けて、この段部72に第1ブレード40の一方の成型面40mが接するように第2ブレード60を形成しても良い。
【0040】
段部72は、例えば、
図11に示すように、第1ブレード40の外周に沿って延長するように、第2ブレード60の一方の支柱部62の一端62tから連結部64を経て他方の支柱部62の一端62tまで延長するように設けられる。即ち、段部72は、実施形態1乃至4の収容溝66に替えて形成される。段部72は、ベース金型2に第1ブレード40及び第2ブレードを取り付けたときに、第1ブレード40の成型面40mが当接する当接壁72mと、第1ブレード40の外周面40aに対向する対向壁72nとを備える。対向壁72nは、第1ブレード40の外周面40aに対して所定の隙間を有するように形成すると良い。
【0041】
対向壁72nは、第1ブレード40の外周面40aに対して所定の隙間を有するように形成することにより、第1ブレード40に外力が作用した時に、第2ブレード60に対して可動とすることができる。即ち、タイヤからタイヤ金型1を脱型するときに、例えば、第2ブレード60に対して変位することができるので、脱型時にタイヤを傷つけたりする不良の発生を抑制できるとともに、第1ブレード40にかかる力を逃がすことができるため、第1ブレード40の不要な変形を防ぐことができ、サイプブレード4の耐久性を向上させることができる。
【0042】
また、サイプブレード4に異なる厚さを設定する場合、厚さの異なる第1ブレード40と、第2ブレード60とを組み合わせて一つのサイプブレード4を形成し、タイヤを成型することにより、タイヤに細溝を成型する第1ブレード40と、第1ブレード40の厚さよりも厚い第2ブレード60により溝幅の広い溝をサイプの溝底側に成型することにより、第1ブレード40により成型された部分により、氷雪におけるエッジ効果を得つつ、第2ブレード60により成型された部分により、溝内に進入した水の排水性能を向上させることができる。
【0043】
以上各実施形態1乃至5を用いて説明したように、タイヤにおいて1つのサイプ(細溝)を成型するサイプブレード4を、金属板をプレス加工により形成した第1ブレード40と、積層造形法により形成され、サイプにおける太溝を成型する第2ブレード60との2つの異なる素材で構成することにより、サイプ形成における設計の自由度を維持しつつサイプブレード4の耐久性も維持させることができる。
【0044】
なお、サイプブレード4を構成する部品数及びサイプブレード4を構成する部品の形状は、上記各実施形態で示したものに限定されず、適宜変更すれば良い。
例えば、サイプブレード4の設定において、第2ブレード60のように一部を積層造形法によりサイプブレードを形成することで、形状の設定に自由度を維持することができる。加えて、積層造形法では強度が不足する部分(厚みを薄くしたい部分)において第1ブレード40のように、金属板をプレスで成型したものを利用することで、例えば、0.2mm程度の溝幅を成型する場合であっても、型抜けの際の破損を防止し、耐久性を維持させることができる。
つまり、タイヤにおけるサイプ形成の形状設定の自由度を積層造形法による優位性を利用しつつ、耐久性のあるサイプブレード及びタイヤ金型を提供することができる。
なお、前述では、第1ブレード40よりも厚みの厚い第2ブレード60を積層造形法により形成するものとして説明したが、例えば、ベース金型とは別工程での精密鋳造や機械加工で製作しても良い。
【0045】
また、上記実施形態2において、第2ブレード60にベント通路70を設けるとともに、このベント通路70と連通するようにベース金型2に通気孔20を設けるものとして説明したが、第2ブレード60にベント通路70を設けない場合(例えば、実施形態1や実施形態3乃至実施形態5等のように)、ベース金型2に取り付けられた第2ブレード60の各支柱部62の一端62tに開口する収容溝66に開口するように、ベース金型2に通気孔20を設けると良い。前述のように、第1ブレード40は、板材をプレス加工などにより形成され、第2ブレード60は、積層造形法により形成されている。このため、第1ブレード40の表面は、積層造形法により形成された第2ブレード60の表面粗さ(積層造形法固有の視認できる粗さ)よりも滑らかである。この表面粗さの違いによって、第1ブレード40と、第2ブレード60との間には、隙間が形成されるため、この隙間をベント通路として利用することにより、ベース金型2に設けた通気孔20から空気を排出することができる。また、表面粗さの違いにより形成される隙間は、ゴムがほとんど進入しない程度であるため、成型後のタイヤにスピュー等の成型痕が残りにくいという長所がある。
【0046】
なお、タイヤ金型の製造方法は、前述のように、サイプブレード4ベース金型2に設けられたブレード取付部12にサイプブレード4を取り付けることに限定されず、例えば、ベース金型2を鋳造する際に、サイプブレード4を埋設し、鋳包みなどにより一体化させても良い。
【0047】
以上説明したように、ベース金型に植設され、タイヤにサイプを成型するサイプブレードにおいて、板材をプレス加工して成型された第1ブレードと、積層造形法により板材の厚みよりも厚い厚みを有する第2ブレードとを備え、第2ブレードは、ベース金型に植設された第1ブレードの外周に沿って延長し、第1ブレードの周縁部に沿って第1ブレードの一方の成型面が接触する接触部、又は、第1ブレードの周縁部を収容し、第1ブレードの両方の成型面が接触する嵌め込み部を備える構成とすることにより、特殊形状のサイプブレードであっても、実用上問題のない無い繰り返し疲労寿命で製作できる。
また、第2ブレードの一部は、ベース金型により成型される形状の一部に含まれる構成とすることにより、サイプブレードの3D曲げ形状に起因するアンダーカット形状による耐久性を向上できる。
また、第1ブレードと第2ブレードとが接触する接触部、又は嵌め込み部の間に生じる隙間が、ベース金型の有する通気孔に連通する構成とすることにより、第2ブレードの接触部、又は嵌め込み部の間に生じた隙間を介して空気を排出することができるので、別途ベース金型の他の位置に通気孔を設ける必要をなくすことができ、タイヤ成型時のスピューの発生を抑制することができる。
また、第2ブレードは、通気孔に連通し、第1ブレード及び第2ブレードの接触部、又は嵌め込み部に沿って延長する溝を備えることにより、より多くの空気を排出することができる。
また、タイヤ金型において、請求項1乃至請求項4いずれかに記載のサイプブレードを備える構成とすることにより、タイヤ金型の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 タイヤ金型、2 ベース金型、4 サイプブレード、
20 通気孔、40 第1ブレード、60 第2ブレード、66 収容溝、
70 ベント通路。